IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アルケマ フランスの特許一覧

特開2024-54256焼結物品を形成するのに有用な組成物及び方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054256
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】焼結物品を形成するのに有用な組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 33/06 20060101AFI20240409BHJP
   C08L 71/00 20060101ALI20240409BHJP
   C08L 79/08 20060101ALI20240409BHJP
   C08F 283/04 20060101ALI20240409BHJP
   C08F 283/06 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
C08L33/06
C08L71/00 A
C08L79/08 Z
C08F283/04
C08F283/06
【審査請求】有
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024017640
(22)【出願日】2024-02-08
(62)【分割の表示】P 2021502402の分割
【原出願日】2019-05-29
(31)【優先権主張番号】62/699,976
(32)【優先日】2018-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リウ,デイビッド・シン-レン
(72)【発明者】
【氏名】ウルフ,ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】マク・グレイル,ブレンダン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】融合した熱可塑性粒子から構成される焼結物品、そのような焼結物品の調製に有用な組成物、及び該組成物を用いて焼結物品を得る方法を提供する。
【解決手段】焼結物品は、少なくとも焼結可能な熱可塑性粒子及び硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分を含有する組成物から形成することができ、ここで、焼結可能な熱可塑性粒子は、25℃で硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分に不溶である。硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分は硬化されて、それにより中間物品を形成することができ、該中間物品は硬化した硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分によって形成されたマトリックスの少なくとも一部を除去し、熱可塑性粒子を焼結するのに有効な条件を用いて、焼結物品に変換され得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結可能な熱可塑性粒子及び硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分から構成される組成物であって、該焼結可能な熱可塑性粒子が、25℃で該硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分に不溶であり、焼結可能な熱可塑性粒子が、250℃を超える融点、200℃を超えるガラス転移温度、又は250℃を超える融点及び200℃を超えるガラス転移温度を有し、焼結可能な熱可塑性粒子が、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン及びポリイミドからなる群から選択される少なくとも1つの熱可塑性物質から構成される、組成物。
【請求項2】
焼結可能な熱可塑性粒子が、乾燥時に走査型電子顕微鏡によって測定される10~100ミクロンの体積中央直径(Dv50)を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分が光硬化性である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分が、1種以上の(メタ)アクリレート官能化モノマー又はオリゴマーから構成される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分が、1つ以上のポリオキシアルキレンセグメントを含む1種以上の(メタ)アクリレート官能化モノマー又はオリゴマーから構成される、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分が、1つ以上のポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン又はポリオキシエチレン/オキシプロピレンセグメントを含む1種以上の(メタ)アクリレート官能化モノマー又はオリゴマーから構成される、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分が、アルコキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アルコキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、アルコキシル化ビス-フェノールジ(メタ)アクリレート及びアルコキシル化脂肪族ポリアルコール(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種以上の(メタ)アクリレート官能化モノマー又はオリゴマーから構成される、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分が、25℃で1500センチポアズ未満の粘度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分が、25℃で800センチポアズ未満の粘度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分が、少なくとも1種の光開始剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分が、25℃で均質な液体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分が、硬化した場合、焼結可能な熱可塑性粒子の融点より低いか、又は焼結可能な熱可塑性粒子が融点を有しない場合には、焼結可能な熱可塑性粒子のガラス転移温度より低い分解温度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
組成物が、焼結可能な熱可塑性粒子及び硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分の総重量に基づいて、25~60重量%の焼結可能な熱可塑性粒子及び40~75重量%の硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分から構成される、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
焼結物品を形成する方法であって、以下、すなわち、
a) 請求項1に記載の組成物を硬化させて、硬化した形態の硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分のマトリックスによって結合された焼結可能な熱可塑性粒子から構成される中間物品を形成し、及び
b) 中間物品を、マトリックスの少なくとも一部を除去し、焼結可能な熱可塑性粒子を焼結するのに有効な条件に晒し、それにより焼結可能な熱可塑性粒子を融合させて焼結物品を形成すること
を含む、方法。
【請求項15】
ステップa)における硬化が、硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分に放射線を照射することによって行われる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ステップb)における条件が、焼結可能な熱可塑性粒子の分解を回避しながら、硬化した形態の硬化性(メタ)アクリレート樹脂組成物を少なくとも部分的に分解するのに有効な温度で中間物品を加熱することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
中間物品の加熱後に、中間物品が硬化した形態の硬化性(メタ)アクリレート樹脂組成物の分解生成物を含み、中間体を該分解生成物の少なくとも一部を除去するのに有効な溶媒と接触させる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ステップb)における条件が、中間物品を圧縮することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
ステップb)における条件が、中間物品をレーザー光線に曝露することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
方法が三次元印刷を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
ステップb)において、マトリックスの少なくとも一部の除去及び焼結可能な熱可塑性粒子の焼結が同時に行われる、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
ステップb)において、マトリックスの少なくとも一部の除去が、焼結可能な熱可塑性粒子の焼結前に行われる、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
焼結物品が熱可塑性である、請求項14に記載の方法。
【請求項24】
焼結物品を作製する方法であって、以下、すなわち、
a) 表面上に請求項1に記載の組成物の第1の層を塗布し、
b) 第1の層を硬化させて硬化した第1の層を提供し、
c) 硬化した第1の層上に該組成物の第2の層を塗布し、
d) 第2の層を硬化させて硬化した第1の層に接着した硬化した第2の層を提供し、
e) ステップc)及びd)を所望の回数繰り返し、硬化した形態の硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分のマトリックスにより結合した焼結可能な熱可塑性粒子から構成される三次元物品を構築し、及び
f) 三次元物品を、マトリックスの少なくとも一部を除去し、焼結可能な熱可塑性粒子を焼結するために有効な条件に晒し、それにより焼結可能な熱可塑性粒子を融合させて焼結物品を形成すること
を含む、方法。
【請求項25】
デジタル光投影、ステレオリソグラフィー又はマルチジェット印刷を用いて、三次元印刷物を作成する方法であって、請求項1に記載の組成物を層ごとに照射して、三次元印刷物を形成することを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、融合した熱可塑性粒子から構成される焼結物品、そのような焼結物品の調製に有用な組成物、及び該組成物を用いて焼結物品を得る方法に関する。特に、本発明は、焼結可能な熱可塑性粒子及び硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分を含む組成物であって、硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分を(例えばUVによって)硬化させて、焼結可能な熱可塑性粒子がその中で結合される犠牲マトリックスを形成することができる組成物に関する。次に、硬化したマトリックスを(例えば熱分解及び/又は酸化分解により)少なくとも部分的に除去し、焼結可能な熱可塑性粒子を融合させ、それにより焼結物品を形成することができる。
【背景技術】
【0002】
種々の印刷技術を用いた三次元ポリマー物品の製造は、3D印刷がポリマー材料から物品を形成する従来の方法よりも一定の加工の利点を有するため、現在非常に興味深い。現在利用可能な3つの主な3D印刷技術のうち、紫外線(UV)硬化は最高の解像度を提供し、潜在的には最高の生産速度も提供する。しかし、3D印刷におけるUV硬化技術の使用の主な問題は、使用される材料が放射線硬化性アクリレートであり、いったん硬化すると熱硬化性アクリルを提供することである。放射線硬化性アクリレートは早い硬化速度を有するが、それから得られる生成物は一般にかなりもろく、熱可塑性物質の靭性及び収量特性、熱可塑性物質がもたらす特性の範囲(高い使用温度、高い耐薬品性など)を欠いている。このようなUV硬化性系の靭性、高温安定性及び強度を向上させるために多大な努力が払われてきたが、一般的に言えば、得られる物品が性質上熱硬化性である限り、達成可能な特性に制約があるであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、少なくとも実質的に性質が熱可塑性である3D印刷物の製造を可能にする技術を開発することが望まれるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様によれば、焼結可能な熱可塑性粒子及び硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分から構成され、焼結可能な熱可塑性粒子が25℃で硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分に不溶性である組成物が提供される。
【0005】
さらなる態様によれば、本発明はまた、焼結物品を形成する方法であって、
a) 焼結可能な熱可塑性粒子及び硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分から構成される組成物を硬化させて、硬化した形態の硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分のマトリックスによって結合された焼結可能な熱可塑性粒子から構成される中間物品を形成することであって、ここで焼結可能な熱可塑性粒子は25℃で硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分に不溶性であり、及び
b) 中間物品を、マトリックスの少なくとも一部を除去し、焼結可能な熱可塑性粒子を焼結するのに有効な条件に晒し、それによって焼結可能な熱可塑性粒子を融合させて焼結物品を形成すること
を含む方法を提供する。
【0006】
本発明のさらなる態様は、焼結物品を作製する方法であって、
a) 焼結可能な熱可塑性粒子及び硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分から構成される組成物の第1の層を塗布し、ここで焼結可能な熱可塑性粒子は25℃で硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分に不溶性であり、
b) 第1の層を硬化させて、硬化した第1の層を提供し、
c) 硬化した第1の層上に該組成物の第2の層を塗布し、
d) 第2の層を硬化させて、硬化した第1の層に接着した硬化した第2の層を提供し、
e) ステップc)及びd)を所望の回数繰り返して、硬化した形態の硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分のマトリックスによって結合された焼結可能な熱可塑性粒子から構成される三次元物品を構築し、及び
f) 三次元物品を、マトリックスの少なくとも一部を除去し、焼結可能な熱可塑性粒子を焼結するのに有効な条件に晒し、それによって焼結可能な熱可塑性粒子を融合させて焼結物品を形成すること
を含む方法を提供する。
【0007】
デジタル光投影、ステレオリソグラフィー又はマルチジェット印刷などの三次元印刷法を用いて三次元印刷物品を作製する方法は、本発明の追加の態様において提供され、ここで、この方法は、焼結可能な熱可塑性粒子及び硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分から構成される組成物を層ごと照射して、三次元印刷物品を形成することを含み、焼結可能な熱可塑性粒子は、25℃で硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分に不溶性である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の組成物は、焼結可能な熱可塑性粒子及び硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分から構成され、焼結可能な熱可塑性粒子は、25℃で硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分に不溶性である。本明細書で使用されるように、「不溶性」という用語は、焼結可能な熱可塑性粒子5重量部及び硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分95重量部を混合し、得られた混合物を25℃で24時間静置した後に、焼結可能な熱可塑性粒子中に存在する熱可塑性粒子の10%未満しか硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分中に溶解しないことを意味する。
【0009】
本発明の特定の実施形態では、室温(25℃)での組成物は、硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分の液体マトリックス中の焼結可能な熱可塑性粒子(固体粒子形態)の分散体の形態である。一実施形態では、焼結可能な熱可塑性粒子は、硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分の液体マトリックス中に均質に分散される。別の実施形態によれば、焼結可能な熱可塑性粒子は、硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分の液体マトリックス中の安定な均質分散物の形態である。この文脈において、「均質である」とは、焼結可能な熱可塑性粒子が、人間の裸眼によって観察されたときに、組成物の体積を通して均等かつ均一に分布されることを意味し、「安定である」とは、均質な状態を達成するために組成物を撹拌し、次いで25℃で静置した後、分散液が少なくとも24時間にわたって均質なままであることを意味する。分散体の均一性及び安定性の改善を助けるために、1種以上の分散剤(界面活性剤など)を組成物中に含有させることができる。
【0010】
焼結可能な熱可塑性粒子
本発明において有用な焼結可能な熱可塑性粒子は、少なくとも1種の熱可塑性物質、すなわち、加熱されたときに溶融することができるポリマーから構成される。熱可塑性粒子は焼結することが可能であり、本発明の文脈において、これは、熱可塑性粒子を完全な液化の時点まで熱可塑性粒子を溶融しないで加熱及び/又は圧縮することによって、熱可塑性粒子がコヒーレント結合した塊に形成され得ることを意味する。典型的には、焼結可能な熱可塑性粒子は微粉末の形態である。例えば焼結可能な熱可塑性粒子は、乾燥した場合に走査型電子顕微鏡によって測定されるように、好ましくは5ミクロン~3mm、より好ましくは10~300ミクロン、最も好ましくは15~100ミクロンの体積中央径(Dv50)を有することができる。焼結可能な熱可塑性粒子のかさ密度は、好ましくは0.1g/cmよりも大きく、より好ましくは0.3g/cmよりも大きく、又は最も好ましくは0.4g/cmよりも大きいことができる。
【0011】
本発明の一態様による焼結可能な熱可塑性粒子は、主として実質的に球状粒子から構成されることができるが、他の形状(不規則な形状を含む)も採用され得る。焼結可能な熱可塑性粒子は、粉砕、表面改質又は焼結可能な熱可塑性粒子の流動特性又は他の特性を改変するための他の加工を受けることができる。焼結可能な熱可塑性粒子はまた、熱可塑性物質に加えて、充填剤、流動剤、結晶化促進剤又は阻害剤などの1種以上の添加剤を含むことができる。焼結可能な熱可塑性粒子はまた、1種以上の適切な熱可塑性物質と他の熱可塑性物質又は添加剤とのブレンドを含んでもよい。
【0012】
適切な熱可塑性物質は、三次元印刷機における三次元オブジェクトの製造条件に供した場合に、本明細書に記載される組成物中で適切に機能するポリマーを含む。熱可塑性物質は、当該技術分野で知られている、いわゆるエンジニアリング熱可塑性物質の1種であることができる。しかし、他の種類の熱可塑性物質も使用できる。例えば焼結可能な熱可塑性粒子中に存在する熱可塑性物質は、150℃以上の融点及び/又は100℃以上のTgを有することができる。他の実施形態では、熱可塑性物質は、250℃の融点及び/又は200℃以上のTgを有することができる。熱可塑性物質の融点は、以下の温度サイクルを用いて、2回目の加熱中の示差走査熱量測定(DSC)によって測定される。
【0013】
- 10℃/分で20から400℃に加熱する、
- 1℃/分で400℃から20℃に冷却する、
- 10℃/分で20℃から400℃まで加熱する。
【0014】
熱可塑性物質のガラス転移温度は示差走査熱量測定(DSC)で測定され、特にISO11357に従った20℃/分での2回目の加熱中に測定される。
【0015】
熱可塑性物質は、非晶質、結晶性又は半結晶性であることができる。
【0016】
適切な熱可塑性物質の例としては、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリアミド、ポリイミド及びフルオロポリマーが挙げられる。ポリアリールエーテルケトンという用語は、その分子骨格がケトン(R-CO-R)及びエーテル基(R-O-R)の両方を含み、官能基間の結合基Rが二置換アリール基からなるポリマーを指し、全てのホモポリマー及びコポリマー(例えばターポリマーを含む)などを包含することを意図している。一実施形態において、ポリアリールエーテルケトンは、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0017】
一実施形態において、ポリアリールエーテルケトンはポリエーテルケトンケトン(PEKK)を含む。本発明の実施形態において使用するのに適したポリエーテルケトンケトンは、以下の式I及びIIで表される繰り返し単位を含むか、それらから本質的になるか、又はそれらからなることができる。
【0018】
-A-C(=O)-B-C(=O)- I
-A-C(=O)-D-C(=O)- II
式中、Aはp,p’-Ph-O-Ph基、Phはフェニレン基、Bはp-フェニレン、Dはm-フェニレンである。ポリエーテルケトンケトン中の式I:式II(T:I)異性体比は100:0~0:100であることができる。異性体比は、例えばポリエーテルケトンケトンを調製するために使用される異なるモノマーの相対量を変化させることによって、特定の一連の特性を達成するために所望され得るように、容易に変化させることができる。一般的に、式I:式IIの比が比較的高いポリエーテルケトンケトンは、式I:式IIの比がより低いポリエーテルケトンケトンよりも結晶性である。したがって、T:I比は、所望されるように、非晶質(非結晶性)ポリエーテルケトンケトン又はより結晶性のポリエーテルケトンケトンを提供するように調整することができる。一実施形態において、約50:50~約90:10のT:I異性体比を有するポリエーテルケトンケトンが用いられ得る。
【0019】
例えば全てのパラ-フェニレン結合[PEKK(T)]を有するポリエーテルケトンケトンの化学構造は式IIIで表すことができる。
【0020】
【化1】
【0021】
骨格[PEKK(I)]にメタ-フェニレン結合が1つあるポリエーテルケトンケトンの化学構造は式IVで表すことができる。
【0022】
【化2】
【0023】
T及びIの異性体を交互に有するポリエーテルケトンケトンの化学構造、例えばT及びIの両方の50%の化学組成を有するホモポリマー[PEKK(T/I)]の化学構造は式Vで表すことができる。
【0024】
【化3】
【0025】
別の実施形態では、ポリアリールエーテルケトンはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を含む。本発明に使用するのに適したポリエーテルエーテルケトンは、式VIで表される繰り返し単位(n≧1)を含むか、該単位から本質的になるか、又は該単位からなることができる。
【0026】
【化4】
【0027】
別の実施形態では、ポリアリールエーテルケトンはポリエーテルケトン(PEK)を含む。本発明に使用するのに適したポリエーテルケトンは、式VIIで表される繰り返し単位(n≧1)を含むか、該単位から本質的になるか、又は該単位からなることができる。
【0028】
【化5】
【0029】
ポリアリールエーテルケトンは、任意の適切な方法によって調製することができ、このような方法は当技術分野で周知である。例えばポリアリールエーテルケトンは、少なくとも1種のビスフェノール及び少なくとも1種のジハロベンゾイド化合物又は少なくとも1種のハロフェノール化合物の実質的に等モルの混合物を加熱することによって形成することができる。ポリマーは非晶質であるか、又は結晶化していることができるが、それはポリマーの合成によって制御することができる。このように、ポリマー(複数可)は、被覆ワイヤの使用目的及び工業用途に応じて、非結晶性から高結晶性まで変わることができる。さらに、ポリマー(複数可)はまた、任意の適切な分子量のものであることができ、所望であれば、官能化又はスルホン化されてもよい。一実施形態において、ポリマー(複数可)は、スルホン化、又は当業者に知られた任意の例の表面改質を受ける。
【0030】
適切なポリエーテルケトンケトンは、様々な商標でいくつかの商業的供給源から入手可能である。例えばポリエーテルケトンケトンポリマーは、商標Kepstan(R)の下でアルケマ社により製造及び供給されている。
【0031】
例示的なポリアミド(ナイロン)は、特に脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、非晶質及び半結晶性ポリアミド(PA)6、PA11、PA12のような脂肪族-芳香族ポリアミド、並びにコポリアミド6.6、6.12、6.10、10.10、及び10.12を含む。例示的なポリイミドには、テトラカルボン酸二無水物(例えばピロメリット酸無水物)とジ一級ジアミン(例えば4,4’-オキシジアニリン)とを反応させて中間体ポリアミド-酸を得、これは化学処理又は熱処理などのいくつかの適切な方法のいずれか1つによって、対応するポリイミドに変換され得ることによって得られるポリイミドなどの脂肪族、半芳香族及び特に芳香族ポリイミドが含まれる。典型的には、適切なポリイミドは、ポリイミドの骨格中にフタルイミド構造を含む。例示的なフルオロポリマーには、特にポリフッ化ビニリデン(フッ化ビニリデンのホモポリマー並びにフッ化ビニリデンと、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン及び/又はテトラフルオロエチレンなどの1種以上の他のモノマーとのコポリマーを含む)が含まれる。本発明で使用するのに適したPVDF樹脂には、アルケマ社によりKynar(R)の商標で販売されているPVDF樹脂が含まれる。他の適切なフルオロポリマーの例としては、PTFE、FEP、PCTFE、ETFE、MFA、EFEP、THV及びHTEが挙げられる。適切なポリカーボネートには、例えばジアルコール(特に芳香族ジアルコール、例えばビスフェノールA及び他のビスフェノール)とホスゲンとから調製されたポリカーボネート、又は炭酸エステルのようなその等価物が含まれる。
【0032】
本発明の特定の実施形態では、焼結可能な熱可塑性粒子は、焼結可能な熱可塑性粒子及び硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分の総重量の20~80%、好ましくは25~60%、最も好ましくは35~50%を構成するのに有効な量で組成物中に存在することができる。異なる焼結可能な熱可塑性粒子の混合物を利用することができる。
【0033】
硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分
本発明の種々の実施形態において、硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分は、焼結可能な熱可塑性粒子及び硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分の総重量の20~80%、好ましくは40~75%、最も好ましくは50~65%を構成するのに有効な量で組成物中に存在することができる。
【0034】
本発明の組成物において利用される硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分は、少なくとも1種の(メタ)アクリレート官能化化合物を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなることを特徴とする。特定の実施形態において、硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分は、2種、3種、4種又はそれ以上の異なる(メタ)アクリレート官能化化合物から構成される。(メタ)アクリレート官能化化合物は、分子当たり1つ以上の(メタ)アクリレート官能基を有する有機化合物として説明することができる。本明細書中で使用されるように、「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリレート官能基及びメタクリレート官能基の両方を指す。本発明に使用するのに適した(メタ)アクリレート官能化化合物は、一般に、エステル基に対して少なくとも1つの炭素-炭素二重結合α、特にフリーラジカル反応又はアニオン性反応、特に紫外線放射又は電子線放射によって開始される反応に関与することができる炭素-炭素二重結合を含むエチレン性不飽和化合物(少なくとも1つのα、β-不飽和エステル部分を含む化合物)として説明することができる。このような反応により、(メタ)アクリレート官能化化合物が重合マトリックス又はポリマー連鎖の一部となる重合又は硬化を生じることができる。本発明の様々な実施形態において、(メタ)アクリレート官能化化合物は、分子当たり1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又はそれ以上の(メタ)アクリレート官能基を含むことができる。本発明で採用する硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分には、異なる数の(メタ)アクリレート基を含む複数の(メタ)アクリレート官能化化合物の組み合わせを利用することができる。
【0035】
したがって、本発明で利用される硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分は、紫外線又は電子線放射への曝露によって開始されるフリーラジカル重合及び/又はアニオン重合(硬化)を受けることができる1種以上の(メタ)アクリレート官能性化合物を含むことができる。本明細書中で使用されるように、「(メタ)アクリレート」という用語は、メタクリレート(-O-C(=O)-C(CH)=CH)官能基及びアクリレート(-O-C(=O)-CH=CH)官能基を指す。(メタ)アクリレート官能化化合物は、オリゴマー若しくはモノマー、又はオリゴマー(複数可)とモノマー(複数可)の組合せであることができる。
【0036】
硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分に使用する(メタ)アクリレート官能化化合物(複数可)は、一旦硬化すると、硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分を焼結物品に硬化させる際に得られる中間物品を変換することに関して、所望又は必要な特性を有するポリマーマトリックスを提供するように選択され得る。例えば(メタ)アクリレート官能化化合物(複数可)は、熱分解及び/又は酸化分解を特に受けやすい1つ以上の部分を含んでいてもよく、それによって、中間物品中に存在する硬化した形態の硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分のマトリックスは、加熱されたとき、及び/又は酸化条件に曝露されたときに分解され、中間生成物から除去され得るより低い分子量及び/又は揮発性の分解生成物を生じる。一実施形態において、硬化したマトリックスは、少なくとも部分的にガス状生成物に変換され、該生成物は次いで、真空をかけることによるような、及び/又はガス流に中間物品上及び/又は中を通過させることによるような、任意の適切な方法によって中間物品から分離される。一旦、ガス状生成物が中間物品からそのように除去されると、以下により詳細に説明されるように、中間物品のさらなる加工(焼成)が実施されて焼結物品を生成し得るが、他の実施形態においては、硬化したマトリックスの分解、硬化したマトリックスから生成されたガス状分解生成物の除去、及び熱可塑性粒子の焼成が同時に起こり得る。硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分の硬化によって得られたマトリックスの分解は、ガス状分解生成物を除去すること及び/又は熱可塑性粒子を焼成して焼結物品を形成することと同時に起こってもよい。別の実施形態では、分解生成物の少なくとも一部は、焼結可能な熱可塑性粒子を溶解しない間に処理された中間物品を洗浄することによって、そのような分解生成物の除去を可能にする溶媒への溶解性を有する比較的低分子量のガス状でない物質である。
【0037】
以下の種類の(メタ)アクリレート官能化化合物、すなわち、脂肪族モノアルコールの(メタ)アクリレートエステル、アルコキシル化脂肪族モノアルコールの(メタ)アクリレートエステル、脂肪族ポリオールの(メタ)アクリレートエステル、アルコキシル化脂肪族ポリオールの(メタ)アクリレートエステル、芳香環含有アルコールの(メタ)アクリレートエステル、及びアルコキシル化芳香環含有アルコールの(メタ)アクリレートエステルのようなモノマー、並びにエポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート(そのアミン及びスルフィド変性誘導体を含む)のようなオリゴマー、並びにそれらの組合せのいずれも、例えば本発明の硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分に使用することができる。
【0038】
適切な(メタ)アクリレート官能化オリゴマーには、例えばポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート(ポリウレタン(メタ)アクリレート又はウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと呼ばれることもある)、及びそれらの組み合わせ、並びにそれらのアミン変性及びスルフィド変性されたものが含まれる。
【0039】
例示的なポリエステル(メタ)アクリレートには、アクリル酸若しくはメタクリル酸、又はその混合物とヒドロキシル基末端ポリエステルポリオールとの反応生成物が含まれる。反応方法は、かなりの濃度の残留ヒドロキシル基がポリエステル(メタ)アクリレート中に残るように行うか、又はポリエステルポリオールのヒドロキシル基の全て又は本質的に全てが(メタ)アクリル化されるように行うことができる。ポリエステルポリオールは、ポリヒドロキシル官能性成分(特にジオール)とポリカルボン酸官能性化合物(特にジカルボン酸及び無水物)との重縮合反応によって製造することができる。ポリエステル(メタ)アクリレートを調製するには、次に、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロイルクロライド、(メタ)アクリル酸無水物等と反応させることにより、ポリエステルポリオールのヒドロキシル基を部分的又は完全にエステル化する。ポリエステル(メタ)アクリレートはまた、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(例えばヒドロキシエチルアクリレート)などのヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートをポリカルボン酸と反応させることによって合成されてもよい。ポリヒドロキシル官能性成分及びポリカルボン酸官能性成分は、それぞれ直鎖状、分枝状、環状脂肪族又は芳香族構造を有することができ、個別に又は混合物として使用することができる。
【0040】
適切なエポキシ(メタ)アクリレートの例には、アクリル酸若しくはメタクリル酸又はその混合物とグリシジルエーテル又はエステルとの反応生成物が含まれる。
【0041】
例示的なポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、アクリル酸若しくはメタクリル酸又はそれらの混合物とポリエーテルポリオールであるポリエーテロールとの縮合反応生成物が挙げられるが、これらに限定されない。適切なポリエーテロールは、エーテル結合及び末端ヒドロキシル基を含む直鎖状又は分枝状物質であることができる。ポリエーテロールは、エポキシド及び他の酸素含有複素環式化合物(例えば、エチレンオキシド、1,2-プロピレンオキシド、ブテンオキシド、テトラヒドロフラン及びそれらの組み合わせ)をスターター分子によって開環重合させることによって調製することができる。適切なスターター分子には、水、ヒドロキシル官能性材料、ポリエステルポリオール及びアミンが含まれる。ポリエーテロールはグリコールのようなジオールの縮合によって得ることもできる。
【0042】
本発明の硬化性組成物に使用できるウレタン(メタ)アクリレート(「ポリウレタン(メタ)アクリレート」と呼ばれることもある)には、(メタ)アクリレート末端基でキャップされた、脂肪族及び/又は芳香族ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール及びポリカーボネートポリオール並びに脂肪族及び/又は芳香族ポリエステルジイソシアネート及びポリエーテルジイソシアネートをベースとするウレタンを含む。
【0043】
種々の実施形態において、ウレタン(メタ)アクリレートは、脂肪族及び/又は芳香族ポリイソシアネート(例えばジイソシアネート、トリイソシアネート)を、OH基末端ポリエステルポリオール(芳香族、脂肪族及び混合脂肪族/芳香族ポリエステルポリオールを含む)、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリジメチシロキサンポリオール若しくはポリブタジエンポリオール又はそれらの組み合わせと反応させて、イソシアネート官能化オリゴマーを形成し、次いで該オリゴマーを、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート又はヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシル官能化オリゴマーと反応させて、末端(メタ)アクリレート基を提供することによって調製することができる。例えばウレタン(メタ)アクリレートは、1分子当たり2つ、3つ、4つ又はそれ以上の(メタ)アクリレート官能基を含むことができる。当技術分野で知られているように、ポリウレタン(メタ)アクリレートを調製するために、他の添加順を実施することもできる。例えばヒドロキシル官能化(メタ)アクリレートを、最初にポリイソシアネートと反応させて、イソシアネート官能化(メタ)アクリレートを得、次いでこれをOH基末端ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリジメチシロキサンポリオール、ポリブタジエンポリオール、又はそれらの組み合わせと反応させることができる。さらに別の実施形態では、ポリイソシアネートを、まず、ポリオール(前述の種類のポリオールのいずれかを含む)と反応させて、イソシアネート官能化ポリオールを得て、これを、その後、ヒドロキシル官能化(メタ)アクリレートと反応させて、ポリウレタン(メタ)アクリレートを得る。あるいは、全ての成分を同時に組み合わせて、反応させてもよい。
【0044】
前述の種類のオリゴマーのいずれも、当該技術分野で既知の手順に従い、アミン又はスルフィド(例えばチオール)で変性することができる。このようなアミン及びスルフィド変性オリゴマーは、例えばベースオリゴマーに存在する比較的少量(例えば、2~15%)の(メタ)アクリレート官能基をアミン(例えば第2級アミン)又はスルフィド(例えばチオール)と反応させて調製することができ、ここで、変性化合物はマイケル付加反応において(メタ)アクリレートの炭素-炭素二重結合に付加する。
【0045】
適切なモノマー(メタ)アクリレート官能化化合物の例示的な例としては、(メタ)アクリル化モノアルコール、(メタ)アクリル化ポリオール(ポリアルコール)、(メタ)アクリル化アルコキシル化モノアルコール及び(メタ)アクリル化アルコキシル化ポリオールが挙げられる。モノアルコール及びポリオールは、脂肪族(1つ以上の環状脂肪族環を含む)であってもよいし、1つ以上の芳香族環(フェノール又はビスフェノールAの場合のように)を含んでもよい。「アルコキシル化」とは、1つ以上の(メタ)アクリレート官能基を導入するためのエステル化に先立ち、モノアルコール又はポリオールの1つ以上のヒドロキシル基に1つ以上のエーテル部分(例えば-CHCH-O-)を導入するように、ベースとなるモノアルコール又はポリオールがエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドのような1つ以上のエポキシドと反応したことを意味する。例えばモノアルコール又はポリオールと反応するエポキシドの量は、モノアルコール又はポリオールのモル当たり約1~約30モルのエポキシドであることができる。適切なモノアルコールの例としては、直鎖、分枝鎖及び環状のC1~C54モノアルコール(第一級、第二級又は第三級アルコールであることができる)が挙げられるが、これらに限定されない。例えばモノアルコールはC1~C7脂肪族モノアルコールであることができる。別の実施形態では、モノアルコールはC8~C24脂肪族モノアルコール(例えばラウリルアルコール、ステアリルアルコール)であってもよい。モノアルコールはまた、ジオール(例えばグリコール)のモノアルキルエーテル、又はポリエチレングリコールのようなポリオキシアルキレングリコールのモノアルキルエーテルであってもよく、ここで、アルキル基は例えばC1~C8アルキル基であることができる。適切なポリオールの例としては、グリコール(ジオール)、例えばエチレングリコール、1,2-又は1,3-プロピレングリコール、又は1,2-、1,3-又は1,4-ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、トリエチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセロールなどのような1分子当たり2つ、3つ、4つ又はそれ以上のヒドロキシル基を含む有機化合物が挙げられる。
【0046】
適切なモノマー(メタ)アクリレート官能化化合物の代表的、しかし非限定的な例は、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、長鎖脂肪族ジ(メタ)アクリレート(例えば式HC=CRC(=O)-O-(CH-O-C(=O)CR’=CH(式中、R及びR’は独立して、H又はメチルであり、mは8~24の整数である)に一般に対応するもの)、アルコキシル化(例えばエトキシル化、プロポキシル化)ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アルコキシル化(例えばエトキシル化、プロポキシル化)ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ドデシルジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、アルコキシル化(例えばエトキシル化、プロポキシル化)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、アルコキシル化(例えばエトキシル化、プロポキシル化)ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルコキシル化(例えばエトキシル化、プロポキシル化)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アルコキシル化(例えばエトキシル化、プロポキシル化)グリセリルトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、2(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アルコキシル化ラウリル(メタ)アクリレート、アルコキシル化フェノール(メタ)アクリレート、アルコキシル化テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレート、アルコキシル化(例えばエトキシル化、プロポキシル化)ノニルフェノール(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、オクチルデシル(メタ)アクリレート(ステアリル(メタ)アクリレートとしても知られている)、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールエチルエーテル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエンジ(メタ)アクリレート、フェノキシエタノール(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールブチルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレート、ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルコキシル化(例えばエトキシル化、プロポキシル化)ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジ-トリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、アルコキシル化(例えばエトキシル化、プロポキシル化)グリセリルトリ(メタ)アクリレート、及びトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、並びにそれらの組合せが挙げられる。
【0047】
中間物品中に存在する残留した焼結可能な熱可塑性粒子から分離することができるガス状及び/又は可溶性生成物に熱分解及び/又は酸化分解され得る硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分の硬化によってポリマーマトリックスを得るために、硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分は、比較的高い割合のオキシアルキレンセグメント(特にポリオキシアルキレンセグメント)を含有するように配合され得る。オキシアルキレンセグメントは一般に、構造式-C-(C)-O-に対応し、ここで炭素原子は脂肪族であり、置換されていても非置換であってもよく、nは2以上の整数である(例えば2~4)。例えばオキシアルキレンセグメントは、-CHCH-O-、-CHCH(CH)O-、-CHCHCH-O-、-CHCHCHCH-O-などであることができる。適切なポリオキシアルキレンセグメントの例としては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン又はポリオキシエチレン/オキシプロピレンセグメントが挙げられるが、これらに限定されない。オキシアルキレン又はポリオキシアルキレンセグメントは、例えばアルコキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート(すなわち、アルキルエーテル末端基及び(メタ)アクリレート末端基を含むポリエチレングリコール)、アルコキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート(すなわち、アルキルエーテル末端基及び(メタ)アクリレート末端基を含むポリプロピレングリコール)、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(すなわち、2つの(メタ)アクリレート末端基を含むポリエチレングリコール)、アルコキシル化ビス-フェノールジ(メタ)アクリレート(すなわち、ビス-フェノールAのような、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドのような1種以上のアルキレンオキシドとの反応によってアルコキシル化され、その後(メタ)アクリル化されたビスフェノール)及びアルコキシル化脂肪族ポリアルコール(メタ)アクリレート(すなわち、1種類以上のアルキレンオキシドと反応した後、部分的又は完全に(メタ)アクリル化されたグリコール、グリセロール、ペンタエリスリトール、トリメチオールプロパン、糖アルコール、糖などの脂肪族ポリアルコール)からなる群から選択される1種以上の(メタ)アクリレート官能化モノマー又はオリゴマーによって供給され得る。本発明の様々な実施形態では、硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分は、合計で少なくとも10重量%、少なくとも20重量%、少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、少なくとも50重量%又は少なくとも60重量%の[ポリ]オキシアルキレンセグメントから構成されてもよい。一般に、(メタ)アクリレート樹脂成分が光重合などによって硬化可能であるためには、(メタ)アクリレート樹脂成分が[ポリ]オキシアルキレンセグメント(例えば(メタ)アクリレート官能基)以外の構造部分をある程度含有しなければならないことを認識し、(メタ)アクリレート樹脂成分から形成される硬化したマトリックスの分解及び除去を容易にするためには、[ポリ]オキシアルキレンセグメントの含有量がより高いことが好ましい。
【0048】
本発明の好ましい実施形態によれば、硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分の組成は、硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分が25℃で均質な(単相の)液体であり、25℃でのその粘度が過剰でないように選択される。硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分を比較的低い粘度を有するように配合することは、硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分と焼結可能な熱可塑性粒子との混合を容易にし、本発明に従って容易に取り扱うことができ、さらに加工することができる得られた組成物を提供するのに役立つ。本発明の種々の実施形態において、例えば硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分は、25℃で好ましくは1500センチポアズ未満、より好ましくは800センチポアズ未満、又は最も好ましくは500センチポアズ未満である粘度を有する。粘度はBrookfield粘度計を用いて測定することができる。
【0049】
光開始剤
硬化性組成物が紫外線などの光を使用して硬化される場合、一般に、組成物を1種以上の光開始剤を含むように配合することが望ましい。しかし、電子線又は化学的硬化が用いられる場合、硬化性組成物は光開始剤を含有する必要はない。
【0050】
光開始剤とは、光の吸収により光反応を起こし、活性種を生成する化合物である。次いで、生成される反応種は、硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分の反応性成分の重合を開始する。一般的に言えば、硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分中に存在する化合物が炭素-炭素二重結合を含む場合、このような重合(硬化)は、このような炭素-炭素二重結合の反応を伴う。活性種は、本発明の様々な実施形態において、例えばフリーラジカル種又はアニオン種であることができる。適切な光開始剤としては、例えばアルファ-ヒドロキシケトン、フェニルグリオキシレート、ベンジルジメチルケタール、アルファ-アミノケトン、モノ-アシルホスフィン、ビス-アシルホスフィン、メタロセン、ホスフィンオキシド、ベンゾインエーテル及びベンゾフェノン並びにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0051】
光開始剤が組成物中に使用される場合、それは、一般に、硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分の総重量に基づいて約15重量%までの総濃度(例えば硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分の総重量に基づいて約0.1~約5重量%の濃度)で存在することができる。
【0052】
他の成分
本発明の組成物は、任意に、前記の成分に加えて1種以上の成分から構成されてもよい。例えば組成物は、組成物が長時間静置される場合、焼結可能な熱可塑性粒子の沈降を防止又は遅延させるように、組成物の均質性を維持することを補助する少なくとも1種の安定剤を含むことができる。すなわち、このような安定剤は、硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分の液体マトリックス中の焼結可能な熱可塑性粒子の比較的均一な懸濁液又は分散体として組成物を維持するのを助ける。界面活性剤のような安定剤を使用することができ、特定の熱可塑性物質に適合するように当技術分野で既知の特別な界面活性剤パッケージを使用することもできる。
【0053】
さらに、流動促進剤又は非反応性溶媒を、例えば1~15重量%添加し、樹脂粘度を低下させ、焼結可能な熱可塑性粒子のより高い重量%の充填を可能にすることができる。次に、最終加工の前に、蒸発又は溶媒抽出により、硬化した中間物品から溶媒を除去することができる。
【0054】
焼結物品の形成方法
本発明の組成物は焼結物品を形成するのに有用である。このような焼結物品は、一般に、例えば、以下のステップ、すなわち、
a) 焼結可能な熱可塑性粒子及び硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分から構成される上記のいずれかの実施形態に従った組成物を硬化させて、硬化した形態の、硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分のマトリックスによって結合された焼結可能な熱可塑性粒子から構成される中間物品を形成し、及び
b) 中間物品を、マトリックスの少なくとも一部を除去し、焼結可能な熱可塑性粒子を焼結するために有効な条件に晒し、それにより焼結可能な熱可塑性粒子を融合させて焼結物品を形成すること
を含む方法により得ることができる。
【0055】
硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分は、フリーラジカル重合又は他の種類の重合(例えばアニオン重合又はカチオン重合)により、硬化(部分的又は完全な硬化を含むことができる)させることができる。焼結可能な熱可塑性粒子及び硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分を含む組成物は、任意の適切な又は適切な物理的形態、例えば基材上の層又は型によって規定される形状の形態であってもよい。特定の実施形態において、組成物は、25℃において自由に流動する液体である。他の実施形態では、組成物は25℃でペースト状又は半固体である。
【0056】
本発明に従った硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分の硬化は、フリーラジカル重合、カチオン重合及び/又はアニオン重合などの任意の適切な方法によって実施することができる。硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分には、フリーラジカル開始剤(例えば光開始剤、過酸化物開始剤)などの1種以上の開始剤が存在してもよい。硬化前に、組成物は、例えば噴霧、ナイフコーティング、ロールコーティング、流延、ドラムコーティング、浸漬、押出など及びそれらの組合せによる、任意の既知の従来の方法で基材表面に塗布することができる。そうしたい場合には、その組成物は、型、空洞内などに配置することをはじめとして、何らかの方法で制約又は成形することもできる。転写法を用いた間接塗布も用いることができる。基材は、金属基材又はプラスチック基材のような任意の市販の基材であることができる。基材は、金属、紙、厚紙、ガラス、ポリオレフィン、ポリカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、及びそれらのブレンドのような熱可塑性物質、複合材料、木材、皮革並びにそれらの組み合わせを含むことができる。
【0057】
硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分は、少なくとも部分的な硬化を達成するのに有効な条件に付すことができる。例えば(メタ)アクリレート樹脂成分の少なくとも25%、又は少なくとも50%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%の硬化が、本発明の様々な実施形態において達成され得る。本明細書で使用されるように、「硬化の%」という用語は、出発硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分中の反応した(メタ)アクリレート官能基の割合を指し、このような反応の程度は、硬化条件に供される前後の、このような(メタ)アクリレート官能基中に存在する炭素-炭素二重結合の濃度の測定を含む分光学的方法によって計算することができる。
【0058】
一般的に言えば、採用した加工温度で寸法的に安定(例えば室温又は15℃~30℃で寸法的に安定)な中間物品を提供するのに有効な程度まで、硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分の硬化を実施することが望ましい。特定の実施形態では、硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分は、硬化中に、25℃で液体状態からゲル又は半固体(比較的軟らかい)状態へ変化する。他の実施形態において、硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分は、硬化中に、25℃で液体状態から固体(比較的硬い)状態に変化する。
【0059】
硬化は、硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分にエネルギーを供給すること、例えば組成物を加熱すること、及び/又は組成物を可視光又は紫外線、赤外線放射、及び/又は電子線放射のような放射線源に曝露することによって、加速又は促進され得る。したがって、硬化したマトリックスは、硬化によって形成された、硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分の反応生成物とみなすことができる。このようにして得られた中間生成物は、硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分の硬化により得られた硬化マトリックスを含み、その内部に焼結可能な熱可塑性粒子が含有されていることを特徴とすることができる。焼結可能な熱可塑性粒子は、互いに少なくとも部分的に接触しているか、又は硬化したマトリックス内に埋め込まれ、硬化したマトリックスによって互いに隔てられている別個の粒子であってもよい。
【0060】
本発明で使用される硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分は、LED(発光ダイオード)による硬化(例えばUV LED装置からの放射線を使用するUV LED硬化)を使用して硬化可能であるか、及び/又は高速塗布(三次元印刷など)で使用可能であるように配合されることが好ましい。
【0061】
本発明に従った硬化性組成物の複数の層を基材表面に塗布することができ、複数の層は(例えば単一の放射線量に曝露することによって)同時に硬化されてもよく、又は硬化性組成物の追加の層の塗布前に各層が連続的に硬化されてもよい。
【0062】
本明細書に記載される組成物は、3D印刷用樹脂配合物、すなわち、3D印刷技術を用いて三次元物品の製造に使用するために意図された組成物として有用である。このような三次元物品は、独立/自立的であることができ、組成物の硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分部分を反応させるために硬化された本発明に従った組成物から本質的になるか、又はこれからなることができる。
【0063】
本発明に従った組成物を用いて三次元物品を作製する方法は、以下のステップ、すなわち、
a) 本発明に従った組成物の第1の層を表面に塗布するステップ、
b) 第1の層を(完全に又は部分的に)硬化させて、硬化した第1の層を提供するステップ、
c) 前記組成物の第2の層を硬化した第1の層上に塗布するステップ、
d) 第2の層を(完全又は部分的に)硬化させて、硬化した第1の層に接着した硬化した第2の層を提供するステップ、及び
e) ステップc)及びd)を所望の回数を繰り返して、三次元物品を構築するステップ
を含むことができる。
【0064】
それによって得られる三次元物品は、次いで、本明細書の別の個所に記載される技術のいずれかを用いて焼結物品に変換され得る。
【0065】
硬化ステップは、任意の適切な手段(場合によっては組成物中に存在する成分(特に硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分)に依存する)によって実施され得るが、本発明の特定の実施形態において、硬化は、硬化される層を有効量の放射線(例えば電子線放射、UV放射、可視光など)に曝露することによって達成される。
【0066】
したがって、様々な実施形態において、本発明は、以下のステップ、すなわち、
a) 本発明に従った液体形態の組成物の第1の層を表面に塗布するステップ、
b) 第1の層を化学線に像様に曝露して、第1の曝露された撮影断面を形成し、ここで放射線は、曝露領域内の層に存在する硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分の少なくとも部分的硬化(例えば、少なくとも25%又は少なくとも50%又は少なくとも80%又は少なくとも90%の硬化)を引き起こすのに十分な強度及び持続時間を有するステップ、
c) 前記組成物の追加の層を事前に曝露された撮影断面上に塗布するステップ、
d) 追加の層を化学線に像様に曝露して、追加の撮影断面を形成し、放射線は、曝露領域の追加の層に存在する硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分の少なくとも部分的な硬化(例えば、少なくとも30%又は少なくとも50%又は少なくとも80%又は少なくとも90%の硬化)を引き起こし、かつ事前に曝露された撮影断面への追加の層の接着を引き起こすのに十分な強度及び持続時間を有するステップ、
e)ステップc)及びd)を所望の回数繰り返すことで、三次元物品を構築するステップ
を含む方法を提供する。
【0067】
組成物の硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分の硬化によって製造された中間物品(例えば上記のいずれかの手順によって得られた三次元物品)は、硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分の硬化によって形成されたマトリックスの少なくとも一部を除去し、焼結可能な熱可塑性粒子を焼結するために有効な条件に晒され、それによって焼結可能な熱可塑性粒子が融合して焼結物品が形成される。
【0068】
本発明の一実施形態において、中間物品は、硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分から生成される硬化したマトリックスの少なくとも部分的分解を引き起こすのに有効な温度に加熱される。しかし、そのような温度は、焼成性熱可塑性粒子の著しい分解を避けるように選択されるべきである。すなわち、硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分は、一旦硬化すると、熱可塑性粒子の分解温度よりも低い温度で分解するように配合される。中間物品の処理中に酸化剤及び/又は分解触媒を提供することは、所与の温度で硬化したマトリックスの分解速度を加速するのに役立つか、又はそのような酸化剤又は分解触媒が存在しない場合に可能となるよりも低い温度で分解を進行させるのに役立つことができる。例えば中間物品は、酸素から構成される雰囲気中で加熱されてもよい。また、加熱チャンバー内の空気を循環又は除去して、酸化又は分解の速度をさらに上げることもできる。硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分は、硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分から得られる硬化したマトリックスの分解を促進することができる1種以上の金属種を含むことができる。
【0069】
本発明の特定の実施形態によれば、硬化性(メタ)アクリレート樹脂組成物から得られる硬化したマトリックスの分解温度は、焼結可能な熱可塑性粒子の分解温度未満である。本明細書で用いられるように、「分解温度」とは、材料(例えば、硬化したマトリックス又は焼結可能な熱可塑性粒子)の10mgの試料が、熱重量分析(TGA)(温度を10℃/分の速度で上昇させ、空気雰囲気下で加熱を行う)によって測定されるように、初期重量において50%の減少を示す温度を意味する。好ましい実施形態において、硬化性(メタ)アクリレート樹脂組成物の硬化したマトリックスの分解温度は、焼結可能な熱可塑性粒子のTm(融点)(熱可塑性物質が半結晶性又は結晶性である場合)又は焼結可能な熱可塑性粒子のTg(ガラス転移温度)(熱可塑性物質が非晶質である場合)よりも低く、好ましくは少なくとも25℃未満、又は少なくとも50℃低い。
【0070】
一般的に言えば、硬化したマトリックスの分解により、硬化したマトリックスの分子量よりも低い分子量を有する分解生成物が生成する。一実施形態において、硬化したマトリックスの少なくとも一部は、硬化したマトリックスを分解するために使用される条件下でガスとして存在するのに十分に揮発性であり、このため中間物品からのそれらの除去が容易になる分解生成物に変換される。別の実施形態において、分解生成物は、中間物品又は焼結物品を溶媒と接触させることによって、洗浄又は中間物品又は焼結物品から溶出することができるように、溶媒(例えば有機溶媒)中で十分に可溶性である。溶媒は、熱可塑性粒子の溶媒ではない物質(すなわち熱可塑性粒子が溶媒中で有意な程度に溶けない)であるように選択されるべきである。溶媒は、可溶性分解生成物の除去を容易にするために、中間物品又は焼結物品と接触する間に加熱されてもよい。
【0071】
中間物品中の熱可塑性粒子又は組成物の中間物品への変換の間の熱可塑性粒子の焼結は、熱可塑性粒子の完全な溶融を避けながら、熱可塑性粒子(熱可塑性粒子の表面の少なくとも一部に硬化した形態の残留(メタ)アクリレート樹脂成分及び/又はそれから発生する分解生成物を有する場合がある)を一緒に融合させるのに有効な条件下で実施され得る。例えば中間物品は、熱可塑性粒子の融点温度より最大で25℃低い温度まで加熱してもよい。一実施形態において、そのような加熱は、中間物品がその中に置かれる型において実施され得る。中間物品は、このような加熱の間、例えば型内で圧縮を受けることができる。例えば焼結物品は、中間物品に含まれる焼結可能な熱可塑性粒子を、高温及び圧力条件下で融合させることにより製造することができる。加熱すると、中間物品内に含まれる熱可塑性粒子が接触点で融合し、固化体(特定の実施形態では、多孔質であってもよい)を生成することができる。特定の実施形態によると、熱可塑性粒子は、温度が高温からほぼ環境レベルまで低下するにつれて融合が起こる接触点でのわずかな軟化を除いてその形状を保持する。
【0072】
特定の実施形態によると、焼結は、物体を適切な焼結温度にし、一定期間保持した後、それをゆっくりと冷却することによって(熱可塑性物質が少なくとも部分的に結晶化するか、又は完全に固化する場合、熱可塑性物質を再結晶化させることを可能にする)行うことができる。焼結温度は、一般に熱可塑性物質の融点に関係するが、材料、流速、結晶化温度及び他の因子に応じて、熱可塑性物質の融点を下回るか、同じか、又はわずかに上回ることができる。本発明では、既知のもののようなレーザー焼結技術を使用することができる。
【0073】
本発明の様々な非限定的態様は、以下のように要約され得る。
【0074】
態様1:焼結可能な熱可塑性粒子及び硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分から構成されるか、それらから本質的になるか、又はそれらからなる組成物であって、該焼結可能な熱可塑性粒子が、25℃で該硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分に不溶である、組成物。
【0075】
態様2:焼結可能な熱可塑性粒子が、ポリアリールエーテルケトン、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート及びフルオロポリマーからなる群より選択される少なくとも1種の熱可塑性物質から構成されるか、又はそれから本質的になるか、又はそれからなる、態様1に記載の組成物。
【0076】
態様3:焼結可能な熱可塑性粒子が、250℃を超える融点、200℃を超えるガラス転移温度、又は250℃を超える融点及び200℃を超えるガラス転移温度を有する、態様1に記載の組成物。
【0077】
態様4:焼結可能な熱可塑性粒子が、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン及びポリイミドからなる群から選択される少なくとも1種の熱可塑性物質から構成されるか、又はそれから本質的になるか、又はそれからなる、態様3に記載の組成物。
【0078】
態様5:焼結可能な熱可塑性粒子が、150℃を超える融点、100℃を超えるガラス転移温度、又は150℃を超える融点及び100℃を超えるガラス転移温度を有する、態様1に記載の組成物。
【0079】
態様6:焼結可能な熱可塑性粒子が、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン及びポリカーボネートからなる群から選択される少なくとも1種の熱可塑性物質を含む、態様5に記載の組成物。
【0080】
態様7:焼結可能な熱可塑性粒子が、乾燥時に走査型電子顕微鏡によって測定される10~100ミクロンの体積中央直径(Dv50)を有する、態様1~6のいずれかに記載の組成物。
【0081】
態様8:硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分が光硬化性である、態様1~7のいずれかに記載の組成物。
【0082】
態様9:硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分が、1種以上の(メタ)アクリレート官能化モノマー又はオリゴマーから構成されるか、それから本質的になるか、又はそれからなる、態様1~8のいずれかに記載の組成物。
【0083】
態様10:硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分が、1つ以上のポリオキシアルキレンセグメントを含む1種以上の(メタ)アクリレート官能化モノマー又はオリゴマーから構成されるか、それから本質的になるか、又はそれからなる、態様1~9のいずれかに記載の組成物。
【0084】
態様11:硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分が、1つ以上のポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン又はポリオキシエチレン/オキシプロピレンセグメントを含む1種以上の(メタ)アクリレート官能化モノマー又はオリゴマーから構成されるか、それから本質的になるか、又はそれからなる、態様1~10のいずれかに記載の組成物。
【0085】
態様12:硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分が、アルコキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アルコキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、アルコキシル化ビス-フェノールジ(メタ)アクリレート及びアルコキシル化脂肪族ポリアルコール(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種以上の(メタ)アクリレート官能化モノマー又はオリゴマーから構成されるか、それから本質的になるか、又はそれからなる、態様1~11のいずれかに記載の組成物。
【0086】
態様13:硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分が、25℃で1500センチポアズ未満の粘度を有する、態様1~12のいずれかに記載の組成物。
【0087】
態様14:硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分が、25℃で800センチポアズ未満の粘度を有する、態様1~13のいずれかに記載の組成物。
【0088】
態様15:硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分が、少なくとも1種の光開始剤をさらに含む、態様8~12のいずれかに記載の組成物。
【0089】
態様16:硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分が、25℃で均質な液体である、態様1~15のいずれかに記載の組成物。
【0090】
態様17:硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分が、硬化した場合、焼結可能な熱可塑性粒子の融点より低いか、又は焼結可能な熱可塑性粒子が融点を有しない場合には、焼結可能な熱可塑性粒子のガラス転移温度より低い分解温度を有する、態様1~16のいずれかに記載の組成物。
【0091】
態様18:組成物が、焼結可能な熱可塑性粒子及び硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分の総重量に基づいて、25~60重量%の焼結可能な熱可塑性粒子及び40~75重量%の硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分から構成される、態様1~17のいずれかに記載の組成物。
【0092】
態様19:焼結物品を形成する方法であって、以下、すなわち、
a) 態様1~18のいずれかに従った組成物を硬化させて、硬化した形態の硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分のマトリックスによって結合された焼結可能な熱可塑性粒子から構成される中間物品を形成し、及び
b) 中間物品を、マトリックスの少なくとも一部を除去し、焼結可能な熱可塑性粒子を焼結するのに有効な条件に晒し、それにより焼結可能な熱可塑性粒子を融合させて焼結物品を形成すること
を含む、方法。
【0093】
態様20:ステップa)における硬化が、硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分に放射線を照射することによって行われる、態様19に記載の方法。
【0094】
態様21:ステップb)における条件が、焼結可能な熱可塑性粒子の分解を回避しながら、硬化した形態の硬化性(メタ)アクリレート樹脂組成物を少なくとも部分的に分解するのに有効な温度で中間物品を加熱することを含む、態様19又は20に記載の方法。
【0095】
態様22:中間物品の加熱の後に、中間物品が硬化した形態の硬化性(メタ)アクリレート樹脂組成物の分解生成物を含み、中間体を分解生成物の少なくとも一部を除去するのに有効な溶媒と接触させる、態様21に記載の方法。
【0096】
態様23:ステップb)における条件が、中間物品を圧縮することを含む、態様19~22のいずれかに記載の方法。
【0097】
態様24:ステップb)における条件が、中間物品をレーザー光線に曝露することを含む、態様19~23のいずれかに記載の方法。
【0098】
態様25:方法が三次元印刷を含む、態様19~24のいずれかに記載の方法。
【0099】
態様26:ステップb)において、マトリックスの少なくとも一部の除去及び焼結可能な熱可塑性粒子の焼結が同時に行われる、態様19~25のいずれかに記載の方法。
【0100】
態様27:ステップb)において、マトリックスの少なくとも一部の除去が、焼結可能な熱可塑性粒子の焼結前に行われる、態様19~26のいずれかに記載の方法。
【0101】
態様28:焼結物品が熱可塑性である、態様19~27のいずれかに記載の方法。
【0102】
態様29:焼結物品を作製する方法であって、以下、すなわち、
a) 表面上に態様1~18のいずれかによる組成物の第1の層を塗布し、
b) 第1の層を硬化させて硬化した第1の層を提供し、
c) 硬化した第1の層上に該組成物の第2の層を塗布し、
d) 第2の層を硬化させて硬化した第1の層に接着した硬化した第2の層を提供し、
e) ステップc)及びd)を所望の回数繰り返し、硬化した形態の硬化性(メタ)アクリレート樹脂成分のマトリックスにより結合した焼結可能な熱可塑性粒子から構成される三次元物品を構築し、及び
f) 三次元物品を、マトリックスの少なくとも一部を除去し、焼結可能な熱可塑性粒子を焼結するために有効な条件に晒し、それにより焼結可能な熱可塑性粒子を融合させて焼結物品を形成すること
を含む、方法。
【0103】
態様30:デジタル光投影、ステレオリソグラフィー又はマルチジェット印刷を用いて、三次元印刷物を作製する方法であって、態様1~18のいずれかに従った組成物を層ごとに照射して、三次元印刷物品を形成することを含む方法。
【0104】
この明細書の中で、実施形態は、明確で簡潔な明細書を書くことを可能にする方法で記載されているが、本発明から逸脱することなく、実施形態を様々に組み合わせたり、分離したりすることができることが意図され、認識されるであろう。例えば本明細書に記載される全ての好ましい特徴は、本明細書に記載される本発明の全ての態様に適用可能であることが認識されるであろう。
【0105】
いくつかの実施形態において、本明細書の発明は、組成物又は組成物を用いる方法の基礎的及び新規な特徴に実質的に影響を及ぼさないあらゆる要素又は方法ステップを除外するものとして解釈することができる。さらに、いくつかの実施形態において、本発明は、本明細書に明記されていないあらゆる要素又は方法ステップを除外するものと解釈することができる。
【0106】
本発明は、具体的な実施形態を参照して本明細書に示され、記載されているが、本発明は示された詳細に限定されることを意図するものではない。むしろ、特許請求の範囲の均等物の領域及び範囲内の詳細において、本発明から逸脱することなく、様々な修正を加えることができる。
【実施例0107】
[実施例1]
35重量部(pbw)のポリエーテルケトンケトン(PEKK)粉末(T:I比=70:30、Dv50=60ミクロン)を1pbwの光開始剤と共に65pbwのポリエチレングリコールジメチル酸(SR 210A、Sartomer製)に添加した。得られた組成物をシャーレー上で約1cmの厚さでバルク硬化した。硬化した試料片を破砕し、秤量し、次いで300℃のオーブンに4時間置いた。試料をオーブンから取り出し、再度秤量した。加熱試料の質量は元の質量のわずか50%であった。これは、熱処理後の試料がポリエチレングリコールジメタクリレートに由来する硬化マトリックス約30重量%及びPEKK約70%を含むことを意味する(すなわち、ポリエチレングリコールジメタクリレートに由来する硬化したマトリックスの大部分は、オーブンの加熱ステップの結果として除去された)。
【0108】
[実施例2]
35重量部(pbw)のポリエーテルケトンケトン(PEKK)粉末(T:I比=70:30、Dv50=60ミクロン)を1pbwの光開始剤及びPEKK相溶性の界面活性剤と共に65pbwのポリエチレングリコールジメタクリレート(SR 210A、Sartomer製)に添加する。上記組成物を用いて、小さい部分(2cm×1cm×0.5cm)をEmber 3D印刷機上で印刷する。3D印刷部分を秤量し、325℃のオーブンに4時間置く。ポリエチレングリコールジメタクリレートに由来する硬化したマトリックスの大部分の損失(分解及び揮発による)が予想され、80重量%を超えるPEKKを含有する部分が残る。