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特開2024-5459果実香味飲料、および飲料の果実感向上方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005459
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】果実香味飲料、および飲料の果実感向上方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/52 20060101AFI20240110BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20240110BHJP
   A23L 2/56 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
A23L2/52
A23L2/00 B
A23L2/56
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105646
(22)【出願日】2022-06-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】松岡 修平
【テーマコード(参考)】
4B117
【Fターム(参考)】
4B117LC03
4B117LE10
4B117LK06
4B117LK08
4B117LK12
4B117LL01
(57)【要約】
【課題】無糖乃至低糖でありながらも、果実感を向上できる飲料に関する技術を提供する。
【解決手段】果実香味飲料は、フィチン酸を含有し、甘味度が5以下および/またはBrixが5以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィチン酸を含有し、甘味度が5以下および/またはBrixが5以下である、果実香味飲料。
【請求項2】
当該フィチン酸の含有量が0.005g/100ml以上、0.1g/100ml以下である、請求項1に記載の果実香味飲料。
【請求項3】
果実フレーバーを含有する、請求項1または2に記載の果実香味飲料。
【請求項4】
無色透明である、請求項1または2に記載の果実香味飲料。
【請求項5】
クエン酸酸度が0.1g/100ml以下である、請求項1または2に記載の果実香味飲料。
【請求項6】
容器詰めされている、請求項1または2に記載の果実香味飲料。
【請求項7】
フィチン酸を配合し、甘味度が5以下および/またはBrixが5以下であり、果実香味を呈するように飲料を調製する工程を含む、飲料の果実感向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果実香味飲料、および飲料の果実感向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、果実フレーバーや果実エキス、果汁などの原料を含む果実香味飲料が知られている。例えば、特許文献1には、フィチン酸等のキレート剤と、柑橘系香料と、を含む柑橘系香味飲料が開示されている。特許文献1によれば、フィチン酸等のキレート剤を用いることで、柑橘系香味飲料の光による劣化を抑制できることが開示されている。また、特許文献2には、果汁の果汁感を増強させるため、果汁に、高甘味度甘味料と、イノシトールと、酸味料とを添加する果汁感増強方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-68132号公報
【特許文献2】特開2018-57308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、健康志向の高まりで生活者の甘さ離れが進んでおり、無糖乃至低糖飲料の市場が拡大している。しかしながら、従来の果実香味飲料は、糖類の甘みにより果実感を向上させるものであったため、果実香味飲料を無糖乃至低糖とした場合、果実感が十分に得られない傾向があった。また、特許文献1に開示される飲料は、フィチン酸等のキレート剤を用いることで、柑橘系香味飲料の光による劣化を抑制することに着目するものであり、果実感の向上に着目するものではなかった。同様に、特許文献2に開示される飲料は、甘味度が高く、無糖乃至低糖の飲料に着目したものではなかった。
【0005】
本発明者は、新たに、無糖乃至低糖の果実香味飲料の果実感を向上させるべく鋭意検討を行った結果、フィチン酸を用いることが有効であることを見出し、本発明を完成させた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、以下の果実香味飲料および果実感向上方法が提供される。
【0007】
[1] フィチン酸を含有し、甘味度が5以下および/またはBrixが5以下である、果実香味飲料。
[2] 当該フィチン酸の含有量が0.005g/100ml以上、0.1g/100ml以下である、[1]に記載の果実香味飲料。
[3] 果実フレーバーを含有する、[1]または[2]に記載の果実香味飲料。
[4] 無色透明である、[1]乃至[3]いずれか一つに記載の果実香味飲料。
[5] クエン酸酸度が0.1g/100ml以下である、[1]乃至[4]いずれか一つに記載の果実香味飲料。
[6] 容器詰めされている、[1]乃至[5]いずれか一つに記載の果実香味飲料。
[7] フィチン酸を配合し、甘味度が5以下および/またはBrixが5以下であり、果実香味を呈するように飲料を調製する工程を含む、飲料の果実感向上方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、無糖乃至低糖でありながらも、果実感を向上できる飲料に関する技術が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。なお、本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下のことを表す。
【0010】
本明細書において「果実感」とは、飲料の飲用時に感じられる甘みと酸味、香りのバランスが、果実らしさを想起させる味わいであることをいう。
【0011】
<果実香味飲料>
本実施形態の果実香味飲料(以下「飲料」と称する場合もある。)は、フィチン酸を含有し、甘味度が5以下、およびBrixが5以下の少なくとも一方を満たす。これにより、無糖乃至低糖でありながらも、果実感を向上できる。かかる理由の詳細は明らかではないが、一般にフィチン酸は酸味料の一つとして知られるが、特定量のフィチン酸の酸味と無糖乃至低糖飲料のほのかな甘味とのバランスが果実様の風味に近似したり、特定量のフィチン酸の酸味と果実フレーバーの甘い香りとが合致することで、果実様の甘酸っぱい香味を補強し果実感の向上に寄与すると推測される。
【0012】
[甘味度]
本実施形態の飲料の甘味度は、5以下であり、好ましくは、4.0以下、3.5以下、3.0以下、2.5以下、2.0以下、1.5以下、1.0以下、0.5以下の順であり、0であることがさらに好ましい。
【0013】
なお、「甘味度」とは、ショ糖と比較した時の各甘味料の甘味の強さを示すパラメータである。高甘味度甘味料を配合した飲料では、配合した高甘味度甘味料の甘味度の換算係数と配合比率に基づいて算出することができる。各甘味料の甘味度の換算係数は、ショ糖が1であり、果糖ぶどう糖液糖(55%異性化糖)は0.75、ブドウ糖は0.7、果糖は1.3、乳糖は0.3、アセスルファムカリウムは200、アスパルテームは200、スクラロースは600、エリスリトールは0.8である。
【0014】
飲料の甘味度は、容器詰め飲料の容器に成分表示されている甘味成分の甘味度と、分析等により特定した甘味成分の含有量をもとに算出することができる。上記方法で算出できない場合は、訓練された味覚官能パネリストが甘味標準水溶液(20℃)を用いた官能評価を行って、当該飲料と同等の甘味を持つショ糖溶液の濃度を特定し、その濃度を甘味度とすることもできる。
【0015】
[糖度(Brix値)]
本実施形態の飲料(20℃)の糖度(Brix値)は、5以下であり、好ましくは、4.0以下、3.5以下、3.0以下、2.5以下、2.0以下、1.5以下、1.0以下の順である。
【0016】
糖度(Brix値)は、公知の方法で測定されるが、糖度に応じて適宜測定機器を選択することが好ましい。測定機器としては、たとえば、「デジタル屈折計RX-DD7α-Tea(アタゴ社製)」や「デジタル屈折計Rx-5000α(アタゴ社製)」等を用いて、20℃における糖用屈折計の示度を測定することができる。
【0017】
[フィチン酸]
フィチン酸とは、飲料の酸味料として知られる公知のものである。本実施形態の飲料においてフィチン酸は塩の形態で用いられてもよい。
【0018】
フィチン酸の含有量は、0.005g/100ml以上、0.1g/100ml以下が好ましく、0.007g/100ml以上、0.08g/100ml以下がより好ましく、0.010g/100ml以上、0.07g/100ml以下がさらに好ましく、0.015g/100ml以上、0.05g/100ml以下がことさらに好ましい。
【0019】
フィチン酸の含有量を上記下限値以上とすることにより、果実感の強さおよび良さを効果的に向上でき、香りの良さ、甘味の良さも向上できる。くわえて、0.007g/100ml以上とすることで、酸味の良さの向上効果も得られるようになる。
【0020】
一方、フィチン酸の含有量を上記上限値以下とすることにより、良好な果実感を得つつ、酸味が強くなりすぎ、酸味の良さが損なわれることを抑制できる。
【0021】
飲料中のフィチン酸の含有量は、公知の方法で測定できる。例えば、ポストカラム反応を用いた高速液体クロマトグラフィーや、トリクロロ酢酸で抽出したフィチン酸についてイオンクロマトグラフィーを用いて測定することができる。
【0022】
その他、本実施形態の飲料は、以下の性能・物性を有することが好ましい。
【0023】
[クエン酸酸度]
本実施形態の飲料のクエン酸酸度の上限値は、飲料の嗜好性を保持する観点から、好ましくは0.1g/100ml以下、より好ましくは0.08g/100ml以下である。
一方、飲料のクエン酸酸度の下限値は、特に限定されず、0.0g/100mlであってもよいが、適度な酸味による良好な風味を得る観点から、0.01g/100ml以上であることが好ましい。
【0024】
クエン酸酸度は、100ml中に含まれる酸量をクエン酸に換算した場合のグラム数(無水クエン酸g/100ml)で表すことができる。
【0025】
ここで、クエン酸酸度は、具体的には、フェノールフタレイン指示薬と水酸化ナトリウムとを用いて、以下の手順で滴定することにより求められるものである。
(1)スターラーを用いて、飲料中の炭酸ガスを常法により、除去する。
(2)200mL三角フラスコに対して5~15gの飲料を正確に秤量し、水を用いて50mL程度まで希釈する。
(3)希釈した前記飲料に対して1%フェノールフタレイン指示薬を数滴加えて撹拌する。
(4)三角フラスコ内の希釈飲料溶液をマグネティックスターラーで撹拌しながら、25mL容ビューレットに入れた0.1Mの水酸化ナトリウムを前記飲料溶液に滴下し、滴定試験を実施する。この滴定試験は、三角フラスコ内の飲料溶液の色が、30秒間赤色を持続した点を終点とする。
(5)クエン酸酸度(%)の値を、滴定試験の結果に基づき、次式によって算出する。
【0026】
クエン酸酸度(%)=A×f×(100/W)×0.0064
【0027】
なお、式中、Aは、0.1M水酸化ナトリウム溶液の滴定量(mL)を、fは、0.1M水酸化ナトリウム溶液の力価を、Wは、飲料試料の質量(g)を示す。また、式中において乗算している「0.0064」という値は、1mLの0.1M水酸化ナトリウム溶液に相当する無水クエン酸の質量(g)を指す。
【0028】
なお、前記滴定試験においては、フェノールフタレイン指示薬に代えて、水素イオン濃度計を用いて実施してもよい。この場合、滴定試験の終点は、三角フラスコ内の飲料溶液のpHが8.1になった時とする。
【0029】
[pH]
本実施形態の飲料の20℃におけるpHは、2.2~4.5であることが好ましく、2.3~4.2であることがより好ましく、2.4~4.0であることがさらに好ましい。これにより、おいしさを良好に保持できる。
【0030】
なお、pHの測定は、市販のpH測定器を用いるなどして行うことができる。pHの調整は、例えば、特定酸の量を変えることや、pH調整剤を用いることなどにより行うことができる。
【0031】
[炭酸ガス圧]
本実施形態の飲料は、炭酸ガスを含有する炭酸飲料としてもよい。炭酸ガスを飲料中に含有させる方法は特に限定されず、当業者が適宜設定できる。
【0032】
炭酸ガス圧としては、2.5ガスボリューム以上であることが好ましく、3.0ガスボリューム以上であることがより好ましく、4.0ガスボリューム以上であることがさらに好ましい。
一方、飲料の嗜好性を保持し、ガス抜けを抑制する観点から、炭酸ガス圧が6.5ガスボリューム以下であることが好ましく、5.5ガスボリューム以下であることがより好ましい。
【0033】
炭酸ガスの圧入方法は、公知の方法を用いることができる。また、炭酸飲料中のガスボリュームは公知の方法で測定できる。例えば、市販の測定器(京都電子工業製ガスボリューム測定装置GVA-700)等を用いて測定できる。より具体的には、試料(測定対象とする炭酸飲料)を20℃とした後、ガス内圧力計を取り付け、一度活栓を開いてガス抜き(スニフト)操作を行い、直ちに活栓を閉じてから激しく振とうし、圧力が一定になった時の値から算出することで得ることができる。
【0034】
なお、本実施形態のガスボリューム(炭酸ガス圧力)は、1気圧、20℃において、炭酸飲料全体の体積に対して、炭酸飲料に溶けている炭酸ガスの体積を表したものである。
【0035】
[外観]
本実施形態の飲料は、無色透明な飲料であることが好ましい。本実施形態において、透明とは、飲料中に浮遊物、沈殿物といった不溶物が観察されないことを意味する。
【0036】
[飲料の種類]
本実施形態の飲料の種類としては、たとえば、ニアウォーター、果汁入り飲料、乳性飲料、スポーツ飲料、および炭酸飲料等の清涼飲料、乳酸菌飲料等が挙げられる。
【0037】
なかでも、ニアウォーターは、水のように透明でありながらも果実香味が得られる飲料であり、水のような無色透明性、飲みやすさを維持するため、甘味料、酸味料、香料、エキス、果汁などの成分の含有量をできるだけ低く抑えることが求められる。そのため、繊細な風味設計となっており、わずかな異味であっても感じられやすく、酸味と甘みのバランスをより高度に制御することが重要となる。
【0038】
また、本実施形態の飲料は、非アルコール飲料である。非アルコール飲料とは、アルコールを実質的に含有しない飲料をいい、具体的にはエタノールなどのアルコールの含有量が1.0体積/体積%未満である飲料を意味する。
【0039】
[その他成分]
また、本実施形態の飲料においては、本発明の効果が奏される限り、上記以外の他の成分を含んでもよい。例えば、香料、果汁、糖類や高甘味度甘味料などの甘味料、フィチン酸を除く酸味料、ビタミン、着色料、食塩、酸化防止剤、乳化剤、保存料、調味料、エキス類、pH調整剤、品質安定化剤、および増粘剤などの飲料に通常配合される成分を含有することができる。
【0040】
香料としては、天然香料および合成香料のいずれを用いてもよい。
【0041】
本実施形態の飲料は、果実フレーバーを含むことが好ましい。果実フレーバーとしては、特に限定されないが、例えば、オレンジフレーバー、ミカンフレーバー、マンダリンフレーバー、グレープフルーツフレーバー、レモンフレーバー、およびライムフレーバー等の柑橘類フレーバー;リンゴフレーバー、マスカット等のブドウフレーバー、ピーチフレーバー、イチゴフレーバー、メロンフレーバー等のソフトフルーツフレーバー;バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、マンゴーフレーバー等のトロピカルフルーツフレーバー等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0042】
また、果実フレーバーの添加量は、果実フレーバーの種類や嗜好性に応じて適宜調整されるが、例えば、0.01~1g/100mlであることが好ましい。
【0043】
果汁としては、例えば、オレンジ果汁、ミカン果汁、マンダリン果汁、グレープフルーツ果汁、レモン果汁、およびライム果汁等の柑橘類果汁;リンゴ果汁、ブドウ果汁、モモ果汁、イチゴ果汁、バナナ果汁、パイナップル果汁、マンゴー果汁、ウメ果汁、アンズ果汁、キウイ果汁、メロン果汁、およびライチ果汁等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0044】
甘味料としては、例えば、果糖、ショ糖、ブドウ糖、果糖ぶどう糖液糖、高果糖液糖、グラニュー糖、乳糖、および麦芽糖等の糖類;キシリトール、およびD-ソルビトール等の低甘味度甘味料;オリゴ糖、はちみつ、水飴(麦芽糖)、糖アルコール、ならびに高甘味度甘味料等が挙げられる。
高甘味度甘味料としては、例えば、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、キシリトール、グリチルリチン酸二ナトリウム、サッカリン、サッカリンカルシウム、サッカリンナトリウム、スクラロース、ネオテーム、アラビノース、カンゾウ抽出物、キシロース、ステビア、タウマチン、ラカンカ抽出物、ラムノース及びリボースが挙げられる。
これら甘味料は、1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を用いてもよい。
【0045】
酸味料としては、例えば、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、アジピン酸、グルコン酸(グルコノデルタラクトンを含む)、コハク酸、酢酸、氷酢酸、フマル酸、リン酸及びそれらの塩等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
なお、フィチン酸以外の酸味料を用いる場合、フィチン酸の酸味料全量に対する含有量は、好ましくは30~99.9質量%であり、より好ましくは50質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上であり、ことさらに好ましくは90質量%以上である。
【0046】
[容器]
本実施形態の飲料に用いられる容器は、ガラス、紙、プラスチック(ポリエチレンテレフタレート等)、アルミ、およびスチール等の単体もしくはこれらの複合材料又は積層材料からなる密封容器が挙げられる。また、容器の種類は、特に限定されるものではないが、たとえば、ペットボトル、アルミ缶、スチール缶、紙パック、チルドカップ、瓶等が挙げられる。飲料を外観から視認できる観点からは、ペットボトルが好ましい。
【0047】
飲料の容量としては、特に限定されないが、100~2000gが好ましく、飲み切りやすい点からは、100~700gがより好ましい。
【0048】
容器詰めされた飲料の加熱滅菌処理の方法は、特に限定されないが、日本国内においては食品衛生法の規定に従って、加熱滅菌処理される。具体的には、高温で短時間殺菌した後、無菌条件下で殺菌処理された保存容器に充填する方法(UHT殺菌法)や、調合液を缶等の保存容器に充填した後、レトルト処理を行うレトルト殺菌法が挙げられる。
【0049】
<飲料の製造方法>
本実施形態の飲料の製造方法は、フィチン酸を配合し、甘味度が5以下またはBrixが5以下であり、果実香味を呈するように飲料を調製する工程を含む。これにより、甘味度が5以下またはBrixが5以下であっても、果実感が向上された果実香味飲料を得ることができる。混合方法等は、公知の方法を用いることができる。飲料としては、上記で説明したのと同様の成分、物性を有するものが挙げられる。
【0050】
<飲料の果実感向上方法>
本実施形態の飲料の果実感向上方法は、フィチン酸を配合し、甘味度が5以下またはBrixが5以下であり、果実香味を呈するように飲料を調製する工程を含む。換言すると、甘味度が5以下またはBrixが5以下の果実香味飲料に、フィチン酸を配合することで、果実香味飲料の果実感を向上することができる。飲料としては、上記で説明したのと同様の成分、物性を有するものが挙げられる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0052】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0053】
<実験1:低糖乃至無糖飲料における果実香味への影響の検証>
純水にオレンジ香料を0.10g/100ml添加した溶液に、表1に示す糖度(Brix値)および甘味度となるよう果糖ぶどう糖液糖(55%異性化糖)を添加し、飲料を調製した。
次に、得られた飲料について以下の官能評価1を行った。結果を表1に示す。
【0054】
[官能評価1]
各飲料(4℃)を訓練された9名のパネリストが試飲し、「甘味」、「酸味」、「香り」、「果実感」それぞれの「強さ」および「良さ」(質)について、以下の評価基準に従い、7段階評価を行い、その平均値を算出した。結果を表1に示す。
・評価基準:「強さ」または「良さ」
評点7:「とても強い」または「とても良い」
評点6:「強い」または「良い」
評点5:「やや強い」または「やや良い」
評点4:「どちらともいえない」
評点3:「やや弱い」または「やや良くない」
評点2:「弱い」または「良くない」
評点1:「とても弱い」または「とても良くない」
【0055】
【表1】
【0056】
参考例1~4は、甘味度が「0.0」、「1.0」、「2.0」、「3.0」であり、Brixが「0.02」、「1.0」、「2.0」、「3.0」であり、「果実感」の強さ、「香り」の強さの評価結果が、4.0を下回るものであった。一方、参考例5は、甘味度およびBrixがともに「6.0」であり「果実感」の強さ及び良さ、「香り」の強さおよび良さのいずれの評価結果も、4.0を上回るものであった。
【0057】
<実験2>
純水にオレンジ香料を0.10g/100ml添加した溶液に、表2に示す含有量となるように酸味料(フィチン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、無水クエン酸)を添加し、飲料を調製した。いずれの飲料も無色透明であった。
【0058】
次に、得られた飲料について、実験1と同様にして、官能評価1を行った。結果を表2に示す。
【0059】
【表2】
【0060】
<実験3>
純水に表3に示す各種果実フレーバーを0.10(g/100ml)ずつ添加した溶液に、表3に示す含有量となるようにフィチン酸、果糖ぶどう糖液糖(55%異性化糖)、アセスルファムカリウム、スクラロースを添加し、飲料を調製した。いずれの飲料も無色透明であった。
【0061】
次に、得られた飲料について以下の官能評価2を行った。結果を表3に示す。
【0062】
[官能評価2]
各飲料(4℃)を訓練された9名のパネリストが試飲し、「甘味」、「酸味」、「香り」、「果実感」それぞれの「強さ」および「良さ」(質)について、以下の評価基準に従い、基準品を4とした7段階評価を行い、その平均値を算出した。
・評価基準:「強さ」または「良さ」
評点7:基準品よりも「とても強い」または「とても良い」
評点6:基準品よりも「強い」または「良い」
評点5:基準品よりも「やや強い」または「やや良い」
評点4:基準品と同等
評点3:基準品よりも「やや弱い」または「やや良くない」
評点2:基準品よりも「弱い」または「良くない」
評点1:基準品よりも「とても弱い」または「とても良くない」
【0063】
【表3】
【手続補正書】
【提出日】2022-10-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
果実フレーバーを含有し、甘味度が5以下、クエン酸酸度が0.1g/100ml以下であり、アルコールの含有量が1.0体積/体積%未満の果実香味飲料であって、
フィチン酸の含有量が0.005g/100ml以上、0.1g/100ml以下である、果実香味飲料。
【請求項2】
無色透明である、請求項1に記載の果実香味飲料。
【請求項3】
容器詰めされている、請求項1または2に記載の果実香味飲料。
【請求項4】
果実フレーバーを含有し、甘味度が5以下、クエン酸酸度が0.1g/100ml以下であり、アルコールの含有量が1.0体積/体積%未満の果実香味飲料の果実感向上方法であって、
フィチン酸を配合し、当該フィチン酸の含有量が0.005g/100ml以上、0.1g/100ml以下となるように飲料を調製する工程を含む、果実香味飲料の果実感向上方法。