(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054418
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】電気穿孔を使用した、脂肪組織の低侵襲のIN VIVOトランスフェクションのための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
A61N 1/30 20060101AFI20240409BHJP
【FI】
A61N1/30
【審査請求】有
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024029929
(22)【出願日】2024-02-29
(62)【分割の表示】P 2022151171の分割
【原出願日】2017-09-22
(31)【優先権主張番号】62/398,932
(32)【優先日】2016-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/480,180
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】509320254
【氏名又は名称】イノビオ ファーマシューティカルズ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100196977
【弁理士】
【氏名又は名称】上原 路子
(72)【発明者】
【氏名】ポール フィッシャー
(72)【発明者】
【氏名】ケイト ブロデリック
(72)【発明者】
【氏名】ジェイ マッコイ
(57)【要約】
【課題】電気穿孔を使用した脂肪組織の低侵襲in vivoトランスフェクションのための方法及び装置の提供。
【解決手段】組織の脂肪層の脂肪細胞を電気穿孔するための方法及び装置であって、前記装置は、フレームと、第1の接触面を有する前記フレームに連結する第1電極と、第2の接触面を有する前記フレームに連結する第2電極と、を含み、前記第1の接触面及び前記第2の接触面がその間に処理ゾーンを画定する。前記方法は、前記第1及び前記第2の電極の間に前記組織のひだを配置することを含み、その結果、前記2つの電極の間の前記処理ゾーンは、前記組織の脂肪層を含むが、骨格筋を含まない。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織の脂肪層の脂肪細胞を電気穿孔する方法であって、前記方法が、
第1の接触面を有する第1の電極を提供することであって、前記第1の接触面が第1の周囲長を有する、前記第1の電極を提供することと;
第2の接触面を有する第2の電極を提供することであって、前記第2の接触面が第2の周囲長を有する、前記第2の電極を提供することと;
組織のひだを得ることと;
前記第1の電極と前記第2の電極の間に前記組織のひだを配置することであって、その結果、前記第1の電極の前記第1の接触面が、前記第2の電極の前記第2の接触面の方向に向いて、その間に処理ゾーンを生成し、前記処理ゾーン内に配置される前記組織が前記組織の脂肪層を含む、前記ひだを配置することと;
電気信号を前記第1の電極及び前記第2の電極に適用することと;を含む、前記方法。
【請求項2】
前記処理ゾーン内に配置される前記組織が骨格筋を含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記組織のひだを得ることが、皮膚層、脂肪層及び平滑筋層を含む、組織のひだを得ることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記電気信号を前記第1の電極及び前記第2の電極に適用する前に、前記組織のひだの前記脂肪層内に所定量の薬剤を注入することを更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記電気信号を前記第1の電極及び前記第2の電極に適用することが、電気パルスを適用することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記電気パルスを適用することが、5ボルトと1000ボルトの間の電気パルスを適用することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記電気パルスを適用することが、約100マイクロ秒と約100ミリ秒の間に電気パルスを適用することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記電気パルスを適用することが、約1パルスと約10パルスの間で適用することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の接触面及び前記第2の接触面のうちの少なくとも1つが、そこから延在する複数の凸部を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記各凸部が実質的にピラミッド形状である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
組織のひだと共に使用するための電気穿孔装置であって、前記組織のひだが皮膚層、脂肪層及び平滑筋層を含み、前記電気穿孔装置が、
フレームと;
前記フレームに連結する第1の電極であって、前記第1の電極が第1の周囲長を画定する第1の接触面を有する、前記第1の電極と;
前記第1の電極の反対側の前記フレームに連結する第2の電極であって、前記第2の電極が第2の周囲長を画定する第2の接触面を有し、ここで前記第1の接触面と前記第2の接触面がその間に処理ゾーンを画定する、前記第2の電極と;を含み、
ここで前記第1及び前記第2の電極が、前記処理ゾーン内に配置される前記組織が皮膚層、脂肪層及び表面筋層を含むように構成される、前記電気穿孔装置。
【請求項12】
前記処理ゾーン内に配置される前記組織が骨格筋を含まない、請求項11に記載の電気穿孔装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年9月23日出願の米国仮特許出願第62/398,932号、表題「Method and Device for Minimally Invasive In Vivo Transfection of Adipose Tissue Using Electroporation」、及び2017年3月31日出願の米国仮特許出願第62/480,180号、表題「Method and Device for Minimally Invasive In Vivo Transfection of Adipose Tissue Using Electroporation」に対する優先権を主張し、それぞれはその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、電気穿孔を使用して、脂肪組織の低侵襲in vivoトランスフェクションのための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
1970年代、細胞への永久損傷を起こさず、細胞に孔を作成するために、電界を使用できることが判明した。この発見によって、大きな分子、イオン及び水が細胞壁を通過して細胞の細胞質内に導入されることが可能になった。場合によっては、電気穿孔は、化学薬品及び他の化合物を腫瘍内に導入するために、局所治療(例えば頭頸部癌)で使用できる。これらの作業中、患者は全身麻酔下であっても、またはそうでなくてもよいので、痛み及び不随意筋の運動をできるだけ抑えなければならない。
【0004】
骨格筋は、DNAの電気穿孔による(EP)in vivo送達に関して特性が十分に解明されている標的である。筋細胞は、長期間、タンパク質を生成かつ分泌でき、筋肉内へのEPを用いたDNAワクチン接種が免疫応答を起こすことができることは繰り返し証明されてきた。皮膚はEPの別の一般的な標的であり、それはアクセスが容易で、多種多様な免疫細胞を含有する。皮膚の自然の免疫機能及びその高速の細胞代謝回転は通常、EPを用いたDNA送達へ急速かつ強い体液性応答を引き起こす。しかし、筋肉EP DNA送達の適用は、脂肪の異なる厚みが筋組織内への異なる針の深達度をもたらすので、皮下脂肪の様々な厚みによって複雑化し、「フリーサイズ」アプローチを防ぐ。
【0005】
これまで脂肪組織は、脂質滴の形でエネルギーを格納するために主として使用される不活性組織として見なされてきた。したがって、EPを用いたDNA操作は、組織のその特定の層を標的としてこなかった。しかし、最近の研究は、皮下脂肪が多くの動的な役割を実際につとめていることを示している。脂肪組織は、多くの幹細胞及び免疫細胞を含有し、多数のホルモンを分泌することによって内分泌器官として機能し、多くの局所シグナルを分泌して、毛細血管の複雑なネットワークを含有する。脂肪組織のin vivoトランスフェクションを達成する任意の試みは、脂肪組織との直接的な接触を可能にするために、管理者が患者の皮膚の試料を切り離して、物理的に取り出すことを必要とする、外科的技術に限られていた。このような処理は、極めて侵襲性であり、医療装置に適していない。
【発明の概要】
【0006】
組織の脂肪層の脂肪細胞を電気穿孔する方法は、第1の周囲長を有する第1の接触面を有する第1の電極を提供することと、第2の周囲長を有する第2の接触面を有する第2の電極を提供することと、組織のひだを得ることと、第1の電極と第2の電極の間に組織のひだを配置することと、を含み、その結果、第1の電極の第1の接触面は、第2の電極の第2の接触面の方向に向いて、その間に処理ゾーンを生成する。処理ゾーン内に配置される組織は、組織の脂肪層を含む。前記方法は、電気信号を第1の電極及び第2の電極に適用することを含む。
【0007】
組織のひだ(皮膚層、脂肪層及び平滑筋層を含む)と共に使用する電気穿孔装置は、フレーム、フレームに連結する第1の電極、及び第1の電極の反対側のフレームに連結する第2の電極を含む。第1の電極は第1の周囲長を画定する第1の接触面を有し、第2の電極は第2の周囲長を画定する第2の接触面を有する。第1の接触面及び第2の接触面は、その間に処理ゾーンを画定する。第1及び第2の電極は、処理ゾーン内に配置される組織が皮膚層、脂肪層及び表面筋層を含むように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】
図2の線3-3に沿って取った断面図である。
【
図6】組織のひだに適用した
図5の平板電極を示す電界分布である。
【
図7】組織のひだに適用した
図4の平板電極を示す電界分布である。
【
図8】組織のひだに適用した2つの平板電極の構成の斜視図である。
【
図9】
図8に示す構成の電界シミュレーションである。
【
図11】組織のひだに適用した針を含有する3つの電極の構成の斜視図である。
【
図14】組織のひだに適用した3つの電極板の構成の斜視図である。
【
図17】モルモットの脂肪体のデータである。プラスミド:GFP(0.5mg/mL)、250μl。電気のパラメーター:200V、3パルス、持続期間100ミリ秒、遅延200ミリ秒。緑のエリアは、GFPを発現する細胞を示す。組織切片の厚みは100マイクロメートルである。
【
図19】モルモットの脂肪組織のデータである。個々の脂肪細胞は、脂質滴が存在する非発現内部を囲む、細胞の境界周辺でGFPを発現している。多数の個別細胞はトランスフェクトされる。プラスミド:GFP(0.5mg/mL)、250μl。電気のパラメーター:200V、3パルス、持続期間100ミリ秒、遅延200ミリ秒。
【
図20】ウサギの脂肪組織のデータである。緑=GFPの発現。赤=脂質(オイルレッドO染色)。青=細胞核(DAPI染色)。プラスミド:GFP(0.5mg/mL)、250μl。電気のパラメーター:200V、3パルス、持続期間100ミリ秒、遅延200ミリ秒。
【
図21】モルモットの脂肪組織の共焦点像である。多数の細胞核は、トランスフェクトした領域を伴わない。GFPは細胞の縁の周囲すべてで発現する。プラスミド:GFP(0.5mg/mL)、250μl。電気のパラメーター:200V、3パルス、持続期間100ミリ秒、遅延200ミリ秒。
【
図22】トランスフェクトした領域は、約50μlと200μlの間の注入量で顕著には変化しない。プラスミド:赤色蛍光タンパク質(RFP)(0.5mg/mL)、250μl。電気のパラメーター:200V、3パルス、持続期間100ミリ秒、遅延200ミリ秒。
【
図23】複数の注入に続いて、1回の電気穿孔イベントが行われた。各注入は明らかに視認できる。数字は注入の順番を示す。プラスミド:GFP(0.5mg/mL)、250μl。電気のパラメーター:200V、3パルス、持続期間100ミリ秒、遅延200ミリ秒。
【
図24】様々なパルス強度及び数は、明るいGFPシグナル(よりトランスフェクトした細胞)を生成できる。プラスミド:GFP(0.5mg/mL)、250μl。電気のパラメーター:200V、3パルス、持続期間100ミリ秒、遅延200ミリ秒。
【
図25】EPを使用した脂肪内へのdMAb送達である。DNA EPの2時間前に、ヒアルロニダーゼ前処理した。プラスミド=pGX9249。矢印は、それぞれ第1及び第2回目の処理を示す。X軸は、最後の処理からの日数である。処理1:全DNA1mg、200V、3パルス、持続期間100ミリ秒。処理2:全DNA2mg、75V、8パルス、持続期間100ミリ秒。
【
図26】
図25と同じ試験であり、個々のモルモットdMAb濃度を示す。赤で強調された動物は、1秒の遅延パルスの代わりに、遅延9100ミリ秒の急速なパルスを受けた。
【
図27】インシュリン針対ジェット式注入器-脂肪組織中の流体分布である。色素=メチレンブルー。EPなし。
【
図28】酵素の脂肪組織の組織分解(酵素による前処理)は、流体分布を改善する。色素=メチレンブルー。
【
図29】EP最適化である。パルス数に増加による抵抗の動向に注意する。筋れん縮による100Vの処理の可変性にも注意する。パルス持続期間=100ミリ秒。パルス遅延=100ミリ秒。
【
図30】EP最適化である。電流の動向に注意する。筋れん縮による100Vの処理の可変性にも注意する。パルス持続期間=100ミリ秒。パルス遅延=100ミリ秒。
【
図31】免疫原性比較である。脂肪及び側腹皮膚内へのDNAの電気穿孔。パラメーター:電圧及び処理電圧。
【
図32】組織-電極アセンブリの3Dコンピュータモデルである。2つの平板電極の間に折り畳まれた組織を備える、非侵襲性EP。
【
図33】別の組織-電極アセンブリの3Dコンピュータモデルである。組織内に直接挿入した並列の針電極を使用する、侵襲性EP。
【
図34】200Vの励起電圧を使用した針(上)及び平板(下)電極構成における、異なる組織の種類内のシミュレーションした電界分布である。棒グラフ(左から右に:脂肪、筋肉、皮膚)は、50V/cmより高い電界について、各組織の種類内の電界分布を定量化する。皮膚(S)、脂肪(A)及び筋肉(M)の概略図及び標示について、右の図は定量分析を使用する電界分布を示す。各スケールバー部分(白または黒)は長さ10mmであり、総スケールバー長さは20mmである。
【
図35】モルモットの皮下脂肪体内へ色素を注入する。A.1回の100μLの注入の後の無傷の脂肪体。B.組織内の流体分布を示す、矢状面に沿って区分される1回部位注入。C.5回の50μLの注入の後の無傷の脂肪体。矢印は注入部位を示す。
【
図36】脂肪EP手順である。A.電極の使用前の剃毛した肩甲骨間部。B.2つの非侵襲性平板電極の間に掴持された処理部位。C.掴持された処理部位の背面図。
【
図37】上:50V~200Vの範囲の非侵襲性脂肪EPの後、無傷のモルモット脂肪体全体にわたるGFPレポーター構成体発現(緑)分布である。下:EP(左)なし、または200Vの脂肪EP(右)による、プラスミドDNA注入を受けるモルモットにおける、処理部位の蛍光シグナルの比較である。マーカーは、コラーゲン中隔(*)、GFPを発現する脂肪細胞(矢頭)及び高自動蛍光領域(矢印)を示す。スケールバーは、10mm(上)または100μm(下)である。
【
図38】200Vの脂肪EPの後、無傷のモルモット脂肪体(左)は、薄片化した面を示す点線によって、更に組織学的解析のために使用した。右)左の切片は、組織切片内の点線に沿って、厚さ100μmで切断した。GFP(緑)は、染色されていない組織の明視野色画像が覆い重なっている。スケールバーは、10mm(左)または1mm(右)である。
【
図39】1つの焦点面(中間のカラム)及び2つの異なる3Dの透視図(右の2つのカラム)のGFP発現(緑)及び細胞核(青)を示す、共焦点画像である。
【
図40】200Vの脂肪EP後の遺伝子発現動態及び組織構造の変化である。GFP発現(上)のスケールバーは10mmであり、H&Eで染色した切片(下)のスケールバーは200μmである。
【
図41】脂肪EP及びインフルエンザ抗原をコードするプラスミドDNAによるID-EP接種へのモルモット抗体反応である。モルモットは、25μgのプラスミドを0週目、3週目、6週目及び21週目に接種を受けた。モルモットの異なる脂肪EP処理法の体液性免疫原性動態と、比較のためのID-EP(皮膚)である(n=4)。データは、幾何平均力価±標準誤差である。脂肪EP処理パラメーターは、HV=高電圧(200V)、LV=低電圧(50V)と略記する。
図41のグラフにおいて、DNA注入部位の数は数(1または5)で示す。
【
図42】脂肪EP及びインフルエンザ抗原をコードするプラスミドDNAによるID-EP接種へのモルモット抗体反応である。モルモットは、25μgのプラスミドを0週目、3週目、6週目及び21週目に接種を受けた。EP電圧によってグループ化した同じ免疫原性データである(脂肪HV及び脂肪LVについてはn=8、皮膚についてはn=4)。データは、幾何平均力価±標準誤差である。脂肪EP処理パラメーターは、HV=高電圧(200V)、LV=低電圧(50V)と略記する。
【
図43】脂肪EP及びインフルエンザ抗原をコードするプラスミドDNAによるID-EP接種へのモルモットのT細胞免疫応答である。モルモットは、25μgのプラスミドを0週目、3週目、6週目及び21週目に接種され、ELISPOTは最後の接種の18日後に実施した。結果は、ペプチドプール1を示す。処理群はEP部位(皮膚または脂肪)によって分けられ、脂肪EP処理は、電圧(HV=200V、LV=50V)及びプラスミド注入部位の数(1または5)で更に分けられる。データは、幾何平均±標準誤差である(n=4)。
【
図44】電気穿孔装置に連結した平板電極の代替的実施形態の斜視図である。
【
図45】試験対象で使用している
図44の電気穿孔装置の写真である。
【
図46】電気データ、特に電流データである。4匹のモルモットへの絶縁及び非絶縁両方のカリパスの使用から平均した。
【
図47】電気データ、特に電圧データである。4匹のモルモットへの絶縁及び非絶縁両方のカリパスの使用から平均した。
【
図48】電気データ、特に抵抗データである。4匹のモルモットへの絶縁及び非絶縁両方のカリパスの使用から平均した。
【発明を実施するための形態】
【0009】
発明者は、低侵襲の方法で組織の脂肪層を標的として、in vivoトランスフェクションする電気穿孔装置及び方法を開発した。更に具体的には、前記処理は、注入メカニズムと関連して複数の平板電極を利用して、前測定し得る薬品の容量に組織のある領域を曝露し、そうして対応する脂肪細胞中に電気穿孔を起こす脂肪層を標的とするように構成される、組織の同じ領域内に電界を作成する。
【0010】
I)定義
特記しない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。矛盾する場合、定義を含む本明細書が優先する。本明細書に記載のものに類似したまたはそれに相当する方法及び材料を、本発明の実施または試験で使用できるが、以下で説明する方法及び材料が好ましい。本明細書に記載されている出版物、特許出願、特許及び他の参考文献はすべて、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に開示する材料、方法及び実施例は例示にすぎず、制限することを意図するものではない。
【0011】
本開示で使用する場合、「comprise(s)」「include(s)」「having」「has」「can」「contains」及びこれらの変形は、追加の行為または構造の可能性を排除しない、オープンエンドの移行句、用語または語であることを意図する。単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、文脈と明らかに矛盾する場合を除いて、複数の対象を含む。本開示は、明確に記載されていてもいなくても、本明細書に呈示する実施形態または要素を「含む」「からなる」及び「から本質的になる」他の実施形態も想到する。
【0012】
1つ以上の目的とする値に適用される「約」という用語は、記載された参照値に類似する値を指す。特定の態様で、「約」という用語は、特に明記しない限りまたは文脈から明白でない限り、記載された参照値のいずれかの方向(超または未満)において、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、またはそれ未満内に入る値の範囲を指す(このような数値が可能性のある値の100%を超える場合を除く)。
【0013】
「薬剤」はポリペプチド、ポリヌクレオチド、小分子または任意のそれらの組み合わせも意味できる。PCT/US2014/070188号(本明細書に参照により組み込まれる)で詳述されるように、薬剤は、抗体、その断片、その変異体またはこれらの組み合わせをコードする組換え核酸配列でもよい。「薬剤」は、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、小分子またはこれらの任意の組み合わせを含む組成物でもよい。PCT国際特許出願/米国特許第2014/070188号(本明細書に参照により組み込まれる)で詳述されるように、組成物は、抗体、その断片、その変異体またはこれらの組み合わせをコードする組換え核酸配列を含んでもよい。薬剤は、例えば水または緩衝液中に調製されることができる。緩衝液は、例えば生理食塩水-クエン酸ナトリウム(SSC)、またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)でもよい。緩衝液のイオン含量は伝導率を上昇させることができ、標的組織中の電流の流れを増大させる。調製したポリヌクレオチドの濃度は、1μg/mlと20mg/mlの間であり得る。調製したポリヌクレオチドの濃度は、例えば1μg/ml、10μg/ml、25μg/ml、50μg/ml、100μg/ml、250μg/ml、500μg/ml、750μg/ml、1mg/ml、10mg/ml、15mg/mlまたは20mg/mlでもよい。
【0014】
「抗体」は、Fab、F(ab’)2、Fd及び単鎖抗体及びその誘導体を含む、クラスIgG、IgM、IgA、IgDもしくはIgEの抗体もしくは断片、その断片または誘導体を意味できる。抗体は、所望のエピトープまたはそこから得られる配列に十分な結合特異性を示す、哺乳動物の血清試料から分離される抗体、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、親和性精製抗体またはこれらの混合物でもよい。抗体は、本明細書に記載される合成抗体でもよい。
【0015】
「抗体断片」または本明細書で同じ意味で用いられる「抗体の断片」とは、抗原結合部位または可変領域を含む無傷な抗体の一部を意味する。前記一部は、無傷の抗体のFe領域の定常重鎖ドメイン(すなわち、抗体のイソタイプによって、CH2、CH3またはCH4)を含まない。抗体断片の例は、Fab断片、Fab’断片、Fab’-SH断片、F(ab’)2断片、Fd断片、Fv断片、二重特異性抗体、単鎖Fv(scFv)分子、1つの軽鎖可変ドメインだけを含有する単鎖ポリペプチド、軽鎖可変ドメインの3つのCDRを含有する単鎖ポリペプチド、1つの重鎖可変領域だけを含有する単鎖ポリペプチド及び重鎖可変領域の3つのCDRを含有する単鎖ポリペプチドを含むが、これらに限定されない。
【0016】
本明細書で使用する場合、「断片」とは、哺乳動物の免疫応答を誘発できるポリペプチドをコードする、核酸配列またはその一部を意味する。断片は、以下に述べるタンパク質断片をコードする種々のヌクレオチド配列の少なくとも1つから選択される、DNA断片であり得る。断片は、哺乳動物の免疫応答を誘発できる、ポリペプチド配列またはその一部分も意味することができる。
【0017】
本明細書で使用する場合、「ペプチド」「タンパク質」または「ポリペプチド」は、アミノ酸の連結した配列を意味することができ、天然型、合成型、または天然型及び合成型の変異体もしくは組み合わせであり得る。
【0018】
本明細書で使用する場合、「ポリヌクレオチド」または「オリゴヌクレオチド」または「核酸」は、一緒に共有結合される少なくとも2つのヌクレオチドを意味する。ポリヌクレオチドは、一本鎖もしくは二本鎖であり得る、または二本鎖及び一本鎖配列両方の一部を含むことができる。ポリヌクレオチドは、DNA、ゲノム及びcDNAの両方、RNAまたはハイブリッドであり得る。ポリヌクレオチドは、デオキシリボ及びリボヌクレオチドの組み合わせ、ならびにウラシル、アデニン、チミン、シトシン、グアニン、イノシン、キサンチンヒポキサンチン、イソシトシン、イソグアニン及び合成または非天然起源のヌクレオチド及びヌクレオシドを含む塩基の組み合わせを含むことができる。ポリヌクレオチドは、化学合成方法によって、または組換え方法によって得ることができる。
【0019】
本明細書で使用する場合「対象」とは、哺乳動物を意味できる。哺乳動物は、ヒト、チンパンジー、モルモット、ブタ、マカク、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、マウス、ラットまたは他の非ヒト霊長類であり得る。
【0020】
核酸に関して本明細書で使用する場合、「変異型」とは、(i)参照のヌクレオチド配列の一部もしくは断片、(ii)参照のヌクレオチド配列もしくはその一部の補体、(iii)参照の核酸と実質的に同一である核酸またはその補体、または(iv)参照の核酸、その補体もしくはそれに実質的に同一の配列へ厳格な条件下でハイブリダイズする核酸、を意味する。
【0021】
「変異型」は、アミノ酸の挿入、欠失もしくは保存的置換によってアミノ酸配列が異なるが、少なくとも1つの生物活性を保持しない、ペプチドまたはポリペプチドとして更に定義されることができる。「生物活性」の代表例は、特異抗体に結合される、または免疫応答を促進する能力を含む。変異型は、少なくとも1つの生物活性を保持するアミノ酸配列を備える参照のタンパク質と実質的に同一であるアミノ酸配列を備えるタンパク質も意味することができる。アミノ酸の保存的置換(すなわち、アミノ酸を類似の特性(例えば、電荷領域の親水性、程度及び分布)の異なるアミノ酸で置換する)は、軽微な変更を通常含むとして当該技術分野で周知である。これらの軽微な変化は部分的には、当該技術分野において理解されるように、アミノ酸の親水性指数を考慮することによって確認できる(Kyte et al.,J.Mol.Biol.1982,157,105-132)。アミノ酸の親水性指数は、その疎水性及び電荷を考慮することに基づく。同程度の親水性指数のアミノ酸を置換して、そのうえタンパク質機能を保持できることは当業者には周知である。一態様で、親水性指数±2を有するアミノ酸が置換される。アミノ酸の親水性は、生物学的機能を保持しているタンパク質をもたらす置換を明らかにするためにも使用できる。ペプチドとの関係においてアミノ酸の親水性を考慮することは、そのペプチドで最大の局所平均親水性の算出、抗原性及び免疫原性と良好に相関することが報告されている有用な手段を可能にする。類似の親水性値を有するアミノ酸の置換は、当該技術分野において理解されているように、生物活性(例えば、免疫原性)を保持しているペプチドをもたらすことができる。置換は、±2以内の互いの親水性値を有するアミノ酸によって実行されることができる。アミノ酸の疎水性指数及び親水性値の両方は、そのアミノ酸の特定の側鎖の影響を受ける。その観察結果と一致して、生物学的機能と適合するアミノ酸置換は、特に疎水性、親水性、電荷、サイズ及び他の特性によって明かされるように、アミノ酸の相対的な類似性、特にそれらのアミノ酸の側鎖に依存すると理解されている。
【0022】
変異型は、完全な遺伝子配列またはその断片の完全長にわたって実質的に同一である、核酸配列でもよい。核酸配列は、遺伝子配列またはその断片の完全長にわたって80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一でもよい。変異型は、アミノ酸配列またはその断片の完全長にわたって実質的に同一であるアミノ酸配列でもよい。前記アミノ酸配列は、アミノ酸配列またはその断片の完全長にわたって80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一でもよい。
【0023】
本明細書で使用する場合、「ベクター」とは、複製起点を含有する核酸配列を意味する。ベクターは、ウィルスベクター、バクテリオファージ、細菌人工染色体または酵母人工染色体であり得る。ベクターは、DNAまたはRNAベクターであり得る。ベクターは、自己複製型染色体外ベクターであり得て、好ましくはDNAプラスミドである。
【0024】
本明細書の数値範囲の記載について、同程度の精度を備えるその間にある各数が明確に想到されている。例えば、6~9の範囲において、数7及び8は、6及び9に加えて想到され、範囲6.0~7.0において、数6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9及び7.0は明確に想到される。
【0025】
II)電気穿孔装置
本発明は、複数の非侵襲性の平板電極を有する適用装置を含む、電気穿孔装置に関する。電気穿孔装置は、電気穿孔信号を平板電極に提供する電力供給も含むことができ、そこで電極が生体試料と電気接触するとき、電界が標的脂肪層に作成されるように、電極に供給される電気穿孔信号は主に組織の脂肪層により吸収される。この電界は、対応する脂肪細胞の細胞壁内に電気穿孔を生じさせ、それによって細胞膜の浸透性を増加させて、薬剤が、例えば細胞内に導入されるのを可能にする。
図1に示すように、本発明の電気穿孔装置10は、電気穿孔(EP)信号発生器18を含有するハウジング14と、ハウジング14に着脱可能に連結したアプリケーター22と、電気穿孔前に試料の脂肪層内に薬剤(例えば脂質)の所定の量を注入する注入装置26と、を含む。
【0026】
図1に示すように、本発明の携帯型アプリケーター22は、フレーム30と、フレーム30に連結する第1の電極34であって、前記第1の電極34が第1の接触面38を有する、第1の電極と、フレーム30に連結する第2の電極42であって、前記第2の電極42が第2の接触面46を有する、第2の電極42と、を含み、その結果、第1の接触面38と第2の接触面46は互いに向かい合い、実質的に整列配置される。使用中、アプリケーター22は、第1の接触面38と第2の接触面46の間の距離を変化させるフレーム30をユーザーが操作できるように構成される。この用途の目的に関して、第1の接触面38と第2の接触面46の間の距離は、本明細書で「電極距離50」と呼ばれる。
【0027】
アプリケーター22のフレーム30は、基部54と、それぞれが基部54から延在して、対応する遠位端62を作り出す複数の弾性アーム58と、を含む。組み立ての際、各遠位端62は、それに連結される第1及び第2の電極34、42の対応する1つを有するように構成される。例示されている実施形態で、遠位端62及びその対応する電極34、42が移動するのを可能にするアーム58を、ユーザーが弾性的に変形させることができるように、アーム58は構成される。対応する電極34、42は、例えば、それぞれ独立して移動できる、または互いに対して縦一列に並んで移動できる。例示されている実施形態で、フレーム30は2つのアーム58を含む(
図1)。しかし、代替的実施形態で、フレーム30は、所望の標的組織の処理のために必要な電極数を支持するために、より多いまたはより少ないアーム58を含むことができる。
【0028】
図2に示されるように、アプリケーター22’の代替的実施形態は、そこから延在する3つのアーム58a’、58b’、58c’を有するフレーム30’を含む。更に具体的には、フレーム30’は、第1及び第2の電極34、42を支持するように構成される、2つの対向するアーム58a’、58b’を含み、その結果、第1の接触面38と第2の接触面46は向かい合い、実質的に互いに整列配置される。フレーム30’は、第3の電極66’を支持するように構成される第3のアーム58c’も含み、その結果、第3の電極66’の第3の接触面68’は、第1及び第2の接触面38’、46’と垂直に配置される。代替のアプリケーター22’で、電極距離50’は、第1の接触面38’と第2の接触面46’の間の距離として定義される。(すなわち、互いに向かっている2つの接触面の間の距離)。
【0029】
アプリケーター22は、処理に備えて及びその間、電極距離50を固定するまたは操作する調整機構56も含む。調整機構56は、フレーム30の両方のアーム58の間に延在して、ネジ止めにより係合しているロッド70を含み、その結果、第1の方向へのアーム58に対するロッド70の回転が電極距離50を縮ませる。それに対し、第1の方向の反対の第2の方向へのアーム58に関するロッド70の回転は、電極距離50を増加させる。例示されている実施形態で、ロッド70は、ユーザーによってロッド70が回転しない限り、電極距離50が固定したままであるように構成される(すなわち、ネジ線条はバックドライブできない)。代替的実施形態で、調整機構56は、電極距離50がユーザーによって調節可能である、係合離脱した配置と、電極距離50が固定される、係合した配置の間に調節可能なラッチ(図示せず)を含むことができる。更に他の実施形態にて、調整機構56は、当該技術分野において周知であり、本明細書に記載されていない任意の形状の調整機構も含むことができる。
【0030】
アプリケーター22は、信号発生器18と通信可能であり、装置10の操作中、電極距離50を決定するように構成される、センサー74も含むことができる。使用中、センサー74は、現在の電極距離50を示す信号発生器18に信号を送る。いくつかの実施形態で、センサー74は、アプリケーター22のフレーム30に連結した抵抗センサー、光学センサーなどを含むことができる。例示されている実施形態で、センサー74は、信号発生器18に信号を提供して、発生器18が電極距離50を記録して、処理の間、異なる電極距離50を自動的に補正することを可能にする。代替的実施形態にて、センサー74は、ユーザーが手動で電極距離50を補正するのを可能にする、表示(図示せず)上の距離を示すことができる。更に他の実施形態にて、アプリケーター22は、ユーザーが信号発生器18内に所定の電極距離50を入力できるように構成されることができ、それによってアプリケーター22は電極34、42を自動的に調節して、適切な電極距離50を生じさせる。更に他の実施形態にて、センサーは、電極距離50をダイヤルなどに表示する、実質的に機械的でもよい。
【0031】
図4に示すように、アプリケーター22の第1の平面電極34は、直接、標的組織に接触するように構成される第1の接触面38を有する。第1の平板電極34は、任意の形状を有し得る。前記形状は、例えば矩形でもよい。第1の平板電極34は、接触面38周辺に延在し、その範囲を画定する第1の周囲長78を含む。使用中、第1の平板電極34は、信号発生器18と通信可能であり、処理中、試料組織と結合して、電気導電性を試料組織に形成するように構成される。したがって、平板電極34は、標的組織へ信号発生器18によって生じる電気穿孔信号を適用することができる。平板電極34は、標的組織のパラメーター(例えばインピーダンス、電圧、電流など)を検出して、その情報を診断及びフィードバックのために信号発生器18に中継して送り返すことができる。例示されている実施形態で、第1の平板電極34の第1の接触面38は、実質的に平らである。しかし、代替的実施形態で、第1の接触面38は、輪郭が曲線状でもよい。更に他の実施形態にて、第1の接触面38は、電極34と標的組織の間の接触の表面積の量を最大化させることを目的とする、任意の形状またはサイズを含むことができる。更に他の実施形態にて、アプリケーターは複数の電極34を含むことができ、そのそれぞれは、患者または被験者の身体の特定領域に対応するために、特にサイズ設定かつ成形された第1の接触面38を含む。更に他の実施形態にて、電極の寸法及び形状は、標的組織内の電界の分布を焦束するために使用できる。更に他の実施形態にて、第1の接触面38は、その内部に形成したパターンまたは小突起を含むことができる。更に他の実施形態にて、第1の接触面38は、電極34と標的組織の間の導電性または掴持を改善するために、それに適用したコーティングまたは接着剤を含んでもよい。
【0032】
図5及び
図6は、平板電極34’’の代替的実施形態を示す。平板電極34’’は、上述の平板電極34と実質的に類似し、それと同様に作動する。したがって、2つの電極34’’と34の間の違いについてのみ、本明細書で詳述する。
図5に最も良く示されているように、平板電極34’’の接触面38’’は、基部54’’と、それぞれが基部54’’、凸部深さ64’’に対して実質的に垂直に延在して、遠位端62’’を形成する、複数の凸部58’’と、を含む。使用中、平板電極34’’の凸部58’’は、それを通って貫通することなく、標的組織内に押圧して、突起部58’’が皮膚の表層を破壊かつ変化させるのを可能にして、標的組織内の電界分布を改善して(
図6~
図7を比較)、更に掴持も改善する。更に具体的には、凸部58’’は、所与の入力電圧のための標的組織内で形成される電界の規模を増大させる。例示されている実施形態の凸部58’’がすべて、同程度の突起深さ64’’を作り出す一方で、各凸部58’’は必要に応じて異なってサイズ設定されて、標的組織に所望の導電率及び掴持を作成することができると理解されている。更にまた例示されている実施形態は、約500マイクロメートル、600マイクロメートル、700マイクロメートル、800マイクロメートル、900マイクロメートル、1mm、1.5mm、2mm、2.5mm及び3mmの凸部深さ64’’を含む。
【0033】
例示されている実施形態で、電極34’’の各凸部58’’は実質的にピラミッド形状である。各ピラミッド状の凸部は、約500マイクロメートル×500マイクロメートル、600マイクロメートル×600マイクロメートル、700マイクロメートル×700マイクロメートル、800マイクロメートル×800マイクロメートル、900マイクロメートル×900マイクロメートル、1mm×1mm、1.5mm×1.5mm、2mm×2mm、2.5mm×2.5mm、3mm×3mmのベース幅も有することができる。代替的実施形態で、各ピラミッド状の凸部は、基部寸法内の非正方形でもよい。代替的実施形態で、各凸部58’’は、操作中、組織を貫通せずに標的組織内に押圧して、変形させるように構成される、他の任意の形状を形成できる。例えば、凸部58’’は、円筒状、矩形、円錐形、切頭円錐形、切頭ピラミッド形の形状でもよい。更に、各凸部58’’は、例えば約500マイクロメートル、600マイクロメートル、700マイクロメートル、800マイクロメートル、900マイクロメートル、1mm、1.5mm、2mm、2.5mmまたは3mmの幅を含んでよい。
【0034】
他の更なる実施形態にて、各凸部58’’は、標的組織に貫入するように構成されることができる。例えば、このような凸部58’’は、基部54’’から延在する針(図示せず)を含むことができる。更に他の実施形態にて、このような凸部58’’は、皮下注射針、トロカール針などのように成形されることができる。更に他の実施形態にて、このような凸部58’’は、丸い先端または平坦な先端を有することができる。更に他の実施形態にて、各凸部58’’は、同じ電極上の他の凸部58’’と異なって成形されることができる。
【0035】
図5に示すように、電極34’’の凸部58’’は、矩形配列の形で平板電極34’’の基部54’’に均等に配置される。代替的実施形態で、凸部58’’は、必要な導電率及び掴持を標的組織に提供するために、必要な任意のパターンで配置されることができる。例えば、凸部58’’は、同心円状(図示せず)または他のパターンに配置されることができる。
【0036】
図44及び
図45は、平板電極34’’’の別の代替的実施形態を示す。平板電極34’’’は、上述の平板電極34と実質的に類似し、それと同様に作動する。したがって、2つの電極34’’’と34の間の違いについてのみ、本明細書で詳述する。
図44に最も良く示されているように、平板電極34’’’の接触面38’’’は、1つ以上の非絶縁部分500(そこで、接触面38’’’は、接触しているとき、標的組織で第1の抵抗を形成する)と、1つ以上の絶縁部分504(そこで、接触面38’’’は、接触しているとき、第1の抵抗より大きい第2の抵抗を標的組織に形成する)と、を含む。使用中、標的組織と、接触面38’’’の非絶縁及び絶縁部分500’’’、504’’’の相互作用は、標的組織に適用される、得られた電界をもたらす。特に、電極34’’’の接触面38’’’の少なくとも一部を絶縁することによって、電極34’’’は、標的組織の脂肪層内に電界をより集束させ、それによって、患者の経験する筋れん縮及び痛みの量を低減させる。別の言い方をすれば、代替の平板電極34’’’は、絶縁部分を有しない同様の形状及びサイズの平板電極と比較したとき、筋肉を通して移動する電流量を低減する(「絶縁カリパス」(少なくとも1つの絶縁部分504’’’が存在する)と非絶縁カリパス(絶縁部分504’’’が存在しない)の間の差を示す、
図46~
図48を参照)。
【0037】
図44及び
図45に示すように、平板電極34’’’の絶縁部分504’’’は、その間に抵抗を増加させるために、接触面38’’’と標的組織の間に位置する絶縁材料層508’’’を含む(
図45を参照)。例示されている実施形態にて、電極34’’’は、電極34’’’の少なくとも一部にわたって着脱可能に配置可能である絶縁材料508’’’から形成される筐体512’’’を含む。筐体512’’’の寸法及び形状に依存して、異なるサイズ及び形状の接触面38’’’は、絶縁材料508’’’によって覆われることができる。更に他の実施形態にて、絶縁材料508’’’は、電極34’’’の接触面38’’’に適用されることができる(例えば、コーティングなど)。更に他の実施形態にて、絶縁材料508’’’は、除去可能な接着剤(図示せず)によって接触面38’’’に適用されることができる。
【0038】
第2の平板電極42は、平板電極34と実質的に類似し、それと同様に作動する。第2の平板電極42は、第2の接触面46の範囲を画定する第2の周囲長60を有する、第2の接触面46を含む。したがって、第2の平板電極42は本明細書で詳述しない。例示されている実施形態が、第1の電極34と同じサイズ及び形状である第2の平板電極42を示す一方で、第2の電極42は第1の電極34と異なってサイズ設定されかつ成形され得ると理解されている。更に、第2の電極42の第2の接触面46は、第1の電極34の第1の接触面38と異なってサイズ設定されかつ成形されることができる。更に他の実施形態にて、1つの平板電極は凸部58’’を含むことができ、一方で別の電極はそれができない。更にまた、1つの平板電極は絶縁部分504’’’を含むことができ、一方で他の電極はそれができない。
【0039】
図1に示されるように、装置10は、所望の位置で標的組織内に薬剤を注入する注入装置26を更に含むことができる。更に具体的には、注入装置26は、その内部に所定の量の薬剤を保持するように構成される貯蔵部82と、遠位端90を作り出すために、貯蔵部82から延在し、かつそれと流体連通する注入針86と、を含む。使用中、遠位端90が所望の深さに配置されるように、ユーザーは注入針86を標的組織内に挿入する(すなわち、脂肪層108内に。
図11を参照)。それから、ユーザーは、貯蔵部82内に含まれる液体を針86によって、遠位端90から所望の組織内に注入できる。例示の注入装置26が代替的実施形態で皮下注射針(すなわち、インシュリン針)を含む一方で、ジェット式注入器または他の形態の注入器が利用できると理解されている。
【0040】
更に、いくつかの実施形態で、注入装置26の針86は、信号発生器18と通信可能であり得て、第1及び第2の平板電極34、42に類似する電極として作動することができる(
図1を参照)。そのような実施形態にて、信号発生器18は、針86に処理信号を送信して、情報(例えばインピーダンス、電流の流れなど)を受信し、診断及びフィードバックのために信号発生器18に戻す。
【0041】
注入装置26は、試料組織内で遠位端90の位置を制御する深さリミッター(図示せず)も含むことができる。使用中、針86の遠位端90が組織内の所望の深さを越えて穿通するのを深さリミッターが止めるように、深さリミッターは所定の深さに設定されることができる。いくつかの実施形態では、深さリミッターは、ガイド孔を画定するハードストップを含むことができる。このような実施形態で、ガイド孔の長さは、針が標的組織に穿通する深さを決定する。更に他の実施形態で、深さリミッターは、針86をパルス発生器18に電気的に連結する電気連結器も含んでよい。
【0042】
III)脂肪層の処理
上述の装置は、電気穿孔を使用して、薬剤によって脂肪組織をトランスフェクションすることを目的とする種々の治療法で使用することができる。各処理または「設定」は、試料組織内に作成される得られた電界のサイズ、形状及び特徴に関して、柔軟性を提供する。各設定は、侵襲性の各種レベルを提供する。
【0043】
a)2つの電極の設定
2つの電極処理の設定を介して処理を管理するために、ユーザーは、処理したい区域または領域(以下「組織領域100」)に注目して、最初に患者を得る。この用途の目的のために、組織領域100は、例えば、皮膚層104、脂肪層108、及び平滑筋層112のうちの1つ以上を有する皮膚組織を含むことができる。
【0044】
皮膚層。皮膚層は、2つの部分、外側の表皮部分と、表皮がそこに接続され得る真皮部分と、を有することができる。真皮の下に、皮下層が存在できて、疎性組織及び脂肪組織を含むことができる。真皮からの繊維は、皮下層内に下方に延在して、皮下層を皮層に接続できる。皮下層は、下にある組織及び器官に付着できる。
【0045】
表皮。表皮は、重層扁平上皮からなることができて、ケラチン生成細胞、メラニン細胞及び非着色粒状樹状細胞(例えば、ランゲルハンス細胞及びGranstein細胞)を含むことができる。ケラチン生成細胞は、いくつかの層内に構成されることができる。層の数は、身体の位置に依存し得る。例えば、摩擦への曝露が大きい場合、表皮は多くの層(例えば5つの層)を有することができる。摩擦への曝露が大きくない場合、表皮は、例えば5つ未満の層を有することができる。表皮は、以下の層、基底層、有棘層、顆粒層、淡明層及び/または角質層のうちの1つ以上を有することができる。
【0046】
真皮。真皮は、膠原性及び弾性繊維を含む、結合組織からなることができる。真皮は、身体の位置に応じて、厚いまたは薄い場合がある。例えば、真皮は、手掌及び足底で厚く、眼瞼で薄い場合がある。真皮は、血管、神経、腺及び毛嚢を含むことができる。真皮は乳頭領域または層を有することができ、それは微細な弾性繊維を含む、疎性結合組織からなることができる。乳頭領域は、表皮内へ突出する真皮乳頭も有し得る。これらの乳頭は毛細血管(触覚小体またはマイスネル小体)を含むことができ、それは感触に敏感な神経終末である。真皮乳頭によって、上にある表皮に隆線が生じる場合がある。
【0047】
真皮の残りの部分は、網状領域または層でもよい。この領域は、高密度に密集した結合組織と、膠原及び粗い弾性繊維の束と、を含むことができる。網状領域の種々の厚さは、少なくともある程度は、皮膚の厚みの違いの原因になっている可能性がある。
【0048】
脂肪層。脂肪層または組織は、脂肪細胞が脂肪を貯蔵する、疎性結合組織の形態でもよい。脂肪細胞は、細胞内の脂肪滴によって細胞の端へ押される、その細胞質と核とを有することができる。各脂肪細胞は、構造的支持のため膠原性基底膜によって囲まれることができ、毛細血管と接触し得る。脂肪細胞のクラスターは「葉」内に含有されることができ、それはコラーゲン中隔によって結合することができる。脂肪細胞は、どこに疎性結合組織が位置しようとも、見つかることができる。脂肪組織は、皮膚の下で皮下層にあり得る。
【0049】
平滑筋層。平滑筋層は、中空内部構造(例えば血管)の壁にあることができる。平滑筋は、毛嚢に付着することもできる。平滑筋層は、筋線条がない不随意筋組織であり、不随意神経及びいくつかのホルモンの影響を受ける可能性がある。平滑筋層は、心筋組織及び骨格筋組織とは異なる、筋層の一種である。骨格筋は、主に骨に付着して、骨格部分を動かすことができる。組織を顕微鏡で調べると、条線または明暗帯状構造が見えるので、骨格筋は横紋があり、随意的で、それによって、意識的な制御により縮んだり弛緩したりすることができる。心筋組織は横紋があり、不随意的で、心臓の壁の大部分を形成する。
【0050】
処理の領域が選択されると、遠位端90が脂肪層108内に配置されるように、ユーザーは注入装置26を得て、針86を組織領域100内に挿入する。それから、ユーザーは組織領域100の脂肪層108内に薬剤の容量(所望により、予め測定した量の薬剤)を注入し、注入部位116を作成する。注入が終了していると、ユーザーは組織領域100から針86を取り出す。
【0051】
針86を取り出すと、ユーザーは、注入部位116を含有する組織領域100の一部を操作して、その内部にひだ120を作成する。ひだ120内に含まれる組織が皮膚層104、脂肪層108及び平滑筋層112に限定されるように、組織は処理される。骨格筋(図示せず)は、ひだ120に含まれない。得られたひだ120は、第1側部124、第1側部124の反対側の第2側部128及び第1側部124と第2側部128の間に延在する上部132を含む(
図8)。ひだ120は、第1側部124と第2側部128の間の距離として定義されるひだ厚134も画定する。
【0052】
ひだ120を準備した後、電極距離50がひだ厚134よりわずかに大きくなるまで、ユーザーは、アプリケーター22のフレーム30または調整機構67を操作する。そうして、各電極34、42が、内向きに面している接触面38、46を備えるひだ120の対向側面に配置されるように、ユーザーはアプリケーター22を配置する(
図9を参照)。更に具体的には、第1の平板電極34の第1の接触面38がひだ120の第1側部124と接触し、第2の平板電極42の第2の接触面46がひだ120の第2側部128と接触し、その間に処理ゾーン136を作成するように、ユーザーはアプリケーター22を配置する。適切な位置にあると、ユーザーは電極距離50を増減して、2つの電極34、42の間に効果的にひだ120を固定できる。
【0053】
この用途の目的のために、処理ゾーン136は、第1及び第2の電極34、42の間に配置する間隙の容積として定義される、第1及び第2の接触面38、46による2つの側面上に定義される、及び第1の接触面38の第1の周囲長78と第2の接触面46の第2の周囲長60の間に延在する仮想の隔壁により残りの側面上に画定される(
図8~
図10を参照)。したがって、ユーザーがひだ120の対向側に第1及び第2の電極34、42を配置した後、本明細書に記載の処理の処理ゾーン136は、ひだ120の少なくとも一部及びその内部の注入部位116の少なくとも一部を含有する。例示されている実施形態にて、処理中の処理ゾーン136内に位置する組織は、皮膚層104、脂肪層108及び平滑筋層112に限定される。処理ゾーン136は、その内部にいかなる骨格筋も含まない。
【0054】
例示の実施形態が、ひだ120と直接接触して配置されている電極34、42の接触面38、46を示す一方で、導電性ゲル(図示せず)または他の物質が、電極34、42とひだ120の間の電気的接続を改善するために利用できると理解されている。
【0055】
電極34、42が適切な位置にあると、アプリケーター22のセンサー74は電極距離50を決定して、それが結果的に電気穿孔信号150のパラメーターを設定するのを可能にする、信号発生器18にその情報を中継する。信号発生器18は、試験信号(すなわち、低い電圧パルス)を出すこともでき、そこで、生じる電流及び電圧は、電極34、42により検出されることができて、続いて信号発生器18によって、処理されている組織のインピーダンスを算出するために使用され得る。更に、試験信号の間、電極34、42により検出されるデータは、パルスがうまく発信されたことを確かめるためにも使用され得る。そのために、タイミングが合わない(すなわち、2つ以上または3つ以上のデータ収集点が欠けている)場合、信号発生器18は、電流の流れがパルスの持続期間の間、維持されるかを比較して、そうしてパルスを不完全であるとみなすことができる。更に具体的には、パルス電圧158、パルス長162、パルス数及び/または電気穿孔信号のパルスの遅延166のうちの少なくとも1つは、電極距離50によって少なくとも部分的に測定されることができる(後述する)。例示の実施形態で、電極距離50は、アプリケーター22のセンサー74によって自動的に測定される。しかし、代替的実施形態で、ユーザーは、手動で電極距離50を測定して、電極距離50を装置10に入力できる。
【0056】
例示の実施形態で、電気穿孔信号150は一連の電気「パルス154」からなり、ここで、各パルス154は、所定のパルス電圧158で送達されて、所定のパルス長162を持続する。更に、各個々のパルス154は、パルス遅延166によって隣接するパルス154からすぐに分離される(
図26)。例示の実施形態で、電気穿孔信号は、約50Vと約200Vの間のパルス電圧158を含む。他の実施形態で、信号は、約5Vと約10Vの間のパルス電圧158を含むことができる。他の実施形態で、信号は、約1kVのパルス電圧158を含むことができる。更に、例示の電気穿孔パルス長162は、約100マイクロ秒、200マイクロ秒、300マイクロ秒、400マイクロ秒、500マイクロ秒、600マイクロ秒、700マイクロ秒、800マイクロ秒、900マイクロ秒、1ミリ秒、10ミリ秒、50ミリ秒、75ミリ秒及び100ミリ秒である。更にまた、電気穿孔パルス遅延166は、約1ミリ秒、50ミリ秒、100ミリ秒、500ミリ秒及び1秒である。更にまた、各電気穿孔信号は、約1パルスと約10パルスの間を含む。同時に、いくつかの実施形態で、電気穿孔信号150は、パルス間200ミリ秒の遅延で、持続期間約100ミリ秒、約200Vにて、3つのパルスを含むことができる。他の実施態様にて、電気穿孔信号150は、パルス間200ミリ秒の遅延で、持続期間約100ミリ秒、約50Vにて、3つのパルスを含むことができる。更に他の実施形態にて、電気穿孔信号150は、パルス間1秒の遅延で、持続期間100ミリ秒、約50Vで、10つのパルスを含むことができる。更に他の実施形態にて、電気穿孔信号150は、パルス間約100ミリ秒の遅延で、持続期間約100ミリ秒、75Vで、8つのパルスを含むことができる。更に他の実施形態にて、電気穿孔信号150は、パルス間約100ミリ秒~約1秒の遅延で、持続期間約10マイクロ秒及び約100マイクロ秒、約500Vと約1000Vの間の3つのパルスを含むことができる。更に他の実施形態にて、電気穿孔信号は1つのパルスを含むことができる。
【0057】
電気穿孔信号のパラメーターを設定した後、装置10の信号発生器18は、第1及び第2の電極34、42に所望の信号に送信し、その結果、第1の電極34の1つが陽極または負極の1つとして作用し、一方で第2の電極42が陽極または負極のもう一方として作用する。更に具体的には、信号発生器18は、少なくとも部分的に検出されるインピーダンス値及び電極距離50に依存して、電気穿孔信号150のパラメーターを調整できる。電気穿孔信号を受信すると、電極34、42は、その内部に電界を作成する、ひだ120へ、信号を連続して伝導する(
図9及び
図10)。生じた電界は、ひだ120内にトランスフェクション領域を作成する、脂肪層108に集中する。更に具体的には、電界は、実質的に球状または楕円状の形のトランスフェクション領域を作成できる。しかし、代替的実施形態で、トランスフェクション領域のサイズ及び形状は、標的組織内の電界分布ならびに標的組織内に注入した薬剤の位置及び量に少なくとも部分的に依存できる。更に、皮下または筋肉内電気穿孔送達において一般的に使用される、穿通する針電極構成により伝導される類似の処理と比較したとき、電流は、下にある筋層112を通過して自由に流れて、注入部位116の近くでは比較的低い。電界のこのような特徴は、免疫応答が求められていない処理において、場合により有益である。
【0058】
電気穿孔が完了した後、電極34、42は、ひだ120から取り外されることができる。
【0059】
b)針を含有する3つの電極の設定
3つの電極の設定を介して処理を管理するために、ユーザーは、処理したい組織領域100に注目して、最初に患者を得る。この用途の目的のために、組織領域100は、上述のとおり、例えば、皮膚層104、脂肪層108及び平滑筋層112のうちの1つ以上を有する皮膚組織を含むことができる。組織領域100を選択すると、ユーザーは、組織領域100の一部を操作して、その内部にひだ120を作成する。更に具体的には、ユーザーは組織領域100を操作して、皮膚層104、脂肪層108及び平滑筋層112を含む、組織のひだ120を作成する。骨格筋は、ひだ120に含まれない。更に、得られた組織のひだ120は、第1側部124、第1側部124の反対側の第2側部128及び第1側部124と第2側部128の間に延在する上部132を含む。ひだ120は、第1側部124と第2側部128の間の距離として定義される、ひだ厚134も画定する。
【0060】
ひだ120を作成すると、ユーザーは、注入装置26を得て、第1側部124及び第2側部128と実質的に平行な、ひだ120を通過して長手方向に針86を挿入する。それから、ユーザーは組織領域100の脂肪層108内に予め測定した量の薬剤を注入し、注入部位116を作成する。注入が終了しても、ユーザーは組織100から針86を取り出さない。
【0061】
注入部位116が作成され、針86がまだ組織100中に位置すると、電極距離50がひだ厚134よりわずかに大きくなるまで、ユーザーは、アプリケーター22のフレーム30または調整機構56を操作する。そうして、各電極34、42が、ひだ120の対向側面に配置されるように、ユーザーはアプリケーター22を配置する(
図11~
図13を参照)。更に具体的には、第1の平板電極34の第1の接触面38がひだ120の第1側部124と接触し、第2の平板電極42の第2の接触面46がひだ120の第2側部128と接触し、その間に処理ゾーン136を作成するように、ユーザーはアプリケーター22を配置する(上述のとおり。
図11~
図13を参照)。
【0062】
例示の実施形態が、ひだ120と直接接触して配置されている電極34、42の接触面38、46を示す一方で、導電性ゲル(図示せず)または他の物質が、電極34、42とひだ120の間の電気的接続を改善するために利用できると理解されている。
【0063】
電極34、42が適当な位置にあると、アプリケーター22のセンサー74は電極距離50を決定して、それに合うように電気穿孔信号を設定する(上述のとおり)。信号発生器18は、試験信号(上述のとおり)を出すこともでき、そこで、生じる電流及び電圧は、電極34、42または針86により検出されることができて、続いて信号発生器18によって、処理されている組織のインピーダンスを算出するために使用され得る。例示の実施形態で、電気穿孔信号150は一連の電気パルス154からなり、ここで、各パルス154は、所定のパルス電圧158で提供されて、所定のパルス長162を持続する。更に、各個々のパルス154は、パルス遅延166によって隣接するパルス154からすぐに分離される(
図26を参照)。例示の実施形態で、電気穿孔信号は、約5Vと約500Vの間のパルス電圧158を含む。パルス電圧は、例えば5V、10V、20V、40V、60V、80V、100V、150V、200V、250V、300V、350V、400V、450Vまたは500Vでもよい。更に、例示の電気穿孔パルス長162は、約1マイクロ秒と約100ミリ秒の間にある。更にまた、電気穿孔パルス遅延166は、約10ミリ秒と約1秒の間にある。更にまた、各電気穿孔信号は、約1パルスと約10パルスの間を含む。代替的実施形態で、電気穿孔信号150のパラメーターは、異なる薬剤の最適パフォーマンスを可能にするために変えることができる。信号パラメーターは、使用する薬剤、トランスフェクションの程度及び所望の組織の損傷に応じて、調整できる。例えば、dMAb構造体は、低い電圧、短いパルス持続期間、長いパルス間遅延を通常必要とし、その一方で、DNAワクチンは、高い電圧、短い遅延及び長いパルスを通常必要とする。
【0064】
電気穿孔信号のパラメーターを設定した後、装置10の信号発生器18は、第1の電極34、第2の電極42、及び針86に電気穿孔信号に送信し、その結果、針86が陽極または負極の1つとして作用し、一方で第1及び第2の電極34、42が陽極または負極のもう一方として作用する。電気穿孔信号を受信すると、電極34、42及び針86は、その内部に電界を作成する、ひだ120へ信号を伝導する(
図12及び
図13)。生じた電界は、針86の周囲の脂肪層108に集中して、そこから放射状に強度が低減する。電界は、針に沿って、非常に細長い楕円形状のトランスフェクション領域も作成する。更に、電流は、針86の周囲で最も高い。
【0065】
電気穿孔が完了した後、電極34、42及び針86は、ひだ120から取り外されることができる。
【0066】
c)3つの平板の設定
3つの平板の設定による処理を行うために、ユーザーは、処理したい組織領域100に注目して、最初に患者を得る。この用途の目的のために、組織領域100は、上述のとおり、例えば、皮膚層104、脂肪層108及び平滑筋層112のうちの1つ以上を有する皮膚組織を含むことができる。処理の領域が選択されると、遠位端90が脂肪層108内に配置されるように、ユーザーは注入装置26を得て、針86を組織領域100内に挿入する。それから、ユーザーは組織領域100の脂肪層108内に予め測定した量の薬剤を注入し、注入部位116を作成する。注入が終了していると、ユーザーは組織領域100から針86を取り出す。
【0067】
針86と取り除くと、ユーザーは、注入部位116を含有する組織領域100の一部を得て、注入部位116、皮膚層104、脂肪層108、及び平滑筋層112を含む、ひだ120を作成する。骨格筋は、ひだ120に含まれない。更に、得られた組織のひだ120は、第1側部124、第1側部124の反対側の第2側部128、及びひだ120の第1側部124と第2側部128の間に延在する上部132を含む。ひだ120は、第1側部124と第2側部128の間の距離として定義される、ひだ厚134も画定する。
【0068】
ひだ120を準備した後、電極距離50’がひだ厚134よりわずかに大きくなるまで、ユーザーは、アプリケーター22’のフレーム30’または調整機構56’を操作する。次に、第1の平板電極34’の第1の接触面38’がひだ120の第1側部124と接触し、第2の平板電極42’の第2の接触面46’がひだ120の第2側部128と接触し、その間に処理ゾーン136を作成するように、ユーザーはアプリケーター22’を配置する(上述のとおり)。第3の接触面68’がひだ120の上部132と接触して、第1及び第2の電極34’、42’の間に通常配置されるように、ユーザーは、第3の平板電極66’も配置し(
図14~
図16を参照)、その結果、第3の平板電極66’は第1または第2の電極34’、42’のいずれかと直接接触しない。
【0069】
例示の実施形態が、ひだ120と直接接触して配置されている電極34’、42’、66’の接触面38’、46’、68’を示す一方で、導電性ゲル(図示せず)または他の物質が、電極34’、42’、66’とひだ120の間の電気的接続を改善するために利用できると理解されている。
【0070】
電極34’、42’、66’が適当な位置にあると、アプリケーター22’のセンサー74’は第1及び第2の電極34’、42’の間の電極距離50を決定して、それに合うように電気穿孔信号を設定する(上述のとおり)。信号発生器18は、試験信号(上述のとおり)を出すこともでき、そこで、生じる電流及び電圧は、電極34’、42’、66’により検出されることができて、続いて信号発生器18によって、処理されている組織のインピーダンスを算出するために使用され得る。例示の実施形態で、電気穿孔信号は一連の電気パルス154からなり、ここで、各パルス154は、所定のパルス電圧158で提供されて、所定のパルス長162を持続する。更に、各個々のパルス154は、パルス遅延166によって隣接するパルス154からすぐに分離される(
図26を参照)。例示の実施形態で、電気穿孔信号は、約5Vと約500Vの間のパルス電圧158を含む。更に、例示の電気穿孔パルス長162は、約1マイクロ秒と約100ミリ秒の間にある。更にまた、電気穿孔パルス遅延166は、約10ミリ秒と約1秒の間にある。更にまた、各電気穿孔信号は、約1パルスと約10パルスの間を含む。
【0071】
電気穿孔信号のパラメーターを設定した後、装置10は、第1、第2及び第3の電極34’、42’、66’に所望の電気穿孔信号を適用し、その結果、第1及び第2の電極34’、42’が陽極及び負極の1つとして作用し、一方で第3の電極66’が陽極及び負極のもう一方として作用する。電気穿孔信号を受信すると、電極34’、42’、66’は、その内部に電界を作成する、ひだ120へ、信号を連続して伝導する(
図15及び
図16)。得られた電界は第3の平板電極66’の直下で最強であり、組織深さを増大させながら、強度を低下させる。更に、電流は皮膚層104で強く、脂肪層108で非常に弱くなり、注入部位で低電流を維持しつつ、強い電界の間の所望のバランスを作成する。このような電界は、通常、浅い皮下脂肪のDNA注入のために最適である。
【0072】
電気穿孔が完了した後、電極34’、42’、66’は、ひだ120から取り外されることができる。
【実施例0073】
実施例1。実験結果。in vivo処理は、上述した処理の変形を使用して、雌のハートレイ系モルモットの皮下脂肪体で実施した。実験の間、ユーザーは、モルモットの首の後ろに隣接した処理領域の近くを剃毛した。その後、脱毛クリームを使用して、処理領域からいかなる剃り残しも完全に除去した。それから、インシュリン注射器を使用して、処理領域の脂肪層にプラスミドを注入し、注入部位を作成した。次に、処理領域の注入部位及び皮膚組織が操作されて、皮膚、脂肪及び平滑筋層をいかなる骨格筋からも分離した。そうして、得られた皮膚のひだは一対の平板電極の間に配置され、各電極は、導電性ゲルで覆われた対応する接触面を有した。最後に、電気的パルスが平板電極に送られ、そこで、1つの平板電極は陽極として作用し、他の平板電極は負極として作用した。処理が終了した後、処理領域の組織の試料を、解析のためにとった(
図17~
図30を参照)。
【0074】
色素注入試験は、注入物が、脂肪葉を取り囲むコラーゲン中隔に優先して流れることを証明し、これらの観察はGFPトランスフェクションパターンと一致していた。コードしたタンパク質の一部を示すために、脂肪標的化EP処理は、モノクローナル抗体をコードするDNA(dMAb)を使用して実行され、それはタンパク質の検出可能な全身レベルに至った。最後に、H1N1核タンパク質をコードするプラスミドの脂肪標的化EP DNA接種は、免疫原性であることを示した。従来の筋肉内経路と比較して、脂肪標的化EP DNA接種は、使用される低電圧、浅い注入及び非侵襲性電極により、忍容性の利点を提供できる。
【0075】
高倍率で、脂肪細胞の特徴を示す「蜂の巣状」パターンは、多数のトランスフェクトした脂肪細胞により、明るい緑色で示されることができた。脂肪細胞ネットワークによって移動する緑色の実線として、明るい緑色のコラーゲン中隔にも注意する。
図18を参照すると、そこで、緑色のトランスフェクトした領域は、平板電極の間に固定される組織の容量に対応する。脂肪組織の一部分をよく見ると、多くの個々の脂肪細胞が認められた。脂質滴はタンパク質を発現しないので、各細胞の内部は明るく照らされていない。むしろ、緑色蛍光タンパク質(GFP)は、各細胞の端周辺で見つかり、そこで、タンパク質合成、生成、輸送及び修飾が生じる(
図17、
図18及び
図19を参照)。
【0076】
この技術は、ウサギ(首の基部の皮下脂肪で)でも実証された。
図20を参照すると、そこで、トランスフェクトした細胞のGFPの緑色の輪と同様に、オイルレッドO染色は脂質滴を強調する。細胞核を青色で示す。
【0077】
トランスフェクトしたモルモットの脂肪組織の共焦点画像は、タンパク質が細胞の境界全体の周辺で生成かつ発現していることを示す。脂肪細胞を囲む多数の小さな細胞はGFPを発現せず、それは、脂肪細胞の特異性の程度と一致している(
図21を参照)。
【0078】
注入量は、トランスフェクトした領域の大きさに影響を与えることなく、約200μl~50μlに低減することができる(
図22を参照)。複数の注入、続く1回のEPは、トランスフェクトした細胞の数を増加させる1つの方法であり得る(
図23を参照)。電圧を低下させて、パルス数を増加させることは、GFP信号を改善でき、おそらく多くのトランスフェクトした細胞を示す。80Vの処理は、200Vの処理と比較して、著しく弱い筋れん縮を引き起こした(
図24を参照)。dMAbは、脂肪内への第2の処理の後、モルモットの約1000ng/mLのピークレベルで生成された。第1の処理は、最適化されていないパラメーターを使用して実施された(
図25を参照)。
【0079】
急速なパルスを受けるモルモットは、1秒の長いパルス間遅延のパルスを受けるモルモットより、多くのdMAbを生成した(
図26を参照)。ジェット式注入は、組織全体により均一にDNAを分布させて、より多くの細胞をトランスフェクトするように見えた。
図27を参照。酵素による組織の分解は、組織全体にわたって流体分布を改善した(
図28を参照)。パルスの数が増加するにつれて、電気抵抗は減少する。25Vで、電流は、基本的に検出不可能だった(
図30を参照)。100Vで、筋れん縮は、電気表示の変化を生じさせるのに十分な強度だった(
図29を参照)。
【0080】
実施例2。免疫原性。in vivo処理は5つの実験群に提供され、そのすべては同じ用量のDNAを受けた。前記実験で、1つの群は皮内EPを与えられて、陽性対照群として機能した。残りの4つの群は、高いまたは低い電圧及び高いまたは低い注入量の種々の組み合わせを使用して、組織の脂肪層で処理した。4つの脂肪群におけるパルス電圧は、約50V~約200Vの間を変化し、一方で注入パラメーターは、単一部位の約100マイクロリットル~各部位で50マイクロリットルの5つの注入の間を変化した。各注入において、プラスミドは、全体のDNA用量を変化させずに、容量の増加させるために希釈された。
【0081】
図31に示すように、高電圧及び高注入量で処理した脂肪群は、皮内処理群を含む、他の任意の群より強くかつ速い体液性免疫応答(すなわち、エンドポイント力価)を有した。この反応の強度は、6週間にわたって増加し続けた。両方の低電圧処理(すなわち、上下の容量で)は、3週間後に反応はほとんどなく、6週間後に弱反応があった、または無反応だった。
【0082】
DNA注入の量及びEPの電圧の両方は、脂肪組織の免疫応答に影響するように見える。組織内に注入される薬剤の量が多くなると、細胞と薬剤の間の増加した接触と一致する。増加した量は、脂肪組織内への水で調製したDNAの投与に関連する問題に対処できる。加えて、EP電圧がより高いほど、EPを受け得る細胞は増える。更に、高い電圧の結果としてのいかなる組織の損傷も、免疫応答及び関連細胞の誘発を補助し得る。
【0083】
実施例3。実施例4~実施例9の材料及び方法。異なるEP診断法をシミュレーションするために、2つの組織モデルを、SolidWorks2013の3D CADアセンブリとして作製した(SolidWorks Corp.,Concord,MA,USA)。両方のモデルは、3つの電気的等方性層、皮膚、脂肪及び筋肉からなった。50Vの低電圧がマイクロ秒内で角質層を透過処理して、そうして全組織抵抗へのその寄与はごくわずかになるので、角質層はこれらのモデルに含まれなかった。角質層の厚みは20μm程度であり、非常に薄い層は、有限要素解析中に人工産物を生じさせることがあり得る。平板電極の間に固定される組織をモデル化するために、折り畳まれた組織配置が作成されて、400cm
2の大きさの接触領域を備えた2つの正方形の平板電極配置は、ひだの両側に配置された(
図32)。同じ組織内に針電極を貫入させることをモデル化するために、平坦な組織配置が作成されて、2つの19mm、22ゲージの針配置は、10mmの電極間の間隔及び18mmの侵入深さで組織内に入れられた(
図33)。
【0084】
2つの組織-電極アセンブリは、有限要素解析のために、ANSYS Maxwell2015.2(ANSYS Software、Canonsburg、PA、USA)にエクスポートされた。各組織の種類の導電率値は、文献値に基づき、一定であると見なされた。モデルで使用する導電率値及び一般的な組織寸法を、表1に示す。対向電極がゼロ電圧を割り当てられると、励起電圧が1つの電極に印加されて、x-y解析平面の電極を二分する断面図が、電界強度を視覚化するために作成された。
【表1】
【0085】
動物。すべての動物実験は、施設内動物実験委員会の承認を得たプロトコルの下で実施した。雌のハートレイ系モルモットを、すべてのin vivo実験で使用した。動物は吸入イソフルランによる全身麻酔下を維持されて、処理及び血液採取は実行された。皮下注入は、脊椎と平行して配向された29ゲージのインシュリン針を使用して、肩甲骨間皮下脂肪体(首すじに位置する)に実施した。終末実験において、モルモットは、最初に全身麻酔下に置かれて、ペントバルビタールの心臓内注入によって人道的に安楽死された。
【0086】
プラスミド。遺伝子発現実験は、緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードするプラスミドDNAを利用した。免疫実験は、インフルエンザA(H1N1、A/Puerto Rico/8)から、完全長核タンパク質(NP)をコードするプラスミドDNAを使用して行われた。すべてのプラスミド製剤は、1×最終的な緩衝液濃度のために生理食塩水クエン酸ナトリウム緩衝液中に調製された。
【0087】
色素注入試験。メチレンブルー(Sigma-Aldrich、St.Louis、MO、USA)を、0.5mg/mLの濃度で、脱イオン水中に溶解させた。単一部位への注入で、モルモットは、100μLのメチレンブルー溶液を皮下注射された。複数部位への注入で、5つの別個の50μLの皮下注射が、約5mm間隔で離されて実施された。注入の後、脂肪体全体が2つの平板電極の間にきつく掴持されて、処理の全プロトコルをシミュレーションした。動物は直ちに安楽死され、脂肪体を無傷で撮像し、それから矢状面に沿って解剖して、組織内の色素分布を視覚化するために、再び撮像した。
【0088】
一般的な脂肪EP処理手順。処理部位を剃毛して、洗浄した。脂肪EP処理を肩甲間領域の皮下脂肪体で実施し、一方で、皮膚処理を側腹に実施した。脂肪処理において、脂肪体を分離するために、組織を2本の指の間に挟んで、脊椎と平行して配向された29ゲージのインシュリン針を使用して、DNAを注入した。DNA注入の直後、対向するカリパスの顎に取り付けた2つの平板電極を導電性ゲルでコーティングし、それから、注入部位を囲む組織を挟むために使用した。パルスは、Elgen1000制御装置(Inovio Pharmaceuticals、San Diego、CA)を使用して行われた。ID EP処理において、DNAの皮内注入後、すぐに針電極の4×4列からなる表層電気穿孔(SEP)装置を用いた電気穿孔が続いた。
【0089】
肉眼での画像診断と組織学的分析。緑色蛍光タンパク質(GFP)試験において、脂肪EPをGFPプラスミドで実施した。そして無傷の脂肪体を所定の時点に取り出し、FluorChem R画像処理システム(ProteinSimple、San Jose、CA、USA)を使用して撮像した。それから、脂肪体は凍結され、約10mm×10mmの大きさの試料が、脂肪体のトランスフェクトした領域から切り取られて、トランスフェクションの深さを見るために横断面に沿って、またはトランスフェクトした細胞の水平分布を見る前頭面に沿って、30マイクロメートルの厚さで凍結切開される。いくつかの切片は、4%のホルマリン中に定置されて、キシレン中で洗浄され、DAPIまたはHoechst3342(Life Technologies、Carlsbad、CA)で染色され、Fluoromount(eBioscience、San Diego、CA)でカバーガラスに取り付けられた。他の切片は、ホルマリン中に定置されて、キシレン中で洗浄され、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色され、Permount(VWR、Radnor、PA、USA)を使用してカバーガラスに取り付けられた。H&Eで染色した切片を、MicroPublisher3.3カメラ(Qlmaging、Surrey、BC、Canada)を備える、Olympus BX51顕微鏡(Olympus、Center Valley、PA)を使用して、明視野で撮像した。蛍光画像は、Retiga3000カメラ(Qlmaging、Surrey、BC、Canada)で撮影した。共焦画像は、Zeiss LSM780レーザースキャン顕微鏡(Carl Zeiss、Jena、Germany)を使用して、組織全体の高解像度マルチパネル及びオートステッチしたz-スタックとして得られた。画像は、Zen2012(Carl Zeiss)及びIMARISソフトウェア(Bitplane、Belfast、UK)を使用して更に処理された。
【0090】
GFP発現及び細胞動態。脂肪EPは、GFPについてコードする100μgのプラスミドと、200V、3つのパルス、持続期間100ミリ秒及びパルス間遅延100ミリ秒のEPパラメーターと、を使用して14匹のモルモットで実施した。対照として、2匹のモルモットはEPで処理したが、プラスミド注入を受けず、一方で、更に2匹のモルモットはプラスミド注入を受けたが、EPで処理しなかった。対照は、処理の3日後に屠殺されて、処理済モルモットは、処理の後、処理後3時間~14日の範囲で間隔(n=2)をおいて、及び60日目の長期経過観察で屠殺された。脂肪体はGFP発現について無傷で撮像されて、それから薄片化され、H&Eで染色されて、処理部位で細胞浸潤の徴候を視覚化された。
【0091】
免疫原性試験。モルモットは、25μgのNP DNAで処理した。モルモットの4つの群(n=4)は、上述のとおり、脂肪EP処理を受け、各群は、1回の100μLのDNA注入または5回の別個の50μL注入を受けた。そして、200ミリ秒のパルス間遅延による3つの100ミリ秒の方形波パルスからなる1回のEP処理が続いた。この方法が、皮下脂肪細胞ではなく、表皮細胞をトランスフェクトさせることを既に示したので、SEP装置(n=3)によるID-EPを介してワクチン接種を受けるモルモットは、本試験の比較群として役立った。脂肪EP群は、以下のとおり、1つの注入部位による高電圧EP(HV-1)、5つの注入部位による高電圧EP(HV-5)、1つの注射部位による低電圧EP(LV-1)及び5つの注射部位による低電圧EP(LV-5)である。5つの注入を受けるモルモットにおいて、1回のEP処理は、最後の注入の直後、実施した。プラスミドDNAの総用量は、すべてのグループで同じだった。試験デザインを表2に示す。試験期間の3週毎に、300μLの血液を採取し、血漿を解析まで-20℃で保存した。採血の直後、処理は、試験の0週目、3週目及び6週目に行われた。試験の21週目にすべての動物はブーストされ、18日後に3mLの血液が採取されて、末梢血単核細胞は、ELISpot解析のために分離された。
【表2】
【0092】
ELISA。接種されたモルモットからの血清は、酵素結合免疫吸着法(ELISA)を使用して解析された。ELISAは、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(VWR)中の0.3μg/mLのpNP抗原(Sino Biological,Beijing,China)の100μL/ウェルによって一晩コーティングした96ウェルプレート(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA,USA)を使用して実施した。プレートは、37℃にて1時間、150μL/ウェルで、3%のウシ血清アルブミン(BSA)(Sigma-Aldrich)及び0.05%のTween-20(Sigma-Aldrich)を含有する、PBSによって洗浄かつブロックされて、それから再度、洗浄した。血清は、100μL/ウェルで1%のBSA及び0.05%のTween-20を含有するPBS(試料希釈液)中に1:50~1:2952450まで連続希釈され、37℃にて2時間インキュベートした。それからプレートは洗浄されて、ホースラディッシュペルオキシダーゼ結合型ヤギ抗モルモットブタIgG(Sigma-Aldrich)を試料希釈液で1:10000に希釈し、37℃にて1時間、100μl/ウェルで各ウェルに添加した。プレートは洗浄されて、テトラメチルベンジジン(TMB)基質溶液(VWR)を、100μL/ウェルで各ウェルに添加し、発色は6分後にTMB停止試薬溶液(VWR)で停止された。各ウェルの450nmの吸光度値は、SpectraMax PLUS384プレートリーダー(Molecular Devices,Sunnyvale,CA,USA)を使用して測定され、そこで、陰性対照(この場合、出血前試料)の平均吸光度及び標準偏差は、カットオフ吸光度値を計算するために使用した。エンドポイント力価を、提示したすべてのELISA結果で使用した。
【0093】
ELISpot。接種したモルモットは、免疫試験の21週目でブーストされて、18日後、3mLの末梢血はEDTA管に採血かつ収集されて、以前社内で開発した方法を使用して、インターフェロンγ(IFN-γ)ELISpotを実行した。血液を、HBSSで1:1に希釈し、Ficoll-Paque Plus(GE Healthcare Biosciences,Pittsburgh,PA,USA)で遠心分離した。軟膜は採取されて、R10培養液中に1×106生細胞/mLの濃度で再懸濁され、5μg/mLの抗IFN-γ一次抗体(V-E4)で一晩コーティングした96ウェルMillipore IPプレートに1×105細胞/ウェルの密度で蒔かれて、10%(w/v)のスクロース及び2%(w/v)のBSAを含有するPBS×1でブロックした。3回ずつの測定で、PBMCは、コンカナバリンA(ConA)、または免疫賦活性であると以前判明した3つの異なるNP抗原ペプチドプールのうちの1つによって、18時間インキュベートした。細胞を除去するために洗浄した後、0.2μgのビオチン化抗IFN-γ二次抗体(N-G3)を各ウェルに添加して、2時間インキュベートさせた。それから、ウェルを洗浄し、100μLのBCIP/NBT検出試薬基質を、15分間の各ウェルに添加した。プレートは、CTL-Immunospot S6 ELISPOTプレートリーダー使用して撮像され、CTL-Immunospotソフトウェアを使用して、斑点を処理して計数した。各動物について、斑点は、刺激されていない細胞数を減算することによって正規化した。
【0094】
統計方法。脂肪EP処理群のELISA力価データを比較するために、反復測定階乗ANOVAは、要因としてEP電圧、注射部位の数及び処理週を使用して、すべての収集時点上の対数変換した力価データで実施した。すべての処理の間のELISA力価データの比較のために、データは時点で階層化され、それから、一元配置ANOVAは、要因として治療群を使用して対数変換したデータで実施した。一対比較は、F検定が有意のとき、テューキー事後比較試験を使用して行われた。第二種の過誤をできるだけ抑え、この場合の他比較のために修正はなかった。ELISpotデータを、要因としてEP電圧及び治療部位による階乗ANOVAを使用して、脂肪EP処理群内で最初に解析した。一元配置ANOVAを、ID-EPを含む、すべての治療群についてELISAデータを比較するために、実施した。有意性のためのカットオフはp<0.05として定義され、有意でない傾向及び差のすべての観察はp値を伴った。
【0095】
実施例4。有限要素解析及びパラメーター最適化。EP観点から脂肪組織の電気的性質を理解するために、有限要素解析を実施した。これによって、目的の各組織型(この場合、皮膚、筋肉及び脂肪)内で、予測した電界分布の定量化が可能になり、それは、
図32に例示した電極設計を使用して脂肪組織のEPに適切な電圧範囲を画定する。x-y平面の有限要素解析は、標準の針電極が皮膚、脂肪及び筋肉を通して強い電界勾配を分配し(
図34上)、一方で、平板電極がほとんど脂肪組織内だけにより平等電界を生成する(
図34下)ことを示した。針電極は、各組織の12~14%へ350V/cmより高い電界の強さを提供すると予測され、一方で、組織のおよそ半分は150V/cm未満の電界の強さを受ける。平板電極は、処理した脂肪組織の95%に150V/cmと350V/cmの間の電界を生じさせると予想され、筋肉は100V/cmを超える電界を受けなかった。これらのシミュレーションで、平板電極は、皮膚の87%で150V/cm未満の電界を生じた。
【0096】
非侵襲性平板電極が、針電極とは逆に作用して、脂肪組織内に電界を能動的に集束させて、それは、それらが貫入する各組織に無差別に同じ電界を提供することを、有限要素解析は示唆した。そのうえ、平板電極によって生成される領域は、針電極と比較してより均一である。
【0097】
有限要素モデルは、各組織型で一定の電気導電率を想定した。最近の証拠から、導電率が実際に電界の強さの結果であり、したがってEPの間の動的に変化すると考えられている。しかし、これらの動態モデルは、皮膚、筋肉及び腫瘍組織で確認されるだけだったので、一定の導電率は、電界分布を過大評価する可能性がある任意の仮定をするのを回避するために選択された。更に、電極の直下に位置して及び下にある筋肉内への電流の流れを制限する、掴持されていない脂肪層を、1mmの厚さに圧縮すると考えられていた。この仮定は、脂肪組織の絶縁能力を過大評価するのを回避するためになされたが、実際は、下にある脂肪は、確実に適所にある電極を備える場合であっても、かなり厚い可能性がある。シミュレーションの結果は「最悪の場合」のシナリオと見なされることができ、脂肪の動的な導電率モデルの検証は、脂肪全体にわたって予測された電界の強さを増加させる可能性が高い。
【0098】
平板電極は、脂肪組織全体にわたる上述の計算した電界分布、他の組織型の電界の最小化及び装置の非侵襲性に基づき、次の実験のために選択された。平板電極の最適化プロトタイプは、臨床的に容易に適用されることができ、この有限要素解析で生成したデータは、ヒトのより密集しかつより厚い脂肪領域に外挿されることができる。
【0099】
実施例5。色素注入試験。ボーラスIMまたはID注入の流体動的特性が十分に解明されている一方で、in vivo皮下脂肪内の流体の分布はさほどはっきりしていなかった。そのうえ、平板電極間の注入部位を圧縮することが流体分布に有するかもしれない物理的影響は、知られていなかった。これらの動態は、色素注入試験によって検討され、それは、脂肪内の注入流体の分布の視覚化を可能にするために実施された。注入して、カリパスの間に挟んだ後、色素は、細長いボーラス投与形状として無傷の脂肪体内に視認できた(
図35左上)。脂肪を解剖した後、色素は、脂肪葉を分割するコラーゲン中隔内に主に保持されているように見えた(
図35右上)。青色の染色は脂肪体内に保持され、同時に上にある皮膚または下にある筋肉に存在する染色はほとんどなかった。色素が、電極の間に挟まれた後、組織全体にわたって移動するように見えなかったので、同じ色素解析は、脂肪組織全体にわたってDNA分布を増加させる目的を有する、複数の注入部位で実行された。5つの別個の50μLの色素注入を実施して、それから電極板の間に掴持したとき、5つの別個の色素部位は可視のままだが、いくつかは他より目立っていた(
図35下)。解剖したとき、各個別の注入部位は、脂肪組織内で類似の色素分布を有し、同時に色素は、膠原中隔に沿って集中した。
【0100】
色素試験は、いくつかの注入物が真皮と接触しているが、遺伝子発現は脂肪体の外側に観察されなかったことを示唆した。この観察は有限要素解析と一致しており、それは、トランスフェクションを生じさせる十分な強さの電界がほぼ脂肪組織だけに発生することを示唆する。複数の注入を実施したとき、いくつかの部位は他より顕著であり、それらが平板電極の間に挟まれるとき、それは近くの注入部位に起因している可能性がある。最も強い色素染色は脂肪葉を分割する膠原中隔に沿って生じ、実際、多くのトランスフェクトした脂肪細胞はこれらの中隔周辺に密集していた。電流及びDNA溶液がこれらの膠原中隔を介して主に移動する可能性が高く、DNA溶液がこれらのチャネルを逃れて、EP前に近くの脂肪細胞と接触するとき、脂肪トランスフェクションは生じる。
【0101】
細胞レベルにて、注入部位に、各細胞の中心を占有している不活性脂質滴によって生じる、それらの大型で特有の球形状及び固有の「環状」遺伝子発現パターンによって容易に識別可能な、十分な数のトランスフェクトした脂肪細胞があった。処理は、脂肪細胞において高度に選択的に見え、その理由は、脂肪細胞の間の隙間を占有する多数の他の細胞型にもかかわらず、GFPが脂肪細胞周辺のみで発現するからであった。このことは、低い電界の強さで優先して大きな細胞をトランスフェクトさせるEPの傾向に起因している可能性が高い。脂肪細胞はかなり大きな直径(50~100μm)の球状細胞であり、それらの形状及び直径が、他の小さな細胞型よりEPに影響されやすくしている可能性がある。脂肪組織は更に、多数の免疫細胞、内皮細胞、幹細胞及び線維芽細胞を内部に有しているので、これらの他の細胞型の明らかな広範囲にわたるトランスフェクションがなかったことはいくらか驚きだった。
【0102】
実施例6。脂肪細胞のin vivoトランスフェクション。脂肪組織のレポーター構造体のin vivo発現を評価するために、実施例3の一般的な脂肪EP処理手順で説明したように、GFPをコードするプラスミドはモルモット脂肪体内に注入され、非侵襲性平板電極を使用して50V~200Vの範囲の電圧で電気穿孔された。処理部位及びEP掴持手順を、
図36に示す。これらの処理を実施した3日後に、無傷の脂肪体は取り出されて、総組織レベルで撮像された。GFPは、長さ約5~10mm及び幅1~2mmの領域の皮下脂肪体内の注入部位だけに発現し、試験したEP電圧の間の信号領域または強度で視認できる差はなかった(
図37上)。脂肪EPなしで、プラスミド注入を受けた動物で、GFP発現は検出されなかった。微細な細胞レベルで、細胞容積の中心を占める脂質滴に起因して、脂肪細胞は、それらの大きな直径(50~100μm)及び特有の球形状によって区別された(
図37下)。脂肪EPを受けるモルモットの脂肪体は、それらの鮮明な蛍光輪郭によって容易に識別可能な多数のGFP発現脂肪細胞を有した。脂肪細胞の間の細胞外間隙に位置する、強力な広汎性自動蛍光領域があり、膠原中隔も顕著に蛍光性であった。脂肪EPをせず、プラスミドDNA注入を受けるモルモットで、検出可能なGFP発現脂肪細胞または高自動蛍光領域はなく、膠原中隔は視認できたが、顕著ではなかった。更なる組織学的解析は、脂肪体の深さを通したレポーター構造体の分布を視覚化するために実施された。最強かつ最も十分なGFP信号は、脂肪葉を分割する膠原中隔に隣接する、脂肪細胞に局在化した(
図38)。GFPは、上にある皮膚層で検出できなかった。遺伝子発現は、脂肪内の数ミリメートルの深さまで検出可能であり、通常、色素注入試験で観察される流体分布と一致した。高解像度共焦画像は、GFPが、各トランスフェクトした脂肪細胞を囲む異なる斑点状で発現することを明らかにした(
図39)。GFP発現は、脂肪細胞を囲む及びその間の多数の細胞核と関連せず、それは脂肪内のより小さい二次細胞集団を示す。この集団は、前脂肪細胞、線維芽細胞及び内皮細胞を含む。
【0103】
実施例7。遺伝子発現動態及び組織学的解析脂肪細胞集団のレポーター構造体発現の動態を検討するために、非侵襲性平板電極による200Vの脂肪EPの後、所定の時点で、処理した脂肪体の試料を取り出し、薄片化して、解析して、経時試験は行われた。遺伝子発現は、脂肪EP処理の後、24時間という早期に測定可能であり、発現は、モニタした60日全体で継続した(
図40上)。最初の7日間にわたるGFP蛍光の強度または分布に、明らかな質的差異はなかった。信号は14日目から拡散する傾向が見え、60日目から更に弱くなり、より拡散した。GFP発現の異なる各部位は、直径10mm程度だった。脂肪切片のH&E染色により観察されるように、脂肪EPの後の組織構造の変化は、3日目から顕著になり、14日目まで続いて、ほとんどの場合は60日目までに消散するように見えた(
図40下)。処理の3時間後または24時間後の組織生理学の検出可能な違いは、観察されなかった。これらの初期の時点で、脂肪細胞は輪郭がはっきりしており、脂質滴はキシレンクリアランスによる空の空隙として識別可能であり、膠原中隔は暗いエオシン染色及び多数の核のため視認できた。観察の3日目から60日目まで通して持続して、処理部位の膠原中隔は著しく目立っており、細胞を浸潤させることによる、多数の細胞核の視覚化に起因する可能性が高い。コラーゲン中隔がより顕著であった領域で、脂肪細胞周囲の細胞外間隙は、同様により多数の細胞で占有された。これらの組織構造の変化は、処理後3日目と7日目の間で最も顕著であり、60日目に、細胞外間隙内への浸潤は軽度であり、膠原中隔内の細胞密度はまだ上昇していたが、顕著ではなかった。
【0104】
脂肪組織は、1回の脂肪EP処理の後、急速かつ持続した遺伝子発現ができることを示した。遺伝子発現が処理の24時間後という早期に頑強であっても、処理の3日後まで、細胞浸潤の組織学的徴候はなかった。しかし、これらの動態は、GFPよりも、高い免疫原性抗原で異なり得る。脂肪EPは、主に脂肪細胞をトランスフェクトさせるように見え、免疫原性が、脂肪細胞によって生じる抗原に主に起因することを示唆した。少数の脂肪細胞(20~60の細胞)は、約0.065cm2の接触面面積で鉗子電極を使用して、外科的に露出した脂肪組織にEPを直接適用することによって、選択的にin vivoトランスフェクトすることができる。ここで、非侵襲EP技術は、表面積のほぼ100倍の平板電極を使用して、多数の脂肪細胞をトランスフェクトするために使用する。
【0105】
実施例8。体液性免疫原性。DNA接種のための標的組織として及び免疫応答が誘発され得るかどうか、脂肪組織の適用可能性を評価するために、モルモットは、比較として脂肪EPまたはID-EPを使用して、インフルエンザ核タンパク質(PR8)抗原を発現する構造体により接種を受け、結合力価はELISAを使用して測定した。脂肪EP試験群は、1つの注入部位による高電圧EP(HV-1)、5つの注入部位による高電圧EP(HV-5)、1つの注射部位による低電圧EP(LV-1)及び5つの注射部位による低電圧EP(LV-5)である。すべてのモルモットは、同じDNA総用量を受けた。HV脂肪EP及びID-EPは、類似の抗体反応動態という結果を得るが、LV脂肪EP処理は、HV脂肪EPまたはID-EPと比較して、非常に様々な及び一般的に低抗体反応を生じた(
図41)。4つの異なる脂肪EP処理の力価の違いは、反復測定階乗ANOVAを使用して評価した。電圧(p=0.0062)及び時点(p=0.0065)の主な作用はあったが、力価の注入部位(p=0.16)の数ではなかった。複数の注入部位が、体液性免疫のより速い発現を提供するように見えたが、注入部位の数と時間の間の相互作用は有意ではなかった(p=0.13)。単純な主作用解析により、HV及びLV脂肪EP処理の間の力価の違いが6週目以降から有意であることが明らかになった(0.0056<p<0.039)。任意の時点でのHV脂肪EPとID-EPの間の力価の違いはなく(0.31<p<0.79)、ID-EPはすべての時点でLV脂肪EPより一般的に高い力価を提供した(0.075<p<0.12)。ID-EPとLV脂肪EPの間の有意差の欠如は、場合により、この探索的試験のID-EPでの複製の数に起因する(n=3)。DNAワクチンの送達は、確実な体液性応答を誘発するために、EPを介して脂肪組織内送達された。脂肪EP DNA接種の後の体液性免疫応答は、電圧及び空間分布の両方に依存すること示し、特に高電圧は、急速な高規模の抗体反応を得るために重要である。これは、トランスフェクトした脂肪細胞が免疫応答を誘発できることの、最初の実証試験である。遺伝子発現の電圧依存的な差はないにもかかわらず、強い電圧依存性が観察された。多くの細胞がプラスミドと接触しているので、複数の処理部位の好ましい影響は予想された。
【0106】
実施例9.細胞免疫原性細胞性免疫応答を検討するために、ELISpotを、接種したモルモットの末梢血で実施した。HV-1(n=3)、HV-5(n=2)及びID-EP(n=2)は、少ない生細胞数の結果として、複製は少なかった。LV-5(n=3)は、試験の初めに、無関係な理由のため、1匹のモルモットが死亡した。すべての接種したモルモットは、ConAと同様に3つのペプチドプールすべてに応答して、IFN-γを生成した。最も免疫原性なペプチドプール1を、更なる解析のために使用した(
図43)。斑点数は、ID-EPとHV脂肪EP群の間で同程度に見え、LV脂肪EPについては低い傾向に見え、特にLV-1については、最弱の細胞免疫応答を誘発するように見えた。脂肪EP処理群内で、階乗ANOVAにより、電圧(p=0.15)または注入部位の数(p=0.26)について対数変換した斑点数に有意差がなく、これらの2つの要因(p=0.39)の間に相互作用がないことが明らかになった。ID-EPを含む、すべての処理群の一元配置ANOVAは、対数変換した斑点数に有意差がないことを示した(p=0.31)。
【0107】
脂肪EPは、IDEPに等価な細胞性免疫応答を生成することができた。群間の差異は、低い複製及び高い可変性に起因して、有意でなかったが、斑点数は、最低電圧及び1つの処理部位だけを受けるモルモットで、低い傾向だった。これらの所見は、EP電圧及びDNA分布の脂肪EP免疫原性の依存性を支持し、電気穿孔パラメーター及び組織内のDNA分布が、免疫応答を改善するためにそれぞれに独立して調整されることができる、重要な要因であることを示唆する。
【0108】
抗体反応の電圧依存性には、2つの重要な要因がある。第1に、より高い電圧は、より大きくより強力な電界を生じるので、多くの細胞が潜在的にトランスフェクトされることができる。トランスフェクション効率及び免疫応答は、他の組織(例えば皮膚及び筋肉)の電圧依存性であることを示した。しかし、最適化試験の結果は、十分なトランスフェクションが低電圧でさえ生じていることを示したので、これは唯一の説明ではない可能性がある。電位依存的な抗体反応の第2の説明は、より高い電圧がより高い電流を必要とするということであり、それは、抵抗加熱が原因で、組織破壊または炎症を引き起こすことがあり得る。処理部位に損傷の外的な徴候がなかったにもかかわらず、組織学的分析は、処理の3日後から脂肪組織内に著しい細胞浸潤を示した。EPが補助効果を有することは、以前に示唆された。したがって、観察される細胞浸潤が、EPによって生じる軽度の熱損傷に関連して、高電圧で増加した免疫応答に役割を果たす可能性がある。200Vは、IM DNA EP接種で使用する電圧と同等であるが、電流は1Aを決して上回らず、それはIM-EPとも類似している。したがって、電気エネルギーの同等の量は、通常の19インチ、22ゲージ針(0.88cm2)と比較してより大きい表面積(6.25cm2)に広げられるので、電極表面のエネルギー密度は、IM-EPと比較して、脂肪DNA EP処理で約7分の1でなければならない。
【0109】
免疫原性のDNA注入部位の増加する数の適度の好ましい効果は、EP前にDNAと接触する増加した細胞数に起因する可能性がある。50μLを越えて単一部位で注入量を増加させることによる遺伝子発現に、検出可能な効果がないことが証明されたので、DNAの同じ用量が5つの異なる部位にわたって分布され、それぞれは50μLの注入を受けた。複数部位の処理が、特に初期の時点で、単一部位、同じ用量処理と比較して、免疫原性効果を提供できるという事実は、脂肪EP DNA接種がより多くの脂肪細胞をDNAに曝露することで直接利益を得ることができるという証拠を示している。
【0110】
前記結果は、免疫応答が、より多くの脂肪細胞を含むことと、最適な電気穿孔パラメーターを提供することと、により増幅され得ることを示唆する。他の要因(例えばパルス持続期間、パルス数、パルス間遅延及びDNA濃度)はすべて、免疫応答の一因となり得る。ID-EPは用量を節約することを示したが、これらの免疫データは、脂肪EPが、ID-EPと同じ用量で同じように頑強な免疫応答を起こすことができたことを示す。脂肪組織には、IM-EPと関連する忍容性及び侵襲性のマイナス面なしで、筋肉と同様に、ID-EPより非常に多い用量に適応する可能性がある。実施例は、脂肪標的化DNAワクチンが、DNA送達及び電気穿孔パラメーターの最適化の後、免疫原性であることを実証する。この方法は、急速な及び持続した免疫反応を提供して、侵襲性針電極を必要としない。DNAの一定用量で、免疫応答の規模及び発現は両方とも、電気穿孔電圧及び注入部位の増加する数によって改善される。脂肪標的化EP DNA接種は、潜在的安全性、忍容性及びIM投与より優れた使いやすさを提供して、ID処理の用量または細胞交替の制約から損害を受けない。
前記装置は前記絶縁材料層のそれぞれを画定する第1および第2の筐体を更に備え、前記第1および第2の筐体は、前記第1および第2の電極の遠位端部に取り付けられる、請求項20に記載の装置。