(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054540
(43)【公開日】2024-04-17
(54)【発明の名称】プリプレグ製造装置
(51)【国際特許分類】
B29B 15/10 20060101AFI20240410BHJP
B29C 70/20 20060101ALI20240410BHJP
B29C 70/50 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
B29B15/10
B29C70/20
B29C70/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160820
(22)【出願日】2022-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】岩本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】服部 公治
(72)【発明者】
【氏名】田部 陽大
(72)【発明者】
【氏名】田代 晃
(72)【発明者】
【氏名】前田 俊樹
【テーマコード(参考)】
4F072
4F205
【Fターム(参考)】
4F072AA08
4F072AB22
4F072AG03
4F072AH12
4F072AH16
4F205AC04
4F205AD16
4F205AG01
4F205AJ08
4F205AR12
4F205HA06
4F205HA37
4F205HB02
4F205HC02
4F205HK04
4F205HK25
(57)【要約】
【課題】安定した幅(目標幅又は概ね目標幅)のプリプレグを製造することができるプリプレグ製造装置を提供する。
【解決手段】樹脂粉体が付着した搬送中のシート状繊維基材の前記樹脂粉体を加熱し溶着させてプリプレグを製造するプリプレグ製造装置であって、搬送中の前記シート状繊維基材の幅を検出する幅検出センサ100と、前記幅検出センサにより検出された搬送中の前記シート状繊維基材の幅が予め定められた目標幅となるように搬送中の前記シート状繊維基材の幅を制御する幅制御手段90と、を備える。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂が付着した搬送中のシート状繊維基材の前記樹脂を加熱し溶着させてプリプレグを製造するプリプレグ製造装置であって、
搬送中の前記シート状繊維基材の幅を検出する幅検出センサと、
前記幅検出センサにより検出された搬送中の前記シート状繊維基材の幅が予め定められた目標幅となるように搬送中の前記シート状繊維基材の幅を制御する幅制御手段と、を備えるプリプレグ製造装置。
【請求項2】
前記樹脂は、樹脂粉体である請求項1に記載のプリプレグ製造装置。
【請求項3】
前記幅制御手段は、搬送中の前記シート状繊維基材が所定抱き角の範囲で接するエキスパンダーロール及び前記幅検出センサにより検出された搬送中の前記シート状繊維基材の幅が予め定められた目標幅となるように前記エキスパンダーロールのベンド量を制御する制御装置である請求項1に記載のプリプレグ製造装置。
【請求項4】
前記幅制御手段は、搬送中の前記シート状繊維基材が所定抱き角の範囲で接するスパイラルロール及び前記幅検出センサにより検出された搬送中の前記シート状繊維基材の幅が予め定められた目標幅となるように搬送中の前記シート状繊維基材のテンションを制御する制御装置である請求項1に記載のプリプレグ製造装置。
【請求項5】
前記幅制御手段は、搬送中の前記シート状繊維基材が所定抱き角の範囲で接するクラウンロール及び前記幅検出センサにより検出された搬送中の前記シート状繊維基材の幅が予め定められた目標幅となるように搬送中の前記シート状繊維基材のテンションを制御する制御装置である請求項1に記載のプリプレグ製造装置。
【請求項6】
前記幅制御手段は、搬送中の前記シート状繊維基材が所定抱き角の範囲で接する逆クラウンロール及び前記幅検出センサにより検出された搬送中の前記シート状繊維基材の幅が予め定められた目標幅となるように搬送中の前記シート状繊維基材のテンションを制御する制御装置である請求項1に記載のプリプレグ製造装置。
【請求項7】
前記幅制御手段は、搬送中の前記シート状繊維基材の幅方向の一端をニップする第1クロスガイダ、他端をニップする第2クロスガイダ、及び、前記幅検出センサにより検出された搬送中の前記シート状繊維基材の幅が予め定められた目標幅となるように前記第1クロスガイダ及び前記第2クロスガイダのニップ状態を制御する制御装置である請求項1に記載のプリプレグ製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、安定した幅(目標幅又は概ね目標幅)のプリプレグを製造することができるプリプレグ製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
荷電された樹脂粉体を、高電圧が印加される電極(高電圧板)と搬送されるシート状繊維基材との間に形成された電界によるクーロン力及びエアーノズルから噴射されるエアの搬送力により、シート状繊維基材に付着させるように構成されたプリプレグ製造装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このように樹脂粉体が付着したシート状繊維基材は、樹脂溶着ヒータを通過する際、当該樹脂溶着ヒータで加熱される。これにより、シート状繊維基材に付着した樹脂粉体がシート状繊維基材に溶着し、プリプレグが製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のように樹脂溶着ヒータで加熱されシート状繊維基材に溶着した樹脂粉体は、樹脂溶着ヒータを通過後に冷却され固化する際に収縮する。そのため、シート状繊維基材(例えば、UD基材)の幅が樹脂溶着ヒータを通過後に収縮してしまう。また、シート状繊維基材(例えば、UD基材)には品質のばらつきがある。その結果、安定した幅(目標幅又は概ね目標幅)のプリプレグを製造することが難しいという課題がある。
【0005】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施の形態に係るプリプレグ製造装置は、樹脂粉体が付着した搬送中のシート状繊維基材の前記樹脂粉体を加熱し溶着させてプリプレグを製造するプリプレグ製造装置であって、搬送中の前記シート状繊維基材の幅を検出する幅検出センサと、前記幅検出センサにより検出された搬送中の前記シート状繊維基材の幅が予め定められた目標幅となるように搬送中の前記シート状繊維基材の幅を制御する幅制御手段と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
前記一実施の形態によれば、安定した幅(目標幅又は概ね目標幅)のプリプレグを製造することができるプリプレグ製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の実施形態に係るプリプレグ製造装置の構成概要を示す平面図である。
【
図2】本開示の実施形態に係るプリプレグ製造装置の構成概要を示す側面図である。
【
図4】参考例のプリプレグ製造装置を用いてプリプレグを製造する製造方法を説明するための図である。
【
図5】エキスパンダーロール90を用いたプリプレグ製造装置の概略構成図である。
【
図6】(a)エキスパンダーロール90、基材幅センサ100の具体的な配置例(
図5中の符号B1が示す矩形内の拡大図詳細図)、(b)エキスパンダーロール90、基材幅センサ100の具体的な配置例(変形例)である。
【
図7】
図6中の矢印AR7方向から見た矢視図(概略図)である。
【
図9】エキスパンダーロール90を用いたプリプレグ製造装置の動作例(プリプレグ幅制御処理1)のフローチャートである。
【
図10】
図7中のエキスパンダーロール90をスパイラルロール90Aに置き換えた図である。
【
図11】制御装置110A等のシステム構成図である。
【
図12】スパイラルロール90Aを用いたプリプレグ製造装置の動作例(プリプレグ幅制御処理2)のフローチャートである。
【
図13】
図10中のスパイラルロール90Aをクラウンロール90Bに置き換えた図である。
【
図14】
図7中のエキスパンダーロール90をクロスガイダ90Cに置き換えた図である。
【
図15】制御装置110C等のシステム構成図である。
【
図16】クロスガイダ90Cを用いたプリプレグ製造装置の動作例(プリプレグ幅制御処理3)のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<参考例>
図1乃至
図3を参照して参考例のプリプレグ製造装置について説明する。
【0010】
参考例のプリプレグ製造装置は、樹脂粉体30を炭素繊維織物やUDテープなどのシート状繊維基材50に付着させてプリプレグを製造する装置であって、
図1及び
図2に示すように、シート状繊維基材50を間にして左右に設けられた2つのチャンバー31,32と、チャンバー31,32内にそれぞれ設けられた供給管37,38と、供給管37,38の端部にそれぞれ接続されたフラット型エアーノズル41,42と、供給管37,38にそれぞれ設けられた粉末樹脂帯電部43,44を主に備えている。
【0011】
チャンバー31,32は、矩形状の外殻31a,32aと、外殻31a,32aの内部に設けられた略矩形状で四角が丸みを帯びた内殻31b,32bを有している。
【0012】
外殻31a,32aのシート状繊維基材50側、すなわち、左側チャンバー31の右端(前面)及び右側チャンバー32の左端(前面)の位置は開放されていて、その間に樹脂粉体30が付着されるシート状繊維基材50が設置されている。また、外殻31a,32aのシート状繊維基材50側とは逆側、すなわち、左側チャンバー31の左端(後面)及び右側チャンバー32の右端(後面)の位置には排出口35,36が形成されている。排出口35,36には、排出口35,36から排出された樹脂粉体30を集める集塵機53,54が取付けられている。
【0013】
また、内殻31b,32bのシート状繊維基材50に相対向する前面位置、すなわち、左側チャンバー31の内殻31bの右端(前面)及び右側チャンバー32の内殻32bの左端(前面)の位置には開口部33,34が形成されている。開口部33,34の周囲には、全体を取り囲むように高電圧板51,52が設置されている。
【0014】
また、チャンバー31,32の内殻31b,32bは、外殻31a,32aに交わることなく仕切られた状態で設けられていて、外殻31a,32aと内殻31b,32bの間には、上下左右に開口部33,34から空気とともに吐出され付着しなかった樹脂粉体30が排出口35,36からチャンバー31,32の外側に排出されるような流路(隙間)45,46が形成されている。
【0015】
供給管37,38は、2つのチャンバー31,32の内殻31b,32b内の略中央の高さの位置にそれぞれ設けられ、その一端が開口部33,34まで略水平に延びている。また、供給管37,38の他端には、フラット型エアーノズル41,42が接続されている。
【0016】
フラット型エアーノズル41,42は、その本体部41a,42aが2つのチャンバー31,32の幅方向(
図2においては紙面の表裏方向)に延び、本体部41a,42aのシート状繊維基材50側端部に、本体部41a,42aと同様にチャンバー31,32の幅方向に延びる長穴状の噴射スリット(図示しない)が形成され、噴射スリットからはカーテン状にエアーが噴射されるようになっている。
【0017】
フラット型エアーノズル41,42の本体部41a,42aの基端には、一端に樹脂粉体30が投入される投入口47a,48aが設けられた投入管47,48の他端が接続されている。投入管47,48の他端はチャンバー31,32の内殻31b,32b内に入り込んでいるが、投入管47,48の一端は、チャンバー31,32の外部に位置し、その一端に設けられた投入口47a,48aから定量フィーダーなどによって定量の樹脂粉体30が連続的に投入される。
【0018】
また、投口管47,48の略中央には、空気増幅装置Tを介してコンプレッサ39,40が接続されている。これにより、コンプレッサ39,40から送られた圧縮空気は、空気増幅装置Tで流速がさらに高められるとともに、投入口47a,48aから定量フィーダーなどによって供給される樹脂粉体30に混合され、高圧の固気二相流としてフラット型エアーノズル41,42に押し込まれるようになっている。
【0019】
粉末樹脂帯電部43,44は、供給管37,38の略中央に設けられ、樹脂粉体30を空気とともにマイナス(逆にプラスでもよい)に帯電させるもので、高い電荷量が樹脂粉体30に与えられる。
【0020】
なお、樹脂粉体30としては、一般的に熱硬化性樹脂が使用されるが熱可塑性樹脂や天然樹脂などであってもよい。また、シート状繊維基材50は炭素繊維系以外の金属繊維や鉱物繊維やガラス繊維や合成繊維からなるものであってもよい。
【0021】
また、シート状繊維基材50はグランド接続されていて、チャンバー31,32の内殻31b,32bに形成された開口部33,34の周囲に設置された高電圧板51,52との間に高圧の電界がかけられている。
【0022】
このように構成されたプリプレグ製造装置を使用してプリプレグを製造する方法について説明する。
【0023】
投入管47,48の投入口47a,48aから定量フィーダーなどによって定量の樹脂粉体30が連続的に投入されると、樹脂粉体30は、コンプレッサ39,40から送られた圧縮空気が空気増幅装置Tによってその流速がさらに高められた高圧の空気と投入管47,48の内部で混合された後、フラット型エアーノズル41,42に押し込まれる。
【0024】
これにより、フラット型エアーノズル41,42の噴射スリットから供給管37,38内に風速が均一化され、樹脂粉体30と空気が混合された固定二相流がエアーカーテン状に送られるとともに、供給管37,38に設けられた粉末樹脂帯電部43,44によって樹脂粉体30と空気がともにマイナスに帯電させられる。
【0025】
そして、帯電された樹脂粉体30と空気が混合された固定二相流は、チャンバー31,32の開口部33,34から吐出させられ、シート状繊維基材50に吹き付けられる。このとき、開口部33,34の周囲に設置された高電圧板51,52によって、開口部33,34とグランド接続されたシート状繊維基材50の間には、高圧の電界がかけられているとともに、開口部33,34側に負の高電圧がかけられるようにすると、マイナスに帯電された樹脂粉体30は勢いよく開口部33,34からシート状繊維基材50に向かって吐出してそのままシート状繊維基材50に強固な接着力で付着され、プリプレグが製造される。
【0026】
なお、樹脂粉体30が粉末樹脂帯電部43,44によってプラスに帯電される場合には、高電圧板51,52によって開口部33,34側には正の高電圧がかけられる。
【0027】
なお、本明細書においては、プリプレグは、セミプレグを含む。
【0028】
なお、シート状繊維基材50に付着されなかった樹脂粉体30は、2つのチャンバー31,32の外殻31a,32aと内殻31b,32bの間に形成された流路45,46を介して外殻31a,32aの後面側に流され、排出口35,36から2つのチャンバー31,32の外側に排出される。
【0029】
排出された樹脂粉体30は、排出口35,36に接続された集塵機53,54によって、集められ再利用できるようにしている。本実施形態では、
図1に示したように、集塵機53,54で集められた樹脂粉体30を再度、定量フィーダーなどを介して投入管47,48の投入口47a,48aに投入し、コンプレッサ39,40を介して空気とともにフラット型エアーノズル41,42に押し込むようにしている。
【0030】
これによれば、シート状繊維基材50を間にして左右に外殻31a,32aと内殻31b,32bで構成されたチャンバー31,32を設け、チャンバー31,32の内殻31b,32bにはそれぞれフラット型エアーノズル41,42が設けられた構成であるので、装置全体が小型化され省スペース化が図られるとともにシート状繊維基材50の両面に対して樹脂粉体30が同時に付着させられる。
【0031】
しかも、フラット型エアーノズル41,42を採用したことで、樹脂粉体30が空気と混合されて供給管37,38の後側から高圧でかつ均一の流速で押し込まれるので、供給管37,38内で帯電させられた樹脂粉体30と空気からなる固気二相流の流速は速く、しかも均一化されるために、通常使用されていた整流装置やブロワーは不要となり、これ
によっても装置全体の小型化が図れる。
【0032】
なお、本参考例では、2つのチャンバー31,32間にシート状繊維基材50を固定して両面に樹脂粉体30を同時に付着させるようにしたが、シート状繊維基材50自体を上方向又は下方向に連続的に搬送可能な搬送装置をさらに備えるようにすることで、シート状繊維基材50の両面に対して樹脂粉体30を広範囲にわたってしかも単時間に連続して付着させることができる。
【0033】
また、本参考例では、チャンバー31,32の開口部33,34の周囲に高電圧板51,52を設置してシート状繊維基材50に対して樹脂粉体30がより強固に付着するようにしたが、高電圧板51,52,粉末樹脂帯電部43,44を省いてもシート状繊維基材50に対して樹脂粉体30を付着させることはできる。
【0034】
次に、上記参考例のプリプレグ製造装置を用いてプリプレグを製造する製造方法について説明する。
【0035】
図4は、参考例のプリプレグ製造装置を用いてプリプレグを製造する製造方法を説明するための図である。
【0036】
以下、シート状繊維基材50としてUD基材を用いる。UD基材とは、横糸に相当する繊維が無く、縦糸に相当する繊維により構成されるシート状繊維基材をいう。以下、UD基材m1と記載する。なお、説明を簡略化するため、
図4には、開口部33(供給管37)のみを記載し、開口部34(供給管38)を省略した。以下の説明も、開口部33(供給管37)の動作説明を中心に行い、開口部34(供給管38)の動作説明については省略する。
【0037】
図4に示すように、UD基材m1は、当該UD基材m1をロール状に巻き取ったロール体M1から連続的に引き出され、従動ローラR1、R2に掛け渡され、巻取軸Aに連結されている。UD基材m1は、巻取軸Aがモータ(図示せず)により回転されることにより搬送(
図4中矢印AR1~AR3が示す方向に搬送)され、従動ローラR1、R2間に配置された開口部33(供給管37)、樹脂溶着ヒータ60をこの順に通過する。
【0038】
高電圧板51(電極板)には、高電圧電源70が電気的に接続されており、高電圧V(例えば、数十KV)が印加されている。そのため、高電圧板51からグランドに接地されたUD基材m1に向かってコロナ放電が発生する。そのため、開口部33からエア(空気)と共に噴射される樹脂粉体は、高電圧板51を通過する際、コロナ放電により発生するイオンにより荷電される。この荷電された樹脂粉体は、高電圧板51とUD基材m1との間に形成された電界によるクーロン力及び開口部33から噴射されるエアの搬送力により、開口部33を通過するUD基材m1(表面又は裏面)に付着する(静電粉体塗装の原理)。なお、
図3に示すように、開口部33は、スリット状の開口部(本開示の樹脂粉体吐出口の一例)で、UD基材m1の幅方向(
図3中左右方向)に延びている。この開口部33の長さL1(
図3参照)はUD基材m1の幅に対応しており例えば400mmである。一方、この開口部33の幅W(スリット幅。
図3参照)は例えば20mmである。なお、この開口部33からUD基材m1に向けて噴射されるエア及び樹脂粉体は、供給管37(
図1、
図2参照)により、当該開口部33まで供給され当該開口部33から噴射される。
【0039】
上記のように樹脂粉体が付着したUD基材m1は、樹脂溶着ヒータ60を通過する際、当該樹脂溶着ヒータ60で加熱される。これにより、UD基材m1に付着した樹脂粉体がUD基材m1に溶着し、プリプレグm2(
図4参照)が製造される。この製造されたプリプレグm2は、従動ローラR2を介して、モータ(図示せず)により回転される巻取軸Aに巻き取られる。
【0040】
<実施形態>
まず、上記参考例のプリプレグ製造装置を用いてプリプレグを製造する製造方法において本発明者らが見出した課題について説明する。
【0041】
上記のように樹脂溶着ヒータ60で加熱されUD基材m1に溶着した樹脂粉体は、樹脂溶着ヒータ60を通過後に冷却され固化する際に収縮する。そのため、UD基材m1の幅が樹脂溶着ヒータ60を通過後に収縮してしまい(例えば、樹脂溶着ヒータ60通過前300mmであった幅が樹脂溶着ヒータ60を通過後280mmに収縮してしまい)、安定した幅(目標幅又は概ね目標幅)のプリプレグを製造することが難しいという課題を見出した。
【0042】
また、UD基材m1には品質のばらつきがあり、これに起因しても安定した幅(目標幅又は概ね目標幅)のプリプレグを製造することが難しいという課題を見出した。
【0043】
次に、実施形態として、上記課題を解決するための構成例を上記参考例に適用した例について説明する。以下、上記課題を解決するための構成例として、エキスパンダーロール90を用いる例について説明する。以下、上記参考例と同様の構成については同じ符号を付し適宜説明を省略する。なお、フラット型エアーノズル41、42は同様の構成及び動作であるため、説明を簡略化するため、以下代表して、フラット型エアーノズル41及び供給管37を用いる例について説明し、フラット型エアーノズル42及び供給管38を用いる例については省略する。
【0044】
図5は、エキスパンダーロール90を用いたプリプレグ製造装置の概略構成図である。
図6(a)は、エキスパンダーロール90、基材幅センサ100の具体的な配置例(
図5中の符号B1が示す矩形内の拡大図詳細図)である。
図6(b)は、エキスパンダーロール90、基材幅センサ100の具体的な配置例(変形例)である。
図7は、
図6(a)中の矢印AR7方向から見た矢視図(概略図)である。
【0045】
エキスパンダーロール90は、一般的に搬送中のフィルム等のしわや縮みを自動的に除去するために用いられるが、本実施形態では、搬送中のプリプレグm2(樹脂粉体が溶着した直後のUD基材m1)を拡幅するために用いる。エキスパンダーロール90としては、例えば、カンセンエキスパンダー工業株式会社製のバリボウEXP(https://kansenexp.co.jp/products/variable/vcs/)を用いることができる。
【0046】
図6(a)に示すように、エキスパンダーロール90は、従動ローラR2とR3との間に配置されている。その際、エキスパンダーロール90の回転軸AX
90は、従動ローラR2の回転軸と従動ローラR3の回転軸とを結ぶ直線L2より下方に配置されている。これにより、プリプレグm2(樹脂粉体が溶着した直後のUD基材m1)は、抱き角θ
90(
図6(a)参照)の範囲でエキスパンダーロール90に接している。エキスパンダーロール90の場合、抱き角θ
90は30~60度が好ましい。
【0047】
なお、エキスパンダーロール90の回転軸AX
90は、従動ローラR2の回転軸と従動ローラR3の回転軸とを結ぶ直線L2より下方に限らず、直線L2より上方に配置してもよい。例えば、拡幅効果が大きいシート状繊維基材(例えば、プリプレグm2)を用いる場合(エキスパンダーロールとシート状繊維基材との間の摩擦力が大きい場合)、抱き角θ
90を小さくし拡幅効果を低減する目的で、エキスパンダーロール90の回転軸AX
90を、直線L2より上方に配置することが考えられる。なお、従動ローラR3やエキスパンダーロール90を
図6(a)中上下左右方向に移動させる機構を設け、従動ローラR3、エキスパンダーロール90の少なくとも一方を
図6(a)中上下左右方向に移動させることにより、抱き角θ
90を調整することができる。
【0048】
なお、エキスパンダーロール90は、上方からプリプレグm2に抱き角θ
90の範囲で接していてもよいし(
図6(a)参照)、下方からプリプレグm2に抱き角θ
90の範囲で接していてもよい(
図6(b)参照)。
【0049】
次に、本実施形態の制御装置110について説明する。
図8は、制御装置110等のシステム構成図である。
【0050】
制御装置110は、図示しないが、プロセッサ、RAM等を備えている。
図8に示すように、制御装置110には、エキスパンダーロール90、基材幅センサ100(本開示の幅検出センサの一例)、記憶部120が電気的に接続されている。記憶部120は、例えば、ハードディスク装置やROM等の不揮発性の記憶部である。記憶部120には、プログラム121、目標幅122が記憶されている。プログラム121は、制御装置110(プロセッサ)により実行されるプログラムである。目標幅122は、プリプレグm2の目標幅122である。
【0051】
プロセッサは、例えば、CPUである。プロセッサは、1つの場合もあるし、複数の場合もある。例えば、プロセッサは、記憶部120(例えば、ROM)からRAMに読み込まれたプログラム121を実行することで、エキスパンダーロール90のベント量(湾曲量)を制御する制御手段として機能する。
【0052】
制御装置110は、基材幅センサ100により検出された搬送中のプリプレグm2(樹脂粉体が溶着した直後のUD基材m1)の幅が予め定められた目標幅となるようにエキスパンダーロール90のベンド量(湾曲量)を制御(フィードバック制御)する。その際、エキスパンダーロール90は、プリプレグm2の幅方向の中心をとおる中心軸AX
m2(
図7参照)に対して左右対称にベンド量(湾曲量)が制御される。
【0053】
基材幅センサ100は、エキスパンダーロール90(及び従動ローラR3)の下流に配置されており、エキスパンダーロール90通過後のプリプレグm2の幅W2を検出する。基材幅センサ100としては、例えば、エッジセンサを用いることができる。
【0054】
次に、プリプレグm2(樹脂粉体が溶着した直後のUD基材m1)の幅を拡幅する原理について説明する。
【0055】
図7は、エキスパンダーロール90を通過する前の幅W1のプリプレグm2(樹脂粉体が溶着した直後のUD基材m1)が、エキスパンダーロール90を通過後、幅W2に拡幅される様子を表す。
【0056】
プリプレグm2は、抱き角θ
90(
図6(a)参照)の範囲でエキスパンダーロール90に接した状態で搬送される場合、エキスパンダーロール90の回転軸AX
90に対して直交する方向に進行する傾向がある。
【0057】
ここで、
図7に示すように、エキスパンダーロール90の回転軸AX
90は、平面視で搬送方向下流側に向かって凸に湾曲した状態でそのベンド量(湾曲量)が制御されている。
【0058】
その際、エキスパンダーロール90の中央を通過するプリプレグm2は直進する(
図7中の矢印ARa参照)。一方、エキスパンダーロール90の中央に対して右側を通過するプリプレグm2はその通過位置に応じた角度方向(斜め右方向)に進行する(例えば、
図7中の矢印ARb参照)。同様に、エキスパンダーロール90の中央に対して左側を通過するプリプレグm2はその通過位置に応じた角度方向(斜め左方向)に進行する(例えば、
図7中の矢印ARc参照)。その結果、エキスパンダーロール90を通過する前の幅W1のプリプレグm2が、エキスパンダーロール90を通過後、幅W2に拡幅される。
【0059】
なお、エキスパンダーロール90のベンド量(湾曲量)を大きくすることにより、拡幅量(幅W2)を大きくすることができる。逆に、エキスパンダーロール90のベンド量(湾曲量)を小さくすることにより、拡幅量(幅W2)を小さくすることができる。
【0060】
次に、上記構成のエキスパンダーロール90を用いたプリプレグ製造装置の動作例について説明する。
【0061】
図9は、エキスパンダーロール90を用いたプリプレグ製造装置の動作例(プリプレグ幅制御処理1)のフローチャートである。
【0062】
以下、前提として、プリプレグm2(樹脂粉体が溶着した直後のUD基材m1)が、抱き角θ
90(
図6(a)参照)の範囲でエキスパンダーロール90に接した状態で搬送されているものとする。
【0063】
まず、プリプレグm2の幅を検出する(ステップS10)。これは、基材幅センサ100により実現される。基材幅センサ100は、エキスパンダーロール90を通過後のプリプレグm2の幅W2(
図7参照)を検出する。
【0064】
次に、ステップS10で検出されたプリプレグm2の幅が目標幅か否かが判定される(ステップS11)。これは、制御装置110がプログラム121を実行することにより実現される。その際、目標幅は記憶部120に記憶された目標幅122が用いられる。
【0065】
ステップS11において、ステップS10で検出されたプリプレグm2の幅が目標幅であると判定された場合(ステップS11:YES)、ステップS10の処理が繰り返し実行される。
【0066】
一方、ステップS11において、ステップS10で検出されたプリプレグm2の幅が目標幅でないと判定された場合(ステップS11:NO)、プリプレグm2の幅が目標幅となるようにエキスパンダーロール90のベンド量(湾曲量)を制御する(ステップS12)。これは、制御装置110がプログラム121を実行することにより実現される。例えば、ステップS10で検出されたプリプレグの幅W2が目標幅122より小さい場合、制御装置110は、ベンド量(湾曲量)が大きくなるようにエキスパンダーロール90を制御する。これにより、エキスパンダーロール90を通過した後のプリプレグm2の幅W2を目標幅122に近づけることができる。一方、ステップS10で検出されたプリプレグの幅W2が目標幅122より大きい場合、制御装置110は、ベンド量(湾曲量)が小さくなるようにエキスパンダーロール90を制御する。これにより、エキスパンダーロール90を通過した後のプリプレグm2の幅W2を目標幅122に近づけることができる。
【0067】
以後、上記ステップS10~S12の処理が繰り返し実行される。
【0068】
これにより、安定した幅(目標幅又は概ね目標幅)のプリプレグm2を製造することができる。
【0069】
以上説明したように、本実施形態によれば、安定した幅(目標幅又は概ね目標幅)のプリプレグを製造することができる。
【0070】
次に、変形例について説明する。
<変形例1>
変形例1は、上記実施形態のエキスパンダーロール90に代えてスパイラルロール90Aを用いる例である。それ以外、上記実施形態と同様の構成である。スパイラルロール90Aは、一般的に、搬送中のフィルム等のしわを自動的に伸ばすために用いられるが、本変形例1では、搬送中のプリプレグm2(樹脂粉体が溶着した直後のUD基材m1)を拡幅するために用いる。
【0071】
図10は、
図7中のエキスパンダーロール90をスパイラルロール90Aに置き換えた図である。
【0072】
図10に示すように、スパイラルロール90Aの外周面には、スパイラルロール90Aの軸AX
90A方向中央から左右両側に延びる、軸AX
90A方向中央に対して左右対称のスパイラル溝gが形成されている。
【0073】
図6(a)に示すように、スパイラルロール90Aは、従動ローラR2とR3との間に配置されている。その際、スパイラルロール90Aの回転軸AX
90Aは、従動ローラR2の回転軸と従動ローラR3の回転軸とを結ぶ直線L2より下方に配置されている。これにより、プリプレグm2(樹脂粉体が溶着した直後のUD基材m1)は、抱き角θ
90(
図6(a)参照)の範囲でスパイラルロール90Aに接している。スパイラルロール90Aの場合、抱き角θ
90は90~120度が好ましい。後述のクラウンロール90Bの場合も同様である。
【0074】
なお、スパイラルロール90Aの回転軸AX
90Aは、従動ローラR2の回転軸と従動ローラR3の回転軸とを結ぶ直線L2より下方に限らず、直線L2より上方に配置してもよい。例えば、拡幅効果が大きいシート状繊維基材(例えば、プリプレグm2)を用いる場合(スパイラルロールとシート状繊維基材との間の摩擦力が大きい場合)、抱き角θ
90Aを小さくし拡幅効果を低減する目的で、スパイラルロール90Aの回転軸AX
90Aを、直線L2より上方に配置することが考えられる。なお、従動ローラR3やスパイラルロール90Aを
図6(a)中上下左右方向に移動させる機構を設け、従動ローラR3、スパイラルロール90Aの少なくとも一方を
図6(a)中上下左右方向に移動させることにより、抱き角θ
90Aを調整することができる。
【0075】
なお、スパイラルロール90Aは、上方からプリプレグm2に抱き角θ
90Aの範囲で接していてもよいし(
図6(a)参照)、下方からプリプレグm2に抱き角θ
90Aの範囲で接していてもよい(
図6(b)参照)。
【0076】
次に、本変形例1の制御装置110Aについて説明する。
図11は、制御装置110A等のシステム構成図である。
【0077】
図11に示すように、制御装置110Aには、巻取軸A駆動用のモータM、基材幅センサ100、記憶部120が電気的に接続されている。
【0078】
制御装置110Aは、基材幅センサ100により検出された搬送中のプリプレグm2(樹脂粉体が溶着した直後のUD基材m1)の幅が予め定められた目標幅となるように、モータMのトルクを制御することにより、搬送中のプリプレグm2のテンションを制御する。なお、これに代えて、公知のテンション制御手段(例えば、ダンサ機構)を用いて搬送中のプリプレグm2のテンションを制御してもよい。なお、ダンサ機構としては、例えば、https://www.shi-mechatronics.jp/solutions/technology/linedrive/adu-as/794/に記載のものを用いることができる。
【0079】
次に、上記構成のスパイラルロール90Aを用いたプリプレグ製造装置の動作例について説明する。
【0080】
図12は、スパイラルロール90Aを用いたプリプレグ製造装置の動作例(プリプレグ幅制御処理2)のフローチャートである。
【0081】
以下、前提として、プリプレグm2(樹脂粉体が溶着した直後のUD基材m1)が、抱き角θ
90(
図6(a)参照)の範囲でスパイラルロール90Aに接した状態で搬送されているものとする。
【0082】
まず、プリプレグm2の幅を検出する(ステップS20)。これは、基材幅センサ100により実現される。基材幅センサ100は、スパイラルロール90Aを通過後のプリプレグm2の幅W2(
図10参照)を検出する。
【0083】
次に、ステップS20で検出されたプリプレグm2の幅が目標幅か否かが判定される(ステップS21)。これは、制御装置110Aがプログラム121を実行することにより実現される。その際、目標幅は記憶部120に記憶された目標幅122が用いられる。
【0084】
ステップS21において、ステップS20で検出されたプリプレグm2の幅が目標幅であると判定された場合(ステップS21:YES)、ステップS20の処理が繰り返し実行される。
【0085】
一方、ステップS21において、ステップS20で検出されたプリプレグm2の幅が目標幅でないと判定された場合(ステップS21:NO)、プリプレグm2の幅が目標幅となるようにプリプレグm2のテンションを制御する(ステップS22)。これは、制御装置110Aがプログラム121を実行することにより実現される。例えば、ステップS20で検出されたプリプレグm2の幅W2が目標幅122より小さい場合、制御装置110Aは、プリプレグm2のテンションが大きくなるように巻取軸A駆動用のモータMのトルクを制御する。これにより、スパイラルロール90Aがプリプレグm2に強く押し当てられ、スパイラルロール90Aの溝にプリプレグm2が食い込む量が増大し、拡幅の作用が増大する。その結果、スパイラルロール90Aを通過した後のプリプレグm2の幅W2を目標幅122に近づけることができる。一方、ステップS20で検出されたプリプレグの幅W2が目標幅122より大きい場合、制御装置110Aは、プリプレグm2のテンションが小さくなるように巻取軸A駆動用のモータMのトルクを制御する。これにより、スパイラルロール90Aがプリプレグm2に弱く押し当てられ、スパイラルロール90Aの溝にプリプレグm2が食い込む量が減少し、拡幅の作用が減少する。その結果、エキスパンダーロール90を通過した後のプリプレグm2の幅W2を目標幅122に近づけることができる。
【0086】
以後、上記ステップS20~S22の処理が繰り返し実行される。
【0087】
これにより、安定した幅(目標幅又は概ね目標幅)のプリプレグm2を製造することができる。
【0088】
以上説明したように、本変形例1によっても、安定した幅(目標幅又は概ね目標幅)のプリプレグを製造することができる。
<変形例2>
変形例2は、上記変形例1のスパイラルロール90Aに代えてクラウンロール90Bを用いる例である。それ以外、上記変形例1と同様の構成である。クラウンロール90Bは、一般的に、搬送中のフィルム等のしわを自動的に伸ばすために用いられるが、本変形例2では、搬送中のプリプレグm2(樹脂粉体が溶着した直後のUD基材m1)を拡幅するために用いる。
【0089】
図6(a)に示すように、クラウンロール90Bは、従動ローラR2とR3との間に配置されている。
【0090】
図13は、
図10中のスパイラルロール90Aをクラウンロール90Bに置き換えた図である。
【0091】
図13に示すように、クラウンロール90Bは、クラウンロール90Bの軸AX
90B方向中央が最も太く、当該中央から左右両側に向かって緩やかに円弧状に延び、軸AX
90B方向中央に対して左右対称に構成されている。
【0092】
本変形例2によっても、
図12と同様の処理(プリプレグ幅制御処理2)を実行することにより、安定した幅(目標幅又は概ね目標幅)のプリプレグを製造することができる。
【0093】
なお、図示しないが、クラウンロール90Bに代えて、逆クラウンロール(コンケーブローラとも呼ばれる)を用いてもよい。逆クラウンロールは、クラウンロール90Bとは逆に、逆クラウンロールの軸方向中央が最も細く、当該中央から左右両側に向かって緩やかに円弧状に延び、軸方向中央に対して左右対称に構成されている。逆クラウンロール(コンケーブローラ)としては、例えば、https://katsura-roller.co.jp/product/detail/concave.htmlに記載のものを用いることができる。
<変形例3>
変形例3は、上記実施形態のエキスパンダーロール90に代えてクロスガイダ90Cを用いる例である。それ以外、上記実施形態と同様の構成である。クロスガイダ90Cは、一般的に、搬送中の布等の片寄りを自動的に修正するために用いられるが、本変形例3では、搬送中のプリプレグm2(樹脂粉体が溶着した直後のUD基材m1)を拡幅するために用いる。
【0094】
図14は、
図7中のエキスパンダーロール90をクロスガイダ90Cに置き換えた図である。
【0095】
図14に示すように、クロスガイダ90Cは、搬送中のプリプレグm2の左側に配置される左側クロスガイダ90CL(本開示の第1クロスガイダの一例)、右側に配置される右側クロスガイダ90CR(本開示の第2クロスガイダの一例)を備える。
【0096】
左側クロスガイダ90CLは、プリプレグm2の裏面側に配置される固定側ガイドローラ(
図14中図示されていない)、プリプレグm2の表面側に配置される作動側ガイドローラ91L、作動側ガイドローラ91Lをニップ位置又は非ニップ位置に移動させるアクチュエータ92L(
図15参照)を備える。同様に、右側クロスガイダ90CRは、プリプレグm2の裏面側に配置される固定側ガイドローラ(
図14中図示されていない)、プリプレグm2の表面側に配置される作動側ガイドローラ91R、作動側ガイドローラ91Rをニップ位置又は非ニップ位置に移動させるアクチュエータ92R(
図15参照)を備える。
【0097】
作動側ガイドローラ91L、91Rは、搬送中のプリプレグm2を拡幅するため、
図14に示すように搬送方向に対してハの字状に傾斜した姿勢で配置されている。固定側ガイドローラも同様である。
【0098】
次に、本変形例3の制御装置110Cについて説明する。
図15は、制御装置110C等のシステム構成図である。
【0099】
図15に示すように、制御装置110Cには、クロスガイダ90C(アクチュエータ92L、92R)、基材幅センサ100、記憶部120が電気的に接続されている。制御装置110Cがアクチュエータ92Lを制御し作動側ガイドローラ91Lをニップ位置に位置させることにより、搬送中のプリプレグm2の左端が作動側ガイドローラ91Lと固定側ガイドローラとの間にニップされる。同様に、制御装置110Cがアクチュエータ92Rを制御し作動側ガイドローラ91Rをニップ位置に位置させることにより、搬送中のプリプレグm2の右端が作動側ガイドローラ91Rと固定側ガイドローラとの間にニップされる。
【0100】
制御装置110Aは、基材幅センサ100により検出された搬送中のプリプレグm2(樹脂粉体が溶着した直後のUD基材m1)の幅が予め定められた目標幅となるようにクロスガイダ90C(アクチュエータ92L、92R)を制御することにより、左側クロスガイダ90CL及び右側クロスガイダ90CRのニップ状態を制御する。
【0101】
次に、上記構成のクロスガイダ90Cを用いたプリプレグ製造装置の動作例について説明する。
【0102】
図16は、クロスガイダ90Cを用いたプリプレグ製造装置の動作例(プリプレグ幅制御処理3)のフローチャートである。
【0103】
以下、前提として、作動側ガイドローラ91L及び作動側ガイドローラ91Rそれぞれが非ニップ位置に位置した状態でプリプレグm2(樹脂粉体が溶着した直後のUD基材m1)が搬送されているものとする。
【0104】
まず、プリプレグm2の幅を検出する(ステップS30)。これは、基材幅センサ100により実現される。基材幅センサ100は、クロスガイダ90Cを通過後のプリプレグm2の幅W2(
図14参照)を検出する。
【0105】
次に、ステップS30で検出されたプリプレグm2の幅が目標幅か否かが判定される(ステップS31)。これは、制御装置110がプログラム121を実行することにより実現される。その際、目標幅は記憶部120に記憶された目標幅122が用いられる。
【0106】
ステップS31において、ステップS30で検出されたプリプレグm2の幅が目標幅であると判定された場合(ステップS31:YES)、ステップS30の処理が繰り返し実行される。
【0107】
一方、ステップS31において、ステップS30で検出されたプリプレグm2の幅が目標幅でないと判定された場合(ステップS31:NO)、プリプレグm2の幅が目標幅となるようにクロスガイダ90C(左側クロスガイダ90CL及び右側クロスガイダ90CR)のニップ状態を制御する(ステップS32)。これは、制御装置110Cがプログラム121を実行することにより実現される。例えば、ステップS30で検出されたプリプレグm2の幅W2が目標幅122より小さい場合、制御装置110Cは、アクチュエータ92L、92Rを制御し作動側ガイドローラ91L、91Rそれぞれをニップ位置に移動させる(ニップオン)。これにより、プリプレグm2の左端及び右端それぞれがニップされ拡幅の作用が生ずるため、クロスガイダ90Cを通過した後のプリプレグm2の幅W2を目標幅122に近づけることができる。
【0108】
以後、上記ステップS30~S32の処理が繰り返し実行される。
【0109】
その後、ステップS30で検出されたプリプレグの幅W2が目標幅122より大きくなった場合、制御装置110は、アクチュエータ92L、92Rを制御し作動側ガイドローラ91L、91Rそれぞれを非ニップ位置に移動させる(ニップオフ)。これにより、プリプレグm2の左端及び右端それぞれのニップが解除され拡幅の作用が無くなるため、クロスガイダ90Cを通過した後のプリプレグm2の幅W2を目標幅122に近づけることができる。
【0110】
以上により、安定した幅(目標幅又は概ね目標幅)のプリプレグm2を製造することができる。
【0111】
以上説明したように、本変形例3によっても、安定した幅(目標幅又は概ね目標幅)のプリプレグを製造することができる。
【0112】
なお、本変形例3では、クロスガイダ90C(左側クロスガイダ90CL及び右側クロスガイダ90CR)のニップ状態の制御例として、作動側ガイドローラ91L、91Rそれぞれをニップ位置又は非ニップ位置に移動させる例について説明したが、これに限らない。例えば、クロスガイダ90C(左側クロスガイダ90CL及び右側クロスガイダ90CR)の傾斜角度(ハの字状の傾斜角度)を制御してもよいし、アクチュエータ92L、92Rを制御することにより、搬送中のプリプレグm2をクロスガイダ90C(左側クロスガイダ90CL及び右側クロスガイダ90CR)がニップする力(押し付け力)を制御してもよい。
【0113】
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本開示は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0114】
11 注入口
12 加速容器
13 ブラシ
14 圧縮部
15 格納ボックス
16 チューブ
17 粉体
18 穴
19 チャンバー
20 炭素繊維織物
30 樹脂粉体
31,32 チャンバー
31a,32a 外殻
31b,32b 内殻
33,34 開口部(樹脂粉体吐出出口)
35,36 排出口
37,38 供給管
39,40 コンプレッサ
41,42 フラット型エアーノズル
41a,42a 本体部
43,44 粉末樹脂帯電部
45,46 流路
47,48 投入管
47a,48a 投入口
50 シート状繊維基材
51,52 高電圧板
53,54 集塵機
T 空気増倍装置
60 樹脂溶着ヒータ
70 高電圧電源
80 フィーダ
90 エキスパンダーロール
90A スパイラルロール
90B クラウンロール
90C クロスガイダ
110、110A、110C 制御装置