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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054563
(43)【公開日】2024-04-17
(54)【発明の名称】燃料電池用の加湿装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04119 20160101AFI20240410BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20240410BHJP
【FI】
H01M8/04119
H01M8/04 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160860
(22)【出願日】2022-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】000151209
【氏名又は名称】マーレジャパン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】石神 新太郎
(72)【発明者】
【氏名】野中 敦
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 大蔵
【テーマコード(参考)】
5H127
【Fターム(参考)】
5H127AB04
5H127AC02
5H127BB02
5H127BB07
5H127BB12
5H127BB34
5H127BB37
5H127EE17
(57)【要約】
【課題】シール性を確保しつつ組み付け性を向上させることができる燃料電池用の加湿装置を提供する。
【解決手段】燃料電池用の加湿装置1は、2種類の流体が水分を交換可能に通過する流路を有する加湿部本体2と、加湿部本体2を収容するとともにハウジング4の凹部411に挿入されるケース部3と、を備える。ケース部3は、凹部411への挿入方向(Z方向)に沿って延びるとともに互いに対向する一対の板部31,32と、凹部411内且つ一対の板部31,32の間に形成されて流体が通過する開口部36,37と、板部31,32の外面31A,32A側に設けられるシール部38と、を有する。シール部38は、板部31,32のうち流体の入口側となる開口部36の側の端縁部311,321と、出口側となる開口部37の側の端縁部312,322と、のうち少なくとも一方に沿って設けられる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種類の流体が水分を交換可能なように通過可能な流路を有する加湿部本体と、
前記加湿部本体を収容するとともにハウジングの凹部に挿入されるケース部と、を備え、
前記ケース部は、前記凹部への挿入方向に沿って延びるとともに互いに対向する一対の板部と、前記凹部内且つ前記一対の板部の間に形成されて流体が通過する開口部と、前記板部の外面側に設けられるシール部と、を有し、
前記シール部は、前記板部のうち流体の入口側となる前記開口部の側の端縁部と、出口側となる前記開口部の側の端縁部と、のうち少なくとも一方に沿って設けられることを特徴とする燃料電池用の加湿装置。
【請求項2】
前記ハウジングをさらに備え、
前記凹部のうち前記一対の板部のそれぞれと対向する一対の対向内面が、該凹部の底部に向かうにしたがって間隔が狭くなる収容側テーパ部を有し、
前記シール部が、前記底部に向かうにしたがって前記板部からの突出寸法が小さくなるシール側テーパ部を有することを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池用の加湿装置。
【請求項3】
前記板部は、前記凹部のうち当該板部と対向する対向内面と噛み合う凸部又は凹部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池用の加湿装置。
【請求項4】
前記シール部は、前記板部から立設されるように延びる立設部と、前記立設部の先端に連続する接触部と、を有し、
前記接触部は、前記板部から遠ざかるにしたがって前記開口部に向かって延びる第1傾斜部と、反対側に向かって延びる第2傾斜部と、を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池用の加湿装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用の加湿装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両等に搭載される燃料電池において、供給される空気等の流体に適切な量の水分(水蒸気を含む。以下においても、流体に含まれる「水分」は、水蒸気を含むものとする)を含ませるために加湿装置を用いることが知られている。このように2つの流体同士の間で水分を交換させる加湿装置として、膜部材を有するブロックが筒状のハウジング内に収容されたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された加湿装置では、ブロックは、挿入方向の両端面が閉じられるとともに4つの側面が開放されて流体が通過可能となっており、開放された3つの面に対して、枠状のシール部材が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許出願公開第4000720号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたようにブロックに対して複数のシール部材を設けつつハウジングに挿入する構成では、組み付け性が低下しやすかった。特に、枠状のシール部材は、挿入方向に交差するように延びる部分を有するため、挿入時に抵抗となりやすい。このとき、シール部材の接触圧を低くすれば挿入が容易となるものの、シール性が低下する可能性がある。このように、ハウジングにブロック状の部材を挿入する構成では、組み付け性とシール性とを両立させることは困難であった。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、シール性を確保しつつ組み付け性を向上させることができる燃料電池用の加湿装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る燃料電池用の加湿装置は、2種類の流体が水分を交換可能なように通過可能な流路を有する加湿部本体と、前記加湿部本体を収容するとともにハウジングの凹部に挿入されるケース部と、を備え、前記ケース部は、前記凹部への挿入方向に沿って延びるとともに互いに対向する一対の板部と、前記凹部内且つ前記一対の板部の間に形成されて流体が通過する開口部と、前記板部の外面側に設けられるシール部と、を有し、前記シール部は、前記板部のうち流体の入口側となる前記開口部の側の端縁部と、出口側となる前記開口部の側の端縁部と、のうち少なくとも一方に沿って設けられることを特徴とする。
【0007】
この態様によれば、流体の入口側となる端縁部と出口側となる端縁部とのうち少なくとも一方に沿って板部の外面側にシール部が設けられていることで、入口側又は出口側の開口部を通過する流体が板部と凹部の内面との間に侵入することを抑制することができる。このとき、端縁部は凹部に対するケース部の挿入方向に沿って延びており、シール部は端縁部に沿って延びることから、挿入時においてシール部が抵抗となりにくい。従って、シール部の接触圧を適宜に設定しやすく、シール性を確保しつつ組み付け性を向上させることができる。
【0008】
前記ハウジングをさらに備え、前記凹部のうち前記一対の板部のそれぞれと対向する一対の対向内面が、該凹部の底部に向かうにしたがって間隔が狭くなる収容側テーパ部を有し、前記シール部が、前記底部に向かうにしたがって前記板部の外面からの突出寸法が小さくなるシール側テーパ部を有してもよい。この態様によれば、挿入方向との直交面内におけるハウジングとケース部との相対位置が所定の関係となっている場合には、挿入完了時又はその直前にのみシール部が対向内面に接触することとなり、挿入時の抵抗を低減し、組み付け性をさらに向上させることができる。また、上記の相対位置が所定の関係からずれている場合には、収容側テーパ部とシール側テーパ部とが接触することによって、ハウジングとケース部とが所定の関係に近づくように案内され、組み付け性を向上させることができる。
【0009】
前記板部は、前記凹部のうち当該板部と対向する対向内面と噛み合う凸部又は凹部を有してもよい。この態様によれば、凸部又は凹部によってラビリンス構造を形成することができ、シール性をさらに向上させることができる。尚、このようなラビリンス構造は、シール部に対して開口部の側に形成されてもよいし、その反対側に形成されてもよい。
【0010】
前記シール部は、前記板部から立設されるように延びる立設部と、前記立設部の先端に連続する接触部と、を有し、前記接触部は、前記板部から遠ざかるにしたがって前記開口部に向かって延びる第1傾斜部と、反対側に向かって延びる第2傾斜部と、を有してもよい。この態様によれば、シール部は、2つの傾斜部が開く(先端が互いに遠ざかる)ように変形しつつ凹部の内面に接触し、変形量を確保しつつ所望の形態に変形させやすく、シール性を確保しやすい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るの燃料電池用の加湿装置によれば、流体の入口側となる端縁部と出口側となる端縁部とのうち少なくとも一方に沿って板部の外面側にシール部が設けられていることで、シール性を確保しつつ組み付け性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る加湿装置を示す分解斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る加湿装置の加湿部本体を模式的に示す分解斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係る加湿装置の加湿部本体及びケース部を示す分解斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係る加湿装置を示す断面図である。
図5】本発明の実施形態に係る加湿装置のケース部の板部を示す側面図である。
図6図5のA-A線に沿った断面図である。
図7】本発明の実施形態に係る加湿装置の組み立て前におけるケース部及びハウジングを模式的に示す断面図である。
図8】本発明の実施形態に係る加湿装置の組み立て後におけるケース部及びハウジングを模式的に示す断面図である。
図9】本発明の変形例に係る加湿装置を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。本発明の実施形態に係る燃料電池用の加湿装置1は、2種類の流体が水分を交換可能に通過する流路を有する加湿部本体2と、加湿部本体2を収容するとともにハウジング4の凹部411に挿入されるケース部3と、を備える。ケース部3は、凹部411への挿入方向(Z方向)に沿って延びるとともに互いに対向する一対の板部31,32と、凹部411内且つ一対の板部31,32の間に形成されて流体が通過する開口部36,37と、板部31,32の外面31A,32A側に設けられるシール部38と、を有する。シール部38は、板部31,32のうち流体の入口側となる開口部36の側の端縁部311,321と、出口側となる開口部37の側の端縁部312,322と、のうち少なくとも一方に沿って設けられる。
【0014】
加湿装置1は、例えば車載された燃料電池において水を電気分解するFCスタックに対して送り込まれる空気を加湿するものであって、ハウジング4に加湿部本体2が収容され、このハウジング4に対して湿潤流体及び乾燥流体(湿潤流体よりも水分が少ない流体)のそれぞれが通過する流路部が接続される。燃料電池では、エアクリーナによって不純物やゴミ等が除去された空気が、エアコンプレッサによってFCスタックに送り込まれ、水分を含んだ空気がFCスタックから排出される。加湿装置1は、FCスタックから排出される空気を湿潤流体とし、FCスタックに送り込む空気を乾燥流体として、湿潤流体から乾燥流体に水分を移動させる(水分を交換する)ものである。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る加湿装置1を示す分解斜視図である。加湿装置1は、図1に示すように、加湿部本体2と、ケース部3と、ハウジング4と、を備える。以下では、ハウジング4へのケース部3の挿入方向をZ方向とし、Z方向と直交する平面をXY平面とする。
【0016】
図2は、加湿装置1の加湿部本体2を模式的に示す分解斜視図である。加湿部本体2は、図2に示すように、積層された複数の平膜状部材21と、隣り合う2つの平膜状部材21の間に配置されるスペーサ22と、を有して直方体状に構成されている。複数の平膜状部材21は、Z方向及びY方向に沿った辺を有してそれぞれ長方形状に形成され、X方向に積層されている。平膜状部材21は、水分を含む流体から実質的に水分のみを選択的に透過させる性質を有する膜によって形成され、例えばポリテトラフルオロエチレン等の水蒸気透過性材料により形成された膜を積層させたり、水蒸気透過性材料を含浸させた膜を用いたりすることによって形成される。
【0017】
スペーサ22は、全体として板状に形成され、面内の一方向において流体が通過可能なものであって、例えば断面波形状に形成されている。加湿部本体2において、Y方向に流体が通過可能なスペーサ22と、Z方向に流体が通過可能なスペーサ22と、が交互に配置されている。本実施形態では、湿潤流体がY方向に通過し、乾燥流体がZ方向に通過するものとする。即ち、直方体状の加湿部本体2において、XY平面に沿った側面23,24が、乾燥流体が出入りする面となり、ZX平面に沿った側面25,26が、湿潤流体が出入りする面となる。
【0018】
図3は、加湿装置1の加湿部本体2及びケース部3を示す分解斜視図である。ケース部3は、加湿部本体2を収容するものであって、図3にも示すように、一対の板部31,32と、一対の枠部33,34と、を有する。一対の板部31,32は、YZ平面に沿って延びるとともにX方向に対向する。板部31,32は、加湿部本体2におけるYZ平面に沿った側面27,28に重なるように設けられ、補強部材として機能する。
【0019】
枠部33,34は、四角形枠状に形成され、加湿部本体2及び板部31,32をZ方向から挟み込むように設けられる。即ち、乾燥流体が、枠部33,34の開口331,341を通過して側面23,24から出入りすることができるようになっている。枠部33,34には開口331,341に沿ってシール部材35が設けられており、シール部材35が後述する底部411A又は蓋部42に当接することにより、開口331,341を通過する流体の漏れが抑制されるようになっている。
【0020】
上記のようなケース部3には、Y方向の両側に開口部36,37が形成されている。開口部36,37は、一対の板部31,32のうちY方向の両側においてZ方向に沿って延びる端縁部311,312,321,322によって挟み込まれた位置に形成されている。湿潤流体が、開口部36,37を通過して側面25,26から出入りすることができるようになっている。即ち、開口部36が流体の入口側となり、開口部37が流体の出口側となる。
【0021】
板部31,32の外面(互いに反対側を向いた面)31A,32Aには、端縁部311,312,321,322にそってシール部38が設けられている。シール部38は、ゴムや弾性樹脂等の弾性材料によって形成され、Z方向に沿って延びている。尚、シール部38は、板部31,32に対して固定されていればよく、その固定方法は、例えば加硫接着やインサート成形等であればよく、各部の材質等に応じて適宜な方法が採用されればよい。
【0022】
図4は、加湿装置1を示す断面図であり、図5は、加湿装置1のケース部3の板部31を示す側面図であり、図6は、図5のA-A線に沿った断面図である。図4~6には、板部31(特に端縁部311側)に設けられたシール部38を示すとともに、以下では主としてこのシール部38について説明するが、特に説明がない限りは他の位置に設けられたシール部38も同様の形態を有するものとする。
【0023】
シール部38は、図4に示すように、板部31の外面31Aから離れるように立設されてX方向に延びる立設部381と、立設部381の先端に連続する接触部382と、を有する。接触部382は、第1傾斜部383と第2傾斜部384とを有する。端縁部311,321に沿って(即ち開口部36側に)設けられたシール部38において、第1傾斜部383は、板部31,32から遠ざかるにしたがって開口部36に向かって延び、第2傾斜部384は、板部31,32から遠ざかるにしたがって開口部36とは反対側に向かって延びる。端縁部312,322に沿って(即ち開口部37側に)設けられたシール部38において、第1傾斜部383は、板部31,32から遠ざかるにしたがって開口部37に向かって延び、第2傾斜部384は、板部31,32から遠ざかるにしたがって開口部37とは反対側に向かって延びる。このように、シール部38は断面Y字状に形成されている。
【0024】
図7は、加湿装置1の組み立て前におけるケース部3及びハウジング4を模式的に示す断面図であり、図8は、組み立て後におけるケース部3及びハウジング4を模式的に示す断面図である。図7,8に示すように、立設部381及び接触部382を含むシール部38全体の自然状態(ハウジング4に収容される前であり変形していない状態)におけるX方向寸法は、Z方向の一方側(側面24側)に向かうにしたがって小さくなっている。即ち、Y方向から見た際のシール部38の外側の面全体が、後述する底部411Aに向かうにしたがって板部31,32の外面31A,32Aからの突出寸法が小さくなるシール側テーパ部385となっている。シール側テーパ部385のZ方向に対する傾斜角度は、例えば1~5°程度であることが好ましい。
【0025】
ハウジング4は、ハウジング本体41と蓋部42とを有し、全体として中空な直方体状に形成されている。ハウジング本体41は、Z方向において開口した有底筒状に形成され、凹部411を有する。凹部411は、底部411Aと、4つの内面411B~411Eと、を有する。底部411Aは、XY平面に沿った底面であって、内面411B,411DはX方向に対向するとともにYZ平面に沿って延び、内面411C,411Eは、Y方向に対向するとともにZX平面に沿って延びる。また、ハウジング本体41は、内面411Cを含む側面部に形成された湿潤流体入口開口412と、底部411A側に形成された湿潤流体出口開口(不図示)と、底部411A側を通過してY方向に開口した乾燥流体出口開口413と、を有する。
【0026】
X方向に対向する内面411B,411Dは、ハウジング4にケース部3が収容された際に板部31,32のそれぞれと対向する対向内面となる。一対の内面411B,411Dは、底部411Aに向かうにしたがって間隔が狭くなるように、Z方向に対して傾斜しており、全体が収容側テーパ部となる。このとき、内面411B,411DのZ方向に対する傾斜角度は、シール側テーパ部385と同様に、例えば1~5°程度であることが好ましい。
【0027】
蓋部42は、凹部411の開口を塞ぐようにハウジング本体41に組み付けられ、全体としてXY平面に沿った板状に形成されている。蓋部42は、凹部411内を向いた内面421を有している。蓋部42には、乾燥流体入口開口422が形成されている。
【0028】
ここで、加湿装置1が組み立てられた完成状態における各部の位置関係及び流体の流れについて説明する。枠部34に設けられたシール部材35は、凹部411の底部411Aに接触し(図8では、枠部34と底部411Aとが離隔してるが、シール部35が底部411Aに接触すればよい)、枠部33に設けられたシール部材35は、蓋部42の内面421に接触する。これにより、流体が枠部33,34を通過する際に加湿部本体2とハウジング4との間に侵入することが抑制される。板部31に設けられたシール部材38は、凹部411の内面411Bに接触し、板部32に設けられたシール部材38は、凹部411の内面411Dに接触する。これにより、流体が開口部36,37を通過する際に加湿部本体2とハウジング4との間に侵入することが抑制される。
【0029】
湿潤流体入口開口412から導入された湿潤流体は、入口となる開口部36を通過して側面25から加湿部本体2内の流路に流入する。加湿部本体2内の流路を通過した湿潤流体は、側面26から流出し、出口となる開口部37を通過した後、ハウジング4内を通過して湿潤流体出口開口から導出される。
【0030】
乾燥流体入口開口422から導入された乾燥流体は、入口となる枠部33を通過して側面23から加湿部本体2内の流路に流入する。加湿部本体2の流路を通過した乾燥流体は、側面24から流出し、出口となる枠部34を通過した後、ハウジング4内を通過して乾燥流体出口開口413から導出される。
【0031】
加湿部本体2には、湿潤流体が通過する流路と、乾燥流体が通過する流路と、が交互に形成されていることから、これらの流路の間に設けられている平膜状部材21を介して、湿潤流体から乾燥流体に水分が移動する(水分が交換される)ようになっている。
【0032】
次に、加湿装置1の組み立て方法の一例について説明する。まず、平膜状部材21及びスペーサ22を積層するとともにスペーサ22の端縁に接着剤を設けて接着することにより、加湿部本体2を形成する。次に、一対の板部31,32によって加湿部本体2を挟み込んだ状態で枠部33,34を組み付ける。このとき、板部31,32のZ方向両端部に係合部(例えばアームの自由端側に突起が設けられたもの)39が設けられるとともに、枠部33,34に被係合部(例えば枠状の部分)332,342が設けられ、係合部39と被係合部332,342との係合によって組み付けが維持されるようになっている。次に、枠部33、34の外側にシール部材35を設ける。尚、上記の手順の一部は、同時に実施されてもよいし順番が多少前後してもよい。
【0033】
次に、板部31,32が内面411B,411Dに対向する向きで加湿部本体2及びケース部3を凹部411に挿入していく。このとき、治具を用いて挿入してもよいし、手作業で挿入してもよい。治具を用いる場合には、ケース部3と凹部411とのX方向及びY方向の中心を合わせた状態でこれらをZ方向に押し込めばよい。このとき、挿入完了時に、シール部38及びシール部材35が底部411A及び内面411B,411Dのそれぞれに接触する。尚、挿入完了直前にこれらが接触し、接触後にさらにケース部3が押し込まれることでシール部38及びシール部材35が圧縮されるようにしてもよい。その後、蓋部42をハウジング本体41に組み付けることで加湿装置1の組み立てが完了する。
【0034】
手作業によりケース部3を凹部411に挿入する場合、ケース部3と凹部411とのX方向の中心同士にずれが生じ得る。このとき、挿入完了よりも前に、シール部38の一部が内面411B,411Dに接触する。即ち、シール側テーパ部385と、収容側テーパ部としての内面411B,411Dと、が接触する。これにより、Z方向に沿った力を加えて挿入を継続すれば、各テーパ部によって、ケース部3と凹部411とのX方向の中心同士のずれが解消されていく。
【0035】
尚、シール部38及びシール部材35は、所定量圧縮する必要があるが、上記のようにケース部3を凹部411に挿入する際に圧縮されてもよいし、蓋部42の組み付け時に圧縮されてもよい。
【0036】
このように、本発明の実施形態に係る加湿装置1によれば、流体の入口側となる端縁部311,321及び出口側となる端縁部312,322に沿って板部31,32の外面31A,32Aにシール部38が設けられていることで、入口側の開口部36及び出口側の開口部37を通過する流体が板部31,32と凹部411の内面411B,411Dとの間に侵入することを抑制することができる。このとき、端縁部311,321,312,322は挿入方向であるZ方向に沿って延びており、シール部38は端縁部311,321,312,322に沿って延びることから、挿入時においてシール部38が抵抗となりにくい。従って、シール部38の接触圧を適宜に設定しやすく、シール性を確保しつつ組み付け性を向上させることができる。
【0037】
また、一対の内面411B,411Dが底部411Aに向かうにしたがって間隔が狭くなり、シール部38が底部411Aに向かうにしたがって外面31A,32Aからの突出寸法が小さくなることで、一対の内面同士の間隔が一定であり且つ外面からのシール部の突出寸法が一定である構成とは異なり、挿入前においてシール部38を圧縮する必要がない。これにより、挿入前に圧縮したシール部が挿入時の抵抗となったり、シール部材の捩れや倒れが生じたりすることを抑制することができる。挿入完了時又はその直前にのみシール部38が内面411B,411Dに接触するか、又は、挿入時にハウジング4に対してケース部3を案内することができ、組み付け性を向上させることができる。
【0038】
また、シール部38が立設部381と第1傾斜部383と第2傾斜部384とを有してY字状に形成されていることで、シール部38は、2つの傾斜部383,384が開く(互いに遠ざかる)ように変形しつつ凹部411の内面411B,411Dに接触し、変形量を確保しつつ所望の形態に変形させやすく、シール性を確保しやすい。
【0039】
尚、本発明は上記の実施形態に限定されず、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。例えば、上記の本発明の実施形態では、シール部38によってシール性を確保するものとしたが、図9に示すように、シール部38に加えてラビリンス構造を設けることにより、シール性を確保してもよい。
【0040】
図9に示す変形例では、板部31の外面31Aに2つの凸部313,314が形成されるとともにハウジング4の内面411Bに1つの凸部414が形成され、凸部414が2つの凸部313,314の間に配置されている。即ち、板部31は、対向内面としての内面411Bと噛み合う凸部313,314を有しており、ラビリンス構図が形成されている。ここでの「噛み合う」とは、凸部313,314と凸部414が重なりを有している(Y方向において対向している領域を有している)ことを意味する。また、当該変形例は、2つの凸部313,314の間に形成された凹部が、対向内面としての内面411Bと噛み合っている構成でもある。このように、凸部及び凹部は、他の部分との相対的な関係で決まるものであり、ラビリンス構造を設けるために、板部に凸部と凹部とのうちいずれが形成されていてもよい。
【0041】
また、上記の本発明の実施形態では、一対の内面411B,411Dが底部411Aに向かうにしたがって間隔が狭くなり、シール部38が底部411Aに向かうにしたがって外面31A,32Aからの突出寸法が小さくなっており、即ち、対向内面としての内面411B,411Dの全体が収容側テーパ部となり、シール部38の全体がシール側テーパ部385となっているものとしたが、対向内面やシール部の一部がテーパ部となっていてもよい。
【0042】
また、これらのテーパ部は形成されていなくてもよい。例えば、シール部を含むケース部の外寸を凹部の内寸よりも若干大きくすることでシール部材を圧縮可能とするとともに、これらが接触する部分にフッ素樹脂等の摺動部材を設けておくことにより、挿入時の抵抗を低減する構成としてもよい。
【0043】
また、上記の本発明の実施形態では、シール部38が立設部381と第1傾斜部383と第2傾斜部384とを有してY字状に形成されているものとしたが、シール部の形状(特に先端部分の形状)はこれに限定されず、例えばシール部が、先端に向かうにしたがって幅(Y方向寸法)が小さくなることで凹部の内面に線状接触する構成であってもよいし、先端が断面円状に形成されてこの円が圧縮されるように凹部の内面に接触する構成であってもよい。
【0044】
また、上記の本発明の実施形態では、ケース部3に2つの開口部36,37が形成され、両側の端縁部311,312,321,322に沿うようにシール部38が設けられているものとしたが、シール部38は、流体の入口側となる端縁部311,321と、出口側となる端縁部321,322と、のうち少なくとも一方に対して設けられていればよく、入口側に対してのみ設けられていてもよいし、出口側に対してのみ設けられていてもよい。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に係る燃料電池用の加湿装置に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。例えば、上記実施形態における、各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。
【符号の説明】
【0046】
1…加湿装置、2…加湿部本体、3…ケース部、31,32…板部、311,321,312,322…端縁部、313,314…凸部、31A,32A…外面、36,37…開口部、38…シール部、381…立設部、382…接触部、383…第1傾斜部、384…第2傾斜部、385…シール側テーパ部、4…ハウジング、411…凹部、411B,411D…内面(対向内面、収容側テーパ部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9