(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054536
(43)【公開日】2024-04-17
(54)【発明の名称】ペット立体像の製造方法
(51)【国際特許分類】
A47G 33/00 20060101AFI20240410BHJP
【FI】
A47G33/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160809
(22)【出願日】2022-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】591104767
【氏名又は名称】株式会社カノウモールド
(74)【代理人】
【識別番号】100177921
【弁理士】
【氏名又は名称】坂岡 範穗
(74)【代理人】
【識別番号】100228038
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 めぐみ
(72)【発明者】
【氏名】加納 誠章
(57)【要約】
【課題】ペットをスキャンして作成した3Dデータを基に、様々な姿勢に変更することが可能なペット立体像の製造方法を提供する。
【解決手段】ペット1を複数の方向から3Dスキャンしてスキャンデータ10a,10b,10cを作成するスキャン工程S100と、前記スキャンデータをもとに、ペットの3Dデータ11を作成する3Dデータ作成工程S110と、前記3Dデータに骨格の3Dデータ12を重ねて骨格付与データ13を作成する骨格付与工程S120と、前記骨格付与データの骨格の関節を曲げてペットを所望の姿勢に変更して立体像データ14を作成する姿勢変更工程S130と、前記立体像データを3Dプリンタで出力して立体像15を作成するプリント工程S140と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペット立体像の製造方法であって、
ペットを複数の方向から3Dスキャンしてスキャンデータを作成するスキャン工程と、
前記スキャンデータをもとに、ペットの3Dデータを作成する3Dデータ作成工程と、
前記ペットの3Dデータに骨格の3Dデータを重ねて骨格付与データを作成する骨格付与工程と、
前記骨格付与データの骨格の関節を曲げてペットを所望の姿勢に変更して立体像データを作成する姿勢変更工程と、
前記立体像データを3Dプリンタで出力して立体像を作成するプリント工程と、
を含むことを特徴とするペット立体像の製造方法。
【請求項2】
前記スキャン工程で、ペットにマーカー付きのベルトを装着してスキャンして、
前記3Dデータ作成工程で、前記マーカーを基準に複数の前記スキャンデータを修正して前記ペットの3Dデータを作成する請求項1に記載のペット立体像の製造方法。
【請求項3】
前記立体像の一部に任意の品を入れられる容器が収納できる容器収納空間を設け、前記容器が前記容器収納空間に収納可能とされる請求項1又は2に記載のペット立体像の製造方法。
【請求項4】
前記容器と前記容器収納空間が円筒形状をなし、前記容器外面の雄ねじと前記容器収納空間の雌ねじとが螺合され着脱可能とされる請求項3に記載のペット立体像の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペットの立体像を作製するペット立体像の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人又は動物のフィギュアを製造するために、特開2020-75095号公報に、2次元画像データに基づいて3次元画像データを生成し、この3次元画像データを用いて造形物を生成する造形物の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ペットが飼い主の希望する姿勢で撮影されているとは限られないところ、特許文献1に開示されている技術では、ペットを任意の姿勢に後から変更することは困難であった。一応、特許文献1には、ペン型触感デバイスを操作することで、造形物の形状を変更できる旨が記載されているが、姿勢まで変更することは難しいと考えられる。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みなされたもので、ペットをスキャンして作成した3Dデータをもとに、様々な姿勢に変更することが可能なペット立体像の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明の別の目的は、マーカーの位置を基準として複数のスキャンデータから容易に3Dデータを作成可能なペット立体像の製造方法を提供することである。さらに、本発明の別の目的は、ペットの遺骨や思い出の品等を、立体像の内部に保存できるペット立体像の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のペット立体像の製造方法は、
ペット立体像の製造方法であって、
ペットを複数の方向から3Dスキャンしてスキャンデータを作成するスキャン工程と、
前記スキャンデータをもとに、ペットの3Dデータを作成する3Dデータ作成工程と、
前記ペットの3Dデータに骨格の3Dデータを重ねて骨格付与データを作成する骨格付与工程と、
前記骨格付与データの骨格の関節を曲げてペットを所望の姿勢に変更して立体像データを作成する姿勢変更工程と、
前記立体像データを3Dプリンタで出力して立体像を作成するプリント工程と、
を含むことを特徴とする。
【0007】
本発明のペット立体像の製造方法によれば、骨格の関節を曲げることでペットを所望の姿勢に変更することができる。このため、立体像を飼い主の希望する姿勢で作成することが容易となる。
【0008】
本発明のペット立体像の製造方法の好ましい例は、
前記スキャン工程で、ペットにマーカー付きのベルトを装着してスキャンして、
前記3Dデータ作成工程で、前記マーカーを基準に複数の前記スキャンデータを修正して前記ペットの3Dデータを作成する。
【0009】
本発明のペット立体像の製造方法の好ましい例によれば、マーカーを基準に3Dデータを作成できるため、3Dデータを高精度かつ容易に作成することができる。
【0010】
本発明のペット立体像の製造方法の好ましい例は、
前記立体像の一部に任意の品を入れられる容器が収納できる容器収納空間を設け、前記容器が前記容器収納空間に収納可能とされる。
【0011】
本発明のペット立体像の製造方法の好ましい例によれば、容器に遺骨や首輪等の思い出の品を入れることができる。
【0012】
本発明のペット立体像の製造方法の好ましい例は、
前記容器と前記容器収納空間が円筒形状をなし、前記容器外面の雄ねじと前記容器収納空間の雌ねじとが螺合され着脱可能とされる。
【0013】
本発明のペット立体像の製造方法の好ましい例によれば、容器を立体像から容易に着脱することができる。
【発明の効果】
【0014】
上述したように、本発明のペット立体像の製造方法によれば、ペットをスキャンして作成した3Dデータを基に、様々な姿勢に変更することが可能となる。また、マーカーの位置を基準として複数のスキャンデータを修正及び合成し、容易に3Dデータを作成できる。さらに、ペットの遺骨や思い出の品等を、立体像の内部に保存できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係るペット立体像の製造方法のフロー図である。
【
図6】容器と容器収納空間を模式的に説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のペット立体像の製造方法の実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。本実施形態ではペットの例として犬を用いているが、ペットの種類は猫、ハムスター等の他の動物でもよい。また、本実施形態のペット立体像の製造方法は、公知の3D画像加工ソフトや、3Dアニメーションソフトを用いて実施される。
【0017】
図1に示すように、本実施形態のペット立体像の製造方法は、スキャン工程S100と、3Dデータ作成工程S110と、骨格付与工程S120と、姿勢変更工程S130と、プリント工程S140とを含む。
【0018】
スキャン工程S100は、
図2に示すように、ペット1を複数の方向から3Dスキャナー(図示せず)で3Dスキャン(以下、単に「スキャン」と称することがある。)して、スキャンデータ10a,10b,10cを作成するものである。スキャンデータは、ペットがスキャン作業が終了するまで立って静止しているようであれば、一度にスキャン作業を終えて1つとすることができる。しかし、実際はスキャン作業の途中でペット1が動くことが多く、スキャン作業を中断するときがある。係る場合、複数のスキャンデータ10a,10b,10cが作成されることになる。また、スキャン工程S100では、ペット1にマーカー2付きのベルト3を装着してスキャン作業をすることが可能である。
【0019】
なお、このスキャン工程S100は、ペットが生きているときは勿論、死んだ後であっても可能である。ペットが生きているときは、例えば、ペットを立たせた状態で3Dスキャンすればよい。ペットが死んでいるときは、ペットを横臥させて一方向から3Dスキャンし、次にペットを反対の側に横臥させて他方向から3Dスキャンすればよい。
【0020】
次に、3Dデータ作成工程S110として、
図3に示すように、スキャン工程S100で作成されたスキャンデータ10a,10b,10cをもとに、ペットの3Dデータ11を作成する。このとき、複数のスキャンデータ10a,10b,10cを合成する際に、ペットが動いていることが多く、各々のスキャンデータ10a,10b,10cがずれて上手くペットの3Dデータ11が作成できないことがある。このようなとき、ペットに装着したベルト3に付されたマーカー2の位置を基準に、それぞれのスキャンデータ10a,10b,10cのずれを修正して合成する。
【0021】
次に、骨格付与工程S120として、
図4に示すように、3Dデータ作成工程S110で作成された3Dデータ11に、別のデータである犬の骨格の3Dデータ12を重ね合わせて骨格付与データ13を作成する。このとき、犬種や年齢によって骨格が多少異なり、厳密には多種類の骨格の3Dデータ12が必要となってくる。しかし、多くの骨格の3Dデータ12を用意することは現実的でない。そこで、標準的な骨格の3Dデータ12を用い、骨格の3Dデータ12の一部又は全部を伸縮させ、ペットの3Dデータ11に合わせていくことで、ペットの3Dデータ11と骨格の3Dデータ12との整合性を取っている。また、骨格の3Dデータとして、本実施形態のように、実際の犬の骨の3Dデータ12を用いることばかりでなく、複数の線を骨に見立て、線同士の連結部を関節(折曲げポイント)に見立てて配置した3Dデータを採用することもできる。
【0022】
次に、姿勢変更工程S130として、
図4に示す骨格付与データ13の骨格の関節を曲げて、ペットを所望の姿勢に変更して、
図5に示す立体像データ14を作成する。立体像データ14を作成した後は、必要に応じて骨格の3Dデータ12を削除又は見えなくなるようにしている。これは、飼い主に立体像データ14の仕上がり具合を確認するときに、骨が見えると気分を害されるおそれがあるからである。
図5では、お座りの姿勢であるが、これに限られず走っている姿やお手をしている姿等、所望の姿勢に加工することができる。また、上記の3Dデータ作成工程S110から姿勢変更工程S130の間に、ペット立体像15を所望の大きさに変更する作業を加えることが好ましい。さらに、姿勢変更工程S130の最終段階において、
図6に示すように、立体像データ14の任意の場所に容器30が収納される容器収納空間20を作っておくことが好ましい。
【0023】
この容器30と容器収納空間20を、
図7及び
図8を参照して説明する。
図7(A)は容器収納空間20の模式的な断面図、
図7(B)は容器30の側面図である。
図8は、容器30の分解断面図である。これらの図に示す容器30と容器収納空間20は、略円筒形状をなしている。そして、容器30外面の下端近傍に設けられる雄ねじ34と、容器収納空間20の下端近傍に設けられる雌ねじ21とが螺合され、容器30が容器収納空間20に着脱可能に収納される。また、容器30自体は、上蓋31、中筒32、下蓋33の3分割構造になっており、これらの間にパッキン35が配置されて密閉性を保っている。そして、中空状をなす容器30の内部にペットの遺骨、毛、首輪の一部等を入れることができる。
【0024】
次に、プリント工程S140として、
図6に示すような立体像15を3Dプリンタで出力して作成する。このとき、色を付してペットの生前の色を反映したペット立体像15とすることも可能である。
【0025】
以上、本実施形態のペット立体像の製造方法によれば、骨格付与データ13と姿勢変更工程S130を含むことによって、飼い主の希望する姿勢と異なる姿勢でスキャンされたペット1を、特別なスキルがなくとも所望の姿勢に精度よく変更することができ、ペット個々の持つ特有の形を再現することができる。
【0026】
また、スキャン工程S100で、ペットにマーカー2付きのベルト3を装着するため、複数のスキャンデータ10a,10b,10cの整合性を取ることが容易となる。ここで、多数の3Dスキャナを用いて、多方向から同時にペットをスキャンすれば、整合性のあるスキャンデータを容易に取得できる。しかし、多数の3Dスキャナを用意すること、及び多数のスキャンデータを処理するソフトウエアや装置を用意するだけで多額のコストがかかってしまう。一方、本実施形態のペット立体像の製造方法であれば、ペットが動いて複数のスキャンデータ10a,10b,10cが互いにずれていても、マーカー2によって位置を調整することが容易である。これにより、3Dスキャナが仮に1台しかなくとも、再現性の高いペットの立体像15を製造することができる。
【0027】
また、容器30と容器収納空間20とが互いに螺合されるため、容器30が容器収納空間20なら脱落することなく着脱も容易にすることができる。
【0028】
なお、上述したペット立体像の製造方法は本発明の例示であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、その構成を適宜変更することができる。例えば、本発明のペット立体像の製造方法は、主にペットの立体遺影を製造することを目的としている。しかし、本発明のペット立体像の製造方法を実施するにあたり、ペットが生きているうちにスキャンして立体像を製造することが多い。そうすると、ペットが生きているうちに製造する立体像も、本発明に含まれると考えられる。
【符号の説明】
【0029】
1・・ペット、2・・マーカー、3・・ベルト、
10a,10b,10c・・スキャンデータ、11・・3Dデータ(ペット)、12・・3Dデータ(骨格)、13・・骨格付与データ、14・・立体像データ、15・・立体像、
20・・容器収納空間、21・・雌ねじ、
30・・容器、31・・上蓋、32・・中筒、33・・下蓋、34・・雄ねじ、35・・パッキン