(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054492
(43)【公開日】2024-04-17
(54)【発明の名称】糸用台紙
(51)【国際特許分類】
B65D 85/00 20060101AFI20240410BHJP
A01K 97/06 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
B65D85/00 301
A01K97/06 502
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160731
(22)【出願日】2022-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】000125967
【氏名又は名称】株式会社がまかつ
(74)【代理人】
【識別番号】100107825
【弁理士】
【氏名又は名称】細見 吉生
(72)【発明者】
【氏名】南部 孝宏
(72)【発明者】
【氏名】吉武 賢次
【テーマコード(参考)】
2B109
3E068
【Fターム(参考)】
2B109BA15
3E068AA22
3E068AB09
3E068AC03
3E068BB01
3E068CC20
3E068CD01
3E068CE02
3E068CE06
3E068DD01
3E068DD04
3E068DD08
3E068DD40
3E068DE19
3E068EE10
3E068EE11
3E068EE26
(57)【要約】
【課題】 糸に巻きグセ(撚り)が生じない、スプールの使用が不要であるため包装に要するコストを削減できる、また、コンパクトな包装にすることができるうえ糸の残量を把握しやすい、といった利点を有する好ましい糸用台紙を提供する。
【解決手段】 糸を巻き付けるための糸用台紙1は、a)切り込みpと折り目qとによって形成された糸掛け用の突部2・3が台紙内の2箇所に形成されていて、それぞれの突部2・3に互いに逆回転向きに糸を掛けることにより全体として8の字状に糸を巻き付けられること、および、b)上記2箇所の突部2・3の間の位置に折り曲げ部4が設けられ、巻き付けられた糸を外側にしてその折り曲げ部4で折り曲げられること、を特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸を巻き付けるための糸用台紙であって、
切り込みと折り目とによって形成された糸掛け用の突部が台紙内の2箇所に形成されていて、それぞれの突部に互いに逆回転向きに糸を掛けることにより全体として8の字状に糸を巻き付けられること、
および、上記2箇所の突部の間の位置に折り曲げ部が設けられていて、巻き付けられた上記の糸を外側にしてその折り曲げ部で折り曲げられること
を特徴とする糸用台紙。
【請求項2】
上記折り曲げ部に、折り曲げられるとき縁部が奥に引っ込む奥入部を有することを特徴とする請求項1に記載の糸用台紙。
【請求項3】
上記の奥入部は、上記折り曲げ部の一部であって巻き付けられた糸が接する位置に、または上記折り曲げ部の全域に形成された屈曲部であり、
上記折り曲げ部の直線に沿った中央部をはさむ両側に山折り用の折り目を有するとともに当該中央部に谷折り用の折り目を有していて、横断面視においてMの字状に屈曲するものである
ことを特徴とする請求項2に記載の糸用台紙。
【請求項4】
上記の奥入部は、上記折り曲げ部の一部であって巻き付けられた糸が接する位置に形成された、上記折り曲げ部に沿った方向に長い略長方形の切欠きであることを特徴とする請求項2に記載の糸用台紙。
【請求項5】
上記折り曲げ部から、2箇所に形成された糸掛け用の上記突部までの各距離が、5mm以上相違していることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の糸用台紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、販売用の包装等とする目的で糸を巻き付けることができる糸用台紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
釣糸等の販売のためには、スプールなどと呼ばれるプラスチック製の円筒状の糸巻きに釣糸を巻き、それを、商品説明等を表示した台紙とともに透明な袋に入れて商品パッケージとするのが一般的である。そのようなスプールに替えて、台紙に適切な切り込みや折り目を入れて1つ以上の突部を形成しておき、そうした突部に釣糸を巻き付ける、といったことも行われている。釣糸を巻き付けた台紙は、やはり透明袋等に入れて、商品パッケージとしての包装とする。商品説明等はその台紙自体に表示しておくことができる。プラスチック製のスプールを使用しないで台紙に設けた突部に釣糸を巻き付ける場合には、包装のためのコストを大幅に下げることができる。
【0003】
下記の特許文献1には、台紙(ベースプレート)上に2つのスプール(糸掛ボス)を取り付けておき、それらに対して釣糸を8の字状に巻き付けることが記載されている。そしてその台紙は、巻き付けた釣糸が内側になるように折り曲げられて、包装を兼ねたケーシングに入れられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一つのスプールや台紙上の1箇所の突部に糸を巻き掛ける場合、糸の繰り出しを適切な方法や装置によって行う必要がある。一方の手で持ったスプールや台紙に他方の手で糸を巻き付ける場合のように、巻き付ける平面と交わる(平行でない)方向から糸を普通に繰り出すなら、糸そのものに撚り(より、ひねり)が生じてしまう。樹脂や金属でできた糸の場合、撚りが生じた状態が長時間続くと糸にクセが付いてしまい、その後に円滑な使用をすることが難しくなる。
【0006】
それに対し、特許文献1の例に採用されているように2つのスプールを用いて糸を8の字状に巻き付ける場合には、各スプールに交互に逆回転向きに糸を巻くわけであるから、上記のような撚りが糸に生じにくいという利点がある。
ただし、同文献1の例では、プラスチック等で製造されたスプールを台紙上に2個取り付ける必要があるため、包装のためのコストが相当に上昇する。また、糸が内側になるように台紙を折り曲げるので、コンパクトな包装にすることは可能だが、使用のために糸を引き出したとき、使用者がその残量(残りの糸の長さ)を知ることが難しい。
【0007】
本発明は上記の課題を考慮したもので、糸に巻きグセ(撚り)が生じない、スプールの使用が不要であるため包装に要するコストを削減できる、また、コンパクトな包装にすることができるうえ糸の残量を把握しやすい、といった利点を有する好ましい糸用台紙を提供するものである、
【課題を解決するための手段】
【0008】
本件出願に係る発明は、糸を巻き付けるための糸用台紙であって、
・ 切り込み(切断線)と折り目(折り線)とによって形成された糸掛け用の突部が台紙内の2箇所に形成されていて、それぞれの突部に互いに逆回転向きに糸を掛けることにより全体として(つまり上記2箇所の突部に)連続した8の字状に糸を巻き付けられること、および、
・ 上記2箇所の突部の間の位置に折り曲げ部が設けられていて、巻き付けられた上記の糸を外側にしてその折り曲げ部で折り曲げられること
を特徴とするものである。
図1~
図4に、発明による糸用台紙とその使用について一例を示している。
図1のように台紙1には、切り込みpと折り目qとによって糸掛け用の突部2・3を形成している(それらの折り目qが谷折りになるように突部2・3を手前に引き起こせば、それらへの糸の巻き掛けが容易になる)。突部2・3に対し
図2のように互いに逆回転向きに糸Aを掛けて、台紙1上に全体として8の字を描くように糸Aを巻き付ける。そして、2箇所の突部2・3の間の位置にある折り曲げ部4で、糸Aが外側になるように、
図3の状態を経て
図4のように台紙1を折り曲げる。糸Aは、たとえば
図4の状態で台紙1とともに透明袋(図示省略)に入れて、販売用のパッケージとする。
【0009】
上記した発明の糸用台紙では、まず、台紙上にスプールを取り付けるのではなく、切り込みと折り目とによって糸掛け用の突部を形成し、それらの突部に糸を巻き付けることとしている。プラスチック製等のスプールが不要なので、それを使用する場合に比べると包装に要するコストは大幅に下げられる。
糸掛け用の突部を2箇所に形成し、それらに、互いに逆回転向きに糸を掛けることにより、台紙上で全体として8の字状に糸を巻き付けることから、台紙の面と交わる方向から糸を繰り出して巻き掛ける場合にも糸に撚りが生じにくく、したがって、樹脂製または金属製の糸にもクセが付きにくい。
また、台紙を折り曲げるため、台紙を含む糸の包装をコンパクトにすることができる。しかも、台紙に巻き付けられた糸が外側になるように折り曲げるので、透明袋等に入った状態で、糸の残量を外側から容易に知ることができる。
【0010】
発明による上記糸用台紙については、上記の折り曲げ部に、折り曲げられるとき縁部(すなわち折り曲げによって生じる縁部)が奥に引っ込む奥入部を有するものであるのが好ましい。
図1~
図4の例では、折り曲げ部4に奥入部としての屈曲部5を設けている。台紙1が折り曲げられると、その折り曲げ部4が新たな縁部となって外向きに突出する稜を形成するわけだが、屈曲部5は、その縁部を台紙の奥(内側寄り)に引っ込めてその突出度合いを小さくするための部分である。奥入部としての屈曲部5は、
図1においては折り目q1~q3と切れ目pとで囲まれた図示の長方形の部分である。屈曲部5を
図4(b)のように屈曲させると、それによってできる縁部E5を、それがない部分における縁部E4よりも奥へ引っ込めることができる。一方、たとえばその長方形の部分をくり抜くこととすれば、長方形の開口(切欠き)を形成することができ、やはり折り曲げにともなう縁部を台紙の奥寄りに引っ込めることができる。
【0011】
折り曲げる前の台紙上に上記のように糸を巻き付けて、その糸を外側にして台紙を折り曲げると、外側にある糸が、折り曲げ部の縁部に掛かって引っ張られることによりその張力を増すのが通常である。しかし、台紙に巻かれた糸の張力が増すと、折り曲げ部や2箇所の突部と強く接触することになるため、糸に曲げグセが付いたり伸びたりしてしまう恐れがある。その点、上記のように、縁部を奥に引っ込めてその突出度合いを小さくできる奥入部を設けておくと、台紙の折り曲げにともなって糸の張力が増大することが避けられるため、糸に伸びや曲げグセが付きにくい。
【0012】
上記の糸用台紙における上記の奥入部は、
・ 上記折り曲げ部の一部(中ほどの部分)であって巻き付けられた糸が接する位置に、または上記折り曲げ部の全域に形成された屈曲部であり、
・ 上記折り曲げ部の直線に沿った中央部をはさむ両側近傍に山折り用の折り目を有するとともに当該中央部に谷折り用の折り目を有していて、横断面視においてMの字状に屈曲するものであると好ましい。
図1~
図4には、折り曲げ部4の一部に屈曲部5を設けた例を示している。屈曲部5には、折り曲げ部4の直線に沿った中央部に谷折り用の折り目q1を形成し、それをはさむ両側に山折り用の折り目q2・q3を形成し、折り曲げ部4で台紙1を折り曲げたとき、それら三つの折り目が、
図4(b)の横断面の下部引出し図に示すとおりMの字状に屈曲し得るようになっている。
図示の例では、折り曲げ部4の一部(糸が接する部分とその付近)にのみ屈曲部を形成しているが、折り曲げ部4の全域すなわち台紙1の全幅にわたって形成してもよい。
【0013】
折り曲げ部で台紙を折り曲げるとき、上記の屈曲部を横断面視でMの字状に屈曲させたなら、
図4のように、当該屈曲部に生じる縁部(たとえば
図4の符号E5)は、屈曲部がない場合に折り曲げ部に生じる縁部(たとえば
図4の符号E4)よりも、台紙の奥(内側寄り)に引っ込んだ位置にできる。
そのため、上記折り曲げ部において台紙を折り曲げたとき、糸に張力の増加が生じることが防止され、伸びや曲げグセが糸に付くことが防止される。また、屈曲部は上記のとおりMの字状に屈曲し、そこにできる縁部(
図4の符号E5)では台紙の紙が4枚重なることになるので、この縁部に接する糸の曲がり方は、2枚のみが重なった他の縁部(
図4の符号E4)に接する糸のそれよりも鋭角的でなくなる。したがって、仮にその屈曲による縁部に糸が強めに接触したとしても、糸に生じる曲げグセは弱いものとなる。
【0014】
上記の糸用台紙における上記の奥入部は、上記折り曲げ部の一部(中ほどの部分)であって、巻き付けられた糸が接する位置に形成された、上記折り曲げ部に沿った方向に長い略長方形の切欠きであるとよい。
台紙が折り曲げられたときに糸の張力を増さないための奥入部として、
図1~
図4には屈曲部5を例示しているが、その屈曲部5の範囲等を長方形に切除して台紙1の表裏間に貫通する開口を設ければ、それを上記の切欠きとすることができる。開口の大きさはたとえば幅が2~20mm程度、長さが10~50mm程度とし、上記折り曲げ部で台紙を折り曲げるときその長方形の幅の中央を折り曲げ線が通るようにすると好ましい。
【0015】
切欠きによる上記の開口は、台紙において容易に形成することができる。そして、上記折り曲げ部において台紙を折り曲げたとき、当該開口の縁部は、折り曲げ部に生じる縁部から、段差をはさんで台紙の奥(内側寄り)に引き下がった位置に生じる。つまり、上記の開口を有する台紙が上記のように折り曲げられた状態では、
図4(a)と同じように、折り曲げ部による縁部よりも切欠いた開口による縁部の方が内側に引き下がった位置にあり、いわば突出度合いが小さい。
開口による縁部の突出度合いが小さいため、その開口に接するように糸が巻き掛けられていると、台紙が折り曲げられたときにも糸の張力が増加しない。張力が増加しないことから、上述のとおり、糸に伸びや曲げグセの付くことが防止される。
【0016】
上記の糸用台紙において、上記折り曲げ部から、2箇所に形成された糸掛け用の上記突部までの各距離が、5mm以上相違しているとさらに好ましい。
図1~
図4の例でも、折り曲げ部4から一方の突部2までの距離は、折り曲げ部4から他方の突部3までの距離よりも10mm程度短く設定している。そのことは
図4(b)においてとくに明らかである。
【0017】
上記折り曲げ部から2箇所の突部までの距離が等しい場合には、折り曲げ部にて台紙を折り曲げたとき、各突部に掛けられたうえ台紙の裏側(すなわち折り曲げられて向かい合う内側の面)に通る糸の束(
図4(b)の例では符号Ac・Ad)が重なり合うことになる。巻き掛けられた糸の量が多い(つまり糸が長い)場合には糸の束が嵩張るため、それらが重なり合うとなると、折り曲げた台紙の間隔が広がることになり、包装状態がコンパクトでなくなる。
その点、折り曲げ部から2箇所の突部までの距離が互いに5mm以上異なる場合には、台紙の裏側において糸同士が重なることが避けられる。つまり、たとえば
図4(b)のように、糸の束Ac・Adの位置が上下にずれる。そのため、折り曲げた台紙の間隔が広がることが避けられ、コンパクトな包装にすることが可能である。
【発明の効果】
【0018】
発明の糸用台紙によると、スプールを使用せずに、切り込みと折り目によって台紙上に設ける糸掛け用の突部に糸を巻き付けるため、スプールの製作と取り付けが不要であり、したがって包装に要するコストが大幅に削減される。糸掛け用の2箇所の突部に8の字状に糸を巻き付けることから、糸に撚りが生じにくく、捩れたクセが付きにくい。また、糸が外側になるように折り曲げ部にて台紙を折り曲げるので、糸の包装をコンパクトにすることができるうえ、糸の残量を容易に知ることができる。
【0019】
発明の糸用台紙の上記折り曲げ部に、その台紙が折り曲げられるとき縁部が奥に引っ込む奥入部があると、台紙の折り曲げにともなって糸の張力が増大することを防止できるため、糸に伸びや曲げグセが付きにくい。
また、発明の糸用台紙において、上記折り曲げ部から糸掛け用の2箇所の突部までの各距離が5mm以上相違していると、台紙の裏側において糸同士が重なることが避けられるため、折り曲げた台紙の間隔を狭くすることができ、コンパクトな包装にすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】発明の実施例としての糸用台紙1を示す正面図である。
【
図2】
図1の糸用台紙1に釣糸Aを巻き付けた状態を示す正面図である。
【
図3】釣糸Aを巻き付けた
図2の糸用台紙1を、下半部1bが図の紙面の奥の方へ旋回して釣糸Aが外側になるように折り曲げる過程を示す、正面やや右側から見た斜視図である。
【
図4】
図4(a)は、釣糸Aを巻き付けた
図2の糸用台紙1を、釣糸Aが外側になるように
図3の過程を経て折り曲げた状態を示す正面図である。
図4(b)は、同(a)におけるb-b断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
発明による糸用台紙について一実施例を
図1~
図4に示す。図示の糸用台紙1は釣糸用であり、樹脂製の釣糸Aを巻き付け(
図2参照)、
図4のように二つ折りにしたコンパクトな状態にして透明袋に入れることにより販売用の包装とするためのものである。台紙1の表面には、商品である釣糸Aの商品情報等(図示省略)を印刷しておいて表示する。
【0022】
糸用台紙1は、コートボール紙と呼ばれる厚さ1mm弱(400g/m
2)の紙を、
図1のように長方形(約90mm×約230mm)に切り出すとともに、切り込みp(トムソンと呼ばれる切断線。図中に実線で示している)と折り目q(折りトムソンまたは折りケイとも呼ばれるミシン目状の切り込み。図中に点線で示している)などを何箇所かに形成することによって、釣糸Aを巻き付けて保持できる台紙にしたものである。この台紙1の構成の詳細はつぎのとおりである。
【0023】
糸用台紙1には、釣糸Aを巻き付ける糸掛けとして使用する目的で、
図1中の上下の2箇所に突部2・3を形成している。突部2・3は、図示のようにコの字状に連続する切り込みpと、その切り込みpの端点間をつなぐ直線状の折り目qとによって形成したものである。コの字状の切り込みpの内側にある舌片状の部分を、折り目qを折り曲げて紙面手前に引き起こせば、その舌片状の部分に釣糸Aを巻き掛けることができる。切り込みpと折り目qとの交点の部分には抜き穴rを形成しているため、釣糸Aの量(長さ)が多い場合にも巻き掛けやすい。2箇所の突部2・3は、後述のようにそれらに対して8の字状に釣糸Aを巻き付けることができるよう、折り目qが互いに向かい合う内側にあって上記舌片状の部分が相反する外側を向くように形成している。そのように形成することにより、折り目qを少し(90°以下に)曲げておくだけで双方の突部2・3に連続して釣糸Aを巻き付けることができ、また、巻き付けた釣糸Aが突部2・3から抜け出しにくい。
【0024】
上記のように長方形の糸用台紙1において、長さ方向の中ほどの部分に折り曲げ部4を設けている。折り曲げ部4は、台紙1の幅方向すなわち図示左右の方向に延ばして折り目qを設けたもので、その折り目qに沿って紙面と直角の方向へ台紙1を折り曲げることができる。釣糸Aを巻き掛ける側すなわち図示手前の表面が外側になるように折り曲げ部4で台紙1を折り曲げると、台紙1のうち図示の上半部1aと下半部1bとが、裏面同士を対向させた状態で重ね合わされることとなる。
【0025】
折り曲げ部4の位置は、上下2箇所の突部2・3の間ではあるが、あえてそれらの中央ではないように定めている。図示の例では、突部2から折り曲げ部4までの距離は、突部3から折り曲げ部4までの距離よりも10mm程度短くなるようにしている。後述するように、台紙1を折り曲げたとき、裏側に通した糸の束が重なることを避けるためである。
【0026】
折り曲げ部4の中ほどの部分には、折り曲げたときに生じる縁部の位置を内側に奥入させるための屈曲部5を形成している。屈曲部5は、折り曲げ部4としての折り目qから続く折り目q1を中央部に設け、折り目q1の両側にそれと平行にそれぞれ約5mmの間隔をおいて折り目q2・q3を設けるとともに、折り目q2・q3の両端同士を切り込みpでつないだものである。折り目q2・q3と両側の切り込みpとで囲まれる長方形の部分が屈曲部5である。
【0027】
図1の紙面の手前側の表面が外側になるように折り曲げ部4で糸用台紙1を折り曲げると、折り曲げ部4の折り目qが稜を形成して直線状の縁部となる。その折り曲げの際、上記した中央部の折り目q1を谷折りするとともにその両側の折り目q2・q3を山折りにして、上半部1aと下半部1bとの間に屈曲部5を押し入れる。そうすると、
図4(b)のように屈曲部5が横断面においてMの字状に屈曲し、屈曲部5の領域にできる縁部E5が、折り曲げ部4のうち屈曲部5がない図示左右の領域にできる縁部E4よりも台紙1の内側に引っ込んだ位置にできることとなる。
【0028】
糸用台紙1の右上の部分には針掛け部6を設けている。針掛け部6は、釣糸Aに接続された釣針Aa(
図2参照)を掛け留めるための部分である。
図1のように、釣針Aaを留めておきやすい凹凸を上端に有する透明樹脂シートを、台紙1上で左右両側に形成した切り込みpの間に差し入れるとともに、下部の切り込みpにより半円状に上向きに延びたシート押さえ片6aによって押し止める。
【0029】
そのほか、糸用台紙1においては、上端部の左右および下端部の左右、ならびに折り曲げ部4の左右の各部に、糸留め部9を形成している。糸留め部9は、切り込みpと同様に台紙1に長さ数mm程度の切れ目を入れたもので、そこに釣糸Aを挟んで留めることができる。
【0030】
以上のように構成した糸用台紙1に対しては、
図2のように釣糸Aを巻き付けることができる。すなわち、まず、釣糸Aに接続された釣針Aaを針掛け部6に掛け留める。具体的には、釣針Aaのうち針先に近い側を針掛け部6のシートの凹凸部分に掛ける。
続いて、
図1の台紙1において、突部2・3における折り目qを少し曲げて舌片状の部分を紙面手前に引き起こした状態にし、それらの突部2・3に対して、繰り返し連続して8の字状に釣糸Aを巻き付ける。8の字状に巻き付けるには、たとえば、上側の突部2に対しては紙面手前から見て右回りに釣糸Aを掛け、下側の突部3に対しては紙面手前から見て左回りに釣糸Aを掛ける(またはその逆にする)。それぞれの突部2・3に掛ける釣糸Aは、折り目qの両端にある抜き穴rに通すとよい。
【0031】
突部2・3に釣糸Aを巻き終わると、
図2のように、継手類Abが接続された釣糸Aの他端付近を糸留め部9に挟んで留める。折り曲げ部4の端の方にある糸留め部9にも、その釣糸Aの他端に近い部分を挟んでおく。上記とは逆に、継手類Abに近い釣糸Aの端部付近を最初に糸留め部9に挟んだうえで突部2・3に釣糸Aを巻き付けた場合には、その巻き終わりに、他方の端部にある釣針Aaを針掛け部6に掛け留める。
また、釣糸Aを掛け終わった突部2・3については、引き起こされていた舌片状の部分を元の台紙1の平面内に収まるように寝かせるとよい。
【0032】
上記のように釣糸Aを巻き付けた糸用台紙1は、コンパクトな包装にするため、
図3の要領で上下間を折り曲げて、
図4のように二つ折りにする。
図3は、台紙1の上半部1aを保持した状態で、折り曲げ部4を中心に、その下の下半部1bを図示紙面の奥の側(台紙1の裏面の側)へ、図示白抜き矢印に沿って旋回させるように折り曲げる過程を示している。下半部1bを裏面の側へ折り曲げるのであるから、台紙1の表面に巻き付けた釣糸Aを外側にして折り曲げることになる。
【0033】
図3の状態から
図4の状態にまで糸用台紙1を折り曲げる間には、巻き付けた釣糸Aの張力が強くなることを防止する必要がある。釣糸Aを外側にして台紙1を折り曲げることから、何も処置しなければ釣糸Aの張力が増大するため、糸が伸びたり、折り曲げ部4と接する部分等で曲げグセが付いたりするからである。
【0034】
その防止策として屈曲部5を活用する。屈曲部5は、
図2・
図3に示すように巻き付けた釣糸Aと接する位置にあり、上述のとおり、折り曲げ部4での折り曲げの際に屈曲部5の領域にできる縁部は、他の部分にできる縁部よりも台紙1の内側に引っ込んだ位置に奥入させることが可能だからである。それにはすなわち、
図1に示す屈曲部5における中央部の折り目q1を谷折りにするとともに両側の折り目q2・q3を山折りにするとよい。そうすれば、
図4(b)(とくにその引出し図)に示すように、台紙1の横断面において屈曲部5にM字(逆向きのM字)状の部分ができ、その縁部E5が、その左右にある折り曲げ部4によってできる縁部E4よりも台紙1の内側寄りに形成される。それによって、台紙1を折り曲げる際に釣糸Aの張力が増すことが確実に防止される。また、Mの字状の屈曲部分を有するその縁部E5は、台紙1の紙を4重に有していて釣糸Aを鋭角的には曲げにくいため、仮にその縁部E5に接触しても釣糸Aに強い曲げグセが付く恐れはない。
【0035】
前述したように、折り曲げ部4から上下の突部2・3までの各距離が10mm程度異なるため、糸用台紙1を上記のように折り曲げた状態において、突部2・3で台紙1の裏側に通した釣糸Aが重なることがない。つまり、
図4(b)において、台紙1の上半部1aの裏側に突出する釣糸Aの束Acと、下半部1bの裏側に突出する釣糸Aの束Adとが離れた位置にある。そのため、長い釣糸Aを一つの台紙1に巻き付けたときも、折り曲げた台紙1の間隔が広がって嵩張ってしまう恐れがない。
【0036】
巻き付けた釣糸Aとともに二つ折りにして
図4の状態にした糸用台紙1については、その状態で透明袋に入れて包装を完成する。
以上に示した糸用台紙1を用いて釣糸Aを包装する場合、釣糸Aを8の字状に巻き付けているためその釣糸Aに撚りが生じない、スプールが不要なので低コストである、二つ折りにするために包装がコンパクトである、釣糸Aが外側にあるので糸が見やすく一部のみ使用したときも残量が分かりやすい、二つ折りにされても釣糸Aの張力が増大せず曲げグセ等が生じない、といった利点がある。
【0037】
なお、図示の例では、屈曲部5を折り曲げ部4の中ほどの一部にのみ設けているが、屈曲部5は、糸用台紙1の全幅すなわち折り曲げ部4の全体に設けてもよい。その場合、
図1に示す折り目q1~q3を台紙1の幅全体に設けておき、台紙1を折り曲げるとき、折り目q1~q3にてなる
図4(b)のMの字状の部分を台紙1の全幅に形成する。
【0038】
また、図示の屈曲部5を単なる切欠きに変えるのもよい。たとえば、
図1において折り目q2・q3とそれらの両端の切り込みpとで囲まれる部分を切り抜くことにより、表裏間に貫通する長方形の切欠きを形成しておく。そうするとその切欠きが奥入部となり、糸が巻き付けられた台紙を
図3・
図4に準じて折り曲げるとき、特別な処置をしなくとも、糸に接する部分には
図4(a)の縁部E5と同様に台紙1の中ほどへ引っ込んだ位置に縁部が形成され、糸の張力の増大を防止して曲げグセ等を抑制することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 糸用台紙
2・3 突部
4 折り曲げ部
5 屈曲部(奥入部)
6 針掛け部
A 釣糸(糸)