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特開2024-54298高アスペクト比の鏡面体および鏡面基材、ならびに該鏡面基材を製造する方法および手段
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  • 特開-高アスペクト比の鏡面体および鏡面基材、ならびに該鏡面基材を製造する方法および手段 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054298
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】高アスペクト比の鏡面体および鏡面基材、ならびに該鏡面基材を製造する方法および手段
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/08 20060101AFI20240409BHJP
【FI】
G02B5/08 A
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024018957
(22)【出願日】2024-02-09
(62)【分割の表示】P 2019146326の分割
【原出願日】2019-08-08
(31)【優先権主張番号】10 2018 119 337.8
(32)【優先日】2018-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr. 10, 55122 Mainz, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マーティン シェーファー
(72)【発明者】
【氏名】マルコ ヴァイゼンブアガー
(72)【発明者】
【氏名】フォルカー ザイベアト
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ヴェスターホフ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】鏡面体および鏡面基材、特に高アスペクト比の鏡面体および鏡面基材、ならびにそれらを製造する方法および手段に関する。
【解決手段】平均線熱膨張係数が1×10-6/K以下、好ましくは0.1×10-6/K以下、最も好ましくは0.05×10-6/K以下である材料を含む鏡面基材20であって、前記鏡面基材は、以下の特徴:-前記鏡面基材は、少なくとも100、好ましくは少なくとも150、より好ましくは少なくとも200、最も好ましくは300以上の、その最大厚さに対するその横寸法の比を有する;-前記鏡面基材の単位面積当たりの質量は、100kg/m以下、好ましくは50kg/m以下、より好ましくは30kg/m、最も好ましくは15kg/m以下である;のうちの少なくとも一方を有し、前記鏡面基材は、最大3.5μm、好ましくは1.2μm未満の粗さRaを有する鏡面を有する、鏡面基材。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均線熱膨張係数が1×10-6/K以下、好ましくは0.1×10-6/K以下、最も好ましくは0.05×10-6/K以下である材料を含む鏡面基材であって、
前記鏡面基材は、以下の特徴:
- 前記鏡面基材は、少なくとも100、好ましくは少なくとも150、より好ましくは少なくとも200、最も好ましくは300以上の、その最大厚さに対するその横寸法の比を有する;
- 前記鏡面基材の単位面積当たりの質量は、100kg/m以下、好ましくは50kg/m以下、より好ましくは30kg/m、最も好ましくは15kg/m以下である;
のうちの少なくとも一方を有し、
前記鏡面基材は、最大3.5μm、好ましくは1.2μm未満の粗さRを有する鏡面を有する、鏡面基材。
【請求項2】
前記鏡面基材は、50mm以下、特に20mm以下、好ましくは15mm以下、より好ましくは10mm以下、最も好ましくは2mm以下の最大厚さを有する、請求項1記載の鏡面基材。
【請求項3】
前記鏡面基材は、少なくとも200mmおよび/または最大4500mmの横寸法を有する、請求項1または2記載の鏡面基材。
【請求項4】
前記表面は、2nm未満、好ましくは1nm未満の粗さRMSを有し、前記鏡面基材の表面には、好ましくはポリシング仕上げが施されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の鏡面基材。
【請求項5】
前記鏡面基材は、ガラスセラミック、好ましくはリチウムアルミニウムシリケートガラスセラミック、および/またはTiドープ合成シリカガラス、ならびに/またはセラミック、好ましくはコーディエライトおよび/もしくはSiCを含むセラミックを含み、前記リチウムアルミニウムシリケートガラスセラミックは、好ましくは高石英固溶体ガラスセラミックの形態である、請求項1から4までのいずれか1項記載の鏡面基材。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項記載の鏡面基材と、前記鏡面基材の鏡面上の高反射層とを含む、鏡面体。
【請求項7】
支持体(1)であって、該支持体(1)上に配置されている鏡面基材(20)、特に請求項1から5までのいずれか1項記載の鏡面基材(20)を、その加工および/または輸送中に、好ましくはその全面にわたって支持するための支持体(1)において、前記支持体は、1×10-6/K以下、好ましくは0.1×10-6/K以下、最も好ましくは0.05×10-6/K以下の平均線熱膨張係数を有する材料を含む、支持体(1)。
【請求項8】
前記鏡面基材(20)が負荷をかけている前記支持体の表面は、湾曲形状を有し、
好ましくは、前記支持体の前記表面はエンベロープに近似され、
最も好ましくは、前記エンベロープからの前記支持体の偏差は、
横寸法が少なくとも4000mmである鏡面基材の場合には、0.5mm以下、好ましくは0.025mm以下であり、かつ/または
好ましくは横寸法が少なくとも2000mmの鏡面基材(20)の場合には、0.2mm以下、好ましくは0.025mm以下であり、かつ/または
好ましくは横寸法が少なくとも1200mmである鏡面基材(20)の場合には、0.1mm以下、好ましくは0.01mm以下である、請求項7記載の支持体。
【請求項9】
前記支持体の前記表面は、中間体材料(13)、特にフィルム、好ましくはポリマーフィルムで少なくとも部分的に覆われており、
前記中間体材料(13)は、好ましくは、前記エンベロープからの前記表面の実際の形状の偏差と少なくとも同じ大きさの厚さを有し、
前記中間体材料(13)は、好ましくは最大200μm、好ましくは最大100μm、より好ましくは最大50μm、または最も好ましくはさらには25μm以下の最大厚さを有する、請求項7または8記載の支持体。
【請求項10】
前記中間体材料(13)は、ポリ塩化ビニルを含む、請求項9記載の支持体。
【請求項11】
前記支持体(1)の前記表面(4)は、前記中間体材料(13)で部分的に覆われており、該被覆は、前記中間体材料(13)が、間隔を空けた複数の部分の形態で前記表面(4)に施与されて、前記中間体材料の複数の部分の対称的な、好ましくは半径方向に対称的な、好ましくは4つの要素からなる半径方向に対称なパターンが画定されるように行われ、その際、前記複数の部分は、好ましくは円または楕円の形状を有する、請求項9または10記載の支持体。
【請求項12】
支持体(1)および鏡面基材(20)を含む集成体であって、
前記支持体(1)は、前記支持体(1)上に配置されている前記鏡面基材(20)をその加工および/または輸送中に、好ましくはその全面にわたって支持する役割を果たし、
前記支持体(1)は、平均線熱膨張係数が1×10-6/K以下、好ましくは0.1×10-6/K以下、最も好ましくは0.05×10-6/K以下である材料を含み、
前記鏡面基材は、平均線熱膨張係数が1×10-6/K以下、好ましくは0.1×10-6/K以下、最も好ましくは0.05×10-6/K以下である材料を含み、
好ましくは、前記鏡面基材は、50mm以下、特に20mm以下、好ましくは15mm以下、より好ましくは10mm以下、最も好ましくは2mm以下の最大厚さを有し、
好ましくは、前記鏡面基材は、少なくとも200mmの横寸法を有し、
前記鏡面基材は、以下の特徴:
- 前記鏡面基材は、少なくとも100、好ましくは少なくとも150、より好ましくは少なくとも200、最も好ましくは300以上の、その最大厚さに対するその横寸法の比を有する;
- 前記鏡面基材の単位面積当たりの質量は、100kg/m以下、好ましくは50kg/m以下、より好ましくは30kg/m、最も好ましくは15kg/m以下である;
のうちの少なくとも一方を有し、
好ましくは、前記鏡面は、3.5μm以下、好ましくは1.2μm以下の粗さを有する、集成体。
【請求項13】
前記支持体を構成する材料の熱膨張係数と、前記鏡面基材を構成する材料の熱膨張係数との絶対値の差は、1×10-6/K以下、好ましくは0.1×10-6/K以下、より好ましくは0.05×10-6/K以下、最も好ましくは0.02×10-6/K以下である、請求項12記載の集成体。
【請求項14】
前記支持体の表面と、前記支持体の表面に負荷をかけている前記鏡面基材の表面とは、互いに相補的な湾曲を有する、請求項12または13記載の集成体。
【請求項15】
前記鏡面基材(20)は、前記支持体(4)に横方向に固定されており、好ましくは、前記鏡面基材(20)は、前記支持体(4)から脱着しないように追加的に固定されている、請求項12から14までのいずれか1項記載の集成体。
【請求項16】
鏡面基材(20)、特に請求項1から5までのいずれか1項記載の鏡面基材(20)の製造方法であって、前記方法は、
- 支持体(1)であって、該支持体(1)上に配置されている鏡面基材(20)を好ましくはその全面にわたって支持するための支持体(1)を準備する工程と、
- 熱膨張係数が1×10-6/K以下、好ましくは0.1×10-6/K以下、最も好ましくは0.05×10-6/K以下である材料を含む鏡面基材(20)を準備する工程と、
- 前記鏡面基材(20)を前記支持体(1)上に配置する工程と、
- 前記鏡面基材(20)の表面、特にその前記鏡面(21)の機械的再加工、特にポリシング、穿孔、研削、またはラッピングを行う工程と、を含み、
前記支持体(1)を構成する材料の熱膨張係数と、前記鏡面基材(20)を構成する材料の熱膨張係数との絶対値の差は、1×10-6/K以下、好ましくは0.1×10-6/K以下、より好ましくは0.05×10-6/K以下、最も好ましくは0.02×10-6/K以下である、方法。
【請求項17】
前記支持体(1)の表面(4)および支持面(22)を、材料除去のための機械加工によって所定の表面プロファイルに従って成形し、その際、前記鏡面基材(20)の前記支持面(22)と前記支持体(1)の前記表面(4)とを、互いに相補的な形状で形成し、前記鏡面基材(20)の前記支持面(22)と前記支持体(1)の前記表面(4)とをまとめ、前記鏡面基材(20)を前記支持体(1)に固定して集成体(15)を形成し、次いで、前記集成体(15)において、材料除去のための機械加工によって、前記支持面(22)の反対側の機能表面(21)を形成する、請求項16記載の方法。
【請求項18】
天文学用途、LCDリソグラフィ、および/またはマイクロリソグラフィにおける、請求項1から5までのいずれか1項記載の鏡面基材の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は全体として、鏡面体および鏡面基材、特に高アスペクト比の鏡面体および鏡面基材、ならびにそれらを製造する方法および手段に関する。
【0002】
先行技術
鏡面基材は、例えば、リフレクタもしくは反射体としても知られる、いわゆる反射望遠鏡、または他の精密光学部品において使用され、高反射鏡面層を施与するための基材としての役割を果たす。
【0003】
特に長期安定性に関して一貫して高品質の鏡面体を実現するには、次のような鏡面基材の特性が重要な役割を果たす。
【0004】
- 鏡面基材の質量
鏡面基材の質量が過度に大きい場合には、例えば該鏡面基材は特に大きな直径を有する鏡面体であることから、鏡面基材の固有の質量下で変形が発生し得、光学画像の品質が低下し得る。しかしながら一般的には、鏡面基材が小さい場合であっても、取り扱い性の向上ゆえに、軽量であることが有益である。
【0005】
- 鏡面基材の表面品質
高品質の反射層を堆積させるためには、鏡面基材の高い表面品質が必要である。特に重要なのは、上に高反射層を堆積させる鏡面基材の鏡面の粗さである。
【0006】
- さらなる特性
さらに、鏡面基材は、高抵抗性、特に高熱抵抗性でかつ熱膨張係数の低い材料から実質的に構成されていることが望ましい。適切な材料は、特にガラス、セラミック、ガラスセラミックを含む。一般的に、材料の熱膨張率は静的な方法で測定されるが、その際、特定の温度間隔の開始時と終了時に試験片の長さを測定し、これらの長さの差から膨張係数αまたはCTE(熱膨張係数)が計算される。CTEは、その温度間隔の平均として報告され、例えば、0℃~50℃の温度間隔では、CTE(0;50)またはα(0;50)として報告される。室温付近の温度範囲での膨張がゼロである精密部品の公知の材料は、セラミック、Tiドープ溶融シリカSiO、およびガラスセラミックである。ガラスセラミックは、特に、リチウムアルミニウムシリケートガラスセラミック(LASガラスセラミック)であり、例えば、米国特許第4,851,372号明細書(US 4,851,372)、米国特許第5,591,682号明細書(US 5,591,682)、欧州特許第587979号明細書(EP 587979)、米国特許第7,226,881号明細書(US 7,226,881)、米国特許第7,645,714号明細書(US 7,645,714)および独国特許出願公開第102004008824号明細書(DE 102004008824 A1)に記載されている。
【0007】
さらに、例えば、商標ZERODUR(登録商標)もしくはClearceram(登録商標)で市販されているリチウムアルミニウムシリケートガラスセラミック、またはコーディエライト系材料、または熱膨張係数が非常に低いガラス、例えばTiOをドープした合成溶融シリカ、例えばULE(登録商標)の商標で販売されているガラス、またはコーディエライトもしくはSiCを含むセラミック、またはコーディエライトもしくはSiCからなるセラミックが知られている。
【0008】
通常、鏡面基材、例えばガラスセラミック製の基材は、最初に溶融物を準備し、次に材料をキャストして最初にガラス質の材料を準備することによって製造される。材料の割れを防ぎ、ガラス質の出発材料からガラスセラミックを製造するには、複雑な温度制御、特にゆっくりとした制御された冷却が必要である。合成溶融シリカの製造でも、SiOの堆積によって、いわゆるインゴットまたはかなり大きなシートが最初に製造される。必要に応じて、プロセスを下げることでシートの直径を大きくすることができる。
【0009】
次いで、所望の寸法および所望の品質を備えたワークピースを得るために、機械的な再加工が行われる。機械的な再加工は、特に穿孔、研削、およびポリシングを含み得る。
【0010】
そのような再加工工程に支持体を使用し、該支持体をそれぞれワークピースまたは鏡面基材の下に配置することが知られている。このような支持体を使用することで鏡面基材の損傷を防ぐことができる。
【0011】
特に、高アスペクト比のワークピース、例えば高アスペクト比の鏡面基材を好ましくは、機械的再加工中に、またコーティングなどのその他の再加工工程中にも、また輸送時にも、ワークピースの全面にわたって支持することが望ましいことが知られている。ワークピースのこうした全面的な支持は、特に、ワークピース、すなわち例えば鏡面基材を、例えば重力の影響下で変形しないように寸法を一定に保つことを目的としている。
【0012】
例えば、独国特許出願公開第102015112036号明細書(DE 10 2015 112 036 A1)には、高アスペクト比の複数のワークピースのための、1つのワークピースを全面的に支持するための鉱物系のキャスティング支持体が開示されている。
【0013】
しかしながら、特別な品質の表面を達成するために大規模なポリシングプロセスが必要である場合には、そのような鉱物系のキャスティング支持体には問題が生じることがわかっている。この場合、多量の熱が発生する。しかしながらこのことは、低膨張材料で構成された支持ワークピースと鉱物系のキャスティング支持体とでは熱膨張が異なるという点に関して好ましくなく、そのため、鏡面基材の幾何学的寸法とその表面品質に関して必要な精度を達成することは不可能である。
【0014】
欧州特許出願公開第1391433号明細書(EP 1 391 433 A2)には、例えばガラスまたはガラスセラミックの成形に使用され得るキータイトガラスセラミック製の支持体が開示されている。しかしながら、キータイトガラスセラミックもまた、鏡面基材に使用される通常の低膨張材料と比較して熱膨張係数が高い。そのため、この方法でも、幾何学的寸法と表面品質に関して必要な精度を有する鏡面基材を製造することはできない。
【0015】
こうした問題はとりわけ、特に小さな厚さと大きな直径とを同時に有する新規な鏡面基材に対処する場合に生じる。現在、このような鏡面基材は、製造できないか、形状安定性および表面品質に関して十分な品質を有していないか、また加工中に破損することさえある。
【0016】
したがって、絶対厚さが小さいと同時に、高い表面品質と寸法精度と安定性とを兼ね備えた高アスペクト比の鏡面基材および鏡面体が必要とされている。さらに、高アスペクト比の鏡面基材および鏡面体の製造に使用可能な支持体、ならびに該鏡面基材および鏡面体の製造方法が必要とされている。
【0017】
発明の目的
本発明の目的は、従来技術の既知の欠陥を克服または少なくとも軽減する鏡面基材を提供するとともに、鏡面体、特に該鏡面基材をベースとする鏡面体を提供することである。また、該鏡面基材および該鏡面基材をベースとする鏡面体を製造する方法および手段も必要とされている。
【0018】
本発明の目的は、独立請求項の主題によって達成される。好ましい具体的な実施形態は、従属請求項によって定められる。
【0019】
本発明による鏡面基材は、平均線熱膨張係数が1×10-6/K以下、好ましくは0.1×10-6/K以下、最も好ましくは0.05×10-6/K以下である材料を含む。特に有利な実施形態によれば、鏡面基材は、さらには0.02×10-6/K以下、またはさらには0.01×10-6/K以下の平均線熱膨張係数を有し得る。
【0020】
この鏡面基材は、以下の特徴のうちの少なくとも一方を有する:
- 鏡面基材は、少なくとも100、好ましくは少なくとも150、より好ましくは少なくとも200、最も好ましくは300以上の、その最大厚さに対するその横寸法の比を有する。
【0021】
- 鏡面基材の単位面積当たりの質量は、100kg/m以下、好ましくは50kg/m以下、より好ましくは30kg/m、最も好ましくは15kg/m以下である。
【0022】
鏡面基材は、最大で3.5μm、理想的には1.2μm未満の粗さRを有する鏡面を有し、鏡面基材の鏡面には、好ましくは研削仕上げが施されている。Rは、評価長内の中心線に対する偏差から決定される、フィルター処理された粗さプロファイルの算術平均値である。二乗平均平方根RMSは、二乗平均平方根(数値のセットの二乗の算術平均)と定義される。RおよびRMSなどのプロファイル粗さパラメーターは、ISO 4287:1997に含まれる。
【0023】
本発明の一実施形態によれば、鏡面基材の最大厚さは、50mm以下、特に20mm以下、好ましくは15mm以下、より好ましくは10mm以下、最も好ましくは2mm以下である。
【0024】
好ましくは、鏡面基材は、少なくとも200mmおよび/または最大4500mmの横寸法を有する。しかしながら、本発明は、より小さいか、またはより大きい横寸法を有する鏡面基材にも等しく適用可能である。
【0025】
本発明のさらなる実施形態によれば、鏡面基材は、該鏡面基材が2nm未満、好ましくは1nm未満の二乗平均平方根(RMS)粗さを有するポリシング済みの鏡面を有するように、支持体上でポリシングすることができる。
【0026】
本出願の文脈においては、以下の定義および用語を適用する。
【0027】
熱膨張係数が低い鏡面基材材料とは、平均線熱膨張係数が3×10-6/K以下である材料を指す。
【0028】
鏡面基材の横寸法の最大厚さに対する比率は、アスペクト比とも呼ばれる。したがって、アスペクト比は無次元パラメーターである。通常、鏡面基材の形状は円形またはほぼ円形であるため、通常、横寸法は鏡面基材の直径である。鏡面基材の横寸法が異なる場合、例えば鏡面基材の幅がその長さと異なる場合には、平均値が計算され、アスペクト比の計算に使用される。
【0029】
鏡面基材の厚さは、鏡面基材の全範囲にわたって変化し得る。例えば、鏡面基材は、その中心部よりも外縁部の厚さの方が小さい場合がある。アスペクト比を求めるために、最大厚さが使用される。
【0030】
通常、アスペクト比が高いということは、単位面積あたりの質量が小さいことを意味する。本発明の一実施形態では、単位面積当たりのこの質量は、100kg/m以下、好ましくは50kg/m以下、最も好ましくは30kg/m以下である。
【0031】
本出願では、特に明記しない限り、平均熱膨張係数αは0℃~50℃の範囲におけるものであるが、本発明は、異なる温度範囲で測定された膨張係数を有する低熱膨張率を特徴とする材料にも関する。この値は、静的測定によって決定されるISO 7991に準拠した平均線熱膨張率の公称係数である。本発明の文脈では、特に明記しない限り、膨張係数、熱膨張係数、平均線熱膨張係数、およびαという用語は、互換的に使用される。
【0032】
本発明において、鏡面基材とは、高反射層(または鏡面層)が施与された基材を意味すると理解される。鏡面基材という用語は、鏡面基材に加工されるべき、または加工されるワークピース、すなわち例えば鏡面基材の半製品も含み、これは、完成した鏡面基材の寸法にすでに切断されているものの、さらに再加工工程に供される必要がある。
【0033】
本発明の文脈において、鏡面体とは、鏡面基材とその機能表面上の高反射層との複合体を指す。反射層が施与される鏡面基材の表面は、本開示では鏡面基材の機能表面と呼ばれる。高反射層は、本発明の文脈では鏡面層とも呼ばれる。
【0034】
支持体とは、保管中、輸送中、および/または鏡面基材など、その上に置かれたワークピースの再加工時に支持目的として働く手段を意味すると理解される。
【0035】
本発明の文脈において、物品が特定の材料を含むと説明される場合、これは特に、物品が主に該材料で構成されている場合、すなわち50質量%超が該材料で構成されている場合、またさらには実質的に該材料で構成されている場合、すなわち90質量%超が該材料で構成されている場合も含む。さらにこれは、物品が該材料からなる場合、すなわち完全に該材料で構成されている場合も含み得る。
【0036】
本発明の文脈において、鏡面基材の鏡面とは、鏡面層が施与されるか、または施与された鏡面基材の表面を指す。したがってこれは、鏡面基材の品質面、つまり、表面品質に関して特定の要件が課される表面である。
【0037】
したがって、鏡面基材は、平均線熱膨張係数が低い材料を含む。特に、鏡面基材は、主に、すなわち50質量%超、またはさらには実質的に、すなわち90質量%超、またはさらには完全にそのような材料またはそのような材料の混合物からなり得る。特に、このような低い熱膨張係数を有する材料は、ガラス、ガラスセラミック、およびセラミック、例えば、商標ZERODUR(登録商標)、Astrosital(登録商標)もしくはClearceram(登録商標)で市販されているリチウムアルミニウムシリケートガラスセラミック、またはコーディエライト系材料、または熱膨張係数が非常に低いガラス、例えばTiOをドープした合成溶融シリカ、例えばULE(登録商標)の商標で販売されているもの、またはコーディエライトもしくはSiCを含むセラミック、またはコーディエライトもしくはSiCから構成されるセラミックを含む。
【0038】
従来は、本発明による鏡面基材を提供することは不可能であった。すなわち、本発明による鏡面基材は、低熱膨張係数を有し、
- 少なくとも100、好ましくは少なくとも150、より好ましくは少なくとも200、最も好ましくは300以上のアスペクト比を有し、
かつ/または
- 鏡面基材の単位面積当たりの質量が100kg/m以下、好ましくは50kg/m以下、より好ましくは30kg/m以下である材料を含み、
該鏡面基材は、最大3.5μm、より良好には1.2μm未満の粗さRを有する鏡面を有する。
【0039】
特に、このことは、20mm以下、好ましくは15mm以下、より好ましくは10mm以下、最も好ましくは2mm以下の鏡面基材の最大厚さに対しては、これまで不可能であった。
【0040】
このことは、横寸法が少なくとも200mmである鏡面基材に特に当てはまる。1000mm以上の横寸法を有する鏡面基材の場合には、50mm以下、特に40mm以下、より好ましくは30mm以下の最大厚さは実現不可能であった。
【0041】
すなわち、アスペクト比が大きく、かつ絶対厚さが小さいため、鏡面基材の表面を加工して、粗さRを3.5μm以下、さらには1.2μm以下にすることは不可能であった。特に、研削プロセスでそのような粗さを得ることは不可能であった。そのような鏡面基材の加工において、そうした低い粗さが達成される前に、再加工中に鏡面基材が破損していた。
【0042】
一実施形態によれば、示される鏡面は、3.5μm以下、好ましくは1.2μm以下の粗さRを有し、鏡面基材の機能表面には、好ましくは研削仕上げが施されている。
【0043】
これも、従来は実現不可能であった。
【0044】
このような鏡面基材の製造の困難性には、特に、ここで考えられる低い粗さを達成するために使用される研削、ラッピング、またはポリシングなどの再加工プロセスが多量の熱エネルギーを放出することが含まれていた。つまり、言い換えると、再加工プロセスで使用される鏡面基材および支持体の双方が加熱されることになる。この加熱は、ここで必要なプロセスにおいて、支持体とそれに負荷をかけている鏡面基材との間に熱機械的応力が生じるほどに大きいものであり、これは特に、支持体が高い熱膨張係数を有する場合に生じる。
【0045】
本発明のさらなる実施形態によれば、鏡面基材は、ガラスセラミック、好ましくはリチウムアルミニウムシリケートガラスセラミック、またはTiドープ合成シリカガラス、ならびに/またはセラミック、好ましくはコーディエライトおよび/もしくはSiCを含むセラミックを含み、ここで、前記リチウムアルミニウムシリケートガラスセラミックは、好ましくは高石英固溶体ガラスセラミックの形態である。
【0046】
鏡面基材は特に、主に、すなわち50質量%超、または実質的に、すなわち90質量%超、またはさらには完全に、そのような材料から構成され得る。
【0047】
そのような材料は、通常、低い熱膨張係数を示すだけでなく、通常、良好なサンド加工性(sandability)およびポリシング性(polishability)などの良好な再加工性も示す。
【0048】
さらなる態様によれば、本発明はまた、鏡面体、特に本発明の実施形態による鏡面基材を含む鏡面体に関する。鏡面体は、鏡面基材の鏡面に高反射層を含む。
【0049】
本発明の別の態様は、その加工および/またはその輸送中に、好ましくはその全面にわたって、その上に配置されている鏡面基材、特に本発明の実施形態による鏡面基材を支持するための支持体に関する。支持体は、平均線熱膨張係数が1×10-6/K以下、好ましくは0.1×10-6/K以下、最も好ましくは0.05×10-6/K以下である材料を含む。特定の実施形態によれば、支持体の膨張係数は、さらには0.02×10-6/K以下、さらには0.01×10-6/K以下であり得る。
【0050】
特に支持体は、主に、すなわち50質量%超、または実質的に、すなわち90質量%超、またはさらには完全に、この材料またはそのような材料の混合物からなり得る。支持体は、好ましくは概して、少なくとも200mm、最大で4500mmの横寸法を有する。
【0051】
したがって、支持体は、横寸法が大きい鏡面基材の加工および/または輸送に適する。同時に、平均線熱膨張係数が1×10-6/K以下、好ましくは0.1×10-6/K以下、最も好ましくは、0.05×10-6/K以下(そして、特別な実施形態によれば、さらには0.02×10-6/K以下、さらには0.01×10-6/K以下)の支持体の材料によって、研削、ラッピング、またはポリシングなどの再加工中に大規模な熱が発生した場合であっても、該支持体が低い熱膨張しか呈しないことが保証される。
【0052】
本明細書中で、支持体の表面とは、再加工中および/または輸送中に鏡面基材によって少なくとも部分的に負荷がかかる支持体の表面を指す。
【0053】
支持体のさらなる実施形態によれば、支持体の表面は、湾曲形状を有する。好ましくは、前記支持体の表面は、エンベロープに近似される。
【0054】
本明細書中で、エンベロープとは、支持体の表面の所定の形状またはジオメトリーと理解されてもよい。したがって、支持体の品質は、支持体の実際の表面と、記述した理想的なエンベロープとの既存の偏差によっても特徴付けられる。エンベロープと実際の表面との間のなおも許容可能な得られる偏差は、ワークピースまたは鏡面基材の直径に応じて異なる。
【0055】
特に好ましくは、エンベロープからの支持体の偏差は、
少なくとも4000mmの横寸法を有する鏡面基材については、0.5mm以下、好ましくは0.1mm以下、より好ましくは0.05mm以下であり、いくつかの実施形態によれば、さらには0.025mm以下であり、
かつ/または
少なくとも2000mmの横寸法を有する鏡面基材については、0.2mm以下、好ましくは0.05mm以下、より好ましくは0.025mm以下であり、
かつ/または
少なくとも1200mm以下の横寸法を有する鏡面基材については、0.1mm以下、好ましくは0.05mm以下、より好ましくは0.01mm以下である。
【0056】
支持体のさらなる実施形態によれば、支持体の表面は、少なくとも部分的に中間体材料で覆われている。中間体材料は、フィルムであってよく、一実施形態によればポリマーフィルムであってよい。中間体材料は、ピッチ、ビチューメンおよび/またはシリコーンを含み得る。好ましくは、中間体材料、例えばフィルムは、エンベロープからの表面の実際の形状の偏差と少なくとも同じ大きさの厚さを有する。特に好ましくは、中間体材料、例えばフィルムは、最大200μm、好ましくは最大100μm、より好ましくは最大50μm、またはさらには最も好ましくは最大25μmの最大厚さを有する。ここでは、支持体の形状を鏡面基材のエンベロープに非常に良好に適合させることが好ましい。
【0057】
ポリマーフィルムは、非線形弾性挙動を示す場合があり、最終的には、研削後の鏡面基材の反射面の形状に偏差が生じ得る。任意に、これは代替的な、または追加の中間体材料を使用することで改善され得る。そのような中間体材料は、金属箔またはペースト状またはゼラチン状材料、ならびに硬化フィルムを含み得る。
【0058】
中間体材料は、とりわけ、エンベロープによって表され得る理想的な所定の表面形状からの支持体の表面形状の偏差を緩和するのに役立ち得る。
【0059】
しかしながら、代替的または追加的に、中間体材料は他の機能をも果たし得る。例えば、中間体材料は、鏡面基材の加工または輸送が完了したらすぐに、鏡面基材を支持体から容易に、特に損傷なく持ち上げられるように、支持体と、それに負荷をかけている鏡面基材との間の接着力を減らすのにも役立ち得る。
【0060】
中間体材料がポリマーフィルムの形で提供される場合、ポリマーは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、1つ以上のポリエステル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、Teflon(登録商標)などのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、1つ以上のテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリ塩化ビニル(PVC)からなる群のうちの1つ以上を含み得る。
【0061】
好ましくは、中間体材料は、150℃以上の耐熱性を示すように設計された材料を含む。
【0062】
本発明のさらなる実施形態によれば、これらの材料クラスに対して可能な限り低い熱膨張係数を有する中間体材料が好ましい。
【0063】
中間体材料がポリマーフィルムの形態である場合、150℃以上の耐熱性を示すポリマーが好ましい。さらにこの場合、ポリマーの熱膨張係数が可能な限り低いポリマーが好ましい。
【0064】
支持体の別の実施形態によれば、中間体材料は、ポリ塩化ビニル(PVC)、PTFE、ETFE、PEK、および/またはPETを含む。例えば、中間体材料は、PVC、PTFE、ETFE、PEK、および/またはPETを含むポリマーフィルムの形態であり得る。再加工工程中に発生する熱負荷が比較的低度である場合には、熱安定性が比較的低いポリマーフィルム、例えばポリエチレンまたはポリプロピレン製のフィルムを使用し得る。
【0065】
さらに、鏡面基材の機械的再加工で生じ得る高温で、ある程度生成される傾向がある熱可塑性ポリマーフィルムが好ましい。エンベロープからの支持体の表面の偏差は、この方法でさらに良好に補償され得る。
【0066】
フィルムは、全体として一体のものとして基材の表面に施与されてもよいし、間隔を空けた複数の部分の形態で、例えば個々の比較的小さな小片の形態で基材の表面に施与されてもよい。
【0067】
一実施形態によれば、フィルムは、少なくとも縁部まで延在する「チャネル」を有するため、鏡面基材が支持体上に配置されると、空気が外部に放散され、鏡面基材が表面に押し付けられる。フィルムが全体として施与される場合、その後、そのようなチャネルがフィルムに導入され、例えばカットされ得る。
【0068】
支持体の別の実施形態によれば、支持体の表面は、中間体材料、例えばフィルムで部分的に覆われており、該被覆は、該中間体材料が、間隔を空けた複数の部分の形態で該表面に施与されるように行われる。これらの、中間体材料の間隔を空けた複数の部分は、対称的なパターンで配置され得る。これに関する選択肢の1つに、中間体材料の複数の部分、例えばフィルムの複数の部分の、半径方向に対称なパターン、例えば4つの要素からなる半径方向に対称なパターンがある。
【0069】
一実施形態によれば、これらの部分は、円または楕円の形状を有する。
【0070】
支持体のそのような実施形態によって、例えば、鏡面基材の固有の質量ゆえに鏡面基材の加工または輸送中に発生する機械的負荷が、支持体の全面によって特に均一に吸収されることが可能となる。これにより、鏡面基材の機械的応力が最小限に抑えられ得る。したがって、加工中の支持体上での鏡面基材の安定性が向上する。
【0071】
本発明の変形例によれば、支持体は、支持されたワークピースの再加工中に生じるいずれの残留物も、ワークピース自体を損傷することなくきれいに除去できるように構成され得る。
【0072】
この理由から、支持体は、ワークピースの加工中に生じる残留物が排出されるように構成され得る。
【0073】
この目的のために、支持体の表面は、例えば、平滑であってもよいし、溝を備えていてもよい。
【0074】
支持体の表面は、少なくとも1つの開口部、例えば、ワークピースの再加工中に生じる残留物を排出し得る排出口をさらに含み得る。1つ以上の開口部が備わっている場合、図3に示すように、鏡面基材の外縁にチャネルが存在しないように、中間体材料をしっかりと、またはさらには連続的に施与することもでき、これにより、空気および残留物が支持体の開口部から放散され得る。
【0075】
本発明の一実施形態によれば、排出口は、半径方向に延在する円形要素からなるウェブ状の溝によって画定される。
【0076】
本発明の別の態様は、支持体および鏡面基材からなる集成体に関する。
【0077】
支持体は、好ましくはその加工および/または輸送中にそれに負荷をかけている鏡面基材をその全面にわたって支持するために使用され、平均線熱膨張係数が1×10-6/K以下、好ましくは0.1×10-6/K以下、最も好ましくは0.05×10-6/K以下、特別な実施形態によれば、さらには0.02×10-6/K以下、またはさらには0.01×10-6/K以下である材料を含む。
【0078】
鏡面基材は、平均線熱膨張係数が1×10-6/K以下、好ましくは0.1×10-6/K以下、最も好ましくは0.05×10-6/K以下、特別な実施形態によれば、さらには0.02×10-6/K以下、またはさらには0.01×10-6/K以下である材料を含む。
【0079】
鏡面基材は好ましくは、50mm以下、特に20mm以下、好ましくは15mm以下、より好ましくは10mm以下、最も好ましくは2mm以下の最大厚さを有する。鏡面基材の横寸法は、少なくとも200mmであることが好ましい。
【0080】
鏡面基材は、以下の特徴のうちの少なくとも一方を有する:
- 鏡面基材は、少なくとも100、好ましくは少なくとも150、より好ましくは少なくとも200、最も好ましくは300以上の、その最大厚さに対するその横寸法の比を有する。
【0081】
- 鏡面基材の単位面積当たりの質量は、100kg/m以下、好ましくは50kg/m以下、より好ましくは30kg/m以下、最も好ましくは15kg/m以下である。
【0082】
集成体の一実施形態によれば、鏡面基材の鏡面は、最大で3.5μm、理想的には1.2μm未満の粗さRを有し、鏡面基材の鏡面には、好ましくは研削仕上げが施されている。
【0083】
さらなる実施形態によれば、鏡面基材の表面は、2nm未満、好ましくは1nm未満のRMS粗さを有し、鏡面基材の表面には、好ましくはポリシング仕上げが施されている。
【0084】
集成体の別の実施形態によれば、支持体を構成する材料の熱膨張係数と、鏡面基材を構成する材料の熱膨張係数との絶対値の差は、1×10-6/K以下、好ましくは0.1×10-6/K以下、より好ましくは0.05×10-6/K以下、最も好ましくは0.02×10-6/K以下である。
【0085】
好ましくは、支持体の表面と、支持体の表面に負荷をかけている鏡面基材の表面とは、互いに相補的な湾曲を有する。
【0086】
言い換えれば、支持体の表面は、それに負荷をかけている鏡面基材の表面が凹状の湾曲を有する場合には凸状の湾曲を有することが好ましく、逆もまた同様である。そのため、支持体の表面および鏡面基材の支持面は、重なり合った領域で相補的な形状を有する。
【0087】
集成体の一実施形態によれば、鏡面基材は、支持体に横方向に固定されており、好ましくは、鏡面基材は、支持体から脱着しないように追加的に固定されている。
【0088】
本発明のさらに別の態様は、鏡面基材の製造方法、特に前述の実施形態のいずれかによる鏡面基材の製造方法に関する。該方法は、
- 支持体であって、該支持体上に配置されている鏡面基材を好ましくはその全面にわたって支持するための支持体を準備する工程と、
- 熱膨張係数が1×10-6/K以下、好ましくは0.1×10-6/K以下、最も好ましくは0.05×10-6/K以下である材料から構成された鏡面基材を準備する工程と、
- 鏡面基材を支持体上に配置する工程と、
- 鏡面基材の表面、特にその鏡面の機械的再加工、特にポリシング、穿孔、研削、またはラッピングを行う工程と、を含み、
支持体を構成する材料の熱膨張係数と、鏡面基材を構成する材料の熱膨張係数との絶対値の差は、1×10-6/K以下、好ましくは0.1×10-6/K以下、より好ましくは0.05×10-6/K以下、最も好ましくは0.02×10-6/K以下である。
【0089】
該方法の特定の実施形態によれば、鏡面基材を構成する材料の熱膨張係数が、さらには0.02×10-6/K以下、さらには0.01×10-6/K以下である可能性がある。
【0090】
鏡面基材の機能表面は、支持体に負荷をかけている表面の反対側に配置されている。好ましい実施形態では、鏡面基材の安全な加工および/または安全な輸送を提供するために、鏡面基材は、少なくとも支持体に対する横方向の変位に対して支持体に固定される。好ましくは、鏡面基材はまた、支持体から剥離または脱着しないよう、しっかり留められるか、または固定される。この固定は特に、クランプによって、接着剤によって、または支持体と鏡面基材との間の負圧によって達成され得る。
【0091】
本発明の別の態様は、天文学用途またはリソグラフィプロセス、例えばLCDリソグラフィおよび/またはマイクロリソグラフィにおける本発明の実施形態による鏡面基材の使用に関する。
【0092】
ここで、図面を参照して本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0093】
図1】本発明の実施形態による鏡面基材および支持体を含む集成体を示す図である。
図2】本発明の実施形態による鏡面基材および支持体を含む集成体を示す図である。
図3】本発明の一実施形態による支持体の表面の図である。
図4】鏡面基材を製造するためのプロセス工程を示す図である。
【0094】
図1は、一実施形態による、支持体1および鏡面基材20を含む集成体15の、縮尺通りではない概略図である。ここでは、鏡面基材20は、支持体1に負荷をかけている、要素20の表面、すなわち支持面22が凸状の湾曲を有するように設計されている。対照的に、支持体1の表面4は、ワークピースまたはガラス、ガラスセラミックまたはセラミック要素の可能な限り最良の支持を保証すべく、凹状の下向きの湾曲を有する。したがって、薄い鏡面基材20の全面的な支持を達成するために、支持面22と表面4とは、互いに相補的な形状を有する。
【0095】
図2は、支持体1と、それに負荷をかけている鏡面基材20とで構成される集成体15のさらなる実施形態の縮尺通りではない概略図であり、鏡面基材20は、支持体1に負荷をかけている支持面22が凹形状を有するように設計されている。対照的に、支持体1の表面4は、鏡面基材20の可能な限り最良の支持体を保証すべく、凸状の上向きの湾曲を有する。
【0096】
総じて、図1および図2において縮尺通りではなく概略的に示されている集成体15において、支持体1は、好ましくはその加工および/またはその輸送中にその全面にわたって、それに負荷をかけている鏡面基材20を支持する役割を果たす。支持体1は、平均線熱膨張係数が1×10-6/K以下、好ましくは0.1×10-6/K以下、最も好ましくは0.05×10-6/K以下、またはさらには0.02×10-6/K以下、またはさらには0.01×10-6/K以下ある材料を含む。鏡面基材20は、平均線熱膨張係数が同様に1×10-6/K以下、好ましくは0.1×10-6/K以下、最も好ましくは0.05×10-6/K以下、またはさらには0.02×10-6/K以下、またはさらには0.01×10-6/K以下である材料を含む。好ましくは、前記鏡面基材の最大厚さは、50mm以下、特に20mm以下、好ましくは15mm以下、より好ましくは10mm以下、最も好ましくは2mm以下である。さらに好ましくは、鏡面基材20の横寸法は、少なくとも200mmであり、特に4500mmまでであり得る。鏡面基材20は、以下の特徴のうちの一方を有する:
- 鏡面基材20は、少なくとも100、好ましくは少なくとも150、より好ましくは少なくとも200、最も好ましくは300以上の、その最大厚さに対するその横寸法の比を有し、かつ/または
- 鏡面基材20の単位面積当たりの質量は、100kg/m以下、好ましくは50kg/m以下、より好ましくは30kg/m以下である。単位面積当たりの質量が15kg/m以下であることが特に好ましい。
【0097】
本発明の一実施形態によれば、鏡面基材の鏡面は、最大で3.5μm、理想的には1.2μm未満の粗さRを有し、鏡面基材の表面には、好ましくは研削仕上げが施されている。鏡面基材の鏡面にポリシング仕上げが施されている場合、RMS粗さは、好ましくは2nm未満、最も好ましくは1nm未満である。
【0098】
集成体15のさらに別の実施形態によれば、支持体1を構成する材料の熱膨張係数と鏡面基材20を構成する材料の熱膨張係数との絶対値の差は、1×10-6/K以下、好ましくは0.1×10-6/K以下、より好ましくは0.05×10-6/K以下、最も好ましくは0.02×10-6/K以下である。
【0099】
図3は、縮尺通りに図示されていない概略図であり、例として、図1または図2のいずれか1つによる集成体で使用される本発明の実施形態による支持体1を示す。
【0100】
支持体1であって、該支持体1に負荷をかけている鏡面基材20(図示せず)をその加工および/または輸送中に好ましくは該鏡面基材の全面にわたって支持するための支持体1は、平均線熱膨張係数が1×10-6/K以下、好ましくは0.1×10-6/K以下、最も好ましくは0.05×10-6/K以下であり、特定の実施形態では、さらには0.02×10-6/K以下、またはさらには0.01×10-6/K以下である材料を含み、該支持体は、好ましくは、少なくとも200mm、および/または最大で4500mmの横寸法を有する。
【0101】
一実施形態によれば、支持体1の表面4は、図面に示すように湾曲形状を有する。
【0102】
- 好ましくは、支持体1の表面4はエンベロープに近似され、
- 最も好ましくは、エンベロープからの支持体1の偏差は、横寸法が少なくとも4000mmである鏡面基材20の場合には、0.5mm以下、好ましくは0.025mm以下であり、かつ/または
- 好ましくは横寸法が少なくとも2000mmである鏡面基材20の場合には、0.2mm以下、好ましくは0.025mm以下であり、かつ/または
- 好ましくは横寸法が少なくとも1200mmである鏡面基材20の場合には、0.1mm以下、好ましくは0.01mm以下である。
【0103】
支持体1のさらに別の実施形態によれば、支持体1の表面4は、中間体材料13、例えばフィルム13、特にポリマーフィルムで少なくとも部分的に覆われており、
中間体材料13、例えばフィルムは、好ましくは、エンベロープからの表面4の実際の形状の偏差と少なくとも同じ大きさの厚さを有し、
中間体材料13は、好ましくは最大200μm、好ましくは最大100μm、より好ましくは最大50μm、またはさらには最も好ましくは25μm以下の最大厚さを有する。
【0104】
上述の支持体の湾曲した実施形態の他に、例えば平面鏡を製造するためのさらに別の実施形態によれば、支持体は平坦であってもよい。
【0105】
支持体の別の実施形態によれば、中間体材料13は、ポリ塩化ビニルを含む。
【0106】
好ましくは、支持体1の表面4は、中間体材料13で部分的にのみ覆われている。例えば、ここで図3に示すように、表面に、中間体材料13としてフィルムを小片の形態で施与することができ、これは特に、例えば対称的な、または半径方向に対称的なパターンなどの規則的なパターンで配置され得る。一実施形態では、フィルム片の3つ、4つまたは複数の要素からなる対称体が提案され、フィルム片は、好ましくは円または楕円の形状を有する。
【0107】
図4は、いくつかの部分図において、鏡面基材20を製造するための方法工程を示す。
【0108】
まず、鏡面基材および支持体を準備する。部分図(a)に示すように、支持体1の表面4を、例えば回転する研削ディスクなどの研削工具5を使用して、ここでは凹状である所定のエンベロープに従って成形する。部分図(b)は、鏡面基材20の支持面22の対応する加工を示す。ここでは、支持面22は、表面4の曲率と相補的な曲率を有する。表面4、22をこのように成形したら、部分図(c)に示すように、鏡面基材20を支持体1上に配置し、固定する。この場合、中間体材料13を再び使用して、表面の、依然として存在する差を補償し、任意に、鏡面基材20のさらなる加工中の衝撃吸収性を提供してもよい。支持体上の鏡面基材20の横方向の変位および脱着に対する固定は、例えば、中間体材料13により接着によって達成され得る。このようにして得られた集成体15では、部分図(d)に示すように、鏡面基材20がほとんど変形しない状態で機能表面21を研削工具5で加工することができる。支持体1をさらなる鏡面基材の加工にさらに使用することができるため、一連の複数の同一の鏡面基材20を製造する際に、部分図(a)による工程を一度だけ行えば済む。
【0109】
上記の例に限定されることなく、上述の本発明の好ましい実施形態による鏡面基材20の製造方法は、支持体1の表面4および支持面を、材料除去のための機械加工によって、所定の形状に従って、または所定の表面プロファイルに従って成形することに基づいており、鏡面基材の支持面22および支持体1の表面4を、少なくとも支持領域において互いに相補的な形状で形成し、鏡面基材20の支持面22と支持体1の表面4とをまとめ、鏡面基材20を支持体1に固定して集成体15を形成し、次いで、集成体15において、材料除去のための機械加工によって、支持面22の反対側の機能表面21を形成する。
【0110】
実施例
実施例1:
鏡面基材を、表1に示すとおりに製造した。最初に、指定された直径および厚さの鏡面ブランクを、支持体材料のブロック上に配置された中間体材料の1つ以上の層の上に配置した。これらの中間体材料は、支持体材料の縁部まで延在するチャネルを有していた。該鏡面ブランクの上面を凸形状となるように機械加工し、該鏡面ブランクを、鏡面ブランク基材の凸形状に適合する凹形状となるように表面を研削した(前述の中間体材料を有する)支持体材料のブロック上の機械加工済みのブランクとともに配置した。次いで、研削により該鏡面ブランク基材に凹形状を形成し、必要に応じて鏡面基材の厚さを薄くした。達成された表面粗さの概要を表1に示す。
【0111】
比較例1では、独国特許出願公開第102015112036号明細書(DE 10 2015 112 036 A)に記載の鉱物支持体材料を使用した。基材の所望の厚さが達成される前の2回目の研削工程中に、鏡面ブランクが破損した。
【0112】
【表1】
【0113】
本発明が、例示された実施形態に限定されるものではなく、多くの様式に変更できることは、当業者には明らかであろう。例えば、表面4および22の加工の順序は重要ではなく、例えばこれらを同時に成形してもよいし、部分図のシーケンスが示すものとは反対に、鏡面基材20の支持面22を最初に成形してもよい。
【符号の説明】
【0114】
1 支持体
5 研削工具
13 中間体材料
15 集成体
20 鏡面基材
21 20の機能表面
22 20の支持面
4 支持体の表面
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2024-03-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均線熱膨張係数が1×10-6/K以下、好ましくは0.1×10-6/K以下、最も好ましくは0.05×10-6/K以下である材料を含む鏡面基材であって、
前記鏡面基材は、以下の特徴:
- 前記鏡面基材は、少なくとも100、好ましくは少なくとも150、より好ましくは少なくとも200、最も好ましくは300以上の、その最大厚さに対するその横寸法の比を有する;
- 前記鏡面基材の単位面積当たりの質量は、100kg/m以下、好ましくは50kg/m以下、より好ましくは30kg/m、最も好ましくは15kg/m以下である;
のうちの少なくとも一方を有し、
前記鏡面基材は、最大3.5μm、好ましくは1.2μm未満の粗さRを有する鏡面を有する、鏡面基材
【外国語明細書】