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特開2024-54426ウイルソン病を処置するための遺伝子治療構築物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054426
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】ウイルソン病を処置するための遺伝子治療構築物
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/63 20060101AFI20240409BHJP
   C12N 15/55 20060101ALI20240409BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20240409BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20240409BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240409BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20240409BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240409BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20240409BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240409BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240409BHJP
   C12N 15/35 20060101ALN20240409BHJP
【FI】
C12N15/63 Z ZNA
C12N15/55
C12N15/864 100Z
C12N7/01
C12N5/10
A61K31/7088
A61P43/00 111
A61P3/00
A61K48/00
A61K35/76
C12N15/35
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024031460
(22)【出願日】2024-03-01
(62)【分割の表示】P 2021538754の分割
【原出願日】2020-01-03
(31)【優先権主張番号】62/788,324
(32)【優先日】2019-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/834,830
(32)【優先日】2019-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.LABRASOL
(71)【出願人】
【識別番号】513252910
【氏名又は名称】ウルトラジェニックス ファーマシューティカル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーン リビングストン
(72)【発明者】
【氏名】サミュエル ウォズワース
(57)【要約】
【課題】ウイルソン病を処置するための遺伝子治療構築物の提供。
【解決手段】本出願は、ウイルソン病(WD)を処置するための遺伝子治療における使用のための、短縮されているがなお機能的なATP7Bをコードするアデノ随伴ウイルスベクターに関する。本明細書で記載される短縮型ATP7Bは、野生型ATP7Bを超えるいくつかの利点(例えば、より高い有効性および改善された製造収量)を有する。本出願は概して、ウイルソン病(WD)を処置するための遺伝子治療におけるアデノ随伴ウイルスベクターおよびその使用法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2019年1月4日出願の米国仮特許出願第62/788,324号;および2019年4月16日出願の米国仮特許出願第62/834,830号(これらの開示は、全ての目的のためにその全体において本明細書に参考として援用される)に基づく利益および優先権を主張する。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式において電子提出され、その全体において参考として援用される配列表を含む。上記ASCIIコピー(作成日:2019年12月31日)は、名称ULP-003WO_SL_ST25.txtであり、大きさが49,846バイトである。
【0003】
発明の技術分野
本出願は概して、ウイルソン病(WD)を処置するための遺伝子治療におけるアデノ随伴ウイルスベクターおよびその使用法に関する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
ウイルソン病(WD)は、主に肝臓において、その後、神経系および他の組織において銅の蓄積を引き起こす常染色体劣性遺伝障害である。WDは、30,000人に対しておよそ1人に罹患し、第13染色体上の銅輸送ATPase 2(ATP7B)遺伝子における変異によって引き起こされる希な障害である。600超の特有のATP7B変異が存在する。ATP7Bは、主に肝細胞において発現され、銅の膜貫通輸送において機能する。ATP7Bタンパク質の機能がないことまたは低減は、肝細胞が胆汁へと銅を排出することの低減を生じ、肝臓疾患を引き起こす。適切な処置なしに時間が経過すると、高い銅レベルによって、生命を脅かす器官損傷が引き起こされ得る。
【0005】
肝臓のWDを有する患者は通常、小児期後期または思春期に現れ、急性肝炎、劇症肝不全、または進行性慢性肝疾患の特徴を示す。WDの神経症状発現は、代表的には、肝臓疾患より遅く現れ、大部分は、20年または30年で現れ、錐体外路症状、小脳症状、および大脳関連症状を含む。
【0006】
WDの医療処置の目的は、身体からの銅の毒性沈着を除去し、その再蓄積を防止することである。WDに関する現行の処置アプローチは、キレート剤(D-ペニシラミン、トリエンチン、および亜鉛塩)での毎日の経口治療である。内科的治療は、大部分において有効であるが、全てのWD患者において有効であるわけではない。肝移植は、劇症肝不全または進行性肝不全を呈するWD患者において治療選択肢である。しかし、移植レシピエントは、定常的な免疫抑制レジメンを維持して、拒絶を防止することが要求とされる。
【0007】
本発明は、短縮されているがなお機能的なATP7Bを発現する遺伝子を、アデノ随伴ウイルスベクターを用いて患者に送達することによって、WDの改善されかつ持続可能な処置の必要性に対処する。本発明の短縮型ATP7Bは、WDを処置するにあたって改善された有効性を有し、野生型およびATP7Bタンパク質の他の短縮型形態を超える製造の容易さおよび効率という利点を有する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の要旨
本発明は、遺伝子治療における組成物およびそれらの使用法を提供する。WDの処置において有用なアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターが、本明細書で提供される。1つの局面において、本発明は、5’-逆位末端反復(ITR)配列;プロモーター配列;金属結合ドメイン(MBD)1~3が欠失されているが、MBD3とMBD4との間の2個のセリン残基(S340およびS341)を含むセリンリッチループが存在する短縮型ヒト銅輸送ATPase 2(ATP7B)をコードする核酸配列;ならびに3’-ITR配列を含む組換え核酸構築物を提供する。
【0009】
別の局面において、本発明は、ウイルソン病の処置に有用な組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)であって、ここでrAAVは、AAVキャプシドおよびその中にパッケージされたベクターゲノムを含み、上記ベクターゲノムは、5’-逆位末端反復(ITR)配列;プロモーター配列;金属結合ドメイン(MBD)1~3が欠失されているが、MBD3とMBD4との間の2個のセリン残基(S340およびS341)を含むセリンリッチループが存在する短縮型ヒト銅輸送ATPase 2(ATP7B)をコードする核酸配列;ならびに3’-ITR配列を含むrAAVを提供する。
【0010】
本発明のこれらのおよび他の局面および特徴は、本出願の以下の節において記載される。
【0011】
本発明は、以下の図面を参照してより完全に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、金属結合ドメイン(MBD)1~3が欠失されているが、MBD3とMBD4との間の2個のセリン残基(S340およびS341)を含むセリンリッチループが存在する短縮型ヒト銅輸送ATPase 2(ATP7B)(「ATP7B Δ1-3-SS」または「ATP7B del1-3ネイティブ」)をコードするヌクレオチド配列を含む例示的ベクターゲノム構築物を示す例示的ダイアグラムである。例示的ベクターゲノム構築物の特徴は、以下で提供される:
【表1】
【0013】
図2図2は、例示的AAVベクター(DTC319)の模式図であり、その中で種々の重要な構成要素が示される。
【0014】
図3図3は、AAVベクターで宿主細胞に共トランスフェクトした場合に、パッケージングrAAVの中にRepおよびCap機能を提供する例示的プラスミド、pAAV2/8.KanR(p2123FH)AAV Rep/Capプラスミドの模式図である。
【0015】
図4図4は、AAVベクターおよびRep/Capプラスミドで宿主細胞に共トランスフェクトした場合の、rAAV生成のための例示的プラスミド、pAdDeltaF6(Kan)アデノウイルスヘルパープラスミドの模式図である。
【0016】
図5図5は、10、1010、または1011 ゲノムコピー(GC)/kgのATP7BcoFL(コドン最適化されている全長ヒトATP7B)のいずれかを注射したC3He-Atp7btx-j雌性マウス(丸によって表される)および1010または1011 GC/kgいずれかのその同じベクターを注射したC3He-Atp7btx-j雄性マウス(四角によって表される)における肝臓銅(μg/g)の散布図である。年齢を合わせた注射していない雄性および雌性ヘテロ接合性(Het)のおよびC3He-Atp7btx-jマウスに由来する銅レベルをまた、散布図に表す。
【0017】
図6図6は、ヒトATP7Bの完全または部分的コード配列をコードするAAVベクター(全長(FL)ヒトATP7Bをコードするヌクレオチド配列を有するAAVベクター;MBD 1~3が欠失されているが、MBD3とMBD4との間の2個のセリン残基(S340およびS341)を含むセリンリッチループが存在するヒトATP7B(ATP7B Δ1-3-SS)をコードするヌクレオチド配列を有するAAVベクター;またはMBD 1~4が欠失されているヒトATP7B(ATP7B Δ1-4)をコードするヌクレオチド配列を有するAAVベクター)のトランスフェクション後の宿主細胞から生成した全収量rAAV(GCにおける滴定)を示す棒グラフである。
【0018】
図7図7は、C3He-Atp7btx-jマウスに全長ヒトATP7B(ATP7B FL)、ATP7B Δ1-3-SS、またはATP7B Δ1-4を有するAAV8を注射した後にアッセイした尿中および肝臓銅レベル(それぞれ、四角および丸(μg/g))の散布図である。リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)を投与したC3He-Atp7btx-jマウスを、コントロール(ビヒクル)として供した。
【0019】
図8図8は、金属結合ドメイン(MBD)1~3が欠失されているが、MBD3とMBD4との間の2個のセリン残基(S340およびS341)を含むセリンリッチループが存在する短縮型ヒトATP7Bをコードし、AAV8またはAAV9いずれかのキャプシドをコードするAAVベクター(DTC319)のトランスフェクション後の宿主細胞から生成した全収量rAAV(GCにおいて滴定)を示す棒グラフである。
【0020】
図9図9は、ビヒクルコントロール(希釈緩衝液;WD)の静脈内注射またはネイティブATP7B Δ1-3-SS(DelA)を有するAAV8の注入を投与したC3He-Atp7btx-jマウスにおける肝臓銅蓄積レベル(μg/g 乾燥重量)の棒グラフである。棒グラフにおいて表される注射していない野生型マウス(WT)の肝臓銅蓄積レベルを、陰性コントロールとして供した。値は平均±SEM(平均標準誤差)として表した。
【0021】
図10図10は、酵素反応ベースの比色活性アッセイによって測定されるように、ビヒクルコントロール(希釈緩衝液;WD)の静脈内注射またはネイティブATP7B Δ1-3-SS(DelA)を有するAAV8の注入を投与したC3He-Atp7btx-jマウスにおけるセルロプラスミン活性の棒グラフである。注射されていない野生型(WT)マウスにおけるセルロプラスミン活性はまた、その同じ酵素反応ベースの比色活性アッセイによって測定されるように、その棒グラフにおいて表される。
【0022】
図11図11は、核拡大および肝細胞肥大、組織崩壊、炎症性浸潤、および肝細胞壊死に関して、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)スライドの標準的評価後の平均スコアの棒グラフである。
【0023】
図12図12は、PPIAポリAを伴うAAV9キャプシド、AAV2 Rep/145bpのITRを含む完全p5プロモーターを伴うITR、および金属結合ドメイン(MBD)1~3が欠失されているが、MBD3とMBD4との間の2個のセリン残基(S340およびS341)を含むセリンリッチループが存在する短縮型ヒト銅輸送ATPase 2(ATP7B)をコードするヌクレオチド配列を含む例示的ベクターゲノム構築物DTC327を示す例示的模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
発明の詳細な説明
本発明は、ウイルソン病(WD)を処置することにおいて使用するための薬剤および組成物を提供する。本明細書で記載されるとおりの本発明の核酸配列、ベクター、組換えウイルス、および関連する組成物は、WDを改善、防止、または治療するために使用され得る。
【0025】
別段注記されなければ、技術用語は、従来の使用法に従って使用される。分子生物学において共通する用語の定義は、Benjamin Lewin, Genes V、発行
Oxford University Press 1994(ISBN 0-19-854287-9);Kendrewら(編), The Encyclopedia of Molecular Biology, 発行 Blackwell Science Ltd., 1994(ISBN 0-632-02182-9);およびRobert A. Meyers(編), Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference, 発行 VCH Publishers, Inc., 1995(ISBN 1-56081-569-8)において見出され得る。
【0026】
本開示の種々の実施形態の検討を促進するために、具体的な用語の以下の説明が提供される:
【0027】
アデノ随伴ウイルス(AAV): ヒトおよびいくらかの他の霊長類の種に感染する、小さな複製欠損性の、エンベロープのないウイルス。AAVは、疾患を引き起こすことは知られておらず、非常に軽度の免疫応答を誘発する。AAVを利用する遺伝子治療ベクターは、分裂中の細胞および休止細胞の両方に感染し得、宿主細胞のゲノムへと組み込まれることなく、染色体外状態で持続し得る。これらの特徴は、AAVを遺伝子治療のための魅力的なウイルスベクターにしている。現在では、12の認識されているAAV血清型(AAV1~12)が存在する。
【0028】
投与/投与する: 被験体に任意の効果的な経路によって薬剤(例えば、治療剤(例えば、組換えAAV))を提供するまたは与えること。例示的な投与経路としては、注射(例えば、皮下、筋肉内、皮内、腹腔内、および静脈内)、経口、管内、舌下、直腸、経皮、鼻内、膣および吸入経路が挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
ATP7B Δ1-3-SS: 本明細書で使用される場合、ATP7B Δ1-3-SSとは、金属結合ドメイン(MBD)1~3が欠失されているが、MBD3とMBD4との間の2個のセリン残基(S340およびS341)を含むセリンリッチループが存在する短縮型ヒト銅輸送ATPase 2(ATP7B)に言及する。
【0030】
コドン最適化した: 「コドン最適化した」核酸とは、そのコドンが、特定のシステム(例えば、特定の種または種の群)における発現のために最適であるように変化させた核酸配列に言及する。例えば、核酸配列は、哺乳動物細胞または特定の哺乳動物種(例えば、ヒト細胞)における発現のために最適化され得る。コドン最適化は、そのコードされるタンパク質のアミノ酸配列を変化させない。
【0031】
エンハンサー: プロモーターの活性を増大させることによって、転写速度を増大させる核酸配列。
【0032】
イントロン: タンパク質のコード情報を含まない遺伝子内のDNAの伸長部。イントロンは、メッセンジャーRNAの翻訳前に除去される。
【0033】
逆位末端反復配列(ITR): 効率的な複製のために必要とされるアデノ随伴ウイルスのゲノムにおける対称的な核酸配列。ITR配列は、AAV DNAゲノムの各末端に位置する。上記ITRは、ウイルスDNA合成のための複製起点として働き、ベクター被包化のために必要とされる。
【0034】
単離された: 「単離された」生物学的構成要素(例えば、核酸分子、タンパク質、ウイルスまたは細胞)は、その構成要素が天然に存在する生物の細胞もしくは組織、または生物自体における他の生物学的構成要素(例えば、他の染色体および染色体外DNAおよびRNA、タンパク質ならびに細胞)から実質的に分離または精製されている。「単離された」核酸分子およびタンパク質は、標準的な精製法によって精製されたものを含む。上記用語はまた、宿主細胞において組換え発現によって調製された核酸分子およびタンパク、ならびに化学合成された核酸分子およびタンパク質を含む。
【0035】
作動可能に連結された: 第1の核酸配列は、この第1の核酸配列が、第2の核酸配列と機能的な関係性に配置されている場合に、この第2の核酸配列と作動可能に連結されている。例えば、プロモーターは、このプロモーターが、コード配列の転写または発現に影響を及ぼす場合に、そのコード配列に作動可能に連結されている。概して、作動可能に連結されたDNA配列は連続しており、2つのタンパク質コード領域を結合する必要がある場合、同じリーディングフレームにある。
【0036】
薬学的に受容可能なキャリア: 本開示において有用な薬学的に受容可能なキャリア(ビヒクル)は、従来どおりである。E. W. MartinによるRemington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Co., Easton, Pa., 第15版(1975))は、1またはこれより多くの治療用化合物、分子または薬剤の薬学的送達に適した組成物および製剤を記載する。
【0037】
概して、上記キャリアの性質は、使用されている特定の投与様式に依存する。例えば、非経口製剤は通常、薬学的におよび生理学的に受容可能な流体(例えば、水、生理食塩水、平衡化塩類溶液、水性デキストロース、グリセロールなど)をビヒクルとして含む注射用流体を含む。固形の組成物(例えば、散剤、丸剤、錠剤またはカプセル剤の形態)に関しては、従来の非毒性固体キャリアは、例えば、製薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、またはステアリン酸マグネシウムを含み得る。生物学的に中性のキャリアに加えて、投与されるべき薬学的組成物は、微量の非毒性補助物質(例えば、湿潤剤または乳化剤、保存剤、およびpH緩衝化剤など(例えば、酢酸ナトリウムまたはソルビタンモノラウレート))を含み得る。
【0038】
疾患を防止する、処置する、または改善する(preventing, treating or ameliorating a disease): 疾患(例えば、WD)を「防止する」とは、疾患の完全な発生を阻害することをいう。「処置する」とは、疾患または疾患が発生し始めた後の病的状態(例えば、WD)の徴候または症状を改善する、治療的介入をいう。「改善する」とは、疾患(例えば、WD)の徴候または症状の数または重篤度の低減をいう。
【0039】
プロモーター: 核酸(例えば、遺伝子)の転写を指示する/開始するDNAの領域。プロモーターは、転写開始部位の近くに必要な核酸配列を含む。
【0040】
精製された: 用語「精製された」は、絶対的な純度を要求しない;むしろ、それは相対的な用語として意図される。従って、例えば、精製されたペプチド、タンパク質、ウイルス、または他の活性化合物は、天然に関連付けられたタンパク質および他の夾雑物から完全にまたは部分的に単離されているものである。ある特定の実施形態において、用語「実質的に精製された」とは、細胞、細胞培養培地、または他の粗製調製物から単離され、その最初の調製物の種々の構成要素(例えば、タンパク質、細胞デブリ、および他の構成要素)を除去するために分画に供された、ペプチド、タンパク質、ウイルスまたは他の活性化合物に言及する。
【0041】
組換え: 組換え核酸分子は、天然に存在しない配列を有するか、または2つの別の方法で分離された配列セグメントの人工的な組み合わせによって作製される配列を有するものである。この人工的な組み合わせは、化学合成によって、または核酸分子の単離されたセグメントの人工的な操作によって(例えば、遺伝子工学技術によって)達成され得る。
【0042】
同様に、組換えウイルスは、天然に存在しない配列(例えば、ゲノム配列)または異なる由来の少なくとも2つの配列の人工的組み合わせによって作製される配列を含むウイルスである。用語「組換え」はまた、天然の核酸分子、タンパク質またはウイルスの一部の付加、置換、または欠失によってのみ変更された核酸、タンパク質およびウイルスを含む。本明細書で使用される場合、「組換えAAV」とは、組換え核酸分子(例えば、短縮型ヒトATP7Bをコードする核酸分子(例えば、配列番号1または配列番号15)をコードする組換え核酸分子)がパッケージされたAAV粒子をいう。
【0043】
配列同一性: 2もしくはこれより多くの核酸配列、または2もしくはこれより多くのアミノ酸配列の間の同一性または類似性は、その配列間の同一性または類似性に関して表される。配列同一性は、パーセンテージ同一性に関して測定され得る;パーセンテージが高いほど、配列はより同一である。配列類似性は、パーセンテージ類似性に関して測定され得る(保存的アミノ酸置換が考慮される);パーセンテージが高いほど、配列はより類似である。核酸またはアミノ酸配列のホモログまたはオルソログは、標準的方法を使用して整列される場合、比較的高い程度の配列同一性/類似性を有する。この相同性は、そのオルソログのタンパク質またはcDNAが、関係性がより遠い種(例えば、ヒト配列およびC.elegans配列)と比較して、関係性がより近い種(例えば、ヒト配列およびマウス配列)に由来する場合により顕著である。
【0044】
比較のための配列のアラインメント法は、当該分野で周知である。種々のプログラムおよびアラインメントアルゴリズムは、以下に記載される: Smith & Waterman, Adv. Appl. Math. 2:482, 1981; Needleman & Wunsch, J. Mol. Biol. 48:443, 1970: Pearson & Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444, 1988; Higgins & Sharp, Gene, 73:237-44, 1988; Higgins & Sharp, CABIOS5:151-3, 1989; Corpetら, Nuc. Acids
Res. 16:10881-90, 1988; Huangら Computer
Appls. in the Biosciences 8, 155-65, 1992:およびPearsonら, Meth. Mol. Rio. 24:307-31, 1994。Altschulら, J. Mol. Biol. 215:403-10, 1990は、配列アラインメント法および相同性計算の詳細な考慮事項を示す。
【0045】
NCBI Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)(Altschulら, J. Mol. Biol. 215:403-10, 1990)は、配列分析プログラム、blastp、blastn、blastx、tblastnおよびtblastxとともに使用するために、National Center for Biological Information(NCBI)を含むいくつかの情報源から、およびインターネット上で入手可能である。さらなる情報は、NCBIウェブサイトで見出され得る。
【0046】
血清型: 抗原の特徴的なセットによって区別される、関連性が近い微生物(例えば、ウイルス)の群。
【0047】
Stuffer配列: 2つの核酸特徴の間に(例えば、プロモーターとコード配列との間に)所望の間隔を作り出すために、または核酸分子が所望の長さのものであるように、核酸分子を伸長させるために代表的には使用されるより大きな核酸分子(例えば、ベクター)内部に含まれるヌクレオチドの配列をいう。Stuffer配列は、タンパク質コード情報を含まず、未知/合成由来/および/またはより大きな核酸分子の内部の他の核酸配列に関連しないものであり得る。
【0048】
被験体: 生きている多細胞の脊椎のある生物(ヒトおよび非ヒト哺乳動物を含むカテゴリー)。
【0049】
合成の: 実験室において人工的手段によって生成される。例えば、合成核酸は、実験室において化学合成され得る。
【0050】
治療上有効な量: 薬剤で処置される被験体において、または細胞において、所望の効果を達成するために十分な、特定の医薬または治療剤(例えば、組換えAAV)の量。上記薬剤の有効量は、処置されている被験体または細胞、および治療用組成物の投与様式が挙げられるが、これらに限定されないいくつかの要因に依存する。
【0051】
ベクター: ベクターは、ベクターが宿主細胞において複製するおよび/または組み込まれる能力を破壊することなく、外来核酸の挿入を可能にする核酸分子である。ベクターは、宿主細胞において複製することを可能にする核酸配列(例えば、複製起点)を含み得る。ベクターはまた、1またはこれより多くの選択マーカー遺伝子および他の遺伝的エレメントを含み得る。発現ベクターは、挿入された遺伝子の転写および翻訳を可能にするために必要な調節配列を含むベクターである。本明細書中のいくつかの実施形態において、上記ベクターは、AAVベクターである。
【0052】
別段説明されなければ、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。単数形「1つの、ある(a)」、「1つの、ある(an)」、および「その、この、上記(the)」は、文脈が別段明確に示さなければ、複数形への言及を含む。「AまたはBを含む」とは、A、またはB、またはAおよびBを含むことを意味する。核酸またはポリペプチドに関して与えられる全ての塩基サイズまたはアミノ酸サイズ、および全ての分子量または分子質量値が、近似値であり、説明のために提供されることは、さらに理解されるべきである。本明細書で記載されるものに類似または等価な方法および材料が本開示の実施または試験において使用され得るものの、適切な方法および材料は、以下に記載される。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、それらの全体において参考として援用される。矛盾する場合、本明細書(用語の説明を含む)が優先する、さらに、上記材料、方法および例は、例証に過ぎず、限定ではないことが意図される。
【0053】
ウイルスベクター
いくつかの局面において、本開示は、AAV 5’-逆位末端反復(ITR)配列、プロモーター配列、ATP7B Δ1-3-SSをコードする核酸配列(例えば、配列番号1または配列番号15)、およびAAV 3’-逆位末端反復(ITR)配列を含むゲノムを含む組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを提供する。
【0054】
いくつかの実施形態において、上記ゲノムは、エンハンサー、イントロン、コンセンサスKozak配列、および/または本明細書で記載されるとおりのポリアデニル化シグナルをさらに含み得る。いくつかの実施形態において、上記組換えベクターは、1またはこれより多くのstuffer核酸配列をさらに含み得る。1つの実施形態において、stuffer核酸配列は、上記イントロンと、ATP7Bの部分的または完全なコード配列との間に置かれている。
【0055】
本明細書で記載される種々の実施形態において、上記組換えウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。上記AAVベクターは、血清型1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12のAAVベクター(すなわち、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、またはAAV12)、ならびにヒトおよび非ヒト霊長類組織から単離された100を超える改変体のうちのいずれか1つであり得る。例えば、Choiら, 2005, Curr Gene Ther. 5: 299-310, 2005およびGaoら, 2005, Curr Gene Ther. 5: 285-297を参照のこと。任意の血清型のAAVベクターは、本発明において使用され得、AAV血清型の選択は、遺伝子治療のために標的化される細胞タイプに一部依存する。WDの処置に関しては、肝臓は、関連する標的器官のうちの1つである。いくつかの実施形態において、上記AAVベクターは、血清型9(AAV9)、血清型8(AAV8)、血清型5(AAV5)、またはこれらの改変体から選択される。例示的実施形態において、上記AAVベクターは、血清型9(AAV9)またはこれらの改変体である。
【0056】
いくつかの実施形態において、上記組換えAAVベクターは、AAV ITR配列を含み、これは、AAVおよびアデノウイルスヘルパー機能がtransで提供される場合に、ベクターDNA複製起点およびベクターゲノムのパッケージングシグナルの両方として機能する。さらに、上記ITRは、大きなRepタンパク質による1本鎖ヌクレオチド内部ニック形成(single-stranded endonucleatic nicking)の標的として働き、個々のゲノムを複製中間体から分離する。
【0057】
いくつかの実施形態において、上記5’-ITR配列は、AAV2に由来する。いくつかの実施形態において、上記3’-ITR配列は、AAV2に由来する。いくつかの実施形態において、上記5’-ITR配列および上記3’-ITR配列は、AAV2に由来する。いくつかの実施形態において、上記5’-ITR配列および/または上記3’-ITR配列は、AAV2に由来し、配列番号2を含むかまたはからなる。他の実施形態において、上記5’-ITR配列および/または上記3’-ITR配列は、非AAV2供給源に由来する。
【0058】
いくつかの例示的実施形態において、上記AAVベクターは、AAV血清型9(AAV9)ベクターであり、上記ベクターは、エンハンサー、プロモーター、イントロン、ATP7B Δ1-3-SSをコードする核酸配列(例えば、配列番号1または配列番号15)、および本明細書で記載されるポリアデニル化シグナルを含む。いくつかの実施形態において、上記AAV9ベクターは、2つのAAV2、AAV8、またはAAV9 逆位末端反復(ITR)配列をさらに含む:一方は、上記エンハンサーの5’側および一方は、上記ポリアデニル化シグナルの3’側。例示的実施形態において、上記AAV9ベクターは、2つのAAV2逆位末端反復(ITR)配列を含む:一方は、上記エンハンサーの5’側および一方は、上記ポリアデニル化シグナルの3’側。いくつかの実施形態において、上記AAV2 ITR配列は、配列番号2を含むかまたはからなる。別の例示的実施形態において、上記AAV9ベクターは、2つのAAV9逆位末端反復(ITR)配列を含む:一方は、上記エンハンサーの5’側および一方は、上記ポリアデニル化シグナルの3’側。
【0059】
いくつかの例示的実施形態において、本開示は、AAV 5’-逆位末端反復(ITR)配列、プロモーター配列、配列番号1によって表され、ネイティブATP7B Δ1-3-SSをコードする核酸配列、およびAAV 3’-逆位末端反復(ITR)配列を含むベクターゲノムを含む組換え核酸を提供する。いくつかの例示的実施形態において、本開示は、AAV 5’-逆位末端反復(ITR)配列、プロモーター配列、配列番号15によって表され、コドン最適化したATP7B Δ1-3-SSをコードする核酸配列、およびAAV 3’-逆位末端反復(ITR)配列を含むベクターゲノムを含む組換え核酸を提供する。いくつかの例示的実施形態において、本開示は、AAV 5’-逆位末端反復(ITR)配列、プロモーター配列、配列番号1によって表され、ネイティブATP7B Δ1-3-SSをコードする核酸配列を含む、配列番号14からなるベクターゲノム、またはそのベクターゲノムを含むアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを提供する。
【0060】
さらなる局面において、本出願は、WDの処置において有用なベクターゲノムに相当する組換え核酸配列を提供する。いくつかの実施形態において、本出願は、配列番号14と80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはこれより高く同一である組換え核酸を提供する。従って、本出願は、配列番号14と少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%)同一である組換え核酸を提供する。例示的実施形態において、本出願は、AAV 5’-逆位末端反復(ITR)配列、プロモーター配列、配列番号1によって表され、ネイティブATP7B Δ1-3-SSをコードする核酸配列、およびAAV 3’-逆位末端反復(ITR)配列を含むベクターゲノムに相当する組換え核酸配列であって、ここで上記ベクターゲノムは、配列番号14を含むかまたはからなる組換え核酸配列を提供する。例示的実施形態において、本出願は、AAV 5’-逆位末端反復(ITR)配列、プロモーター配列、配列番号15によって表され、コドン最適化したATP7B Δ1-3-SSをコードする核酸配列、およびAAV 3’-逆位末端反復(ITR)配列を含むベクターゲノムに相当する組換え核酸配列を提供する。
【0061】
プロモーター:
本明細書で記載の種々の局面において、導入遺伝子発現、例えば、ATP7B Δ1-3-SS(例えば、配列番号8によって表されるATP7B Δ1-3-SSのアミノ酸配列)の発現を駆動および調節する助けとなるプロモーター配列を含むAAVベクターが、提供される。例示的実施形態において、上記プロモーター配列は、選択された5’-ITR配列とATP7B Δ1-3-SSのコード配列(例えば、配列番号1または配列番号15)との間に位置する。いくつかの実施形態において、上記プロモーター配列は、エンハンサー配列の下流に位置する。いくつかの実施形態において、上記プロモーター配列は、イントロン配列の上流に位置する。いくつかの例証的実施形態において、本明細書で記載されるベクターは、トランスサイレチン(TTR)プロモーターを使用し、これは、必要に応じて、トランスサイレチンエンハンサー(enTTR)の下流に位置し得る。
【0062】
いくつかの実施形態において、上記プロモーターは、トランスサイレチン(TTR)プロモーター、ニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーター、サイトメガロウイルス最初期遺伝子(CMV)プロモーター、サイロキシン結合グロブリン(TBG)プロモーター、α1アンチトリプシン(A1AT)プロモーター、およびCAGプロモーター(CMV初期エンハンサーエレメント、そのプロモーター、第1のエキソン、およびCBA遺伝子の第1のイントロン、およびウサギβ-グロビン遺伝子のスプライスアクセプターを使用して構築される)から選択される。例示的実施形態において、上記プロモーターは、上記TTRプロモーターである。1つの実施形態において、上記TTRプロモーターは、配列番号12を含むかまたはからなる。
【0063】
プロモーターに加えて、AAVベクターは、他の適切な転写開始、終結、エンハンサー配列、および効率的なRNAプロセシングシグナルを含み得る。以下でさらに詳細に記載されるように、このような配列は、スプライシングシグナルおよびポリアデニル化(ポリA)シグナル、発現を増強する調節エレメント(すなわち、WPRE)、細胞質mRNAを安定化する配列、翻訳効率を増強する配列(すなわち、Kozakコンセンサス配列)、およびタンパク質安定性を増強する配列を含む。
【0064】
いくつかの実施形態において、上記AAVベクターは、コンセンサスKozak配列をさらに含むベクターゲノムを含む。いくつかの実施形態において、上記コンセンサスKozak配列は、イントロン配列の下流に位置する。1つの実施形態において、上記コンセンサスKozak配列は、GCCGCC(配列番号11)である。当業者によって理解されるように、上記コンセンサスKozak配列は、代表的には、コード配列の直ぐ上流;この場合、短縮型ATP7B(ATP7B Δ1-3-SS)のコード配列(例えば、配列番号1または配列番号15)の直ぐ上流に位置する。当業者によって認識されるように、上記コンセンサスKozak配列は、治療用ポリペプチド、例えば、短縮型ATP7B(ATP7B Δ1-3-SS)(例えば、配列番号1または配列番号15)の開始コドンに相当するATG残基を共有すると考えられ得る。開示の単純さのために、上記コンセンサスKozak配列は、本明細書で記載される場合、治療用ポリペプチド、例えば、短縮型ATP7Bをコードする核酸(配列番号1または配列番号15によってコードされるATP7B Δ1-3-SS)と共有されない領域に相当する6個のヌクレオチドの配列を含む。
【0065】
ATP7Bポリペプチド:
本明細書で記載されるように、本発明の局面は、AAV 5’-逆位末端反復(ITR)配列、プロモーター配列、配列番号8のアミノ酸配列を有する短縮型ヒトATP7B(ATP7B Δ1-3-SS)のコード配列(例えば、配列番号1または配列番号15)、およびAAV 3’-逆位末端反復(ITR)配列を含むゲノムを含む組換えベクターを提供する。ATP7Bは、銅移行のための細胞膜を通過する経路を形成する8個の膜貫通ドメイン;および6個の金属結合ドメイン(MBD)を有する大きなN末端(各々は、およそ70アミノ酸を含む)および高度に保存された金属結合モチーフGMxCxxC(ここでxは任意のアミノ酸である)を有する。標準配列(アイソフォームaとも称され、最も長いアイソフォームである; NCBI Reference Sequence:
NP_000044.2)に加えて、4つのさらなるアイソフォームが公知である: NCBI Reference Sequences 4つのさらなるアイソフォームが公知である: NCBI Reference Sequences NP_ 001005918.1、NP _001230111.1、NP _001317507.1、NP_ 001317 508.1。本明細書で記載される組成物および方法は、疾患を引き起こす非機能的ATP7B改変体タンパク質を有する被験体を処置するために使用され得る。
【0066】
1つの実施形態において、短縮型ヒトATP7B(ATP7B Δ1-3-SS)のコード配列(例えば、配列番号1または配列番号15)は、配列番号8に記載されるとおりのアミノ酸を有するタンパク質をコードする。配列番号1は、MBD 1~3が欠失したネイティブヒトATP7BのcDNAを提供する。配列番号8は、野生型ATP7B全長タンパク質配列の位置340および341に相当する2つのセリン残基が存在するDEL1-3 ネイティブまたはATP7B Δ1-3-SSタンパク質を表す。
【0067】
本明細書で記載される種々の実施形態において、短縮型ATP7B(ATP7B Δ1-3-SS)のコード配列(例えば、配列番号1または配列番号15)を含むゲノムを含むベクターが、提供される。
【0068】
いくつかの実施形態において、コドン最適化したヒトATP7Bの操作されたcDNA(例えば、配列番号15)を含むゲノムを含むベクターが、提供される。本明細書で記載されるベクターで送達されるポリペプチドは、MBD 1~3が欠失された短縮型ATP7B(ATP7B Δ1-3-SS)を含み、これは、WDを処置することにおける使用に適している。
【0069】
いくつかの実施形態において、本明細書で記載されるベクターで発現されるポリペプチドは、短縮型ヒトATP7B(配列番号8)である。
【0070】
ベクターエレメント:
いくつかの実施形態において、上記AAVベクターは、1またはこれより多くのエンハンサー配列をさらに含むゲノムを含む。1つの実施形態において、上記エンハンサーは、トランスサイレチンエンハンサー(enTTR)、サイトメガロウイルス最初期遺伝子(CMV)エンハンサー、ニワトリβ-アクチン(CBA)エンハンサー、En34エンハンサー、およびアポリポプロテイン(ApoE)エンハンサーから選択される。例示的実施形態において、上記エンハンサーは、上記enTTRエンハンサーである。1つの実施形態において、上記enTTRエンハンサーは、配列番号3を含むかまたはからなる。
【0071】
いくつかの実施形態において、上記AAVベクターは、1またはこれより多くのイントロン配列をさらに含むゲノムを含む。1つの実施形態において、上記イントロンは、SV40 Small Tイントロン、ウサギヘモグロビンサブユニットβ(rHBB)イントロン、ヒトβグロビンIVS2イントロン、β-グロビン/IgGキメライントロン(Promegaキメライントロン)、またはhFIXイントロンから選択される。1つの例示的実施形態において、上記イントロンは、上記SV40 Small Tイントロンである。1つの実施形態において、上記SV40 Small Tイントロン配列は、配列番号4を含むかまたはからなる。別の例示的実施形態において、上記イントロンは、上記rHBBイントロンである。1つの実施形態において、上記rHBBイントロン配列は、配列番号5を含むかまたはからなる。
【0072】
いくつかの実施形態において、上記AAVベクターは、ポリアデニル化シグナル配列をさらに含むゲノムを含む。1つの実施形態において、上記ポリアデニル化シグナル配列は、SV40ポリアデニル化シグナル配列、ウシ成長ホルモン(BGH)ポリアデニル化シグナル配列、およびウサギβグロビンポリアデニル化シグナル配列から選択される。例示的実施形態において、上記ポリアデニル化シグナル配列は、上記ウシ成長ホルモン(BGH)ポリアデニル化シグナル配列である。1つの実施形態において、上記BGHポリアデニル化シグナル配列は、配列番号6を含むかまたはからなる。別の例示的実施形態において、上記ポリアデニル化シグナル配列は、上記SV40ポリアデニル化シグナル配列である。1つの実施形態において、上記SV40ポリアデニル化シグナル配列は、配列番号7を含むかまたはからなる。
【0073】
AAVキャプシド:
別の局面において、本出願は、WDの処置における遺伝子治療のための薬剤として有用な組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)であって、ここで上記rAAVは、AAVキャプシド、および本明細書で記載されるとおりのベクターゲノムを含むrAAVを提供する。いくつかの実施形態において、上記AAVキャプシドは、血清型9、8、1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、rh10、またはhu37のAAV(すなわち、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAVrh10、またはAAVhu37)に由来する。例示的実施形態において、上記AAVベクターは、AAV血清型9(AAV9)ベクター、AAV9改変体ベクター、AAV血清型8(AAV8)ベクター、AAV血清型5(AAV5)ベクター、またはAAV血清型2(AAV2)ベクターである。ある特定の実施形態において、上記AAVキャプシドおよびベクターは、AAV9血清型に由来する。ある特定の実施形態において、上記AAVキャプシドおよびベクターは、AAV8血清型に由来する。
【0074】
上記AAV9キャプシドは、多数のAAV9 VPタンパク質から構成される自己アセンブルされるAAVキャプシドである。上記AAV9 VPタンパク質は、代表的には、配列番号10のキャプシドタンパク質VP1アミノ酸配列(GenBank Accession: AAS99264)をコードする配列番号9の核酸配列または配列番号9の核酸配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%同一である配列をコードする選択的スプライス改変体として発現される。これらのスプライス改変体は、配列番号10の異なる長さのタンパク質を生じる。ある特定の実施形態において、AAV9キャプシドは、AAS99264と99%同一または配列番号10と99%同一であるアミノ酸配列を有するAAV9キャプシドタンパク質を含む。米国特許第7,906,111号、および国際公開番号WO/2005/033321もまた参照のこと。本明細書で使用される場合、AAV9改変体は、例えば、国際公開番号WO/2016/049230、米国特許第8,927,514号、米国公開番号2015/0344911、および米国特許第8,734,809号に記載されるものを含む。
【0075】
本明細書で示されるように、上記配列(例えば、配列番号9の核酸配列またはAAV9キャプシドタンパク質VP1をコードする配列番号10のアミノ酸配列)によってコードされるAAV9キャプシド配列およびキャプシドタンパク質は、rAAVの生成において有用である。しかし、他の実施形態において、別のAAVキャプシドが選択される。組織特異性は、キャプシドタイプによって決定される。適切な標的(例えば、肝臓、筋、肺、またはCNS)を形質導入するAAV血清型は、例えば、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV6.2、AAV7、AAV8、AAV9、AAVrh10、AAVrh64Rl、AAVrh64R2、AAVrh8を含むAAVウイルスベクターのキャプシドの供給源として選択され得る。例えば、米国特許公開番号2007/0036760;米国特許公開番号2009/0197338;およびEP1310571を参照のこと。国際公開番号WO 2003/042397(AAV7および他のシミアンAAV)、米国特許第7,282,199号および同第7,790,449号(AAV8)も参照のこと。さらに、未だ発見されていないAAV、またはこれに基づく組換えAAVは、AAVキャプシドの供給源として使用され得る。これらの文書はまた、AAVを生成するために選択され得る他のAAVを記載し、参考として援用される。いくつかの実施形態において、上記ウイルスベクターにおける使用のためのAAVキャプシドは、前述のAAVキャプシドまたはそのコードする核酸のうちの1つの変異誘発によって(すなわち、挿入、欠失、または置換によって)生成され得る。
【0076】
組換え核酸分子を含む宿主細胞
いくつかの局面において、組換え核酸分子、ウイルスベクター、例えば、AAVベクター、または本明細書で開示されるrAAVを含む宿主細胞が、本明細書で提供される。具体的実施形態において、上記宿主細胞は、AAVの増殖に適切であり得る。
【0077】
非常に広い範囲の宿主細胞が使用され得る(例えば、細菌、酵母、昆虫、哺乳動物の細胞など)。いくつかの実施形態において、上記宿主細胞は、組換えAAV(rAAV)の生成に適した細胞(または細胞株)、例えば、HeLa、Cos-7、HEK293、A549、BHK、Vero、RD、HT-1080、ARPE-19、またはMRC-5細胞であり得る。ある特定の実施形態において、本発明の宿主細胞株は、HeLa細胞株(例えば、HeLa S3)である。別の実施形態において、本発明の宿主細胞株は、HEK293細胞株である。
【0078】
上記組換え核酸分子またはベクターは、当該分野で公知の任意の適切な方法を使用して、宿主細胞培養物へと送達され得る。いくつかの実施形態において、ゲノムに挿入された上記組換え核酸分子またはベクターを有する適切な宿主細胞株が、生成される。いくつかの実施形態において、本明細書で記載されるAAVベクターを含む安定な宿主細胞株が生成される。上記宿主培養物へのAAVベクターのトランスフェクション後に、上記rAAVの、上記宿主ゲノムへの組み込みは、Nakaiら, Nature Genetics (2003) 34:297-302; Philpottら, Journal of Virology (2002) 76(11):5411-5421、およびHowdenら, J. Gene Med. (2008) 10:42-50によって記載されるように、種々の方法(例えば、抗生物質選択、蛍光活性化セルソーティング、サザンブロット、PCRベースの検出、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション)によってアッセイされ得る。さらに、安定な細胞株が、当該分野で周知のプロトコール(例えば、Clark, Kidney International Vol. 61 (2002):S9-S15、およびYuanら, Human Gene Therapy
(2011) 22(5):613-24に記載されるもの)に従って樹立され得る。
【0079】
遺伝子治療のための組換えAAV:
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、Parvoviridae科およびDependovirus属に属する。AAVは、直線状の1本鎖DNAゲノムをパッケージする、小さなエンベロープのないウイルスである。AAV DNAのセンス鎖およびアンチセンス鎖の両方が、等しい頻度でAAVキャプシドへとパッケージされる。
【0080】
上記AAVゲノムは、2つのオープンリーディングフレーム(ORF)に隣接する2つの逆位末端反復配列(ITR)によって特徴づけられる。上記AAV2ゲノム、例えば、上記ITRの最初の125ヌクレオチドは、パリンドロームであり、これは、塩基対合を最大にするようにそれら自体を折りたたんで、T字型ヘアピン構造を形成する。上記ITRの他の20塩基(D配列といわれる)は、対合しないままである。上記ITRは、AAV DNA複製にとって重要なcis作用性配列である;上記ITRは複製起点であり、DNAポリメラーゼによる第2鎖合成のプライマーとして働く。この合成の間に形成される2本鎖DNA(これは、複製形態モノマーといわれる)は、第2回の自己感作複製のために使用され、複製形態ダイマーを形成する。これらの2本鎖中間体は、鎖置換機構を介して処理され、パッケージングに使用される1本鎖DNAおよび転写に使用される2本鎖DNAを生じる。Rep結合エレメントおよび末端分離部位(TRS)が、ITR内に位置する。これらの特徴は、2本鎖中間体を処理するために、AAV複製の間にウイルス調節タンパク質Repによって使用される。AAV複製におけるそれらの役割に加えて、上記ITRはまた、AAVゲノムパッケージング、転写、許容できない条件下での負の調節、および部位特異的組み込みにとって必須である(Days and Berns, Clin. Microbiol. Rev. (2008) 21(4):583-593)。
【0081】
AAVの左側のORFは、4つのタンパク質- Rep78、Rep68、Rep52およびRep40をコードするRep遺伝子を含む。右側のORFは、3つのウイルスキャプシドタンパク質(VP1、VP2およびVP3)を生成するCap遺伝子を含む。そのAAVキャプシドは、正二十面体対称へと配置される60のウイルスキャプシドタンパク質を含む。VP1、VP2およびVP3は、1:1:10モル比で存在する(Daya
and Berns, Clin. Microbiol. Rev.(2008) 21(4):583-593)。
【0082】
AAVは、現在のところ、遺伝子治療のために最も頻繁に使用されるウイルスのうちの1つである。AAVは、ヒトおよび数種の他の霊長類種に感染するものの、疾患を引き起こすことは知られておらず、非常に軽度の免疫応答を誘発する。AAVを利用する遺伝子治療ベクターは、分裂中の細胞および休止細胞の両方に感染し得、宿主細胞のゲノムに組み込まれることなく、染色体外の状態で持続する。AAVの有利な特徴が原因で、本開示は、本明細書で開示される組換え核酸分子および方法のためのAAVの使用を企図する。
【0083】
AAVは、標的細胞に結合し、進入し、核に入る能力、長期間にわたって核において発現される能力、および低毒性を含め、遺伝子治療ベクターのいくつかの望ましい特徴を有する。しかし、AAVゲノムのサイズは小さいことから、組み込まれ得る異種DNAのサイズには制限がある。この問題を最小限にするために、Repおよび組み込み効率エレメント(IEE)をコードしないAAVベクターが、構築されている。上記ITRは、これらがパッキングに必要とされるcisシグナルであることから保持される(Daya and Berns, Clin. Microbiol. Rev. (2008) 21(4):583-593)。
【0084】
遺伝子治療に適したrAAVを生成するための方法は、当該分野で周知であり(例えば、米国特許出願公開2012/0100606;同第2012/0135515;同第2011/0229971;および同第2013/0072548;ならびにGhoshら, Gene Ther. (2006)13(4):321-329を参照のこと)、本明細書で開示される組換え核酸分子および方法とともに利用され得る。
【0085】
いくつかの局面において、本出願は、ウイルソン病(WD)の処置のための、本明細書で開示されるrAAVの使用に関し、ここで上記rAAVは、AAVキャプシドおよびその中にパッケージされたベクターゲノムを含む。いくつかの実施形態において、上記ベクターは、作動可能に連結された構成要素として、5’から3’の順に:5’-逆位末端反復(ITR)配列、プロモーター配列、短縮型ヒトATP7B(ATP7B Δ1-3-SS)のコード配列(例えば、配列番号1または配列番号15)、および3’-逆位末端反復(ITR)配列を含むゲノムを含む。例示的実施形態において、上記ベクターゲノムはまた、上記プロモーター配列の上流にエンハンサー配列、上記プロモーターの下流にイントロン、および上記3’-ITRの上流にポリアデニル化配列を含む。従って、別の例示的実施形態において、上記ベクターゲノムは、作動可能に連結された構成要素として、5’から3’の順に:5’-逆位末端反復(ITR)配列、エンハンサー配列、プロモーター配列、イントロン配列、短縮型ヒトATP7B(ATP7B Δ1-3-SS)のコード配列(例えば、配列番号1または配列番号15)、ポリアデニル化シグナル配列、および3’-逆位末端反復(ITR)配列を含む。さらなる例示的実施形態において、上記ベクターゲノムは、作動可能に連結された構成要素として、5’から3’の順に:AAV2 5’-ITR配列、enTTRエンハンサー、TTRプロモーター、SV40 Small Tイントロン、短縮型ヒトATP7B(ATP7B Δ1-3-SS)のコード配列(例えば、配列番号1または配列番号15)、SV40ポリアデニル化シグナル配列、およびAAV2 3’-ITRを含む。いくつかの実施形態において、上記ベクターゲノムは、上記イントロン配列の下流に位置したコンセンサスKozak配列をさらに含む。いくつかの実施形態において、上記キャプシドは、AAV9キャプシドである。
【0086】
いくつかの局面において、本出願は、ウイルソン病(WD)の処置のための本明細書で開示されるrAAVの使用に関し、ここで上記rAAVは、AAVキャプシドおよびその中にパッケージされたベクターゲノムを含む。いくつかの実施形態において、上記ベクターゲノムは、作動可能に連結された構成要素として、5’から3’の順に:5’-逆位末端反復(ITR)配列、プロモーター配列、短縮型ヒトATP7B(ATP7B Δ1-3-SS)のコード配列(例えば、配列番号1)、および3’-逆位末端反復(ITR)配列を含む。例示的実施形態において、上記ベクターゲノムはまた、上記プロモーター配列の上流にエンハンサー配列、上記プロモーターの下流にイントロン、および上記3’-ITRの上流にポリアデニル化配列を含む。従って、別の例示的実施形態において、上記ベクターは、作動可能に連結された構成要素として、5’から3’の順に:5’-逆位末端反復(ITR)配列、エンハンサー配列、プロモーター配列、イントロン配列、短縮型ヒトATP7B(ATP7B Δ1-3-SS)のコード配列(例えば、配列番号1)、ポリアデニル化シグナル配列、および3’-逆位末端反復(ITR)配列を含むゲノムを含む。さらなる例示的実施形態において、上記ベクターは、作動可能に連結された構成要素として、5’から3’の順に:AAV2 5’-ITR配列、enTTRエンハンサー、TTRプロモーター、SV40 Small Tイントロン、短縮型ヒトATP7B(ATP7B Δ1-3-SS)のコード配列(例えば、配列番号1)、SV40ポリアデニル化シグナル配列、およびAAV2 3’-ITRを含むゲノムを含む。いくつかの実施形態において、上記パッケージされたゲノムは、上記イントロン配列の下流に位置したコンセンサスKozak配列をさらに含む。いくつかの実施形態において、上記キャプシドは、AAV9キャプシドである。
【0087】
いくつかの局面において、本出願は、ウイルソン病(WD)の処置のための本明細書で開示されるrAAVの使用に関し、ここで上記rAAVは、AAVキャプシドおよびパッケージされたベクターゲノムを含む。いくつかの実施形態において、上記ベクターは、作動可能に連結された構成要素として、5’から3’の順に:5’-逆位末端反復(ITR)配列、プロモーター配列、短縮型ヒトATP7B(ATP7B Δ1-3-SS)のコード配列(例えば、配列番号15)、および3’-逆位末端反復(ITR)配列を含むパッケージされたゲノムを含む。例示的実施形態において、上記パッケージされたゲノムはまた、上記プロモーター配列の上流にエンハンサー配列、上記プロモーターの下流にイントロン、および上記3’-ITRの上流にポリアデニル化配列を含む。従って、別の例示的実施形態において、上記ベクターは、作動可能に連結された構成要素として、5’から3’の順に:5’-逆位末端反復(ITR)配列、エンハンサー配列、プロモーター配列、イントロン配列、短縮型ヒトATP7B(ATP7B Δ1-3-SS)のコード配列(例えば、配列番号15)、ポリアデニル化シグナル配列、および3’-逆位末端反復(ITR)配列を含むパッケージされたゲノムを含む。さらなる例示的実施形態において、上記ベクターは、作動可能に連結された構成要素として、5’から3’の順に:AAV2
5’-ITR配列、enTTRエンハンサー、TTRプロモーター、SV40 Small Tイントロン、短縮型ヒトATP7B(ATP7B Δ1-3-SS)のコード配列(例えば、配列番号15)、SV40ポリアデニル化シグナル配列、およびAAV2 3’-ITRを含むパッケージされたゲノムを含む。いくつかの実施形態において、上記パッケージされたゲノムは、上記イントロン配列の下流に位置したコンセンサスKozak配列をさらに含む。いくつかの実施形態において、上記キャプシドは、AAV9キャプシドである。
【0088】
MBD 4、5、および6を保持する短縮型ATP7Bの発現のための例示的なパッケージされたベクターゲノム構築物を示す例示的な図解は、図1に提供される。5’-ITRは、ヌクレオチド1~145によって表される;enTTRエンハンサーは、ヌクレオチド146~245によって表される;TTRプロモーターは、ヌクレオチド246~435によって表される;SV40 Small Tイントロンは、ヌクレオチド436~530によって表される;コンセンサスKozak配列は、ヌクレオチド531~536によって表される;短縮型ATP7Bコード配列は、ヌクレオチド540~4142によって表される;SV40ポリアデニル化シグナル配列は、ヌクレオチド4143~4340によって表される;3’-ITRは、ヌクレオチド4341~4485によって表される。
【0089】
ある特定の実施形態において、ATP7B Δ1-3-SSをコードする核酸配列は、ネイティブヒト配列(配列番号1によって表される)である。あるいは、いくつかの実施形態において、ATP7B Δ1-3-SSをコードする核酸配列は、コドン最適化したヒト配列(配列番号15によって表される)である。
【0090】
WDを処置することにおける改善された有効性:
ある特定の実施形態において、本明細書で記載される、配列番号1または配列番号15によってコードされる短縮型ヒトATP7B(ATP7B Δ1-3-SS)は、ATP7Bの全長または他の短縮型形態(例えば、ATP7B Δ1-4、配列番号13)より有効である。いくつかの局面において、本開示のATP7B Δ1-3-SSは、トランスゴルジネットワーク(TGN)に局在する。ある特定の実施形態において、配列番号1の核酸配列を含み、ATP7B Δ1-3-SSをコードするrAAVは、銅代謝障害(例えば、ウイルソン病)と診断された哺乳動物に注射されると、上記哺乳動物の肝臓および尿中の銅レベルを減少させる。
【0091】
短縮型ATP7Bを含むAAVベクターの改善された収量:
1つの局面において、本明細書で記載される、AAV8またはAAV9にパッケージされたATP7B Δ1-3-SSをコードする核酸配列を含むrAAVは、全長ATP7BまたはATP7B Δ1-4のものより約1.1~約10倍(例えば、約1.1倍、約1.2倍、約1.3倍、約1.4倍、約1.5倍、約1.6倍、約1.7倍、約1.8倍、約1.9倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、または約10倍)高い製造収量を有する。
【0092】
AAV9キャプシドを含むAAVベクターの改善された収量:
1つの局面において、上記AAV9キャプシドを含むrAAVは、上記AAV8キャプシドを含むrAAVと比較すると、約1.1~約10倍(例えば、約1.1倍、約1.2倍、約1.3倍、約1.4倍、約1.5倍、約1.6倍、約1.7倍、約1.8倍、約1.9倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、または約10倍)高い滴定収量を有する。
【0093】
薬学的組成物:
本明細書で開示されるrAAVおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む組成物は、本開示によって提供される。rAAVの投与のための適切な薬学的製剤は、例えば、米国特許出願公開2012/0219528において見出され得る。本開示において有用な薬学的に受容可能なキャリア(ビヒクル)は、従来どおりである。E. W. MartinによるRemington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Co., Easton, Pa., 第15版(1975))は、1またはこれより多くの治療用化合物、分子または薬剤の薬学的送達に適した組成物および製剤を記載する。
【0094】
前段において強調されているように、本出願は、いくつかの局面において、本発明のrAAVを含む薬学的組成物に関する。いくつかの実施形態において、上記薬学的組成物は、薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤を含む。いくつかの実施形態において、上記薬学的組成物は、皮下、筋肉内、皮内、腹腔内、または静脈内投与のために製剤化される。例示的実施形態において、上記薬学的組成物は、静脈内投与のために製剤化される。
【0095】
いくつかの実施形態において、上記rAAVは、ヒト被験体における注入に適した緩衝液/キャリア中に製剤化される。上記緩衝液/キャリアは、rAAVが注入チューブに貼り付くことを防止するが、インビボでのrAAV結合活性に干渉しない構成要素を含むべきである。種々の適切な溶液が、以下のうちの1またはこれより多くを含み得る: 緩衝化食塩水、界面活性剤、および約100mM 塩化ナトリウム(NaCl)~約250mM 塩化ナトリウムに等しいイオン強度に調節された生理学的に適合性の塩もしくは塩の混合物、または等しいイオン濃度に調節された生理学的に適合性の塩。そのpHは、6.5~8.5、または7~8.5、または7.5~8の範囲にあり得る。適切な界面活性剤または界面活性剤の組み合わせは、ポロキサマー、すなわち、ポリオキシエチレン(ポリ(エチレンオキシド))の2本の親水性鎖が隣接したポリオキシプリピレン10(ポリ(プロピレンオキシド))の中心疎水性鎖から構成される非イオン性トリブロックコポリマー、SOLUTOL HS 15(マクロゴール-15ヒドロキシステアレート)、LABRASOL(ポリオキシカプリル酸グリセリド)、ポリオキシ10オレイルエーテル、TWEEN(登録商標)(ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル)、エタノールおよびポリエチレングリコールから選択され得る。
【0096】
ウイルソン病を処置する方法:
さらに別の局面において、本出願は、ヒト被験体においてWDを処置する方法であって、上記方法は、上記ヒト被験体に、治療上有効な量の、本明細書で開示される、短縮型ATP7B(ATP7B Δ1-3-SS)をコードする配列番号1または配列番号15を含むrAAVを投与する工程を包含する方法に関する。
【0097】
1つの実施形態において、本出願は、WDを処置する方法を提供し、上記方法は、AAVキャプシドおよびパッケージされたベクターゲノムを含むrAAVを投与する工程であって、ここで上記ベクターゲノムは、短縮型ヒトATP7B(ATP7B Δ1-3-SS)のコード配列(例えば、配列番号1または配列番号15)を含む工程を包含する。
【0098】
さらに別の局面において、本出願は、ヒト被験体においてWDを処置する方法であって、上記方法は、ATP7Bにおいて少なくとも1つの変異を有すると診断されたヒト被験体に、治療上有効な量の、短縮型ヒトATP7B(ATP7B Δ1-3-SS)のコード配列(例えば、配列番号1または配列番号15)を含むベクターゲノムを含む少なくとも1つのrAAVを投与する工程を包含する方法に関する。1つの実施形態において、本出願は、ATP7Bにおいて少なくとも1つの変異を有すると診断されたヒト被験体においてWDを処置する方法を提供し、上記方法は、AAVキャプシドおよびパッケージされたベクターゲノムを含むrAAVを投与する工程であって、ここで上記ベクターゲノムは、短縮型ヒトATP7B(ATP7B Δ1-3-SS)のコード配列(例えば、配列番号1または配列番号15)を含む工程を包含する。配列番号1によって表されるとおりのコード配列は、配列番号8によって表される短縮型ATP7Bをコードする。いくつかの実施形態において、上記キャプシドは、AAV9キャプシドである。
【0099】
さらに別の局面において、本出願は、ヒト被験体においてWDを処置する方法であって、上記方法は、ATP7Bにおいて少なくとも1つの変異を有すると診断されたヒト被験体に、治療上有効な量の、短縮型ヒトATP7B(ATP7B Δ1-3-SS)のコード配列(例えば、配列番号1)を含むベクターゲノムを含む少なくとも1つのrAAVを投与する工程を包含する方法に関する。1つの実施形態において、本出願は、ATP7Bにおいて少なくとも1つの変異を有すると診断されたヒト被験体においてWDを処置する方法を提供し、上記方法は、AAVキャプシドおよびパッケージされたベクターゲノムを含むrAAVを投与する工程であって、ここで上記ベクターゲノムは、短縮型ヒトATP7B(ATP7B Δ1-3-SS)のコード配列(例えば、配列番号1)を含む工程を包含する。配列番号1によって表されるとおりのコード配列は、配列番号8によって表される短縮型ATP7Bをコードする。いくつかの実施形態において、上記キャプシドは、AAV9キャプシドである。
【0100】
さらに別の局面において、本出願は、ヒト被験体においてWDを処置する方法であって、上記方法は、ATP7Bにおいて少なくとも1つの変異を有すると診断されたヒト被験体に、治療上有効な量の、短縮型ヒトATP7B(ATP7B Δ1-3-SS)のコード配列(例えば、配列番号15)を含むベクターゲノムを含む少なくとも1つのrAAVを投与する工程を包含する方法に関する。1つの実施形態において、本出願は、ATP7Bにおいて少なくとも1つの変異を有すると診断されたヒト被験体においてWDを処置する方法を提供し、上記方法は、AAVキャプシドおよびパッケージされたベクターゲノムを含むrAAVを投与する工程であって、ここで上記ベクターゲノムは、短縮型ヒトATP7B(ATP7B Δ1-3-SS)のコード配列(例えば、配列番号15)を含む工程を包含する。いくつかの実施形態において、上記キャプシドは、AAV9キャプシドである。
【0101】
任意の適切な方法または経路は、本明細書で記載されるrAAVまたはrAAV含有組成物を投与するために使用され得る。投与経路としては、例えば、全身、経口、吸入、鼻内、気管内、動脈内、眼内、静脈内、筋肉内、皮下、皮内、および他の非経口投与経路が挙げられる。いくつかの実施形態において、上記rAAVまたはrAAVを含む組成物は、静脈内投与される。
【0102】
投与される具体的用量は、各患者に対して均一な用量、患者の体重1kgあたり例えば、1.0×1011~1.0×1014 ウイルスゲノム(vg)/kgであり得る。あるいは、患者の用量は、上記患者のおおよその体重または表面積に合わせて調節され得る。適切な投与量を決定することにおける他の要因としては、処置または防止される疾患または状態、疾患の重篤度、投与経路、ならびに上記患者の年齢、性別および医学的状態が挙げられ得る。処置に適切な投与量を決定するために必要な計算のさらなる改良は、当業者によって、特に、本明細書で開示される投与量情報およびアッセイに鑑みて慣用的に行われる。上記投与量はまた、適切な用量-応答データとともに使用される用量を決定するために公知のアッセイの使用を通じて決定され得る。個々の患者の投与量はまた、上記疾患の進行がモニターされるにつれて調節され得る。
【0103】
いくつかの実施形態において、上記rAAVは、qPCRまたは液滴デジタルPCR(ddPCR)によって測定されるように、例えば、約1.0×1011 vg/kg~約1×1014 vg/kg、約5×1011 vg/kg~約5×1013 vg/kg、または約1×1012~約1×1013 vg/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態において、上記rAAVは、約2×1012 vg/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態において、上記rAAVは、約5×1012 vg/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態において、上記rAAVは、約6×1012 vg/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態において、上記rAAVは、約1×1013 vg/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態において、上記rAAVは、約7×1013 vg/kgの用量で投与される。上記rAAVは、単一用量で、または所望の治療結果にとって必要とされる場合は、複数回用量で投与され得る(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはより多くの用量)。いくつかの例示的実施形態において、特定のrAAVの単一用量のみが投与される。
【0104】
詳細な説明全体を通じて、組成物が、特定の構成要素を有する、包含する、もしくは含むと記載される場合、またはプロセスおよび方法が、特定の工程を有する、包含する、もしくは含むと記載される場合、さらに、その記載される構成要素から本質的になるかまたはそれからなる本発明の組成物が存在すること、ならびにその記載される処理工程から本質的になるかまたはそれからなる本発明に従うプロセスおよび方法が存在することは、企図される。
【0105】
本出願において、要素または構成要素が、記載される要素または構成要素のリストの中に含まれるおよび/またはリストから選択されるといわれる場合、その要素もしくは構成要素が、その記載される要素もしくは構成要素のうちのいずれか1つであり得るか、またはその要素もしくは構成要素が、その記載される要素もしくは構成要素のうちの2もしくはこれより多くからなる群より選択され得ることは、理解されるべきである。
【0106】
さらに、本明細書で記載される組成物または方法の要素および/または特徴が、本明細書で明示的であろうと暗示的であろうと、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく種々の方法において組み合わされ得ることは、理解されるべきである。例えば、特定の化合物に対して言及がなされる場合、その化合物は文脈から別段理解されなければ、本発明の組成物の種々の実施形態においておよび/または本発明の方法において使用され得る。言い換えると、本出願の中で、実施形態は、明確かつ簡潔な適用が書かれ、描かれることを可能にする方法で記載され、示されているが、実施形態が、本教示および本発明から切り離されることなく、種々に組み合わされてもよいし、分離されてもよいことは、意図され、認識される。例えば、本明細書で記載され、示される全ての特徴が、本明細書で記載され、示される本発明の全ての局面に適用可能であり得ることは、認識される。
【0107】
表現「のうちの少なくとも1」が、文脈および用途から別段理解されなければ、その表現の後に来る記載される物体の各々、およびその記載される物体のうちの2またはこれより多くの種々の実施形態を個々に含むことは、理解されるべきである。3またはこれより多くの記載される物体に関連して、表現「および/または」は、文脈から別段理解されなければ、同じ意味を有することが理解されるべきである。
【0108】
用語「含む、包含する(include)」、「含む、包含する(includes)」、「含む、包含する(including)」、「有する(have)」、「有する(having)」、「含む、含有する(contain)」、「含む、含有する(contains)」または「含む、含有する(containing)」の使用は、これらの文法上等価なものを含め、概して制限がなくかつ非限定的である、例えば、別段具体的に述べられなければ、または文脈から理解されなければ、さらなる記載されない要素または工程を排除しないと概して理解されるべきである。
【0109】
用語「約」が定量的値の前で使用される場合、本発明はまた、別段具体的に述べられなければ、その特定の定量的値自体を含む。本明細書で使用される場合、用語「約」とは、別段示されなければまたは推測されなければ、名目上の値からの±10% 変動に言及する。
【0110】
工程の順序またはある特定の行為を行うための順序は、本発明が実施可能なままである限りにおいて、重要ではないことが理解されるべきである。さらに、2またはこれより多くの工程または行為は、同時と見做されてもよい。
【0111】
任意のおよび全ての例、または例示的な文言、例えば、「のような、例えば(such
as)」または「が挙げられる(including)」の本明細書での使用は、本発明をよりよく例証することを意図するに過ぎず、別段特許請求されなければ、本発明の範囲に対する限定を課すものではない。本明細書中のいかなる文言も、任意の特許請求されていない要素を本発明の実施に必須として示すと解釈されるべきではない。
【実施例0112】
ここで一般的に記載されている本発明は、以下の実施例を参照することによって容易に理解される。その実施例は、本発明のある特定の局面および実施形態を例証する目的でのみ含まれ、本発明を限定することは意図されない。
【0113】
実施例1-AAVベクターおよびこのベクターから生成されるrAAV
AAVベクター
この実施例は、2つのAAV2逆位末端反復配列(ITR、配列番号2)によって境を接する配列番号1によって表される核酸配列を有するAAVベクターの構築を記載する。配列番号1は、MBD 1~3が欠失したネイティブヒトATP7BのcDNAを表す。配列番号1におけるヌクレオチド223~225は、セリン残基、S340をコードし、配列番号1におけるヌクレオチド226~228は、セリン残基、S341をコードする(番号付けは、野生型全長ATP7Bタンパク質配列に基づく)。
【0114】
図1に図示されるように、AAVベクター内で、ATP7B発現カセットは、エンハンサー(EnTTR)、プロモーター(TTR)、イントロン(SV40 small Tイントロン)、短縮型ヒトATP7B(ATP7B Δ1-3-SS)をコードする配列番号1のヌクレオチド配列、およびSV40ポリ(A)シグナルを含む。種々の構成要素を図示するベクターの環状マップを、図2に示す。
【0115】
AAVベクターDTC319は、金属結合ドメイン4、5、および6が保持されている短縮型ヒトATP7B配列を含む。上記短縮型ヒトATP7B配列は、配列番号8によって表され、2個のセリン残基、S340およびS341を含むタンパク質をコードする(NCBI Reference Sequence: NP_000044.2に従って番号付けした)。
【0116】
シミアンウイルス40(SV40)後期ポリアデニル化シグナル(Genbank Accession No. J02400(配列番号7))は、ATP7B mRNAの効率的ポリアデニル化のためのcis配列を提供する。このエレメントは、新生転写物の3’末端における特異的切断事象および長いポリアデニルテールの付加のシグナルとして機能する。
【0117】
各短縮型ATP7B発現カセットを、AAVベクターにクローニングした。全てのAAVベクターは、カナマイシン耐性遺伝子をコードする骨格を有した。例示的AAVベクターDTC319を図2に図示する。図1は、ATP7B(ATP7B Δ1-3-SS)を発現するためのDTC319の発現カセットを示す。
【0118】
rAAVビリオン
AAVベクターゲノムは、1本鎖ゲノムである。ITR配列の間のおよびITR配列を含む配列のみが、AAVビリオンへとパッケージされる。3種のプラスミドを、E1aおよびE1b遺伝子生成物を提供するヒト胚性腎臓293(HEK293)細胞へとトランスフェクトすることによって、ビリオンを生成した。第1のプラスミドは、本明細書で開示されるAAVベクターであり得る。第2のプラスミドは、野生型AAV2 repおよびAAV8またはAAV9 cap遺伝子を含むパッケージングプラスミドであり得る。第3のプラスミドは、ヘルパーアデノウイルスプラスミドである。
【0119】
例示的パッケージングプラスミド、pAAV2/8.KanR(p2123FH)プラスミドの図は、図3に示される。このプラスミドにおいて、アデノ随伴Rep/Capプラスミド pAAV2/8.KanR(p2123FH)(8354bp)は、血清型8に由来する、4つの野生型AAV2ウイルス複製(Rep)タンパク質および3つの野生型AAV VPキャプシド(cap)タンパク質をコードする。そのプラスミド内で、Rep遺伝子発現を通常は駆動するAAV p5プロモーターは、Rep領域の5’末端からAAV8 cap領域の3’末端まで動かされている。この配置は、プロモーターとRep遺伝子(すなわち、プラスミド骨格)との間にスペーサーを導入し、Repの発現のダウンレギュレーションおよび高力価rAAV生成を支持する能力の増大を生じる。カナマイシン耐性の遺伝子およびMB1起点は、E.coliにおけるプラスミド生成のために含められる。
【0120】
例示的ヘルパープラスミド、pAdDeltaF6(Kan)の図は、図4に示される。このプラスミドにおいて、AAV複製にとって重要なアデノウイルスゲノムの領域、すなわち、E2A、E4、およびVA RNAが提供される。アデノウイルスE1機能がまた必要とされるが、HEK293宿主細胞によって提供される。図4に示されるプラスミドは、他のアデノウイルス複製、構造遺伝子、またはアデノウイルス複製にとって極めて重要なcisエレメント(例えば、アデノウイルスITR)を含まないので、感染性アデノウイルスは、生成されるとは予測されない。カナマイシン耐性の遺伝子およびMB1起点は、E.coliにおけるプラスミド生成のために含められる。
【0121】
実施例2-ヒトATP7Bにおける金属結合ドメイン(MBD)1~3の欠失は、製造収量を改善する
この実施例は、ATP7B Δ1-3-SSが全長ATP7Bまたは短縮型形態ATP7B Δ1-4より高い収量を有することを示した実験を記載する。
【0122】
機能的ATP7Bの欠如は、肝臓および他の組織にいて銅の蓄積を生じ、神経症状または精神症状を有する肝疾患として出現する。WDは、身体からの銅の吸収を低減させるか、または過剰な銅を除去することによって処置され得る。C3He-Atp7btx-jマウスは、機能的Atp7bを発現しないので、WDのマウスモデルとして役立つ。HEK293細胞を、血清型8に由来する、4つの野生型AAV2ウイルス複製(Rep)タンパク質および3つの野生型AAV VPキャプシド(cap)タンパク質をコードするRep/Capプラスミドおよびヘルパープラスミドでトランスフェクトして、ATP7BcoFLウイルス粒子を得るために、コドン最適化した全長ヒトATP7B配列を含むAAVベクターを使用した。
【0123】
雄性C3He-Atp7btx-jマウスを、1010 GC/kgまたは1011 GC/kgいずれかのATP7BcoFL(コドン最適化した全長ヒトATP7B)を静脈内(i.v.)注射した。雌性C3He-Atp7btx-jマウスに、10 GC/kg、1010 GC/kg、または1011 GC/kgいずれかの同じベクターをi.v.注射した。雄性マウス(四角で示す)および雌性マウス(丸で示す)における肝臓銅レベルを、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)によって評価し、年齢を合わせた注射していない雄性および雌性ヘテロ接合性(Het)マウスおよびC3He-Atp7btx-jマウスの銅レベルを比較した。マウスを、およそ9ヶ月齢で剖検し、肝臓を採取した。データを図5に示す。
【0124】
AAVベクターを利用する遺伝子治療は、WDを処置するために使用され得る。しかし、AAVベクターキャプシドの内部にパッケージされ得るcDNAのサイズには制限がある。野生型AAVゲノムは、4.7kbであり、より大きなゲノムをパッケージすることは、上記AAVキャプシド内に被包されるDNA配列の収量および完全性を潜在的に低減し得る。従って、ATP7B Δ1-3-SSをコードするヌクレオチド配列を、AAV8キャプシド内にパッケージし、ATP7B Δ1-3-SSの製造収量を試験した。全長(FL)ヒトATP7B、MBD 1~3が欠失されているが、MBD3とMBD4との間の2個のセリン残基(S340およびS341)を含むセリンリッチループが存在するヒトATP7B(ATP7B Δ1-3-SS)、またはMBD 1~4が欠失されているヒトATP7B(ATP7B Δ1-4)のいずれかをコードするAAVベクターを、HEK293細胞へとトランスフェクトした。血清型8に由来する、4つの野生型AAV2ウイルス複製(Rep)タンパク質および3つの野生型AAV VPキャプシド(cap)タンパク質をコードするRep/Capプラスミド、およびヘルパープラスミドを、種々のATP7Bタンパク質を発現するAAVベクターとともに共トランスフェクトした。図6は、種々のAAVベクターのトランスフェクション後の宿主細胞から生成したrAAVの滴定を示す棒グラフである。Y軸は、ゲノムコピー(GC)単位で各rAAV滴定の全収量を示す。データは、ATP7B Δ1-3-SSが、全長またはATP7B Δ1-4短縮型形態より高い収量を有したことを示す。
【0125】
実施例3-ATP7B Δ1-3-SSは、ATP7B FLと比較して、銅代謝の回復においてより有効である
この実施例は、C3He-Atp7btx-jマウスの銅代謝の回復において、ATP7B Δ1-3-SSがATP7B全長(ATP7B FL)またはATP7B Δ1-4より有効であることを示した実験を記載する。
【0126】
上記の実施例2に記載されるように、かさ高いcDNA配列をAAVベクターキャプシドの中にパッケージすることは、DNA配列の完全性を低減し得、潜在的な品質の問題を有し得る。従って、ヒトATP7Bの短縮型バージョンを、AAV8キャプシド内にパッケージし、銅代謝を回復することにおけるそれらの有効性を試験した。全長または短縮型いずれかのヒトATP7Bを含むAAV8ベクターの1.0×1013 GC/kgを、C3He-Atp7btx-jマウスに投与した。肝臓および尿中銅レベルを、誘導結合プラズマ質量分析法によって評価した。図7は、C3He-Atp7btx-jマウスに全長ヒトATP7B (ATP7B FL)、ATP7B Δ1-3-SS、またはATP7B Δ1-4を有するAAV8を注射した後にアッセイした尿中および肝臓銅レベルの散布図(それぞれ、四角および丸)である(μg/g)。図7は、ATP7B Δ1-3-SSが、C3He-Atp7btx-jマウスの銅代謝の回復においてATP7B全長(ATP7B FL)またはATP7B Δ1-4より有効であることを示す。リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)を投与したC3He-Atp7btx-jマウスは、コントロール(ビヒクル)として供した。
【0127】
実施例4-AAV9キャプシドを含むAAVベクターは、より高いウイルス生成を示した
この実施例は、AAV8キャプシドを含むAAVベクターの生成との比較において、AAV9キャプシドを含むAAVベクターの生成がより高い収量を生成することを示した実験を記載する。異なるAAVベクターを、DNase耐性粒子(DRP)を定量するqPCRによって滴定した。図8は、金属結合ドメイン(MBD)1~3が欠失されているが、MBD3とMBD4との間の2個のセリン残基(S340およびS341)を含むセリンリッチループが存在する短縮型ヒトATP7BをコードするAAVベクター(DTC319)をトランスフェクトし、AAV8キャプシドまたはAAV9キャプシドのいずれかをコードするプラスミドで共トランスフェクトした後に宿主細胞から生成したrAAVの全収量(ゲノムコピー(GC)において滴定)を示す。
【0128】
実施例5-ATP7B Δ1-3-SSの治療特性
この実施例は、マウスモデル(C3He-Atp7btx-j)においてウイルソン病(WD)の症状を改善し、WDを処置するにあたって、ATP7B Δ1-3-SS(例えば、金属結合ドメイン(MBD)1~3が欠失されているが、MBD3とMBD4との間の2個のセリン残基(S340およびS341)を含むセリンリッチループが存在する短縮型ヒトATP7BをコードするrAAVベクターであるDTC319)の有効性を示した動物研究を記載する。この実施例において、雄性マウスの3つの群を評価した: AAV8ベクター中にコードされるATP7B Δ1-3-SS(例えば、DTC319)のAAV注入またはビヒクルコントロール(希釈緩衝液)の静脈内注射のいずれかを投与したWDマウス(C3He-Atp7btx-jマウス)、および陰性コントロールとして供した野生型(WT)マウス。注入に関しては、rAAVを、接着性HEK細胞の三重の一過性トランスフェクションによって生成し、塩化セシウム勾配超遠心分離(当該分野で周知の精製法)によって精製した。研究エンドポイントにおいて、注入の4週間後に、各群からのマウスを、肝臓道蓄積、セルロプラスミン活性、および肝臓病理に関して評価した。
【0129】
肝臓銅蓄積を、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)によって測定し、肝臓銅レベルが、ビヒクルコントロールと比較して、ATP7B Δ1-3-SS(例えば、DTC319)を投与したWDマウスにおいて有意に低減されたことを示した(図9、DelAの棒を参照のこと)。図9は、ビヒクルコントロールの静脈内注射(希釈緩衝液、WDの棒)またはネイティブATP7B Δ1-3-SSを有するAAV8の注入(DelAの棒)を投与した後のC3He-Atp7btx-jマウスにおける肝臓銅蓄積レベル(μg/g)を示す。棒グラフにおいて表される注射していない野生型マウス(WT)における肝臓銅蓄積レベルは、陰性コントロールとして供した。値は、平均±SEMとして表した。
【0130】
セルロプラスミン活性は、ATP7B Δ1-3-SS(例えば、DTC319)を投与した後のWDマウスにおいて有意に増大した(図10、DelAの棒を参照のこと)。セルロプラスミン活性を、当該分野で周知の酵素反応ベースの比色活性アッセイを使用して検出した(Schosinskyら, Clin Chem. 1974; 20(12):1556-63を参照のこと)。図10は、酵素反応ベースの比色活性アッセイによって示されるように、ビヒクルコントロールの静脈内注射(希釈緩衝液、WDの棒)またはAAV8ベクターにおいてコードされるATP7B Δ1-3-SSのAAV注入(DelAの棒)を受けた後の、C3He-Atp7btx-jマウスにおけるセルロプラスミン活性を示す。注射していない野生型(WT)マウスのセルロプラスミン活性はまた、酵素反応ベースの比色活性アッセイによって示されるように、棒グラフにおいて表される。そのプロットは、540nmにおいて読み取られるとおりの光学密度、ODにおいて測定されるとおりのセルロプラスミンの活性を示す。値は、平均±SEMとして表した。
【0131】
肝臓を、各群において全ての動物から採取し、H&E(ヘマトキシリンおよびエオシン染色)で染色した。H&Eスライドを、核拡大および肝細胞肥大、組織崩壊、炎症性浸潤、および肝細胞壊死に関して、0~4のスコア付けシステムに従って、認定病理医(board certified pathologist)が評価した。群における各マウスからのスコアを平均した。図11は、各群における動物のH&Eスライドの標準的評価後に得た場合の平均スコアを示す。
【0132】
実施例6-ウイルソン病(WD)の実行可能な治療としてのAAV9遺伝子治療
この実施例は、被験体においてWDを処置することにおけるATP7B Δ1-3-SSを含むrAAV粒子の使用を記載する。短縮型ヒトATP7B(ATP7B Δ1-3-SS)をコードするヌクレオチド配列を含むAAVベクター、例えば、DTC319図2)、血清型9(AAV9)に由来する、4つの野生型AAV2ウイルス複製(Rep)タンパク質および3つの野生型AAV VPキャプシド(cap)タンパク質をコードするRep/Capプラスミド、ならびにヘルパープラスミドは、実施例1に記載されるように、宿主細胞へと共トランスフェクトする。次いで、採取したrAAV粒子は、WD治療の必要性のある被験体に静脈内投与される。あるいは、被験体は、WDを処置するために、図12によって表されるベクターでトランスフェクトした宿主細胞から採取されるrAAV粒子を投与される。
【0133】
援用の表示
本明細書で言及される特許文書および科学論文の各々の開示全体は、全ての目的のために参考として援用される。
【0134】
均等物
本開示は、その趣旨および本質的な特徴から逸脱することなく、他の具体的形態において具現化され得る。従って、前述の実施形態は、全ての点において、本明細書で記載される開示を限定するのではなく例証であるとみなされるべきである。異なる実施形態の種々の構造的要素および種々の開示される方法の工程は、種々の組み合わせおよび並べ替えにおいて利用され得、全てのこのような改変は、本開示の形態であるとみなされるべきである。本開示の範囲は、従って、前述の説明によるのではなく添付の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味および均等の範囲内に入る全ての変更は、その中に包含されることが意図される。
特定の実施形態では、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
組換え核酸構築物であって、
(a)5’-逆位末端反復配列 (ITR);
(b)プロモーター配列;
(c)金属結合ドメイン(MBD)1~3が欠失されているが、MBD3とMBD4との間の2個のセリン残基(S340およびS341)を含むセリンリッチループが存在する短縮型ヒト銅輸送ATPase 2(ATP7B)をコードする核酸配列;ならびに
(d)3’-ITR配列
を含む、組換え核酸構築物。
(項目2)
前記プロモーターは、トランスサイレチン(TTR)プロモーター、ニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーター、サイトメガロウイルス最初期遺伝子(CMV)プロモーター、サイロキシン結合グロブリン(TBG)プロモーター、α1アンチトリプシン(A1AT)プロモーター、およびCAGプロモーターから選択される、項目1に記載の組換え核酸構築物。
(項目3)
前記プロモーターは、前記TTRプロモーターである、項目2に記載の組換え核酸構築物。
(項目4)
前記5’-ITR配列は、AAV2に由来する、項目1~3のいずれかに記載の組換え核酸構築物。
(項目5)
前記3’-ITR配列は、AAV2に由来する、項目1~3のいずれかに記載の組換え核酸構築物。
(項目6)
前記5’-ITR配列および前記3’-ITR配列は、AAV2に由来する、項目1~3のいずれかに記載の組換え核酸構築物。
(項目7)
前記5’-ITR配列および前記3’-ITR配列は、配列番号2を含むかまたはからなる、項目1~6のいずれかに記載の組換え核酸構築物。
(項目8)
前記5’-ITR配列および/または前記3’-ITR配列は、非AAV2供給源に由来する、項目1~3のいずれかに記載の組換え核酸構築物。
(項目9)
前記組換え核酸構築物は、1またはこれより多くのエンハンサー配列をさらに含む、項目1~8のいずれかに記載の組換え核酸構築物。
(項目10)
前記エンハンサーは、トランスサイレチンエンハンサー(enTTR)、サイトメガロウイルス最初期遺伝子(CMV)エンハンサー、ニワトリβ-アクチン(CBA)エンハンサー、En34エンハンサー、およびアポリポプロテイン(ApoE)エンハンサーから選択される、項目9に記載の組換え核酸構築物。
(項目11)
前記エンハンサーは、前記enTTRエンハンサーである、項目10に記載の組換え核酸構築物。
(項目12)
前記エンハンサーは、配列番号3を含むかまたはからなる、項目11に記載の組換え核酸構築物。
(項目13)
前記エンハンサーは、前記プロモーター配列の上流に位置する、項目10~12に記載の組換え核酸構築物。
(項目14)
前記組換え核酸構築物は、1またはこれより多くのイントロン配列をさらに含む、項目1~13のいずれかに記載の組換え核酸構築物。
(項目15)
前記イントロンは、SV40 Small Tイントロン、ウサギヘモグロビンサブユニットβ(rHBB)イントロン、ヒトβグロビンIVS2イントロン、Promegaキメライントロン、およびhFIXイントロンから選択される、項目14に記載の組換え核酸構築物。
(項目16)
前記イントロンは、前記SV40 Small Tイントロンである、項目15に記載の組換え核酸構築物。
(項目17)
前記イントロンは、配列番号4を含むかまたはからなる、項目16に記載の組換え核酸構築物。
(項目18)
前記イントロンは、前記rHBBイントロンである、項目15に記載の組換え核酸構築物。
(項目19)
前記イントロンは、配列番号5を含むかまたはからなる、項目18に記載の組換え核酸構築物。
(項目20)
前記組換え核酸構築物は、ポリアデニル化シグナル配列をさらに含む、項目1~19のいずれかに記載の組換え核酸構築物。
(項目21)
前記ポリアデニル化シグナル配列は、SV40ポリアデニル化シグナル配列、ウシ成長ホルモン(BGH)ポリアデニル化シグナル配列、およびウサギβグロビンポリアデニル化シグナル配列から選択される、項目20に記載の組換え核酸構築物。
(項目22)
前記ポリアデニル化シグナル配列は、前記ウシ成長ホルモン(BGH)ポリアデニル化シグナル配列である、項目21に記載の組換え核酸構築物。
(項目23)
前記ポリアデニル化シグナル配列は、配列番号6を含むかまたはからなる、項目22に記載の組換え核酸構築物。
(項目24)
前記ポリアデニル化シグナル配列は、前記SV40ポリアデニル化シグナル配列である、項目21に記載の組換え核酸構築物。
(項目25)
前記ポリアデニル化シグナル配列は、配列番号7を含むかまたはからなる、項目24に記載の組換え核酸構築物。
(項目26)
ウイルソン病の処置に有用な組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)であって、前記rAAVは、AAVキャプシドおよびその中にパッケージされたベクターゲノムを含み、前記ベクターゲノムは、
a.AAV 5’-逆位末端反復(ITR)配列;
b.プロモーター/エンハンサー配列;
c.金属結合ドメイン(MBD)1~3が欠失されているが、MBD3とMBD4との間の2個のセリン残基(S340およびS341)を含むセリンリッチループが存在する短縮型ヒト銅輸送ATPase 2(ATP7B)をコードする核酸配列;ならびに
d.AAV 3’-ITR、
を含む、rAAV。
(項目27)
前記AAVキャプシドは、血清型9、8、1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、rh10、またはhu37のAAVに由来する、項目26に記載のrAAV。
(項目28)
前記AAVキャプシドは、AAV9に由来する、項目27に記載のrAAV。
(項目29)
前記AAVキャプシドは、AAV8に由来する、項目27に記載のrAAV。
(項目30)
前記AAVキャプシドは、AAV9改変体キャプシドである、項目28に記載のrAAV。
(項目31)
前記プロモーターは、トランスサイレチン(TTR)プロモーター、ニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーター、サイトメガロウイルス最初期遺伝子(CMV)プロモーター、サイロキシン結合グロブリン(TBG)プロモーター、α1アンチトリプシン(A1AT)プロモーター、およびCAGプロモーターから選択される、項目26~30のいずれかに記載のrAAV。
(項目32)
前記プロモーターは、前記TTRプロモーターである、項目31に記載のrAAV。
(項目33)
前記5’-ITR配列は、AAV2に由来する、項目26~32のいずれかに記載のrAAV。
(項目34)
前記3’-ITR配列は、AAV2に由来する、項目26~32のいずれかに記載のrAAV。
(項目35)
前記5’-ITR配列および前記3’-ITR配列は、AAV2に由来する、項目26~32のいずれかに記載のrAAV。
(項目36)
前記5’-ITR配列および前記3’-ITR配列は、配列番号2を含むかまたはからなる、項目26~35のいずれかに記載のrAAV。
(項目37)
前記5’-ITR配列および/または前記the 3’-ITR配列は、非AAV2供給源に由来する、項目26~32のいずれかに記載のrAAV。
(項目38)
前記パッケージされたゲノムは、1またはこれより多くのエンハンサー配列をさらに含む、項目26~37のいずれかに記載のrAAV。
(項目39)
前記エンハンサーは、トランスサイレチンエンハンサー(enTTR)、サイトメガロウイルス最初期遺伝子(CMV)エンハンサー、ニワトリβ-アクチン(CBA)エンハンサー、En34エンハンサー、およびアポリポプロテイン(ApoE)エンハンサーから選択される、項目38に記載のrAAV。
(項目40)
前記エンハンサーは、前記enTTRエンハンサーである、項目39に記載のrAAV。
(項目41)
前記エンハンサーは、配列番号3を含むかまたはからなる、項目40に記載のrAAV。
(項目42)
前記エンハンサーは、前記プロモーター配列の上流に位置する、項目40~41に記載のrAAV。
(項目43)
前記パッケージされたゲノムは、1またはこれより多くのイントロン配列をさらに含む、項目26~42のいずれかに記載のrAAV。
(項目44)
前記イントロンは、SV40 Small Tイントロン、ウサギヘモグロビンサブユニットβ(rHBB)イントロン、ヒトβグロビンIVS2イントロン、Promegaキメライントロン、およびhFIXイントロンから選択される、項目43に記載のrAAV。
(項目45)
前記イントロンは、前記SV40 Small Tイントロンである、項目44に記載のrAAV。
(項目46)
前記イントロンは、配列番号4を含むかまたはからなる、項目45に記載のrAAV。
(項目47)
前記イントロンは、前記rHBBイントロンである、項目44に記載のrAAV。
(項目48)
前記イントロンは、配列番号5を含むかまたはからなる、項目47に記載のrAAV。
(項目49)
前記パッケージされたゲノムは、ポリアデニル化シグナル配列をさらに含む、項目26~48のいずれかに記載のrAAV。
(項目50)
前記ポリアデニル化シグナル配列は、SV40ポリアデニル化シグナル配列、ウシ成長ホルモン(BGH)ポリアデニル化シグナル配列、およびウサギβグロビンポリアデニル化シグナル配列から選択される、項目49に記載のrAAV。
(項目51)
前記ポリアデニル化シグナル配列は、前記ウシ成長ホルモン(BGH)ポリアデニル化シグナル配列である、項目50に記載のrAAV。
(項目52)
前記ポリアデニル化シグナル配列は、配列番号6を含むかまたはからなる、項目51に記載のrAAV。
(項目53)
前記ポリアデニル化シグナル配列は、前記SV40ポリアデニル化シグナル配列である、項目50に記載のrAAV。
(項目54)
前記ポリアデニル化シグナル配列は、配列番号7を含むかまたはからなる、項目53に記載のrAAV。
(項目55)
項目1~25のいずれかに記載の組換え核酸を含む、rAAV。
(項目56)
組換え核酸構築物であって、
a.配列番号2のAAV 5’-逆位末端反復(ITR)配列;
b.配列番号3のエンハンサー配列;
c.配列番号12のプロモーター配列;
d.配列番号1または配列番号15の短縮型ヒト銅輸送ATPase 2(ATP7B)をコードする核酸配列;および
e.配列番号2のAAV 3’-ITR、
を含む組換え核酸構築物。
(項目57)
短縮型ヒト銅輸送ATPase 2(ATP7B)をコードする前記核酸配列は、配列番号1である、項目56に記載の組換え核酸構築物。
(項目58)
短縮型ヒト銅輸送ATPase 2(ATP7B)をコードする前記核酸配列は、配列番号15である、項目56に記載の組換え核酸構築物。
(項目59)
AAVキャプシドおよびその中にパッケージされたベクターゲノムを含むrAAVであって、前記ベクターゲノムは、
a.配列番号2のAAV 5’-逆位末端反復(ITR)配列;
b.配列番号3のエンハンサー配列;
c.配列番号12のプロモーター配列;
d.配列番号1または配列番号15の短縮型ヒト銅輸送ATPase 2(ATP7B)をコードする核酸配列;および
e.配列番号2のAAV 3’-ITR、
を含む、rAAV。
(項目60)
前記ベクターゲノムは、配列番号1の短縮型ヒト銅輸送ATPase 2(ATP7Bをコードする前記核酸配列を含む、項目59に記載のrAAV。
(項目61)
前記ベクターゲノムは、配列番号15の短縮型ヒト銅輸送ATPase 2(ATP7B)をコードする前記核酸配列を含む、項目59に記載のrAAV。
(項目62)
項目1~25もしくは56~58のいずれかに記載の組換え核酸、または項目26~55もしくは59~61のいずれかに記載のrAAVを含む、宿主細胞。
(項目63)
項目26~55または59~61のいずれかに記載のrAAV、および薬学的に受容可能なキャリアを含む、組成物。
(項目64)
項目1~25または56~58のいずれかに記載の組換え核酸分子を含む、組換えベクター。
(項目65)
前記ベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、項目64に記載の組換えベクター。
(項目66)
前記AAVベクターは、AAV血清型9(AAV9)ベクターである、項目65に記載の組換えベクター。
(項目67)
ウイルソン病の処置における使用のためにrAAV収量を増大させる方法であって、前記方法は、項目64~66のいずれかに記載の組換えベクターを真核生物宿主細胞培養物に送達する工程および前記rAAVを前記真核生物細胞培養物から採取する工程を包含する方法。
(項目68)
ヒト被験体においてウイルソン病を処置する方法であって、前記方法は、前記ヒト被験体に、治療上有効な量の、項目26~55もしくは59~61のいずれかに記載のrAAVまたは項目63に記載のその組成物を投与する工程を包含する方法。
(項目69)
前記rAAVまたは前記組成物は、皮下、筋肉内、皮内、腹腔内、または静脈内に投与される、項目68に記載の方法。
(項目70)
前記rAAVまたは前記組成物は、静脈内投与される、項目69に記載の方法。
(項目71)
前記rAAVは、約1×1011~約1×1014 ゲノムコピー(GC)/kgの用量で投与される、項目68~70のいずれかに記載の方法。
(項目72)
前記rAAVは、約1×1012~約1×1013 GC/kgの用量で投与される、項目71に記載の方法。
(項目73)
前記rAAVを投与する工程は、単一用量のrAAVの投与を含む、項目68~72のいずれかに記載の方法。
(項目74)
前記rAAVを投与する工程は、複数用量のrAAVの投与を含む、項目68~72のいずれかに記載の方法。
(項目75)
短縮型ヒト銅輸送ATPase 2(ATP7B)をコードする前記核酸配列は、配列番号1または配列番号15を含むかまたはからなる、項目1~25もしくは56~58のいずれかに記載の組換え核酸構築物、項目26~55もしくは59~61のいずれかに記載のrAAV、項目63に記載の組成物、項目62に記載の宿主細胞、項目64~66のいずれかに記載の組換えベクター、または項目67~74のいずれかに記載の方法。
(項目76)
配列番号14と少なくとも80%同一である核酸配列を含む、組換え核酸。
(項目77)
前記核酸配列は、配列番号14を含む、項目76に記載の組換え核酸。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【配列表】
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【外国語明細書】