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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054483
(43)【公開日】2024-04-17
(54)【発明の名称】水性白色インク
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/322 20140101AFI20240410BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240410BHJP
   C09D 11/037 20140101ALI20240410BHJP
   B41M 5/00 20060101ALN20240410BHJP
【FI】
C09D11/322
B41J2/01 501
C09D11/037
B41M5/00 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160719
(22)【出願日】2022-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(72)【発明者】
【氏名】奥岡 晋一
(72)【発明者】
【氏名】今泉 直樹
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EE18
2C056FC01
2C056FC02
2H186FA07
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB22
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB48
2H186FB56
4J039AB12
4J039AD01
4J039AD09
4J039AE11
4J039BA13
4J039BA35
4J039BC10
4J039BC13
4J039BE01
4J039BE22
4J039CA06
4J039EA18
4J039EA36
4J039EA38
4J039EA43
4J039EA46
4J039FA02
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】本発明は、沈降安定性に優れ、印刷後の塗膜強度が良好である水性白色インクを提供することを目的とする。
【解決手段】白色顔料(A)、水不溶性重合体(B)及び水溶性重合体(C)を含む水性白色インクであって、白色顔料(A)と水不溶性重合体(B)の質量比(白色顔料(A)の質量/水不溶性重合体(B)の質量)が1.0未満であり、水溶性重合体(C)と白色顔料(A)の質量比(水溶性重合体(C)の質量/白色顔料(A)の質量)が0.015超1.0未満であり、水溶性重合体(C)の酸価が150mgKOH/g以下である水性白色インクである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
白色顔料(A)、水不溶性重合体(B)及び水溶性重合体(C)を含む水性白色インクであって、
白色顔料(A)と水不溶性重合体(B)の質量比(白色顔料(A)の質量/水不溶性重合体(B)の質量)が1.0未満であり、
水溶性重合体(C)と白色顔料(A)の質量比(水溶性重合体(C)の質量/白色顔料(A)の質量)が0.015超0.1未満であり、
水溶性重合体(C)の酸価が150mgKOH/g以下である水性白色インク。
【請求項2】
前記水溶性重合体(C)が分散剤である請求項1に記載の水性白色インク。
【請求項3】
前記白色顔料(A)がルチル型酸化チタンである請求項1に記載の水性白色インク。
【請求項4】
水性白色インク100質量部あたりの白色顔料(A)の含有量が2質量部以上25質量部以下である請求項1に記載の水性白色インク。
【請求項5】
水不溶性重合体(B)が環状脂肪族基含有単量体由来の構造単位を有する請求項1に記載の水性白色インク。
【請求項6】
更に架橋剤を含む請求項1に記載の水性白色インク。
【請求項7】
更にワックス成分を含む請求項1に記載の水性白色インク。
【請求項8】
請求項1に記載の水性白色インクを用いて得られる印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性白色インクに関する。本発明の水性白色インクは、特にインクジェット用インクとして好適に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
インクは、溶媒の主成分として有機溶媒が用いられている有機溶媒系インクと溶媒の主成分として水が用いられている水性インクとの2種類のインクに大別される。
有機溶媒系インクは、人体に対する安全性に劣るとともに有機溶媒に基づく臭気が発生するため、近年、水性溶媒を用いた水性インクが着目されている。
さらに近年、多品種小ロットの印刷に対応するために製版不要なデジタル印刷方式である、インクジェット記録装置が使用されるようになってきている。
水性インクジェット用白色インクに用いる着色剤には無機顔料であるルチル型酸化チタンが多く用いられ、ルチル型酸化チタンを高濃度で含有する酸化チタン分散体(酸化チタンペースト、酸化チタンスラリーともいう)を調製し、当該酸化チタン分散体に水溶性有機溶剤、樹脂分散液、添加剤、水などを混合して白色インクを製造する方法が採用されている。
例えば特許文献1にはルチル型酸化チタンとポリマー分散剤を含有する水性インクにおいて、アニオン性基含有モノマー由来の構成成分を72質量%以上含む高酸価分散剤を使用することで再分散時の起泡が起こりにくい抑泡性に優れた水性白色インクを得ることができると示されている。
また、特許文献2には少なくとも水、酸化チタン、顔料分散剤、有機溶剤を含有する水性インクジェットインキにおいて、前記酸化チタンが有機化合物により顔料表面が処理されたものであり、さらに前記酸化チタンの顔料表面の塩基量が28μmol/g以上であり、さらに前記顔料分散剤が、酸価が5mgKOH/g以上150mgKOH/g以下である酸性分散剤であり、さらに前記有機溶剤として沸点が200℃以上265℃以下かつ表面張力が20mN/m以上30mN/m以下である有機溶剤を少なくとも1種以上含有することを特徴とする、水性インクジェットインキが、吸収性の低い基材上での印刷適性や吐出安定性に優れ、保存安定性、沈降性、隠蔽性などのインキ物性に優れることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許6881836号
【特許文献2】特開2015-124348号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1の水性白色インク及びその原料である酸化チタン分散体は、起泡性の少ない分散剤に関する発明であるが、高酸価の分散剤を用いた際には、印刷後の塗膜強度に課題があることがわかった。
また、特許文献2記載の水性白色インクの白色顔料の沈降安定性と塗膜強度をより向上させることが求められていた。
本発明の目的は、沈降安定性に優れ、印刷後の塗膜強度が良好である水性白色インクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明者らは、上記のような問題点に鑑み検討を行い、白色顔料(A)、水不溶性重合体(B)及び水溶性重合体(C)を含む水性白色インクであって、白色顔料(A)と水不溶性重合体(B)の質量比(白色顔料(A)の質量/水不溶性重合体(B)の質量)が1.0未満であり、水溶性重合体(C)と白色顔料(A)の質量比(水溶性重合体(C)の質量/白色顔料(A)の質量)が0.015超1.0未満であり、水溶性重合体(C)の酸価が150mgKOH/g以下である水性白色インクが、沈降安定性に優れ、印刷後の塗膜強度が良好であることを見出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、沈降安定性に優れ、印刷後の塗膜強度が良好である水性白色インクが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示の水性白色インクは、白色顔料(A)、水不溶性重合体(B)及び水溶性重合体(C)を含む。
【0008】
<白色顔料(A)>
本開示の白色顔料(A)としては、特に限定はなく公知の無機白色顔料を使用できる。例えば、アルカリ土類金属の硫酸塩、炭酸塩、微粉ケイ酸、合成珪酸塩、等のシリカ類、ケイ酸カルシウム、アルミナ、アルミナ水和物、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、クレイ等があげられる。また、前記無機白色顔料が各種表面処理方法で表面処理されていてもよい。中でも、表面処理された酸化チタンが、水性媒体中において比較的良好な分散性を示すことから好ましい。例えば光触媒性による影響を避けるために、無機物で表面処理された酸化チタンが好ましく、シリカとアルミナで表面処理された酸化チタンが好ましい。更に、該シリカとアルミナで表面処理後、更にシランカップリング剤によって表面処理した酸化チタンを使用することもできなお好ましい。シリカとアルミナで表面処理された酸化チタンにおいて、酸化チタンとしては、公知のルチル型・アナターゼ型の二酸化チタンが使用でき、より好ましくはルチル型二酸化チタンである。
ルチル型二酸化チタンとしては、例えば、タイペークR-820、タイペークR-830、タイペークR-930、タイペークR-550、タイペークR-630、タイペークR-680、タイペークR-670、タイペークR-680、タイペークR-670、タイペークR-780、タイペークR-850、タイペークCR-50、タイペークCR-57、タイペークCR-Super70、タイペークCR-80、タイペークCR-90、タイペークCR-93、タイペークCR-95、タイペークCR-97、タイペークCR-60、タイペークCR-63、タイペークCR-67、タイペークCR-58、タイペークCR-85、タイペークUT771(石原産業株式会社製)、タイピュアR-100、タイピュアR-101、タイピュアR-102、タイピュアR-103、タイピュアR-104、タイピュアR-105、タイピュアR-108、タイピュアR-900、タイピュアR-902、タイピュアR-960、タイピュアR-706、タイピュアR-931(デュポン株式会社製)、R-25、R-21、R-32、R-7E、R-5N、R-61N、R-62N、R-42、R-45M、R-44、R-49S、GTR-100、GTR-300、D-918、TCR-29、TCR-52、FTR-700(堺化学工業株式会社製)、JR-403、JR-605、JR-806、JR-701、JR-805、JR-701、JR-800、JR-405、MT600B、MT150W(テイカ社製)等が挙げられる。
【0009】
本開示の白色顔料(A)100質量部におけるルチル型酸化チタンの含有量は80質量部以上が好ましく、90質量部以上がより好ましく、95質量部以上がさらに好ましく、100質量部が特に好ましい。
本開示の白色顔料(A)の平均粒径としては、100nm以上が好ましく、150nm以上がより好ましく、200nm以上がさらに好ましく、500nm以下が好ましく、400nm以下がより好ましく、300nm以下がさらに好ましい。平均粒径が100nm以下であると水性媒体中の非沈降性や分散安定性はより実現し易くなるものの、白色度や隠蔽性が劣ってしまい本来の白色インキとしての実用性が低下するおそれがあり、一方平均粒径が500nm以上になると白色度や隠蔽性の点では問題ないが、吐出安定性が不十分となる傾向にある。なお原料としての酸化チタンの平均粒子径は、電子顕微鏡写真により20個の粒径測定を行って平均をとったものとする。
【0010】
<水不溶性重合体(B)>
本開示の水不溶性重合体(B)は、水性白色インクにおいてバインダー樹脂として使用することを目的に添加してもよい。
本開示の水不溶性重合体(B)としては、塗膜の耐擦過性や基材への密着性を向上させる観点から、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、ウレタン樹脂が好ましい。中でもプラスチックなどの難吸収性基材への密着性向上の観点からアクリル樹脂が好ましく、特に二軸延伸ポリプロピレン(OPP)などの難密着性オレフィン系基材へプライマー印刷等無しでも良好な密着性を得る観点から、環状脂肪族基含有単量体由来の構造単位を有する重合体を含む水不溶性重合体であることがより好ましい。
本開示の環状脂肪族基含有単量体由来の構造単位は、環状脂肪族基含有単量体の少なくとも1つの炭素炭素二重結合が炭素炭素単結合に置き換わった構造と同じ構造であればよく、環状脂肪族基含有単量体が重合することにより形成された構造単位に限定されず、例えば重合後の後反応により形成された構造単位であってもよい。
【0011】
環状脂肪族基含有単量体由来の構造単位としては、下記式(1)で表されるものが好ましい。下記式(1)において、Rは水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表し、Rは環状脂肪族基を表す。
【0012】
【化1】
【0013】
式(1)における環状脂肪族基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基等が挙げられ、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、イソボルニル基が好ましく、シクロヘキシル基、イソボルニル基がより好ましい。
本開示の環状脂肪族基含有単量体としては、炭素炭素二重結合を有する単量体が好ましく、環状脂肪族炭化水素基を有する(メタ)アクリレート単量体などが挙げられる。
環状脂肪族炭化水素基を有する(メタ)アクリレート単量体としては、好ましくは一価の環状脂肪族炭化水素基および一価の(メタ)アクリレート基を有する化合物であり、一価の環状脂肪族炭化水素基と一価の(メタ)アクリレート基は、直接に結合している。環状脂肪族炭化水素基としては、単環基、多環基、橋かけ環基などが挙げられる。環状脂肪族炭化水素基の炭素数は4~20であることが好ましい。環状脂肪族炭化水素基としては、炭素数4~20、特に5~12の環状脂肪族基であることが好ましい。環状脂肪族炭化水素基の炭素数は、15以下、例えば10以下であることが特に好ましい。環状脂肪族炭化水素基の環における炭素原子が、(メタ)アクリレート基におけるエステル基に直接に結合することが好ましい。環状脂肪族炭化水素基の具体例は、シクロヘキシル基、t-ブチルシクロヘキシル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基である。(メタ)アクリレート基は、アクリレート基またはメタアクリレート基であるが、メタクリレート基が好ましい。
環状脂肪族炭化水素基を有する単量体の具体例としては、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等が挙げられ、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートが好ましく、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートがより好ましい。
これらの環状脂肪族基含有単量体は、単独または数種類混合して使用することができる。
本開示の水不溶性重合体(B)100質量部中の環状脂肪族炭化水素基を有する単量体由来の構造単位の含有量は密着性の観点から30質量部以上であってよく、35質量部以上が好ましく、40質量部以上がより好ましく、45質量部以上がさらに好ましく、95質量部以下であってよく、90質量部以下が好ましく、85質量部以下がより好ましい。
【0014】
本開示の水不溶性重合体(B)は、環状脂肪族基含有単量体由来の構造単位以外のその他単量体由来の構造単位を有していてもよい。
その他単量体由来の構造単位とは、下記に記載するその他単量体を重合することにより形成された構造単位に限定されず、例えば重合後の後反応により形成された構造単位であってもよい。
その他単量体としては、単官能単量体および多官能単量体が挙げられる。単官能単量体および多官能単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、併用してもよい。
単官能単量体としては、直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、分岐状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、酸基含有単量体、水酸基含有(メタ)アクリレート、オキソ基含有単量体、フッ素原子含有単量体、窒素原子含有単量体、エポキシ基含有単量体、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、シラン基含有単量体、カルボニル基含有単量体、アジリジニル基含有単量体、スチレン系単量体、アラルキル(メタ)アクリレート、付加重合性オキサゾリンなどが挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。
本開示の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エチルカルビトール、(メタ)アクリル酸エトキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸クロロエチル、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチルおよび(メタ)アクリル酸ヘプタデカフルオロオクチルエチルなどが例示され、密着性、耐スクラッチ性の観点から(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベヘニルが好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、がより好ましい。
本開示の分岐状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸3-メトキシブチル、(メタ)アクリル酸メトキシトリプロピレングリコールおよび(メタ)アクリル酸ヘキサフルオロプロピルなどが例示され、密着性、耐スクラッチ性の観点から(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、が好ましく、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソステアリルがより好ましい。
【0015】
本開示の酸基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノブチルエステル、イタコン酸モノメチルエステル、イタコン酸モノブチルエステル、ビニル安息香酸などのカルボキシル基含有脂肪族系単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの酸基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの酸基含有単量体のなかでは、水不溶性重合体(B)がエマルション粒子であった際の水性分散体の分散安定性および密着性、耐スクラッチ性を向上させる観点から、アクリル酸、メタクリル酸およびイタコン酸が好ましく、アクリル酸およびメタクリル酸がより好ましい。
本開示の水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのエステル基の炭素数が1~18の水酸基含有(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。
これらの水酸基含有単量体の中では、密着性、耐スクラッチ性向上の観点から2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
これらの水酸基含有(メタ)アクリレートは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
本開示のオキソ基含有単量体としては、例えば、エチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレングリコールメトキシ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールメトキシ(メタ)アクリレートなどの(ジ)エチレングリコール(メトキシ)(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのオキソ基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0016】
本開示のフッ素原子含有単量体としては、例えば、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレートなどのエステル基の炭素数が2~6のフッ素原子含有アルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのフッ素原子含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
本開示の窒素原子含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N-モノメチル(メタ)アクリルアミド、N-モノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-n-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなどのアクリルアミド化合物、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの窒素原子含有(メタ)アクリレート化合物、N-ビニルピロリドン、(メタ)アクリロニトリル、などが挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの窒素原子含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
本開示のエポキシ基含有単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、α-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルアリルエーテルなどのエポキシ基含有(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのエポキシ基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのエポキシ基含有単量体の中では、密着性、耐スクラッチ性向上の観点からグリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。
本開示のアルコキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレート、エトキシブチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリプロポキシ(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのアルコキシアルキル(メタ)アクリレートは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
本開示のシラン基含有単量体としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(メトキシエトキシ)シラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、2-スチリルエチルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヒドロキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルヒドロキシシランなどが挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのシラン基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0017】
本開示のカルボニル基含有単量体としては、例えば、アクロレイン、ホウミルスチロール、ビニルエチルケトン、(メタ)アクリルオキシアルキルプロペナール、アセトニル(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートアセチルアセテート、ブタンジオール-1,4-アクリレートアセチルアセテート、2-(アセトアセトキシ)エチル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのカルボニル基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
本開示のアジリジニル基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリロイルアジリジン、(メタ)アクリル酸2-アジリジニルエチルなどが挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのアジリジニル基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
本開示のスチレン系単量体としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、tert-メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエンなどが挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのスチレン系単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。スチレン系単量体は、ベンゼン環にメチル基、tert-ブチル基などのアルキル基、ニトロ基、ニトリル基、アルコキシル基、アシル基、スルホン基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子などの官能基が存在していてもよい。スチレン系単量体のなかでは、耐水性を高める観点から、スチレンが好ましい。
本開示のアラルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート、メチルベンジル(メタ)アクリレート、ナフチルメチル(メタ)アクリレートなどの炭素数が7~18のアラルキル基を有するアラルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのアラルキル(メタ)アクリレートは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0018】
本開示の付加重合性オキサゾリンとしては、例えば、2-ビニル-2-オキサゾリン、2-ビニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2付加重合性オキサゾリンは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの付加重合性オキサゾリンのなかでは、入手が容易であることから、2-イソプロペニル-2-オキサゾリンが好ましい。
多官能単量体と-イソプロペニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-5-エチル-2-オキサゾリンなどが挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの炭素数1~10の多価アルコールのジ(メタ)アクリレート;エチレンオキシドの付加モル数が2~50のポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシドの付加モル数が2~50のポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの炭素数2~4のアルキレンオキシド基の付加モル数が2~50であるアルキルジ(メタ)アクリレート;エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノヒドロキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリエトキシトリ(メタ)アクリレートなどの炭素数1~10の多価アルコールのトリ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートなどの炭素数1~10の多価アルコールのテトラ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール(モノヒドロキシ)ペンタ(メタ)アクリレートなどの炭素数1~10の多価アルコールのペンタ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの炭素数1~10の多価アルコールのヘキサ(メタ)アクリレート;ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2-(2’-ビニルオキシエトキシエチル)(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有(メタ)アクリレート;ウレタン(メタ)アクリレートなどの多官能(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの多官能モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0019】
本開示の水不溶性重合体(B)は、紫外線安定性または紫外線吸収性を付与する観点から、本発明の目的が阻害されない範囲内で、紫外線安定性モノマー、紫外線吸収性モノマーなどをモノマー成分に含有させることが好ましい。
本開示の紫外線安定性モノマーとしては、例えば、4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルオキシ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイル-1-メトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-シアノ-4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-(メタ)アクリロイル-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-クロトノイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルアミノ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン、4-シアノ-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-クロトノイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-(メタ)アクリロイル-4-シアノ-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-クロトノイル-4-クロトノイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンなどのピペリジン基含有単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのモノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの紫外線安定性モノマーのなかでは、密着性、耐スクラッチ性向上の観点から4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルオキシ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン、4-シアノ-4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンなどのピペリジル基含有(メタ)アクリレートが好ましい。
本開示の紫外線吸収性モノマーとしては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収性モノマー、ベンゾフェノン系紫外線吸収性モノマーなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのモノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収性モノマーとしては、例えば、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタ)アクリロイルオキシメチルフェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタ)アクリロイルオキシメチルフェニル]-5-tert-ブチル-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタ)アクリロイルアミノメチル-5’-tert-オクチルフェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタ)アクリロイルオキシプロピルフェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタ)アクリロイルオキシヘキシルフェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-tert-ブチル-3’-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]-5-シアノ-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]-5-tert-ブチル-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(β-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)-3’-tert-ブチルフェニル]-4-tert-ブチル-2H-ベンゾトリアゾールなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのモノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0020】
ベンゾフェノン系紫外線吸収性モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシ-4-(メタ)アクリロイルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-[2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシ]プロポキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-[2-(メタ)アクリロイルオキシ]エトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-[3-(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ]ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-4-[2-(メタ)アクリロイルオキシ]ブトキシベンゾフェノンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのモノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
本開示のその他単量体として、コロナ処理されたPETやOPP等への密着性をより向上させる観点から、ピペリジン基含有単量体と窒素原子含有単量体、付加重合性オキサゾリンが好ましく、中でも、ピペリジン基含有単量体、付加重合性オキサゾリンがより好ましく、4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルオキシ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリンがさらに好ましい。また、水酸基含有(メタ)アクリレートを単官能単量体として含むと、粗大粒子のないエマルション粒子が得られやすく、該エマルション粒子を含むインクの吐出安定性が優れ、密着性をより向上させる観点から、水酸基含有(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。
【0021】
本開示の水不溶性重合体(B)100質量部中の、その他単量体由来の構造単位の含有割合は密着性、耐スクラッチ性を向上させる観点から5質量部以上であってよく、10質量部以上が好ましく、15質量部以上がより好く、70質量部以下であってよく、65質量部以下が好ましく、60質量部以下がより好ましく、55質量部以下がさらに好ましい。
本開示の水不溶性重合体(B)の酸価は酸価を有さなくても良いが、50mgKOH/g以下であっても良く、40mgKOH/g以下であることが好ましく、35mgKOH/g以下であることがより好ましく、30mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。水不溶性重合体(B)の酸価が上記範囲を有することにより、インクジェット用インクとして好ましい粘度水性インクが得ることができ、耐スクラッチ性向上の効果が期待できる。
また、本開示の水不溶性重合体(B)の酸価は、凝集物を抑制したり、インクとして用いた際の粘度変化を抑制する観点から1mgKOH/g以上であってもよい。
本開示の水不溶性重合体(B)のガラス転移温度は-10℃以上であってよく、0℃以上が好ましく、5℃以上がより好ましく、10℃以上がさらに好ましいく、90℃以下であってよく、80℃以下が好ましく、70℃以下がより好ましく、60℃以下がさらに好ましい。
重合体のガラス転移温度はガラス転移温度(Tg)は、当該ポリマーの原料として用いられるモノマー成分に使用されているモノマーのホモポリマーのガラス転移温度を用いて、式:
1/Tg=Σ(Wm/Tgm)/100
〔式中、Wmは樹脂層を構成する内層用モノマー成分におけるモノマーmの含有率(質量%)、Tgmは単量体mのホモポリマーのガラス転移温度(絶対温度:K)を示す〕で表されるフォックス(Fox)の式に基づいて求められた温度を意味する。
本明細書においては、重合体のガラス転移温度は、特に断りがない限り、前記フォックス(Fox)の式に基づいて求められたガラス転移温度を意味する。
【0022】
本開示の水不溶性重合体(B)は、水性白色インクに添加する際、水を主成分とする溶媒に分散するエマルション粒子であっても良い。本開示のエマルション粒子は一層であってもよいし、多層構造を有していても良い。本開示のエマルション粒子が多層構造を有する場合、2層から4層を有することが好ましく、2層または3層であることがより好ましい。多層構造の樹脂層を有するエマルション粒子において、内層は、当該エマルション粒子の最内層を意味し、外層は最内層を除いたその他層を意味し、最外層は最も外側に形成される層を意味する。
本開示の水不溶性重合体(B)が多層構造を有するエマルション粒子である場合、内層を形成する単量体成分100質量部中、環状脂肪族炭化水素基を有する単量体由来の構造単位の含有量は30質量部以上であってよく、35質量部以上が好ましく、40質量部以上がより好ましく、45質量部以上がさらに好ましいく、95質量部以下であってよく、90質量部以下が好ましく、85質量部以下がより好ましい。
本開示の水不溶性重合体(B)が多層構造を有するエマルション粒子である場合、内層を形成する単量体成分100質量部中、その他単量体由来の構造単位の含有量は5質量部以上であってよく、10質量部以上が好ましく、15質量部以上がより好ましく、70質量部以下であってよく、65質量部以下が好ましく、60質量部以下がより好ましく、55質量部以下がさらに好ましい。
【0023】
本開示の水不溶性重合体(B)が多層構造を有するエマルション粒子である場合、内層を形成する単量体成分100質量部中、その他単量体由来の構造単位としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、(メタ)アクリロニトリル、グリシジル(メタ)アクリレート、スチレン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルオキシ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン、がより好ましい。
【0024】
本開示の水不溶性重合体(B)が多層構造を有するエマルション粒子である場合、外層を形成する単量体成分100質量部中、環状脂肪族炭化水素基を有する単量体由来の構造単位の含有量は30質量部以上であってよく、35質量部以上が好ましく、40質量部以上がより好ましく、45質量部以上がさらに好ましいく、95質量部以下であってよく、90質量部以下が好ましく、85質量部以下がより好ましい。
本開示の水不溶性重合体(B)が多層構造を有するエマルション粒子である場合、外層を形成する単量体成分100質量部中、その他単量体由来の構造単位の含有量は5質量部以上であってよく、10質量部以上が好ましく、15質量部以上がより好ましく、70質量部以下であってよく、65質量部以下が好ましく、60質量部以下がより好ましく、55質量部以下がさらに好ましい。
【0025】
本開示の水不溶性重合体(B)が多層構造を有するエマルション粒子である場合、外層を形成する単量体成分100質量部中、その他単量体由来の構造単位としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、(メタ)アクリロニトリル、グリシジル(メタ)アクリレート、スチレン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルオキシ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン、がより好ましい。
本開示の水不溶性重合体(B)が多層構造を有するエマルション粒子である場合、最外層を形成する単量体成分100質量部中、環状脂肪族炭化水素基を有する単量体由来の構造単位の含有量は30質量部以上であってよく、35質量部以上が好ましく、40質量部以上がより好ましく、45質量部以上がさらに好ましいく、95質量部以下であってよく、90質量部以下が好ましく、85質量部以下がより好ましい。
本開示の水不溶性重合体(B)が多層構造を有するエマルション粒子である場合、最外層を形成する単量体成分100質量部中、その他単量体由来の構造単位の含有量は5質量部以上であってよく、10質量部以上が好ましく、15質量部以上がより好ましく、70質量部以下であってよく、65質量部以下が好ましく、60質量部以下がより好ましく、55質量部以下がさらに好ましい。
【0026】
本開示の水不溶性重合体(B)が多層構造を有するエマルション粒子である場合、最外層を形成する単量体成分100質量部中、その他単量体由来の構造単位としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、(メタ)アクリロニトリル、グリシジル(メタ)アクリレート、スチレン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルオキシ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン、がより好ましい。
本開示の内層を構成している重合体層と外層を構成している重合体層との質量比(内層を構成している重合体の質量/外層を構成している重合体の質量)は、可撓性、耐ブロッキング性、基材に対する密着性および耐引っ掻き傷性を向上させる観点から、好ましくは10/90~90/10、より好ましくは20/80~80/20、さらに好ましくは30/70~70/30、さらに一層好ましくは40/60~60/40である。
本開示の内層を構成している重合体層と最外層を構成している重合体層との質量比(内層を構成している重合体層/最外層を構成している重合体層)は、可撓性、耐ブロッキング性、基材に対する密着性および耐引っ掻き傷性を向上させる観点から、好ましくは10/90~90/10、より好ましくは20/80~80/20、さらに好ましくは30/70~70/30、さらに一層好ましくは40/60~60/40である。
【0027】
本開示の内層を構成する重合体の酸価は酸価を有さなくても良いが、50mgKOH/g以下であっても良く、40mgKOH/g以下であることが好ましく、35mgKOH/g以下であることがより好ましく、30mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。水不溶性重合体(B)の内層の酸価が上記範囲を有することにより、インクジェット用インクとして好ましい粘度水性インクが得ることができ、密着性、耐スクラッチ性、吐出安定性向上の効果が期待できる。また、本開示の内層を構成する重合体の酸価は、凝集物を抑制したり、インクとして用いた際の粘度変化を抑制する観点から1mgKOH/g以上であってもよい。
【0028】
本開示の外層を構成する重合体の酸価は酸価を有さなくても良いが、50mgKOH/g以下であっても良く、40mgKOH/g以下であることが好ましく、35mgKOH/g以下であることがより好ましく、30mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。水不溶性重合体(B)の外層の酸価が上記範囲を有することにより、インクジェット用インクとして好ましい粘度水性インクが得ることができ、密着性、耐スクラッチ性、吐出安定性向上の効果が期待できる。また、本開示の外層を構成する重合体の酸価は、凝集物を抑制したり、インクとして用いた際の粘度変化を抑制する観点から1mgKOH/g以上であってもよい。
本開示の最外層を構成する重合体の酸価は酸価を有さなくても良いが、50mgKOH/g以下であっても良く、40mgKOH/g以下であることが好ましく、35mgKOH/g以下であることがより好ましく、30mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。水不溶性重合体(B)の最外層の酸価が上記範囲を有することにより、インクジェット用インクとして好ましい粘度水性インクが得ることができ、密着性、耐スクラッチ性、吐出安定性向上の効果が期待できる。また、本開示の最外層を構成する重合体の酸価は、凝集物を抑制したり、インクとして用いた際の粘度変化を抑制する観点から1mgKOH/g以上であってもよい。
【0029】
本開示の内層を構成する重合体のガラス転移温度は、密着性、耐スクラッチ性の観点から、-10℃以上、好ましくは0℃以上であり、当該ガラス転移温度の上限値は、密着性、耐スクラッチ性の観点から、好ましくは120℃以下、より好ましくは100℃以下である。内層を形成する重合体のガラス転移温度は、内層を形成する単量体の種類およびその量を調整することによって調整することができる。
本開示の外層を構成する重合体のガラス転移温度は、密着性、耐スクラッチ性、造膜性の観点から、0℃以上、好ましくは10℃以上であり、当該ガラス転移温度の上限値は、密着性、耐スクラッチ性の観点から、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下である。外層を形成する重合体のガラス転移温度は、外層を形成する単量体の種類およびその量を調整することによって調整することができる。
本開示の最外層を構成する重合体のガラス転移温度は、密着性、耐スクラッチ性、造膜性の観点から、0℃以上、好ましくは10℃以上であり、当該ガラス転移温度の上限値は、密着性、耐スクラッチ性の観点から、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下である。最外層を形成する重合体のガラス転移温度は、最外層を形成する単量体の種類およびその量を調整することによって調整することができる。
上記各層を構成する重合体のガラス転移温度は、特に断りがない限り、水不溶性重合体(B)のガラス転移温度同様に、フォックス(Fox)の式に基づいて求められたガラス転移温度を意味する。
【0030】
<水溶性重合体(C)>
本開示の水溶性重合体(C)は、水性白色インクにおいて顔料分散剤(以下分散剤ともいう)として使用することを目的に添加してもよい。
本開示の水溶性重合体(C)の酸価としては、分散安定性と高塗膜強度の観点から150mgKOH/g以下が好ましく、より好ましくは100mgKOH/g以下であり、さらに好ましくは50mgKOH/g以下である。本開示の分散剤(B)の下限値は特に限定されないが、5mgKOH/g以上であってよく、6mgKOH/g以上、7mgKOH/g以上であってもよい。
本開示の水溶性重合体(C)のpHとしては、5~11の分散剤を用いることが好ましいが、分散安定性の観点から7未満の酸性分散剤が好ましい。
本開示の水溶性重合体(C)としては、イオン性の水溶性重合体がより好ましく、アニオン性基を有する水溶性重合体であってよい。
本開示の水溶性重合体(C)に含まれるアニオン性基としてはカルボキシル基、スルホ基、リン酸基が好ましく、中でもカルボキシル基がより好ましい。
本開示の水溶性重合体(C)としては、特に限定されないが、例としてはアクリル重合体、スチレンアクリル重合体、マレイン酸重合体、スチレンマレイン酸重合体、αオレフィンマレイン酸重合体、ウレタン重合体、エステル重合体、スルホン酸重合体、リン酸重合体等が挙げられる。中でもハードケーキ発生防止の観点からアクリル重合体、スチレンアクリル重合体が望ましい。
さらに水溶性重合体(C)中にポリアルキレングリコール基を導入することでハードケーキ発生防止効果を向上させることが期待できる。ポリアルキレングリコール基としては、ポリプロピレングリコール基またはポリエチレングリコール基を分散剤中に含有することが好ましい。
【0031】
上述したような酸価が150mgKOH/g以下である水溶性重合体(C)は公知の技術によって得ることが出来るが、市販もされておりいずれも使用することが出来る。市販品としては、ビックケミー・ジャパン社製のDisperbyk-102Disperbyk-111,Disperbyk-190、Disperbyk-191、Disperbyk-194N、Disperbyk-2010、Disperbyk-2012,Disperbyk-2015、エボニックジャパン社製のTEGO Dispers―715N、TEGO Dispers―750W、TEGO Dispers―755W、BASF社製のEfka6230等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。さらに分散剤中にポリアルキレングリコール基を含有し、酸価が150mgKOH/g以下である分散剤としては、ビックケミー・ジャパン社製のDisperbyk-190、Disperbyk-2015等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0032】
<架橋剤>
本開示の水性白色インクは架橋剤を含有していても良い。
本開示の架橋剤としては、酸基(特にカルボキシル基)と反応する官能基を有していることが好ましい。酸基(特にカルボキシル基)と反応する官能基としては、オキサゾリン基、エポキシ基、カルボジイミド基、イソシアネート基、シラン基などが挙げられ、オキサゾリン基、エポキシ基、カルボジイミド基、イソシアネート基、が好ましく、オキサゾリン基、カルボジイミド基がより好ましく、貯蔵安定性および低温乾燥後の塗膜強度の観点よりカルボジイミド基がさらに好ましい。
本明細書における低温とは120℃以下であってよく、110℃以下であってよく、100℃以下であってよい。
本開示の架橋剤としては、具体的にはオキサゾリン基含有化合物、エポキシ基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物、イソシアネート基含有化合物、シラン基含有化合物などが挙げられる。これらの架橋剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの架橋剤のなかでは、水性白色インクの耐水性、沈降安定性及び当該水性分散体を使用した水性インクの画像均一性を向上させる観点から、オキサゾリン基含有化合物、エポキシ基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物が好ましく、オキサゾリン基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物がより好ましく、沈降安定性および低温時の架橋性の観点よりカルボジイミド基含有化合物がさらに好ましい。本開示の架橋剤は、それぞれ単独で用いても良く、2種類以上を混合して用いても良い。
本開示のオキサゾリン基含有化合物としては、例えば、2,2’-ビス(2-オキサゾリン)、2,2’-メチレン-ビス(2-オキサゾリン)、2,2’-エチレン-ビス(2-オキサゾリン)、2,2’-トリメチレン-ビス(2-オキサゾリン)、2,2’-テトラメチレン-ビス(2-オキサゾリン)、2,2’-ヘキサメチレン-ビス(2-オキサゾリン)、2,2’-オクタメチレン-ビス(2-オキサゾリン)、2,2’-エチレン-ビス(4,4’-ジメチル-2-オキサゾリン)、2,2’-p-フェニレン-ビス(2-オキサゾリン)、2,2’-m-フェニレン-ビス(2-オキサゾリン)、2,2’-m-フェニレン-ビス(4,4’-ジメチル-2-オキサゾリン)、ビス(2-オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィド、ビス(2-オキサゾリニルノルボルナン)スルフィド、オキサゾリン環含有重合体などが挙げられる。オキサゾリン基含有化合物としては、例えば、(株)日本触媒製、商品名:エポクロスWS-500、エポクロスWS-700、エポクロスWS-700、エポクロスK-2010、エポクロスK-2020、エポクロスK-2030等の市販品が挙げられる。
本開示のエポキシ基含有化合物としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル等のポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
本開示のカルボジイミド基含有化合物としては、例えば、芳香族カルボジイミド化合物、脂肪族カルボジイミド化合物等が挙げられる。本開示のカルボジイミド基含有化合物としては、カルボジライトSV-02、カルボジライトV-02、カルボジライトV-02-L2、カルボジライトV-04、カルボジライトV-06、カルボジライトV-10、カルボジライトSW-12G、カルボジライトE-02、カルボジライトE-05(いずれも商品名)等の市販品が挙げられる。
本開示のイソシアネート基含有化合物としては、例えば、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、前記芳香族ポリイソシアネートの水素添加物などの脂肪族または脂環族ポリイソシアネート、これらのポリイソシアネートの2量体または3量体、これらのポリイソシアネートとトリメチロールプロパンなどのポリオールとからなるアダクト体などが挙げられる。これらのイソシアネート基含有化合物は、それぞれ単独でまたは2種類以上を併用することができる。また、イソシアネート基含有化合物として、ポリイソシアネート化合物における活性なイソシアネート基をフェノールなどのブロック剤とあらかじめ反応させて不活性化したブロックイソシアネート化合物を用いても良い。ブロックイソシアネート化合物を使うと本発明の水性分散体やそれを使ったインクの沈降安定性を向上させる事が出来る。
本開示のシラン基含有化合物としては、例えば、ビス-(3-トリエトキシシリルプロピル)-テトラスルファン、ビス-(3-トリエトキシシリルプロピル)-ジスルファン、エトキシシロキサンオリゴマー等のアルコキシシラン化合物や、それらアルコキシシラン化合物の加水分解物等が挙げられる。
本開示のイソシアネート基含有化合物は、例えば、「コロネートL」、「コロネートHX」、「コロネートHL」、「コロネートHL-S」、「コロネート2234」、「アクアネート105」、「アクアネート130」、「アクアネート140」、「アクアネート200」、「アクアネート210」〔以上、東ソー(株)製、「コロネート」および「アクアネート」は登録商標〕、「デスモジュールN3400」〔住友バイエルウレタン(株)(現バイエルA.G.社)製、「デスモジュール」は登録商標)、「デュラネートD-201」、「デュラネートTSE-100」、「デュラネートTSS-100」、「デュラネート24A-100」、「デュラネートE-405-80T」「デュラネートWB40-100」、「デュラネートWB40-80D」、「デュラネートWT20-100」、「デュラネートWT30-100」、「デュラネートWT31-100」、「デュラネートWL70-100」、「デュラネートWR80-70P」、「デュラネートWE50-100」、「デュラネートWM44-L70G」〔以上、旭化成ケミカルズ(株)製、「デュラネート」は登録商標〕、「タケネートD-110N」、「タケネートD-120N」、「タケネートM-631N」、「MTERT-オレスターNP1200」〔以上、三井化学ポリウレタン(株)製、「タケネート」および「オレスター」は登録商標)等の市販品が挙げられる。
【0033】
本開示の架橋剤に含まれる官能基は、複数有していても良い。本開示の架橋剤に含まれる官能基の量としては、100g/mol以上が好ましく、150g/mol以上がより好ましく、200g/mol以上がさらに好ましく、700g/mol以下が好ましく、650g/mol以下がより好ましく、600g/mol以下がさらに好ましい。
本開示の架橋剤に含まれる官能基としては、オキサゾリン基、エポキシ基、カルボジイミド基、イソシアネート基、シラン基等が挙げられる。
本開示の架橋剤に含まれる官能基は、主剤(水不溶性重合体(B)、またはワックス成分を含む際には水不溶性重合体(B)およびワックス成分)が有する架橋剤に含まれる官能基と反応する反応性基と反応し、架橋構造を形成することができる。
本開示の架橋剤の官能基と反応する反応性基としては、酸基、水酸基、アミノ基などが挙げられる。酸基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられ、カルボキシル基がより好ましい。
本開示の架橋剤の官能基と主剤(水不溶性重合体(B)、またはワックス成分を含む際には水不溶性重合体(B)およびワックス成分)の1対1の当量数は、例えば以下の式から算出される。
架橋剤量=主剤の反応基/(56.1×1000) × 架橋剤の当量 × 主剤量
【0034】
架橋剤量は、得られた数値の0.1~5倍量が沈降安定性、耐スクラッチ性、密着性、耐ブロッキング性、耐セロテープ剥離性向上の観点から好ましい。
架橋剤に含まれる官能基の量は、官能基の種類に応じて公知の手法により測定することができるし、カタログ値を参考としても良いし、ポリマー溶液を凍結乾燥し、これを1H-NMRにて分析し、各官能基に由来する吸収ピーク強度、その他のモノマーに由来する吸収ピーク強度から、各官能基の量を算出しても良い。
【0035】
<ワックス成分>
本開示の水性白色インクはさらにワックス成分を含有することで耐スクラッチ性、耐水性、密着性をさらに向上させることができる。
本開示のワックス成分は、天然ワックス、合成ワックスを挙げることができる。
天然ワックスとしては、石油系ワックス、植物系ワックス、動植物系ワックスなどを挙げることができる。石油系ワックスとしては、パラフィン系ワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムなどを挙げることができる。植物系ワックスとしては、カルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、木ロウなどを挙げることができる。動植物系ワックスとしては、ラノリン、みつろうなどを挙げることができる。
合成ワックスとしては、合成炭化水素系ワックス、変性ワックスなどを挙げることができる。合成炭化水素系ワックスとしては、ポリオレフィン系ワックス、(メタ)アクリル系ワックス、フィッシャー・トロプシュワックスなどを挙げることができる。変性ワックスとしては、パラフィンワックス誘導体、モンタンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体などを挙げることができる。密着性、耐スクラッチ性向上の観点から、ポリオレフィン系ワックス、(メタ)アクリル系ワックスが好ましい。
(メタ)アクリル系ワックスとしては特に限定されるものではなく、例えば、炭素数10以上のアルキル基を有するモノマーを用いて製造されたものであってよく炭素数10以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーとして(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、またはその誘導体から製造されたポリマー等が挙げられる。
【0036】
(メタ)アクリル系ワックスとしては、市販品を用いることもできる。好ましい市販品としては、日本触媒社製のST100、ST200等、が挙げられる。
【0037】
ポリオレフィン系ワックスとしては、特に限定されるものではなく、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン等のオレフィンまたはその誘導体から製造されたワックスおよびそのコポリマー、具体的には、ポリエチレン系ワックス、ポリプロピレン系ワックス、ポリブチレン系ワックス、エチレンとメタクリル酸あるいはアクリル酸等のカルボン酸基を有するモノマーからなる共重合体ワックス、酸化ポリエチレンワックス等が挙げられる。これらの中でも、密着性、耐スクラッチ性向上の観点から、ポリエチレン系ワックス、ポリプロピレン系ワックス、エチレンとメタクリル酸あるいはアクリル酸等のカルボン酸基を有するモノマーからなる共重合体ワックス、酸化ポリエチレンワックスが好ましい。
本開示の酸化ポリエチレンワックスは、ポリエチレンワックスを酸化処理したものであり、ポリエチレン由来の骨格(ポリエチレン骨格)を有している。ポリエチレン骨格は、主として、エチレンに由来する構造単位を有している。ポリエチレン骨格は、ホモポリエチレン(エチレンの単独重合体)骨格であってよく、ブロックポリエチレン(エチレンと他のオレフィンとのブロック共重合体)骨格であってもよく、ランダムポリエチレン(エチレンと他のオレフィンとのランダム共重合体)骨格であってもよい。他のオレフィンとしては、例えばプロピレン、イソブチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン等のアルケンが挙げられる。これらの成分は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。他のオレフィン成分の炭素数は、例えば、2~6である。
【0038】
ポリエチレン骨格におけるエチレン成分の含有量(エチレンに由来する構造単位の含有量)は、例えば60モル%以上であり、70モル%以上であってもよい。ポリエチレン骨格がブロックポリエチレン骨格又はランダムポリエチレン骨格である場合、ポリエチレン骨格におけるエチレン成分の含有量(エチレンに由来する構造単位の含有量)は、例えば95モル%以下であり、90モル%以下であってもよい。
酸化ポリエチレンワックスは、より優れた密着性、耐スクラッチ性が得られる観点から、好ましくは高密度酸化ポリエチレンワックスを含む。
酸化ポリエチレンワックスとしては、市販品を用いることもできる。好ましい市販品としては、BYK社製のAQUACER497、AQUACER515、AQUACER531、AQUACER1547等、が挙げられる。
ワックス成分は、1種単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
本開示のワックス成分は固体ワックス粒子を溶媒中に溶解又は分散した状態のものを用いることが好ましく、溶媒中に分散したエマルションの状態のものを用いることがより好ましい。上記溶媒は、水性媒体であることが好ましく、水性インク組成物の溶媒に用いられる水性媒体と同じ水性媒体であることがより好ましい。
【0039】
本開示のワックス粒子の体積平均粒子径(nm)は、25nm以上500nm以下であることが好ましく、30nm以上400nm以下であることがさらに好ましい。ワックス粒子の体積平均粒子径は、特に限定されないが動的光散乱法、レーザー回折/散乱法、コールターカウンター、顕微鏡法等によって測定する事が出来る。
本実施例記載の平均粒子径は、動的光散乱法による粒子径測定装置である多検体ナノ粒子径測定システム〔大塚電子(株)製、商品名:nanoSAQLA〕を用い、光子相関法で自己相関関数を求め、キュムラント解析によって求めた平均粒子径(流体力学的径)である。
本開示のワックス成分の融点は、密着性の観点から、20℃以上が好ましく、25℃以上がより好ましく、30℃以上がさらに好ましく、150℃以下が好ましく、140℃以下がより好ましく、130℃以下がさらに好ましい。ワックス成分(B)の融点(Tm)は、JIS K 0064に準拠した融点測定装置などによって測定することができる。
本開示のワックス成分の酸価(mgKOH/g)は、密着性の観点から、合っても無くても良く、0mgKOH/gが好ましく、100mgKOH/g以下が好ましく、90mgKOH/g以下がより好ましく、80mgKOH/g以下がさらに好ましい。
【0040】
本開示の水性白色インクは、なお、水性白色インクにおけるインク粘度、印刷する記録媒体への濡れ広がりの制御、画質向上、吐出安定性の観点から、当該水性白色インクには、水をはじめ水溶性有機溶媒を含有させてもよい。水溶性有機溶媒としては、例えば、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、グリセリン、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等のグリコール;モノエチレングリコールモノメチルエーテル、モノエチレングリコールモノエチルエーテル、モノエチレングリコールモノプロピルエーテル、モノエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、モノエチレングリコールモノブチルエーテル、モノエチレングリコールモノイソブチルエーテル等のモノエチレングリコールのエーテル;モノプロピレングリコールモノメチルエーテル、モノプロピレングリコールモノエチルエーテル、モノプロピレングリコールモノプロピルエーテル、モノプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、モノプロピレングリコールモノブチルエーテル、モノプロピレングリコールモノイソブチルエーテル等のモノプロピレングリコールのエーテル;ジエチレングリコールモノメチルエーテルなどのポリエチレングリコール(EO付加モル数=2~10、好ましくは2~4)のモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのポリエチレングリコール(EO付加モル数=2~10、好ましくは2~4)のモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルなどのポリエチレングリコール(EO付加モル数=2~10、好ましくは2~4)のモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテルなどのポリエチレングリコール(EO付加モル数=2~10、好ましくは2~4)のモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのポリエチレングリコール(EO付加モル数=2~10、好ましくは2~4)のモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテルなどのポリエチレングリコール(EO付加モル数=2~10、好ましくは2~4)のモノイソブチルエーテル等のポリエチレングリコールのエーテル;ポリプロピレングリコール(EO付加モル数=2~10、好ましくは2~4)のモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール(EO付加モル数=2~10、好ましくは2~4)のモノエチルエーテル、ポリプロピレングリコール(EO付加モル数=2~10、好ましくは2~4)のモノプロピルエーテル、ポリプロピレングリコール(EO付加モル数=2~10、好ましくは2~4)のモノイソプロピルエーテル、ポリプロピレングリコール(EO付加モル数=2~10、好ましくは2~4)のモノブチルエーテル、ポリプロピレングリコール(EO付加モル数=2~10、好ましくは2~4)のモノイソブチルエーテル等のポリプロピレングリコールのエーテル;などが挙げられる。これらの中でも、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、モノエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、モノプロピレングリコールモノプロピルエーテルが好ましい。これらの水溶性有機溶剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0041】
<その他添加剤>
本開示の水性白色インクとしては、その他添加剤を含んでいても良い。
その他添加剤としては、消泡剤、可塑剤、レベリング剤、防カビ剤、防錆剤、艶消し剤、難燃剤、揺変剤、粘着付与剤、増粘剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、反応遅延剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤、耐候安定剤、タック防止剤などの添加剤を、適宜配合することができる。各種の添加剤の配合割合は、その目的および用途により適宜選択される。
本開示の消泡剤としては、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤、及びアセチレングリコール系消泡剤が挙げられる。これらの中でも、表面張力及び界面張力を適正に保持する能力に優れており、かつ、起泡を殆ど生じさせないため、シリコーン系消泡剤、アセチレングリコール系消泡剤が好ましい。
【0042】
<水性白色インク>
本開示の水性白色インク100質量部における白色顔料(A)の含有量としては、2質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましく、4質量部以上がさらに好ましく、25質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましく、15質量部以下がさらに好ましい。
本開示の水性白色インク100質量部における水不溶性重合体(B)の含有量としては、1質量部以上であってよく、3質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、50質量部以下であってよく、40質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましい。
本開示の水性白色インク100質量部における水溶性重合体(C)の含有量としては、0.1質量%以上2.0質量%以下が好ましく、0.2質量%以上1.0質量%以下がより好ましい。
本開示の水性白色インク100質量部における白色顔料(A)と水不溶性重合体(B)の質量比(白色顔料(A)の質量/水不溶性重合体(B)の質量)としては、1.0未満が好ましく、0.9未満がより好ましく、0.8未満がさらに好ましい。
本開示の水性白色インク100質量部における水溶性重合体(C)と白色顔料(A)の質量比(水溶性重合体(C)の質量/白色顔料(A)の質量)としては、0.015超が好ましく、0.017超がより好ましく、0.020超がさらに好ましく、0.20未満が好ましく、0.15未満がより好ましく、0.10未満がさらに好ましい。
本開示の水性白色インク100質量部における架橋剤の含有量としては、吐出安定性、沈降安定性、画像均一性、水性白色インクにおける白色顔料(A)の沈降防止の観点から0.01質量部以上であってよく、0.05質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましく、10質量部以下であってよく、8質量部以下が好ましく、6質量部以下がより好ましい。
【0043】
本開示の水性白色インク100質量部におけるワックス成分の含有量としては、吐出安定性、沈降安定性の観点から0.01質量部以上であってよく、0.05質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましく、8質量部以下であってよく、6質量部以下が好ましく、4質量部以下がより好ましい。
本開示の水性白色インク100質量部における水溶性有機溶剤の量としては、印刷する記録媒体への濡れ広がりの制御と画質を向上させる観点から5質量部以上であってよく、8質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、50質量部以下であってよく、45質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましい。
本開示の水性白色インクにおける水溶性有機溶剤100質量部における水の含有量としては、40質量部以上が好ましく、45質量部以上がより好ましく、50質量部以上がさらに好ましく、65質量部以下が好ましく、60質量部以下がより好ましい。
本開示の水性白色インク100質量部における、水不溶性重合体(B)と架橋剤の質量比(水不溶性重合体(B)の質量/架橋剤の質量)としては、密着性、耐スクラッチ性、耐ブロッキング性、画像均一性の観点から、99/1~60/40であってよく、99/1~65/35が好ましく、95/5~70/30がより好ましい。
【0044】
本開示の水性白色インクにおける直径1.0μm以上の粒子体積濃度としては、大きすぎるとインクジェット用インクとして使用した際にノズル詰まりの原因となることから、400×10μm3/ml以下であることが好ましく、200×10μm/m以下lであることがより好ましく、100×10μm3/ml以下であることがさらに好ましい。
また、小さすぎると白色インクの生産性が低下する可能性があることから、インクジェット用インクとして使用した際のノズル詰まり抑制および生産性の観点において、水性白色インクにおける直径1.0μm以上の粒子体積濃度としては、2×10~400×10μm3/mlであることが好ましく、6×10~200×10μm/mlであることがより好ましく、10×10~100×10μm3/mlであることがさらに好ましい。
本開示の水性白色インクにおける直径1.0μm以上の粒子体積濃度は、公知の手法によって測定することができ、具体的にはコールターカウンター法などにより測定することが出来る。
【0045】
<用途>
本開示の水性白色インクは、密着性に優れると共に、耐引っ掻き傷性に優れているので、例えば、インクジェット用水性インク、フレキソ印刷用インク、オフセット印刷用インク、リソグラフ印刷用インク、グラビア印刷用インク、スクリーン印刷用インクなどのインク、なかでも特にインキ面がラミネート工程されることなく表側に晒される表刷り用インクジェット用水性インクや、ラミネートフィルムとの高い密着性が求められる裏刷り用インクジェット用水性インクとして好適に使用することができる。
【0046】
<印刷物>
本開示の水性白色インクは、例えば、インクジェット記録装置などを用いて水性インクを記録媒体上に所定のパターンで吐出することにより、所定のパターンを有する印字または画像を形成することができる。
記録媒体としては、例えば、紙をはじめ、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの樹脂フィルムが積層された紙(コート紙など)、アルミニウム、亜鉛、銅などの金属板、セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、オレフィン系樹脂、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ナイロン、アクリル樹脂などの樹脂フィルム、金属被膜を有する紙、金属被膜を有する樹脂フィルムなどが挙げられる。本開示の水性インクを印字する記録媒体としては樹脂フィルムが好ましく、中でもポリエチレンテレフタレート、オレフィン系樹脂への適用が好ましい。
オレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンが挙げられ、特に二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)、無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)等のポリプロピレンへの適用が好ましい。
本開示の水性白色インクは、樹脂フィルム上に形成されることが好ましく、その態様は樹脂フィルムの水性インクから形成された印刷層を有する積層体である。
開示の積層体は、樹脂フィルムと印刷層の間にプライマー層を有しても良いし、有さなくても良いが、生産性の観点から有さないことが好ましく、樹脂フィルムに直接印刷層を形成することが好ましい。本開示の積層体は樹脂フィルム、印刷層の順に積層され、印刷層上に保護膜(ラミネート層)を有しても良いし、有さなくても良いが、生産性の観点から有さないことが好ましく、本開示の水性インクを用いることにより、プライマー層や保護膜(ラミネート層)を有さなくても基材への密着性に優れると共に耐引っ掻き傷性も良好な積層体が得られることが期待できる。
【実施例0047】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
<ルチル型酸化チタンの1次粒子径の測定>
走査型電子顕微鏡観察から算出した。
<ルチル型酸化チタン中に含まれる各元素質量部量の測定>
ルチル型酸化チタン中に含まれる各元素質量部の測定はRIGAKU社製ZSX Primus IIを用いた蛍光X線測定(XRF;X-ray Fluorescence)により実施した。
<酸化チタン分散体及び水性白色インクのD50粒子径、D99粒子径、1μm以上の粒子濃度>
ベックマン・コールター株式会社製Multisizer4eを用いて体積基準の粒子径を評価した。
<水性白色インクの沈降安定性測定>
試料50gを100ccのポリ容器に入れ50℃にて3か月間静置した後に、
〇;容器を軽く振盪した際に液面上澄み部と容器底部で不揮発分濃度の差が0.1%未満になる
×;容器を軽く振盪した際に液面上澄み部と容器底部で不揮発分濃度の差が0.1%以上になる
<水性白色インクの塗膜強度測定>
コロナ処理ポリエステルフィルム〔フタムラ化学(株)製、商品名:太閤ポリエステルフィルムFE2001〕及びコロナ処理OPPフィルム[フタムラ化学(株)製、商品名:FOR-AQ]を基材とし、バーコータ(#3)にて水性白色インクを塗工し100℃にて1分間乾燥させることによりPET、OPP各試験用シートを得た。
【0048】
-評価方法-
<耐スクラッチ性>
各試験用シートの印刷画像をナイロン製不織布で擦り、以下の評価基準に基づいて耐スクラッチ性を評価した。
〔評価基準〕
〇:印刷画像を擦っても画像がまったく剥がれない。
〇(-):印刷画像を擦ると画像がごく僅かだけ剥がれる。
△:印刷画像を擦ると画像が僅かに剥がれる。
×:印刷画像を擦ると画像が明確に剥がれる。
<耐水性>
各試験用シートの印刷画像を水を含ませたナイロン製不織布で擦り、以下の評価基準に基づいて耐水性を評価した。
〔評価基準〕
〇:印刷画像を擦っても画像がまったく剥がれない。
〇(-):印刷画像を擦ると画像がごく僅かだけ剥がれる。
△:印刷画像を擦ると画像が僅かに剥がれる。
×:印刷画像を擦ると画像が明確に剥がれる。
<密着性>
各試験用シートに対し粘着テープ(ニチバン(株)製、セロテープ(登録商標)No.405、24mm幅)を常温環境下で貼付け、1分間静置した。その後、180°方向に引き剥がし以下の評価基準に基づいて密着性を評価した。
〔評価基準〕
〇:印刷画像が全く剥れない。
〇(-):印刷画像が1~20%剥れる。
△:印刷画像が21~50%剥れる。
×:印刷画像が51~100%剥れる。
【0049】
[製造例1]
<酸化チタン分散体の調製>
250mLのポリ容器に純水40.77部、分散剤としてDisperbyk-190(ビックケミー・ジャパン社製、ポリアルキレングリコール基含有アクリル系水溶性樹脂、酸価10mgKOH/g、有効成分濃度40%)4.13部、ルチル型酸化チタンとして酸化チタンJR-403(テイカ社製、1次粒子径250nm)55.00部、消泡剤としてオルフィンD10―PG 0.10部(日信化学工業社製、アセチレン系界面活性剤)を投入した。続けて分散メディアとして直径0.1mmジルコニアビーズを100g投入した。ポリ容器を密閉し300分ペイントシェイカー処理した後に、ジルコニアビーズを目開き7umの紙製濾紙で吸引ろ過することでルチル型酸化チタン濃度55質量%の酸化チタン分散体1を得た。
酸化チタン分散体1における直径1.0μm以上の粒子体積濃度は、50×10μm/ml以下であった。
【0050】
<水不溶性重合体の調製>
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に、脱イオン水520部を仕込んだ。滴下ロートに、脱イオン水163部、乳化剤[(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソーブSR-10]の25%水溶液80部、シクロヘキシルメタクリレート322部、2-エチルヘキシルアクリレート103部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート75部からなる1段目滴下用プレエマルションを調製し、そのうち全単量体成分の総量の5%にあたる74部をフラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら70℃まで昇温し、5%過硫酸アンモニウム水溶液30部を添加し、重合を開始した。その後、滴下用プレエマルションの残部を120分間にわたりフラスコ内に均一に滴下した。
【0051】
滴下終了後、フラスコの内容物を70℃で60分間維持し、引き続いて、脱イオン水163部、乳化剤[(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソーブSR-10]の25%水溶液80部、シクロヘキシルメタクリレート310部、2-エチルヘキシルアクリレート105部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート75部および4-(メタ)アクリロイルオキシ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン〔(株)ADEKA製、商品名:アデカスタブLA-82〕10部からなる2段目滴下用プレエマルションと5%過硫酸アンモニウム水溶液30部を120分間にわたって均一にフラスコ内に滴下した。
【0052】
滴下終了後、フラスコの内容物を70℃で60分間維持し、25%アンモニア水を添加することによってpHを8に調整し、重合を終了した。得られた反応液を室温まで冷却した後、300メッシュの金網で濾過することにより、水不溶性重合体を調製した。得られた水不溶性重合体は樹脂エマルションであり、内層および外層を有する2層構造のエマルション粒子である。この水不溶性重合体における不揮発分の含有率は50%であり、重合体のカルボキシル基由来の酸価は0mgKOH/g、エマルションに含まれている樹脂エマルション粒子を構成している内層の樹脂のガラス転移温度は32℃であり、外層樹脂のガラス転移温度は32℃であった。最低増膜温度は40℃であり、平均粒子径は150nmであった。
【0053】
<水性白色インクの調製>
[実施例1]
水溶性有機溶媒としてプロピレングリコール15.0部、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル5.0部、上記酸化チタン分散体1を18.2部、バインダー樹脂として上記水不溶性重合体30部、界面活性剤としてKF-6011(信越化学工業株式会社製、PEG-11メチルエーテルジメチコン(ポリエーテル変性シリコーン界面活性剤)0.5部、架橋剤としてエポクロスWS500(日本触媒社製オキサゾリン系架橋剤)を1.5部、ワックス成分としてAQUACER531(ビックケミージャパン社製、酸化高密度ポリエチレン系WAXエマルション)を3部、イオン交換水を合計100質量部となる量をホモディスパーにて1000rpmで混合し、3μmのフィルター[アドバンテック社製、MCP-3-C10S]で濾過することで水性白色インク1を得た。
【0054】
[実施例2~6、比較例1~6]
水性白色インク100質量部中の白色顔料(A)と水不溶性重合体(B)の質量部、白色顔料(A)に対する水溶性重合体(C)の質量比を表1の通りに変更した以外は実施例1と同様の手法にて水性白色インクを調製した。
実施例1~6、比較例1~6にて作成した水性白色インク1~12に関する各種評価結果を表2に記載する。
実施例1~6記載の水性白色インクにおける直径1.0μm以上の粒子体積濃度は、100×10μm/ml以下であった。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
なお、各表に記載の略号は、以下のことを意味する。
BYK-190;ビックケミー・ジャパン社製、ポリアルキレングリコール基含有アクリル系水溶性樹脂、酸価10mgKOH/g、有効成分濃度40%
HL415-NH3;日本触媒社製ポリアクリル酸水溶液アクアリックHL415を和光純薬社製25%アンモニア水溶液でpH7.5に調整した水溶性ポリマー分散剤、酸価750mgKOH/g、分子量(MW)11700、有効成分濃度39%
Joncryl HPD196 ;BASF社製、スチレンアクリル系水溶性樹脂、酸価200mgKOH/g、有効成分濃度36%
【0058】
水性白色インク1~6は、沈降安定性および印刷後の塗膜強度が優れた品質のものが得られた。
一方で本発明の範囲外である水性白色インク7~12は、沈降安定性および印刷後の塗膜強度を両立することができなかった。