(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054537
(43)【公開日】2024-04-17
(54)【発明の名称】復調器および復調方法
(51)【国際特許分類】
H04L 27/00 20060101AFI20240410BHJP
H04L 27/38 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
H04L27/00 A
H04L27/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160810
(22)【出願日】2022-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】舩山 拓也
(57)【要約】
【課題】従来よりも短い時間で通信を復旧することが可能な復調器および復調方法を提供することを目的とする。
【解決手段】更新制御部267は、キャリア再生部262および等化器263において受信信号の信号処理に用いられた処理係数を正常時係数として取得し、所定の時間間隔ごとに正常時係数を更新する。異常検出部266にて受信信号の異常が検出された場合には、キャリア再生部262および等化器263による処理係数の更新と、正常時係数の更新とを停止させ、キャリア再生部262および等化器263に正常時係数を適用し、受信信号の異常レベルが閾値を下回った場合に処理係数の更新と、正常時係数の更新とを再開させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル変調された受信信号の信号処理に用いられる処理係数を所定の信号処理結果が得られるように更新し、更新された前記処理係数を用いて前記受信信号の信号処理を行なう信号処理手段を備えた復調器であって、
前記受信信号の信号処理に用いられた前記処理係数を正常時係数として取得し、所定の時間間隔ごとに前記正常時係数を更新する正常時係数更新手段と、
前記受信信号の異常を検出する異常検出手段と、
前記異常検出手段の検出結果に基づいて、前記信号処理手段および前記正常時係数更新手段を制御する更新制御手段と、
を備え、
前記更新制御手段は、
前記異常検出手段によって前記受信信号の異常が検出された場合に、前記信号処理手段による前記処理係数の更新と、前記正常時係数更新手段による前記正常時係数の更新と、を停止させ、
前記信号処理手段に、前記異常検出手段により異常が検出される前に更新された前記正常時係数を適用し、
前記受信信号の異常レベルを判定し、前記異常レベルが予め設定された閾値を下回った場合に、前記信号処理手段による前記処理係数の更新と、前記正常時係数更新手段による前記正常時係数の更新と、を再開させる、
ことを特徴とする復調器。
【請求項2】
前記更新制御手段は、前記異常レベルが閾値を上回っていると判定した場合に、前記受信信号の位相を回転させ、所定の信号処理結果が得られるような前記処理係数を探索する、
ことを特徴とする請求項1に記載の復調器。
【請求項3】
前記更新制御手段は、前記信号処理手段に前記正常時係数を設定する際に、前記正常時係数に対し、前記正常時係数の更新時刻からの経過時間に基づいた位相オフセットを施す、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の復調器。
【請求項4】
デジタル変調された受信信号の信号処理に用いられる処理係数を、所定の信号処理結果が得られるように更新し、更新された前記処理係数を用いて信号処理部により前記受信信号の信号処理を行ない、
前記受信信号の信号処理に用いられた前記処理係数を正常時係数として取得し、所定の時間間隔ごとに前記正常時係数を更新し、
前記受信信号に異常が検出された場合に、前記処理係数および前記正常時係数の更新を停止させ、
前記受信信号に異常が検出される前に更新された前記正常時係数を前記信号処理手段に適用し、
前記受信信号の異常レベルを判定し、前記異常レベルが予め設定された閾値を下回った場合に、前記信号処理手段による前記処理係数の更新と、前記正常時係数更新手段による前記正常時係数の更新と、を再開させる、
ことを特徴とする復調方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル変調された受信信号を復調する復調器および復調方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル変復調方式の無線通信システムでは、無線通信装置の変調器により伝送データをデジタル変調して無線フレームを生成し、生成した無線フレームを送信部により送信する。無線通信装置の受信部は、対向局や中継局の無線通信装置から送信された無線フレームを受信する。無線通信装置の復調器は、受信部から出力された無線フレーム(受信信号)を復調し、復調された無線フレームから伝送データを取得する(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
図14は、無線通信装置を構成する復調器の代表的な構成を示している。復調器100は、無線フレームに帯域制限を行なうロールオフフィルタであるROF部101と、無線フレームから搬送波を再生するキャリア再生部102と、マルチパスフェージングによる受信信号の波形歪みを補償する等化器103と、無線フレームに含まれる既知のヘッダを用いてフレーム同期を行なうフレーム同期部104と、キャリア再生部102や等化器103の引き込みシーケンスを制御する引き込み制御部105と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-114663号公報
【特許文献1】特開2011-114664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の復調器100では、受信信号の入力が途絶える信号断や、想定外の干渉波によるフレーム同期の外れなどの異常が発生すると、引き込み制御部105によって引き込みシーケンスをリセットし、初期状態から引き込み処理を行なう。そのため、通信再開までに時間がかかる。特に、低いシンボルレートを使用するシステムでは、引き込み時間は非常に長くなる。特許文献1、2に記載の無線受信装置では、受信信号に異常が発生した場合に、等化器やキャリア再生部へ供給されるパラメータを切り替えて、引き込み外れや同期外れなどの発生を防ぐことはできるが、通信再開(通信復旧)までにかかる時間を短くすることはできない。
【0006】
そこで本発明は、従来よりも短い時間で通信を復旧することが可能な復調器および復調方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、デジタル変調された受信信号の信号処理に用いられる処理係数を所定の信号処理結果が得られるように更新し、更新された前記処理係数を用いて前記受信信号の信号処理を行なう信号処理手段を備えた復調器であって、前記受信信号の信号処理に用いられた前記処理係数を正常時係数として取得し、所定の時間間隔ごとに前記正常時係数を更新する正常時係数更新手段と、前記受信信号の異常を検出する異常検出手段と、前記異常検出手段の検出結果に基づいて、前記信号処理手段および前記正常時係数更新手段を制御する更新制御手段と、を備え、前記更新制御手段は、前記異常検出手段によって前記受信信号の異常が検出された場合に、前記信号処理手段による前記処理係数の更新と、前記正常時係数更新手段による前記正常時係数の更新
と、を停止させ、前記信号処理手段に、前記異常検出手段により異常が検出される前に更新された前記正常時係数を適用し、前記受信信号の異常レベルを判定し、前記異常レベルが予め設定された閾値を下回った場合に、前記信号処理手段による前記処理係数の更新と、前記正常時係数更新手段による前記正常時係数の更新と、を再開させる、ことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の復調器において、前記更新制御手段は、前記異常レベルが閾値を上回っていると判定した場合に、前記受信信号の位相を回転させ、所定の信号処理結果が得られるような前記処理係数を探索する、ことを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の復調器において、前記更新制御手段は、前記信号処理手段に前記正常時係数を設定する際に、前記正常時係数に対し、前記正常時係数の更新時刻からの経過時間に基づいた位相オフセットを施す、ことを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、デジタル変調された受信信号の信号処理に用いられる処理係数を、所定の信号処理結果が得られるように更新し、更新された前記処理係数を用いて信号処理部により前記受信信号の信号処理を行ない、前記受信信号の信号処理に用いられた前記処理係数を正常時係数として取得し、所定の時間間隔ごとに前記正常時係数を更新し、前記受信信号に異常が検出された場合に、前記処理係数および前記正常時係数の更新を停止させ、前記受信信号に異常が検出される前に更新された前記正常時係数を前記信号処理手段に適用し、前記受信信号の異常レベルを判定し、前記異常レベルが予め設定された閾値を下回った場合に、前記信号処理手段による前記処理係数の更新と、前記正常時係数更新手段による前記正常時係数の更新と、を再開させる、ことを特徴とする復調方法である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1および4に記載の発明によれば、受信信号に異常が発生した場合に、処理係数及び正常時係数の更新を停止し、取得しておいた正常時係数を利用して再引き込み処理を開始する。したがって、従来の復調器のように、引き込みシーケンスをリセットして初期状態から引き込み処理を行なう必要がないので、通信の早期復旧を安定的に行なうことが可能となる。また、受信信号が正常に戻ってから処理係数の更新を再開するので、適正な信号処理を行なうことが可能となる。さらに、受信信号が正常に戻ってから正常値係数の更新を再開するので、正常な受信信号の信号処理に用いられた処理係数を正常値係数として利用することができる。
【0012】
また、請求項2に記載の発明によれば、受信信号の位相を回転させて、所定の信号処理結果が得られるような処理係数を探索するので、より短い時間で通信の復旧を行なうことが可能となる。
【0013】
さらに、請求項3に記載の発明によれば、信号処理手段に正常時係数を設定する際に、正常時係数に対し、正常時係数の更新時刻からの経過時間に基づいた位相オフセットを施すので、より短い時間で通信の復旧を行なうことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】この発明の実施の形態に係る無線通信システムの概略構成を示す図である。
【
図2】
図1に示す無線通信装置の復調器の基本的な概略構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】
図2に示す復調器において正常時係数を更新する状態を示す説明図である。
【
図4】この発明の第1実施形態に係る復調器の概略構成を示す機能ブロック図である。
【
図5】第1実施形態の復調器による処理係数および正常時係数の更新制御の手順を示すフローチャートである。
【
図6】第1実施形態の復調器による処理係数および正常時係数の更新制御時の等化器出力信号を示す図である。
【
図7】第2実施形態の復調器による処理係数および正常時係数の更新制御の手順を示すフローチャートである。
【
図8】第2実施形態の復調器による処理係数および正常時係数の更新制御時の等化器出力信号を示す図である。
【
図9】第2実施形態の復調器による別の更新制御時の等化器出力信号を示す図である。
【
図10】第3実施形態の復調器による処理係数および正常時係数の更新制御の手順を示すフローチャートである。
【
図11】第3実施形態の復調器による処理係数および正常時係数の更新制御時の等化器出力信号を示す図である。
【
図12】第4実施形態の復調器による処理係数および正常時係数の更新制御の手順を示すフローチャートである。
【
図13】本発明が適用可能な復調器の別の例を示す機能ブロック図である。
【
図14】従来の復調器の概略構成を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。なお、以下では、この発明の特徴的な構成について説明し、無線通信を行う際の従来と同様の仕組みについては説明を省略する。
【0016】
図1は、この発明の実施の形態における無線通信システム1の概略構成を示す図である。
図1では、無線通信システム1の概略構成を示す(
図1の上側)とともに、無線通信の送受信局のそれぞれに配置される無線通信装置2の概略構成の機能ブロックを示す(
図1の下側)。
【0017】
無線通信システム1を構成する無線通信の送受信局のそれぞれに、無線通信装置2およびアンテナ3が配置される(
図1の上側参照)。無線通信装置2同士は、アンテナ3を介して無線回線4によって相互に接続される。
【0018】
まず、この実施の形態において、本発明に係る復調器が適用されるベースの構成としての無線通信装置2の概略構成を説明する。
【0019】
無線通信装置2は、送信用として、変調器22および送信部23を備えるとともに、受信用として、受信部25および復調器26を備え、さらに、インターフェース部21を備える(
図1の下側参照)。
【0020】
ここで、無線通信装置2は、送信用の機序と受信用の機序とを備えて送受信を行う装置であるところ、以下の説明では、送信用の機序を用いて送信に纏わる処理を行う場合の無線通信装置2のことを「送信側」と称し、受信用の機序を用いて受信に纏わる処理を行う場合の無線通信装置2のことを「受信側」と称する。
【0021】
インターフェース部21は、主として、データ回線終端装置211(データ通信装置やデータ回線装置と呼ばれる機器を含む)を備える。インターフェース部21は、通信対象の伝送データの入力を受け、前記伝送データを、データ回線終端装置211を介して、変調器22へと出力する。
【0022】
変調器22は、インターフェース部21から出力される伝送データの入力を受け、前記伝送データにフレーム同期信号を挿入して無線フレーム(送信信号)を生成し、さらに、前記無線フレーム(送信信号)に所定の周波数の搬送波信号を重畳させてデジタル変調して出力する。変調器22は、前記無線フレームに、例えば400MHz程度の周波数の搬送波信号を重畳させてデジタル変調を行う。なお、無線通信システム2において用いられる変調方式は、特定の方式に限定されるものではないものの、例えば直交振幅変調(QAM:Quadrature Amplitude Modulation)が用いられる。
【0023】
送信部23は、変調器22から出力されるデジタル変調された無線フレーム(送信信号)の入力を受け、前記デジタル変調された無線フレーム(送信信号)を、D/A変換器でデジタル-アナログ変換した上で、局部発振器および混合器によって前記所定の周波数(例えば、400MHz程度)よりも高周波の信号(送信波信号)に変換する。送信部23は、前記デジタル変調された無線フレームを、周波数が例えば10GHz程度の信号に変換する。
【0024】
送信部23は、また、前記周波数変換した無線フレーム(送信波信号)を、所定の周波数帯域の信号のみを通過させる送信フィルタを通過させるとともにパワーアンプで増幅した上で出力する。
【0025】
そして、変調器22においてデジタル変調されるとともに送信部23において周波数変換された無線フレーム(送信波信号)は、送信部23から分波器24を介してアンテナ3へと導かれ、アンテナ3から無線回線4を介して他方の(言い換えると、この通信では受信側になる)無線通信装置2のアンテナ3へと、電波として送信される。
【0026】
また、他方の(言い換えると、この通信では送信側になる)無線通信装置2のアンテナ3から無線回線4を介して無線フレームが当該の(言い換えると、この通信では受信側になる)無線通信装置2のアンテナ3へと電波として送信されると、アンテナ3は、受信した無線フレームを電気信号(受信波信号)へと変換して出力する。
【0027】
アンテナ3から出力される、電気信号に変換された無線フレーム(受信波信号)は、分波器24を介して受信部25へと導かれる。
【0028】
受信部25は、無線フレーム(受信波信号)の入力を受け、前記無線フレーム(受信波信号)を、所定の周波数帯域の信号のみを通過させる受信フィルタを通過させるとともにプリアンプで増幅した上で、局部発振器および混合器によって前記高周波(例えば、10GHz程度)よりも低い周波数(例えば、400MHz程度)の信号に変換する。
【0029】
受信部25は、さらに、前記周波数変換した信号を、パワーアンプで増幅するとともにA/D変換器でアナログ-デジタル変換して、デジタル信号(無線フレーム(受信信号))を出力する。
【0030】
なお、受信部25では無線フレーム(受信波信号)に対して直交検波処理が施されて位相が相互に直交する同相成分(Ich)のベースバンド信号と直交成分(Qch)のベースバンド信号とが生成されるが、以降の説明では同相成分と直交成分との各々別々に着目する必要がある場合を除いて同相成分と直交成分とを特に区別することなくどちらにも共通する内容として説明し、また、図面では同相成分の信号と直交成分の信号とを1つの信号線で表す。
【0031】
復調器26は、受信部25から出力される無線フレーム(受信信号)の入力を受け、受
信信号の引き込み処理を行なって復調するとともに、復調した受信信号に挿入されているフレーム同期信号に基づいて受信信号から伝送データを取り出し、取り出した伝送データをインターフェース部21へと出力する。
【0032】
上記の復調器26では、受信信号の入力が途絶える信号断や、想定外の干渉波によるフレーム同期の外れなどの異常が発生すると、引き込みシーケンスをリセットして初期状態から引き込み処理を行なうので、通信再開までに時間がかかる。
【0033】
そこで、この実施の形態に係る復調器26は、信号断やフレーム同期外れなどの受信信号の異常を検出し、異常の検出結果に基づいて復調器26の信号処理に用いる処理係数の更新を制御し、通信の早期復旧を安定して行うための構成を備えている。
【0034】
図2は、本実施の形態に係る復調器26の基本的な構成を示すブロック図である。復調器26は、デジタル変調された受信信号を復調するための基本的な構成として、受信信号に帯域制限を行なうロールオフフィルタであるROF部261と、受信信号から搬送波を再生するキャリア再生部(信号処理手段)262と、マルチパスフェージングによる受信信号の波形歪みを補償する等化器(信号処理手段)263と、受信信号に挿入されているフレーム同期信号に基づいて受信信号から伝送データを取り出し、取り出した伝送データをインターフェース部21へと出力するフレーム同期部264と、キャリア再生部102や等化器103の引き込みシーケンスを制御する引き込み制御部265と、を備えている。
【0035】
また、本実施の形態に係る復調器26は、受信信号の異常を検出し、信号処理で用いる処理係数の更新を制御し、通信の早期復旧を行うための構成として、異常検出部(異常検出手段)266と、更新制御部(正常時係数更新手段および更新制御手段)267とを備えている。
【0036】
本実施の形態のキャリア再生部262および等化器263は、本発明において、デジタル変調された受信信号の信号処理に用いられる処理係数を所定の信号処理結果が得られるように更新し、更新された処理係数を用いて受信信号の信号処理を行なう信号処理手段に相当する。キャリア再生部262にて用いられる処理係数としては、例えば、周波数誤差の補正値などが相当する。また、等化器263にて用いられる処理係数としては、例えば、フィルタのタップ係数などが相当する。キャリア再生部262および等化器263は、所定の信号処理結果が得られるように処理係数を適宜更新し、更新された処理係数を用いて受信信号の信号処理を行なう。
【0037】
正常時係数更新手段として機能する更新制御部267は、キャリア再生部262および等化器263にて受信信号の信号処理に用いられた処理係数を正常時係数として取得し、所定の時間間隔ごとに正常時係数を更新する。すなわち、更新制御部267は、受信信号に異常が発生していないときに信号処理に用いられたキャリア再生部262および等化器263の処理係数を正常時係数として取得する。また、正常時係数として、最新の処理係数を取得しておくために、所定の時間間隔ごとに正常時係数を更新する。
【0038】
図3(A)、(B)は、更新制御部267による正常時係数の更新の概要を示している。更新制御部267は、例えば、N秒ごとにキャリア再生部262および等化器263から処理係数を取得し、取得した処理係数を正常時係数として、図示しないバッファなどに格納する。正常時係数(1)~(5)は、更新間隔であるN秒おきに順に更新された正常時係数を示す。
【0039】
なお、正常時係数の更新間隔N秒は、現在の受信信号の状況から大きく乖離しないよう
な時間間隔に設定するのが好ましい。例えば、正常時係数(3)が更新された後、次の正常時係数(4)が更新される直前に受信信号に異常が検出されたとする。この場合、本実施の形態では、正常時係数(4)はすぐには更新されず、更新再開されるまでの期間は、適切に更新された直前の正常時係数(3)がキャリア再生部262および等化器263の処理係数として利用される。このような場合に、正常時係数の更新間隔が長すぎると、正常時係数(3)は現在の受信信号の状況を反映していない古い処理係数となり、通信復旧に時間がかかってしまう。また、正常時係数の更新間隔が短すぎると、ほとんど変化の無い処理係数を正常時係数として頻繁に更新することになるため、処理の無駄が大きくなる。そのため、正常時係数の更新間隔N秒は、現在の受信信号の状況から大きく乖離しないような時間間隔に設定するのが好ましい。
【0040】
異常検出部266は、受信信号の信号断や、フレーム同期外れなどの異常を検出する。更新生後部267は、異常検出部266の検出結果に基づいて、キャリア再生部262および等化器263による処理係数の更新と、正常時係数の更新とを制御する。
【0041】
具体的には、更新制御部267は、異常検出部266によって受信信号の異常が検出された場合に、キャリア再生部262および等化器263による処理係数の更新と、正常時係数の更新と、を停止する。次いで、更新制御部267は、キャリア再生部262および等化器263に対し、異常検出部266により異常が検出される前(より好ましくは、直前)に更新された正常時係数を設定し、引き込み制御部265に受信信号の再引き込みを開始させる。
【0042】
例えば、
図3(A)に示すように、正常時係数(3)の更新後、次の正常時係数(4)が更新される直前に受信信号に異常が検出されたとする。この場合、本実施の形態では、適切に更新された直前の正常時係数(3)がキャリア再生部262および等化器263の処理係数として利用される。また、同図(B)に示すように、正常時係数(3)の更新直後に受信信号に異常が検出されたとする。この場合、異常検出にかかる時間などを考慮すると、正常時係数(3)は異常時の処理係数である可能性がある。そのため、この場合には、正常時係数(3)を適用せずに、その前に更新された正常時係数(2)を適用するのが好ましい。
【0043】
更新制御部267は、等化器263から取得される誤差信号(理想とされる受信信号と、実際の受信信号との誤差を示す信号)に基づいて、受信信号の異常レベルを判定する。そして、更新制御部267は、受信信号の異常レベルが予め設定された閾値を下回った場合に、キャリア再生部262および等化器263による処理係数の更新と、正常時係数の更新とを再開させる。
【0044】
これによれば、受信信号に異常が発生した場合に、処理係数及び正常時係数の更新を停止し、取得しておいた正常時係数を利用して再引き込み処理を開始する。したがって、従来の復調器のように、引き込み制御部265により引き込みシーケンスをリセットして初期状態から引き込み処理を行なう必要がないので、通信の早期復旧を安定的に行なうことが可能となる。また、受信信号が正常に戻ってから処理係数の更新を再開するので、適正な信号処理を行なうことが可能となる。さらに、受信信号が正常に戻ってから正常値係数の更新を再開するので、正常な受信信号の信号処理に用いられた処理係数を正常値係数として利用することができる。
【0045】
(実施の形態1)
次に、上述した基本的構成を備える復調器26について、より具体的な実施の形態を説明する。なお、上記において説明した基本的構成と同様の構成については、同じ符号を用いて詳しい説明は省略する。
【0046】
本実施の形態に係る復調器26Aは、
図4に示すように、上述したROF部261、キャリア再生部262、等化器263、フレーム同期部264、引き込み制御部265、および更新制御部267の他に、信号断検出部268、同期外れ検出部269、および誤差電力計算部2610を備えている。
【0047】
信号断検出部268および同期外れ検出部269は、上述した異常検出部266の具体的な機能を示す処理部である。信号断検出部268は、復調器26Aに入力される受信信号の信号断を検出し、その検出結果を更新制御部267へ出力する。また、同期外れ検出部269は、フレーム同期部264によるフレーム同期の外れを検出し、その検出結果を更新制御部267へ出力する。
【0048】
誤差電力計算部2610は、等化器263の出力信号から誤差信号の電力(誤差電力)を計算し、その計算結果を更新制御部267へ出力する。誤差電力は、受信信号の異常レベルの指標として用いることができ、更新制御部267は、誤差電力に基づいて受信信号が正常に戻ったか否かを判定する。
【0049】
次に、復調器26Aによる処理係数および正常値係数の更新制御について説明する。
図5は、復調器26Aにより行なわれる処理係数および正常値係数の更新制御の手順を示し、
図6は、更新制御によって等化器出力信号が変化する状態を示している。
【0050】
無線通信システム1において通信が行なわれている場合(ステップS1でNO)、復調器26Aは、ROF部261により受信信号の帯域制限を行い、キャリア再生部262により受信信号から搬送波を再生し、等化器263によりマルチパスフェージングによる受信信号の波形歪みを補償し、フレーム同期部264により受信信号から伝送データを取り出してインターフェース部21へと出力する。このような復調処理において、キャリア再生部262および等化器263は、所定の信号処理結果が得られるように処理係数を更新し、更新された処理係数を用いて受信信号の信号処理を行なう。
【0051】
信号断検出部268および同期外れ検出部269は、受信信号の異常を検出する(ステップS2)。信号断検出部268および同期外れ検出部269によって受信信号から異常が検出されなかった場合(ステップS2でNO)、更新制御部267は、更新間隔N秒が経過したか否かを判定する(ステップS3)。なお、更新間隔は、例えば、更新制御部267が備えるタイマーなどにより、通信開始とともに繰り返しカウントされる。
【0052】
更新制御部267は、更新間隔N秒が経過すると(ステップS3でYES)、その経過時に信号処理に用いられていた処理係数をキャリア再生部262および等化器263から取得し、正常時係数として図示しないバッファに格納・更新する(ステップS4)。更新制御部267は、正常時係数の更新後、更新間隔N秒のカウントをリセットする(ステップS5)。
【0053】
図6(A)は、等化器263の出力信号を示すグラフであり、横軸が時間、縦軸が誤差電力となっている。誤差電力は、誤差電力計算部2610によって計算される。誤差電力の閾値は、更新制御部267による受信信号の正常判定に用いられる。更新制御部267は、等化器出力信号の誤差電力が閾値を下回っているときには受信信号および引き込みの状態が正常であると判定し、誤差電力が閾値を上回っているときには受信信号または引き込みの状態が正常ではないと判定する。
【0054】
図6(B)は、等化器出力信号のシンボル配列および位相回転の状態を示している。同図(B)において、横軸は、複素平面のI軸であり、直交検波処理後の同相成分(Ich
) に対応し、また、縦軸は、複素平面のQ軸であり、直交検波処理後の直交成分(Qch) に対応する。同図(A)の時刻T1のように、等化器出力信号の誤差電力が閾値以下である場合には、同図(B)(イ)に示すように、等化器出力信号のシンボルはI軸およびQ軸に沿った理想点に配列される。
【0055】
図5のステップS2に戻り、信号断検出部268および同期外れ検出部269のいずれか一方、または両方によって受信信号の異常が検出された場合(ステップS2でYES)、更新制御部267は、正常時係数の更新を停止(ステップS6)するとともに、キャリア再生部262および等化器263における処理係数の更新を停止する(ステップS7)。受信信号に異常が発生すると、
図6(A)の時刻T2に示すように、等化器出力信号の誤差電力は閾値を上回り、同図(B)(ロ)に示すように、シンボル配列は完全に外れる。
【0056】
図5に戻り、更新制御部267は、キャリア再生部262および等化器263に対し、バッファに格納・更新されている正常時係数を適用し(ステップS8)、引き込み制御部265に受信信号の再引き込みを開始させる。
図6(A)の時刻T3は、キャリア再生部262および等化器263に正常時係数が適用されたタイミングを示し、同図(B)(ハ)は、正常時係数適用後のシンボル配列を示している。受信信号に異常が発生してから正常時係数が適用されるまでの期間(例えば、時刻T1~T3の期間)は、処理係数の更新は停止されているため、その期間の位相オフセットにより、シンボル配列の位相はI軸およびQ軸に対して回転する。しかしながら、キャリア再生部262および等化器263に正常時係数を適用することにより、位相回転以外は補償されるため、再引き込みにかかる時間は短くなる。
【0057】
図5に戻り、更新制御部267は、誤差電力計算部2610から等化器出力信号の誤差電力を取得し、閾値と比較する(ステップS9)。
図6(A)の時刻T4は、キャリア再生部262および等化器263に正常時係数が適用されてから時間が経過し、同図(B)(ニ)に示すように、シンボル配列の位相の回転が進んでいる状態を示している。このように、シンボル配列の位相の回転が進み、シンボル配列が理想状態に近づくことにより、等化器出力信号の誤差電力は異常発生時よりも小さくなる。
【0058】
図6(A)の時刻T5は、キャリア再生部262および等化器263に正常時係数が適用されてから、さらに時間が経過し、同図(B)(ホ)に示すように、シンボル配列の位相の回転が進んでいる状態を示している。このように、シンボル配列の位相の回転が進み、シンボル配列が理想状態に近づくことにより、等化器出力信号の誤差電力は閾値よりも小さくなる。
図5に戻り、更新制御部267は、等化器出力信号の誤差電力が閾値よりも小さくなると(ステップS9でYES)、キャリア再生部262および等化器263における処理係数の更新を再開するとともに(ステップS10)、正常時係数の更新を再開する(ステップS11)。
【0059】
このように、等化器出力信号の誤差電力が閾値よりも小さくなってから処理係数および正常時係数の更新を再開することにより、受信信号の引き込みをスムースに再開することが可能となる。
【0060】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2に係る復調器26Bについて説明する。なお、本実施の形態に係る復調器26Bは、上記において説明した実施の形態1に係る復調器26Aと同様の構成を備えているが、受信信号の異常レベルが閾値を上回っていると判定した場合に受信信号の位相を回転させ、所定の信号処理結果が得られるような処理係数を探索する点で異なっている。なお、復調器26Aと同様の構成および処理については、同じ符号を用い
て詳しい説明は省略する。
【0061】
図7は、復調器26Bにより行なわれる処理係数および正常値係数の更新制御の手順を示し、
図8は、更新制御によって等化器出力信号が変化する状態を示している。また、
図8(A)は、等化器263の出力信号を示すグラフであり、横軸が時間、縦軸が誤差電力となっている。同図(B)は、等化器出力信号のシンボル配列を示している。
【0062】
更新制御部267は、第1の実施の形態と同様に、受信信号に異常が検出された場合(ステップS2でYES)、正常時係数の更新を停止し(ステップS6)、キャリア再生部262および等化器263の処理係数の更新を停止し(ステップS7)、キャリア再生部262および等化器263に正常時係数を適用し(ステップS8)、等化器出力信号の誤差電力を閾値と比較する(ステップS9)。
【0063】
また、更新制御部267は、第1の実施の形態とは異なり、等化器出力信号の誤差電力が閾値を上回っている場合には(ステップS9でNO)、キャリア再生部262の処理係数の探索を開始する(ステップS12)。
【0064】
この処理係数の探索は、次のようにして行なわれる。
図8(A)の時刻T2は、キャリア再生部262および等化器263に正常時係数が適用されたタイミングを示している。更新制御部267は、同図(B)(ロ)に示すように、正常時係数の適用後に、等化器出力信号のシンボル配列の位相を所定ステップずつ回転させ、同図(A)の時刻T3および同図(B)(ハ)に示すように、等化器出力信号の誤差電力を異常発生時よりも小さくする。
【0065】
図8(A)の時刻T4および同図(B)(ニ)は、キャリア再生部262の処理係数の探索が完了し、等化器出力信号の誤差電力が閾値よりも小さくなった状態を示している。
図7に戻り、更新制御部267は、等化器出力信号の誤差電力が閾値よりも小さくなると(ステップS9でYES)、キャリア再生部262および等化器263における処理係数の更新を再開するとともに(ステップS10)、正常時係数の更新を再開する(ステップS11)。
【0066】
このように、本実施の形態では、等化器出力信号のシンボル配列を回転させて処理係数を探索するので、第1の実施形態よりも短い時間で通信の復旧を行なうことが可能となる。
【0067】
なお、本実施の形態のステップS8では、キャリア再生部262に正常時係数を適用しているが、必ずしも正常時係数を適用しなくてもよい。例えば、受信信号の異常が短時間である場合、キャリア再生部262に正常時係数を適用することで通信復旧が早くなる可能性はあるが、受信信号の異常が比較的長く継続した場合に正常時係数を適用すると、通信復旧の時間が長くなる可能性もある。そのため、キャリア再生部262に正常時係数を適用せずに探索を行なってもよい。
【0068】
また、処理係数の探索時間を確実に短くするために、シンボル配列の回転方向と逆方向に探索を行なってもよい。例えば、
図9(A)の時刻T2は、キャリア再生部262および等化器263に正常時係数が適用されたタイミングを示している。更新制御部267は、同図(B)(ロ)に示すように、正常時係数の適用後に、等化器出力信号のシンボル配列の位相回転の方向を特定する。次いで、更新制御部267は、異常検出から正常時係数適用までの時間が、位相が半回転する時間より短い場合、同図(A)の時刻T3および同図(B)(ハ)に示すように、等化器出力信号のシンボル配列を特定された回転方向と逆方向に回転させて処理係数を探索する。これにより、時間が経過した時刻T4では、シン
ボル配列の位相の回転が進んで理想状態に近づくため、等化器出力信号の誤差電力は異常発生時よりも小さくなる。これによれば、シンボル配列が最大でも半回転する間に処理係数の探索が完了するので、より確実に短い時間で通信の復旧を行なうことが可能となる。
【0069】
なお、
図9では、等化器出力信号のシンボル配列が時計方向に回転している状態のときに、シンボル配列を反時計方向に回転させて処理係数の探索を行なう状態を示したが、等化器出力信号のシンボル配列が反時計方向に回転している場合には、シンボル配列を反対方向の時計方向に回転させて処理係数の探索が行なわれる。
【0070】
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3に係る復調器26Cについて説明する。なお、本実施の形態に係る復調器26Cは、上記において説明した実施の形態1に係る復調器26Aと同様の構成を備えているが、受信信号の異常時にキャリア再生部262へ正常時係数を設定する際に、正常時係数に対し、正常時係数の更新時刻からの経過時間に基づいた位相オフセットを施す点で異なっている。なお、復調器26Aと同様の構成および処理については、同じ符号を用いて詳しい説明は省略する。
【0071】
図10は、復調器26Cにより行なわれる処理係数および正常値係数の更新制御の手順を示し、
図11は、更新制御によって等化器出力信号が変化する状態を示している。また、
図11(A)は、等化器263の出力信号を示すグラフであり、横軸が時間、縦軸が誤差電力となっている。同図(B)は、等化器出力信号のシンボル配列を示している。
【0072】
更新制御部267は、第1の実施の形態と同様に、受信信号に異常が検出された場合(ステップS2でYES)、正常時係数の更新を停止し(ステップS6)、キャリア再生部262および等化器263の処理係数の更新を停止し(ステップS7)、等化器263に正常時係数を適用する(ステップS8a)。また、更新制御部267は、第1の実施の形態とは異なり、キャリア再生部262へ正常時係数を設定する際に、正常時係数に対し、正常時係数の更新時刻からの経過時間に基づいて位相オフセットが施された復旧時係数を適用する(ステップS8b)。
【0073】
更新制御部267は、
図11(A)に示すように、正常時係数が更新されたタイミングから、復旧時係数がキャリア再生部262に適用されるまでの経過時間t秒を内蔵するタイマーなどでカウントしている。この経過時間t秒のカウントは、ステップS13に示すように、正常時係数の更新後に毎回リセットされる。
【0074】
更新制御部267は、直前に更新された正常時係数をΔf、この正常時係数の更新タイミングからの経過時刻をtとしたときに、位相オフセット値として「2π・Δf・t[rad]」を計算し、この位相オフセット値を正常時係数に乗算して復旧時係数を求め、求めた復旧時係数をキャリア再生部262に適用する。
【0075】
図11(A)の時刻T2は、キャリア再生部262に復旧時係数を適用する前の時刻を示し、同図(B)(ロ)に示すように、このタイミングでは等化器出力信号のシンボル配列の位相は回転している。これに対し、時刻T3のタイミングでキャリア再生部262に復旧時係数を適用すると、時刻T4では、等化器出力信号の誤差電力は閾値よりも小さくなり、等化器出力信号のシンボル配列は、同図(B)(ハ)に示すように理想状態となる。
【0076】
更新制御部267は、等化器出力信号の誤差電力が閾値よりも小さくなると(ステップS9でYES)、キャリア再生部262および等化器263における処理係数の更新を再開し(ステップS10)、正常時係数の更新を再開する(ステップS11)とともに、t
秒カウントをリセットする(ステップS14)。
【0077】
このように、本実施の形態では、キャリア再生部262に復旧時係数を適用することにより、第1の実施形態および第2の実施形態よりも短い時間で通信の復旧を行なうことが可能となる。
【0078】
なお、キャリア再生部262に復旧時係数を適用しても等化器出力信号の誤差電力が閾値よりも小さくならなかった場合には、第1の実施形態と同様に、等化器出力信号のシンボル配列の位相が回転して理想状態になるまで待機してから、処理係数および正常時係数の更新を再開する。
【0079】
(実施の形態4)
次に、本発明の実施の形態4に係る復調器26Dについて説明する。なお、本実施の形態に係る復調器26Dは、復調器26Aと同様の構成を備えているが、上述した実施の形態2と実施の形態3とを組み合わせた更新処理を行なう。
【0080】
図12に示すように、復調器26Dの更新制御部267は、第3の実施の形態と同様に、受信信号に異常が検出された場合(ステップS2でYES)、正常時係数の更新を停止し(ステップS6)、キャリア再生部262および等化器263の処理係数の更新を停止し(ステップS7)、等化器263に正常時係数を適用する(ステップS8a)。また、更新制御部267は、第3の実施の形態と同様に、キャリア再生部262へ正常時係数を設定する際に、正常時係数に対し、正常時係数の更新時刻からの経過時間に基づいて位相オフセットが施された復旧時係数を適用する(ステップS8b)。
【0081】
更新制御部267は、キャリア再生部262に復旧時係数を適用しても等化器出力信号の誤差電力が閾値よりも小さくならなかった場合には、キャリア再生部262の処理係数の探索(ステップS12)を行なう。
【0082】
これにより、本実施の形態によれば、キャリア再生部262に復旧時係数を適用することにより、第1の実施形態および第2の実施形態よりも短い時間で通信の復旧を行なうことが可能となる。また、キャリア再生部262に復旧時係数を適用しても等化器出力信号の誤差電力が閾値よりも小さくならなかった場合には、第2の実施形態と同様に、等化器出力信号のシンボル配列の位相が回転して理想状態になるまで探索してから、処理係数および正常時係数の更新を再開する。
【0083】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。
【0084】
例えば、上記の実施の形態では、等化器263の後段にフレーム同期部264が接続された復調器26を例にして説明したが、
図13に示すように、キャリア再生部262の前段にフレーム同期部264が接続された復調器26Eであっても、同様に処理係数および正常時係数の更新制御を行なうことが可能である。また、フレーム同期部264に接続されたパイロット検出部2611の出力信号の異常をパイロット異常検出部2612により検出し、パイロット信号に異常がある場合に処理係数および正常時係数の更新制御を行なうようにしてもよい。
【0085】
また、上記の実施の形態では、復調器26の信号処理手段として、キャリア再生部262および等化器263を例にして説明したが、ROF部261の出力信号に基づいてクロック信号を再生するクロック再生器(図示せず)や、ROF部261の後段で受信信号の
シンボルを再生するシンボル再生器などを信号処理手段として適用し、これらで用いられる処理係数の更新制御を行なうようにしてもよい。
【0086】
また、上記の実施の形態では、直交振幅変調(QAM)された受信信号を復調する復調器26を例にして説明したが、4位相偏移変調(QPSK:Quadrature Phase Shift Keying)や、振幅位相偏移変調(APSK:Amplitude Phase Shift Keying)された受信信号を復調する復調器にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0087】
1 無線通信システム
2 無線通信装置
26 復調器
262 キャリア再生部(信号処理手段)
263 等化器(信号処理手段)
266 異常検出部(異常検出手段)
267 更新制御部(更新制御手段、正常時係数更新手段)
268 信号断検出部(異常検出手段)
269 同期外れ検出部(異常検出手段)
2610 誤差電力計算部