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特開2024-54587ロータの製造装置およびロータの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054587
(43)【公開日】2024-04-17
(54)【発明の名称】ロータの製造装置およびロータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/03 20060101AFI20240410BHJP
【FI】
H02K15/03 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160900
(22)【出願日】2022-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】杉山 雅紀
【テーマコード(参考)】
5H622
【Fターム(参考)】
5H622CA02
5H622CA07
5H622CA10
5H622PP20
(57)【要約】
【課題】高い生産効率で複数種類のロータを製造する。
【解決手段】製造装置では、第1型部20と第2型部50との間にコア11が配置される。第1型部20は、コア11に隣接する側のワークスペーサ40と、コア11から離間する側の積厚調整ブロック30とを有する。ワークスペーサ40の第1端面41にはフロートピン41aが突設される。積厚調整ブロック30の上面31にはピン収容凹部32が設けられる。ワークスペーサ40の配置態様として、第1端面41がコア11に隣接する第1配置、および、第2端面42がコア11に隣接する第2配置のいずれかを選択可能である。第1配置では、磁石収容孔13の内部において磁石14の端部がフロートピン41aの突端により支持され、且つ、第1端面41によって磁石収容孔13が塞がれる。第2配置では、第2端面42によって磁石収容孔13が塞がれ、且つ、フロートピン41aがピン収容凹部32に収容される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の磁石収容孔を有するコアを、対向して配置された第1型部と第2型部との間に配置した状態、且つ、前記複数の磁石収容孔の各々に磁石を収容した状態で、前記複数の磁石収容孔の各々に樹脂材を充填して前記磁石を固定することによりロータを製造する製造装置において、
前記第1型部は、前記第2型部との対向方向における前記コアに隣接する側に配置されるワークスペーサと、前記対向方向における前記コアから離間する側に配置されるベース部材と、が重ねられた構造をなし、
前記ワークスペーサは、前記対向方向における一方側の第1端面に突設されたフロートピンを有し、
前記ベース部材は、前記対向方向における前記ワークスペーサの側の対向面に凹状をなす態様で設けられたピン収容凹部を有し、
前記製造装置は、前記ワークスペーサの配置態様として、前記第1端面が前記コアに隣接する第1配置、および、前記第1端面の裏面にあたる第2端面が前記コアに隣接する第2配置のいずれかを選択可能な構造をなしており、
前記第1配置は、前記磁石収容孔の内部において前記磁石の端部を前記フロートピンの突端により支持し、且つ、前記第1端面によって前記磁石収容孔を塞ぐ配置態様であり、
前記第2配置は、前記第2端面によって前記磁石収容孔を塞ぎ、且つ、前記フロートピンを前記ピン収容凹部に収容する配置態様である
ロータの製造装置。
【請求項2】
前記第2型部は、前記複数の磁石収容孔の各々に前記樹脂材を充填するための充填口を有し、
前記ワークスペーサは、前記第2端面に設けられて溝状をなすベント溝を有し、
前記ベント溝は、前記第2端面における前記第2配置において前記磁石収容孔に対向する部分から前記第2端面の縁端まで延びている
請求項1に記載のロータの製造装置。
【請求項3】
複数の磁石収容孔を有するコアを、対向して配置された第1型部と第2型部との間に配置した状態、且つ、前記複数の磁石収容孔の各々に磁石を収容した状態で、前記複数の磁石収容孔の各々に樹脂材を充填して前記磁石を固定することによりロータを製造する製造装置において、
前記第1型部は、同第1型部および前記第2型部の対向方向における前記コアに隣接する側に配置されるワークスペーサと、前記対向方向における前記コアから離間する側に配置されるベース部材と、が重ねられた構造をなし、
前記ワークスペーサは、前記対向方向における一方側の第1端面に突設された第1フロートピンと、前記対向方向における他方側の第2端面に前記第1フロートピンとは突出量が異なる態様で突設された第2フロートピンとを有し、
前記ベース部材は、前記対向方向における前記ワークスペーサの側の対向面に凹状をなす態様で設けられたピン収容凹部を有し、
前記製造装置は、前記ワークスペーサの配置態様として、前記第1端面が前記コアに隣接する第1配置、および、前記第2端面が前記コアに隣接する第2配置のいずれかを選択可能な構造をなしており、
前記第1配置は、前記磁石収容孔の内部において前記磁石の端部を前記第1フロートピンの突端により支持し、且つ、前記第1端面によって前記磁石収容孔を塞ぎ、且つ、前記第2フロートピンを前記ピン収容凹部に収容する配置態様であり、
前記第2配置は、前記磁石収容孔の内部において前記磁石の端部を前記第2フロートピンの突端により支持し、且つ、前記第2端面によって前記磁石収容孔を塞ぎ、且つ、前記第1フロートピンを前記ピン収容凹部に収容する配置態様である
ロータの製造装置。
【請求項4】
前記第2型部は、前記複数の磁石収容孔の各々に前記樹脂材を充填するための充填口を有し、
前記ワークスペーサは、前記第1端面に設けられて溝状をなす第1ベント溝と、前記第2端面に設けられて溝状をなす第2ベント溝と、を有し、
前記第1ベント溝は、前記第1端面における前記第1配置において前記磁石収容孔に対向する部分から前記第1端面の縁端まで延びており、
前記第2ベント溝は、前記第2端面における前記第2配置において前記磁石収容孔に対向する部分から前記第2端面の縁端まで延びている
請求項3に記載のロータの製造装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のロータの製造装置を用いて前記ロータを製造する製造方法であって、
前記ワークスペーサを、前記第1配置および前記第2配置のいずれかを選択して配置する選択配置工程と、
前記選択配置工程の後に、前記複数の磁石収容孔の各々に前記樹脂材を充填する充填工程と、を備える、
ロータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁石埋込型モータのロータの製造装置およびロータの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
磁石埋込型モータのロータは、複数の鉄心片が積層された構造のコアを有する。コアは、鉄心片の積層方向において貫通する複数の磁石収容孔を有している。磁石収容孔の各々には、磁石を収容した状態で樹脂材を充填することにより、磁石が固定されている。
【0003】
こうしたロータの製造装置としては、例えば特許文献1に記載の装置がある。特許文献1に記載の製造装置は、コアを間に挟む態様で対向して配置される第1型部および第2型部を備えている。第1型部および第2型部の一方は、樹脂材の充填のための充填口を有している。この製造装置では、複数の磁石収容孔の各々に磁石が収容された状態のコアが、第1型部と第2型部との間に配置される。そして、この状態で、複数の磁石収容孔の各々に樹脂材が充填されて、磁石が固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-100157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ロータとしては、磁石が磁石収容孔の内部に埋没した状態(以下、フロートタイプ)のものや、磁石の端面がロータの外面に露出した状態(以下、底付きタイプ)のものがある。また、同じフロートタイプのロータであっても、磁石収容孔における磁石の埋没量が異なるものがある。
【0006】
こうした複数種類のロータの製造は、複数台の製造装置(あるいは金型装置)を用意する等して、製造するロータに合わせて複数種類の製造装置(あるいは金型装置)を使い分けつつ行わざるを得ない。こうした製造装置に関する制限が、ロータの製造にかかる生産効率の低下を招く一因になっている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためのロータの製造装置は、複数の磁石収容孔を有するコアを、対向して配置された第1型部と第2型部との間に配置した状態、且つ、前記複数の磁石収容孔の各々に磁石を収容した状態で、前記複数の磁石収容孔の各々に樹脂材を充填して前記磁石を固定することによりロータを製造する製造装置において、前記第1型部は、前記第2型部との対向方向における前記コアに隣接する側に配置されるワークスペーサと、前記対向方向における前記コアから離間する側に配置されるベース部材と、が重ねられた構造をなし、前記ワークスペーサは、前記対向方向における一方側の第1端面に突設されたフロートピンを有し、前記ベース部材は、前記対向方向における前記ワークスペーサの側の対向面に凹状をなす態様で設けられたピン収容凹部を有し、前記製造装置は、前記ワークスペーサの配置態様として、前記第1端面が前記コアに隣接する第1配置、および、前記第1端面の裏面にあたる第2端面が前記コアに隣接する第2配置のいずれかを選択可能な構造をなしており、前記第1配置は、前記磁石収容孔の内部において前記磁石の端部を前記フロートピンの突端により支持し、且つ、前記第1端面によって前記磁石収容孔を塞ぐ配置態様であり、前記第2配置は、前記第2端面によって前記磁石収容孔を塞ぎ、且つ、前記フロートピンを前記ピン収容凹部に収容する配置態様である。
【0008】
上記構成によれば、ワークスペーサの第1端面がコアに接する配置態様(第1配置)で磁石収容孔への樹脂材の充填を行う場合には、フロートピンによって磁石を磁石収容孔の内部に押し込んだ状態、すなわちワークスペーサの第1端面から磁石を浮かせた状態で、同磁石を固定することができる。一方、ワークスペーサの第2端面がコアに接する配置態様(第2配置)で磁石収容孔への樹脂材の充填を行う場合には、ワークスペーサの第2端面に磁石の端部が接している状態、すなわち第2端面から磁石を浮かせない状態で、同磁石を固定することができる。しかも、第2配置においては、フロートピンが邪魔にならないように、同フロートピンをピン収容凹部に収容することもできる。
【0009】
そして、上記構成によれば、同一のワークスペーサを裏返して使用することで、製造装置の形態を、「フロートタイプのロータを製造する形態」および「底付きタイプのロータを製造する形態」の一方から他方に切り替えることができる。これにより、複数種類の製造装置を用意したり金型装置の全体を交換したりする必要がなくなるため、高い生産効率で複数種類のロータを製造することができる。
【0010】
前記課題を解決するためのロータの製造装置は、複数の磁石収容孔を有するコアを、対向して配置された第1型部と第2型部との間に配置した状態、且つ、前記複数の磁石収容孔の各々に磁石を収容した状態で、前記複数の磁石収容孔の各々に樹脂材を充填して前記磁石を固定することによりロータを製造する製造装置において、前記第1型部は、同第1型部および前記第2型部の対向方向における前記コアに隣接する側に配置されるワークスペーサと、前記対向方向における前記コアから離間する側に配置されるベース部材と、が重ねられた構造をなし、前記ワークスペーサは、前記対向方向における一方側の第1端面に突設された第1フロートピンと、前記対向方向における他方側の第2端面に前記第1フロートピンとは突出量が異なる態様で突設された第2フロートピンとを有し、前記ベース部材は、前記対向方向における前記ワークスペーサの側の対向面に凹状をなす態様で設けられたピン収容凹部を有し、前記製造装置は、前記ワークスペーサの配置態様として、前記第1端面が前記コアに隣接する第1配置、および、前記第2端面が前記コアに隣接する第2配置のいずれかを選択可能な構造をなしており、前記第1配置は、前記磁石収容孔の内部において前記磁石の端部を前記第1フロートピンの突端により支持し、且つ、前記第1端面によって前記磁石収容孔を塞ぎ、且つ、前記第2フロートピンを前記ピン収容凹部に収容する配置態様であり、前記第2配置は、前記磁石収容孔の内部において前記磁石の端部を前記第2フロートピンの突端により支持し、且つ、前記第2端面によって前記磁石収容孔を塞ぎ、且つ、前記第1フロートピンを前記ピン収容凹部に収容する配置態様である。
【0011】
上記構成によれば、ワークスペーサの第1端面がコアに接する配置態様(第1配置)で磁石収容孔への樹脂材の充填を行う場合には、フロートピンによって磁石を第1所定量だけ磁石収容孔の内部に押し込んだ状態、すなわちワークスペーサの第1端面から磁石を第1所定量だけ浮かせた状態で、同磁石を固定することができる。一方、ワークスペーサの第2端面がコアに接する配置態様(第2配置)で磁石収容孔への樹脂材の充填を行う場合には、フロートピンによって磁石を第1所定量とは異なる第2所定量だけ磁石収容孔の内部に押し込んだ状態、すなわちワークスペーサの第1端面から磁石を第2所定量だけ浮かせた状態で、同磁石を固定することができる。
【0012】
そして、上記構成によれば、同一のワークスペーサを裏返して使用することで、製造装置の形態を、2種類のロータの「一方を製造する形態」から「他方を製造する形態」に切り替えることができる。これにより、複数種類の製造装置を用意したり金型装置の全体を交換したりする必要がなくなるため、高い生産効率で複数種類のロータを製造することができる。
【0013】
前記課題を解決するためのロータの製造方法は、上記ロータの製造装置を用いて前記ロータを製造する製造方法であって、前記ワークスペーサを、前記第1配置および前記第2配置のいずれかを選択して配置する選択配置工程と、前記選択配置工程の後に、前記複数の磁石収容孔の各々に前記樹脂材を充填する充填工程と、を備える。
【0014】
上記製造方法によれば、同一のワークスペーサを裏返して使用することで、ロータの製造装置の形態を、2種類のロータの「一方を製造する形態」から「他方を製造する形態」に切り替えることができる。これにより、複数種類の製造装置を用意したり金型装置の全体を交換したりする必要がなくなるため、高い生産効率で複数種類のロータを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態の製造装置および製造方法によって製造されるロータの斜視図である。
図2】第1配置の製造装置によって製造されるロータの断面図である。
図3】第2配置の製造装置によって製造されるロータの断面図である。
図4】第1配置の製造装置をロータとともに示す断面図である。
図5】第1実施形態の製造装置の各構成を互いに離間して示す分解断面図である。
図6】第1実施形態の支持部材に積厚調整ブロックを載置した状態を示す平面図である。
図7】第1実施形態のワークスペーサを第1端面側から見た平面図である。
図8】第1実施形態のワークスペーサを第2端面側から見た平面図である。
図9】第1配置でのワークスペーサおよびその周辺の構造を示す断面図である。
図10】第2配置の製造装置をロータとともに示す断面図である。
図11】第2配置でのワークスペーサおよびその周辺の構造を示す断面図である。
図12】第2実施形態のワークスペーサの側断面図である。
図13】第2実施形態の製造装置における第1配置でのワークスペーサおよびその周辺の構造を示す断面図である。
図14】同製造装置における第2配置でのワークスペーサおよびその周辺の構造を示す断面図である。
図15】変更例の積厚調整ブロックを支持部材に載置した状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
以下、図1図11を参照して、第1実施形態のロータの製造装置および製造方法について説明する。
【0017】
まず、本実施形態の製造装置を用いて製造されるロータ10について説明する。
<ロータ>
図1図3に示すように、ロータ10は、電磁鋼板からなる複数枚の鉄心片12が積層された積層体からなるコア11を備えている。コア11は、中心孔11aと、中心孔11aの外周側に位置するとともに周方向に互いに間隔をおいて設けられた複数(本実施形態では、20個)の磁石収容孔13とを有している。中心孔11aおよび各磁石収容孔13は、コア11を貫通する態様で同コア11の軸線Cに沿って延びている。各磁石収容孔13の断面形状は、周方向に延びる形状をなしている。
【0018】
図1に示すように、中心孔11aの内周面には、コア11の径方向において互いに対向する一対の突条11bが軸線Cに沿って突設されている。
図2に示すように、各磁石収容孔13には磁石14が収容されている。磁石14は、軸線Cに沿って延在する直方体状である。各磁石収容孔13の内部には、磁石14を固定するための樹脂材16が充填されている。なお、樹脂材16としてはエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。
【0019】
本実施形態では、同一の製造装置を利用して、2種類のロータ10が製造される。図2に示すように、2種類のロータ10の一方は、磁石14が磁石収容孔13の内部に埋没した状態のいわゆるフロートタイプのロータ10(以下、ロータ10[A])である。図3に示すように、2種類のロータ10の他方は、磁石14の端面がロータ10の外面に露出した状態のいわゆる底付きタイプのロータ10(以下、ロータ10[B])である。
【0020】
<製造装置>
次に、本実施形態の製造装置の各構成について説明する。
図4に示すように、製造装置は、対向して配置される第1型部20と第2型部50とを有している。製造装置によってロータ10を製造する際には、第1型部20と第2型部50との間にコア11が配置される。
【0021】
<第1型部>
図4および図5に示すように、第1型部20は、型本体20A、支持部材20B、積厚調整ブロック30、およびワークスペーサ40を備えている。第1型部20は、支持部材20B(詳しくは、基部21)、積厚調整ブロック30およびワークスペーサ40が、同第1型部20と上記第2型部50との対向方向(図4の上下方向)において重ねられた構造をなしている。本実施形態では、支持部材20Bおよび積厚調整ブロック30がベース部材に相当する。
【0022】
<支持部材>
支持部材20Bは型本体20Aに載置されている。支持部材20Bは、略長方形板状の基部21と、同基部21の平面視の中央部から上方に突出する円筒状のポスト部22とを備えている。
【0023】
図6に示すように、ポスト部22の外周面には、コア11の各突条11bが係合される一対の係合溝22bが軸線Cに沿って設けられている。ポスト部22の各係合溝22bに対してコア11の各突条11bが挿入されることで、ポスト部22に対するコア11の周方向の位置決めがなされる。
【0024】
図4図6に示すように、ポスト部22の先端部(図4の上端部)には、先端側に向かって突出する円柱状をなす4つの嵌合ピン23が周方向に等間隔にて設けられている。
<積厚調整ブロック>
積厚調整ブロック30は、支持部材20Bの基部21上に設けられている。積厚調整ブロック30は、略長方形板状をなしている。積厚調整ブロック30の下面と支持部材20Bの基部21の上面とが合わせられる態様で、積厚調整ブロック30は設けられている。積厚調整ブロック30の平面視における中央部には、平面視略円形状の貫通孔30aが設けられている。この貫通孔30aには、支持部材20Bのポスト部22が挿通される。
【0025】
図6に示すように、貫通孔30aの内周面には、軸線Cに沿って延びる一対の係合突部30bが設けられている。各係合突部30bは、ポスト部22の各係合溝22bに係合される。本実施形態の製造装置では、ポスト部22の係合溝22bと積厚調整ブロック30の係合突部30bとが係合することで、ポスト部22に対する積厚調整ブロック30の周方向の位置決めがなされる。
【0026】
<ピン収容凹部>
図4図6に示すように、積厚調整ブロック30の上面31における複数箇所(本実施形態では、40箇所)には、ピン収容凹部32が設けられている。本実施形態では、この上面31が、対向方向における前記ワークスペーサ40の側の対向面に相当する。各ピン収容凹部32は、積厚調整ブロック30の上面31において凹状をなしている。各ピン収容凹部32は、詳しくは、底に向かうに連れて先細の円錐台形状をなしている。図6に示すように、ピン収容凹部32は、複数の磁石収容孔13の各々に対応する部分(図6中に二点鎖線で示す部分)に設けられている。ピン収容凹部32は、1つの磁石収容孔13に対応する部分に対して、同磁石収容孔13の断面における長手方向に並ぶ態様で2つ設けられている。各ピン収容凹部32は、軸線Cを対称の中心とする点対称の配置になる態様、且つ、軸線Cに直交する直線を対称軸とする線対称の配置になる態様で設けられている。
【0027】
<ワークスペーサ>
図4および図5に示すように、ワークスペーサ40は、積厚調整ブロック30上に設けられる。ワークスペーサ40は、略長方形板状をなしている。ワークスペーサ40の下面と積厚調整ブロック30の上面31とが合わせられる態様で、ワークスペーサ40は設けられている。
【0028】
図7および図8に示すように、ワークスペーサ40の平面視における中央部には、平面視略円形状の貫通孔40aが設けられている。貫通孔40aには、支持部材20Bのポスト部22(図4参照)が挿通される。
【0029】
貫通孔40aの内周面には、軸線Cに沿って延びる一対の係合突部40bが設けられている。各係合突部40bは、ポスト部22の各係合溝22bに係合される。本実施形態の製造装置では、ポスト部22の係合溝22bとワークスペーサ40の係合突部40bとが係合することで、ポスト部22に対するワークスペーサ40の周方向の位置決めがなされる。
【0030】
<フロートピン>
図4図5および図7に示すように、ワークスペーサ40の厚さ方向における一方の面(以下、第1端面41)には、複数箇所(本実施形態では、40箇所)に、フロートピン41aが設けられている。各フロートピン41aは、ワークスペーサ40の第1端面41から突出する形状をなしている。各フロートピン41aは、詳しくは、突端に向かうほど先細の円錐台形状をなしている。各フロートピン41aの外形は、積厚調整ブロック30のピン収容凹部32の内形よりも僅かに小さい相似形状をなしている。
【0031】
フロートピン41aは、複数の磁石収容孔13の各々に対応する部分(図7中に二点鎖線で示す部分)に各別に設けられている。フロートピン41aは、1つの磁石収容孔13に対応する部分に対して、同磁石収容孔13の断面における長手方向において並ぶ態様で2つ設けられている。各フロートピン41aは、前述したピン収容凹部32と同様に、軸線Cを対称の中心とする点対称の配置になる態様、且つ、軸線Cに直交する直線を対称軸とする線対称の配置になる態様で設けられている。これにより、フロートピン41aは、積厚調整ブロック30における複数のピン収容凹部32の各々に対応する位置に1つずつ設けられている。
【0032】
<ベント溝>
図4図5および図8に示すように、ワークスペーサ40の厚さ方向における他方の面(以下、第2端面42)には、複数箇所(本実施形態では、40箇所)に、ベント溝42aが設けられている。ベント溝42aは、ワークスペーサ40の第2端面42において溝状をなしている。本実施形態では、第2端面42が第1端面41の裏面にあたる。
【0033】
ベント溝42aは、第2端面42における複数の磁石収容孔13の各々に対向する部分(図8中に二点鎖線で示す部分)に各別に設けられている。各ベント溝42aは、第2端面42における上記磁石収容孔13に対向する部分から同第2端面42の内縁端(具体的には、貫通孔40aの内周面)まで延びている。ベント溝42aは、1つの磁石収容孔13に対向する部分に対して、同磁石収容孔13の断面における長手方向において並ぶ態様で2つ設けられている。なお、図4および図5では、ベント溝42aの配置についての理解を容易にするために、同ベント溝の深さを、実際の深さ(例えば、数十μm)よりも誇張して示している。
【0034】
本実施形態では、同一の製造装置を利用して、図2に示すフロートタイプのロータ10[A](図2参照)および図3に示す底付きタイプのロータ10[B]の一方を選択的に製造するために、ワークスペーサ40を裏返して使用することが可能になっている。具体的には、本実施形態の製造装置は、ワークスペーサ40の配置態様として、第1端面41がコア11に隣接する「第1配置」、および、第2端面42がコア11に隣接する「第2配置」のいずれかを選択可能な構造をなしている。
【0035】
<第1配置>
図4に示すように、第1配置では、ワークスペーサ40の第1端面41とコア11の下面とが合わされる態様であって、且つ、ワークスペーサ40の第2端面42と積厚調整ブロック30の上面31とが合わされる態様で、同ワークスペーサ40が配置される。
【0036】
図9は、第1配置におけるワークスペーサ40およびその周辺の構造を示している。図9に示すように、第1配置においては、磁石収容孔13の内部において磁石14の端部がフロートピン41aの突端によって支持された状態になる。また、第1端面41によって磁石収容孔13のワークスペーサ40側の開口13aが塞がれた状態になる。さらに、ベント溝42aを有する第2端面42と、ピン収容凹部32を有する積厚調整ブロック30の上面31とが合わせられた状態になる。
【0037】
本実施形態では、こうした第1配置の製造装置を利用して、フロートタイプのロータ10[A](図2参照)が製造される。
<第2配置>
図10に示すように、第2配置では、ワークスペーサ40の第2端面42とコア11の下面とが合わされる態様であって、且つ、ワークスペーサ40の第1端面41と積厚調整ブロック30の上面31とが合わされる態様で、同ワークスペーサ40が配置される。
【0038】
図11は、第2配置におけるワークスペーサ40およびその周辺の構造を示している。図11に示すように、第2配置においては、ワークスペーサ40の第2端面42によって磁石収容孔13の同ワークスペーサ40側の開口13aが塞がれた状態になる。また、第2端面42に設けられたベント溝42aを介して、磁石収容孔13とワークスペーサ40の貫通孔40a(図10参照)とが連通された状態になる。さらに、第1端面41と積厚調整ブロック30の上面31とが合わせられた状態になるとともに、同第1端面41に設けられたフロートピン41aが積厚調整ブロック30に設けられたピン収容凹部32に収容された状態になる。
【0039】
本実施形態では、こうした第2配置の製造装置を利用して、底付きタイプのロータ10[B](図3参照)が製造される。
<第2型部>
図4および図5に示すように、第2型部50は、型本体50Aと、カルプレート50Bとを備えている。カルプレート50Bは、板状をなすとともに型本体50Aとコア11との間に介在されている。カルプレート50Bには、ポスト部22の嵌合ピン23に対応する複数の嵌合孔51が設けられている。カルプレート50Bは、磁石収容孔13の上記ワークスペーサ40から遠い側(図4の上側)の開口13bを塞ぐように、コア11上に配置される。カルプレート50Bの下面52は、コア11の上面に当接される。
【0040】
カルプレート50Bは、磁石収容孔13の開口13bに対して樹脂材16を供給する通路53を有している。この通路53は、複数の磁石収容孔13にそれぞれ対応して設けられる複数の分岐通路53aおよび複数のゲート部53bを有している。複数の分岐通路53aは、カルプレート50Bの上面において、軸線C上の中央位置から放射状に延びている。ゲート部53bは、カルプレート50Bを厚さ方向に貫通する態様で、軸線Cに沿って延びている。ゲート部53bの一端は、分岐通路53aにおける上記中央位置から遠い側の端に連通されている。ゲート部53bの他端は、カルプレート50Bの下面52において開口する充填口53cになっている。本実施形態では、この充填口53cを介して、複数の磁石収容孔13の各々に樹脂材16が充填される。
【0041】
<製造方法>
以下、本実施形態にかかるロータ10の製造方法について説明する。
ロータ10の製造方法は、ブロック配置工程、選択配置工程、コア配置工程、磁石配置工程、型締め工程、充填工程、硬化工程、および型開き工程を備えている。
【0042】
先ず、図4および図5に示すように、積厚調整ブロック30の貫通孔30aに支持部材20Bのポスト部22を挿通することで、支持部材20Bに積厚調整ブロック30が組み付けられる(以上、ブロック配置工程)。
【0043】
その後、前記「第1配置」および前記「第2配置」のいずれかを選択するとともに、選択した配置態様となるように、ワークスペーサ40の貫通孔40aに支持部材20Bのポスト部22が挿通される。このようにして、ワークスペーサ40が支持部材20Bに組み付けられる(以上、選択配置工程)。
【0044】
選択配置工程においては、フロートタイプのロータ10[A]を製造する場合、ワークスペーサ40の配置態様として第1配置が採用される。具体的には、ワークスペーサ40の第1端面41が上になる態様(図4に示す態様)で、同ワークスペーサ40が支持部材20Bに組み付けられる。一方、底付きタイプのロータ10[B]を製造する場合には、ワークスペーサ40の配置態様として第2配置が採用される。具体的には、ワークスペーサ40の第2端面42が上になる態様(図10に示す態様)で、同ワークスペーサ40が支持部材20Bに組み付けられる。
【0045】
こうした選択配置工程の後においては、コア11の中心孔11aに支持部材20Bのポスト部22を挿入することで、同コア11が支持部材20Bに取り付けられる(以上、コア配置工程)。
【0046】
その後、コア11の各磁石収容孔13に磁石14が挿入される(以上、磁石配置工程)。
磁石配置工程においては、フロートタイプのロータ10[A]を製造する場合、すなわち前記第1配置が採用される場合には、各磁石14の下面がワークスペーサ40の第1端面41に設けられたフロートピン41aの突端によって支持される(図9参照)。これにより、各磁石14は、ワークスペーサ40の第1端面41から上方に離間した位置で保持される。一方、底付きタイプのロータ10[B]を製造する場合、すなわち前記第2配置が採用される場合には、各磁石14の下面はワークスペーサ40の第2端面42によって支持される(図11参照)。これにより、各磁石14は、ワークスペーサ40の第2端面42に当接する位置で保持される。
【0047】
こうした磁石配置工程の後においては、カルプレート50Bの各嵌合孔51にポスト部22の各嵌合ピン23を嵌合させることにより、カルプレート50Bの下面52をコア11の上面に当接させて型締めを行う(以上、型締め工程)。
【0048】
その後、型本体50Aの樹脂供給通路(図示略)およびカルプレート50Bの通路53を介して、コア11の各磁石収容孔13内に樹脂材16が充填される(以上、充填工程)。
【0049】
その後、加熱装置(図示略)によって製造装置の全体が加熱される。これにより、熱硬化性の樹脂材16を熱硬化させることで、コア11に対して磁石14が固定される(以上、硬化工程)。
【0050】
その後、製造装置からロータ10(詳しくは、磁石14が固定されたコア11)を取り出すべく、型開きが行われる。具体的には、先ず、支持部材20Bから第2型部50が取り外される。その後、支持部材20Bからロータ10が取り外される(以上、型開き工程)。
【0051】
<作用効果>
本実施形態によれば、以下に記載する作用効果が得られる。
(1-1)製造装置によってフロートタイプのロータ10[A]を製造する場合には、ワークスペーサ40の配置態様として、「第1配置」が選択される。これにより、フロートピン41aによって磁石14を磁石収容孔13の内部に押し込んだ状態、すなわちワークスペーサ40の第1端面41から磁石14を浮かせた状態で、磁石収容孔13への樹脂材16の充填を行うことができる。そのため、磁石14が磁石収容孔13の内部に埋没した状態で、同磁石14を固定することができる。
【0052】
一方、製造装置によって底付きタイプのロータ10[B]を製造する場合には、ワークスペーサ40の配置態様として、「第2配置」が選択される。これにより、ワークスペーサ40の第2端面42がコア11の下面に接している状態、すなわち第2端面42から磁石14を浮かせない状態で、磁石収容孔13への樹脂材16の充填を行うことができる。そのため、磁石14の端面がロータ10の外面に露出した状態になるように、同磁石14を固定することができる。また、この場合には、複数のフロートピン41aの各々がピン収容凹部32に収容された状態になるため、製造装置の組み立て、詳しくは支持部材20Bへのワークスペーサ40の組み付けに際して、フロートピン41aが邪魔になることを回避することができる。
【0053】
そして本実施形態によれば、同一のワークスペーサ40を裏返して使用することで、製造装置の形態を、「フロートタイプのロータ10[A]を製造する形態」および「底付きタイプのロータ10[B]を製造する形態」の一方から他方に切り替えることができる。これにより、複数種類の製造装置を用意したり金型装置の全体を交換したりする必要がなくなるため、高い生産効率で複数種類のロータ10を製造することができる。
【0054】
(1-2)カルプレート50Bは、複数の磁石収容孔13の各々に樹脂材16を充填するための充填口53cを有する。ワークスペーサ40の第2端面42にはベント溝42aが設けられる。ベント溝42aは、第2端面42における前記第2配置において磁石収容孔13に対向する部分から第2端面42の内縁端まで延びる。
【0055】
本実施形態によれば、第1配置においては、ベント溝42aを有する第2端面42と、ピン収容凹部32を有する積厚調整ブロック30の上面31とが合わせられた状態になる。そのため、第1配置においては、ワークスペーサ40のベント溝42aを利用することなく、カルプレート50Bの充填口53cを介して磁石収容孔13への樹脂材16の充填を行うことができる。
【0056】
一方、第2配置においては、ワークスペーサ40の第2端面42によって、磁石収容孔13における同ワークスペーサ40側の開口13aが塞がれた状態になる。また、第2端面42に設けられたベント溝42aを介して、磁石収容孔13とワークスペーサ40の貫通孔40aとが連通された状態になる。そのため、第2配置においては、ベント溝42aを利用して磁石収容孔13内のガスを外部に排出しながら、同磁石収容孔13に樹脂材16を充填することができる。
【0057】
そして、本実施形態によれば、同一のワークスペーサ40を裏返して使用することで、製造装置によって製造するロータ10のタイプに合わせて、ベント溝42aの配置態様を設定することができる。
【0058】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態のロータの製造装置および製造方法について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0059】
本実施形態と第1実施形態とは、ワークスペーサおよびその周辺の構造のみが異なる。以下、本実施形態のワークスペーサおよびその周辺の構造について説明する。なお以下では、第1実施形態と同一の構成については同一の符号を付して示し、その詳細な説明は割愛する。
【0060】
<第1端面、第1フロートピン、第1ベント溝>
図12図14に示すように、ワークスペーサ60は、略長方形板状をなしている。ワークスペーサ60の厚さ方向における一方の面(以下、第1端面61)には、複数(本実施形態では、40個)の第1フロートピン61aと、複数(本実施形態では、40本)の第1ベント溝61bとが設けられている。
【0061】
複数の第1フロートピン61aは、ワークスペーサ60の第1端面61から突出する形状をなしている。各第1フロートピン61aは、詳しくは、突端に向かうほど先細の円錐台形状をなしている。各第1フロートピン61aの外形は、積厚調整ブロック30のピン収容凹部32の内形よりも僅かに小さい相似形状をなしている。
【0062】
複数の第1ベント溝61bは、ワークスペーサ40の第1端面41において溝状をなしている。各第1ベント溝61bは、第1端面61における前記磁石収容孔13の各々に対向する部分に各別に設けられている。各第1ベント溝61bは、第1端面61における上記磁石収容孔13に対向する部分から、同第1端面61の内縁端(具体的には、ワークスペーサ60の中央部に設けられた貫通孔60aの内周面)まで延びている。第1ベント溝61bは、1つの磁石収容孔13に対向する部分に対して、同磁石収容孔13の断面における長手方向において並ぶ態様で2つ設けられている。なお、図12図14では、第1ベント溝61bの配置についての理解を容易にするために、同第1ベント溝61bの深さを、実際の深さ(例えば、数十μm)よりも誇張して示している。
【0063】
<第2端面、第2フロートピン、第2ベント溝>
ワークスペーサ60の厚さ方向における他方の面(以下、第2端面62)には、複数(本実施形態では、40個)の第2フロートピン62aと、複数(本実施形態では、40本)の第2ベント溝62bとが設けられている。本実施形態では、第2端面62が第1端面61の裏面にあたる。
【0064】
複数の第2フロートピン62aは、ワークスペーサ60の第2端面62から突出する形状をなしている。各第2フロートピン62aは、詳しくは、突端に向かうほど先細の円錐台形状をなしている。第2フロートピン62aの外形は、第1フロートピン61aの外形よりも小さい相似形状をなしている。これにより、図12に示すように、第2フロートピン62aの第2端面62からの突出量D2は、第1フロートピン61aの第1端面61からの突出量D1よりも小さくなっている。また、図13に示すように、各第2フロートピン62aの外形は、積厚調整ブロック30のピン収容凹部32の内形よりも小さくなっている。
【0065】
図12図14に示すように、複数の第2ベント溝62bは、ワークスペーサ60の第2端面62において溝状をなしている。各第2ベント溝62bは、第2端面62における前記磁石収容孔13の各々に対向する部分に各別に設けられている。各第2ベント溝62bは、第2端面62における上記磁石収容孔13に対向する部分から同第2端面62の内縁端(具体的には、貫通孔60aの内周面)まで延びている。第2ベント溝62bは、1つの磁石収容孔13に対向する部分に対して、同磁石収容孔13の断面における長手方向において並ぶ態様で2本設けられている。本実施形態では、第1端面61における複数の第1ベント溝61bの配置と、第2端面62における複数の第2ベント溝62bの配置とが同一になっている。なお、図12図14では、第2ベント溝62bの配置についての理解を容易にするために、同第2ベント溝62bの深さを、実際の深さ(例えば、数十μm)よりも誇張して示している。
【0066】
本実施形態では、同一の製造装置を利用して、2種類のロータ10が製造される。2種類のロータ10は、ともにフロートタイプのものである。ただし、2種類のロータ10は、磁石収容孔13における磁石14の埋没量が異なる。具体的には、2種類のロータ10の一方(以下、ロータ10[C])における磁石14の埋没量と比較して、2種類のロータ10の他方(以下、ロータ10[D])における磁石14の埋没量が小さくなっている。
【0067】
本実施形態では、同一の製造装置を利用して、2種類のロータ10[C],10[D]の一方を選択的に製造するために、ワークスペーサ60を裏返して使用することが可能になっている。具体的には、本実施形態の製造装置は、ワークスペーサ60の配置態様として、第1端面61がコア11の下面に隣接する「第1配置」、および、第2端面62がコア11の下面に隣接する「第2配置」のいずれかを選択可能な構造をなしている。
【0068】
<第1配置>
図13に示すように、第1配置では、ワークスペーサ60の第1端面61とコア11の下面とが合わされる態様であって、且つ、ワークスペーサ60の第2端面62と積厚調整ブロック30の上面31とが合わされる態様で、同ワークスペーサ60が配置される。
【0069】
第1配置では、磁石収容孔13の内部において磁石14の端部が第1フロートピン61aの突端によって支持された状態になる。また、第1端面61によって磁石収容孔13のワークスペーサ60側の開口13aが塞がれた状態になる。さらに、第1端面61に設けられた第1ベント溝61bを介して、磁石収容孔13とワークスペーサ60の貫通孔60a(およびコア11の中心孔11a)とが連通された状態になる。また、第2端面62と積厚調整ブロック30の上面31とが合わせられた状態になるとともに、第2端面62に設けられた第2フロートピン62aが積厚調整ブロック30に設けられたピン収容凹部32に収容された状態になる。
【0070】
本実施形態では、こうした第1配置の製造装置を利用して、ロータ10[C]が製造される。
<第2配置>
図14に示すように、第2配置では、ワークスペーサ60の第2端面62とコア11の下面とが合わされる態様であって、且つ、ワークスペーサ60の第1端面61と積厚調整ブロック30の上面31とが合わされる態様で、同ワークスペーサ60が配置される。
【0071】
第2配置においては、磁石収容孔13の内部において磁石14の端部が第2フロートピン62aの突端によって支持された状態になる。また、第2端面62によって磁石収容孔13のワークスペーサ60側の開口13aが塞がれた状態になる。さらに、第2端面62に設けられた第2ベント溝62bを介して、磁石収容孔13とワークスペーサ60の貫通孔60a(図12参照)とが連通された状態になる。また、第1端面61と積厚調整ブロック30の上面31とが合わせられた状態になるとともに、第1端面61に設けられた第1フロートピン61aが積厚調整ブロック30に設けられたピン収容凹部32に収容された状態になる。
【0072】
本実施形態では、こうした第2配置の製造装置を利用して、ロータ10[D]が製造される。
<製造方法>
以下、本実施形態にかかるロータ10の製造方法について説明する。
【0073】
本実施形態にかかるロータ10の製造方法は、ブロック配置工程、選択配置工程、コア配置工程、磁石配置工程、型締め工程、充填工程、硬化工程、および型開き工程を備えている。本実施形態にかかるロータ10の製造方法における各工程の実行手順は、基本的には、先の第1実施形態にかかるロータ10の製造方法における各工程の実行手順と同一である。
【0074】
本実施形態の選択配置工程においては、詳しくは、「第1配置」および「第2配置」のいずれかを選択するとともに、選択した配置態様となるように、ワークスペーサ60の貫通孔60aに支持部材20Bのポスト部22が挿通される。このようにして、ワークスペーサ60が支持部材20Bに組み付けられる。
【0075】
この選択配置工程では、ロータ10[C]を製造する場合には、ワークスペーサ60の配置態様として第1配置が採用される。具体的には、ワークスペーサ60の第1端面61が上になる態様(図13に示す態様)で、同ワークスペーサ60が支持部材20Bに組み付けられる。これにより、その後の磁石配置工程において、各磁石14の下面が、第1端面61に設けられた第1フロートピン61aの突端によって支持されるようになる。このとき、各磁石14は、ワークスペーサ60の第1端面61から上方に所定量(詳しくは、前記突出量D1)だけ離間した位置で保持される。
【0076】
一方、選択配置工程では、ロータ10[D]を製造する場合には、ワークスペーサ60の配置態様として第2配置が採用される。具体的には、ワークスペーサ60の第2端面62が上になる態様(図14に示す態様)で、同ワークスペーサ60が支持部材20Bに組み付けられる。これにより、その後の磁石配置工程において、各磁石14の下面が、第2端面62に設けられた第2フロートピン62aの突端によって支持されるようになる。このとき、各磁石14は、ワークスペーサ60の第2端面62から上方に所定量(詳しくは、前記突出量D2)だけ離間した位置で保持される。
【0077】
<作用効果>
本実施形態によれば、以下に記載する効果が得られる。
(2-1)製造装置によってロータ10[C]を製造する場合には、ワークスペーサ60の配置態様として、「第1配置」が選択される。この場合には、第1端面61の第1フロートピン61aによって磁石14を上記突出量D1だけ磁石収容孔13の内部に押し込んだ状態で、同磁石14を固定することができる。これにより、ワークスペーサ60の第1端面61から磁石14を突出量D1だけ浮かせた状態で、同磁石14を固定することができる。
【0078】
一方、製造装置によってロータ10[D]を製造する場合には、ワークスペーサ60の配置態様として、「第2配置」が選択される。この場合には、第2端面62の第2フロートピン62aによって磁石14を上記突出量D1よりも小さい上記突出量D2だけ磁石収容孔13の内部に押し込んだ状態で、同磁石14を固定することができる。これにより、ワークスペーサ60の第2端面62から磁石14を突出量D2だけ浮かせた状態で、同磁石14を固することができる。
【0079】
そして、本実施形態によれば、同一のワークスペーサ60を裏返して使用することで、製造装置の形態を、「ロータ10[C]を製造する形態」および「ロータ10[D]を製造する形態」の一方から他方に切り替えることができる。これにより、複数種類の製造装置を用意したり金型装置の全体を交換したりする必要がなくなるため、高い生産効率で複数種類のロータ10を製造することができる。
【0080】
(2-2)ワークスペーサ60の第1端面61には第1ベント溝61bが設けられている。第1ベント溝61bは、第1端面61における前記第1配置において磁石収容孔13に対向する部分から第1端面61の内縁端まで延びている。また、ワークスペーサ60の第2端面62には第2ベント溝62bが設けられている。第2ベント溝62bは、第2端面42における前記第2配置において磁石収容孔13に対向する部分から第2端面62の内縁端まで延びている。
【0081】
本実施形態によれば、第1配置においては、ワークスペーサ60の第1ベント溝61bを利用して磁石収容孔13内のガスを外部に排出しながら、カルプレート50Bの充填口53cを介して磁石収容孔13への樹脂材16の充填を行うことができる。また、第2配置においては、ワークスペーサ60の第2ベント溝62bを利用して磁石収容孔13内のガスを外部に排出しながら、カルプレート50Bの充填口53cを介して磁石収容孔13に樹脂材16を充填することができる。そして、本実施形態によれば、ワークスペーサ60を裏返して使用することで、製造装置によって製造するロータ10のタイプに合わせて、第1ベント溝61bおよび第2ベント溝62bの配置態様を設定することができる。
【0082】
<変更例>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記各実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0083】
・第1実施形態において、ベント溝42aを、第2端面42における磁石収容孔13に対向する部分から同第2端面42の外縁端(具体的には、ワークスペーサ40の外周面)まで延びる態様で設けるようにしてもよい。
【0084】
・第1実施形態において、ベント溝42aを省略することができる。
・第1実施形態において、ワークスペーサ40の第1端面41に、ベント溝を設けるようにしてもよい。この場合には、ベント溝を、第1端面41における前記第1配置において磁石収容孔13に対向する部分から同第1端面41の内縁端(または外縁端)まで延びる態様で設ければよい。同構成によれば、第1配置において、ワークスペーサ40の第1端面41に設けられたベント溝を利用して磁石収容孔13内のガスを外部に排出しながら、磁石収容孔13への樹脂材16の充填を行うことができる。
【0085】
・第2実施形態において、第1ベント溝61bを、第1端面61における前記第1配置において磁石収容孔13に対向する部分から第1端面61の外縁端(具体的には、ワークスペーサ60の外周面)まで延びる態様で設けるようにしてもよい。
【0086】
・第2実施形態において、第2ベント溝62bを、第2端面62における前記第2配置において磁石収容孔13に対向する部分から第2端面62の外縁端(具体的には、ワークスペーサ60の外周面)まで延びる態様で設けるようにしてもよい。
【0087】
・第2実施形態において、第1端面61における複数の第1ベント溝61bの配置と第2端面62における複数の第2ベント溝62bの配置とを、異なる配置にしてもよい。要は、磁石収容孔13への樹脂材16の充填がスムーズに行われるように、磁石収容孔13の形状やフロートピン61a,62aの形状などに応じて、第1ベント溝61bの配置および第2ベント溝62bの配置を各別に定めるようにすればよい。
【0088】
・第2実施形態において、第1ベント溝61bおよび第2ベント溝62bの一方を省略したり、第1ベント溝61bおよび第2ベント溝62bの両方を省略したりすることができる。
【0089】
・第2フロートピン62aの外形は、以下の(条件A)および(条件B)をともに満たすのであれば、第1フロートピン61aの外形と相似形状ではない形状にしてもよい。(条件A)第2フロートピン62aの突出量D2が、第1フロートピン61aの突出量D1よりも小さい。(条件B)第2フロートピン62aの全体がピン収容凹部32の内部に収まる。
【0090】
・各実施形態において、フロートピン41a,61a,62aを、1つの磁石収容孔13に対応する部分に対して1つずつ設けるようにしてもよい。
・各実施形態において、フロートピン41a,61a,62aの形状は、任意に変更することができる。フロートピン41a,61a,62aの形状としては、例えば、楕円錘台形状や、正四角錘台形状、断面長方形の四角錘台形状を採用することが可能である。その他、フロートピン41a,61a,62aの形状としては、角柱形状や、平板形状、断面長穴の板形状などを採用することもできる。
【0091】
・各実施形態において、ピン収容凹部32の形状は、フロートピン41a,61a,62aを内部に収容可能な形状であれば、任意に変更することができる。そうしたピン収容凹部としては、例えば隣り合う2つのピン収容凹部32(図6参照)を繋ぐ態様で延びる断面長穴形状の凹部を採用することができる。その他、図15に一例を示すように、軸線Cを中心とする二重円環状をなすピン収容凹部72a,72bを設けること等も可能である。なお図15に示す例では、ピン収容凹部72aは、前記ピン収容凹部32(図6参照)のうちの貫通孔30aに近い側に配置される複数のピン収容凹部32を繋ぐ態様で延びている。また、ピン収容凹部72bは、前記ピン収容凹部32(図6参照)のうちの貫通孔30aから遠い側に配置される複数のピン収容凹部32を繋ぐ態様で延びている。
【0092】
・各実施形態において、積厚調整ブロック30を省略してもよい。この場合には、支持部材20Bの基部21の上面にピン収容凹部32を形成すればよい。この構成においては、基部21がベース部材に相当する。
【符号の説明】
【0093】
10,10[A],10[B] ロータ
11 コア
12 鉄心片
13 磁石収容孔
14 磁石
16 樹脂材
20 第1型部
20A 型本体
20B 支持部材
21 基部
30 積厚調整ブロック
31 上面
32 ピン収容凹部
40,60 ワークスペーサ
41,61 第1端面
41a フロートピン
42,62 第2端面
42a ベント溝
50 第2型部
50A 型本体
50B カルプレート
52 下面
53c 充填口
61a 第1フロートピン
61b 第1ベント溝
62a 第2フロートピン
62b 第2ベント溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図15