(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054333
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】治療用ペプチド及び治療用タンパク質の経粘膜送達のための薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20240409BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240409BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20240409BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240409BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20240409BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240409BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240409BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240409BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240409BHJP
A61K 47/40 20060101ALI20240409BHJP
A61K 47/58 20170101ALI20240409BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240409BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20240409BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20240409BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20240409BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20240409BHJP
A61K 47/06 20060101ALI20240409BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20240409BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240409BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20240409BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240409BHJP
C07K 14/62 20060101ALN20240409BHJP
C07K 14/605 20060101ALN20240409BHJP
C07K 14/565 20060101ALN20240409BHJP
C07K 14/56 20060101ALN20240409BHJP
C07K 14/57 20060101ALN20240409BHJP
C07K 14/59 20060101ALN20240409BHJP
C07K 14/505 20060101ALN20240409BHJP
C07K 14/655 20060101ALN20240409BHJP
C07K 14/61 20060101ALN20240409BHJP
C07K 16/00 20060101ALN20240409BHJP
【FI】
A61K45/00 ZNA
A61P3/10
A61P3/04
A61P1/16
A61P1/00
A61K47/18
A61K47/12
A61K47/26
A61K47/36
A61K47/40
A61K47/58
A61K47/10
A61K47/14
A61K47/24
A61K47/28
A61K47/22
A61K47/06
A61K47/42
A61K47/02
A61K9/16
A61K47/38
C07K14/62
C07K14/605
C07K14/565
C07K14/56
C07K14/57
C07K14/59
C07K14/505
C07K14/655
C07K14/61
C07K16/00
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024020483
(22)【出願日】2024-02-14
(62)【分割の表示】P 2020554523の分割
【原出願日】2019-04-08
(31)【優先権主張番号】18166177.8
(32)【優先日】2018-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】18211296.1
(32)【優先日】2018-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BRIJ
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】517121881
【氏名又は名称】シプルメット・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・ヴェルレ
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン・フェーガー
(57)【要約】
【課題】本発明が解決しようとする課題は、果的で貯蔵安定性が良く安全でもある、非侵襲性の送達用のペプチド及びタンパク質等の生物製剤を提供することである。
【解決手段】本発明は、ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤及びpKa値が12以上の賦形剤を含む、経粘膜投与のための薬学的組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤及びpKa値が12以上の賦形剤を含む、経粘膜投与のための薬学的組成物。
【請求項2】
経粘膜投与のための薬学的組成物の調製における、ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤及びpKa値が12以上の賦形剤の使用。
【請求項3】
ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤及びpKa値が12以上の賦形剤を含む薬学的組成物を、それを必要とする対象に経粘膜投与することを含む、疾患/障害を処置又は予防する方法。
【請求項4】
ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤及びpKa値が12以上の賦形剤を含む薬学的組成物を、それを必要とする対象に経粘膜投与することを含む、前記ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤を経粘膜送達する方法。
【請求項5】
pKa値が12以上の賦形剤が、アルギニン遊離塩基、EDTAテトラゾリウム塩、リン酸三ナトリウム、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、リジン、及び水酸化カルシウムから選択される、請求項1に記載の薬学的組成物、又は請求項2に記載の使用、又は請求項3若しくは4に記載の方法。
【請求項6】
pKa値が12以上の賦形剤が、アルギニン遊離塩基又はリン酸三ナトリウムである、請求項1に記載の薬学的組成物、又は請求項2に記載の使用、又は請求項3若しくは4に記載の方法。
【請求項7】
pKa値が12以上の賦形剤が、アルギニン遊離塩基である、請求項1に記載の薬学的組成物、又は請求項2に記載の使用、又は請求項3若しくは4に記載の方法。
【請求項8】
ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤が、約50kDa以下の分子量、好ましくは、約1kDaから約6kDaの分子量を有する、請求項1若しくは5から7のいずれか1項に記載の薬学的組成物、又は請求項2若しくは5から7のいずれか1項に記載の使用、又は請求項3から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤が、インスリン、インスリン類似体、インスリンリスプロ、インスリンペグリスプロ、インスリンアスパルト、インスリングルリジン、インスリングラルギン、インスリンデテミル、NPHインスリン、インスリンデグルデク、B29K(N(ε)ヘキサデカンジオイル-γ-L-Glu)A14E B25H desB30ヒトインスリン、B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γ-L-Glu-OEG-OEG)desB30ヒトインスリン、B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γ-L-Glu)A14E B25H desB30ヒトインスリン、B29K(N(ε)エイコサンジオイルγ-L-Glu)A14E B25H desB30ヒトインスリン、B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γ-L-Glu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン、B29K(N(ε)エイコサンジオイルγ-L-Glu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン、B29K(N(ε)エイコサンジオイルγ-L-Glu-OEG-OEG)A14E B16H B25H desB30ヒトインスリン、B29K(N(ε)ヘキサデカンジオイル-γ-L-Glu)A14E B16H B25H desB30ヒトインスリン、B29K(N(ε)エイコサンジオイルγ-L-Glu-OEG-OEG)A14E B16H B25H desB30ヒトインスリン、B29K(N(ε)オクタデカンジオイル)A14E B25H desB30ヒトインスリン、GLP-1、GLP-1類似体、アシル化されたGLP-1類似体、ジアシル化されたGLP-1類似体、GLP-1アゴニスト、セマグルチド、リラグルチド、エキセナチド、エキセンディン-4、リキシセナチド、タスポグルチド、アルビグルチド、デュラグルチド、ラングレナチド、ベイナグルチド、エフェグレナタイド、GLP-1(7~37)、GLP-1(7~36)NH2、GLP-1受容体と別の受容体とのデュアルアゴニスト、GLP-1受容体とグルカゴン受容体とのデュアルアゴニスト、GLP-1受容体及び胃抑制ポリペプチド受容体とのデュアルアゴニスト、オキシントモジュリン、GLP-2、GLP-2類似体、GLP-2アゴニスト、テデュグルチド、エルシグルチド、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド、デュアルGLP-1類似体、GLP-1R/GCGRデュアルアゴニスト、GLP1/グルカゴン受容体コアゴニスト、GLP-1R/GIPRデュアルアゴニスト、GLP1/GIP受容体コアゴニスト、エキセンディン-4ペプチド類似体、エキセンディン-4誘導体、エラミプレチド、シクロチド、組換え第VIIa因子、エプタコグアルファ、アミリン、アミリン類似体、プラムリンチド、ソマトスタチン類似体、オクトレオチド、ランレオチド、パシレオチド、ゴセレリン、ブセレリン、レプチン、レプチン類似体、メトレレプチン、ペプチドYY、ペプチドYY類似体、グラチラマー、ロイプロリド、デスモプレシン、デスモプレシン類似体、バソプレッシン受容体2アゴニストペプチド、オステオカルシン、オステオカルシン類似体又は誘導体、ヒト成長ホルモン、ヒト成長ホルモン類似体、長時間作用型のヒト成長ホルモン、線維芽細胞増殖因子21、ソマパシタン、hGH-CTP、抗体、グリコペプチド抗生物質、グリコシル化された環状又は多環の非リボソームペプチド系抗生物質、バンコマイシン、テイコプラニン、テラバンシン、ブレオマイシン、ラモプラニン、デカプラニン、シクロチド、ボルテゾミブ、コシントロピン、絨毛性ゴナドトロピン、メノトロピン、セルモレリン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、ソマトロピン、カルシトニン、サケカルシトニン、ペンタガストリン、オキシトシン、ネシリチド、アナキンラ、エンフビルチド、ペグビソマント、ドルナーゼアルファ、レピルジン、アニデュラフンギン、エプチフィバチド、インターフェロンアルファコン-1、インターフェロンアルファ-2a、インターフェロンアルファ-2b、インターフェロンベータ-1a、インターフェロンベータ-1b、インターフェロンガンマ-1b、ペグインターフェロンアルファ-2a、ペグインターフェロンアルファ-2b、ペグインターフェロンベータ-1a、フィブリノリジン、バソプレッシン、アルデスロイキン、エポエチン、エポエチンアルファ、ダルベポエチンアルファ、エポエチンベータ、エポエチンデルタ、エポエチンオメガ、エポエチンゼータ、エポエチンシータ、メトキシポリエチレングリコール-エポエチンベータ、持続性エリスロポエチン受容体活性化剤、ペグ化されたepo、アルブポエチン、epo-二量体類似体、epo-Fc、カルバミル化されたEPO、合成赤血球生成タンパク質、低分子epo類似体PBI-1402、フィルグラスチム、PEG-フィルグラスチム、インタロイキン-11、シクロスポリン、グルカゴン、ウロキナーゼ、バイオマイシン、チロトロピン放出ホルモン、ロイシン-エンケファリン、メチオニン-エンケファリン、サブスタンスP、副腎皮質刺激ホルモン、副甲状腺ホルモン、副甲状腺ホルモン断片、テリパラチド、PTH(1~31)、PTH(2~34)、副甲状腺ホルモン関連タンパク質、アバロパラチド、リナクロチド、カルフィルゾミブ、イカチバント、エカランチド、シレンギチド、プロスタグランジンF2α受容体調節物質、PDC31、アブシキシマブ、ラニビズマブ、アレファセプト、ロミプロスチン、アナキンラ、アバタセプト、ベラタセプト、及びこれらの薬学的に許容可能な塩から選択される、請求項1若しくは5から7のいずれか1項に記載の薬学的組成物、又は請求項2若しくは5から7のいずれか1項に記載の使用、又は請求項3から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤が、GLP-1アゴニスト、セマグルチド、リラグルチド、エキセナチド、エキセンディン-4、リキシセナチド、タスポグルチド、アルビグルチド、デュラグルチド、ラングレナチド、ベイナグルチド、エフェグレナタイド、GLP-1(7~37)、GLP-1(7~36)NH2、GLP-1受容体と別の受容体とのデュアルアゴニスト、GLP-1受容体とグルカゴン受容体とのデュアルアゴニスト、GLP-1受容体と胃抑制ポリペプチド受容体とのデュアルアゴニスト、オキシントモジュリン、GLP-2、GLP-2アゴニスト、テデュグルチド、エルシグルチド、ソマトスタチン類似体、オクトレオチド、ランレオチド、パシレオチド、デスモプレシン、デスモプレシン類似体、バソプレッシン受容体2アゴニストペプチド、副甲状腺ホルモン断片、テリパラチド、PTH(1~31)、PTH(2~34)、及びこれらの薬学的に許容可能な塩から選択される、請求項1若しくは5から7のいずれか1項に記載の薬学的組成物、又は請求項2若しくは5から7のいずれか1項に記載の使用、又は請求項3から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤が、GLP-1アゴニスト、セマグルチド、リラグルチド、エキセナチド、エキセンディン-4、リキシセナチド、タスポグルチド、アルビグルチド、デュラグルチド、ラングレナチド、ベイナグルチド、エフェグレナタイド、GLP-1(7~37)、GLP-1(7~36)NH2、GLP-1受容体とグルカゴン受容体とのデュアルアゴニスト、オキシントモジュリン、及びこれらの薬学的に許容可能な塩から選択される、請求項1若しくは5から7のいずれか1項に記載の薬学的組成物、又は請求項2若しくは5から7のいずれか1項に記載の使用、又は請求項3から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
薬学的組成物が透過促進剤を更に含む、請求項1若しくは5から11のいずれか1項に記載の薬学的組成物、又は請求項2若しくは5から11のいずれか1項に記載の使用、又は請求項3から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
透過促進剤が、C8~20アルカノイルカルニチン、サリチル酸、サリチル酸誘導体、3-メトキシサリチル酸、5-メトキシサリチル酸、ホモバニリン酸、C8~20アルカン酸、クエン酸、酒石酸、脂肪酸アシル化されたアミノ酸、C8~20アルカノイルサルコシン酸塩、アルキルサッカライド、C8~10アルキルポリサッカライド、n-オクチル-ベータ-D-グルコピラノシド、n-ドデシル-ベータ-D-マルトシド、n-テトラデシル-ベータ-D-マルトシド、トリデシル-ベータ-D-マルトシド、ラウリン酸スクロース、ラウリン酸スクロース、ミリスチン酸スクロース、パルミチン酸スクロース、ココヤシ酸スクロース、モノドデカン酸スクロース、モノトリデカン酸スクロース、モノテトラデカン酸スクロース、ココグルコシド、シクロデキストリン、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、メチル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリン、スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリン、N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸、N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸ナトリウム、N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸ナトリウム誘導体、チオマー、ビタミンB部分構造を有する粘膜付着性ポリマー、カルシウムキレート化化合物、エチレンジアミン四酢酸、エチレングリコール四酢酸、ポリアクリル酸、クレモフォールEL、キトサン、N,N,N-トリメチルキトサン、塩化ベンザルコニウム、ベスタチン、塩化セチルピリジニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、C2~20アルカノール、C8~20アルケノール、C8~20アルケン酸、硫酸デキストラン、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、1-ドデシルアザシクロ-ヘプタン-2-オン、カプリルカプロイルポリオキシルグリセリド、カプリル酸エチル、グリセリルモノラウレート、リゾホスファチジルコリン、メントール、C8~20アルキルアミン、C8~20アルケニルアミン、ホスファチジルコリン、ポロキサマー、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリオキシエチレン、ポリプロピレングリコールモノラウレート、ポリソルベート、コール酸、デオキシコール酸塩、ケノデオキシコール酸塩、グリココール酸ナトリウム、グリコデオキシコール酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、デシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、ラウレス硫酸ナトリウム、N-ラウリルサルコシネート、デシルトリメチルアンモニウムブロミド、ベンジルジメチルドデシルアンモニウムクロリド、ミリスチルトリメチルアンモニウムクロリド、ドデシルピリジニウムクロリド、デシルジメチルアンモニオプロパンスルホネート、ミリスチルジメチルアンモニオプロパンスルホネート、パルミチルジメチルアンモニオプロパンスルホネート、ケムベタインCAS、ケムベタインオレイル、ノニルフェノキシポリオキシエチレン、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノオエレート、トリトンX-100、ヘキサン酸、ヘプタン酸、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸メチル、セバシン酸ジエチル、オレイン酸ナトリウム、尿素、ラウリルアミン、カプロラクタム、メチルピロリドン、オクチルピロリドン、メチルピペラジン、フェニルピペラジン、カーボポール934P、グリチルレチン酸、ブロメライン、ピネンオキシド、リモネン、シネオール、オクチルドデカノール、フェンコン、メントン、トリメトキシプロピレンメチルベンゼン、細胞膜透過ペプチド、KLAKLAK、ポリアルギニン、オリゴアルギニン、オクタアルギニン、ペネトラチン、ペネトラチン類似体、PenetraMax、HIV-1 Tat、トランスポータン、マクロゴール-15-ヒドロキシステアリン酸塩、Solutol HS 15、CriticalSorb、タウロコール酸塩、タウロデオキシコール酸塩、スルホキシド、デシルメチルスルホキシド、ジメチルスルホキシド、シクロペンタデカラクトン、8-(N-2-ヒドロキシ-5-クロロ-ベンゾイル)-アミノ-カプリル酸、N-(10-[2-ヒドロキシベンゾイル]アミノ)デカン酸、ドデシル-2-N,N-ジメチルアミノプロピオネート、D-α-トコフェリルポリエチレングリコール-1000スクシネート、アルギニン、及びこれらの薬学的に許容可能な塩から選択され、
更に、前記脂肪酸アシル化されたアミノ酸が、好ましくは、ラウロイルアラニン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-アラニン、ラウロイルアスパラギン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-アスパラギン、ラウロイルアスパラギン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-アスパラギン酸、ラウロイルシステイン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-システイン、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-グルタミン酸、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-グルタミン、ラウロイルグリシン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-グリシン、ラウロイルヒスチジン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-ヒスチジン、ラウロイルイソロイシン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-イソロイシン、ラウロイルロイシン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-ロイシン、ラウロイルメチオニン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-メチオニン、ラウロイルフェニルアラニン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-フェニルアラニン、ラウロイルプロリン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-プロリン、ラウロイルセリン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-セリン、ラウロイルスレオニン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-スレオニン、ラウロイルトリプトファン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-トリプトファン、ラウロイルチロシン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-チロシン、ラウロイルバリン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-バリン、ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-サルコシン、カプリン酸アラニン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-アラニン、カプリックアスパラギン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-アスパラギン、カプリックアスパラギン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-アスパラギン酸、カプリックシステイン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-システイン、カプリックグルタミン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-グルタミン酸、カプリックグルタミン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-グルタミン、カプリックグリシン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-グリシン、カプリックヒスチジン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-ヒスチジン、カプリックイソロイシン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-イソロイシン、カプリックロイシン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-ロイシン、カプリックメチオニン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-メチオニン、カプリックフェニルアラニン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-フェニルアラニン、カプリックプロリン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-プロリン、カプリックセリン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-セリン、カプリックスレオニン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-スレオニン、カプリックトリプトファン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-トリプトファン、カプリックチロシン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-チロシン、カプリックバリン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-バリン、カプリサルコシン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-サルコシン、オレオイルサルコシン酸ナトリウム、N-デシルロイシンナトリウム、ステアロイルグルタミン酸ナトリウム、ミリストイルグルタミン酸ナトリウム、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、ココイルグルタミン酸ナトリウム、ココイルグリシン酸ナトリウム、N-デシルロイシンナトリウム、ココイルグリシンナトリウム、ココイルグルタミン酸ナトリウム、ラウロイルアラニン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-アラニン、ラウロイルアスパラギン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-アスパラギン、ラウロイルアスパラギン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-アスパラギン酸、ラウロイルシステイン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-システイン、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-グルタミン酸、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-グルタミン、ラウロイルグリシン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-グリシン、ラウロイルヒスチジン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-ヒスチジン、ラウロイルイソロイシン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-イソロイシン、ラウロイルロイシン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-ロイシン、ラウロイルメチオニン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-メチオニン、ラウロイルフェニルアラニン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-フェニルアラニン、ラウロイルプロリン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-プロリン、ラウロイルセリン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-セリン、ラウロイルスレオニン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-スレオニン、ラウロイルトリプトファン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-トリプトファン、ラウロイルチロシン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-チロシン、ラウロイルバリン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-バリン、N-ドデカノイル-L-サルコシン、カプリックアラニン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-アラニン、カプリックアスパラギン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-アスパラギン、カプリックアスパラギン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-アスパラギン酸、カプリックシステイン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-システイン、カプリックグルタミン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-グルタミン酸、カプリックグルタミン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-グルタミン、カプリックグリシン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-グリシン、カプリックヒスチジン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-ヒスチジン、カプリックイソロイシン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-イソロイシン、カプリックロイシン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-ロイシン、ロイシン、カプリックメチオニン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-メチオニン、カプリックフェニルアラニン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-フェニルアラニン、カプリックプロリン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-プロリン、カプリックセリン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-セリン、カプリックスレオニン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-スレオニン、カプリックトリプトファン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-トリプトファン、カプリックチロシン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-チロシン、カプリックバリン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-バリン、カプリサルコシン酸ナトリウム、オレオイルサルコシン酸ナトリウム、及びこれらの薬学的に許容可能な塩から選択される、請求項12に記載の薬学的組成物、又は請求項12に記載の使用、又は請求項12に記載の方法。
【請求項14】
透過促進剤が、カプリル酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸スクロース、ラウリン酸スクロース、ステアリン酸ナトリウム、EDTA、ポリアクリル酸、及びN-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸ナトリウムから選択される、請求項12に記載の薬学的組成物、又は請求項12に記載の使用、又は請求項12に記載の方法。
【請求項15】
薬学的組成物の構成が、薬学的組成物が0.1Mの水性重炭酸ナトリウム溶液10mlに添加される場合に溶液のpHがpH9より大きくなるものである、請求項1若しくは5から14のいずれか1項に記載の薬学的組成物、又は請求項2若しくは5から14のいずれか1項に記載の使用、又は請求項3から14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
薬学的組成物が、pKa値が12以上の賦形剤を、投薬単位当たり約1mgから約1000mgの量で、好ましくは、投薬単位当たり約50mgから約500mgの量で含む、請求項1若しくは5から15のいずれか1項に記載の薬学的組成物、又は請求項2若しくは5から15のいずれか1項に記載の使用、又は請求項3から15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤が、薬学的組成物内で、pKa値が12以上の賦形剤と物理的に分離している、請求項1若しくは5から16のいずれか1項に記載の薬学的組成物、又は請求項2若しくは5から16のいずれか1項に記載の使用、又は請求項3から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
薬学的組成物が、pKa値が12以上の賦形剤の粒子を含み、前記粒子が、pKa値が12以上の賦形剤をペプチド薬剤又はタンパク質薬剤から分離する保護コーティングでコーティングされており、保護コーティングが、好ましくは、グルコース、マルトデキストリン、又はHPMCで作られる、請求項1若しくは5から17のいずれか1項に記載の薬学的組成物、又は請求項2若しくは5から17のいずれか1項に記載の使用、又は請求項3から17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
経粘膜投与される、医薬として使用するための、請求項1又は5から18のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項20】
経粘膜投与される、疾患/障害の処置又は予防において使用するための、請求項1又は5から18のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項21】
経粘膜投与される、糖尿病、肥満、又は非アルコール性脂肪性肝疾患の処置又は予防において使用するための、請求項11に記載の薬学的組成物。
【請求項22】
前記薬学的組成物が経口投与される、請求項19から21のいずれか1項に規定の使用のための薬学的組成物、又は請求項2若しくは5から18のいずれか1項に記載の使用、又は請求項3から18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記薬学的組成物が口腔粘膜に投与される、請求項19から21のいずれか1項に規定の使用のための薬学的組成物、又は請求項2若しくは5から18のいずれか1項に記載の使用、又は請求項3から18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記薬学的組成物が経鼻投与される、請求項19から21のいずれか1項に規定の使用のための薬学的組成物、又は請求項2若しくは5から18のいずれか1項に記載の使用、又は請求項3から18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
経口投与される、腸の疾患/障害の処置又は予防において使用するための、請求項1又は5から18のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項26】
前記薬学的組成物が固体組成物である、請求項22若しくは25に記載の使用のための薬学的組成物、又は請求項22に記載の使用、又は請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、pKa値が12以上の賦形剤(例えば、アルギニン遊離塩基、EDTAテトラゾリウム塩、リン酸三ナトリウム、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、リジン、又は水酸化カルシウム)と組み合わせたペプチド薬剤又はタンパク質薬剤を含む、経粘膜投与のための薬学的組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ペプチド及びタンパク質等の生物製剤の非侵襲性の送達のための、効果的で貯蔵安定性が良いが安全でもある組成物が強く必要とされている。粘膜(例えば、胃腸又は鼻の粘膜)を通過する透過性の低さに加えて、ペプチド及びタンパク質の酵素分解は、このような治療薬をうまく送達するための最も重要な障壁の1つである。かなり以前に、トリプシンのようなペプチダーゼがアルカリpHレベルで可逆的に不活化され得ることが報告されており(Kunitz Mら、J Gen Physiol. 1934、17(4):591~615)、このことはまた、腸管内の細菌ペプチダーゼにも当てはまる。しかし、酵素阻害のこの概念が治療用ペプチド及び治療用タンパク質の経粘膜送達のための薬学的製剤に適用され得るということは未だ報告されていない。成功裏の製剤は、投薬形態が治療用ペプチド又は治療用タンパク質を放出する場所と近接しているところで、タンパク質分解酵素の酵素活性を低減させるために十分に高いpHを生じさせる必要があるだけではなく、それを薬学的投与に適切な非常に安全な賦形剤で行う必要もある。更に、ペプチド及びタンパク質がアルカリpHで化学分解する傾向があるということが知られており(Brange Jら、Acta Pharm Nord. 1992、4(3):149~58)、したがって、貯蔵安定性が十分である製剤が開発される必要もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】US2014/0056953A1
【特許文献2】WO2015/185640
【特許文献3】WO2013/164483
【特許文献4】WO2015/086728
【特許文献5】WO2015/155139
【特許文献6】WO2015/086733
【特許文献7】WO93/19175
【特許文献8】WO96/29342
【特許文献9】WO98/08871
【特許文献10】WO99/43707
【特許文献11】WO99/43706
【特許文献12】WO99/43341
【特許文献13】WO99/43708
【特許文献14】WO2005/027978
【特許文献15】WO2005/058954
【特許文献16】WO2005/058958
【特許文献17】WO2006/005667
【特許文献18】WO2006/037810
【特許文献19】WO2006/037811
【特許文献20】WO2006/097537
【特許文献21】WO2006/097538
【特許文献22】WO2008/023050
【特許文献23】WO2009/030738
【特許文献24】WO2009/030771
【特許文献25】WO2009/030774
【特許文献26】US5,661,130
【特許文献27】WO2012/112319
【特許文献28】US8,980,238B2
【特許文献29】US2012/0065124
【特許文献30】US5,866,536
【特許文献31】US5,773,647
【特許文献32】WO2011/133198
【特許文献33】US2015/174076
【特許文献34】米国特許第3,219,656号
【特許文献35】米国特許第3,839,318号
【特許文献36】オーストラリア特許第382,381号
【特許文献37】US8,927,497
【特許文献38】WO00/59863
【特許文献39】WO2013/139694
【特許文献40】US2015/0174076
【特許文献41】US2003/0017195
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Kunitz Mら、J Gen Physiol. 1934、17(4):591~615
【非特許文献2】Brange Jら、Acta Pharm Nord. 1992、4(3):149~58
【非特許文献3】Rote Liste Service GmbH社、2017、ISBN 978-3946057109)
【非特許文献4】AVOXA - Mediengruppe Deutscher Apotheker GmbH社、2017、ISBN 978-3774199149
【非特許文献5】Aktories Kら(編)、Allgemeine und spezielle Pharmakologie und Toxikologie、Urban & Fischer Verlag / Elsevier GmbH、第12版、2017、ISBN 978-3437425257
【非特許文献6】Ammon HPTら(編)、Hunnius Pharmazeutisches Worterbuch、De Gruyter、第11版、2014、ISBN 978-3110309904
【非特許文献7】Otto HHら、Arzneimittel-Ein Handbuch fur Arzte und Apotheker、Wissenschaftliche Verlagsgesellschaft、2017、ISBN 978-3804737266
【非特許文献8】www.drugbank.ca
【非特許文献9】www.drugs.com
【非特許文献10】www.merckmanuals.com
【非特許文献11】www.ema.europa.eu
【非特許文献12】www.fda.gov
【非特許文献13】www.pmda.go.jp
【非特許文献14】www.medicines.org.uk/emc/
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【非特許文献22】Torres-Lugo Mら、Biotechnol Prog. 2002、18(3):612~6
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【非特許文献26】Gopalanら、J. Biol. Chem. 267:9629~9638 (1992)
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【非特許文献30】Binder, T. P.及びRobyt, J. F.、Carbohydr. Res. 140:9~20 (1985)
【非特許文献31】Chem. Abstr.、108:114719 (1988)
【非特許文献32】Gruber及びGreber pp. 95~116
【非特許文献33】Kunz, M.、「Sucrose-based Hydrophilic Building Blocks as Intermediates for the Synthesis of Surfactants and Polymers」in Carbohydrates as Organic Raw Materials、127~153
【非特許文献34】Ugwoke MIら、Adv Drug Deliv Rev. 2005、57(11):1640~65
【非特許文献35】Remington's Pharmaceutical Sciences、第20版
【非特許文献36】Kamble MSら、International Journal of Pharmaceutical and Chemical Sciences. 2013、2(1):516~25
【非特許文献37】Wuts PG & Greene TW、Greene's protective groups in organic synthesis、John Wiley & Sons、2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、当技術分野におけるこれらの欠点に対処し、そして、タンパク質分解酵素の存在下で有利に安定な、ひいては、添付の実施例においても実証されているような、経粘膜経路を介する、特に口腔粘膜経路を介する、治療用ペプチド又は治療用タンパク質の特に効率的な送達を可能にする、薬学的組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明は、ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤及びpKa値が12以上の賦形剤を含む、経粘膜投与のための薬学的組成物を提供する。
【0007】
本発明は同様に、薬剤として使用するための、経粘膜投与される、ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤及びpKa値が12以上の賦形剤を含む薬学的組成物を提供する。本発明はまた、経粘膜投与される、疾患/障害の処置又は予防において使用するための、ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤及びpKa値が12以上の賦形剤を含む薬学的組成物に関する。
【0008】
本発明は更に、経粘膜投与のための薬学的組成物の調製における、ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤及びpKa値が12以上の賦形剤の使用に関する。
【0009】
更に、本発明は、ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤及びpKa値が12以上の賦形剤を含む薬学的組成物を、それを必要とする対象(例えばヒト)に経粘膜投与することを含む、疾患/障害を処置又は予防する方法を提供する。処置又は予防される疾患/障害が、前記ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤で処置又は予防されやすい疾患/障害であることが理解されるであろう。
【0010】
本発明は同様に、ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤及びpKa値が12以上の賦形剤を含む薬学的組成物を、それを必要とする対象(例えばヒト)に経粘膜投与することを含む、前記ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤を経粘膜送達する方法に関する。
【0011】
本発明に従って投与されるペプチド薬剤又はタンパク質薬剤は、好ましくは、約300kDa以下(例えば、約260kDa以下、又は220kDa以下、又は約180kDa以下、又は約150kDa以下、又は約120kDa以下、又は約100kDa以下、又は約90kDa以下、又は約80kDa以下、又は約70kDa以下、又は約60kDa以下、又は約50kDa以下、又は約40kDa以下、又は約30kDa以下、又は約20kDa以下、又は約10kDa以下、又は約5kDa以下、又は約2kDa以下、又は約1kDa以下、又は約500Da以下等)の分子量を有する。更に好ましくは、ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤は、約200kDa以下、更に好ましくは約150kDa以下、更に好ましくは約100kDa以下、更に好ましくは約50kDa以下、更に好ましくは約40kDa以下、更に好ましくは約30kDa以下、更に好ましくは約20kDa以下、そして更に好ましくは約10kDa以下の最大分子量を有する。更に好ましくは、ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤は、約300Da以上、更に好ましくは約500Da以上、更に好ましくは約800Da以上、そして更に好ましくは約1kDa以上の最小分子量を有する。したがって、特に好ましくは、ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤は、約300Daから約150kDa、更に好ましくは約300Daから約50kDa、更に好ましくは約500Daから約30kDa、更に好ましくは約500Daから約20kDa、そして更に好ましくは約800Daから約10kDaの分子量を有する。経口投与では、特に好ましくは、ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤は、約1kDaから約6kDaの分子量を有する。経鼻投与では、約1kDaから約10kDaの分子量が特に好ましい。
【0012】
ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤の分子量は、本明細書において、統一原子質量単位(u)の代替名であるダルトン(Da)で示されている。例えば500Daの分子量は、したがって、500g/molに等しい。用語「kDa」(キロダルトン)は、1000Daを指す。
【0013】
ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤の分子量は、例えば、質量分析(例えば、エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)若しくはマトリクス支援レーザー脱離/イオン化質量分析(MALDI-MS))、ゲル電気泳動(例えば、ドデシル硫酸ナトリウムを使用するポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE))、流体力学的方法(例えば、ゲル濾過クロマトグラフィー若しくは勾配沈降)、又は静的光散乱法(例えば、多角度光散乱法(MALS))等の、当技術分野において知られている方法を使用して決定することができる。好ましくは、ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤の分子量は、質量分析を使用して決定される。
【0014】
ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤は、医薬として使用するために適した任意のペプチド又はタンパク質であり得る。例えば、ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤は、直鎖状ペプチド薬剤又は直鎖状タンパク質薬剤又は環状ペプチド薬剤又は環状タンパク質薬剤(少なくとも1つのエステル結合及び/又は少なくとも1つのアミド結合を介して環化している環状ペプチド薬剤又は環状タンパク質薬剤;例えばシクロチド等;シクロチドは、そのhead-to-tail型で環化したペプチド骨格及びそのジスルフィド結合のインターロック配置を特徴とする、ジスルフィドに富んだペプチドである)であり得る。これはまた、ペグ化されたペプチド薬剤若しくはタンパク質薬剤、又は脂肪酸アシル化されたペプチド薬剤若しくはタンパク質薬剤、又は脂肪二酸アシル化されたペプチド薬剤若しくはタンパク質薬剤等の、修飾又は誘導体化されたペプチド薬剤又はタンパク質薬剤であり得る。更に、ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤は、ヒスチジン残基を有さない及び/又はシステイン残基を有さない場合がある。一般に、ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤は水溶性、特に中性pH(すなわち、約pH7)であることが好ましい。更に好ましくは、ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤は、少なくとも1つのセリンプロテアーゼ切断部位を有し、すなわち、ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤は、セリンプロテアーゼによって切断され得る又は切断される傾向がある1つ又は複数のアミノ酸残基を含み、更に好ましくは、ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤は、セリンプロテアーゼによって切断され得る又は切断される傾向がある1つ又は複数のアミノ酸残基を含む。用語「ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤」は、本明細書において、「治療用ペプチド又は治療用タンパク質」及び「治療用ペプチド薬剤又は治療用タンパク質薬剤」と同じ意味で使用される。
【0015】
ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤は、好ましくは、インスリン(好ましくは、ヒトインスリン)、インスリン類似体(例えば、長時間作用型の基礎インスリン類似体、若しくはプロテアーゼ安定化された長時間作用型の基礎インスリン類似体;典型的なインスリン類似体としては、限定はしないが、インスリンリスプロ、インスリンペグリスプロ、インスリン誘導体「A14E、B25H、B29K(N(eps)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)、desB30ヒトインスリン」(例えば、US2014/0056953A1を参照されたい)、インスリンアスパルト、インスリングルリジン、インスリングラルギン、インスリンデテミル、NPHインスリン、インスリンデグルデク、及び、参照することによって本明細書に組み込まれるUS2014/0056953A1において記載されているインスリン類似体/誘導体、特に、US2014/0056953A1の第[0225]段落から第[0332]段落において記載されているインスリン類似体/誘導体のそれぞれが含まれる)、GLP-1、GLP-1類似体(例えば、アシル化されたGLP-1類似体、若しくはジアシル化されたGLP-1類似体)、又はGLP-1アゴニスト(「グルカゴン様ペプチド-1受容体アゴニスト」若しくは「GLP-1受容体アゴニスト」とも呼ばれる)、セマグルチド、リラグルチド、エキセナチド、エキセンディン-4、リキシセナチド、タスポグルチド、アルビグルチド、デュラグルチド、ラングレナチド、ベイナグルチド(beinaglutide)、エフェグレナタイド、GLP-1(7~37)、GLP-1(7~36)NH2、GLP-1受容体と別の受容体とのデュアルアゴニスト(例えば、GLP-1受容体とグルカゴン受容体とのデュアルアゴニスト、若しくはGLP-1受容体と胃抑制ポリペプチド(GIP)受容体とのデュアルアゴニスト)、オキシントモジュリン、GLP-2、GLP-2アゴニスト若しくは類似体(例えば、テデュグルチド若しくはエルシグルチド)、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(「胃抑制ポリペプチド」若しくはGIPとも呼ばれる)、デュアルGLP-1類似体、グルカゴン様ペプチド1受容体とグルカゴン受容体とのデュアルアゴニスト(GLP-1R/GCGRデュアルアゴニスト)、GLP1/グルカゴン受容体コアゴニスト(例えば、WO2015/185640において言及されている化合物のいずれか1つ等)、グルカゴン様ペプチド1受容体と胃抑制ポリペプチド受容体とのデュアルアゴニスト(GLP-1R/GIPRデュアルアゴニスト;例えば、WO2013/164483において言及されている化合物のいずれか1つ等)、GLP1/GIP受容体コアゴニスト、エキセンディン-4ペプチド類似体(特に、GLP-1R/GIPRデュアルアゴニストであるエキセンディン-4ペプチド類似体;例えば、WO2015/086728において言及されているエキセンディン-4ペプチド類似体のいずれか1つ等)、エキセンディン-4誘導体(特に、GLP-1R/GCGRデュアルアゴニストであるエキセンディン-4誘導体;例えば、WO2015/155139若しくはWO2015/086733において言及されているエキセンディン-4誘導体のいずれか1つ等)、エラミプレチド、シクロチド(すなわち、例えば、少なくとも2つのジスルフィド結合を有するシクロチド、及び好ましくは、3つのジスルフィド結合を有するシクロチドを含む、そのhead-to-tail型で環化したペプチド骨格及びそのジスルフィド結合のインターロック配置を特徴とするペプチド)、組換え第VIIa因子(rFVIIa)、エプタコグアルファ、アミリン、アミリン類似体、プラムリンチド、ソマトスタチン類似体(例えば、オクトレオチド、ランレオチド、若しくはパシレオチド)、ゴセレリン(例えば、ゴセレリン酢酸塩)、ブセレリン(例えば、ブセレリン酢酸塩)、レプチン、レプチン類似体(例えば、メトレレプチン)、ペプチドYY(PYY)、PYY類似体、グラチラマー(例えば、グラチラマー酢酸塩)、ロイプロリド(例えば、ロイプロリド酢酸塩)、デスモプレシン(例えば、デスモプレシン酢酸塩、特に、デスモプレシン一酢酸塩三水和物)、デスモプレシン類似体、バソプレッシン受容体2(V2受容体)アゴニストペプチド、オステオカルシン、オステオカルシン類似体若しくは誘導体、ヒト成長ホルモン(hGH)、ヒト成長ホルモン類似体、長時間作用型のヒト成長ホルモン(例えば、ソマプシタン若しくはhGH-CTP(ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)のベータ鎖のC末端ペプチド(CTP)で誘導体化されたヒト成長ホルモン)等)、線維芽細胞成長因子21(FGF21)、抗体(例えば、本明細書において以下で記載される典型的な抗体のいずれか)、グリコペプチド抗生物質(例えば、グリコシル化された環状若しくは多環の非リボソームペプチド、例えば、バンコマイシン、テイコプラニン、テラバンシン、ブレオマイシン、ラモプラニン、若しくはデカプラニン)、シクロチド、ボルテゾミブ、コシントロピン、絨毛性ゴナドトロピン、メノトロピン、セルモレリン、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH、「ゴナドトロピン放出ホルモン」とも呼ばれる)、ソマトロピン、カルシトニン(例えば、サケカルシトニン)、ペンタガストリン、オキシトシン、ネシリチド、アナキンラ、エンフビルチド、ペグビソマント、ドルナーゼアルファ、レピルジン、アニデュラフンギン、エプチフィバチド、インターフェロンアルファコン-1、インターフェロンアルファ-2a、インターフェロンアルファ-2b、インターフェロンベータ-1a、インターフェロンベータ-1b、インターフェロンガンマ-1b、ペグインターフェロンアルファ-2a(すなわち、ペグ化されたインターフェロンアルファ-2a)、ペグインターフェロンアルファ-2b(すなわち、ペグ化されたインターフェロンアルファ-2b)、ペグインターフェロンベータ-1a(すなわち、ペグ化されたインターフェロンベータ-1a)、フィブリノリジン、バソプレッシン、アルデスロイキン、エポエチン、エポエチンアルファ、ダルベポエチンアルファ、エポエチンベータ、エポエチンデルタ、エポエチンオメガ、エポエチンゼータ、エポエチンシータ、メトキシポリエチレングリコール-エポエチンベータ、持続性エリスロポエチン受容体活性化剤(CERA、ペグ化されたEPO誘導体)、ペグ化されたepo、アルブポエチン(albupoetin)、epo-二量体類似体、epo-Fc、カルバミル化されたEPO(CEPO)、合成赤血球生成タンパク質(SEP)、低分子epo類似体(PBI-1402)、フィルグラスチム、PEG-フィルグラスチム、インタロイキン-11、シクロスポリン、グルカゴン、ウロキナーゼ、バイオマイシン、チロトロピン放出ホルモン(TRH)、ロイシン-エンケファリン、メチオニン-エンケファリン、サブスタンスP(CAS番号第33507-63-0号)、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、副甲状腺ホルモン(PTH)、副甲状腺ホルモン(PTH)断片(例えば、テリパラチド(「PTH(1-34)」とも呼ばれる)、PTH(1~31)、若しくはPTH(2~34))、副甲状腺ホルモン関連タンパク質(PTHrP)、アバロパラチド、リナクロチド、カルフィルゾミブ、イカチバント、エカランチド、シレンギチド、プロスタグランジンF2α受容体調節物質(例えば、PDC31)、アブシキシマブ(C7E3-Fab)、ラニビズマブ、アレファセプト、ロミプロスチム、アナキンラ、アバタセプト、ベラタセプト、並びにこれらの薬学的に許容可能な塩から選択される。処置される対象/患者がヒトである場合、及び、ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤が人間における内因性ペプチド又は内因性タンパク質である(すなわち、ヒトにおいて天然に生じる;例えば、インスリン又はグルカゴン等)場合、(例えば、組換えによって発現され得る又は化学的に合成され得る)対応するペプチド又はタンパク質のヒトアイソフォームを使用することが更に好ましい。
【0016】
更に好ましくは、ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤は、GLP-1、GLP-1類似体(例えば、アシル化されたGLP-1類似体、又はジアシル化されたGLP-1類似体、又は長時間作用型のアルブミン結合脂肪酸誘導体化されたGLP-1類似体)、GLP-1アゴニスト、セマグルチド、リラグルチド、エキセナチド、エキセンディン-4、リキシセナチド、タスポグルチド、アルビグルチド、デュラグルチド、ラングレナチド、ベイナグルチド、エフェグレナタイド、GLP-1(7~37)、GLP-1(7~36)NH2、GLP-1受容体と別の受容体とのデュアルアゴニスト(例えば、GLP-1受容体とグルカゴン受容体とのデュアルアゴニスト、又はGLP-1受容体とGIP受容体とのデュアルアゴニスト)、オキシントモジュリン、GLP-2、GLP-2アゴニスト又は類似体(例えば、テデュグルチド又はエルシグルチド)、組換え第VIIa因子(rFVIIa)、エプタコグアルファ、アミリン、アミリン類似体、プラムリンチド、ソマトスタチン類似体(例えば、オクトレオチド、ランレオチド、又はパシレオチド)、ゴセレリン(例えば、ゴセレリン酢酸塩)、ブセレリン、ペプチドYY(PYY)、PYY類似体、グラチラマー(例えば、グラチラマー酢酸塩)、ロイプロリド(例えば、ロイプロリド酢酸塩)、デスモプレシン(例えば、デスモプレシン酢酸塩、特に、デスモプレシン一酢酸塩三水和物)、デスモプレシン類似体、バソプレッシン受容体2(V2受容体)アゴニストペプチド、テイコプラニン、テラバンシン、ブレオマイシン、ラモプラニン、デカプラニン、ボルテゾミブ、コシントロピン、セルモレリン、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、カルシトニン(例えば、サケカルシトニン)、ペンタガストリン、ネシリチド、エンフビルチド、エプチフィバチド、シクロスポリン、グルカゴン、バイオマイシン、チロトロピン放出ホルモン(TRH)、ロイシン-エンケファリン、メチオニン-エンケファリン、サブスタンスP、副甲状腺ホルモン(PTH)断片(例えば、テリパラチド(PTH(1~34))、PTH(1~31)、又はPTH(2~34))、カルフィルゾミブ、イカチバント、シレンギチド、プロスタグランジンF2α受容体調節物質(例えば、PDC31)、及びこれらの薬学的に許容可能な塩から選択される。
【0017】
更に好ましくは、ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤は、GLP-1アゴニスト、セマグルチド、リラグルチド、エキセナチド、エキセンディン-4、リキシセナチド、タスポグルチド、アルビグルチド、デュラグルチド、ラングレナチド、ベイナグルチド、エフェグレナタイド、GLP-1(7~37)、GLP-1(7~36)NH2、GLP-1受容体と別の受容体とのデュアルアゴニスト(例えば、GLP-1受容体とグルカゴン受容体とのデュアルアゴニスト、又はGLP-1受容体とGIP受容体とのデュアルアゴニスト)、オキシントモジュリン、GLP-2、GLP-2アゴニスト又は類似体(例えば、テデュグルチド又はエルシグルチド)、ソマトスタチン類似体(例えば、オクトレオチド、ランレオチド、又はパシレオチド)、デスモプレシン(例えば、デスモプレシン酢酸塩、特に、デスモプレシン一酢酸塩三水和物)、デスモプレシン類似体、バソプレッシン受容体2(V2受容体)アゴニストペプチド、副甲状腺ホルモン(PTH)断片(例えば、テリパラチド(PTH(1~34))、PTH(1~31)、又はPTH(2~34))、及びこれらの薬学的に許容可能な塩から選択される。例えば、ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤は、GLP-1アゴニスト(リラグルチド等)、PTH断片(テリパラチド、すなわちPTH(1~34)等)、ソマトスタチン類似体(オクトレオチド等)、又はデスモプレシン(例えば、デスモプレシン酢酸塩、特に、デスモプレシン一酢酸塩三水和物)であり得る。
【0018】
更に好ましくは、ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤は、GLP-1アゴニスト、セマグルチド、リラグルチド、エキセナチド、エキセンディン-4、リキシセナチド、タスポグルチド、アルビグルチド、デュラグルチド、ラングレナチド、ベイナグルチド、エフェグレナタイド、GLP-1(7~37)、GLP-1(7~36)NH2、GLP-1受容体とグルカゴン受容体とのデュアルアゴニスト、オキシントモジュリン、及びこれらの薬学的に許容可能な塩から選択される。
【0019】
上記のように、ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤は、インスリン類似体であり得る。インスリン類似体は、好ましくは、
B29K(N(ε)ヘキサデカンジオイル-γ-L-Glu)A14E B25H desB30ヒトインスリン、
B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γ-L-Glu-OEG-OEG)desB30ヒトインスリン、
B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γ-L-Glu)A14E B25H desB30ヒトインスリン、
B29K(N(ε)エイコサンジオイルγ-L-Glu)A14E B25H desB30ヒトインスリン、
B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γ-L-Glu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン、
B29K(N(ε)エイコサンジオイルγ-L-Glu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン、
B29K(N(ε)エイコサンジオイルγ-L-Glu-OEG-OEG)A14E B16H B25H desB30ヒトインスリン、
B29K(N(ε)ヘキサデカンジオイル-γ-L-Glu)A14E B16H B25H desB30ヒトインスリン、
B29K(N(ε)エイコサンジオイルγ-L-Glu-OEG-OEG)A14E B16H B25H desB30ヒトインスリン、及び
B29K(N(ε)オクタデカンジオイル)A14E B25H desB30ヒトインスリン
から選択される。
【0020】
これらのインスリン類似体は、例えばUS2014/0056953A1において記載されており、特徴付けされている。特に好ましくは、インスリン類似体は、B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γ-L-Glu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリンである。
【0021】
更に、上記にも記載されているように、ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤は、GLP-1類似体であり得る。GLP-1類似体は、特に、ヒトグルカゴン様ペプチド-1のバリアント、好ましくは、GLP-1(7~37)のバリアントであり得る。GLP-1(7~37)のアミノ酸配列は、HAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGRGである。前述のヒトグルカゴン様ペプチド-1の「バリアント」又はGLP-1(7~37)の「バリアント」は、好ましくは、ヒトグルカゴン様ペプチド-1と、又はGLP-1(7~37)と、それぞれ1つ又は複数のアミノ酸が異なる化合物を指し、ここで、このような差は、少なくとも1つのアミノ酸(例えば、1から10個のアミノ酸)の付加、置換、若しくは欠失、又はこのような付加、置換、及び/若しくは欠失の任意の組み合わせによって生じる。GLP-1類似体は、例えば、GLP-1(7~37)の全長にわたって、前記GLP-1(7~37)に対して少なくとも60%(好ましくは、少なくとも65%、更に好ましくは少なくとも70%、更に好ましくは少なくとも80%、及び最も好ましくは少なくとも90%)の配列同一性を示し得る。GLP-1類似体とGLP-1(7~37)との間の配列同一性を決定するための方法の一例として、2つのペプチド[Aib8]GLP-1(7~37)及びGLP-1(7~37)がアラインされる。[Aib8]GLP-1(7~37)は、アラニンの8位がα-メチルアラニンによって置き換えられているという点で、GLP-1(7~37)と異なる(Aibはすなわち、2-アミノイソ酪酸である)。GLP-1(7~37)に対する[Aib8]GLP-1(7~37)の配列同一性は、アラインされた同一の残基の数から異なる残基の数を差し引いて、それをGLP-1(7~37)内の残基の総数で割ることによって得られる。したがって、この例において、配列同一性は、(31-1)/31である。GLP-1類似体(本明細書において記載される具体的なGLP-1類似体のいずれか1つを含む)のC末端はまた、アミドの形態であり得る。更に、GLP-1類似体は、例えば、GLP-1(7~37)アミド又はGLP-1(7~36)アミドであり得る。GLP-1類似体はまた、例えば、アミノ酸配列がHGEGTFITSDLSKQMEEEAVRLFIEWLKNGGPSSGAPPPSであるエキセンディン-4であり得る。GLP-1類似体は更に、ペプチドに共有結合している1つの置換基を含むという点でGLP-1ペプチドと異なる、天然のGLP-1(特にヒトGLP-1)の修飾された形態であり得る。前記置換基は、脂肪酸(例えば、C16、C18、若しくはC20脂肪酸)又は脂肪二酸(例えば、C16、C18、若しくはC20脂肪二酸)を含み得る。前記置換基はまた、以下の式:
【0022】
【0023】
の基を含み得、式中、nは少なくとも13(例えば、13、14、15、16、17、18、又は19、好ましくは13から17、更に好ましくは、13、15、又は17)である。前記置換基はまた、1つ又は複数の8-アミノ-3,6-ジオキサオクタン酸(OEG)基、例えば2つのOEG基を含み得る。特に、前記置換基は、[2-(2-{2-[2-(2-{2-[(S)-4-カルボキシ-4-(17-カルボキシヘプタデカノイルアミノ)ブチリルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル]及び[2-(2-{2-[2-(2-{2-[(S)-4-カルボキシ-4-({トランス-4-[(19-カルボキシノナデカノイルアミノ)メチル]シクロヘキサンカルボニル}アミノ)ブチリルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル]から選択され得る。GLP-1類似体はまた、WO93/19175、WO96/29342、WO98/08871、WO99/43707、WO99/43706、WO99/43341、WO99/43708、WO2005/027978、WO2005/058954、WO2005/058958、WO2006/005667、WO2006/037810、WO2006/037811、WO2006/097537、WO2006/097538、WO2008/023050、WO2009/030738、WO2009/030771、及びWO2009/030774において開示されているGLP-1アゴニストの1つ又は複数から選択され得る。
【0024】
ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤はまた、抗体、好ましくはモノクローナル抗体であり得、またこれは特に、一本鎖抗体又はシングルドメイン抗体(例えば「ナノボディ」)であり得る。このような治療用抗体は、好ましくは、経鼻経路を介して投与される。本発明に従ったペプチド薬剤又はタンパク質薬剤として使用され得るナノボディの例は、カプラシズマブである。カプラシズマブは、例えば血栓性血小板減少性紫斑病又は血栓症の処置又は予防において使用され得る、シングルドメイン抗体である。
【0025】
特に、ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤は、3F8、8H9、アバゴボマブ、アブシキシマブ、アビツズマブ、アブレゼキマブ(abrezekimab)、アブリルマブ、アクトクスマブ、アダリムマブ、アデカツムマブ、アチドルトクスマブ(atidortoxumab)、アデュカヌマブ、アファセビクマブ、アフェリモマブ、アフツズマブ、アラシズマブペゴル、アレムツズマブ、アリロクマブ、アルツモマブペンテテート、アマツキシマブ、アナツモマブマフェナトックス、アンデカリキシマブ、アネツマブラブタンシン、アニフロルマブ、アンルキンズマブ、アポリズマブ、アプルツマブイクサドチン(ixadotin)、アルシツモマブ、アスクリンバクマブ、アセリズマブ、アテゾリズマブ、アチヌマブ、アトロリムマブ、アベルマブ、アジンツキシズマブベドチン、バピネオズマブ、バシリキシマブ、バビツキシマブ、BCD-100、ベクツモマブ、ベゲロマブ、ベランタマブマフォドチン、ベリムマブ、ベマリツズマブ、ベンラリズマブ、ベルリマトクスマブ(berlimatoxumab)、ベルサンリマブ(bersanlimab)、ベルチリムマブ、ベシレソマブ、ベバシズマブ、ベズロトクスマブ、ビシロマブ、ビマグルマブ、ビメキズマブ、ビルタミマブ、ビバツズマブメルタンシン、BIVV009、ブレセルマブ、ブリナツモマブ、ブロンツベトマブ、ブロソズマブ、ボコシズマブ、ブラジクマブ、ブレンツキシマブベドチン、ブリアキヌマブ、ブロダルマブ、ブロルシズマブ、ブロンチクツズマブ、ブロスマブ、カビラリズマブ、カミダンルマブテシリン、カムレリズマブ、カナキヌマブ、カンツズマブメルタンシン、カンツズマブラブタンシン、カプラシズマブ、カプロマブペンデチド、カルルマブ、カロツキシマブ、カツマキソマブ、cbr96-ドキソルビシンイムノコンジュゲート、セデリズマブ、セミプリマブ、セルグツズマブアムナロイキン、セルトリズマブペゴル、セトレリマブ、セツキシマブ、シビサタマブ、シタツズマブボガトックス、シクスツムマブ、クラザキズマブ、クレノリキシマブ、クリバツズマブテトラキセタン、コドリツズマブ、コフェツズマブペリドチン、コルツキシマブラブタンシン、コナツムマブ、コンシズマブ、コスフロビキシマブ、クレネズマブ、クリザンリズマブ、クロテデュマブ、CR6261、クサツズマブ(cusatuzumab)、ダセツズマブ、ダクリズマブ、ダロツズマブ、ダピロリズマブペゴル、ダラツムマブ、デクトレクマブ、デムシズマブ、デニンツズマブマフォドチン、デノスマブ、デパツキシズマブマフォドチン、デルロツキシマブビオチン、デツモマブ、デザミズマブ、ジヌツキシマブ、ジリダブマブ、ドマグロズマブ、ドルリモマブアリトックス、ドロジツマブ、DS-8201、ドゥリゴツズマブ、デュピルマブ、デュルバルマブ、ドゥシギツマブ、ドゥボルツキシズマブ、エクロメキシマブ、エクリズマブ、エドバコマブ、エドレコロマブ、エファリズマブ、エフングマブ、エルデルマブ、エレザヌマブ、エルゲムツマブ、エロツズマブ、エルシリモマブ、エマクツズマブ、エマパルマブ、エミベツズマブ、エミシズマブ、エナポタマブベドチン、エナバツズマブ、エンホルツマブベドチン、エンリモマブペゴル、エノビリツズマブ、エノキズマブ、エノチクマブ、エンシツキシマブ、エピツモマブシツキセタン、エプラツズマブ、エプチネズマブ、エレヌマブ、エルリズマブ、エルツマキソマブ、エタラシズマブ、エチギリマブ、エトロリズマブ、エビナクマブ、エボロクマブ、エクスビビルマブ、ファノレソマブ、ファラリモマブ、ファリシマブ、ファルレツズマブ、ファシヌマブ、FBTA05、フェルビズマブ、フェザキヌマブ、フィバツズマブ、フィクラツズマブ、フィギツムマブ、フィリブマブ、フラボツマブ、フレチクマブ、フロテツズマブ、フォントリズマブ、フォラルマブ、フォラビルマブ、フレマネズマブ、フレソリムマブ、フルネベトマブ、フルラヌマブ、フツキシマブ、ガルカネズマブ、ガリキシマブ、ガンコタマブ、ガニツマブ、ガンテネルマブ、ガチポツズマブ、ガビリモマブ、ゲジブマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、ゲボキズマブ、ジルベトマブ、ジムシルマブ、ジレンツキシマブ、グレンバツムマブベドチン、ゴリムマブ、ゴミリキシマブ、ゴスラネマブ、グセルクマブ、イアナルマブ、イバリズマブ、IBI308、イブリツモマブチウキセタン、イクルクマブ、イダルシズマブ、イファボツズマブ、イゴボマブ、イラダツズマブ(iladatuzumab)ベドチン、IMAB362、イマルマブ、イマプレリマブ(imaprelimab)、イムシロマブ、イムガツズマブ、インクラクマブ、インダツキシマブラブタンシン、インデュサツマブベドチン、イネビリズマブ、インフリキシマブ、インテツムマブ、イノリモマブ、イノツズマブオゾガマイシン、イピリムマブ、イオマブ-b、イラツムマブ、イサツキシマブ、イスカリマブ、イスチラツマブ、イトリズマブ、イキセキズマブ、ケリキシマブ、ラベツズマブ、ラクノツズマブ(lacnotuzumab)、ラジラツズマブベドチン、ラムパリズマブ、ラナデルマブ、ランドグロズマブ、ラプリツキシマブエムタンシン、ラルカビキシマブ、レブリキズマブ、レマレソマブ、レンダリズマブ、レンベルビマブ(lenvervimab)、レンジルマブ、レルデリムマブ、レロンリマブ、レソファブマブ、レトリズマブ、レクサツムマブ、リビビルマブ、リファスツズマブベドチン、リゲリズマブ、ロンカスツキシマブテシリン、ロサツキシズマブ(losatuxizumab)ベドチン、リロトマブサテトラキセタン、リンツズマブ、リリルマブ、ロデルシズマブ、ロキベトマブ、ロルボツズマブメルタンシン、ルカツムマブ、ルリズマブペゴル、ルミリキシマブ、ルムレツズマブ、ルパルツマブアマドチン(amadotin)、ルチキズマブ、MABp1、マパツムマブ、マルゲツキシマブ、マルスタキマブ、マスリモマブ、マブリリムマブ、マツズマブ、メポリズマブ、メテリムマブ、ミラツズマブ、ミンレツモマブ、ミリキズマブ、ミルベツキシマブソラブタンシン、ミツモマブ、モドツキシマブ、モガムリズマブ、モナリズマブ、モロリムマブ、モスネツズマブ、モタビズマブ、モキセツモマブパスドトクス、ムロモナブ-CD3、ナコロマブタフェナトクス、ナミルマブ、ナプツモマブエスタフェナトックス、ナラツキシマブエムタンシン、ナルナツマブ、ナタリズマブ、ナビシキシズマブ、ナビブマブ、ナキシタマブ、ネバクマブ、ネシツムマブ、ネモリズマブ、NEOD001、ネレリモマブ、ネスバクマブ、ネタキマブ、ニモツズマブ、ニルセビマブ、ニボルマブ、ノフェツモマブメルペンタン、オビルトキサキシマブ、オビヌツズマブ、オカラツズマブ、オクレリズマブ、オデュリモマブ、オファツムマブ、オララツマブ、オレクルマブ、オレンダリズマブ、オロキズマブ、オマリズマブ、OMS721、オナルツズマブ、オンツキシズマブ、オンバチリマブ、オピシヌマブ、オポルツズマブモナトクス、オレゴボマブ、オルチクマブ、オテリキシズマブ、オチリマブ、オトレルツズマブ、オキセルマブ、オザネズマブ、オゾラリズマブ、パギバキシマブ、パリビズマブ、パムレブルマブ、パニツムマブ、パンコマブ、パノバクマブ、パルサツズマブ、パスコリズマブ、パソツキシズマブ、パテクリズマブ、パトリツマブ、PDR001、ペムブロリズマブ、ペムツモマブ、ペラキズマブ、ペルツズマブ、ペキセリズマブ、ピディリズマブ、ピナツズマブベドチン、ピンツモマブ、プラクルマブ、プロザリズマブ、ポガリズマブ、ポラツズマブベドチン、ポネズマブ、ポルガビキシマブ、プラシネズマブ、プレザリズマブ、プリリキシマブ、プリトキサキシマブ、プリツムマブ、PRO 140、キリズマブ、ラコツモマブ、ラドレツマブ、ラフィビルマブ、ラルパンシズマブ、ラムシルマブ、ラネベトマブ、ラニビズマブ、ラキシバクマブ、ラバガリマブ、ラブリズマブ、レファネズマブ、レガビルマブ、レムトルマブ、レスリズマブ、リロツムマブ、リヌクマブ、リサンキズマブ、リツキシマブ、リババズマブペゴル、ロバツムマブ、rmab、ロレデュマブ、ロミルキマブ、ロモソズマブ、ロンタリズマブ、ロスマンツズマブ、ロバルピツズマブテシリン、ロベリズマブ、ロザノリキシズマブ、ルプリズマブ、SA237、サシツズマブゴビテカン、サマリズマブ、サムロタマブ(samrotamab)ベドチン、サペリズマブ、サリルマブ、サトラリズマブ、サツモマブペンデチド、セクキヌマブ、セリクレルマブ、セリバンツマブ、セトキサキシマブ、セトルスマブ、セビルマブ、シブロツズマブ、SGN-CD19A、SHP647、シファリムマブ、シルツキシマブ、シムツズマブ、シプリズマブ、シルトラツマブ(sirtratumab)ベドチン、シルクマブ、ソフィツズマブベドチン、ソラネズマブ、ソリトマブ、ソネプシズマブ、ソンツズマブ、スパルタリズマブ、スタムルマブ、スレソマブ、スプタブマブ、スチムリマブ、スビズマブ、スブラトクスマブ、タバルマブ、タカツズマブテトラキセタン、タドシズマブ、タラコツズマブ、タリズマブ、タムツベトマブ、タネズマブ、タプリツモマブパプトクス、タレクツマブ、タボリマブ、テフィバズマブ、テリモマブアリトックス、テリソツズマブベドチン、テナツモマブ、テネリキシマブ、テプリズマブ、テポジタマブ(tepoditamab)、テプロツムマブ、テシドルマブ、テツロマブ、テゼペルマブ、TGN1412、チブリズマブ、チルドラキズマブ、ティガツズマブ、チミグツズマブ、チモルマブ、ティラゴツマブ(tiragotumab)、ティスレリズマブ、チソツマブベドチン、TNX-650、トシリズマブ、トムゾツキシマブ、トラリズマブ、トサトクスマブ、トシツモマブ、トベツマブ、トラロキヌマブ、トラスツズマブ、トラスツズマブエムタンシン、TRBS07、トレガリズマブ、トレメリムマブ、トレボグルマブ、ツコツズマブセルモロイキン、ツビルマブ、ウブリツキシマブ、ウロクプルマブ、ウレルマブ、ウルトキサズマブ、ウステキヌマブ、ウトミルマブ、バダスツキシマブタリリン、バナリマブ(vanalimab)、バンドルツズマブベドチン、バンチクツマブ、バヌシズマブ、バパリキシマブ、バリサクマブ、バルリルマブ、バテリズマブ、ベドリズマブ、ベルツズマブ、ベパリモマブ、ベセンクマブ、ビジリズマブ、ボバリリズマブ、ボロシキシマブ、ボンレロリズマブ、ボプラテリマブ、ボルセツズマブマフォドチン、ボツムマブ、ブナキズマブ、キセンツズマブ、XMAB-5574、ザルツムマブ、ザノリムマブ、ザツキシマブ、ゼノクツズマブ(zenocutuzumab)、ジラリムマブ、ゾルベツイシマブ、及びゾリモマブアリトックスから選択される抗体であり得る。
【0026】
本発明に従って使用されるペプチド薬剤又はタンパク質薬剤はまた、上記の具体的なペプチド薬剤又はタンパク質薬剤のいずれかを含む、2つ以上の異なるペプチド薬剤又はタンパク質薬剤の混合物であり得る。例えば、ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤は、ヒトインスリンとGLP-1アゴニスト(例えば、セマグルチド、リラグルチド、エキセナチド、エキセンディン-4、リキシセナチド、タスポグルチド、アルビグルチド、デュラグルチド、ラングレナチド、ベイナグルチド、又はエフェグレナタイド)との混合物であり得る。
【0027】
上記の典型的なペプチド薬剤又はタンパク質薬剤は、様々な異なる疾患/障害を処置又は予防するのに適していると文献において提案されており、これらのペプチド薬剤又はタンパク質薬剤の一部は、特定の治療適応についての販売承認を既に受けている。本発明はまた、それぞれのペプチド薬剤又はタンパク質薬剤で処置又は予防され得る疾患/障害の処置又は予防において使用するための、本明細書において提供される薬学的組成物に、具体的に関する。同様に、本発明は、ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤及びpKa値が12以上の賦形剤を含む薬学的組成物を、それを必要とする対象に経粘膜投与することを含む、疾患/障害を処置又は予防する方法であって、前記疾患/障害が、それぞれのペプチド薬剤又はタンパク質薬剤で処置又は予防され得る疾患/障害である方法に関する。本発明に従ったいずれかの特定のペプチド薬剤又はタンパク質薬剤で処置又は予防され得る疾患/障害の好ましい例は、医学文献、特に、ROTE LISTEオンラインエディション(本明細書の優先日若しくは出願日のバージョンの);ROTE LISTE 2017(プリントエディション、Rote Liste Service GmbH社、2017、ISBN 978-3946057109);GELBE LISTEオンラインエディション(本明細書の優先日若しくは出願日のバージョンの);GELBE LISTE 2017(プリントエディション、AVOXA - Mediengruppe Deutscher Apotheker GmbH社、2017、ISBN 978-3774199149);Aktories Kら(編)、Allgemeine und spezielle Pharmakologie und Toxikologie、Urban & Fischer Verlag / Elsevier GmbH、第12版、2017、ISBN 978-3437425257;Ammon HPTら(編)、Hunnius Pharmazeutisches Worterbuch、De Gruyter、第11版、2014、ISBN 978-3110309904;Otto HHら、Arzneimittel-Ein Handbuch fur Arzte und Apotheker、Wissenschaftliche Verlagsgesellschaft、2017、ISBN 978-3804737266;DrugBank(www.drugbank.ca、本明細書の優先日若しくは出願日のバージョンの);Drugs.com(www.drugs.com、本明細書の優先日若しくは出願日のバージョンの);Merck Manuals(www.merckmanuals.com、本明細書の優先日若しくは出願日のバージョンの);欧州医薬品庁(EMA)のデータベース(www.ema.europa.eu、本明細書の優先日若しくは出願日のバージョンの);アメリカ食品医薬品局(U.S. FDA)のデータベース(www.fda.gov、本明細書の優先日若しくは出願日のバージョンの);独立行政法人医薬品医療機器総合機構のデータベース(www.pmda.go.jp、本明細書の優先日若しくは出願日のバージョンの);又はelectronic Medicines Compendium(eMC)のデータベース(www.medicines.org.uk/emc/、本明細書の優先日若しくは出願日のバージョンの)のいずれか1つからの医学文献において開示されている(また、それに由来し得る)。任意の特定のペプチド薬剤又はタンパク質薬剤の類似体又は誘導体で処置又は予防され得る疾患/障害の例としては、対応する(誘導体化されていない)ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤で処置又は予防され得る同一の疾患/障害が含まれる。更に、上記のインスリン又はインスリン類似体のいずれかで処置又は予防され得る疾患/障害の好ましい例としては、特に、糖尿病(例えば、1型糖尿病又は2型糖尿病)が含まれる。上記のGLP-1ペプチド又はGLP-1受容体アゴニストのいずれかで処置又は予防され得る疾患/障害の好ましい例としては、特に、糖尿病、肥満、又は非アルコール性脂肪性肝疾患(NASH)が含まれる。ブセレリンで処置又は予防され得る疾患/障害の好ましい例としては、特に、ホルモン応答性のがん(例えば、前立腺がん若しくは乳がん等)又はエストロゲン依存性の状態(例えば、子宮内膜症若しくは子宮筋腫等)が含まれる。ブセレリンは更に、例えば生殖補助において使用され得、ヒト成長ホルモン(hGH)又は上記のhGH類似体若しくはhGH誘導体のいずれかで処置又は予防され得る疾患/障害の好ましい例としては、特に、成長ホルモン欠乏症が含まれる。線維芽細胞増殖因子21(FGF21)で処置又は予防され得る疾患/障害の好ましい例としては、特に、心血管疾患、肥満、又は糖尿病(特に2型糖尿病)が含まれる。上記のエポエチンのいずれか又はその類似体若しくは誘導体のいずれかで処置又は予防され得る疾患/障害の好ましい例としては、特に、貧血、アルツハイマー病(例えば、Maurice Tら、J Psychopharmacol. 2013、27(11): 1044~57を参照されたい)、パーキンソン病(例えば、Alcala-Barraza SRら、J Drug Target. 2010、18(3): 179~90を参照されたい)、又は多発性硬化症が含まれる。上記のフィルグラスチム又はその任意の誘導体(例えば、PEG-フィルグラスチム)で処置又は予防され得る疾患/障害の好ましい例としては、特に、例えば、化学療法、放射能中毒、HIV若しくはAIDS、又は未知の原因等の多くの原因に起因する、好中球減少症が含まれる。上記の抗体アダリムマブで処置又は予防され得る疾患/障害の好ましい例としては、特に、炎症性又は自己免疫性の疾患/障害が含まれ、また、更に好ましくは、関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、乾癬(例えば慢性乾癬)、化膿性汗腺炎、若年性特発関節炎、及び散弾状脈絡網膜炎から選択される。上記の抗体ウステキヌマブで処置又は予防され得る疾患/障害の好ましい例としては、特に、炎症性又は自己免疫性の疾患/障害(例えば、腸の炎症性又は腸の自己免疫性の疾患/障害)が含まれ、また、更に好ましくは、クローン病、潰瘍性大腸炎、乾癬(例えば慢性乾癬)、及び乾癬性関節炎から選択される。
【0028】
本発明に従った薬学的組成物はまた、腸の疾患/障害、特に、炎症性、感染性、又はがん性の腸の疾患/障害、例えば、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、過敏性腸症候群、結腸細菌感染症、又は結腸直腸がん等を処置又は予防するために使用することができる。薬学的組成物中に含まれるペプチド薬剤又はタンパク質薬剤は、このケースでは、それぞれの腸の疾患/障害に対して効果的なペプチド薬剤又はタンパク質薬剤(特に抗体、例えばアダリムマブ)であるべきであることが理解されよう。対応する薬学的組成物は、好ましくは経口投与され、好ましくは、ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤を回腸及び/又は結腸で放出するように製剤される。特に、薬学的組成物は、腸溶性コーティングを有する投薬形態(例えば、カプセル、マルチパーティキュレート、又は錠剤)として提供され得る。
【0029】
本発明に従って用いられる、pKa値が12以上の賦形剤は、特に限定されない。賦形剤は、12以上のpKa値、例えば、12から14のpKa、又は12から13のpKa等を有する。賦形剤のpKa値は、例えば、電位差滴定、カロリメトリー(例えば、等温滴定型カロリメトリー)、UV/VIS分光測光法、導電率測定法、又は核磁気共鳴(NMR)によって決定され得る。特に、pKa値は、電位差測定法及びNMR分光法の補完的な使用によって決定され得る(例えば、Fitch CAら、Protein Sci. 2015、24(5):752~61において記載されているように)。賦形剤が薬学的に許容可能であることも更に理解されよう。
【0030】
好ましくは、pKa値が12以上の賦形剤は、アルギニン遊離塩基(すなわち、遊離塩基形態の2-アミノ-5-グアニジノペンタン酸、CAS 7200-25-1)、EDTAテトラゾリウム塩(すなわち、特に無水テトラゾリウムEDTA又はテトラゾリウムEDTA水和物を含む、テトラゾリウムエチレンジアミンテトラアセテート)、リン酸三ナトリウム(すなわちNa3PO4、特に、無水リン酸三ナトリウム(CAS 7601-54-9)、部分的に水和したリン酸三ナトリウム(Na3PO4・xH2O、式中、xは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、若しくは11)、又は完全に水和したリン酸三ナトリウム(Na3PO4・12H2O; CAS 10101-89-0)を含む)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(「トリス」、すなわちトロメタモール)、リジン(例えば、L-リジン又はD-リジン)、或いは水酸化カルシウム(すなわち、Ca(OH)2)である。アルギニン遊離塩基、リン酸三ナトリウム、リジン、及び水酸化カルシウムは、米国FDAによって、承認された製剤中の不活性成分として挙げられており、したがって、薬学的使用に特に適している。更に好ましくは、pKa値が12以上の賦形剤は、アルギニン遊離塩基、EDTAテトラゾリウム塩、又はリン酸三ナトリウムである。更に好ましくは、pKa値が12以上の賦形剤は、アルギニン遊離塩基又はリン酸三ナトリウムである。更に好ましくは、賦形剤は、アルギニン遊離塩基、特に、L-アルギニン遊離塩基(CAS 74-79-3)である。
【0031】
別の実施形態では、アルギニン塩酸塩(特に、L-アルギニンHCl)を、pKa値が12以上の賦形剤の代わりに使用することができる。本発明はしたがって、ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤及びアルギニン塩酸塩を含む、経粘膜投与のための薬学的組成物、並びに、このような組成物の、(ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤及びpKa値が12以上の賦形剤を含む)本発明の薬学的組成物について本明細書において記載される通りの、対応する方法及び使用にも関する。この文脈において、本発明は特に、ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤及びアルギニン塩酸塩を含む、経鼻投与のための薬学的組成物、並びにこのような組成物の対応する方法及び使用に関する。
【0032】
本発明に従った薬学的組成物(特に、ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤及びpKa値が12以上の賦形剤を含む、経粘膜投与のための薬学的組成物)はまた、pKa値が12以上の賦形剤に加えて、アルギニン塩酸塩(特に、L-アルギニンHCl)を含有し得る。例えば、薬学的組成物は、アルギニン遊離塩基及びアルギニン塩酸塩(特に、L-アルギニン遊離塩基及びL-アルギニンHCl)を含有し得る。
【0033】
本発明に従った薬学的組成物(特に、ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤及びpKa値が12以上の賦形剤を含む、経粘膜投与のための薬学的組成物)はまた、pKa値が12以上の賦形剤に加えて、チロシン(L-チロシン又はD-チロシン)を含有し得る。例えば、薬学的組成物は、チロシン及びL-アルギニン遊離塩基を含有し得る。
【0034】
特に好ましくは、本発明に従った薬学的組成物(特に、ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤及びpKa値が12以上の賦形剤を含む、経粘膜投与のための薬学的組成物)は、透過促進剤(「吸収促進剤」又は「粘膜吸収促進剤」とも呼ばれる)を更に含む。透過促進剤の投与は、ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤の粘膜吸収/透過を改善又は促進し、特に、ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤が高分子である場合、例えば、ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤が約1kDa以上の分子量を有する場合に、有利である。
【0035】
透過促進剤は、例えば、双性イオン性透過促進剤、陽イオン性透過促進剤、陰イオン性透過促進剤(例えば、1つ若しくは複数のスルホン酸基(-SO3H)を含む陰イオン性透過促進剤)、又は非イオン性透過促進剤であり得る。pKa値が12以上の賦形剤がアルギニン遊離塩基(例えば、L-アルギニン遊離塩基を含む)である場合、陰イオン性透過促進剤(例えば、本明細書において記載される具体的な陰イオン性透過促進剤のいずれか1つ又は複数)を使用することが好ましい。
【0036】
好ましくは、浸透促進剤は、C8~20アルカノイルカルニチン(好ましくは、ラウロイルカルニチン、ミリストイルカルニチン、又はパルミトイルカルニチン、例えば、ラウロイルカルニチン塩化物、ミリストイルカルニチン塩化物、又はパルミトイルカルニチン塩化物)、サリチル酸(好ましくはサリチル酸塩、例えばサリチル酸ナトリウム)、サリチル酸誘導体(例えば、3-メトキシサリチル酸、5-メトキシサリチル酸、又はホモバニリン酸等)、C8~20アルカン酸(好ましくはC8~20アルカン酸塩、更に好ましくは、カプリン酸塩、カプリル酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、又はステアリン酸塩、例えば、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、又はステアリン酸ナトリウム等)、クエン酸(好ましくはクエン酸塩、例えばクエン酸ナトリウム)、酒石酸(好ましくは酒石酸塩)、脂肪酸アシル化されたアミノ酸(例えば、参照することによって本明細書に組み込まれるUS2014/0056953A1において記載されている、脂肪酸アシル化されたアミノ酸のいずれか;これとしては、限定はしないが、ラウロイルアラニン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-アラニン、ラウロイルアスパラギン酸ナトリウム(sodium lauroyl asparaginate)、N-ドデカノイル-L-アスパラギン、ラウロイルアスパラギン酸ナトリウム(sodium lauroyl aspartic acid)、N-ドデカノイル-L-アスパラギン酸、ラウロイルシステイン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-システイン、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム(sodium lauroyl glutamic acid)、N-ドデカノイル-L-グルタミン酸、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム(sodium lauroyl glutaminate)、N-ドデカノイル-L-グルタミン、ラウロイルグリシン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-グリシン、ラウロイルヒスチジン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-ヒスチジン、ラウロイルイソロイシン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-イソロイシン、ラウロイルロイシン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-ロイシン、ラウロイルメチオニン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-メチオニン、ラウロイルフェニルアラニン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-フェニルアラニン、ラウロイルプロリン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-プロリン、ラウロイルセリン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-セリン、ラウロイルスレオニン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-スレオニン、ラウロイルトリプトファン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-トリプトファン、ラウロイルチロシン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-チロシン、ラウロイルバリン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-バリン、ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-サルコシン、カプリックアラニン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-アラニン、カプリックアスパラギン酸ナトリウム(sodium capric asparaginate)、N-デカノイル-L-アスパラギン、カプリックアスパラギン酸ナトリウム(sodium capric aspartic acid)、N-デカノイル-L-アスパラギン酸、カプリックシステイン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-システイン、カプリックグルタミン酸ナトリウム(sodium capric glutamic acid)、N-デカノイル-L-グルタミン酸、カプリックグルタミン酸ナトリウム(sodium capric glutaminate)、N-デカノイル-L-グルタミン、カプリックグリシン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-グリシン、カプリックヒスチジン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-ヒスチジン、カプリックイソロイシン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-イソロイシン、カプリックロイシン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-ロイシン、カプリックメチオニン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-メチオニン、カプリックフェニルアラニン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-フェニルアラニン、カプリックプロリン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-プロリン、カプリックセリン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-セリン、カプリックスレオニン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-スレオニン、カプリックトリプトファン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-トリプトファン、カプリックチロシン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-チロシン、カプリックバリン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-バリン、カプリサルコシン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-サルコシン、オレオイルサルコシン酸ナトリウム、N-デシルロイシンナトリウム、ステアロイルグルタミン酸ナトリウム(例えば、Amisoft HS-11 P)、ミリストイルグルタミン酸ナトリウム(例えば、Amisoft MS-11)、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム(例えば、Amisoft LS-11)、ココイルグルタミン酸ナトリウム(例えば、Amisoft CS-11)、ココイルグリシン酸ナトリウム(例えば、Amilite GCS-11)、N-デシルロイシンナトリウム、ココイルグリシンナトリウム、ココイルグルタミン酸ナトリウム、ラウロイルアラニン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-アラニン、ラウロイルアスパラギン酸ナトリウム(sodium lauroyl asparaginate)、N-ドデカノイル-L-アスパラギン、ラウロイルアスパラギン酸ナトリウム(sodium lauroyl aspartic acid)、N-ドデカノイル-L-アスパラギン酸、ラウロイルシステイン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-システイン、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム(sodium lauroyl glutamic acid)、N-ドデカノイル-L-グルタミン酸、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム(sodium lauroyl glutaminate)、N-ドデカノイル-L-グルタミン、ラウロイルグリシン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-グリシン、ラウロイルヒスチジン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-ヒスチジン、ラウロイルイソロイシン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-イソロイシン、ラウロイルロイシン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-ロイシン、ラウロイルメチオニン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-メチオニン、ラウロイルフェニルアラニン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-フェニルアラニン、ラウロイルプロリン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-プロリン、ラウロイルセリン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-セリン、ラウロイルスレオニン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-スレオニン、ラウロイルトリプトファン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-トリプトファン、ラウロイルチロシン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-チロシン、ラウロイルバリン酸ナトリウム、N-ドデカノイル-L-バリン、N-ドデカノイル-L-サルコシン、カプリックアラニン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-アラニン、カプリックアスパラギン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-アスパラギン、カプリックアスパラギン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-アスパラギン酸、カプリックシステイン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-システイン、カプリックグルタミン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-グルタミン酸、カプリックグルタミン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-グルタミン、カプリックグリシン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-グリシン、カプリックヒスチジン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-ヒスチジン、カプリックイソロイシン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-イソロイシン、カプリックロイシン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-ロイシン、ロイシン、カプリックメチオニン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-メチオニン、カプリックフェニルアラニン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-フェニルアラニン、カプリックプロリン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-プロリン、カプリックセリン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-セリン、カプリックスレオニン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-スレオニン、カプリックトリプトファン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-トリプトファン、カプリックチロシン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-チロシン、カプリックバリン酸ナトリウム、N-デカノイル-L-バリン、カプリサルコシン酸ナトリウム、オレオイルサルコシン酸ナトリウム、及び前述の化合物のうちのいずれかの薬学的に許容可能な塩、又は、例えば、C8~20アルカノイルサルコシン酸塩(例えば、ラウロイルサルコシン酸ナトリウム等のラウロイルサルコシン酸塩)、又は、C8~20アルカン酸でアシル化された、20の標準的なタンパク質構成α-アミノ酸の1つが含まれる)、アルキルサッカライド(例えばC1~20アルキルサッカライド、例えば、Multitrope(商標)1620-LQ-(MV)のようなC8~10アルキルポリサッカライド等、又は、例えば、n-オクチル-ベータ-D-グルコピラノシド、n-ドデシル-ベータ-D-マルトシド、n-テトラデシル-ベータ-D-マルトシド、トリデシル-ベータ-D-マルトシド、ラウリン酸スクロース、ステアリン酸スクロース、ミリスチン酸スクロース、パルミチン酸スクロース、ココヤシ酸スクロース、モノドデカン酸スクロース、モノトリデカン酸スクロース、モノテトラデカン酸スクロース、ココグルコシド、又は、参照することによって本明細書に組み込まれるUS5,661,130若しくはWO2012/112319において記載されているアルキルサッカライドのいずれか)、シクロデキストリン(例えば、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、メチル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリン、又はスルホブチルエーテルβ-シクロデキストリン)、N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸(好ましくは、N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリレート、更に好ましくは、「SNAC」とも呼ばれるN-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸ナトリウム)、N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリレート誘導体(好ましくは、N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸ナトリウム誘導体)、チオマー(チオール化ポリマーとも呼ばれ、例えば、例えばポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、又はキトサン等の良く確立されたポリマーのポリマー骨格への、スルフヒドリルを有するリガンドの固定によって合成され得る;典型的なチオマーとしては、参照することによって本明細書に組み込まれるLaffleur Fら、Future Med Chem. 2012、4(17):2205~16 (doi: 10.4155/fmc.12.165)において記載されているチオマーが含まれる)、ビタミンB部分構造を有する粘膜付着性ポリマー(例えば、参照することによって本明細書に組み込まれるUS8,980,238B2において記載されている粘膜付着性ポリマーのいずれか;これとしては、特に、US8,980,238B2の請求項1から3のいずれか1つに規定されているポリマー性化合物のいずれかが含まれる)、カルシウムキレート化化合物(例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコール四酢酸(EGTA)、クエン酸ナトリウム、又はポリアクリル酸)、クレモフォールEL(「コリフォールEL」とも呼ばれる;CAS番号第61791-12-6号)、キトサン、N,N,N-トリメチルキトサン、塩化ベンザルコニウム、ベスタチン、塩化セチルピリジニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、C2~20アルカノール(例えば、エタノール、デカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、又はパルミチルアルコール)、C8~20アルケノール(例えば、オレイルアルコール)、C8~20アルケン酸(例えば、オレイン酸)、硫酸デキストラン、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(トランスクトール)、1-ドデシルアザシクロ-ヘプタン-2-オン(Azone(登録商標))、カプリルカプロイルポリオキシルグリセリド(例えばカプリルカプロイルポリオキシル-8グリセリド等;例えばLabrasol(登録商標)又はACCONON(登録商標)MC8-2として入手可能)、カプリル酸エチル、グリセリルモノラウレート、リゾホスファチジルコリン、メントール、C8~20アルキルアミン、C8~20アルケニルアミン(例えば、オレイルアミン)、ホスファチジルコリン、ポロキサマー、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリオキシエチレン、ポリプロピレングリコールモノラウレート、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20又はポリソルベート80)、コール酸(好ましくはコール酸塩、例えばコール酸ナトリウム)、デオキシコレート(例えば、デオキシコール酸ナトリウム)、ケノデオキシコール酸塩(例えば、ケノデオキシコール酸ナトリウム)、グリココール酸ナトリウム、グリコデオキシコール酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム(SDS)、デシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、ラウレス硫酸ナトリウム、N-ラウリルサルコシネート、デシルトリメチルアン
モニウムブロミド、ベンジルジメチルドデシルアンモニウムクロリド、ミリスチルトリメチルアンモニウムクロリド、ドデシルピリジニウムクロリド、デシルジメチルアンモニオプロパンスルホネート、ミリスチルジメチルアンモニオプロパンスルホネート、パルミチルジメチルアンモニオプロパンスルホネート、ケムベタインCAS、ケムベタインオレイル、ノニルフェノキシポリオキシエチレン、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノオエレート、トリトンX-100、ヘキサン酸、ヘプタン酸、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸メチル、セバシン酸ジエチル、オレイン酸ナトリウム、尿素、ラウリルアミン、カプロラクタム、メチルピロリドン、オクチルピロリドン、メチルピペラジン、フェニルピペラジン、カーボポール934P、グリチルレチン酸、ブロメライン、ピネンオキシド、リモネン、シネオール、オクチルドデカノール、フェンコン、メントン、トリメトキシプロピレンメチルベンゼン、細胞膜透過ペプチド(例えば、KLAKLAK、ポリアルギニン、又はオリゴアルギニン(特に、オクタアルギニン)、ペネトラチン(特に、L-ペネトラチン)、ペネトラチン類似体(特に、PenetraMax;例えば、El-Sayed Khafagyら、Eur J Pharm Biopharm. 2013、85(3 Pt A):736~43を参照されたい)、HIV-1 Tat、トランスポータン、又はUS2012/0065124において言及されている細胞膜透過ペプチドのいずれか)、マクロゴール-15-ヒドロキシステアリン酸塩(例えば、Solutol HS 15)、CriticalSorb(例えば、Illum Lら、J Control Release. 2012、162(1):194~200を参照されたい)、タウロコール酸塩(例えば、タウロコール酸ナトリウム)、タウロデオキシコール酸塩(例えば、タウロデオキシコール酸ナトリウム)、スルホキシド(例えば、(C1~10アルキル)-(C1~10アルキル)-スルホキシド、例えば、デシルメチルスルホキシド又はジメチルスルホキシド等)、シクロペンタデカラクトン、8-(N-2-ヒドロキシ-5-クロロ-ベンゾイル)-アミノ-カプリル酸(「5-CNAC」とも呼ばれる)、N-(10-[2-ヒドロキシベンゾイル]アミノ)デカン酸(「SNAD」とも呼ばれる)、ドデシル-2-N,N-ジメチルアミノプロピオネート(「DDAIP」とも呼ばれる)、D-α-トコフェリルポリエチレングリコール-1000スクシネート(「TPGS」とも呼ばれる)、アルギニン、並びに前述の化合物の薬学的に許容可能な塩から選択される。上記の透過促進剤のいずれかを含む、2つ以上の透過促進剤の混合物もまた使用することができる。更に、Whitehead Kら、Pharm Res. 2008年6月、25(6):1412~9において記載されている化学的透過促進剤のいずれか(特に、この参考文献のTable Iにおいて記載されている化学的透過促進剤のいずれか1つ)、US5,866,536において開示されている修飾されたアミノ酸のいずれか1つ(特に、参照することによって本明細書に組み込まれるUS5,866,536において開示されている化合物IからCXXIIIのいずれか1つ、又はこれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物、例えば、これらの化合物のうちのいずれか1つの二ナトリウム塩、エタノール溶媒和物、若しくは水和物)、US5,773,647において開示されている修飾されたアミノ酸のいずれか1つ(特に、参照することによって本明細書に組み込まれるUS5,773,647において開示されている化合物1から193のいずれか1つ、又はこれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物、例えば、これらの化合物のうちのいずれか1つの二ナトリウム塩、エタノール溶媒和物、若しくは水和物)、WO2011/133198において記載されているナノ粒子のいずれか、US2015/174076において記載されているポリマー調製物のいずれか、及び/或いはヒドロゲル(例えば、Torres-Lugo Mら、Biotechnol Prog. 2002、18(3):612~6において記載されているもの)も同様に、透過促進剤として使用することができる。更に、複合脂質分散(例えば、不溶性界面活性剤又は油と可溶性界面活性剤との、また場合によって水又は共溶媒との組み合わせ)もまた、透過促進剤として使用することができる。対応する典型的な透過促進剤としては、特に、混合ミセル、逆ミセル、自己乳化系(例えば、SEDDS、SMEDDS、若しくはSNEDDS)、脂質分散、粗エマルジョン、又は固体脂質ナノ粒子(SLN)が含まれる。好ましくは、透過促進剤は、カプリル酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸スクロース、ステアリン酸スクロース、ステアリン酸ナトリウム、EDTA、ポリアクリル酸、及びN-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸塩、又はこれらの薬学的に許容可能な塩(特に、N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸ナトリウム)から選択される。特に好ましい透過促進剤は、N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸塩、又はその薬学的に許容可能な塩、特に、N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸ナトリウムである。更に、薬学的組成物が経口投与のためのものである場合、透過促進剤はカプリン酸ナトリウムであることが特に好ましい。
【0037】
更に好ましい透過促進剤は、アルキルポリサッカライド、アルギニン、又はCriticalSorb(登録商標)(Solutol(登録商標) HS15)である。特に、透過促進剤は、以下に記載するアルキルグリコシドのいずれかから選択され得る、アルキルグリコシド(又は、2つ以上のアルキルグリコシドの組み合わせ)であり得る。
【0038】
本発明に従った透過促進剤として使用されるアルキルグリコシドは、既知の手順によって、すなわち、例えばRosevearら、Biochemistry 19:4108~4115 (1980)、若しくはKoeltzow及びUrfer, J. Am. Oil Chem. Soc.、61:1651~1655 (1984)、米国特許第3,219,656号、若しくは米国特許第3,839,318号において記載されているように化学的に、又は、例えばLiら、J. Biol. Chem.、266:10723~10726 (1991)、若しくはGopalanら、J. Biol. Chem. 267:9629~9638 (1992)において記載されているように酵素的に、合成することができる。
【0039】
本発明における透過促進剤として使用されるアルキルグリコシドとしては、限定はしないが、アルキルグリコシド、例えば、オクチル-、ノニル-、デシル-、ウンデシル-、ドデシル-、トリデシル-、テトラデシル-、ペンタデシル-、ヘキサデシル-、ヘプタデシル-、及びオクタデシル-α-又はβ-D-マルトシド、-グルコシド、又は-スクロシド(これは、Koeltzow及びUrfer、Anatrace Inc.社、Maumee、Ohio; Calbiochem社、San Diego、Calif.; Fluka Chemie社、Switzerlandに従って合成され得る);アルキルチオマルトシド、例えば、ヘプチル-、オクチル-、ドデシル-、トリデシル-、及びテトラデシル-β-D-チオマルトシド(これは、Defaye, J.及びPederson, C.、「Hydrogen Fluoride, Solvent and Reagent for Carbohydrate Conversion Technology」in Carbohydrates as Organic Raw Materials、247~265 (F. W. Lichtenthaler編) VCH Publishers、New York (1991); Ferenci, T.、J. Bacteriol、144:7~11 (1980)に従って合成され得る);アルキルチオグルコシド、例えば、ヘプチル-又はオクチル1-チオα-又はβ-D-グルコピラノシド(Anatrace, Inc.社、Maumee、Ohio; Saito, S.及びTsuchiya, T. Chem. Pharm. Bull. 33:503~508 (1985)を参照されたい);アルキルチオスクロース(これは、例えば、Binder, T. P.及びRobyt, J. F.、Carbohydr. Res. 140:9~20 (1985)に従って合成され得る);アルキルマルトトリオシド(これは、Koeltzow及びUrferに従って合成され得る);スクロースβ-アミノ-アルキルエーテルの長鎖脂肪族炭酸アミド(これは、オーストラリア特許第382,381号(1987); Chem. Abstr.、108:114719 (1988)、並びにGruber及びGreber pp. 95~116に従って合成され得る);アミド結合によってアルキル鎖に連結されたパラチノース及びイソマルタミンの誘導体(これは、Kunz, M.、「Sucrose-based Hydrophilic Building Blocks as Intermediates for the Synthesis of Surfactants and Polymers」in Carbohydrates as Organic Raw Materials、127~153に従って合成され得る);尿素によってアルキル鎖に連結されたイソマルタミンの誘導体(これは、Kunzに従って合成され得る);スクロースβ-アミノ-アルキルエーテルの長鎖脂肪族炭酸ウレイド(これは、Gruber及びGreber、pp. 95~116に従って合成され得る);並びにスクロースβ-アミノ-アルキルエステルの長鎖脂肪族炭酸アミド(これは、オーストラリア特許第382,381号(1987), Chem. Abstr., 108:114719(1988)、並びにGruber及びGreber, pp. 95~116に従って合成され得る)が含まれ得る。
【0040】
透過促進剤はまた、特に、アルキルグリコシドのいずれか、サッカリドアルキルエステルのいずれか、及び/又はUS8,927,497において記載されている粘膜送達促進剤のいずれかを含む、この文献において言及されている促進剤のいずれかから選択され得る。
【0041】
更に、透過促進剤はまた、
式中、
R1、R2、R3、及びR4が、水素、-OH、-NR6R7、ハロゲン(例えば、-F、-Cl、-Br、若しくは-I)、C1~4アルキル、又はC1~4アルコキシからそれぞれ独立して選択され、
R5が、置換された若しくは置換されていないC2~16アルキレン、置換された若しくは置換されていないC2~16アルケニレン、置換された若しくは置換されていないC1~12アルキル(アリレン)[例えば、置換された若しくは置換されていないC1~12アルキル(フェニレン)]、又は置換された若しくは置換されていないアリール(C1~12アルキレン)[例えば、置換された若しくは置換されていないフェニル(C1~12アルキレン)]であり、かつ
R6及びR7が、それぞれ独立して、水素、酸素、-OH、又はC1~4アルキルである、
以下の式(I):
【0042】
【0043】
の化合物、或いはその薬学的に許容可能な塩又は溶媒和物、特に、二ナトリウム塩、アルコール溶媒和物(例えば、メタノール溶媒和物、エタノール溶媒和物、プロパノール溶媒和物、若しくはプロピレングリコール溶媒和物、又は二ナトリウム塩の任意のこのような溶媒和物;特に、エタノール溶媒和物若しくは二ナトリウム塩のエタノール溶媒和物)、或いはこれらの水和物(例えば、二ナトリウム塩の一水和物)であり得る。式(I)に含まれている上記の「置換された」基は、ハロゲン(例えば、-F、-Cl、-Br、若しくは-I)、-OH、C1~4アルキル、又はC1~4アルコキシから独立して選択される1つ又は複数の(例えば、1つ、2つ、又は3つの)置換基で、好ましくは置換されている。このような化合物及びこれらを調製するための方法は、例えば、参照することによって本明細書に組み込まれるWO00/59863において記載されている。したがって、透過促進剤はまた、WO00/59863において記載されている「送達物質」であり得る。式(I)の化合物の好ましい例としては、N-(5-クロロサリチロイル)-8-アミノカプリル酸、N-(10-[2-ヒドロキシベンゾイル]アミノ)デカン酸、N-(8-[2-ヒドロキシベンゾイル]アミノ)カプリル酸、前述の化合物のうちのいずれか1つの一ナトリウム塩又は二ナトリウム塩、前述の化合物のうちのいずれか1つのナトリウム塩(例えば、一ナトリウム塩又は二ナトリウム塩)のエタノール溶媒和物、前述の化合物のうちのいずれか1つのナトリウム塩(例えば、一ナトリウム又は二ナトリウム塩)の一水和物、及びこれらの任意の組み合わせが含まれる。式(I)の特に好ましい化合物は、N-(5-クロロサリチロイル)-8-アミノカプリル酸の二ナトリウム塩又はその一水和物である。
【0044】
更に、ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤が、GLP-1、GLP-1類似体、GLP-1アゴニスト、又はGLP-1受容体と別の受容体とのデュアルアゴニスト(例えば、GLP-1受容体とグルカゴン受容体とのデュアルアゴニスト、若しくはGLP-1受容体と胃抑制ポリペプチド(GIP)受容体とのデュアルアゴニスト)である場合、ラウリン酸スクロース、カプリン酸ナトリウム、ケノデオキシコール酸ナトリウム、及びSNACから選択される透過促進剤を使用することが特に好ましい。ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤が、デスモプレシン、デスモプレシン類似体、又はバソプレッシン受容体2アゴニストペプチドである場合、SNAC、アルギニン、ラウリン酸スクロース、及びステアリン酸スクロースから選択される透過促進剤を使用することが特に好ましい。
【0045】
本発明の薬学的組成物は、例えば、固体組成物又は液体組成物であり得る。固体組成物は、好ましくは、水をほとんど有さない、例えば、約5%(w/w)未満の水、好ましくは約3%(w/w)未満の水、更に好ましくは約1%(w/w)未満の水、更に好ましくは約0.5%(w/w)未満の水、更に好ましくは約0.1%(w/w)未満の水を含有する、そして更に好ましくは水を有さない、固体組成物(例えば、錠剤又は粉末)である。液体組成物は、例えば、水をほとんど有さない液体組成物、例えば、約5%(v/v)未満の水、若しくは約3%(v/v)未満の水、若しくは約1%(v/v)未満の水、若しくは約0.5%(v/v)未満の水、若しくは約0.1%(v/v)未満の水を含有する、又は水を有さない、液体組成物等であり得る。或いは、液体組成物は、例えば、水、油、有機溶媒、又はこれらの混合物に基づくものであり得る。したがって、液体組成物は、例えば、対応する液体組成物の総容積に対して少なくとも約60%(v/v)(又は、例えば、少なくとも約70、80、若しくは90%(v/v))の水、油、又は有機溶媒を含み得る。有機溶媒は特に限定されず、好ましくは、グリセロール、プロピレングリコール(特に、プロパン-1,2-ジオール)、及びエタノールから選択される。液体組成物は、例えば、溶液、懸濁液、又はエマルジョン(水中油型エマルジョン又は油中水型エマルジョン等)であり得、特に、薬学的組成物は、水性溶液等の水性組成物(すなわち、水性液体組成物)である。水性組成物(又は水性溶液)は水を含み、好ましくは、対応する(液体)薬学的組成物の総容積に対して少なくとも約60%(v/v)の水、更に好ましくは少なくとも約70%(v/v)の水、更に好ましくは少なくとも約80%(v/v)の水、更に好ましくは少なくとも約90%(v/v)の水、及び更に好ましくは少なくとも約95%(v/v)の水を含む。上記で説明したように、水性組成物は、例えば、水性溶液、水性懸濁液、又は水中油型エマルジョンであり得る。この点について、好ましくは、水性組成物は、約5%(v/v)未満、更に好ましくは約3%(v/v)未満、更に好ましくは約2%(v/v)未満、更に好ましくは約1%(v/v)未満、更に好ましくは約0.5%(v/v)未満の油含有量を有し、そして、更に好ましくは、水性組成物は油を全く含有しない。したがって、好ましくは、水性組成物は水性溶液である。更に好ましくは、水性組成物(又は水性溶液)は、ヒト血漿と等張である。特に、好ましくは、水性組成物(又は水性溶液)は、約280mOsm/kgから約500mOsm/kgの質量モル浸透圧濃度、更に好ましくは約285mOsm/kgから約350mOsm/kgの質量モル浸透圧濃度、更に好ましくは約290mOsm/kgから約300mOsm/kgの質量モル浸透圧濃度、そして更に好ましくは約296mOsm/kgの質量モル浸透圧濃度を有する。
【0046】
本発明に従った薬学的組成物はまた、GLP-1ペプチドの組成物であり得、この組成物は、WO2013/139694において記載されているように調製されるが、pKa値が12以上の賦形剤(本明細書において記載及び規定される通りの)を更に含む。好ましくは、N-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸の塩及びpKa値が12以上の賦形剤は、第1のタイプの顆粒中に存在し、GLP-1ペプチドは第2のタイプの顆粒中に存在する。或いは、N-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸の塩は第1のタイプの顆粒中に存在し、pKa値が12以上の賦形剤及びGLP-1ペプチドは、第2のタイプの顆粒中に存在する。
【0047】
更に、薬学的組成物はまた、例えば、US2015/0174076、US2003/0017195、又はUgwoke MIら、Adv Drug Deliv Rev. 2005、57(11):1640~65において記載されているような、1つ又は複数の粘膜付着性ポリマーを含有する粘膜付着性のパッチ又は液体スプレー等の、粘膜付着性の製品又は装置の形態であり得る。
【0048】
更に、好ましくは、ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤は、本発明に従った薬学的組成物内で、pKa値が12以上の賦形剤と物理的に分離している。したがって、好ましくは、本発明に従った薬学的組成物は、ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤が、pKa値が12以上の賦形剤と物理的に分離している、薬学的投薬形態である。対応する薬学的投薬形態は、好ましくは、互いに物理的に分離している(例えば、物理的分離層を介して)少なくとも2つの別個の区画を含む。したがって、好ましくは、薬学的投薬形態は、(i)ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤と、(ii)pKa値が12以上の賦形剤との間の物理的分離層を含む。ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤は、薬学的投薬形態の第1の区画内にのみ存在し、pKa値が12以上の賦形剤は、第2の区画内にのみ存在する。透過促進剤(存在する場合)は、薬学的投薬形態の第1の区画若しくは第2の区画のいずれかに、又は第1の区画及び第2の区画の両方に、又は第3の区画内に存在し得る。1つの好ましい実施形態では、本発明はしたがって、薬学的投薬形態の第1の区画内に存在するペプチド薬剤又はタンパク質薬剤、薬学的投薬形態の第2の区画内に存在するpKa値が12以上の賦形剤、並びに任意選択で、(存在する場合には)薬学的投薬形態の第1の区画及び/又は第2の区画内にある透過促進剤を含む、薬学的投薬形態(例えば、二重カプセル)を提供する。更に好ましい実施形態において、本発明は、薬学的投薬形態の第1の区画内に存在するペプチド薬剤又はタンパク質薬剤、薬学的投薬形態の第2の区画内に存在するpKa値が12以上の賦形剤、並びに任意選択で、(存在する場合には)薬学的投薬形態の第3の区画内にある透過促進剤を含む、薬学的投薬形態(例えば、マルチパーティキュレート投薬形態)を提供する。特に好ましくは、薬学的投薬形態は、カプセル内のカプセル(二重カプセルとも呼ばれる)又はマルチパーティキュレート投薬形態である。二重カプセルのケースでは、好ましくは、より大きな外側カプセル(その内容物が最初に放出される)が、pKa値が12以上の賦形剤、及び任意選択で透過促進剤を含有し、そして、より小さな内側カプセル(その内容物が遅れて放出される)がペプチド薬剤又はタンパク質薬剤を含有する。投薬形態はまた、放出調節投薬形態、例えば、腸溶性コーティングを有する投薬形態(例えば、カプセル、マルチパーティキュレート、若しくは錠剤)、又はEudragit L30D55若しくはEudragit FS30Dでコーティングされた投薬形態(例えば、カプセル、マルチパーティキュレート、若しくは錠剤)、又はHPMCPカプセル(市場ではAR Caps(登録商標)として知られている)等の耐酸性カプセルであり得る。
【0049】
更に好ましくは、薬学的組成物は、pKa値が12以上の賦形剤の粒子を含み、前記粒子は、pKa値が12以上の賦形剤をペプチド薬剤又はタンパク質薬剤から分離する保護コーティングでコーティングされている。特に、好ましくは、薬学的組成物はアルギニン遊離塩基の粒子を含み、前記粒子は、アルギニン遊離塩基をペプチド薬剤又はタンパク質薬剤から分離する保護コーティングでコーティングされている。保護コーティングは、20℃で、水100ml当たり少なくとも1グラムの、水への溶解度を例えば有し得る。好ましくは、保護コーティングは、グルコース、マルトデキストリン、又はHPMCで作られる。
【0050】
ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤は、不活性な薬学的賦形剤とまず顆粒化され得、その後、12以上のpKa値を有する賦形剤(例えば、アルギニン遊離塩基又はリン酸三ナトリウム等)と物理的に混合される。好ましくは、ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤は、不活性な薬学的賦形剤とまず顆粒化され、その後、顆粒はさらなる薬学的賦形剤でコーティングされて、ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤とpKa値が12以上の賦形剤との間の物理的分離がもたらされる。
【0051】
薬学的組成物(又は、上記の薬学的投薬形態)は、pKa値が12以上の賦形剤(特に、上記の典型的な賦形剤のいずれか1つ又は複数を含む)を、例えば、投薬単位当たり約1mgから約1000mgの量で、好ましくは投薬単位当たり約50mgから約500mgの量で含み得る。更に、薬学的組成物が透過促進剤を含む場合、透過促進剤は、好ましくは投薬単位当たり約10mgから約1000mg、更に好ましくは投薬単位当たり約50mgから約500mgの量で含まれる。
【0052】
更に好ましくは、薬学的組成物(又は、薬学的投薬形態)の構成は、薬学的組成物が0.1Mの水性重炭酸ナトリウム(NaHCO3)溶液10mlに添加される場合に、溶液のpHがpH9より高く、更に好ましくはpH10より高く、更に好ましくはpH11より高く、又は更に好ましくはpH12より高くなるものである。前述のpHをもたらす、薬学的組成物のこのような構成は、実施例1及び実施例2においても実証されているように、タンパク質分解酵素の非常に効果的な不活化を可能にするため、有利である。特に、pKa値が12以上の賦形剤の量(及び任意選択で、ペプチド薬剤若しくはタンパク質薬剤の量、及び/又は薬学的組成物中に含まれる任意のさらなる成分の量)は、薬学的組成物が0.1Mの水性重炭酸ナトリウム溶液10mlに添加される場合に、溶液のpHがpH9より高く、更に好ましくはpH10より高く、更に好ましくはpH11より高く、又は更に好ましくはpH12より高くなるように選択され得る。
【0053】
本明細書において言及される薬学的に許容可能な塩は、例えば、アミノ基等のプロトン付加を受けやすい孤立電子対を有する原子の、無機酸若しくは有機酸でのプロトン付加によって、又は、当技術分野において周知のカルボン酸基と生理学的に許容可能な陽イオンとの塩として、形成され得る。典型的な塩基付加塩は、例えば、ナトリウム塩又はカリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩又はマグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;亜鉛塩;アンモニウム塩;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロカイン塩、メグルミン塩、エチレンジアミン塩、又はコリン塩等の、脂肪族アミン塩;N,N-ジベンジルエチレンジアミン塩、ベンザチン塩、ベネタミン塩等の、アラルキルアミン塩;ピリジン塩、ピコリン塩、キノリン塩、又はイソキノリン塩等の、複素環式芳香族アミン塩;テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、ベンジルトリメチルアンモニウム塩、ベンジルトリエチルアンモニウム塩、ベンジルトリブチルアンモニウム塩、メチルトリオクチルアンモニウム塩、又はテトラブチルアンモニウム塩等の、第四級アンモニウム塩;及びアルギニン塩、リジン塩、又はヒスチジン塩等の塩基性アミノ酸塩を含む。典型的な酸性付加塩は、例えば、ヒドロクロリド、ヒドロブロミド、ヒドロヨージド、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩(例えば、ホスフェート、リン酸水素塩、若しくはリン酸二水素塩等)、炭酸塩、炭酸水素塩、又は過塩素酸塩等の、無機酸塩;酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、吉草酸塩、ヘキサン酸塩、ヘプタン酸塩、オクタン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、デカン酸塩、ウンデカン酸塩、オレイン酸塩、ステアリン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、シュウ酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、グリコール酸塩、ニコチン酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、アスコルビン酸塩、又はパモ酸塩(エンボン酸塩)等の有機酸塩;メタンスルホン酸塩(メシレート)、エタンスルホン酸塩(エシレート)、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩(イセチオネート)、ベンゼンスルホン酸塩(ベシレート)、p-トルエンスルホン酸塩(トシレート)、2-ナフタレンスルホン酸塩(ナプシレート)、3-フェニルスルホン酸塩、又はカンファースルホン酸塩等の、スルホン酸塩;及びアスパラギン酸塩又はグルタミン酸塩等の酸性アミノ酸塩を含む。用語「薬学的に許容可能な塩」はまた、あらゆる溶媒和形態の対応する化合物の薬学的に許容可能な塩を包含することが理解されるべきである。
【0054】
ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤、pKa値が12以上の賦形剤、及び任意選択で使用される透過促進剤は、医薬として、例えば薬学的組成物の形態で、製剤され得る。医薬又は薬学的組成物は、任意選択で、担体、希釈剤、充填剤、崩壊剤、潤滑剤、結合剤、着色剤、顔料、安定剤、防腐剤、抗酸化剤、アミノ酸、還元剤、生体接着剤、及び/又は溶解度増強剤等の、1つ又は複数のさらなる薬学的に許容可能な賦形剤を含み得る。特に、これは、ビタミンE、ヒスチジン、微晶質セルロース(MCC)、マンニトール、デンプン、ソルビトール、及び/又はラクトースから選択される、1つ又は複数の添加物を含み得る。薬学的組成物は、Remington's Pharmaceutical Sciences、第20版において公開されている技術等の、当業者に知られている技術によって製剤することができる。
【0055】
上記のように、薬学的組成物は、1つ又は複数の溶解度増強剤、例えばポリ(エチレングリコール)等を含み得、これとしては、約200から約5000Daの範囲の分子量を有するポリ(エチレングリコール)、エチレングリコール、プロピレングリコール、非イオン性界面活性剤、チロキサポール、ポリソルベート20、ポリソルベート80、マクロゴール-15-ヒドロキシステアリン酸塩、リン脂質、レシチン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、シクロデキストリン、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、ヒドロキシエチル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシエチル-γ-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン、ジヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン、スルホブチルエーテル-γ-シクロデキストリン、グルコシル-α-シクロデキストリン、グルコシル-β-シクロデキストリン、ジグルコシル-β-シクロデキストリン、マルトシル-α-シクロデキストリン、マルトシル-β-シクロデキストリン、マルトシル-γ-シクロデキストリン、マルトトリオシル-β-シクロデキストリン、マルトトリオシル-γ-シクロデキストリン、ジマルトシル-β-シクロデキストリン、メチル-β-シクロデキストリン、カルボキシアルキルチオエーテル、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、酢酸ビニルコポリマー、ビニルピロリドン、ラウリル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、又はこれらのあらゆる組み合わせが含まれる。好ましくは、1つ又は複数の溶解度増強剤としては、少なくとも1つの非イオン性界面活性剤、更に好ましくは、10を超える親水性-脂溶性バランス(HLB)を有する(すなわち、HLB>10の)少なくとも1つの非イオン性界面活性剤が含まれる。薬学的組成物はまた、HLB>10を有する少なくとも1つの非イオン性界面活性剤、及びHLB<10を有する少なくとも1つの非イオン性界面活性剤を含み得る。
【0056】
したがって、好ましくは、薬学的組成物は、少なくとも1つの非イオン性界面活性剤を含む。特に、薬学的組成物は、(例えば、液体から空気への、液体から液体への、液体から容器への、又は液体から任意の固体への)表面及び/又は界面で吸着し得、その親水基(「ヘッド」と呼ばれることがある)内に荷電した基を有さない、物質(好ましくは洗剤)を含み得る。非イオン性界面活性剤は、洗剤であり得、また、特に、エトキシ化されたヒマシ油、ポリグリコール化されたグリセリド、アセチル化されたモノグリセリド、ソルビタン-脂肪酸-エステル、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート-20、ポリソルベート-40、ポリソルベート-60、ポリソルベート-80、超精製(super-refined)ポリソルベート20、超精製ポリソルベート40、超精製ポリソルベート60、若しくは超精製ポリソルベート80等;例えば供給業者であるCroda社から入手される、対応するTween製品のいずれかが含まれる)、ポロキサマー(例えば、ポロキサマー188若しくはポロキサマー407等)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン誘導体(例えば、アルキル化された及び/又はアルコキシル化されたポリオキシエチレン誘導体等;特に、Tween製品のような、例えば、Tween-20若しくはTween-80)、ブロックコポリマー、例えば、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドブロックコポリマー(例えば、Pluronics/Tetronics、TritonX-100、及び/若しくはSynperonic PE/L44PEL)等、エトキシ化されたソルビタンアルカノエート(例えば、Tween-20、Tween-40、Tween-80、若しくはBrij-35等)、ラウリン酸ジグリセロール、カプリン酸ジグリセロール、カプリル酸ジグリセロール、モノカプリン酸ジグリセロール、ラウリン酸ポリグリセロール、カプリン酸ポリグリセロール、カプリル酸ポリグリセロール、又はこれらのあらゆる組み合わせから選択され得る。本発明に従った溶解度増強剤として使用され得る非イオン性界面活性剤のさらなる例としては、限定はしないが、(1.)天然の又は水素化されたヒマシ油とエチレンオキシドとの反応生成物(ここで、天然の又は水素化されたヒマシ油は、約1:35から約1:60のモル比でエチレンオキシドと反応させることができ、PEG成分が生成物から任意選択で除去される;様々なこのような界面活性剤は市販されており、例えば、BASF Corp.社(Mt. Olive、N. J.)のCREMOPHORシリーズ、例えば、PEG40水素化されたヒマシ油であり、HLBが約14~16である、CREMOPHOR RH 40)、(2.)特にポリオキシエチレンステアリン酸エステル(Uniqema社のMYRJシリーズ等、例えば、約47℃のm. p.を有するMYRJ 53;MYRJシリーズの特定の化合物は、例えば、約47℃のm. p.を有するMYRJ 53、及び、例えばMYRJ 52として入手可能なPEG-40-ステアリン酸塩である)を含む、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、(3.)特にUniqema社のTWEENシリーズ(例えば、TWEEN 60、Tween 20、Tween 80、又はTween 40)を含む、ソルビタン誘導体、(4.)ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー及び/又はブロックコポリマー及び/又はポロキサマー(例えば、BASF社のPluronic P127若しくはPluronic F68、又はCroda社のSynperonic PE/L)、(5.)ポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えば、C12~C18アルコールのポリオキシエチレングリコールエーテル等、例えば、Uniqema社からBRIシリーズとして市販されている、例えば、ポリオキシル10-若しくは20-セチルエーテル、又はポリオキシル23-ラウリルエーテル、又は20-オレイルエーテル、又はポリオキシル10-、20-、若しくは100-ステアリルエーテルのような;特に、BRIJシリーズの有用な製品としては、BRIJ 58、BRIJ 76、BRIJ 78、BRIJ 35(若しくは、ポリオキシ23-ラウリルエーテル)が含まれる、又はBRIJ 98(若しくはポリオキシル20オレイルエーテル);これらの製品は、約32℃から約43℃の間のm.p.を有し得る)、(6.)水溶性トコフェリルPEGコハク酸エステル(例えば、Eastman Chemical Co.社から入手可能な、約36℃のm.p.を有する、例えばTPGS、特にビタミンE-TPGS等)、(7.)PEGステロールエーテル(例えば、Chemron社(Paso Robles、Calif.)のSOLULAN C24(Choleth-24及びCetheth-24)等;同様に使用され得る類似の製品は、日光ケミカルズ株式会社のNIKKOL BPS-30(ポリエトキシ化された30フィトステロール)及びNIKKOL BPSH-25(ポリエトキシ化された25フィトスタノール)として既知であり、市販されているものである)、(8.)例えば4から10のグリセロール単位、例えば4、6、又は10グリセロール単位を有するポリグリセロール脂肪酸エステル(例えば、特に適切なものは、デカ-/ヘキサ-/テトラグリセリルモノステアレート、例えば、日光ケミカルズ株式会社のDECAGLYN、HEXAGLYN、又はTETRAGLYNである)、(9.)アルキレンポリオールエーテル又はエステル(例えば、ラウロイルマクロゴール-32グリセリド及び/又はステアロイルマクロゴール-32グリセリド、例えば、GELUCIRE 44/14及び/又はGELUCIRE 50/13)、(10.)飽和C10~C22(例えばC18)ヒドロキシ脂肪酸のポリオキシエチレンモノエステル(これは、任意選択で置換されていてよい)、例えばPEG 600、900、又は660の例えば12-ヒドロキシステアリン酸PEGエステル等(例えば、BASF社(Ludwigshafen、Germany)のSOLUTOL HS 15、又は、90から110の水素化値、53から63のサポニン陽イオン値、最大1の酸価、及び0.5質量%の最大水分含有量を有する、約70質量%のポリエトキシル化された12-ヒドロキシステアリン酸塩及び約30質量%の非エステル化ポリエチレングリコール成分を含む(又は、それからなる)物質);(11.)ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン-アルキルエーテル(例えば、C12~C18アルコールのポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンエーテル、例えば、日光ケミカルズ株式会社からNIKKOL PBC 34として市販されている、ポリオキシエチレン-20-ポリオキシプロピレン-4-セチルエーテル等)、或いは、(12.)ポリエトキシル化されたジステアリン酸塩(例えば、Uniqema社のATLAS G 1821という商品名及び/又は日光ケミカルズ株式会社のNIKKOCDS-6000Pという商品名で市販されている)が含まれる。
【0057】
更に、上記のように、薬学的組成物は、1つ又は複数の薬学的に許容可能な担体を含み得る。薬学的に許容可能な担体は、水性又は非水性の作用物質、例えば、アルコール性若しくは油性の作用物質又はこれらの混合物であり得、界面活性剤、軟化剤、潤滑剤、安定剤、染料、香料、防腐剤、pHを調整するための酸若しくは塩基、溶媒、乳化剤、ゲル化剤、保湿剤、安定剤、湿潤剤、タイムリリース剤、保水剤、又は薬学的組成物の特定の形態に一般に含まれるあらゆる他の成分を含有し得る。薬学的に許容可能な担体は当技術分野において周知であり、これとしては、例えば、水、若しくは緩衝生理食塩水、若しくは他の溶媒等の水性溶液、又はグリコール、グリセロール、及びオリーブオイル若しくは注射可能な有機エステル等の油等の媒体が含まれる。薬学的に許容可能な担体は、例えば、対応するペプチド薬剤又はタンパク質薬剤の吸収を安定化させる又は増大させるように作用する、生理学的に許容可能な化合物、例えば、グルコース、スクロース、若しくはデキストラン等の炭水化物、アスコルビン酸若しくはグルタチオン等の抗酸化剤、キレート剤、低分子量タンパク質、又は他の安定剤若しくは賦形剤を含有し得る。薬学的に許容可能な担体はまた、蒸留水、ベンジルアルコール、ラクトース、デンプン、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、アルギン酸、コロイドシリカ、二酸化チタン、及び着香料等の物質から選択され得る。
【0058】
更に好ましくは、本発明に従った薬学的組成物は、銅、亜鉛、又は鉄の塩又は錯体を有さない。したがって、好ましくは、薬学的組成物は、いかなる銅の塩も錯体も、いかなる亜鉛の塩も錯体も、又はいかなる鉄の塩も錯体も含有しない。
【0059】
薬学的組成物は、経粘膜投与のための、好ましくは、経口投与、口腔粘膜投与、又は経鼻投与のための投薬形態として製剤される。したがって、好ましくは、薬学的組成物は、対象/患者に対して、経粘膜的に、特に、経口的に、口腔粘膜に、又は経鼻的に投与される。好ましくは、薬学的組成物は、経口投薬形態として製剤され、したがって、好ましくは経口投与される。
【0060】
経口投与では、薬学的組成物は、経口摂取によって、特に嚥下によって投与される。薬学的組成物はしたがって、口を経由して消化管内に投与され得、これは「経口-胃腸」投与とも呼ばれる。このケースでは、薬学的組成物に含有されるペプチド薬剤又はタンパク質薬剤は、胃及び/又は腸の粘膜を経て吸収され得る。経口投与はまた、経口-腸投与及び/又は経口-胃投与を具体的に含む。
【0061】
経口投与のための投薬形態としては、例えば、錠剤(例えば、コーティングされた又はコーティングされていない錠剤)、カプセル(例えば、HPMCカプセル又はHPMCPカプセル)、カプセル内のカプセル、カプセル内のミニパッチ系、ロゼンジ、トローチ、膣錠、溶液、エマルジョン、懸濁液、シロップ、エリキシル、再構成するための粉末及び顆粒、分散性の粉末及び顆粒、薬用ガム、チュアブル錠、発泡錠剤、並びにマルチパーティキュレートの投薬形態が含まれる。
【0062】
錠剤は、非還元糖、微晶質セルロース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、及びグリシン等の賦形剤、デンプン(好ましくは、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、又はタピオカデンプン)、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、及びある特定の複合シリカ等の崩壊剤、並びに、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、スクロース、及びアカシア等の造粒結合剤を含有し得る。更に、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ベヘン酸グリセリル、及びタルク等の潤滑剤が含まれ得る。類似のタイプの固体組成物もまた、ハードカプセル内の充填剤として利用され得る。この点で好ましい賦形剤としては、非還元糖、デンプン、セルロース、又は高分子量ポリエチレングリコールが含まれる。水性懸濁液及び/又はエリキシルでは、作用物質は、様々な甘味料又は着香料、着色料又は染料と、乳化剤及び/又は懸濁剤と、並びに、水、エタノール、プロピレングリコール、及びグリセリン等の希釈剤と、並びにこれらの組み合わせと、組み合わされ得る。
【0063】
薬学的組成物はしたがって、錠剤の形態、例えば、遅延崩壊錠剤又は遅延浸食錠剤の形態で提供され得る。特に、薬学的組成物は、腸溶性コーティング、好ましくは、7を超えるpHで溶解する腸溶性コーティングを有する投薬形態(例えば錠剤)として提供され得る。
【0064】
経鼻投与では、薬学的組成物は、例えば、経鼻スプレーとして、点鼻薬として、エアロゾルとして、又は経鼻投与のための乾燥粉末として、特に経鼻スプレーとして、提供され得る。経鼻投与としては、特に、鼻腔内の経粘膜投与、鼻腔への局部投与、又は鼻から脳への送達が含まれる。したがって、本発明の薬学的組成物の経鼻投与は、投与される具体的なペプチド薬剤又はタンパク質薬剤の選択、及び透過促進剤又は粘膜付着性ポリマーの任意選択の使用にとりわけ応じて、全身的な治療効果(特に、鼻粘膜を経るペプチド薬剤又はタンパク質薬剤の吸収を介して)、及び/又は局所的な治療効果(特に鼻腔内での)、及び/又は脳における治療効果(特に、鼻から脳への送達を介する;例えば、Kamble MSら、International Journal of Pharmaceutical and Chemical Sciences. 2013、2(1):516~25を参照されたい)を有し得る。
【0065】
本発明の薬学的組成物はまた、口腔粘膜に投与され得る。したがって、薬学的組成物は、口腔粘膜投与のための投薬形態として製剤され得る。口腔粘膜投与とは、対象/患者の口腔内の粘膜上皮、例えば口腔内、歯肉、舌下、口蓋、唇下、又は口腔咽頭の粘膜上皮への、薬学的組成物の付着又は塗布を指す。口腔粘膜投与としてはしたがって、特に、口腔内投与、歯肉投与、舌下投与、口蓋投与、唇下投与、又は口腔咽頭投与が含まれる。したがって、薬学的組成物は、例えば、口腔内に、舌下に、歯肉に、唇下に、又は口腔咽頭に投与され得る。
【0066】
口腔粘膜投与では、本発明の薬学的組成物は、任意の適切な口腔粘膜投薬形態を使用して、例えば、ドロップの形態で、スプレーとして、又は投薬装置(例えば、スプレー装置、滴下装置、単位用量装置/ディスペンサー、複数回用量装置/ディスペンサー若しくはアンプル、投薬ペン、又は投薬ピペット)によって、投与することができる。投薬装置は、患者又は介護士が所望の用量を正確に口腔内に付着させることを可能にするためのアクチュエーター及び/又は流出オリフィスを備えていてよい。投薬装置は、作動すると所定の容積(単位用量に対応する)の薬学的組成物を、例えばスプレーの形態又は1つ若しくは複数のドロップの形態で分配するように、適合されていてよい。投薬装置はまた、一定用量のペプチド薬剤又はタンパク質薬剤を含有する一定容積を送達する投薬ペンであり得る。
【0067】
典型的には、医師が、個々の対象に最も適切であろう実際の投薬量を決定する。任意の特定の個々の対象のための具体的な用量レベル及び投薬頻度は、変化し得、利用される具体的なペプチド薬剤又はタンパク質薬剤の活性、その化合物の作用の代謝安定性及び長さ、年齢、体重、全体的健康、性別、食事、投与の態様及び時間、排出速度、薬剤の組み合わせ、特定の状態の重症度、並びに治療を受けている個々の対象を含む、様々な因子に依存する。正確な用量は、最終的には、担当の医師又は獣医師の裁量である。
【0068】
本発明に従って処置される対象又は患者は、動物(例えば、非ヒト動物)であり得る。好ましくは、対象/患者は、哺乳動物である。更に好ましくは、対象/患者は、ヒト(例えば、男性若しくは女性)、又は非ヒト哺乳動物(例えば、モルモット、ハムスター、ラット、マウス、ウサギ、イヌ、ネコ、ウマ、サル、類人猿、マーモセット、ヒヒ、ゴリラ、チンパンジー、オランウータン、テナガザル、ヒツジ、ウシ、若しくはブタ等)である。最も好ましくは、本発明に従って処置される対象/患者は、ヒトである。
【0069】
本明細書において使用される、障害又は疾患の「処置」という用語は、当技術分野において周知である。障害又は疾患の「処置」は、障害又は疾患が患者/対象において疑われる又は診断されていることを暗に意味する。障害又は疾患に罹患している疑いがある患者/対象は、典型的には、当業者がその原因となる具体的な病的状態を容易に特定することができる(すなわち、障害又は疾患を診断することができる)、特異的な臨床的及び/又は病理学的症候を示す。
【0070】
障害又は疾患の「処置」は、例えば、障害若しくは疾患の進行の停止(例えば、症候の悪化がない)、又は障害若しくは疾患の進行の遅延(進行の停止が一時的な性質のみのケース)をもたらし得る。障害又は疾患の「処置」はまた、障害又は疾患に罹患している対象/患者の部分奏功(例えば、症候の改善)又は完全奏功(例えば、症候の消失)をもたらし得る。したがって、障害又は疾患の「処置」はまた、障害又は疾患の改善を指し得、これは例えば、障害若しくは疾患の進行の停止、又は障害若しくは疾患の進行の遅延をもたらし得る。このような部分奏功又は完全奏功の後には、再発があり得る。対象/患者が処置に対して広範囲の応答(本明細書において上記で記載される典型的な応答等)を示し得ることが、理解されるべきである。障害又は疾患の処置は、とりわけ、治療的処置(好ましくは、完全奏功を、最終的には障害又は疾患の治癒をもたらす)及び緩和的処置(症候の緩和を含む)を含み得る。
【0071】
本明細書において使用される、障害又は疾患の「予防」という用語もまた、当技術分野において周知である。例えば、障害又は疾患に罹患する傾向があると疑われる患者/対象は、特に、障害又は疾患の予防の利益を受け得る。対象/患者は、限定はしないが遺伝的素因を含む、障害又は疾患の感受性又は素因を有し得る。このような素因は、例えば遺伝子マーカー又は表現型指標を使用する、標準的な方法又はアッセイによって決定することができる。本発明に従って予防される障害又は疾患は、患者/対象において診断されていない又は診断され得ない(例えば、患者/対象は、いかなる臨床的又は病理学的症候も示さない)ことが理解されるべきである。したがって、用語「予防」は、何らかの臨床的及び/又は病理学的症候が担当医師によって診断若しくは決定されるか又は診断若しくは決定され得る前の、本発明に従ったペプチド薬剤又はタンパク質薬剤の使用を含む。
【0072】
「ペプチド薬剤又はタンパク質薬剤」という表現におけるような、用語「ペプチド」及び「タンパク質」は、本明細書において同じ意味で使用され、1つのアミノ酸のアミノ基と別のアミノ酸のカルボキシル基との間で形成されているアミド結合を介して連結している2つ以上のアミノ酸のポリマーを指す。ペプチド又はタンパク質に含まれるアミノ酸は、アミノ酸残基とも呼ばれるが、20の標準的なタンパク質構成α-アミノ酸(すなわち、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、及びVal)から選択され得、しかしまた、タンパク質を構成しない及び/又は非標準なα-アミノ酸(例えば、オルニチン、シトルリン、ホモリジン、ピロリシン、4-ヒドロキシプロリン、α-メチルアラニン(すなわち、2-アミノイソ酪酸)、ノルバリン、ノルロイシン、テルロイシン(tert-ロイシン)、ラビオニン、又は側鎖において環状基で置換されているアラニン若しくはグリシン、例えば、シクロペンチルアラニン、シクロヘキシルアラニン、フェニルアラニン、ナフチルアラニン、ピリジルアラニン、チエニルアラニン、シクロヘキシルグリシン、若しくはフェニルグリシン等)、並びに、β-アミノ酸(例えば、β-アラニン)、γ-アミノ酸(例えば、γ-アミノ酪酸、イソグルタミン、又はスタチン)、及びδ-アミノ酸からも選択され得る。好ましくは、ペプチド又はタンパク質に含まれるアミノ酸残基は、α-アミノ酸からから選択され、更に好ましくは、20の標準的なタンパク質構成α-アミノ酸(これは、L-異性体又はD-異性体として存在し得、好ましくは、全てがL-異性体として存在する)から選択される。ペプチド又はタンパク質は、例えば、そのN末端で、そのC末端で、及び/又はそのアミノ酸残基のうちのいずれかの側鎖における官能基で(特に、1つ又は複数のLys、His、Ser、Thr、Tyr、Cys、Asp、Glu、及び/又はArg残基の側鎖官能基で)、修飾されていなくても修飾されていてもよい。このような修飾としては、例えば、Wuts PG & Greene TW、Greene's protective groups in organic synthesis、John Wiley & Sons、2006において対応する官能基について記載されている保護基のいずれかの付着が含まれる。このような修飾としてはまた、1つ又は複数のポリエチレングリコール(PEG)鎖(PEG化されたペプチド又はタンパク質を形成している)の共有結合による付着、1つ又は複数の脂肪酸(例えば、1つ又は複数のC8~30アルカン酸又はアルケン酸;脂肪酸アシル化されたペプチド又はタンパク質を形成している)でのグリコシル化及び/又はアシル化が含まれ得る。更に、このような修飾されたペプチド又はタンパク質としてはまた、(1つのアミノ酸のアミノ基と別のアミノ酸のカルボキシル基との間で形成された)アミド結合を介して連結している少なくとも2つのアミノ酸を含有する限りにおいて、ペプチド模倣体が含まれ得る。ペプチド又はタンパク質に含まれているアミノ酸残基は、例えば、直鎖状の分子鎖(直鎖状のペプチド若しくはタンパク質を形成している)として存在し得るか、又は1つ若しくは複数の環(環状ペプチド若しくは環状タンパク質に対応する)を形成し得る。ペプチド又はタンパク質はまた、2つ以上の同一の又は異なる分子からなるオリゴマーを形成し得る。
【0073】
用語「アミノ酸」は、特に、20の標準的なタンパク質構成α-アミノ酸(すなわち、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、及びVal)のいずれか1つを指し、しかしまた、タンパク質を構成しない及び/又は非標準的なα-アミノ酸(例えば、オルニチン、シトルリン、ホモリジン、ピロリシン、4-ヒドロキシプロリン、α-メチルアラニン(すなわち、2-アミノイソ酪酸)、ノルバリン、ノルロイシン、テルロイシン(tert-ロイシン)、ラビオニン、又は側鎖において環状基で置換されているアラニン若しくはグリシン、例えば、シクロペンチルアラニン、シクロヘキシルアラニン、フェニルアラニン、ナフチルアラニン、ピリジルアラニン、チエニルアラニン、シクロヘキシルグリシン、若しくはフェニルグリシン等)、並びに、β-アミノ酸(例えば、β-アラニン)、γ-アミノ酸(例えば、γ-アミノ酪酸、イソグルタミン、若しくはスタチン)、及び/又はδ-アミノ酸、並びに少なくとも1つのカルボン酸基及び少なくとも1つのアミノ基を含むあらゆる他の化合物も指す。別段の規定がない限り、「アミノ酸」は、好ましくはα-アミノ酸を指し、更に好ましくは、20の標準的なタンパク質構成α-アミノ酸(これは、L-異性体又はD-異性体として存在し得、好ましくは、L-異性体として存在する)のいずれか1つを指す。
【0074】
用語「抗体」は、特定の抗原に特異的に結合する(又は、特定の抗原と免疫学的に反応性である)任意の免疫グロブリン分子を指す。抗体は、例えば、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体であり得、好ましくは、モノクローナル抗体である。更に、抗体(例えば、モノクローナル抗体)は、全抗体(例えば、IgA、IgD、IgE、IgM、又は、特にIgG1、IgG2、IgG3、若しくはIgG4を含むIgG)、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、ヘテロコンジュゲート抗体(例えば、二重特異的抗体)であり得るか、又はこれは、前述のタイプの抗体のうちのいずれかの抗原結合断片(例えば、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv、若しくはscFv等)であり得る。抗体はまた、一本鎖抗体(scAb)又はシングルドメイン抗体(sdAb、例えば「ナノボディ」)であり得る。
【0075】
用語「錯体」は、キレート錯体(この内部において、配位結合が、単一の中心原子/イオンと多座配位子との間で形成されている)、又は単一の中心原子/イオンを配位させている単座配位子から構成される配位錯体を指す。
【0076】
本明細書において使用される場合、用語「任意選択の」、「任意選択で」、及び「し得る」は、示された特徴が存在し得るが不在でもあり得ることを示す。用語「任意選択の」、「任意選択で」、又は「し得る」が使用される場合は常に、本発明は、具体的に、両方の可能性に、すなわち、対応する特徴が存在するか、又は代わりに、対応する特徴が不在であるという、両方の可能性に関する。例えば、組成物の成分が「任意選択」であると示される場合、本発明は、具体的に、両方の可能性に、すなわち、対応する成分が存在する(組成物中に含有されている)か、又は対応する成分が組成物中で不在であるという、両方の可能性に関する。
【0077】
本明細書において使用される場合、用語「約」は、示された数値の±10%を、好ましくは、示された数値の±5%を、特に、示された数値ちょうどを指す。例えば、「約100」という表現は、90から110の範囲、特に95から105の範囲を指し、好ましくは、100という具体的な値を指す。用語「約」が範囲の終点に関連して使用される場合、これは、その示された数値の下端点-10%からその示された数値の上端点+10%までの範囲を、特に、下端点-5%から上端点+5%までの範囲を、好ましくは、下端点及び上端点の数値ちょうどによって規定される範囲を指す。したがって、「約10から約20」という表現は、9から22、特に9.5から21、好ましくは10から20の範囲を指す。用語「約」がオープンエンドの範囲の終点に関連して使用される場合、これは、下端点-10%又は上端点+10%から始まる、対応する範囲を指し、特に、下端点-5%又は上端点+5%から始まる範囲を、好ましくは、対応する終点の数値ちょうどによって規定されるオープンエンドの範囲を指す。例えば、「少なくとも約10%」という表現は、少なくとも9%、特に少なくとも9.5%、好ましくは少なくとも10%を指す。
【0078】
別段のことが具体的に示されない限り、本明細書において言及される全ての特性及びパラメータ(例えば、「mg/ml」又は「%(v/v)」で示される任意の量/濃度、及び任意のpH値を含む)は、好ましくは、標準的な室温及び圧力条件で、特に、25℃(298.15K)の温度及び101.325kPa(1atm)の絶対圧力で決定される。
【0079】
更に、本発明が、具体的に、一般的な及び/又は好ましい特徴/実施形態の任意の組み合わせを含む、本明細書において記載される特徴及び実施形態の各組み合わせ及び全ての組み合わせに関することが理解されるべきである。特に、本発明は、具体的に、本明細書において記載される好ましい特徴の全ての組み合わせに関する。
【0080】
本明細書において、特許、特許出願、及び科学文献を含む多くの文献が引用されている。これらの文献の開示は、本発明の特許性に関連するとは見なされないが、ここで、参照することによってその全体が組み込まれる。更に具体的には、全ての参考文献は、それぞれの個々の文献が参照することによって組み込まれることが具体的且つ個別に示された場合と同程度に、参照することによって組み込まれる。
【0081】
本発明はまた、以下の例示的な図面によっても説明される。添付の図面は以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【
図1】ブタにおける腸投与の後のPTH(1~34)製剤の薬物動態学的プロファイルを示す図である(実施例4を参照されたい)。製剤は、-●- L-アルギニン遊離塩基及びカプリン酸ナトリウム(「ARG+C10」、n=3)、-■- L-アルギニン遊離塩基及びドデシル硫酸ナトリウム(「ARG+SDS」、n=3)、-Δ- L-アルギニン遊離塩基及びラウリン酸スクロース(「ARG+SL」、n=1)、-□- ドデシル硫酸ナトリウム(「SDS」、n=4)、-〇- カプリン酸ナトリウム(「C10」、n=3)を含む。
【
図2】ラットにおける腸への注射の後の血漿中オクトレオチド濃度を示す図である(実施例11を参照されたい)。OCT005(-●-)、OCT006(-〇-)。各データポイントは、少なくともn=3±S.E.の平均を表す。
【
図3】ブタにおける腸への適用の後の血漿中PTH(1~34)濃度を示す図である(実施例12を参照されたい)。溶液中のカプリン酸ナトリウム(-●-、n=3±S.E.)、L-アルギニン遊離塩基、カプリル酸ナトリウム、及びポリアクリレートを有するマトリクス錠剤(-〇-、n=1)。
【
図4A】非ヒト霊長類への経口投与の後のPTH(1~34)製剤の薬物動態学的プロファイルを示す図である(実施例15を参照されたい)。
【
図4B】非ヒト霊長類への経口投与の後のPTH(1~34)製剤の個々の薬物動態学的プロファイルを示す図である。
【
図5】ヒト鼻細胞系RPMI 2650を経るセマグルチドの透過を示す図である(実施例21を参照されたい)。
【
図6】細胞増殖細胞傷害性アッセイ(MTS)を示す図である(実施例22を参照されたい)。
【
図7】アルギニン塩酸塩の存在下でのMDCK細胞におけるTEER測定を示す図である(実施例23を参照されたい)。
【発明を実施するための形態】
【0083】
本発明を、以下の実施例を参照することによってこれから記載するが、実施例は、例示的なものにすぎず、本発明の範囲の限定として解釈されるべきものではない。
【実施例0084】
(実施例1)
ペプシン含有疑似胃液(SGFP)中でのPTH(1~34)製剤の安定性
PTH(1~34)製剤を、20分間、37℃で、最終濃度が1.6mg/mlのペプシンを含む疑似胃液中でインキュベートした。無傷のPTH(1~34)を、HPLCによって分析した。結果をTable 1(表1)に示す。
【0085】
【0086】
結論:L-アルギニン遊離塩基を含む製剤は、疑似胃液中でPTH(1~34)をペプシンによる分解から防御することが示された。L-アルギニンHClは、しかし、SGFP中でペプチドの分解を予防しなかった。亜鉛アルギン酸塩キレートの添加によって、ペプシン分解に対する部分的防御がもたらされた。
【0087】
(実施例2)
トリプシンの存在下でのPTH(1~34)製剤の安定性
PTH(1~34)製剤を、15分間、37℃で、最終濃度が0.05mg/mlのトリプシンを含む溶液中でインキュベートした。無傷のPTH(1~34)を、HPLCによって分析した。結果をTable 2(表2)に示す。
【0088】
【0089】
結論:L-アルギニン遊離塩基を含む製剤は、PTH(1~34)をトリプシンによる分解から防御することが示された。L-アルギニンHClは、程度は小さいが、トリプシンの存在下でのペプチドの分解を防いだ。
【0090】
(実施例3)
ブタの鼻粘膜の存在下でのPTH(1~34)製剤の安定性
PTH(1~34)を有する製剤:
PTH-NAS-001
0.5mg/mlのPTH(1~34)を、0.5Mのリン酸緩衝液(pH7.4)に溶解した。
PTH-NAS-002
0.5mg/mlのPTH(1~34)及び100mg/mlのL-アルギニン遊離塩基を、0.5Mのリン酸緩衝液(pH7.4)に溶解した。
PTH-NAS-003
0.5mg/mlのPTH(1~34)及び100mg/mlのL-アルギニンHClを、0.5Mのリン酸緩衝液(pH7.4)に溶解した。
【0091】
PTH(1~34)製剤を、4時間、37℃で、切除したブタの鼻粘膜(50mg/ml)とインキュベートした。無傷のPTH(1~34)を、HPLCによって分析した。結果をTable 3(表3)に示す。
【0092】
【0093】
結論:L-アルギニンを含む経鼻製剤は、鼻粘膜の存在下でPTH(1~34)の酵素安定性を実質的に改善した。
【0094】
(実施例4)
ブタに腸投与した後のPTH(1~34)製剤の薬物動態学的プロファイル
PTH(1~34)を有する製剤:
PTH-PIG-001
2mgのPTH(1~34)
200mgのSDS
PTH-PIG-002
2mgのPTH(1~34)
200mgのSDS
200mgのL-アルギニン
PTH-PIG-003
2mgのPTH(1~34)
200mgのカプリン酸ナトリウム
PTH-PIG-004
2mgのPTH(1~34)
200mgのカプリン酸ナトリウム
200mgのL-アルギニン
PTH-PIG-005
2mgのPTH(1~34)
200mgのラウリン酸スクロース
200mgのL-アルギニン
【0095】
製剤は、乾燥粉末として調製し、投与の5分前に、2mlのH
2Oに溶解した。PTH(1~34)製剤を、麻酔したブタに、ブタ当たり2mlの容積(最終濃度1mg/ml)で遠位の空腸に投与した。血液を、投与の0分前、並びに投与の10、20、30、60、90、及び120分後の時点で採取した。血液を、Vacuette EDTAアプロチニンチューブ(Greiner Bio-One社)に引き込んだ。血液試料を遠心分離し(4分間、10000g、4℃)、PTH(1~34)の血漿中濃度を、市販のHigh Sensitivity Human PTH(1~34)ELISAキット(Immundiagnostik AG社、Germany、KI603900)を使用して決定した。データを、平均±SEとして表す。結果を
図1に示す。
【0096】
結論:L-アルギニン及び透過促進剤を含む経口製剤は、PTH(1~34)の腸での吸収を改善した。特に、L-アルギニン遊離塩基とカプリン酸ナトリウムとの組み合わせによって、PTH(1~34)の腸での吸収は驚くほど改善した。このような製剤は、L-アルギニン遊離塩基を有さない組成物と比較して、20倍を超えてAUCを改善した。
【0097】
(実施例5)
腸投与後のラットにおけるリラグルチドの薬物動態学的プロファイル
リラグルチドを有する製剤:
LIRA-INT-001
6mg/mlのリラグルチド
60mg/mlのL-アルギニン
10mg/mlのFe(II)グルコネート
4mg/mlのCu(II)グルコネート
最終pH=9.7
【0098】
製剤は、乾燥粉末として調製し、投与の5分前に溶解した。リラグルチド製剤を、麻酔したラットに、0.4ml/kgの容積(最終濃度6mg/ml)で回腸に投与した。血液を、投与の0、30、60、90、120、180、及び240分後の時点で、尾の血管から採取した。血液を、尾端から、Microtainer Microgard EDTAチューブ(Becton Dickinson社、USA)に引き込んだ。血液サンプルを遠心分離し(4分間、10000g、4℃)、リラグルチドの血漿中濃度を、市販のリラグルチド EIAキット(Peninsula Laboratories International社、USA、カタログ番号S-1502.0001)を使用して決定した。データを、平均±SEとして表す。薬物動態パラメータの平均を表4にまとめる。
【0099】
【0100】
結論:L-アルギニンを含む製剤によって、ラットの回腸に投与した後に、リラグルチドの明白なPK-プロファイルがもたらされた。
【0101】
(実施例6)
Caco-2細胞単層を経るデスモプレシンのインビトロでの透過
すぐに使用できるCaco-2細胞キットを用いて、透過実験を行った(CacoReady(商標)、Readycell社)。キットは、ポリカーボネート微孔性フィルター上の、分化し極性化したCaco-2バリアを播種した24インサート組み込み型透過性サポートから構成される。細胞を、供給者によって提供されている指示に従って処置した。疑似腸液(SIF pH7、USP)1ml当たり2.83mgのデスモプレシンを含有するデスモプレシンストック溶液を調製した。さらなるストック溶液は、アルギニンHCl、SIF pH7中で1%、アルギニン塩基、SIF pH7中1%、及びリン酸三ナトリウム、SIF pH7中1%であった。各側底側区画に、0.75mlのSIF pH7、USPを添加した。4つの群(それぞれn=3)を試験した。透過装置の頂端側に、以下の組み合わせを添加した:(1)0.125mlのデスモプレシンストック溶液+0.125mlのSIF、pH7、USP、(2)0.125mlのデスモプレシンストック溶液+0.125mlのアルギニンHCl 1%ストック溶液、(3)0.125mlのデスモプレシンストック溶液+0.125mlのアルギニン遊離塩基1%ストック溶液、及び(4)0.125mlのデスモプレシンストック溶液+0.125mlのリン酸三ナトリウム1%ストック溶液。デスモプレシンを頂端側に添加した後に、細胞を、2時間、37℃で、5%CO2及び高い相対湿度でインキュベートした。インキュベーションの後、各実験の頂端側及び側底側の内容物を回収し、-20℃で保存し、その後分析した。側底側区画のデスモプレシン濃度を、0.1%トリフルオロ酢酸を含有するH2O、及び0.1%トリフルオロ酢酸を含有するアセトニトリルに基づいて、勾配HPLC法を介して分析した。
【0102】
結果:0.5%(m/v)で、アルギニンHClは、緩衝液のみにおけるデスモプレシンと比較して、Caco-2単層を経るデスモプレシンの輸送を増大させないことが示された。しかし、0.5%(m/v)のアルギニン遊離塩基又はリン酸三ナトリウムの存在によって、緩衝液のみにおけるコントロールと比較して、デスモプレシン透過の有意な増大がもたらされた。対応する結果をTable 5(表5)に詳述する。
【0103】
【0104】
結論:L-アルギニン遊離塩基及びリン酸三ナトリウム(Na3PO4)は、Caco-2単層において透過増強効果を示す。
【0105】
(実施例7)
キモトリプシンによるデスモプレシンのインビトロでの酵素分解
キモトリプシンによるデスモプレシンの酵素分解を、L-アルギニン遊離塩基の存在下及び不在下で調べた。結果を以下のTable 6(表6)に示す。
【0106】
ストック溶液:
デスモプレシン:50mMのリン酸緩衝液 pH6.5中で1mg/ml
緩衝液 pH9: 0.2Mのリン酸緩衝液 pH=9.2
L-アルギニン(遊離塩基): 0.2Mのリン酸緩衝液 pH=9.2中で200mg/ml
キモトリプシン:0.2Mのリン酸緩衝液 pH=9.2中で1mg/ml
37℃及び400rpmでのインキュベーション、5時間のインキュベーション
停止溶液: 300μlの1.25%HCl、HPLCを介する分析
【0107】
【0108】
結論:上記の結果は、L-アルギニン遊離塩基がキモトリプシンによるデスモプレシンの酵素分解を減少させることを示す。
【0109】
(実施例8)
リン酸三ナトリウムとデカン酸ナトリウムとの組み合わせによる腸プロテアーゼの阻害
疑似腸液(SIF)、pH7、及びパンクレアチンを含有する酵素的に活性な疑似腸液(SIF-P)、pH7を、USPガイドラインに従って調製した。濃度が1ml当たり1mgのPTH(1~34)である、SIF、pH7中のペプチドPTH(1~34)のストック溶液を、調製した。PTH(1~34)ストック溶液を、SIF-P中に溶解したデカン酸ナトリウム(C10)、リン酸三ナトリウム(Na3PO4)、及びこれらの混合物の不在下及び存在下で、インキュベートした(組成についてはTable 7(表7)を参照されたい)。37℃及び250rpmでの規定されたインキュベーション時間の後、サンプルをHPLC系に直接注入し、PTH(1~34)含有量に関して、0.1%トリフルオロ酢酸を含有するH2O及び0.1%トリフルオロ酢酸を含有するアセトニトリルに基づいて勾配法で分析した。
【0110】
結果をTable 7(表7)に示す。PTH(1~34)は、SIF-Pの存在下で10分間以内に完全に分解された。更に、PTH(1~34)は、C10及びNa3PO4の存在下で完全に分解された。しかし、PTH(1~34)の分解は、C10及びNa3PO4の混合物の存在下でインキュベートした場合には、観察されなかった。
【0111】
【0112】
結論:Na3PO4とデカン酸ナトリウムとの組み合わせは、腸プロテアーゼの驚くほど良好な阻害を示す。
【0113】
(実施例9)
ラット回腸内に投与した後のデスモプレシン製剤の薬物動態学的プロファイル
デスモプレシン製剤を、0.4ml/kgの容積及び0.08mg/kgの最終デスモプレシン濃度で、麻酔したラット(n=5)の回腸に投与した。麻酔は、3:1の比率で混合したヒプノルム及びドルミカムの溶液で誘発した。麻酔の深さをチェックした後、3~5cmの長さの切開を腹部の皮膚に形成した。盲腸を露出させ、小腸の遠位部分を腹腔の外に引き出した。腸にカテーテルチップを貫通させ、カテーテルを下流で、回腸管腔内に、リンパ組織が蓄積した区域の外側及び血管の外側の、便がないスポット内の盲腸から5cmの距離で挿入し、そして結紮で固定した。投与溶液で満たされた、準備されたシリンジを、挿入されたカテーテルに徐々に装着した。投与は緩やかに行った。血液を、投与後0、30、60、120、及び240分の時点で、尾部の血管から採取した。デスモプレシンの血漿中濃度を、市販のデスモプレシンEIAキット(Peninsula Laboratories International社、USA、カタログ番号S-1365.0001)を使用して決定した。結果をTable 8(表8)に示す。
【0114】
組成物:
DESMO-A(=参照製剤、デスモプレシンのみ)
0.2mg/mlのデスモプレシン
DESMO-B
0.2mg/mlのデスモプレシン
1mg/mlのアプロチニン
DESMO-C
0.2mg/mlのデスモプレシン
100mg/mlのリン酸三ナトリウム(Na3PO4)
【0115】
【0116】
結論:リン酸三ナトリウム(Na3PO4)は、ラット回腸からのデスモプレシンの吸収を数倍改善した。
【0117】
(実施例10)
ラット回腸に投与した後のデスモプレシン製剤の薬物動態学的プロファイル
デスモプレシン製剤を、0.4ml/kgの容積及び0.092mg/kgの最終デスモプレシン濃度で、麻酔したラット(n=5)の回腸に投与した。麻酔は、3:1の比率で混合したヒプノルム及びドルミカムの溶液で誘発した。麻酔の深さをチェックした後、3~5cmの長さの切開を腹部の皮膚に形成した。盲腸を露出させ、小腸の遠位部分を腹腔の外に引き出した。腸にカテーテルチップを貫通させ、カテーテルを下流で、回腸管腔内に、リンパ組織が蓄積した区域の外側及び血管の外側の、便がないスポット内の盲腸から5cmの距離で挿入し、そして結紮で固定した。投与溶液で満たされた、準備されたシリンジを、挿入されたカテーテルに徐々に装着した。投与は緩やかに行った。血液を、投与後0、30、60、120、及び240分の時点で、尾部の血管から採取した。デスモプレシンの血漿中濃度を、市販のデスモプレシンEIAキット(Peninsula Laboratories International社、USA、カタログ番号S-1365.0001)を使用して決定した。結果をTable 9(表9)に示す。
【0118】
組成物:
DESMO-A(=参照製剤、デスモプレシンのみ)
0.23mg/mlのデスモプレシン
DESMO-B
0.23mg/mlのデスモプレシン
100mg/mlのリン酸一ナトリウム
DESMO-C
0.23mg/mlのデスモプレシン
100mg/mlのリン酸二ナトリウム
DESMO-D
0.23mg/mlのデスモプレシン
100mg/mlのリン酸三ナトリウム(Na3PO4)
DESMO-E
0.23mg/mlのデスモプレシン
100mg/mlのリン酸三ナトリウム(Na3PO4)
10mg/mlのカプリン酸ナトリウム(デカン酸ナトリウム)
DESMO-F
0.23mg/mlのデスモプレシン
100mg/mlのリン酸三ナトリウム(Na3PO4)
50mg/mlのラウリン酸スクロース
【0119】
【0120】
結論:リン酸三ナトリウムは、ラット回腸からのデスモプレシンの吸収を有意に改善したが、リン酸一ナトリウム及びリン酸二ナトリウムはいかなる改善ももたらさなかった。
【0121】
(実施例11)
ラット空腸内に投与した後のオクトレオチド製剤の薬物動態学的プロファイル
オクトレオチド製剤を、0.4ml/kgの容積及び0.4mg/kgの最終オクトレオチド濃度で、麻酔したラット(n=4)の近位の空腸に投与した。麻酔は、3:1の比率で混合したヒプノルム及びドルミカムの溶液で誘発した。麻酔の深さをチェックした後、3~5cmの長さの切開を腹部の皮膚に形成した。盲腸を露出させ、小腸を腹腔から、十二指腸空腸曲まで引き出した。腸にカテーテルチップを貫通させ、カテーテルを下流で、空腸管腔内に、リンパ組織が蓄積した区域の外側及び血管の外側の、便がないスポット内の盲腸から10±5cmの距離で挿入し、そして結紮で固定した。投与溶液で満たされた、準備されたシリンジを、挿入されたカテーテルに徐々に装着した。投与は緩やかに行った。血液を、投与後0、10、20、60、及び120分の時点で、尾部の血管から採取した。オクトレオチドの血漿中濃度を、市販のオクトレオチドキット(Peninsula Laboratories International, Inc.社、USA、カタログ番号S-1342.0001)を使用して決定した。結果をTable 10(表10)及び
図2に示す。
【0122】
組成物:
OCT005
1mg/mlのオクトレオチド
OCT006
1mg/mlのオクトレオチド
100mg/mlのリン酸三ナトリウム(Na3PO4)
【0123】
【0124】
(実施例12)
ブタ回腸内に投与した後のPTH(1~34)製剤の薬物動態学的プロファイル
2mgのPTH(1~34)、200mgのL-アルギニン遊離塩基、10mgのポリアクリレート(カーボポール)、及びカプリル酸ナトリウムを含有するin situゲル化マトリクス錠剤を、ブタの回腸に直接投与した。血漿中PTH(1~34)レベルを、市販のHigh Sensitivity PTH(1~34)ELISAキットを用いて分析した。
【0125】
結果:ポリアクリレート(カーボポール)とアルギニンとの組み合わせは、
図3にも示すような、PTH(1~34)の吸収の延長をもたらすin situゲル化マトリクス系をもたらす。
【0126】
(実施例13)
トリプシンによるアダリムマブのインビトロでの酵素分解
37℃の、トリプシンを含有する疑似腸液(SIF)中での、抗体アダリムマブの酵素分解を、阻害剤L-アルギニン遊離塩基の存在下及び不在下で調べた。
【0127】
【0128】
結論:上記の結果は、アダリムマブがトリプシンによって分解されるが、L-アルギニン塩基の存在下ででは完全に保護されることを示す。
【0129】
(実施例14)
ラット空腸内に投与した後のPTH(1~34)製剤の薬物動態学的プロファイル
上記の実施例11で記載されている手順と同様に、以下に記載するPTH(1~34)製剤は、麻酔したラットの空腸に投与され得、血漿中PTH(1~34)濃度が決定され得る。PTH(1~34)をリン酸三ナトリウム及びカプリン酸ナトリウムと組み合わせて含有する、本発明に従った典型的な製剤の改善された薬物動態学的特性が、こうして実証され得る。
【0130】
組成物:
PTH(1~34)-A
0.2mg/mlのPTH(1~34)
20mg/mlのカプリン酸ナトリウム
PTH(1~34)-B
0.2mg/mlのPTH(1~34)
20mg/mlのカプリン酸ナトリウム
100mg/mlのリン酸三ナトリウム(Na3PO4)
【0131】
(実施例15)
非ヒト霊長類への経口投与の後のPTH(1~34)製剤の薬物動態学的プロファイル
PTH(1~34)を含む固体の経口投薬形態は、非ヒトであるサルにおけるインビボでの試験のために調製されている。固体の経口投薬形態を、体重が5から6kgの間のカニクイザルに経口投与した。血液を、経口投与後0、15、30、60、120、及び180分の時点で回収した。血漿中PTH(1~34)濃度を、Immutopics社のHigh Sensitivity Human PTH(1~34)ELISAキットで分析した。薬物動態学的プロファイルを
図4に示す。
【0132】
組成物:
参照(1)
サイズ4のゼラチンカプセル
2mgのPTH(1~34)
50mgのマンニトール
製剤2
サイズ4のゼラチンカプセル
2mgのPTH(1~34)
100mgのL-アルギニン
製剤3
5.4kNの圧縮力で圧縮した錠剤
2mgのPTH(1~34)
100mgのL-アルギニン
100mgのラウリン酸スクロース
製剤4
5.8kNの圧縮力で圧縮した錠剤
2mgのPTH(1~34)
100mgのL-アルギニン
100mgのステアリン酸スクロース
製剤5
6.9kNの圧縮力で圧縮した錠剤
2mgのPTH(1~34)
100mgのSNAC
50mgのL-アルギニン
50mgのステアリン酸スクロース
製剤6
7.8kNの圧縮力で圧縮した錠剤
2mgのPTH(1~34)
100mgのL-アルギニン
90mgのマンニトール
2.5mgのカーボポール974P
SNAC
ゼラチンカプセル
2.5mgのPTH(1~34)
100mgのSNAC
【0133】
結論:アルギニンを含む本発明に従った製剤は、PTH(1~34)の大きな経口的生物学的利用能をもたらし、その一方で、アルギニンを有さないコントロール製剤の生物学的利用能はほとんどなかった。アルギニンを含む製剤はまた、SNACのみを有する製剤と比較して、PTH(1~34)の改善された生物学的利用能を示した。
【0134】
(実施例16)
セマグルチド及びL-アルギニンを有する遅延浸食錠剤製剤の開発
セマグルチド錠剤をKorsch EK0打錠機で作製し、37℃の疑似胃液(SGF)中でのその崩壊時間を、USPに従って崩壊試験器で分析した。
【0135】
組成物SEMA-A:
5mgのセマグルチド
300mgのL-アルギニン
300mgのソルビトール
50mgのアビセル
を、10.4kNの圧縮力で圧縮した。錠剤は、数秒間以内にすぐに崩壊した。
【0136】
組成物SEMA-B:
5mgのセマグルチド
300mgのL-アルギニン
250mgのソルビトール
50mgのステアリン酸スクロース
を、5.5kNの圧縮力で圧縮した。錠剤は、5.2分の延長した崩壊プロファイルを示した。
【0137】
組成物SEMA-C:
5mgのセマグルチド
300mgのL-アルギニン
250mgのソルビトール
100mgのステアリン酸スクロース
を、8.6kNの圧縮力で圧縮した。錠剤は、15.3分の延長した崩壊プロファイルを示した。
【0138】
結論:遅延崩壊プロファイルを有する錠剤は、アルギニン及びステアリン酸スクロースを組み合わせることによって調製することができる。
【0139】
(実施例17)
ビーグル犬における経口投与の後のセマグルチドの薬物動態学的プロファイル
製剤SEMA-D: 1.7mgのセマグルチド、150mgのカプリン酸ナトリウム、及び150mgのL-アルギニン遊離塩基を含有する耐酸性ハードカプセルを、一晩絶食させたビーグル犬(n=3)に経口投与した。無傷のカプセルを経口投与した。製剤を投与した直後、飲み込みやすくするために10mLの水を投与した。参照として、0.1mgのセマグルチド(イヌ1頭当たり0.1mlの容積)をビーグル犬(n=3)に静脈内投与した。経口投与のための0、1、2、4、及び6時間の時点についての各イヌのおよそ2mLの血液サンプルを、頚静脈又は腕頭静脈又は伏在静脈から、K2EDTAを含有する事前にラベル付けされたバキュテイナ遠心分離管に回収した。血液サンプルを5000gで5分間、4℃で、サンプリングの後0.5時間以内に遠心分離することによって、血漿を得た。得られた血漿サンプルを2つのアリコートに分け、事前にラベル付けされたおよそで約500μLのマイクロ遠心分離管に移し、-70±10℃より低い温度で保存した。セマグルチドの含有量を、市販のセマグルチドElisaキットで分析した。
【0140】
結果: 3.1%の完全経口生物学的利用能が達成された。
【0141】
(実施例18)
ラット回腸に投与した後のセマグルチド製剤の薬物動態学的プロファイル
製剤SEMA-E(50.5mg/mlのケノデオキシコール酸のナトリウム塩及び5.0mg/mlのNa3PO4)を、0.4ml/kgの容積で(最終セマグルチド濃度は2.02mg/ml)、麻酔したラット(n=5)の回腸に投与した。麻酔は、ヒプノルム/ドルミカム混合物で誘発した。盲腸を露出させ、小腸の遠位部分を腹腔の外に引き出した。腸にカテーテルチップを貫通させ、カテーテルを下流で、盲腸から5cmの距離で回腸管腔に挿入した。小腸の引き出された部分を腹腔内に移し、2mlの無菌生理食塩水を腸の上に流し、腹腔を金属創傷クリップで閉じた。投与溶液で満たされた、準備されたシリンジを、挿入されたカテーテルに徐々に装着した。投与は緩やかに行った。血液を、投与後0、30、60、120、及び240分の時点で、尾部の血管から採取した。450μlの血液を、尾端からMicrotainer Microgard EDTAチューブ(Becton Dickinson社、USA)に引いた。血液サンプルを遠心分離し(4分間、10000g、4℃)、およそ200μlの血漿を回収した。血漿サンプルを、セマグルチドの分析まで、-20℃で維持した。血漿中のセマグルチド濃度を、市販のセマグルチドEIAキット(Peninsula Laboratories International社、USA、カタログ番号S-1530.0001)を使用して決定した。
【0142】
結果:製剤SEMA-Eの投与によって、ΔCmaxが787±263ng/ml、ΔAUC(0-t)が134910±47574(ng/ml×分)の、高い血漿中セマグルチド濃度がもたらされた。
【0143】
(実施例19)
L-リジンの存在下でのデスモプレシンのインビトロでの酵素分解
水中のデスモプレシン(1mg/ml)のストック溶液を調製した。100mlの疑似腸液に1gのパンクレアチンを含む、USPに従った、パンクレアチン含有疑似腸液(SIF-P)、pH7を調製した。デスモプレシンストック溶液を使用して、リジン塩、すなわち、L-リジン塩基(1)及びD-リジン塩基(2)を溶解し、これらは各々、水中に、1ml当たり100mgのリジン及び1mg/mlのデスモプレシンをそれぞれ含有していた。実際の分解実験では、0.5mlの異なるデスモプレシンを含有するストック溶液を、1時間にわたり、37℃及び300rpmで、0.5mlのSIF-P(及びパンクレアチンを省いた1つのコントロール)とインキュベートした。インキュベーション時間の後、酵素反応を、50%のアセトニトリル中で1.0mlの3.125%HClを添加することによって停止させた。サンプルを、HPLCを介して分析した。パンクレアチンを省いたサンプルのデスモプレシン濃度を100%の値として使用し、他のサンプルで測定されたデスモプレシン濃度を、100%の値に基づく、無傷のデスモプレシンに対するパーセンテージとして計算した。結果を以下のTable(表)にまとめる。
【0144】
【0145】
結論:結果は、リジンがペプチドデスモプレシンを酵素分解から部分的に防御し得ることを示す。
【0146】
(実施例20)
抗体インフリキシマブを有する経口製剤
以下の表に詳述するように、抗体インフリキシマブを有する経口製剤を調製し、最終pHを測定した。L-アルギニンは、L-チロシンの溶解度を改善する。
【0147】
【0148】
(実施例21)
ヒトの鼻細胞を経るセマグルチドの透過
全ての透過研究は、培養の3週間後にRPMI 2650モデルで行った。更に、機器全体を37℃まで事前に温めた。全てのステップは37℃で行った。透過の前に、World Precision Instruments社(WPI、Sarasota、Florida、US)のEndohm(登録商標)チャンバと組み合わせたEVOM(登録商標)を使用して、TEER値を測定した。
【0149】
その後、RPMIモデルの培地を、側底側(1500μL)及び頂端側(500μL)からKrebs-Ringer緩衝液(KRB)で置き換えて、培地の化合物を除去し、組織を実験条件に適合させた。RPMIモデルを、60分間、KRBにおいてインキュベートした。その間に、賦形剤及び活性薬学的成分を含有するサンプル溶液を調製した。インキュベーション時間の後、TEER値を再び決定した。
【0150】
透過の前に、KRBをRPMIモデルの両側から除去し、1200μLのKRBをアクセプター容積として添加した。次いで、200μLの製剤(それぞれ0.5mg/mlのセマグルチドを含有する;KRBのみにおける参照製剤、5%のアルギニンHClを含有するKRB中のサンプル製剤)を、各RPMIモデルの頂端側表面に塗布した。このステップで、透過時間が開始された。2時間曝露した後、アクセプターの全体を除去し、エッペンドルフチューブに移し、1200μLの事前に温めたKRBで置き換えた。実験開始の4時間後、全量のアクセプターを再び回収した。透過の間、細胞培養プレートを、200U/分で、37℃で、水平に振とうした。結果を
図5に示す。
【0151】
結論:アルギニンは、ヒトの鼻細胞を経るセマグルチドの透過を改善する。
【0152】
(実施例22)
アルギニンHClのCellTiter 96(登録商標)AQueous One Solution Cell増殖細胞傷害性アッセイ(MTS)
Promega社(Mannheim、Germany)のCellTiter 96(登録商標)AQueous One Solution Cell増殖アッセイは、細胞傷害性アッセイにおいて生存細胞の数を決定するための、比色分析方法である。MTSのテトラゾリウム化合物は、着色したホルマザン生成物において、生存細胞によって生体内還元される。ホルマザンの量は、生存細胞の数に直接的に比例し、490nmの吸光度によって測定することができる。このアッセイを行って、RPMI 2650細胞に対する2.5%及び5.0%(m/V)の濃度のアルギニンHClの細胞傷害性効果を決定した。
【0153】
RPMI 2650細胞を、96ウェル組織培養試験プレートに、ウェル当たり細胞60000個の密度で、24時間にわたり播種した。アルギニンHClをKRB中に溶解した。培地を細胞から除去し、ウェル当たり100μLの賦形剤溶液で置き換えた。細胞を賦形剤溶液と、0分間、15分間、30分間、60分間、及び120分間インキュベートした。更に、細胞を、KRB、1.0%Triton-X溶液(V/V)と、同一のインキュベーション時間にわたり、それぞれネガティブコントロール及びポジティブコントロールとしてインキュベートした。バシトラシン(BAC)を参照として使用した。
【0154】
CellTiter 96(登録商標)AQueous One Solution Cell増殖アッセイを、製造者のプロトコルに従って行った。したがって、CellTiter 96(登録商標)AQueous One Solution試薬は、完全に解凍された。インキュベーション時間の後、20μLのCellTiter 96(登録商標)AQueous One Solution試薬を、100μLの賦形剤溶液を含有する96ウェルアッセイプレートの各ウェルにピペットで添加した。プレートを、37℃で3時間、加湿された5%CO2の雰囲気中でインキュベートした。
【0155】
インキュベーション時間の後、サンプルをすぐに分析した。吸光度を490nmで記録し、マイクロプレートリーダーInfinite(登録商標)M Plex(Tecan社、Switzerland)を使用して測定した。結果を
図6に示す。
【0156】
結論:この細胞アッセイにおいて、細胞の生存能力のほんのわずかな低下が、アルギニンHClの存在下で観察され、バシトラシン(BAC)を有する参照と比較してかなり低い細胞傷害性が見られた。したがって、アルギニンHClは、5%等の高濃度であっても、鼻への適用のための安全な賦形剤とみなすことができる。
【0157】
(実施例23)
アルギニン塩酸塩の存在下での経上皮電気抵抗(TEER)の測定
nanoAnalytics社(Munster、Germany)のcellZscope(登録商標)を、タイトジャンクション機能性の代替パラメータとしてのTEERの連続的な評価に使用した。MDCK細胞を、1.12cm2、1.0μmの透明なフィルターインサート(ThinCerts(商標)、Greiner Bio-One社、Frickenhausen、Germany)上で、ウェル当たり細胞10万個の播種密度で成長させた。培地を、培養3日目、4日目、及び5日目に交換した。同容積のKRB、pH7.4(頂端側で500μL、側底側で1500μL)での成長培地の置き換え及び60分間の細胞のインキュベーションで開始して細胞がおよそ3500Ω・cm2の抵抗に達した日である5日目に、TEER測定を行った。このプレインキュベーションの後、250μLのKRBをインサートから除去し、同容積の二重濃縮したサンプル溶液(KRB中のアルギニンHCl)をインサート内の250μLのKRBに添加して、所望の濃度にした。その後、インピーダンス測定を、180分間、1Hzから100kHzの周波数範囲で、37℃及び5%CO2のインキュベーター内で行った。
【0158】
その後、細胞を新鮮なKRBで慎重に洗浄し、培地においてインキュベートし、そして、TEERを、実験を開始した後30分間の時間間隔で最大24時間までモニタリングして、TEERの回復を評価した。結果(
図7に示す)は、ベースライン値によって補正した、開始値に対するパーセンテージの変化として定義される、相対的なTEERの低減として示されている。
【0159】
結論:TEERの大きな低下がアルギニンの存在下で観察され、これは、タイトジャンクションの開口に関連している可能性がある。タイトジャンクションの開口が、ペプチド及びタンパク質等の親水性薬剤の頂端側から側底側への輸送を増大させることが実証されている。更に、タイトジャンクションの開口は、2.5%及び5%の両方で完全に可逆であり、このことから、この効果は細胞傷害性に基づくものではなく、試験された濃度は安全に使用されるという結論がもたらされた。
【0160】
(実施例24)
ヒトの鼻細胞を経るアダリムマブの透過
全ての透過研究は、培養の3週間後にRPMI 2650モデルで行った。更に、機器全体を37℃まで事前に温めた。全てのステップは37℃で行った。透過の前に、World Precision Instruments社(WPI、Sarasota、Florida、US)のEndohm(登録商標)チャンバと組み合わせたEVOM(登録商標)を使用して、TEER値を測定した。
【0161】
その後、RPMIモデルの培地を、側底側(1500μL)及び頂端側(500μL)からKrebs-Ringer緩衝液(KRB)で置き換えて、培地の化合物を除去し、組織を実験条件に適合させた。RPMIモデルを、60分間、KRBにおいてインキュベートした。その間に、賦形剤及び活性薬学的成分を含有するサンプル溶液を調製した。インキュベーション時間の後、TEER値を再び決定した。
【0162】
透過の前に、KRBをRPMIモデルの両側から除去し、1200μLのKRBをアクセプター容積として添加した。次いで、200μLの製剤(それぞれ2.0mg/mlのアダリムマブを含有する;KRBのみにおける参照製剤、5%のアルギニンHClを含有するKRB中のサンプル製剤)を、各RPMIモデルの頂端側表面に塗布した。このステップで、透過時間が開始された。2時間曝露した後、アクセプターの全体を除去し、エッペンドルフチューブに移し、1200μLの事前に温めたKRBで置き換えた。実験開始の4時間後、全量のアクセプターを再び回収した。透過の間、細胞培養プレートを、200U/分で、37℃で、水平に振とうした。
【0163】
こうして得られた結果を、以下の表にまとめる。
【0164】
【0165】
結論:5%アルギニンHClの存在は、ヒトの鼻細胞を経る抗体アダリムマブの頂端側から側底側への透過の平均を増大させた。
透過促進剤が、カプリル酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸スクロース、ラウリン酸スクロース、ステアリン酸ナトリウム、EDTA、ポリアクリル酸、及びN-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸ナトリウムから選択される、請求項7に記載の薬学的組成物。