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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054482
(43)【公開日】2024-04-17
(54)【発明の名称】酸化チタン分散体
(51)【国際特許分類】
   C09D 17/00 20060101AFI20240410BHJP
   C09D 11/00 20140101ALI20240410BHJP
   C09C 1/36 20060101ALI20240410BHJP
   C01G 23/047 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
C09D17/00
C09D11/00
C09C1/36
C01G23/047
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160718
(22)【出願日】2022-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(72)【発明者】
【氏名】奥岡 晋一
(72)【発明者】
【氏名】今泉 直樹
【テーマコード(参考)】
4G047
4J037
4J039
【Fターム(参考)】
4G047CA02
4G047CC01
4G047CD04
4J037AA21
4J037CC16
4J037EE08
4J037FF04
4J037FF23
4J039AB12
4J039AD09
4J039BA13
4J039BA35
4J039BC10
4J039BC13
4J039BE01
4J039BE22
4J039CA06
4J039EA18
4J039EA44
4J039EA46
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】本発明は、沈降安定性に優れる酸化チタン分散体を提供することを目的とする。
【解決手段】ルチル型酸化チタン(A)及び水を含む酸化チタン分散体であって、該ルチル型酸化チタン(A)の、X線回折測定における回折角2θ=27.5°近傍に観察されるルチル型酸化チタン(110)面に帰属される回折ピークの強度Iaと、回折角2θ=36.1°近傍に観察されるルチル型酸化チタン(101)面に帰属される回折ピークの強度Ibのピークの積分強度比(Ia/Ib)が2.310以上である酸化チタン分散体である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルチル型酸化チタン(A)及び水を含む酸化チタン分散体であって、
該ルチル型酸化チタン(A)の、X線回折測定における回折角2θ=27.5°近傍に観察されるルチル型酸化チタン(110)面に帰属される回折ピークの強度Iaと、回折角2θ=36.1°近傍に観察されるルチル型酸化チタン(101)面に帰属される回折ピークの強度Ibのピークの積分強度比(Ia/Ib)が2.310以上である酸化チタン分散体。
【請求項2】
ルチル型酸化チタン(A)の含有量が酸化チタン分散体100質量部に対して20~70質量部である請求項1に記載の酸化チタン分散体。
【請求項3】
更に分散剤(B)を含み、前記ルチル型酸化チタン(A)100質量部に対して2質量部以上9質量部以下の分散剤(B)を含む請求項1に記載の酸化チタン分散体。
【請求項4】
請求項1または4に記載の酸化チタン分散体を原料に用いた水性白色インク。
【請求項5】
更に脂環式構造含有単量体由来の構造単位を有する重合体を含む請求項4に記載の水性白色インク。
【請求項6】
更に架橋剤を含む請求項4に記載の水性白色インク。
【請求項7】
更にワックス成分を含む請求項4に記載の水性白色インク。
【請求項8】
請求項4に記載の水性白色インクを用いて得られる印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化チタン分散体に関する。本発明の酸化チタン分散体は、特にインクジェット用インク原料として好適に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
インクは、溶媒の主成分として有機溶媒が用いられている有機溶媒系インクと溶媒の主成分として水が用いられている水性インクとの2種類のインクに大別される。
有機溶媒系インクは、人体に対する安全性に劣るとともに有機溶媒に基づく臭気が発生するため、近年、水性溶媒を用いた水性インクが着目されている。
さらに近年、多品種小ロットの印刷に対応するために製版不要なデジタル印刷方式である、インクジェット記録装置が使用されるようになってきている。
水性インクジェット用白色インクに用いる着色剤には無機顔料であるルチル型酸化チタンが多く用いられ、ルチル型酸化チタンを高濃度で含有する酸化チタン分散体(酸化チタンペースト、酸化チタンスラリーともいう)を調製し、当該酸化チタン分散体に水溶性有機溶剤、樹脂分散液、添加剤、水などを混合して白色インクを製造する方法が採用されている。
水性インクジェット用白色インクにおいては、インク粘度が低く、加えてルチル型酸化チタンの比重が大きいため、沈降安定性が悪く、顔料分散体または水性白色インク自身の沈降安定性向上について検討がなされてきた。
例えば特許文献1にはルチル型酸化チタンとポリマー分散剤を含有する水性インクにおいて、アニオン性基含有モノマー由来の構成成分を72質量%以上含む高酸価分散剤を使用することで再分散時の起泡が起こりにくい抑泡性に優れた水系白色インクを得ることができると示されている。
また例えば特許文献2には白色顔料組成物であって、平均粒径が15nm以上100nm以下である酸化チタン粒子、平均粒径が3nm以上100nm以下である酸化ケイ素粒子、及び樹脂を含み、前記白色顔料組成物を内部形状が柱状の容器に入れ、100Gの遠心力で10時間遠心分離した際に、前記白色顔料組成物全体の高さに対する厚さの割合が0.025以上である沈殿物が存在しない、白色顔料組成物が記載され、沈降安定性及び白色性をバランスよく向上可能な白色顔料組成物が得られることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許6881836号
【特許文献2】特開2019-112602号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1の水性白色インク及びその原料である酸化チタン分散体は、起泡性の少ない分散剤種類に関する発明であるが、使用しているルチル型酸化チタンによっては沈降安定性に課題があることがわかった。
また、特許文献2記載の白色顔料組成物は、一般的に用いられるルチル型酸化チタンの沈降安定性を発現させるために小さな粒子径が採用されており満足な白色度(隠ぺい性)が得られるものではなかった。
本発明の目的は、ルチル型酸化チタンの分散状態を安定させ、良好な沈降安定性を有する新規な酸化チタン分散体、及び水性白色インクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明者らは、上記のような問題点に鑑み検討を行い、ルチル型酸化チタン(A)及び水を含む酸化チタン分散体であって、該ルチル型酸化チタン(A)の、X線回折測定における回折角2θ=27.5°近傍に観察されるルチル型酸化チタン(110)面に帰属される回折ピークの強度Iaと、回折角2θ=36.1°近傍に観察されるルチル型酸化チタン(101)面に帰属される回折ピークの強度Ibのピークの積分強度比(Ia/Ib)が2.310以上である酸化チタン分散体が、良好な沈降安定性を有することを見出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、沈降安定性に優れる酸化チタン分散体が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示の酸化チタン分散体は、ルチル型酸化チタン(A)及び水を含み、X線回折測定における回折角2θ=20°超30°以下の間に観察される最大の回折ピークのピーク強度Iaと、回折角2θ=30°超45°の間に観察される最大の回折ピークのピーク強度Ibのピークの積分強度比(Ia/Ib)が2.310以上であることを特徴とする。
【0008】
<ルチル酸化チタン>
本開示のルチル型酸化チタン(A)としては、X線回折測定における回折角2θ=20°超30°以下の間に観察される最大の回折ピークのピーク強度Iaと、回折角2θ=30°超45°の間に観察される最大の回折ピークのピーク強度Ibのピークの積分強度比(Ia/Ib)が2.310以上であることが好ましい。
ルチル型酸化チタン(A)のX線回折測定における回折角2θ=20°超30°以下の間に観察される最大の回折ピークのピーク強度Iaと、回折角2θ=30°超45°の間に観察される最大の回折ピークのピーク強度Ibのピークの積分強度比(Ia/Ib)の下限値としては2.310以上が好ましく、上限値としては3.400以下であってよく、3.350以下、3.300以下であっても良い。X線回折測定における回折角2θ=20°超30°以下の間に観察される最大の回折ピークのピーク強度Iaと、回折角2θ=30°超45°の間に観察される最大の回折ピークのピーク強度Ibのピークの積分強度比(Ia/Ib)が前記範囲であると酸化チタン分散体とした際の沈降安定性が良好となることが期待できる。
本開示の酸化チタン分散体にはその他顔料を用いてもよいが顔料100質量部におけるルチル型酸化チタン(A)の含有量は80質量部以上が好ましく、90質量部以上がより好ましく、95質量部以上がさらに好ましく、100質量部が特に好ましい。
本開示のルチル型酸化チタン(A)の一次粒子径としては、0.1μm以上が好ましく、0.15μm以上がより好ましく、0.2μm以上がさらに好ましく、1μm以下が好ましく、0.4μm以下がさらに好ましく、0.3μm以下がさらに好ましい。ルチル型酸化チタン(A)の一次粒子径は走査型電子顕微鏡観察や透過型電子顕微鏡観察から測定できる。
【0009】
本開示のルチル型酸化チタン(A)は、アルミニウム元素、ケイ素元素、ジルコニウム元素のいずれか少なくとも1つの元素を含んでいてもよい。
本開示のルチル型酸化チタン(A)におけるアルミニウム元素の含有量は、チタニウム元素100質量部に対する0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましく、1.5質量部以上がさらに好ましく、5.0質量部以下が好ましく、4.5質量部以下がより好ましく、4.0質量部以下がさらに好ましい。
本開示のルチル型酸化チタン(A)におけるケイ素元素の含有量は、チタニウム元素100質量部に対する0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましく、1.5質量部以上がさらに好ましく、5.0質量部以下が好ましく、4.5質量部以下がより好ましく、4.0質量部以下がさらに好ましい。
本開示のルチル型酸化チタン(A)におけるジルコニウム元素の含有量は、チタニウム元素100質量部に対する0.01質量部以上が好ましく、0.03質量部以上がより好ましく、0.05質量部以上がさらに好ましく、1.0質量部以下が好ましく、0.75質量部以下がより好ましく、0.5質量部以下がさらに好ましい。
本開示のルチル型酸化チタン(A)におけるアルミニウム元素、ケイ素元素、ジルコニウム元素の質量部の比率は、粗大粒子抑制や、沈降安定性向上の観点から、下記式(1)を満たすことが好ましい。
0.8 < Si/(Al+Zr) < 4.0 (1)
本開示のチタニウム元素100質量部におけるアルミニウム元素およびジルコニウム元素の質量部の合計量は、0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましく、1.5質量部以上がさらに好ましく、5.0質量部以下が好ましく、4.5質量部以下がより好ましく、4.0質量部以下がさらに好ましい。
本開示のルチル型酸化チタン(A)中に含まれる、ケイ素元素、アルミニウム元素、ジルコニウム元素の量は、蛍光X線を用いて測定することができる。蛍光X線による定量法については、標準試料を用いた検量線による分析方法が確立されている。
本開示のルチル型酸化チタン(A)は、表面処理されていることが好ましく、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化亜鉛、シランカップリング剤、多価アルコール、アミンなどを用いた表面処理方法が挙げられるが、生産性の観点から酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化亜鉛を用いた表面処理方法が好ましい。
本開示の酸化チタン分散体100質量部における酸化チタンの含有量は、低すぎると生産性が低下し、また酸化チタン分散体を原料として水性白色インクを調製した際に十分な水分散性樹脂をバインダーとして配合することが困難となり塗膜の耐擦過性等諸物性が低下する、また高すぎると粘度が高くなりビーズミルなどの分散処理が困難になる。これら観点から20質量部以上が好ましく、30質量部以上がより好ましく、40質量部以上がさらに好ましく、70質量部以下が好ましく、65質量部以下がより好ましく、60質量部以下がさらに好ましい。
【0010】
<水>
本開示の酸化チタン分散体は水を含む。
本開示の酸化チタン分散体中の液相成分100質量部における水分量は、酸化チタン分散体生産時の安全性の観点から、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上が好ましい。
本開示の酸化チタン分散体は水以外にも水溶性有機溶剤を含むことができる。水溶性有機溶剤としては、エチレングリコールやプロピレングリコールが好ましい。
上記水溶性有機溶剤の沸点は、酸化チタン分散体を原料としてインクを作成した際のインクの乾燥性の観点から240℃以下が好ましく、220℃以下がさらに好ましく、200℃以下がさらに好ましい。
水性インクとした際の安全性およびインクの乾燥性の観点からラクタム環構造を有する水溶性有機溶剤は、酸化チタン分散体100質量部あたり10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましく、2質量部以下がさらに好ましく、含まなくても良い。ラクタム環構造を有する水溶性有機溶剤としては、2-ピロリドン、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドンなどが挙げられる。
上記水溶性有機溶剤の沸点は、酸化チタン分散体を原料としてインクを作成した際のインクの乾燥性の観点から240℃以下が好ましく、220℃以下がさらに好ましく、200℃以下がさらに好ましい。
【0011】
<酸化チタン分散体>
本開示の酸化チタン分散体は、ルチル型酸化チタン(A)および水を含む。
本開示の酸化チタン分散体100質量部におけるルチル型酸化チタン(A)の含有量は、20質量部以上が好ましく、30質量部以上がより好ましく、40質量部以上がさらに好ましく、70質量部以下が好ましく、65質量部以下がより好ましく、60質量部以下がさらに好ましい。
本開示の酸化チタン分散体中の液相成分100質量部における水分量は、酸化チタン分散体生産時の安全性の観点から、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上が好ましい。
【0012】
本開示の酸化チタン分散体は、ルチル型酸化チタン(A)および水以外に、分散剤(B)(以下分散剤ともいう)を含んでいても良い。
本開示の分散剤(B)の酸価としては、分散安定性と導電率上昇抑制の観点から150mgKOH/g以下が好ましく、より好ましくは100mgKOH/g以下であり、さらに好ましくは50mgKOH/g以下である。本開示の分散剤(B)の下限値は特に限定されないが、5mgKOH/g以上であってよく、6mgKOH/g以上、7mgKOH/g以上であってもよい。
また、本開示の酸化チタン分散体に用いる分散体(B)としては、泡立ち抑制の観点から酸価が300mgKOH/g以上、450mgKOH/g以上、650mgKOH/g以上であっても良く、1000mgKOH/g以下、900mgKOH/g以下、800mgKOH/g以下であっても良い。
本開示の分散剤のpHとしては、5~11の分散剤を用いることが好ましいが、分散安定性の観点から7未満の酸性分散剤が好ましい。
本開示の分散剤はアニオン性基を有する重合体であってよい。
本開示の分散剤に含まれるアニオン性基としてはカルボキシル基、スルホ基、リン酸基が好ましく、中でもカルボキシル基がより好ましい。
本開示の分散剤としては、特に限定されないが、例としてはアクリル重合体、スチレンアクリル重合体、マレイン酸重合体、スチレンマレイン酸重合体、αオレフィンマレイン酸重合体、ウレタン重合体、エステル重合体、スルホン酸重合体、リン酸重合体等が挙げられる。中でもハードケーキ発生防止の観点からアクリル重合体、スチレンアクリル重合体が望ましい。
【0013】
さらに分散剤中にポリアルキレングリコール基を導入することでハードケーキ発生防止効果を向上させることが期待できる。ポリアルキレングリコール基としては、ポリプロピレングリコール基またはポリエチレングリコール基を分散剤中に含有することが好ましい。
上述したような酸価が150mgKOH/g以下である分散剤は公知の技術によって得ることが出来るが、市販もされておりいずれも使用することが出来る。市販品としては、ビックケミー・ジャパン社製のDisperbyk-102Disperbyk-111,Disperbyk-190、Disperbyk-191、Disperbyk-194N、Disperbyk-2010、Disperbyk-2012,Disperbyk-2015、エボニックジャパン社製のTEGO Dispers―715N、TEGO Dispers―750W、TEGO Dispers―755W、BASF社製のEfka6230等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。さらに分散剤中にポリアルキレングリコール基を含有し、酸価が150mgKOH/g以下である分散剤としては、ビックケミー・ジャパン社製のDisperbyk-190、Disperbyk-2015等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
本開示の酸価が300mgKOH/g以上である分散剤の市販品としては、和光純薬社製のポリアクリル酸の中和物、花王株式会社製のポイズ520、530等の特殊ポリカルボン酸の中和物、東亞合成株式会社製のアロン6012等の水溶性アクリル酸、日本触媒社製のアクアリックシリーズなどが挙げられる。
本開示の酸化チタン100質量部に対する分散剤の含有量は、分散安定性の観点から2質量部以上であり、2.2質量部以上が好ましく、2.5質量部以上がより好ましく、2.8質量部以上がさらに好ましく、抑泡性とインク化後の塗膜物性の観点から9質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましく、7質量部以下がさらに好ましく、6.5質量部以下が特に好ましい。
【0014】
<その他添加剤>
その他添加剤としては、消泡剤、可塑剤、レベリング剤、防カビ剤、防錆剤、艶消し剤、難燃剤、揺変剤、粘着付与剤、増粘剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、反応遅延剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤、耐候安定剤、タック防止剤などの添加剤を、適宜配合することができる。各種の添加剤の配合割合は、その目的および用途により適宜選択される。
本開示の消泡剤としては、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤、及びアセチレングリコール系消泡剤が挙げられる。これらの中でも、表面張力及び界面張力を適正に保持する能力に優れており、かつ、起泡を殆ど生じさせないため、シリコーン系消泡剤、アセチレングリコール系消泡剤が好ましい。
本開示の酸化チタン分散体100質量部に対する消泡剤の含有量は、抑泡制の観点から0.001質量部以上が好ましく、0.01質量部以上がより好ましく、0.05質量部以上がさらに好ましく、油膜上の浮き発生を抑制する観点から0.5質量部以下が好ましく、0.4質量部以下がより好ましく、0.3質量部以下がさらに好ましい。
【0015】
<酸化チタン分散体としての諸物性>
本開示の酸化チタン分散体のpHは、分散安定性の観点から5~10が好ましく、より好ましくは6~9であり、さらに好ましくは7~8であることが好ましい。
本開示の酸化チタン分散体の粘度は、高すぎるとビーズミルなどの分散処理効率が低下し、また水性白色インク原料として使用した際に水性白色インクの粘度が増大し印刷適正が低下する、また低すぎると比重が大きい酸化チタンの沈降速度が増大しハードケーキ発生してしまう懸念がある。これらの観点から、酸化チタン分散体の粘度としては、1~200mPa・s以下が好ましく、2~100mPa・s以上がより好ましく、5~50mPa・s以上がより好ましく、10~20mPa・s以上がより好ましい。
【0016】
本開示の酸化チタン分散体の25℃における粘度は、公知の手法によって測定することができ、具体的にはB型粘度計やE型粘度計などを用いて測定できる。
本開示の酸化チタン分散体における酸化チタンを含む粒子に関し、体積基準の累積粒度分布の微粒側から累積99%の粒子径をD99粒子径としたとき、好ましいD99粒子径の上限値は、酸化チタン分散体の沈降安定性の観点と、インクジェット用水性白色インクとして使用した際の吐出安定性の観点から800nm以下であることが好ましく、750nm以下であることがより好ましく、700nm以下であることがさらに好ましい。好ましいD99粒子径の下限値は、過剰なビーズミル処理による表面処理金属酸化物の脱落に起因する過分散増粘防止の観点から300nm以上が好ましく、350nm以上がより好ましく、400nm以上がさらに好ましい。
本開示の酸化チタン分散体における酸化チタンを含む粒子に関し、体積基準の累積粒度分布の微粒側から累積50%の粒子径をD50粒子径としたとき、D50粒子径は、大きすぎるとインクジェット用インク原料として使用した際にノズル詰まりの原因となり、小さすぎるとインクジェット用インク原料として使用した際に隠ぺい性が低下する。これらの観点からD50粒子径の上限値は500nm以下であることが好ましく、450nm以下であることがより好ましく、380nm以下であることがさらに好ましく、D50の下限値は150nm以上が好ましく、200nm以上がより好ましく、250nm以上がさらに好ましい。
本開示の酸化チタン分散体における粒度分布は、公知の手法によって測定することができ、具体的には動的散乱法やコールターカウンター法などにより測定することが出来、ISO 13319などに準拠した粒子径分布測定方法を用いても良い。
【0017】
本開示の酸化チタン分散体における直径1.0μm以上の粒子体積濃度としては、大きすぎるとインクジェット用インク原料として使用した際にノズル詰まりの原因となることから、200×10μm3/ml以下であることが好ましく、100×10μm/m以下lであることがより好ましく、50×10μm3/ml以下であることがさらに好ましい。
また、小さすぎると酸化チタン分散体の生産性が低下する可能性があることから、インクジェット用インク原料として使用した際のノズル詰まり抑制および生産性の観点において、酸化チタン分散体における直径1.0μm以上の粒子体積濃度としては、1×10~200×10μm3/mlであることが好ましく、3×10~100×10μm/mlであることがより好ましく、5×10~50×10μm3/mlであることがさらに好ましい。
本開示の酸化チタン分散体における直径1.0μm以上の粒子体積濃度は、公知の手法によって測定することができ、具体的にはコールターカウンター法などにより測定することが出来る。
【0018】
本開示の酸化チタン分散液における不揮発分の量は、印刷物とした際の隠蔽性や処理効率の観点から20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ましく、50質量%以上が特に好ましい。また酸化チタン分散体の粘度抑制の観点から80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましい。
本開示の酸化チタン分散液の不揮発分は、酸化チタン分散液全質量から、水、及び各種添
加剤に含まれる揮発成分質量を除く質量として算出してもよいし、酸化チタン分散液1gを秤量し、熱風乾燥機で150℃の温度で1時間乾燥させ、得られた残渣を不揮発分とし、式:
〔酸化チタン分散液における不揮発分量(質量%)〕
=(〔残渣の質量〕÷〔酸化チタン分散液1g〕)×100
に基づいて求めてもよい。
【0019】
<酸化チタン分散体の製造方法>
本開示の酸化チタン分散体は、酸化チタン、分散剤、水を用いて公知の手法を用いて分散することができる。分散方法としては、ボールミル、サンドミルやビーズミルなどのメディアを用いた分散装置を用いてもよく、メディアレス分散装置を用いてもよい。なお、分散方法として、分散体の目的顔料濃度の2倍程度の高顔料濃度状態で本分散を行い、分散体の抜き出し前に目的の顔料濃度まで分散媒で希釈する方法が有効である。高顔料濃度状態では、分散剤ポリマーに対する顔料の割合が増加し、分散剤ポリマーと顔料の接触回数が増大し、顔料に対する分散剤ポリマーの吸着が促進されることが期待される。
メディアを用いた分散装置における分散メディアとしては、分散性、及び分散効率の点から、ジルコニアビーズを用いることが好ましい。また、これらの分散方法は2種以上組み合わせて用いてもよい。
本開示の酸化チタン分散体の分散方法としては、ビーズミルを用いた分散装置が好ましい。
ビーズミルの材質としては、ジルコニア、チタニア等のセラミックス、ポリエチレン、ナイロン等の高分子材料、金属等が好ましく、摩耗性の観点からジルコニアが好ましい。
ビーズミルのビーズ径としては、0.01mm以上が好ましく、0.05mmm以上がより好ましく、0.07mm以上がさらに好ましく、1mm以下が好ましく、0.5mm以下がより好ましく、0.2mm以下がさらに好ましい。
【0020】
本開示の酸化チタン分散体の分散方式としては、循環方式と多重パス方式であってもよい。流通循環方式としては、タンクとメディア式分散機を設置し、配管により循環系を形成して循環パスさせる方法があり、多重パス方式としては、マザータンクと受けタンクとメディア式分散機を設置し、受けタンクからマザータンクに分散液を戻してパスさせる方法や、2槽のタンクとメディア式分散機を設置し、キャッチボール方式でパスさせる方法が挙げられるが、装置の簡便さの観点から流通循環方式が好ましい。メディア式分散機は必要な台数直列に配列して設置しても良い。
本開示の循環方式は、酸化チタン、分散剤、水を含む酸化チタン分散体をメディア分散機へ繰り返し流通循環させる流通循環方式が好ましい。
【0021】
<酸化チタン分散体を用いた水性白色インク>
本開示の酸化チタン分散体は、水性白色インク用原料として用いることもできる。
本開示の酸化チタン分散体を原料に用いた水性白色インク中に含まれるルチル型酸化チタン(A)の量は低すぎると隠ぺい性が低下し、高すぎるとインク粘度が増大し印刷適正が低下する。これらの観点から水性白色インク100質量部中に含まれるルチル型酸化チタンの量は1~25質量部が好ましく、3~20質量部がさらに好ましく、6~12質量部がより好ましい。
本開示の酸化チタン分散体を用いた水性白色インクにはバインダー樹脂が含まれる。換言すると、バインダー樹脂が含まれる酸化チタン分散体を、本明細書では白色インクとし、本明細書における水性白色インクとは、本開示の酸化チタン分散体とバインダー樹脂を含む組成物を意図する。
本開示の水性白色インク中に含まれる、ルチル型酸化チタンに対するバインダー樹脂の量(ルチル型酸化チタンの質量/バインダー樹脂の不揮発分の質量)は、低すぎると隠ぺい性が低下する、高すぎると塗膜の耐擦過性と光沢が低下する。これらの観点から2/10~6/1が好ましく、5/10~2/1がより好ましく、6/10~1/1がさらに好ましい。
【0022】
バインダー樹脂の不揮発分量は、カタログ等の記載値を参照してもよいし、バインダー樹脂、及び各種添加剤に含まれる揮発成分質量を除く質量として算出してもよいし、バインダー樹脂を含む水分散性樹脂1gを秤量し、熱風乾燥機で110℃の温度で1時間乾燥させ、得られた残渣を不揮発分とし、式:
〔水分散性樹脂における不揮発分量(質量%)〕
=(〔残渣の質量〕÷〔水分散性樹脂1g〕)×100
に基づいて求めてもよい。
本開示の酸化チタン分散体を原料に用いた水性白色インク中に、塗膜の耐擦過性や基材への密着性を向上させるためのバインダー樹脂として含有する水分散性樹脂の種類は特に限定されないが、塗膜の耐擦過性や基材への密着性を向上させる観点から、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、ウレタン樹脂が好ましい。中でもプラスチックなどの難吸収性基材への密着性向上の観点からアクリル樹脂が好ましく、特に二軸延伸ポリプロピレン(OPP)などの難密着性オレフィン系基材へプライマー印刷等無しでも良好な密着性を得る観点から、環状脂肪族基含有単量体由来の構造単位を有する重合体を含む水分散性樹脂であることがより好ましい。
本開示の水分散性樹脂は単層の樹脂エマルション粒子でもよく、複数層を有する樹脂エマルション粒子であっても良い。
【0023】
本開示の環状脂肪族基含有単量体としては、炭素炭素二重結合を有する単量体が好ましく、環状脂肪族炭化水素基を有する(メタ)アクリレート単量体などが挙げられる。
環状脂肪族炭化水素基を有する(メタ)アクリレート単量体としては、好ましくは一価の環状脂肪族炭化水素基および一価の(メタ)アクリレート基を有する化合物であり、一価の環状脂肪族炭化水素基と一価の(メタ)アクリレート基は、直接に結合している。環状脂肪族炭化水素基としては、単環基、多環基、橋かけ環基などが挙げられる。環状脂肪族炭化水素基の炭素数は4~20であることが好ましい。環状脂肪族炭化水素基としては、炭素数4~20、特に5~12の環状脂肪族基であることが好ましい。環状脂肪族炭化水素基の炭素数は、15以下、例えば10以下であることが特に好ましい。環状脂肪族炭化水素基の環における炭素原子が、(メタ)アクリレート基におけるエステル基に直接に結合することが好ましい。環状脂肪族炭化水素基の具体例は、シクロヘキシル基、t-ブチルシクロヘキシル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基である。(メタ)アクリレート基は、アクリレート基またはメタアクリレート基であるが、メタクリレート基が好ましい。
環状脂肪族炭化水素基を有する単量体の具体例としては、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等が挙げられ、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートが好ましく、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートがより好ましい。
これらの環状脂肪族基含有単量体は、単独または数種類混合して使用することができる。
本開示の環状脂肪族基含有単量体由来の構造単位を有する重合体100質量部中の環状脂肪族炭化水素基を有する単量体由来の構造単位の含有量は密着性の観点から30質量部以上であってよく、35質量部以上が好ましく、40質量部以上がより好ましく、45質量部以上がさらに好ましく、95質量部以下であってよく、90質量部以下が好ましく、85質量部以下がより好ましい。
本開示のバインダー樹脂として環状脂肪族基含有単量体由来の構造単位を有する重合体を含む水分散性樹脂を用いた際には、水性白色インク100質量部中の環状脂肪族炭化水素基を有する単量体由来の構造単位の含有量は密着性の観点から30質量部以上であってよく、35質量部以上が好ましく、40質量部以上がより好ましく、45質量部以上がさらに好ましく、95質量部以下であってよく、90質量部以下が好ましく、85質量部以下がより好ましい。
【0024】
本開示の環状脂肪族基含有単量体由来の構造単位を有する重合体は、環状脂肪族基含有単量体由来の構造単位以外のその他単量体由来の構造単位を有していてもよい。
その他単量体由来の構造単位とは、下記に記載するその他単量体を重合することにより形成された構造単位に限定されず、例えば重合後の後反応により形成された構造単位であってもよい。
その他単量体としては、単官能単量体および多官能単量体が挙げられる。単官能単量体および多官能単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、併用してもよい。
単官能単量体としては、直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、分岐状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、酸基含有単量体、水酸基含有(メタ)アクリレート、オキソ基含有単量体、フッ素原子含有単量体、窒素原子含有単量体、エポキシ基含有単量体、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、シラン基含有単量体、カルボニル基含有単量体、アジリジニル基含有単量体、スチレン系単量体、アラルキル(メタ)アクリレート、付加重合性オキサゾリンなどが挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0025】
本開示の水性白色インクとしては、架橋剤を含んでいても良い。
本開示の架橋剤としては、酸基(特にカルボキシル基)と反応する官能基を有していることが好ましい。酸基(特にカルボキシル基)と反応する官能基としては、オキサゾリン基、エポキシ基、カルボジイミド基、イソシアネート基、シラン基などが挙げられ、オキサゾリン基、エポキシ基、カルボジイミド基、イソシアネート基、が好ましく、オキサゾリン基、カルボジイミド基がより好ましく、貯蔵安定性および低温乾燥後の塗膜強度の観点よりカルボジイミド基がさらに好ましい。
本明細書における低温とは120℃以下であってよく、110℃以下であってよく、100℃以下であってよい。
本開示の架橋剤としては、具体的にはオキサゾリン基含有化合物、エポキシ基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物、イソシアネート基含有化合物、シラン基含有化合物などが挙げられる。これらの架橋剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの架橋剤のなかでは、本開示の水性白色インクの耐水性、貯蔵安定性及び画像均一性を向上させる観点から、オキサゾリン基含有化合物、エポキシ基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物が好ましく、オキサゾリン基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物がより好ましく、貯蔵安定性および低温時の架橋性の観点よりカルボジイミド基含有化合物がさらに好ましい。本開示の架橋剤は、それぞれ単独で用いても良く、2種類以上を混合して用いても良い。
【0026】
本開示のオキサゾリン基含有化合物としては、例えば、2,2’-ビス(2-オキサゾリン)、2,2’-メチレン-ビス(2-オキサゾリン)、2,2’-エチレン-ビス(2-オキサゾリン)、2,2’-トリメチレン-ビス(2-オキサゾリン)、2,2’-テトラメチレン-ビス(2-オキサゾリン)、2,2’-ヘキサメチレン-ビス(2-オキサゾリン)、2,2’-オクタメチレン-ビス(2-オキサゾリン)、2,2’-エチレン-ビス(4,4’-ジメチル-2-オキサゾリン)、2,2’-p-フェニレン-ビス(2-オキサゾリン)、2,2’-m-フェニレン-ビス(2-オキサゾリン)、2,2’-m-フェニレン-ビス(4,4’-ジメチル-2-オキサゾリン)、ビス(2-オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィド、ビス(2-オキサゾリニルノルボルナン)スルフィド、オキサゾリン環含有重合体などが挙げられる。オキサゾリン基含有化合物としては、例えば、(株)日本触媒製、商品名:エポクロスWS-500、エポクロスWS-700、エポクロスWS-700、エポクロスK-2010、エポクロスK-2020、エポクロスK-2030等の市販品が挙げられる。
本開示のエポキシ基含有化合物としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル等のポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
本開示のカルボジイミド基含有化合物としては、例えば、芳香族カルボジイミド化合物、脂肪族カルボジイミド化合物等が挙げられる。本開示のカルボジイミド基含有化合物としては、カルボジライトSV-02、カルボジライトV-02、カルボジライトV-02-L2、カルボジライトV-04、カルボジライトV-06、カルボジライトV-10、カルボジライトSW-12G、カルボジライトE-02、カルボジライトE-05(いずれも商品名)等の市販品が挙げられる。
本開示のイソシアネート基含有化合物としては、例えば、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、前記芳香族ポリイソシアネートの水素添加物などの脂肪族または脂環族ポリイソシアネート、これらのポリイソシアネートの2量体または3量体、これらのポリイソシアネートとトリメチロールプロパンなどのポリオールとからなるアダクト体などが挙げられる。これらのイソシアネート基含有化合物は、それぞれ単独でまたは2種類以上を併用することができる。また、イソシアネート基含有化合物として、ポリイソシアネート化合物における活性なイソシアネート基をフェノールなどのブロック剤とあらかじめ反応させて不活性化したブロックイソシアネート化合物を用いても良い。ブロックイソシアネート化合物を使うと本開示の水性白色インクやそれを使ったインクの貯蔵安定性を向上させる事が出来る。
本開示のシラン基含有化合物としては、例えば、ビス-(3-トリエトキシシリルプロピル)-テトラスルファン、ビス-(3-トリエトキシシリルプロピル)-ジスルファン、エトキシシロキサンオリゴマー等のアルコキシシラン化合物や、それらアルコキシシラン化合物の加水分解物等が挙げられる。
本開示のイソシアネート基含有化合物は、例えば、「コロネートL」、「コロネートHX」、「コロネートHL」、「コロネートHL-S」、「コロネート2234」、「アクアネート105」、「アクアネート130」、「アクアネート140」、「アクアネート200」、「アクアネート210」〔以上、東ソー(株)製、「コロネート」および「アクアネート」は登録商標〕、「デスモジュールN3400」〔住友バイエルウレタン(株)(現バイエルA.G.社)製、「デスモジュール」は登録商標)、「デュラネートD-201」、「デュラネートTSE-100」、「デュラネートTSS-100」、「デュラネート24A-100」、「デュラネートE-405-80T」「デュラネートWB40-100」、「デュラネートWB40-80D」、「デュラネートWT20-100」、「デュラネートWT30-100」、「デュラネートWT31-100」、「デュラネートWL70-100」、「デュラネートWR80-70P」、「デュラネートWE50-100」、「デュラネートWM44-L70G」〔以上、旭化成ケミカルズ(株)製、「デュラネート」は登録商標〕、「タケネートD-110N」、「タケネートD-120N」、「タケネートM-631N」、「MTERT-オレスターNP1200」〔以上、三井化学ポリウレタン(株)製、「タケネート」および「オレスター」は登録商標)等の市販品が挙げられる。
【0027】
本開示の架橋剤に含まれる官能基は、複数有していても良い。本開示の架橋剤に含まれる官能基の量としては、100g/mol以上が好ましく、150g/mol以上がより好ましく、200g/mol以上がさらに好ましく、700g/mol以下が好ましく、650g/mol以下がより好ましく、600g/mol以下がさらに好ましい。
本開示の架橋剤に含まれる官能基としては、オキサゾリン基、エポキシ基、カルボジイミド基、イソシアネート基、シラン基等が挙げられる。
本開示の水性白色インク100質量部における架橋剤の含有量は、吐出安定性、貯蔵安定性、画像均一性、水性白色インクにおけるルチル型酸化チタン(A)の沈降防止の観点から0.01質量部以上であってよく、0.05質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましく、10質量部以下であってよく、8質量部以下が好ましく、6質量部以下がより好ましい。
【0028】
本開示の水性白色インクにおいて、バインダー樹脂と架橋剤の質量比は、密着性、耐スクラッチ性、耐ブロッキング性、画像均一性の観点から、99/1~60/40であってよく、99/1~65/35が好ましく、95/5~70/30がより好ましい。
本開示の水性白色インクはさらにワックス成分を含有しても良い。ワックス成分を含有することで耐スクラッチ性、耐水性、密着性をさらに向上させることが期待できる。
本開示のワックス成分は、天然ワックス、合成ワックスを挙げることができる。
天然ワックスとしては、石油系ワックス、植物系ワックス、動植物系ワックスなどを挙げることができる。石油系ワックスとしては、パラフィン系ワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムなどを挙げることができる。植物系ワックスとしては、カルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、木ロウなどを挙げることができる。動植物系ワックスとしては、ラノリン、みつろうなどを挙げることができる。
合成ワックスとしては、合成炭化水素系ワックス、変性ワックスなどを挙げることができる。合成炭化水素系ワックスとしては、ポリオレフィン系ワックス、(メタ)アクリル系ワックス、フィッシャー・トロプシュワックスなどを挙げることができる。変性ワックスとしては、パラフィンワックス誘導体、モンタンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体などを挙げることができる。密着性、耐スクラッチ性向上の観点から、ポリオレフィン系ワックス、(メタ)アクリル系ワックスが好ましい。
(メタ)アクリル系ワックスとしては特に限定されるものではなく、例えば、炭素数10以上のアルキル基を有するモノマーを用いて製造されたものであってよく炭素数10以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーとして(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、またはその誘導体から製造されたポリマー等が挙げられる。
(メタ)アクリル系ワックスとしては、市販品を用いることもできる。好ましい市販品としては、日本触媒社製のST100、ST200等、が挙げられる。
【0029】
ポリオレフィン系ワックスとしては、特に限定されるものではなく、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン等のオレフィンまたはその誘導体から製造されたワックスおよびそのコポリマー、具体的には、ポリエチレン系ワックス、ポリプロピレン系ワックス、ポリブチレン系ワックス、エチレンとメタクリル酸あるいはアクリル酸等のカルボン酸基を有するモノマーからなる共重合体ワックス、酸化ポリエチレンワックス等が挙げられる。これらの中でも、密着性、耐スクラッチ性向上の観点から、ポリエチレン系ワックス、ポリプロピレン系ワックス、エチレンとメタクリル酸あるいはアクリル酸等のカルボン酸基を有するモノマーからなる共重合体ワックス、酸化ポリエチレンワックスが好ましい。
本開示の酸化ポリエチレンワックスは、ポリエチレンワックスを酸化処理したものであり、ポリエチレン由来の骨格(ポリエチレン骨格)を有している。ポリエチレン骨格は、主として、エチレンに由来する構造単位を有している。ポリエチレン骨格は、ホモポリエチレン(エチレンの単独重合体)骨格であってよく、ブロックポリエチレン(エチレンと他のオレフィンとのブロック共重合体)骨格であってもよく、ランダムポリエチレン(エチレンと他のオレフィンとのランダム共重合体)骨格であってもよい。他のオレフィンとしては、例えばプロピレン、イソブチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン等のアルケンが挙げられる。これらの成分は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。他のオレフィン成分の炭素数は、例えば、2~6である。
ポリエチレン骨格におけるエチレン成分の含有量(エチレンに由来する構造単位の含有量)は、例えば60モル%以上であり、70モル%以上であってもよい。ポリエチレン骨格がブロックポリエチレン骨格又はランダムポリエチレン骨格である場合、ポリエチレン骨格におけるエチレン成分の含有量(エチレンに由来する構造単位の含有量)は、例えば95モル%以下であり、90モル%以下であってもよい。
酸化ポリエチレンワックスは、より優れた密着性、耐スクラッチ性が得られる観点から、好ましくは高密度酸化ポリエチレンワックスを含む。
酸化ポリエチレンワックスとしては、市販品を用いることもできる。好ましい市販品としては、BYK社製のAQUACER497、AQUACER515、AQUACER531、AQUACER1547等、が挙げられる。
ワックス成分は、1種単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
本開示のワックス成分は固体ワックス粒子を溶媒中に溶解又は分散した状態のものを用いることが好ましく、溶媒中に分散したエマルションの状態のものを用いることがより好ましい。上記溶媒は、水性媒体であることが好ましく、水性インク組成物の溶媒に用いられる水性媒体と同じ水性媒体であることがより好ましい。
【0030】
本開示のワックス粒子の体積平均粒子径(nm)は、25nm以上500nm以下であることが好ましく、30nm以上400nm以下であることがさらに好ましい。ワックス粒子の体積平均粒子径は、
特に限定されないが動的光散乱法、レーザー回折/散乱法、コールターカウンター、顕微鏡法等によって測定する事が出来る。
本実施例記載の平均粒子径は、動的光散乱法による粒子径測定装置である多検体ナノ粒子径測定システム〔大塚電子(株)製、商品名:nanoSAQLA〕を用い、光子相関法で自己相関関数を求め、キュムラント解析によって求めた平均粒子径(流体力学的径)である。
本開示のワックス成分の融点は、密着性の観点から、20℃以上が好ましく、25℃以上がより好ましく、30℃以上がさらに好ましく、150℃以下が好ましく、140℃以下がより好ましく、130℃以下がさらに好ましい。ワックス成分(B)の融点(Tm)は、JIS K 0064に準拠した融点測定装置などによって測定することができる。
本開示のワックス成分の酸価(mgKOH/g)は、密着性の観点から、合っても無くても良く、0mgKOH/gが好ましく、100mgKOH/g以下が好ましく、90mgKOH/g以下がより好ましく、80mgKOH/g以下がさらに好ましい。
本開示の水性白色インク100質量部におけるワックス成分の含有量は、吐出安定性、貯蔵安定性の観点から0.01質量部以上であってよく、0.05質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましく、8質量部以下であってよく、6質量部以下が好ましく、4質量部以下がより好ましい。
【0031】
本開示の水性白色インクは、なお、水性白色インクにおけるインク粘度、印刷する記録媒体への濡れ広がりの制御、画質向上、吐出安定性の観点から、当該水性白色インクには、水をはじめ水溶性有機溶媒を含有させてもよい。水溶性有機溶媒としては、例えば、プロピレングリコール、1,3プロパンジオール、グリセリン、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等のグリコール;モノエチレングリコールモノメチルエーテル、モノエチレングリコールモノエチルエーテル、モノエチレングリコールモノプロピルエーテル、モノエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、モノエチレングリコールモノブチルエーテル、モノエチレングリコールモノイソブチルエーテル等のモノエチレングリコールのエーテル;モノプロピレングリコールモノメチルエーテル、モノプロピレングリコールモノエチルエーテル、モノプロピレングリコールモノプロピルエーテル、モノプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、モノプロピレングリコールモノブチルエーテル、モノプロピレングリコールモノイソブチルエーテル等のモノプロピレングリコールのエーテル;ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのポリエチレングリコール(EO付加モル数=2~10、好ましくは2~4)のモノメチルエーテル、ポリエチレングリコール(EO付加モル数=2~10、好ましくは2~4)のモノエチルエーテル、ポリエチレングリコール(EO付加モル数=2~10、好ましくは2~4)のモノプロピルエーテル、ポリエチレングリコール(EO付加モル数=2~10、好ましくは2~4)のモノイソプロピルエーテル、ポリエチレングリコール(EO付加モル数=2~10、好ましくは2~4)のモノブチルエーテル、ポリエチレングリコール(EO付加モル数=2~10、好ましくは2~4)のモノイソブチルエーテル等のポリエチレングリコールのエーテル;ポリプロピレングリコール(EO付加モル数=2~10、好ましくは2~4)のモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール(EO付加モル数=2~10、好ましくは2~4)のモノエチルエーテル、ポリプロピレングリコール(EO付加モル数=2~10、好ましくは2~4)のモノプロピルエーテル、ポリプロピレングリコール(EO付加モル数=2~10、好ましくは2~4)のモノイソプロピルエーテル、ポリプロピレングリコール(EO付加モル数=2~10、好ましくは2~4)のモノブチルエーテル、ポリプロピレングリコール(EO付加モル数=2~10、好ましくは2~4)のモノイソブチルエーテル等のポリプロピレングリコールのエーテルが挙げられる。これらの中でも、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、モノエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、モノプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましい。これらの有機溶剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0032】
水溶性有機溶媒の量は、水性白色インクに含まれる着色剤の種類およびその量などによって異なるので一概には決定することができないことから、水性白色インクに含まれる着色剤の種類およびその量などに応じて適宜決定することが好ましい。
例えば着色剤に白色顔料を含む場合であれば、水性白色インク100質量中の有機溶剤の量は、印刷する記録媒体への濡れ広がりの制御と画質を向上させる観点から5質量部以上であってよく、8質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、50質量部以下であってよく、45質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましい。
本開示の水性白色インクは、前記水性インク用樹脂エマルションおよび着色剤を含有するものであるが、本発明の目的が阻害されない範囲内で、前記水性インク用樹脂エマルション以外の樹脂エマルション、水溶性樹脂、水分散性樹脂などの樹脂が含まれていてもよい。また、本開示の水性白色インクには、本発明の目的が阻害されない範囲内で、例えば、界面活性剤、成膜助剤、紫外線吸収剤、紫外線防止剤、充填剤、レベリング剤、分散剤、増粘剤、湿潤剤、可塑剤、安定剤、酸化防止剤、ワックスなどの添加剤が適量で含まれていてもよい。
【0033】
本開示の水性白色インクにおける直径1.0μm以上の粒子体積濃度としては、大きすぎるとインクジェット用インクとして使用した際にノズル詰まりの原因となることから、400×10μm3/ml以下であることが好ましく、200×10μm/m以下lであることがより好ましく、100×10μm3/ml以下であることがさらに好ましい。
また、小さすぎると白色インクの生産性が低下する可能性があることから、インクジェット用インクとして使用した際のノズル詰まり抑制および生産性の観点において、水性白色インクにおける直径1.0μm以上の粒子体積濃度としては、2×10~400×10μm3/mlであることが好ましく、6×10~200×10μm/mlであることがより好ましく、10×10~100×10μm3/mlであることがさらに好ましい。
本開示の水性白色インクにおける直径1.0μm以上の粒子体積濃度は、公知の手法によって測定することができ、具体的にはコールターカウンター法などにより測定することが出来る。
【0034】
<本開示の酸化チタン分散体を原料に用いた水性白色インクの用途と基材>
以上のようにして得られる本開示の水性白色インクは、密着性に優れると共に、耐引っ掻き傷性に優れているので、例えば、インクジェット用水性インク、フレキソ印刷用インク、オフセット印刷用インク、リソグラフ印刷用インク、グラビア印刷用インク、スクリーン印刷用インクなどのインク、なかでも特にインクジェット用水性インクとして好適に使用することができる。
本開示の水性白色インクは、例えば、インクジェット記録装置などを用いて水性インクを記録媒体上に所定のパターンで吐出することにより、所定のパターンを有する印字または画像を形成することができる。
記録媒体としては、例えば、紙をはじめ、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの樹脂フィルムが積層された紙(コート紙など)、アルミニウム、亜鉛、銅などの金属板、セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、オレフィン系樹脂、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ナイロン、アクリル樹脂などの樹脂フィルム、金属被膜を有する紙、金属被膜を有する樹脂フィルムなどが挙げられる。本開示の水性インクを印字する記録媒体としては樹脂フィルムが好ましく、中でもポリエチレンテレフタレート、オレフィン系樹脂への適用が好ましい。
オレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンが挙げられ、特に二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)、無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)等のポリプロピレンへの適用が好ましい。
本開示の水性白色インクは、樹脂フィルム上に形成されることが好ましく、その態様は樹脂フィルムの水性インクから形成された印刷層を有する積層体である。
開示の積層体は、樹脂フィルムと印刷層の間にプライマー層を有しても良いし、有さなくても良いが、生産性の観点から有さないことが好ましく、樹脂フィルムに直接印刷層を形成することが好ましい。本開示の積層体は樹脂フィルム、印刷層の順に積層され、印刷層上に保護膜(ラミネート層)を有しても良いし、有さなくても良いが、生産性の観点から有さないことが好ましく、本開示の水性インクを用いることにより、プライマー層や保護膜(ラミネート層)を有さなくても基材への密着性に優れると共に耐引っ掻き傷性も良好な積層体が得られることが期待できる。
【実施例0035】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
<ルチル型酸化チタンのX線回折測定>
XRD測定は、全自動水平型X線回折装置(リガク社製、SMART LAB)を用いて、以下の条件により行った。
CuKα1線:0.15406nm
走査範囲:10°-90°
X線出力設定:45kV-200mA
ステップサイズ:0.020°
スキャン速度:0.5°min-1-4°min-1
<ルチル型酸化チタンの1次粒子径の測定>
走査型電子顕微鏡観察から算出した。
【0036】
<ルチル型酸化チタン中に含まれる各元素質量部量の測定>
ルチル型酸化チタン中に含まれる各元素質量部の測定はRIGAKU社製ZSX Primus IIを用いた蛍光X線測定(XRF;X-ray Fluorescence)により実施した。
<酸化チタン分散体及び水性白色インクのD50粒子径、D99粒子径、1μm以上の粒子体積濃度>
ベックマン・コールター株式会社製Multisizer4eを用いて体積基準の粒子径を評価した。
<酸化チタン分散体の沈降安定性測定>
沈降安定性;試料50gを100ccのポリ容器に入れ50℃にて3か月間静置した後に、
〇;容器を軽く振盪した際に液面上澄み部と容器底部で不揮発分濃度の差が0.1%未満になる
×; 容器を軽く振盪した際に液面上澄み部と容器底部で不揮発分濃度の差が0.1%以上になる
【0037】
[実施例1]
<酸化チタン分散体>
250mLのポリ容器に純水40.77部、分散剤としてDisperbyk-190(ビックケミー・ジャパン社製、ポリアルキレングリコール基含有アクリル系水溶性樹脂、酸価10mgKOH/g、有効成分濃度40%)4.13部、ルチル型酸化チタンとして酸化チタンA(1次粒子径250nm)55.00部、消泡剤としてオルフィンD10―PG 0.10部(日信化学工業社製、アセチレン系界面活性剤)を投入した。続けて分散メディアとして直径0.1mmジルコニアビーズを100g投入した。ポリ容器を密閉し300分ペイントシェイカー処理した後に、ジルコニアビーズを目開き7umの紙製濾紙で吸引ろ過することでルチル型酸化チタン濃度55質量%の酸化チタン分散体1を得た。
酸化チタン分散体1における直径1.0μm以上の粒子体積濃度は、50×10μm/ml以下であった。
【0038】
<水分散性樹脂>
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に、脱イオン水520部を仕込んだ。滴下ロートに、脱イオン水163部、乳化剤[(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソーブSR-10]の25%水溶液80部、シクロヘキシルメタクリレート322部、2-エチルヘキシルアクリレート103部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート75部からなる1段目滴下用プレエマルションを調製し、そのうち全単量体成分の総量の5%にあたる74部をフラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら70℃まで昇温し、5%過硫酸アンモニウム水溶液30部を添加し、重合を開始した。その後、滴下用プレエマルションの残部を120分間にわたりフラスコ内に均一に滴下した。
【0039】
滴下終了後、フラスコの内容物を70℃で60分間維持し、引き続いて、脱イオン水163部、乳化剤[(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソーブSR-10]の25%水溶液80部、シクロヘキシルメタクリレート310部、2-エチルヘキシルアクリレート105部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート75部および4-(メタ)アクリロイルオキシ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン〔(株)ADEKA製、商品名:アデカスタブLA-82〕10部からなる2段目滴下用プレエマルションと5%過硫酸アンモニウム水溶液30部を120分間にわたって均一にフラスコ内に滴下した。
【0040】
滴下終了後、フラスコの内容物を70℃で60分間維持し、25%アンモニア水を添加することによってpHを8に調整し、重合を終了した。得られた反応液を室温まで冷却した後、300メッシュの金網で濾過することにより、水性分散体を調製した。得られた水性分散体は重合体を含み、得られた重合体は樹脂エマルションであり、内層および外層を有する2層構造のエマルション粒子である。この水性分散体における不揮発分の含有率は50%であり、重合体のカルボキシル基由来の酸価は0mgKOH/g、エマルションに含まれている樹脂エマルション粒子を構成している内層の樹脂のガラス転移温度は32℃であり、外層樹脂のガラス転移温度は32℃であった。最低増膜温度は40℃であり、平均粒子径は150nmであった。
【0041】
<水性白色インク>
純水24.5部、水溶性有機溶媒としてプロピレングリコール15.0部、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル5.0部、上記酸化チタン分散体1を20.0部、バインダー樹脂として製造例1で得られた水分散性樹脂35部、界面活性剤としてKF-6011(信越化学工業株式会社製、PEG-11メチルエーテルジメチコン(ポリエーテル変性シリコーン界面活性剤)0.5部をホモディスパーにて1000rpmで混合し、3μmのフィルター[アドバンテック社製、MCP-3-C10S]で濾過することで水性白色インク1を得た。
【0042】
[実施例2~10、比較例1~6]
1次粒子径230~290nmのルチル型酸化チタンの種類を表1に従い変更した以外は実施例1と同様の手法で酸化チタン分散体2~10、水性白色インク2~10、比較酸化チタン分散体1~6、比較水性白色インク2~10を調製した。いずれの白色インクも粘度はインクジェットインクとして適用可能な12mPa・s未満であった。
実施例1~10、比較例1~6に用いた酸化チタンの物性および分散剤の種類と量、酸化チタン分散体、および酸化チタン分散体を原料とした水性白色インクの貯蔵安定性測定結果を表1及び表2に示す。
なお、実施例1~10に用いた酸化チタン分散体における直径1.0μm以上の粒子体積濃度は、50×10μm/ml以下であり、実施例1~10記載の水性白色インクにおける直径1.0μm以上の粒子体積濃度は、100×10μm/ml以下であった。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
なお、各表に記載の略号は、以下のことを意味する。
BYK-190;ビックケミー・ジャパン社製、ポリアルキレングリコール基含有アクリル系水溶性樹脂、酸価10mgKOH/g、有効成分濃度40%
HPD196;BASF社製アクリル系水溶性ポリマー分散剤、酸価200mgKOH/g、分子量(MW)9200、有効成分濃度36%
HL415-NH3;日本触媒社製ポリアクリル酸水溶液アクアリックHL415を和光純薬社製25%アンモニア水溶液でpH7.5に調整した水溶性ポリマー分散剤、酸価750mgKOH/g、分子量(MW)11700、有効成分濃度39%
実施例1~10の組成を有する酸化チタン分散体は、優れた沈降安定性を示した。加えて実施例1~10の組成を有する水性白色インクもまた沈降が速い低粘度であるにも関わらず優れた沈降安定性を示した。
一方で本発明の範囲外である比較例1~6の組成を有する酸化チタン分散体、および水性白色インクは、酸化チタンの沈降により沈降安定性に劣るものであった。