(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054463
(43)【公開日】2024-04-17
(54)【発明の名称】観察装置、及び、照明装置
(51)【国際特許分類】
G02B 21/06 20060101AFI20240410BHJP
G02B 21/12 20060101ALI20240410BHJP
G02B 21/36 20060101ALN20240410BHJP
【FI】
G02B21/06
G02B21/12
G02B21/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160679
(22)【出願日】2022-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】322004393
【氏名又は名称】株式会社エビデント
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100182936
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】風間 至弘
【テーマコード(参考)】
2H052
【Fターム(参考)】
2H052AB01
2H052AB10
2H052AC02
2H052AC03
2H052AC05
2H052AC07
2H052AC09
2H052AC14
2H052AC18
2H052AC24
2H052AC33
2H052AD31
2H052AD34
2H052AF14
(57)【要約】
【課題】照野を調整可能なコンパクトな装置を提供する。
【解決手段】観察装置10は、照明光を出射する光源11と、試料面SPに照明光を照射する照明光学系14であって、光源11を無限遠に投影するコレクタレンズ12とコレクタレンズ12と試料面SPの間に配置されたコンデンサレンズ13とからなる照明光学系14と、コンデンサレンズ13を照明光学系14の光路に対して挿脱する切替構造15と、対物レンズ16を含む観察光学系を備える。照明光学系14は、コンデンサレンズ13を照明光学系14の光路から取り除いて照野を広げたマクロ照明状態で、光源11の像を対物レンズ16の瞳位置に形成するように、構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明光を出射する光源と、
試料面に前記照明光を照射する照明光学系であって、前記光源を無限遠に投影するコレクタレンズと前記コレクタレンズと前記試料面の間に配置されたレンズ群とからなる前記照明光学系と、
前記レンズ群をまとめて前記照明光学系の光路に対して挿脱する切替構造と、
対物レンズを含む観察光学系と、を備え、
前記照明光学系は、前記レンズ群を前記照明光学系の前記光路から取り除いて照野を広げたマクロ照明状態で、前記光源の像を前記対物レンズの瞳位置に形成するように、構成される
ことを特徴とする観察装置。
【請求項2】
請求項1に記載の観察装置において、
前記光源は、面光源であり、
前記レンズ群は、コンデンサレンズからなり、
前記観察装置は、前記レンズ群を前記照明光学系の前記光路へ挿入して前記照野を狭めたミクロ照明状態で、クリティカル照明法で前記試料面を照明する
ことを特徴とする観察装置。
【請求項3】
請求項1に記載の観察装置において、
前記レンズ群は、コンデンサレンズと、前記コレクタレンズと前記コンデンサレンズの間に前記光源の像を形成する窓レンズと、からなり、
前記観察装置は、前記レンズ群を前記照明光学系の前記光路へ挿入して前記照野を狭めたミクロ照明状態で、ケーラー照明法で前記試料面を照明する
ことを特徴とする観察装置。
【請求項4】
請求項1に記載の観察装置において、さらに、
前記光源を前記照明光学系の光軸に対して移動させる移動構造を備え、
前記観察装置は、前記マクロ照明状態で、前記照明光学系の光軸から偏心した位置に移動した前記光源からの前記照明光で前記試料面を照明する
ことを特徴とする観察装置。
【請求項5】
請求項4に記載の観察装置において、
前記移動構造は、前記マクロ照明状態で、前記対物レンズの瞳位置における輝度分布が偏心方向に沿って単調増加し、且つ、前記輝度分布の最小輝度が最大輝度の50%以下となる位置まで前記光源を移動する
ことを特徴とする観察装置。
【請求項6】
請求項2に記載の観察装置において、さらに、
前記光源を前記照明光学系の光軸に対して移動させる移動構造を備え、
前記観察装置は、
前記ミクロ照明状態で、前記照明光学系の光軸上の位置に移動した前記光源からの前記照明光で前記試料面を照明し、
前記マクロ照明状態で、前記照明光学系の光軸から偏心した位置に移動した前記光源からの前記照明光で前記試料面を照明する
ことを特徴とする観察装置。
【請求項7】
請求項6に記載の観察装置において、
前記移動構造は、前記マクロ照明状態で、前記対物レンズの瞳位置における輝度分布が偏心方向に沿って単調増加し、且つ、前記輝度分布の最小輝度が最大輝度の50%以下となる位置まで前記光源を移動する
ことを特徴とする観察装置。
【請求項8】
請求項6に記載の観察装置において、さらに、
前記レンズ群とともに前記照明光学系の光路に対して挿脱される瞳変調素子であって、前記ミクロ照明状態で前記照明光学系の瞳位置に配置される前記瞳変調素子を備える
ことを特徴とする観察装置。
【請求項9】
請求項8に記載の観察装置において、
前記瞳変調素子は、前記ミクロ照明状態で、前記照明光学系の瞳位置における輝度分布が偏心方向に沿って単調増加し、且つ、前記輝度分布の最小輝度が最大輝度の50%以下となるように変調する
ことを特徴とする観察装置。
【請求項10】
請求項3に記載の観察装置において、
前記光源は、前記照明光学系の光軸から偏心した位置に配置されていて、
前記観察装置は、前記ミクロ照明状態と前記マクロ照明状態のどちらでも、前記照明光学系の光軸から偏心した前記位置の前記光源からの前記照明光で前記試料面を照明する
ことを特徴とする観察装置。
【請求項11】
請求項10に記載の観察装置において、
前記光源は、前記ミクロ照明状態と前記マクロ照明状態のどちらでも、前記対物レンズの瞳位置における輝度分布が偏心方向に沿って単調増加し、且つ、前記輝度分布の最小輝度が最大輝度の50%以下となる位置に配置される
ことを特徴とする観察装置。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載の観察装置において、
以下の条件式
K/(f・tanθ)≦2 ・・・(1)
1≦2f2・tanθ/(D・Φ)+f/D ・・・(2)
を満たす
ことを特徴とする観察装置。
但し、fは、前記コレクタレンズの焦点距離である。Kは、前記観察光学系の最大観察範囲の対角長である。θは、前記コレクタレンズの有効半径に対応する前記光源の出射角である。Dは、前記コレクタレンズから試料面までの距離である。Φは、前記光源の発光面の直径である。
【請求項13】
照明光を出射する光源と、
試料面に前記照明光を照射する照明光学系であって、前記光源を無限遠に投影するコレクタレンズと前記コレクタレンズと前記試料面の間に配置された1枚以上のレンズ群からなる前記照明光学系と、
前記レンズ群をまとめて前記照明光学系の光路に対して挿脱する切替構造と、を備える
ことを特徴とする照明装置。
【請求項14】
請求項13に記載の照明装置において、
前記光源は、面光源であり、
前記レンズ群は、コンデンサレンズからなり、
前記照明装置は、前記レンズ群が前記照明光学系の前記光路に挿入されたミクロ照明状態で、クリティカル照明法で前記試料面を照明する
ことを特徴とする照明装置。
【請求項15】
請求項13に記載の照明装置において、
前記レンズ群は、コンデンサレンズと、前記コレクタレンズと前記コンデンサレンズの間に前記光源の像を形成する窓レンズと、からなり、
前記照明装置は、前記レンズ群が前記照明光学系の前記光路に挿入されたミクロ照明状態で、ケーラー照明法で前記試料面を照明する
ことを特徴とする照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の開示は、観察装置、及び、照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
観察装置に求められる照野は、観察範囲に応じて異なる。そのため、顕微鏡のような様々な観察範囲に対応する観察装置には、照野を調整する機能が望まれている。この課題に関連する技術は、例えば、特許文献1、特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-142514号公報
【特許文献2】特開2004-185005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、照明光学系に含まれるコンデンサレンズの第1レンズ群と第3レンズ群を光路に対して挿脱することで照明範囲を変更する構成が記載されている。また、特許文献2には、照明光学系に含まれるコンデンサレンズの挿脱と照明光学系に含まれるフォーカシングレンズの光軸方向への摺動により照明範囲を変更する構成が記載されている。
【0005】
特許文献1、特許文献2に記載の技術では、照明範囲を変更するために、照明光学系に対して複雑な操作が必要となる。具体的には、照明光学系を構成する要素のうち他の要素を挟んで配置された2つ以上の要素を操作する必要があり、このような操作を支援するための構造は、照明光学系を含む照明装置が大型化する要因となり得る。
【0006】
以上のような実情を踏まえ、本発明の一側面に係る目的は、照野を調整可能なコンパクトな装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る観察装置は、照明光を出射する光源と、試料面に前記照明光を照射する照明光学系であって、前記光源を無限遠に投影するコレクタレンズと前記コレクタレンズと前記試料面の間に配置されたレンズ群とからなる前記照明光学系と、前記レンズ群をまとめて前記照明光学系の光路に対して挿脱する切替構造と、対物レンズを含む観察光学系と、を備え、前記照明光学系は、前記レンズ群を前記照明光学系の前記光路から取り除いて照野を広げたマクロ照明状態で、前記光源の像を前記対物レンズの瞳位置に形成するように、構成される。
【0008】
本発明の一態様に係る照明装置は、照明光を出射する光源と、試料面に前記照明光を照射する照明光学系であって、前記光源を無限遠に投影するコレクタレンズと前記コレクタレンズと前記試料面の間に配置された1枚以上のレンズ群からなる前記照明光学系と、前記レンズ群をまとめて前記照明光学系の光路に対して挿脱する切替構造と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
上記の態様によれば、照野を調整可能なコンパクトな装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】ミクロ照明状態における第1の実施形態に係る観察装置の構成を照明光学系に注目して例示した図である。
【
図2】マクロ照明状態における第1の実施形態に係る観察装置の構成を照明光学系に注目して例示した図である。
【
図3】第1の実施形態に係る観察装置の構成を観察光学系に注目して例示した図である。
【
図4】ミクロ照明状態における照野の大きさを説明する。
【
図5】マクロ照明状態における照野の大きさを説明する。
【
図6】第1の実施形態に係る観察装置が満たすことが望ましい条件を説明するための図である。
【
図7】ミクロ照明状態における第2の実施形態に係る観察装置の構成を照明光学系に注目して例示した図である。
【
図8】マクロ照明状態における第2の実施形態に係る観察装置の構成を照明光学系に注目して例示した図である。
【
図9】第3の実施形態に係る観察装置が備える光源を移動させる移動構造を説明するための図である。
【
図10】第3の実施形態に係る観察装置が備える光源の発光面における輝度分布を例示した図である。
【
図11】ミクロ照明状態における第4の実施形態に係る観察装置の構成を照明光学系に注目して例示した図である。
【
図12】第4の実施形態に係る観察装置が備える瞳変調素子を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1の実施形態>
図1は、ミクロ照明状態における第1の実施形態に係る観察装置の構成を照明光学系に注目して例示した図である。
図2は、マクロ照明状態における第1の実施形態に係る観察装置の構成を照明光学系に注目して例示した図である。
図3は、第1の実施形態に係る観察装置の構成を観察光学系に注目して例示した図である。
図4は、ミクロ照明状態における照野の大きさを説明する。
図5は、マクロ照明状態における照野の大きさを説明する。
以下、
図1から
図5を参照しながら、観察装置10について説明する。
【0012】
観察装置10は、試料面SPの観察に用いられる装置であり、例えば、顕微鏡である。観察装置10は、
図1から
図3に示すように、照明光を出射する光源11と、試料面SPに照明光を照射する照明光学系14と、対物レンズ16を含む観察光学系18と、を備えている。また、観察装置10は、撮像素子19を備えてもよい。
【0013】
さらに、観察装置10は、照野の大きさが異なる2つ以上の照明状態を切り替えるための構造として、切替構造15を備えている。以降では、切替構造15を用いて2つの照明状態を切り替える場合を例に説明する。また、切り替わる2つの照明状態のうち、照野が狭い方の状態をミクロ照明状態と記し、照野が広い方の状態をマクロ照明状態と記す。
【0014】
光源11は、LED(Light-Emitting Diode)光源である。LED光源は、平面状の発光領域を備える面光源の一例である。LED光源の平面状の発光領域(発光面)内の輝度分布はランプ光源の発光領域内の輝度分布と比べて高い均一性を有している。この特徴によって、光源11に面光源を用いることで、特にミクロ照明状態において照野を均一に照明することができる。ただし、光源11は、例えば、ハロゲンランプ光源などのランプ光源であってもよい。
【0015】
照明光学系14は、コレクタレンズ12とコンデンサレンズ13からなる。コレクタレンズ12は、最も光源11側に配置されるレンズであり、光源11を無限遠に投影する。コンデンサレンズ13は、コレクタレンズ12と試料面SPの間に配置されたレンズ群の一例である。
【0016】
観察光学系18は、対物レンズ16と結像レンズ17を備えている。対物レンズ16は、無限遠補正型の対物レンズであり、結像レンズ17との組み合わせで、試料面SPの像を撮像素子19上に形成する。撮像素子19は、例えば、CCD(Charge Coupled Devices)やCMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)などのイメージセンサである。
【0017】
観察装置10の利用者は、撮像素子19で取得された試料面SPの画像が図示しない表示装置に表示されることで、試料面SPを観察してもよい。なお、観察装置10は、図示しない接眼レンズを備えてもよい。観察装置10の利用者は、接眼レンズを覗くことで試料面SPを観察してもよい。
【0018】
切替構造15は、コレクタレンズ12と試料面SPの間にあるレンズ群をまとめて照明光学系14の光路に対して挿脱するものである。具体的には、切替構造15は、照明光学系14のうちコンデンサレンズ13を照明光学系14の光路に対して挿脱する。
【0019】
切替構造15は、例えば、回転軸周りに回転することでレンズ群を挿脱するターレットであってもよく、光軸と交差する方向(例えば直交する方向)にスライドすることでレンズ群を挿脱するスライダであってもよい。また、切替構造15は、モータなどの動力源からの動力により電動でレンズ群を挿脱してもよく、人間により手動で動かされることでレンズ群を挿脱してもよい。
【0020】
切替構造15がコンデンサレンズ13を挿脱することで、照野が狭いミクロ照明状態と照野が広いマクロ照明状態が切り替わる。具体的には、観察装置10によって実現される試料面SPの照明状態は、コンデンサレンズ13を光路に挿入することで、
図1に示すミクロ照明状態に切り替わり、コンデンサレンズ13を光路から取り除くことで、
図2に示すマクロ照明状態に切り替わる。以下、ミクロ照明状態とマクロ照明状態についてさらに詳細に説明する。
【0021】
まず、ミクロ照明状態について説明する。
図1及び
図4は、切替構造15によりコンデンサレンズ13が光路上へ挿入されたミクロ照明状態を示している。観察装置10は、コンデンサレンズ13を光路へ挿入して照野を狭めたミクロ照明状態で、クリティカル照明法を用いて試料面SPを照明する。
【0022】
具体的には、コレクタレンズ12は、光源11から出射した照明光を無限遠光束に変換し、コンデンサレンズ13は、コレクタレンズ12からの無限遠光束を試料面SP上に集光する。その結果、試料面SPに光源像が形成される。この際、コンデンサレンズ13は、光源11の発光面上の各点を試料面SPの狭い範囲内に投影する。これにより、
図4及び
図5の比較により示されるように、ミクロ照明状態では、マクロ照明状態と比較して試料面SPに狭い照野が形成される。
【0023】
また、クリティカル照明法では、試料面SPの輝度分布は、光源11の発光領域の輝度分布に相当する。このため、ランプ光源を光源11に用いると試料面SPに輝度ムラが生じやすい。そこで、観察装置10では、光源11に発光面内の輝度分布が高い均一性を有するLED光源を採用する。これにより、観察装置10は、クリティカル照明法であっても輝度ムラを抑えて試料面SPを均一に照明することができる。
【0024】
従って、観察装置10では、コレクタレンズ12とコンデンサレンズ13からなるシンプルな照明光学系14を用いて、ミクロ照明状態において、高い照明性能を実現することができる。
【0025】
次に、マクロ照明状態について説明する。
図2及び
図5は、切替構造15によりコンデンサレンズ13が光路外へ取り除かれたマクロ照明状態を示している。照明光学系14は、コンデンサレンズ13を照明光学系14の光路から取り除いて照野を広げたマクロ照明状態で、光源11の像を対物レンズ16の瞳位置に形成するように、構成されている。
【0026】
具体的には、コレクタレンズ12は、光源11から出射した照明光を無限遠光束に変換する。この点は、ミクロ照明状態と同様であるが、マクロ照明状態では、コレクタレンズ12からの無限遠光束がそのまま試料面SPへ照射される。これにより、
図4及び
図5の比較により示されるように、マクロ照明状態では、ミクロ照明状態と比較して試料面SPに広い照野が形成される。
【0027】
また、試料面SPを透過した光は、無限遠光束のまま対物レンズ16に入射し、対物レンズ16の瞳位置PPに集光する。これにより、瞳位置PPに光源像が形成される。この点は、クリティカル照明法よりも照明の均一性に優れるケーラー照明法と同様であり、マクロ照明状態における照明は、ケーラー照明法と類似の特性を有している。
【0028】
従って、観察装置10では、コンデンサレンズ13を光路から取り除くだけでマクロ照明状態へ切り替え可能であり、マクロ照明状態においても試料面SPを均一に照明することができる。
【0029】
図6は、第1の実施形態に係る観察装置10が満たすことが望ましい条件を説明するための図である。観察装置10は、以下の条件式を満たすことで、マクロ照明状態において、さらに望ましい照明性能を実現することができる。
K/(f・tanθ)≦2 ・・・(1)
1≦2f
2・tanθ/(D・Φ)+f/D ・・・(2)
【0030】
fは、コレクタレンズ12の焦点距離である。Kは、観察光学系18の最大観察範囲の対角長である。θは、コレクタレンズ12の有効半径に対応する光源11の出射角である。Dは、コレクタレンズ12から試料面SPまでの距離である。Φは、光源11の発光面の直径である。対角長Kは、撮像素子19の有効範囲の対角長を観察光学系18の倍率で割ることで算出される。なお、撮像素子19の前にカメラアダプタが設けられている場合には、対角長Kは、撮像素子19の有効範囲の対角長をカメラアダプタと観察光学系18の総合倍率で割って算出すればよい。
【0031】
条件式(1)は、主に試料面SPにおける照明ムラを抑えるための条件式である。条件式(1)は、コレクタレンズ12によって変換された無限遠光束の光束径(=2f・tanθ)が最大観察範囲(つまり、マクロ観察時に視野に相当)の幅(=K)以上であることを意味している。条件式(1)を満たすことで、無限遠光束で視野と同じまたはそれ以上の範囲が照明されるため、観察装置10は、マクロ照明状態において、高い照明の均一性を実現することができる。
【0032】
条件式(2)は、主に試料面SPを明るく照明するための条件式である。条件式(2)は、光源11の発光面から出射した照明光が試料面SPの有効な範囲内に照射されることを意味している。詳細には、発光面の端部から出射した照明光のうち少なくとも光軸と平行な方向(配光角0度)へ出射する照明光が、試料面SPにおいて、無限遠光束の光束径に対応する領域(=2f・tanθ)内に入射することを意味している。この点についてさらに詳細に説明する。
【0033】
試料面SPから光源11に向かって光線を追跡すると、試料面SPにおける無限遠光束の光束径に対応する領域(=2f・tanθ)はコレクタレンズ12上にf/(D-f)倍で投影され、コレクタレンズ12上では、2f2・tanθ/(D-f)の大きさの領域に変換される。このため、光源11の発光面の直径(=Φ)が2f2・tanθ/(D-f)以下であれば、発光面の端部から配光角0度で出射した照明光は、コレクタレンズ12上で2f2・tanθ/(D-f)の大きさの領域内に入射し、試料面SPにおいて無限遠光束の光束径に対応する領域(=2f・tanθ)内に照射される。
【0034】
条件式(2)を満たすことで、発光面の端部から出射した照明光が、試料面SPにおいて、無限遠光束が照射される範囲内に照射され、観察時に有効に活用される。従って、観察装置10は、マクロ照明状態において、試料面SPを明るく照明することができる。
【0035】
以上の様に、観察装置10では、切替構造15がコレクタレンズ12よりも試料面SP側に配置されたレンズ群をまとめて挿脱する単純な構成を有している。このため、切替構造15が装置の大型化の要因とはならず、観察装置10全体をコンパクトに構成することができる。従って、観察装置10によれば、照野を調整可能な、従来よりもコンパクトな装置を提供することができる。
【0036】
また、観察装置10では、光源11に面光源であるLED光源が採用された上で、照明光学系14がクリティカル照明法で試料面SPを照明するためのコレクタレンズ12とコンデンサレンズ13で構成される。このように、LED光源を採用することでクリティカル照明法において懸念される照明ムラを回避しながら照明光学系14をシンプルに構成することで、切替構造15が挿脱する要素をコンデンサレンズ13のみで済ませることができる。従って、LED光源とともにコレクタレンズ12とコンデンサレンズ13からなる照明光学系14を採用する構成は、観察装置10のコンパクト化と十分な照明性能に大きく貢献するものであり、ミクロ照明状態とマクロ照明状態を切り替えて実現する観察装置に特に好適である。
【0037】
<第2の実施形態>
図7は、ミクロ照明状態における第2の実施形態に係る観察装置の構成を照明光学系に注目して例示した図である。
図8は、マクロ照明状態における第2の実施形態に係る観察装置の構成を照明光学系に注目して例示した図である。以下、
図7及び
図8を参照しながら、観察装置20について説明する。
【0038】
観察装置20は、
図7に示すように、照明光学系14の代わりに照明光学系24を、切替構造15の代わりに切替構造25を備える点が、観察装置10とは異なっている。また、観察装置20は、ミクロ照明状態で、ケーラー照明法を用いて試料面SPを照明する点も、10とは異なっている。その他の点は、観察装置10と同様である。
【0039】
照明光学系24は、コレクタレンズ12と、窓レンズ23aと、コンデンサレンズ23bからなる。窓レンズ23aは、コレクタレンズ12とコンデンサレンズ23bの間に光源11の像を形成する。窓レンズ23aとコンデンサレンズ23bは、コレクタレンズ12と試料面SPの間に配置されたレンズ群の一例であり、切替構造25は、コレクタレンズ12と試料面SPの間にあるレンズ群23をまとめて照明光学系24の光路に対して挿脱するものである。
【0040】
切替構造25がレンズ群23を挿脱することで、照野が狭いミクロ照明状態と照野が広いマクロ照明状態が切り替わる。観察装置20は、切替構造25がレンズ群(レンズ群23)を光路に挿入することでミクロ照明状態に切り替わり、切替構造25がレンズ群(レンズ群23)を光路から取り除くことでマクロ照明状態に切り替わる点は、観察装置10と同様である。ただし、ミクロ照明状態では、ケーラー照明法で試料面が照明される点が、観察装置10とは異なっている。
【0041】
具体的には、コレクタレンズ12により無限遠光束に変換された照明光を用いて、窓レンズ23aが光源11の中間像を形成し、中間像からの光をコンデンサレンズ23bが試料面SPに照射する。窓レンズ23aが図示しない開口絞りが設けられたコンデンサレンズ23bの前側焦点位置に中間像を形成することで、試料面SPが光源11の発光面の輝度分布によらず均一に照明される。
【0042】
観察装置20でも、観察装置10と同様に、切替構造25がコレクタレンズ12よりも試料面SP側に配置されたレンズ群をまとめて挿脱する単純な構成を有している。従って、観察装置20によっても、観察装置10と同様に、照野を調整可能な、従来よりもコンパクトな装置を提供することができる。
【0043】
また、観察装置20では、照明光学系24がミクロ照明状態においてケーラー照明法で試料面SPを照明する。このため、光源11の輝度分布の不均一さが試料面SPの輝度分布の均一性に悪影響を及ぼすことを回避することができる。従って、光源11にランプ光源を用いても高い照明性能を維持することができる。
【0044】
<第3の実施形態>
図9は、第3の実施形態に係る観察装置が備える光源を移動させる移動構造を説明するための図である。
図10は、第3の実施形態に係る観察装置が備える光源の発光面における輝度分布を例示した図である。以下、
図9及び
図10を参照しながら、第3の実施形態に係る観察装置について説明する。
【0045】
第3の実施形態に係る観察装置は、
図9に示すように、光源11を照明光学系14の光軸に対して移動させる移動構造31を備える点が、観察装置10とは異なっている。そして、移動構造31を用いることで、第3の実施形態に係る観察装置は、マクロ照明状態では、照明光学系14の光軸から偏心した位置に移動した光源11からの照明光で試料面SPを照明する。その他の点は、観察装置10と同様である。なお、
図9には、光軸方向(z方向)と直交するx方向に光源11が移動する例を示している。
【0046】
移動構造31は、切替構造15による照明状態の切替に連動して光源11の位置を変更してもよい。具体的には、移動構造31は、例えば、照明状態がミクロ照明状態に切り替わるのに合わせて、光源11を照明光学系14の光軸上に移動させ、照明状態がマクロ照明状態に切り替わるのに合わせて、光源11を照明光学系14の光軸から偏心した位置へ移動させてもよい。即ち、第3の実施形態に係る観察装置は、ミクロ照明状態では、照明光学系14の光軸上の位置に移動した光源11からの照明光で試料面SPを照明し、マクロ照明状態では、照明光学系14の光軸から偏心した位置に移動した光源11からの照明光で試料面SPを照明する。
【0047】
なお、移動構造31は、モータなどの動力源からの動力により位置を変更してもよく、人間により手動で動かされてもよい。移動構造31は、特に限定しないが、例えば、光源11を固定した電動ステージであってもよい。
【0048】
光源11の像が観察光学系18の瞳位置に投影されるマクロ照明状態では、光源11が移動することで、観察光学系18の瞳位置における輝度分布が変化する。一般に、光源11は、
図10に示すように、中心から周辺に向かって輝度値が低下する輝度分布を有している。これは、比較的均一な輝度分布を有するLED光源でも同様である。このため、光源11が光軸から偏心することで、光源11が有する対称な輝度分布のうち、領域R1のように領域の中心に対して対称な輝度分布ではなく、領域R2のように領域の中心に対して非対称な輝度分布、より詳細には、偏心方向に沿って単調増加する輝度分布、が瞳位置に投影されることになる。
【0049】
瞳位置における輝度分布の偏りは偏射照明と同様の作用を生じさせる。このため、本実施形態に係る観察装置では、光源11を光軸に対して偏心させることで、マクロ照明状態において、偏射照明と同様に、位相物体などの明視野観察で観察しにくい試料をコントラスト良く観察することができる。
【0050】
位相物体を特に高いコントラストで観察するためには、瞳位置における輝度分布のラインプロファイルは単調増加であり、且つ、最小値と最大値が2倍以上異なることが望ましい。従って、移動構造31は、マクロ照明状態で、照明光学系14の瞳位置における輝度分布が偏心方向に沿って単調増加し、且つ、輝度分布の最小輝度が最大輝度の50%以下となる位置まで光源11を移動することが望ましい。これにより、観察装置10を用いて十分なコントラストで試料を観察することができる。
【0051】
なお、第3の実施形態に係る観察装置でも、照野を調整可能な、従来よりもコンパクトな装置を提供することができる点については、観察装置10と同様である。
【0052】
<第4の実施形態>
図11は、ミクロ照明状態における第4の実施形態に係る観察装置の構成を照明光学系に注目して例示した図である。
図12は、第4の実施形態に係る観察装置が備える瞳変調素子を例示した図である。
図13は、
図12に示す瞳変調素子の変形例を示した図である。以下、
図11から
図13を参照しながら、第4の実施形態に係る観察装置について説明する。
【0053】
第4の実施形態に係る観察装置40は、
図11に示すように、ミクロ照明状態で照明光学系14の瞳位置に配置される瞳変調素子43を備える点と、切替構造15の代わりに切替構造45を備える点が、観察装置10とは異なっている。その他の点は、観察装置10と同様である。
【0054】
切替構造45は、コンデンサレンズ13とともに瞳変調素子43を光路に対して挿脱する点が切替構造15とは異なる。即ち、瞳変調素子43は、コンデンサレンズ13とともに照明光学系の光路に対して挿脱され、マクロ照明状態では光路外に配置される。
【0055】
瞳変調素子43は、例えば、
図12に示すように、透過率の異なる領域43aと領域43bからなるフィルタである。領域43aは透過率が高い領域を、領域43bは透過率が低い領域を示している。観察装置40は、対物レンズ16の瞳位置PPと光学的に共役な照明光学系14の瞳位置に配置された瞳変調素子43が
図12に示す透過率特性を有することで、偏射照明を行うことができる。従って、観察装置40では、ミクロ照明状態において、位相物体などの明視野観察で観察しにくい試料をコントラスト良く観察することができる。
【0056】
なお、瞳変調素子43は、ミクロ照明状態において、照明光学系14の瞳位置における輝度分布が一定方向に沿って単調増加し、且つ、輝度分布の最小輝度が最大輝度の50%以下となるように変調するものであればよい。従って、
図11に示す瞳変調素子43の代わりに、
図12に示す瞳変調素子44が用いられてもよい。瞳変調素子44は、一定方向に連続的に透過率が変化するフィルタである。
【0057】
観察装置40でも、照野を調整可能な、従来よりもコンパクトな装置を提供することができる点については、観察装置10と同様である。さらに、観察装置40では、ミクロ照明状態で偏射照明を行うことができるため、位相物体などの明視野観察で観察しにくい試料をコントラスト良く観察することができる。
【0058】
上述した実施形態は、発明の理解を容易にするために具体例を示したものであり、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。上述の実施形態を変形した変形形態および上述した実施形態に代替する代替形態が包含され得る。つまり、実施形態は、その趣旨および範囲を逸脱しない範囲で構成要素を変形することが可能である。また、1つ以上の実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより、新たな実施形態を実施することができる。また、各実施形態に示される構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよく、または実施形態に示される構成要素にいくつかの構成要素を追加してもよい。即ち、本発明の観察装置及び後述する照明装置は、特許請求の範囲の記載を逸脱しない範囲において、さまざまな変形、変更が可能である。
【0059】
上述した第4の実施形態では、第1の実施形態に係る観察装置10に瞳変調素子43を追加した構成を例示したが、瞳変調素子43は、第3の実施形態に係る観察装置に追加されてもよい。即ち、マクロ照明状態では光源11を移動することで偏射照明を行い、ミクロ照明状態では瞳変調素子43を用いて偏射照明を行ってもよい。これにより、マクロ照明状態とミクロ照明状態の両方で位相物体をコントラスト良く観察することができる。
【0060】
上述した第3の実施形態では、第1の実施形態に係る観察装置に移動構造31を追加した構成を例示したが、移動構造31は、第2の実施形態に係る観察装置に追加されてもよい。第2の実施形態では、マクロ照明状態に加えてミクロ照明状態でも光源像が瞳位置に投影されるため、移動構造31によってマクロ照明状態とミクロ照明状態の両方で光源11を照明光学系の光軸から偏心した位置に移動させてもよい。これにより、マクロ照明状態とミクロ照明状態の両方で偏射照明が行われて位相物体をコントラスト良く観察することができる。
【0061】
また、第2の実施形態では、マクロ照明状態に加えてミクロ照明状態でも光源像が瞳位置に投影されるため、移動構造31を設ける代わりに、光源11を光軸から偏心した位置に配置してもよい。これにより、観察装置は、ミクロ照明状態とマクロ照明状態のどちらでも、照明光学系の光軸から偏心した位置の光源11からの照明光で試料面を照明してもよい。この場合も、マクロ照明状態とミクロ照明状態の両方で偏射照明が行われて位相物体をコントラスト良く観察することができる。特に高いコントラストを得るためには、光源11は、ミクロ照明状態とマクロ照明状態のどちらでも、対物レンズの瞳位置における輝度分布が偏心方向に沿って単調増加し、且つ、輝度分布の最小輝度が最大輝度の50%以下となる位置に配置されることが望ましい。
【0062】
上述した実施形態では、観察装置を例示したが、上述した装置は、照明機能のみを有し、観察機能を有しなくてもよい。即ち、照明装置として構成されてもよい。照明装置は、照明光を出射する光源と、試料面に照明光を照射する照明光学系であって光源を無限遠に投影するコレクタレンズとレンズ群からなる照明光学系と、レンズ群をまとめて照明光学系の光路に対して挿脱する切替構造と、を備えていればよい。照明装置の照明光学系は、第1の実施形態に示す照明光学系14であってもよく、第2の実施形態に示す照明光学系24であってもよい。
【符号の説明】
【0063】
10、20、40 :観察装置
11 :光源
12 :コレクタレンズ
13、23b :コンデンサレンズ
14、24 :照明光学系
15、25、45 :切替構造
16 :対物レンズ
17 :結像レンズ
18 :観察光学系
19 :撮像素子
23 :レンズ群
23a :窓レンズ
31 :移動構造
43、44 :瞳変調素子
43a、43b、R1、R2 :領域
K :対角長
PP :瞳位置
SP :試料面