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  • 特開-道路標識柱 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054453
(43)【公開日】2024-04-17
(54)【発明の名称】道路標識柱
(51)【国際特許分類】
   E01F 9/623 20160101AFI20240410BHJP
   E01F 9/608 20160101ALI20240410BHJP
   E01F 9/658 20160101ALI20240410BHJP
   E01F 9/688 20160101ALI20240410BHJP
【FI】
E01F9/623
E01F9/608
E01F9/658
E01F9/688
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160656
(22)【出願日】2022-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】517413605
【氏名又は名称】ニッタ化工品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003465
【氏名又は名称】弁理士法人OHSHIMA&ASSOCIATES
(72)【発明者】
【氏名】塩見 薫
(72)【発明者】
【氏名】河合 健太
【テーマコード(参考)】
2D064
【Fターム(参考)】
2D064AA11
2D064AA22
2D064BA01
2D064DB03
2D064DB07
2D064DB14
2D064HA22
(57)【要約】
【課題】ベースにボルト締結した標識柱本体及び押さえリングの外れを生じ難くすると共に、その外れが生じたとしても、ボルト先端部が上向きに突出するのを防止することのできる道路標識柱の提供。
【解決手段】路面2に設置するベース3を設ける。ベース3の上面側に配置する標識柱本体4を設ける。標識柱本体4の下端に、ベース3の上面に載置するフランジ6を形成する。押さえリング7でフランジ6を上方から押さえる。ボルト8及びナット9で押さえリング7をベース3に締結する。ベース3の下面側にナット収容空間10を形成する。ナット収容空間10にナット8を回転自在に収容する。押さえリング7、フランジ6及びベース3の上方からボルト8を貫通させる。ナット9にボルト8の先端部を螺合する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面に設置されるベースと、該ベースの上面側に配置される標識柱本体と、該標識柱本体をベースに固定する固定部と、を備えた道路標識柱であって、
前記固定部は、標識柱本体の下端に形成されてベースの上面に載置されるフランジと、該フランジを上方から押さえる押さえリングと、該押さえリングをベースに締結するボルト及びナットと、からなり、
前記ベースの下面側にナット収容空間が形成され、該ナット収容空間に前記ナットが回転自在に収容されると共に、前記ボルトが押さえリング、フランジ及びベースを上方から貫通して前記ナットにボルト先端部を螺合されることを特徴とする道路標識柱。
【請求項2】
前記ボルトは、特殊工具を用いて締結する特殊ボルトとされたことを特徴とする請求項1に記載の道路標識柱。
【請求項3】
前記ボルト及びナットに、その緩みを防止する緩み止めが設けられたことを特徴とする請求項1又は2に記載の道路標識柱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベースの上面側に標識柱本体を固定した構造で、路面に設置される道路標識柱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、道路や歩道の路面には、例えば自動車の侵入を防ぐ標識としての道路標識柱が設置されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
図5に示すように、特許文献1の道路標識柱は、ベース101にポール本体(標識柱本体)102を固定したものであり、ポール本体(標識柱本体)102の下端環状部分103を覆うリング(押さえリング)104をベース101にボルト締結した構造とされる。
【0004】
リング(押さえリング)104とベース101とのボルト締結は、リング(押さえリング)104の下面側にナット105を埋め込み固定し、このナット105に、ベース101の下面側から挿入した短尺ボルト106を螺合することによって構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4997302号公報(段落0018~0021、図4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1の道路標識柱は、ベース101から短尺ボルト106を突出させてリング(押さえリング)104に螺合したものであり、車両から強い力を受けて、万が一、短尺ボルト106の螺合部分が抜け出すと、ベース101からポール本体(標識柱本体)102及びリング(押さえリング)104が外れることになる。この場合、ベース101に残った短尺ボルト106の細い先端部が上向きに突出し、その上を通過した車両に、タイヤのパンクなどの損傷を生じさせるおそれがある。
【0007】
本発明は、ベースにボルト締結した標識柱本体及び押さえリングの外れを生じ難くすると共に、その外れが生じたとしても、ボルト先端部が上向きに突出するのを防止することのできる道路標識柱の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る道路標識柱は、路面に設置されるベースと、ベースの上面側に配置される標識柱本体と、標識柱本体をベースに固定する固定部と、を備えたものであり、その固定部を、標識柱本体の下端に形成してベースの上面に載置するフランジと、フランジを上方から押さえる押さえリングと、押さえリングをベースに締結するボルト及びナットと、で構成し、さらに、ベースの下面側にナット収容空間を形成して、このナット収容空間にナットを回転自在に収容すると共に、ボルトに、押さえリング、フランジ及びベースを上方から貫通させて、ナットにボルト先端部を螺合するものである。
【0009】
上記構成によれば、ボルトに、押さえリング、フランジ及びベースを貫通させて、そのボルト先端部を別体のナットに螺合させるので、ボルト先端部の抜け出しを阻止して、標識柱本体及び押さえリングの外れを生じ難くすることができる。しかも、押さえリングの上方からボルトを貫通させて、ベースの下面側のナットにボルト先端部を螺合するので、押さえリングが、そのボルト周辺部分を破壊しながら外れたとしても、ベースに残って上向きに突出するボルトの上端は、細い先端部ではなく、比較的に面積の大きい頭部であり、その上を通過した車両に、タイヤのパンクなどの損傷が生じるのを防止することができる。
【0010】
さらに、ベースの下面側のナット収容空間に収容したナットにボルト先端部を螺合するので、道路標識柱を路面に設置した後、ベースと路面とで閉ざされたナット収容空間にあるナットの回転を止めることはできず、押さえリングの上方からボルト頭部を回転させてボルトを外そうとしても、ナットがボルトと共回りして外すことができない。したがって、押さえリングの上方からボルトを貫通させることによってボルト頭部を露出させることになるものの、そのボルトを外すことはできず、道路標識柱の盗難や悪戯を防止することができる。
【0011】
また、ボルトを、特殊工具を用いて締結する特殊ボルトとするようにしてもよい。
【0012】
この構成によると、ボルトをその取り外しに特殊工具が必要な特殊ボルトとするので、路面に設置した道路標識柱に対する盗難や悪戯をより確実に防止することができると共に、路面に設置する前の道路標識柱に対する盗難や悪戯をも防止することができる。特に、ベースを接着によって路面に設置する場合、余分な接着剤がナット収容空間に侵入してナットの回転を阻害すると、そのナットをボルトと共回りさせることができなくなるが、このような場合であっても、ボルトを特殊ボルトとすることにより、道路標識柱に対する盗難や悪戯を防止することができる。ここで、特殊ボルトは、いわゆる悪戯防止ネジや、いじり止めネジとも呼ばれるものであり、プラスドライバーやマイナスドライバー、六角レンチなどの汎用工具に対応するプラス溝やマイナス溝、六角穴に代えて、例えば、ネジ頭部に六角星形の溝や二つの溝を形成して、その頭部形状に対応する特殊な工具を用いなければ回すことができないようにしたものである。
【0013】
また、ボルト及びナットに、その緩みを防止する緩み止めを設けるようにしてもよい。
【0014】
この構成によると、ロックナットや接着などの緩み止めによってボルト及びナットの緩みを防止するので、ナットをより確実にボルトと共回りさせることができ、ボルトの外れを阻止して、道路標識柱の盗難や悪戯をより確実に防止することができる。なお、ベースを接着によって路面に設置する場合、緩み止めを設けたとしても、余分な接着剤がナット収容空間に侵入してナットの回転を阻害すると、ナットをボルトと共回りさせることができなくなるおそれがあるが、このような場合であっても、ボルトを特殊ボルトとすることにより、道路標識柱に対する盗難や悪戯を防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のとおり、本発明によると、標識柱本体のフランジ、押さえリング、ボルト及びナットで構成する固定部で、標識柱本体をベースに固定し、その際、押さえリングの上方からボルトを貫通させて、ベースの下面側のナット収容空間に回転自在に収容したナットに螺合するようにしている。
【0016】
これにより、ベースや押さえリングとは別体のナットを用いてボルト先端部の抜け出しを阻止し、標識柱本体及び押さえリングの外れを生じ難くすることができる。しかも、押さえリングが、その上方から貫通するボルトの周辺部分を破壊しながら外れたとしても、ベースから上向きに突出するボルトの上端を比較的に面積の大きい頭部として、その上を通過した車両に、タイヤのパンクなどの損傷が生じるのを防止することができる。
【0017】
さらに、道路標識柱を路面に設置した後、その盗難や悪戯を目的として、押さえリングの上方からボルト頭部を回転させて外そうとした場合、ベースと路面とで閉ざされたナット収容空間のナットを共回りさせて、ボルトが外れるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る道路標識柱の正面図で、その一部に断面図を示す
図2図1の要部拡大図
図3】別の形態の要部拡大図
図4】さらに別の形態の要部拡大図
図5】従来の道路標識柱の断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る道路標識柱の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0020】
図1及び図2に示すように、道路標識柱1は、道路や歩道の路面2に設置して、例えば、上下車道の中央分離線や、車道と自転車道及び歩行者専用道路との境界線標示用、公園や街路等の車止め仕切り等の標識として使用するものであり、路面2に接着されるベース3と、ベース3の上面側に配置される標識柱本体4と、標識柱本体4をベース3に固定する固定部5と、を備え、その固定部5を、標識柱本体4の下端に形成してベース3の上面に載置するフランジ6と、フランジ6を上方から押さえる押さえリング7と、押さえリング7をベース3に締結する複数のボルト8及びナット9と、で構成し、さらに、ベース3の下面側にナット収容空間10を形成して、ナット収容空間10にナット9を回転自在に収容すると共に、押さえリング7、フランジ6及びベース3の上方からボルト8を貫通させて、その先端部をナット9に螺合させたものである。
【0021】
ベース3は、例えば合成樹脂製の円盤状で、中央の内環状部11とその外周側の外環状部12とを一体成形した構造とされ、その外環状部12に、標識柱本体4の下部を外嵌する筒部13と、筒部13の下端から径方向外向きに広がって標識柱本体4のフランジ6を受ける外周部14と、が形成されている。外周部14には、その例えば3カ所にボルト貫通孔15が形成され、各ボルト貫通孔15の下側開口の周縁部が凹設されて、ナット9よりも大径のナット収容空間10とされ、このナット収容空間10にナット9が収容される。
【0022】
標識柱本体4は、例えば合成樹脂製で頂部が塞がれた円筒状とされて、その下端が径方向外向きに広がるフランジ6とされ、下部をベース3の筒部13に外嵌されつつ、フランジ6をベース3の外周部14に載置される。フランジ6には、ベース3のボルト貫通孔15と位置を合わせて例えば3カ所にボルト貫通孔16が形成される。
【0023】
押さえリング7は、例えば合成樹脂製のリング状とされ、標識柱本体4の下部外周側及びフランジ6の上面に嵌合するようになっている。押さえリング7には、ベース3及びフランジ6のボルト貫通孔15、16と位置を合わせて例えば3カ所にボルト貫通孔17が形成される。
【0024】
ボルト8は、特殊工具を用いて締結する特殊ボルトとされ、押さえリング7の上方からボルト貫通孔17に挿入して、ボルト貫通孔15、16を貫通させ、特殊工具を用いて回転させることにより、ベース3のナット収容空間10に収容されたナット9にボルト先端部を螺合するようになっている。ナット9は、例えば、フランジ付きナットとすることにより、ボルト貫通孔15を大きくしてボルト8の挿入を容易にしつつ、ボルト貫通孔15からのナット9の抜け出しをより確実に防止することができる。
【0025】
ボルト8及びナット9は、路面2にベース3を接着する前に、ナット9を押さえて回転を阻止した状態で締結され、このボルト8及びナット9で、ベース3、フランジ6及び押さえリング7を締結することにより、ベース3に標識柱本体4が固定されて道路標識柱1が組み立てられる。その後、路面2に接着剤を供給すると共に、ベース3の下面側にそのナット収容空間10を除く隙間を満たす量の接着剤を供給して、路面2にベース3が接着される。なお、ベース3の下面側に接着剤を供給する際には、ナット収容空間10に侵入するのを避けるようにする。
【0026】
上記構成によれば、押さえリング7、フランジ6及びベース3を貫通するボルト8の先端部を別体のナット9に螺合させるので、ボルト先端部の抜け出しを阻止して、ベース3からの標識柱本体4及び押さえリング7の外れを生じ難くすることができる。
【0027】
ここで、本発明の構造と比較例に対するボルト8の引抜強度試験の結果について説明する。まず、本発明の構造は、図1及び図2に示す構造である。一方、比較例の構造は、図1及び図2に示す構造において、押さえリング7のボルト貫通孔17を省略し、ナット9を用いることなく、ボルト8をベース3の下方からボルト貫通孔15、16に上向きに挿入して、そのボルト8の先端で押さえリング7に孔を形成しながらねじ込んだ構造である。試験方法としては、本発明及び比較例の両構造に対して、押さえリング7を治具で固定し、この押さえリング7の下方にボルト8で締結したベース3を上方から押し込んで、ボルト8の引抜強度を3回ずつ測定した。ボルト8の本数は、本発明の構造については3本とし、比較例については6本とした。
【0028】
本発明の構造では、引抜強度が12.70(kN)、12.77(kN)、12.79(kN)であり、ボルト頭部がその周囲を破壊しながら押さえリング7から抜け出す破壊形態であった。一方、比較例では、引抜強度が10.12(kN)、10.53(kN)、10.50(kN)であり、ボルト8の先端部が抜け出す破壊形態であった。これにより、本発明の構造では、ボルト8の本数が引用例の半数であるにもかかわらず、十分な引抜強度が得られることがわかった。
【0029】
さらに、本発明の構造をタイヤで踏みつけ、それを5000回繰り返して損傷を調べたが、標識柱本体4の抜け出しや押さえリング7の外れなどの損傷は生じなかった。
【0030】
また、押さえリング7が、そのボルト周辺部分を破壊しながら外れたとしても、ベース3に残って上向きに突出するボルト8の上端は、細い先端部ではなく、比較的に面積の大きい頭部であり、その上を通過する車両に、タイヤのパンクなどの損傷が生じるのを防止することができる。
【0031】
さらに、道路標識柱1を路面2に設置した後は、ナット収容空間10がベース3と路面2とで閉ざされるので、ナット9の回転を阻止することができず、押さえリング7の上方からボルト頭部を回転させても、ナット9を共回りさせて、ボルト8を外せないようにすることができ、道路標識柱1の盗難や悪戯を防止することができる。しかも、ボルト8を特殊ボルトとするので、路面2に設置した道路標識柱1に対する盗難や悪戯をより確実に防止することができると共に、路面2に設置する前の道路標識柱1に対する盗難や悪戯をも防止することができる。なお、路面2にベース3を接着する際にナット収容空間10に接着剤が侵入し、この接着剤でナット9の回転が阻害されて、ボルト8とナット9とが共回りしなかったとしても、特殊ボルトを採用したボルト8を外すことはできない。
【0032】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、適宜変更を加えることができる。例えば、図3に示すように、ベース3は、接着によって路面2に固定するだけでなく、可動式の固定構造を用いることもできる。この固定構造は、ベース3に、下方に先端が突出するアンカーボルト18を回転不能に取り付け、このアンカーボルト18に脚体19を螺合して取り付けた後、路面2に形成した穴に脚体19を挿入すると共に、接着剤を注入して固定したものである。この構造は、路面2に設置した後でも、道路標識柱1を回転させることにより、アンカーボルト18と脚体19との螺合を外して、路面2から取り外すことができる。
【0033】
また、図4に示すように、ホールインアンカー20による固定構造を用いることもできる。この固定構造は、ベース3に、アンカーナット21を回転不能に取り付けると共に、路面2にホールインアンカー20を打ち込んで固定し、その後、道路標識柱1を回転させることにより、ホールインアンカー20にアンカーナット21を螺合させて、道路標識柱1を設置するものである。
【0034】
また、ボルト8及びナット9に、ロックナットや接着など、ボルト8及びナット9の緩みを防止する緩み止めを設けることもできる。この場合、緩み止めによってボルト8及びナット9の緩みを防止するので、ナット9をより確実にボルト8と共回りさせることができ、ボルト8の外れを阻止して、道路標識柱1の盗難や悪戯をより確実に防止することができる。なお、ベース3を接着によって路面2に設置する場合、緩み止めを設けたとしても、余分な接着剤がナット収容空間10に侵入してナット9の回転を阻害すると、ナット9をボルト8と共回りさせることができなくなるおそれがあるが、このような場合であっても、ボルト8を特殊ボルトとすることにより、道路標識柱1に対する盗難や悪戯を防止することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 道路標識柱
2 路面
3 ベース
4 標識柱本体
5 固定部
6 フランジ
7 押さえリング
8 ボルト
9 ナット
10 ナット収容空間
11 内環状部
12 外環状部
13 筒部
14 外周部
15、16、17 ボルト貫通孔
18 アンカーボルト
19 脚部
20 ホールインアンカー
21 アンカーナット
図1
図2
図3
図4
図5