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特開2024-54285抗癌活性が増大されたナチュラルキラー細胞、及びその免疫治療用途
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054285
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】抗癌活性が増大されたナチュラルキラー細胞、及びその免疫治療用途
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/17 20150101AFI20240409BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240409BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240409BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20240409BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20240409BHJP
【FI】
A61K35/17
A61P35/00
A61P35/02
A61P35/04
C12N5/0783
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024018463
(22)【出願日】2024-02-09
(62)【分割の表示】P 2021562040の分割
【原出願日】2020-04-17
(31)【優先権主張番号】10-2019-0045145
(32)【優先日】2019-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】518017901
【氏名又は名称】チャ バイオテック カンパニー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】521454571
【氏名又は名称】チャ バイオラブ カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベク,ヨン ソク
(72)【発明者】
【氏名】リ,イン ジ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】抗癌活性が増大されたナチュラルキラー細胞、前記ナチュラルキラー細胞またはその集団を有効成分として含む細胞治療剤または薬学的組成物、並びに癌を治療する方法を提供する。
【解決手段】抗癌活性が増大されたナチュラルキラー細胞、及びその免疫治療用途に係り、一様態によるナチュラルキラー細胞によれば、膠芽腫を含む癌に対し、有意の特定受容体の相対的MFIが増大されており、効果的な抗癌免疫治療が可能であるという効果がある。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)ないし下記(e)のうちから選択される1以上の特性を有する分離された、ナチュラルキラー細胞:
(a)PBMCの培養0日目対比で、NKG2Dの相対的MFI値が、1.2倍ないし12倍増大したこと、
(b)PBMCの培養0日目対比で、NKp30の相対的MFI値が、1.5倍ないし15倍増大したこと、
(c)PBMCの培養0日目対比で、NKp44の相対的MFI値が、12倍ないし22倍増大したこと、
(d)PBMCの培養0日目対比で、ITGA1の相対的MFI値が、1.8倍ないし25倍増大したこと、及び
(e)PBMCの培養0日目対比で、ITGA2の相対的MFI値が、1.4倍ないし6倍増大し、
前記相対的MFIは、下記数式1によって定義される:
【数1】
【請求項2】
前記(a)の相対的MFI値が、3倍ないし6倍増大したこと、
前記(b)の相対的MFI値が、3倍ないし6倍増大したこと、
前記(c)の相対的MFI値が、12倍ないし18倍増大したこと、
前記(d)の相対的MFI値が、6倍ないし10倍増大したこと、及び
前記(e)の相対的MFI値が、2倍ないし4倍増大した、請求項1に記載のナチュラルキラー細胞。
【請求項3】
10ないし140のMFI値のCD16、20ないし160のMFI値のLFA-1、5ないし25のMFI値のNKG2D、5ないし20のMFI値のNKp30、12ないし25のMFI値のNKp44、4ないし25のMFI値のITGA1、及び2ないし10のMFI値のITGA2のうちから選択される1以上の特性を有する、請求項1に記載のナチュラルキラー細胞。
【請求項4】
20ないし180のMFI値のCD2、0.1ないし1.5のMFI値のCD27、1ないし10のMFI値のCD69、2ないし12のMFI値のCD226、2ないし8のMFI値のNKp46、0.1ないし4のMFI値のCD160、0.1ないし4のMFI値のKIR2DL1、0.1ないし5のMFI値のKR2DL3、0.1ないし4のMFI値のKIR3DL1、0.4ないし16のMFI値のNKG2A、0.2ないし12のMFI値のCD161、0.3ないし3のMFI値のCCR3、0.5ないし4のMFI値のCCR5、0.8ないし6のMFI値のCCR6、0.4ないし5のMFI値のCXCR3、0.4ないし5のMFI値のCXCR1、0.1ないし3のMFI値のCXCR2及び1ないし16のMFI値のITGB7のうちから選択される1以上の特性をさらに有する、請求項1に記載のナチュラルキラー細胞。
【請求項5】
下記(f)の特性をさらに有する、請求項1に記載のナチュラルキラー細胞:
(f)PBMCの培養0日目対比で、培養14日目に、KIR2DS4遺伝子の発現量が、10倍ないし50倍である。
【請求項6】
KIR2DS1、KIR2DS2、KIR2DS3、KIRDS4、CXCR1、CXCR2、CXCR3、CCR3、CCR5、CCR6、PSA-NCAM、ネスチン、チロシンヒドロキシラーゼ、CD147、CD127、CD15、CD31、CD146、CD49c+、CD107a、NKG2A、CD45、CD44、CD140a、CD87、CD11b、CD10及びCD80のうちから選択されたいずれか1つの特性を有する、請求項1に記載のナチュラルキラー細胞。
【請求項7】
前記ナチュラルキラー細胞は、細胞集団の50%ないし90%がNKp44を発現するか、細胞集団の50%ないし90%がKIR2DS2を発現するか、あるいは細胞集団の60ないし100%がNKG2Dを発現する、請求項1に記載のナチュラルキラー細胞。
【請求項8】
前記ナチュラルキラー細胞は、PBMCからの培養時、PDGF-AA、PDGF-BB、PDGF-CC、PDGF-DDまたはPDGF-ABで処理された、請求項1に記載のナチュラルキラー細胞。
【請求項9】
請求項1ないし8のうちいずれか1項に記載のナチュラルキラー細胞またはその細胞集団を、有効成分として含む、癌予防用または治療用の薬学的組成物。
【請求項10】
前記ナチュラルキラー細胞は、免疫活性、血管脳障壁透過、細胞移動促進または自己寛容を抑制する、請求項9に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
前記癌は、肺癌、喉頭癌、胃癌、大腸癌、直腸癌、肝臓癌、胆嚢癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、子宮癌、子宮頸部癌、前立腺癌、腎臓癌、皮膚癌、骨癌、筋肉癌、脂肪癌、纎維細胞癌、血液癌、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫及び神経膠腫からなる群のうちから選択された1種以上である、請求項9に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
前記神経膠腫は、星細胞腫、乏突起膠細胞腫、混合神経膠腫または上衣細胞種である、請求項11に記載の薬学的組成物。
【請求項13】
前記星細胞腫は、膠芽腫、抗癌剤耐性膠芽腫または再発性膠芽腫である、請求項12に記載の薬学的組成物。
【請求項14】
前記癌は、MICA(MHC class I polypeptide-related sequence A)またはPDFG-DD(platelet-derived growth factor-DD)を分泌するか、あるいは発現する、請求項9に記載の薬学的組成物。
【請求項15】
請求項1ないし8のうちいずれか1項に記載のナチュラルキラー細胞またはその集団の有効量を、それを必要とする個体に投与する段階を含む癌を治療する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗癌活性が増大されたナチュラルキラー細胞、及びその免疫治療用途に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫細胞治療法に利用されているナチュラルキラー細胞(natural killer cell;NK細胞とも称する)は、形態学的に、細胞質に大きい顆粒を有する細胞であり、血液内リンパ球の約5~15%を占める。これまで明らかにされたナチュラルキラー細胞の主要機能としては、腫瘍細胞を殺害することができる能力、ウイルス感染細胞に対する細胞毒性、及び細菌と真菌とを殺害する能力などがある。従って、ナチュラルキラー細胞は、抗腫瘍、免疫、及び微生物に対する保護免疫において、重要な役割を行うと期待される。
【0003】
ナチュラルキラー細胞は、免疫受容体(immune receptor)として、表面受容体を有している。ナチュラルキラー細胞には、B細胞のBCR、T細胞のTCR(T cell receptor)のような優性(dominant)受容体が存在しないために、他の免疫細胞と区別される活性化メカニズムが存在すると予測される。また、ナチュラルキラー細胞は、非特異的に癌を殺傷することができる能力がある細胞と知られている。そのようなナチュラルキラー細胞の殺害能は、リンフォカイン活性殺生細胞(LAK:lymphokine activated killer cell)及び腫瘍浸潤リンパ球(TIL:tumor infiltration lymphocytes)と共に、固形癌治療に活用されたり、または供与者リンパ球注入(donor lymphocyte infusion)を介する免疫治療法(Tilden. A. B. et al., J. Immunol., 136)を行うことにより、骨髄移植時や臓器移植時に生じる拒絶反応を防止するための新たな細胞治療法に応用されたりもする。
【0004】
一方、神経膠腫(glioma)は、原発性脳腫瘍(primary brain tumor)の60%を占める腫瘍であり、現在までも、放射線治療以外には、特別な治療法がない悪性腫瘍である。また、悪性に分類される膠芽腫(glioblastoma)は、他の癌と比較し、放射線及び抗癌剤の治療に対する抵抗性が非常に高く、一応診断されれば、期待生存期間が1年に過ぎない。悪性膠芽腫は、全体脳腫瘍の12~15%を占め、脳に生じる単一腫瘍のうち、最も多く生じる腫瘍である。
【0005】
膠芽腫を含む癌患者のための既存治療オプションにもかかわらず、効能が増進され、自己寛容を克服することができる治療法が研究されており、そのために、特定免疫受容体の活性を増大させたナチュラルキラー細胞の開発が必要となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一様態は、特定範囲の相対的MFI(mean fluorescence intensity)値の受容体発現特性を有する抗癌活性が増大されたナチュラルキラー細胞を提供するものである。
【0007】
他の様態は、前記ナチュラルキラー細胞またはその集団を、有効成分として含む細胞治療剤または薬学的組成物を提供するものである。
【0008】
さらに他の様態は、前記ナチュラルキラー細胞またはその集団の有効量を、それを必要とする個体に投与する段階を含む癌を治療する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一様態は、特定範囲の相対的MFI(mean fluorescence intensity)値の受容体発現特性を有する抗癌活性が増大されたナチュラルキラー細胞を提供する。
【0010】
本明細書において、用語「ナチュラルキラー細胞(natural killer cells)」または「NK細胞」は、先天性免疫系の主要成分を構成する細胞毒性リンパ球であり、大型顆粒リンパ球(LGL:large granular lymphocyte)と定義され、リンパ系前駆細胞(CLP:common lymphoid progenitor、CLP)生成のBリンパ球及びTリンパ球から分化された第3の細胞を構成する。前記「ナチュラルキラー細胞」または前記「NK細胞」は、任意の組織供給源(source)に由来するさらなる変形がないナチュラルキラー細胞を含み、成熟したナチュラルキラー細胞だけではなく、ナチュラルキラー前駆細胞を含んでもよい。前記ナチュラルキラー細胞は、インターフェロンまたは大食細胞由来サトカインに対する反応で活性化され、ナチュラルキラー細胞は、「活性化受容体」及び「抑制性受容体」と標識される、細胞の細胞毒性活性を制御する2種類型の表面受容体を含む。ナチュラルキラー細胞は、任意の供給源、例えば、胎盤組織、胎盤貫流液、臍帯血、胎盤血、末梢血、脾臓、肝臓などからの造血細胞、例えば、造血幹細胞または造血前駆細胞、胎盤由来または臍帯由来の幹細胞、誘導万能幹細胞、またはそこから分化された細胞からも生成される。
【0011】
前記ナチュラルキラー細胞は、例えば、末梢血液単核細胞に由来するものでもある。用語「末梢血液単核細胞(PBMC:peripheral blood mononuclear cells)」は、哺乳動物、望ましくは、ヒト末梢血液から分離された単核の細胞であり、主に、B細胞、T細胞、ナチュラルキラー細胞のような免疫細胞;及び好塩基球(basophil)、好酸球(eosinophil)、好中球(neutrophil)のような顆粒球などを含む。前記末梢血液単核細胞(PBMC)は、生体から採取した末梢血液から、通常の製造方法によって準備することができる。望ましくは、前記PBMCは、フィコール(Ficoll)を利用した比重遠心分離法を利用し、末梢血液から分離することができる。
【0012】
また、血液から白血球を分離する白血球除去療法(leukapheresis)の産物から、赤血球を除去する方法でナチュラルキラー細胞を得ることができる。
【0013】
一具体例において、本明細書のナチュラルキラー細胞は、下記(a)ないし下記(e)のうちから選択される1以上の特性を有するものでもある:
(a)PBMCの培養0日目対比で、NKG2Dの相対的MFI値が、1.2倍ないし12倍、2倍ないし12倍、4倍ないし12倍、2倍ないし10倍、2倍ないし8倍、4倍ないし8倍、3倍ないし6倍、または3.5倍ないし4.5倍増加したこと;
(b)PBMCの培養0日目対比で、NKp30の相対的MFI値が、1.5倍ないし15倍、1.5倍ないし12倍、2倍ないし12倍、4倍ないし10倍、2倍ないし10倍、4倍ないし8倍、3倍ないし6倍、または4倍ないし6倍増加したこと;
(c)PBMCの培養0日目対比で、培養14日目に、NKp44の相対的MFI値が、12倍ないし22倍、12倍ないし20倍、14倍ないし22倍、16倍ないし22倍、16倍ないし20倍、12倍ないし18倍、14倍ないし18倍、または16倍ないし18倍増加したこと;
(d)PBMCの培養0日目対比で、ITGA1の相対的MFI値が、1.8倍ないし25倍、2倍ないし25倍、4倍ないし22倍、4倍ないし18倍、6倍ないし16倍、6倍ないし10倍、または6倍ないし8.5倍増加したこと;及び
(e)PBMCの培養0日目対比で、ITGA2の相対的MFI値が、1.4倍ないし6倍、1.8倍ないし6倍、1.8倍ないし5倍、2倍ないし5.5倍、2倍ないし5倍、2倍ないし4倍、または2.5倍ないし3.5倍増加したものである。
【0014】
前記相対的MFI値は、PBMCの培養0日目対比で、培養14日目の相対的MFI値でもある。
【0015】
本明細書において、用語相対的MFIは、アイソタイプ対比の陽性細胞の発現強度値を意味し、下記数式1によって定義される。
【0016】
【数1】
【0017】
該相対的MFIは、アイソタイプ対比の陽性細胞の発現比率を測定する発現比率とは区分された概念であり、同じ%の発現比率を有しても、MFI値により、各受容体機能の強度は異なり、相対的MFI値が高くあってこそ、実在的な機能が増大されたとも理解される。
【0018】
本明細書は、PBMCからのナチュラルキラー細胞培養時、新規物質、例えば、PDGF-AA、PDGF-BB、PDGF-CC、PDGF-DDまたはPDGF-ABに処理された新規したナチュラルキラー細胞を提供する。前記新規のナチュラルキラー細胞は、公知の他のナチュラルキラー細胞とは、製造方法が異なり、抗癌活性、及びナチュラルキラー細胞の活性化に係わる因子であるNKG2D、NKp30、NKp44、ITGA1及びITGA2の相対的MFI値が、PBMC培養前対比で、少なくは1.2倍から、多くは30倍まで増大された細胞である。
【0019】
他の具体例において、本明細書のナチュラルキラー細胞は、8ないし140、10ないし140、8ないし40、15ないし30、80ないし140、100ないし140、または110ないし130のMFI値のCD16;20ないし160、30ないし160、30ないし150、20ないし60、25ないし50、120ないし160、または135ないし150のMFI値のLFA-1;2ないし30、5ないし30、5ないし25、6ないし15、12ないし30、または14ないし25のMFI値のNKG2D;2ないし25、5ないし25、5ないし20、2ないし14、7ないし20、または10ないし18のMFI値のNKp30;10ないし40、12ないし30、12ないし25、14ないし22、12ないし18、または18ないし22のMFI値のNKp44;2ないし30、4ないし25、4ないし22、2ないし16、4ないし12、10ないし25、または14ないし25のMFI値のITGA1;1ないし10、1.5ないし10、2ないし10、1.6ないし4、2ないし8、4ないし8、または4ないし6のMFI値のITGA2;20ないし180のMFI値のCD2;0.1ないし1.5のMFI値のCD27;1ないし10のMFI値のCD69;2ないし12のMFI値のCD226;2ないし8のMFI値のNKp46;0.1ないし4のMFI値のCD160;0.1ないし4のMFI値のKIR2DL1;0.1ないし5のMFI値のKR2DL3;0.1ないし4のMFI値のKIR3DL1;0.4ないし16のMFI値のNKG2A;0.2ないし12のMFI値のCD161;0.3ないし3のMFI値のCCR3;0.5ないし4のMFI値のCCR5;0.8ないし6のMFI値のCCR6;0.4ないし5のMFI値のCXCR3;0.4ないし5のMFI値のCXCR1;0.1ないし3のMFI値のCXCR2;及び1ないし16のMFI値のITGB7のうちから選択される1以上の特性をさらに有するものでもある。
【0020】
他の具体例において、ナチュラルキラー細胞は、下記(f)の特性をさらに有するものでもある;
(f)PBMCの培養0日目対比で、培養14日目に、KIR2DS4遺伝子の発現量が、少なくとも10倍以上、詳細には、10倍ないし60倍、10倍ないし50倍、20倍ないし40倍、20倍ないし45倍、または25倍ないし40倍である。
【0021】
他の具体例において、ナチュラルキラー細胞は、下記(g)または下記(h)の特性をさらに有するものでもある;
(g)PBMCの培養0日目対比で、培養14日目に、CD16の相対的MFI値が、0.02倍ないし0.85倍、0.04倍ないし0.8倍、0.08倍ないし0.8倍、0.1倍ないし0.6倍、0.1倍ないし0.4倍、または0.12倍ないし0.3倍低減したこと;または
(h)PBMCの培養0日目対比で、培養14日目に、LFA-1の相対的MFI値が、0.08倍ないし0.8倍、0.1倍ないし0.8倍、0.1倍ないし0.7倍、0.1倍ないし0.6倍、0.2倍ないし0.6倍、0.4倍ないし0.6倍、または0.2倍ないし0.5倍低減したものである。
【0022】
他の具体例において、前記ナチュラルキラー細胞は、NKG2D、NKp30、NKp44、CD16、LFA-1、ITGA1、ITGA2、KIR2DS1、KIR2DS2、KIR2DS3、KIRDS4、CXCR1、CXCR2、CXCR3、CCR3、CCR5、CCR6、PSA-NCAM、ネスチン(nestin)、チロシンヒドロキシラーゼ(tyrosine hydroxylase)、CD147、CD127、CD15、CD31、CD146、CD49c、CD107a、NKG2A、CD45、CD140a及びCD11bのうちから選択されたいずれか1つの受容体を発現するものでもある。
【0023】
ナチュラルキラー細胞の活性化受容体は、主に、標的細胞が異常な状態にあるとき、時発現が増大する配位子を認識し、細胞毒性作用を起こして標的細胞を除去する。
【0024】
PSA-NCAMは、神経細胞の分化能マーカーであり、胚芽発達において、神経系におけるニューロンの発達シナプス形成に係わる表示因子でもあるし、チロシンヒドロシキラーゼは、神経伝達物質ホルモン合成に必要な酵素でもあり、CD147は、胚芽の脳発達に係わる因子であり、脳内皮において、インテグリン媒介付着(integrin-mediated adhesion)機能を有するものでもある。S100Bは、血管脳障壁透過性を向上させるものでもある。前記CD15は、走化性(chemotaxis)、食作用(phagocytosis)及び/または抗菌力(bactericidal activity)に係わる機能を行うものでもあり、CD31は、CD38と結合し、傷を治療したり、血管新生及び細胞移動に関与したりするものでもある。また、CD146は、活性T細胞、間葉系幹細胞などで発現する細胞表面マーカーであり、白血球の血管外流出(extravasation)に関与するものでもあり、CD49cは、神経移動に関与したり、細胞・細胞間、細胞・基質間の付着役割を行うものでもある。
【0025】
NKG2Dは、DNA損傷時、発癌時、ウイルス感染時に発現が増大される細胞内分子であるUL16結合蛋白質(ULBPs)とMIC A/B、RAE1、H60、MULT1とを感知して細胞毒性活性を提供する。
【0026】
NKp30は、BAG6及びNCR3LG1、B7-H6を含む細胞外配位子の結合によって活性化される受容体であり、それら配位子と結合して細胞毒性を刺激する。
【0027】
NKp44は、細胞表面の糖蛋白質及びプロテオグリカン、細胞外部に露出されうる核蛋白質(nuclear proteins)、細胞外空間に放出されたり、細胞外小胞(vesicle)に移動したりする分子を配位子と認識する。最近では、NKp44は、細胞外マトリックス(ECM)由来糖蛋白質、または成長因子(growth factors)のような可溶性血漿蛋白質(例えば、PDGF-DD)を認識すると報告されている(Cell. 2018 January 25; 172(3): 534-548. e19., Front Immunol. 2019; 10: 719)。
【0028】
KIR2DS4は、癌、妊娠障害及びHIVに対する耐性を含む多数の疾病に係わっており、正確な配位子は、定義されていないが、HLA-C*05:01によって提示されたペプチド(例えば、組み換えペプチド:HLA-Cコンプレックス)を認知し、NK細胞を活性化させ、活性化されたNK細胞は、TNF-アルファとIFN-ガンマとを生成し、脱顆粒させる。従って、KIR2DS4は、高いペプチド特異的活性化受容体でもあり、免疫防御に十分な役割を遂行する(J Immunol May 1, 2019, 202 (1 Supplement) 177.24)。
【0029】
ITGA1は、ラミニン及びコラーゲンに対する受容体であり、細胞・細胞接着に関与する。コラーゲンの一部配列を認識し、EGF刺激された細胞成長の陰性調節に関与する。
【0030】
ITGA2は、ラミニン、コラーゲン、コラーゲンC-プロペプチド、フィブロネクチン、E-カドヘリンに対する受容体であり、血小板、及び他の細胞との接着、コラーゲン調節、合成された細胞外基質の構成を担当する。
【0031】
前記ナチュラルキラー細胞は、細胞集団の少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%または約99%、あるいは50%ないし100%、50%ないし90%、60%ないし90%、60%ないし80%、または60%ないし70%が、NKG2D、NKp30、NKp44、CD16、LFA-1、ITGA1、ITGA2、KIR2DS1、KIR2DS2、KIR2DS3、KIRDS4、CXCR1、CXCR2、CXCR3、CCR3、CCR5、CCR6、PSA-NCAM、ネスチン、チロシンヒドロキシラーゼ、CD147、CD127、CD15、CD31、CD146、CD49c、CD107a、NKG2A、CD45、CD140aまたはCD11bを発現するものでもある。
【0032】
また、該ナチュラルキラー細胞は、細胞集団の少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%または約99%、あるいは50%ないし100%、50%ないし90%、60%ないし90%、60%ないし80%、または60%ないし70%がKIR2DS1、KIR2DS2、KIR2DS3、KIR2DS4、CXCR1、CXCR2、CXCR3、CCR3、CCR5、CCR6、PSA-NCAM、ネスチン、CD127、CD15、CD31、CD146、CD49c、CD107a、NKG2A、CD45、CD140a及びCD11bのうちから選択されたいずれか1つの特性を示すものでもある。
【0033】
また、ナチュラルキラー細胞は、細胞集団の少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%または約99%、あるいは50%ないし100%、50%ないし90%、60%ないし90%、または60%ないし80%が、CD87、CD10及びCD80からなる群のうちから選択されたいずれか1つの特性を示すものでもある。
【0034】
本発明において、用語「陽性または+」は、細胞標識に係わり、その標識が基準になる他の細胞と比べたとき、さらに多くの量、またはさらに高い濃度で存在することを意味しうる。すなわち、細胞は、ある標識が、細胞の内部または表面に存在するために、その標識を利用し、その細胞を1以上の他の細胞類型と区別することができれば、その標識について陽性になる。また、細胞が背景値よりさらに大きい値でもって、信号、例えば、細胞測定装置の信号を出すことができるほどの量でその標識を有しているということを意味しうる。例えば、細胞を、NKp44特異的な抗体で検出可能に標識することができ、その抗体からの信号が、対照群(例えば、背景値)より、検出可能にさらに大きければ、その細胞は、「NKp44」である。本明細書において、用語「陰性または-」は、特定細胞表面標識に特異的な抗体を使用しても、背景値に比較し、その標識を検出することができないことを意味する。例えば、CD87に特異的な抗体で、細胞を検出可能に標識することができなければ、その細胞は、「CD87」である。
【0035】
一具体例において、前記ナチュラルキラー細胞は、母細胞、例えば、造血細胞またはナチュラルキラー前駆細胞に比べ、細胞毒性、またはナチュラルキラー細胞の本然の免疫調節量が活性化されたり、前述のような免疫受容体の発現が増大されたりする細胞を意味しうる。具体的実施様態において、ナチュラルキラー細胞は、CD3-CD56+である。具体的実施様態において、活性化されたナチュラルキラー細胞は、CD3-CD56+CD16+である。他の具体的実施様態において、活性化されたナチュラルキラー細胞は、さらにCD94+CD117+である。他の具体的実施様態において、活性化されたナチュラルキラー細胞は、さらにCD161-である。他の具体的実施様態において、活性化されたナチュラルキラー細胞は、さらにNKG2D+である。他の具体的実施様態において、活性化されたナチュラルキラー細胞は、さらにNKp46+である。他の具体的実施様態において、活性化されたナチュラルキラー細胞は、さらにCD226+である。特定実施様態において、前記活性化されたナチュラルキラー細胞の50%、60%、70%、80%、90%、92%、94%、96%、98%の超過は、CD56+及びCD16-である。他の実施様態において、前記活性化されたナチュラルキラー細胞の少なくとも50%、60%、70%、80%、82%、84%、86%、88%または90%は、CD3-及びCD56+である。他の実施様態において、前記活性化されたナチュラルキラー細胞の少なくとも50%、52%、54%、56%、58%または60%は、NKG2D+である。他の実施様態において、前記細胞の30%、20%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%または3%は、NKB1+である。特定他の実施様態において、前記活性化されたナチュラルキラー細胞の30%、20%、10%、8%、6%、4%または2%未満は、NKAT2+である。さらに具体的な実施様態において、前述のCD3-,CD56+活性化されたナチュラルキラー細胞の少なくとも10%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%または85%は、NKp46+である。他のさらに具体的な実施様態において、前述のCD3-,CD56+活性化されたナチュラルキラー細胞の少なくとも10%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%または85%は、CD117+である。他のさらに具体的な実施様態において、前述のCD3-,CD56+活性化されたナチュラルキラー細胞の少なくとも10%、20%、25%、30%、35%、40%、45%または50%は、CD94+である。他のさらに具体的な実施様態において、CD3-,CD56+活性化されたナチュラルキラー細胞の少なくとも10%、20%、25%、30%、35%、40%、45%または50%は、CD161-である。他のさらに具体的な実施様態において、前述のCD3-,CD56+活性化されたナチュラルキラー細胞の少なくとも10%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%または95%は、CD226+である。他のさらに具体的な実施様態において、前述のCD3-,CD56+活性化されたナチュラルキラー細胞の少なくとも20%、25%、30%、35%または40%は、CD7+である。さらに具体的な実施様態において、前述のCD3-,CD56+活性化されたナチュラルキラー細胞の少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%または60%は、CD5+である。
【0036】
一具体例において、活性化されたナチュラルキラー細胞、または活性化されたナチュラルキラー細胞が豊富な(enriched)集団は、1種以上の機能的に関連したマーカー、例えば、CD94、CD161、DNAM-1、2B4、NKp46、KIR、及び活性化受容体のNKG2ファミリー(例えば、NKG2D)を検出することによっても評価される。
【0037】
一具体例において、活性化されたナチュラルキラー細胞は、前述の造血細胞からも生成される。特定実施様態において、活性化されたナチュラルキラー細胞は、増殖された造血細胞、例えば、造血幹細胞及び/または造血前駆細胞からも得られる。具体的実施様態において、該造血細胞は、栄養細胞の使用なしに、第1培地で持続的に増殖されて分化される。その後、細胞は、栄養細胞の存在下で、第2培地で培養される。そのような分離(単離)、増殖及び分化は、中央施設で行われ、それは、使用地点、例えば、病院などにおける増殖及び分化のための増殖された造血細胞を提供する。
【0038】
一具体例において、活性化されたナチュラルキラー細胞の生成は、造血細胞の集団を増殖させる段階を含む。細胞増殖の間、造血細胞集団内の複数個の造血細胞は、ナチュラルキラー細胞に分化する。
【0039】
本明細書において、用語「ナチュラルキラー前駆細胞」または「NK前駆細胞」、あるいはその細胞集団は、例えば、1種以上の表現型マーカー、例えば、CD56、CD16、及びKIRの発現レベルで示したような、まだ成熟したナチュラルキラー細胞に発展していないナチュラルキラー細胞系の細胞を含む細胞またはその集団を意味しうる。一実施様態において、ナチュラルキラー前駆細胞集団は、低いCD16及び高いCD56を有する細胞を含む。例えば、該ナチュラルキラー前駆細胞集団は、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%または50%のCD3-CD56+細胞を含む。他の具体的実施様態において、前記ナチュラルキラー前駆細胞集団は、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%または50%以下のCD3-CD56+細胞を含む。他の具体的実施様態において、前記ナチュラルキラー前駆細胞集団は、0%ないし5%、5%ないし10%、10%ないし15%、15%ないし20%、20%ないし25%、25%ないし30%、30%ないし35%、35%ないし40%、40%ないし45%、または45%ないし50%のCD3-CD56+細胞を含む。
【0040】
一具体例において、前記ナチュラルキラー前駆細胞集団において、前記CD3-CD56+細胞は、さらにCD117+である。具体的実施様態において、前記ナチュラルキラー前駆細胞集団において、前記CD3-CD56+細胞の約65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%がCD117+である。他の具体的実施様態において、前記ナチュラルキラー前駆細胞集団において、前記CD3-CD56+細胞の65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%以上がCD117+である。他の具体的実施様態において、前記ナチュラルキラー前駆細胞集団において、前記CD3-CD56+細胞の65%ないし70%、70%ないし75%、75%ないし80%、80%ないし85%、85%ないし90%、90%ないし95%、または95%ないし99%がCD117+である。
【0041】
他の具体例において、ナチュラルキラー前駆細胞集団において、前記CD3-CD56+細胞は、さらにCD161+である。具体的実施様態において、前記ナチュラルキラー前駆細胞集団において、前記CD3-CD56+細胞の約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%または75%がCD161+である。他の具体的実施様態において、前記ナチュラルキラー前駆細胞集団において、前記CD3-CD56+細胞の40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%または75%以上がCD161+である。他の具体的実施様態において、前記ナチュラルキラー前駆細胞集団において、前記CD3-CD56+細胞の40%ないし45%、45%ないし50%、50%ないし55%、55%ないし60%、60%ないし65%、65%ないし70%、または70%ないし75%がCD161+である。
【0042】
さらに他の具体例において、前記ナチュラルキラー前駆細胞集団において、前記CD3-CD56+細胞は、さらにNKp46+である。具体的実施様態において、前記ナチュラルキラー前駆細胞集団において、前記CD3-CD56+細胞の約25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、またはそれ以上がNKp46+である。他の具体的実施様態において、前記ナチュラルキラー前駆細胞集団において、前記CD3-CD56+細胞の約25%、30%、35%、40%、45%、50%または55%がNKp46+である。他の具体的実施様態において、前記ナチュラルキラー前駆細胞集団において、前記CD3-CD56+細胞の25%、30%、35%、40%、45%、50%または55%以下がNKp46+である。他の具体的実施様態において、前記ナチュラルキラー前駆細胞集団において、前記CD3-CD56+細胞の25%ないし30%、30%ないし35%、35%ないし40%、40%ないし45%、45%ないし50%、50%ないし55%、55%ないし60%、60%ないし65%、65%ないし70%、70%ないし75%、75%ないし80%、80%ないし85%、85%ないし90%、またはそれ以上がNKp46+である。さらに具体的な実施様態において、前記ナチュラルキラー前駆細胞集団において、前記CD3-CD56+細胞の25%ないし30%、30%ないし35%、35%ないし40%、40%ないし45%、45%ないし50%、または50%ないし55%がNKp46+である。
【0043】
また、例えば、前記ナチュラルキラー前駆細胞集団は、CD52+、CD16+、CD244+CD94+またはCD94+についても、前述の通りである。
【0044】
本明細書において、前記ナチュラルキラー細胞は、前述の受容体を発現すたり、それらの発現または活性が増大されたりするように培養されるか、あるいは遺伝的に操作されたものでもある。
【0045】
本明細書において、前記培養は、任意の供給源、例えば、胎盤組織、胎盤貫流液、臍帯血、胎盤血、末梢血、脾臓、肝臓などからの造血細胞、例えば、造血幹細胞または造血前駆細胞から、前述のような受容体の発現または活性が増大されるように培養されたものを意味しうる。
【0046】
本明細書において、「遺伝的操作(genetic engineering)」、または「遺伝的に操作された(genetically engineered)」は、細胞につき、1以上の遺伝的変形(genetic modification)を導入する行為、またはそれによって作られた細胞を意味する。
【0047】
本明細書において使用された用語「活性増大(increase in activity)」、または「増大された活性(increased activity)」は、蛋白質または酵素の活性検出可能な増大を示すことができる。「活性増大」、または「増大された活性」は、与えられた母細胞、野生型細胞または培養前細胞(例えば、PBMC)に比べ、さらに高レベルの蛋白質または酵素の活性を意味する。
【0048】
他の具体例において、前記ナチュラルキラー細胞は、遺伝的に変形または操作されたものでもある。前記ナチュラルキラー細胞は、遺伝的に変形され、標的特異性及び/またはホーミング特異性が向上したものでもある。
【0049】
他の具体例において、前記ナチュラルキラー細胞は、パーフォリン、グランザイム(granzyme)またはインターフェロンを分泌するものでもある。
【0050】
前記グランザイムは、グランザイムA、グランザイムB、グランザイムH、グランザイムK及びグランザイムMからなる群のうちから選択された1以上のものでもある。
【0051】
前記インターフェロンは、1型インターフェロン(例えば、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンκ、インターフェロンω)、2型インターフェロン(例えば、インターフェロンγ)または3型インターフェロンでもある。
【0052】
他の様態は、前記免疫細胞またはその細胞集団を、有効成分として含む細胞治療剤または薬学的組成物を提供する。
【0053】
前記細胞治療剤または前記薬学的組成物は、癌または感染性疾患の予防用または治療用でもある。
【0054】
さらに他の様態は、前記ナチュラルキラー細胞またはその細胞集団を医薬製造に使用するための用途を提供する。
【0055】
さらに他の様態は、前記ナチュラルキラー細胞またはその細胞集団を個体に投与する段階を含む疾患を治療する方法を提供する。
【0056】
本明細書において、用語「疾患」は、1つの病理的状態、特に、癌、感染性疾患、炎症性疾患、代謝性疾患、自家免疫性障害、退行性疾患、細胞死滅関連疾患及び移植片拒否を意味しうる。
【0057】
本明細書において、用語「治療」は、疾患、障害または病態、またはその1以上の症状の軽減、進行抑制または予防を指すか、あるいはそれを含み、「有効成分」または「薬剤学的有効量」は、疾患、障害または病態、またはその1以上の症状の軽減、進行抑制または予防に十分な、本願で提供される発明を実施する過程で利用される組成物の任意量を意味しうる。
【0058】
本明細書において、用語「投与する」、「導入する」及び「移植する」は、相互交換的に使用され、一具体例による組成物の所望する部位への少なくとも部分的局所化をもたらす方法または経路による個体内への、一具体例による組成物の配置を意味しうる。一具体例による組成物の細胞または細胞成分の少なくとも一部を、生存する個体内における、所望する位置に伝達する任意の適切な経路によっても投与される。個体投与後、細胞の生存期間は、短ければ、数時間、例えば、24時間ないし数日、あるいは、長ければ、数年でもある。
【0059】
前記投与は、さらなる抗癌剤と併用投与されるものでもある。さらなる抗癌剤の例示は、アルキル化剤(alkylating agent)、アンチメタボライト、紡錘体阻害剤、植物アルカロイド、細胞障害性/抗腫瘍抗生物質、トポイソメラーゼ阻害薬、抗体、光増減剤及びキナーゼ阻害薬が含まれうる。前記抗癌剤の例示は、ターゲッティング療法、と従来の化学療法とに使用される化合物を含んでもよい。また、前記抗体の例示は、アレムツズマブ、アポリズマブ、アセリズマブ、アトリズマブ、バピネウズマブ、ベバシズマブ、ビバツズマブメルタンシン、カンツズマブメルタンシン、セデリズマブ、セルトリズマブペゴル、シドプシツズマブ、シドツズマブ、ダクリズマブ、エクリズマブ、エファリズマブ、エプラツズマブ、エクリズマブ、フェルビズマブ、フォントリズマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、イノツズマブオゾガマイシン、イピリムマブ、ラベツズマブ、リンツズマブ、マツズマブ、メポリズマブ、モタビズマブ、モトビズマブ、ナタリズマブ、ニモツズマブ、ノロビズマブ、ヌマビズマブ、オクレリズマブ、オマリズマブ、パリビズマブ、パスコリズマブ、ペクフシツズマブ、ペクツズマブ、ペルツズマブ、ペクセリズマブ、ラリビズマブ、ラニビズマブ、レスリビズマブ、レスリズマブ、レシビズマブ、ロベリズマブ、ルプリズマブ、シブロツズマブ、シプリズマブ、ソンツズマブ、タカツズマブテトラキセタン、タドシズマブ、タリズマブ、テフィバズマブ、トシリズマブ、トラリズマブ、トラスツズマブ、ツコツズマブセルモロイキン、ツクシツズマブ、ウマビズマブ、ウルトキサズマブ及びビシリズマブが含まれてもよい。
【0060】
本明細書において、用語「分離された細胞」、例えば、「分離されたナチュラルキラー細胞」は、細胞が起源する組織、例えば、末梢血から実質的に分離された細胞を意味する。
【0061】
本発明の組成物は、新生物に由来した腫瘍または癌を治療または予防するために使用されうる。該新生物は、悪性または陽性でもあり、癌は、原発性または転移性でもあり、新生物または癌は、初期または末期でもある。治癒されうる新生物または癌の非制限的例には、肺癌、喉頭癌、胃癌、大腸癌、直腸癌、肝臓癌、胆嚢癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、子宮癌、子宮頸部癌、前立腺癌、腎臓癌、皮膚癌、骨癌、筋肉癌、脂肪癌、纎維細胞癌、血液癌、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫及び神経膠腫からなる群のうちから選択された1種以上を含むものでもある。
【0062】
また、前記神経膠腫は、星細胞腫(astrocytic tumors)、乏突起膠細胞腫(oligodendroglial tumors)、混合神経膠腫(mixed gliomas)または上衣細胞種(ependymal tumors)でもある。さらに詳細には、前記星細胞腫は、膠芽腫、抗癌剤耐性膠芽腫または再発性膠芽腫でもある。
【0063】
特定理論に制限されることなしに、膠芽腫から分泌されるPDGF-DD(platelet-derived growth factor-DD)と、ナチュラルキラー細胞のNKp44との相互作用が報告されている。また、特定理論に制限されることなしに、膠芽腫で発現するMICA(MHC class I polypeptide-related sequenceA)と、ナチュラルキラー細胞のNKG2Dとの相互作用が報告されている。また、特定理論に制限されることなしに、KIR2DS2陽性ナチュラルキラー細胞と、膠芽腫との関連性が報告されている。
【0064】
従って、一具体例によるナチュラルキラー細胞は、MICAまたはPDFG-DDを分泌または発現する癌(例えば、神経膠腫、膠芽腫など)にさらに効果的でもある。
【0065】
さらに、一具体例によるナチュラルキラー細胞は、自己寛容を抑制することができる。従って、一具体例によるナチュラルキラー細胞は、免疫活性、血管脳障壁透過、細胞移動促進または自己寛容を抑制することができるものでもある。
【0066】
一具体例の薬学的組成物の投与方法は、特別に制限されるものではないが、目的とする方法により、静脈内、皮下、腹腔内、吸入または局所適用のように、非経口投与であったり経口投与であったりもする。投与量は、患者の体重・年齢・性別・健康状態、食餌、投与時間、投与方法、排泄率、及び疾患の重症度などにより、その範囲が多様である。1日投与量は、治療を必要とする個体に投与されることによって軽減された疾病状態に対する治療に十分な一様態による治療用物質の量を意味する。治療用物質の効果的な量は、特定化合物、疾病状態及びその深刻度、治療を必要とする個体によって異なり、それは、当業者によって一般的に定められうる。非制限的例として、一様態による組成物の人体に対する投与量は、患者の年齢・体重・性別、投与形態、健康状態及び疾患程度によっても異なる。体重が70kgである成人患者を基準にするとき、例えば、約1,000~10,000細胞/回、1,000~100,000細胞/回、1,000~1000,000細胞/回、1,000~10,000,000、1,000~100,000,000細胞/回、1,000~1,000,000,000細胞/回、1,000~10,000,000,000細胞/回または1,000~100,000,000,000細胞/回であり、一定時間間隔で、1日に1回ないし数回に分割投与することもでき、一定時間間隔で何回か投与することができる。
【0067】
「個体」とは、疾患の治療を必要とする対象を意味し、さらに具体的には、ヒトまたは非ヒトである霊長類、マウス(mouse)、鼠(rat)、犬、猫、馬及び牛のような哺乳類を意味する。
【0068】
一具体例による薬学的組成物は、薬学的に許容可能な担体及び/または添加物を含んでもよい。例えば、滅菌水、生理食塩水、慣用の緩衝剤(リン酸、クエン酸、それ以外の有機酸など)、安定剤、塩、酸化防止剤(アスコルビン酸など)、界面活性剤、懸濁液剤、等張化剤または保存剤などを含んでもよい。局所投与のために、生体高分子(biopolymer)のような有機物、ヒドロキシアパタイトのような無機物、具体的には、コラーゲンマトリックス、ポリ乳酸重合体またはポリ乳酸共重合体、ポリエチレングリコール重合体またはポリエチレングリコール共重合体、及びその化学的誘導体などと組み合わせるものも含まれてもよい。一具体例による薬学的組成物が、注射に適する剤形に調剤される場合には、免疫細胞、またはその活性を増大させる物質は、薬学的に許容可能な担体中に溶解されているか、あるいは溶解されている溶液状態に凍結されたものでもある。
【0069】
一具体例による薬学的組成物は、その投与方法や剤形により、必要な場合、懸濁液剤、溶解補助剤、安定化剤、等張化剤、保存剤、吸着防止剤、界面活性化剤、希釈剤、賦形剤、pH調整剤、無痛化剤、緩衝剤、還元剤、酸化防止剤などを適切に含んでもよい。前述のところに例示されたものを含め、本発明に適する薬学的に許容される担体及び製剤は、文献[Remington's Pharmaceutical Sciences, 19th ed., 1995]に詳細に記載されている。一具体例による薬学的組成物は、当該発明が属する技術分野において当業者であるならば、容易に実施することができる方法により、薬学的に許容される担体及び/または賦形剤を利用して製剤化することにより、単位用量形態に製造されるか、あるいは多用量容器内に内入させても製造される。このとき、該剤形は、油性媒質中または水性媒質中の溶液、懸濁液または乳化液の形態であるか、あるいは粉末、顆粒、錠剤またはカプセル型でもある。
【発明の効果】
【0070】
一様態によるナチュラルキラー細胞によれば、膠芽腫を含む癌に対し、有意の特定受容体の相対的MFIが増大されており、効果的な抗癌免疫治療が可能である効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0071】
図1A】ナチュラルキラー細胞の培養期間別表現型分析を示したドットプロットである(CD3CD56)。
図1B】ナチュラルキラー細胞の培養期間別表現型分析を示したドットプロットである(CD3CD19、CD14SSC)。
図1C】ナチュラルキラー細胞の培養期間別表現型分析を示したドットプロットである(CD3SSC、CD4CD8)。
図2A図1Aにおける、7人の培養評価結果に係わるグラフある(CD3+CD56+,CD3-CD56+,CD3+CD56-細胞の比率)。
図2B図1Bにおける、7人の培養評価結果に係わるグラフ(b:CD19+細胞の比率)。
図2C図1Bにおける、7人の培養評価結果に係わるグラフ(CD14+細胞の比率)。
図2D図1Cにおける、7人の培養評価結果に係わるグラフ(CD4+,CD8+細胞の比率)。
図2E】細胞生存率とナチュラルキラー細胞の増殖倍数とを示したグラフである(ナチュラルキラー細胞の比率増殖)。
図2F】細胞生存率とナチュラルキラー細胞の増殖倍数とを示したグラフである(細胞生存率)。
図3】一具体例によるナチュラルキラー細胞と、培養前PBMCの免疫受容体との発現の変化をドットプロットで示した結果である。
図4A】一具体例によるナチュラルキラー細胞と、培養前PBMCの免疫受容体との発現の変化をグラフで示した結果である(NKG2D+、DNAM1+、CD69+、NKp30+)。
図4B】一具体例によるナチュラルキラー細胞と、培養前PBMCの免疫受容体との発現の変化をグラフで示した結果である(NKp44+、NKp46+、CD2+、CD16+)。
図4C】一具体例によるナチュラルキラー細胞と、培養前PBMCの免疫受容体との発現の変化をグラフで示した結果である(KIR2DL1+、KIR2DL3+、KIRDL1+、NKG2A+)。
図5】一具体例によるナチュラルキラー細胞と、培養前PBMCの抗癌物質(グランザイムB、パーフォリン及びインターフェロンγ)との発現を、流細胞分析器を利用し、ドットプロットとグラフとで示した結果である。
図6】一具体例によるナチュラルキラー細胞と、培養前PBMCのCD107aの脱顆粒化との発現をドットプロットとグラフとで示した結果である。
図7A】一具体例によるナチュラルキラー細胞の膠芽腫細胞株に対する配位子の発現をドットプロットで示した結果である(T98G細胞)。
図7B】一具体例によるナチュラルキラー細胞の膠芽腫細胞株に対する配位子の発現をドットプロットで示した結果である(U-87MG細胞)。
図7C】一具体例によるナチュラルキラー細胞の膠芽腫細胞株に対する配位子の発現をドットプロットで示した結果である(A172細胞)。
図7D】一具体例によるナチュラルキラー細胞の膠芽腫細胞株に対する配位子の発現をドットプロットで示した結果である(U-373MG細胞)。
図8】一具体例によるナチュラルキラー細胞の血液癌細胞株K562に対するE:T比率別細胞殺傷能を示す結果である。
図9】一具体例によるナチュラルキラー細胞の膠芽腫細胞株A172,U-87MG,U-373MG,T98Gに対するE:T比率別細胞殺傷能を示す結果である。
図10】一具体例によるナチュラルキラー細胞において、特定受容体を遮断した後、それらナチュラルキラー細胞の癌細胞株に対する細胞毒性を確認したグラフである。
図11】一具体例によるナチュラルキラー細胞を卵巣癌動物モデルに投与した後、腫瘍重量の減少を観察したグラフである(矢印は、薬物投与時期を示す)。
図12】一具体例によるナチュラルキラー細胞を胃癌動物モデルに投与した後、腫瘍重量の減少を観察したグラフである(矢印は、薬物投与時期を示す)。
図13】一具体例によるナチュラルキラー細胞を膠芽腫動物モデルに投与した後、腫瘍重量の減少を観察したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0072】
以下、本発明について、実施例を介し、さらに詳細に説明する。しかし、それら実施例は、本発明について例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲は、それら実施例に限定されるものではない。
【0073】
実施例.免疫受容体の活性が増大されたナチュラルキラー細胞の製造
膠芽腫に対する有意の免疫受容体を発現するナチュラルキラー細胞を製造するために、次のようにナチュラルキラー細胞を培養した。
【0074】
1.末梢血液単核細胞の製造
1.1.血液から末梢血液単核細胞(PMBC)及び血漿分離
血液は、正常人の静脈から採血して準備した。このとき、採血容器は、ヘパリンが含まれた採血チューブを使用した。患者から採取した血液を、フィコール(Ficoll)(#17-1440-02、GE Healthcare、またはそれと同等以上)が入れられたチューブ(#352070、BD、またはそれと同等以上)2個に、それぞれ30mlずつ慎重に移し入れた。血液が入れられたチューブを、2,500rpmで10分間、ブレイクオフ(break off)状態で遠心分離した後、上層の血漿部分を新たなチューブに移し入れた。移し入れた血漿を、ヒートブロック(heat block)で30分間不活性化させた後、4,000rpmで5分間遠心分離した。遠心分離されたチューブでから、上澄み液を新たなチューブに移し、血漿と表記した後、2~8℃で保管した。
【0075】
前記血液とフィコールとを入れて遠心分離したチューブから血漿を採取して残った下層にある微黄色層を、新たなチューブに赤血球層と混入されないように、慎重に移し入れた後、Ca/Mg遊離(free)DPBS(Dulbecco’s Phosphate-Buffered Saline)(#14190、Gibco)を入れた。その後、1,500rpmで5分間遠心分離した後、上澄み液を除去した。上澄み液を除去して残った沈澱細胞を、RBC溶解バッファ(red blood cell lysis buffer)(#158904、Qiagen)5mlに浮遊させた。その後、細胞懸濁液を、1,500rpmで5分間遠心分離し、上澄み液を除去し、上澄み液が除去されたチューブに、Ca/Mg遊離DPBSを入れ、さらに1,500rpmで5分間遠心分離した。上澄み液が除去されて残った沈澱細胞を、Alys505NK-EX(#01410P10、CSTI)培地1mlに浮遊させた。
【0076】
前記Alys505NK-EXに浮遊させた細胞懸濁液から少量を取り、Ca/Mg遊離DPBSで、前記量の100倍に希釈した後、希釈液少量を取り、同一体積のトリパンブルーと混ぜた後、血球計算板(hemocytometer)に載せ、細胞数及び生存率を測定した。
【0077】
1.2.PBMCの凍結
前述の実施例1.1で得られる全ての細胞懸濁液を、1,500rpmで5分間遠心分離した後、上澄み液を除去した。2℃ないし8℃に保管しておいたCryostor CS10またはALyS505NK-EX+アルブミン+DMSO混合液で細胞を浮遊させ、細胞数が、1~100X10細胞/mlになるようにした。浮遊した細胞を、2ml凍結バイアル(cryogenic vial)に1mlずつ分注した後、CRF(controlled rate freezers)を使用し、0℃で10~15分、-12℃で5~10分、及び-42℃で0.5~1分の条件で、第1段階凍結させ、第1凍結段階後、-25℃で1~3分、及び-15℃で1~3分の条件で凍結させ、第2凍結段階後、-42℃で20~40分、及び-120℃で20~50分の条件で凍結させるか、あるいは4~-40℃範囲で3℃/mで、第1段階凍結し、第1凍結段階後、-40~-90℃範囲で5℃/mの条件で、第2段階凍結させ、第2凍結段階後、-90~-120℃範囲で5℃/mの条件で凍結させた。凍結された細胞をLNタンクに移して保管した(-130℃以下)。
【0078】
1.3.凍結されたPBMCの解凍
ヒートブロックを、37℃になるようにセッティングした後、Tフラスコに10%血漿が添加された培養液を入れた。細胞濃度によって培養液体積は、例えば、4ml、6ml、8mlまたは10mlなどに多様に調節することができる。前述の実施例2.2で凍結しておいた凍結バイアルをヒートブロックに入れ、凍結されたPBMCを溶かした。凍結されたPBMCが半分ほど溶けたとき、培養液が入れられたTフラスコに移した。次に、37℃ 5% COインキュベータに入れ、1日培養した。培養されたPBMCをチューブに集めた後、Ca/Mg遊離DPBSを添加し、1,500rpm、5分間遠心分離した後、上澄み液を除去した。遠心分離によって分離された細胞を、少量の培養液に浮遊させた後、細胞数を測定した。凍結保管された細胞の解凍後生存率は、表1に記載する。表1から分かるように、本発明によって凍結保管された後で解凍したPMBCは、93%以上が生存しているが、高い生存率が維持されるということを確認することができた。
【0079】
【表1】
【0080】
2.ナチュラルキラー細胞の培養
2.1.フィブロネクチン及びγガンマグロブリンにコーティングされた培養フラスコ準備(一次)
15mlチューブに、0.01mlフィブロネクチン(#FC-010、Millipore)、及び0.121ml γグロブリン(#020A1004、緑十字)の溶液を入れた後、Ca/Mg遊離DPBS 9.859mlを添加した。製造されたコーティング液を、ピペットを利用し、T75フラスコ(#156499、Nunc)に入れ、16時間以上2~8℃で反応させた。細胞培養前、残余コーティング液をCa/Mg遊離DPBSで洗浄した後に除去した。
【0081】
2.2.ナチュラルキラー細胞の一次培養
実施例1で準備した細胞懸濁液を取り、前述の実施例2.1で製造されたコーティングフラスコに入れ、自家血漿1.5ml、及びIL-18(#B003-2、R&D)0.075ml、PDGF-DD(1159-SB、R&D)0.075ml、抗NKp46(#MAB1850、R&D)0.03ml、Alys505NK-EX(#01410P10、CSTI)13.4625mlを添加し、COインキュベータで2~3日間培養した。その後、フラスコに自家血漿1.5ml及びAlys505NK-EX13.5mlを添加し、COインキュベータで1~2日間培養した。
【0082】
2.3.フィブロネクチン及びγグロブリンにコーティングされた培養フラスコ準備(二次)
50mlチューブに、0.025mlフィブロネクチン(#FC-010、Millipore)、及び0.303ml γグロブリン(#020A1004、緑十字)溶液を入れた後、Ca/Mg遊離DPBS 24.647mlを添加した。製造されたコーティング液を、ピペットを利用し、T175フラスコ(#159910、Nunc)に入れ、16時間以上2~8℃で反応させた。細胞培養前、残余コーティング液を、Ca/Mg遊離DPBSで洗浄した後に除去した。
【0083】
2.4.ナチュラルキラー細胞の二次培養、及び機能強化新規物質の処理
実施例2.2の一次培養後、インキュベータで細胞が培養されているT75フラスコを取り出して細胞を集めた後、T175フラスコ(#159910、Nunc)に移した。血漿3ml、抗NKp46(#MAB1850、R&D)0.06ml、及びAlys505NK-EX(#01410P10、CSTI)27mlをT175フラスコに添加し、COインキュベータで1~2日間培養した。その後、残っている血漿、及び抗NKp46溶液0.12ml、IL-18 0.03ml、PDGF-DD(1159-SB、R&D)0.03ml、Alys505NK-EX(#01410P10、CSTI) 53.85ml、並びに機能強化新規物質として、PDGF-AA、PDGF-BB、PDGF-CC、PDGF-DD(1159-SB、R&D)及びPDGF-AB50ng/mlのうちから一つまたは二つ以上を添加した後、さらにCOインキュベータで1~2日間培養した。
【0084】
2.5.ナチュラルキラー細胞の三次培養
前述の実施例2.4で培養されたT175フラスコの細胞及び血漿を、2000IU/ml IL-2を含む培養液に入れ、COインキュベータで培養した。2~3日後、新たな同一体積の培養液(2000IU/mlのIL-2を含む培養液)を、細胞が培養されている細胞懸濁液と混ぜた後、COインキュベータで培養した。
【0085】
前記培養(一次培養、二次培養及び三次培養のいずれも)において、において、IL-2が添加された培養液の代わりに、IL-2が添加されていない免疫細胞培養液に、IL-2を所定量でそれぞれ添加して使用することもできる。
【0086】
3.培養期間別ナチュラルキラー細胞の表現型分析
前述の実施例による培養方法によって培養された活性化ナチュラルキラー細胞につき、培養前のPBMCからナチュラルキラー細胞に分化及び拡張するまでの培養期間の間、0日目、6日目、10日目、14日目に、細胞特性を分析した。
【0087】
細胞特性を分析するために、主要マーカーとして、CD3、CD56、CD19、CD16、CD14、CD4、CD8で確認した。培養期間中、CD3-CD56+ NK細胞の比率が上昇し、培養後の14日目には、NK細胞が、主成分として85.5%(4.92)を占めた。それ以外のCD3+CD56- T細胞は、培養14日目に10%にg低減、CD3+CD56+ NKT細胞は、5%に一定比率を維持しながら存在した。単球(monocyte)とB細胞は、0%と発見されなかった。また、培養後のT細胞において、CD4+細胞よりCD8+細胞の比率が高かった。
【0088】
図1Aないし図1Cは、培養前対比で、高純度のナチュラルキラー細胞として分布していることを示す。
【0089】
図2Aないし図2Dは、図1Aないし図1Cに係わる7人の培養評価をグラフで示した結果である。
【0090】
図2E及び図2Fの結果を介し、14日目の培養のいずれにおいても、90%以上の高い生存率を維持し、1,259倍のナチュラルキラー細胞の増殖能を示した。
【0091】
4.培養前(D0)と培養後(D14)とにおける、NK細胞受容体発現の相対的MFI値
前述の実施例による培養方法によって培養された活性化ナチュラルキラー細胞の相対的MFI値を測定した。
【0092】
該相対的MFIは、アイソタイプ対比の陽性細胞の発現強度値を意味し、下記数式1によって定義される。
【0093】
[数1]
【0094】
相対的MFIは、アイソタイプ対比の陽性細胞の発現比率を測定する発現比率とは、区分された概念であり、同じ%の発現比率を有しても、MFI値により、各受容体機能の強度は異なり、相対的MFI値が高くてこそ、実在的な機能が増大されたとも理解される。
【0095】
本実施例においては、前述の2.5.でのように8、新規物質を処理した機能強化された新規のナチュラルキラー細胞を製造し、その特定受容体のMFI値を測定し、新規のナチュラルキラー細胞特性を定義した。
【0096】
相対的MFIを測定するために、まず、培養前後の細胞を収去し、1x10の細胞を準備し、1,500rpmで5分間遠心分離した後、上澄み液を除去し、FACSバッファ(2% FBSが含まれたPBS)で2mlに希釈した。下記表2に記載された物質につき、蛍光物質を含む抗体を条件別に5ml FACSチューブに入れ、希釈された細胞溶液を100μlずつ分注し、冷蔵庫で30分間染色した。染色された後、PBSを500μlずつ入れ、3,200rpmで3分間遠心分離した後、上澄み液を除去した。染色された細胞のペレットを、1% PFA 500μlずつ入れて固定させた後、流細胞分析器(Bechman Coulter、米国)を利用し、細胞の免疫受容体の発現を分析し、前記数式1によって相対的MFI値を測定した。
【0097】
相対的MFI値の結果は、下記表2に示した。
【0098】
【表2】
【0099】
前掲の表2に示されているように、抗癌活性、及びナチュラルキラー細胞の活性化に係わる因子であるNKG2D、NKp30、NKp44、ITGA1及びITGA2の相対的MFI値が、少なくは、1.5倍から、多くは、25倍まで増大されたことが分かった。以上の結果は、一具体例による、新規物質処理されたナチュラルキラー細胞が、特定MFI値を有する新規のナチュラルキラー細胞であり、抗癌活性、及び細胞自体の活性が増大されたことを意味する。
【0100】
5.免疫受容体の発現比較分析
前述の実施例による培養方法によって培養された活性化ナチュラルキラー細胞と、培養前PBMCとの免疫受容体の発現を比較分析した。
【0101】
具体的には、前述の4.と同一方法で、下記表3に記載された物質につき、蛍光物質を含む抗体を利用し、細胞の免疫受容体の発現を分析し、その結果を、図3、及び図4Aないし図4Cに示した。
【0102】
【表3】
【0103】
図3は、一具体例によるナチュラルキラー細胞と、培養前PBMCの免疫受容体との発現を比較したドットプロット結果である。図4Aないし図4Cは、一具体例によるナチュラルキラー細胞と、培養前PBMCの免疫受容体との発現の変化をグラフで示した結果である。
【0104】
図3、及び図4Aないし図4Cに示されているように、一具体例によるナチュラルキラー細胞は、NKG2D、DMAN-1、CD69、CD2、NKp30、NKG2A及びNKp44の発現が増大され、NKp46、CD16、KIR2DL1、KIR2DL2/3及びKIR3DL1の発現は、培養前PMBCと比較し、発現量がほとんど変化していないということが分かった。
【0105】
6.活性化ナチュラルキラー細胞の脳組織、血管脳障壁の透過性関連、または細胞移動促進関連因子の発現分析
前述の実施例による培養方法によって培養された活性化ナチュラルキラー細胞の脳組織、血管脳障壁の透過性、または細胞移動促進に係わる因子の発現を比較分析した。
【0106】
具体的には、下記表4に記載された物質につき、蛍光物質を含む抗体を使用したという点を除いては、前述の4.と同一方法で遂行し、細胞の脳組織、血管脳障壁の透過性関連、または細胞移動促進関連因子の発現を分析し、その結果を表4に示した。
【0107】
【表4】
【0108】
7.活性化ナチュラルキラー細胞のKIR2DS4の発現分析
前述の実施例による培養方法によって培養された活性化ナチュラルキラー細胞のKIR2DS4のmRNA発現様態を、培養前PBMCと比較した。
【0109】
具体的には、培養前細胞と培養後細胞とから、トリゾール分離方法でRNAを抽出し、総RNAシークエンシングを行い、mRNAの発現様態を確認した。前記結果は、下記表5に示した。
【0110】
【表5】
【0111】
前掲の表5に示されているように、一具体例によるナチュラルキラー細胞は、培養前PBMC対比のKIR2DS4の発現が約32倍増大されたということが分かった。
【0112】
実験例1.抗癌物質の発現分析
前述の実施例による培養方法によって培養された活性化ナチュラルキラー細胞と、培養前PBMCの抗癌物質(グランザイムB、パーフォリン、インターフェロンγ及びCD107a)との発現を比較分析した。
【0113】
まず、グランザイムB及びパーフォリンは、次のように分析した。
【0114】
各サンプル当たり5x10の細胞を準備し、1,500rpmで5分間遠心分離した後、上澄み液を除去し、細胞ペレットを得た。該細胞ペレットは、FACSバッファで100μlずつ希釈し、抗IgG1k-FITC(eBioscience、11-4714-42)、抗IgG1k-APC(eBioscience、17-4714-42)と、抗CD3-FITC(eBioscience、11-0038-42)、抗CD56-APC(eBioscience、17-0567-42)との抗体を入れ、常温で15分間表面抗原を染色し、その後、PBSを500μlずつ入れ、6,000rpmで3分間遠心分離した。細胞内染色を行うために、Fixation/Permeabilization Solution Kit(BD、554714)を利用し、Fixation/Permeabilization solutionを入れ、20分間冷蔵庫で反応させ、Perm/Wash bufferを入れ、6,000rpmで3分間2回遠心分離した。上澄み液を除去して得られた細胞ペレットは、Perm/Wash buffer100μlでそれぞれ希釈し、抗IgG1k-PE(eBioscience、12-4714-42)、抗ペルフォリン-PE(eBioscience、12-9994-42)、抗グランザイムB-PE(eBioscience、12-8899-41)の抗体を入れ、冷蔵庫で30分間細胞内染色処理を行った。染色した後、細胞溶液は、PBS 500μlずつ入れて遠心分離し、1% PFAで固定した後、流細胞分析器を利用して分析した。
【0115】
インターフェロンγは、前述のところと同一方法で細胞ペレットを得た後、フェノールレッドが含まれていないRPMI培地に、10% FBSと1%ペニシリンが添加された培養液を利用して希釈し、24ウェルプレートに500μlずつ分注した。その後、PMA/イオノマイシン(Biolegend)0.5μlとGolgiPlugTM(BD Bioscience、米国)0.5μlとで処理し、4時間37℃ 5% COインキュベータで反応させた。反応4時間後、細胞を収去し、6,000rpmで3分間遠心分離し、上澄み液を除去した。細胞ペレットは、抗IgG1k-FITC(eBioscience、11-4714-42)、抗IgG1k-APC(eBioscience、17-4714-42)と、抗CD3-FITC(eBioscience、11-0038-42)、抗CD56-APC(eBioscience、17-0567-42)との抗体を利用し、表面抗原染色し、細胞内染色を進めた。細胞内染色は、抗IgG1k-PE(eBioscience、12-4714-42)と抗INF-γ-PE(eBioscience、12-8899-41)との抗体で染色し、1% PFAで固定した後、流細胞分析器を利用して分析した。
【0116】
前記のグランザイムB、パーフォリン及びインターフェロンγに係わる結果は、図5に示した。
【0117】
図5は、一具体例によるナチュラルキラー細胞と、培養前PBMCの抗癌物質(グランザイムB、パーフォリン及びインターフェロンγ)との発現を、流細胞分析器を利用し、ドットプロットとグラフとで示した結果である。
【0118】
図5に示されているように、一具体例によるナチュラルキラー細胞は、抗癌物質であるグランザイムB、パーフォリン及びインターフェロンγを少なくとも80%以上発現するということが分かった。それは、培養前PBMCに比べ、少なくとも4倍以上増大された数値である。
【0119】
また、一具体例によるナチュラルキラー細胞と、培養前PBMCとのCD107aの脱顆粒化の発現を比較するために、慢性骨髄性白血病患者の骨髄から抽出したリムパ芽細胞であるK562を標的細胞にして反応させ、CD107aの発現程度を分析した。
【0120】
具体的には、標的細胞であるK562細胞は、条件当たり1x10の細胞を準備し、1,500rpmで5分間遠心分離した後、上澄み液を除去してペレットを得た。該細胞ペレットは、フェノールレッドが含まれていないRPMI培地に、10% FBSと、1%ペニシリン・ストレプトマイシン(10,000U/mL)(Gibco、15140122)が添加された培養液を250μlずつ入れて希釈した。ナチュラルキラー細胞は、活性化ナチュラルキラー細胞と標的細胞とを5:1の比率で準備するために、条件当たり5x10の細胞を準備した。準備された細胞を遠心分離した後、上澄み液を除去し、標的細胞を希釈したところと同じ培養液250μlを入れて懸濁した。その後、24ウェルプレートに、準備された活性化ナチュラルキラー細胞と標的細胞とを5:1の比率で入れた後、抗IgG1k-PE(eBioscience)と抗CD107a-PE(eBioscience)との抗体を添加し、4時間37℃ 5% CO条件でインキュベータで反応させた。4時間の反応が完了すれば、細胞を収去し、抗IgG1k-FITC(eBioscience)、抗IgG1k-APC(eBioscience)と、抗CD3-FITC(eBioscience)、抗CD56-APC(eBioscience)との蛍光物質を有した抗体で染色し、ナチュラルキラー細胞だけを区分した。染色した後、PBS 500μlずつを入れて遠心分離して細胞を洗浄し、1% PFAで固定した後、流細胞分析器を利用して分析し、その結果を図6に示した。
【0121】
図6は、一具体例によるナチュラルキラー細胞と、培養前PBMCとのCD107aの脱顆粒化の発現を、ドットプロットとグラフとで示した結果である。
【0122】
図6に示されているように一具体例によるナチュラルキラー細胞は、CD107aを少なくとも60%以上発現するということが分かり、それは、培養前PBMCに比べ、少なくとも3倍以上増大された数値である。
【0123】
実験例2.膠芽腫細胞株の配位子と、活性化ナチュラルキラー細胞との相互作用分析
膠芽腫細胞株の配位子と、一具体例によるナチュラルキラー細胞との相互作用を分析した。
【0124】
まず、膠芽腫細胞株であるU-87MG細胞とT98G細胞は、10% FBSと1%ペニシリン・ストレプトマイシン(10,000U/mL)とが添加されたDMEM培地で培養し、他の膠芽腫細胞株であるU-373MG細胞とA172細胞は、10% FBSと1%ペニシリン・ストレプトマイシン(10,000U/mL)とが添加されたRPMI培地で培養した。その後、膠芽腫細胞株T98G及び膠芽腫細胞株U-87MG,A172,U-373MGに対し、ナチュラルキラー細胞の配位子であるHLA-ABC、HLA-E、MICA、MICB、ULBP1、ULBP2、ULBP3、ULBP4、PVR、ICAM-1、ICAM-2、ICAM-3、LFA-3、B7-H6、PVR、Necin-2の抗体を染色し、細胞の発現程度を分析した。
【0125】
具体的には、T75フラスコで培養した各癌細胞株につき、0.25%トリプシン・EDTA(1X)、フェノールレッドを添加し、3分ないし5分間37℃ 5% COインキュベータで反応させた後、細胞を浮遊させ、10% FBSが添加された培養液で酵素を不活性化させて細胞を収去した。収去された細胞は、細胞数を測定し、8.5x10細胞を準備し、1,500rpmで5分間遠心分離した後、上澄み液を除去し、FACSバッファ(2% FBSが含まれたPBS)で1.7mlに希釈した。次に、下記表6に記載された蛍光物質を含む抗体を、条件別に5ml FACSチューブに入れ、希釈された細胞溶液を100μlずつ分注し、常温で15分間染色した。染色された細胞は、1% PFA 500μlずつ入れて固定した後、流細胞分析器(Bechman Coulter、米国)を利用して分析し、その結果は図7に示した。
【0126】
【表6】
【0127】
図7Aないし図7Dは、一具体例によるナチュラルキラー細胞の膠芽腫細胞株に対する配位子の発現をドットプロットで示した結果である。
【0128】
図7Aないし図7Dに示されているように、T98Gは、テモゾロミド(temozolomiede)耐性を有した膠芽腫細胞であり、U-373MGとU-87MGは、それぞれグレード(grade)3,4の膠芽腫細胞株である。細胞に対する配位子の分析を介し、NK細胞の主要受容体との相互作用を介する殺傷能を期待することができる。特に、HLA-ABCの発現が低く、NK配位子の発現が比較的高いT98G(rMFI 24.8)とU-87MG(rMFI 30.5)とにおいて、さらに有意の結果を予想することができる。
【0129】
実験例3.膠芽腫細胞株に対する細胞殺傷能確認
一具体例によるナチュラルキラー細胞の直接的な細胞殺傷能を確認するために、ナチュラルキラー細胞に対する敏感性が高い血液癌細胞株K562と、膠芽腫細胞株のA172細胞、U-87MG細胞、U-373MG細胞、T98G細胞を対象に、細胞の殺傷能を評価した。
【0130】
ターゲット癌細胞(K562、U-87MG、U-373MG、A172、T98G)を収去し、1,500rpmで5分間遠心分離し、上澄み液を除去した。その後、DPBSで希釈して洗浄し、洗浄後の細胞ペレットは、フェノールレッドが含まれていないRPMI培地に、10% FBSが添加された培養液に浮遊させた。条件当たり1x10の細胞を準備し、CFSE(Life Technologies)5μMの濃度で、5% CO条件でインキュベータで10分間静置して染色した。DPBSで2回洗浄した後、フェノールレッドが含まれていないRPMI培地に、10% FBSが添加された培養液で希釈した。活性化ナチュラルキラー細胞は、ターゲット細胞とのE:T比率(1:1、1.25:1、2.5:1、5:1、10:1、20:1)別に細胞を準備し、24ウェルプレートにターゲット細胞と共に分注して混ぜた。4時間反応を行い、反応終了20分前、7-アミノアクチノマイシンD(7AAD)で処理した。反応終了後には、細胞を5ml FACSチューブに収去し、流細胞分析器を介し、細胞の殺傷能を分析し、その結果を図8及び図9に示した。
【0131】
図8は、一具体例によるナチュラルキラー細胞の血液癌細胞株K562に対するE:T比率別細胞殺傷能を示す結果である。
【0132】
図9は、一具体例によるナチュラルキラー細胞の膠芽腫細胞株A172,U-87MG,U-373MG,T98Gに対するE:T比率別細胞殺傷能を示す結果である。
【0133】
図8及び図9に示されているように、培養前PBMCの場合、膠芽腫に対する抗癌活性が有意ではないが、一具体例によるナチュラルキラー細胞は、血液癌細胞株及び膠芽腫細胞株において、顕著な抗癌活性を有するということを確認した。
【0134】
以上の結果は、一具体例による新規のナチュラルキラー細胞は、膠芽腫に対し、有意な免疫受容体の発現するだけではなく、自己寛容を克服することができる免疫受容体を発現する細胞として、血液癌や膠芽腫などの治療に有用に使用されうる効果がある。
【0135】
実験例4.ナチュラルキラー細胞のブロッキングアッセイ
一具体例によるナチュラルキラー細胞において、特定因子の発現が抑制される場合、癌細胞に対する細胞毒性が抑制されるか否かということを確認した。
【0136】
具体的には、NKp30に係わる抗体、NKp44に係わる抗体、NKG2Dに係わる抗体を利用し、それら受容体の活性が遮断されたナチュラルキラー細胞を製造した。その後、前記実験例3.と同一方法で、U-87MG、U-373MG、A172、T98Gに対する細胞毒性を確認し、その結果を図10に示した。
【0137】
図10は、一具体例によるナチュラルキラー細胞において、特定受容体を遮断した後、それらナチュラルキラー細胞の癌細胞株に対する細胞毒性を確認したグラフである。
【0138】
図10に示されているように、一具体例によるナチュラルキラー細胞において、NKp30、NKp44またはNKG2Dの活性を抑制した場合、細胞毒性が顕著に低減するということが分かった。特に、NKG2Dの活性を抑制する場合、あるいは3個の受容体をいずれも抑制する場合には、細胞毒性効果が顕著に抑制されるということが分かった。
【0139】
そのような結果は、一具体例によるナチュラルキラー細胞において、NKp30、NKp44及び/またはNKG2Dの活性が細胞毒性の主要因子であり、特定MFI値のNKp30、NKp44及び/またはNKG2Dを有する一具体例によるナチュラルキラー細胞は、抗癌活性が顕著に増大された細胞であるということを意味する。
【0140】
実験例5.ナチュラルキラー細胞の抗癌活性分析
5.1.卵巣癌動物モデルにおける抗癌活性分析
一具体例によるナチュラルキラー細胞の抗癌活性をインビボ(in vivo)で確認した。
【0141】
まず、NOD-SCIDマウスに、卵巣癌細胞株であるOVCAR3を1x10細胞/匹を皮下投与し、異種移植動物モデルを製造した。その後、下記表7のように、試験群を設定した。
【0142】
【表7】
【0143】
陰性対照群G1ビヒクル群は、5%アルブミン:デキストラン注=1:1の比率で製造し、100μl静脈投与した。陽性対照群G2シスプラチン群は、シスプラチン1.5mg/kgを投与した。ナチュラルキラー細胞投与群のG3新鮮NK群とG4凍結NK群は、細胞の新鮮型と凍結型との差であり、G4凍結NK群は、凍結されたNK細胞を解凍し、1x10細胞を1匹当たり投与し、G3新鮮NK群は、培養中細胞を回収し、1x10細胞を1匹当たり投与した。投与群は、1週2回投与で、総6回投与した。試験期間の間、マウスの生存率及び腫瘍サイズ、症状を観察し、78日間モニタリングを行った。78日以後には、動物を犠牲にして抽出した腫瘍の重さを測定し、その結果を、下記表8及び図11に示した。
【0144】
【表8】
【0145】
図11は、一具体例によるナチュラルキラー細胞を、卵巣癌動物モデルに投与した後、腫瘍重量の減少を観察したグラフである(矢印は、薬物投与時期を示す)。
【0146】
前掲の表8、及び図11に示されているように、一具体例によるナチュラルキラー細胞を投与したとき、陽性対照群対比の腫瘍の重さが、約50%ないし60%低減したことを確認することができた。特に、陽性対照群は、50日後、腫瘍成長が加速化され、腫瘍体積が早く増大したところに対し、一具体例によるナチュラルキラー細胞の投与群は、モニタリング期間の間、腫瘍成長が顕著に遅くなったことを確認することができた。
【0147】
5.2.胃癌動物モデルにおける抗癌活性分析
一具体例によるナチュラルキラー細胞の抗癌活性を、インビボ(in vivo)で確認した。
【0148】
まず、NOD-SCIDマウスに、胃癌細胞株であるNCI-N87を、1x10細胞/匹を投与し、異種移植動物モデルを製造した。腫瘍移植6日後、下記表9の試験群を設定した。
【0149】
【表9】
【0150】
陰性対照群G1ビヒクル群は、5%アルブミン:デキストラン注=1:1の比率で製造し、200μl静脈投与した。陽性対照群G2HER2群は、ハーセプチン1mg/kgでもって、1週2回ずつ総6回静脈投与した。G3新鮮NK群とG4凍結NK群は、ナチュラルキラー細胞単独投与群であり、1x10細胞/匹を1週2回投与し、総6回静脈投与した。G3新鮮NK群は、培養中細胞を回収して得た細胞を投与し、G4凍結NK群は、凍結されたNK細胞を解凍し、1x10細胞を1匹当たり投与した。NK細胞とハーセプチンとの併用投与群であるG5 NKL+ハーセプチン群とG6 NKF+ハーセプチン群は、NK細胞単独投与群と同一細胞に、ハーセプチン1mg/kgを併用投与した群であり、週2回ずつ総6回静脈投与した。
【0151】
試験期間の間、マウスの生存率及び腫瘍サイズ、症状を観察し、52日間モニタリングを行った。52日以後には、動物を犠牲して抽出した腫瘍の重さを測定し、その結果を下記表10及び図12に示した。
【0152】
【表10】
【0153】
図12は、一具体例によるナチュラルキラー細胞を胃癌動物モデルに投与した後、腫瘍重量低減を観察したグラフである。
【0154】
前掲の表10、及び図12に示されているように、一具体例によるナチュラルキラー細胞を投与したとき、陽性対照群対比の腫瘍の重さが約60%ないし70%低減したことを確認することができた。特に、陽性対照群は、28日以後、腫瘍成長が加速化され、腫瘍体積が早く増大したところに対し、一具体例によるナチュラルキラー細胞の投与群は、モニタリング期間の間、腫瘍成長が顕著に遅くなったことを確認することができた。
【0155】
また、ハーセプチンとナチュラルキラー細胞との併用投与群においては、ナチュラルキラー細胞単独投与群対比の腫瘍の重さが、約17%ないし20%低減することを確認することができた。それは、ナチュラルキラー細胞とハーセプチンとの併用投与のADCC(antibody-dependent cell cytotoxicity)を適用する場合、高い腫瘍成長の抑制効果と、抗癌効能の維持期間とを得ることができるということを意味する。
【0156】
5.2.膠芽腫動物モデルにおける抗癌活性分析
一具体例によるナチュラルキラー細胞の抗癌活性を、インビボ(in vivo)で確認した。
【0157】
まず、7週齢NOGメスマウスに、ヒト脳膠芽腫由来の細胞株U87MGに、ルシフェラーゼ遺伝子が形質導入されたU87MG-luci細胞1×10個を、マウスモデルの右側大脳半球頭蓋骨(brain cerebral hemisphere skull)中に移植し、実験同所移植動物モデルを構築した。細胞を移植し、一定期間経過後、IVISバイオイメージング装備(PerkinElmer、米国)を利用し、腫瘍の光学映像BLI(bioluminescence)を測定し、移植後7日目、BLI値が平均値を有するように個体を選別した。選別された動物は、下記表11のように、試験群別に区分した。
【0158】
【表11】
【0159】
陰性対照群G1ビヒクル群は、5%アルブミン:デキストラン注=1:1の比率で製造し、1匹当たり200μlずつ静脈投与した。試験群G2 NK細胞群は、ナチュラルキラー細胞1x10細胞を1匹当たり静脈投与し、1週2回投与で、総6回投与を進めた。モニタリング期間の間、週2回、IVISバイオイメージング装備(PerkinElmer、米国)を利用し、腫瘍体積を測定した。腫瘍体積測定のために、150mg/kg用量のルシフェリン(luciferin)(Promega)を10mL/kgで腹腔投与し、10分後、投与した各個体に対し、順次に吸入麻酔機を利用して麻酔を施した。麻酔が完全に施された個体に対し、順次にIVIS装備を利用し、腫瘍の光学映像(BLI)を測定し、測定された関心領域(ROI:region of interest)の光学映像値は、委託研究機関である(株)WOOJUNGバイオ(京畿道、大韓民国)の内部基準に準ずる閾値(threshold)に準して分析した。前述の結果は、下記表12及び図13に示した。
【0160】
【表12】
【0161】
図13は、一具体例によるナチュラルキラー細胞を胃癌動物モデルに投与した後、腫瘍重量の低減を観察したグラフである。
【0162】
前掲の表12及び図13に示されているように、陰性対照群(G1)は、投与後16日目までの腫瘍体積の変動が、4.28.E+08p/sec/cm/srから1.09.E+10p/sec/cm/srと、実験期間の間、持続的に増大することが観察された。それに対し、一具体例によるナチュラルキラー細胞を投与したとき、3.19.E+08p/sec/cm/srから1.78.E+09p/sec/cm/srと、実験期間の間、ほとんど微々たる増大をなし、16日目基準で、陰性対照群対比の約5倍以上腫瘍重量に違いがあることが分かった。それは、一具体例によるナチュラルキラー細胞が、膠芽腫において、高い腫瘍成長の抑制効果を有するということを意味する。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2024-03-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネスチン、CD147、PSA-NCAM、S100B、チロシンヒドロキシラーゼ、CD29、CD49c、CD146、CD15及びCD31の特性を有し、且つ、
下記(a)ないし下記(e)のうちから選択される1以上の特性を有する分離された、ナチュラルキラー細胞:
(a)PBMCの培養0日目対比で、NKG2Dの相対的MFI値が、1.2倍ないし12倍増大したこと、
(b)PBMCの培養0日目対比で、NKp30の相対的MFI値が、1.5倍ないし15倍増大したこと、
(c)PBMCの培養0日目対比で、NKp44の相対的MFI値が、12倍ないし22倍増大したこと、
(d)PBMCの培養0日目対比で、ITGA1の相対的MFI値が、1.8倍ないし25倍増大したこと、及び
(e)PBMCの培養0日目対比で、ITGA2の相対的MFI値が、1.4倍ないし6倍増大し、
前記相対的MFIは、下記数式1によって定義される:
【数1】
【請求項2】
前記(a)の相対的MFI値が、3倍ないし6倍増大したこと、
前記(b)の相対的MFI値が、3倍ないし6倍増大したこと、
前記(c)の相対的MFI値が、12倍ないし18倍増大したこと、
前記(d)の相対的MFI値が、6倍ないし10倍増大したこと、及び
前記(e)の相対的MFI値が、2倍ないし4倍増大した、
請求項1に記載のナチュラルキラー細胞。
【請求項3】
10ないし140のMFI値のCD16、20ないし160のMFI値のLFA-1、5ないし25のMFI値のNKG2D、5ないし20のMFI値のNKp30、12ないし25のMFI値のNKp44、4ないし25のMFI値のITGA1、及び2ないし10のMFI値のITGA2のうちから選択される1以上の特性を有する、請求項1に記載のナチュラルキラー細胞。
【請求項4】
20ないし180のMFI値のCD2、0.1ないし1.5のMFI値のCD27、1ないし10のMFI値のCD69、2ないし12のMFI値のCD226、2ないし8のMFI値のNKp46、0.1ないし4のMFI値のCD160、0.1ないし4のMFI値のKIR2DL1、0.1ないし5のMFI値のKR2DL3、0.1ないし4のMFI値のKIR3DL1、0.4ないし16のMFI値のNKG2A、0.2ないし12のMFI値のCD161、0.3ないし3のMFI値のCCR3、0.5ないし4のMFI値のCCR5、0.8ないし6のMFI値のCCR6、0.4ないし5のMFI値のCXCR3、0.4ないし5のMFI値のCXCR1、0.1ないし3のMFI値のCXCR2及び1ないし16のMFI値のITGB7のうちから選択される1以上の特性をさらに有する、請求項1に記載のナチュラルキラー細胞。
【請求項5】
下記(f)の特性をさらに有する、請求項1に記載のナチュラルキラー細胞:
(f)PBMCの培養0日目対比で、培養14日目に、KIR2DS4遺伝子の発現量が、10倍ないし50倍である。
【請求項6】
KIR2DS1、KIR2DS2、KIR2DS3、KIRDS4、CXCR1、CXCR2、CXCR3、CCR3、CCR5、CCR6、CD127、CD107a、NKG2A、CD45、CD44、CD87、CD11b、CD10及びCD80のうちから選択されたいずれか1つの特性をさらに有する、請求項1に記載のナチュラルキラー細胞。
【請求項7】
前記ナチュラルキラー細胞は、細胞集団の50%ないし90%がNKp44を発現するか、細胞集団の50%ないし90%がKIR2DS2を発現するか、あるいは細胞集団の60%ないし100%がNKG2Dを発現する、請求項1に記載のナチュラルキラー細胞。
【請求項8】
前記ナチュラルキラー細胞は、PBMCからの培養時、PDGF-AA、PDGF-BB、PDGF-CC、PDGF-DDまたはPDGF-ABで処理された、請求項1に記載のナチュラルキラー細胞。
【請求項9】
請求項1ないし8のうちいずれか1項に記載のナチュラルキラー細胞またはその細胞集団を、有効成分として含む、癌予防用または治療用の薬学的組成物。
【請求項10】
前記ナチュラルキラー細胞は、免疫活性、血管脳障壁透過、細胞移動促進または自己寛容を抑制する、請求項9に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
前記癌は、肺癌、喉頭癌、胃癌、大腸癌、直腸癌、肝臓癌、胆嚢癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、子宮癌、子宮頸部癌、前立腺癌、腎臓癌、皮膚癌、骨癌、筋肉癌、脂肪癌、纎維細胞癌、血液癌、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫及び神経膠腫からなる群のうちから選択された1種以上である、請求項9に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
前記神経膠腫は、星細胞腫、乏突起膠細胞腫、混合神経膠腫または上衣細胞種である、請求項11に記載の薬学的組成物。
【請求項13】
前記星細胞腫は、膠芽腫、抗癌剤耐性膠芽腫または再発性膠芽腫である、請求項12に記載の薬学的組成物。
【請求項14】
前記癌は、MICA(MHC class I polypeptide-related sequence A)またはPDFG-DD(platelet-derived growth factor-DD)を分泌するか、あるいは発現する、請求項9に記載の薬学的組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0162
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0162】
前掲の表12及び図13に示されているように、陰性対照群(G1)は、投与後16日目までの腫瘍体積の変動が、4.28.E+08p/sec/cm/srから1.09.E+10p/sec/cm/srと、実験期間の間、持続的に増大することが観察された。それに対し、一具体例によるナチュラルキラー細胞を投与したとき、3.19.E+08p/sec/cm/srから1.78.E+09p/sec/cm/srと、実験期間の間、ほとんど微々たる増大をなし、16日目基準で、陰性対照群対比の約5倍以上腫瘍重量に違いがあることが分かった。それは、一具体例によるナチュラルキラー細胞が、膠芽腫において、高い腫瘍成長の抑制効果を有するということを意味する。
以下、本発明の実施形態を示す。
[1]下記(a)ないし下記(e)のうちから選択される1以上の特性を有する分離された、ナチュラルキラー細胞:
(a)PBMCの培養0日目対比で、NKG2Dの相対的MFI値が、1.2倍ないし12倍増大したこと、
(b)PBMCの培養0日目対比で、NKp30の相対的MFI値が、1.5倍ないし15倍増大したこと、
(c)PBMCの培養0日目対比で、NKp44の相対的MFI値が、12倍ないし22倍増大したこと、
(d)PBMCの培養0日目対比で、ITGA1の相対的MFI値が、1.8倍ないし25倍増大したこと、及び
(e)PBMCの培養0日目対比で、ITGA2の相対的MFI値が、1.4倍ないし6倍増大し、
前記相対的MFIは、下記数式1によって定義される:
〔数1〕

[2]前記(a)の相対的MFI値が、3倍ないし6倍増大したこと、
前記(b)の相対的MFI値が、3倍ないし6倍増大したこと、
前記(c)の相対的MFI値が、12倍ないし18倍増大したこと、
前記(d)の相対的MFI値が、6倍ないし10倍増大したこと、及び
前記(e)の相対的MFI値が、2倍ないし4倍増大した、[1]に記載のナチュラルキラー細胞。
[3]10ないし140のMFI値のCD16、20ないし160のMFI値のLFA-1、5ないし25のMFI値のNKG2D、5ないし20のMFI値のNKp30、12ないし25のMFI値のNKp44、4ないし25のMFI値のITGA1、及び2ないし10のMFI値のITGA2のうちから選択される1以上の特性を有する、[1]に記載のナチュラルキラー細胞。
[4]20ないし180のMFI値のCD2、0.1ないし1.5のMFI値のCD27、1ないし10のMFI値のCD69、2ないし12のMFI値のCD226、2ないし8のMFI値のNKp46、0.1ないし4のMFI値のCD160、0.1ないし4のMFI値のKIR2DL1、0.1ないし5のMFI値のKR2DL3、0.1ないし4のMFI値のKIR3DL1、0.4ないし16のMFI値のNKG2A、0.2ないし12のMFI値のCD161、0.3ないし3のMFI値のCCR3、0.5ないし4のMFI値のCCR5、0.8ないし6のMFI値のCCR6、0.4ないし5のMFI値のCXCR3、0.4ないし5のMFI値のCXCR1、0.1ないし3のMFI値のCXCR2及び1ないし16のMFI値のITGB7のうちから選択される1以上の特性をさらに有する、[1]に記載のナチュラルキラー細胞。
[5]下記(f)の特性をさらに有する、[1]に記載のナチュラルキラー細胞:
(f)PBMCの培養0日目対比で、培養14日目に、KIR2DS4遺伝子の発現量が、10倍ないし50倍である。
[6]KIR2DS1、KIR2DS2、KIR2DS3、KIRDS4、CXCR1、CXCR2、CXCR3、CCR3、CCR5、CCR6、PSA-NCAM、ネスチン、チロシンヒドロキシラーゼ、CD147、CD127、CD15、CD31、CD146、CD49c+、CD107a、NKG2A、CD45、CD44、CD140a、CD87、CD11b、CD10及びCD80のうちから選択されたいずれか1つの特性を有する、[1]に記載のナチュラルキラー細胞。
[7]前記ナチュラルキラー細胞は、細胞集団の50%ないし90%がNKp44を発現するか、細胞集団の50%ないし90%がKIR2DS2を発現するか、あるいは細胞集団の60ないし100%がNKG2Dを発現する、[1]に記載のナチュラルキラー細胞。
[8]前記ナチュラルキラー細胞は、PBMCからの培養時、PDGF-AA、PDGF-BB、PDGF-CC、PDGF-DDまたはPDGF-ABで処理された、[1]に記載のナチュラルキラー細胞。
[9][1]ないし[8]のうちいずれか1に記載のナチュラルキラー細胞またはその細胞集団を、有効成分として含む、癌予防用または治療用の薬学的組成物。
[10]前記ナチュラルキラー細胞は、免疫活性、血管脳障壁透過、細胞移動促進または自己寛容を抑制する、[9]に記載の薬学的組成物。
[11]前記癌は、肺癌、喉頭癌、胃癌、大腸癌、直腸癌、肝臓癌、胆嚢癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、子宮癌、子宮頸部癌、前立腺癌、腎臓癌、皮膚癌、骨癌、筋肉癌、脂肪癌、纎維細胞癌、血液癌、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫及び神経膠腫からなる群のうちから選択された1種以上である、[9]に記載の薬学的組成物。
[12]前記神経膠腫は、星細胞腫、乏突起膠細胞腫、混合神経膠腫または上衣細胞種である、[11]に記載の薬学的組成物。
[13]前記星細胞腫は、膠芽腫、抗癌剤耐性膠芽腫または再発性膠芽腫である、[12]に記載の薬学的組成物。
[14]前記癌は、MICA(MHC class I polypeptide-related sequence A)またはPDFG-DD(platelet-derived growth factor-DD)を分泌するか、あるいは発現する、[9]に記載の薬学的組成物。
[15][1]ないし[8]のうちいずれか1に記載のナチュラルキラー細胞またはその集団の有効量を、それを必要とする個体に投与する段階を含む癌を治療する方法。