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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054580
(43)【公開日】2024-04-17
(54)【発明の名称】水処理装置および水処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/76 20230101AFI20240410BHJP
   B01D 61/58 20060101ALI20240410BHJP
   C02F 1/44 20230101ALI20240410BHJP
   C02F 1/70 20230101ALI20240410BHJP
【FI】
C02F1/76 C
B01D61/58
C02F1/44 A
C02F1/70 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160885
(22)【出願日】2022-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】596136316
【氏名又は名称】三菱ケミカルアクア・ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】近藤 和史
(72)【発明者】
【氏名】石橋 光
【テーマコード(参考)】
4D006
4D050
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006GA06
4D006GA07
4D006KA02
4D006KA03
4D006KA52
4D006KA55
4D006KA57
4D006KA64
4D006KB11
4D006KB15
4D006KD24
4D006KD26
4D006KE30P
4D006PA01
4D006PB02
4D006PB04
4D006PB05
4D006PB27
4D006PB70
4D050AA01
4D050AA02
4D050AB35
4D050AB46
4D050AB55
4D050BA06
4D050BA07
4D050BB06
4D050BD06
4D050BD08
4D050CA08
4D050CA09
4D050CA15
(57)【要約】
【課題】二価鉄とアンモニアとを含む原水の処理において、塩素系酸化剤の添加量を低減して水回収率を高めることができる水処理装置および水処理方法を提供すること。
【解決手段】二価鉄とアンモニアを含む原水を処理する水処理装置1であって、原水W1に塩素系酸化剤を添加する酸化剤添加装置11と、酸化剤添加装置11による塩素系酸化剤の添加量を制御する制御装置12と、前記塩素系酸化剤を添加した処理水中の不純物を除去する除濁装置14とを備え、原水W1中の二価鉄濃度をMFe(mg/L)、原水W1中のアンモニア態窒素濃度をM(mg/L)、前記塩素系酸化剤由来の塩素注入量をMCl(mg/L)としたとき、制御装置12により、0.83×MFe≦MCl<0.83×MFe+6.23×Mを満たす範囲内で前記塩素系酸化剤の添加量が制御される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二価鉄とアンモニアを含む原水を処理する水処理装置であって、
前記原水に塩素系酸化剤を添加する酸化剤添加装置と、
前記酸化剤添加装置による塩素系酸化剤の添加量を制御する制御装置と、
前記塩素系酸化剤を添加した処理水中の不純物を除去する除濁装置と、
を備え、
前記原水中の二価鉄濃度をMFe(mg/L)、前記原水中のアンモニア態窒素濃度をM(mg/L)、前記塩素系酸化剤由来の塩素注入量をMCl(mg/L)としたとき、
前記制御装置により、0.83×MFe≦MCl<0.83×MFe+6.23×Mを満たす範囲内で前記塩素系酸化剤の添加量が制御されることを特徴とする、水処理装置。
【請求項2】
除濁処理後の処理水を逆浸透膜によって膜濾過する逆浸透膜処理装置をさらに備える、請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
前記原水にさらにマンガンが含まれている、請求項1または2に記載の水処理装置。
【請求項4】
前記塩素系酸化剤が、次亜塩素酸および次亜塩素酸塩の少なくとも一方である、請求項1または2に記載の水処理装置。
【請求項5】
前記酸化剤添加装置と前記除濁装置との間に、還元剤添加装置がさらに設置されている、請求項1または2に記載の水処理装置。
【請求項6】
前記除濁装置として、限外濾過膜および精密濾過膜の少なくとも一方を備えた膜濾過装置が設けられている、請求項1または2に記載の水処理装置。
【請求項7】
二価鉄とアンモニアを含む原水を処理する水処理方法であって、
前記原水に塩素系酸化剤を添加する酸化剤添加工程と、
前記酸化剤添加工程後の処理水に含まれる不純物を除去する除濁工程と、
を含み、
前記酸化剤添加工程において、前記原水中の二価鉄濃度をMFe(mg/L)、前記原水中のアンモニア態窒素濃度をM(mg/L)、前記塩素系酸化剤由来の塩素注入量をMCl(mg/L)としたとき、0.83×MFe≦MCl<0.83×MFe+6.23×Mを満たす範囲内で前記塩素系酸化剤の添加量を制御することを特徴とする、水処理方法。
【請求項8】
前記除濁工程後の処理水を逆浸透膜で処理する逆浸透膜処理工程をさらに含む、請求項7に記載の水処理方法。
【請求項9】
前記酸化剤添加工程において、前記処理水の遊離塩素濃度を0.1mg/L以下に制御する、請求項7または8に記載の水処理方法。
【請求項10】
前記原水にさらにマンガンが含まれている、請求項7または8に記載の水処理方法。
【請求項11】
前記塩素系酸化剤が、次亜塩素酸および次亜塩素酸塩の少なくとも一方である、請求項7または8に記載の水処理方法。
【請求項12】
前記酸化剤添加工程と前記除濁工程の間に、還元剤を添加する還元剤添加工程をさらに含む、請求項7または8に記載の水処理方法。
【請求項13】
前記還元剤添加工程において、還元処理水の全残留塩素の濃度が0mg/Lとなるように前記還元剤を添加する、請求項12に記載の水処理方法。
【請求項14】
前記除濁工程として、限外濾過膜および精密濾過膜の少なくとも一方による濾過を行う、請求項7または8に記載の水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理装置および水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地下水、河川水、湖沼水等には、通常、鉄、マンガンなどの金属イオンやアンモニアが含まれており、水資源として利用する際にはこれらを除去する処理が行われる。水処理方法としては、逆浸透膜を用いて濾過する方法が知られている。
特許文献1には、次亜塩素酸塩等の塩素系酸化剤を用いて被処理水中の鉄やマンガン等の金属イオンを酸化し、固形分として沈殿させて除去した後に、逆浸透膜に通水する方法が開示されている。
【0003】
アンモニアを含む原水の処理に塩素系酸化剤を利用する場合、塩素がアンモニアによって消費されるため、金属イオンの酸化が不充分になるおそれがある。
例えばアンモニアを含む水に次亜塩素酸または次亜塩素酸塩を添加すると、下記式(1)~(3)の反応によって塩素が消費され、クロラミン、ジクロラミン、トリクロラミンが生成する。
NH+HClO→NHCl+HO ・・・式(1)
NHCl+HClO→NHCl+HO ・・・式(2)
NHCl+HClO→NCl+HO ・・・式(3)
【0004】
塩素注入量を横軸、残留塩素濃度を縦軸としたグラフで見ると、図3に示すように、最初のうちは残留塩素として測定されるクロラミン(結合塩素)が生じて残留塩素濃度が高くなるが、ある点から式(2)、式(3)の反応でクロラミンが減少し、残留塩素濃度が極小点を示す。極小点ではアンモニア態窒素がすべて消費されており、それ以降は塩素注入につれて残留塩素濃度(遊離塩素濃度)が高くなる。アンモニア態窒素の反応が終了する極小点は不連続点(ブレークポイント)と言われている。塩素を用いた水処理においては、不連続点が原水の水質によっても変化することから、一般にはアンモニア態窒素の約10倍の塩素注入を見込む(非特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-192482号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】浄水技術ガイドライン2010((財)水道技術研究センター、平成22年10月発行)、115頁
【非特許文献2】水処理薬品ハンドブック(技報堂出版株式会社、2003年10月25日 1版1刷発行)、61~63頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、二価鉄とアンモニアを含む水に対する従来の水処理方法では、二価鉄を充分に酸化させるために大量の塩素系酸化剤を使用している。そのため、酸化処理後の処理水中の固形分を除去するための除濁装置を逆洗する際、逆洗排水が多量になることから、全体的な水回収率が低下する。
【0008】
本発明は、二価鉄とアンモニアとを含む原水の処理において、塩素系酸化剤の添加量を低減して水回収率を高めることができる水処理装置および水処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の態様を含む。
[1]二価鉄とアンモニアを含む原水を処理する水処理装置であって、
前記原水に塩素系酸化剤を添加する酸化剤添加装置と、
前記酸化剤添加装置による塩素系酸化剤の添加量を制御する制御装置と、
前記塩素系酸化剤を添加した処理水中の不純物を除去する除濁装置と、
を備え、
前記原水中の二価鉄濃度をMFe(mg/L)、前記原水中のアンモニア態窒素濃度をM(mg/L)、前記塩素系酸化剤由来の塩素注入量をMCl(mg/L)としたとき、
前記制御装置により、0.83×MFe≦MCl<0.83×MFe+6.23×Mを満たす範囲内で前記塩素系酸化剤の添加量が制御されることを特徴とする、水処理装置。
[2]除濁処理後の処理水を逆浸透膜によって膜濾過する逆浸透膜処理装置をさらに備える、[1]に記載の水処理装置。
[3]前記原水にさらにマンガンが含まれている、[1]または[2]に記載の水処理装置。
[4]前記塩素系酸化剤が、次亜塩素酸および次亜塩素酸塩の少なくとも一方である、[1]~[3]のいずれかに記載の水処理装置。
[5]前記酸化剤添加装置と前記除濁装置の間に、還元剤添加装置がさらに設置されている、[1]~[4]のいずれかに記載の水処理装置。
[6]前記除濁装置として、限外濾過膜および精密濾過膜の少なくとも一方を備えた膜濾過装置が設けられている、[1]~[5]のいずれかに記載の水処理装置。
[7]二価鉄とアンモニアを含む原水を処理する水処理方法であって、
前記原水に塩素系酸化剤を添加する酸化剤添加工程と、
前記酸化剤添加工程後の処理水に含まれる不純物を除去する除濁工程と、
を含み、
前記酸化剤添加工程において、前記原水中の二価鉄濃度をMFe(mg/L)、前記原水中のアンモニア態窒素濃度をM(mg/L)、前記塩素系酸化剤由来の塩素注入量をMCl(mg/L)としたとき、0.83×MFe≦MCl<0.83×MFe+6.23×Mを満たす範囲内で前記塩素系酸化剤の添加量を制御することを特徴とする、水処理方法。
[8]前記除濁工程後の処理水を逆浸透膜で処理する逆浸透膜処理工程をさらに含む、[7]に記載の水処理方法。
[9]前記酸化剤添加工程において、前記処理水の遊離塩素濃度を0.1mg/L以下に制御する、[7]または[8]に記載の水処理方法。
[10]前記原水にさらにマンガンが含まれている、[7]~[9]に記載の水処理方法。
[11]前記塩素系酸化剤が、次亜塩素酸および次亜塩素酸塩の少なくとも一方である、[7]~[10]のいずれかに記載の水処理方法。
[12]前記酸化剤添加工程と前記除濁工程の間に、還元剤を添加する還元剤添加工程をさらに含む、[7]~[11]のいずれかに記載の水処理方法。
[13]前記還元剤添加工程において、還元処理水の全残留塩素の濃度が0mg/Lとなるように前記還元剤を添加する、[12]に記載の水処理方法。
[14]前記除濁工程として、限外濾過膜および精密濾過膜の少なくとも一方による濾過を行う、[7]~[13]に記載の水処理方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、二価鉄とアンモニアとを含む原水の処理において、塩素系酸化剤の添加量を低減して水回収率を高めることができる水処理装置および水処理方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態の一例の水処理装置を示した模式図である。
図2】実施形態の他の例の水処理装置を示した模式図である。
図3】アンモニアを含む水への塩素注入に対する残留塩素濃度の関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[水処理装置]
本発明の水処理装置は、二価鉄とアンモニアを含む原水を処理する水処理装置である。以下、実施形態の一例に係る水処理装置について、図面に基づいて説明する。
なお、以下の説明において例示される図の寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0013】
図1に示すように、実施形態に係る水処理装置1は、酸化剤添加装置11と、制御装置12と、還元剤添加装置13と、除濁装置14と、中間水槽15と、逆浸透膜処理装置16と、を備えている。
【0014】
この例の水処理装置1では、除濁装置14が第1送水管21によって水源100と連結されている。また、除濁装置14と中間水槽15が第2送水管22によって連結され、中間水槽15と逆浸透膜処理装置16が第3送水管23によって連結されている。
【0015】
水源100は、処理対象となる原水の供給源であり、特に限定されない。
水源100の具体例としては、例えば井戸、河川、湖沼、貯水池、雨水が挙げられる。井戸から汲み上げた地下水、河川水、湖沼水や浄水等を貯留する貯留槽にある貯留水を水源100として用いてもよい。
【0016】
この例では、地上に設置された除濁装置14に第1送水管21の一端が接続され、第1送水管21の他端側部分が地下の水源100から原水W1を汲み上げるための揚水手段17に接続されている。
原水W1には、少なくとも二価鉄とアンモニアが含まれる。また、マンガン、カルシウム等の二価鉄以外の金属イオン、有機物、無機物等が含まれてもよい。
【0017】
水処理装置1では、第1送水管21を流れる原水W1に酸化剤を添加する酸化剤添加装置11が設けられている。原水W1に酸化剤が添加されることにより、原水W1中の二価鉄が三価鉄に酸化され、不溶性の水酸化鉄(III)が析出する。
酸化剤添加装置11の態様は、第1送水管21内を流れる原水W1に酸化剤を添加できる態様であれば特に限定されない。
【0018】
酸化剤添加装置11によって添加される酸化剤は、塩素系酸化剤、すなわち分子内に塩素原子を含む酸化剤である。
酸化剤としては、例えば、次亜塩素酸や、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム等の固体の次亜塩素酸塩が挙げられる。なかでも、運用性やコストの点から、次亜塩素酸および次亜塩素酸塩の少なくとも一方が好ましい。酸化剤としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
制御装置12は、酸化剤添加装置11によって原水W1に添加される酸化剤の添加量を制御する装置である。
制御装置12では、原水W1中の二価鉄濃度をMFe(mg/L)、原水W1中のアンモニア態窒素濃度をM(mg/L)、原水W1への塩素系酸化剤由来の塩素注入量をMCl(mg/L)としたとき、0.83×MFe≦MCl<0.83×MFe+6.23×Mを満たす範囲内で酸化剤の添加量が制御される。塩素注入量が前記範囲内に制御されることにより、アンモニアを含む原水W1であっても最小限の酸化剤量で二価鉄が充分に酸化される。そのため、酸化によって生成した水酸化鉄(III)の凝集物を除去する除濁装置14の洗浄時には、逆洗排水の量を低減することができるため、全体的な水回収率が向上する。
【0020】
制御装置12による酸化剤添加量の制御は、0.83×MFe≦MCl<0.83×MFe+6.23×Mを満たす範囲内で行われ、0.83×MFe+0.01×M≦MCl≦0.83×MFe+3.0×Mを満たす範囲内で行われることが好ましい。0.83×MFe+0.1×M≦MCl≦0.83×MFe+1.5×Mを満たす範囲内で行われることがより好ましい。0.83×MFe+0.2×M≦MCl≦0.83×MFe+0.5×Mを満たす範囲内で行われることが特に好ましい。
上記下限値と上限値との組み合わせは任意である。
【0021】
制御装置12としては、特に限定されず、例えばPID制御によって酸化剤添加量を制御する装置が挙げられる。
第1送水管21には、酸化剤添加後の酸化処理水W2中の遊離塩素濃度を測定するための残留塩素計18を設けてもよい。残留塩素計18の測定結果を用いて不連続点を超えないように酸化剤の添加量を低減することが容易になる。この点については水処理方法の説明において詳述する。
【0022】
酸化剤添加装置11の後段には、酸化剤添加後の酸化処理水W2に還元剤を添加する還元剤添加装置13が設けられている。酸化処理水W2に還元剤が添加されることにより、酸化剤の作用によって酸化されたアンモニアの酸化物が還元されてアンモニアに戻る。
還元剤添加装置13の態様は、第1送水管21内を流れる酸化処理水W2に還元剤を添加できる態様であれば特に限定されない。
【0023】
還元剤添加装置13によって添加される還元剤は、アンモニアの酸化物を還元できるものであれば特に限定されない。
還元剤としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウム(SBS、重亜硫酸ソーダとも呼ばれる)、チオ硫酸ナトリウムが挙げられる。なかでも、反応性とコストの点から、SBSが好ましい。還元剤としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
図1に示す水処理装置1は、還元剤添加装置13を備えているが、還元剤添加装置13を備えていない実施形態であってもよい。
【0024】
除濁装置14は、処理水中の水酸化鉄(III)の凝集物を含む不純物を除去する装置である。図1に示す例では、酸化剤添加後の酸化処理水W2に還元剤がさらに添加された還元処理水W3が除濁装置14に供給され、還元処理水W3中の不純物が除去される。
【0025】
除濁装置14としては、水酸化鉄(III)の凝集物を含む不純物を除去できるものであればよく、例えば、砂濾過装置、膜濾過装置が挙げられる。膜濾過装置に用いる膜としては、例えば精密濾過膜、限外濾過膜、ナノ濾過膜が挙げられる。
除濁装置14としては、限外濾過膜および精密濾過膜の少なくとも一方を備えた膜濾過装置が好ましい。
除濁装置14に利用される限外濾過膜または精密濾過膜としては、外圧式の膜が好ましい。
除濁装置14としては、1つを単独で使用してもよく、2つ以上を組み合わせて使用してもよい。
【0026】
除濁装置14による処理後の除濁処理水W4は、第2送水管22を通じて中間水槽15へと送られる。
中間水槽15においては、除濁処理水W4を定期的に滅菌することが好ましい。除濁処理水W4を滅菌する方法としては、特に限定されず、例えば、還元剤の添加を一時的に停止するか、追加で塩素を間欠的に添加することで滅菌する方法が挙げられる。
【0027】
中間水槽15に貯留されている除濁処理水W4は、供給ポンプ19によって第3送水管23を通じて逆浸透膜処理装置16へと供給される。
逆浸透膜処理装置16は、逆浸透膜を備えた膜濾過装置であり、除濁処理水W4中のアンモニアを除去する。
【0028】
逆浸透膜処理装置16で処理した逆浸透膜処理水W5は適宜他の装置等に送られる。
例えば、逆浸透膜処理装置16の後段にイオン交換装置を設け、逆浸透膜処理装置16で除去しきれずに逆浸透膜処理水W5中に残留したアンモニアをイオン交換装置で除去するようにしてもよい。水質監視システムを設けた受水槽において逆浸透膜処理水W5の水質を監視してもよい。また、受水槽で逆浸透膜処理水W5に他の処理水や添加剤を配合して硬度等の水質を調整してもよい。
図1に示す水処理装置1は、逆浸透膜処理装置16を備えているが、逆浸透膜処理装置16を備えていない実施形態であってもよい。
【0029】
[水処理方法]
以下、実施形態の一例に係る水処理方法として、前記した水処理装置1を用いた方法について説明する。
本実施形態に係る水処理方法は、二価鉄とアンモニアを含む原水を処理する方法であって、下記(i)と(iii)の工程を含む。さらに、(ii)と(iv)の工程を含んでもよい。
(i)原水に塩素系酸化剤を添加する酸化剤添加工程。
(ii)前記酸化剤添加工程後の処理水に還元剤を添加する還元剤添加工程。
(iii)前記酸化剤添加工程後の処理水に含まれる不純物を除去する除濁工程。
(iv)前記除濁工程後の処理水を逆浸透膜で処理する逆浸透膜処理工程。
【0030】
(酸化剤添加工程)
酸化剤添加工程では、酸化剤添加装置11により、少なくとも二価鉄とアンモニアを含む原水W1に塩素系酸化剤を添加し、原水W1中の二価鉄を三価鉄に酸化して不溶性の水酸化鉄(III)を析出させる。
塩素系酸化剤としては、例えば、次亜塩素酸や、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム等の固体の次亜塩素酸塩が挙げられ、次亜塩素酸および次亜塩素酸塩の少なくとも一方が好ましい。塩素系酸化剤としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
上述したように、従来のアンモニアを含む水の処理においては、原水の水質による違いを考慮のうえ、アンモニア態窒素の反応が終了する不連続点(ブレークポイント)まで塩素を注入するために、一般にアンモニア態窒素の約10倍の塩素注入が見込まれる。
【0032】
これに対し、実施形態に係る水処理方法では、酸化剤添加工程において、0.83×MFe≦MCl<0.83×MFe+6.23×Mを満たす範囲内、好ましくは0.83×MFe+0.01×M≦MCl≦0.83×MFe+3.0×Mを満たす範囲内、より好ましくは0.83×MFe+0.1×M≦MCl≦0.83×MFe+1.5×Mを満たす範囲内、さらに好ましくは0.83×MFe+0.2×M≦MCl≦0.83×MFe+0.5×Mを満たす範囲内で塩素系酸化剤の添加量を制御する。
塩素注入量MClを前記範囲内とすることにより、原水W1への塩素系酸化剤を過剰に添加することなく、不連続点よりも少ない塩素注入で二価鉄を充分に酸化することができる。その結果、除濁装置14の逆洗時の逆洗排水を低減して水回収率を高めることができる。
また、原水W1にマンガンイオンが含まれている場合、マンガンイオンも充分に酸化され、除濁装置14で除去することができる。
【0033】
また、酸化剤添加工程においては、残留塩素計18によって水処理中の酸化処理水W2の遊離塩素濃度をモニターし、酸化処理水W2の遊離塩素濃度が0.1mg/L以下となるように酸化剤の添加量を制御してもよい。不連続点を超えて酸化剤が過剰に添加されると遊離塩素濃度が高くなっていくため、遊離塩素濃度を0.1mg/L以下に制御することにより、不連続点を超えて酸化剤を過剰に添加することを抑制できる。そのため、酸化剤の添加量を最小限にして除濁装置14の逆洗排水の量を低減し、全体的な水回収率を高めることがさらに容易になる。
この残留塩素計18による測定に基づく酸化剤添加の制御は、例えばPID等の制御装置12によって行ってもよく、人力で行ってもよい。
【0034】
(還元剤添加工程)
還元剤添加工程では、還元剤添加装置13により、酸化剤添加工程後の酸化処理水W2に還元剤を添加し、酸化剤の作用によって酸化されたアンモニアの酸化物を還元してアンモニアに戻す。アンモニアは後段の逆浸透膜によって除去する。
還元剤としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウム(SBS)、チオ硫酸ナトリウムが挙げられ、反応性とコストの点から、SBSが好ましい。還元剤としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
還元剤添加工程では、還元処理水W3の全残留塩素の濃度が0mg/Lとなるように還元剤の添加量を過剰に注入制御することが好ましい。これにより、後段の逆浸透膜を酸化劣化から予防することができる。
【0036】
(除濁工程)
除濁工程では、還元処理水W3における、二価鉄が酸化されて生じた水酸化鉄(III)の凝集物を含む不純物を除濁装置14で除去する。
濁質を安定的に除去するだけでなく、除菌の点から、除濁工程では、限外濾過膜および精密濾過膜の少なくとも一方による濾過を行うことが好ましい。
【0037】
図1に示す例では、除濁処理後の除濁処理水W4は、中間水槽15に一旦貯留する。中間水槽15においては、定期的に除濁処理水W4を滅菌してもよい。
また、除濁処理水W4には硫酸等を添加してpHを調整してもよく、逆浸透膜処理時に発生するシリカや硬度等のスケールを抑制するため分散剤を添加してもよい。
【0038】
(逆浸透膜処理工程)
逆浸透膜処理工程では、除濁工程後の除濁処理水W4を逆浸透膜処理装置16に供給し、除濁処理水W4中のアンモニアを逆浸透膜によって除去する。
【0039】
なお、本発明の水処理装置および水処理方法は、前記した実施形態には限定されない。
本発明の水処理装置は、図2に例示した水処理装置2であってもよい。図2における図1と同じ部分は同符号を付して説明を省略する。
【0040】
水処理装置2は、以下の構成以外は水処理装置1と同様の構成である。
水源100と原水槽31が第1送水管21で接続されている。原水槽31と除濁装置14とが第2送水管22で接続されている。除濁装置14と中間水槽15とが第3送水管23で接続されている。中間水槽15と逆浸透膜処理装置16とが第4送水管24で接続されている。
【0041】
酸化剤添加装置11は、第1送水管21を流れる原水W1に酸化剤を添加するようになっている。第2送水管22には、原水槽31から除濁装置14に向かって酸化処理水W2を供給するための供給ポンプ32と、残留塩素計18とが設置されている。還元剤添加装置13は、第2送水管22を流れる酸化処理水W2に還元剤を添加するようになっている。
水処理装置2を用いる水処理方法は、原水W1に酸化剤を添加した酸化処理水W2が原水槽31に一旦貯留される以外は、水処理装置1を用いる水処理方法と同様に行える。
【0042】
また、本発明の水処理方法は、制御装置を備えた水処理装置を用いる方法には限定されず、制御装置を用いずに、酸化剤添加工程における酸化剤の添加量を制御する方法であってもよい。例えば、予め測定した原水W1の二価鉄濃度MFe(mg/L)およびアンモニア態窒素濃度M(mg/L)から必要な塩素注入量MCl(mg/L)の範囲を算出し、その算出結果に基づいて酸化剤の添加量を決定し、水処理装置1、2における制御装置12を省略した水処理装置を用いて一定の酸化剤添加量で水処理を行ってもよい。また、酸化剤の添加量を人力で制御してもよい。
【0043】
また、本発明は、還元剤添加装置または逆浸透膜処理装置を備えない水処理装置を用いて、還元剤添加工程または逆浸透膜処理工程を行わずに水処理を行ってもよい。
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【実施例0044】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
【0045】
[原水]
試験水として、表1に示した水質の原水を用意した。
【0046】
【表1】
【0047】
[実施例1]
原水に対し、次亜塩素酸ナトリウムを塩素注入量が3.5mg/Lとなるように添加し、さらに亜硫酸水素ナトリウムを5.3mg/Lとなるように添加した後、水をサンプリングして外圧式精密濾過膜を用いて膜濾過を行った。
【0048】
[実施例2]
塩素注入量を4.5mg/L、亜硫酸水素ナトリウムの添加量を6.8mg/Lに変更した以外は、実施例1と同様にして酸化剤および還元剤を添加した後に膜濾過を行った。
【0049】
[実施例3]
塩素注入量を6.0mg/L、亜硫酸水素ナトリウムの添加量を9.0mg/Lに変更した以外は、実施例1と同様にして酸化剤および還元剤を添加した後に膜濾過を行った。
【0050】
[実施例4]
塩素注入量を15mg/L、亜硫酸水素ナトリウムの添加量を22.5mg/Lに変更した以外は、実施例1と同様にして酸化剤および還元剤を添加した後に膜濾過を行った。
【0051】
[実施例5]
塩素注入量を30mg/L、亜硫酸水素ナトリウムの添加量を45.0mg/Lに変更した以外は、実施例1と同様にして酸化剤および還元剤を添加した後に膜濾過を行った。
【0052】
[比較例1]
塩素注入量を0.70mg/L、亜硫酸水素ナトリウムの添加量を1.1mg/Lに変更した以外は、実施例1と同様にして酸化剤および還元剤を添加した後に膜濾過を行った。
【0053】
[比較例2]
塩素注入量を45mg/L、亜硫酸水素ナトリウムの添加量を67.5mg/Lに変更した以外は、実施例1と同様にして酸化剤および還元剤を添加した後に膜濾過を行った。
【0054】
[比較例3]
塩素注入量を62mg/L、亜硫酸水素ナトリウムの添加量を93.0mg/Lに変更した以外は、実施例1と同様にして酸化剤および還元剤を添加した後に膜濾過を行った。
【0055】
[アンモニア態窒素濃度]
HACH社の多項目水質分析計DR1900を用いて(測定項目は「アンモニア性窒素」)ネスラー法により、アンモニア態窒素濃度を測定した。
【0056】
[二価鉄濃度の測定]
膜濾過後のサンプリング水の鉄濃度を、HACH社の多項目水質分析計DR1900を用いて(測定項目は「鉄(第一鉄)」)1,10フェナントロリン法により測定した。
【0057】
[水処理の判定]
各例の水処理について、以下の基準で判定した。
<塩素注入量の条件>
条件(1):0.83×MFe≦MCl<0.83×MFe+6.23×M
条件(2):0.83×MFe+0.01×M≦MCl≦0.83×MFe+3.0×M
条件(3):0.83×MFe+0.1×M≦MCl≦0.83×MFe+1.5×M
条件(4):0.83×MFe+0.2×M≦MCl≦0.83×MFe+0.5×M
<判定基準>
◎◎:次亜塩素酸ナトリウムによる塩素注入量が条件(4)を満たし(1.94mg/L~3.73mg/L)、且つ、膜濾過後の鉄濃度が0.3mg/L未満である。
◎:次亜塩素酸ナトリウムによる塩素注入量は条件(3)を満たすが、条件(4)は満たさず(1.33mg/L以上1.94mg/L未満または3.73mg/L超9.80mg/L以下)、且つ、膜濾過後の鉄濃度が0.3mg/L未満である。
〇:次亜塩素酸ナトリウムによる塩素注入量は条件(2)を満たすが、条件(3)、(4)は満たさず(0.79mg/L以上1.33mg/L未満または9.80mg/L超18.88mg/L以下)であり、且つ、膜濾過後の鉄濃度が0.3mg/L未満である。
△:次亜塩素酸ナトリウムによる塩素注入量は条件(1)を満たすが、条件(2)~(4)は満たさず(0.73mg/L以上0.79mg/L未満または18.88mg/L超38.42mg/L未満)、且つ、膜濾過後の鉄濃度が0.3mg/L未満である。
×:膜濾過後の鉄濃度が0.3mg/L以上(鉄処理が不十分)であるか、または、次亜塩素酸ナトリウムによる塩素注入量が条件(1)~(4)を満たさない(38.42mg/L以上)である。
【0058】
各例のサンプリング水の塩素注入量、還元剤(SBS)注入量、膜濾過後の鉄濃度、および判定結果を表2に示す。
【0059】
【表2】
【0060】
表2に示すように、実施例1~5では、比較例1に比べて酸化剤の添加量を抑えた少ない塩素注入量で二価鉄を充分に酸化して除去することができた。
比較例2、3では、二価鉄を充分に酸化して除去することができたものの、酸化剤の添加量の低減効果が不十分であった。
【符号の説明】
【0061】
1…水処理装置、11…酸化剤添加装置、12…制御装置、13…還元剤添加装置、14…除濁装置、15…中間水槽、16…逆浸透膜処理装置。
図1
図2
図3