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  • 特開-半導体装置製造方法および構造体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054495
(43)【公開日】2024-04-17
(54)【発明の名称】半導体装置製造方法および構造体
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20240410BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
H01L23/36 C
H01L23/12 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160740
(22)【出願日】2022-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】原田 隆博
(72)【発明者】
【氏名】小坂 弥
(72)【発明者】
【氏名】山本 晋也
(72)【発明者】
【氏名】黒田 洋史
(72)【発明者】
【氏名】西川 敦准
【テーマコード(参考)】
5F136
【Fターム(参考)】
5F136BA06
5F136BB05
5F136DA27
5F136FA02
5F136FA03
5F136FA15
5F136FA55
5F136FA63
(57)【要約】
【課題】信頼性が優れたヒートシンク付回路基板を製造する新たな製造技術を提供する。
【解決手段】ヒートシンク付回路基板50の製造方法は、ヒートシンク5(放熱プレート)の一方の面に放熱シート4(接着シート)を配置するプレート準備工程と、放熱シート4上に回路層8(回路層)を配置する回路層配置工程と、を有し、回路層配置工程は、回路層8をPIテープ90(フィルム部材)に取り付けて所定のパターンを形成した状態のフィルム付き回路層80を、放熱シート4に配置する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放熱プレートの一方の面に接着シートを配置するプレート準備工程と、
前記接着シート上に回路層を配置する回路層配置工程と、
を有し、
前記回路層配置工程は、前記回路層をフィルム部材に取り付けて所定のパターンを形成した状態のフィルム付き回路層を、前記接着シートに配置する半導体装置製造方法。
【請求項2】
前記フィルム部材は樹脂テープである、請求項1に記載の半導体装置製造方法。
【請求項3】
前記樹脂テープはポリイミド樹脂を有してなる、請求項2に記載の半導体装置製造方法。
【請求項4】
前記フィルム部材を除去するフィルム除去工程を更に有する請求項1から3までのいずれか1項に記載の半導体装置製造方法。
【請求項5】
前記フィルム除去工程の前に、前記フィルム付き回路層を前記接着シートに配置した状態で、封止材により封止する封止工程を更に有し、
前記フィルム除去工程は、前記フィルム部材を除去することで、前記回路層の所定の領域を前記封止材から露出させる請求項4に記載の半導体装置製造方法。
【請求項6】
前記プレート準備工程は、前記放熱プレートと前記接着シートとを仮圧着状態にする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の半導体装置製造方法。
【請求項7】
前記回路層配置工程は、前記フィルム付き回路層と前記接着シートとを仮圧着状態にする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の半導体装置製造方法。
【請求項8】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の半導体装置製造方法により製造された構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置製造方法および構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
パワー半導体素子を伝熱用の金属回路基板に設けたパワーモジュールの市場が拡大している。そのようなパワーモジュールでは、高い放熱性を実現するために各種の技術が提案されている。
例えば、パワーモジュール部と、接着シートと、支持部材(ヒートシンク)と、流動防止枠とを備えている。接着シートは、パワーモジュール部と接着されている。支持部材は、接着シートを介してパワーモジュール部と接続されている。流動防止枠は、パワーモジュール部と支持部材とに挟まれ、かつ接着シートの周囲に配置されている。接着シートは、流動防止枠の内周面に接する外周面を有している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6906714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、電気・電子機器等の発展に伴いヒートシンク付回路基板はますます注目されており、ヒートシンク付回路基板の製造方法について、信頼性を維持しつつ、製造効率の一層の改善が求められている。特許文献1では、一定の効果はあるものの、市場からの改善の要請が強まっており、新たな技術が求められていた。
【0005】
本発明はこの様な状況に鑑みなされたものであって、信頼性が優れたヒートシンク付回路基板を製造する新たな製造技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、次の技術が提供される。
[1]
放熱プレートの一方の面に接着シート(放熱シート)を配置するプレート準備工程と、
前記接着シート上に回路層を配置する回路層配置工程と、
を有し、
前記回路層配置工程は、前記回路層をフィルム部材に取り付けて所定のパターンを形成した状態のフィルム付き回路層を、前記接着シートに配置する半導体装置製造方法。
[2]
前記フィルム部材は樹脂テープである、[1]に記載の半導体装置製造方法。
[3]
前記樹脂テープはポリイミド樹脂を有してなる、[2]に記載の半導体装置製造方法。
[4]
前記フィルム部材を除去するフィルム除去工程を更に有する、[1]から[3]までのいずれか1に記載の半導体装置製造方法。
[5]
前記フィルム除去工程の前に、前記フィルム付き回路層を前記接着シートに配置した状態で、封止材により封止する封止工程を更に有し、
前記フィルム除去工程は、前記フィルム部材を除去することで、前記回路層の所定の領域を前記封止材から露出させる、[4]に記載の半導体装置製造方法。
[6]
前記プレート準備工程は、前記放熱プレートと前記接着シートとを仮圧着状態にする、[1]から[5]までのいずれか1に記載の半導体装置製造方法。
[7]
前記回路層配置工程は、前記フィルム付き回路層と前記接着シートとを仮圧着状態にする、[1]から[6]までのいずれか1に記載の半導体装置製造方法。
[8]
[1]から[7]までのいずれか1に記載の半導体装置製造方法により製造された構造体。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、信頼性が優れたヒートシンク付回路基板を製造する新たな製造技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態の半導体装置の概略構成を示す断面図である。
図2】本実施形態のヒートシンク付回路基板の概略構成を示す断面図である。
図3】本実施形態の回路パターンの概略構成を示す平面図である。
図4】本実施形態のフィルム付き回路層の製造方法を説明するチャート図である。
図5】本実施形態のヒートシンク付回路基板の製造方法を説明するチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。図面はあくまで説明用のものである。図面中の各部材の形状や寸法比などは、必ずしも現実の物品と対応するものではない。
【0010】
<発明の概要>
図1に本実施形態の半導体装置100の概略構成を示す断面図を示す。図2は本実施形態のヒートシンク付回路基板50の概略構成を示す断面図である。詳細は後述するが、半導体装置100は、放熱プレート(以下、「ヒートシンク5」という)の一方の面に接着シート(以下、「放熱シート4」という)を配置し、その上に、別途設けられたフィルム付き回路層80を、配置することで得られる。フィルム付き回路層80は、回路層8をフィルム部材11に取り付けて所定のパターンを形成した部材である。以下、半導体装置100の各構成について説明し、つづいて半導体装置100の製造方法について説明する。
【0011】
<半導体装置100>
半導体装置100は、ヒートシンク5と、ヒートシンク5の一方の面(ここでは上面54)上に設けられた放熱シート4と、放熱シート4上に設けられた回路層8(回路パターンともいう)と、放熱シート4上であって回路層8の外周領域に設けられた第1封止体71(第1封止樹脂の硬化物)と、回路層8上に搭載された半導体チップ1と、半導体チップ1を覆う第2封止体72(第2封止樹脂の硬化物)と、を備える。半導体チップ1は、ワイヤ1aによりヒートシンク付回路基板50に接続されている。
【0012】
<ヒートシンク付回路基板50>
図2に示すように、ヒートシンク付回路基板50は、ピンフィンヒートシンクであるヒートシンク5と、ヒートシンク5の上面に放熱シート4により接続された回路層8とを有する。
【0013】
<ヒートシンク5>
ヒートシンク5は、銅(合金を含む)の板状の基部51と、基部51の下面53に一体に設けられた複数のピンフィン52とを有する。ヒートシンク5の材料は、銅に限らず、他に例えばアルミニウム(合金を含む)が採用されてもよい。
【0014】
ヒートシンク5の厚みは、用途に応じて適宜設定できる。例えば、基部51の厚みを、0.2~5mm、ピンフィン52の厚み(長さ)を1~5mmとすることができる。ピンフィン52の形状は、円柱形、角柱形等の様々な形状とすることができる。また、ピンフィン52を省いた板状の基部51のみからなる形状であってもよい。
【0015】
<放熱シート4>
ヒートシンク5の一方の面(ここでは上面54)上には、放熱シート4が設けられる。放熱シート4は、ヒートシンク5と回路層8との間の絶縁を保持するための絶縁層として機能するとともに、ヒートシンク5と回路層8とを接着する接着層として機能する。
【0016】
放熱シート4は、熱硬化性樹脂と、窒化ホウ素粒子とを含む材料から構成されることが好ましい。これにより、良好な熱伝導性、および絶縁性が得られる。また、放熱シート4は、ヒートシンク付回路基板50の製造過程において圧力がかかることによって、窒化ホウ素粒子が分散し熱伝導性を効率的に向上することができるとともに、密着性を高めることができる。
【0017】
上記の熱硬化性樹脂としては、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂、アダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂、フェノールアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂、ナフタレンアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂、メトキシナフタレンアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂、およびシアネート樹脂から選択される一種または二種以上が挙げられる。これにより、窒化ホウ素粒子の分散性を向上させやすくなる。
【0018】
上記のシアネート樹脂としては、シアネートエステル樹脂を用いることができる。
シアネートエステル樹脂としては、具体的には、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート(オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート)、4,4'-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4'-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、ビス(4-シアネートフェニル)エーテルなどの2官能シアネート樹脂;フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ジシクロペンタジエン構造含有フェノール樹脂などから誘導される多官能シアネート樹脂;上記例示したシアネートエステル樹脂の一部がトリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。
ここで、シアネートエステル樹脂の市販品としては、例えば、ロンザジャパン社製のPT30、BA230、DT-4000、DT-7000などを用いることができる。
【0019】
熱硬化性樹脂の含有量は、放熱シート4を構成する材料(固形分)全量に対して、1質量%以上30質量%以下の範囲が好ましく、5質量%以上28質量%以下の範囲がより好ましい。
【0020】
窒化ホウ素粒子は、一次粒子が凝集した凝集粒子であることが好ましい。窒化ホウ素粒子の一次粒子は、板状、鱗片状、または球状であり得、好ましくは鱗片状である。本実施形態で用いられる窒化ホウ素粒子は、鱗片状窒化ホウ素の凝集粒子であることが好ましい。これにより、窒化ホウ素粒子が配列し、熱伝導性を向上しやすくなる。
【0021】
鱗片状(または板状)の窒化ホウ素の一次粒子は、長手方向長さ(鱗片の厚み方向に対する直交方向における最大長さ)の平均が、例えば、1~100μm、好ましくは、3~90μmである。また、窒化ホウ素粒子の長手方向長さの平均は、5μm以上、好ましくは、10μm以上、さらに好ましくは、20μm以上、とりわけ好ましくは、30μm以上、最も好ましくは、40μm以上であり、通常、例えば、100μm以下、好ましくは、90μm以下である。
【0022】
また、鱗片状窒化ホウ素の一次粒子の厚み(鱗片の厚み方向長さ、つまり、粒子の短手方向長さ)の平均は、例えば、0.01~20μm、好ましくは、0.1~15μmである。
【0023】
また、鱗片状窒化ホウ素の一次粒子のアスペクト比(長手方向長さ/厚み)は、例えば、2~10000、好ましくは、10~5000である。
【0024】
なお、光散乱法によって測定される平均1次粒子径は、動的光散乱式粒度分布測定装置にて測定される体積平均粒子径である。窒化ホウ素粒子の光散乱法によって測定される平均1次粒子径が上記範囲に満たないと、放熱シート4が脆くなり、取扱性が低下する場合がある。
【0025】
窒化ホウ素粒子の市販品として、具体的には、例えば、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製の「PT」シリーズ(例えば、「PT-110」など)、昭和電工社製の「ショービーエヌUHP」シリーズ(例えば、「ショービーエヌUHP-1」など)などが挙げられる。
【0026】
窒化ホウ素粒子の含有量は、放熱シート4を構成する材料(固形分)全量に対して、60質量%以上80質量%以下の量であり、より好ましくは、65質量%以上75質量%以下の量である。
また、窒化ホウ素粒子の体積基準の含有割合は、放熱シート4を構成する材料(固形分)の全積に対して、50~70体積%であることが好ましく、55~65体積%であることがより好ましい。
【0027】
放熱シート4を構成する材料としては、上記熱伝導性樹脂、窒化ホウ素粒子以外の成分をさらに含んでもよい。
【0028】
例えば、熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合、硬化剤を用いることが好ましい。硬化剤としては、硬化触媒またはフェノール系硬化剤を用いることが好ましい。
【0029】
硬化触媒としては、たとえばナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)、トリスアセチルアセトナートコバルト(III)等の有機金属塩;トリエチルアミン、トリブチルアミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等の3級アミン類;2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2,4-ジエチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール類;トリフェニルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィン、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィン・トリフェニルボラン、1,2-ビス-(ジフェニルホスフィノ)エタン等の有機リン化合物;フェノール、ビスフェノールA、ノニルフェノール等のフェノール化合物;酢酸、安息香酸、サリチル酸、p-トルエンスルホン酸等の有機酸;等、またはこの混合物が挙げられる。
【0030】
硬化触媒を用いる場合、その含有量は、放熱シート4を構成する材料(固形分)全量に対し、0.001質量部以上1質量部以下が好ましい。
【0031】
また、フェノール系硬化剤としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、アミノトリアジンノボラック樹脂、ノボラック樹脂、トリスフェニルメタン型のフェノールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等の変性フェノール樹脂;フェニレン骨格及び/又はビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン骨格及び/又はビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール化合物;レゾール型フェノール樹脂等が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
フェノール系硬化剤の含有量は、放熱シート4を構成する材料(固形分)全量に対し、0.1質量%以上30質量%以下が好ましく、0.3質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0032】
放熱シート4を構成する材料は、さらに、レベリング剤、カップリング剤、酸化防止剤等を含んでもよい。
【0033】
レベリング剤としては、アクリル系共重合物等が挙げられる。レベリング剤は、放熱シート4を構成する材料(固形分)全量に対し、2質量%以下の量で使用することが好ましく、0.01質量%以上1.0質量%以下の量で使用することがより好ましい。
【0034】
カップリング剤としては、エポキシシランカップリング剤、カチオニックシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤およびシリコーンオイル型カップリング剤等が使用できる。
カップリング剤の配合量は、窒化ホウ素粒子100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下が好ましく、特に0.5質量部以上7質量部以下が好ましい。
【0035】
本実施形態の放熱シート4を構成する材料(固形分)は、上述した熱硬化性樹脂、窒化ホウ素粒子、その他の成分、および溶媒を上述の割合で配合し、公知の方法により撹拌混合することにより調製できる。
【0036】
溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトンなどケトン、酢酸エチルなどのエステル、N,N-ジメチルホルムアミドなどのアミドなどの有機溶媒が挙げられる。また、溶媒として、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのアルコールなどの水系溶媒も挙げられる。
【0037】
本実施形態の放熱シート4は、Bステージ状態のシート状に成形して作製することができる。すなわち、放熱シート4は、ヒートシンク付回路基板50の製造過程において、ヒートシンク5および回路層8と加熱加圧一体化される際に、完全硬化する。
【0038】
たとえば、基材上にワニス状の上記材料を塗布した後、これを熱処理して乾燥することによりシート状にすることができる。基材としては、たとえば放熱部材やリードフレーム、剥離可能なキャリア材等を構成する金属箔が挙げられる。
また、塗布膜を乾燥するための熱処理は、たとえば80~150℃、5分~1時間の条件において行われる。
【0039】
放熱シート4の厚みは、たとえば60μm以上500μm以下とすることができる。
【0040】
本実施形態において、Bステージ状態のシート状の放熱シート4の比重は1.0~2.0であることが好ましい。これにより、ヒートシンク付回路基板50の製造過程において、より適切に加圧でき、ヒートシンク5および回路層8との密着性を高めやすくなる。
【0041】
<回路層8>
図3にPIテープ90が取り付けられた回路層8の平面図を示す。図中でPIテープ90を便宜的に墨塗(ハッチング)で示す。回路層8は、導電性金属の一部をエッチング等して形成された回路であって、一部(図1の端子部8a)が外部に延出するように構成されリードフレームとして機能する。回路層8は、放熱シート4を介してヒートシンク5上に設けられる。本実施形態において、ヒートシンク付回路基板50はそれぞれ独立した複数の回路層8を備える。
【0042】
また、平面視における回路層8の配置は適宜設定されるが、回路層8の最外周端縁に囲まれる領域は、放熱シート4に覆われる領域に内包されていることが好ましい。すなわち、回路層8を構成する全ての回路パターン領域が、放熱シート4の領域内、すなわち放熱シート4上に配置されることが好ましい。これにより、回路層8と放熱シート4とをより確実に密着できる。
【0043】
回路層8を構成する導電性金属は、電気伝導性及び熱伝導性の良好な金属板を用いて形成されるが、例えば、アルミニウム板、銅板などを用いることが好ましく、低熱抵抗化の点から銅板であることがより好ましい。回路層8は、銅などの酸化防止の点から表面処理が施されていてもよく、例えば、ニッケルめっきやはんだめっき処理がされていてもよい。
また、回路層8の厚さは、適宜調整されるが、例えば0.3~1.0mmであることが好適である。
【0044】
<封止樹脂7(第1封止体71、第2封止体72)>
封止樹脂7は、第1封止体71と第2封止体72とに用いられる。すなわち、封止樹脂7を硬化させることで第1封止体71と第2封止体72とが形成される。
【0045】
第1封止体71と第2封止体72とは、異なる工程によって得られる。このとき、第1封止体71と第2封止体72との境界(すなわち界面)は、目視可能であっても、目視不可能であってもよい。
第1封止体71と、第2封止体72は、公知の封止樹脂材料を用いて得ることができる。
第1封止体71と第2封止体72とは、異なる樹脂材料により形成されていてもよく、同じ材料で形成されたものであってもよい。
【0046】
本実施形態において第1封止体71(第1の封止樹脂の硬化物:175℃3分)の40℃~80℃における線膨張係数をα1(ppm/℃)とし、第2封止体72(第2の封止樹脂の硬化物:175℃3分)の40℃~80℃における線膨張係数をα2(ppm/℃)としたとき、(α1/α2)が0.7~1.5であることが好ましく、0.8~1.2であることがより好ましい。すなわち、α1とα2の差が小さくなるほど、第1封止体71と第2封止体72との線膨張係数の差によって生じる界面剥離や、反りによる回路層8との剥離等を効果的に抑制できる。
【0047】
本実施形態において、線膨張係数α1、α2は、半導体モジュールの構造や封止樹脂部分の厚みによって適宜調整されるが、それぞれ8~20ppm/℃であることが好ましく、12~18ppm/℃であることがより好ましい。これにより、半導体装置100内での反りや剥離を抑制し、信頼性を向上できる。
【0048】
封止樹脂7は、Bステージ状態、Cステージ状態のいずれであってもよく、トランスファー、コンプレッション等の成形後は半硬化であることが好ましい。
【0049】
上記の熱硬化性樹脂としては、好ましくはエポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂としては、具体的には、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂等の結晶性エポキシ樹脂;クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;フェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレン骨格含有ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、アルコキシナフタレン骨格含有フェノールアラルキルエポキシ樹脂等のアラルキル型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等の3官能型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、テルペン変性フェノール型エポキシ樹脂等の変性フェノール型エポキシ樹脂;トリアジン核含有エポキシ樹脂等の複素環含有エポキシ樹脂が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
上記の無機充填剤としては、たとえば、タルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、ガラスなどのケイ酸塩;酸化チタン、アルミナ、ベーマイト、シリカなどの酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイトなどの炭酸塩;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどの水酸化物;硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウムなどの硫酸塩または亜硫酸塩;ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウムなどのホウ酸塩;窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化炭素などの窒化物;チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムなどのチタン酸塩などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0051】
上記の硬化剤としては、熱硬化性樹脂と反応して硬化させるものであればとくに限定されないが、たとえば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、および、ヘキサメチレンジアミン等の炭素数2~20の直鎖脂肪族ジアミン、ならびに、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、パラキシレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジシクロヘキサン、ビス(4-アミノフェニル)フェニルメタン、1,5-ジアミノナフタレン、メタキシレンジアミン、パラキシレンジアミン、1,1-ビス(4-アミノフェニル)シクロヘキサン、ジシアノジアミド等のアミン類;アニリン変性レゾール樹脂、ジメチルエーテルレゾール樹脂等のレゾール型フェノール樹脂;フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert-ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;フェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂、ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂等のフェノールアラルキル樹脂;ナフタレン骨格やアントラセン骨格のような縮合多環構造を有するフェノール樹脂;ポリパラオキシスチレン等のポリオキシスチレン;ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)等の脂環族酸無水物、無水トリメリット酸(TMA)、無水ピロメリット酸(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸(BTDA)等の芳香族酸無水物等を含む酸無水物等;ポリサルファイド、チオエステル、チオエーテル等のポリメルカプタン化合物;イソシアネートプレポリマー、ブロック化イソシアネート等のイソシアネート化合物;カルボン酸含有ポリエステル樹脂等の有機酸類が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
上記の硬化促進剤としては、たとえば、有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、または、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等のリン原子含有化合物;1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7、イミダゾール等のアミジン系化合物;ベンジルジメチルアミン等の3級アミン、アミジニウム塩、またはアンモニウム塩等の窒素原子含有化合物;フェノール、ビスフェノールA、ノニルフェノール、2,3-ジヒドロキシナフタレン等のフェノール化合物等が挙げられる。また、上記有機ホスフィンとしては、トリフェニルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィン、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィン・トリフェニルボラン、1,2-ビス-(ジフェニルホスフィノ)エタン等が挙げられる。
【0053】
上記のカップリング剤としては、たとえばエポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等の各種シラン系化合物、チタン系化合物、アルミニウムキレート類、アルミニウム/ジルコニウム系化合物等の公知のカップリング剤を用いることができる。
【0054】
また、上記成分の他に、たとえば、上記エポキシ樹脂以外のフェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、およびポリウレタン等熱硬化性樹脂;カーボンブラック等の着色剤;天然ワックス、合成ワックス、高級脂肪酸もしくはその金属塩類、パラフィン、酸化ポリエチレン等の離型剤;ハイドロタルサイト等のイオン捕捉剤;シリコーンオイル、シリコーンゴム等の低応力剤;水酸化アルミニウム等の難燃剤;酸化防止剤等の各種添加剤を含むことができる。
【0055】
かかる封止用樹脂組成物は、公知の方法により得られるものであり、例えば、上述した成分を、超音波分散方式、高圧衝突式分散方式、高速回転分散方式、ビーズミル方式、高速せん断分散方式、または自転公転式分散方式などの各種混合機を用いて溶剤中に溶解、混合、撹拌することによりワニス状の組成物として調製することができる。
【0056】
<ヒートシンク付回路基板の製造方法>
次に、図4および図5を参照して、フィルム付き回路層80およびヒートシンク付回路基板50の製造方法について説明する。上述のように、本実施形態のヒートシンク付回路基板50のでは、フィルム付き回路層80を準備し、それを放熱シート4が設けられたヒートシンク5に取り付ける。
【0057】
[フィルム付き回路層80の製造工程]
図4は本実施形態のフィルム付き回路層80の製造方法(S10)を説明するチャート図である。
【0058】
マスキング工程(S11):
まず、銅板81の一方の面(図示では下面)をマスキングテープ91で覆う。マスキングテープ91は、次のエッチング工程(S12)のエッチングに耐性を有するものであれば特に限定しない。
【0059】
エッチング工程(S12):
つづいて、マスキングテープ91で覆われていない銅板81の他方の面(図示では上面)をエッチングすることで、所望のパターンの溝83が所定深さで形成された溝付き銅板82が得られる。
【0060】
PIテープ被覆工程(S13)
つぎに、溝付き銅板82の溝83が形成されている面を、フィルム部材(PIテープ90)で被覆するとともに、マスキングテープ91を取り除く。
フィルム部材として、ここではPIテープ90(ポリイミド樹脂テープ)を用いているが、これに限定する趣旨ではなく、銅板82の表面を適切に被覆でき、図5で説明するヒートシンク付回路基板50の製造工程において、第1封止体71の封止処理後にPIテープ90を適切に剥がすことができればよく、各種の樹脂テープを用いることができる。
具体的には、PIテープ90として、例えば、基材であるポリイミド層の一方の面に接着剤層を設けた2層構造のフィルム部材を用いることができる。基材であるポリイミド層の厚みは、例えば25μm程度とすることができる。接着剤層としては、例えば、アクリル樹脂やエポキシ樹脂、シリコン樹脂を用いることができる。
PIテープ90以外の樹脂テープとして、基材をポリエステルとした樹脂テープを用いることができる。さらに、フィルム部材として、基材をガラスとしたガラステープや基材を金属とした金属テープを用いることもできる。
なお、本工程でフィルム部材(PIテープ90)を被覆した後に、後述のモールド樹脂による成形工程(第1封止工程(S23))があり、その成形時の熱(175℃)に耐えられる観点から、樹脂テープとしては、基材にポリイミド層を有するPIテープ90が好適である。
【0061】
パターン形成工程(S14、S15):
PIテープ90で被覆された溝付き銅板82を、PIテープ90側が下側になるように表裏反転させて姿勢を整え(S14)、つづいて、溝付き銅板82の上面(すなわちPIテープ90とは反対側の面)を、エッチングし、溝83の上面を取り除き開放することで、パターン溝83aを形成する(S15)。これにより、回路層8にPIテープ90が取り付けられたフィルム付き回路層80が得られる。
【0062】
[ヒートシンク付回路基板50の製造工程]
図5はヒートシンク付回路基板50の製造方法(S20)を説明するチャート図である。図4の工程で得られたフィルム付き回路層80をヒートシンク5に取り付け、ヒートシンク付回路基板50を得る。
【0063】
プレート準備工程工程(S21):
放熱歩レートであるヒートシンク5の上面54に放熱シート4を配置し仮圧着状態にする。圧着処理の条件として、例えば、温度120℃、圧力最大10MPa程度、加圧時間数分とすることができる。
【0064】
フィルム付き回路層固定工程(回路層配置工程)(S22):
放熱シート4を仮圧着状態としたヒートシンク5の上面、すなわち、放熱シート4の上にフィルム付き回路層80を取り付け圧着する。このとき、フィルム付き回路層80の回路層8が放熱シート4に接触するように配置される。圧着処理の条件としては、例えば、温度120℃、圧力数MPa程度、加圧時間1分とすることができる。
【0065】
第1封止工程(S23):
つぎに、フィルム付き回路層80を第1封止体71により封止する。封止方法として、例えばトランスファーモールド成形法、コンプレッションモールド成形法およびインジェクション成形法などが選択され、回路間(すなわち溝83)に樹脂組成物を充填するとともに、回路層8の周囲部分を樹脂組成物で覆い硬化させて、第1封止体71による封止を行う。一方で、PIテープ90は封止されず露出した状態である。
【0066】
フィルム除去工程(S24):
第1封止体71が硬化した後、フィルム部材であるPIテープ90を除去し、回路層8を露出させる。これによって、ヒートシンク付回路基板50が得られる。
【0067】
<半導体製造方法の製造方法>
上述の図5の工程により得られたヒートシンク付回路基板50の回路層8の所定位置に半導体チップ1を取り付けてワイヤ1aにより半導体チップ1と回路層8とを接続することで、半導体チップ1を実装する。更に、半導体チップ1が実装されたヒートシンク付回路基板50の上側に第2封止体72を形成する。これによって、半導体チップ1や回路層8が第2封止体72により封止された半導体装置100(構造体)が得られる。
なお、半導体チップ1を実装する工程および第2封止体72を形成する工程はいずれも公知の方法を
【0068】
以上、本実施形態によると、ヒートシンク付回路基板50を製造する際に、別工程で製造されたフィルム付き回路層80を、放熱シート4を接着シートとして用いてヒートシンク5に取り付けることができる。これにより、ヒートシンク付回路基板50の製造効率を向上させることができる。また、フィルム付き回路層8をヒートシンク5とは別に品質管理できるため、信頼性を向上させ、歩留まりを向上させることができる。
【0069】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0070】
1 半導体チップ
1a ワイヤ
4 放熱シート
5 ヒートシンク
7 封止樹脂
8 回路パターン
8a 外部延出部
50 ヒートシンク付回路基板
51 ベースプレート
52 ピンフィン
71 第1封止体
72 第2封止体
80 フィルム付き回路層
81 銅板
83 溝
83a パターン溝
90 PIテープ
91 マスキングテープ
100 半導体装置(構造体)
図1
図2
図3
図4
図5