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特開2024-54538足場補強構造、その足場補強構造を有する養生設備、及び、その養生設備を用いた建物解体工法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054538
(43)【公開日】2024-04-17
(54)【発明の名称】足場補強構造、その足場補強構造を有する養生設備、及び、その養生設備を用いた建物解体工法
(51)【国際特許分類】
   E04G 7/04 20060101AFI20240410BHJP
   E04G 23/08 20060101ALI20240410BHJP
   E04G 21/28 20060101ALI20240410BHJP
   E04G 21/32 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
E04G7/04
E04G23/08 Z
E04G21/28 B
E04G21/32 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160814
(22)【出願日】2022-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】三浦 哲也
(72)【発明者】
【氏名】鷲ノ上 友里
(72)【発明者】
【氏名】濱田 幸弘
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 勇一
(72)【発明者】
【氏名】安部 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】中野 義之
(72)【発明者】
【氏名】大石 康平
【テーマコード(参考)】
2E176
【Fターム(参考)】
2E176AA01
2E176DD21
2E176DD61
(57)【要約】
【課題】上部フロアに隣接して設置される足場の上方突出部分が外力によって内部側に倒れたり分解されたりするのを効果的に防止することができる足場補強構造、その足場補強設備を有する養生設備、及び、その養生設備を用いて外部への飛散を防止しながら建物の上部フロアにおいて効率良く建築工事を行うことのできる建物解体工法を提供する。
【解決手段】建物の上部フロアから上方に突出する上方突出部分15を有する状態で上部フロアに隣接して設置される足場1に、それの上方突出部分15を含む部分の少なくとも外部側を含む部分を引張材31にて拘束して一体化する拘束一体化部Eが備えられている。
【選択図】図5

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の上部フロアから上方に突出する上方突出部分を有する状態で上部フロアに隣接して設置される足場に、それの上方突出部分を含む部分の少なくとも外部側を含む部分を引張材にて拘束して一体化する拘束一体化部が備えられている足場補強構造。
【請求項2】
前記拘束一体化部は、足場の前記上方突出部分の上端部の外部側の係合部から下向きに延在する引張材の端部側を、足場における前記上方突出部分の下端部又はそれよりも下方の部位の外部側の被連結部に連結して、足場における前記上方突出部分を含む部分の少なくとも外部側を含む部分を拘束して一体化している請求項1記載の足場補強構造。
【請求項3】
前記拘束一体化部は、足場の前記上方突出部分の上端部の内部側の係合部から下向きに延在する引張材の端部側を、足場における前記上方突出部分の下端部又はそれよりも下方の部位の内部側の方向転換部、足場における前記上方突出部分の下端部又はそれよりも下方の部位の外部側の方向転換部を順番に経由して上向きに方向転換して上方に引き上げ、足場の上方突出部分の外部側の被連結部に連結して、足場における前記上方突出部分を含む部分の少なくとも外部側を含む部分を拘束して一体化している請求項1記載の足場補強構造。
【請求項4】
前記拘束一体化部は、足場の外部側において、前記引張材の端部側を足場の外部側の水平連結材と足場板との間の隙間を通過させて構成されている請求項2又は3記載の足場補強構造。
【請求項5】
請求項1~3の何れか1項に記載の足場補強構造を有する養生設備であって、
建物上空に張り渡されて建物上空を閉じる頂部養生シートと、
前記頂部養生シートを建物上空に保持するシート保持部とが備えられ、
前記シート保持部には、前記引張材として前記頂部養生シートを建物上空に張り渡すためのシート支持材と、前記シート支持材の長さ方向の両端部を固定するシート支持材固定部とが備えられ、
前記シート支持材固定部は、足場における前記上方突出部分を用いて構成され、
前記シート支持材固定部は、足場における前記拘束一体化部にて拘束して一体化した部分に前記シート支持材の張力を負担させている養生設備。
【請求項6】
前記シート保持部にて建物上空に保持された前記頂部養生シートを移動させることで建物上空の開閉エリアを開閉する開閉操作部が備えられ、
前記開閉エリアが多数備えられ、前記開閉操作部は、多数の前記開閉エリアから選択した開閉エリアを開閉自在に構成されている請求項5記載の養生設備。
【請求項7】
請求項6記載の養生設備を設置して建物の解体を行う建物解体工法であって、
建物の中央側部位の解体は、前記頂部養生シートにて建物上空を被覆した状態で破砕手段にて破砕して行い、
建物の外周側部位の解体は、切断手段にて切断分離するとともに前記開閉操作部にて建物上空の切断分離箇所に対応する開閉エリアを開いて、その開いた開閉エリアを通じてクレーンにて建物の切断分離部分を他の箇所に移動させて行う建物解体工法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の上部フロアから上方に突出する上方突出部分を有する状態で上部フロアに隣接して設置される足場を補強する足場補強構造、その足場補強構造を有する養生設備、及び、その養生設備を用いた建物解体工法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、建物上空に張り渡されて建物上空を閉じる頂部養生シートを建物上空に保持するシート保持部に、頂部養生シートを建物上空に張り渡すためのワイヤ等の引張材としてのシート支持材(2)と、シート支持材(2)の長さ方向の両端部を固定するシート支持材固定部とが備えられている養生設備が開示されている。この養生設備では、シート支持材固定部が、足場の上方突出部分を用いて構成されているとともに、シート保持部には、上部フロアの中央側部位に設置されてシート支持材(2)の長さ方向の中央側を支持する複数の支柱(25)が備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6564476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の技術では、シート支持材固定部が、足場の上方突出部分を用いて構成されているので、足場の上方突出部分を有効に活用してシート支持材を固定することができる。
しかしながら、シート支持材固定部は、建物上空で水平方向に延びるシート支持材の端部側を、足場の上方突出部分の上端部の内部側の方向転換部(掛止部材11)を屈曲支点にして下向きに方向転換して引き下げ、足場の上方突出部分の内部側の被連結部(固定部材10)に連結している。よって、足場の上方突出部分の上端部に対して内向きに作用するシート支持材の張力(外力の一例)によって上方突出部分を構成する一部の支柱部(建地)の外部側で緩みや浮き上がり等が生じ、そのことで、当該上方突出部分が内部側に倒れたり分解されたりすることが考えられる。この点、この特許文献1記載の技術では、シート保持部には、上部フロアの中央側部位に設置されてシート支持材(2)の長さ方向の中央側を支持する複数の支柱(25)が備えられているので、その分、シート支持材固定部に作用するシート支持材の張力を低減することができる。しかしながら、それら複数の支柱(25)が上部フロアでの作業員の解体作業等の邪魔になり、建築工事の作業性が低下するという別の問題が生じる。また、足場の上方突出部分の上端部に対して内向きに作用する外力としては、シート支持材の張力だけでなく、作業者等がクレーンをシート支持材に引っ掛けた場合のクレーンの力や風の力なども考えられることから、足場の上方突出部分において内向きに作用する外力に抵抗することが求められている。
【0005】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、上部フロアに隣接して設置される足場の上方突出部分が外力によって内部側に倒れたり分解されたりするのを効果的に防止することができる足場補強構造、その足場補強設備を有する養生設備、及び、その養生設備を用いて外部への飛散を防止しながら建物の上部フロアにおいて効率良く建築工事を行うことのできる建物解体工法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1特徴構成は、建物の上部フロアから上方に突出する上方突出部分を有する状態で上部フロアに隣接して設置される足場に、それの上方突出部分を含む部分の少なくとも外部側を含む部分を引張材にて拘束して一体化する拘束一体化部が備えられている点にある。
【0007】
本構成によれば、拘束一体化部によって足場における上方突出部分を含む部分の少なくとも外部側を含む部分を引張材にて拘束して一体化するので、その拘束力によって前述したシート支持材の張力や風圧力などの外力で足場における上方突出部分を構成する一部の支柱部(建地)の外部側の緩みや浮き上がり等を抑制することができる。よって、建物の上部フロアに隣接して設置される足場の上方突出部分が外力によって内部側に倒れたり分解されたりするのを効果的に防止することができる。
また、拘束一体化部の拘束力によって上方突出部分を含む部分の少なくとも外部側を含む部分を構成する各部材の遊びやクリアランスを無くすことができ、当該部分を所期の強度を適切に発揮させることができる。
【0008】
本発明の第2特徴構成は、前記拘束一体化部は、足場の前記上方突出部分の上端部の外部側の係合部から下向きに延在する引張材の端部側を、足場における前記上方突出部分の下端部又はそれよりも下方の部位の外部側の被連結部に連結して、足場における前記上方突出部分を含む部分の少なくとも外部側を含む部分を拘束して一体化している点にある。
【0009】
本構成によれば、拘束一体化部は、足場の上方突出部分の外部側の上端部の係合部から当該上方突出部分の外部側の下端部又はそれよりも下方の部位の被連結部に亘って引張材で拘束する形態で、足場における上方突出部分を含む部分の少なくとも外部側を含む部分を簡易に拘束して一体化することができる。
【0010】
特に、上記の引張材として、頂部養生シートを建物上空に張り渡すために足場における建物を挟んで相対向する上方突出部分どうしの間に架設されるシート支持材を用いる場合には、その建物上空で水平方向に延びるシート支持材の端部側を、足場の上方突出部分の上端部の外部側の方向転換部(係合部の一例)を屈曲支点にして下向きに方向転換して引き下げ、足場における前記上方突出部分の下端部又はそれよりも下方の部位の外部側の被連結部に連結して、足場における上方突出部分を含む部分の少なくとも外部側を含む部分を拘束して一体化することができる。
この場合、拘束一体化部は、足場の上方突出部分を含む部分の外部側及び内部側の支柱部(建地)に対してシート支持材にて上方側から圧縮力を付与する形態で、足場における上方突出部分を含む部分を拘束して一体化することができる。
よって、足場の上方突出部分における外部側と内部側を含む内外方向の全体を有効に活用してシート支持材の張力を負担することが可能となる。
【0011】
本発明の第3特徴構成は、前記拘束一体化部は、足場の前記上方突出部分の上端部の内部側の係合部から下向きに延在する引張材の端部側を、足場における前記上方突出部分の下端部又はそれよりも下方の部位の内部側の方向転換部、足場における前記上方突出部分の下端部又はそれよりも下方の部位の外部側の方向転換部を順番に経由して上向きに方向転換して上方に引き上げ、足場の上方突出部分の外部側の被連結部に連結して、足場における前記上方突出部分を含む部分の少なくとも外部側を含む部分を拘束して一体化している点にある。
【0012】
本構成によれば、拘束一体化部は、足場の上方突出部分の内部側の上端部の係合部から途中で当該上方突出部分の下端部又はそれよりも下方の部位の内部側の方向転換部、外部側の方向転換部を順番に経由する状態で、これら方向転換部よりも上方に位置する上方突出部分の外部側の被連結部に亘って引張材で拘束する形態で、足場における上方突出部分を含む部分の少なくとも外部側を含む部分を簡易に拘束して一体化することができる。
【0013】
特に、上記の引張材として、頂部養生シートを建物上空に張り渡すために外部足場における建物を挟んで相対向する上方突出部分どうしの間に架設されるシート支持材を用いる場合には、その建物上空で水平方向に延びるシート支持材の端部側を、足場の上方突出部分の内部側で簡易に引き下げることができる。そして、足場における上方突出部分の下端部又はそれよりも下方の部位で外部側且つ上方側に折り返して上方突出部分の上方側且つ外部側の被連結部に連結することで、足場の上方突出部分を構成する複数段の建枠の外部側の支柱部(建地)にシート支持材により下方側から引張力を付与して当該外部側の支柱部の緩みや浮き上がり等を防止する形態で、前記上方突出部分を含む部分の少なくとも外部側を含む部分を拘束して一体化することができる。
【0014】
本発明の第4特徴構成は、前記拘束一体化部は、足場の外部側において、前記引張材の端部側を足場の外部側の水平連結材と足場板との間の隙間を通過させて構成されている点にある。
【0015】
本構成によれば、拘束一体化部において、足場の外部側の水平連結材と足場板との間の隙間を通過させることで、足場の外部側に引張材を適切に配置することができる。
【0016】
本発明の第5特徴構成は、第1~第3特徴構成のいずれかに記載の足場補強構造を有する養生設備であって、
建物上空に張り渡されて建物上空を閉じる頂部養生シートと、
前記頂部養生シートを建物上空に保持するシート保持部とが備えられ、
前記シート保持部には、前記引張材として前記頂部養生シートを建物上空に張り渡すためのシート支持材と、前記シート支持材の長さ方向の両端部を固定するシート支持材固定部とが備えられ、
前記シート支持材固定部は、足場における前記上方突出部分を用いて構成され、
前記シート支持材固定部は、足場における前記拘束一体化部にて拘束して一体化した部分に前記シート支持材の張力を負担させている点にある。
【0017】
本構成によれば、足場における上方突出部分を用いて構成されるシート支持材固定部に亘ってシート支持材を架け渡し、そのシート支持材に支持させる形態で頂部養生シートを張り渡すことができる。
そして、拘束一体化部は、そのシート支持材を利用して足場における上方突出部分を含む部分の少なくとも外部側を含む部分を拘束して効率良く一体化することができる。シート支持材固定部は、足場における拘束一体化部にて拘束して一体化した部分に支持ワイヤの張力を負担させるので、足場における上方突出部分が内部側に転倒したり分解されたりするのをシート支持材にて防止しながら、そのシート支持材の張力を上方突出部分にて適切に負担することができる。
【0018】
更に、このように、足場にてシート支持材の張力を適切に負担することができるので、建物の上部フロアにおいて、足場における建物を挟んで相対向する上方突出部分どうしの間の建物の中央側部位に支柱や支持台等の専用の支持構造体を設置することなく、足場の上方突出部分を用いて構成されるシート支持材固定部のみに頂部養生シートを支持させる状態で、頂部養生シートを建物上空に張り渡すことも可能となり、そのようにすれば、頂部養生シートにより外部への飛散を防止しながら、専用の支持構造体等に邪魔されることなく、建物の上部フロアにて効率良く建築工事を行うができる。
【0019】
本発明の第6特徴構成は、前記シート保持部にて建物上空に保持された前記頂部養生シートを移動させることで建物上空の開閉エリアを開閉する開閉操作部とが備えられ、
前記開閉エリアが多数備えられ、前記開閉操作部は、多数の開閉エリアから選択した開閉エリアを開閉自在に構成されている点にある。
【0020】
本構成によれば、例えば、建築工事の一例である解体工事において、建物中央側部位の解体は、頂部養生シートにて建物上空を被覆した状態で破砕手段にて破砕して効率良く行い、外部への飛散の可能性がより高くなる建物外周側部位の解体については、破砕手段よりも飛散し難いワイヤーソー等の切断手段にて切断分離(所謂、ブロック解体)する。開閉操作部により建物上空の多数の開閉エリアから選択した開閉エリアを開閉できるので、建物上空の切断分離箇所に対応するエリアに近い開閉エリアを選択して開閉操作部にて開いて、その開いた開閉エリアを通じてクレーンにて切断分離部分を他の箇所(建物中央側部位や敷地内の破砕作業箇所)に移動させて行うことができ、建物外周側部位をその場で破砕機等の重機で破砕することで、その破片が建物周囲に飛散するのを適切に防止することができる。
したがって、外部への飛散を防止しながら効率良く建築工事を行うことができる。
【0021】
本発明の第7特徴構成は、第6特徴構成に記載の養生設備を設置して建物の解体を行う建物解体工法であって、
建物中央側部位の解体は、前記頂部養生シートにて建物上空を被覆した状態で破砕手段にて破砕して行い、
建物外周側部位の解体は、切断手段にて切断分離するとともに前記開閉操作部にて建物上空の切断分離箇所に対応する開閉エリアを開いて、その開いた開閉エリアを通じてクレーンにて建物外周側部位の切断分離部分を他の箇所に移動させて行う点にある。
【0022】
本構成によれば、建物中央側部位の解体は、頂部養生シートにて建物上空を被覆した状態で破砕手段にて破砕して効率良く行い、外部への飛散の可能性がより高くなる建物外周側部位の解体については、破砕手段よりも飛散し難いワイヤーソー等の切断手段にて切断分離し、建物上空の切断分離箇所に対応するエリアを開いて、その開いたエリアを通じてクレーンにて切断分離部分を他の箇所(建物中央側部位や敷地内の破砕作業箇所、或いは、敷地内の仮置箇所)に移動させて行うことができ、建物外周側部位を破砕機等の重機で破砕することで、その破片が建物周囲に飛散するのを適切に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】建物に設置した養生設備の第1実施形態を模式的に示す平面図(上面図)
図2図1のII-II線断面を模式的に示す図
図3図1のIII-III線断面を模式的に示す図
図4】開閉エリアを開いた状態を模式的に示す平面図(上面図)
図5】開閉エリアを閉じた状態を示す養生設備の要部の拡大図
図6】開閉エリアを開いた状態を示す養生設備の要部の拡大図
図7】建物解体工法を示す要部の拡大図
図8】建物解体工法を示す要部の拡大図
図9】養生設備の第2実施形態のシート支持材固定部を示す図
図10】養生設備の第3実施形態のシート支持材固定部を模式的に示す図
図11】養生設備の第4実施形態のシート支持材固定部を示す図
図12】養生設備の第5実施形態のシート支持材固定部を模式的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0024】
〔第1実施形態〕
本発明の足場設置構造を有する養生設備及び建物解体方法の実施形態を図面に基づいて説明する。
本発明の養生設備は、建物Bの解体工事や新築工事等の建築工事中に破片等や工具類等の飛散防止対象が外部に飛散するのを防止するために設置されるものであり、本実施形態では、建物Bを上方側から下方側に向かって概ねフロア毎に解体する解体工事現場に設置される場合を例に挙げて説明する。
【0025】
図1図3に示すように、この養生設備には、上端が建物Bの上部フロア(その時点の最上層の床面)に隣接して上部フロアよりも上方位置まで突出する状態で建物Bの外周を囲むように設置される外部足場(足場の一例)1と、この外部足場1の上端レベル付近で建物Bの上空に張り渡されて建物上空を閉じる頂部養生シート2とが備えられている。
また、詳細は後述するが、この養生設備には、図5図6に示すように、頂部養生シート2を建物上空に保持するシート保持部3と、当該シート保持部3にて建物上空に保持された頂部養生シート2を移動させることで建物上空の開閉エリアAを開閉する開閉操作部4が備えられている。そして、この養生設備は、上述の開閉エリアAが多数備えられ、開閉操作部4は、多数の開閉エリアAから選択した開閉エリアAを開閉自在に構成されている。
以下、各部の具体的構成について説明を加える。
【0026】
外部足場1は、本実施形態では枠組足場として構成され、図1図6に示すように、建物外周方向に所定ピッチで配置される略門の字状の建枠11を上下方向に多段連結するとともに、建物外周方向で隣接する各段の建枠11の上端部における内部側端部どうし及び外部側端部どうしを横桟や梁枠等の水平連結材16(図1参照)で連結して構成されている。そして、建物外周方向で隣接する各段の建枠11の上端部における建物内外方向の中間部位間に足場板12(図6参照)が架設されている。また、風圧力等の外力で外部足場1が倒れるのを防止するべく、上下方向の所定ピッチ(例えば建枠2段毎)で配置された壁繋ぎ13により建物Bの外周面に繋がれている。図6に示すように、この外部足場1の外周面には、横側方への飛散や音漏れを防止するための防音パネル14が備えられている。なお、建枠11は、建物内外方向に並ぶ一対の支柱部(建地)11Aと、その支柱部11Aの上端どうしを連結する横桟部(横地)11Bと、支柱部11Aと横桟部11Bとに亘る補強枠部11Cとを有して剛性の高い枠部材として構成されている。また、上下の建枠11は、上方側の建枠11の支柱部11Aの下端部を下方の建枠11の支柱部11Aの上端部の開口に差し込んで連結ピン等でロックする差し込み嵌合方式にて連結されている。
【0027】
図2図3図6に示すように、この外部足場1には、その時点の建物Bの上部フロアよりも所定の突出代(図示例では建枠約3段分)だけ上方位置に突出する上方突出部分15が備えられており、この上方突出部分15が風圧力等の外力やシート保持部3を構成する後述するシート支持材31の張力等で倒れるのを防止するべく、その上方突出部分15と建物Bの上部フロアとに亘って方杖17が設置されている。なお、シート支持材31としては、ワイヤや鋼線等の線材、ロープ、チェーンや紐等の紐材等の適宜の可撓性長尺材を用いることができる。
【0028】
また、本実施形態では、図2図3に示すように、外部足場1の上方突出部分15の建物B側の上端部から建物Bの上部フロアまでの側方範囲を被覆する側部養生シート5が備えられている。なお、側部養生シート5は、図5図13では省略している。この側部養生シート5は、その上端部が外部足場1の上方突出部分15の内部側(建物B側)の上端部に掛け止められ、上方突出部分15の内部側の上端部に吊り下げ支持されている。なお、外部への飛散を一層防止するべく、外部足場1の上方突出部分15の外部側の上方に養生シート支持枠等を立ち上げて、その立ち上げ部分にも側部養生シート5を張設するようにしてもよい。この外部足場1は、上方側から下方側へ向かう解体作業の進捗に伴い、上方突出部分15の突出代が維持される状態で上方側から下方側に向かって順次撤去される。
【0029】
頂部養生シート2は、図1図3に示すように、通風性を有するシート材やネット材等から建物上空の全域を被覆可能な大きさ(面積)に構成されている。頂部養生シート2は、図1に示すように、建物上空を複数(図示例では4つ)に区分する複数の帯状エリアDに対応した複数の帯状シート21にて構成されている。図示例では、図1中で上下方向に複数の帯状エリアDが区分されている場合を例示しているが、図1中で左右方向に複数の帯状エリアDが区分されていたり、図1中で上下方向に加えて左右方向にも複数の帯状エリアDが区分されていてもよい。また、建物Bの外周部のうちで特に飛散を防止したい辺に対して、それの直交方向に延びる複数の帯状エリアDが当該辺に沿って並ぶ状態に複数の帯状エリアDを区分すれば、その飛散を防止したい辺に隣接する隣接エリアにおいて各帯状エリアDの幅で構成される比較的小さいエリア単位で開閉エリアAを設定することができ、建物Bの外周部のうちで特に飛散を防止したい辺からの外部への飛散を良好に防止することができる。図3に示すように、複数の帯状シート21は、隣接する帯状シート21のシート幅方向Yの端部側を上下方向視において所定の重ね代L(本例では1m程度)で重ねた状態で建物上空に張り渡されている。
【0030】
図6に示すように、建物上空には、シート長さ方向Xに沿って延びるシート支持材31が張り渡されており、複数の帯状シート21のシート幅方向Y(図3参照)の両端部には、そのシート支持材31が挿通されるシート支持材挿通部22が備えられている。複数の帯状シート21の夫々は、シート支持材挿通部22に挿通されたシート支持材31にシート幅方向Yの両端部が支持される状態で建物上空に張り渡されている。シート支持材挿通部22は、各帯状シート21のシート幅方向Yの両端部の縁部において、シート長さ方向Xに沿って所定間隔(例えば、900mm)を空けて固着されたカラビナ等のリング部材22A、22Bにて構成されている。
【0031】
また、図1に矢印で示すように、複数の帯状シート21の夫々は、開閉操作部4にてシート長さ方向Xに沿って別々に移動自在に構成されており、建物上空を区分する複数の帯状エリアDの夫々においてシート長さ方向Xでの移動距離に応じた広さを有する多数の開閉エリアAを開閉自在に構成されている。そのため、例えば、図4に示すように、図4中の上から二つ目の帯状エリアDの左端の開閉エリアAを選択して開いたりするなど特定の開閉エリアAを選択して開くことができる。つまり、区分された複数の帯状エリアDのうち、どの帯状エリアDを開くのかを選択することができるだけでなく、その選択した帯状エリアDにおいて、どれだけの面積を開くのかも選択することができ、任意の開閉エリアAを開閉することができる。
【0032】
図5、及び、図6に示すように、開閉操作部4は、頂部養生シート2をシート支持材31に沿ってシート長さ方向Xに移動させることで建物上空の開閉エリアAを開閉するように構成されている。具体的には、開閉操作部4は、建物Bを挟んで相対向する外部足場1間にロープ長さ方向(シート長さ方向X)に沿って移動自在に環状に亘らされる操作用ロープ41を備えて構成され、その環状に亘らされる操作用ロープ41に帯状シート21のシート長さ方向Xの一端側(図中左端部)の固定用のリング部材22Bに結束等により固定されている。この操作用ロープ41は、帯状シート21毎に備えられている。
【0033】
そのため、建物上空を閉じた状態(図5参照)から図6に示すように外部足場1上の操作者が操作用ロープ41をロープ長さ方向(図6において左右方向)に沿って移動操作してロープ長さ方向に沿って回転させることで、操作用ロープ41に固定された帯状シート21の一端側をシート支持材31に沿ってシート長さ方向Xの他方に移動させることができ、その移動操作量に応じた帯状シート21の一端側の他方(図中右側)への移動により所望の開閉エリアAを開くことができる。
また、図示は省略するが、開閉エリアAを開いた状態から外部足場1上の操作者が操作用ロープ41をロープ長さ方向に沿って開き側とは逆方向に移動操作してロープ長さ方向に沿って開き側とは逆方向に回転させることで、操作用ロープ41に固定された帯状シート21の一端側をシート支持材31に沿ってシート長さ方向Xの一方に移動させて開閉エリアAを狭くしたり閉じたりすることができる。
なお、帯状シート21の一端側の先端には、帯状シート21の姿勢を安定させるための重量材としての樹脂パイプ23が備えられている。当該樹脂パイプ23は、帯状シート21の先端が巻き付けられる状態で備えられている。
【0034】
ちなみに、本実施形態では、操作用ロープ41は、帯状シート21のシート長さ方向Xの一端側の固定用のリング部材22Bに結束等により固定され、それ以外の多数のリング部材22Aに対しては、操作用ロープ41の姿勢を支持し得る程度の間隔を空けて所定個数置き(例えば1つ置き)に移動自在に挿通されている。
【0035】
図5及び図6に示すように、シート保持部3には、上述したシート支持材31と、そのシート支持材31の長さ方向(シート長さ方向X)の両端部を建物Bよりも外方の位置に固定するシート支持材固定部32とが備えられている。シート支持材固定部32は、外部足場1における建物Bの上部フロアから上方に突出する上方突出部分15を用いて構成されている。頂部養生シート2は、シート支持材31のみで直接支持される状態で建物上空に張り渡されており、シート支持材固定部32は、頂部養生シート2を建物上空に張り渡すためにシート支持材31に導入される張力を外部足場1のみで負担するように構成されている。
【0036】
シート支持材31の一端側(図5中の左側)を固定するシート支持材固定部32は、外部足場1おける上方突出部分15を含む部分の少なくとも外部側を含む部分を拘束して一体化する拘束一体化部Eを有し、その拘束一体化部Eにて拘束一体化した部分にシート支持材31の張力を負担させている。拘束一体化部Eは、引張材の張力にて外部足場1おける上方突出部分15を含む部分の少なくとも外部側を含む部分を拘束して一体化するように構成されており、本実施形態では、引張材としてシート支持材31を利用し、そのシート支持材31の固定の仕方によって外部足場1おける上方突出部分15を含む部分の少なくとも外部側を含む部分を拘束して一体化させている。ちなみに、引張材としては、シート支持材31の他、棒材や鉄筋などの張力を負担可能な各種の部材を用いることができる。
【0037】
具体的には、拘束一体化部Eは、建物上空で水平方向に延びるシート支持材31の端部側を、外部足場1の上方突出部分15の上端部の外部側の方向転換部32A(係合部の一例)を屈曲支点にして下向きに方向転換し、防音パネル14側の水平連結材16(図1参照)と足場板12との間の隙間を通して下方に引き下げ、レバーブロック(登録商標)32B(緊張手段の一例)を介して外部足場1における上方突出部分15の下端部よりも一段下方の建枠11(上方突出部分15の下端部よりも下方の部位の一例)の外部側の被連結部32Cに連結して、外部足場1における上方突出部分15を含む部分の少なくとも外部側を含む部分を拘束一体化している。なお、シート支持材31の他方側を固定するシート支持材固定部32については、レバーブロック32Bを省略することもできる。
【0038】
シート支持材31の屈曲支点となる方向転換部32Aは、例えば、シート支持材31を引っ掛け可能なフック、シート支持材31を挿通可能なリング、或いは、滑車などを有するクランプ式の受け部材を使用し、このような受け部材を外部足場1の上方突出部分15の上端部の建枠11に固定して構成することができる。また、方向転換部32Aは、当該建枠11の横桟部(横地)11Bとすることもできる。
【0039】
外部足場1における上方突出部分15の下端部よりも一段下方の建枠11の被連結部32Cは、例えば、レバーブロック32Bの引っ掛け部を引っ掛け可能なフックやリングなどを有するクランプ式の被連結部材を使用し、このような被連結部材を建物Bの上部フロアと略同じレベルで壁繋ぎ13にて建物Bに繋がれた建枠11に固定して構成することができる。また、被連結部32Cは、当該建枠11の横桟部(横地)11Bとすることもできる。
【0040】
このようにすることで、拘束一体化部Eは、外部足場1の上方突出部分15を含む部分の外部側及び内部側の支柱部(建地)11Aに対してシート支持材31にて上方側から圧縮力を付与する形態で、外部足場1における上方突出部分15を含む部分を拘束一体化することができる。よって、外部足場1の上方突出部分15における外部側と内部側を含む内外方向の全体を有効に活用してシート支持材31の張力を負担することができ、シート支持材31の張力によって外部足場1の上方突出部分15の外部側の一部の支柱部(建地)11Aに緩みや浮き上がり等が生じて当該上方突出部分15が内部側に転倒したり分解されたりするのを好適に防止することができる。
【0041】
次に、図7図8を参照して上述の如く構成された養生設備を用いて既存の建物Bを解体する建物解体工法について説明する。この建物解体工法は、前述したように建物Bを上方側から下方側に向かって概ねフロア毎に解体するものである。なお、図7図8では、シート保持部3や開閉操作部4は省略している。
【0042】
図7に示すように、建物解体工法の第1工程では、養生設備の頂部養生シート2にて建物上空の全体を被覆した状態で、図中点線で示すように既存の建物Bにおけるその時点の最上層(最上階)の建物中央側部位B1を移動式の破砕機6(破砕手段の一例)にて破砕して解体する。また、既存の建物Bにおけるその時点の最上層の建物外周側部位B2を、脱落しないように支保工7等で支持しながらワイヤーソー等の切断手段(図示省略)にて切断分離する。なお、この第1工程において、建物中央側部位B1の破砕と建物外周側部位B2の切断分離は、別々又は同時のタイミングで行うことができる。
【0043】
図8に示すように、第1工程に引き続き実行される建物解体工法の第2工程では、外部足場1上の作業者が養生設備の開閉操作部4(図6参照)を操作し、開閉操作部4にて建物上空の切断分離箇所に対応する建物Bの外周側に隣接する一部の開閉エリアAを一時的に開く。そして、その開いた開閉エリアAを通じて、クレーンCのブームから吊り下げられた連結フックC1を降下させて建物外周側部位B2の切断分離部分bを連結し、その切断分離部分bを頂部養生シート2よりも上方に揚重し、その後、水平方向にも移動させて、建物外周側部位B2以外の破砕可能なエリア(例えば建物中央側部位B1や敷地内の破砕エリア等)に移動させ、破砕機6などで破砕する。建物外周側部位B2の切断分離部分bを建物中央側部位B1に移動させる場合には、開閉操作部4にて建物上空の移動目標箇所に対応する一部の開閉エリアAを一時的に開き、その開いた開閉エリアAを通じて切断分離部分bを建物中央側部位B1の移動目標箇所に受け入れる。
【0044】
なお、この第2工程では、建物外周側部位B2の切断分離部分bを移動させる際に建物上空の切断分離箇所に対応する一部の開閉エリアAを一時的に開くようにしており、その一部の開閉エリアAを閉じている間は、一層下の建物中央側部位B1(図中の点線部)を移動式の破砕機6(破砕手段の一例)にて破砕して解体することができる。また、建物外周側部位B2の切断分離部分bの大きさが小さく、破砕までは必要としない場合には、破砕することなく、そのまま撤去することができる。
【0045】
このように、この建物解体工法では、建物中央側部位B1の解体は、頂部養生シート2にて建物上空を全て被覆した状態で破砕機6にて破砕して行い、建物外周側部位B2の解体は、切断手段にて切断分離するとともに開閉操作部4にて建物上空の切断分離箇所に対応する開閉エリアAを開いて、その開いた開閉エリアAを通じてクレーンCにて建物外周側部位B2の切断分離部分bを他の箇所に移動させて行うようにしている。
そのため、建物中央側部位B1の解体は、頂部養生シート2にて建物上空を被覆した状態で破砕機6にて破砕して効率良く行い、外部への飛散の可能性がより高くなる建物外周側部位B2の解体については、破砕機6よりも飛散し難いワイヤーソー等の切断手段にて切断分離し、建物上空の切断分離箇所に対応する開閉エリアAを開いて、その開いた開閉エリアAを通じてクレーンCにて切断分離部分bを他の箇所に移動させて行うことができ、建物外周側部位B2をその場で破砕機6で破砕することで、その破片等が外部に飛散するのを適切に防止することができる。
【0046】
〔第2実施形態〕
この第2実施形態は、第1実施形態におけるシート支持材固定部32の変形例であり、以下、図9に基づいてシート支持材固定部32の変形箇所を中心に説明する。なお、図9は、シート支持材固定部32を模式的に示したもので、頂部養生シート2や開閉操作部4、外部足場1の部品構成、レバーブロック32Bなどは省略している。
【0047】
図9に示すように、外部足場1の上方突出部分15の上端部には、上方突出部分15の上方を覆う鋼製の雨養生庇18が取り付けられている。そして、拘束一体化部Eは、建物上空で水平方向に延びるシート支持材31の端部側を、外部足場1における上方突出部分15の上端部の雨養生庇18の外部側の頂部に設けられた方向転換部32Aを屈曲支点にして下向きに方向転換するようにしている。そのため、雨養生庇18を有効に活用して外部足場1における少なくとも上方突出部分15を含む部分を効率的に拘束一体化することができる。
なお、その他の構成については、第1実施形態と同様であるので、同符号を示す等により、その説明は省略する。
【0048】
〔第3実施形態〕
この第3実施形態は、第1実施形態におけるシート支持材固定部32の別実施形態であり、以下、図10に基づいて第3実施形態におけるシート支持材固定部32を中心に説明する。
【0049】
図10に示すように、シート支持材固定部32は、外部足場1における少なくとも上方突出部分15を含む部分を拘束一体化する拘束一体化部Eを有してシート支持材31の張力を拘束一体化部Eに負担させている。拘束一体化部Eは、シート支持材31を利用してシート支持材31の固定の仕方によって外部足場1おける少なくとも上方突出部分15を含む部分を拘束一体化させている。
【0050】
具体的には、拘束一体化部Eは、建物上空で水平方向に延びるシート支持材31の端部側を、外部足場1の上方突出部分15の上端部の内部側の方向転換部32A(係合部の一例)を屈曲支点にして下向きに方向転換して引き下げ、更に、外部足場1における上方突出部分15の下端部よりも一段下方の建枠11(上方突出部分15の下端部よりも下方の部位の一例)の内部側の方向転換部32A、当該建枠11の外部側の方向転換部32Aを順番に経由して上向きに方向転換する。
そして、防音パネル14側の水平連結材16(図1参照)と足場板12との間の隙間を通して上方に引き上げ、外部足場1の上方突出部分15の最上段の建枠11の外部側の被連結部32Cに連結して、外部足場1における少なくとも上方突出部分15を含む部分を拘束一体化している。
【0051】
このように、拘束一体化部Eは、建物上空で水平方向に延びるシート支持材31の端部側を、外部足場1の上方突出部分15の内部側で簡易に引き下げることができる。そして、上方突出部分15の下端部よりも一段下方の建枠11にて外部側且つ上方側に折り返して上方突出部分15の最上段の建枠11の外部側の被連結部32Cに連結することで、その上方突出部分15を構成する複数段の建枠11の外部側の支柱部(建地)11Aにシート支持材31により下方側から引張力を付与して当該外部側の支柱部11Aの緩みや浮き上がり等を防止する形態で、外部足場1における上方突出部分15を含む部分の少なくとも外部側を含む部分を拘束して一体化することができる。よって、シート支持材31の張力によって外部足場1の上方突出部分15の外部側の一部の支柱部(建地)11Aに緩みや浮き上がり等が生じて当該上方突出部分15が内部側に転倒したり分解されたりするのを好適に防止することができる。
なお、その他の構成については、第1実施形態と同様であるので、同符号を示す等により、その説明は省略する。
【0052】
〔第4実施形態〕
この第4実施形態は、第3実施形態におけるシート支持材固定部32の変形例であり、以下、図11に基づいてシート支持材固定部32の変形箇所を中心に説明する。なお、図11は、シート支持材固定部32を模式的に示したもので、頂部養生シート2や開閉操作部4、外部足場1の部品構成、レバーブロック32Bなどは省略している。
【0053】
この図11は、建物外周側部位B2が、建物中央側部位B1に比べて建枠11の2段分だけ上方側で撤去されずに残されている施工時点を示しており、この時点では、シート支持材31は、上部フロアにおける建物中央側部位B1の上面から建枠11の5段分だけ上方に配置されている。
【0054】
そして、この第4実施形態では、拘束一体化部Eは、建物上空で水平方向に延びるシート支持材31の端部側を、外部足場1の上方突出部分15の上端部の内部側の方向転換部32A(係合部の一例)を屈曲支点にして下向きに方向転換して引き下げ、更に、外部足場1における上方突出部分15の下端部よりも4段下方の建枠11(建物中央側部位B1よりも低い位置の建枠11で、壁繋ぎ13で繋がれた建枠11の一段下方の建枠11)の内部側の方向転換部32A、当該建枠11の外部側の方向転換部32Aを順番に経由して上向きに方向転換して上方に引き上げ、外部足場1の上方突出部分15の最上段の建枠11の外部側の被連結部32Cに連結している。なお、図示は省略するが、図11と同様、外部足場1の外部側では、防音パネル14側の水平連結材16(図1参照)と足場板12との間の隙間を通して上方に引き上げている。
【0055】
このようにすることで、拘束一体化部Eは、外部足場1における少なくとも上方突出部分15を含む部分として、建枠11の3段分の上方突出部分15と当該上方突出部分15よりも下方の建枠4段分を拘束一体化している。
ちなみに、このように拘束一体化部Eに拘束される部分の高さが大きくなる場合には、必要に応じて、例えば、最上段の建枠11の外部側の防音パネル14を取り外す等により風圧力による影響を低減するようにしてもよい。
なお、その他の構成については、第3実施形態と同様であるので、同符号を示す等により、その説明は省略する。
【0056】
〔第5実施形態〕
この第5実施形態は、第4実施形態におけるシート支持材固定部32の変形例であり、以下、図12に基づいてシート支持材固定部32の変形箇所を中心に説明する。なお、図12は、シート支持材固定部32を模式的に示したもので、頂部養生シート2や開閉操作部4、外部足場1の部品構成、レバーブロック32Bなどは省略している。
【0057】
この図12は、図11に示す施工時点から建物外周側部位B2において建物中央側部位B1に比べて建枠11の2層分だけ上方側に突出している部分が撤去された時点を示している。この時点では、建物中央側部位B1と建物外周側部位B2とが同じ高さとなっており、シート支持材31は、上部フロアにおける建物外周側部位B2及び建物中央側部位B1の上面から建枠11の5層分だけ上方に配置されている。
【0058】
図12に示すように、この第5実施形態では、シート支持材固定部32は、シート支持材31を利用した拘束一体化部Eに加えて、外部足場1における拘束一体化部Eにて拘束一体化した部分の内部側の略全長に亘って上下方向に長い補強枠体19を添木状に架設して構成されている。補強枠体19は、詳細な図示は省略するが、例えば、単管や梁枠、伸縮ブラケット、方杖等を例えばラチス状又はトラス状に組み付けて構成されて内部側の各建枠11に連結されている。
なお、その他の構成については、第4実施形態と同様であるので、同符号を示す等により、その説明は省略する。
【0059】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。なお、以下に説明する各実施形態の構成は、夫々単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0060】
(1)前述の第2、第3実施形態では、拘束一体化部Eは、下方に引き下げたシート支持材31の端部側を、外部足場1における上方突出部分15の下端部よりも下方の部位の被連結部32Cに連結する場合を例に示したが、外部足場1における上方突出部分15の下端部の被連結部32Cに連結するようにしてもよい。
【0061】
(2)前述の第4、第5実施形態では、拘束一体化部Eは、下方に引き下げたシート支持材31の端部側を、外部足場1における上方突出部分15の下端部よりも下方の部位の内部側の方向転換部32A及び外部側の方向転換部32Aを順番に経由して上向きに方向転換する場合を例に示したが、外部足場1における上方突出部分15の下端部の内部側の方向転換部32A及び外部側の方向転換部32Aを順番に経由して上向きに方向転換するようにしてもよい。
【0062】
(3)前述の各実施形態では、拘束一体化部Eが、頂部養生シート2を建物上空に張り渡すためのシート支持材31を用いて、外部足場1における上方突出部分15を含む部分の少なくとも外部側を含む部分をシート支持材31にて拘束して一体化する場合を例に示した。
これに代えて、建物上空に頂部養生シート2を張り渡さない場合などには、シート支持材31とは別の拘束専用の引張材を用いて、その拘束専用の引張材にて外部足場1における上方突出部分15を含む部分の少なくとも外部側を含む部分を拘束して一体化するようにしてもよい。
【0063】
例えば、第1、第2実施形態(図5及び6、図9参照)では、拘束一体化部Eは、外部足場1の上方突出部分15の上端部(図5及び6参照)やその上端部の雨養生庇18(図9参照)の外部側の方向転換部32Aにてシート支持材31の方向を転換しているが、例えば可撓性長尺材等からなる拘束専用の引張材の一端部をこの方向転換部32Aに連結し、拘束専用の引張材の他端部を上方突出部分15の下端部又はそれよりも下方の部位の外部側の被連結部32Cに連結して、外部足場1の上方突出部分15の外部側において方向転換部32Aと被連結部32Cとに亘って拘束専用の引張材を配設することで、拘束一体化部Eを構成することができる。
【0064】
また、例えば、第3実施形態(図10参照)や第4、第5実施形態(図11図12参照)では、拘束一体化部Eは、外部足場1の上方突出部分15の上端部の内部側の方向転換部32Aにてシート支持材31の方向を転換しているが、例えば可撓性長尺材等からなる拘束専用の引張材の一端部をこの方向転換部32Aに連結し、上方突出部分15の下端部又はそれよりも下方の部位の内部側の方向転換部32A、上方突出部分15の下端部又はそれよりも下方の部位の外部側の方向転換部32Aを経由して折り返す状態で、拘束専用の引張材の他端部を外部足場1の上方突出部分15の上端部の内部側の被連結部32Cに連結して、拘束専用の引張材を、複数の方向転換部32Aと被連結部32Cとに亘って配設することで、拘束一体化部Eを構成することができる。
【0065】
(4)前述の実施形態では、開閉操作部4が、操作用ロープ41を操作者が手作業で操作する手動式のものを例に示したが、電動ウインチ等を設けて操作用ロープ41を電動で操作する電動式としてもよい。
【0066】
(5)前述の実施形態では、図6に示すように、開閉操作部4が、帯状シート21におけるシート長さ方向Xの一端側(図中左端側)をシート長さ方向Xに移動させるように構成されている場合を例に示したが、帯状シート21におけるシート長さ方向Xの他端側(図中右端側)をシート支持材31に沿ってシート長さ方向Xに移動させるように構成されていたり、帯状シート21のシート長さ方向Xの一端側と他端側の両方をシート支持材31に沿ってシート長さ方向Xに移動させるように構成されていてもよい。
【0067】
(6)前述の実施形態では、本発明の養生設備を解体工事に使用する場合を例に示したが、本発明の養生設備は、建物Bの解体工事だけでなく、建物Bの新築工事にも好適に使用することができる。この場合、建物Bの上部フロアでの新築作業は、頂部養生シート2にて建物上空を被覆して外部への飛散を防止した状態で行い、建築資材等を建物Bの上部フロアの新築作業中の特定の搬入目標箇所に搬入する場合に、その新築作業を中断して建物上空の搬入目標箇所の直上部位を開き、クレーンCにて建築資材等を搬入目標箇所に搬入することができ、外部への飛散を防止しながら、効率良く新築工事を行うことができる。
【0068】
(7)前述の実施形態では、本発明の足場補強構造を採用した足場として、建物の外部に設置される外部足場1を例に示したが、本発明の足場補強構造は、建物の吹き抜け等の内部に設置される内部足場にも好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 外部足場(足場)
2 頂部養生シート
3 シート保持部
4 開閉操作部
12 足場板
15 上方突出部分
16 水平連結材
31 シート支持材(引張材)
32 シート支持材固定部
32A 方向転換部(係合部)
32C 被連結部
A 開閉エリア
B 建物
B1 建物中央側部位
B2 建物外周側部位
C クレーン
E 拘束一体化部
b 切断分離部分

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12