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  • 特開-多層容器および多層プリフォーム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054332
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】多層容器および多層プリフォーム
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/02 20060101AFI20240409BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
B65D1/02 110
B32B27/36
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024020475
(22)【出願日】2024-02-14
(62)【分割の表示】P 2019086772の分割
【原出願日】2019-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(72)【発明者】
【氏名】江口 誠
(72)【発明者】
【氏名】関根 章智
(57)【要約】
【課題】高い衛生性および高い環境負荷低減性を有する多層容器の提供。
【解決手段】本発明の多層容器は、内層と、中間層と、外層とを有し、内層および外層が、バージンポリエステルにより構成され、中間層が、リサイクルポリエステルにより構成され、内層を構成する前記バージンポリエステルが、マンガン触媒ポリエステル、チタン触媒ポリエステル、アルミニウム触媒ポリエステル、リチウム触媒ポリエステルおよびゲルマニウム触媒ポリエステル から選択される1以上のポリエステルであることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層容器であって、
内層と、中間層と、外層とを有し、
前記内層および前記外層が、バージンポリエステルにより構成され、
前記中間層が、リサイクルポリエステルにより構成され、
前記内層を構成する前記バージンポリエステルが、マンガン触媒ポリエステル、チタン触媒ポリエステル、アルミニウム触媒ポリエステル、リチウム触媒ポリエステルおよびゲルマニウム触媒ポリエステルから選択される1以上のポリエステルであり、
前記中間層を構成する前記リサイクルポリエステルが、アンチモンを含む、
ことを特徴とする、多層容器。
【請求項2】
内容量が500mlの多層容器に超純水480mLを充填し、次いで、70℃に設定したホットウォーマー内において、正立させた状態で14日間静置した後に多層容器から水を取り出して、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)により測定された水中に含まれるアンチモンの含有量である溶出アンチモン濃度が、6ppb未満である、請求項1に記載の多層容器。
【請求項3】
前記リサイクルポリエステルの含有量が、前記多層容器に含まれる樹脂材料の総量100質量部に対し、30質量部以上80質量部以下である、請求項1または2に記載の多層容器。
【請求項4】
前記内層の厚さが、0.01mm以上0.1mm以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の多層容器。
【請求項5】
加温用容器である、請求項1~4のいずれか一項に記載の多層容器。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の多層容器を製造するための多層プリフォームであって、
内層と、中間層と、外層とを有し、
前記内層および前記外層が、バージンポリエステルにより構成され、
前記中間層が、リサイクルポリエステルにより構成され、
前記内層を構成する前記バージンポリエステルが、マンガン触媒ポリエステル、チタン触媒ポリエステル、アルミニウム触媒ポリエステル、リチウム触媒ポリエステルおよびゲルマニウム触媒ポリエステルから選択される1以上のポリエステルである、
ことを特徴とする、多層プリフォーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層容器およびこの多層容器の製造に用いる多層プリフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルは、機械的特性、化学的安定性、耐熱性、ガスバリア性および透明性などに優れ、かつ安価であることから、飲料品などを充填する容器などの製造に広く使用されている。
【0003】
容器の製造に使用されるポリエステルとして、その合成触媒として、アンチモン触媒を使用したもの(以下、アンチモン触媒ポリエステルという)やゲルマニウム触媒を使用したもの(以下、ゲルマニウム触媒ポリエステル)が使用されており、コストの面からアンチモン触媒ポリエステルが特に多く使用されている。
【0004】
ところで、近年、環境負荷の低減を目的として、使用済みのポリエステル容器を、種々の方法によりリサイクルし得られたポリエステル(以下、リサイクルポリエステルという)を用いた容器の製造が行われている。
【0005】
しかしながら、ポリエステル容器のリサイクルは、ポリエステル合成に使用した触媒ごとに行われているわけではないため、リサイクルポリエステルには、アンチモン触媒が含有されるおそれが極めて高い。また、ポリエステル容器のリサイクルにおいて汚染物質を完全に除去することは困難である。
【0006】
そのため、ポリエステル容器のリサイクルを繰り返した場合、除去できなかった汚染物質やアンチモン触媒が蓄積し、これらの内容物への溶出が懸念される。
また、コンビニエンスストアなどにおいては、内容物が充填された容器を正立させ、ホットウォーマー内で加温し販売することが行われているが、このような加温状態の場合に上記アンチモン溶出は特に問題となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、加温状態の場合においてもアンチモン及び汚染物質の内容物への溶出が問題とならない、高い衛生性および高い環境負荷低減性を有する多層容器を提供することである。
また、この多層容器の製造に用いる多層プリフォームを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の多層容器は、内層と、中間層と、外層とを有し、
内層および外層が、バージンポリエステルにより構成され、
中間層が、リサイクルポリエステルにより構成され、
内層を構成するバージンポリエステルが、マンガン触媒ポリエステル、チタン触媒ポリエステル、アルミニウム触媒ポリエステル、リチウム触媒ポリエステルおよびゲルマニウム触媒ポリエステルから選択される1以上のポリエステルであることを特徴とする。
【0009】
一実施形態において、本発明の多層容器は、溶出アンチモン濃度が、6ppb未満である。
【0010】
一実施形態において、リサイクルポリエステルの含有量は、多層容器に含まれる樹脂材料の総量100質量部に対し、30質量部以上80質量部以下である。
【0011】
一実施形態において、内層の厚さは、0.01mm以上0.1mm以下である。
【0012】
一実施形態において、本発明の多層容器は、加温用容器である。
【0013】
本発明の多層プリフォームは、上記多層容器を製造するための多層プリフォームであって、
内層と、中間層と、外層とを有し、
内層および外層が、バージンポリエステルにより構成され、
中間層が、リサイクルポリエステルにより構成され、
内層を構成するバージンポリエステルが、マンガン触媒ポリエステル、チタン触媒ポリエステル、アルミニウム触媒ポリエステル、リチウム触媒ポリエステルおよびゲルマニウム触媒ポリエステル から選択される1以上のポリエステルであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高い衛生性および高い環境負荷低減性を有する多層容器を提供することができる。また、この多層容器の製造に用いる多層プリフォームを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の多層容器の一実施形態を表す模式断面図である。
図2】本発明の多層容器の一実施形態を表す模式断面図である。
図3】本発明の多層プリフォームの一実施形態を表す模式断面図である。
図4】本発明の多層プリフォームの一実施形態を表す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(多層容器)
本発明の多層容器10は、図1円A中に示すように、内層11と、中間層12と、外層13とを有する。
さらに、本発明の多層容器10は、内層11表面に蒸着膜を有していてもよい(図示せず)。
【0017】
一実施形態において、多層容器10は、口部14と、肩部15と、胴部16と、底部17とを備える。一実施形態において、肩部15は、口部14と胴部16との間に設けられ、口部14側から胴部16側に向けて径が徐々に拡大する形状を有する。また、一実施形態において、口部14は、図1などに示すように、キャップが螺着されるネジ部18と、ネジ部18下にカブラ19と、カブラ19下にサポートリング20を備える。
中間層12は、例えば、口部14の上端から底部17の下端にかけて設けられていてもよい(図1参照)。
また、中間層12は、多層容器の一部、例えば、サポートリング20から底部17の下端にかけて設けられていてもよい(図2参照)。
【0018】
一実施形態において、図1などに示すように、底部17は、中央に位置する陥没部21と、陥没部21の周囲に設けられた接地部22とを備える。このような構成とすることにより、多層容器内に加熱された内容物を充填したときや充填後加熱したときにおける内圧の増減による容器の変形を防止することができる。
また、一実施形態において、多層容器10の胴部16は、パネル部23を備える。このような構成とすることにより、多層容器内に加熱された内容物を充填したときや充填後加熱したときにおける内圧の増減による容器の変形を防止することができる。
【0019】
本発明の多層容器の溶出アンチモン濃度は、6ppb未満であることが好ましく、3ppb未満であることがより好ましい。
溶出アンチモン濃度を6ppb未満とすることにより、アメリカ食品医薬品局(FDA)の21CFR(連邦法第21章)において推奨される値を満たすこととなるため好ましい。
また、本発明の多層容器に充填する内容物の種類によっては、既に微量のアンチモンを含んでいる場合がある。多層容器の溶出アンチモン濃度を3ppb未満としておくことにより、内容物へ最終的に溶存するアンチモンを低減できる。
なお、本発明において、「多層容器の溶出アンチモン濃度」は、本発明の多層容器に、23℃の超純水を充填し、正立させた状態で、70℃の環境下において14日間静置した後、多層容器から取り出した水について測定したものである。
【0020】
本発明の多層容器が備える中間層は、後述するようにリサイクルポリエステルにより構成されるが、このリサイクルポリエステルの含有量は、多層容器に含まれる樹脂材料の総量100質量部に対し、30質量部以上80質量部以下であることが好ましく、50質量部以上80質量部以下であることがより好ましい。
リサイクルポリエステルの含有量を、多層容器に含まれる樹脂材料の総量100質量部に対し、30質量部以上とすることにより、多層容器の環境負荷低減性をより向上することができる。
リサイクルポリエステルの含有量を、多層容器に含まれる樹脂材料の総量100質量部に対し、80質量部以下とすることにより、多層プリフォーム作製においてリサイクルポリエステルが内層側または外層側へ露出してしまうことを防止することができる。
【0021】
本発明の多層容器は、容量/重量が、5mL/g以上、50mL/g以下であることが好ましく、8mL/g以上、45mL/g以下であることがより好ましい。
多層容器の容量/重量を5mL/g以上とすることにより、多層容器のブロー成形性を向上することができる。
また、多層容器の容量/重量を50mL/g以下とすることにより、多層容器の耐熱性および強度を向上することができる。
【0022】
本発明の多層容器は、高温の内容物を充填した場合、内容物充填後に加温した場合であっても、内容物にアンチモンなどが溶出してしまうことを防止することができ、高い衛生性を有するものであるため、加温用容器として好適に用いることができる。
【0023】
(内層)
本発明の多層容器が備える内層は、マンガン触媒ポリエステル、チタン触媒ポリエステル、アルミニウム触媒ポリエステル、リチウム触媒ポリエステルおよびゲルマニウム触媒ポリエステルから選択される、バージンポリエステルにより構成されることを特徴とする。このような構成とすることにより、中間層にリサイクルポリエステルを使用した場合であっても、内容物へのアンチモン溶出を防止することができる。
なお、本発明において、「バージンポリエステル」とは、下記するリサイクル処理が施されていないポリエステル、すなわち、未使用のポリエステルを指す。
【0024】
マンガン触媒としては、例えば、酢酸マンガンなどの脂肪酸マンガン塩、炭酸マンガン、塩化マンガン、マンガンのアセチルアセトナート塩、水酸化マンガンなどが挙げられる チタン触媒としては、例えば、テトラ-n-プロピルチタネート、テトラ-i-プロピルチタネート、テトラ-n-ブチルチタネート、テトラ-n-ブチルチタネートテトラマー、テトラ-t-ブチルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラベンジルチタネートなどのチタンアルコキシド、チタンアルコキシドの加水分解により得られるチタン酸化物、酢酸チタン、シュウ酸チタン、シュウ酸チタンカリウム、シュウ酸チタンナトリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸-水酸化アルミニウム混合物、塩化チタン、塩化チタン-塩化アルミニウム混合物、臭化チタン、フッ化チタン、六フッ化チタン酸カリウム、六フッ化チタン酸コバルト、六フッ化チタン酸マンガン、六フッ化チタン酸アンモニウムおよびチタンアセチルアセトナートなどが挙げられる。
アルミニウム触媒としては、例えば、アルミニウムトリスアセチルアセテート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)およびエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレートなどが挙げられる。
リチウム触媒としては、例えば、エチルリチウム、プロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウおよびフェニルリチウムなどが挙げられる。
ゲルマニウム触媒としては、例えば、二酸化ゲルマニウム、四酸化ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラメトキシド、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラプロポキシド、ゲルマニウムテトラブトキシド、ゲルマニウムテトラペンタキシドおよびゲルマニウムテトラヘキソキシドなどが挙げられる。
【0025】
本発明において、「ポリエステル」とは、ジカルボン酸化合物とジオール化合物との共重合体を意味する。
ジカルボン酸化合物としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、エイコサンジオン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、メチルマロン酸およびエチルマロン酸、アダマンタンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、フェニルエンダンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸、9,9’-ビス(4-カルボキシフェニル)フルオレン酸およびこれらのエステル誘導体などが挙げられる。
ジオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジエタノール、デカヒドロナフタレンジメタノール、デカヒドロナフタレンジエタノール、ノルボルナンジメタノール、ノルボルナンジエタノール、トリシクロデカンジメタノール、トリシクロデカンエタノール、テトラシクロドデカンジメタノール、テトラシクロドデカンジエタノール、デカリンジメタノール、デカリンジエタノール、5-メチロール-5-エチル-2-(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-1,3-ジオキサン、シクロヘキサンジオール、ビシクロヘキシル-4,4’-ジオール、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシルプロパン)、2,2-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロヘキシル)プロパン、シクロペンタンジオール、3-メチル-1,2-シクロペンタジオール、4-シクロペンテン-1,3-ジオール、アダマンジオール、パラキシレングリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS,スチレングリコール、トリメチロールプロパンおよびペンタエリスリトールなどが挙げられる。
ポリエステルの中でも、テレフタル酸と、エチレングリコールとの共重合体であるポリエチレンテレフタレート、またはこれに共重合モノマーが添加された改質ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0026】
本発明の特性を損なわない範囲において、ポリエステルは、ジカルボン酸化合物およびジオール化合物以外のモノマーを含んでいてもよいが、その含有量は、全構成単位に対し、10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましく、3モル%以下であることがさらに好ましい。
【0027】
本発明の特性を損なわない範囲において、内層は、添加剤を含んでいてもよく、例えば、酸素吸収剤、ガスバリア性樹脂(ナイロン6、ナイロン6,6およびポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)などのポリアミド)、可塑剤、紫外線安定化剤、酸化防止剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、糸摩擦低減剤、スリップ剤、離型剤、抗酸化剤、イオン交換剤、および着色剤などが挙げられる。
【0028】
一実施形態において、本発明の多層容器10において、内層11は、内容物充填領域に設けることができる。なお、本発明において、「内容物充填領域」とは、多層容器に内容物を充填させ、正立させた状態で、内容物と多層容器とが接する領域を意味する。
一実施形態において、内層11は、口部14の上端の下70mmの位置から、底部17にかけて設けられる。
好ましくは、内層11は、口部14の上端の下15mmの位置から、底部17にかけて設けられている。このような構成とすることにより、内層により内容物充填領域を覆うことができ、中間層にリサイクルポリエステルを使用した場合であっても、内容物へのアンチモン溶出を効果的に防止することができる。
さらに好ましくは、本発明の多層容器10において、内層11は、図1および2に示すように、口部14の上端から、底部17にかけて設けられていることが好ましい。中間層にリサイクルポリエステルを使用し、自動販売機などの中において横に倒した状態で、加温保管した場合であっても、内容物へのアンチモン溶出を効果的に防止することができる。
【0029】
多層容器における内層の厚さは、0.01mm以上0.1mm以下であることが好ましく、0.025mm以上0.05mm以下であることが好ましい。
多層容器における内層の厚さを0.01mm以上とすることにより、中間層にリサイクルポリエステルを使用した場合であっても、内容物へのアンチモン溶出を防止することができる。
また、多層容器における内層の厚さを0.1mm以下とすることにより、中間層の多層容器における割合を増やすことができ、多層容器の環境負荷低減性をより向上することができる。
【0030】
(中間層)
本発明の多層容器が備える中間層は、リサイクルポリエステルにより構成される。このような構成とすることにより、本発明の多層容器の環境負荷低減性を向上することができる。
一実施形態において、図1に示すように、中間層12は、多層容器10の口部14の上端から、底部17を覆うように設けられる。このような構成とすることにより、外層にリサイクルポリエステルを使用し、自動販売機などの中において横に倒した状態で、加温保管した場合であっても、内容物へのアンチモン溶出を効果的に防止することができる。
一実施形態において、図2に示すように、中間層12は、多層容器10のサポートリング20から、底部17を覆うように設けられる。内層11および外層13が同じ材料から構成されている場合、図2に示すように、中間層12が設けられていない箇所において、これらの層は、1層となる。
なお、図1および2に示す構成に限定されるものではなく、中間層は、口部14上端とサポートリングとの間の任意の箇所から、底部を覆うように設けられていてもよく、また、肩部15や胴部16から、底部17を覆うように設けられていてもよい。
多層容器の環境負荷低減性という観点からは、口部の上端またはサポートリングから、底部を覆うように設けられていることが好ましい。
【0031】
本発明において、「リサイクルポリエステル」とは、ケミカルリサイクルポリエステルまたはメカニカルリサイクルポリエステルを指す。
ケミカルリサイクルポリエステルとは、ポリエステル容器をモノマーレベルまで分解して、再度重合することにより得られたポリエステルを指す。
メカニカルリサイクルポリエステルとは、ポリエステル容器を選別・粉砕・洗浄して汚染物質や異物を除去し、フレークを得て、フレークを更に高温・減圧下などで一定時間処理して樹脂内部の汚染物質を除去することにより得られたポリエステルを指す。
【0032】
本発明の特性を損なわない範囲において、中間層は、添加剤を含んでいてもよく、例えば、酸素吸収剤、ガスバリア性樹脂(ナイロン6、ナイロン6,6およびポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)などのポリアミド)、可塑剤、紫外線安定化剤、酸化防止剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、糸摩擦低減剤、スリップ剤、離型剤、抗酸化剤、イオン交換剤、および着色剤などが挙げられる。
【0033】
多層容器における中間層の厚さは、0.04mm以上0.22mm以下であることが好ましく、0.1mm以上0.2mm以下であることが好ましい。
多層容器における中間層の厚さを0.04mm以上とすることにより、多層容器の環境負荷低減性をより向上することができる。
また、多層容器における中間層の厚さを0.22mm以下とすることにより、多層プリフォーム作製においてリサイクルポリエステルが内層側または外層側へ露出してしまうことを防止することができる。
【0034】
(外層)
多層容器が備える外層は、バージンポリエステルにより構成される。このような構成とすることにより、多層容器の耐熱性および強度を向上することができる。
【0035】
外層を構成するバージンポリエステルとしては、マンガン触媒ポリエステル、チタン触媒ポリエステル、アルミニウム触媒ポリエステル、リチウム触媒ポリエステルおよびゲルマニウム触媒ポリエステルが挙げられる。
【0036】
本発明の特性を損なわない範囲において、外層は、添加剤を含んでいてもよく、例えば、酸素吸収剤、ガスバリア性樹脂(ナイロン6、ナイロン6,6およびポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)などのポリアミド)可塑剤、紫外線安定化剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、糸摩擦低減剤、スリップ剤、離型剤、抗酸化剤、イオン交換剤、および着色顔料などが挙げられる。
【0037】
多層容器における外層の厚さは、0.01mm以上0.1mm以下であることが好ましく、0.025mm以上0.05mm以下であることが好ましい。
多層容器における外層の厚さを0.01mm以上とすることにより、多層容器の耐熱性および強度をより向上することができる。
また、多層容器における外層の厚さを0.1mm以下とすることにより、中間層の多層容器における割合を増やすことができ、多層容器の環境負荷低減性をより向上することができる。
【0038】
(蒸着膜)
本発明の多層容器は、内層の表面に蒸着膜を備えていてもよい。これにより、多層容器のガスバリア性を向上することができる。
【0039】
蒸着膜としては、例えば、アルミニウムなどの金属、並びに酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグシウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ホウ素、酸化ハフニウム、酸化バリウムなどの無機酸化物、ヘキサメチルジシロキサンなどの有機珪素化合物、DLC(Diamond Like Carbon)膜などの硬質炭素膜から構成される、蒸着膜を挙げることができる。
なお、DLC膜からなる硬質炭素膜とは、iカーボン膜または水素化アモルファスカーボン膜(a-C:H)とも呼ばれる硬質炭素膜のことで、SP 結合を主体にしたアモルファスな炭素膜のことである。
【0040】
また、蒸着膜の厚さは、特に限定されるものではなく、例えば、1nm以上150nm以下とすることができる。
【0041】
蒸着膜の形成は、従来公知の方法を用いて行うことができ、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法およびイオンプレーティング法などの物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)、並びにプラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法および光化学気相成長法などの化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)などを挙げることができる。
【0042】
(多層プリフォーム)
本発明の多層プリフォーム22は、上記多層容器の製造に用いるものであり、図3および4に示すように、内層25と、中間層26、外層27とを有する。
【0043】
一実施形態において、多層プリフォーム22は、口部28と、胴部29と、底部30とを有する。
【0044】
(内層)
内層は、口部28の上端から、底部30にかけて設けられていてもよく、口部28の下端から、底部30を覆うように設けられていてもよい。また、胴部29と底部30とを覆うように設けられていてもよい(図示せず)。
なお、内層を構成する材料については、上述したため、ここでは記載を省略する。
【0045】
多層プリフォームにおける内層の厚さは、0.2mm以上0.7mm以下であることが好ましく、0.4mm以上0.6mm以下であることが好ましい。
多層プリフォームにおける内層の厚さを0.2mm以上とすることにより、多層容器が有する中間層にリサイクルポリエステルを使用した場合であっても、内容物へのアンチモン溶出を防止することができる。
また、多層プリフォームにおける内層の厚さを0.7mm以下とすることにより、中間層の多層容器における割合を増やすことができ、多層容器の環境負荷低減性をより向上することができる。
【0046】
(中間層)
中間層を構成する材料については、上述したため、ここでは記載を省略する。
【0047】
多層プリフォームにおける中間層の厚さは、0.8mm以上2.2mm以下であることが好ましく、1.0mm以上2.0mm以下であることが好ましい。
多層プリフォームにおける中間層の厚さを0.8mm以上とすることにより、製造される多層容器の環境負荷低減性をより向上することができる。
また、多層プリフォームにおける中間層の厚さを2.2mm以下とすることにより、多層プリフォーム作製においてリサイクルポリエステルが内層側または外層側へ露出してしまうことを防止することができる。
【0048】
(外層)
外層を構成する材料については、上述したため、ここでは記載を省略する。
【0049】
多層プリフォームにおける外層の厚さは、0.2mm以上0.7mm以下であることが好ましく、0.4mm以上0.6mm以下であることが好ましい。
多層プリフォームにおける外層の厚さを0.2mm以上とすることにより、製造される多層容器の耐熱性および強度をより向上することができる。
また、多層プリフォームにおける外層の厚さを0.7mm以下とすることにより、中間層の多層容器における割合を増やすことができ、多層容器の環境負荷低減性をより向上することができる。
【0050】
(多層容器の製造方法)
本発明の多層容器は、上記した内層、中間層および外層を構成する材料を、共射出成形することにより、多層プリフォームを作製し、これをブロー成形することにより本発明の多層容器を製造することができる。
中間層を多層プリフォームの一部に形成する場合には、特開2008-94454号公報において開示されるホットランナーノズルを使用することが好ましい。
【0051】
また、本発明の多層容器は、三色成形やインサート成形を利用することによっても製造することができる。
さらに、本発明の多層容器は、内部金型内にバージンポリエステルを射出成形し、内層を形成し、内部金型を後退させ、内部金型と内層との間に隙間を設け、この隙間にリサイクルポリエステルを射出成形し、中間層を形成し、内部金型を後退させ、内部金型と内層および中間層との間に隙間を設け、この隙間にバージンポリエステルを射出成形し、外層を形成することにより製造することができる。
【実施例0052】
次に実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0053】
実施例1
バージンポリエステル(ゲルマニウム触媒PET、三井化学(株)製、J-125S)と、メカニカルリサイクルポリエステル(協栄産業(株)製、NA-BT7906)を用意した。
これらを、射出成形機を用いて共射出し、バージンポリエステルから構成される内層と、メカニカルリサイクルポリエステルから構成される中間層と、バージンポリエステルから構成される外層とを備える、図3に示す、多層(2種3層)プリフォームを作成した。 メカニカルリサイクルポリステルの使用量は、多層プリフォームを構成する樹脂材料100質量部に対し、50質量部となるように調整した。
多層プリフォームの胴部の厚さは2.8mm、目付量は22gであった。
【0054】
次いで、多層プリフォームを110℃に加熱し、ブロー成形金型内において、二軸延伸ブロー成形を行い、内容量が500mLの多層容器を得た。
【0055】
比較例1
上記メカニカルリサイクルポリエステルのみを使用した以外は、実施例1と同様にして、単層プリフォームを作製すると共に、これを二軸延伸ブロー成形し、内容量が500mLの容器を作製した。
【0056】
比較例2
上記バージンポリエステルのみを使用した以外は、実施例1と同様にして、単層プリフォームを作製すると共に、これを二軸延伸ブロー成形し、内容量が500mLの容器を作製した。
【0057】
比較例3
バージンポリエステル(アンチモン触媒PET 、新光合繊製、5015W)のみを使用し、単層プリフォームを作製すると共に、これを二軸延伸ブロー成形し、内容量が500mLの単層容器を作製した。
【0058】
<<溶出アンチモン濃度評価>>
上記実施例および比較例において得られた容器に、超純水480mLを充填した。各容器において、超純水は、口部の上端から28.7mmの位置から底部の位置まで充填されていた。
次いで、70℃に設定したホットウォーマー内において、正立させた状態で14日間静置した。
静置後、容器から水を取り出し、そのアンチモン濃度を誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)により測定した。測定結果を表1にまとめた。
【0059】
<<耐熱性評価>>
上記実施例および比較例において得られた容器に水480mLを充填しキャップをした後、70℃のお湯に80分間浸漬した。
浸漬後、容器を平らな机の上に正立させ、下記評価基準に基づいて評価した。評価結果を表1にまとめた。
(評価基準)
OK:容器が正立した。
NG:正立せず、倒れてしまった。
【0060】
<<環境負荷低減性>>
上記実施例および比較例において得られた容器に含まれる樹脂材料の総量100質量部に対するリサイクルポリエステルの含有量を基に、環境負荷低減性のレベルを下記の通り定義した。
OK:リサイクルポリエステルの含有量が30質量部以上
NG:リサイクルポリエステルの含有量が30質量部未満
【0061】
【表1】
【0062】
上記表からも明らかなように、本発明の多層容器は、優れた環境負荷低減性を有していることがわかる。
また、本発明の多層容器は、高い耐熱性を有しかつ、加温後における溶出アンチモン濃度を効果的に低減できており、加温用容器に好適に用いることができることがわかる。
【符号の説明】
【0063】
10:多層容器、11:内層、12:中間層、13:外層、14:口部、15:肩部、16:胴部、17:底部、18:ネジ部、19:カブラ、20:サポートリング、21:陥没部、22:接地部、23:パネル部、24:多層プリフォーム、25:内層、26:中間層、27:外層、28:口部、29:胴部、30:底部
図1
図2
図3
図4