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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054546
(43)【公開日】2024-04-17
(54)【発明の名称】生体刺激装置
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/36 20060101AFI20240410BHJP
【FI】
A61N1/36
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160826
(22)【出願日】2022-10-05
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】391009800
【氏名又は名称】株式会社テクノリンク
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 辰之
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053JJ01
4C053JJ40
(57)【要約】
【課題】生体の個体差の影響を抑制しつつ、生体に蓄積された電荷を放電させること。
【解決手段】本開示に係る生体刺激装置は、生体に刺激信号を出力する生体刺激装置であって、トランスと、第1スイッチと、第2スイッチと、制御部と、出力部とを備える。前記制御部は、前記第1スイッチをオンにする第1パルスから構成された第1正弦波用パルス群と、前記第1パルスから構成された第1放電用パルス群とを有する前記第1駆動信号を生成し、前記第2スイッチをオンにする第2パルスから構成された第2正弦波用パルス群と、前記第2パルスから構成された第2放電用パルス群とを有する前記第2駆動信号を生成し、前記第1正弦波用パルス群と前記第2正弦波用パルス群を交互に発生させることによって、擬似正弦波となる前記刺激信号を前記出力部から出力させる。また、前記制御部は、前記第1放電用パルス群の前記第1パルスと、前記第2放電用パルス群の第2パルスとを交互に発生させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体に刺激信号を出力する生体刺激装置であって、
トランスと、
前記トランスの一次側巻線に所定方向の電流を流すための第1スイッチと、
前記トランスの前記一次側巻線に前記所定方向とは逆方向の電流を流すための第2スイッチと、
前記第1スイッチを駆動する第1駆動信号と、前記第2スイッチを駆動する第2駆動信号とを生成する制御部と、
前記トランスの二次側巻線に接続されており前記刺激信号を出力する出力部と、
を備え、
前記制御部は、
前記第1スイッチをオンにする第1パルスから構成された第1正弦波用パルス群と、前記第1パルスから構成された第1放電用パルス群とを有する前記第1駆動信号を生成し、
前記第2スイッチをオンにする第2パルスから構成された第2正弦波用パルス群と、前記第2パルスから構成された第2放電用パルス群とを有する前記第2駆動信号を生成し、
前記第1正弦波用パルス群と前記第2正弦波用パルス群を交互に発生させることによって、擬似正弦波となる前記刺激信号を前記出力部から出力させるとともに、
前記第1放電用パルス群の前記第1パルスと、前記第2放電用パルス群の前記第2パルスとを交互に発生させる
ことを特徴とする生体刺激装置。
【請求項2】
請求項1に記載の生体刺激装置であって、
前記制御部は、前記第1正弦波用パルス群の直前及び直後に前記第1放電用パルス群を発生させるとともに、前記第2正弦波用パルス群の直前及び直後に前記第2放電用パルス群を発生させることによって、前記第1正弦波用パルス群の発生タイミングと前記第2正弦波用パルス群の発生タイミングとの間で、前記第1放電用パルス群の前記第1パルスと、前記第2放電用パルス群の前記第2パルスとを交互に発生させることを特徴とする生体刺激装置。
【請求項3】
請求項1に記載の生体刺激装置であって、
前記制御部は、最後の前記正弦波用パルス群を発生させた後に、前記第1放電用パルス群及び前記第2放電用パルス群を発生させ、前記第1放電用パルス群の前記第1パルスと、前記第2放電用パルス群の前記第2パルスとを交互に発生させることを特徴とする生体刺激装置。
【請求項4】
請求項3に記載の生体刺激装置であって、
前記制御部は、
前記第1放電用パルス群及び前記第2放電用パルス群の一方を他方よりも早く発生させることによって、前記第1放電用パルス群の前記第1パルスと前記第2放電用パルス群の前記第2パルスとを交互に発生させる直前に、前記第1パルス及び前記第2パルスの一方を発生させることを特徴とする生体刺激装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体刺激装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電極を内蔵する導子(出力部)から生体に刺激信号を出力する生体刺激装置が知られている。特許文献1に記載の生体刺激装置では、生体がコンデンサのような容量性を有することに着目し、生体の容量性の作用によってパルス群を歪ませて、これにより、擬似的な正弦波を形成して生体に刺激を与えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6488458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、生体に蓄積された電荷によって生じる疑似正弦波の歪みを抑制するために、放電用パルスを設けることが記載されている。但し、生体の容量性には個体差があり、個体差に応じた放電用パルスを設定することが難しいことがある。
【0005】
本発明は、生体の個体差の影響を抑制しつつ、生体に蓄積された電荷を放電させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、生体に刺激信号を出力する生体刺激装置であって、トランスと、前記トランスの一次側巻線に所定方向の電流を流すための第1スイッチと、前記トランスの前記一次側巻線に前記所定方向とは逆方向の電流を流すための第2スイッチと、前記第1スイッチを駆動する第1駆動信号と、前記第2スイッチを駆動する第2駆動信号とを生成する制御部と、前記トランスの二次側巻線に接続されており前記刺激信号を出力する出力部と、を備え、前記制御部は、前記第1スイッチをオンにする第1パルスから構成された第1正弦波用パルス群と、前記第1パルスから構成された第1放電用パルス群とを有する前記第1駆動信号を生成し、前記第2スイッチをオンにする第2パルスから構成された第2正弦波用パルス群と、前記第2パルスから構成された第2放電用パルス群とを有する前記第2駆動信号を生成し、前記第1正弦波用パルス群と前記第2正弦波用パルス群を交互に発生させることによって、擬似正弦波となる前記刺激信号を前記出力部から出力させるとともに、前記第1放電用パルス群の前記第1パルスと、前記第2放電用パルス群の第2パルスとを交互に発生させることを特徴とする生体刺激装置である。
【0007】
本発明の他の特徴については、後述する明細書及び図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、生体の個体差の影響を抑制しつつ、生体に蓄積された電荷を放電させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態の生体刺激装置1の構成の説明図である。図中には、生体(例えば人体)の等価回路も示されている。
図2図2は、第1実施形態の入力信号の説明図である。
図3図3Aは、出力部31に生体を接続した場合の第1実施形態の刺激信号のグラフである。図3Bは、図3AのFFT解析結果のグラフである。
図4図4Aは、5個ずつの第1パルスP1及び第2パルスP2によって放電用パルス群Gdを構成した場合の刺激信号のグラフである。図4Bは、図4AのFFT解析結果のグラフである。
図5図5Aは、7個ずつの第1パルスP1及び第2パルスP2によって放電用パルス群Gdを構成した場合の刺激信号のグラフである。図5Bは、図5AのFFT解析結果のグラフである。
図6図6は、基本波にする高調波のピークレベルの比較表である。
図7図7は、第2実施形態の入力信号の説明図である。
図8図8は、出力部31に生体を接続した場合の第2実施形態の刺激信号のグラフである。
図9図9Aは、最後の正弦波用パルス群Gsの後に放電用パルス群Gdを設けない場合の出力波形を示している。図9Bは、最後の正弦波用パルス群Gsの後に放電用パルス群Gdを設けた場合の出力波形を示している。
図10図10は、第2実施形態の変形例の入力信号の説明図である。
図11図11は、変形例の刺激信号のグラフである。
図12図12は、比較例の入力信号の説明図である。
図13図13Aは、出力部31に生体を接続した場合の比較例の刺激信号のグラフである。図13Bは、図13AのFFT解析結果のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
後述する明細書及び図面の記載から、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0011】
第1形態の生体刺激装置は、生体に刺激信号を出力する生体刺激装置であって、トランスと、前記トランスの一次側巻線に所定方向の電流を流すための第1スイッチと、前記トランスの前記一次側巻線に前記所定方向とは逆方向の電流を流すための第2スイッチと、前記第1スイッチを駆動する第1駆動信号と、前記第2スイッチを駆動する第2駆動信号とを生成する制御部と、前記トランスの二次側巻線に接続されており前記刺激信号を出力する出力部と、を備え、前記制御部は、前記第1スイッチをオンにする第1パルスから構成された第1正弦波用パルス群と、前記第1パルスから構成された第1放電用パルス群とを有する前記第1駆動信号を生成し、前記第2スイッチをオンにする第2パルスから構成された第2正弦波用パルス群と、前記第2パルスから構成された第2放電用パルス群とを有する前記第2駆動信号を生成し、前記第1正弦波用パルス群と前記第2正弦波用パルス群を交互に発生させることによって、擬似正弦波となる前記刺激信号を前記出力部から出力させるとともに、前記第1放電用パルス群の前記第1パルスと、前記第2放電用パルス群の前記第2パルスとを交互に発生させることを特徴とする生体刺激装置である。このような生体刺激装置によれば、生体の個体差の影響を抑制しつつ、生体に蓄積された電荷を放電させることができる。
【0012】
第2形態の生体刺激装置は、上記第1形態の生体刺激装置であって、前記制御部は、前記第1正弦波用パルス群の直前及び直後に前記第1放電用パルス群を発生させるとともに、前記第2正弦波用パルス群の直前及び直後に前記第2放電用パルス群を発生させることによって、前記第1正弦波用パルス群の発生タイミングと前記第2正弦波用パルス群の発生タイミングとの間で、前記第1放電用パルス群の前記第1パルスと、前記第2放電用パルス群の前記第2パルスとを交互に発生させることを特徴とする生体刺激装置である。これにより、生体の個体差の影響を抑制しつつ、生体に蓄積された電荷を放電させることによって、疑似正弦波の歪みを抑制することができる。
【0013】
第3形態の生体刺激装置は、上記第1形態の生体刺激装置であって、前記制御部は、最後の前記正弦波用パルス群を発生させた後に、前記第1放電用パルス群及び前記第2放電用パルス群を発生させ、前記第1放電用パルス群の前記第1パルスと、前記第2放電用パルス群の前記第2パルスとを交互に発生させることを特徴とする生体刺激装置である。これにより、生体の個体差の影響を抑制しつつ、疑似正弦波を繰り返し出力した時に生体に蓄積された電荷を放電させることができる。
【0014】
第4形態の生体刺激装置は、上記第3形態の生体刺激装置であって、前記制御部は、前記第1放電用パルス群及び前記第2放電用パルス群の一方を他方よりも早く発生させることによって、前記第1放電用パルス群の前記第1パルスと前記第2放電用パルス群の前記第2パルスとを交互に発生させる直前に、前記第1パルス及び前記第2パルスの一方を発生させることを特徴とする生体刺激装置である。これにより、生体に蓄積された電荷を速やかに放電することができる。
【0015】
===実施形態===
<基本構成>
図1は、本実施形態の生体刺激装置1の構成の説明図である。図中には、生体(例えば人体)の等価回路も示されている。
【0016】
生体の等価回路は、抵抗成分R1,R5と、抵抗成分R2,R6と、容量成分C1,C2とにより構成されている。抵抗成分R1,R5は、生体の皮膚表面から内部組織への広がり抵抗に相当する。並列接続されている抵抗成分R2,R6及び容量成分C1,C2は、生体の内部組織の抵抗成分に相当する。生体の等価回路は、生体刺激装置1の一対の出力部31のそれぞれに設けられることになる。
【0017】
生体刺激装置1は、生体に刺激信号を付与することによって、生体に刺激を付与する装置である。一般的に、刺激信号の周波数が高いほど、生体のインピーダンスが小さくなり、筋刺激の感覚が小さくなる。例えば、百kHz以上の高周波数においては、刺激信号による筋刺激はほとんど無くなる。一方、刺激信号の周波数が低いほど、生体のインピーダンスが大きくなり、刺激感が強くなる。刺激感の得られる低周波数の場合、刺激信号は、矩形波よりも正弦波の方が、刺激がソフトになる。
【0018】
生体刺激装置1は、トランス10と、第1スイッチ21及び第2スイッチ22と、出力部31と、制御部40とを有する。
【0019】
トランス10は、一次側巻線と二次側巻線との間で信号を変換する変換器(変圧器)である。トランス10は、一次側に供給された電気エネルギーを磁気エネルギーに変換し、磁気エネルギーを二次側で電気エネルギーに再変換して出力する。一次側巻線の側に入力される信号を入力信号と呼び、二次側巻線の側から出力される信号(生体に出力する信号)を刺激信号と呼ぶことがある。例えば、トランス10は、入力信号(入力電圧)を5~10倍程度に昇圧して、刺激信号として出力する。
【0020】
トランス10は、第1入力端子11、第2入力端子12、センタータップ13、第1出力端子14及び第2出力端子15を有する。トランス10の一次側には、第1入力端子11、第2入力端子12及びセンタータップ13が設けられている。第1入力端子11は、一次側巻線の一端側の端子である。第2入力端子12は、一次側巻線の他端側(一次入力端子とは逆側)の端子である。センタータップ13は、一次側巻線の中間点を引き出した端子である。第1入力端子11、第2入力端子12及びセンタータップ13によって、トランス10の一次側巻線に入力される入力信号が生成されることになる。トランス10の二次側には、第1出力端子14及び第2出力端子15が設けられている。第1出力端子14及び第2出力端子15から刺激信号が出力されることになる。
【0021】
第1スイッチ21は、トランス10の一次側巻線に所定方向の電流を流すためのスイッチである。ここでは、第1スイッチ21がオンになったときに一次側巻線に流れる電流の方向をプラス方向とする。第1スイッチ21は、トランス10の一次側巻線の一端側の第1入力端子11に接続されている。第1スイッチ21は、例えばFETであり、ソース接地されたFETのドレインが第1入力端子11に接続され、ゲートに入力される信号に応じてオン・オフ(通電・休止)の制御が行われることになる。第1スイッチ21がオンになると一次側巻線にプラス方向の電流が流れる。第1スイッチ21がオフになると、このプラス方向の電流が遮断される。
【0022】
第2スイッチ22は、トランス10の一次側巻線にマイナス方向(前記所定方向とは逆方向)の電流を流すためのスイッチである。第2スイッチ22がオンになったときに一次側巻線に流れる電流の方向は、第1スイッチ21がオンになったときに一次側巻線に流れる電流の方向(所定方向;プラス方向)の逆方向となる。第2スイッチ22は、トランス10の一次側巻線の他端側(第1スイッチ21が接続された側とは逆側)の第2入力端子12に接続されたスイッチである。第2スイッチ22も、第1スイッチ21と同様に、例えばFETであり、ソース接地されたFETのドレインが第2入力端子12に接続され、ゲートに入力される信号に応じてオン・オフが行われることになる。第2スイッチ22がオンになると一次側巻線にマイナス方向の電流が流れる。第2スイッチ22がオフになると、このマイナス方向の電流が遮断される。
【0023】
出力部31は、生体に刺激信号を出力する電極である。出力部31は、トランス10の二次側巻線の第1出力端子14及び第2出力端子15にそれぞれ接続されている。出力部31は、生体に接触させる導子(例えば粘着パッド、吸引パッド、金属棒状若しくはグローブ状の形態をした導子)に内蔵されており、導子を介して生体に刺激信号を出力する。
【0024】
制御部40は、出力部31から出力する刺激信号を制御する部分(コントローラー)である。制御部40は、第1スイッチ21及び第2スイッチ22の駆動を制御する。つまり、制御部40は、第1スイッチ21及び第2スイッチ22を介してトランス10への入力を制御することによって、出力部31から出力する刺激信号を制御する。制御部40は、センタータップ13の電圧(設定電圧)を制御する。制御部40は、不図示の記憶部に記憶されているプログラムを実行することにより、後述する各種処理を実行する。ここでは、制御部40は、処理装置41と、電圧設定部42と、駆動信号生成部43とを有する。
【0025】
処理装置41は、例えばCPUやMPUなどの処理装置41である。処理装置41は、設定電圧を指示するための設定信号を電圧設定部42に出力する。また、処理装置41は、第1駆動信号や第2駆動信号の生成を指示するための指示信号を駆動信号生成部43に出力する。
【0026】
電圧設定部42は、トランス10のセンタータップ13の電圧(設定電圧)を設定する部位(回路)である。ここでは、電圧設定部42は、D/Aコンバーター42Aとアンプ42Bとを有する。D/Aコンバーター42Aは、処理装置41から入力された信号に応じた電圧を出力し、アンプ42Bは、D/Aコンバーター42Aからの出力電圧を増幅してセンタータップ13の電圧を設定する。処理装置41からの設定信号が変更されると、トランス10のセンタータップ13の設定電圧が変更され、刺激信号の電圧が調整されることになる。例えば、電圧設定部42は、0V~12Vの範囲でセンタータップ13の設定電圧を調整可能である。なお、電圧設定部42は、センタータップ13に出力する設定電圧を可変に構成するのではなく、一定の電圧を出力するように構成しても良い。
【0027】
駆動信号生成部43は、第1駆動信号及び第2駆動信号を生成する信号生成部(回路)である。駆動信号生成部43は、第1駆動信号を第1スイッチ21(詳しくはFETである第1スイッチ21のゲート)に出力し、第2駆動信号を第2スイッチ22(詳しくはFETである第2スイッチ22のゲート)に出力する。なお、駆動信号生成部43を設けずに、処理装置41が第1スイッチ21及び第2スイッチ22に第1駆動信号及び第2駆動信号を出力するように制御部40を構成しても良い。
【0028】
<入力信号について>
(比較例)
図12は、比較例の入力信号の説明図である。図中には、上から順に、第1駆動信号、第2駆動信号及び入力信号が示されている。第1駆動信号、第2駆動信号及び入力信号は、それぞれ周期Tを1サイクルとして繰り返す信号であり、図中には、2周期分の信号が示されている。
【0029】
以下の説明では、周期T(1サイクル分の期間)を4分割し、それぞれ第1期間~第4期間と呼ぶことがある。例えば、周期Tは、1Hz~10kHz程度の周波数に相当する周期(望ましくは1kHz~3kHz程度の周波数に相当する周期)である。
【0030】
第1駆動信号は、第1スイッチ21を駆動するための信号(駆動信号、スイッチ制御信号)である。第1駆動信号がHレベルのとき、第1スイッチ21がオンになり、トランス10の第1入力端子11とセンタータップ13の間の一次側巻線に設定電圧がかかり、一次側巻線にプラス方向(所定方向)の電流が流れる(通電)。第1駆動信号がLレベルのとき、第1スイッチ21がオフになり、プラス方向の電流が遮断される(休止)。
【0031】
第2駆動信号は、第2スイッチ22を駆動するための信号である。第2駆動信号がHレベルのとき、第2スイッチ22がオンになり、トランス10の第2入力端子12とセンタータップ13の間の一次側巻線に設定電圧がかかり、一次側巻線にマイナス方向(前記所定方向とは逆方向)の電流が流れる。第2駆動信号がLレベルのとき、第2スイッチ22がオフになり、マイナス方向の電流が遮断される。
【0032】
第1駆動信号及び第2駆動信号は、それぞれ、複数のパルスから構成されたパルス群が所定周期毎に現れる信号である。図12に示す比較例では、第1駆動信号及び第2駆動信号のパルス群は、正弦波(疑似正弦波)を生成するための正弦波用パルス群Gsで構成されている。以下の説明では、第1駆動信号の正弦波用パルス群Gsのことを「第1正弦波用パルス群Gs1」と呼び、第2駆動信号の正弦波用パルス群Gsのことを「第2正弦波用パルス群Gs2」と呼ぶ。第1正弦波用パルス群Gs1は、第1スイッチをオンにするパルス(第1パルスP1)により構成されている。第2正弦波用パルス群Gs2は、第2スイッチをオンにするパルス(第2パルスP2)により構成されている。第1パルスP1及び第2パルスP2は、所定のパルス幅に設定されている。正弦波用パルス群Gs(Gs1,Gs2)の周期(周期T)は比較的長いのに対し、正弦波用パルス群Gsを構成する各パルス(第1パルスP1又は第2パルスP2)の周期は比較的短い。第1駆動信号の第1正弦波用パルス群Gs1と、第2駆動信号の第2正弦波用パルス群Gs2は、交互に発生する。このため、第1スイッチ21及び第2スイッチ22は、高周波のスイッチング動作を交互に行うことになる。なお、第1駆動信号の第1正弦波用パルス群Gs1の通電期間と、第2駆動信号の第2正弦波用パルス群Gs2の通電期間は重複せず、一方の駆動信号の正弦波用パルス群Gsの通電期間のとき、他方の駆動信号の正弦波用パルス群Gsの通電期間は休止期間となる。第1期間及び第2期間は、第1駆動信号の第1正弦波用パルス群Gs1の通電期間であるとともに、第2駆動信号の第2正弦波用パルス群Gs2の休止期間である。また、第3期間及び第4期間は、第1駆動信号の第1正弦波用パルス群Gs1の休止期間であるとともに、第2駆動信号の第2正弦波用パルス群Gs2の通電期間である。このように、第1駆動信号と第2駆動信号は、互いに位相が180度ずれている。
【0033】
第1駆動信号の第1正弦波用パルス群Gs1は、第1期間(第1駆動信号の通電期間の前半)ではパルス密度が徐々に高くなり(単位時間当たりのパルス数が徐々に増加し)、第2期間(第1駆動信号の通電期間の後半)ではパルス密度が徐々に低くなる(単位時間当たりのパルス数が徐々に減少する)。第1期間における第1正弦波用パルス群Gs1の時間変化とは逆の時間変化をたどるように、第2期間の第1正弦波用パルス群Gs1が時間変化する。つまり、図12のグラフに示されるように、第1期間における第1正弦波用パルス群Gs1のグラフと、第2期間における第2正弦波用パルス群Gs2のグラフは、第1期間と第2期間を境界として対称的なグラフになる。
【0034】
第2駆動信号の第2正弦波用パルス群Gs2は、第3期間(第2駆動信号の通電期間の前半)ではパルス密度が徐々に高くなり(単位時間当たりのパルス数が徐々に増加し)、第4期間(第2駆動信号の通電期間の後半)ではパルス密度が徐々に低くなる(単位時間当たりのパルス数が徐々に減少する)。第3期間における第2正弦波用パルス群Gs2の時間変化とは逆の時間変化をたどるように、第4期間の第2正弦波用パルス群Gs2が時間変化する。つまり、図12のグラフに示されるように、第3期間における第2正弦波用パルス群Gs2のグラフと、第4期間における第2正弦波用パルス群Gs2のグラフは、第3期間と第4期間を境界として対称的なグラフになる。なお、第3期間における第2駆動信号の第2正弦波用パルス群Gs2の時間変化は、第1期間における第1駆動信号の第1正弦波用パルス群Gs1の時間変化と共通である。また、第4期間における第2駆動信号の第2正弦波用パルス群Gs2の時間変化は、第2期間における第1駆動信号の第1正弦波用パルス群Gs1の時間変化と共通である。
【0035】
上記の第1駆動信号と第2駆動信号(及び設定電圧)がトランス10の一次側巻線に入力されることになる。第1駆動信号の第1パルスP1によって、第1スイッチ21がオンになり、トランス10の第1入力端子11とセンタータップ13の間の一次側巻線に設定電圧がかかり、一次側巻線がプラス方向(所定方向)に通電される。また、第2駆動信号の第2パルスP2によって、第2スイッチ22がオンになり、トランス10の第2入力端子12とセンタータップ13の間の一次側巻線に設定電圧がかかり、一次側巻線がマイナス方向(前記所定方向とは逆方向)に通電される。このように、図12に示す入力信号がトランス10の一次側巻線に入力されることになる。
【0036】
入力信号は、トランス10の一次側巻線に入力される信号である。図12に示す入力信号は、第1駆動信号をプラスとし、第2駆動信号をマイナスとして、両者を重ね合わせた信号である。入力信号には、第1正弦波用パルス群Gs1と第2弦波用パルス群とが所定周期で交互に現れる。
【0037】
図13Aは、出力部31に生体(詳しくは生体の等価回路)を接続した場合の比較例の刺激信号のグラフである。図中のグラフは、出力部31の出力波形(図1のXの電位の時間変化)を示している。図13Bは、図13AのFFT解析結果のグラフである。
【0038】
図13Aに示すように、生体の容量成分によって、刺激信号の電圧は、第1正弦波用パルス群Gs1の現れる第1期間及び第2期間に徐々に増加し、第2正弦波用パルス群Gs2の現れる第3期間及び第4期間に徐々に減少する。生体の容量成分は、第1正弦波用パルス群Gs1の現れる第2期間に充電され、第2正弦波用パルス群Gs2の現れる第3期間に放電されることになる。また、生体の容量成分は、第2正弦波用パルス群Gs2の現れる第4期間に逆側に充電され、第1正弦波用パルス群Gs1の現れる第1期間に放電されることになる。
【0039】
第1期間では第1パルスP1のパルス密度が徐々に高くなるため、第1期間では刺激信号の電圧変化(グラフの傾き)が徐々に急になり、第2期間では第1パルスP1のパルス密度が徐々に低くなるため、第2期間では刺激信号の電圧変化(グラフの傾き)が徐々に緩くなる。また、第3期間では第2パルスP2のパルス密度が徐々に高くなるため、第3期間では刺激信号の電圧変化が徐々に急になり、第4期間では第2パルスP2のパルス密度が徐々に低くなるため、第4期間では刺激信号の電圧変化が徐々に緩くなる。この結果、図13Aに示すように、生体の容量性の作用によって歪んだ刺激信号は、正弦波に近似した波形(疑似正弦波)になる。
【0040】
また、上記の説明において、第1期間における第1駆動信号のパルス密度の時間変化とは逆の時間変化をたどるように第2期間で第1駆動信号のパルス密度を時間変化させ、第3期間における第2駆動信号のパルス密度の時間変化とは逆の時間変化をたどるように第4期間で第2駆動信号のパルス密度を時間変化させていたのは、歪んだ刺激信号を正弦波に近似させるためである。また、第1期間における第1駆動信号のパルス密度の時間変化と、第3期間における第2駆動信号のパルス密度の時間変化とを共通にさせ、第2期間における第1駆動信号のパルス幅の時間変化と、第4期間における第2駆動信号のパルス密度の時間変化とを共通にさせていたのも、歪んだ刺激信号を正弦波に近似させるためである。図12の第1駆動信号や第2駆動信号のパルス群を「正弦波用パルス群」と呼んでいるのは、このためである。
【0041】
ところで、生体のリアクタンス特性には充電抵抗と放電抵抗に違いがあり、生体の容量成分に対する充電は比較的速くなるのに対し、放電は比較的遅くなる。このような充放電のバランスに偏りがあるため、図13Aの楕円で囲んだ領域に示すように、疑似正弦波の頂点(最高電位点又は最低電位点)の近傍において、疑似正弦波の波形が放電の遅れにより歪んだ状態になる。この結果、図13Bに示すように、高調波(ここでは第3高調波)のピークレベル(ここでは、-24.2dB)が比較的大きくなる。但し、生体に与える刺激をソフトにさせるためには、正弦波の歪みを抑制することが望ましく(刺激信号の波形をより正弦波に近づけることが望ましく)、高調波を抑制させること(高調波のピークレベルは小さくすること)が望ましい。
【0042】
(第1実施形態について)
図2は、第1実施形態の入力信号の説明図である。図中には、上から順に、第1駆動信号、第2駆動信号及び入力信号が示されている。
【0043】
第1駆動信号は、第1正弦波用パルス群Gs1と、第1放電用パルス群Gd1とを有する。また、第2駆動信号は、第2正弦波用パルス群Gs2と、第2放電用パルス群Gd2とを有する。
【0044】
第1駆動信号の第1正弦波用パルス群Gs1は、比較例の第1駆動信号の第1正弦波用パルス群Gs1と同様であり、刺激信号を疑似正弦波にするためのパルス群である。第1正弦波用パルス群Gs1は、第1スイッチをオンにする第1パルスP1により構成されている。第1正弦波用パルス群Gs1は、第1期間(第1駆動信号の通電期間の前半)ではパルス密度が徐々に高くなり(単位時間当たりのパルス数が徐々に増加し)、第2期間(第1駆動信号の通電期間の後半)ではパルス密度が徐々に低くなる(単位時間当たりのパルス数が徐々に減少する)。第1期間における第1正弦波用パルス群Gs1の時間変化とは逆の時間変化をたどるように、第2期間の第1正弦波用パルス群Gs1が時間変化する。つまり、図2の第1駆動信号のグラフ上において、第1正弦波用パルス群Gs1(放電用パルスを含まない)に着目すると、第1期間における第1正弦波用パルス群Gs1のグラフと、第2期間における第1正弦波用パルス群Gs1のグラフは、第1期間と第2期間を境界として対称的なグラフになる。
【0045】
第2駆動信号の第2正弦波用パルス群Gs2は、比較例の第2駆動信号の第2正弦波用パルス群Gs2と同様であり、刺激信号を疑似正弦波にするためのパルス群である。第2正弦波用パルス群Gs2は、第2スイッチをオンにする第2パルスP2により構成されている。第2正弦波用パルス群Gs2は、第3期間(第2駆動信号の通電期間の前半)ではパルス密度が徐々に高くなり(単位時間当たりのパルス数が徐々に増加し)、第4期間(第2駆動信号の通電期間の後半)ではパルス密度が徐々に低くなる(単位時間当たりのパルス数が徐々に減少する)。第3期間における第2正弦波用パルス群Gs2の時間変化とは逆の時間変化をたどるように、第4期間の第2正弦波用パルス群Gs2が時間変化する。つまり、図2の第2駆動信号のグラフ上において、第2正弦波用パルス群Gs2(放電用パルスを含まない)に着目すると、第3期間における第2正弦波用パルス群Gs2のグラフと、第4期間における第2正弦波用パルス群Gs2のグラフは、第3期間と第4期間を境界として対称的なグラフになる。なお、第3期間における第2駆動信号の第2正弦波用パルス群Gs2の時間変化は、第1期間における第1駆動信号の第1正弦波用パルス群Gs1の時間変化と共通である。また、第4期間における第2駆動信号の第2正弦波用パルス群Gs2の時間変化は、第2期間における第1駆動信号の第1正弦波用パルス群Gs1の時間変化と共通である。
【0046】
なお、図中の第1駆動信号は、パルス密度変調方式(PDM方式:pulse density modulation)により、第1期間では、単位時間当たりにおけるHレベルになる期間の割合が徐々に増加し、第2期間では、単位時間当たりにおけるHレベルになる期間の割合が徐々に減少する。また、図中の第2駆動信号も、パルス密度変調方式により、第3期間では、単位時間当たりにおけるHレベルになる期間の割合が徐々に増加し、第4期間では、単位時間当たりにおけるHレベルになる期間の割合が徐々に減少する。但し、パルス密度変調方式ではなく、パルス幅変調方式(PWM方式:pulse width modulation)によって、単位時間当たりにおけるHレベルになる期間の割合を増減させても良い。
【0047】
第1駆動信号及び第2駆動信号の放電用パルス群Gd(第1放電用パルス群Gd1及び第2放電用パルス群Gd2)は、正弦波用パルス群Gs(Gs1,Gs2)の前後に設けられるパルス群である。放電用パルス群Gdは、複数のパルスにより構成されている。ここでは、第1駆動信号の放電用パルス群Gdのことを第1放電用パルス群Gd1と呼び、第2駆動信号の放電用パルス群Gdのことを第2放電用パルス群Gd2と呼ぶ。第1放電用パルス群Gd1は、第1スイッチをオンにする第1パルスP1により構成されている。第2放電用パルスは、第2スイッチをオンにする第2パルスP2により構成されている。
【0048】
第1放電用パルス群Gd1は、第1正弦波用パルス群Gs1の直前及び直後に設けられる。第1放電用パルス群Gd1のタイミングは、第1正弦波用パルス群Gs1の最後の第1パルスP1と、第2正弦波用パルス群Gs2の最初の第2パルスP2との間のタイミングであるか、若しくは、第2正弦波用パルス群Gs2の最後の第2パルスP2と、第1正弦波用パルス群Gs1の最初の第1パルスP1との間のタイミングである。このため、第1放電用パルス群Gd1は、第2期間及び第3期間の境界付近と、第4期間と第1期間の境界付近に設けられる。
【0049】
第1パルスP1は、第1スイッチ21をオンにするためのパルス信号である。第1パルスP1の期間は、第1駆動信号がHレベルになり、第1スイッチ21がオンになる期間となる。第1放電用パルス群Gd1は複数の第1パルスP1で構成されるため、第1放電用パルス群Gd1の発生期間では、第1スイッチ21がオン/オフを繰り返すことになる。図2に示す第1放電用パルス群Gd1は、3つの第1パルスP1により構成されている。但し、後述するように、第1放電用パルス群Gd1を構成する第1パルスP1の数は、3に限られるものではない。
【0050】
第2放電用パルス群Gd2は、第2正弦波用パルス群Gs2の直前及び直後に設けられる。第2放電用パルス群Gd2のタイミングは、第2正弦波用パルス群Gs2の最後の第2パルスP2と、第1正弦波用パルス群Gs1の最初の第1パルスP1との間のタイミングであるか、若しくは、第1正弦波用パルス群Gs1の最後の第1パルスP1と、第2正弦波用パルス群Gs2の最初の第2パルスP2との間のタイミングである。このため、第2放電用パルス群Gd2は、第1放電用パルス群Gd1と同様に、第2期間及び第3期間の境界付近と、第4期間と第1期間の境界付近に設けられる。
【0051】
第2パルスP2は、第2スイッチ22をオンにするためのパルス信号である。第2パルスP2の期間は、第2駆動信号がHレベルになり、第2スイッチ22がオンになる期間となる。第2放電用パルス群Gd2は複数の第2パルスP2で構成されるため、第2放電用パルス群Gd2の発生期間では、第2スイッチ22がオン/オフを繰り返すことになる。図2に示す第2放電用パルス群Gd2は、3つの第2パルスP2により構成されている。但し、後述するように、第2放電用パルス群Gd2を構成する第2パルスP2の数は、3に限られるものではない。
【0052】
第1放電用パルス群Gd1及び第2放電用パルス群Gd2は、第1駆動信号の第1正弦波用パルス群Gs1と、第2駆動信号の第2正弦波用パルス群Gs2との境界付近に並行して発生している。第1放電用パルス群Gd1の発生期間と第2放電用パルス群Gd2の発生期間は重複している。但し、図2の入力信号の拡大図から理解できる通り、第1放電用パルス群Gd1の第1パルスP1と第2放電用パルス群Gd2の第2パルスP2は、交互に発生しており、互いに異なるタイミングで発生している。このため、第1パルスP1と第2パルスP2は、同時には発生しない(つまり、第1駆動信号と第2駆動信号が同時にHレベルにはならない)。図2の入力信号の拡大図から理解できる通り、第1パルスP1と第1パルスP1との間に、第2パルスP2が発生する。また、第2パルスP2と第2パルスP2との間に、第1パルスP1が発生する。言い換えると、第1放電用パルス群Gd1及び第2放電用パルス群Gd2の発生期間において、第1駆動信号がLレベルの期間(休止期間)に、第2駆動信号がHレベルになる期間(通電期間)がある。また、第1放電用パルス群Gd1及び第2放電用パルス群Gd2の発生期間において、第2駆動信号がLレベルの期間(休止期間)に、第1駆動信号がHレベルになる期間(通電期間)がある。
【0053】
第1実施形態では、第1正弦波用パルス群Gs1の直前及び直後に第1放電用パルス群Gd1が発生するとともに、第2正弦波用パルス群Gs2の直前及び直後に第2放電用パルス群Gd2が発生することによって、第1放電用パルス群Gd1と第2放電用パルス群Gd2とで構成される放電用パルス群Gdは、第1正弦波用パルス群Gs1の発生タイミングと第2正弦波用パルス群Gs2の発生タイミングとの間で発生することになる。つまり、図2の入力信号に示すように、放電用パルス群Gd(第1放電用パルス群Gd1及び第2放電用パルス群Gd2)は、第2期間及び第3期間の境界付近と、第4期間と第1期間の境界付近に設けられる。このように、放電用パルス群Gdは、第1正弦波用パルス群Gs1の発生タイミングと第2正弦波用パルス群Gs2の発生タイミングとの間に設けられる。このため、第1正弦波用パルス群Gs1の発生タイミングと第2正弦波用パルス群Gs2の発生タイミングとの間で、第1放電用パルス群Gd1の第1パルスP1と、第2放電用パルス群Gd2の第2パルスP2とが交互に発生することになる。
【0054】
図3Aは、出力部31に生体(詳しくは生体の等価回路)を接続した場合の第1実施形態の刺激信号のグラフである。図中のグラフは、出力部31の出力波形(図1のXの電位の時間変化)を示している。図3Bは、図3AのFFT解析結果のグラフである。
【0055】
図3Aに示すように、生体の容量性の作用によって歪んだ刺激信号は、比較例とほぼ同様に、正弦波に近似した波形(疑似正弦波)になる。また、図中の楕円で囲んだ領域に示すように、第1実施形態では、疑似正弦波の頂点(最高電位点又は最低電位点)の近傍において、放電の遅れが改善されており、正弦波の形状の歪みが抑制されている。この結果、基本波に対する高調波のピークレベルは、比較例では約-24.2dB(図13B参照)であるのに対し、第1実施形態では約-29.5dBになり、約5.3dBほど低減している。このFFT解析結果からしても、第1実施形態の放電用パルス群Gd(Gd1,Gd2)によって、疑似正弦波(刺激信号)の波形の歪みを抑制できたことが確認できる。このように、正弦波の歪みを抑制し、刺激信号の波形をより正弦波に近づけることによって、生体に与える刺激をソフトにさせることができる。
【0056】
なお、図3Aの領域Aに示す疑似正弦波の最高電位点の近傍では、第1パルスP1による影響よりも、第2パルスP2による影響が大きく現れる。つまり、領域Aに示す疑似正弦波の最高電位点の近傍では、第1パルスP1が入力されたときの刺激信号の電位の変化量(増加量)は小さいのに対し、第2パルスP2が入力されたときの刺激信号の電位の変化量(減少量)は大きい。このため、領域Aに示す疑似正弦波の最高電位点の近傍で、第1放電用パルス群Gd1の第1パルスP1と第2放電用パルス群Gd2の第2パルスP2は交互に発生させても、放電の遅れを改善することができ、正弦波の形状の歪みを抑制することができる。
同様に、図3Aの領域Bに示す疑似正弦波の最低電位点の近傍では、第2パルスP2による影響よりも、第1パルスP1による影響が大きく現れる。つまり、領域Bに示す疑似正弦波の最低電位点の近傍では、第2パルスP2が入力されたときの刺激信号の電位の変化量(減少量)は小さいのに対し、第1パルスP1が入力されたときの刺激信号の電位の変化量(増加量)は大きい。このため、領域Bに示す疑似正弦波の最低電位点の近傍で、第1放電用パルス群Gd1の第1パルスP1と第2放電用パルス群Gd2の第2パルスP2は交互に発生させても、放電の遅れを改善することができ、正弦波の形状の歪みを抑制することができる。
【0057】
ところで、疑似正弦波の最高電位点の近傍の歪みを抑制するために、放電用パルス群Gdとして、第1パルスP1を発生させずに、第2パルスP2のみを発生させることが考えられる。また、疑似正弦波の最低電位点の近傍の歪みを抑制するために、放電用パルス群Gdとして、第2パルスP2を発生させずに、第1パルスP1のみを発生させることが考えられる。但し、このように一方の極性のみのパルス(片極性のパルス)によって放電用パルス群Gdが構成される場合、生体の容量性には個体差があるため、どの個体にも適切な放電を行えるように放電用パルス群Gdを設定することは難しい。例えば放電し難い個体に適合するように放電用パルス群Gdが構成された場合に、放電し易い個体に生体刺激装置が使用されてしまうと、放電用パルス群Gdによって過剰な放電が行われてしまい、疑似正弦波がかえって歪んでしまうおそれがある。これに対し、本実施形態では、疑似正弦波の頂点(最高電位点又は最低電位点)の近傍では、第1パルスP1及び第2パルスP2のうちの一方のパルスの影響が他方のパルスの影響よりも大きく現れることを利用して、第1パルスP1及び第2パルスP2の両方のパルス(両極性のパルス)によって放電用パルスを構成しているため、過剰な放電が行われてしまうような事態を抑制でき、どの個体にも適度な放電を行えるように放電用パルスを設定することが可能になる。
【0058】
図2に示す第1放電用パルス群Gd1の第1パルスP1と第2放電用パルス群Gd2の第2パルスP2は、それぞれ3つずつである(図2参照)。但し、第1パルスP1や第2パルスP2の数は3に限られるものではない。
【0059】
図4Aは、5個ずつの第1パルスP1及び第2パルスP2によって放電用パルス群Gdを構成した場合の刺激信号のグラフである。図4Bは、図4AのFFT解析結果のグラフである。また、図5Aは、7個ずつの第1パルスP1及び第2パルスP2によって放電用パルス群Gdを構成した場合の刺激信号のグラフである。図5Bは、図5AのFFT解析結果のグラフである。
【0060】
図4A及び図5Aの楕円で囲んだ領域に示すように、疑似正弦波の頂点(最高電位点又は最低電位点)の近傍において、放電の遅れが改善されており、正弦波の形状の歪みが抑制されている。このように、放電用パルス群Gdを構成する第1パルスP1や第2パルスP2の数を異ならせても、疑似正弦波の頂点の近傍において、放電の遅れを改善させることができ、正弦波の形状の歪みを抑制することができる。
【0061】
図6は、基本波にする高調波のピークレベルの比較表である。
基本波に対する高調波のピークレベルは、比較例(図13B参照)では約-24.2dBであるのに対し、放電用パルス群Gdの第1パルスP1及び第2パルスP2の数がそれぞれ5の場合(図4B参照)には、約-32.5dBになり、約8.3dBほど低減し、放電用パルス群Gdの第1パルスP1及び第2パルスP2の数がそれぞれ7の場合(図5B参照)には、約-32.1dBになり、約7.9dBほど低減している(なお、放電用パルス群Gdの第1パルスP1及び第2パルスP2の数がそれぞれ3の場合には、既に説明した通り、約-29.5dBになり、約5.3dBほど低減している)。このFFT解析結果に示される通り、放電用パルス群Gdを構成する第1パルスP1や第2パルスP2の数を異ならせても、第1実施形態の放電用パルス群Gdによって、疑似正弦波(刺激信号)の波形の歪みを抑制できたことが確認できる。
【0062】
(第2実施形態について)
図7は、第2実施形態の入力信号の説明図である。図中には、上から順に、第1駆動信号、第2駆動信号及び入力信号が示されている。
【0063】
第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、第1駆動信号は、正弦波用パルス群Gs(第1正弦波用パルス群Gs1)と、放電用パルス群Gd(第1放電用パルス群Gd1)とを有し、第2駆動信号は、正弦波用パルス群Gs(第2正弦波用パルス群Gs2)と、放電用パルス群Gd(第2放電用パルス群Gd2)とを有する。第2実施形態では、放電用パルス群Gd(第1放電用パルス群Gd1及び第2放電用パルス群Gd2)は、正弦波用パルス群Gsの後に設けられている。正弦波用パルス群Gsは、周期Tで繰りし発生する。図中には、多数の正弦波用パルス群Gsが周期Tで繰り返し発生した後の最後の正弦波用パルス群Gsが示されている。放電用パルス群Gdは、周期Tで繰り返し発生した多数の正弦波用パルス群Gsの最後の正弦波用パルス群Gs(ここでは第2正弦波用パルス群Gs2)の後に、発生する。
【0064】
なお、図中の最後の正弦波用パルス群Gsは、第4期間が終了するタイミングで停止している。但し、最後の正弦波用パルス群Gsの停止タイミングは、第4期間が終了するタイミングでなくても良い。例えば、最後の正弦波用パルス群Gsの停止タイミングは、第2期間が終了するタイミングでも良いし、第1~第4期間のいずれかの期間の途中のタイミングでも良い。
【0065】
図7の入力信号の拡大図から理解できる通り第2実施形態においても、第1放電用パルス群Gd1の第1パルスP1と第2放電用パルス群Gd2の第2パルスP2は、交互に発生しおり、互いに異なるタイミングで発生している。このため、第1パルスP1と第2パルスP2は、同時には発生しない(つまり、第1駆動信号と第2駆動信号が同時にHレベルにはならない)。また、入力信号の拡大図から理解できる通り、第1パルスP1と第1パルスP1との間に、第2パルスP2が発生する。また、第2パルスP2と第2パルスP2との間に、第1パルスP1が発生する。
【0066】
第2実施形態では、最後の正弦波用パルス群Gs(ここでは第2正弦波用パルス群Gs2)が発生した後に、第1放電用パルス群Gd1と第2放電用パルス群Gd2が発生し、第1放電用パルス群Gd1の第1パルスP1と、第2放電用パルス群Gd2の第2パルスP2とが交互に発生することになる。
【0067】
図7の入力信号の拡大図に示すように、放電用パルス群Gdは、複数の第1パルスP1と複数の第2パルスP2とによって生成される。放電用パルス群Gdは、第1パルスP1と第2パルスP2とが交互に発生することによって構成される。第2実施形態では、最後の正弦波用パルス群Gs(ここでは第2正弦波用パルス群Gs2)が発生した後に、第1パルスP1と第2パルスP2が交互に発生することになる。
【0068】
第2実施形態の放電用パルス群Gdの発生期間は、周期Tの1/4の期間(第1期間に相当する期間)よりも長く設定されている。このため、第2実施形態の放電用パルス群Gdの発生期間は、第1実施形態の放電用パルス群Gdの発生期間と比べて、長くなる(第1実施形態の放電用パルス群Gdの発生期間は、周期Tの1/4の期間(第1期間に相当する期間)よりも短い)。ここでは、第2実施形態の放電用パルス群Gdの発生期間は、周期Tよりも長い期間に設定されている。
【0069】
図8は、出力部31に生体(詳しくは生体の等価回路)を接続した場合の第2実施形態の刺激信号のグラフである。
【0070】
第2実施形態においても、生体の容量性の作用によって歪んだ刺激信号は、正弦波に近似した波形(疑似正弦波)になる。正弦波用パルス群Gsが周期Tで繰り返し入力されることによって、周期Tの疑似正弦波が繰り返し出力されることになる。図中の丸枠で囲んだ領域において、放電用パルス群Gdの入力が開始されている。図中の丸枠で囲んだ領域では、第2パルスP2が入力されたときの刺激信号の電位の変化量(減少量)は小さいのに対し、第1パルスP1が入力されたときの刺激信号の電位の変化量(増加量)は大きい。このように、生体の容量成分が充電された状況下では、第1パルスP1及び第2パルスP2のうちの一方のパルスの影響が他方のパルスの影響よりも大きく現れる。このため、第1放電用パルス群Gd1の第1パルスP1と第2放電用パルス群Gd2の第2パルスP2とが交互に発生する放電用パルス群Gdを入力することによって、刺激信号の電位を0Vに近づけることができる。
【0071】
図9Aは、最後の正弦波用パルス群Gsの後に放電用パルス群Gdを設けない場合の出力波形(図1のXの電位の時間変化)を示している。最後の正弦波用パルス群Gsの入力が停止され、疑似正弦波の出力が停止された後、残留振動が発生している。この残留振動は、出力側の誘導性リアクタンスと、生体の容量性リアクタンスの共振に起因する減衰振動現象である。なお、残留振動の周波数や出現時間は、出力トランスを構成する部品や、生体の容量や抵抗によって変化することになる。
【0072】
図9Bは、最後の正弦波用パルス群Gsの後に放電用パルス群Gdを設けた場合の出力波形を示している。最後の正弦波用パルス群Gsの後に放電用パルス群Gdが入力されることによって、刺激信号の電位を0Vに近づけることができるため、残留振動を抑制することができる。なお、放電用パルス群Gdを設けない場合(図9A参照)では残留振動が十分減衰するまでに約40ms以上かかるのに対し、約4.5msの放電用パルス群Gdを設けた場合(図9B)には、残留振動が十分減衰するまでの時間を約5msに短縮することができる。
【0073】
なお、第2実施形態のように放電用パルス群Gdを発生させた後、制御部40は、第1駆動信号及び第2駆動信号として正弦波用パルス群Gs(第1正弦波用パルス群Gs1及び第2正弦波用パルス群Gs2)を再び繰り返し発生させて、刺激信号として周期Tの疑似正弦波を再び繰り返し出力しても良い。第2実施形態によれば、放電用パルス群Gdを発生させることによって刺激信号の電位を0Vに近づけることができるため、疑似正弦波を繰り返し出力しても生体に電荷が蓄積され続けることを抑制できる。
【0074】
図10は、第2実施形態の変形例の入力信号の説明図である。
【0075】
変形例においても、第1駆動信号は、正弦波用パルス群Gs(第1正弦波用パルス群Gs1)と、放電用パルス群Gd(第1放電用パルス群Gd1)とを有し、第2駆動信号は、正弦波用パルス群Gs(第2正弦波用パルス群Gs2)と、放電用パルス群Gd(第2放電用パルス群Gd2)とを有する。また、変形例においても、放電用パルス群Gdは、周期Tで繰り返し発生した多数の正弦波用パルス群Gsの最後の正弦波用パルス群Gsの後に、発生する。
【0076】
変形例では、第1駆動信号の第1放電用パルス群Gd1は、片極性のパルス群と、両極性のパルス群とにより構成されている。第2駆動信号の第2放電用パルス群Gd2は、両極性のパルス群により構成されている。変形例では、第1駆動信号の第1放電用パルス群Gd1は、第2駆動信号の第2放電用パルス群Gd2よりも早く発生する(第1放電用パルス群Gd1の開始タイミングは第2放電用パルス群Gd2の開始タイミングよりも早い)。第1放電用パルス群Gd1を構成する複数の第1パルスP1のうち、第2放電用パルス群Gd2の発生前に発生するパルスが、片極用パルスとなる。また、第1放電用パルス群Gd1を構成する複数の第1パルスP1のうち、第2放電用パルス群Gd2の発生期間と重複する期間に発生するパルスが、両極性のパルスとなる。第1放電用パルス群Gd1と第2放電用パルス群Gd2が重複して発生する重複期間では、第1放電用パルス群Gd1の第1パルスP1(両極性のパルス)と第2放電用パルス群Gd2の第2パルスP2(両極性のパルス)は、交互に発生しており、互いに異なるタイミングで発生している。
【0077】
図10の入力信号に示すように、放電用パルス群Gdは、片極性のパルス群と、両極性のパルス群とにより構成されている。入力信号の片極性のパルス群は、第1駆動信号の片極用パルスによって生成される。また、入力信号の両極性のパルス群は、第1駆動信号の両極性のパルス群と、第2駆動信号の両極性のパルス群とによって生成される。変形例では、片極性のパルス群の発生期間には、逆極性の放電用のパルス(ここでは第2パルスP2)は発生しない。両極性のパルス群の発生期間には、第1パルスP1と第2パルスP2が交互に発生する。
【0078】
図10に示す変形例では、最後の正弦波用パルス群Gsは、第4期間が終了するタイミングで停止している。このような場合、第1駆動信号の第1放電用パルス群Gd1は、第2駆動信号の第2放電用パルス群Gd2よりも早く発生することが望ましい(言い換えると、第1駆動信号の第1放電用パルス群Gd1に、片極性のパルスが設けられることが望ましい)。これにより、後述するように、刺激信号の電位を速やかに0Vに近づけることができる。一方、仮に最後の正弦波用パルス群Gsが第2期間の終了タイミングで停止する場合には、第2駆動信号の第2放電用パルス群Gd2は、第1駆動信号の第1放電用パルス群Gd1よりも早く発生することが望ましい(言い換えると、第1駆動信号の第1放電用パルス群Gd1ではなく、第2駆動信号の第2放電用パルス群Gd2に、片極性のパルスが設けられることが望ましい)。このように、最後の正弦波用パルス群Gsの停止タイミング(若しくは、放電用パルス群Gdの発生タイミング)における刺激信号の電位に応じて、片極性のパルス群は、第1駆動信号の第1放電用パルス群Gd1又は第2駆動信号の第2放電用パルス群Gd2のどちらか一方に設けられることになる。
【0079】
図11は、変形例の刺激信号のグラフである。変形例では、片極性のパルス群の発生期間には逆極性の放電用パルスが入力されないため、図8のように両極性の放電用のパルス(第1パルスP1及び第2パルスP2)が入力される場合と比べて、生体に蓄積された電荷を速やかに放電できる。
【0080】
ところで、生体の容量性には個体差があるため、どの個体にも適切な放電を行えるように片極パルス群を設定することは難しい(例えば放電し難い個体に適合するように片極パルス群のパルス数を増やした場合、放電し易い個体に生体刺激装置が使用されてしまうと、片極パルス群によって過剰な放電が行われてしまい、かえって残留振動が長引くおそれがある)。これに対し、前述の第2実施形態(図7及び図8参照)では、第1パルスP1及び第2パルスP2の両方のパルス(両極性のパルス)によって放電用パルスを構成しているため、過剰な放電が行われてしまうような事態を抑制でき、どの個体にも適度な放電を行えるように放電用パルスを設定することが可能になる。但し、最も放電し易い個体に適合するように片極パルス群を設定することができる場合には、変形例によって、どの個体にも適度な放電を行えるように放電用パルスを設定することを可能にさせることと、生体に蓄積された電荷を速やかに放電することとを両立させることができる。
【0081】
<小括>
第1実施形態及び第2実施形態の生体刺激装置1は、トランス10と、第1スイッチ21と、第2スイッチ22と、制御部40と、出力部31とを備え(図1参照)、制御部は、第1正弦波用パルス群Gs1と第1放電用パルス群Gd1とを有する第1駆動信号と、第2正弦波用パルス群Gs2と第2放電用パルス群Gd2とを有する第2駆動信号とを生成する(図2図7及び図9参照)。制御部40は、第1正弦波用パルス群Gs1と第2正弦波用パルス群Gs2とを交互に発生させることによって、疑似正弦波となる刺激信号を出力部31から出力させる。また、制御部40は、第1放電用パルス群Gd1を構成する第1パルスP1と、第2放電用パルス群Gd2を構成する第2パルスP2とを交互に発生させる。第1実施形態及び第2実施形態の生体刺激装置1によれば、放電用パルス群Gdを両極性のパルス(第1パルスP1及び第2パルスP2)で構成することによって、放電用パルス群Gdを片極性のパルスで構成する場合と比べて、生体の個体差の影響を抑制しつつ、生体に蓄積された電荷を放電させることができる。
【0082】
第1実施形態の制御部40は、第1正弦波用パルス群Gs1の直前及び直後に第1放電用パルス群Gd1を発生させるとともに、第2正弦波用パルス群Gs2の直前及び直後に第2放電用パルス群Gd2を発生させることによって(図2参照)、第1正弦波用パルス群Gs1の発生タイミングと第2正弦波用パルス群Gs2の発生タイミングとの間で、第1放電用パルス群Gd1の第1パルスP1と、第2放電用パルス群Gd2の第2パルスP2とを交互に発生させている。これにより、生体の個体差の影響を抑制しつつ、生体に蓄積された電荷を放電させることによって、疑似正弦波の歪みを抑制することができる。
【0083】
第2実施形態の制御部40は、最後の正弦波用パルス群Gsを発生させた後に、第1放電用パルス群Gd1及び第2放電用パルス群Gd2を発生させ、第1放電用パルス群Gd1の第1パルスP1と、第2放電用パルス群Gd2の第2パルスP2とを交互に発生させている(図7図9参照)。これにより、生体の個体差の影響を抑制しつつ、疑似正弦波を繰り返し出力した時に生体に蓄積された電荷を放電させることができる。
【0084】
第2実施形態の変形例の制御部40は、第1放電用パルス群Gd1及び第2放電用パルス群Gd2の一方(図9では第1放電用パルス群Gd1)を他方(図9では第2放電用パルス群Gd2)よりも早く発生させることによって、第1放電用パルス群Gd1の第1パルスP1と第2放電用パルス群Gd2の第2パルスP2とを交互に発生させる直前に、第1パルスP1及び第2パルスP2の一方(図9では第1パルスP1)を発生させている。これにより、生体に蓄積された電荷を速やかに放電することができる。
【0085】
===その他===
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。
【0086】
<トランス10について>
上記の実施形態では、第1スイッチ21がトランスの一次側巻線の一端側に接続されており、第2スイッチ22がトランス10の一次側巻線の他端側に接続されており、トランス10のセンタータップ13に所定の電圧V1が印加されているため、一次側巻線の分割が不要であり、安価なトランス10を利用可能である。但し、トランス10の一次側巻線が2つに分割されていても良い。
【0087】
また、上記の実施形態では、図1に示す構成によって、出力部31から刺激信号を生体に出力していた。但し、上記の実施形態で説明したような刺激信号を出力部から出力できるのであれば、このような構成に限られるものではない。
【符号の説明】
【0088】
1 生体刺激装置、10 トランス、
11 第1入力端子、12 第2入力端子、13 センタータップ、
14 第1出力端子、15 第2出力端子、
21 第1スイッチ、22 第2スイッチ、
31 出力部(導子)、40 制御部、
41 処理装置、42 電圧設定部、
42A D/Aコンバーター、42B アンプ、
43 駆動信号生成部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2023-01-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体に刺激信号を出力する生体刺激装置であって、
トランスと、
前記トランスの一次側巻線に所定方向の電流を流すための第1スイッチと、
前記トランスの前記一次側巻線に前記所定方向とは逆方向の電流を流すための第2スイッチと、
前記第1スイッチを駆動する第1駆動信号と、前記第2スイッチを駆動する第2駆動信号とを生成する制御部と、
前記トランスの二次側巻線に接続されており前記刺激信号を出力する出力部と、
を備え、
前記制御部は、
前記第1スイッチをオンにする第1パルスから構成された第1正弦波用パルス群と、前記第1パルスから構成された第1放電用パルス群とを有する前記第1駆動信号を生成し、
前記第2スイッチをオンにする第2パルスから構成された第2正弦波用パルス群と、前記第2パルスから構成された第2放電用パルス群とを有する前記第2駆動信号を生成し、
前記第1正弦波用パルス群と前記第2正弦波用パルス群を交互に発生させることによって、擬似正弦波となる前記刺激信号を前記出力部から出力させるとともに、
前記第1正弦波用パルス群の直前及び直後に前記第1放電用パルス群を発生させるとともに、前記第2正弦波用パルス群の直前及び直後に前記第2放電用パルス群を発生させることによって、前記第1正弦波用パルス群の発生タイミングと前記第2正弦波用パルス群の発生タイミングとの間で、前記第1放電用パルス群の前記第1パルスと、前記第2放電用パルス群の前記第2パルスとを交互に発生させる
ことを特徴とする生体刺激装置。
【請求項2】
生体に刺激信号を出力する生体刺激装置であって、
トランスと、
前記トランスの一次側巻線に所定方向の電流を流すための第1スイッチと、
前記トランスの前記一次側巻線に前記所定方向とは逆方向の電流を流すための第2スイッチと、
前記第1スイッチを駆動する第1駆動信号と、前記第2スイッチを駆動する第2駆動信号とを生成する制御部と、
前記トランスの二次側巻線に接続されており前記刺激信号を出力する出力部と、
を備え、
前記制御部は、
前記第1スイッチをオンにする第1パルスから構成された第1正弦波用パルス群と、前記第1パルスから構成された第1放電用パルス群とを有する前記第1駆動信号を生成し、
前記第2スイッチをオンにする第2パルスから構成された第2正弦波用パルス群と、前記第2パルスから構成された第2放電用パルス群とを有する前記第2駆動信号を生成し、
前記第1正弦波用パルス群と前記第2正弦波用パルス群を交互に発生させることによって、擬似正弦波となる前記刺激信号を前記出力部から出力させるとともに、
前記第1駆動信号の正弦波用パルス群である前記第1正弦波用パルス群と前記第2駆動信号の正弦波用パルス群である前記第2正弦波用パルス群とのうちの最後の前記正弦波用パルス群を発生させた後に、前記第1放電用パルス群及び前記第2放電用パルス群を発生させ、前記第1放電用パルス群の前記第1パルスと、前記第2放電用パルス群の前記第2パルスとを交互に発生させる
ことを特徴とする生体刺激装置。
【請求項3】
請求項2に記載の生体刺激装置であって、
前記制御部は、
前記第1放電用パルス群及び前記第2放電用パルス群の一方を他方よりも早く発生させることによって、前記第1放電用パルス群の前記第1パルスと前記第2放電用パルス群の前記第2パルスとを交互に発生させる直前に、前記第1パルス及び前記第2パルスの一方を発生させることを特徴とする生体刺激装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
上記目的を達成するための主たる第1の発明は、
生体に刺激信号を出力する生体刺激装置であって、
トランスと、
前記トランスの一次側巻線に所定方向の電流を流すための第1スイッチと、
前記トランスの前記一次側巻線に前記所定方向とは逆方向の電流を流すための第2スイッチと、
前記第1スイッチを駆動する第1駆動信号と、前記第2スイッチを駆動する第2駆動信号とを生成する制御部と、
前記トランスの二次側巻線に接続されており前記刺激信号を出力する出力部と、
を備え、
前記制御部は、
前記第1スイッチをオンにする第1パルスから構成された第1正弦波用パルス群と、前記第1パルスから構成された第1放電用パルス群とを有する前記第1駆動信号を生成し、
前記第2スイッチをオンにする第2パルスから構成された第2正弦波用パルス群と、前記第2パルスから構成された第2放電用パルス群とを有する前記第2駆動信号を生成し、
前記第1正弦波用パルス群と前記第2正弦波用パルス群を交互に発生させることによって、擬似正弦波となる前記刺激信号を前記出力部から出力させるとともに、
前記第1正弦波用パルス群の直前及び直後に前記第1放電用パルス群を発生させるとともに、前記第2正弦波用パルス群の直前及び直後に前記第2放電用パルス群を発生させることによって、前記第1正弦波用パルス群の発生タイミングと前記第2正弦波用パルス群の発生タイミングとの間で、前記第1放電用パルス群の前記第1パルスと、前記第2放電用パルス群の前記第2パルスとを交互に発生させる
ことを特徴とする生体刺激装置である。
また、上記目的を達成するための主たる第2の発明は、
生体に刺激信号を出力する生体刺激装置であって、
トランスと、
前記トランスの一次側巻線に所定方向の電流を流すための第1スイッチと、
前記トランスの前記一次側巻線に前記所定方向とは逆方向の電流を流すための第2スイッチと、
前記第1スイッチを駆動する第1駆動信号と、前記第2スイッチを駆動する第2駆動信号とを生成する制御部と、
前記トランスの二次側巻線に接続されており前記刺激信号を出力する出力部と、
を備え、
前記制御部は、
前記第1スイッチをオンにする第1パルスから構成された第1正弦波用パルス群と、前記第1パルスから構成された第1放電用パルス群とを有する前記第1駆動信号を生成し、
前記第2スイッチをオンにする第2パルスから構成された第2正弦波用パルス群と、前記第2パルスから構成された第2放電用パルス群とを有する前記第2駆動信号を生成し、
前記第1正弦波用パルス群と前記第2正弦波用パルス群を交互に発生させることによって、擬似正弦波となる前記刺激信号を前記出力部から出力させるとともに、
前記第1駆動信号の正弦波用パルス群である前記第1正弦波用パルス群と前記第2駆動信号の正弦波用パルス群である前記第2正弦波用パルス群とのうちの最後の前記正弦波用パルス群を発生させた後に、前記第1放電用パルス群及び前記第2放電用パルス群を発生させ、前記第1放電用パルス群の前記第1パルスと、前記第2放電用パルス群の前記第2パルスとを交互に発生させる
ことを特徴とする生体刺激装置である。