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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054533
(43)【公開日】2024-04-17
(54)【発明の名称】レール削正装置
(51)【国際特許分類】
   E01B 31/17 20060101AFI20240410BHJP
   B24B 27/00 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
E01B31/17
B24B27/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160805
(22)【出願日】2022-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】391030125
【氏名又は名称】保線機器整備株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121496
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 重雄
(72)【発明者】
【氏名】細川 誠二
(72)【発明者】
【氏名】竹村 敏男
【テーマコード(参考)】
2D057
3C158
【Fターム(参考)】
2D057BA26
3C158AA04
3C158AA14
3C158CA01
3C158CB07
(57)【要約】
【課題】作業員の熟練度によらずレール、特にゲージコーナーのきしみ等を削正した際の仕上がり具合や作業効率に差が出ないようにレールを削正する。
【解決手段】左右のレールR,Rそれぞれを転動する車輪が設けられた台車本体12と、台車本体12に設けられ、スライドテーブル13a上で左右のレールR,Rに対し直交する左右方向にスライドするスライダ13bが設けられた左右方向スライド機構部13と、回転砥石11bを回転させるディスクグラインダ11が取り付けられ、レールR,Rの長手方向と平行な回動軸14aを中心とし回動してディスクグラインダ11の角度を変更可能なグラインダ保持・角度変更機構部14と、左右方向スライド機構部13のスライダ13bの上に設けられ、グラインダ保持・角度変更機構部14を上下方向であるY軸方向に昇降させる昇降機構部15とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右のレールそれぞれを転動する車輪が設けられた台車本体と、
前記台車本体に設けられ、スライドテーブル上で左右のレールに対し直交する左右方向にスライドするスライダが設けられた左右方向スライド機構部と、
回転砥石を回転させるディスクグラインダが取り付けられ、レールの長手方向と平行な回動軸を中心とし回動して前記ディスクグラインダの角度を変更可能なグラインダ保持・角度変更機構部と、
前記左右方向スライド機構部の前記スライダの上に設けられ、前記グラインダ保持・角度変更機構部を上下方向であるY軸方向に昇降させる昇降機構部とを有することを特徴とするレール削正装置。
【請求項2】
請求項1記載のレール削正装置において、
前記昇降機構部は、
前記スライダの上に立設され、上下方向に延び、上端部には作業員が掴んで回すためのハンドルが設けられたネジ棒を回転可能に支持したネジ棒支持部と、
一端部は前記グラインダ保持・角度変更機構部が取付られる一方、他端部は前記ネジ棒のネジ部に螺合して昇降する昇降ナットが設けられた昇降体とを備え、
前記昇降体は、
前記グラインダ保持・角度変更機構部が取り付けられたグラインダ保持・角度変更機構部取付板と、
前記昇降ナットが取り付けられた昇降ナット取付板と、
前記グラインダ保持・角度変更機構部取付板と昇降ナット取付板とを連結する一対の連結板と、
前記グラインダ保持・角度変更機構部取付板と昇降ナット取付板と前記一対の連結板の内側面間を連結し、平面視十字状に交差して設けられた十字状補強板とを有することを特徴とするレール削正装置。
【請求項3】
請求項2記載のレール削正装置において、
前記スライダにおける前記昇降機構部の反対側には、前記回転ハンドルの高さよりも高く上下方向に延び、作業員が把持するための棒状ハンドルが設けられていることを特徴とするレール削正装置。
【請求項4】
請求項1に記載のレール削正装置において、
前記ディスクグラインダは、棒状ハンドルが取り付けられていた雌ネジ穴から棒状ハンドルを取外し、その雌ネジ穴に前記回転軸を取付けたことを特徴とするレール削正装置。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか一の請求項に記載のレール削正装置において、
さらに、偏心した偏心回転軸を有し、その偏心回転軸を中心に回転して前記ディスクグラインダの電源スイッチをオン状態に維持する偏心カムスイッチを有するグラインダ電源SW保持機構部が設けられていることを特徴とするレール削正装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レールを削正するレール削正装置に関し、特に、列車の車輪が走行するレール頭部の角部であるゲージコーナー部分に発生するレールのきしみまたはきしみ割れの削正に適したレール削正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道のレールには、列車が通るため、レールと車輪との転がり接触疲労によってレールの頭部の角部であるゲージコーナー部分の表層部の金属が反列車方向に塑性流動して塑性変形し、ゲージコーナー表層部の金属が反列車方向に塑性流動(メタルフロー)が発生して、その塑性変形が限界に達して規則的なひび割れ状の微細な亀裂が発生しており、作業員がハンディグラインダ等によって削正している(例えば、特許文献1等参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6-17135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載された発明のように作業員がハンディグラインダを使ってレールを削正する場合、作業員の熟練度によって仕上がり具合や作業効率に差が出るという問題があった。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、作業員の熟練度によらずレール、特にゲージコーナーのきしみ等を削正した際の仕上がり具合や作業効率に差が出ないようにレールを削正することができるレール削正装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明に係るレール削正装置は、左右のレールそれぞれを転動する車輪が設けられた台車本体と、前記台車本体に設けられ、スライドテーブル上で左右のレールに対し直交する左右方向にスライドするスライダが設けられた左右方向スライド機構部と、回転砥石を回転させるディスクグラインダが取り付けられ、レールの長手方向と平行な回動軸を中心とし回動して前記ディスクグラインダの角度を変更可能なグラインダ保持・角度変更機構部と、前記左右方向スライド機構部の前記スライダの上に設けられ、前記グラインダ保持・角度変更機構部を上下方向であるY軸方向に昇降させる昇降機構部とを有することを特徴とする。
また、本発明に係るレール削正装置では、前記昇降機構部は、前記スライダの上に立設され、上下方向に延び、上端部には作業員が掴んで回すためのハンドルが設けられたネジ棒を回転可能に支持したネジ棒支持部と、一端部は前記グラインダ保持・角度変更機構部が取付られる一方、他端部は前記ネジ棒のネジ部に螺合して昇降する昇降ナットが設けられた昇降体とを備え、前記昇降体は、前記グラインダ保持・角度変更機構部が取り付けられたグラインダ保持・角度変更機構部取付板と、前記昇降ナットが取り付けられた昇降ナット取付板と、前記グラインダ保持・角度変更機構部取付板と昇降ナット取付板とを連結する一対の連結板と、前記グラインダ保持・角度変更機構部取付板と昇降ナット取付板と前記一対の連結板の内側面間を連結し、平面視十字状に交差して設けられた十字状補強板とを有することも特徴とする。
また、本発明に係るレール削正装置では、前記スライダにおける前記昇降機構部の反対側には、前記回転ハンドルの高さよりも高く上下方向に延び、作業員が把持するための棒状ハンドルが設けられていることも特徴とする。
また、本発明に係るレール削正装置では、前記グラインダ保持・角度変更機構部には、偏心した回転軸を有し、回転して偏心した回転軸を有し、回転して前記ディスクグラインダの電源スイッチをオン状態に維持する偏心カムスイッチが設けられていることも特徴とする。
また、本発明に係るレール削正装置では、前記ディスクグラインダは、棒状ハンドルが取り付けられていた雌ネジ穴から棒状ハンドルを取外し、その雌ネジ穴に前記回転軸を取付けたことも特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るレール削正装置は、台車本体と、台車本体に設けられ、スライドテーブル上で左右のレールに対し直交する左右方向にスライドするスライダが設けられた左右方向スライド機構部と、ディスクグラインダの角度を変更可能なグラインダ保持・角度変更機構部と、左右方向スライド機構部のスライダの上に設けられ、グラインダ保持・角度変更機構部を上下方向であるY軸方向に昇降させる昇降機構部とを有する。
そのため、例えば、ゲージ-コーナーにおけるレール頭部の所謂きしみを削正する場合でも、削正角度や削正量は、グラインダ保持・角度変更機構部や左右方向スライド機構部によって一定状態を保持することができるので、作業員の熟練度によらずレール、特にゲージコーナーのきしみ等を削正した際の仕上がり具合や作業効率に差が出ないようにレールを削正することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る実施形態のレール削正装置の正面図である。
図2】本発明に係る実施形態のレール削正装置における昇降機構部や左右方向スライド機構部等の要部を拡大した要部拡大正面図である。
図3】本発明に係る実施形態のレール削正装置の平面図である。
図4】本発明に係る実施形態のレール削正装置における昇降機構部や左右方向スライド機構部等の要部を拡大した要部拡大正面図である。
図5】本発明に係る実施形態のレール削正装置の左側面図である。
図6】本発明に係る実施形態のレール削正装置の右側面図である。
図7】本発明に係る実施形態のレール削正装置におけるグラインダ保持・角度変更機構部やグラインダ等の要部を拡大した要部拡大正面図である。
図8】本発明に係る実施形態のレール削正装置におけるディスクグラインダに装着したグラインダ電源SW保持機構部等の要部を拡大した要部拡大正面図である。
図9】(a),(b)それぞれ図8におけるA-A線断面図であって、本発明に係る実施形態のレール削正装置においてディスクグラインダに装着したグラインダ電源SW保持機構部の偏心カムスイッチによって電源スイッチ(SW)をオフにしている状態と、オンにしている状態を示す端面図である。
図10】本発明に係る実施形態のレール削正装置のグラインダ保持・角度変更機構部がディスクグラインダを保持して角度を変更しながらレールのゲージコーナーを削正している状態を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施形態のレール削正装置1を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。尚、下記に説明する実施形態は、あくまで本発明の一例であり、本発明は下記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で適宜変更可能である。
【0010】
<実施形態のレール削正装置1の構成>
実施形態のレール削正装置1は、図1図6に示すように、市販のディスクグラインダ11を利用したレール削正装置であって、台車本体12と、左右方向スライド機構部13と、グラインダ保持・角度変更機構部14と、昇降機構部15と、グラインダ電源SW保持機構部16と、ブレーキ後部17等を備えて構成される。
【0011】
(ディスクグラインダ11)
ディスクグラインダ11は、電源スイッチ(SW)11aを押し下げている間、円形の回転砥石11bを回転させる市販のコードレスでハンディタイプのディスクグラインダであって、本実施形態では、グラインダ本体11cの後部11c3に着脱式のバッテリ11dを装着して電源として使用している。
【0012】
このような市販のハンディタイプのディスクグラインダ11には、通常、棒状のハンドル(図示せず。)がグラインダ本体11cにおいて回転砥石11bを回転させるモータ(図示せず。)が内蔵されたとヘッド部11c1の外側面に設けられた雌ネジ穴(図示せず。)に螺合して設けられているが、本実施形態では、その棒状のハンドルを取外し、棒状のハンドルが設けられていたグラインダ本体11cの雌ネジ穴に回動軸4a先端の雄ネジ部(図示せず。)を螺合して取付け、その回動軸4aをグラインダ保持・角度変更機構部14が回動可能に支持するように構成している。
【0013】
また、このような市販のハンディタイプのディスクグラインダ11は、グラインダ本体11cの後部11c3とヘッド部11c1との間には、後部11c3とヘッド部11c1よりも細くなってとヘッド部11c1の棒状のハンドル(図示せず。)を掴む手とは別の手でグラインダ本体11cを掴むためのグラインダ本体把持部11c2が設けられているのが一般的で、グラインダ本体把持部11c2には通常、電源スイッチ11aのオン状態を保持(維持)するグラインダ電源SW保持機構部16を装着している。
【0014】
(台車本体12)
台車本体12は、左右のレールR,R上をそれぞれ転動する前後の車輪12a,12a、12f、12fによって左右方向スライド機構部13やグラインダ保持・角度変更機構部14、昇降機構部15をレールR,Rに沿って移動して車輪12a,12a側のレールRを削正するもので、グラインダ11側のレールRを転動する前後の車輪12a,12aそれぞれを回転可能に支持する車輪支持第1フレーム12b,12bと、車輪支持第1フレーム12b,12bに連結すると共に、左右方向スライド機構部13および昇降機構部15が搭載される長方形状の台車本体方形フレーム12cと、台車本体方形フレーム12cからグラインダ保持・角度変更機構部14とは反対側に延びる1本の角パイプで形成された台車本体ロッド部12dと、台車本体ロッド部12dの他端部からレールRと平行に延びるように設けられ、反対側のレールRを転動する前後の車輪12f,12fを回転可能に支持する車輪支持第2フレーム12eを備えている。
【0015】
台車本体方形フレーム12cの前後左右両側には、このレール削正装置1を運搬や設置する際、複数人の作業員が掴む把持部12c1が設けられている。
【0016】
(左右方向スライド機構部13)
左右方向スライド機構部13は、台車本体12の台車本体方形フレーム12cの上側に設置されたスライドテーブル13aと、そのスライドテーブル13a上で左右のレールR,Rに対し直交する左右方向(軌間方向)にスライドするスライダ13bとを備えている。
【0017】
スライダ13bの上面には、図1図2等に示すようにグラインダ保持・角度変更機構部14に取付けられたディスクグラインダ11を昇降させる昇降機構部15と、昇降機構部15の回転ハンドル15a1よりも高く上下方向に延び、作業員が把持して当該レール削正装置1をレールR,Rに沿って移動させたり、スライダ13bや昇降機構部15、グラインダ保持・角度変更機構部14を左右のレールRに対し直交する方向にスライドさせる棒状ハンドル13b1が設けられている。
【0018】
(グラインダ保持・角度変更機構部14)
グラインダ保持・角度変更機構部14は、図1図7等に示すように回転砥石11bを回転させるディスクグラインダ11が取り付けられ、レールR,Rの長手方向と平行な回動軸14aを中心として回動してディスクグラインダ11の角度を変更する部分で、回動軸14aの両端部を回動可能に支持する一対の回動軸支持板14b,14bを有しており、この回動軸支持板14b,14bには、回動軸14aを中心にほぼ90度の角度の円弧状の角度設定孔14b1,14b1を設けている。
【0019】
また、回動軸14aの両端部には、角度設定板14a1,14a1が固定されており、角度設定板14a1,14a1における角度設定孔14b1,14b1の位置には、雄ネジ部が設けられた角度設定用軸部14a2が設けられ、角度設定用軸部14a2の両単の雄ネジ部が回動軸支持板14b,14bの角度設定孔14b1,14b1を貫通し、一方側(例えば、図5では、左側)において両側からナット14a3およびレバー付きナット14a4で締付けることによって角度設定孔14b1,14b1の任意の位置で停止してディスクグラインダ11の角度を設定できるように構成されている。尚、角度設定板14a1,14a1は、図5および図6等に示すようにそれぞれ回動軸支持板14b,14bの外側に設けても良いし、回動軸支持板14b,14bの内側に設けても良い。
【0020】
(昇降機構部15)
昇降機構部15は、図1図2等に示すように左右方向スライド機構部13のスライダ13bの上に設けられ、グラインダ保持・角度変更機構部14を上下方向であるY軸方向に昇降させる機構部で、上下方向に延び、上端部には作業員が掴んで回すための回転ハンドル15a1が設けられ、外周面に雄ネジ部15a2が設けられたネジ棒15aと、そのネジ棒15aを回転可能に支持するネジ棒支持部15bと、一端部はグラインダ保持・角度変更機構部14が取付られる一方、他端部はネジ棒15aの雄ネジ部15a2に螺合して昇降する昇降体15cと、ネジ棒15aに対する昇降体15cの高さを固定する昇降体高さ固定レバー15d等を備えて構成される。
【0021】
昇降体15cは、ネジ棒15aの雄ネジ部15a2に螺合する雌ネジ部(図示せず。)が設けられた昇降ナット15c1と、グラインダ保持・角度変更機構部14の回動軸支持板14b,14bと平行に延び、回動軸支持板14b,14bがそれぞれ固定される回動軸支持板平行取付板15c2,15c2と、回動軸支持板平行取付板15c2,15c2それぞれのグラインダ保持・角度変更機構部14側を連結し、回動軸支持板14b,14bがそれぞれ固定される回動軸支持板垂直取付板15c3と、回動軸支持板平行取付板15c2,15c2それぞれの昇降ナット15c1側を連結し,昇降ナット15c1が取り付けられた昇降ナット取付板15c4とで平面視、中空の正方形等の方形状に形成され、回動軸支持板平行取付板15c2,15c2と回動軸支持板垂直取付板15c3と昇降ナット取付板15c4とで囲まれた中空部には、交差して平面視十字形状に十字状補強板15c5,15c6を設けて、回動軸支持板14b,14bと、回動軸支持板垂直取付板15c3と、昇降ナット取付板15c4と合せ、全体として「田の字」形状になるように構成している。
【0022】
また、十字状補強板15c5の面は、水平と平行になるように設ける一方、十字状補強板15c6は、鉛直方向と平行になるように設けて十字状補強板15c5の下側を通して交差部分で溶接等して接合し、昇降体15c全体を鋼板で構成しても強度が向上するように構成すると共に、十字状補強板15c5,15c6にスリット等を設けずに簡易な構造で平面視十字形状に構成している。
【0023】
そのため、作業員が一人でこのレール削正装置1を持ち上げる際には、レール削正装置1の重心が近い回動軸支持板平行取付板15c2,15c2や回動軸支持板垂直取付板15c3、昇降ナット取付板15c4、さらには十字状補強板15c5,15c6等を掴むことにより、バランスが良い状態でレール削正装置1を持ち上げることができ、作業性を向上させることができると共に、製造コストも低減している。
【0024】
(グラインダ電源SW保持機構部16)
この実施形態で使用している市販のハンディタイプのディスクグラインダ11は、通常、電源スイッチ11aを押下げてオン状態を保持している場合のみ回転砥石11bを回転させる。
【0025】
そのため、このディスクグラインダ11には、図1図7図8等に示すようにグラインダ本体11cの後部11c3とヘッド部11c1との間の細く形成されたグラインダ本体把持部11c2に電源スイッチ11aのオン状態を保持(維持)するグラインダ電源SW保持機構部16を装着している。
【0026】
グラインダ電源SW保持機構部16は、図7図9等に示すようにアングル材16aと平板材16bとを蝶番金具16cおよびネジ16dとで連結して平面視コ字形状に形成すると共に、平板材16bとを蝶番金具16cとの先端間に偏心した偏心回転軸16e1を有し、偏心回転軸16e1を中心に回転してディスクグラインダ11の電源スイッチ11aをオン状態に維持する偏心カムスイッチ16eを設けている。
【0027】
(ブレーキ機構部17)
ブレーキ機構部17は、グラインダ11側の車輪12a,12aを支持する車輪支持第1フレーム12b,12bの一方側(図2では、図上、下側)には、ブレーキレバー17aの回動によってブレーキ体17b下端のブレーキシュー17b1を車輪12aの外周面に押し付けてブレーキをかける機構部である。
【0028】
<実施形態のレール削正装置1の動作>
次に、以上のように構成された実施形態のレール削正装置1の動作について、レールRのゲージコーナーのきしみを削正する場合を一例として説明する。
【0029】
実施形態のレール削正装置1は、台車本体12を有し、その台車本体12は、図1等に示すように左右のレールR,R上をそれぞれ転動する前後の車輪12a,12aによってレールR,R上を走行するため、作業員は実施形態のレール削正装置1を押して、削正すべきレールRの箇所まで走行する。
【0030】
その際、作業員は実施形態のレール削正装置1をどの部分を押して台車本体12を走行させても良いが、例えば、高さが高く、腰をかがめる必要が少ない棒状ハンドル13b1または棒状ハンドル13b1よりも高さが低い昇降機構部15の回転ハンドル15a1、さらには棒状ハンドル13b1と昇降機構部15の回転ハンドル15a1の双方を掴む等して走行させることができる。
【0031】
そのため、作業員は高さが高い棒状ハンドル13b1または昇降機構部15の回転ハンドル15a1、あるいは棒状ハンドル13b1と昇降機構部15の回転ハンドル15a1の双方を掴む等して走行させることにより、腰などを屈めた窮屈な姿勢をとる必要性が少なくなるため、作業性を向上させることができると共に、作業負担を軽減させることができる。
【0032】
削正すべきレールR箇所に到達すると、次いで作業員は昇降機構部15の回転ハンドル15a1を掴んで回転してグラインダ保持・角度変更機構部14が保持しているディスクグラインダ11の回転砥石11bが削正すべきレールRのゲージコーナーの高さまで下降させると共に、昇降機構部15の回転ハンドル15a1または左右方向スライド機構部13の棒状ハンドル13b1等を掴んでスライダ13bをラインダ保持・角度変更機構部14が保持しているディスクグラインダ11の回転砥石11bが削正すべきレールRのゲージコーナーのきしみに近付くようにスライドテーブル13a上でスライダ13bを横方向にスライドさせる。
【0033】
そして、昇降機構部15および左右方向スライド機構部13によってディスクグラインダ11の回転砥石11bが削正すべきレールRのゲージコーナーのきしみに近付けて削正する際、レールRにおいてきしみが発生しているゲージコーナーの位置によっては、ディスクグラインダ11の回転砥石11bが鉛直方向を向いたままでは削正し難い場合がある。
【0034】
そのため、図10に示すように、ディスクグラインダ11を保持しているグラインダ保持・角度変更機構部14にて回動軸14aを中心としてディスクグラインダ11を回動させてレールRの頭部に対する回転砥石11bの角度を変更させて、回転砥石11bがレールRのゲージコーナーのきしみに接触するようにする。尚、図10では、説明の便宜上、グラインダ保持・角度変更機構部14の図示は省略し、ディスクグラインダ11およびグラインダ電源SW保持機構部16とレールのみを示している。
【0035】
そして、回転砥石11bがレールRのゲージコーナーのきしみに接触するようにグラインダ保持・角度変更機構部14にてディスクグラインダ11の角度の設定が完了すると、ディスクグラインダ11のグラインダ本体把持部11c2に装着されているグラインダ電源SW保持機構部16の偏心カムスイッチ16eを、図9(a)に示すような電源オフ状態から図9(b)に示すようなオン状態に回転させて、ディスクグラインダ11の電源スイッチ11aをオン状態に保持してレールRのゲージコーナーのきしみをディスクグラインダ11の回転砥石11bによって削正する。
【0036】
そして、レールRのゲージコーナーの削正度合いによっては、作業者は昇降機構部15の回転ハンドル15a1を掴んで回転してグラインダ保持・角度変更機構部14およびディスクグラインダ11を昇降させたり、昇降機構部15の回転ハンドル15a1または左右方向スライド機構部13の棒状ハンドル13b1を掴んでスライダ13bを左右方向にスライドさせてディスクグラインダ11の回転砥石11bをレールRのゲージコーナーに近付けたり遠ざけてゲージコーナーのきしみを削正したり、昇降機構部15の回転ハンドル15a1または左右方向スライド機構部13の棒状ハンドル13b1を掴んで台車本体12をレールRの長手方向に移動や往復動させてレールRのゲージコーナーのきしみを削正する。
【0037】
また、台車本体11を停止させてレールRのゲージコーナーを削正した方が都合の良い場合は、作業員はブレーキ機構部17のブレーキレバー17aを掴んで引いて、ブレーキ体17b下端のブレーキシュー17b1を車輪12aの外周面に押し付けることによりブレーキをかけ、台車本体11を停止させた状態で、グラインダ保持・角度変更機構部14が保持しているディスクグラインダ11を昇降させたり、スライダ13bを左右方向にスライドさせてディスクグラインダ11の回転砥石11bをレールRのゲージコーナーに近付けたり遠ざけてきしみの削正を行っても良い。
【0038】
<本発明に係る実施形態のレール削正装置1のまとめ>
以上説明したように本発明に係る実施形態のレール削正装置1は、台車本体12と、台車本体12に設けられ、スライドテーブル13a上で左右のレールR,Rに対し直交する左右方向にスライドするスライダ13bが設けられた左右方向スライド機構部13と、ディスクグラインダ11の角度を変更可能なグラインダ保持・角度変更機構部14と、左右方向スライド機構部13のスライダ13bの上に設けられ、グラインダ保持・角度変更機構部14を上下方向であるY軸方向に昇降させる昇降機構部15とを有する。
【0039】
そのため、例えば、ゲージ-コーナーにおけるレールR,R頭部の所謂きしみを削正する場合でも、削正角度や削正量は、グラインダ保持・角度変更機構部14や左右方向スライド機構部13によって一定状態を保持することができるので、作業員の熟練度によらずレールR,Rを削正した際の仕上がり具合や作業効率に差が出ないようにレールR,Rを削正することが可能となる。
【0040】
また、本発明に係る実施形態のレール削正装置1では、グラインダ保持・角度変更機構部14に市販のハンディタイプのディスクグラインダ11を使用しているため、コストを低減することができる共に、その市販のハンディタイプのディスクグラインダ11は着脱式のバッテリ11dを電源として使用しているため、レール削正装置1に発電機(図示せず。)を搭載したり、電源コードを使用しての給電も不要となるので、軽量化およびコードレスとなり作業効率を向上させることができる。
【0041】
また、本発明に係る実施形態のレール削正装置1では、昇降機構部15は、スライダ13bの上に立設され、上下方向に延び、上端部には作業員が掴んで回すための回転ハンドル15a1が設けられたネジ棒15aを回転可能に支持したネジ棒支持部15bと、一端部はグラインダ保持・角度変更機構部14が取付られる一方、他端部はネジ棒15aの雄ネジ部15a2に螺合して昇降する昇降ナット15c1が設けられた昇降体15cとを備え、昇降体15cは、グラインダ保持・角度変更機構部14が取り付けられた回動軸支持板平行取付板15c2,15c2と、回動軸支持板平行取付板15c2,15c2それぞれのグラインダ保持・角度変更機構部14側を連結し、回動軸支持板14b,14bがそれぞれ固定される回動軸支持板垂直取付板15c3と、回動軸支持板平行取付板15c2,15c2それぞれの昇降ナット15c1側を連結し,昇降ナット15c1が取り付けられた昇降ナット取付板15c4とで平面視、中空の正方形等の方形状に形成され、回動軸支持板平行取付板15c2,15c2と回動軸支持板垂直取付板15c3と昇降ナット取付板15c4とで囲まれた中空部には、交差して平面視「田の字」になるように十字状補強板15c5,15c6を設けている。
【0042】
そのため、昇降機構部15によって正確にディスクグラインダ11等を昇降させることができるので、作業員の熟練度によらずレールR,Rを削正した際の仕上がり具合や作業効率に差が出ないようにレールR,Rを削正することが可能となる。
【0043】
特に、昇降機構部15の回動軸支持板平行取付板15c2,15c2と回動軸支持板垂直取付板15c3と昇降ナット取付板15c4とは、昇降体15cとグラインダ保持・角度変更機構部14との間に設けており、回動軸支持板平行取付板15c2,15c2と回動軸支持板垂直取付板15c3と昇降ナット取付板15c4とで囲まれた中空部には、交差して平面視「田の字」になるように十字状補強板15c5,15c6を設けているため、実施形態のレール削正装置1を移動等する際に作業員が一人で持ち上げる場合、十字状補強板15c5,15c6を掴むことにより、左右の重量バランス良く持ち上げることが可能となるので、この点でも作業効率を向上させることができる。
【0044】
また、本発明に係る実施形態のレール削正装置1では、スライダ13bにおける昇降機構部の反対側には、上下方向に延びる棒状ハンドル13b1を設けている。
【0045】
そのため、作業員は、棒状ハンドル13b1を片手で掴みながら、他方の片手で昇降機構部15の回転ハンドル15a1を掴むことが可能となり、安定した状態で当該レール削正装置1をレールR,Rに沿って移動させたり、レールRを削正することが可能となり、この点でも作業効率を向上させることができる。
【0046】
また、本発明に係る実施形態のレール削正装置1では、偏心した偏心回転軸16e1を有し、偏心回転軸16e1を中心に回転してディスクグラインダ11の電源スイッチ11aをオン状態に維持する偏心カムスイッチ16e16aを有するグラインダ電源SW保持機構部16をディスクグラインダ11に取付けている。
【0047】
そのため、通常、ディスクグラインダ11は電源スイッチ11aを押下げてオン状態を保持している場合のみ回転砥石11bを回転させるため、回転砥石11bによって削正作業中は電源スイッチ11aを押し下げている必要があるが、発明に係る実施形態のレール削正装置1では、グラインダ電源SW保持機構部16の偏心カムスイッチ16e16aによってディスクグラインダ11の電源スイッチ11aをオン状態に維持することができるので、削正作業の作業効率を向上させることができる。
【0048】
また、本発明に係る実施形態のレール削正装置1では、ディスクグラインダ11は、市販のディスクグラインダであって、棒状のハンドルが取り付けられていた雌ネジ穴からその棒状ハンドルを取外し、その雌ネジ穴に回動軸4aを取付けている。
【0049】
そのため、発明に係る実施形態のレール削正装置1によれば、市販のディスクグラインダ11から棒状のハンドルを取り外して回動軸4aを取付けることができるので、市販のディスクグラインダ11を容易に使用することが可能となり、コストを低減することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 レール削正装置
11 ディスクグラインダ
11a 電源スイッチ(SW)
11b 回転砥石
11c グラインダ本体
11c1 ヘッド部
11c2 グラインダ本体把持部
11c3 後部
11d バッテリ
12 台車本体
12a 車輪
12b 車輪支持第1フレーム
12c 台車本体方形フレーム
12c1 把持部
12d 台車本体ロッド部
12e 車輪支持第2フレーム
12f 車輪
13 左右方向スライド機構部
13a スライドテーブル
13b スライダ
13b1 棒状ハンドル
14 グラインダ保持・角度変更機構部
14a 回動軸
14a1 角度設定板
14a2 角度設定用軸部
14a3 ナット
14a4 レバー付きナット
14b 回動軸支持板
14b1 角度設定孔
15 昇降機構部
15a ネジ棒
15a1 回転ハンドル
15a2 雄ネジ部
15b ネジ棒支持部
15c 昇降体
15c1 昇降ナット
15c2 回動軸支持板平行取付板
15c3 回動軸支持板垂直取付板
15c4 ナット取付板
15c5,15c6 十字状補強板
15d 昇降体高さ固定レバー
16 グラインダ電源SW保持機構部
16aアングル材
16b 平板材
16c 蝶番金具
16d ネジ
16e 偏心カムスイッチ
16e1 偏心回転軸
17 ブレーキ機構部
17a ブレーキレバー
17b ブレーキ体
17b1 ブレーキシュー
R レール
図1
図2
図3
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図10