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特開2024-54491樹脂組成物、樹脂フィルム、プリプレグ、電子回路基板材料、及び硬化物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054491
(43)【公開日】2024-04-17
(54)【発明の名称】樹脂組成物、樹脂フィルム、プリプレグ、電子回路基板材料、及び硬化物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 53/02 20060101AFI20240410BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240410BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20240410BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
C08L53/02
C08L101/00
C08J5/24 CEQ
H05K1/03 610T
H05K1/03 610H
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160730
(22)【出願日】2022-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】武田 圭史
【テーマコード(参考)】
4F072
4J002
【Fターム(参考)】
4F072AA07
4F072AD02
4F072AD42
4F072AD52
4F072AD53
4F072AE02
4F072AF15
4F072AF23
4F072AF24
4F072AF32
4F072AG03
4F072AH02
4F072AJ22
4F072AK14
4F072AL13
4J002AA02X
4J002BD13X
4J002BD14X
4J002BD15X
4J002BD16X
4J002BP01W
4J002CD00X
4J002CD01X
4J002CD02X
4J002CD05X
4J002CD06X
4J002CF00X
4J002CH07X
4J002CM04X
4J002EK026
4J002EK036
4J002EK046
4J002EK056
4J002EK066
4J002FD146
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】低誘電率化及び低誘電正接化を達成でき、かつ取扱性にも優れた樹脂組成物を提供する。
【解決手段】下記に示す成分(I)、成分(II)、及び成分(III)を含む樹脂組成物。
成分(I):
水素化共役ジエン単量体単位を主体とし、水素化前のビニル結合量が1~20mоl%であるセグメント(C)と、
水素化共役ジエン単量体単位を主体とし、水素化前のビニル結合量が21~100mоl%であるセグメント(B)及び/又は芳香族ビニル単量体単位を主体とする重合体ブロック(S)と、
を、有し、
水素添加率が80mоl%以上であり、
-20℃~80℃に結晶化に由来するピーク温度を持ち、その結晶化熱量が0.1~10J/gである、
水素化重合体。
成分(II):硬化樹脂 (成分(I)を除く)
成分(III):ラジカル開始剤、及び/又は硬化剤(成分(II)を除く)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記に示す成分(I)、成分(II)、及び成分(III)を含む樹脂組成物。
成分(I):
水素化共役ジエン単量体単位を主体とし、水素化前のビニル結合量が1~20mоl%であるセグメント(C)と、
水素化共役ジエン単量体単位を主体とし、水素化前のビニル結合量が21~100mоl%であるセグメント(B)及び/又は芳香族ビニル単量体単位を主体とする重合体ブロック(S)と、
を、有し、
水素添加率が80mоl%以上であり、
-20℃~80℃に結晶化に由来するピーク温度を持ち、その結晶化熱量が0.1~10J/gである、
水素化重合体。
成分(II):硬化樹脂 (成分(I)を除く)
成分(III):ラジカル開始剤、及び/又は硬化剤(成分(II)を除く)
【請求項2】
前記水素化重合体における前記セグメント(C)の含有量が1~30質量%であり、前記重合体ブロック(S)の含有量が1~50質量%であり、前記セグメント(B)の含有量が20~98質量%である、
請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記水素化重合体の構造が、
(C)-(B)-(S))、又は(C)-(B)-(S)-(B)である、
請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記水素化重合体の水素化前の重量平均分子量(Mw)が2万~30万である、
請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対し、前記水素化重合体の含有量が5~60質量部である、
請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記の成分(II)が、
エポキシ樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、液晶ポリエステル系樹脂、及びフッ素系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂である、
請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の樹脂組成物からなる樹脂フィルム。
【請求項8】
基材と、
請求項1又は2に記載の樹脂組成物との複合体であるプリプレグ。
【請求項9】
前記基材がガラスクロスである、請求項8に記載のプリプレグ。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の樹脂組成物の硬化物を含む電子回路基板材料。
【請求項11】
請求項8に記載のプリプレグを含む電子回路基板材料。
【請求項12】
下記成分(I)、(II)、(III)を含む樹脂組成物を調製する工程と、
成分(I):
水素化共役ジエン単量体単位を主体とし、水素化前のビニル結合量が1~20mоl%であるセグメント(C)と、
水素化共役ジエン単量体単位を主体とし、水素化前のビニル結合量が21~100mоl%であるセグメント(B)及び/又は芳香族ビニル単量体単位を主体とするセグメント(S)と、
を有し、
水素添加率が80mоl%以上であり、
-20℃~80℃に結晶化に由来するピーク温度を持ち、その結晶化熱量が0.1~10J/gである水素化重合体。
成分(II):硬化樹脂 (成分(I)を除く)
成分(III):ラジカル開始剤、及び/又は硬化剤(成分(II)を除く)
前記樹脂組成物を硬化させる工程と、
を、有する、
硬化物の製造方法。
【請求項13】
前記樹脂組成物を基材に積層させ、プリプレグを形成する工程を、さらに有する、
請求項12に記載の硬化物の製造方法。
【請求項14】
前記プリプレグを金属箔上に積層し、前記樹脂組成物を硬化させる、
請求項13に記載の硬化物の製造方法。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、樹脂フィルム、プリプレグ、電子回路基板材料、及び硬化物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報ネットワーク技術の著しい進歩、及び情報ネットワークを活用したサービスの拡大に伴い、電子機器には情報量の大容量化、及び処理速度の高速化が求められている。これらの要求に応えるため、プリント基板やフレキシブル基板等の基板用材料には、誘電損失の小さい材料が求められている。
従来から、誘電損失の低下を図る観点から、低誘電率及び低誘電正接であり、かつ強度、耐熱性等の機械物性も満足する材料として、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂やポリフェニレンエーテル系樹脂等の熱可塑性樹脂を主成分とした樹脂組成物の硬化物が検討されている。
しかしながら、低誘電率及び低誘電正接の観点からは、未だ改良の余地があり、情報量及び処理速度が限定されることがある、という問題点を有している。
【0003】
上述したような問題点を改良する目的で、所定のゴム成分を上述した樹脂組成物に添加する技術や、前記ゴム成分を主成分とする前記樹脂組成物の硬化物が提案されている。
前記ゴム成分としてスチレン系エラストマーは、前記樹脂組成物の低誘電率化及び低誘電正接化を図るために優れた効果を発揮し、伝送速度の高速化や伝送損失の低減化に効果が期待される材料であるため、プリント配線基板において多層化された配線間の絶縁層用の材料として用いられている。具体的には、プリント配線基板の高性能化及び多層化のために、前記スチレン系エラストマーを構成材料として用いたプリプレグの積層体をプリント配線基板に適用する試みがなされている。
また、前記積層体には、低誘電率及び低誘電正接以外の物性も求められており、その物性の一つとして耐湿熱性が挙げられる。具体的には、前記積層体は、内蔵されている電子機器の使用環境に応じた温度・湿度に晒されるため、かかる環境下においても物性の悪化が小さく、前記積層体における層間の剥がれや膨れを防止できることが求められている。
【0004】
前記樹脂組成物及び硬化物において、硬化樹脂及び硬化剤の系と、エラストマーやオリゴマー等の添加剤の系との間で相分離が起きることが、耐湿熱性が悪化する要因とされており、かかる耐湿熱性を改良させるために相溶化剤を添加した樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2021/010432号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したような樹脂組成物にスチレン系エラストマーを添加した時、フィラーなどの補強材を配合しない場合には、樹脂組成物を含侵させたガラスクロス表面にべたつき(タック)が発生し、裁断機等を汚染させ、その汚染に伴う洗浄メンテナンスが増え、生産工程上が発生し、取扱性が悪いという問題点を有している。また、前記特許文献1に開示されている樹脂組成物よりも更なる低誘電率化、低誘電正接化が求められている。さらには、相溶化剤やフィラーを添加する時に用いる分散剤等が積層体の製造におけるプリプレグの乾燥工程や、プリプレグ及びフィルムの硬化工程で析出してしまうという問題点もある。
【0007】
そこで本発明においては、上述した従来技術の問題点に鑑み、低誘電率及び低誘電正接を達成でき、かつ取扱性にも優れた樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上述した従来技術の課題を解決すべく鋭意検討した結果、所定の構造を有し、所定の水素添加率であり、所定の温度領域に結晶化に由来するピーク温度を持ち、その結晶化熱量が所定の範囲である水素化ブロック共重合体を含む樹脂組成物が、低誘電率及び低誘電正接化を達成でき、かつ取扱性にも優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0009】
〔1〕
下記に示す成分(I)、成分(II)、及び成分(III)を含む樹脂組成物。
成分(I):
水素化共役ジエン単量体単位を主体とし、水素化前のビニル結合量が1~20mоl%であるセグメント(C)と、
水素化共役ジエン単量体単位を主体とし、水素化前のビニル結合量が21~100mоl%であるセグメント(B)及び/又は芳香族ビニル単量体単位を主体とする重合体ブロック(S)と、
を、有し、
水素添加率が80mоl%以上であり、
-20℃~80℃に結晶化に由来するピーク温度を持ち、その結晶化熱量が0.1~10J/gである、
水素化重合体。
成分(II):硬化樹脂 (成分(I)を除く)
成分(III):ラジカル開始剤、及び/又は硬化剤(成分(II)を除く)
〔2〕
前記水素化重合体における前記セグメント(C)の含有量が1~30質量%であり、前記重合体ブロック(S)の含有量が1~50質量%であり、前記セグメント(B)の含有量が20~98質量%である、前記〔1〕に記載の樹脂組成物。
〔3〕
前記水素化重合体の構造が、(C)-(B)-(S))、又は(C)-(B)-(S)-(B)である、前記〔1〕又は〔2〕に記載の樹脂組成物。
〔4〕
前記水素化重合体の水素化前の重量平均分子量(Mw)が2万~30万である、前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載の樹脂組成物。
〔5〕
前記樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対し、前記水素化重合体の含有量が5~60質量部である、前記〔1〕乃至〔4〕のいずれか一に記載の樹脂組成物。
〔6〕
前記の成分(II)が、エポキシ樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、液晶ポリエステル系樹脂、及びフッ素系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂である、前記〔1〕乃至〔5〕のいずれか一に記載の樹脂組成物。
〔7〕
前記〔1〕乃至〔6〕のいずれか一に記載の樹脂組成物からなる樹脂フィルム。
〔8〕
基材と、
前記〔1〕乃至〔6〕のいずれか一に記載の樹脂組成物との複合体であるプリプレグ。
〔9〕
前記基材がガラスクロスである、前記〔8〕に記載のプリプレグ。
〔10〕
前記〔1〕乃至〔6〕のいずれか一に記載の樹脂組成物の硬化物を含む電子回路基板材料。
〔11〕
前記〔8〕又は〔9〕に記載のプリプレグを含む電子回路基板材料。
〔12〕
下記成分(I)、(II)、(III)を含む樹脂組成物を調製する工程と、
成分(I):
水素化共役ジエン単量体単位を主体とし、水素化前のビニル結合量が1~20mоl%であるセグメント(C)と、
水素化共役ジエン単量体単位を主体とし、水素化前のビニル結合量が21~100mоl%であるセグメント(B)及び/又は芳香族ビニル単量体単位を主体とするセグメント(S)と、
を有し、
水素添加率が80mоl%以上であり、
-20℃~80℃に結晶化に由来するピーク温度を持ち、その結晶化熱量が0.1~10J/gである水素化重合体。
成分(II):硬化樹脂 (成分(I)を除く)
成分(III):ラジカル開始剤、及び/又は硬化剤(成分(II)を除く)
前記樹脂組成物を硬化させる工程と、
を、有する、硬化物の製造方法。
〔13〕
前記樹脂組成物を基材に積層させ、プリプレグを形成する工程を、さらに有する、前記〔12〕に記載の硬化物の製造方法。
〔14〕
前記プリプレグを金属箔上に積層し、前記樹脂組成物を硬化させる、前記〔13〕に記載の硬化物の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、低誘電率化及び低誘電正接化を達成でき、かつ取扱性にも優れた樹脂組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。
なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではなく、本発明は、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0012】
〔樹脂組成物〕
本実施形態における樹脂組成物は、下記に示す成分(I)、成分(II)、及び成分(III)を含む。
成分(I):
水素化共役ジエン単量体単位を主体とし、水素化前のビニル結合量が1~20mоl%セグメント(C)と、
水素化共役ジエン単量体単位を主体とし、水素化前のビニル結合量が21~100mоl%であるセグメント(B)及び/又は芳香族ビニル単量体単位を主体とする重合体ブロック(S)と、
を、有し、
水素添加率が80mоl%以上であり、
-20℃~80℃に結晶化に由来するピーク温度を持ち、その結晶化熱量が0.1~10J/gである、水素化重合体。
成分(II):硬化樹脂 (成分(I)を除く)
成分(III):ラジカル開始剤、及び/又は硬化剤(成分(II)を除く)
【0013】
本実施形態の樹脂組成物は、上記構成を有することにより、低誘電率化及び低誘電正接化を達成でき、かつ取扱性も優れたものとなる。
【0014】
(成分(I))
成分(I)は、ビニル結合量の異なるセグメントを有する共役ジエン化合物の単独重合体であるか、共役ジエン単量体単位及び芳香族ビニル単量体単位を含む共重合体である。
本明細書中、重合前の状態を「化合物」、重合体の構成要素の状態を「単量体単位」と記載する。
【0015】
成分(I)は、成分(I)中の共役ジエン単量体単位の含有量は、30質量%以上が好ましく、共役ジエン単量体単位を主体とすることが好ましい。
共役ジエン単量体単位が30質量%以上であることにより、成分(I)に柔軟性が発現し、本実施形態の樹脂組成物の硬化物の曲げ弾性率が改良される傾向にある。
【0016】
成分(I)は、共役ジエン単量体単位を主体とし、水素化前のビニル結合量が1~20mоl%であるセグメント(C)と、共役ジエン単量体単位を主体とし、水素化前のビニル結合量が21~100mоl%であるセグメント(B)及び/又は芳香族ビニル単量体単位を主体とする重合体ブロック(S)を有し、水素添加率が80mоl%以上であり、-20℃~80℃に結晶化に由来するピーク温度を持ち、その結晶化熱量が0.1~10J/gである、水素化重合体である。
【0017】
本実施形態の樹脂組成物を構成する成分(I)において、前記(C)、(B)のセグメントは、成分(I)のポリマー構造によりそれぞれ別個に定義される。
共役ジエン単量体単位が連続して重合している場合、一般的には共役ジエン「ブロック」と称されることが多いが、本願明細書においてはセグメント(C)と、セグメント(B)と記載する。これは、セグメント(C)とセグメント(B)とはいずれも共役ジエン単量体単位を主体とし、ビニル結合量のみ異なるため、成分(I)がセグメント(C)とセグメント(B)のみからなる重合体の場合に、「ブロック共重合体」と呼ぶのが適切でないとも考えられるためである。すなわち、本願明細書中、「セグメント」は「ブロック」の上位概念の用語として使用し、一般的な定義からも「ブロック共重合体」であるポリマーを構成するセグメントである(S)は、「重合体ブロック」と呼ぶこととする。
【0018】
本実施形態において、セグメント又は重合体ブロックが、所定の「単量体単位を主体とする」とは、対象の単量体単位を、対象のセグメント又は重合体ブロック中に、60質量%以上含むことをいうものとする。
本実施形態の樹脂組成物の低誘電率、低誘電正接の観点から、共役ジエン単量体単位を主体とするセグメント(C)における共役ジエン単量体単位の含有量は、当該セグメントが複数ある場合も考慮して、それぞれ独立して、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。
セグメント(B)は、共役ジエン単量体単位を主体とし、共役ジエン単量体単位の含有量は、本実施形態の樹脂組成物の低誘電率、低誘電正接の観点から、当該セグメントが複数ある場合も考慮して、それぞれ独立して、60質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上である。
共役ジエン単量体単位の含有量は、核磁気共鳴スペクトル解析によって測定できる。
なお、共役ジエン単量体単位とは、ブロック共重合体を構成する単位であって、共役ジエン化合物に由来する構成単位をいう。
【0019】
共役ジエン化合物とは、1対の共役二重結合を有するジオレフィンである。
ジオレフィンとしては、以下に限定されないが、例えば、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、及びファルネセンが挙げられる。特に一般的なジオレフィンとしては、1,3-ブタジエン、及びイソプレンが挙げられる。これらは一種のみならず二種以上を使用してもよい。
【0020】
セグメント(C)、(B)における「水素化前のビニル結合量」とは、水素添加前の共役ジエン単量体単位の1,2-結合、3,4-結合及び1,4-結合の結合様式で組み込まれているうちの、1,2-結合及び3,4-結合で組み込まれているものの割合として定義される。
「水素化前のビニル結合量」と表しているのは、水素化された構造は「ビニル結合」でなくなるためであって、水素化反応前の重合体によらないと測定できない指標という認識ではない。ビニル結合の一部が水素化した構造を含む水素化重合体においては、ビニル結合が水素化した構造の含有量と、ビニル結合のまま維持されている構造の含有量を合計することで、「水素化前のビニル結合量」を特定することが可能である。
【0021】
重合体セグメント(C)、(B)の水素化前のビニル結合量は、各セグメントの重合ステップ終了後のポリマーを抜き取り、後述する実施例に記載のNMRとGPCで、それぞれのビニル結合量と分子量を測定することにより算出できる。
セグメント(C)のビニル結合量については、セグメント(C)の重合開始点から順に六等分に分割して(この領域を「分割領域」と呼ぶ)それぞれのビニル結合量を求め、そのビニル結合量の最大値Mvhと最小値Mvlの差(Mvh-Mvl)が5mоl%を超えるMvhの分割領域を除外して、Mvh-Mvlの差が5mоl%以内になるまで分割領域の除外を繰り返して、セグメント(C)を同定する。
一方、セグメント(B)のビニル結合量については、セグメント(B)の重合開始点から順に十等分に分割して、それぞれのビニル結合量を求めることとする以外は同様の手法を用いてセグメント(B)を同定する。
【0022】
成分(I)の結晶性は、セグメント(C)が一定以上の大きさで存在することにより発現する。セグメント(B)とセグメント(B)が隣接している場合、通常は一つのブロックとして捉えられるため、ブロック全体としてのビニル結合量が把握されることになる。しかしながら、ブロック全体の平均値としてのビニル結合量がいくつであるかではなく、結晶性を示す部分が一部に存在することによって「-20℃~80℃に結晶化に由来するピーク温度を持ち、その結晶化熱量が0.1~10J/gである」を満足するかどうかが決まるため、本実施形態においては、成分(I)を構成するセグメントごとにビニル結合量を特定する。
他方、セグメント(B)は、本実施形態の樹脂組成物が、所定の溶液中に溶解及び/又は相溶しやすくなるという特性に寄与するが、この特性もセグメント(B)に相当する部分が有るかどうかに依存し、上述したようなブロック全体としてのビニル結合量の平均値には依らないため、やはり本実施形態においては、成分(I)を構成するセグメントごとにビニル結合量を特定することとした。
【0023】
成分(I)のセグメント(B)、(C)のビニル結合量は、重合反応の各ステップごとに重合溶液に添加する極性化合物等、ルイス塩基、エーテル、アミン等のビニル化剤の添加量や重合温度、フィード速度を調整することにより制御することができる。
セグメント(C)と(B)が連続する場合のビニル結合量は、重合時間や単量体のフィード量により各セグメントの大きさを決定し、その重合時間終了後にビニル化剤を後添加することで制御でき、ビニル結合量の違う二つのセグメントを形成することができる。
例えば、セグメント(C)を形成する重合ステップで、Bu-Li 1mоlに対してビニル化剤となるTMEDAを0.5mоl以下程度を加えて重合し、その後、続けてセグメント(B)を形成する重合ステップで、Bu-Li 1mоlに対して、TMEDAを1~2mоl加えて重合することで、ビニル結合量の違うセグメント(C)、(B)が連続した重合体を製造することができる。
【0024】
成分(I)のセグメント(C)の水素化前のビニル結合量は、本実施形態の樹脂組成物の耐アルカリ薬液性の観点から、1~20mоl%である。またさらに、耐湿熱性の改良の観点から、前記のビニル結合量は好ましくは3~18mоl%であり、より好ましくは5~15mоl%である。
【0025】
成分(I)を、後述する成分(II)、成分(III)と混ぜ合わせた本実施形態の樹脂組成物において、前記の成分(I)に含まれる低ビニル結合量と高水素化率に起因する結晶性を有するセグメント(C)が、本実施形態の樹脂組成物中に分散した状態になることで、非相溶な部分が生じると考えられる。成分(I)、(II)、及び(III)を混ぜ合わせたときには、樹脂成分同士が絡み合うため、樹脂組成物全体としては、結晶性は弱まるが、成分(I)のセグメント(C)が非相溶系となり、前記非相溶な部分が樹脂組成物の流動性を阻害することが、本実施形態の樹脂組成物の硬化物の低誘電率・誘電正接化につながると考えられる。かかる観点から、成分(I)中のセグメント(C)の含有量が1質量%以上であることが好ましい。結晶性を有する部分が一定量以上存在し、数nmオーダーで均一に分散することで、アルカリ薬液をはじく効果と前記硬化物の低べたつき性をもたらすと考えられる。本実施形態の樹脂組成物は、-20℃~80℃に結晶化に由来するピーク温度を持つような結晶ピークに由来するセグメント(C)が部分的に非相溶となる分散状態をとっていると考えられる。
【0026】
また、セグメント(B)の水素化前のビニル結合量は、本実施形態の樹脂組成物の耐湿熱性の観点から、21~100mоl%である。さらなる耐湿熱老化性改良の観点から、セグメント(B)の水素化前のビニル結合量は、好ましくは25~95mol%であり、より好ましくは30~90mol%である。
【0027】
本実施形態の樹脂組成物の硬化物の耐湿熱性の観点から、セグメント(C)がブタジエンからなり、セグメント(B)がイソプレンからなるものであることが好ましい。
また、前記のセグメント(C)、(B)がそれぞれブタジエン、イソプレンからなる場合、成分(I)の水素化重合体に含まれる共役ジエン単量体単位100mоl%に対し、ブチレン量又はプロピレン量は、本実施形態の樹脂組成物の低べたつき性の観点から、50~95mоl%が好ましく、より好ましくは57~87mol%であり、さらに好ましくは65~80mol%である。
上記のブチレン量及びプロピレン量は、後述する実施例に記載するNMRにより測定することができる。なお、上記のブチレン量及びプロピレン量は、極性化合物等、ルイス塩基、エーテル、アミン等のビニル化剤の使用、及び、水素化率を調整することにより、上記数値範囲に制御することができる。
【0028】
<成分(I)の水素添加率>
本実施形態の樹脂組成物を構成する成分(I)の水素化重合体の水素化率、すなわち、水素化重合体中に含まれる全共役ジエン単量体単位の水素化率は、本実施形態の樹脂組成物の低誘電率・低誘電正接の観点から、80mol%以上である。またさらに、本実施形態の樹脂組成物の耐デスミア溶剤性の観点から好ましくは85mol%以上であり、より好ましくは90mol%以上、さらに好ましくは95mol%以上である。
成分(I)の水素添加率を80mol%以上とすることで、セグメント(C)の結晶度が高まり、本実施形態の樹脂組成物の低誘電率・低誘電正接が良好となる。また、水素添加率が増加し、炭素-炭素二重結合が減少することにより湿熱老化による劣化を防ぎ、デスミア工程に使われる粗化液(酸化剤)による反応を抑えることができる。
水素化重合体の共役ジエン単量体単位中に含まれる全不飽和基単位の水素添加率は、後述する実施例に記載する方法により測定することができる。
水素添加率は、例えば、水素添加時の触媒量の調整によって制御することができ、水素添加速度は、例えば、水素添加時の触媒量、水素フィード量、圧力及び温度等を調整することによって制御することができる。
【0029】
<成分(I)の結晶化に由来するピーク温度、結晶化熱量>
成分(I)水素化重合体は、-20~80℃に結晶化に由来するピーク温度を持ち、結晶化熱量が0.1~10J/gである。
上述したような特定の結晶性を有することが、成分(I)の水素化重合体を含有する本実施形態の樹脂組成物の低誘電率・低誘電正接に寄与する。
結晶化熱量が低すぎると低誘電率・低誘電正接化を発揮できず、結晶化熱量が高すぎると、ワニスに使われる溶媒に溶けなくなり、後述する成分(II)の硬化樹脂に対して相溶しにくくなる傾向にあるため、樹脂組成物の誘電率・誘電正接が増加してしまう傾向にあると考えられる。
結晶化に由来するピーク温度が-20℃であることにより、本実施形態の樹脂組成物の常温におけるタックの悪化を効果的に防止でき、80℃以下であることにより、後述する成分(II)の硬化樹脂に対して相溶しやすくなり、本実施形態の樹脂組成物の低誘電率化・低誘電正接化を図ることができる。
鋭意検証した結果、本実施形態の樹脂組成物のタックと低誘電率・低誘電正接のバランスの観点から、成分(I)の結晶化に由来するピーク温度の範囲は、-20℃~80℃であり、好ましくは-15℃~75℃であり、より好ましくは-10℃~70℃である。
【0030】
成分(I)は、結晶化熱量が、本実施形態の樹脂組成物の低べたつき性と、低誘電率・低誘電正接のバランスの観点から、0.1~10J/gであり、好ましくは0.5~9.8J/gであり、より好ましくは1~9.5J/gである。
結晶化ピーク温度、結晶化熱量は、後述する実施例に記載のDSCにより測定できる。
成分(I)の結晶化ピーク温度範囲と、結晶化熱量は、セグメント(C)の含有量、及び、極性化合物等、ルイス塩基、エーテル、アミン等のビニル化剤の使用、水素添加率を調整することにより、上記数値範囲に制御できる。例えば、セグメント(C)の含有量が増えるほど結晶化ピーク温度範囲、結晶化熱量は高くなる傾向にあり、セグメント(C)重合時のビニル化剤が増えるほど結晶化ピーク温度範囲、結晶化熱量は低くなる傾向にある。また、水素添加率が低くなると、結晶化ピーク温度範囲、結晶化熱量は低くなる傾向にある。
例えば、水素添加率80mоl%にした場合、前記の結晶化温度と結晶化熱量を満たすためには、セグメント(C)を構成するポリブタジエンを5~20質量%%添加し、重合段階で添加したn-ブチルリチウム1モルに対してビニル化剤としてN,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)を0.01~0.10モル添加することが有効である。
【0031】
<重合体ブロック(S)>
成分(I)の水素化重合体は、芳香族ビニル単量体単位を主体とする重合体ブロック(S)を少なくとも一つ有してもよい。
本実施形態の樹脂組成物の耐湿熱性の観点から重合体ブロック(S)におけるビニル芳香族単量体単位の含有率は好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。
水素化重合体中のビニル芳香族単量体単位の含有量は、核磁気共鳴スペクトル解析によって測定できる。
ビニル芳香族単量体単位とは、水素化重合体を構成する単位であって、ビニル芳香族化合物に由来する構成単位をいう。
芳香族ビニル化合物としては、以下に限定されないが、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1-ジフェニルエチレン、N,N-ジメチル-p-アミノエチルスチレン、N,N-ジエチル-p-アミノエチルスチレン等のビニル芳香族化合物が挙げられる。これらの中でも、入手性及び生産性の観点から、スチレン、α-メチルスチレン、4-メチルスチレンが好ましい。特に好ましくはスチレンである。
重合体ブロック(S)は、1種の芳香族ビニル単量体単位で構成されていてもよいし、2種以上から構成されていてもよい。
【0032】
成分(I)の水素化重合体中の、セグメント(C)の含有量は、本実施形態の樹脂組成物の耐アルカリ溶剤性、低べたつき性の観点から、1~30質量%が好ましい。1質量%以上とすることにより容易に合成することでき、30質量%以下とすることにより、樹脂組成物の低べたつき性を達成できる。また、耐湿熱性改良の観点から、水素化重合体中のセグメント(C)の含有量は、より好ましくは2~17質量%であり、さらに好ましくは3~15質量%である。
成分(I)の水素化重合体中のセグメント(B)の含有量は、本実施形態の樹脂組成物の耐湿熱性の観点から20~98質量%が好ましい。さらに吸湿性を改良する観点から、セグメント(B)の含有量は、より好ましくは75~95質量%であり、さらに好ましくは80~90質量%である。
成分(I)の水素化重合体中の重合体ブロック(S)の含有量は、1~50質量%が好ましい。1質量%以上とすることにより容易に合成でき、50質量%以下とすることにより、前記樹脂組成物の硬化物の低誘電率、低誘電正接や反り低減の効果が得られる傾向にある。重合体ブロック(S)の含有量は、更なる耐湿熱性の観点から、より好ましくは2~15質量%であり、さらに好ましくは3~10質量%である。
セグメント(C)と重合体ブロック(S)の含有量の合計は本実施形態の樹脂組成物の熱線膨張係数の観点から、2~31質量%であることが好ましく、より好ましくは6~25質量%、さらに好ましくは8~20質量%である。
【0033】
セグメント(C)、(B)、重合体ブロック(S)の含有量は、後述する実施例に記載のNMRにより測定することができる。
前記の含有量は重合モノマーのフィード組成、フィード量、フィード速度、重合温度、開始剤等を調整することにより、上記数値範囲に制御することができる。
【0034】
<水素化重合体の動的粘弾性>
本実施形態において、成分(I)の水素化重合体は、次のように特定することもできる。
本実施形態の樹脂組成物を構成する成分(I)水素化重合体を、動的粘弾性測定(1Hz)に供することにより得られるtanδピークは、-45℃を超え10℃以下の範囲にあり、かつ、tanδピークの値が1.0以上であり、かつ、tanδピークの半値幅が20℃以下である。
前記tanδピークは、本実施形態の樹脂組成物への湿熱老化に伴う破断強度の観点から、-40~0℃の範囲にあることが好ましく、-35~-5℃の範囲にあることがより好ましい。
また、tanδピークの値は、1.2以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましい。
さらに、tanδピークの半値幅は、本実施形態の樹脂組成物の寸法安定性の観点から、18℃以下であることが好ましく、16℃以下であることがより好ましい。
上述の観点より、tanδピークが-45℃を超え10℃以下の範囲にあり、かつ、tanδピークの値が1.2以上であり、かつ、tanδピークの半値幅が18℃以下であることが特に好ましい。
【0035】
前記tanδピークは、極性化合物等、ルイス塩基、エーテル、アミン等のビニル化剤の使用量を調整することによって制御でき、後述する実施例に記載する水素化重合体の好ましい製造方法に従って製造する場合、上述した範囲を満たす傾向にある。
例えば、後述する実施例1に示す重合体セグメント(B)の重合時のビニル化剤の量を減らしていくと、tanδピーク温度は低くなる傾向にある。また、水素添加率を調整することによってもtanδピーク温度を制御することができ、水素添加率が低くなると、tanδピーク温度は低くなる傾向にある。
また、tanδピークの値と、半値幅の制御については、後述する実施例に記載する水素化重合体の好ましい製造方法に従って製造する場合、上述した範囲を満たす傾向にある。例えば、セグメント(B)重合時のビニル化剤の量が多い方が、tanδピーク値は高くなり、半値幅は狭くなる傾向にある一方、分子量分布が広くなる傾向にある。そこで、前記の制御に加えて、セグメント(B)の含有量、及び、重合温度を適宜調整することにより、上記の範囲に制御しやすくなる傾向にある。また、セグメント(B)の含有量が多くなるほどtanδピーク値は高くなる傾向にあり、半値幅は狭くなる傾向にある。さらに、セグメント(B)重合時の重合温度を等温(温度差が少ない条件)で重合するほどtanδピーク値は高くなる傾向にあり、半値幅は狭くなる傾向にある。特に水素化重合体に結晶性を発現させる場合、ビニル分布のムラをなくすように調整する必要があり、等温での重合が好ましく、tanδピーク値が高く半値幅が狭くなる傾向になる。
【0036】
-20℃~80℃に結晶化に由来するピーク温度を持ち、0.1~10J/gの結晶化熱量を有しつつ、-45℃を超え10℃以下にtanδピークを示すように、成分(I)である水素化重合体の構造を設計する場合、セグメント(C)の水素化前のビニル結合量が2mоl%~18mоl%、セグメント(B)の水素化前のビニル結合量が25mоl%~85mоl%で、水素添加率が83mоl%以上であり、セグメント(C)を六等分した時のビニル結合量の最大値(Mvh)と最小値(Mvl)の差が4.6%以下、セグメント(B)を十等分した時の(Mvh-Mvl)が4.8%以下とすることが好ましい。
【0037】
<水素化重合体の構造>
本実施形態の樹脂組成物を構成する成分(I)の水素化重合体の構造は、特に限定されないが、例えば、下記式により表されるような構造を有するものが挙げられる。
C-S
C-S-C
C-B-C
C-B
S-C-B
(C-S)-B
(C-B)-S
(C-B-S)
(C-B-S)-(B)
(C-B-S-(B))
(C-B-S)-X
(C-B-S-(B))-X
(上式において、C、B、Sはそれぞれ、セグメント(C)、(B)、重合体ブロック(S)を表す。複数存在する場合は異なっていても同じでもよい。nは1以上で、好ましくは1~3の整数である。mは2以上を示し、好ましくは2~6の整数である。Xはカップリング剤残基又は多官能開始剤残基を示す。)
【0038】
特に、C-B-S、C-B-S-(B)の構造式で表される水素化重合体であることが好ましい。
【0039】
前記水素化重合体が分子中に、水素化重合体の末端に存在するセグメント(B)と1個以上のセグメント(B)を同時に含む場合、本実施形態の樹脂組成物の耐熱性の観点から、水素化重合体の末端に存在するセグメント(B)の含有量が、水素化重合体中の1~10質量%であることが好ましい。さらに、低べたつき性の改良の観点から、水素化重合体の末端に存在するセグメント(B)の含有量は、水素化重合体(I)中の1.5~7質量%であることがより好ましく、2~5質量%であることがより好ましい。
成分(I)の水素化重合体の末端に存在するセグメント(B)の含有量は、重合モノマーのフィード組成を調整することにより制御することができる。
【0040】
カップリング剤残基としては、2官能カップリング剤や多官能カップリング剤を用いることにより発生する残基が挙げられる。
2官能基カップリング剤として、以下に限定されないが、例えば、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジブロモシラン等のジハロゲン化合物;安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸フェニル、フタル酸エステル類等の酸エステル類等が挙げられる。
3官能基以上の多官能カップリング剤としては、以下に限定されないが、例えば、3価以上のポリアルコール類、エポキシ化大豆油、ジグリシジルビスフェノールA等の多価エポキシ化合物;式R1(4-n)SiX(ここで、R1は炭素数1~20の炭化水素基、Xはハロゲン、nは3又は4の整数を表す)で表されるハロゲン化珪素化合物、及びハロゲン化錫化合物が挙げられる。
ハロゲン化珪素化合物としては、以下に限定されないが、例えば、メチルシリルトリクロリド、t-ブチルシリルトリクロリド、四塩化珪素、及びこれらの臭素化物等が挙げられる。
ハロゲン化錫化合物としては、以下に限定されないが、例えば、メチル錫トリクロリド、t-ブチル錫トリクロリド、四塩化錫等の多価ハロゲン化合物等が挙げられる。また、炭酸ジメチルや炭酸ジエチル等も使用可能である。
【0041】
<水素化重合体の重量平均分子量>
成分(I)水素化重合体の重量平均分子量(Mw)(以下、「Mw」ともいう。)は、特に限定されないが、後述する硬化樹脂(II)との相溶性や、本実施形態の樹脂組成物の曲げ弾性改良の観点から、2万~30万であることが好ましく、3万~28万であることがより好ましく、5万~26万であることがさらに好ましい。
上述したように、セグメント(C)の含有量が1~30質量%であることで、水素化重合体に結晶性を発現されるが、その時のセグメント(C)の重量平均分子量は2,000以上50,000以下であることが好ましい。
重量平均分子量(Mw)は、GPCによる測定で得られるクロマトグラムのピークの分子量を、市販の標準ポリスチレンの測定から求めた検量線(標準ポリスチレンのピーク分子量を使用して作成)に基づいて求めた重量平均分子量(Mw)である。
水素化重合体の分子量分布、及び高分子量成分の含有率と低分子量成分の含有率の合計も、同様にGPCによる測定から求めることができ、分子量分布は重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比率として算出され、後述する高分子量成分の含有率と低分子量成分の含有率の合計は、高分子量成分と、低分子量成分の合計ピーク面積をピークの総面積で割った値として求められる。
水素化重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw)/(Mn)は、硬化樹脂(II)への相溶性の観点から、1.01~1.30であることが好ましく、より好ましくは1.02~1.25であり、さらに好ましくは1.03~1.20である。
(Mw)/(Mn)は、重合時間、極性物質等の添加量、重合温度を適切に設定することにより、上記数値範囲に制御することができる。
【0042】
<樹脂組成物中の成分(I)の含有量>
本実施形態の樹脂組成物中の成分(I)水素化重合体の含有量は、特に限定されないが、本実施形態の樹脂組成物の樹脂固形分100質量部に対して5質量部以上60質量部以下であることが好ましい。さらに、成分(I)の含有量の下限値は本実施形態の樹脂組成物の柔軟性、低誘電率、低誘電正接の観点から、より好ましくは6質量部以上、さらに好ましくは10質量部以上である。さらに、成分(I)の含有量の上限値は、本実施形態の樹脂組成物のガラス転移温度低下抑制、熱線膨張増加抑制、低べたつき性の観点から、より好ましくは50質量部以下、さらに好ましくは40質量部以下である。
前記樹脂組成物の樹脂固形分とは、樹脂組成物からフィラーと溶剤を除いた成分であるものとする。
【0043】
(成分(II) 硬化樹脂)
本実施形態の樹脂組成物は、成分(II):硬化樹脂(前記成分(I)を除く)を含有する。
成分(II):硬化樹脂としては、本実施形態の樹脂組成物の耐熱性、接着性の観点から、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、液晶ポリエステル系樹脂、及びフッ素系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、より好ましくはエポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂である。
【0044】
本実施形態の樹脂組成物の耐熱性の観点から、前記ポリイミド系樹脂としては、繰り返し単位にイミド結合を有し、ポリイミド樹脂と称される範疇に属するものであればよく、例えば、テトラカルボン酸又はその二無水物とジアミンを重縮合(イミド結合)して得られる一般的なポリイミドの構造を有する樹脂が挙げられる。本実施形態の樹脂組成物の硬化性の観点から、前記ポリイミド構造の末端に不飽和基を有することが好ましい。末端に不飽和基を有するポリイミド樹脂としては、以下に限定されないが、例えば、マレイミド型ポリイミド樹脂、ナジイミド型ポリイミド樹脂、アリルナジイミド型ポリイミド樹脂等が挙げられる。
【0045】
テトラカルボン酸又はその二無水物としては、以下に限定されないが、例えば、芳香族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、脂肪族テトラカルボン酸二無水物等が挙げられ、1種単独で用いてもよく2種以上を併用して用いてもよい。
ジアミンとしては、以下に限定されないが、例えば、ポリイミドの合成に通常用いられる芳香族ジアミン類、脂環式ジアミン類、脂肪族ジアミン類等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
また、前記テトラカルボン酸又はその二無水物、ジアミンの少なくとも一方において、本実施形態の樹脂組成物の低誘電率化及び低誘電正接化の観点で、フッ素基、トリフルオロメチル基、水酸基、スルホン基、カルボニル基、複素環、長鎖アルキル基、アリル基、等からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を1つ又は複数有していてもよい。
【0046】
また、市販のポリイミド系樹脂を用いてもよく、例えば、ネオプリム(登録商標)C-3650(三菱ガス化学(株)製、商品名)、同C-3G30(三菱ガス化学(株)製、商品名)、同C-3450(三菱ガス化学(株)製、商品名)、同P500(三菱ガス化学(株)製、商品名)、BT(ビスマレイミド・トリアジン)レジン(三菱ガス化学(株
)製)、JL-20(新日本理化製、商品名)(これらのポリイミド樹脂のワニスには、シリカが含まれていてもよい)、新日本理化社製のリカコートSN20、リカコートPN20、I.S.T社製のPyre-ML、宇部興産社製のユピア-AT、ユピア-ST、ユピア-NF、ユピア-LB、日立化成社製のPIX-1400、PIX-3400、PI2525、PI2610、HD-3000、AS-2600、昭和電工株式会社製のHPC-5000、HPC-5012、HPC-1000、HPC-5020、HPC-3010、HPC-6000、HPC-9000、HCI-7000、HCI-1000S、HCI-1200E、HCI-1300、大和化成工業株式会社製のBMI-2300、新日本化薬株式会社製のMIR-3000が挙げられる。
【0047】
ポリフェニレンエーテル系樹脂としては、ポリフェニレンエーテル樹脂と称される範疇に属するものであればよく、フェニレンエーテル単位を繰り返し構造単位として含む。また、フェニレンエーテル単位以外のその他の構成単位を含んでいてもよい。
フェニレンエーテル単位を有する単独重合体としては、フェニレン単位中のフェニレン基は、置換基を有するかは特に限定されない。
前記置換基としては、例えば、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基等のアクリル基、シクロへキシル基等の環状アルキル基、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、1-ブテニル基、1-ペンテニル基、p-ビニルフェニル基、p-イソプロペニルフェニル基、m-ビニルフェニル基、m-イソプロペニルフェニル基、o-ビニルフェニル基、o-イソプロペニルフェニル基、p-ビニルベンジル基、p-イソプロペルベンジル基、m-ビニルベンジル基、m-イソプロペニルベンジル基、o-ビニルベンジル基、o-イソプロペニルベンジル基、p-ビニルフェニルエテニル基、p-ビニルフェニルプロペニル基、p-ビニルフェニルブテニル基、m-ビニルフェニルエテニル基、m-ビニルフェニルプロペニル基、m-ビニルフェニルブテニル基、o-ビニルフェニルエテニル基、o-ビニルフェニルプロペニル基、o-ビニルフェニルブテニル基、メタクリル基、アクリル基、2-エチルアクリル基、2-ヒドロキシメチルアクリル基等の不飽和結合含有置換基、水酸基、カルボキシル基、カルボニル基、チオカルボニル基、酸ハロゲン化物基、酸無水物基、カルボン酸基、チオカルボン酸基、アルデヒド基、チオアルデヒド基、カルボン酸エステル基、アミド基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、リン酸基、リン酸エステル基、アミノ基、イミノ基、ニトリル基、ピリジル基、キノリン基、エポキシ基、チオエポキシ基、スルフィド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、ハロゲン化ケイ素基、シラノール基、アルコキシケイ素基、ハロゲン化スズ基、ボロン酸基、ホウ素含有基、ボロン酸塩基、アルコキシスズ基、及びフェニルスズ基等の官能基含有置換基が挙げられる。本実施形態の樹脂組成物の硬化性の観点からラジカル反応性及び/又は後述する成分(III)硬化剤との反応性を有する目的で任意の極性基を有することが好ましい。
【0048】
ポリフェニレンエーテル系樹脂の重量平均分子量は、本実施形態の樹脂組成物の硬化性の観点から100000以下が好ましく、より好ましくは50000以下、さらに好ましくは10000以下である。
また、ポリフェニレンエーテル系樹脂は直鎖状であってもよく、架橋又は分岐構造であってもよい。
【0049】
液晶ポリエステル系樹脂としては、異方性溶融相を形成するポリエステルであり、液晶ポリエステル樹脂と称される範疇に属するものであればよい。例えば、イーストマンコダック社製「X7G」、ダートコ社製Xyday(ザイダ-)、住友化学社製エコノール、セラニーズ社製ベクトラ等が挙げられる。
【0050】
エポキシ系樹脂としては、エポキシ樹脂と称される範疇に属するものであればよく、本実施形態の樹脂組成物の強度の観点から、1分子中に2個以上のエポキシ基を有することが好ましい。
エポキシ樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
エポキシ樹脂としては、以下に限定されにないが、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂等;が挙げられる。
【0051】
また、反応性の観点で、成分(II)としてエポキシ樹脂を用いる場合は、後述する成分(III)として硬化剤を含有していることが好ましい。かかる場合、成分(III)である硬化剤が有する極性基としては、例えば、カルボキシ基、イミダゾール基、水酸基、アミノ基、メルカプタン基、ベンゾオキサジン基、カルボジイミド基が挙げられ、反応性の観点からカルボキシ基、イミダゾール基、水酸基、ベンゾオキサジン基、カルボジイミド基が好ましく、誘電性能の観点から水酸基、カルボキシ基、イミダゾール基、ベンゾオキサジン基、カルボジイミド基がより好ましく、さらに好ましくは水酸基、カルボキシ基、カルボジイミド基である。
【0052】
フッ素樹脂としては、以下に限定されないが、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(FEPPFA)、FEP、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、フッ化ビニリデン樹脂(PVDE)、フッ化ビニル樹脂(PVF)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ECTFC)が挙げられる。これらフッ素樹脂の内、低誘電率、低誘電正接、耐熱性、及び耐薬品性等の観点から、PTFEが好ましい。なお、PFA等の融点は、好ましくは280℃以上である。フッ素樹脂の成形温度の一例は、320~400℃である。フッ素樹脂は、1種単独でも2種以上を併用してもよい。
【0053】
また、成分(II)としてラジカル反応性が異なる極性樹脂を2種以上使用する場合は、本実施形態の樹脂組成物の硬化性の観点から、後述する成分(III)としてラジカル開始剤及び/又は硬化剤を単独で使用、または、併用することもできる。
例えば、成分(II)としてラジカル反応性に優れるマレイミド型ポリイミド樹脂及びラジカル反応性を有さないビスフェノールAエポキシ樹脂を用いる場合は、本実施形態の樹脂組成物の硬化性の観点から、成分(III)としてラジカル開始剤と硬化剤を添加することが好ましい。
【0054】
また、成分(II)として、高融点及び高剛性の極性樹脂を使用する場合は、成分(III)として硬化剤を含まなくてもよい。高融点及び高剛性の極性樹脂としては液晶ポリエステル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂が挙げられる。
成分(II)が高融点及び高剛性であることにより成分(III)としての硬化剤を含有しない場合でも実用上必要な耐熱性及び/又は強度を有する樹脂組成物が得られる傾向にある。
【0055】
(成分(III) ラジカル開始剤、及び/又は硬化剤(成分(II)を除く)
本実施形態の樹脂組成物は、成分(III):ラジカル開始剤、及び/又は硬化剤(成分(II)を除く)を含有する。
ラジカル開始剤としては、従来公知のものが使用でき、例えば;熱ラジカル開始剤を使用でき、具体的には、ジイソピルベンゼンハイドロパーオキサイド(パークミルP)、クメンハイドロパーオキサイド(パークミルH)、t-ブチルハイドロパーオキサイド(パ―ブチルH)等のハイドロパーオキサイド類や、α,α-ビス(t-ブチルペルオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン(パ―ブチルP)、ジクミルパーオキサイド(パークミルD)、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン(パーヘキサ25B)、t-ブチルクミルパーオキサイド(パ―ブチルC)、ジ-t-ブチルパーオキサイド(パーブチルD)、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3(パーヘキシン25B)、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(パーブチルO)等のジアルキルパーオキサイド類や、ケトンパーオキサイド類や、n-ブチル4,4-ジ-(t-ブチルパーオキシ)バレレート(パーヘキサV)等のパーオキシケタール等や、ジアシルパーオキサイド類や、パーオキシジカーボネート類や、パーオキシエステル等の有機過酸化物や、2,2-アゾビスイソブチルニトリル、1,1’-(シクロヘキサン-1-1カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2-シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物等が挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよく2種以上を使用してもよい。
【0056】
本実施形態の樹脂組成物は、その硬化物の誘電性能を損なわない範囲で、耐熱性、及び所定の基板との接着性等の性能を付与する目的で、上述した成分(II)硬化樹脂(成分(I)を除く)を含有するものとし、前記硬化樹脂が極性基を有することで耐熱性に優れた樹脂組成物が得られる傾向にある。
成分(II)としてラジカル反応性を有する硬化樹脂を選択した場合、反応性に応じて、任意に成分(III)としてのラジカル開始剤の量を調整してもよく添加しないようにすることができる。
【0057】
前記成分(II)としてのラジカル反応性を有する硬化樹脂とは、例えば、重合体に少なくとも一つのビニル基及び/又はハロゲン元素を有する化合物の単独重合体や、その任意の化合物との共重合体が挙げられ、誘電性能の観点からビニル基を有する樹脂であることが好ましい。
ビニル基を有する樹脂とは、ビニル基を有する繰り返し単位から成る重合体でもよく、ビニル基及び極性基を有する化合物と極性基を有する樹脂の各極性基が反応することで得られたビニル基を有する樹脂であってもよい。
極性基及びビニル基を有する化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸(本明細書において「(メタ)アクリルとはメタクリルあるいはアクリルを意味する」)、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸等のカルボキシル基含有ビニルモノマー、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、メチルビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸等のスルホン基含有ビニルモノマー、ヒドロキシスチレン、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有ビニルモノマー、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルホスフェート、フェニル-2-アクリロイロキシエチルホスフェート、2-アクリロイルオキシエチルホスホン酸等のリン酸基含有ビニルモノマー、ヒドロキシスチレン、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、1-ブテン-3-オール等のヒドロキシ基含有ビニルモノマー、アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有ビニルモノマー、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチルアクリルアミド等のアミド基含有ビニルモノマー、(メタ)アクリロニトリル、シアノスチレン、シアノアクリレート等のニトリル基含有ビニルモノマー、グリシジルメタクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、p-ビニルフェニルフェニルオキサイド等のエポキシ基含有ビニルモノマー、ウレトジオン、イソシアヌレート等のポリイソシアネート基含有ビニルモノマーが挙げられる。
【0058】
ハロゲン元素含有モノマーとしては、塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、アリルクロライド、クロルスチレン、ブロムスチレン、ジクロルスチレン、クロロメチルスチレン、テトラフルオロスチレン、クロロプレン等が挙げられる。
【0059】
成分(II)硬化樹脂のラジカル反応性が低い又は有しない場合、反応性の観点から、成分(III)として硬化剤を含有することが好ましい。
成分(III)としての硬化剤は、通常、成分(II)硬化樹脂と反応して樹脂組成物を硬化させる機能を有する。
成分(II)と成分(III)の硬化剤が「反応」するとは、各成分の極性基同士が共有結合性を持つことを意味する。極性基同士が反応するとき、例えばカルボキシル基のOHが脱離すると、元の極性基が変化したり無くなったりするが、これによって共有結合が形成する場合には、極性基同士が「反応性」を示すという定義に含まれる。
【0060】
成分(III)としての硬化剤は、成分(II)極性樹脂の官能基と反応し得る極性基を1分子鎖中に少なくとも2個以上有することが、本実施形態の樹脂組成物の硬化機能の観点で好ましい。このような成分(III)は1種単独で用いてもよく2種以上を併用して用いてもよい。
【0061】
成分(II)と成分(III)が有する極性基の組み合わせの種類としては、特に限定されないが、例えば、
エポキシ基と、カルボキシ基、カルボニル基、エステル基、イミダゾール基、水酸基、アミノ基、メルカプタン基、ベンゾオキサジン基、カルボジイミド基;
アミノ基と、カルボンキシ基、カルボニル基、水酸基、酸無水物基、スルホン酸、アルデヒド基;
イソシアネート基と、水酸基、カルボン酸;
酸無水物基と、ヒドロキシ基;
シラノール基と、ヒドロキシ基、カルボン酸基;
ハロゲン基と、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、アミノ基、フェノール基、チオール基;
アルコキシ基と、ヒドロキシ基、アルコキシド基、アミノ基;
マレイミド基と、シアネート基;
等が挙げられる。
【0062】
これら極性基の結合が、成分(II)硬化樹脂、成分(III)の硬化剤であるかは任意に選択できる。
また、成分(II)の硬化樹脂が持つ極性基と、成分(III)の硬化剤の極性基とが直接反応しない場合に、触媒等の硬化促進剤を添加することで反応し得る場合も「反応性」を示すという定義に含まれる。
例えば、成分(II)がエポキシ基を有する硬化樹脂であり、成分(III)が酸無水物基を有する硬化剤である場合、通常、エポキシ基と酸無水物基の反応性は非常に低いが、アミノ基を有する化合物を硬化促進剤として添加することで、成分(II)のエポキシ基とアミノ基が反応し、成分(III)のエポキシ基の一部又はすべてが水酸基となる。当該水酸基と成分(III)の硬化剤の酸無水物基が反応することで、本実施形態の樹脂組成物が硬化する。
【0063】
成分(II)が極性基を有する硬化樹脂の場合、前記成分(II)と成分(III)の硬化剤の量比は、反応性の観点から、極性基のmol比率で、成分(II):成分(III)=1:0.01~1:20が好ましく、より好ましくは1:0.05~1:15、さらに好ましくは1:0.1~1:10である。
【0064】
成分(III)としての硬化剤は、以下に限定されないが、例えば、エステル基を有する硬化剤としては、DIC社製のEXB9451、EXB9460、EXB、9460S、HPC8000-65T、HPC8000H-65TM、EXB8000L-65TM、EXB8150-65T、EXB9416-70BK、三菱ケミカル社製のYLH1026、DC808、YLH1026、YLH1030、YLH1048が挙げられる。
【0065】
成分(III)としての水酸基を有する硬化剤は、例えば、MEH-7700、MEH-7810、MEH-7851、日本化薬社製のNHN、CBN、GPH、新日鉄住金化学社製のSN170、SN170、SN180、SN190、SN475、SN485、SN495、SN-495V、SN375、DIC社製のTD-2090、LA-7052、LA-7054、LA-1356、LA-3018-50P、EXB-9500等が挙げられる。
【0066】
成分(III)としてのベンゾオキサジン基を有する硬化剤は、例えば、JFEケミカル社製のODA-BOZ、昭和高分子社製のHFB2006M、四国化成工業社製のP-d、F-aが挙げられる。
【0067】
成分(III)としてのイソシアネート基を有する硬化剤は、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート、オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4-シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂;フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂;これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマー;等が挙げられる。市販品としては、ロンザジャパン社製のPT30、PT60、ULL-950S、BA230、BA230S75等が挙げられる。
【0068】
成分(III)としてのカルボジイミド基を有する硬化剤は、日清紡ケミカル社製のV-03、V-07が挙げられる。
【0069】
成分(III)としてのアミノ基を有する硬化剤は、例えば、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルアニリン)、ジフェニルジアミノスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、m-フェニレンジアミン、m-キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシベンジジン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3-ジメチル-5,5-ジエチル-4,4-ジフェニルメタンジアミン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、等が挙げられる。市販品としては、日本化薬社製のKAYABOND C-200S、KAYABOND C-100、カヤハードA-A、カヤハードA-B、カヤハードA-S、三菱ケミカル社製のエピキュアW等が挙げられる。
また、反応性の観点からアミノ基としては第1級アミン及び/又は第2級アミンが好ましく、より好ましくは第1級アミンである。
【0070】
成分(III)としての酸無水物基を有する硬化剤は、例えば、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’-4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオン、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、スチレンとマレイン酸とが共重合したスチレン・マレイン酸樹脂等のポリマー型の酸無水物等が挙げられる。
【0071】
また、前述のラジカル反応性を有する構造を少なくとも2つ有する化合物も、成分(II)と反応して樹脂組成物を硬化させる機能を有する。
ラジカル反応性を有する構造を少なくとも2つ有する化合物としては、例えば、トリアリルイソシアヌレート(三菱ケミカル社製 タイク)、イソシアヌル酸トリス(2-ヒドロキシエチル)、フマル酸ジアリル、アジピン酸ジアリル、クエン酸トリアリル、ヘキサヒドロフタル酸ジアリル等のアリルモノマー等が挙げられる。
【0072】
(成分(IV) 添加剤等)
本実施形態の樹脂組成物は、さらに成分(IV)として、硬化促進剤、フィラー、難燃剤、及びその他添加剤を含んでいてもよい。
また、成分(I)水素化重合体の添加剤として含まれるものも前記樹脂組成物の成分(IV)と同義である。
【0073】
硬化促進剤としては、前述の各成分間の反応性を促進する目的で添加され、従来公知のものが使用できる。
例えば、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤等が挙げられる。
硬化促進剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0074】
リン系硬化促進剤としては、以下に限定されないが、例えば、トリフェニルホスフィン、ホスホニウムボレート化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、n-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等が挙げられ、トリフェニルホスフィン、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩が好ましい。
【0075】
アミン系硬化促進剤としては、以下に限定されないが、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン等が挙げられ、4-ジメチルアミノピリジン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセンが好ましい。
【0076】
イミダゾール系硬化促進剤としては、以下に限定されないが、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられる。特に、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾールが好ましい。
イミダゾール系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、三菱ケミカル社製のP200-H50等が挙げられる。
【0077】
グアニジン系硬化促進剤としては、以下に限定されないが、例えば、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニド等が挙げられる。ジシアンジアミド、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンが好ましい。
【0078】
金属系硬化促進剤としては、以下に限定されないが、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。
有機金属錯体としては、例えば、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。
有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0079】
フィラーとしては、以下に限定されないが、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、カーボンブラック、ガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスバルーン、ガラスフレーク、グラファイト、酸化チタン、チタン酸カリウムウイスカー、炭素繊維、アルミナ、カオリンクレー、ケイ酸、ケイ酸カルシウム、石英、マイカ、タルク、クレー、ジルコニア、チタン酸カリウム、アルミナ、金属粒子等の無機充填剤;木製チップ、木製パウダー、パルプ、セルロースナノファイバー等の有機フィラーを挙げられる。
これらは1種単独用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
これらフィラーの形状としては、鱗片状、球状、粒状、粉体、不定形状等のいずれでもよく、特に制限は無い。
誘電性能の観点からフィラーとしてはシリカが好ましく、シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。
【0080】
難燃剤としては、例えば、臭素化合物等のハロゲン系難燃剤、芳香族化合物等のリン系難燃剤、金属水酸化物、アルキルスルホン酸塩、三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、ヘキサブロモベンゼン、デカブロモジフェニルエタン、4,4-ジブロモビフェニル、エチレンビステトラブロモフタルイミド等の芳香族臭素化合物を含む難燃剤等が挙げられる。
これらの難燃剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記難燃剤の中には、それ自身の難燃性発現効果は低いが、他の難燃剤と併用することで相乗的により優れた効果を発揮する、いわゆる難燃助剤も含まれる。
【0081】
フィラー、難燃剤は、シランカップリング剤等の表面処理剤であらかじめ表面処理を行ったタイプを使用することもできる。
表面処理剤としては、以下に限定されないが、例えば、フッ素含有シランカップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、アルコキシシラン、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。
これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0082】
その他の添加剤としては、樹脂組成物及び/又は硬化物の配合に一般的に用いられるものであれば特に制限はない。
その他の添加剤としては、以下に限定されないが、例えば、カーボンブラック、酸化チタン等の顔料及び/又は着色剤;ステアリン酸、ベヘニン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、エチレンビスステアロアミド等の滑剤;離型剤;有機ポリシロキサン、フタル酸エステル系やアジピン酸エステル化合物、アゼライン酸エステル化合物等の脂肪酸エステル系、ミネラルオイル等の可塑剤;ヒンダードフェノール系、リン系熱安定剤等の酸化防止剤;ヒンダードアミン系光安定剤;ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;帯電防止剤;有機充填剤;増粘剤;消泡剤;レベリング剤;密着性付与剤等の樹脂添加剤;その他添加剤あるいはこれらの混合物等が挙げられる。
【0083】
前述の低誘電率及び低誘電正接化の観点から顔料、着色剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤が含有されないことが好ましい傾向にある。
【0084】
本実施形態の樹脂組成物は、各成分を溶融混錬したものであってもよく、各成分を溶解可能な溶媒に溶解させ撹拌したもの(以下、「ワニス」)であってもよいが、取扱性の観点からワニスが好ましい。
溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)及びシクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びカルビトールアセテート等の酢酸エステル類;セロソルブ及びブチルカルビトール等のカルビトール類;トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド(DMAc)及びN-メチルピロリドン等のアミド系溶剤等が挙げられる。
有機溶剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0085】
〔硬化物の製造方法〕
本実施形態の硬化物の製造方法は、本実施形態の樹脂組成物を調製する工程と、前記樹脂組成物を硬化させる工程を有する。
硬化させる工程においては、任意の温度及び時間で硬化反応させるものとし、具体的には反応温度は80℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましく、120℃以上がさらに好ましい。
反応時間としては、10~240分が好ましく、20~230分がより好ましく、30~220分がさらに好ましい。
樹脂組成物がワニスの場合、溶剤を除去後に硬化反応を行うことが好ましい。乾燥方法としては、加熱、熱風吹つけ等の従来公知の方法により実施してもよく、硬化反応温度より低温で行うことが好ましく、樹脂組成物中の溶媒量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。
【0086】
本実施形態の硬化物の製造方法においては、本実施形態の樹脂組成物を所定の基材に積層させ、後述するプレプリグを形成する工程を、さらに有していてもよい。
また、前記プリプレグを所定の金属箔上に積層し、前記樹脂組成物を硬化させる工程を実施してもよい。
【0087】
〔樹脂フィルム〕
本実施形態の樹脂フィルムは、本実施形態の樹脂組成物からなるものであり、例えば、樹脂組成物を溶剤に溶解させたワニスとし、前記ワニスを均一な薄膜状に伸ばし、乾燥させることで溶媒を除去することにより作製できる。本実施形態の樹脂フィルムはロール状に巻き取って保存することが可能である。
本実施形態の樹脂フィルムを所定の保護フィルムと積層させた場合は、前記保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
本実施形態の樹脂フィルムは、例えば、ガラス転移温度が150℃以上の基材フィルムに前記ワニスを塗布することで得られる。
基材フィルムとしては、例えば、ポリイミド、ポリエーテルイミド、液晶ポリマー、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、シクロオレフィンポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリー連エーテルケトン及びポリフェニレンエーテルからなる群より選択される1種のフィルムが挙げられる。これらの中でも、ポリイミド、液晶ポリマー、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルエーテルケトンがより好ましく、ポリイミド、液晶ポリマーがさらに好ましい。
また、本実施形態の樹脂フィルムを複数積層させた積層体を形成することもでき、かかる場合、各々の樹脂フィルムの層には同種のフィルムを用いてもよいし、異種のフィルムを用いてもよい。
複数の樹脂フィルムの層よりなる積層体には、本実施形態の樹脂フィルムのほかに金属層を備えていてもよい。金属層としては後述する金属箔やスパッタ膜を使用することが好ましい。
【0088】
〔プリプレグ、電子回路基板材料〕
本実施形態のプリプレグは、基材と、本実施形態の樹脂組成物の複合体であり、例えば、前記基材に含浸又は塗布された本実施形態の樹脂組成物とを含むものが挙げられる。
プリプレグは、例えば、ガラスクロス等の基材を前記本実施形態の樹脂組成物を含むワニスに含浸させた後、所定の乾燥処理により溶剤を除去することにより得られる。
基材としては、例えば、ロービングクロス、クロス、チョップドマット、サーフェシングマット等の各種ガラスクロス;アスベスト布、金属繊維布、及びその他の合成若しくは天然の無機繊維布;全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ポリベンゾオキサゾール繊維等の液晶繊維から得られる織布又は不織布;綿布、麻布、フェルト等の天然繊維布;カーボン繊維布、クラフト紙、コットン紙、紙-ガラス混繊糸から得られる布等の天然セルロース系基材;ポリテトラフルオロエチレン多孔質フィルム等が挙げられるが、誘電性能の観点からガラスクロスが好ましい。これらの基材は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
プリプレグ中の本実施形態の樹脂組成物固形分の割合は、30~80質量%であることが好ましく、40~70質量%であることがより好ましい。
本実施形態の樹脂組成物の硬化物、及び本実施形態のプリプレグは電子回路基板材料として用いることができ、プリプレグ中の樹脂組成物固形分の割合を30質量%以上とすることにより、本実施形態の硬化物及びプリプレグを電子回路基板材料に用いた場合に絶縁信頼性に一層優れる傾向にある。前記割合が80質量%以下であることにより、電子回路基板材料の用途において、剛性等の機械特性に一層優れる傾向にある。
【0089】
〔プリント配線板〕
本実施形態の樹脂組成物の硬化物は、プリント配線板の材料に用いることができる。本実施形態の樹脂組成物を用いたプリント配線板は、例えば、
工程(a):基板に本実施形態の樹脂組成物のフィルムを積層して樹脂層を形成する工程、
工程(b):樹脂層を加熱・加圧して平坦化する工程、
工程(c):樹脂層上に配線層をさらに形成する工程、
等を経て製造することができる。
【0090】
工程(a)において基板に樹脂層を積層する方法は特に限定されないが、例えば、多段プレス、真空プレス、常圧ラミネーター、真空下で加熱加圧するラミネーターを用いて積層する方法等が挙げられ、真空下で加熱加圧するラミネーターを用いる方法が好ましい。前記方法では、回路用基板が表面に微細配線回路を有していてもボイドがなく回路間を樹脂で埋め込むことができる。また、ラミネートはバッチ式であってもよく、ロール等での連続式であってもよい。
基板としては特に限定されず、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、ポリフェニレンエーテル系基板、フッ素樹脂基板等を使用することができる。基板の樹脂層が積層される面は予め粗化処理されていてもよく、基板層数は限定されない。
工程(b)では、工程(a)で積層した樹脂フィルムと基板を加熱下加圧し、平坦化する。条件は、基板の種類や樹脂フィルムの組成で任意に調整することができるが、例えば、温度100~300°、圧力0.2~20MPa、時間30~180分の範囲が好ましい。
工程(c)では、樹脂フィルムと基板を加熱下加圧して作製した樹脂層上にさらに回路層を形成する。形成方法としては特に限定されず、従来公知の方法が挙げられるが、例えば、サブトラクティブ法等のエッチング法、セミアディティブ法等によって形成してもよい。
サブトラクティブ法は、金属層の上に、所望のパターン形状に対応した形状のエッチングレジスト層を形成し、その後の現像処理によって、レジストの除去された部分の金属層を薬液で溶解し除去することによって、所望の回路を形成する方法である。
セミアディティブ法は、無電解めっき法により樹脂層の表面に金属被膜を形成し、金属被膜上に所望のパターンに対応した形状のめっきレジスト層を形成し、次に、電解めっき法によって金属層を形成した後、不要な無電解めっき層を薬液等で除去し、所望の回路層を形成する方法である。
【0091】
また、樹脂層には、必要に応じてビアホール等のホールを形成してもよく、ホールの形成方法としては特に限定されず、従来公知の方法を使用することができる。ホールの形成方法としては、例えば、NCドリル、炭酸ガスレーザー、UVレーザー、YAGレーザー、プラズマ等を使用できる。
また、本実施形態の樹脂組成物を用いたプリント配線板は、金属張積層板であってもよい。金属張積層板は、本実施形態の樹脂組成物又は本実施形態のプリプレグと、金属箔とを積層して硬化して得られ、金属張積層板から金属箔の一部が除去されている。金属張積層板は、プリプレグの硬化物(「硬化物複合体」ともいう。)と金属箔とが積層して密着している形態を有することが好ましく、電子回路基板用材料として好適に用いられる。金属箔としては、例えば、アルミ箔、及び銅箔が挙げられ、これらの中でも銅箔は電気抵抗が低いため好ましい。金属箔と組合せる硬化物複合体は、1枚でも複数枚でもよく、用途に応じて複合体の片面又は両面に金属箔を重ねて積層板に加工する。
【0092】
積層板の製造方法としては、例えば、本実施形態の樹脂組成物と基材とから構成される複合体(例えば、前述のプリプレグ)を形成し、これを金属箔と重ねた後、樹脂組成物を硬化させることにより、硬化物積層体と金属箔とが積層されている積層板を得る方法が挙げられる。
前記積層板の特に好ましい用途の1つはプリント配線板である。プリント配線板は、金属張積層板から金属箔の少なくとも一部が除去されていることが好ましい。前記プリト配線板は、典型的には、上述した本実施形態のプリプレグを用いて、加圧加熱成型する方法で形成できる。
基材としてはプリプレグに関して前述したのと同様のものが挙げられる。本実施形態のプリント配線板は、本実施形態の樹脂組成物を含むことにより、優れた耐熱性、及び電気特性(低誘電率、及び低誘電正接)を有し、更には環境変動に伴う電気特性の変動を抑制可能であり、更には優れた絶縁信頼性、及び機械特性を有する。
【実施例0093】
以下、具体的な実施例及び比較例を挙げて、本実施形態について具体的に説明するが、本実施形態は、以下の実施例及び比較例により何ら限定されるものではない。
【0094】
実施例及び比較例に用いた水素化重合体(成分(I))の構造の同定及び物性の測定は、次のようにして行った。
【0095】
〔水素化重合体の構造の同定及び物性の測定方法〕
((1)ビニル芳香族単量体単位、共役ジエン単量体単位の含有量、及び水素化重合体を構成するセグメント(C)、セグメント(B)、重合体ブロック(S)、セグメント(B1)の含有量)
水添前の、ブロック共重合体を用い、プロトン核磁気共鳴(H-NMR)法により測定した。
測定機器はJNM-LA400(JEOL製)、溶媒に重水素化クロロホルムを用い、サンプル濃度は50mg/mL、観測周波数は400MHz、化学シフト基準にテトラメチルシランを用い、パルスディレイ2.904秒、スキャン回数64回、パルス幅45°、及び測定温度26℃で行った。
ビニル芳香族単量体単位の含有量は、スペクトルの6.2~7.5ppmにおける総スチレン芳香族シグナルの積算値を用いて算出した。
共役ジエン単量体単位の含有量は、後述する1,4-結合と1,2-結合に帰属されるシグナルの積分値の合計から算出した。
水素化重合体における、セグメント又は重合体ブロックの含有量は、下記のように求めた。
水素化前の重合体の重合過程のステップごとにサンプリングしたポリマー溶液を、内部標準としてn-プロピルベンゼン0.50mLと、約20mLのトルエンとを密封した100mLのボトルに、約20mL注入してサンプルを作製した。
アピエゾングリースを嘆じさせたバックドカラムを装着したガラスクロマトグラフィー(島津製作所製:GC-14B)でこのサンプルを測定し、事前に得ていたブタジエンモノマーとスチレンモノマーの検量線からポリマー溶液中の残留モノマー量を求め、ブタジエンモノマー及びスチレンモノマーの重合率が100%であることを確認し、下記式より、各重合体ブロックの含有量を計算した。
各ブロックの含有量
=(各ステップでフィードしたモノマー合計量)/(全モノマー量)×100(質量%)
なお、セグメント(B1)とは、C-B-S-Bの構造に代表される(B)が1つ以上存在する時、末端に結合している方の(B)を(B1)として定義する。
【0096】
((2)水素化重合体を構成するセグメント(C)、セグメント(B)、重合体ブロック(S)、セグメント(B1)の水素化前のビニル結合量)
水添前の重合体を用い、プロトン核磁気共鳴(H-NMR)法により測定した。
測定条件及び測定データの処理方法は上記(1)と同様とした。
ビニル結合量は、1,4-結合及び1,2-結合に帰属されるシグナルの積分値から各結合様式の1Hあたりの積分値を算出した後、1,4-結合と1,2-結合(ブタジエンの場合であって、イソプレンの場合ならば3,4-結合になる)との比率から算出した。各重合体ブロック及び/又はセグメントの水素化前ビニル結合量は、共役ジエン化合物を添加した各ステップが終了するごとにポリマーを抜き出して、前記の方法でビニル結合量を、後述する方法で分子量を測定し、各ブロック及びセグメントのビニル結合量を算出した。
【0097】
((3)水素化重合体の水素化前の、重量平均分子量及び分子量分布)
変性前かつ水添前の重合体の重量平均分子量をGPC〔装置:LC-10(島津製作所製)、カラム:TSKgelGMHXL(4.6mm×30cm)〕により測定した。
溶媒はテトラヒドロフランを用いた。
測定条件は、温度35℃で行った。
重量平均分子量は、クロマトグラムのピークの分子量を、市販の標準ポリスチレンの測定から求めた検量線(標準ポリスチレンのピーク分子量を使用して作成)を使用して求めた。
なお、クロマトグラム中にピークが複数有る場合の重量平均分子量は、各ピークの分子量と各ピークの組成比(クロマトグラムのそれぞれのピークの面積比より求める)から求めた平均分子量とした。
また、分子量分布は、得られた重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)である。
【0098】
((4)水素化重合体の共役ジエン単量体単位の二重結合の水素添加率)
水素化重合体を用い、核磁気共鳴装置(BRUKER社製、DPX-400)を用いて、共役ジエン単量体単位の二重結合の水素添加率を測定した。
【0099】
((5)セグメント(C)、セグメント(B)、(B1)のビニル結合量の測定)
設計した重量平均分子量に対して重合時間から等分割したセグメントを重合途中で抜き出し、前記(2)の方法で水素添加前のビニル結合量、前記(3)の方法で分子量をそれぞれ測定した。
また、セグメントを重合した後にサンプルを抜き出し、分子量を測定することで等分割されているかを確認した。
セグメント(C)は6分割、セグメント(B)は10分割でそれぞれビニル結合量を測定した。
測定した最大ビニル結合量Mvh%、最小ビニル結合量Mvl%を下記表に示した。
【0100】
((6)水素化重合体の結晶化ピーク温度、及び結晶化熱量の測定方法)
アルミニウム製パンに、水素化重合体10mgをそれぞれ精秤し、示差走査熱量計(DSC)(ティー・エイ・インスツルメント製、Q2000)を用いて、窒素雰囲気(流量は50mL/分)にて、初期温度-50℃、昇温速度10℃/分で150℃まで昇温し、5分間150℃保持し、その後10℃/分で-50℃まで降温させ測定を行った。
描かれるDSC曲線の降温過程であらわれる結晶化ピークを結晶化温度(℃)とし、結晶化ピーク面積が示す熱量を結晶化熱量(J/g)とした。
【0101】
(tanδピーク温度、tanδピーク高さ、tanδ半値幅)
動的粘弾性スペクトルを下記の方法により測定し、損失係数tanδのピーク高さ、当該最大値を与える温度及びピーク半腹値を得た。
まず、水素化重合体を厚さ2mmのシートに成形した後に、幅10mm、長さ35mmのサイズに切り取り、測定用試料とした。
装置ARES(ディーエイインスツルメントー株式会社製、商品名)の捻りタイプのジオメトリーに測定用試料をセットし、実行測定長さは25mm、ひずみ0.5%、周波数1Hz、測定範囲-100℃から100℃まで、昇温速度3℃/分の条件により測定した。
【0102】
(水素化重合体のメルトフローレート(MFR))
ISO 1133に準拠して、230℃、2.16kg荷重で測定した。
【0103】
〔水添触媒の調製〕
後述する実施例及び比較例において、水素化重合体を作製する際に用いる水添触媒を、下記の方法により調製した。
攪拌装置を具備する反応容器を窒素置換しておき、これに、乾燥、精製したシクロヘキサン1リットルを仕込んだ。
次に、ビス(η5-シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド100ミリモルを添加した。これを十分に攪拌しながらトリメチルアルミニウム200ミリモルを含むn-ヘキサン溶液を添加して、室温にて約3日間反応させた。
これにより水添触媒を得た。
【0104】
〔水素化重合体〕
水素化重合体を、下記のようにして調製した。
【0105】
(重合例:水素化重合体(1)C-B-S構造)
内容積10Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を使用して、バッチ重合を行った。
反応器内に1Lのシクロヘキサンを入れ、その後n-ブチルリチウム(以下「Bu-Li」ともいう。)を全モノマー100質量部に対して0.050質量部と、ビニル化剤としてのN,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(以下、「TMEDA」ともいう。)をBu-Li1モルに対して0.05モル添加した。
第1ステップとして、ブタジエン10質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を10分間かけて投入し、その後更に10分間重合した。なお重合中、温度は65℃にコントロールした。
次に第2ステップとして、TMEDAをBu-Li1モルに対して1.50モルと、ナトリウムt-ペントキシド(以下、NaOAmとする)をBu-Li1モルに対して0.05モル添加し、ブタジエン85質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を60分間かけて投入し、その後更に10分間重合した。なお重合中、温度は60℃にコントロールした。
次に第3ステップとして、スチレン5質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を5分間かけて投入し、その後更に10分間重合した。なお重合中、温度は65℃にコントロールした。
なお、ブロック共重合体の調整過程で得られたステップ毎にポリマーをサンプリングした。得られたブロック共重合体の分析値は、スチレン含有量5質量%、重量平均分子量249,000、分子量分布1.12であった。
次に、得られたブロック共重合体に、上記水添触媒をブロック共重合体100質量部当たりチタンとして100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度70℃で水添反応を行った。その後メタノールを添加し、次に安定剤としてオクタデシル-3-(3,5-ジーt-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートをブロック共重合体に対して0.3質量部添加した。
得られた水素化重合体(1)の水素添加率は99.5%であった。
得られた水素化重合体(1)の解析結果を表1に示す。
【0106】
(重合例:水素化重合体(2) C-B-S-B1構造)
前記の水素化重合体(1)と同様の反応器を用いてバッチ重合を行った。Bu-Liを0.050質量部とし、第1ステップとして、ブタジエン10質量部とし、第2ステップとして、ブタジエン82質量部とし、第3ステップとして、スチレン5質量部とし、第4ステップを追加して、ブタジエン3質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を5分間かけて投入し、その後更に10分間重合した。
なお重合中、温度は65℃にコントロールし、ブロック共重合体を製造したこと以外は、(1)と同様の操作を行い、水素化重合体(2)を製造した。
得られた水素化重合体(2)は、スチレン含有量5質量%、重量平均分子量251,000、分子量分布1.14、水素添加率99.8%、MFR4g/10分であった。
得られた水素化重合体(2)の解析結果を表1に示す。
【0107】
(重合例:水素化重合体(3) C-B-S構造)
Bu-Liを0.060質量部とし、第1ステップとして、ブタジエン15質量部とし、第2ステップとして、ブタジエン78質量部とし、第3ステップとして、スチレン7質量部としブロック共重合体を製造したこと以外は、(1)と同様の操作を行い、水素化重合体(3)を製造した。
得られた水素化重合体(3)は、スチレン含有量7質量%、重量平均分子量204,000、分子量分布1.19、水素添加率99.6%であった。
得られた水素化重合体(3)の解析結果を表1に示す。
【0108】
(重合例:水素化重合体(4) C-B-S構造)
Bu-Liを0.053質量部とし、第1ステップとして、ブタジエン3質量部とし、第2ステップとして、ブタジエン85質量部とし、第3ステップとして、スチレン12質量部としブロック共重合体を製造したこと以外は、(1)と同様の操作を行い、水素化重合体(4)を製造した。
得られた水素化重合体(4)は、スチレン含有量12質量%、重量平均分子量225,000、分子量分布1.22、水素添加率99.3%であった。
得られた水素化重合体(4)の解析結果を表1に示す。
【0109】
(重合例:水素化重合体(5) C-B-S構造)
Bu-Liを0.042質量部とし、第1ステップとして、ブタジエン5質量部とし、第2ステップとして、ブタジエン91質量部とし、第3ステップとして、スチレン3質量部としブロック共重合体を製造したこと以外は、(1)と同様の操作を行い、水素化重合体(5)を製造した。
得られた水素化重合体(5)は、スチレン含有量3質量%、重量平均分子量282,000、分子量分布1.29、水素添加率98.6%であった。
得られた水素化重合体(5)の解析結果を表1に示す。
【0110】
(重合例:水素化重合体(6) C-B-S構造)
Bu-Liを0.078質量部とし、第1ステップとして、ブタジエン16質量部とし、第2ステップとして、ブタジエン72質量部とし、第3ステップとして、スチレン12質量部としブロック共重合体を製造したこと以外は、(1)と同様の操作を行い、水素化重合体(6)を製造した。
得られた水素化重合体(6)は、スチレン含有量12質量%、重量平均分子量161,000、分子量分布1.12、水素添加率99.0%であった。
得られた水素化重合体(6)の解析結果を表1に示す。
【0111】
(重合例:水素化重合体(7) C-B-S構造)
Bu-Liを0.062質量部とし、第1ステップとして、ブタジエン7質量部とし、第2ステップとして、ブタジエン78質量部とし、第3ステップとして、スチレン15質量部としブロック共重合体を製造したこと以外は、(1)と同様の操作を行い、水素化重合体(7)を製造した。
得られた水素化重合体(7)は、スチレン含有量15質量%、重量平均分子量198,000、分子量分布1.29、水素添加率99.4%であった。
得られた水素化重合体(7)の解析結果を表1に示す。
【0112】
(重合例:水素化重合体(8) C-B-S構造)
Bu-Liを0.050質量部とし、第1ステップ前のTMEDAを0.03モルとし、第1ステップとして、ブタジエン10質量部とし、第2ステップとして、ブタジエン85質量部を60分間かけて投入し、その後更に10分間重合した。なお重合中、温度は45から開始し66℃まで60分間かけてコントロールした。すなわち、第2ステップにおける重合温度の温度差は21℃であった。次に第3ステップとして、スチレン5質量部とし、ブロック共重合体を製造したこと以外は、(1)と同様の操作を行い、水素化重合体(8)を製造した。
得られた水素化重合体(8)は、スチレン含有量5質量%、重量平均分子量248,000、分子量分布1.28、水素添加率98.5%であった。
得られた水素化重合体(8)の解析結果を表1に示す。
【0113】
(重合例:水素化重合体(9) C-B-S構造)
ブロック共重合体の水添反応を途中で停止したこと以外は、(1)と同様の操作を行い、水素化重合体(9)を製造した。
得られた水素化重合体(9)は、スチレン含有量5質量%、重量平均分子量251,000、分子量分布1.13、水素添加率85.0%であった。
得られた水素化重合体(9)の解析結果を表1に示す。
【0114】
(重合例:水素化重合体(10) C-B-S構造)
Bu-Liを0.058質量部とし、第1ステップ前のTMEDAを0.04モル加え、第1ステップとして、ブタジエン10質量部とし、第2ステップ前のTMEDAを1.06モル添加し、NaOAmは添加せず、第2ステップとして、イソプレン75質量部とし、次に第3ステップとして、スチレン15質量部とし、得られたブロック共重合体の水添反応の水添触媒を2-エチル-ヘキサン酸ニッケル/水素化リチウムにし、ブロック共重合体100質量部当たりのニッケルとして100ppm添加し、水素圧4.5MPa、温度90℃で水添反応を行い、水素化重合体を製造したこと以外は、(1)と同様の操作を行い、水素化重合体(10)を製造した。
得られた水素化重合体(10)は、スチレン含有量15質量%、重量平均分子量206,000、分子量分布1.14、水素添加率91.2%であった。
得られた水素化重合体(10)の解析結果を表1に示す。
【0115】
(重合例:水素化重合体(11) C-B-S構造)
Bu-Liを0.055質量部とし、第1ステップ前のTMEDAを0.05モルとし、第1ステップとして、ブタジエン12質量部とし、第2ステップ前のTMEDAを1.15モルとし、NaOAmをBu―Li1モルに対して1.30モル、第2ステップとして、ブタジエン72質量部とし、次に第3ステップとして、スチレン16質量部とし、得られたブロック共重合体の水添反応の水添触媒を2-エチル-ヘキサン酸ニッケル/水素化リチウムにし、ブロック共重合体100質量部当たりのニッケルとして100ppm添加し、水素圧4.5MPa、温度90℃で水添反応を行い、水素化重合体を製造したこと以外は、(1)と同様の操作を行い、水素化重合体(11)を製造した。
得られた水素化重合体(11)は、スチレン含有量15質量%、重量平均分子量350,000、分子量分布1.23、水素添加率81.3%であった。
得られた水素化重合体(11)の解析結果を表1に示す。
【0116】
(重合例:水素化重合体(12) C-B-S-B1構造)
前記の水素化重合体(1)と同様の反応器を用いてバッチ重合を行った。Bu-Liを0.060質量部とし、第1ステップとして、ブタジエン11質量部とし、第2ステップとして、ブタジエン73質量部とし、第3ステップとして、スチレン11質量部とし、第4ステップを追加して、ブタジエン5質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を8分間かけて投入し、その後更に15分間重合した。
なお重合中、温度は65℃にコントロールしブロック共重合体を製造したこと以外は、(2)と同様の操作を行い、水素化重合体(12)を製造した。
得られた水素化重合体(12)は、スチレン含有量11質量%、重量平均分子量43,000、分子量分布1.10、水素添加率99.3%、MFR6g/10分であった。
得られた水素化重合体(12)の解析結果を表1に示す。
【0117】
(重合例:水素化重合体(13) C-B-S-B1構造)
前記の水素化重合体(1)と同様の反応器を用いてバッチ重合を行った。Bu-Liを0.080質量部とし、第1ステップとして、ブタジエン20質量部とし、第2ステップとして、ブタジエン70質量部とし、第3ステップとして、スチレン3質量部とし、第4ステップを追加して、ブタジエン7質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度22質量%)を5分間かけて投入し、その後更に10分間重合した。
なお重合中、温度は70℃にコントロールしブロック共重合体を製造したこと以外は、(1)と同様の操作を行い、水素化重合体(13)を製造した。
得られた水素化重合体(13)は、スチレン含有量3質量%、重量平均分子量103,000、分子量分布1.08、水素添加率96.1%、MFR3g/10分であった。
得られた水素化重合体(13)の解析結果を表1に示す。
【0118】
(重合例:水素化重合体(14) C-B-C構造)
前記の水素化重合体(1)と同様の反応器を用いてバッチ重合を行った。Bu-Liを0.060質量部とし、第1ステップ前のTMEDAを0.05モルとし、第1ステップとして、ブタジエン12質量部とし、第2ステップ前のTMEDAを0.80モルとし、NaOAmをBu-Li1モルに対して1.10モル、第2ステップとして、イソプレン76質量部とし、次に第3ステップとして、ブタジエン12質量部とし、得られたブロック共重合体の水添反応の水添触媒を2-エチル-ヘキサン酸ニッケル/水素化リチウムにし、ブロック共重合体100質量部当たりのニッケルとして100ppm添加し、水素圧4.5MPa、温度90℃で水添反応を行い、水素化重合体を製造したこと以外は、(1)と同様の操作を行い、水素化重合体(14)を製造した。
得られた水素化重合体(14)は、重量平均分子量173,000、分子量分布1.38、水素添加率88.0%であった。
得られた水素化重合体(14)の解析結果を表1に示す。
【0119】
(重合例:水素化重合体(15) C-S構造)
前記の水素化重合体(1)と同様の反応器を用いてバッチ重合を行った。Bu-Liを0.050質量部とし、第1ステップ前のTMEDAを0.05モルとし、第1ステップとして、ブタジエン70質量部とし、第2ステップとして、スチレン30質量部とし、得られたブロック共重合体の水添反応の水添触媒を2-エチル-ヘキサン酸ニッケル/水素化リチウムにし、ブロック共重合体100質量部当たりのニッケルとして100ppm添加し、水素圧4.5MPa、温度90℃で水添反応を行い、水素化重合体を製造したこと以外は、(1)と同様の操作を行い、水素化重合体(15)を製造した。
得られた水素化重合体(15)は、スチレン含有量30質量%、重量平均分子量62,000、分子量分布1.10、水素添加率82.0%であった。
得られた水素化重合体(15)の解析結果を表1に示す。
【0120】
(重合例:水素化重合体(16) C-S-C構造)
前記の水素化重合体(1)と同様の反応器を用いてバッチ重合を行った。Bu-Liを0.050質量部とし、第1ステップ前のTMEDAを0.05モルとし、第1ステップとして、ブタジエン30質量部とし、第2ステップとして、スチレン40質量部とし、第3ステップの前にTMEDAを0.05モル添加し、第3ステップとして、ブタジエン30質量部を添加して、重合温度70℃に調整した以外は、水素化重合体(1)と同様の手法を用いることで、水素化重合体(16)を製造した。
得られた水素化重合体(16)は、スチレン含有量40質量%、重量平均分子量52,000、分子量分布1.08、水素添加率94.0%であった。
得られた水素化重合体(16)の解析結果を表2に示す。
【0121】
(重合例:水素化重合体(17) C-S-B構造)
反応器内に1Lのシクロヘキサンを入れ、その後Bu-Liを全モノマー100質量部に対して0.065質量部と、TMEDAをBu-Li1モルに対して0.02モル添加した。
第1ステップとして、ブタジエン20質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を10分間かけて投入し、その後更に10分間重合した。なお重合中、温度は60℃にコントロールした。
次に第2ステップとして、スチレン20質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を6分かけて投入し、その後更に15分重合した。尚、重合中の温度を65℃にコントロールした。
次に第3ステップとしてTMEDAをBu-Li1モルに対して1.50モルと、NaOAmをBu-Li1モルに対して0.05モル添加し、ブタジエン60質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を60分間かけて投入し、その後更に10分間重合した。なお重合中、温度は70℃にコントロールした。
次に第3ステップとして、スチレン5質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を5分間かけて投入し、その後更に10分間重合した。なお重合中、温度は65℃にコントロールした。
なお、重合体の調整過程で得られたステップ毎にポリマーをサンプリングした。得られた重合体の分析値は、スチレン含有量20質量%、重量平均分子量278,000、分子量分布1.04であった。
次に、得られた重合体に、前記と同様の水素添加処理を行った。その水素添加率は90
mоl%であった。
得られた水素化重合体(17)の解析結果を表2に示す。
【0122】
(重合例:水素化重合体(18) C-S-B構造)
前記の水素化重合体(17)と下記以外は同じ方法で調製した。
まず、TMEDAを0.04モル加え、第1のステップでブタジエンを30質量部にして、重合中の温度を55℃にコントロールした。
第2のステップでスチレンを10質量部にして、重合中の温度を58℃にコントロールした。
第3のステップでNaOAmを0.03モル加えて、ブタジエンを60質量部にして、重合温度を60℃にコントロールした。
得られた水素化重合体(18)は、スチレン含有量10質量%、重量平均分子量10,1000、分子量分布1.04、水素添加率92.0mоl%であった。
得られた水素化重合体(18)の解析結果を表2に示す。
【0123】
(重合例:水素化重合体(19) C-B構造)
Bu-Liを0.050質量部とし、第1ステップとして、ブタジエン20質量部とし、第2ステップとして、ブタジエン80質量部としブロック共重合体を製造したこと以外は、水素化重合体(1)と同様の操作を行い、水素化重合体(19)を製造した。
得られた水素化重合体(19)は、スチレン含有量0質量%、重量平均分子量250,000、分子量分布1.08、水素添加率99.5%であった。
得られた水素化重合体(19)の解析結果を表2に示す。
【0124】
(重合例:水素化重合体(20) C-B-S構造)
Bu-Liを0.078質量部とし、第1ステップ前に加えるTMEDAを0.02モル加えて、第1ステップとして、ブタジエン22質量部とし、第2ステップとして、TMEDAとNaOAmを添加せずに、ブタジエン10質量部とし、第3ステップとして、スチレン68質量部としブロック共重合体を製造したこと以外は、(1)と同様の操作を行い、水素化重合体(20)を製造した。
得られた水素化重合体(20)は、スチレン含有量68質量%、重量平均分子量280,000、分子量分布1.35、水素添加率86.1%であった。
得られた水素化重合体(20)の解析結果を表2に示す。
【0125】
(重合例:水素化重合体(21) C-B-S構造)
前記の水素化重合体(1)と同様の反応器を用いてバッチ重合を行った。Bu-Liを0.050質量部とし、第1ステップとして、ブタジエン10質量部を5分間かけて投入し、6分反応させた後、続いてイソプレン15質量部を5分かけて投入し、10分反応させた。第2ステップとして、TMEDAを添加せずにブタジエン60質量部添加し、第3ステップとして、スチレン15質量部とし、その後更に10分間重合した。
なお重合中、温度は65℃にコントロールしブロック共重合体を製造したこと以外は、(1)と同様の操作を行い、水素化重合体(21)を製造した。
得られた水素化重合体(21)は、スチレン含有量15質量%、重量平均分子量140,000、分子量分布1.52、水素添加率93.0%、MFR6g/10分であった。
得られた水素化重合体(21)の解析結果を表2に示す。
なお、第一ステップのブタジエンを6分反応させた後のポリマー溶液と、イソプレンを反応させた後の溶液をそれぞれ取り出しNMRにより解析したところ、ブロック(C)にランダム性が見られた。
【0126】
(重合例:水素化重合体(22) C-B構造)
Bu-Liを0.050質量部とし、第1ステップとして、ブタジエン20質量部とし、第2ステップとして、ブタジエン60質量部とイソプレン20質量部とし、ブロック共重合体を製造したこと以外は、水素化重合体(19)と同様の操作を行い、水素化重合体(22)を製造した。
得られた水素化重合体(22)は、スチレン含有量0質量%、重量平均分子量181,000、分子量分布1.08、水素添加率98%であった。
【0127】
(重合例:水素化重合体(23) C-B-S構造)
Bu-Liを0.062質量部とし、第1ステップとして、ブタジエン15質量部とし、第2ステップとして、TMEDAを0.70mоl%加えてブタジエン70質量部とし、第3ステップとして、スチレン15質量部としブロック共重合体を製造したこと以外は、水素化重合体(1)と同様の操作を行い、水素化重合体(23)を製造した。
得られた水素化重合体(23)は、スチレン含有量15質量%、重量平均分子量110,000、分子量分布1.19、水素添加率80.0%であった。
得られた水素化重合体(23)の解析結果を表2に示す。
【0128】
(重合例:水素化重合体(24) C-B-S構造)
Bu-Liを0.065質量部とし、第1ステップとして、ブタジエン35質量部とし、第2ステップとして、ブタジエン10質量部とし、第3ステップとして、スチレン55質量部としブロック共重合体を製造したこと以外は、水素化重合体(21)と同様の操作を行い、水素化重合体(24)を製造した。
得られた水素化重合体(24)は、スチレン含有量55質量%、重量平均分子量150,000、分子量分布1.28、水素添加率92.3%であった。
得られた水素化重合体(24)の解析結果を表2に示す。
【0129】
(重合例:水素化重合体(25) C-B-S構造)
Bu-Liを0.065質量部とし、第1ステップとして、ブタジエン15質量部とし、第2ステップとして、TMEDAを添加せずにブタジエン17質量部とし、第3ステップとして、スチレン68質量部としブロック共重合体を製造したこと以外は、水素化重合体(1)と同様の操作を行い、水素化重合体(25)を製造した。
得られた水素化重合体(25)は、スチレン含有量55質量%、重量平均分子量150,000、分子量分布1.28、水素添加率92.3%であった。
得られた水素化重合体(25)の解析結果を表2に示す。
【0130】
(重合例:水素化重合体(26) S-B-S構造)
反応器内に1Lのシクロヘキサンを入れ、その後Bu-Liを全モノマー100質量部に対して0.075質量部とした。
第1ステップとして、スチレン7質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度22質量%)を10分間かけて投入し、その後更に10分間重合した。なお重合中、温度は60℃にコントロールした。
次に第2ステップとして、TMEDAをBu-Li1mоlに対して1.38mоl添加した後、ブタジエン85質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度22質量%)を8分かけて投入し、その後更に20分重合した。尚、重合中の温度を65℃にコントロールした。
次に第3ステップとして、スチレン8質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度22質量%)を5分間かけて投入し、その後更に10分間重合した。なお重合中、温度は70℃にコントロールした。
なお、水素化重合体の調整過程で得られたステップ毎にポリマーをサンプリングした。得られたブロック共重合体の分析値は、スチレン含有量15質量%、重量平均分子量280,000、分子量分布1.11であった。
次に、得られた水素化重合体に、前記と同様の水素添加処理を行い、その水素化率は99.2mоl%であった。得られた水素化重合体(26)の解析結果を表2に示す。
【0131】
(重合例:水素化重合体(27) C-B-S構造)
水素化重合体(23)と同じ重合方法で合成した。第1ステップの前に添加するTMEDAを0.72mоlにして、第2ステップに添加するTMEDAを1.21mоlにした以外は同様の方法である。
得られた水素化重合体(27)は、スチレン含有量15質量%、重量平均分子量53,000、分子量分布1.03、水素添加率95.0%であった。
得られた水素化重合体(27)の解析結果を表2に示す。
【0132】
(重合例:水素化重合体(28) C-B-S構造)
水素化重合体(16)と同様の方法で重合を行った。
第1ステップ前に添加するTMEDAを0.079mоlにし、第2ステップに加えるブタジエンを50質量部、NaOAmを1.02mоlにして、第3ステップに加えるスチレンを20質量部にした以外は同様の操作方法である。
得られた水素化重合体(28)は、スチレン含有量20質量%、重量平均分子量32,000、分子量分布1.32、水素添加率85.0%であった。
得られた水素化重合体(28)の解析結果を表2に示す。
【0133】
(重合例:水素化重合体(29) C-B-S構造)
水素化重合体(5)と同様の手法で重合を行った。
第1ステップにブタジエンを6質量部添加し、第2ステップに加えるブタジエンを74質量部、NaOAmを0.54mоlにして、第3ステップに加えるスチレンを20質量部にした以外は同様の操作方法である。
得られた水素化重合体(29)は、スチレン含有量20質量%、重量平均分子量102,000、分子量分布1.21、水素添加率75.0%であった。
得られた水素化重合体(29)の解析結果を表2に示す。
【0134】
水素化重合体(1)~(29)の解析結果を表1、表2に示す。
【0135】
【表1】
【0136】
【表2】
【0137】
〔実施例1~23〕、〔比較例1~5〕
樹脂組成物は下記の成分を用いて、以下の調製方法にしたがって調製した。
成分比及び物性を、下記表3~表5に示す。
【0138】
<成分(II): ラジカル開始剤>
パーブチルP-90(日油株式会社製)
<成分(III) :極性樹脂>
変性ポリフェニレンエーテル系樹脂:SA9000(SABIC社製)
<成分(IV):架橋剤>
トリアリルイソシアヌレート(TAICTM)(三菱ケミカル社製)
【0139】
<樹脂組成物の調製方法、及び硬化物フィルムの製造方法>
各成分をトルエン(和光純薬株式会社製の特級品をそのまま使用した)に添加し、撹拌、溶解させ、濃度20質量%~50質量%のワニスである樹脂組成物を調製した。前記ワニスを離形処理されたPTFEフィルム上に30mm/秒の速度で塗工した後、窒素気流下送風乾燥機で130℃、30分乾燥し、得られたフィルムを窒素気流下送風乾燥機で200℃、90分硬化反応を行い、硬化物フィルムを得た。前記硬化物フィルムを評価サンプルに供した。
【0140】
下記表3~表5に示す実施例1~23及び比較例1~5より、本発明の範囲における水素化重合体は、硬化物として誘電性能、強度、及び耐熱性のバランスに優れていることが明らかとなり、特に硬化物を用いたガラスクロス、金属積層板を用いたプリント配線板用途に好適であることが分かった。
【0141】
〔実施例24~50〕、〔比較例6~15〕
樹脂組成物はさらに下記の成分を用いて、以下の調製方法にしたがって調製した。
ポリイミド系樹脂
ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン(BMI-70)(ケイ・アイ化成株式会社製)
4,4'-ビスマレイミドジフェニルメタン(BMI-H)(ケイ・アイ化成株式会社製)
<成分(IV):硬化(架橋)剤>
2-エチルヘキサン酸亜鉛 (ナカライテスク社製)
シアン酸エステル系 2,2-ビス(4-シアネートフェニル)プロパン(東京化成株式会社製)
ジアミン系 4,4'-ジアミノジフェニルメタン (東京化成株式会社製)
パークミルD: ジクミルパーオキサイド (日油株式会社製)
<成分(V):相溶助剤>
相溶助剤:M1913(旭化成株式会社製)
【0142】
<樹脂組成物の調製方法、及び硬化物フィルムの製造方法>
ポリイミド系樹脂とシアン酸エステル系硬化剤及び/又はジアミン系硬化剤を、下記表6~表10に記載の配合割合で160℃に溶解させ、撹拌しながら6時間反応させ、ビスマレイミドトリアジン樹脂オリゴマーを得た。得られたビスマレイミドトリアジン樹脂オリゴマーをトルエンに溶解させ、残りの成分を添加し、撹拌、溶解させ、濃度20質量%~50質量%のワニス(樹脂組成物)を調製した。
前記ワニスを離形処理されたPTFEフィルム上に30mm/秒の速度で塗工した後、窒素気流下送風乾燥機で100℃、30分乾燥し、得られたフィルムを窒素気流下送風乾燥機で200℃、最大90分硬化反応を行い、硬化物フィルムを得た。
前記硬化物フィルムを評価サンプルに供した。
【0143】
下記表6~10に示す実施例24~50及び比較例6~15より、本発明範囲における水素化重合体は、硬化物として誘電性能、強度及び耐熱性のバランスに優れていることが明らかとなった。特に本発明の硬化物は、ガラスクロス、金属積層板を用いたプリント配線板用途に好適であることが分かった。
【0144】
〔実施例51~74〕、〔比較例16~27〕
樹脂組成物はさらに下記の成分を用いて、以下の調製方法にしたがって調製した。
<成分(I):重合体>
エチレン-α-オレフィンコポリマー:タフマーDF710(三井ケミカル社製、ガラス転移温度-30℃以下、結晶化ピーク温度50℃、重合体の構成、結晶化熱量が成分(I)の要件を満たす。)
水素添加スチレン-エチレン-ブタジエン-結晶性オレフィンコポリマー ダイナロン4600P(JSR社製、スチレン含有量20質量%、ガラス転移温度-45℃、結晶化ピーク温度73.0℃、結晶化熱量5.39kJ/g)
<成分(III):極性樹脂>
ビスフェノールA型エポキシ樹脂 EXA-850CRP(DIC株式会社製)
フェノキシ樹脂 YP-50S(日鉄ケミカルズ社製)
<成分(IV):硬化剤>
1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール(東京化成工業株式会社)
フェノール系硬化剤 KA-1163(DIC株式会社製)
【0145】
<樹脂組成物の調製方法、及び硬化物フィルムの製造方法>
フェノール系硬化剤以外はトルエンに添加し、撹拌、溶解させ濃度20質量%~50質量%のワニス(樹脂組成物)を調製した。フェノール系硬化剤を使用する場合は、メチルエチルケトン(和光純薬株式会社製の特級品をそのまま使用した)を溶媒とし、濃度50質量%のフェノール系硬化剤溶液を調製し、前記ワニス(樹脂組成物)に添加、撹拌し、ワニスを調製した。
ワニスを離形処理されたPTFEフィルム上に30mm/秒の速度で塗工した後、窒素気流下送風乾燥機で100℃、30分乾燥し、得られたフィルムを窒素気流下送風乾燥機で200℃、90分硬化反応を行い、硬化物フィルムを得た。
前記硬化物フィルムを評価サンプルに供した。
【0146】
〔樹脂組成物の物性測定方法〕
((1)誘電正接及び誘電特性)
得られた硬化物フィルムを10GHzでの誘電正接を、空洞共振法にて測定した。
測定装置としてネットワークアナライザー(N5230A、AgilentTechnologies社製)、及び関東電子応用開発社製の空洞共振器(Cavity Resornator CPシリーズ)を用い、測定サンプルは、硬化物フィルムから幅2.6mm×長さ80mmの試験片を切り出し測定した。
エラストマーを添加していない配合の誘電率(Dk)、誘電正接(Df)をそれぞれ100とした値で評価した。
誘電率、誘電正接の数値が低いほど優れていることを指す。
【0147】
((2)耐アルカリ性)
基板の薬液処理の一つとして使われるアルカリ溶液への耐性を調査した。
前記の硬化物フィルムから幅2.6mm×長さ80mmの試験片を取り出し、10mоl%のNaOH水溶液に25℃で2時間含侵させた。
含侵前後の質量差を測定し、含侵前の質量に対する変化量が5質量%以下の場合は◎、5質量%超10質量%以下の場合は〇、10質量%超15質量%以下場合は△、15質量%超25質量%以下の場合は×とした。
【0148】
((3)取扱性)
前記の樹脂組成物をPTFEフィルム上に塗布して乾燥させた後にできた硬化物フィルムの目視及び触感により下記の基準で評価した。
(a)25℃における表面のべたつきの有無
(b)カッターナイフで切断した時の樹脂割れ又は粉落ちの有無
評価基準を下記に示す。
〇:上記(a)及び(b)のいずれも無い。
△:上記(a)及び(b)のいずれか一方でも有る。
×:上記(a)及び(b)の両方が有る。
【0149】
((4)耐湿熱性)
得られた硬化物フィルムをギヤーオーブンにて110℃、2時間乾燥させ、プレッシャークッカーで、水蒸気圧力0.10MPaG、温度40℃、湿度90%RHの条件で6時間の湿熱処理を実施した。
湿熱処理した後、硬化物シートを25℃の水に15分間浸した。
水に浸漬した後、硬化物シートを引き上げ、表面の水滴をふき取り、硬化物フィルムをオートグラフ(島津製作所株式会社製)による引張り試験を実施し、湿熱処理前後の破断強度の低下率を求めた。
破断強度の低下率が5%未満の場合「◎」、5%超10%未満の場合「○」、10%以上30%未満の場合「△」、30%以上の場合「×」とした。
【0150】
【表3】
【0151】
【表4】
【0152】
【表5】
【0153】
【表6】
【0154】
【表7】
【0155】
【表8】
【0156】
【表9】
【0157】
【表10】
【0158】
【表11】
【0159】
【表12】
【0160】
【表13】
【0161】
【表14】
【0162】
【表15】
【産業上の利用可能性】
【0163】
本発明の樹脂組成物は、電子回路基板、次世代通信用基板の材料として産業上の利用可能性を有している。