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特開2024-54597粉体の塗布方法、二次電池の製造方法、全固体電池の製造方法、二次電池、全固体電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054597
(43)【公開日】2024-04-17
(54)【発明の名称】粉体の塗布方法、二次電池の製造方法、全固体電池の製造方法、二次電池、全固体電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/04 20060101AFI20240410BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20240410BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240410BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240410BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20240410BHJP
   H01M 4/80 20060101ALI20240410BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20240410BHJP
   B05D 1/06 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
H01M4/04 Z
H01M4/139
H01M4/04 A
H01M4/36 A
H01M4/36 C
H01M4/62 Z
H01M4/66 A
H01M4/80 C
B05D7/24 301A
B05D1/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160917
(22)【出願日】2022-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】510009832
【氏名又は名称】エムテックスマート株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松永 正文
【テーマコード(参考)】
4D075
5H017
5H050
【Fターム(参考)】
4D075AA09
4D075AA73
4D075AA84
4D075AE03
4D075BB05Z
4D075DA04
4D075DB04
4D075DB06
4D075DB07
4D075DC19
4D075EA10
4D075EB16
4D075EB53
4D075EC01
4D075EC22
5H017AA04
5H017AS01
5H017BB06
5H017BB08
5H017BB12
5H017BB17
5H017BB19
5H017CC25
5H017DD06
5H017EE06
5H017EE07
5H017EE09
5H017HH01
5H017HH03
5H017HH04
5H017HH05
5H017HH06
5H017HH07
5H017HH08
5H050AA19
5H050BA15
5H050BA17
5H050DA04
5H050DA10
5H050DA11
5H050DA13
5H050DA18
5H050FA04
5H050FA13
5H050FA16
5H050FA17
5H050FA18
5H050GA03
5H050GA06
5H050GA10
5H050GA21
5H050GA22
5H050GA23
5H050GA26
5H050GA27
5H050GA29
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA08
5H050HA12
5H050HA14
5H050HA15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】二次電池の電極形成や全固体電池の電極形成において、スラリーにして対象物に塗布、乾燥する手法に必要な大型装置や多くのエネルギーの問題を解決する、二次電池または全固体電池の製造方法を提供する。
【解決手段】電極用合材を均一混合したスラリーを瞬時に専用装置で粉体にすることで粉体の粒子径に関係なく各材料の比率を同じにすることができる。その粉体を直接対象物に塗布する、または粉体と主に沸点が低い溶媒からなるパウダースラリーを塗布し短時間で溶媒を揮発し回収することで粉体層よりち密な粉体層を形成する。少なくともロールプレスするだけで電極を形成できる。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アースし移動する対象物に粉体を塗布する方法であって、多孔質物体上に粉体を充填する工程と、該粉体を吸引して下流に移動するにあたり、吸引時の粉体の秒単位時間当たりの吸引重量を安定させる工程と、前記粉体を吸引口から吸引して気粉混合体として圧力差で流路が連通する噴出口まで移送する工程と、前記流路の途中で気粉混合体の余剰な気体を外部へ排出し下流の流路内の体積当たりの粉体の密度を高くする工程と、移動する対象物に対峙した面が開口する粉体塗布装置内部は粉体流が移動する空間を持つ構造体からなり、前記噴出口を塗布装置に連通させる工程と、前記粉体は吸引時から対象物に付着するまでの間に静電気的に帯電させる工程と、アースし前記粉体塗布装置開口部に接触又は近接して移動する対象物に粉体を付着させ塗布する工程とからなる粉体の塗布方法。
【請求項2】
二次電池の製造方法または全固体電池の製造方法であって、多孔質物体上に電極用粉体を充填する工程と、該粉体を吸引して下流に移動するにあたり、吸引時の粉体の秒単位時間当たりの吸引重量を安定させる工程と、前記粉体を吸引口から吸引して気粉混合体として圧力差で流路が連通する噴出口まで移送する工程と、前記流路の途中で気粉混合体の余剰な気体を外部へ排出し下流の流路内の体積当たりの粉体の密度を高くする工程と、移動する対象物に対峙した面が開口する粉体塗布装置内部は粉体流が移動する空間を持つ構造体からなり、前記噴出口を塗布装置に連通させる工程と、前記粉体は吸引時から対象物に付着するまでの間に静電気的に帯電させる工程と、アースし前記粉体塗布装置開口部に接触又は近接して移動する対象物に粉体を付着させ粉体電極層を形成する工程と、該粉体電極層をロールでプレスし電極を形成してなることを特徴とする二次電池または全固体電池の製造方法。
【請求項3】
前記粉体の吸引時の粉体の秒単位時間当たりの吸引重量を安定させる方法は多孔物体上の粉体をエジェクターポンプで吸引し圧送するにあたり0.3MPa以上の圧縮気体で1秒当たり10サイクル以上のパルス開閉でエジェクターポンプを作動させることにより行うことを特徴とする請求項2の二次電池または全固体電池の製造方法。
【請求項4】
前記粉体の吸引時の粉体の秒単位時間当たりの吸引重量を安定させる方法は、多孔物体の凹部の嵩密度が一定の粉体を吸引するにあたり、該凹部の反対側の多孔面を負圧にし、粉体を凹部に容積的に充填し凹部の粉体の嵩比重を一定にすることで体積当たりの凹部の粉体の嵩比重を安定させることを特徴とする請求項2の二次電池又は全固体電池の製造方法。
【請求項5】
前記気粉混合体の余剰な気体を排出する流路の位置は、該流路の断面積を1/4以下に小さくする箇所の上流であって、下流の断面積の小さい流路の体積の粉体密度を高くして粉体を移動することを特徴とする請求項2の二次電または全固体電池の製造方法。
【請求項6】
前記粉体塗布装置の内部の空間に少なくとも一つのコロナ電極または細長い電極を広い面積に対応した形状にして配置し粉体を帯電させ、少なくとも前記空間の両側と上流部の壁は帯電した粉体が静電反発する材質とし、該壁の対象物側端部に接触又は近接して移動する対象物とで外部の風の流れを遮る構造とし、少なくとも対象物の移動方向の両側の壁は粉体流の流れを規制して粉体を対象物に付着させ、前記空間を下流側に長く展開し、対象物に付着しなかった粉体は下流に位置するコロナ電極で静電反発または再度帯電させて下流に移動しながら対象物に付着するチャンスを増やし、塗布装置内部の少なくとも余剰気体は前記粉体装置の最下流の排出口から排出させることを特徴とする請求項2の二次電池または全固体電池の製造方法。
【請求項7】
前記塗布装置の両側の壁部の内側に複数の仕切りを設け、該仕切りの間に単数または複数の噴出口を存在させ前記仕切りにより対象物と直交する幅方向に複数のストライプ状粉体電極層と未塗工部を形成することを特徴とする請求項2の二次電池または全固体電池の製造方法。
【請求項8】
前記対象物移動方向の粉体層電極間の電極未塗工部領域に飛散した粉体を電極の幅に沿って真空で吸引し外部へ排出する工程と、更に対象物移動方向の電極と直交して電極未塗工部領域形成のため対象物上の電極パターン以外の粉体を真空で吸引し粉体未塗工部と粉体電極パターン層を形成することを特徴とする請求項2の二次電池の製造方法。
【請求項9】
前記電極の形成は対象物への粉体の積層とロールでのプレスを複数回行い少なくとも最終プレスでは少対象物と粉体層を電極用粉体に含まれるバインダーの軟化点以上の温度に加熱し、10kN/cm以上の線圧で加圧して電極を形成することを特徴とする請求項2の二次電池または全固体電池の製造方法。
【請求項10】
前記電極形成の後工程の集電体、負極層、電解質層、正極層、集電体の積層のロールプレス工程ではロール温度または粉体温度を電極用粉体に含まれるバインダーまたは電解質ポリマーの軟化点以上に加熱して10kN/cm乃至50 kN/cmの線圧でプレスすることを特徴とする請求項2の二次電池または全固体電池の製造方法。
【請求項11】
前記電極用粉体は少なくとも電極用活物質粒子、電解質粒子又は繊維、バインダー、電解質ポリマー、導電助剤、活物質粒子と電解質の乾式造粒によるコアシェル粒子の中から選択し造粒した粉体であることを特徴とする請求項2の二次電池または全固体電池の製造方法。
【請求項12】
前記対象物の集電体に電極粉体塗布前にカーボンナノチューブまたはカーボンナノファイバーからなる導電助剤に分散剤を加え、更にバインダー溶液または平均粒子径が0.1マイクロメートル以下のバインダー微粒子と貧溶媒からなるスラリーを選択して加え固形分が1.5パーセント以下にした液体を15マイクロメートル以下のウェット厚みで塗布することを特徴とする請求項2の二次電池又は全固体電池の製造方法。
【請求項13】
対象物の移動方向に回転する多孔質中空ロールの粉体の供給位置で該粉体を吸引しロールの外周に前記粉体を付着積層し、前記対象物への塗布位置で前記粉体を離脱させ対象物に付着させるにあたり、該粉体を充填する位置では前記ロールの内部を負圧にして前記粉体を吸引しロールの表面に粉体を付着させ粉体層を形成し該粉体層の嵩比重を安定させる工程と、前記ロールと対象物間に静電気的帯電手段を設け 粉体を帯電させる工程と、前記対象物のロールへの少なくとも最接近位置ではロールの内部から圧縮気体で粉体を離脱させて前記ロール表面の粉体をアースして移動する対象物に付着させる工程と、前記ロールと対象物間は余剰気体の排出口を備えた囲い手段を設け塗布装置として外部からの風の影響と粉体の塗布装置外への流出を防止する工程とにより対象物に粉体を塗布することを特徴とする粉体の塗布方法。
【請求項14】
前記粉体を充填する中空ロールが多孔質の少なくとも一つの凹部形状を有し、該凹部に前記粉体を前記ロールの中空側から吸引しながら充填し、対象物に近接した塗布装置内では凹部の粉体を前記中空側からプラス圧の気体で噴出し前記対象物に塗布することを特徴とする請求項13の粉体の塗布方法。
【請求項15】
対象物の移動方向に回転する多孔質中空ロールの電極用粉体の供給位置で該粉体を吸引しロールの外周に前記粉体を付着積層し、前記対象物への塗布位置で前記粉体を離脱させ対象物に付着させるにあたり、該粉体を充填する位置では前記ロールの内部を負圧にして前記粉体を吸引しロールの表面に粉体を付着させ粉体層を形成し該粉体層の嵩比重を安定させる工程と、前記ロールと対象物間に静電気的帯電手段を設け粉体を帯電させる工程と、少なくとも対象物の前記ロールへの最接近位置ではロールの内部から圧縮気体で粉体を離脱させて前記ロール表面の前記粉体を、アースして移動する対象物に付着させ塗布する工程と、前記ロールと対象物間は余剰気体の排出口を備えた囲い手段を設け塗布装置として外部からの風の影響と粉体の塗布装置外部への流出を防止する工程とにより対象物に粉体を塗布することを特徴とする二次電池又は全固体電池の製造方法。
【請求項16】
対象物の移動方向に回転移動する多孔質ベルト上の粉体を対象物に塗布する方法であって、粉体の供給位置で前記ベルトの反対側を負圧にして粉体を吸引して少なくともベルト表面に粉体を付着する工程と、前記ベルトと対象物間の粉体に静電気帯電手段で粉体を帯電させる工程と、前記対象物への塗布位置でベルト上の粉体を離脱させアースして移動する対象物に粉体を付着させる工程と、塗布位置の前記ベルトと対象物間は余剰気体の排出口を備えた囲い手段を設け塗布装置として外部からの風の影響と粉体の外部への流出を防止する工程とにより対象物に粉体を塗布することを特徴とする粉体の塗布方法。
【請求項17】
対象物の移動方向に回転移動する多孔質ベルト上の電極用粉体を対象物に塗布し電極を形成して二次電池または全固体電池を製造する方法であって、前記粉体の供給位置で前記ベルトの反対側を負圧にして粉体を吸引して少なくともベルト表面に粉体を付着する工程と、前記ベルトと対象物間の粉体に静電気帯電手段で粉体を帯電させる工程と、前記対象物への塗布位置でベルト上の粉体を離脱させアースして移動する対象物に粉体を付着させる工程と、塗布位置の前記ベルトと対象物間は余剰気体の排出口を備えた囲い手段を設け塗布装置として外部からの風の影響と粉体の外部への流出を防止する工程とにより対象物に電極用粉体を塗布し電極を形成してなることを特徴とする二次電池または全固体電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体の塗布方法、二次電池の製造方法、全固体電池の製造方法、二次電池、全固体電池に関する。
従来リチウムイオンバッテリー(LIB)などの二次電池の電極には固形分の重量比で数パーセント以下の樹脂系バインダーが多く使用されていた。耐熱性や耐溶剤性、耐久性の面から特に正極ではフッ化ビニリデン(PVDF)などのフッ素系バインダーが多用されていた。
LIBの電極は活物質粒子と導電助剤とバインダーと溶媒で合材スラリーを作成しアルミニウム箔や銅箔、ステンレススチール箔などの集電体に塗布し乾燥させ電極を形成していた。全固体電池の電極には活物質粒子、電解質粒子や繊維、導電助剤、バインダーと溶媒で合材スラリーを作成し集電体に塗布して乾燥し電極を形成していた。
【0002】
しかしPVDFなどのフッ素系や高分子のバインダーを溶解するのが難しくノルマルメチルピロリドン(NMP)やDMFなどの限られた特殊溶媒しかなかなく業界ではNMPを使用する傾向にあった。
しかしこれらの溶媒は沸点が高く溶媒を蒸発させスラリーを乾燥させるための生産ラインの乾燥装置は100メートル長さの超大型のオーブンを必要としていた。また揮発した溶媒を回収するための装置には高いイニシャルコストとランニングコストを必要としていた。そのため多くのエネルギーを浪費することになるので電気自動車(EV)は環境に良いとされながらEV製造過程ではカーボンニュートラルへの貢献は高くなかった。
【背景技術】
【0003】
上記の如く、従来LIB等の二次電池の電極形成は活物質、バインダー、導電助剤、バインダーを溶解する溶媒等でスラリーを作成し、移動する集電体にダイヘッド等で塗工し乾燥していた。塗工スピードを上げることで乾燥炉は巨大化して全長が100m以上に及ぶことさえあった。乾燥炉の一般的動力や熱源は炭酸ガスの排出源であり、電気自動車でカーボンニュートラル(CN)に貢献できる反面ライフサイクルアセスメント(LCA)の観点からすると逆行していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-100067
【特許文献2】WO2014/171535
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は既存の二次電池や次世代二次電池全般、特に全固体電池等の特にスラリー方式による電極や電池の製造方法をドライ方式またはそれに準じた方式にしてカーボンニュートラルに貢献することにある。また製造コストの面から単位ワット時当たりのコストを下げることも重要な目標の一つである。その為には、省資源、省エネルギー、省スペースをより一層追求することである。また電極形成や電池セルなどの成果物トータルの生産性を従来工法と少なくとも同等にすることである。
その為には電極材料や電解質材料用の必要とする溶媒は上流工程の限られたスペースで密閉または準密閉に近い小スペース内での工法でハンドリングし工程を完結し溶媒も回収すべきである。
そのような課題を解決するためWET工法の電極スラリーを集電体に塗布し乾燥する工法から電極合材をDRY(粉体)にして集電体に塗布し電極を形成するテスト規模の試みが米国の大学などの研究機関でなされている。
一方生産ラインに照準を合わせた工法で情報開示しているのがTESLA(テスラ)社である。テスラ社は二次電池の既存の電極用スラリーでの電極形成から電極用粉体での電極形成にチャレンジしトータルコストまで大幅に低減する画期的な二次電池ドライプロセスの情報を開示している。
電極用合材粒子からなる粉体を集電体に塗布しプレスロールで圧着することで従来の大型乾燥炉を不要とし更に溶剤回収装置を必要としないので設備の接地面積が1/10以下になるとしている。
【0006】
電極形成時、溶剤を使用しない粉体による電極ドライ形成法はプレスのみの圧着で必要により短時間の加熱と圧着で電極を形成できるので設置内面積が少なく特にバインダーが高分子のフッ素系等の熱可塑性樹脂の場合架橋反応する加熱時間は無くて良いので理想的である。本発明者はこれらの情報より前にLIBの電極形成にも対応した粉粒体の塗布方法と成膜方法を既に提案している。しかし高速の生産ラインでは電極用粉体または電極用合材を粉体にして適用する場合避けては通れない高いハードルの以下の大きな課題をかかえていた。粉体粒子群ハンドリング業界(例えば粉体塗料での塗装業界)の常識として粉体は微粉になるほど綿菓子の如くフワフワし凝集がひどく嵩比重が安定しないため容積的供給方法でも安定供給は難しかった。またLIB電極用粉体の樹脂分であるバインダーが重量比で全固形分の数パーセント以下特に最近は性能アップの為1パーセント以下と粉体塗装用の粉体とはギャップが大きすぎた。そのため理想的と言われる球形に近づけた粉体の製造はおおよそ不可能であった。その理由で例えばロットごとの粉体粒子の粒度分布を一定にすることは難しかった。よって単位センチメートル面積当たりの塗布重量や塗膜均一性を求めるLIB電極形成には一般的な容積的フィーダーは適用できなかった。また樹脂分が僅少であると粉体を静電気で帯電させてアース物体に静電塗装する従来の生産ライン向けデータを応用することはできなかった。ドクターブレードで供給された粉体の厚みを調整する方法、例えば電動スクリュー式のオーガフィーダーや電動テーブルを使用した容積式フィーダー等でこのような粉体を移送しても単位面積当たりの塗布重量を例えば60乃至100±2.5マイクロメートルの膜厚相当の単位面積当たりの電極重量を一定にすることはできなかった。また30マイクロメートル程度のスギ花粉やPM2.5に代表されるように粉体粒子は気体の量が多い気粉混合体になるとエアロゾル挙動と同じで空中に浮遊し気体の流れに左右されていた。また平均粒子径が20乃至80マイクロメートル程前後で樹脂分がリッチな一般の静電粉体塗装の粉体粒子群さえ静電気的に帯電させても高速気流の中で対象物に静電気的に付着させることはできなかった。分速数十メートル以上例えば分速60メートル以上のスピードで移動する対象物に粉体を静電気で帯電させてスプレイしても粉体を50パーセント以上付着させることはできなかった。高速移動する対象物で発生する気流の流れに粉体流は乗り移動して対象物以外に飛散する為である。前記の様に強制的に静電気を帯電させた粉体でさえ風速が早く風量が多いとそのエネルギーに負けるので対象物への付着量は極めて少なかった。そして対象物以外の周囲に粉体が飛散していた。一般的な粉体塗装用粉体は静電気的に十分帯電しやすい樹脂量で構成された粉体となっていた。一方、二次電池電極形成のため活物質粒子などのバインダーは絶縁体のため固形分トータルの数パーセント以下更には1%以下と微量が良いとされていた。
そのためバインダー含有率の低いLIBや全固体電池の電極用合材粒子は帯電が不安定になるので更に対象物への塗着が難しかった。
かつ前記の様にLIB電極形成のスラリー塗工のラインスピードは分速60m以上の高速のため、スラリーの替わりの粉体による高速粉体塗膜形成は業界の常識とかけ離れていた。
【0007】
引用文献1には基材に結着材塗液を塗布する工程と電極活物質を含む粉体をホッパーから供給しスキージーで調整し、粉体の目付量を制御し、電極幅外に供給された粉体を取り除く工程と、一対のプレスロールでリチウムイオン電池用電極を製造する方法が提案されている。
引用文献2は前記の本発明者により発明した粉粒体の塗布方法であって産業上の利用可能性でLIBなどの二次電池の電極形成への応用を開示している。
上記二つの文献の方法とも粉体の定量塗布は液体と違い難しいファクターが多い。液体や溶融体は粘度を一定にし、圧力を一定にし、吐出口径を一定にするだけで単位時間当たりの塗布重量は一定になる。液体の温度を一定にして密度を一定にすることができると容積ポンプで圧送することで塗布重量は一定になり管理しやすい。溶液やエマルジョンなどは温度を一定にすることで上記の手段を一定にさえしたら短時間当たり例えば1ミリ秒あたりの塗布重量さえ一定にできる。しかし活物質粒子と導電助剤とバインダーまたはバインダー溶液と溶媒、全固体電池の場合電解質を加えてなる電極用スラリーになる。比重の違う3種以上の不揮発分材料の混合体なので吐出時、分散状態が違うと致命的な欠陥になる。そのため安定混合分散した後塗布するまでの距離や時間が長いほどリスクが高くなる。LIBの製造速度である分速60メートルでは所要時間が僅か1秒で1メートル進んでしまうためである。つまり僅少の1ミリ秒分散が悪い電極スラリーを塗布すると1ミリメートルは不良になる。そのため本発明は混合分散がミリ秒単位で十分管理されたコンパクトな装置で予め電極用合材粉体を製造する。混合分散装置はスタティックミキサー等でよく、特に限定しないが微細に分散できる遠心力と向心力を利用したOHRミキサーや高速で回転させて混合分散させるダイナミックミキサー等は均一に瞬時にミリ秒単位の混合分散ができるので尚良い。合材粉体平均粒子径は活物質の粒子径より大きくしたら良い。つまり5マイクロメートル程度以上になる。粉体粒子径を大きくしたい場合、本発明では小径粉体と少なくとも溶媒でスラリーにして粉体が複数集合した大径粉体粒子を作成できる。本発明では粒子径が違っても合材内のそれぞれの材料の比率は同じなので電極合材粉体の粒子径に関係なく集電体等の対象物に粉体塗布装置で塗布しプレスして電極を形成できる。そのためパウダースラリーにしても合材粉体粒子径に関係なく合材比率は安定しているので、合材粉体のバインダーの貧溶媒特に低沸点溶媒、または貧溶媒を含む溶媒とからなるパウダースラリーを作成できる。貧溶媒は回収した炭酸ガスを液化させた液化炭酸ガスまたはその超臨界性流体で良い。そして対象物にパウダースラリーをダイコートやスプレイ塗布装置などで塗布し貧溶媒などを秒単位の短時間で揮発させ電極粉体層を形成しプレスして電極を形成できる。揮発した溶媒は小型回収装置で回収できる。必要により前記パウダースラリーに電極の固形分の許容される数パーセント以下に制限した微量のバインダー溶液やバインダーナノ微粒子または短繊維を付加しても良い。
パウダースラリーの場合秒単位の短時間で溶媒を揮発できるので溶媒回収装置も小型にできて、ロールプレスだけで電極形成ができるので従来のスラリー方式よりはるかに大きなメリットがある。しかし電池製造ラインでは石油に由来する有機溶剤を含まない溶媒からなるパウダースラリーや究極の粉体のみで電極形成することが理想である。そのため本発明では電極製造ラインの上流でまず電極用合材スラリーをコンパクトな装置で溶剤を回収しながら粉体に造粒することを提案する。上流とは電極活物質や電解質等を製造する工程が含まれ、電極製造ライン数ラインや数十ライン向けの電極用粉体を比較的小さな面積の設備で集約して合材粉体を製造できるためである。
全固体電池の場合は電解質材料を付加して配合したらよい。全固体電池向けに合材にするには活物質粒子と電解質のコアシェル粒子を作成し、導電助剤やバインダーと溶媒を付加し合材スラリーにして造粒しても良い。分散した合材スラリーはスプレイドライヤーの範疇である高速回転ディスクやベル等の遠心力造粒方法等で造粒でき造粒過程を静電反発させながら行うことで造粒中の粒子同士のブロッキングを防ぐことができる。
【0008】
バインダーが少ない粉体粒子はハンドリングの工程でも崩れやすく合材の各部位が脱落しやすい。参考文献1のような粒子が帯電していない場合粉体が少しの機械的衝撃で部分的に崩壊し微粉になるほど飛散し浮遊し典型的なエアロゾル流体の挙動で風の流れに左右される状態になる。そのよう微粉は対象物に付着させ固定するのが難しかった。そのような微粉には対象物に最初に塗布した結着材の効果は期待できなかった。
二次電池向けの特殊粉体の性質上、単位面積当たりの粉体の塗布重量を一定にしにくい粉粒体の特性を見越して参考文献2では最終被塗物の単位面積当たりの塗布重量を安定させるため工夫がなされている。
特にバインダーが僅少の粉体はロットだけでなく経時的にも物理的条件例えばホッパー内の粉体の自重や分散状況が変化するだけで嵩比重が変化する。そもそもそのような粉体は一般の容積式フィーダー等では供給中の嵩比重の変化を検知できず、それに追従できないため単位面積当たりの塗布重量を一定にできない。よって被塗物に塗布した単位面積当たりの塗布重量は変化する。文献2はそのような粉粒体の供給側の課題を解決し結果被塗物への塗布の課題も解決する方法を提案している。しかし高速ラインスピードに対応するための手段が説明されていない。
【0009】
帯電効果が低いと粉体は移送するガス流例えば圧縮気体の流速や流量に左右され対象物に衝突した粉体は気体と一緒に跳ね返り塗着効率は極めて悪くなる。また気粉混合体で均一に流動分散しないと定量式フィーダー等で移送された凝集した粉体はそのまま塗布される。更に前記の様に機械的な細かい振動でも粉体層の一部は脱落し飛散し高速移動する気体流で浮遊するので作業性や品質的な課題を解決できなかった。
【0010】
本発明では全固体電池用向けには予め活物質粒子と電解質粒子等は乾式混合してコアシェル構造にしても良いそれを単独装置で薄膜積層することもできる。導電助剤とバインダー溶液は別々の装置で薄膜積層できるし合材をスラリーにして微量を前記コアシェル層の間に薄膜で積層し均一な混合状態の電極層を形成できる。コアシェル粒子は導電助剤やバインダーを一緒に合材粉体としても良い。電極用合材粉体は前記の様に溶媒とでスラリーにすることができる。又は必要により小粒子径造粒粉体をスラリーにして複数回造粒を繰り返すことで造粒粒子径を段階的に大きくして所望する粒子径に造粒して粉体にすることができる。またLIB電極合材粉体でも全固体電池電極合材粉体でもあるいはコアシェルからなる全固体電池合材粉体でも粉体のバインダーが帯電してもバインダー以外の各素材は電気的抵抗値が低く帯電しにくかった。また粉体粒子の表面に存在するカーボンファイバーなどの導電助剤突起物があると帯電粉体粒子のアンテナの役割をするので更に放電しやすい傾向にあった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたもので
1.気粉混合体での流動(フルダイズ)が不安定な粉体であっても供給量を安定させる。
2.粉体供給から塗布までの行程を短くし可能な限り配管などの流路を無くする。
3.静電気的に帯電効率が低い粉体でも帯電後対象物に付着させやすくする。
4.高速、例えば分速60メートル以上で移動する対象物であっても粉体塗布時は、風の影響を受けにくい構造にする。
5.次工程のプレスまたは熱プレスで高性能にプレスして電極を形成できるようにする。
以上の課題を解決する。
そのため本発明では以下のことに特に注力した。
1.粉体の吸引量または噴出量を安定させる。
2.多孔質中空ロールまたは多孔質ベルトで粉体を吸着し移動し離脱させ粉体を対象物に塗布する。
3.気粉混合体の粉体移動方向性が安定したら余剰気体を排出する。
4.粉体の対象物への付着時、外乱の影響を受けない構造にする。(塗布装置の特に塗布部)
5.線圧が50kN/cm程度までの高圧、高精度にするため短い面長の複数のロールで複数列の電極形成を可能にする塗布方法を提供する。
【0012】
そのため本発明では
1.供給前の粉体の単位面積当たりの塗布重量を一定にするため平方センチメートル当たりの嵩比重を一定にすることとした。一例として多孔質物体上の粉体を多孔質の反対側から吸引して粉体層を所望する厚みにスキージーなどで均し嵩密度を一定にし、それを移送する構成にした。またはエジェクターポンプを高圧でミリ秒単位のパルス的に作動させ、多孔板上で流動しにくい粉体でもパルス負圧で強引に吸着し下流に高圧例えば0.3MPa以上のパルス流で押し込む。多孔質中空ロールまたは多孔質ベルトに粉体を負圧で吸着し嵩密度を一定にして移動し所望する箇所で粉体を離脱させ粉体を対象物に塗布する構成にした。
2.高速移動する対象物により発生する風の流れを塗布装置と対象物間では影響がない構造とした。粉体搬送が粉体吸着ロールタイプまたは吸着ベルトタイプの場合、塗布位置ではロールやベルトの一部も囲いその全部を塗布装置にして外因の影響を受けない塗布装置の構造体とした。
3.塗布装置内の余剰気体排出口を塗布装置の少なくとも下流側に設け、粉体付着に影響する余剰な気体を排出する構造にした。塗布装置内余剰気体と一緒に排出される僅少の粉体比率は同じ条件下で行われ常に同じなので対象物にほぼ同じ比率で付着する。そのため対象物上の単位面積当たりの粉体重量は粉体の供給量と同じ比率で付着することになる。
4.広幅対象物に広幅に対応した電極であって未塗工部の周縁と複数の電極パターンの電極粉体層を形成し後工程で面長が短いプレス精度の高いロールでプレスできる電極も形成できる構成とした。
全固体電池ではプレスロールの線圧が積層工程により10kN/cm乃至50kN/cm程度の高い線圧が必要とされている。そのため薄い例えば10マイクロメートル程度の集電体に比重の高い電極粉体をプレス後100マイクロメートル程度の高密度の厚みを所望する場合、粉体塗布時の厚みは数百マイクロメートル程度になる。高速例えば60m/min.以上での固定されていない電極粉体層のハンドリングは容易ではない。そのため本発明では1回の塗布と1回のプレスに限定せず、複数回の粉体塗布と複数回のプレスまたは仮プレスを行うことができる。複数回のプレスの内、線圧を高くするプレスは最終の1回だけで良い。また複数回のプレスは広幅の集電体の電極粉体層全部を一つの面長の長いロールで仮プレスしても良い。

本発明では予め仮プレスした集電体上の電極をスリットして、面長が短い高性能ロールで必要により加熱して電極幅ごとに高線圧でプレスができる。そのため電極幅が狭い複数のストライプ電極も形成できる構成にした。
【0013】
本発明のLIB等の二次電池の製造方法は二次電池全般の電極形成、次世代二次電池の全固体電池や空気電池などの電極形成、例えば電気二重層コンデンサ―等を含むキャパシターの電極、更にはDry法とWet法の組み合わせで燃料電池や水電解の電極形成やガスディフュージョンレイヤーのマイクロポーラスレイヤー形成等ができる。更には一般の金属平板や長尺板、不織布、フィルムなどの粉体の塗装や粉体の接着分野にさえ好適に応用できる。更にバインダーを必要としないナノサイズやサブミクロンの微粒子粉の粉体を直接またはパウダースラ―リーにして塗布することで次世代太陽電池発電層などの各層の形成ができる。
そのため本発明は以下の内容とした。
【0014】
本発明はアースし移動する対象物に粉体を塗布する方法であって、多孔質物体上に粉体を充填する工程と、該粉体を吸引して下流に移動するにあたり、吸引時の粉体の秒単位時間当たりの吸引重量を安定させる工程と、前記粉体を吸引口から吸引して気粉混合体として圧力差で流路が連通する噴出口まで移送する工程と、前記流路の途中で気粉混合体の余剰な気体を外部へ排出し下流の流路内の体積当たりの粉体の密度を高くする工程と、移動する対象物に対峙した面が開口する粉体塗布装置内部は粉体流が移動する空間を持つ構造体からなり、前記噴出口を塗布装置に連通させる工程と、前記粉体は吸引時から対象物に付着するまでの間に静電気的に帯電させる工程と、アースし前記粉体塗布装置開口部に接触又は近接して移動する対象物に粉体を付着させ塗布する工程とからなる粉体の塗布方法を提供する。
【0015】
本発明は二次電池の製造方法または全固体電池の製造方法であって、多孔質物体上に電極用粉体を充填する工程と、該粉体を吸引して下流に移動するにあたり、吸引時の粉体の秒単位時間当たりの吸引重量を安定させる工程と、前記粉体を吸引口から吸引して気粉混合体として圧力差で流路が連通する噴出口まで移送する工程と、前記流路の途中で気粉混合体の余剰な気体を外部へ排出し下流の流路内の体積当たりの粉体の密度を高くする工程と、移動する対象物に対峙した面が開口する粉体塗布装置内部は粉体流が移動する空間を持つ構造体からなり、前記噴出口を塗布装置に連通させる工程と、前記粉体は吸引時から対象物に付着するまでの間に静電気的に帯電させる工程と、アースし前記粉体塗布装置開口部に接触又は近接して移動する対象物に粉体を付着させ粉体電極層を形成する工程と、該粉体電極層をロールでプレスし電極を形成してなることを特徴とする二次電池または全固体電池の製造方法を提供する。
【0016】
本発明の前記粉体の吸引時の粉体の秒単位時間当たりの吸引重量を安定させる方法は多孔物体上の粉体をエジェクターポンプで吸引し圧送するにあたり0.3MPa以上の圧縮気体で1秒当たり10サイクル以上のパルス開閉でエジェクターポンプを作動させることにより行うことを特徴とする二次電池または全固体電池の製造方法を提供する。
【0017】
本発明の前記粉体の吸引時の粉体の秒単位時間当たりの吸引重量を安定させる方法は、多孔物体の凹部の嵩密度が一定の粉体を吸引するにあたり、該凹部の反対側の多孔面を負圧にし、粉体を凹部に容積的に充填し凹部の粉体の嵩比重を一定にすることで体積当たりの凹部の粉体の嵩比重を安定させることを特徴とする二次電池又は全固体電池の製造方法を提供する。
【0018】
本発明の前記気粉混合体の余剰な気体を排出する流路の位置は、該流路の断面積を1/4以下に小さくする箇所の上流であって、下流の断面積の小さい流路の体積の粉体密度を高くして粉体を移動することを特徴とする二次電または全固体電池の製造方法を提供する。
【0019】
本発明の前記粉体塗布装置の内部の空間に少なくとも一つのコロナ電極または細長い電極を広い面積に対応した形状にして配置し粉体を帯電させ、少なくとも前記空間の両側と上流部の壁は帯電した粉体が静電反発する材質とし、該壁の対象物側端部に接触又は近接して移動する対象物とで外部の風の流れを遮る構造とし、少なくとも対象物の移動方向の両側の壁は粉体流の流れを規制して粉体を対象物に付着させ、前記空間を下流側に長く展開し、対象物に付着しなかった粉体は下流に位置するコロナ電極で静電反発または再度帯電させて下流に移動しながら対象物に付着するチャンスを増やし、塗布装置内部の少なくとも余剰気体は前記粉体装置の最下流の排出口から排出させることを特徴とする二次電池または全固体電池の製造方法を提供する。
【0020】
本発明の前記塗布装置の両側の壁部の内側に複数の仕切りを設け、該仕切りの間に単数または複数の噴出口を存在させ前記仕切りにより対象物と直交する幅方向に複数のストライプ状粉体電極層と未塗工部を形成することを特徴とする二次電池または全固体電池の製造方法を提供する。
【0021】
本発明の前記対象物移動方向の粉体層電極間の電極未塗工部領域に飛散した粉体を電極の幅に沿って真空で吸引し外部へ排出する工程と、更に対象物移動方向の電極と直交して電極未塗工部領域形成のため対象物上の電極パターン以外の粉体を真空で吸引し粉体未塗工部と粉体電極パターン層を形成することを特徴とする二次電池の製造方法を提供する。
【0022】
本発明の前記電極の形成は対象物への粉体の積層とロールでのプレスを複数回行い少なくとも最終プレスでは少対象物と粉体層を電極用粉体に含まれるバインダーの軟化点以上の温度に加熱し、10kN/cm以上の線圧で加圧して電極を形成することを特徴とする二次電池または全固体電池の製造方法を提供する。
【0023】
本発明の前記電極形成の後工程の集電体、負極層、電解質層、正極層、集電体の積層のロールプレス工程ではロール温度または粉体温度を電極用粉体に含まれるバインダーまたは電解質ポリマーの軟化点以上に加熱して10kN/cm乃至50 kN/cmの線圧でプレスすることを特徴とする二次電池または全固体電池の製造方法を提供する。
【0024】
本発明の前記電極用粉体は少なくとも電極用活物質粒子、電解質粒子又は繊維、バインダー、電解質ポリマー、導電助剤、活物質粒子と電解質の乾式造粒によるコアシェル粒子の中から選択し造粒した粉体であることを特徴とする二次電池または全固体電池の製造方法を提供する。
【0025】
本発明の前記対象物の集電体に電極粉体塗布前にカーボンナノチューブまたはカーボンナノファイバーからなる導電助剤に分散剤を加え、更にバインダー溶液または平均粒子径が0.1マイクロメートル以下のバインダー微粒子と貧溶媒からなるスラリーを選択して加え固形分が1.5パーセント以下にした液体を15マイクロメートル以下のウェット厚みで塗布することを特徴とする二次電池又は全固体電池の製造方法を提供する。
【0026】
本発明は対象物の移動方向に回転する多孔質中空ロールの粉体の供給位置で該粉体を吸引しロールの外周に前記粉体を付着積層し、前記対象物への塗布位置で前記粉体を離脱させ対象物に付着させるにあたり、該粉体を充填する位置では前記ロールの内部を負圧にして前記粉体を吸引しロールの表面に粉体を付着させ粉体層を形成し該粉体層の嵩比重を安定させる工程と、前記ロールと対象物間に静電気的帯電手段を設け粉体を帯電させる工程と、前記対象物のロールへの少なくとも最接近位置ではロールの内部から圧縮気体で粉体を離脱させて前記ロール表面の粉体をアースして移動する対象物に付着させる工程と、前記ロールと対象物間は余剰気体の排出口を備えた囲い手段を設け塗布装置として外部からの風の影響と粉体の塗布装置外への流出を防止する工程とにより対象物に粉体を塗布することを特徴とする粉体の塗布方法を提供する。
【0027】
本発明は前記粉体を充填する中空ロールが多孔質の少なくとも一つの凹部形状を有し、該凹部に前記粉体を前記ロールの中空側から吸引しながら充填し、対象物に近接した塗布装置内では凹部の粉体を前記中空側からプラス圧の気体で噴出し前記対象物に塗布することを特徴とする粉体の塗布方法を提供する。
【0028】
本発明は対象物の移動方向に回転する多孔質中空ロールの電極用粉体の供給位置で該粉体を吸引しロールの外周に前記粉体を付着積層し、前記対象物への塗布位置で前記粉体を離脱させ対象物に付着させるにあたり、該粉体を充填する位置では前記ロールの内部を負圧にして前記粉体を吸引しロールの表面に粉体を付着させ粉体層を形成し該粉体層の嵩比重を安定させる工程と、前記ロールと対象物間に静電気的帯電手段を設け粉体を帯電させる工程と、少なくとも対象物の前記ロールへの最接近位置ではロールの内部から圧縮気体で粉体を離脱させて前記ロール表面の前記粉体を、アースして移動する対象物に付着させ塗布する工程と、前記ロールと対象物間は余剰気体の排出口を備えた囲い手段を設け塗布装置として外部からの風の影響と粉体の塗布装置外部への流出を防止する工程とにより対象物に粉体を塗布することを特徴とする二次電池又は全固体電池の製造方法を提供する。
【0029】
本発明は対象物の移動方向に回転移動する多孔質ベルト上の粉体を対象物に塗布する方法であって、粉体の供給位置で前記ベルトの反対側を負圧にして粉体を吸引して少なくともベルト表面に粉体を付着する工程と、前記ベルトと対象物間の粉体に静電気帯電手段で粉体を帯電させる工程と、前記対象物への塗布位置でベルト上の粉体を離脱させアースして移動する対象物に粉体を付着させる工程と、塗布位置の前記ベルトと対象物間は余剰気体の排出口を備えた囲い手段を設け塗布装置として外部からの風の影響と粉体の外部への流出を防止する工程とにより対象物に粉体を塗布することを特徴とする粉体の塗布方法を提供する。
【0030】
本発明は対象物の移動方向に回転移動する多孔質ベルト上の電極用粉体を対象物に塗布し電極を形成して二次電池または全固体電池を製造する方法であって、前記粉体の供給位置で前記ベルトの反対側を負圧にして粉体を吸引して少なくともベルト表面に粉体を付着する工程と、前記ベルトと対象物間の粉体に静電気帯電手段で粉体を帯電させる工程と、前記対象物への塗布位置でベルト上の粉体を離脱させアースして移動する対象物に粉体を付着させる工程と、塗布位置の前記ベルトと対象物間は余剰気体の排出口を備えた囲い手段を設け塗布装置として外部からの風の影響と粉体の外部への流出を防止する工程とにより対象物に電極用粉体を塗布し電極を形成してなることを特徴とする二次電池または全固体電池の製造方法を提供する。
【0031】
本発明の二次電池や全固体電池電極用合材は、少なくとも電極用活物質粒子、無機電解質粒子、無機電解質繊維、無機微粒子、バインダー、電解質ポリマー、導電助剤から選択し混合して粒子化することができる。粒子化は複数の材料を混合し粒子化する造粒で良く、核になる粒子に単一または異種の材料を含むスラリーや溶液などの液体をコーティングしカプセル化しても良い。また活物質粒子に電解質粒子を乾式で被覆し活物質粒子がコアで電荷質がシェルの粒子にしても良い。複数の微細粒子例えばナノ粒子等を混合しながら粒子化するミリング法やメカノケミカル法でも良い。本発明ではこれら粒子化の手段を問わず、以降これら粒子を合材粒子、または混合粒子として表現する。
【0032】
通常リチウムイオン電池等の電極バインダーはフッ化ビニリデン(PVDF)が多く使用されそれを溶解させるにはノルマルメチルピロリドン(NMP)やDMFなど限られた高沸点溶媒のみになる。そのため電極スラリーなどの塗布後の乾燥時間が長くなり厚膜を形成するとクラックが発生するなどの問題が発生していた。本発明では予めバインダーをガスでフォーム化して体積を大きくし接着面積を広げることができる。そのため伸びのあるバインダーは活物質粒子同士の空隙部を微粒子の活物質粒子や導電助剤と共に充填する効果がある。そのため電解質ポリマーとして用いられるポリエチレンオキサイド(PEO)とPTFEやPVDFを混合して融点を低下せガスを混入して発泡バインダーを得ることができる。この方法で造粒した活物質や電解質粒子等はパウダーとしてハンドリングし塗布することができる。塗布は上記方法以外に発明者が発明し権利を有する特許第6328104号、特許第6481154号を使用することで高精度に行うことができる。
【0033】
粉体として塗布する場合塗布後はプレスであるいは電解質層や相手極の積層後プレスはパインダーの軟化点以上に加熱しプレスして造膜できる。
分子量の高いPVDF、 PTFEとPEOとのマトリックス或いは混合し更にはセラミック微粉粒子を混合して粉体の流動性を上げることができる。酸化物系電解質粒子、硫化物系電解質粒子は単独でも前記バインダーや電解質ポリマーと混合して使用できる。本発明では貧溶媒や回収した液化炭酸ガスやその超臨界性流体を付加したスラリーにしスプレイして特に加熱した対象物にスプレイすることで瞬時に粉体塗布より密なドライ塗布ができるので所望する塗膜にすることができる。
【0034】
一方、硫化物系電解質例えばアルジロダイト系はイオン伝道度が良いが露点がマイナス50℃更にはマイナス70℃以下の除湿雰囲気やアルゴンガス等の不活性ガスの封入が必要で、設備が大型化する傾向にあった。
そのため本発明ではコンパクトな装置の粉体だけの塗布とプレスまたは熱プレスだけでなく、粉体の密着性を高めるDRY on WET(ドライ オンウェット)法まで使用できる。カーボンナノチューブなどの導電助剤と対象物へのアンカー効果がある分散剤や固形分の少ないバインダー微粒子または短繊維とバインダーの貧溶媒が主の溶媒からなるスラリー等を塗布し次いで粉体を塗布し加熱プレスすることで対象物との界面の密着性の高いドライ電極層ができる。
【発明の効果】
【0035】
上記のように従来の二次電池や全固体電池の電極形成は少なくとも電極用活物質粒子、無機電解質粒子、無機電解質繊維、無機微粒子、フッ素系バインダーや高分子のイオン伝導性電解質ポリマー、導電助剤から選択した混合材料とPVDF等を溶解できるNMPなどの高沸点溶剤を混合しスラリーにして集電体等の対象物に塗布していた。そのため二次電池の高速ラインでは100m前後の長い乾燥炉を必要としていた。
そのため莫大な工場設置スペースと動力や乾燥の為のエネルギーを必要としていた。
本発明は二次電池などの前記電極材料の内選択した混合材料を粒子にした粉体としてハンドリングし集電体等の対象物に塗布し、熱可塑性や電解質ポリマーの軟化点以上、可能なら融点以上に加熱しプレスすることで電極を形成できる。
しかしバインダーや電解質ポリマーなどの、粉体の流動性に適さないサラサラしない粉体、例えばPEOなどのポリマーは他の固いポリマー例えばPTFEや無機系微粒子等を混合しポリマー粒子としてハンドリングすることができる。無機微粒子は酸化物系電解質粒子や硫化物系粒子或いは繊維でよい。これらの混合物でよい。特にポリマー粒子の外部に添加し流動性を上げることができる。そのため活物質粒子と電解質の接触はプレスによるポリマーの延びで空隙の課題も解消できる。合材粒子の場合ポリマーをフォーム化すると尚よい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の実施の形態に係る電極用粉体の塗布に関し粉体塗布部の上部を移動する対象物に粉体を塗布する側面略断面図である。1-2:粉体塗布部平面略断面図である。
図2】本発明の実施の形態に係る粉体の複数の噴出口と静電気電極と気体または粉体流の排出口の平面略断面図の平面略断面図。2-2:本発明の実施の形態に係る塗布部の対象物移動方向に並列に複数の仕切り部を設けた平面略断面図。 2-3:本発明の実地の形態に係る粉体塗布部の側面略断面図。
図3】本発明の実施の形態に係る粉体塗布部の下部を移動する対象物に粉体を塗布する側面略断面図である。
図4】本発明の実施の形態に係る対象物と粉体層とプレスローラーの側面略断面図。
図5】本発明の実施の形態に係る対象物に電極液体例えばスラリーを塗布しその上に粉体塗布を行う側面略断面図である。
図6】本発明の実施の形態に係る粉体塗布部の底面を回転移動体にする図である。回転移動体は表面が多孔質にすることができ塗布部で圧縮気体を付加し粉体をフルダイズできる。
図7】本発明の実施の形態に係る粉体塗布部の底面を循環緯度するベルトにしている。ベルトは多孔質に圧縮気体を付加して粉体をフルダイズできる。
図8】本発明の実施の形態に係る、粉体の多孔質ロールへの供給と塗布装置内での粉体の離脱による対象物への塗布を示した略断面図である。
図9】本発明の実施の形態に係る粉体の多孔質ベルトの供給と塗布装置内での粉体の離脱と対象物への塗布を示した略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。尚、以下の実施形態は発明の理解を容易にするための一例にすぎず、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲において当業者により実施可能な付加、置換、変形等を施すことを排除するものではない。
【0038】
図面は本発明の好適な実施の形態を機略的に示している。
【0039】
図1において物体1の上に施与された粉体はエジェクターポンプなどの粉体用ポンプ4の吸引口3
で吸引され、流路5に圧出される。流路5は金属パイプ、ゴム、セラミックス、プラスチックなどの内径が6mm乃至12mm程度のパイプやチューブの流路で良い。その先の流路7は粉体流体の粉体の密度をリッチにするため細くすることができる。粉体比率をリッチにしスムーズに粉体を細いチューブ内に移動するため主に過剰な気体を排出口6,6’から外部に排出できる。排出口6、6’は図示しないミニサイクロンなどに接続され排気され余剰気体に混入している粉体は回収し再利用できる。また細い内径のチューブは例えば内径が4mm乃至2mm前後のPTFEやPFAのチューブにすることもできる。1mmでも5mmでも良い。チューブは粉体の摩擦帯電をさせやすくするためバインダーや電解質ポリマー等が帯電しやすい材質を選ぶことができる。例えば粉体がナイロンなどのポリアミド系の場合、チューブ内面はPTFEが良くチューブ外面をアースすれば効率よい摩擦帯電ができる。一般的に耐熱耐薬品性の観点から二次電池の正極バインダーは幸いなことにフッ素系が多く、活物質は固くチューブの内面を削り易いがチューブの内面の摩耗でのコンタミを無視するためにはPTFE、PFAなどの粉体の滑り性の良いフッ素系チューブを選択し、粉体はコロナ電極で雰囲気の気体をイオン化しそれに接触する粉体をイオン化することができる。帯電は空気(主に酸素)をイオン化する際はマイナス極が良く、窒素を帯電する場合はプラス電極が良い。また途中で流路の内径を細くするしないに係わらず流路の途中から余剰気体を逃がす排出口6、6’を本発明では設け噴出口8からの粉体は粉体リッチにすることができる。排気はチューブ外に全周囲に均等に逃がすことができ1乃至複数の排出口6、6‘から余剰気体を逃がすこともできる。流路チューブの内径を細くする直前に排気手段を設けると余剰気体の排出はより効果的になる。内径が大径から急に小径チューブにすると圧縮気体を多く含む粉流体は小径チューブに流れ込むことができずエジェクターポンプ側に逆流する。そのため余剰気体を外部に排出口6等から排出しながら粉リッチの流体にして細いチューブに送り込むことが重要である。余剰気体排出は自然排気で良く気体に混入した粉体は図示しない小型サイクロン装置等で回収し再利用できる。大径から小径にするにはスムーズなフローになるようにテーパーで徐々に絞るべきである。
粉体は噴出口8から噴出され粉体塗布部16内に配置した静電電極11,11‘,11‘’で帯電され粉体塗布部16の端部15から流出し端部15に近接して移動する対象物12に付着する。前記噴出口8は対象物12に向けて角度をつけて粉体が衝突するようにして付着させて良い。また静電気による帯電は噴出口の上流の流路内やその上流の物体1上で既に荷電していても良い。対象物12は金属ロール等の導電性物体を経由して設置して前記端部15と対象物間はほぼ接触するぐらいのレベルで良く、0.5乃至3mm程度で良い。そのため対象物が高速で移動しても粉体の付着に影響する風の流れは壁等で防御でき無視できる。更に帯電しそのため粉体塗布部16で効率よく対象物に粉体を付着できる。付着しなかった粉体や気流は底部14も含めて下流に移動しているので余剰な気流や対象物12に付着しなかった粉体は排出口10から吸引するなどして排出して粉体は回収して再利用される。
【0040】
図1-2に於いて粉体は噴出口8から噴出され両側の壁9,9‘に沿って移動し静電放電部で帯電し、余剰な気体や対象物に付着しなかった粉体は排出口10より吸引され排出される。噴出口の数は限定しない。1個でも良く複数で良い。壁間の距離も限定しないが電極を細幅ストライプ状に形成したい場合は噴出口1個当たり5~30mm程度に設定した方が良い。広い幅の電極を所望する場合は、粉体塗布部は並列に所望する数だけ設置できる。また高速で移動する集電体等の対象物に塗布したい場合は対象物の移動方向に粉体塗布部は長くして粉体の接触時間を長く保った方が効率よく粉体を付着できる。対象物の移動速度が分速60mの場合は0.5乃至1mあるいはそれ以上の長さが良い。そうすると対象物と粉体の接触時間が0.5乃至1秒あるいはそれ以上になる。粉体の粒子径が大きく比重が重い場合は底部を多孔質にして気体を付加して流動させながら移動できる。排出された粉体は図示しないサイクロン装置などで吸引し回収して再利用できる。
【0041】
図2において複数の粉体噴出口粉体は噴出口28,28´、28’’から噴出され壁29、29‘で横方向が規制されながら移動し静電放電部21,21’で帯電し、図示しないその上部を移動する対象物に付着する。静電気は図示していない静電発生装置で発生させ抵抗を備えた導線などを絶縁材料で被覆した静電ケーブル22に接続される。抵抗が低い金属線などの場合対象物の金属の箔が接したときスパークすることがあるので電流が急激に流れない抵抗を持ったスパークしない材質を選ぶべきである。また放電箇所は細いコロナピンで良く放電の電流はマイクロアンペアレベルで良く例えば50マイクロアンペア、電圧は2万~70万ボルト程度の範囲で電圧を調整したら良い。また壁部29、29‘や粉体塗布部底部26はポリプロピレンなど帯電した粉体が静電反発などで付着しにくい材質を選択したら良い。噴出口は例えば1乃至100個から所望する数を選択できる。また噴出口は粉体塗布部に侵入できるし壁部を加工して噴出口にできる。
【0042】
図2-2において壁29、29‘間は所望する噴出口の数ごとに仕切り部25、25’を設けることができる仕切り部の目的は広幅の壁間の粉体の下流への流れの横幅方向の規制をし層流に移動することを主な目的とする。仕切り部25、25‘間仕切り部と壁間に噴出口は1個でも良く複数でも良い。仕切り部は対象物の移動方向の粉体流の流れを規制できる。一方仕切り部が陰になり粉体の図示されない対象物への付着が阻害されないように可能な限り特に先端部は細くすべきである。
【0043】
図2-3は壁端部209より仕切り部25の端部は対象物への付着に邪魔にならないように、対象物からから遠ざかる箇所に位置する。底部24は多孔質にして外部から圧縮気体を取り入れることで粉体流動層にすることができる。そのため噴出口28から噴出し底部に沈殿する粉体を流動させながら移動できる。余剰な気体や図示しない対象物に付着しなかった粉体は排出口20から吸引し図示しないサイクロンに移送し回収して再利用できる。
【0044】
図3は移動する対象物32の上部に位置する粉体塗布部の噴出口38より粉体は噴出し静電放電部31で帯電しながら落下または方向性を持って対象物32に付着し粉体層102を形成する。噴出する気粉混合体の余剰気体や対象物に付着しなかった粉体は排出口30から吸引され粉体は回収できる。排出口30の位置は限定されない。またこの位置関係では底部34に粉体流動の為の特別な圧縮気体によるフルダイズの機能を設ける必要はない。
【0045】
図4において対象物42に塗布された粉体層202はプレス手段45,45‘に移動し圧着される。プレス手段は加熱して良く例えば誘導加熱機能を持つロール式プレス手段で良い。ロールプレス手段はロール幅方向に対して線でのプレスで良い。プレスは次工程までパウダーを固定するだけで良いためバインダーを軟化点以上にするための加熱とプレプレスで良い。
そのためバインダー等が少ない場合、プレス前の粉体面が移動しないように最終の加熱プレス工程までの間、200℃以下でまたは及び真空で蒸発させるまたは残留しても問題ない粘性モノマーや液体の可塑剤等を塗布し仮固定できる対象物。
【0046】
図5において移動する対象物52に液体塗布装置で液体を塗布し液体塗布層350を形成する。次工程で電極用粉体が粉体塗布装置310で塗布され粉体塗布層302を形成する。
液体は電極用スラリーで良い。液体は次工程で塗布する粉体層の隙間に浸透しやすく、濡れやすくかつ熱や真空で瞬間的に蒸発することが望ましい。また対象物と緻密な界面を形成するため電極用合材粒子の粒子径は粉体用粒子径より小さいことが望ましい。本発明では粉体塗布層の上に図示しない液体塗布装置で更に合材平均粒子径が小さいまたは電解質粒子からなるスラリー等の薄膜で液体を塗布することができる。目的は電極の平滑性を向上る、または微細な凹凸を形成させ表面積を向上させることである。そのため粉体層上のスラリー等の塗布は加熱プレス後行うことでより均一な面を形成できる。
【0047】
図6において気粉混合体は噴出口68から噴出し静電気放電部61で帯電され対象物62に付着する。余剰気体や対象物に付着しなかった粉体は排出口60から吸引され回収された粉体は再利用できる。粉体塗布装置の底部の代わりにロール64を用いる方法である。ロール64は回転させることができる。
【0048】
図7は移動する対象物72に粉体塗布装置で粉体を塗布する構成図である。粉体噴出口78から粉体は噴出され対象物に付着する。余剰な気体や対象物に付着しなかった粉体は排出口から吸引され回収された粉体は再利用できる。粉体塗布装置の底部は対象物の移動方向に移動するベルト74になっている。
ベルトは多孔質で例えば細かい開口のスクリーンなどのベルトで良く、塗布装置外のベル74トに加圧気体を付加し粉体塗布装置の底部のベルト部をフルダイズ構造にして粉体の底部への体積を防止できる。またフルダイズで使用した余剰な気体は排出口より吸引できる。
【0049】
図8はロールを中空ロール84にして中空ロール84は多孔質にすることで粉体供給装置802の位置で中空ロール84の多孔質部の内部830を負圧にして粉体をロールの表面に付着させることができる。またスキージー801でロール間のギャップを調整して嵩比重の安定した所望する粉体層の厚みにすることができる。リチウムリン酸鉄電極粉体のプレス後の厚みが150マイクロメートル程度で真比重が2.3程度の場合、供給前の粉体の嵩比重は0.8乃至0.9であるので粉体層厚みは約3倍の450マイクロメートルになる。そのような嵩比重の低い粉体は回転体等で移動すると落下するので多孔質物体上で反対側から真空で吸引し更に嵩比重を高める必要がある。嵩比重を高くした粉体層は粉体塗布装置810に移動し、対象物82に少なくとも最接近したあるいは所望する位置でロールの内部から圧縮気体を送り込む構造にできるので中空内部をプラス圧820にしてロール上の粉体を離脱させ塗布装置810の上側を移動する対象物82に下側から塗布できる。粉体は静電気発生装置81で帯電させアースし移動する対象物に付着し粉体層を形成できる。
粉体噴出に使用した気体は粉体に方向性さえ付与出来たら塗布後は余剰気体になるので排出口80から排出できる。排出は吸引しても良い。また塗布装置810は装置外の対象物82の移動により発生した気体の流れを防御できる。そのため塗布装置810と対象物82は数ミリメートル以下に近接することができる。塗布装置の少なくとも上流側は接触させることができる。
吸引時余剰気体と一緒に排出した微量の粉体は回収し再利用できる。塗装装置内810の粉体流は装置外の風の流れに影響されないので高速で移動する対象物82に効率よく粉体層を形成できる。粉体塗布装置810とロール84、粉体供給装置802の組み合わせは所望する数を対象物の移動法方向に複数設置でき積層できる。粉体は同じ種類を積層できる。または異種の粉体を積層できる。例えば全固体電池の場合、活物質と電解質の比率を集電体から離れるに従い電解質量を増やし傾斜塗布をすることで充放電性能を高めることができる。
粉体供給量を増やしたい場合は、例えば多孔質中空ロールに電極幅の溝を一周形成し、ロール断面に凹部を形成できる。そのため所望する数の凹部を形成し粉体を同じように多孔質部に吸着充填できるので凹部の形状により大量に粉体を充填し厚膜に対象物に粉体を塗布することもできる。塗布装置の開口部を下側に向けてその下を移動する対象物82に、中空ロール84、塗布装置802を反転してロールの上部で粉体を多孔質ロールや溝部に吸着する構造にして移動し最下部で粉体を離脱させて対象物に塗布することができる。いずれの向きでも粉体を離脱させ対象物に塗布できる。対象物のスピードと中空ロールの外周の回転スピードは等速にしてロール ツー ロールで移動する対象物のスピードに追従して単位面積当たりの塗布重量を一定にできる。
【0050】
図9は対象物の移動方向に同調して回転移動する多孔質ベルト94の所望する位置で粉体供給装置902により粉体900を供給しベルトの反対側を負圧にすることでベルトの表面に嵩密度が安定した粉体層を形成できる。スキージー910でギャップを調整することで所望する厚みの粉体層をベルト上に形成できる。粉体供給装置902はオーガフィーダーなどの供給で良く、粉体を流動層でフルダイズさせてベルトに付着させても良く粉体をスプレイで付着させても良い。そのため供給や付着の手段を限定しない。粉体層はベルト94と一緒に移動し粉体塗布装置901内に侵入する。対象物92に対峙した所望する位置でベルトの反対側から圧縮気体吐出装置920から圧縮気体を吐出し、ベルト94上の粉体を離脱させ静電気発生装置91,91‘で帯電した粉体をアースし移動する対象物に塗布し粉体層を形成する。圧縮気体噴出装置920,920’はベルト移動方向に複数配列してベルト上の粉体を離脱させて対象物に付着させても良い。あるいはパルス的に噴出して対象物上で粉体を重ね塗りしても良い。
粉体噴出に使用した圧縮気体は方向性さえ付与出来たら余剰気体になるので排気口90から排出できる。排出は負圧にして吸引しても良い。また塗布装置910は装置外の対象物92移動により発生した風の流れを防ぐ役目をする。その為少なくとも塗布装置910の上流部と対象物間は接触乃至数ミリメートル以下にして塗布することでそれを達成できる。
粉体塗布装置910とベルト94と粉体供給装置902の組み合わせは所望する数を対象物の移動法方向に複数設置して積層できる。粉体は同じ種類で良く、異種の粉体の積層もできる。例えば全固体電池の場合活物質と電解質の比率を集電体から離れるに従い電解質量を増やし傾斜塗布をすることで充放電性能を高めることができる。1層ごとに少なくとも仮プレスを繰り返すことができる。
本発明では粉体の供給する側の多孔質ベルトの反対面を負圧にして吸引しているので粉体層の嵩比重は一定にできる。本発明では対象物92側を開口しベルト94で移動する粉体層を含めて囲った塗布装置910の下流に余剰気体排出口90を設け排出することで対象物の所望する箇所以外への粉体の飛散を防止できる。
排気口から排出した微量の粉体は吸引してミニサイクロンなどで回収し再利用できる。
【0051】
上記の様に本発明の主旨は全固体電池電極を含む二次電池電極用材料の合材を合材粒子の粉体にして、所望する比率の気粉混合体にして粉体の凝集を防止しながら集電体等の対象物に塗布し、短時間のプレスで必要により加熱して電極を形成することにある。粉体の対象物への密着力を高め、対象物である集電体との界面の密着性を高めるためるために、後工程で揮発する溶媒に溶解させる或いは分散した微量のアンカー効果のあるバインダーなどの樹脂に界面活性剤、分散剤などを選択して混合して塗布できる。また集電体等の対象物との緻密度を向上させるため活物質等の粉体の平均粒子径より小さい微粉粒子の粉体を混合できる。更にはバインダーが溶解または膨潤した電極材料のスラリーを塗布することができる。電極粉体層形成後、前記溶媒や後工程で揮発可能な可塑剤等を微量粉体層表面に塗布しプレス工程までの間、粉体層を固定できる。電解質層と接触する該粉体塗布面はミクロンレベルの微細な凹凸面を設けて表面積を上げ電解質層との密着性を上げるため、電極層と電解質層の少なくとも片側に微粉の粉体を塗布することができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上の様に本発明では二次電池の電極形成。全固体電池の電極形成、半固体電池の電極形成迄可能になる。前記の様にLIB等の二次電池の製造方法は二次電池全般の電極形成、次世代二次電池の全固体電池や空気電池などの電極形成、例えば電気二重層コンデンサ―等を含むキャパシターの電極、更にはDry法とWet法単独または組み合わせで燃料電池や水電解の電極形成やガスディフュージョンレイヤーのマイクロポーラスレイヤー形成等ができる。更には一般の金属平板や長尺板、不織布、フィルムなどへの粉体の塗装や粉体の接着分野にさえ好適に応用できる。更にナノサイズやサブミクロンの微粒子の粉体を使用することで応用分野は更に広がり例えば次世代太陽電池などの各層の形成に応用できる。
【符号の説明】
【0053】
1 物体
2 粉体
3 吸引口
4 ポンプ
5、 流路
6、6 余剰気体排出口
7 第2流路
8、28、28‘、28’‘、38、58、68、78 噴出口
15、209 壁端部
9、9‘、19,19’、29、29‘ 壁
10、20,20‘、20’‘、30、50、60 余剰気体排出口
70、80、90 余剰気体排出口
64 ロール(粉体塗布装置底部)
74、94 ベルト(粉体塗布部底部)
11、11‘、11‘’、21、21‘、21’、 静電発生装置
31、61,61‘、81,81’、91,91‘ 静電発生装置
12、32、42、52、62、72、82、92 対象物(集電体)
13、33 、33‘ ロール(接地)
14、24、34 粉体塗布部底部
22 静電ケーブル
25、25‘ 仕切り部
45、45‘ プレス手段
101 粉体流
102、202、302 粉体塗布層
110、310 粉体塗布部
320 液体(スラリー)塗布装置
350 液体塗布層
302 スラリー/粉体塗布層(DRY ON WET)
800、900 粉体
801、901 スキージー
802、902 粉体供給装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9