IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社エビデントの特許一覧

<>
  • 特開-顕微鏡装置、光源装置 図1
  • 特開-顕微鏡装置、光源装置 図2
  • 特開-顕微鏡装置、光源装置 図3
  • 特開-顕微鏡装置、光源装置 図4
  • 特開-顕微鏡装置、光源装置 図5
  • 特開-顕微鏡装置、光源装置 図6
  • 特開-顕微鏡装置、光源装置 図7
  • 特開-顕微鏡装置、光源装置 図8
  • 特開-顕微鏡装置、光源装置 図9
  • 特開-顕微鏡装置、光源装置 図10
  • 特開-顕微鏡装置、光源装置 図11
  • 特開-顕微鏡装置、光源装置 図12
  • 特開-顕微鏡装置、光源装置 図13
  • 特開-顕微鏡装置、光源装置 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054462
(43)【公開日】2024-04-17
(54)【発明の名称】顕微鏡装置、光源装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/06 20060101AFI20240410BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
G02B21/06
G02B5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160678
(22)【出願日】2022-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】322004393
【氏名又は名称】株式会社エビデント
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100182936
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】日下 健一
【テーマコード(参考)】
2H052
2H149
【Fターム(参考)】
2H052AC05
2H052AC28
2H052AC33
2H052AF16
2H052BA06
2H149AA21
2H149AB01
2H149BA02
2H149DA04
2H149DA16
2H149EA03
2H149EA06
2H149EA10
2H149EA19
2H149FB03
2H149FD05
(57)【要約】
【課題】容易に光の色温度を調整する。
【解決手段】顕微鏡装置は、色温度調整ユニット10を備える。色温度調整ユニット10は、光の入射側から順に、光を直線偏光に変換する偏光子1と、偏光子1に対して所定の向きに固定された、直線偏光の少なくとも所定波長の光を円偏光に変換する1/4λ板2と、偏光子1に対して回転自在に配置された、所定の偏光成分を取り出す偏光子3と、を備える。1/4λ板2の435nmの光に対する位相量と635nmの光に対する位相量の差は30度以上である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
色温度調整ユニットを備え、
前記色温度調整ユニットは、光の入射側から順に、
前記光を直線偏光に変換する第1偏光子と、
前記第1偏光子に対して所定の向きに固定された、直線偏光の少なくとも所定波長の光を円偏光に変換する1/4波長板と、
前記第1偏光子に対して回転自在に配置された、所定の偏光成分を取り出す第2偏光子と、を備え、
前記1/4波長板の435nmの光に対する位相量と635nmの光に対する位相量の差が30度以上である
ことを特徴とする顕微鏡装置。
【請求項2】
請求項1に記載の顕微鏡装置において、
前記1/4波長板は、互いに遅軸が直交するように配置された分散の異なる2種類の複屈折材料を含む
ことを特徴とする顕微鏡装置。
【請求項3】
請求項1に記載の顕微鏡装置において、
前記色温度調整ユニットは、さらに、前記第2偏光子の出射側に配置された、直線偏光を解消する偏光解消素子を備える
ことを特徴とする顕微鏡装置。
【請求項4】
請求項3に記載の顕微鏡装置において、
前記偏光解消素子は、前記第2偏光子に対して所定の向きに固定された、直線偏光の少なくとも所定波長の光を円偏光に変換する第2の1/4波長板を含む
ことを特徴とする顕微鏡装置。
【請求項5】
請求項2に記載の顕微鏡装置において、
前記色温度調整ユニットは、さらに、前記第2偏光子の出射側に配置された、直線偏光を解消する偏光解消素子を備える
ことを特徴とする顕微鏡装置。
【請求項6】
請求項5に記載の顕微鏡装置において、
前記偏光解消素子は、前記第2偏光子に対して所定の向きに固定された、直線偏光の少なくとも所定波長の光を円偏光に変換する第2の1/4波長板を含む
ことを特徴とする顕微鏡装置。
【請求項7】
請求項1に記載の顕微鏡装置において、
前記色温度調整ユニットは、さらに、前記第1偏光子に対して前記第2偏光子が回転することで異なる値を指す色変換能力に関するインジケータを備える
ことを特徴とする顕微鏡装置。
【請求項8】
請求項2に記載の顕微鏡装置において、
前記色温度調整ユニットは、さらに、前記第1偏光子に対して前記第2偏光子が回転することで異なる値を指す色変換能力に関するインジケータを備える
ことを特徴とする顕微鏡装置。
【請求項9】
請求項3に記載の顕微鏡装置において、
前記色温度調整ユニットは、さらに、前記第1偏光子に対して前記第2偏光子が回転することで異なる値を指す色変換能力に関するインジケータを備える
ことを特徴とする顕微鏡装置。
【請求項10】
請求項4に記載の顕微鏡装置において、
前記色温度調整ユニットは、さらに、前記第1偏光子に対して前記第2偏光子が回転することで異なる値を指す色変換能力に関するインジケータを備える
ことを特徴とする顕微鏡装置。
【請求項11】
請求項5に記載の顕微鏡装置において、
前記色温度調整ユニットは、さらに、前記第1偏光子に対して前記第2偏光子が回転することで異なる値を指す色変換能力に関するインジケータを備える
ことを特徴とする顕微鏡装置。
【請求項12】
請求項6に記載の顕微鏡装置において、
前記色温度調整ユニットは、さらに、前記第1偏光子に対して前記第2偏光子が回転することで異なる値を指す色変換能力に関するインジケータを備える
ことを特徴とする顕微鏡装置。
【請求項13】
請求項1乃至請求項12のいずれか1項に記載の顕微鏡装置において、さらに、
白色光を出射する半導体光源と、
前記白色光を標本に照射する照明光学系と、を備え、
前記色温度調整ユニットは、前記照明光学系の光路上に配置される
ことを特徴とする顕微鏡装置。
【請求項14】
請求項13に記載の顕微鏡装置において、
前記半導体光源は、白色LED光源である
ことを特徴とする顕微鏡装置。
【請求項15】
白色光を出射する半導体光源と、
色温度調整ユニットと、を備え、
前記色温度調整ユニットは、光の入射側から順に、
前記光を直線偏光に変換する第1偏光子と、
前記第1偏光子に対して所定の向きに固定された、直線偏光の少なくとも所定波長の光を円偏光に変換する1/4波長板と、
前記第1偏光子に対して回転自在に配置された、所定の偏光成分を取り出す第2偏光子と、を備え、
前記1/4波長板の435nmの光に対する位相量と635nmの光に対する位相量の差が30度以上である
ことを特徴とする光源装置。
【請求項16】
請求項15に記載の光源装置において、
前記半導体光源は、白色LED光源である
ことを特徴とする光源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の開示は、顕微鏡装置、光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
顕微鏡の光源としては、従来、ハロゲンランプが主流であったが、近年では、ハロゲンランプからLEDへの切り替えが進んでいる。その一方で、ハロゲンランプとLEDでは色温度が異なるため、ハロゲンランプからLEDへ切り替えた利用者から、以前の色温度で観察を行いたいという要望が寄せられることがある。
【0003】
しかしながら、LEDの色温度は固定であるのに対して、ハロゲンランプの色温度は印加電圧によって変化する。具体的には、ハロゲンランプでは、最大出力時には青っぽく見えるのに対して比較的出力を抑えた状態では黄色っぽく見える。つまり、ハロゲンランプの利用者は、普段の使い方によってそれぞれ見えている色味が異なっている。このため、供給者側がLEDに予め所定の色変換フィルタを組み合わせて提供しても、利用者がハロゲンランプを使用していた時の色味が再現されるとは限らない。
【0004】
このような技術的な課題に関連する技術は、例えば、特許文献1に記載されている。特許文献1には、波長域間の光量バランスを変更することで、照明光の色温度を調整する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-084775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では反射素子が用いられているが、反射素子を含む構成は装置が大型化しやすく、既存の顕微鏡装置への組み込みが困難となる場合がある。そのため、色温度を調整する新たな技術が求められている。
【0007】
以上のような実情を踏まえ、本発明の一側面に係る目的は、容易に光の色温度を調整可能な新たな技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る顕微鏡装置は、色温度調整ユニットを備える。色温度調整ユニットは、光の入射側から順に、前記光を直線偏光に変換する第1偏光子と、前記第1偏光子に対して所定の向きに固定された、直線偏光の少なくとも所定波長の光を円偏光に変換する1/4波長板と、前記第1偏光子に対して回転自在に配置された、所定の偏光成分を取り出す第2偏光子と、を備え、前記1/4波長板の435nmの光に対する位相量と635nmの光に対する位相量の差が30度以上である。
【0009】
本発明の一態様に係る光源装置は、白色光を出射する半導体光源と、色温度調整ユニットと、を備える。色温度調整ユニットは、光の入射側から順に、前記光を直線偏光に変換する第1偏光子と、前記第1偏光子に対して所定の向きに固定された、直線偏光の少なくとも所定波長の光を円偏光に変換する1/4波長板と、前記第1偏光子に対して回転自在に配置された、所定の偏光成分を取り出す第2偏光子と、を備え、前記1/4波長板の435nmの光に対する位相量と635nmの光に対する位相量の差が30度以上である。
【発明の効果】
【0010】
上記の態様によれば、容易に光の色温度を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施形態に係る色温度調整ユニットの構成を例示した図である。
図2図1に示す色温度調整ユニットに含まれる1/4λ板の特性を説明するための図である。
図3図1に示す色温度調整ユニットに含まれる1/4λ板から出射した偏光の電場ベクトルの軌跡を波長毎に描いた図である。
図4図1に示す色温度調整ユニットに含まれる偏光子の透過軸の向きと透過光に含まれる波長毎の強度の関係を例示した図である。
図5図1に示す色温度調整ユニットの枠構造を例示した図である。
図6図1に示す色温度調整ユニットのインジケータを例示した図である。
図7】変形例に係る色温度調整ユニットのインジケータを例示した図である。
図8】第2の実施形態に係る色温度調整ユニットの構成を例示した図である。
図9図8に示す色温度調整ユニットに含まれる1/4λ板の特性を説明するための図である。
図10】第3の実施形態に係る色温度調整ユニットの構成を例示した図である。
図11図10に示す色温度調整ユニットの枠構造の一例を示した図である。
図12図10に示す色温度調整ユニットの枠構造を別の例を示した図である。
図13】第4の実施形態に係る光源装置の構成を例示した図である。
図14】第5の実施形態に係る顕微鏡装置の構成を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係る色温度調整ユニット10の構成を例示した図である。図1に示す色温度調整ユニット10は、入射光に対して色温度が調整された出射光を射出可能なユニットであり、例えば、白色光が入射する光学機器の光路中に配置して使用される。
【0013】
色温度調整ユニット10は、回転自在に構成された可動部分を備えている。色温度調整ユニット10は、この可動部分の回転方向と回転量によって色温度を容易に調整する可能であり、利用者が期待する様々な色温度に対応することができる。
【0014】
色温度調整ユニット10は、図1に示すように、光が入射する側からこの順に配置された、偏光子1と、1/4λ板2と、偏光子3を備えている。偏光子1は、色温度調整ユニット10の第1偏光子であり、光を直線偏光に変換する。偏光子1は、光を直線偏光に変換するものであればよく、例えば、ワイヤグリッドを使用した偏光子やその他の偏光子など、任意の偏光子を採用し得る。なお、偏光子1の透過軸はX軸と一致する方向に配置される。
【0015】
1/4λ板2は、色温度調整ユニット10の遅相子であり、正常光線と異常光線の間に相対的位相量(以降、単に位相量と記す)を与えて直線偏光を円偏光に変換する。1/4λ板2は、例えば、複屈折材料である水晶からなる。1/4λ板2は、偏光子1に対して所定の向きに固定されている。具体的には、偏光子1から出射した直線偏光の偏光面(電場ベクトル)に対して45°の方向に1/4λ板2の遅軸が向けられる。なお、偏光子1から出射した直線偏光の偏光面は偏光子1の透過軸と平行であるので、偏光子1の透過軸と1/4λ板2の遅軸が45°の角度を成すように、偏光子1と1/4λ板2を配置すればよい。
【0016】
偏光子3は、色温度調整ユニット10の第2偏光子であり、1/4λ板2から出射した円偏光から、所定の偏光成分を取り出す。具体的には、偏光子3の透過軸と平行な偏光面を有する直線偏光を取り出す。偏光子3は、1/4λ板2に対して回転自在に配置されている。以上の様に構成された色温度調整ユニット10では、偏光子3を回転することで、任意の偏光面を有する直線偏光を取り出すことができる。なお、図1では偏光子3の透過軸がX軸となす角度をθとしている。
【0017】
図2は、図1に示す色温度調整ユニット10に含まれる1/4λ板2の特性を説明するための図である。図3は、1/4λ板2から出射した偏光の電場ベクトルの軌跡を波長毎に描いた図である。図4は、偏光子3の透過軸の向きと透過光に含まれる波長毎の強度の関係を例示した図である。
【0018】
1/4λ板2を通過した光が円偏光であれば、偏光方向によらず一定の強度の偏光成分を有している。このため、偏光子3の透過軸の向きを変えても偏光子3を通過した直線偏光の強度は変化しない。しかしながら、1/4λ板2で生じた位相量がπ/2(つまり、光路長差が1/4λ)からずれると、1/4λ板2を通過した光は円偏光にならず楕円偏光になる。楕円偏光では偏光方向によって偏光成分の強度が異なるため、偏光子3の透過軸の向きを変えると、偏光子3を通過した直線偏光の強度が変化する。
【0019】
1/4λ板2で生じる位相量は、1/4λ板2の厚さをdとし、1/4λ板2の正常光線と異常光線に対する屈折率をno、neとすると、2πd(|no-ne|)/λ0で表され、入射波長λ0に依存する。no、neは波長により変化するが、一般に波長が変わったときの|no-ne|の変化は波長λ0の変化と異なる。このため、2πd(|no-ne|)/λ0は波長に対して一定とはならない。従って、1/4λ板2は、実際には、所定波長では位相量π/2を生じさせるように設計されていて、その他の多くの波長では、π/2よりも小さい又は大きい位相量を生じさせる。即ち、1/4λ板2は、偏光子1から入射した直線偏光の少なくとも所定波長の光を円偏光に変換し、その他の波長の光を楕円偏光に変換するものである。
【0020】
一般に、特定の複屈折材料からなる1/4λ板で生じる位相量は、図2に示すように、短波長において長く、長波長において短くなる。そのため、例えば、緑色(G)に対して位相量π/2を生じさせるように設計されている場合を例にすると、図3に示すように、1/4λ板2を通過した光のうち、緑色(G)の光は円偏光になるのに対して、赤色(R)と青色(B)の光は互いに向きの異なる楕円偏光になる。
【0021】
図3に示すような波長毎に異なる方向を向いた楕円偏光が偏光子3に入射する場合、偏光子3の透過軸の向きを変えることで、図4に示すように、偏光子3を通過した直線偏光に含まれる波長間の光量バランスが変化する。
【0022】
例えば、図3に示すI方向(X軸から45度傾き)に偏光子3の透過軸を向けた場合であれば、図4に示すようにRGBがほぼ同じ強度で透過する。このため、視野が白っぽくなる。これに対して、図3に示すIII方向に偏光子3の透過軸を向けると、図4に示すようにRが減ってBが増える。このため、視野が青っぽくなる。反対に、図3に示すII方向に偏光子3の透過軸を向けると、Rが増加しBが減少する。このため、視野が黄色っぽく(赤っぽく)なる。
【0023】
このように、1/4λ板2が有する、波長によって位相量が異なる性質を利用することで偏光子3を通過する波長間の光量バランスを調整可能であり、それによって色温度を調整することができる。
【0024】
ところで、一般に1/4λ板などの波長板において、波長による位相量の変動は、単色光に対して用いられるものでなければ、可能な限り小さくなるよう設計されている。これに対して、色温度調整ユニット10に用いられる1/4λ板2は、従来から用いられる典型的な1/4λ板とは異なり、この位相量の変動を積極的に利用するものである。
【0025】
具体的には、1/4λ板2は、可視域において、波長間の光量バランスが電場ベクトルの方向によって人間が視覚的に認識できる程度に十分に変化するように構成されている。より具体的には、1/4λ板2は、図2に示すように、1/4波長板の435nmの光に対する位相量と635nmの光に対する位相量の差が30度以上であるように構成されている。位相量差が30度以上であれば、色変換能力、特にB-R変換能力、に換算して20ミレッド以上を確保することができるため、人間が視覚的に色の変化を認識することができる。
【0026】
なお、B-R変換能力vは、v=221(logTr-logTb)で表される。Trは、波長610nm、635nm及び655nmでの1/4λ板2の透過率の平均値(%)であり、Tbは、波長405nm、435nm及び465nmでの1/4λ板2の透過率の平均値(%)である。なお、B-R変換能力vの単位はミレッドである。以降では、計算を簡略化するためにTrとTbに635nm、435nmの透過率を用いて計算したB-R変換能力をv´と表記する。1/4λ板2が水晶からなる場合における1/4λ板2のB-R変換能力は以下の通りである。なお、角度θは、上述した通り、偏光子3の透過軸がX軸となす角度である。換言すると、偏光子1の透過軸に対する偏光子3の透過軸の相対的な角度である。
【0027】
635nmの位相量:76.82度
435nmの位相量:116.89度
635nmの位相量 - 435nmの位相量:40.07度
偏光子3の角度θ=0度における色変換能力v´:38.74ミレッド
偏光子3の角度θ=90度における色変換能力v´:-30.32ミレッド
【0028】
図5は、色温度調整ユニット10の枠構造を例示した図である。図5に示すように、色温度調整ユニット10は、枠11と、枠11に対して回転自在に配置された枠12を有している。1/4λ板2は、偏光子1に対して所定の向きに固定されるため、偏光子1と1/4λ板2は、同じ枠11に支持される。一方、偏光子3は、1/4λ板2に対して回転自在に配置されるため、1/4λ板2が支持される枠11とは異なる枠12に支持される。これにより、色温度調整ユニット10では、枠11に対して枠12を相対的に回転させることで、色温度を調整することができる。
【0029】
図6は、色温度調整ユニット10のインジケータ13を例示した図である。色温度調整ユニット10では、図6に示すように、色変換能力に関するインジケータ13を備えてもよい。インジケータ13は、例えば、枠11に付された目盛13aと、枠12に付された基準13bで構成されている。目盛13aは、例えば、上述したB-R変換能力をミレッド単位で示したものである。
【0030】
インジケータ13は、偏光子1(枠11)に対して偏光子3(枠12)が回転することで基準13bが目盛13aの異なる値を指すように構成されていればよい。このため、目盛13aが枠12に付されていて、基準13bが枠11に付されてもよい。インジケータ13で色温度の調整量を数値化することで、色の再現を容易に行うことができる。
【0031】
図7は、変形例に係る色温度調整ユニット10aのインジケータ14を例示した図である。色温度調整ユニット10aは、インジケータ13の代わりにインジケータ14を備える点を除き、色温度調整ユニット10と同様である。インジケータ13は、円筒形状を有する枠11及び枠12の側面に設けられているのに対して、インジケータ14は、枠11及び枠12の軸方向の端面に設けられている。色温度調整ユニット10及び色温度調整ユニット10aに示すように、インジケータが設けられる位置は特に限定されず、利用者が認識可能であれば、色温度調整ユニットの任意の位置に設けてもよい。
【0032】
以上の様に、色温度調整ユニット10によれば、可動部を回転させるだけで容易に光の色温度を調整することができる。特に、色温度調整ユニット10では、光の進行方向に対して偏光子1と1/4λ板2と偏光子3を並べて配置することで厚さを抑えて1つのユニット内にコンパクトに収容することができる。また、出射光の方向を入射光の方向と同じ方向に維持することができる。従って、既存の光学機器の光路中への比較的容易に配置することができる。また、偏光子1と1/4λ板2と偏光子3がそれぞれの間に他の光学素子を介在させることなく近接して配置されていることで、設計外の偏光の乱れを防止することができる。従って、設計したとおりの高い色変換性能を実現することができる。
【0033】
(第2の実施形態)
図8は、本実施形態に係る色温度調整ユニット20の構成を例示した図である。図9は、色温度調整ユニット20に含まれる1/4λ板の特性を説明するための図である。図8に示す色温度調整ユニット20は、1/4λ板2の代わりに1/4λ板21を備える点が色温度調整ユニット10とは異なっている。その他の点は、色温度調整ユニット10と同様であり、色温度調整ユニット20でもインジケータ13を備えることが望ましい。
【0034】
1/4λ板21は、1/4λ板21の435nmの光に対する位相量と635nmの光に対する位相量の差が30度以上であるように構成されている点は、1/4λ板2と同様である。ただし、1/4λ板2は、例えば、水晶など単一の複屈折材料からなる。これに対して、1/4λ板21は、図8に示すように、互いに遅軸が直交するように配置された色分散の異なる2種類の複屈折材料22、複屈折材料23を含んでいる。この点において、1/4λ板21は、1/4λ板2とは異なっている。
【0035】
2種類の異なる材料からなる波長板は従来からアクロマチック波長板として知られている。アクロマチック波長板は、色分散の異なる材料を組み合わせることで色分散を互いに補償することで実質的に取り除くように設計されている。これに対して、1/4λ板21は、色分散(波長間での位相量差)が大きくなるように意図的に設計されている。この点において、1/4λ板21は、従来のアクロマチック波長板と大きく異なっている。
【0036】
具体的には、1/4λ板21では、図8に示すように、複屈折材料23よりも大きな色分散を有する複屈折材料22と、複屈折材料22よりも小さな色分散を有する複屈折材料23を、遅軸が互いに直交するように配置する。これにより、図9に示すように、1/4λ板21全体として、複屈折材料22、複屈折材料23のそれぞれの色分散(位相量差Δ1、Δ2)よりも大きな色分散(位相量差Δ)を実現することができる。なお、複屈折材料22は、複屈折材料22の遅軸が偏光子1の透過軸に対して45度傾いた向きとなるように配置される。
【0037】
複屈折材料22として望ましい色分散が大きな材料は、例えば、水晶である。複屈折材料23として色分散が小さな望ましい材料は、例えば、セロファンなどの高分子フィルムである。なお、水晶と高分子フィルムからなる1/4λ板21の具体的な構成例(1)から(3)と、それらのB-R変換能力は、以下の通りである。いずれも十分なB-R変換能力を備えていることが確認できる。
【0038】
(1)水晶からなる2/4波長板と高分子フィルム1/4波長板の組み合わせ
635nmの位相量:73.50度
435nmの位相量:135.75度
635nmの位相量 - 435nmの位相量:62.25度
偏光子3の角度θ=0度における色変換能力v´:72.35ミレッド
偏光子3の角度θ=90度における色変換能力v´:-41.94ミレッド
【0039】
(2)水晶からなる3/4波長板と高分子フィルム2/4波長板の組み合わせ
635nmの位相量:70.19度
435nmの位相量:154.61度
635nmの位相量 - 435nmの位相量:84.42度
偏光子3の角度θ=0度における色変換能力v´:126.13ミレッド
偏光子3の角度θ=90度における色変換能力v´:-50.75ミレッド
【0040】
(3)水晶からなる1波長板と高分子フィルム3/4波長板の組み合わせ
635nmの位相量:66.87度
435nmの位相量:173.47度
635nmの位相量 - 435nmの位相量:106.60度
偏光子3の角度θ=0度における色変換能力v´:257.28ミレッド
偏光子3の角度θ=90度における色変換能力v´:-57.01ミレッド
【0041】
色温度調整ユニット20によっても、可動部を回転させるだけで容易に光の色温度を調整することが可能であり、色温度調整ユニット10と同様の効果を得ることができる。また、コンパクトに構成され、既存の光学機器の光路中への比較的容易に配置することができる点、偏光の乱れを防止して高い色変換性能を実現することができる点も、色温度調整ユニット10と同様である。さらに、色温度調整ユニット20によれば、複数の複屈折材料を組み合わせることで色温度調整ユニット10によりも高い色分散を実現することができるため、色温度調整ユニット10よりも高い色温度の調整能力を提供することができる。
【0042】
(第3の実施形態)
図10は、本実施形態に係る色温度調整ユニット30の構成を例示した図である。図11及び図12は、色温度調整ユニット30の枠構造を例示した図である。図10に示す色温度調整ユニット30は、偏光子3の出射側に配置された偏光解消素子4を備える点が色温度調整ユニット10とは異なっている。その他の点は、色温度調整ユニット10と同様であり、色温度調整ユニット30でもインジケータ13を備えることが望ましい。
【0043】
偏光解消素子4は、直線偏光を解消する素子である。偏光解消素子4は、偏光を乱して直線偏光を解消できればよい。偏光解消素子4は、例えば、直線偏光をランダム偏光に変換するデポラライザであってもよく、直線偏光の少なくとも所定波長の光を円偏光に変換する1/4λ板(第2の1/4λ板)であってもよい。偏光解消素子4は、図11に示すように、偏光子3を支持する枠12とは別の枠31に支持されてもよい。ただし、偏光解消素子4が1/4λ板の場合には、偏光子3に対して所定の向きに固定するために、図12に示すように、偏光子3と偏光解消素子4を同じ枠32で支持することが望ましい。
【0044】
色温度調整ユニット30によっても、可動部を回転させるだけで容易に光の色温度を調整することが可能であり、色温度調整ユニット10と同様の効果を得ることができる。また、コンパクトに構成され、既存の光学機器の光路中への比較的容易に配置することができる点、偏光の乱れを防止して高い色変換性能を実現することができる点も、色温度調整ユニット10と同様である。さらに、色温度調整ユニット30によれば、出射光を直線偏光でない光として出力することが可能であり、入射光に対して偏光状態を変更することなく、色温度だけを調整することができる。
【0045】
なお、色温度調整ユニット30は、1/4λ板2の代わりに1/4λ板21を備えてもよい。即ち、第2の実施形態に係る色温度調整ユニット20に偏光解消素子4を設けてもよい。
【0046】
(第4の実施形態)
図13は、本実施形態に係る光源装置100の構成を例示した図である。図13に示す光源装置100は、半導体光源101と、色温度調整ユニット102を備える。半導体光源101は、白色光源を出射する半導体光源であり、例えば、白色LED光源である。
【0047】
色温度調整ユニット102は、例えば、第1の実施形態に係る色温度調整ユニット10であるが、上述した任意の実施形態に係る色温度調整ユニットであってもよい。
【0048】
半導体光源101は、ハロゲンランプなどのランプ光源とは異なり、発光する白色光の色温度が固定されているため、ハロゲンランプを用いた光源装置からの置き換え時に色温度を調整したいという要望が生じやすい。半導体光源101と色温度調整ユニット102を組み合わせることで、色温度の調整を容易に行うことができる。
【0049】
なお、光源装置100は、出力光量を調整する操作部111と、色温度を調整する操作部112を備えることが望ましい、操作部112を操作することで、例えば色温度調整ユニット102に含まれる偏光子が回転し、その結果、色温度調整ユニット102に含まれる1/4λ板が偏光子に対して相対的に回転する。
【0050】
光源装置100によれば、光源装置100に含まれる色温度調整ユニット102で出射光の色温度を調整することができる。このため、ハロゲンランプを用いた光源装置からの置き換え時に、光源装置と組み合わせて使用する光学機器に別途色温度を調整するための手段を組み込む手間を省くことができる。
【0051】
(第5の実施形態)
図14は、本実施形態に係る顕微鏡装置200の構成を例示した図である。図14に示す顕微鏡装置200は、半導体光源201と、白色光を標本Sに照射する照明光学系210と、照明光学系210の光路上に配置された色温度調整ユニット202と、を備えている。顕微鏡装置200は、さらに、観察光学系220を備えている。
【0052】
半導体光源201は、白色光源を出射する半導体光源であり、例えば、白色LED光源である。色温度調整ユニット202は、例えば、第1の実施形態に係る色温度調整ユニット10であるが、上述した任意の実施形態に係る色温度調整ユニットであってもよい。照明光学系210は、コレクタレンズ211と、窓レンズ212と、コンデンサレンズ213を含んでいる。観察光学系220は、対物レンズ221と、結像レンズ222と、プリズム223と、接眼レンズ224を備えている。
【0053】
色温度調整ユニット202は、図14に示すように、照明光学系210の光路上に配置されることが望ましい。色温度調整ユニット202内には、複数の光学素子が近接して配置されているため、観察光学系220の光路上に配置すると、色温度調整ユニット202内での面反射によるフレアが観察像に悪影響を及ぼす可能性があるからである。また、色温度調整ユニット202は、光軸に対して回転する部材(第2偏光子)を含んでいるため、観察光学系の光路中に置くと、回転する部材(第2偏光子)に楔がある場合には像が回転してしまう。以上のような理由から、色温度調整ユニット202は、照明光学系の光路上に配置することが望ましい。
【0054】
色温度調整ユニット202は、偏光解消素子4を含んでも含まなくてもよい。ただし、顕微鏡装置200が実体顕微鏡などの双眼鏡筒を有する顕微鏡の場合には、偏光解消素子4を含むことが望ましい。双眼鏡筒内のビームスプリッタに直線偏光が入射すると、左右の光路に導かれる光量が均一にならない、左右でスペクトル分布に違いが生じるといった場合があるからである。
【0055】
顕微鏡装置200によれば、顕微鏡装置200に含まれる色温度調整ユニット202で照明光の色温度を調整することができる。このため、ハロゲンランプからLED光源への置き換えても、使用感が大きく変わらない顕微鏡装置を利用者に提供することができる。
【0056】
上述した実施形態は、発明の理解を容易にするために具体例を示したものであり、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。上述の実施形態を変形した変形形態および上述した実施形態に代替する代替形態が包含され得る。つまり、実施形態は、その趣旨および範囲を逸脱しない範囲で構成要素を変形することが可能である。また、1つ以上の実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより、新たな実施形態を実施することができる。また、各実施形態に示される構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよく、または実施形態に示される構成要素にいくつかの構成要素を追加してもよい。さらに、各実施形態に示す処理手順は、矛盾しない限り順序を入れ替えて行われてもよい。即ち、本発明の顕微鏡装置、光源装置は、特許請求の範囲の記載を逸脱しない範囲において、さまざまな変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0057】
1、3 :偏光子
2、21 :1/4λ板
4 :偏光解消素子
10、10a、20、30、102、202 :色温度調整ユニット
11、12、31、32 :枠
13、14 :インジケータ
22、23 :複屈折材料
100 :光源装置
101、201 :半導体光源
111、112 :操作部
200 :顕微鏡装置
210 :照明光学系
220 :観察光学系
221 :対物レンズ
S :標本
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14