(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054493
(43)【公開日】2024-04-17
(54)【発明の名称】投射光学系
(51)【国際特許分類】
G02B 13/00 20060101AFI20240410BHJP
G02B 13/08 20060101ALI20240410BHJP
G02B 13/18 20060101ALN20240410BHJP
【FI】
G02B13/00
G02B13/08
G02B13/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160733
(22)【出願日】2022-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】514052472
【氏名又は名称】日精テクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129883
【弁理士】
【氏名又は名称】大牧 稔
(72)【発明者】
【氏名】大津 卓也
【テーマコード(参考)】
2H087
【Fターム(参考)】
2H087KA06
2H087KA12
2H087LA28
2H087PA06
2H087PA17
2H087PB06
2H087QA02
2H087QA06
2H087QA12
2H087QA17
2H087QA21
2H087QA22
2H087QA25
2H087QA37
2H087QA41
2H087QA46
2H087RA04
2H087RA05
2H087RA08
2H087RA12
2H087RA13
2H087RA32
2H087RA42
2H087RA45
2H087UA01
(57)【要約】
【課題】斜め投射の超短焦点プロジェクタに好適に用いられ、反射ミラーを用いることなく全長が短くコンパクトで、且つ斜め方向から画像を投射する場合に、投影面において縦・横方向での画像表示素子の解像度が維持される投射光学系を提供すること。
【解決手段】投射面側から順に、投影面における投射像のアスペクト比を変換する2枚以上のアナモフィックレンズを有する前群と、結像作用を有する後群とからなる2群構成の光学系の光軸を投射面に対して斜めに配置してなることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示素子で形成される画像を投射面に投射する投射光学系であって、
投射面側から順に、投影面における投射像のアスペクト比を変換するアナモフィックレンズを有する前群と、結像作用を有する後群と、を備え、
前記前群が、投射面側から順に、第1のアナモフィックレンズと、投射面側に凹面を向けた第2のアナモフィックレンズとからなり、
前記前群及び後群から構成される投射光学系の光軸を投射面に対して斜めに配置してなる斜め投射の投射光学系。
【請求項2】
前記第1及び第2のアナモフィックレンズは、変換される投影像の前記アスペクト比が、画像表示素子上の画像表示面に対応する縦・横方向の画素ピッチと、投射面に投影される前記画像表示面に対応する画像の縦・横方向の投影ピッチと、が相似形となるように構成されてなる請求項1に記載の投射光学系。
【請求項3】
以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1に記載の投射光学系。
1.3<EFLY/EFLX<1.8 (1)
ここで、
投射光学系の光軸方向をZ軸方向とし、Z軸方向に直交する平面内において、水平方向をX軸方向及び垂直方向をY軸方向としたときに、EFLXはX軸方向の投射光学系全系の焦点距離、EFLYはY軸方向の投射光学系全系の焦点距離である。
【請求項4】
前記前群が、X軸方向に負のパワーを有すると共にY軸方向に正のパワーを有する第1のアナモフィックレンズと、X軸方向に正のパワーを有すると共にY軸方向に負のパワーを有する第2のアナモフィックレンズとからなり、以下の条件式を満足することを特徴とする請求項3記載の投射光学系。
-0.2<((1/L1R1y+1/L1R2y)+(1/L2R1y+1/L2R2y))/((1/L1R1x+1/L1R2x)+(1/L2R1x+1/L2R2x))<0.2 (2)
ここで、
L1R1xは、第1のアナモフィックレンズのX軸方向における投射面側の面の曲率半径、
L1R2xは、第1のアナモフィックレンズのX軸方向における画像表示素子側の面の曲率半径、
L1R1yは、第1のアナモフィックレンズのY軸方向における投射面側の面の曲率半径、
L1R2yは、第1のアナモフィックレンズのY軸方向における画像表示素子側の面の曲率半径、
L2R1xは、第2のアナモフィックレンズのX軸方向における投射面側の面の曲率半径、
L2R2xは、第2のアナモフィックレンズのX軸方向における画像表示素子側の面の曲率半径、
L2R1yは、第2のアナモフィックレンズのY軸方向における投射面側の面の曲率半径、
L2R2yは、第2のアナモフィックレンズのY軸方向における画像表示素子側の面の曲率半径、
である。
【請求項5】
以下の条件式を満足することを特徴とする請求項4に記載の投射光学系。
0.6<d2/((EFLX+EFLY)/2)<1.0 (3)
ここで、
d2は前群第1レンズ及び第2レンズの光軸上の空気間隔
である。
【請求項6】
以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の投射光学系。
0.515<COSθ<0.777 (4)
ここで、θは、投射光学系の光軸方向と、投射面の法線との成す角
である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示素子の画像や3次元測定装置等の光源像を拡大投影する投射光学系に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からLCD(Liquid Crystal Display)等の画像表示素子に高輝度LED(Light Emitting Diode)素子を光源に用いた携帯可能なモバイルプロジェクタが実用化されている。このようなモバイルプロジェクタに搭載され、画像を拡大投影する投射光学系として、光学系の全長を抑えた小型の投射光学系が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、短い投射距離で大画面表示できる超短投射型のプロジェクタとして、複数のレンズと反射ミラーを組合わせたものが多数提案されており(例えば、特許文献2)、更に、これら反射ミラーを備えた超短投射型のプロジェクタにおいて、アナモフィック光学系を加える事で投射像のアスペクト比を変換することができる投射装置が知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-81072号公報
【特許文献2】特開2019-164176号公報
【特許文献3】特開2015-114609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、卓上をスクリーンに用いる場合など、限られた投影範囲を、より短い投射距離で投射する小型卓上プロジェクタなどの用途では、より光学系の小型化が必要となり反射ミラーを廃し光学系の光軸を投射面に対して斜めに配置して、上方向又は下方向から斜めに投射面を投射する投影光学系の実現が望まれる。
【0006】
ところで、投影面に対して正面から画像を投射する正面投射方式のプロジェクタでは、画像表示素子における画像表示面の縦・横方向の長さ(画素ピッチ)と、光学系で拡大され投射面に投射される画像の縦・横方向の長さ(投影ピッチ)は相似形となり、縦・横方向での画像表示素子の解像度は投影面においても維持される。
【0007】
しかしながら、従来の正面投射に最適化された投射光学系を用いて画像を斜め投射した場合、投射面に投射される画像は、縦方向の投影ピッチが長くなるため、正面投射した場合と同じ投影画像の縦・横比率を得る為には、画像表示素子の画素の利用範囲を縦方向に少なくする必要があり、縦方向に解像度が悪化するという課題がある。
【0008】
本発明は上記従来における問題点を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、斜め投射の超短焦点プロジェクタに好適に用いられ、反射ミラーを用いることなく全長が短くコンパクトで、且つ斜め方向から画像を投射する場合に、投影面において縦・横方向での画像表示素子の解像度が維持される投射光学系を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、本発明の投射光学系は、画像表示素子で形成される画像を投射面に投射する投射光学系であって、投射面側から順に、投影面における投射像のアスペクト比を変換するアナモフィックレンズを有する前群と、結像作用を有する後群とを備え、前記前群が、投射面側から順に、第1のアナモフィックレンズと、投射面側に凹面を向けた第2のアナモフィックレンズとからなり、前記前群及び後群から構成される投射光学系の光軸を投射面に対して斜めに配置してなる斜め投射の投射光学系である。
【0010】
また、本発明の投射光学系において、前記第1及び第2のアナモフィックレンズは、変換される投影像の前記アスペクト比が、画像表示素子上の画像表示面に対応する縦・横方向の画素ピッチと、投射面に投影される前記画像表示面に対応する画像の縦・横方向の投影ピッチと、が相似形となるように構成されてなることが好ましい。
【0011】
また、本発明の投射光学系において、以下の条件式を満足することが好ましい。
1.3<EFLY/EFLX<1.8 (1)
ここで、
投射光学系の光軸方向をZ軸方向とし、Z軸方向に直交する平面内において、水平方向をX軸方向及び垂直方向をY軸方向としたときに、EFLXはX軸方向の投射光学系全系の焦点距離、EFLYはY軸方向の投射光学系全系の焦点距離である。
【0012】
また、本発明の投射光学系において、 前記前群が、X軸方向に負のパワーを有すると共にY軸方向に正のパワーを有する第1のアナモフィックレンズと、X軸方向に正のパワーを有すると共にY軸方向に負のパワーを有する第2のアナモフィックレンズとからなり、以下の条件式を満足することが好ましい。
-0.2<((1/L1R1y+1/L1R2y)+(1/L2R1y+1/L2R2y))/((1/L1R1x+1/L1R2x)+(1/L2R1x+1/L2R2x))<0.2 (2)
ここで、
L1R1xは、前群第1レンズのX軸方向における投射面側の面の曲率半径、
L1R2xは、前群第1レンズのX軸方向における画像表示素子側の面の曲率半径、
L1R1yは、前群第1レンズのY軸方向における投射面側の面の曲率半径、
L1R2yは、前群第1レンズのY軸方向における画像表示素子側の面の曲率半径、
L2R1xは、前群第2レンズのX軸方向における投射面側の面の曲率半径、
L2R2xは、前群第2レンズのX軸方向における画像表示素子側の面の曲率半径、
L2R1yは、前群第2レンズのY軸方向における投射面側の面の曲率半径、
L2R2yは、前群第2レンズのY軸方向における画像表示素子側の面の曲率半径、
である。
【0013】
また、本発明の投射光学系において、以下の条件式を満足することが好ましい。
0.6<d2/((EFLX+EFLY)/2)<1.0 (3)
ここで、
d2は前群第1レンズ及び第2レンズの光軸上の空気間隔
である。
【0014】
また、本発明の投射光学系において、以下の条件式を満足することが好ましい。
0.515<COSθ<0.777 (4)
ここで、θは、投射光学系の光軸方向と、投射面の法線との成す角
である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、全長が短くコンパクトで、且つ斜め方向から画像を投射する場合に、投影面において縦・横方向での画像表示素子の解像度が維持される投射光学系を実現できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の投射光学系の構成を示す光軸に沿うX方向視の断面図である。
【
図2】本発明の実施例1にかかる投射光学系の光学構成を示す光軸に沿うX方向視の断面図である。
【
図3】本発明の実施例1にかかる投射光学系の光学構成を示す光軸に沿うY方向視の断面図である。
【
図4】実施例1にかかる投射光学系の合焦時における(A)X方向での像面湾曲、(B)Y方向での像面湾曲を示す図である。
【
図5】本発明の実施例2にかかる投射光学系の光学構成を示す光軸に沿うX方向視の断面図である。
【
図6】本発明の実施例2にかかる投射光学系の光学構成を示す光軸に沿うY方向視の断面図である。
【
図7】実施例2にかかる投射光学系の合焦時における(A)X方向での像面湾曲、(B)Y方向での像面湾曲を示す図である。
【
図8】本発明の実施例3にかかる投射光学系の光学構成を示す光軸に沿うX方向視の断面図である。
【
図9】本発明の実施例3にかかる投射光学系の光学構成を示す光軸に沿うY方向視の断面図である。
【
図10】実施例3にかかる投射光学系の合焦時における(A)X方向での像面湾曲、(B)Y方向での像面湾曲を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る投射光学系の構成を示す光軸に沿うX方向視の断面図である。
図2は、本発明の実施の形態に係る投射光学系の光学構成の一例を示す光軸に沿うX方向視の断面図である。
図2において、XYZ座標系は、投射光学系の中心を通る光軸と一致する方向をZ軸方向としたときに、Z軸方向に直交する平面内において、画像表示素子の表示面を基準とする水平方向をX軸方向及び垂直方向をY軸方向とする。図中、Z軸を含むY-Z平面を光軸に沿うX方向視とし、Z軸を含むX-Z平面を光軸に沿うY方向視とする(以下、各実施の形態における座標系は同様とする。)。
図3は、
図2と同一の本発明の実施の形態に係る投射光学系において、光軸に沿うY方向視の断面図である。ここで、
図2及び
図3の光学構成は、本発明の第1の実施例の光学構成に対応している。
【0018】
図1に示すように、本発明の投射光学系は、投射面(本実施の形態では卓上面)に対して、所定の高さhから斜め下方に向けて投射面を投射するように、光学系の光軸を投射面に対して斜めに配置してなる斜め投射の投射光学系である。なお、本発明の投射光学系としては、この例に限られずに、例えば、壁面を投射面として、下方から斜め上方の壁面を照射するように配置してもよい。
【0019】
図2及び
図3に示すように、本発明の実施の形態に係る投射光学系は、投射面側から順に、投影面における投射像のアスペクト比を変換する2枚以上のアナモフィックレンズ前群GFと、結像作用を有する2枚以上のレンズを備えた後群GRとからなる2群構成の光学系である。また前群GF及び後群GRとの間には開口絞りSが配置される。なお、以下、全ての実施例において、光学構成断面図中、CGはカバーガラス、Dは投射光学系の縮小側に配置される画像表示素子の表示面を示す。
【0020】
本発明の投射光学系における表示面Dには、液晶ディスプレイ(LCD)、有機発光ダイオードディスプレイ(ОLED)、デジタルミラーデバイス(DMD)やマイクロLEDディスプレイなどの画像を形成する画像表示素子等が配置される(図示せず)。
【0021】
本発明の実施の形態に係る投射光学系では、前群GFは、2枚のアナモフィックレンズL1及びL2から構成される。アナモフィックレンズL1及びL2は、それぞれ、画像素子側の面又は投射面側の面におけるX方向及びY方向の曲率半径が異なるトロイダルな形状を有するレンズである。これにより投射光学系全系でのX方向及びY方向の焦点距離を異ならせている。
【0022】
本発明の実施の形態に係る投射光学系では、後群GRは、それぞれ、回転対称な第3レンズL3から第6レンズL6の4枚構成とされ、全体で結像作用を有している。第3レンズL3から第6レンズL6は、それぞれ非球面プラスチックレンズである。
【0023】
図1に示すように、投射面に対して斜め方向から投影像を投射した場合には、投射面に対して正面(例えば直上)から投影像を投影した場合に比べて、投射面に投射される投影像の縦方向(奥行方向)の投影ピッチが長くなるため、画像表示素子上で表示される画像の縦・横比率(例えば、正方形)と相似形の投影画像(例えば、正方形)を得る為には、従来の回転対称な投射光学系を用いた場合、画像表示素子の画素の利用範囲を縦方向に少なく(縦方向に短く)する必要があり、正面投射に対して、縦方向で解像度が悪化することとなる。
【0024】
本発明の投射光学系は、斜め投射の光学系であって、前群GFを構成するアナモフィックレンズにより変換される投影像の前記アスペクト比が、画像表示素子上の画像表示面に対応する縦・横方向の画素ピッチと、投射面に投影される前記画像表示面に対応する画像の縦・横方向の投影ピッチと、が相似形となるようにアナモルフィックレンズL1及びL2の各レンズ面の曲率半径が構成されてなる。
【0025】
本発明の実施の形態に係る投射光学系は、前群GFが、X軸方向に負のパワーを有すると共にY軸方向に正のパワーを有する第1レンズL1と、X軸方向に正のパワーを有すると共にY軸方向に負のパワーを有し、投射面側に凹面を向けた第2レンズL2とからなる。
【0026】
即ち、本発明の実施の形態に係る投射光学系は、アナモフィックレンズL1及びL2の各レンズ面の曲率半径が投射光学系全系としては、X方向の焦点距離がY方向の焦点距離よりも短くなるように構成されているので、斜め投射の投射光学系であっても、画像表示素子の画素の利用範囲を縦方向に少なくする必要がなく、縦・横方向で解像度に差異が生じる事がなくなる。
【0027】
また、本発明の投射光学系は、以下の条件式を満足するものである。
1.3<EFLY/EFLX<1.8 (1)
ここで、
投射光学系の光軸方向をZ軸方向とし、Z軸方向に直交する平面内において、水平方向をX軸方向及び垂直方向をY軸方向としたときに、EFLXはX軸方向の投射光学系全系の焦点距離、EFLYはY軸方向の投射光学系全系の焦点距離である。
【0028】
条件式(1)は、投影像の縦・横方向での解像度の差異を最小にする条件式であり、この範囲を外れると投影面画におけるピクセルの縦横のアスペクト比に差が出るため好ましくない。
【0029】
また、本発明の投射光学系は、以下の条件式を満足するものである。
-0.2<((1/L1R1y+1/L1R2y)+(1/L2R1y+1/L2R2y))/((1/L1R1x+1/L1R2x)+(1/L2R1x+1/L2R2x))<0.2(2)
ここで、
L1R1xは、前群第1レンズのX軸方向における投射面側の面の曲率半径、
L1R2xは、前群第1レンズのX軸方向における画像表示素子側の面の曲率半径、
L1R1yは、前群第1レンズのY軸方向における投射面側の面の曲率半径、
L1R2yは、前群第1レンズのY軸方向における画像表示素子側の面の曲率半径、
L2R1xは、前群第2レンズのX軸方向における投射面側の面の曲率半径、
L2R2xは、前群第2レンズのX軸方向における画像表示素子側の面の曲率半径、
L2R1yは、前群第2レンズのY軸方向における投射面側の面の曲率半径、
L2R2yは、前群第2レンズのY軸方向における画像表示素子側の面の曲率半径、
である。
【0030】
条件式(2)は、投射光学系のY方向とX方向の前群GFで発生する像面湾曲の差を小さくして、投射光学系に全体に発生する像面湾曲を良好に補正すると共に、光学系の全長を短くする為の条件式である。
【0031】
また、本発明の投射光学系は、以下の条件式を満足するものである。
0.6<d2/((EFLX+EFLY)/2)<1.0 (3)
ここで、
d2は前群第1レンズ及び第2レンズの光軸上の空気間隔
である。
【0032】
条件式(3)は、投射光学系の全長の短縮及び、投射光学系で投影される投影像について縦・横方向で解像度に差異が生じる事を防ぐと共に、コマ収差の発生を最小化する為の条件式である。条件式(3)を上回ると投射光学系の全長が大きくなり好ましくない。また、条件式(3)を下回ると、投射光学系全系のX方向とY方向の焦点距離の差が小さくなり、投影面画におけるピクセルの縦横のアスペクト比に差が出るため好ましくない。また、対角方向のコマ収差が悪化し、対角方向の性能が確保できなくなる。
【0033】
また、本発明の投射光学系は、以下の条件式を満足するものである。
0.515<COSθ<0.777 (4)
ここで、θは、投射光学系の光軸方向と、投射面の法線との成す角
である。
【0034】
本発明の投射光学系は、斜め投射の投射光学系であるが、条件式(4)は、例えば、卓上をスクリーンに用いる場合など、限られた投影範囲を、より短い投射距離で投射する小型プロジェクタなどの用途として用いる場合に好適な光学系の投射構成である。
【0035】
また、本発明の投射光学系は、後群GRが、投射面側から順に、正の屈折力を有する第3レンズL3と、負の屈折力を有する第4レンズL4と、正の屈折力を有する第5レンズL5と、負の屈折力を有する第6レンズL6とからなることが好ましい。
【実施例0036】
次に本発明の投射光学系の具体的な数値実施例を示す。各実施例において使用する記号は下記の通りである。
【0037】
EFLX:X軸方向の投射光学系全系の焦点距離
EFLY:Y軸方向の投射光学系全系の焦点距離
FnoX :X軸方向におけるFナンバー
FnoY :Y軸方向におけるFナンバー
f1X :第1レンズL1のX軸方向における焦点距離
f1Y :第1レンズL1のY軸方向における焦点距離
f2X :第2レンズL2のX軸方向における焦点距離
f2Y :第2レンズL2のY軸方向における焦点距離
f3~f5:第3レンズL3~第6レンズL6の焦点距離
r :近軸曲率半径
rX:X軸方向における近軸曲率半径
rY:Y軸方向における近軸曲率半径
d :光軸上のレンズの厚み又は空気間隔
nd :レンズ材料のd線に対する屈折率
νd :レンズ材料のアッベ数
各実施例において、各面番号の後に「*」が記載されている面が非球面形状を有する面である。
また、各実施例において、各面番号の後に「+」が記載されている面がアナモフィック面形状を有する面である。
【0038】
非球面形状は、光軸方向をz方向とし、z軸に直交する方向をyにとり、円錐係数をK、非球面係数をA4、A6、A8、A10・・としたとき、次の式(1)で表される。
z=(y2/r)/[1+{1-(1+K)(y/r)2}1/2]+A4y4+A6y6+A8y8+A10y10 ・・・(1)
【0039】
アナモフィック面形状は、光軸方向をz方向とし、z軸に直交する平面内であって水平方向をX軸方向及び垂直方向をY軸方向とし、水平方向の曲率半径をrX、垂直方向の曲率半径をrY、水平方向の円錐係数をKX、垂直方向の円錐係数をKY、水平方向の非球面係数をA4、A6、A8、A10・・、垂直方向の非球面係数をB4、B6、B8、B10・・としたとき、次の式(2)で表される。
z={(x2/rX)+(y2/rY)}/[1+{1-(1+KX)(x/rX)2-(1+KY)(y/rY)2}1/2]+A4x4+B4y4+A6x6+B6y6+A8x8+B8y8+A10x10+B10y10 ・・・(2)
【0040】
なお、非球面係数において、Eは10のべき乗数を示し、例えば、2.3×10-2は、2.3E-002と表すものとする。また、これら諸元値の記号は後述の実施例の数値データにおいても共通である。また、これら諸元値の記号は後述の実施例の数値データにおいても共通である。
【0041】
(実施例1)
次に、実施例1に係る投射光学系について説明する。
図2は、実施例1に係る投射光学系の光学構成の一例を示す光軸に沿うX方向視の断面図である。また、
図3は、実施例1に係る投射光学系の光学構成の一例を示す光軸に沿うY方向視の断面図である。
【0042】
図4は、実施例1にかかる投射光学系の合焦時における(A)X方向での像面湾曲(Field Curvature)、(B)Y方向での像面湾曲(Field Curvature)を示す図である。像面湾曲は、550nmの波長における数値を示している。
【0043】
像面湾曲は、Sがサジタル像面、Tがタンジェンシャル像面を示している。また、図中X及びYは像高を示している。なお、収差図における記号は、後述の実施例においても共通である。
【0044】
実施例1に係る投射光学系は、
図2及び
図3に示すように、投射面側から順に、投影面における投射像のアスペクト比を変換する前群GFと、結像作用を有する後群GRとからなる2群構成の光学系である。また前群GF及び後群GRとの間には開口絞りSが配置される。
【0045】
前群GFは、X軸方向に負のパワーを有すると共にY軸方向に正のパワーを有する第1レンズL1と、X軸方向に正のパワーを有すると共にY軸方向に負のパワーを有し、投射面側に凹面を向けた第2レンズL2とからなる。
【0046】
第1レンズL1及び第2レンズL2の投射面側の面形状は回転対称な非球面形状とされ、第1レンズL1及び第2レンズL2の画像表示素子側の面形状はトロイダル面とされる。
【0047】
後群GRは、第3レンズL3から第6レンズL6の4枚構成とされ、全体で結像作用を有している。第3レンズL3から第6レンズL6は、それぞれ回転対称な非球面プラスチックレンズである。
【0048】
実施例1の投射光学系の全体諸元を以下に示す。
FnoX:1.83
FnoY:1.78
EFLX :5.236mm
EFLY :8.352mm
f1X:-33.490mm
f1Y:26.198mm
f2X:88.129mm
f2Y:-15.966mm
f3:4.502mm
f4:-5.851mm
f5:2.693mm
f6:-17.512mm
【0049】
実施例1の投射光学系の面データを以下に示す(単位mm)。
【0050】
【0051】
実施例1の投射光学系の非球面データを以下に示す。
第1面
K=0.000E+00
A4=-1.224E-04, A6=8.124E-06, A8=-1.495E-07, A10=9.406E-10
第2面
KY=-1.030E+01
KX=8.590E-01
A4=0.000E+00
第3面
K=0.000E+00
A4=5.991E-03, A6=-1.281E-03, A8=5.466E-05, A10=1.004E-05, A12=-9.709E-07
第4面
KY=0.000E+00
KX=0.000E+00
A4=0.000E+00
第6面
K=0.000E+00
A4=-1.193E-02, A6=8.824E-04, A8=-6.987E-05, A10=-1.733E-06, A12=1.242E-05
第7面
K=0.000E+00
A4=5.999E-04, A6=8.717E-05, A8=-3.101E-05, A10=8.288E-05, A12=1.712E-09
第8面
K=0.000E+00
A4=1.377E-02, A6=-1.960E-03, A8=4.823E-04, A10=-4.601E-05, A12=4.233E-10
第9面
K=0.000E+00
A4=1.076E-04, A6=-7.373E-04, A8=-1.537E-04, A10=6.660E-05, A12=-3.543E-10
第10面
K=0.000E+00
A4=8.591E-03, A6=-3.949E-03, A8=41.473E-03, A10=-6.689E-05, A12=8.884E-12
第11面
K=-1.939E+00
A4=2.746E-03, A6=5.097E-04, A8=9.993E-06, A10=6.938E-05, A12=1.940E-09
第12面
K=-4.185E+00
A4=-6.139E-04, A6=2.234E-06, A8=-4.482E-04, A10=-1.785E-05, A12=3.406E-06
第13面
K=-3.491E+00
A4=-1.433E-03, A6=-6.738E-04, A8=-1.528E-04, A10=-3.630E-05, A12=6.775E-06
【0052】
実施例1の投射光学系の条件式(1)から(5)に対応する値を以下に示す。
(1)EFLY/EFLX=1.600
(2)((1/L1R1y+1/L1R2y)+(1/L2R1y+1/L2R2y))/((1/L1R1x+1/L1R2x)+(1/L2R1x+1/L2R2x))=0.013
(3)d2/((EFLX+EFLY)/2)=0.908
(4)COSθ=0.555
【0053】
(実施例2)
次に、実施例2に係る投射光学系について説明する。
図5は、実施例2に係る投射光学系の光学構成の一例を示す光軸に沿うX方向視の断面図である。また、
図6は、実施例2に係る投射光学系の光学構成の一例を示す光軸に沿うY方向視の断面図である。
【0054】
図7は、実施例2にかかる投射光学系の合焦時における(A)X方向での像面湾曲(Field Curvature)、(B)Y方向での像面湾曲(Field Curvature)を示す図である。像面湾曲は、550nmの波長における数値を示している。
【0055】
実施例2に係る投射光学系は、
図5及び
図6に示すように、投射面側から順に、投影面における投射像のアスペクト比を変換する前群GFと、結像作用を有する後群GRとからなる2群構成の光学系である。また前群GF及び後群GRとの間には開口絞りSが配置される。
【0056】
前群GFは及び後群GRの構成は実施例1に係る投射光学系と同様であるので詳細説明を省略する。
【0057】
実施例2の投射光学系の全体諸元を以下に示す。
FnoX:1.81
FnoY:1.77
EFLX :5.237mm
EFLY :7.934mm
f1X:-30.885mm
f1Y:25.560mm
f2X:59.025mm
f2Y:-17.077mm
f3:4.462mm
f4:-5.736mm
f5:2.708mm
f6:-16.136mm
実施例2の投射光学系の面データを以下に示す(単位mm)。
【0058】
【0059】
実施例2の投射光学系の非球面データを以下に示す。
第1面
K=0.000E+00
A4=-1.968E-04, A6=1.738E-05, A8=-2.778E-07, A10= -6.540E-
第2面
KY=-1.399E+01
KX= 1.109E+00
A4=0.000E+00
第3面
K=0.000E+00
A4=4.612E-03, A6=-1.262E-03, A8=3.448E-05, A10=9.295E-06, A12=-1.662E-06
第4面
KY=0.000E+00
KX=2.001E+00
A4=0.000E+00
第6面
K=0.000E+00
A4=-1.243E-02, A6=5.212E-04, A8=-1.265E-04, A10=-1.629E-05, A12=1.521E-05
第7面
K=0.000E+00
A4=-4.285E-03, A6=-4.133E-05, A8=-1.416E-04, A10=8.223E-05, A12=-1.238E-07
第8面
K=0.000E+00
A4=9.609E-03, A6=-1.707E-03, A8=6.001E-04, A10=8.203E-06, A12=-8.577E-09
第9面
K=0.000E+00
A4=8.421E-04, A6=-1.953E-03, A8=-2.983E-04, A10=1.439E-04, A12=-6.111E-09
第10面
K=0.000E+00
A4=8.010E-03, A6=-5.037E-03, A8=1.511E-03, A10=-6.502E-05, A12=2.227E-09
第11面
K=-1.995E+00
A4=3.195E-03, A6=1.154E-03, A8=1.936E-04, A10=9.913E-05, A12=6.694E-09
第12面
K=-4.100E+00
A4=-4.848E-04, A6=7.805E-05, A8=-4.088E-04, A10=-1.188E-05, A12=-3.934E-08
第13面
K=-3.523E+00
A4=-1.730E-03, A6=-7.319E-04, A8=-1.644E-04, A10=-3.824E-05, A12=5.338E-06
【0060】
実施例2の投射光学系の条件式(1)から(5)に対応する値を以下に示す。
(1)EFLY/EFLX=1.520
(2)((1/L1R1y+1/L1R2y)+(1/L2R1y+1/L2R2y))/((1/L1R1x+1/L1R2x)+(1/L2R1x+1/L2R2x))=0.139
(3)d2/((EFLX+EFLY)/2)=0.820
(4)COSθ=0.555
【0061】
(実施例3)
次に、実施例3に係る投射光学系について説明する。
図8は、実施例3に係る投射光学系の光学構成の一例を示す光軸に沿うX方向視の断面図である。また、
図9は、実施例3に係る投射光学系の光学構成の一例を示す光軸に沿うY方向視の断面図である。
【0062】
図10は、実施例3にかかる投射光学系の合焦時における(A)X方向での像面湾曲(Field Curvature)、(B)Y方向での像面湾曲(Field Curvature)を示す図である。像面湾曲は、550nmの波長における数値を示している。
【0063】
実施例3に係る投射光学系は、
図8及び
図9に示すように、投射面側から順に、投影面における投射像のアスペクト比を変換する前群GFと、結像作用を有する後群GRとからなる2群構成の光学系である。また前群GF及び後群GRとの間には開口絞りSが配置される。
【0064】
前群GFは及び後群GRの構成は実施例1に係る投射光学系と同様であるので詳細説明を省略する。
【0065】
実施例3の投射光学系の全体諸元を以下に示す。
FnoX:1.80
FnoY:1.75
EFLX :5.249mm
EFLY :7.446mm
f1X:-28.393mm
f1Y:24.599mm
f2X:57.182mm
f2Y:-16.393mm
f3:4.108mm
f4:-5.774mm
f5:2.814mm
f6:-12.401mm
実施例3の投射光学系の面データを以下に示す(単位mm)。
【0066】
【0067】
実施例3の投射光学系の非球面データを以下に示す。
第1面
K=0.000E+00
A4=-2.990E-04, A6=2.714E-05, A8=-4.905E-07, A10=-4.695E-09
第2面
KY=1.997E+00
KX=1.444E+00
A4=0.000E+00
第3面
K=0.000E+00
A4=7.985E-04, A6=-4.046E-04, A8=1.269E-04, A10=-1.975E-05, A12=1.455E-06, A14=-4.174E-08,
第4面
KY=-2.000E+01
KX=0.000E+00
A4=0.000E+00
第6面
K=0.000E+00
A4=-1.186E-02, A6=5.831E-04, A8=-1.729E-04, A10=-2.415E-05, A12=1.336E-05
第7面
K=0.000E+00
A4=-5.266E-03, A6=3.315E-05, A8=-1.429E-04, A10=1.009E-04, A12=4.433E-08
第8面
K=0.000E+00
A4=7.547E-03, A6=-2.423E-03, A8=1.877E-03, A10=-1.602E-04, A12=-4.170E-09
第9面
K=0.000E+00
A4=5.434E-03, A6=1.831E-03, A8=-1.514E-03, A10=1.015E-03, A12=-2.515E-09
第10面
K=0.000E+00
A4=1.875E-03, A6=-7.621E-03, A8=2.628E-03, A10=3.474E-04, A12=5.780E-09
第11面
K=-2.544E+00
A4=7.415E-03, A6=2.152E-03, A8=1.842E-04, A10=3.448E-04, A12=-1.256E-08
第12面
K=-3.976E+00
A4=-2.650E-04, A6=1.492E-04, A8=-4.037E-04, A10=-6.523E-06, A12=2.921E-06
第13面
K=-3.910E+00
A4=-2.295E-03, A6=-7.227E-04, A8=-1.717E-04, A10=-4.166E-05, A12=3.391E-06
【0068】
実施例3の投射光学系の条件式(1)から(5)に対応する値を以下に示す。
(1)EFLY/EFLX=1.423
(2)((1/L1R1y+1/L1R2y)+(1/L2R1y+1/L2R2y))/((1/L1R1x+1/L1R2x)+(1/L2R1x+1/L2R2x))=-0.111
(3)d2/((EFLX+EFLY)/2)=0.679
(4)COSθ=0.555
【0069】