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特開2024-54466アルミノシリケート系セメントの施工方法及び施工装置、並びに原子力発電所の燃料デブリの取出し孔の閉塞方法
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  • 特開-アルミノシリケート系セメントの施工方法及び施工装置、並びに原子力発電所の燃料デブリの取出し孔の閉塞方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054466
(43)【公開日】2024-04-17
(54)【発明の名称】アルミノシリケート系セメントの施工方法及び施工装置、並びに原子力発電所の燃料デブリの取出し孔の閉塞方法
(51)【国際特許分類】
   B28B 13/02 20060101AFI20240410BHJP
   C04B 28/26 20060101ALI20240410BHJP
   C04B 22/08 20060101ALI20240410BHJP
   C04B 18/08 20060101ALI20240410BHJP
   C04B 18/14 20060101ALI20240410BHJP
   B28C 7/00 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
B28B13/02
C04B28/26
C04B22/08 A
C04B18/08 Z
C04B18/14 A
B28C7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160685
(22)【出願日】2022-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】龍原 潔
(72)【発明者】
【氏名】小出 康生
(72)【発明者】
【氏名】小浦方 優美
(72)【発明者】
【氏名】今坂 功二
(72)【発明者】
【氏名】浅井 由季
(72)【発明者】
【氏名】三井 宏暉
【テーマコード(参考)】
4G055
4G056
4G112
【Fターム(参考)】
4G055AA01
4G055CA22
4G056AA06
4G056CA02
4G056CB23
4G056CB31
4G056CE04
4G112MB02
4G112MB33
4G112PA03
4G112PA27
4G112PA29
(57)【要約】
【課題】アルミノシリケート系セメントの可使時間にかかわらず、アルミノシリケート系セメントを良好に施工できる施工方法を提供する。
【解決手段】アルミノシリケートを含むフィラーと、アルカリ活性剤と、水とを含むアルミノシリケート系セメントの施工方法であって、アルミノシリケート系セメントの施工場所とは異なる場所で、アルミノシリケート系セメントの原料のうち、フィラーと、水の一部とを含む第1の原料を混合してスラリー状の第1剤を調製し、施工場所とは異なる場所で、アルミノシリケート系セメントの原料のうち、アルカリ活性剤と、水の残部とを含む第2の原料を混合して液状の第2剤を調製し、第1剤及び第2剤をそれぞれ、施工場所に搬送し、施工場所にて、第1剤及び前記第2剤を混合し、得られた前記アルミノシリケート系セメントを打設する、施工方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミノシリケートを含むフィラーと、アルカリ活性剤と、水とを含むアルミノシリケート系セメントの施工方法であって、
前記アルミノシリケート系セメントの施工場所とは異なる場所で、前記アルミノシリケート系セメントの原料のうち、前記フィラーと、前記水の一部とを含む第1の原料を混合してスラリー状の第1剤を調製し、
前記施工場所とは異なる場所で、前記アルミノシリケート系セメントの原料のうち、前記アルカリ活性剤と、前記水の残部とを含む第2の原料を混合して液状の第2剤を調製し、
調製した前記第1剤及び前記第2剤をそれぞれ、前記施工場所に搬送し、
前記施工場所にて、前記第1剤及び前記第2剤を混合し、得られた前記アルミノシリケート系セメントを打設する、施工方法。
【請求項2】
前記第1剤の固体体積分率が10~55体積%である、請求項1に記載の施工方法。
【請求項3】
前記施工場所において、前記アルミノシリケート系セメントを打設する前に、前記アルミノシリケート系セメントの打設部を囲む仕切り部を設ける、請求項1又は2に記載の施工方法。
【請求項4】
調製した前記第1剤及び前記第2剤をそれぞれ、配管を通じて前記施工場所に搬送する、請求項1又は2に記載の施工方法。
【請求項5】
アルミノシリケートを含むフィラーと、アルカリ活性剤と、水とを含むアルミノシリケート系セメントの施工装置であって、
前記アルミノシリケート系セメントの施工場所とは異なる場所に位置し、前記アルミノシリケート系セメントの原料のうち、前記フィラーと、前記水の一部とを含む第1の原料を混合してスラリー状の第1剤を調製する第1混合部と、
前記施工場所とは異なる場所に位置し、前記アルミノシリケート系セメントの原料のうち、前記アルカリ活性剤と、前記水の残部とを含む第2の原料を混合して液状の第2剤を調製する第2混合部と、
前記施工場所に位置し、前記第1剤と前前記第2剤とを混合して前記アルミノシリケート系セメントを調製する第3混合部と、
前記第1剤を前記第1混合部から前記第3混合部に搬送する手段と、
前記第2剤を前記第2混合部から前記第3混合部に搬送する手段と、
前記第3混合部で調製された前記アルミノシリケート系セメントを前記施工場所に打設する手段と、を備える施工装置。
【請求項6】
前記第1剤の固体体積分率が10~55体積%である、請求項5に記載の施工装置。
【請求項7】
前記第1剤を搬送する手段が、前記第1混合部と前記第3混合部とを接続する配管を備え、前記第2剤を搬送する手段が、前記第2混合部と前記第3混合部とを接続する配管を備える、請求項5又は6に記載の施工装置。
【請求項8】
原子力発電所の燃料デブリの取出し孔の閉塞方法であって、
請求項1又は2に記載の施工方法により前記アルミノシリケート系セメントを前記取出し孔に打設する、閉塞方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミノシリケート系セメントの施工方法及び施工装置、並びに原子力発電所の燃料デブリの取出し孔の閉塞方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートやモルタルの多くには、ポルトランドセメントが用いられている。しかし、ポルトランドセメントは、製造過程におけるCO排出量が多い。
アルミノシリケートを含むフィラー(アルミノシリケート源)をアルカリ活性剤で活性化し、無機重合反応により硬化させるアルミノシリケート系セメントは、ジオポリマーとも呼ばれる。アルミノシリケート系セメントは、製造過程におけるCO排出量が少ないことなどから、ポルトランドセメントの代替物として着目されている。
【0003】
アルミノシリケート系セメントの施工に際しては、通常、アルミノシリケート系セメントの打設部の近傍で、粉末状のフィラーと、アルカリ活性剤の水溶液とを混合し、得られたアルミノシリケート系セメントをタンクなどの容器に入れ、該容器を打設部に搬送し、アルミノシリケート系セメントを打設する。
【0004】
しかし、アルカリ活性剤がケイ酸ナトリウム等のナトリウム化合物を含む場合、フィラーとアルカリ活性剤の水溶液との混合後に急速に硬化が進行するため、可使時間が短く、工業的利用が困難であった。アルカリ活性剤としてカリウム化合物を使用すると、硬化が遅れるが、コスト高になる。
このような問題に対し、特許文献1には、ケイ酸ナトリウムを含むアルカリ活性剤を、フィラーと混合する前に予め、35℃以上に加温し、かつ当該加温状態を60分以上保持する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6018682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
原子力発電所の燃料デブリの取出し孔など、施工場所によっては、アルミノシリケート系セメントを入れた容器の搬送、原料の混合及び攪拌などが困難で、従来の方法ではアルミノシリケート系セメントを施工できないことがある。
このような場合、施工場所から離れた場所でアルミノシリケート系セメントを調製し、ポンプなどで施工場所に搬送し、打設することが考えられる。しかし、フィラーとアルカリ活性剤水溶液とを混合すると急速に硬化が進行するので、ポンプなどでの搬送が困難である。また、乾燥状態のフィラーとアルカリ活性剤水溶液とを均一に混合するには手間がかかる。
特許文献1の方法により硬化を遅らせることは可能であるが、アルカリ活性剤を加熱するための工程、装置が増える。また、特許文献1の方法は、硬化を遅らせるだけで、反応の開始時間を自由に制御できるわけではないため、任意のタイミングで硬化を開始することはできない。搬送に要する時間によっては、搬送途中でアルミノシリケート系セメントが硬化するおそれがある。
【0007】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、アルミノシリケート系セメントの可使時間にかかわらず、アルミノシリケート系セメントを良好に施工できる施工方法及び施工装置、並びに前記施工方法を用いた原子力発電所の燃料デブリの取出し孔の閉塞方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示に係る施工方法は、アルミノシリケートを含むフィラーと、アルカリ活性剤と、水とを含むアルミノシリケート系セメントの施工方法であって、
前記アルミノシリケート系セメントの施工場所とは異なる場所で、前記アルミノシリケート系セメントの原料のうち、前記フィラーと、前記水の一部とを含む第1の原料を混合してスラリー状の第1剤を調製し、
前記施工場所とは異なる場所で、前記アルミノシリケート系セメントの原料のうち、前記アルカリ活性剤と、前記水の残部とを含む第2の原料を混合して液状の第2剤を調製し、
調製した前記第1剤及び前記第2剤をそれぞれ、前記施工場所に搬送し、
前記施工場所にて、前記第1剤及び前記第2剤を混合し、得られた前記アルミノシリケート系セメントを打設する。
【0009】
本開示に係る施工装置は、アルミノシリケートを含むフィラーと、アルカリ活性剤と、水とを含むアルミノシリケート系セメントの施工装置であって、
前記アルミノシリケート系セメントの施工場所とは異なる場所に位置し、前記アルミノシリケート系セメントの原料のうち、前記フィラーと、前記水の一部とを含む第1の原料を混合してスラリー状の第1剤を調製する第1混合部と、
前記施工場所とは異なる場所に位置し、前記アルミノシリケート系セメントの原料のうち、前記アルカリ活性剤と、前記水の残部とを含む第2の原料を混合して液状の第2剤を調製する第2混合部と、
前記施工場所に位置し、前記第1剤と前前記第2剤とを混合して前記アルミノシリケート系セメントを調製する第3混合部と、
前記第1剤を前記第1混合部から前記第3混合部に搬送する手段と、
前記第2剤を前記第2混合部から前記第3混合部に搬送する手段と、
前記第3混合部で調製された前記アルミノシリケート系セメントを前記施工場所に打設する手段と、を備える。
【0010】
本開示に係る閉塞方法は、原子力発電所の燃料デブリの取出し孔の閉塞方法であって、
本開示に係る施工方法により前記アルミノシリケート系セメントを前記取出し孔に打設する。
【発明の効果】
【0011】
本開示の施工方法及び施工装置は、アルミノシリケート系セメントの可使時間にかかわらず、アルミノシリケート系セメントを良好に施工できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の第一実施形態に係る施工方法及び施工方法を説明する図である。
図2】本開示の第二実施形態に係る施工方法及び施工方法を説明する図である。
図3】本開示の第三実施形態に係る施工方法及び施工方法を説明する図である。
図4】本開示の第四実施形態に係る施工方法及び施工方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<アルミノシリケート系セメント>
本開示において、アルミノシリケート系セメントは、アルミノシリケートを含むフィラー(以下、単に「フィラー」とも記す。)と、アルカリ活性剤と、水とを含む。
アルミノシリケート系セメントは、必要に応じて、フィラー、アルカリ活性剤及び水以外の他の原料をさらに含んでいてもよい。
【0014】
(フィラー)
フィラーは、アルミノシリケートを含む。アルミノシリケートは、xMO・yAl・zSiO・nHO(Mはアルカリ金属)で表される非晶質の化合物である。フィラーは、アルカリ活性剤との接触により、Alイオン及びSiイオン等の陽イオンを溶出する。
フィラーとしては、天然アルミノシリケート鉱物及びその仮焼物、フライアッシュ、パームアッシュ、高炉スラグ、赤泥、シリカフューム、下水汚泥焼却灰、火山灰などが挙げられる。天然アルミノシリケート鉱物としては、長石類、雲母類、沸石類、粘土鉱物、カオリンなどが挙げられる。天然アルミノシリケート鉱物の仮焼物としては、メタカオリンなどが挙げられる。これらのフィラーは1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
フィラーとしては、組成が安定して不純物が少なく、含水率が管理されているという点では、メタカオリンが好ましい。コストの点では、フライアッシュ、パームアッシュ、高炉スラグなどが好ましい。
【0015】
(アルカリ活性剤)
アルカリ活性剤は、その水溶液がフィラーと接触することにより、Alイオン、Siイオン等の陽イオンを溶出させる作用を有する。
アルカリ活性剤としては、各種の強アルカリを用いることができ、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウムなどのアルカリ金属炭酸塩;ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウムなどのアルカリ金属ケイ酸塩が挙げられる。これらのアルカリ活性剤は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0016】
アルカリ活性剤としては、安価である点では、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム等のナトリウム化合物が好ましく、ケイ酸モノマー(Si(OH))の供給源となる点では、アルカリ金属ケイ酸塩が好ましい。
したがって、アルカリ活性剤としては、ケイ酸ナトリウム、又はケイ酸ナトリウムと水酸化ナトリウムとの併用が好ましい。
アルカリ活性剤がケイ酸ナトリウムを含む場合、ケイ酸ナトリウムは水溶液、いわゆる水ガラスの形態のものが用いられてもよい。
【0017】
(他の原料)
他の原料としては、例えば骨材が挙げられる。アルミノシリケート系セメントが骨材を含むことで、強度が向上する。
骨材としては、コンクリートやモルタルに一般的に使用される骨材を用いることができる。骨材は、粒子の大きさによって細骨材又は粗骨材、成因によって天然骨材又は人工骨材、密度によって軽量骨材、普通骨材又は重量骨材に分類される。これらの骨材は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0018】
アルミノシリケート系セメントにおいて、水/アルカリ活性剤のモル比(以下、「W/A」とも記す。)は、10以上が好ましく、11以上がより好ましく、また、15以下が好ましく、13以下がより好ましい。W/Aが前記下限値以上であると、後述する第1剤、第2剤それぞれに充分な量の水を配合することができ、流動性が良好となり、搬送しやすくなる。また、アルミノシリケート系セメントの流動性も良好となり、打設しやすくなる。下限値未満では、反応場となる水分が不足して、硬化反応が進行しないと言われている。W/Aが前記上限値以下であると、硬化後のアルミノシリケート系セメントの強度がより優れる。上限値超では、アルカリ活性剤濃度が低下してpHが低下してAl、Siが十分溶出しないので、硬化反応が進行しないと言われている。
【0019】
アルミノシリケート系セメントにおいては、Si/Naのモル比が1~1.5、Si/Alのモル比が2.5~4であることが好ましい。Siに対してNaが不足すると反応が進行せず、多過ぎると、アモルファス相ではなくてゼオライトなどの結晶相が発生しやすい(ただし、強度などは反対に向上する場合あり)。Alに対してSiが多い方がアルミノシリケート相が安定するが、多過ぎると未反応物が増加する。
フィラーの含有量は、Si/Na比、Si/Al比が好適になるように調整する。例えばAlに対してSiが不足する場合は、アルカリ剤としてケイ酸ナトリウムなどを添加して調整する。
【0020】
以下に、アルミノシリケート系セメントの組成例を示す。各組成例において、各原料の含有量(%)は、全ての原料の合計質量に対する各原料の質量割合である。
【0021】
組成例1:
水ガラス20~70質量%、
水酸化ナトリウム0~15質量%、
メタカオリン10~40質量%、
水10~40質量%(水ガラスなど、他の原料に含まれるものを除く)。
【0022】
組成例2:
水ガラス10~30質量%、
水酸化ナトリウム0~10質量%、
フライアッシュ30~50質量%、
高炉スラグ5~20質量%、
水10~30質量%(水ガラスなど、他の原料に含まれるものを除く)。
【0023】
本開示において、アルミノシリケート系セメントは第1剤と第2剤との混合物である。
【0024】
<第1剤>
第1の原料は、アルミノシリケート系セメントの原料のうち、フィラーと、水の一部とを含む。
第1剤は、アルカリ活性剤は含まない。
第1剤は、他の原料をさらに含んでいてもよく、含まなくてもよい。
【0025】
第1剤中の水分量は、第1剤の固体体積分率が10~55体積%となる量が好ましい。第1剤の固体体積分率は、10体積%以上が好ましく、15体積%以上がより好ましく、20体積%以上がさらに好ましく、また、45体積%以下がより好ましく、40体積%以下がさらに好ましい。第1剤の固体体積分率が前記上限値以下であると、充分な流動性が得られやすい。また、第1剤の搬送中にポンプなどの閉塞が生じにくい。第1剤の固体体積分率が前記下限値以上であると、フィラーの粒子同士の距離が近く、相互に干渉するため、沈降が進みにくく、スラリーの安定性に優れる傾向がある。前記上限値及び下限値は適宜組み合わせることができる。第1剤の固体体積分率は、例えば15~45体積%、又は20~40体積%であってよい。
固体体積分率は、第1剤の体積に対する、第1剤中の固体の体積の割合である。第1剤中の固体は、第1剤から水を除いた部分である。体積は25℃など使用温度における値である。
なお、フィラーの粒度分布を広く取り、第1剤中の固体粒子の充填が適正化されるように調整するなど、安定なスラリーを得ることができる場合には、固体体積分率が55質量%を超えていてもよい。
【0026】
第1剤の25℃における粘度は、10Pa・s以下が好ましく、1Pa・s以下がより好ましい。第1剤の粘度が前記上限値以下であると、搬送するのに充分な流動性を有する。該粘度の下限は特に限定されず、例えば0.1Pa・sである。
粘度は、例えば,B型粘度計などの回転粘度計により測定される。
【0027】
<第2剤>
第2剤は、アルミノシリケート系セメントの原料のうち、アルカリ活性剤と、水の残部とを含む。
第2剤は、フィラーは含まない。
第2剤は、他の原料をさらに含んでいてもよく、含まなくてもよい。
【0028】
第2剤中の水分量は、アルミノシリケート系セメントの水分量から第1剤の水分量を除いた量である。
第2剤中の水分量は、第2剤の総質量に対し、水ガラスの水分量を除いて、0~10質量%が好ましく、1~5質量%がより好ましく、2~3質量%がさらに好ましい。第2剤中の水の量が前記下限値以上であると、第2剤が搬送するのに充分な流動性を有する。第2剤中の水の量が前記上限値以下であると、第1剤と混合後の固体体積分率を前記した好ましい上限値以下にしやすい。
【0029】
第2剤の25℃における粘度は、10Pa・s以下が好ましく、1Pa・s以下がより好ましい。該粘度の下限は特に限定されず、例えば0.1Pa・sである。第2剤の粘度が前記上限値以下であると、搬送するのに充分な流動性を有する。
【0030】
<第一実施形態>
以下、本開示の第一実施形態に係る施工装置及び施工方法について、図1を参照して説明する。
【0031】
(施工装置)
図1に示すように、第一実施形態に係る施工装置1は、アルミノシリケート系セメントを施工するための装置であり、第1混合部2と、第2混合部3と、第3混合部4と、第1搬送手段5と、第2搬送手段6と、打設手段7とを備える。
第1混合部2及び第2混合部3はそれぞれ、施工場所100とは異なる場所に位置している。第3混合部4は、施工場所100に位置している。
【0032】
施工場所100は、アルミノシリケート系セメントを打設する打設部102の近傍(例えば打設部102から10mの範囲内)である。
本実施形態においては、アルミノシリケート系セメントを、孔101を閉塞するために施工する。つまり、本実施形態においては、孔101の少なくとも一部(例えば図1中の破線で囲まれた領域)が打設部102とされる。孔101の内径は、例えば50~100cmである。
孔101は、例えば、配管の孔、原子力発電所の燃料デブリの取出し孔、容器の外壁や隔壁の孔などであってよい。燃料デブリの取出し孔は、原子炉格納容器の外壁を貫通することが考えられる。
【0033】
第1混合部2は、アルミノシリケート系セメントの原料のうち、フィラーと、水の一部とを含む第1の原料を混合してスラリー状の第1剤を調製する。第1の原料の組成は、第1剤の組成に応じて設定される。
本実施形態において、第1混合部2は、タンク21と、撹拌機(図示略)と、フィラーを収容するホッパー(図示略)とを備える。タンク21に水を収容し、ホッパーからタンク21内にフィラーを供給し、タンク21内を撹拌機で撹拌してフィラーを水中に懸濁させることで、第1剤が調製される。
【0034】
第2混合部3は、アルミノシリケート系セメントの原料のうち、アルカリ活性剤と、水の残部とを含む第2の原料を混合して液状の第2剤を調製する。第2の原料の組成は、第2剤の組成に応じて設定される。
本実施形態において、第2混合部3は、タンク31と、撹拌機(図示略)とを備える。タンク31にアルカリ活性剤又はその水溶液と水とを収容し、タンク31内を撹拌機で撹拌してアルカリ活性剤又はその水溶液を水に溶解させることで、第2剤が調製される。
【0035】
第3混合部4は、第1剤と第2剤とを混合してアルミノシリケート系セメントを調製する。
本実施形態において、第3混合部4は、インライン型の混練機41を備える。混練機41は、打設部102の孔内に配置されている。混練機41としては、例えば、各種のインラインミキサー(プライミクス製パイプラインホモミクサー、ノリタケ製スタティックミキサー、エンバイロ・ビジョン製VRラインミキサーなど)を用いることができる。ただし、混練機41はこれらに限定されるものではない。
【0036】
第1搬送手段5は、第1混合部2と第3混合部4とを接続する配管51を備えており、第1剤を第1混合部2から第3混合部4に搬送する。本実施形態では、配管51は、孔101の一端側から孔101の内部に挿入され、混練機41に接続されている。
配管51には、ポンプP1が設けられている。ポンプP1を動作させることで、第1剤が第1混合部2から第3混合部4に搬送される。
配管51の長さは、第1混合部2と施工場所100との間の距離に応じて設定される。配管51の長さは、例えば20~100mである。
【0037】
第2搬送手段6は、第2混合部3と第3混合部4とを接続する配管61を備えしており、第2剤を第2混合部3から第3混合部4に搬送する。本実施形態では、配管61は、配管51と同様に、孔101の一端側から孔101の内部に挿入され、混練機41に接続されている。
配管61には、ポンプP2が設けられている。ポンプP2を動作させることで、第2剤が第2混合部3から第3混合部4に搬送される。
配管61の長さは、第2混合部3と施工場所100との間の距離に応じて設定される。配管61の長さは、例えば20~100mである。
【0038】
打設手段7は、第3混合部4で調製されたアルミノシリケート系セメントを打設部102に打設する。
本実施形態において、打設手段7は、アルミノシリケート系セメントを第3混合部4から導出する配管71を備える。配管71の基端は混練機41に接続され、先端は打設部102に位置している。配管71の先端にはノズル72が取り付けられている。
配管71の長さは、配管71の途中でアルミノシリケート系セメントが硬化しない範囲であればよく、アルミノシリケート系セメントの可使時間や排出速度に応じて設定できる。配管71の長さは、0~10mが好ましく、0~1mがより好ましい。配管71の長さが前記上限値以下であると、可使時間の短いアルミノシリケート系セメントにも適用できる。
【0039】
施工装置1は、さらに、取付治具8を備えている。
取付治具8は、打設部102のある孔101の内部に配置され、配管51及び配管61を保持している。取付治具8と打設部102との間に混練機41が配置されている。配管51及び配管61が取付治具8に取り付けられていることで、安定した施工ができる。
【0040】
(施工方法)
次に、第一実施形態に係る施工装置1を用いた施工方法について説明する。
本実施形態に係る施工方法は、
第1混合部2で、アルミノシリケート系セメントの原料のうち、フィラーと、水の一部とを含む第1の原料を混合してスラリー状の第1剤を調製するステップS1-1と、
第2混合部3で、アルミノシリケート系セメントの原料のうち、アルカリ活性剤と、水の残部とを含む第2の原料を混合して液状の第2剤を調製するステップS1-2と、
第1剤及び第2剤をそれぞれ、第1混合部2及び第2混合部3から第3混合部4に、配管51及び配管61を通じて搬送するステップS1-3と、
第3混合部4にて、第1剤及び第2剤を混合するステップS1-4と、
第3混合部4のアルミノシリケート系セメントを打設部102に打設するステップS1-5と、を有する。
ステップS1-1及びステップS1-2の前に、第1剤及び第2剤それぞれに配合する水の量を決定するステップS1-0を有することができる。
本実施形態においては、アルミノシリケート系セメントを、孔101の孔を閉塞するために施工する。したがって、本実施形態に係る施工方法は、孔101の閉塞方法ともいえる。
【0041】
「ステップS1-0」
アルミノシリケート系セメント中の水の量が所望の値となり、かつ第1剤及び第2剤の両方の液の流動性を確保できるように、第1剤及び第2剤それぞれへの水の配分を最適化する。
第1剤及び第2剤それぞれへの水の配分は、例えば、以下のフロー1又はフロー2により、決定することができる。
【0042】
・フロー1:
まず、アルミノシリケート系セメントの組成を決定する。
次いで、フィラーに対し、トータルの固体体積分率が10~55%となるように水を添加してフィラースラリー(第1剤)を調製し、フィラースラリーの流動性(例えば粘度)を確認する。このとき、フィラースラリーの固体体積分率を、流動性が得られる範囲で、できるだけ高めに設定する。
次いで、アルミノシリケート系セメントの組成の水分量からフィラースラリーの水分量を除いた水分量をアルカリ活性剤と混合してアルカリ活性剤水溶液(第2剤)を調製し、流動性(例えば粘度)を確認する。アルカリ活性剤水溶液の流動性が不足している場合は、必要最低量の水を添加して流動性を調整する。
【0043】
・フロー2:
まず、アルミノシリケート系セメントの組成を決定する。
次いで、アルカリ活性剤に対し、必要最低量の水(例えば全体の5質量%程度)を添加してアルカリ活性剤水溶液(第2剤)を調製し、アルカリ活性剤水溶液の流動性(例えば粘度)を確認する。
次いで、アルミノシリケート系セメントの組成の水分量からアルカリ活性剤水溶液の水分量を除いた水分量をフィラーと混合してフィラースラリー(第1剤)を調製し、流動性(例えば粘度)を確認する。フィラースラリーの流動性が不足している場合は、必要最低量の水を添加して流動性を調整する。
【0044】
アルミノシリケート系セメント全体、第1剤、第2剤それぞれの組成例を以下に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
組成例2は、組成例1に比べ、Naが多く、反応が速い。
組成例1~2において、メタカオリンとしては、例えばBASF社製のSatintoneSP33、又は兵庫クレー社製のHC-K-1400SWを使用できる。水ガラスとしては、例えば日本化学工業社製のJケイ酸ソーダ1号を使用できる。水酸化ナトリウムとしては、例えば富士フィルム和光純薬社製のものを使用できる。
【0048】
【表3】
【0049】
【表4】
【0050】
組成例3~4において、フライアッシュとしては、例えばJIS II種を使用できる。水ガラスとしては、例えば日本化学工業社製のJケイ酸ソーダ1号を使用できる。水酸化ナトリウムとしては、例えば富士フィルム和光純薬社製のものを使用できる。
【0051】
「ステップS1-1」
第1剤を調製するには、例えば、第1混合部2のタンク21に水を収容し、フィラーを収容したホッパー(図示略)からタンク21内にフィラーを供給し、タンク21内を撹拌機(図示略)で撹拌してフィラーを水中に懸濁させる。
水は、蒸留水、水道水、工業用水、雨水、原子力発電所内で発生する処理水などを用いることができる。
【0052】
「ステップS1-2」
第2剤を調製するには、例えば、第2混合部3のタンク31にアルカリ活性剤と水とを収容し、タンク31内を撹拌機(図示略)で撹拌する。
水は、蒸留水、水道水、工業用水、雨水、原子力発電所内で発生する処理水などを用いることができる。
【0053】
アルカリ活性剤がケイ酸ナトリウムを含む場合、ケイ酸ナトリウムは水ガラスの形態のものが用いられてもよい。
水ガラスを用いる場合、水ガラス自体は粘稠な液体であり、高粘度で容易には流動しない。そのため、水ガラス100質量%に対して1~10質量%程度の水を追加で添加することで、第2剤の流動性を向上させることが好ましい。流動性を調整した上で、水酸化ナトリウムなどの他のアルカリ活性剤を添加して、アルカリ量(pH)を調整することもできる。
【0054】
「ステップS1-3、S1-4、S1-5」
ポンプP1を動作させることで、第1剤が第1混合部2から第3混合部4の混練機41に、配管51を通じて搬送される。また、ポンプP2を動作させることで、第2剤が第2混合部3から第3混合部4の混練機41に、配管61を通じて搬送される。
本実施形態では、混練機41がインライン型であるので、ポンプP1、ポンプP2それぞれの動作により混練機41に供給された第1剤及び第2剤は、それら自身の流れによって混練され、アルミノシリケート系セメントが調製される。調製されたアルミノシリケート系セメントは、そのまま第3混合部4から配管71に供給され、ノズル72から吐出され、打設部102に充填される。
【0055】
(作用効果)
上記構成の施工装置及び施工方法では、アルミノシリケート系セメントの施工場所とは異なる場所で、アルミノシリケート系セメントの原料のうちフィラー及び水の一部を含むスラリー状の第1剤と、アルカリ活性剤及び水の残部を含む第2剤とを調製し、それらを施工場所に搬送し、混合してアルミノシリケート系セメントを調製し、打設する。
施工現場で施工直前に第1剤と第2剤を混合してアルミノシリケート系セメントを調製するので、アルミノシリケート系セメントの可使時間にかかわらず、アルミノシリケート系セメントを良好に施工できる。また、任意のタイミングで硬化を開始できるので、施工の自由度が増す。
乾燥状態のフィラーなどの粉体は、配管を通じて搬送することが難しく、また、アルカリ活性剤水溶液などの液体原料との混合に手間がかかる。搬送、混合の際に粉じんが発生して、その対策が必要になる場合もある。上記構成の施工装置及び施工方法では、水分を、第1剤、第2剤の両方に配分することで、それら両方に適度な流動性を持たせているので、施工場所から離れた場所からでも、配管を通じて施工場所に搬送できる。また、一般的に粉体を液体に混合して均一に分散させるよりも、液体同士を混合して均一化する方が容易であり、混合の際のハンドリングが容易である。
第1剤及び第2剤はそれぞれ、混合するまで硬化を開始しないため、第1剤、第2剤それぞれの調製場所と施工場所との間の距離が長い場合や、該調製場所から施工場所への搬送時間が長い場合でも、硬化後の品質への影響が少ない。
【0056】
<第二実施形態>
以下、本開示の第二実施形態に係る施工装置及び施工方法について、図2を参照して説明する。なお、以下に示す実施形態においては、上述した実施形態と同様の構成については同一の符号を付してある。
【0057】
(施工装置)
図2に示すように、第二実施形態に係る施工装置1は、アルミノシリケート系セメントを施工するための装置であり、第1混合部2と、第2混合部3と、第3混合部4と、第1搬送手段5と、第2搬送手段6と、打設手段7とを備える。
第二実施形態の施工装置1は、第3混合部4の構成及び配置、打設手段7の構成以外は、第一実施形態の施工装置1と同様である。
【0058】
本実施形態において、第3混合部4は、混練機41の代わりに、タンク42と、撹拌機43とを備える。
タンク42は、配管51からの第1剤と、配管61からの第2剤とを収容する。タンク42には、配管51及び配管61が接続されている。タンク42は、孔101の外側に配置されている。
撹拌機43は、タンク42内を撹拌し、第1剤と第2剤とを混合する。撹拌機43としては、例えば、プライミクス製ホモミキサー、浅田鉄工製プラネタリーミキサーなどを用いることができる。ただし、撹拌機43はこれらに限定されるものではない。
【0059】
本実施形態において、打設手段7は、配管71の基端が第3混合部4のタンク42内に配置されていること、配管71にポンプP3が設けられていること、配管71が取付治具8に保持されていること以外は、第一実施形態と同様である。
ポンプP3を動作させることで、タンク42内で調製されたアルミノシリケート系セメントがタンク42から配管71を通じて搬送される。
【0060】
(施工方法)
次に、第二実施形態に係る施工装置1を用いた施工方法について説明する。
本実施形態に係る施工方法は、
第1混合部2で、アルミノシリケート系セメントの原料のうち、フィラーと、水の一部とを含む第1の原料を混合してスラリー状の第1剤を調製するステップS2-1と、
第2混合部3で、アルミノシリケート系セメントの原料のうち、アルカリ活性剤と、水の残部とを含む第2の原料を混合して液状の第2剤を調製するステップS2-2と、
第1剤及び第2剤をそれぞれ、第1混合部2及び第2混合部3から第3混合部4に、配管51及び配管61を通じて搬送するステップS2-3と、
第3混合部4にて、第1剤及び第2剤を混合するステップS2-4と、
第3混合部4のアルミノシリケート系セメントを打設部102に打設するステップS2-5と、を有する。
ステップS2-1及びステップS2-2の前に、第1剤及び第2剤それぞれに配合する水の量を決定するステップS2-0を有することができる。
【0061】
「ステップS2-0」
ステップS2-0は、ステップS1-0と同様である。
【0062】
「ステップS2-1」
ステップS2-1は、ステップS1-1と同様である。
【0063】
「ステップS2-2」
ステップS2-2は、ステップS1-2と同様である。
【0064】
「ステップS2-3」
ポンプP1を動作させることで、第1剤が第1混合部2から第3混合部4のタンク42に、配管51を通じて搬送される。また、ポンプP2を動作させることで、第2剤が第2混合部3から第3混合部4のタンク42に、配管61を通じて搬送される。
【0065】
「ステップS2-4」
タンク42にて、配管51からの第1剤と、配管61からの第2剤とを撹拌機43で撹拌することで、アルミノシリケート系セメントが調製される。
【0066】
「ステップS2-5」
ポンプP3を動作させることで、アルミノシリケート系セメントがタンク42から配管71に供給され、ノズル72から吐出され、打設部102に充填される。
【0067】
(作用効果)
上記構成の施工装置及び施工方法では、第一実施形態と同様に、アルミノシリケート系セメントの施工場所とは異なる場所で、アルミノシリケート系セメントの原料のうちフィラー及び水の一部を含むスラリー状の第1剤と、アルカリ活性剤及び水の残部を含む第2剤とを調製し、それらを施工場所に搬送し、混合してアルミノシリケート系セメントを調製し、打設する。
施工現場で施工直前に第1剤と第2剤を混合してアルミノシリケート系セメントを調製するので、アルミノシリケート系セメントの可使時間にかかわらず、アルミノシリケート系セメントを良好に施工できる。また、任意のタイミングで硬化を開始できるので、施工の自由度が増す。
乾燥状態のフィラーなどの粉体は、配管を通じて搬送することが難しく、また、アルカリ活性剤水溶液などの液体原料との混合に手間がかかる。搬送、混合の際に粉じんが発生して、その対策が必要になる場合もある。上記構成の施工装置及び施工方法では、水分を、第1剤、第2剤の両方に配分することで、それら両方に適度な流動性を持たせているので、施工場所から離れた場所からでも、配管を通じて施工場所に搬送できる。また、一般的に粉体を液体に混合して均一に分散させるよりも、液体同士を混合して均一化する方が容易であり、混合の際のハンドリングが容易である。
第1剤及び第2剤はそれぞれ、混合するまで硬化を開始しないため、第1剤、第2剤それぞれの調製場所と施工場所との間の距離が長い場合や、該調製場所から施工場所への搬送時間が長い場合でも、硬化後の品質への影響が少ない。
第二実施形態では、第一実施形態と異なり、タンク42を設置することで、アルミノシリケート系セメントを十分攪拌してから施工することが可能となる。
さらに、タンク42に、粘度計、pH計、電気伝導度計、特定の成分の分析装置、例えば、水分計などを設置して、所定値になっていることを確認後に施工することもできる。また、複数の部分や時間を変えて測定し、比較することで、タンク内が均一に攪拌されたことを確認してから施工することも可能である。
【0068】
<第三実施形態>
以下、本開示の第三実施形態に係る施工装置及び施工方法について、図3を参照して説明する。
【0069】
(施工装置)
第三実施形態に係る施工装置1は、第一実施形態に係る施工装置1と同様である。
【0070】
(施工方法)
次に、第三実施形態に係る施工装置1を用いた施工方法について説明する。
本実施形態に係る施工方法は、
第1混合部2で、アルミノシリケート系セメントの原料のうち、フィラーと、水の一部とを含む第1の原料を混合してスラリー状の第1剤を調製するステップS3-1と、
第2混合部3で、アルミノシリケート系セメントの原料のうち、アルカリ活性剤と、水の残部とを含む第2の原料を混合して液状の第2剤を調製するステップS3-2と、
施工場所100において、打設部102を囲む仕切り部103、104を設けるステップS3-3と、
第1剤及び第2剤をそれぞれ、第1混合部2及び第2混合部3から第3混合部4に、配管51及び配管61を通じて搬送するステップS3-4と、
第3混合部4にて、第1剤及び第2剤を混合するステップS3-5と、
第3混合部4のアルミノシリケート系セメントを打設部102に打設するステップS3-6と、を有する。
ステップS3-1及びステップS3-2の前に、第1剤及び第2剤それぞれに配合する水の量を決定するステップS3-0を有することができる。
ステップS3-6の後に、仕切り部103、104の少なくとも一部を取り除くステップS3-7を有することができる。
【0071】
「ステップS3-0」
ステップS3-0は、ステップS1-0と同様である。
【0072】
「ステップS3-1」
ステップS2-1は、ステップS1-1と同様である。
【0073】
「ステップS3-2」
ステップS3-2は、ステップS1-2と同様である。
【0074】
「ステップS3-3」
本実施形態においては、孔101の軸方向における打設部102の奥側(打設手段7とは反対側。図3中、右側)及び手前側(打設手段7側。図3中、左側)それぞれに仕切り部103、104が設けられている。以下、奥側の仕切り部103を第1仕切り部103ともいい、手前側の仕切り部104を第2仕切り部104ともいう。
第1仕切り部103は、打設部102の奥側の位置で、孔101を塞いでおり、ノズル72から吐出されたアルミノシリケート系セメントが第1仕切り部103より奥側に流れ込まないようになっている。
第2仕切り部104は、打設部102の手前側の位置で、孔101の下部を塞いでおり、ノズル72から吐出されたアルミノシリケート系セメントが第2仕切り部104より手前側に流れ込まないようになっている。第2仕切り部104の上側には、配管71及びノズル72が通過可能な程度の隙間が設けられている。
【0075】
本実施形態において、第1仕切り部103、第2仕切り部104はそれぞれ、バルーンからなる。バルーンは、軽量である点、空気を抜けば嵩張らない点、気圧で管内面への密着性を調整できる点などから好ましい。
第2仕切り部104を構成するバルーンには、エアライン105が接続されている。エアライン105にはコンプレッサ106が配置されている。
アルミノシリケート系セメントを打設する前に、空気の入っていないバルーンを打設部102の手前に配置し、位置決めした後に、コンプレッサ106を動作させ、バルーンに空気を入れて膨らませ、第2仕切り部104を構築することができる。
【0076】
「ステップS3-4、S3-5、S3-6」
ステップS3-4、S3-5、S3-6は、ステップS1-3、S1-4、S1-5と同様である。
【0077】
「ステップS3-7」
ステップS3-6の後は、第1仕切り部103、第2仕切り部104は無くてもよい。
本実施形態の場合、打設部102の手前側にある第2仕切り部104は取り除くことができる。第2仕切り部104は取り除く場合、第2仕切り部104を孔101から取り出す前に、エアライン105を介して、第2仕切り部104を構成するバルーンの空気を抜くことができる。バルーンの空気を抜くことで、取出しが容易となる。
【0078】
(作用効果)
上記構成の施工方法では、第一実施形態と同様に、アルミノシリケート系セメントの施工場所とは異なる場所で、アルミノシリケート系セメントの原料のうちフィラー及び水の一部を含むスラリー状の第1剤と、アルカリ活性剤及び水の残部を含む第2剤とを調製し、それらを施工場所に搬送し、混合してアルミノシリケート系セメントを調製し、打設する。
施工現場で施工直前に第1剤と第2剤を混合してアルミノシリケート系セメントを調製するので、アルミノシリケート系セメントの可使時間にかかわらず、アルミノシリケート系セメントを良好に施工できる。また、任意のタイミングで硬化を開始できるので、施工の自由度が増す。
乾燥状態のフィラーなどの粉体は、配管を通じて搬送することが難しく、また、アルカリ活性剤水溶液などの液体原料との混合に手間がかかる。搬送、混合の際に粉じんが発生して、その対策が必要になる場合もある。上記構成の施工装置及び施工方法では、水分を、第1剤、第2剤の両方に配分することで、それら両方に適度な流動性を持たせているので、施工場所から離れた場所からでも、配管を通じて施工場所に搬送できる。また、一般的に粉体を液体に混合して均一に分散させるよりも、液体同士を混合して均一化する方が容易であり、混合の際のハンドリングが容易である。
第1剤及び第2剤はそれぞれ、混合するまで硬化を開始しないため、第1剤、第2剤それぞれの調製場所と施工場所との間の距離が長い場合や、該調製場所から施工場所への搬送時間が長い場合でも、硬化後の品質への影響が少ない。
さらに、上記構成の施工方法では、施工場所において、アルミノシリケート系セメントの打設部を囲む仕切り部を設けた後に、アルミノシリケート系セメントを打設している。これにより、打設部以外の部分に、アルミノシリケート系セメントが流れ込むことを抑制できる。
【0079】
<第四実施形態>
以下、本開示の第四実施形態に係る施工装置及び施工方法について、図4を参照して説明する。
【0080】
(施工装置)
図4に示すように、第四実施形態に係る施工装置1は、第1混合部2及び第2混合部3は、工場内に設けられていること、第1搬送手段5が、第1剤を容器(図示略)に入れて搬送する手段であること、第2搬送手段6が、第2剤を容器(図示略)に入れて搬送する手段であること以外は、第二実施形態の施工装置1と同様である。
【0081】
第1剤を容器に入れて搬送する手段としては、自動車(トラック、コンテナ車、タンクローリー、ミキサー車など)、鉄道、船舶などが挙げられる。
第2剤を容器に入れて搬送する手段としては、第1剤を容器に入れて搬送する手段と同様のものが挙げられる。
【0082】
(施工方法)
次に、第四実施形態に係る施工装置1を用いた施工方法について説明する。
本実施形態に係る施工方法は、
第1混合部2で、アルミノシリケート系セメントの原料のうち、フィラーと、水の一部とを含む第1の原料を混合してスラリー状の第1剤を調製するステップS4-1と、
第2混合部3で、アルミノシリケート系セメントの原料のうち、アルカリ活性剤と、水の残部とを含む第2の原料を混合して液状の第2剤を調製するステップS4-2と、
第1剤を容器に入れ、第1混合部2から第3混合部4に搬送するステップS4-3と、
第2剤を容器に入れ、第2混合部3から第3混合部4に搬送するステップS4-4と、
第3混合部4にて、第1剤及び第2剤を混合するステップS4-5と、
第3混合部4のアルミノシリケート系セメントを打設部102に打設するステップS4-6と、を有する。
ステップS4-1及びステップS4-2の前に、第1剤及び第2剤それぞれに配合する水の量を決定するステップS4-0を有することができる。
【0083】
「ステップS4-0」
ステップS4-0は、ステップS1-0と同様である。
【0084】
「ステップS4-1」
ステップS4-1は、ステップS1-1と同様である。
【0085】
「ステップS4-2」
ステップS4-2は、ステップS1-2と同様である。
【0086】
「ステップS4-3」
ステップS4-3では、タンク21内の第1剤を容器に入れ、この容器を自動車、鉄道、船舶で第3混合部4に搬送する。
【0087】
「ステップS4-4」
ステップS4-4では、タンク31内の第2剤を容器に入れ、この容器を自動車、鉄道、船舶で第3混合部4に搬送する。
【0088】
「ステップS4-5」
ステップS4-5では、タンク42に、ステップS4-3で搬送された容器から第1剤を、ステップS4-4で搬送された容器から第2剤を投入し、撹拌機43で撹拌することで、アルミノシリケート系セメントが調製される。
【0089】
「ステップS4-6」
ステップS4-6は、ステップS2-5と同様である。
【0090】
(作用効果)
上記構成の施工装置及び施工方法では、第一実施形態と同様に、アルミノシリケート系セメントの施工場所とは異なる場所で、アルミノシリケート系セメントの原料のうちフィラー及び水の一部を含むスラリー状の第1剤と、アルカリ活性剤及び水の残部を含む第2剤とを調製し、それらを施工場所に搬送し、混合してアルミノシリケート系セメントを調製し、打設する。
施工現場で施工直前に第1剤と第2剤を混合してアルミノシリケート系セメントを調製するので、アルミノシリケート系セメントの可使時間にかかわらず、アルミノシリケート系セメントを良好に施工できる。また、任意のタイミングで硬化を開始できるので、施工の自由度が増す。
乾燥状態のフィラーなどの粉体は、配管を通じて搬送することが難しく、また、アルカリ活性剤水溶液などの液体原料との混合に手間がかかる。搬送、混合の際に粉じんが発生して、その対策が必要になる場合もある。上記構成の施工装置及び施工方法では、水分を、第1剤、第2剤の両方に配分することで、それら両方に適度な流動性を持たせているので、施工場所から離れた場所からでも、配管を通じて施工場所に搬送できる。また、一般的に粉体を液体に混合して均一に分散させるよりも、液体同士を混合して均一化する方が容易であり、混合の際のハンドリングが容易である。
第1剤及び第2剤はそれぞれ、混合するまで硬化を開始しないため、第1剤、第2剤それぞれの調製場所と施工場所との間の距離が長い場合や、該調製場所から施工場所への搬送時間が長い場合でも、硬化後の品質への影響が少ない。
【0091】
なお、第四実施形態のステップS4-1において、1回の施工に用いる量の2倍以上の第1剤を調製し、ステップS4-3で、使用する量だけを取り出して容器に入れ、残りを一時的に保管するようにしてもよい。この場合、再度、アルミノシリケート系セメントを施工する際に、残りの第1剤を用いることで、ステップS4-1を省略できる。
同様に、ステップS4-2において、1回の施工に用いる量の2倍以上の第2剤を調製し、ステップS4-4で、使用する量だけを取り出して容器に入れ、残りを一時的に保管するようにしてもよい。この場合、再度、アルミノシリケート系セメントを施工する際に、残りの第2剤を用いることで、ステップS4-2を省略できる。
【0092】
第四実施形態において、第1剤を容器に入れて、第1混合部2と第3混合部4との間の任意の場所(以下、中継点A)まで搬送し、中継点Aから第3混合部4まで、配管を通じて搬送してもよい。
同様に、第2剤を容器に入れて、第2混合部3と第3混合部4との間の任意の場所(以下、中継点B)まで搬送し、中継点Bから第3混合部4まで、配管を通じて搬送してもよい。
【0093】
以上、本開示の実施形態について説明したが、上記実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本開示の要旨を逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。
【0094】
<付記>
各実施形態に記載の施工方法及び施工装置は、例えば以下のように把握される。
(1)第1の態様に係る施工方法は、アルミノシリケートを含むフィラーと、アルカリ活性剤と、水とを含むアルミノシリケート系セメントの施工方法であって、
前記アルミノシリケート系セメントの施工場所とは異なる場所で、前記アルミノシリケート系セメントの原料のうち、前記フィラーと、前記水の一部とを含む第1の原料を混合してスラリー状の第1剤を調製し(ステップS1-1、S2-1、S3-1、S4-1)、
前記施工場所とは異なる場所で、前記アルミノシリケート系セメントの原料のうち、前記アルカリ活性剤と、前記水の残部とを含む第2の原料を混合して液状の第2剤を調製し(ステップS1-2、S2-2、S3-2、S4-2)、
調製した前記第1剤及び前記第2剤をそれぞれ、前記施工場所に搬送し(ステップS1-3、S2-3、S3-4、S4-3~S4-4)、
前記施工場所にて、前記第1剤及び前記第2剤を混合し(ステップS1-4、S2-4、S3-5、S4-5)、得られた前記アルミノシリケート系セメントを打設する(ステップS1-5、S2-5、S3-6、S4-6)。
本態様によれば、アルミノシリケート系セメントの可使時間にかかわらず、アルミノシリケート系セメントを良好に施工できる。
【0095】
(2)第2の態様に係る施工方法は、(1)の施工方法であって、前記第1剤の固体体積分率が10~55体積%である。
第1剤の固体体積分率が55体積%以下であると、充分な流動性が得られやすい。また、第1剤の搬送中にポンプなどの閉塞が生じにくい。第1剤の固体体積分率が10体積%以上であると、フィラーの粒子同士の距離が近く、相互に干渉するため、沈降が進みにくく、スラリーの安定性に優れる傾向がある。
【0096】
(3)第3の態様に係る施工方法は、(1)又は(2)の施工方法であって、前記施工場所において、前記アルミノシリケート系セメントを打設する前に、前記アルミノシリケート系セメントの打設部を囲む仕切り部を設ける(ステップS3-3)。
本態様によれば、打設部以外の部分に、アルミノシリケート系セメントが流れ込むことを抑制できる。
【0097】
(4)第4の態様に係る施工方法は、(1)~(3)のいずれかの施工方法であって、調製した前記第1剤及び前記第2剤をそれぞれ、配管を通じて前記施工場所に搬送する(ステップS1-3、S2-3、S3-4)。
本態様によれば、アルミノシリケート系セメントを入れた容器の搬送、原料の混合及び攪拌などが困難な場所であっても、アルミノシリケート系セメントを良好に施工できる。
【0098】
(5)第5の態様に係る施工装置は、アルミノシリケートを含むフィラーと、アルカリ活性剤と、水とを含むアルミノシリケート系セメントの施工装置であって、
前記アルミノシリケート系セメントの施工場所とは異なる場所に位置し、前記アルミノシリケート系セメントの原料のうち、前記フィラーと、前記水の一部とを含む第1の原料を混合してスラリー状の第1剤を調製する第1混合部と、
前記施工場所とは異なる場所に位置し、前記アルミノシリケート系セメントの原料のうち、前記アルカリ活性剤と、前記水の残部とを含む第2の原料を混合して液状の第2剤を調製する第2混合部と、
前記施工場所に位置し、前記第1剤と前前記第2剤とを混合して前記アルミノシリケート系セメントを調製する第3混合部と、
前記第1剤を前記第1混合部から前記第3混合部に搬送する手段と、
前記第2剤を前記第2混合部から前記第3混合部に搬送する手段と、
前記第3混合部で調製された前記アルミノシリケート系セメントを前記施工場所に打設する手段と、を備える。
本態様によれば、アルミノシリケート系セメントの可使時間にかかわらず、アルミノシリケート系セメントを良好に施工できる。
【0099】
(6)第6の態様に係る施工装置は、(5)の施工方法であって、前記第1剤の固体体積分率が10~55体積%である。
第1剤の固体体積分率が55体積%以下であると、充分な流動性が得られやすい。また、第1剤の搬送中にポンプなどの閉塞が生じにくい。第1剤の固体体積分率が10体積%以上であると、フィラーの粒子同士の距離が近く、相互に干渉するため、沈降が進みにくく、スラリーの安定性に優れる傾向がある。
【0100】
(7)第7の態様に係る施工装置は、(5)又は(6)の施工方法であって、前記第1剤を搬送する手段が、前記第1混合部と前記第3混合部とを接続する配管を備え、前記第2剤を搬送する手段が、前記第2混合部と前記第3混合部とを接続する配管を備える。
本態様によれば、アルミノシリケート系セメントを入れた容器の搬送、原料の混合及び攪拌などが困難な場所であっても、アルミノシリケート系セメントを良好に施工できる。
【0101】
(8)第8の態様に係る閉塞方法は、原子力発電所の燃料デブリの取出し孔の閉塞方法であって、(1)~(4)のいずれかの施工方法により前記アルミノシリケート系セメントを前記取出し孔に打設する。
原子力発電所の燃料デブリの取出し孔やその近傍では、アルミノシリケート系セメントを入れた容器の搬送、原料の混合及び攪拌などが困難で、従来の方法では、アルミノシリケート系セメントにより取出し孔を閉塞することが困難であった。本態様によれば、取出し孔をアルミノシリケート系セメントにより閉塞できる。
【符号の説明】
【0102】
1…施工装置
2…第1混合部
3…第2混合部
4…第3混合部
5…第1搬送手段
6…第2搬送手段
7…打設手段
51…配管
61…配管
71…配管
100…施工場所
101…孔
102…打設部
103…仕切り部
104…仕切り部
図1
図2
図3
図4