(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054578
(43)【公開日】2024-04-17
(54)【発明の名称】タイムラプス撮影機能付き培養装置および培養方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/34 20060101AFI20240410BHJP
C12N 1/00 20060101ALI20240410BHJP
C12N 5/073 20100101ALI20240410BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240410BHJP
【FI】
C12M1/34 D
C12N1/00 A
C12N1/00 Z
C12N5/073
G06T7/00 630
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160883
(22)【出願日】2022-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】592250746
【氏名又は名称】株式会社アステック
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(74)【代理人】
【識別番号】100215164
【弁理士】
【氏名又は名称】松原 正美
(72)【発明者】
【氏名】井上 広夢
(72)【発明者】
【氏名】福留 主幹
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
5L096
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029BB11
4B029FA02
4B029FA03
4B029GA01
4B029GB06
4B065AA90X
4B065AC12
4B065BD50
4B065CA44
5L096AA06
5L096BA08
5L096BA18
5L096CA02
5L096DA02
5L096FA06
5L096HA11
5L096JA11
(57)【要約】
【課題】培養容器内の細胞が存在するウェルのみを自動的に記録することが可能なタイムラプス撮影機能付き培養装置および培養方法の提供。
【解決手段】少なくとも1個以上のウェルを有する培養容器のウェル毎に細胞を配して培養するとともにタイムラプス撮影を行うタイムラプス撮影機能付き培養装置であって、培養容器のウェル毎に所定のタイムラプス撮影周期で撮影する撮影手段40と、培養容器のウェル毎に細胞の有無を検出する検出手段41と、撮影手段40によりウェル毎に撮影した画像のうち検出手段41により細胞有りと検出されたウェルの画像を記録する画像記録手段42とを含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1個以上のウェルを有する培養容器のウェル毎に細胞を配して培養するとともにタイムラプス撮影を行うタイムラプス撮影機能付き培養装置であって、
前記培養容器のウェル毎に所定のタイムラプス撮影周期で撮影する撮影手段と、
前記培養容器のウェル毎に細胞の有無を検出する検出手段と、
前記撮影手段によりウェル毎に撮影した画像のうち前記検出手段により細胞有りと検出されたウェルの画像を記録する画像記録手段と
を含むタイムラプス撮影機能付き培養装置。
【請求項2】
前記検出手段は、前記撮影手段によりウェル毎に撮影した画像を解析することにより前記細胞の有無を検出するものである請求項1記載のタイムラプス撮影機能付き培養装置。
【請求項3】
前記検出手段は、前記タイムラプス撮影周期毎に細胞の有無を検出するものである請求項1または2に記載のタイムラプス撮影機能付き培養装置。
【請求項4】
前記検出手段による検出結果が前回の検出結果と異なる場合に通知する通知手段を有する請求項1または2に記載のタイムラプス撮影機能付き培養装置。
【請求項5】
前記タイムラプス撮影周期毎に前記培養容器の全ウェルの細胞の有無経歴を記録する経歴記録手段を有する請求項1または2に記載のタイムラプス撮影機能付き培養装置。
【請求項6】
少なくとも1個以上のウェルを有する培養容器のウェル毎に細胞を配して培養するとともにタイムラプス撮影を行う培養方法であって、
前記培養容器のウェル毎に所定のタイムラプス撮影周期で撮影すること、
前記培養容器のウェル毎に細胞の有無を検出すること、
前記ウェル毎に撮影した画像のうち細胞有りと検出されたウェルの画像を記録すること
を含む培養方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胚などの細胞を培養するとともにタイムラプス撮影を行うタイムラプス撮影機能付き培養装置および培養方法に関する。
【背景技術】
【0002】
胚などの細胞を培養するとともにタイムラプス撮影を行うタイムラプス撮影機能付き培養装置が知られている(例えば、特許文献1~3参照。)。例えば、タイムラプス撮影機能付き培養装置では、一人の患者から採取処理した複数の受精卵(胚)を一つの培養容器内で区分された複数のウェルに配して培養を開始し、移植可能な胚(3~7日)になるまで一定周期でタイムラプス撮影を行い、撮影した画像データを記録媒体に保存する。
【0003】
そして、このタイムラプス撮影した複数の胚の成長過程の画像を形態学的に評価して、胚の良否を判定し、胚の移植、凍結保存や排除などを行う。胚画像の評価は、一般的には、胚の評価をアシストする画像表示用ソフトを用いて行われ、画像表示用ソフトで時系列に一覧表示して胚の経過画像を確認し、判定を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2009-539387号公報
【特許文献2】特表2017-529844号公報
【特許文献3】特開2016-123366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、培養の早期段階で一部の胚を凍結保存や移植などを行うために培養を終了したり、装置から一時的に取り出して顕微鏡観察や培地交換などを行ったりする場合がある。タイムラプス撮影では、培養を開始するディッシュイン時に予め培養容器内で胚を入れたウェルを指定し、この指定したウェルに対して周期撮影を行うため、胚を取り出した場合にも、胚のないウェルの画像が撮影され、記録媒体に記録される。そのため、記録媒体の使用量が増え、記録媒体不足を起こしてしまう可能性がある。
【0006】
また、画像表示用ソフトで時系列表示したり、コマ送りで動画表示したりしたときに、胚のない不要な画像も表示されることになるため、見にくい表示となり、評価作業の効率が下がるという問題がある。
【0007】
そこで、本発明においては、培養容器内の細胞が存在するウェルのみを自動的に記録することが可能なタイムラプス撮影機能付き培養装置および培養方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のタイムラプス撮影機能付き培養装置は、少なくとも1個以上のウェルを有する培養容器のウェル毎に細胞を配して培養するとともにタイムラプス撮影を行うタイムラプス撮影機能付き培養装置であって、培養容器のウェル毎に所定のタイムラプス撮影周期で撮影する撮影手段と、培養容器のウェル毎に細胞の有無を検出する検出手段と、撮影手段によりウェル毎に撮影した画像のうち検出手段により細胞有りと検出されたウェルの画像を記録する画像記録手段とを含むものである。
【0009】
本発明のタイムラプス撮影機能付き培養装置によれば、培養容器のウェル毎に所定のタイムラプス周期で撮影され、細胞の有無が検出されて、細胞有りと検出されたウェルの画像のみが画像記録手段に記録される。
【0010】
検出手段は、撮影手段によりウェル毎に撮影した画像を解析することにより細胞の有無を検出するものであることが望ましい。これにより、ウェル毎に撮影した画像を解析した結果、細胞有りと検出された場合に、その細胞有りと検出されたウェルの画像のみが画像記録手段に記録される。
【0011】
検出手段は、タイムラプス撮影周期毎に細胞の有無を検出するものであることが望ましい。これにより、所定のタイムラプス周期で撮影される度に細胞の有無が検出されて、細胞有りと検出されたウェルの画像のみが画像記録手段に記録される。
【0012】
本発明のタイムラプス撮影機能付き培養装置は、検出手段による検出結果が前回の検出結果と異なる場合に通知する通知手段を有するものであることが望ましい。これにより、検出手段による検出結果が前回の検出結果と異なる場合に通知手段による通知がなされるので、ユーザは検出結果を確認することが可能となる。
【0013】
本発明のタイムラプス撮影機能付き培養装置は、タイムラプス撮影周期毎に培養容器の全ウェルの細胞の有無経歴を記録する経歴記録手段を有するものであることが望ましい。これにより、タイムラプス撮影周期毎に培養容器の全ウェルの細胞の有無経歴が経歴記録手段によって記録されるので、このタイムラプス撮影周期毎の培養容器の全ウェルの細胞の有無経歴に基づいてタイムライン表示での画像配列や履歴管理に活用することが可能となる。
【0014】
本発明の培養方法は、少なくとも1個以上のウェルを有する培養容器のウェル毎に細胞を配して培養するとともにタイムラプス撮影を行う培養方法であって、培養容器のウェル毎に所定のタイムラプス撮影周期で撮影すること、培養容器のウェル毎に細胞の有無を検出すること、ウェル毎に撮影した画像のうち細胞有りと検出されたウェルの画像を記録することを含むことを特徴とする。
【0015】
本発明の培養方法によれば、培養容器のウェル毎に所定のタイムラプス周期で撮影され、細胞の有無が検出されて、細胞有りと検出されたウェルの画像のみが記録される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、培養容器のウェル毎に細胞が存在するウェルの画像のみを自動的に記録することが可能となり、ディッシュイン時に細胞があり撮影の必要なウェルを予め登録する手間が不要となり、作業の削減が図れる。また、画像を記録する記録媒体の使用量を削減することが可能となる。さらに、細胞が存在しない不要なウェルの画像が記録されないので、撮影の周期やスケジュール設定の自由度が増し、より高精度な画像観察による培養が可能となる。さらに、記録された画像を表示する際に、細胞が存在しない不要なウェルの画像がないため、効率の良い評価を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態におけるタイムラプス撮影機能付き培養装置の概略構成図である。
【
図3】
図1のタイムラプス撮影機能付き培養装置の機能ブロック図である。
【
図4】細胞の有無の検出手順の一例を示す図である。
【
図5】培養装置によるタイムラプス撮影処理を示すフロー図である。
【
図6】全ウェルのライブ画像表示例を示す図であって、(A)は従来の表示例を示す図、(B)は本発明の表示例を示す図である。
【
図7】複数ウェルのタイムライン表示例を示す図であって、(A)は従来の表示例を示す図、(B)は本発明の表示例を示す図である。
【
図8】複数のタイムラプス撮影のコマ送りにより動画表示を行う比較例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は本発明の実施の形態におけるタイムラプス撮影機能付き培養装置の概略構成図、
図2は
図1の培養容器の拡大図、
図3は
図1のタイムラプス撮影機能付き培養装置の機能ブロック図である。
【0019】
図1に示すように、本発明の実施の形態におけるタイムラプス撮影機能付き培養装置(以下、単に「培養装置」と称することもある。)1は、チャンバ部2内において、少なくとも1個以上のウェル11(
図2参照。)を有する培養容器10のウェル11毎に細胞を配して培養するとともに、撮影部3によりタイムラプス撮影を行う培養装置である。タイムラプス撮影とは、一定の時間間隔(タイムラプス周期)で複数枚の静止画を撮影したり、これらの撮影した複数枚の静止画を繋ぎ合わせて動画としたりする撮影方法である。
【0020】
また、培養装置1は、チャンバ部2の制御を行う培養制御部4、撮影部3の制御等を行う撮影制御部5、撮影部3により撮影した画像等を記憶する記録部6、装置の動作を入力指示したりや画像表示などを行う入力/表示部7や、装置全体の制御を行う全体制御部8等を有する。
【0021】
チャンバ部2は、細胞培養を行うために培養に必要な温度やCO
2/O
2ガス濃度などの環境を維持するものである。チャンバ部2内には、1個または複数の培養容器10を収納可能となっている。チャンバ部2には、図示しないヒーター、CO
2ガス流路やO
2ガス流路が接続されている。培養制御部4は、温度やCO
2/O
2ガス濃度が一定となるようにヒーターやCO
2/O
2ガス流量を制御する。なお、
図1においては、チャンバ部2内に2個の培養容器10を図示ししているが、1個または複数の培養容器ごとに分割された複数のチャンバにより構成されたものとすることもできる。
【0022】
撮影部3は、カメラ30、照明31、対物レンズ32や可動部33などにより構成される。撮影部3では、培養容器10内の細胞に照明31により光を当て、その透過光や回折光を対物レンズ32により受け、この対物レンズ32により拡大した画像がカメラ30に入力される。可動部33は、カメラ30および照明31を培養容器10のウェルの配置方向(
図2のX、Y方向)に対して一体に可動する。また、可動部33は、対物レンズ32をZ軸(光軸)方向に可動することにより、複数の培養容器10内の細胞を撮影する。なお、培養容器10やチャンバ部2ごとにカメラ30や照明31を複数配置する構成とすることもできる。また、別の形態として、カメラ30および照明31を固定して、チャンバ部2を別に設けた可動部(図示せず。)と一体化し、X、Y方向やZ方向に培養容器10を可動にする構成とすることもできる。
【0023】
撮影制御部5は、画像撮影時の撮影部3の光学設定、位置制御やタイムラプス撮影条件、および画像の保存などを制御する。撮影制御部5は、
図3に示すように、培養容器10のウェル11毎に所定のタイムラプス撮影周期で撮影する撮影手段40と、培養容器10のウェル11毎に細胞の有無を検出する検出手段41と、撮影手段40によりウェル11毎に撮影した画像のうち検出手段41により細胞有りと検出されたウェル11の画像を記録する画像記録手段42とを有する。
【0024】
撮影手段40は、培養容器10の各ウェル11を予め設定された所定のタイムラプス周期で撮影部3により撮影する。タイムラプス周期は、数分~数時間の間で任意に設定可能である。撮影部3は、例えば10倍程度の倍率の対物レンズやCCDまたはCMOSイメージセンサ等から構成される顕微鏡カメラである。
【0025】
検出手段41は、撮影手段40によりウェル毎に撮影した画像を解析することにより細胞の有無を検出する。細胞の有無の検出はウェル単位で行う。
図4は細胞の有無の検出手順の一例を示している。
図4に示す例では、検出手段41は撮影手段40により撮影したウェルの画像からウェルを検出して細胞としての胚のみの画像とし、この胚のみの画像から胚の有無を検出する。胚のみの画像からの胚の有無の検出は、画像処理、人工知能(機械学習やディープラーニング)などを用いた方法により行うことが可能である。
【0026】
例えば、画像のラベリングによりオブジェクトを抽出し、このオブジェクトから胚の有無を検出する方法がある。胚画像には以下の特徴があり、オブジェクトの中からこれらのいずれか、またはこれらの複数を組み合わせた特徴量に着目することで、胚の有無を検出することができる。
・円形状である
・サイズが100~200μmである
・輪郭に環状の透明体がある(画像でほぼ均一の輝度域)
・内部に構造体(テクスチャー)を有する
【0027】
あるいは、オブジェクト抽出による検出ではなく、画像全体での明暗特性や特徴点の抽出あるいはモデル比較など、画像の諸特性を用いてディープラーニングなどにて検出を行う方法を採用しても良い。
【0028】
画像記録手段42は、撮影手段40によりウェル毎に撮影した画像のうち検出手段41により細胞有りと検出されたウェルの画像のみを記録部6に記録する。記録部6は、例えば、ハードディスクドライブ(HDD)やフロッピーディスク(FD)等の磁気ディスク、コンパクトディスク(CD)やDVD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、ソリッドステートドライブ(SSD)、メモリーカードやUSBメモリ等のフラッシュメモリや、磁気テープなどの記録媒体である。また、記録部6として、ネットワークアタッチドストレージ(NAS)やクラウドストレージ等の記録媒体を使用することも可能である。
【0029】
なお、検出手段41による細胞の有無の検出のタイミングとしては、タイムラプス撮影開始時、タイムラプス撮影途中、またはその両方とすることができるが、タイムラプス周期毎に細胞の有無を検出することが望ましい。これにより、所定のタイムラプス周期で撮影される度に細胞の有無が検出され、細胞有りと検出されたウェルの画像のみが画像記録手段42に記録されるため、最小限のウェルの画像のみが画像記録手段42に記録されることになる。
【0030】
入力/表示部7は、タッチパネル付き表示装置などからなる。入力/表示部7は、培養制御部4や撮影制御部5へのユーザからの入力指示を与えるとともに、カメラ30で撮影した画像の表示や、記録部6から読み出した画像の表示などを行う。
【0031】
全体制御部8は、装置内の各ブロック間や装置全体の制御を行う。また、全体制御部8は、装置外部とのインターフェースを有する。なお、胚の観察や評価を行うためのソフトウェアは全体制御部8に備えても良い。これにより、全体制御部8は、入力/表示部7に画像を分かりやすく配置し、解析表示して、ユーザの培養評価業務をアシストすることができる。
【0032】
次に、上記構成の培養装置1によるタイムラプス撮影方法について説明する。
図5は培養装置1によるタイムラプス撮影処理を示すフロー図である。
【0033】
(S100)培養装置1内に培養容器(ディッシュ)10が入る(ディッシュイン)と処理が開始される。
(S101)培養容器10内に設けられたマークなどにより全ウェル11のXY座標およびZ軸焦点中心の自動検出(オートフォーカス)がなされる。
(S102)撮影手段40は撮影部3を最初のウェル11へ移動する。
(S103)撮影手段40は撮影部3によりウェル11を撮影する。検出手段41は撮影手段40により撮影した画像からウェル11を検出する。
(S104)検出手段41はウェル11内の胚の有無を自動検出する。
(S105)検出手段41は胚の有無を判断する。ウェル11内に胚が無い場合、ステップ(S108)へ移行する。
(S106)ウェル11内に胚が有る場合、撮影手段40はZ軸焦点位置から前後にずらしてウェル11の複数のスライス画像を撮影する。但し、スライス画像が不要な場合は、焦点中心の撮影だけでも良い。
(S107)画像記録手段42はウェル11の画像を記録部6に保存する。
(S108)全ウェル11について撮影が完了したか否か判断する。撮影が完了していない場合、次のウェル11を撮影するため、ステップ(S103)へ移行する。
(S109)全ウェル11について撮影が完了すると処理を終了する。
(S110)タイムラプス周期の2周期目以降のタイムラプス撮影では、ステップ(S102)から処理を行う。
【0034】
なお、本例では、まずウェル11の検出を行い、その後で細胞の検出を行う方法としているが、ウェル11自体の検出は行わず、ウェル配列の規則性などを利用して細胞を直接サーチし、細胞の有無を検出する方法を採用することもできる。
【0035】
また、ステップ(S101)で全ウェル11のX、YおよびZ座標を検出する方法としたが、複数のウェル11からなる分割画像を培養容器10全体で複数枚撮影してこれらをタイリングしたり、あるいは高解像度のカメラを用いて全ウェル11を1枚の画像で広範囲撮影し、その後で画像を分割して個々のウェル画像を抽出して細胞の有無を検出したりする方法を採用することもできる。
【0036】
また、本実施形態における培養装置1は、
図3に示すように、撮影制御部5が、タイムラプス撮影周期毎に培養容器10の全ウェル11の細胞の有無経歴を記録する経歴記録手段43と、検出手段41による検出結果が前回の検出結果と異なる場合に通知する通知手段44とを有する構成とすることができる。
【0037】
経歴記録手段43は、検出手段41による検出結果に基づき、タイムラプス撮影周期毎に培養容器10の全ウェル11の細胞の有無経歴を記録部6に記録する。これにより、タイムラプス撮影周期毎に培養容器10の全ウェル11の細胞の有無経歴が経歴記録手段43によって記録されるので、このタイムラプス撮影周期毎の培養容器10の全ウェル11の細胞の有無経歴に基づいてタイムライン表示での画像配列や履歴管理に活用することが可能となる。
【0038】
図6は全ウェルのライブ画像表示例を示す図であって、(A)は従来の表示例を示す図、(B)は本発明の表示例を示す図である。
図6(A)に示すように、従来は培養容器10の全ウェル11の画像が記録されており、各ウェル11の胚の有無に関わらず全ウェル11の画像が表示されている。一方、本発明では、培養容器10の全ウェル11のうち胚が有るウェル11の画像のみ記録部6に記録されており、経歴記録手段43によってその全ウェル11の胚の有無履歴も記録されているため、この胚の有無履歴に基づき、
図6(B)に示すように、胚が有るウェル11の画像のみ表示し、胚が無いウェル11については表示しないようにすることが可能である。したがって、記録部6に記録されている画像について観察ソフトウェアや評価ソフトウェアで胚を比較観察または評価するとき、一目で見やすく、状態や経過が把握しやすくなり、培養観察や評価を効率良く行うことが可能となる。
【0039】
図7は複数ウェルのタイムライン表示例を示す図であって、(A)は従来の表示例を示す図、(B)は本発明の表示例を示す図である。
図7は、横方向に複数ウェルを並べ、縦方向にタイムラプス周期ごとのウェルの画像を並べて表示している。細胞培養では、培養途上において凍結保存や移植のためにウェル11から胚が抜き取られることがある。また、外部顕微観察や培養液交換のため、培養容器(ディッシュ)10ごと外部に取り出されることもある。この場合、従来においては、
図7(A)に示すように、抜き取られた胚があったウェル11についても全て表示される。一方、本発明では、経歴記録手段43によって記録された胚の有無履歴に基づき、
図7(B)に示すように、培養途上において凍結保存や移植用として抜き取られた胚があったウェル11については表示されない。また、外部顕微観察や培養液交換のため、培養容器10ごと外部に取り出された場合も表示されない。そして、培養容器10が再配置された場合には、再び胚が有るウェル11について表示される。
【0040】
図8は複数のタイムラプス撮影のコマ送りにより動画表示を行う比較例を示す図である。
図8に示すように、従来、記憶装置から所定の胚のタイムラプス画像データを読み取り連続して表示していたため、細胞のないウェルのみの画像81が混在する。そのため、動画表示時に一瞬胚のない画像が出現し、不連続で見にくい動画表示となっている。しかし、本実施形態におけるタイムラプス撮影機能付き培養装置1では、この胚のないウェルのみの画像81が排除されることになるため、不連続性のない見やすい動画像を得ることができる。すなわち、本実施形態におけるタイムラプス撮影機能付き培養装置1では、タイムラプス画像を連続して表示することにより細胞の成長状態を連続的に視覚化でき、変化や成長の過程を分かりやすく把握することができる。
【0041】
通知手段44は、検出手段41による検出結果が前回の検出結果と異なる場合に通知する。通知手段44は、例えば、通知ブザーの鳴動、通知ランプの点灯やディスプレイへの異常通知表示などである。
図9は異常通知表示の例を示している。通知手段44は、検出手段41による検出結果が前回の検出結果と異なる場合、例えば、
図9に示すようにディスプレイへ異常の通知をダイアログにより表示することで、培養装置1の使用者に注意を促し、撮影要否の確認を行う。このとき、該当するウェル11の撮影動作を待機状態とし、操作者は凍結保存や移植済で胚の有無を確認できている場合には「OK」とし、判定に誤りがありそうな場合には「CANCEL」として、別途撮影するように指示することも可能となる。なお、別の実施形態として、細胞の有無の検出結果を使用者に通知し、撮影要否の確認やディッシュ設置の異常などを情報通知することもできる。
【0042】
以上のように、本実施形態における培養装置1では、培養容器10のウェル11毎に細胞が存在するウェル11の画像のみを自動的に記録することが可能となり、画像を記録する記録部6の使用量を削減することができる。また、細胞が存在しない不要なウェル11の画像が記録されないので、撮影の周期やスケジュール設定の自由度が増し、より高精度な画像観察による培養が可能である。さらに、記録された画像を表示する際に細胞が存在しない不要なウェルの画像がないため、効率の良い評価を行うことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、胚などの細胞を培養するとともにタイムラプス撮影を行うタイムラプス撮影機能付き培養装置および培養方法として有用である。
【符号の説明】
【0044】
1 タイムラプス撮影機能付き培養装置
2 チャンバ部
3 撮影部
4 培養制御部
5 撮影制御部
6 記録部
7 入力/表示部
8 全体制御部
10 培養容器
11 ウェル
30 カメラ
31 照明
32 対物レンズ
33 可動部
40 撮影手段
41 検出手段
42 画像記録手段
43 経歴記録手段
44 通知手段