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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054465
(43)【公開日】2024-04-17
(54)【発明の名称】酸素発生装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 21/02 20060101AFI20240410BHJP
   F02B 13/10 20060101ALI20240410BHJP
   F02B 23/08 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
F02D21/02
F02B13/10
F02B23/08 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160683
(22)【出願日】2022-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100100413
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 温
(72)【発明者】
【氏名】權田 歩
(72)【発明者】
【氏名】高橋 豊
(72)【発明者】
【氏名】塙 紳介
【テーマコード(参考)】
3G023
3G092
【Fターム(参考)】
3G023AA08
3G023AB01
3G023AC02
3G023AC07
3G092AA01
3G092AB02
3G092AB18
3G092FA31
3G092GA10
(57)【要約】
【課題】簡単な構成によりエンジン停止中に燃焼室内で酸素を発生可能な酸素発生装置を提供する。
【解決手段】酸素発生装置を、エンジン1の燃焼室30内に設けられた第1電極150及び第2電極160,170を有する点火栓と、第1電極と第2電極との間で水を保持する水保持部151,171と、水保持部に水を供給する水供給部200と、水保持部に保持された水に電圧を印加する電源部とを備える構成とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの燃焼室内に設けられた第1電極及び第2電極を有する点火栓と、
前記第1電極と前記第2電極との間で水を保持する水保持部と、
前記水保持部に水を供給する水供給部と、
前記水保持部に保持された水に電圧を印加する電源部と
を備えることを特徴とする酸素発生装置。
【請求項2】
前記水保持部に保持された水を加熱する加熱部を備えること
を特徴とする請求項1に記載の酸素発生装置。
【請求項3】
前記水保持部は、
前記第1電極と同電位となる第1部材と、
前記第2電極と同電位となりかつ前記第1部材と対向して配置された第2部材と、
前記第1部材の前記第2部材と対向する面部を凹ませた第1凹部と、
前記第2部材の前記第1部材と対向する面部を凹ませた第2凹部と
を有し、
前記第1凹部と前記第2凹部との間に表面張力によって水を保持すること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の酸素発生装置。
【請求項4】
前記水保持部は、水を電気分解して発生した酸素を貯留する酸素貯留部を有すること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の酸素発生装置。
【請求項5】
前記水供給部は、
前記燃焼室に燃焼用空気を導入する吸気ポートの内部に水を吐出する水吐出部と、
前記燃焼室の内面に設けられ前記吸気ポートから前記燃焼室へ流入する水を前記水保持部へ誘導する導水部とを有すること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の酸素発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、停止中のエンジンの燃焼室内で酸素を発生させる酸素発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの燃焼室内におけるO濃度の制御等に関する技術として、特許文献1には、加速運転時の判定タイミング直後の吸入行程で吸気弁が開いたときに、吹き返し残留ガスが燃焼室に吸入されることに対応し、二次O噴射弁からの噴射量を吹き返し残留ガス量に対し約1/5の濃度(割合)とし、O濃度を新気と同じとすることが記載されている。
また、排気から回収した水を電気分解することによって二次Oを生成して貯蔵し、このOを二次O噴射弁へ供給することが記載されている。
特許文献2には、エンジンの点火栓の放電電極部で火花放電を発生させる放電期間又はその直前の期間に、水噴射装置から放電電極部へスポット的に水を噴射させることが記載されている。これにより、電極間ギャップは水分リッチな状態となり、高電圧が印加された電極間ギャップに生じる水の電気分解によって水素、酸素が生成され、これらが電極間ギャップの放電性能を高めることが記載されている。
また、水素製造装置に関する技術として、例えば、特許文献3には、陽極側セル内に充填された電解液が、陽極電極の開口部、隔膜の孔、及び、陰極電極の開口部を介して、陰極電極と気相との界面付近までしみ出し、電解液の表面張力により、開口部の出口付近で停止し、陽極電極と陰極電極が、共に電解液に接触するよう構成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-232008号公報
【特許文献2】特許第6593425号公報
【特許文献3】特許第6802827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エンジンの停止時に、吸気バルブと排気バルブがともに開いた状態(オーバラップ状態)となる気筒においては、排気ポートやエキゾーストパイプ内に残った残留排気ガスが燃焼室内に逆流する場合がある。
排気ガスが燃焼室内に逆流すると、燃焼室内のO濃度が低下することによって、エンジンの始動性が悪化する問題が発生する。
これに対し、従来はエンジン始動時にクランキングによる掃気時間を増やし、さらに燃料噴射量を増量することが一般的であったが、この場合始動に要する時間が長期化するとともに、始動時の燃費が悪化する問題があった。
エンジン再始動時に燃焼室内に酸素を供給し、再始動時の燃焼室内O濃度を確保することができれば、このような問題を解決することができるが、燃焼室の外部に酸素を発生するデバイスを設けて燃焼室内に導入すると、装置構成が複雑化してしまう。
上述した問題に鑑み、本発明の課題は、簡単な構成によりエンジン停止中に燃焼室内で酸素を発生可能な酸素発生装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するため、本発明の一態様に係る酸素発生装置は、エンジンの燃焼室内に設けられた第1電極及び第2電極を有する点火栓と、前記第1電極と前記第2電極との間で水を保持する水保持部と、前記水保持部に水を供給する水供給部と、前記水保持部に保持された水に電圧を印加する電源部とを備えることを特徴とする。
これによれば、エンジンの停止中に水保持部に保持された水に電圧を印加し、水を電気分解して酸素を発生することができる。
これにより、エンジンの始動時における燃焼室内の酸素濃度を向上し、始動性を向上することができる。
また、点火栓の電極を用いて水を電気分解することにより、装置構成を簡素化し、エンジンへの実装を容易化することができる。
【0006】
本発明において、前記水保持部に保持された水を加熱する加熱部を備える構成とすることができる。
これによれば、エンジンの始動時に、水保持部に残留する過剰な水を加熱して蒸発させることができる。
【0007】
本発明において、前記水保持部は、前記第1電極と同電位となる第1部材と、前記第2電極と同電位となりかつ前記第1部材と対向して配置された第2部材と、前記第1部材の前記第2部材と対向する面部を凹ませた第1凹部と、前記第2部材の前記第1部材と対向する面部を凹ませた第2凹部とを有し、前記第1凹部と前記第2凹部との間に表面張力によって水を保持する構成とすることができる。
これによれば、簡単な構成により適切に点火栓の先端部で水を保持することができる。
【0008】
本発明において、前記水保持部は、水を電気分解して発生した酸素を貯留する酸素貯留部を有する構成とすることができる。
これによれば、エンジンの始動前に発生した酸素が散逸することを防止し、エンジンの始動時に適切に燃焼室内に酸素を供給することができる。
【0009】
本発明において、前記水供給部は、前記燃焼室に燃焼用空気を導入する吸気ポートの内部に水を吐出する水吐出部と、前記燃焼室の内面に設けられ前記吸気ポートから前記燃焼室へ流入する水を前記水保持部へ誘導する導水部とを有する構成とすることができる。
これによれば、簡単な構成により効果的に水保持部に水を供給することができる。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明によれば、簡単な構成によりエンジン停止中に燃焼室内で酸素を発生可能な酸素発生装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明を適用した酸素発生装置の第1実施形態を有するエンジンの燃焼室周辺の構成を示す模式図である。
図2】第1実施形態のエンジンの点火栓の構成を示す模式図である。
図3】第1実施形態のエンジンの点火栓の先端部の構成を示す模式図である。
図4】第1実施形態の酸素発生装置における水保持部をシリンダ軸心と直交する平面で切って見た模式的断面図である。
図5】第1実施形態のエンジンの燃焼室の内面をピストン側から見た状態を示す模式図である。
図6】第1実施形態の酸素発生装置における水保持部をシリンダ軸心と直交する平面で切って見た模式的断面図であって、酸素を発生中の状態を示す図である。
図7】本発明を適用した酸素発生装置の第2実施形態におけるエンジンの点火栓の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
以下、本発明を適用した酸素発生装置の第1実施形態について説明する。
第1実施形態の酸素発生装置は、例えば、乗用車等の車両に走行用動力源として搭載される火花点火式のレシプロ内燃エンジン(一例としてガソリンエンジン)に設けられる。
図1は、第1実施形態の酸素発生装置を有するエンジンの燃焼室周辺の構成を示す模式図である。
【0013】
エンジン1は、一例として、シリンダ筒軸が水平方向に沿って配置された水平対向エンジンである。
エンジン1は、シリンダ10、ピストン20、燃焼室30、吸気ポート40、排気ポート50、吸気バルブ60、排気バルブ70、点火栓100、水インジェクタ200等を備えている。
【0014】
シリンダ10は、ピストン20が挿入される部材である。
シリンダ10は、例えば、アルミニウム系合金の鋳造品であるシリンダブロックに、例えば鋳鉄製の筒状体であるシリンダライナを挿入して構成されている。
【0015】
ピストン20は、シリンダ10の内径側に挿入された円柱状の部材である。
ピストン20は、シリンダ10に対してその筒軸方向に沿って往復する。
ピストン20は、図示しないコネクティングロッドを介して、エンジン1の出力軸である図示しないクランクシャフトに連結されている。
【0016】
燃焼室30は、シリンダ10におけるピストン20の冠面側(クランクシャフト側とは反対側)の端部に設けられている。
燃焼室30は、シリンダ10の筒内側から見たときに、例えばペントルーフ型等に凹んだ凹部を有する。
【0017】
吸気ポート40は、燃焼室30に燃焼用空気(新気)を導入する流路である。
燃焼用空気には、燃焼室30又は吸気ポート40に設けられた図示しない燃料インジェクタから燃料が噴射され、混合気が形成される。
吸気ポート40は、燃焼室30のボア中心に対して上方側に、例えば2本が並列に設けられる。
排気ポート50は、燃焼室30から排気ガス(既燃ガス)を排出する流路である。
排気ポート50は、燃焼室30のボア中心に対して下方側に、例えば2本が並列に設けられる。
【0018】
吸気バルブ60は、吸気ポート40の燃焼室30側の端部を、所定のバルブタイミングで開閉するポケットバルブである。
排気バルブ70は、排気ポート50の燃焼室30側の端部を、所定のバルブタイミングで開閉するポペットバルブである。
吸気バルブ60、排気バルブ70は、クランクシャフトの1/2の回転速度で回転する図示しないカムシャフトによって、所定の開弁時期にわたって開弁(リフト)される。
吸気バルブ60、排気バルブ70は、非リフト時には図示しないバルブスプリングによって閉弁される。
【0019】
点火栓100は、燃焼室30のボア中心部から筒内へ突出した電極を有し、混合気への点火を行うものである。
また、点火栓100は、後述するように、水を電気分解して酸素を発生する機能を有する。
図2は、第1実施形態のエンジンの点火栓の構成を示す模式図である。
図3は、第1実施形態のエンジンの点火栓の先端部の構成を示す模式図(図1のIII部拡大図)である。
点火栓100は、主体金具110、リーチ部120、ターミナル130、絶縁体140、中心電極150、外側電極160、保水電極170、ヒータ180等を有して構成されている。
【0020】
主体金具110は、点火栓100を燃焼室30等が設けられるシリンダヘッドHに取り付ける基部となる円筒状の部材である。
リーチ部120は、主体金具110から燃焼室30側へ突き出した円筒状の部分である。
リーチ部120の外周面には、点火栓100をシリンダヘッドHに締結するネジ部が形成されている。
【0021】
ターミナル130は、火花発生用及び水の電気分解用の電圧を供給する図示しない電源装置(本発明の電源部)がハイテンションコードを介して接続される端子である。
ターミナル130は、点火栓100の燃焼室30側とは反対側の端部に設けられている。
絶縁体140は、主体金具110からターミナル130側へ突き出して設けられ、例えばセラミクス等の絶縁性を有する材料によって形成されている。
絶縁体140は、ターミナル130と主体金具110等との絶縁を確保するために設けられる。
【0022】
中心電極150は、リーチ部120の先端部の中央部から燃焼室30側へ突出している電極(本発明の第1電極)である。
中心電極150は、主体金具110、リーチ部120の本体部とは、図示しない絶縁体によって絶縁されるとともに、ターミナル130と導通している。
【0023】
外側電極160は、リーチ部120の先端部の外径側の部分から燃焼室30側へ突出した突出部161と、突出部161の先端部から点火栓100の軸心側(内径側)へ突出した放電部162とを有する電極(本発明の第2電極)である。
外側電極160は、リーチ部120を介してシリンダヘッドHと導通し、シリンダヘッドHを介して車体に接地(アース)されている。
中心電極150の突端部と、外側電極の放電部162とは、点火時において絶縁破壊が生じ火花が発生するよう、隣接して配置されている。
【0024】
第1実施形態の点火栓100は、中心電極150と、以下説明する保水電極170との間で、後述する水インジェクタ200から供給される水を、表面張力によって保持可能となっている。
図4は、第1実施形態の酸素発生装置における水保持部をシリンダ軸心と直交する平面で切って見た模式的断面図(図3のIV-IV部矢視断面図)である。
【0025】
中心電極150において、外側電極160の突出部161と対向する面部には、凹部151が形成されている。
中心電極150は、本発明の第1部材として機能し、凹部151は、本発明の第1凹部として機能する。
突出部161における中心電極150と対向する面部には、この面部から中心電極150側へ張り出した保水電極170が設けられている。
保水電極170が中心電極150の凹部151と対向する面部には、凹部171が形成されている。
保水電極170は、本発明の第2部材として機能し、凹部171は、本発明の第2凹部として機能する。
【0026】
凹部151,171は、これらの間で表面張力によって水Wを保持することが可能である程度の間隔を隔てて対向して配置されている。
凹部151,171は、本発明の水保持部として機能する。
ここで、図3に示すように、中心電極150と保水電極170の間のギャップG1は、エンジン1の通常運転時に絶縁破壊(火花の発生)が生じないよう、中心電極150の突端部と放電部162との間のギャップG2に対して大きく設定されている。
【0027】
第1実施形態のエンジン1においては、凹部151は、凹部171に対して上方に配置されている。
凹部151の内面部における一部には、凹部151からさらに凹ませたポケット部152が設けられている。
ポケット部152は、凹部151,171の間で水Wを電気分解して発生した酸素を一時的に貯留する酸素貯留部である。
【0028】
ヒータ180は、点火栓100の内部に設けられ、電気抵抗加熱等によって中心電極150と保水電極170との間に保持された水Wを加熱する加熱部である。
ヒータ180として、例えば、外側電極160等の内部に埋設されたニクロム線ヒータ等を用いることができる。
ヒータ180は、エンジン1の始動開始時に、図示しない電源装置から電力を供給され発熱する。
【0029】
水インジェクタ200は、吸気ポート40の内部に水を吐出する水吐出部である。
水インジェクタ200は、例えば、気筒あたり2本の吸気ポート40のうち一方に設けられる構成とすることができる。
図1に示すように、水インジェクタ200から吐出された水Wは、吸気ポート40の壁面に沿って流下し、燃焼室30の内部に流入する。
【0030】
図5は、第1実施形態のエンジンの燃焼室の内面をピストン側から見た状態を示す模式図である。
燃焼室30は、給水溝31,排水溝32を有する。
給水溝31は、水インジェクタ200が設けられた側の吸気ポート40の出口近傍から、点火栓100の先端部(水保持部)へ水を誘導する溝である。
排水溝32は、点火栓100の先端部近傍から、余剰な水を排気ポート50の入り口近傍へ誘導する導水部である。
排気ポート50の入り口近傍へ誘導された水は、排気ポート50からエンジン1の外部へ排出される。
給水溝31は、水インジェクタ200と協働して本発明の水供給部を構成する。
【0031】
第1実施形態の酸素発生装置においては、エンジンの停止中から始動時にかけて、ターミナル130に電圧を印加する図示しない電源装置、ヒータ180へ電力を供給する図示しない電源装置、及び、水インジェクタ200は、図示しないエンジン制御ユニット(ECU)によって制御される。
エンジンの停止時に、エンジン制御ユニットは、例えばクランク角センサの出力に基づいて、吸気バルブ60、排気バルブ70がともに開弁した状態(オーバラップ状態)となっている気筒を検出する。
オーバラップ状態となっている気筒においては、以下説明する酸素発生制御が行われる。
【0032】
エンジン制御ユニットは、酸素発生制御が行われる気筒においては、水インジェクタ200から水を供給し、点火栓100の水保持部に水を保持させる。
その後、ターミナル130に、水を電気分解するための電圧を印加させ、水を電気分解する。
電気分解により発生した酸素は、ポケット部152に貯留される。
図6は、第1実施形態の酸素発生装置における水保持部をシリンダ軸心と直交する平面で切って見た模式的断面図であって、酸素を発生中の状態を示す図である。
水を電気分解することによって、凹部151,171に保持された水の量は減少するが、ポケット部152は水の表面張力によって密閉された状態に保たれ、酸素Oが散逸することはない。
【0033】
その後、エンジン始動時(例えばユーザによるイグニッションオン操作があった場合)には、エンジン制御ユニットはヒータ180の通電を開始し、凹部151,171に保持された水を加熱し、蒸発させる。
これにより、ポケット部152に貯留されていた酸素が燃焼室30内に供給され、燃焼室30内のO濃度が向上し、エンジン1の始動性が向上する。
【0034】
以上説明した第1実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)エンジン1の停止中に、凹部151と凹部171との間に保持された水Wに電圧を印加し、水を電気分解して酸素を発生することができる。
これにより、エンジン1の始動時における燃焼室30内の酸素濃度を向上し、始動性を向上することができる。
また、点火栓100の中心電極150、保水電極170を用いて水を電気分解することにより、装置構成を簡素化し、エンジン1への実装を容易化することができる。
(2)凹部151と凹部171との間に保持された水Wを加熱するヒータ180を備えることにより、エンジン1の始動時に、凹部151と凹部171との間に残留する過剰な水Wを加熱して蒸発させることができる。
(3)中心電極150に形成した凹部151と、外側電極160に付随して設けられた保水電極170に形成した凹部171との間で表面張力により水Wを保持することにより、簡単な構成により適切に点火栓100の先端部で水Wを保持することができる。
(4)凹部151の内面に酸素を貯留するポケット部152を設けたことにより、エンジン1の始動前に発生した酸素が散逸することを防止し、エンジン1の始動時に適切に燃焼室30内に酸素を供給することができる。
(5)吸気ポート40の内部に水を供給する水インジェクタ200と、燃焼室30の内面に設けられ吸気ポート40から燃焼室30に流入する水を点火栓100の先端部へ誘導する供給溝31とを有することにより、簡単な構成により効果的に凹部151と凹部171との間に水を供給することができる。
【0035】
<第2実施形態>
次に、本発明を適用した酸素発生装置の第2実施形態について説明する。
第2実施形態において、上述した第1実施形態と同様の箇所には同じ符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
図7は、第2実施形態における点火栓の構成を示す模式図である。
第2実施形態においては、ヒータ180を、点火栓100の内部ではなく、シリンダヘッドHの内部における点火栓100のリーチ部120に隣接する領域に設けている。
以上説明した第2実施形態においても、上述した第1実施形態の効果と同様の効果を得ることができる。
【0036】
(変形例)
本発明は、以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
(1)酸素発生装置、点火栓、エンジンの構成は、上述した各実施形態に限定されず、適宜変更することができる。
例えば、これらを構成する各部材の形状、構造、材質、製法、配置、数量などは、実施形態の構成に限らず、適宜変更することができる。
(2)各実施形態では、吸気ポートを介して燃焼室内に水を供給しているが、水を供給する装置を、点火栓や燃焼室に設けて、吸気ポートを経由せず直接燃焼室内に導入してもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 エンジン 10 シリンダ
20 ピストン 30 燃焼室
31 給水溝 32 排水溝
40 吸気ポート 50 排気ポート
60 吸気バルブ 70 排気バルブ
100 点火栓 110 主体金具
120 リーチ部 130 ターミナル
140 絶縁体 150 中心電極
151 凹部 152 ポケット部
160 外側電極 161 突出部
162 放電部 170 保水電極
171 凹部 200 水インジェクタ
H シリンダヘッド O 水素
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7