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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054612
(43)【公開日】2024-04-17
(54)【発明の名称】シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/58 20060101AFI20240410BHJP
   B60R 22/00 20060101ALI20240410BHJP
   B68G 7/05 20060101ALI20240410BHJP
   A47C 31/02 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
B60N2/58
B60R22/00 201
B68G7/05 Z
A47C31/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160948
(22)【出願日】2022-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】000109738
【氏名又は名称】デルタ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】奥井 貴弘
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087DE03
3B087DE06
(57)【要約】
【課題】凹部の内底面および内側面を画定するトリムを備えながら、製造コストの増加を抑え、且つ、優れた外観品質を実現可能なシートを提供する。
【解決手段】車両用リヤシートのベルトバックル収容部では、内底面および内側面が凹部トリム10によって画定されている。凹部トリム10は、連続する1枚のトリム部材によって構成されており、底面部10aと側面部10b~10d,10e1,10e2を有する。底面部10aと左側面部10bとは、線LN1を挟んで連続し、底面部10aと、後側面部10c、前側面部10dとが、縫製ラインLN5,LN7,LN17,LN18で縫合されている。なお、折線LN10,LN14と折線LN19とは縫合されず、開口部として形成されている。当該開口部は、ベルトバックルに繋がるベルトの挿通を許す部分である。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内底面および内側面がトリムによって画定される凹部を有するシートであって、
前記トリムは、
前記凹部の内底面を画定する底面部と、
前記凹部の内側面を画定する側面部と、
が連続する1枚の部材を立体縫製することにより形成されてなる、
シート。
【請求項2】
前記側面部は、長尺帯形状を有し、
前記底面部は、前記側面部における長手方向に延びる長辺の一部で前記側面部に連続し、当該連続する部分から前記長手方向に交差する方向に突出するように設けられており、
前記底面部と前記側面部とは、互いに連続する部分を除く縁部同士の内の少なくとも一部で縫合されている、
請求項1に記載のシート。
【請求項3】
前記側面部は、前記長手方向の両側の端縁部同士が縫合されている、
請求項2に記載のシート。
【請求項4】
前記底面部は、平面視において矩形状を有し、
前記側面部の端縁部同士が縫合されている箇所は、前記底面部の角部同士の間に配されている、
請求項3に記載のシート。
【請求項5】
該シートは、車両用シートであり、
前記凹部は、ベルトバックルを収容可能なベルトバックル収容部であり、
前記トリムは、前記側面部の端縁部同士が縫合されている箇所と、前記底面部の角部との間に、前記側面部の縁部と前記底面部の縁部とが互いに縫合されずに開口した開口部を有し、
前記開口部は、前記ベルトバックルに繋がるベルトの挿通を許す開口部である、
請求項4に記載のシート。
【請求項6】
前記トリムの前記開口部が設けられた部分において、前記側面部は、当該側面部の短手方向に折り返され、前記底面部は、当該底面部の端辺が延びる方向と直交する方向に折り返されており、前記側面部および前記底面部のそれぞれにおける折返しの重なり部分で縫合されている、
請求項5に記載のシート。
【請求項7】
前記底面部の裏面側に接合され、前記トリムよりも高い剛性を有する材料からなる補強板をさらに備え、
前記トリムと前記補強板とは、平面視で互いに並行する2条の線状ラインに沿って縫合されることにより接合されている、
請求項3から請求項6の何れかに記載のシート。
【請求項8】
前記トリムの底面部の一部と前記側面部の一部と前記補強板とは、前記2条の線状ラインに沿った縫合により重ね合わされた状態で接合されている、
請求項7に記載のシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに関し、特にシートにおける凹部の内底面および内側面を画定するトリムの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートなどのシートでは、シートクッションやシートバック、あるいはアームレストなどに凹部が設けられる場合がある。シートにおける凹部は、内底面および内側面がトリムによって画定されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
従来技術に係るシートにおける凹部の内底面および内側面を画定するために設けられるトリムの構成について、図13を用いて説明する。
【0004】
図13に示すように、従来技術に係るシートにおいて、凹部の内底面および内側面を画定するためには、3枚のトリムピース901~903を立体縫製してなるトリムが配される。なお、図13に示すトリムの構成は、車両のリヤシートにおけるシートクッションに設けられるベルトバックル収容部(シートベルトのバックルを収容するための凹部)に適用される構成である。
【0005】
具体的に、トリムピース901はベルトバックル収容部(凹部)の内底面を画定する底面部を構成するピースであり、トリムピース902およびトリムピース903は凹部の内側面を画定する側面部を構成するピースである。トリムピース903は、2本の折線LN91,LN92でU字形状に折り曲げられ、縁部903aがトリムピース901の縁部901aと縫合され(矢印C1)、縁部903b,903cがそれぞれトリムピース901の縁部901b,901cと縫合される(矢印C2,C3)。トリムピース902は、縁部902bがトリムピース903の縁部903dと縫合され(矢印C4)、縁部902cがトリムピース903の縁部903eと縫合される(矢印C3)。なお、トリムピース902の縁部902aとトリムピース901の縁部901dとは縫合されず、該部分にシートベルトが挿通するベルト挿通開口部が形成される。
【0006】
また、トリムピース901で構成される底面部の裏面側(クッションパッド側)には、樹脂板912が配設される。樹脂板912は、縫合ラインLN93~LN95でトリムピース901およびトリムピース903と縫合される(矢印C6)。樹脂板912は、トリムピース901の底面部が平面状に維持され、また、底面部等に皺がよるのを抑制するためにトリムに取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2021-160505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来技術に係るシートでは、トリムが複数のトリムピース901~903を立体縫合することで形成されているので、製造コストの上昇や外観品質上の問題を招くことが考えられる。具体的に、上記従来技術に係るシートでは、複数のトリムピース901~903を縫合するため、縫合に係る作業が煩雑となり、また複数のトリムピース901~903の部材を管理するための煩雑な管理作業も必要となる。このため、製造コストの上昇を招くことが考えられる。
【0009】
また、上記従来技術に係るシートでは、複数のトリムピース901~903を立体縫合して立体形状のトリムを形成するため、裁断時における各トリムピース901~903の寸法誤差や、縫合時における誤差が生じることが考えられる。このため、外観品質上の問題を招くことが考えられる。
【0010】
なお、上記では、車両用のシートを一例としたが、車両用以外のシートにおいても同様の問題が考えられる。
【0011】
本発明は、上記のような問題の解決を図ろうとなされたものであって、凹部の内底面および内側面を画定するトリムを備えながら、製造コストの増加を抑え、且つ、優れた外観品質を実現可能なシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様に係るシートは、内底面および内側面がトリムによって画定される凹部を有するシートであって、前記トリムは、前記凹部の内底面を画定する底面部と、前記凹部の内側面を画定する側面部と、が連続する1枚の部材を立体縫製することにより形成されてなる。
【0013】
上記態様に係るシートでは、凹部の内底面および内側面を画定するトリムが、連続する1枚の部材を立体縫製することによって形成されているので、複数のトリムピースを立体縫製する上記従来技術よりも縫製に係る作業を低減することができる。
【0014】
また、上記態様に係るシートでは、連続する1枚の部材でトリムが形成されているので、上記従来技術のように複数の部材からトリムを構成する場合に比べて、製造時における部材管理の工数を低減することができる。よって、製造コストの低減を図ることができる。
【0015】
また、上記態様に係るシートでは、連続する1枚の部材を立体縫製して立体形状のトリムが形成されているので、複数の部材を用いる場合に比べて部材の裁断時や縫製時における寸法誤差を小さく抑えることができる。よって、高い外観品質を実現することができる。
【0016】
上記態様に係るシートにおいて、前記側面部は、長尺帯形状を有し、前記底面部は、前記側面部における長手方向に延びる長辺の一部で前記側面部に連続し、当該連続する部分から前記長手方向に交差する方向に突出するように設けられており、前記底面部と前記側面部とは、互いに連続する部分を除く縁部同士の内の少なくとも一部で縫合されている、としてもよい。
【0017】
上記態様に係るシートでは、側面部における長手方向に延びる長辺の一部で底面部が側面部に連続するようにトリムを構成しているので、当該連続する部分を境界に底面部から側面部を立ち上げ、少なくとも一部の縁部同士を縫合することで1枚の部材から立体形状のトリムを形成することができ、上述のように製造コストの上昇を抑えながら高い外観品質を実現することが可能である。
【0018】
上記態様に係るシートにおいて、前記側面部は、前記長手方向の両側の端縁部同士が縫合されている、としてもよい。
【0019】
上記態様に係るシートでは、側面部の端縁部同士を縫合することによって環状の側面部を構成することができ、凹部の内側面全体を画定することができる。即ち、1枚の部材を立体縫製して凹部の内底面と内側面の全体を画定するトリムを形成することができる。
【0020】
上記態様に係るシートにおいて、前記底面部は、平面視において矩形状を有し、前記側面部の端縁部同士が縫合されている箇所は、前記底面部の角部同士の間に配されている、としてもよい。
【0021】
上記態様に係るシートでは、側面部における端縁部同士の縫合箇所を、角部同士の間に配置することとしているので、当該縫合箇所を含む側面の剛性を高くすることができ、高い外観品質を実現する上で優位である。
【0022】
上記態様に係るシートにおいて、該シートは、車両用シートであり、前記凹部は、ベルトバックルを収容可能なベルトバックル収容部であり、前記トリムは、前記側面部の端縁部同士が縫合されている箇所と、前記底面部の角部との間に、前記側面部の縁部と前記底面部の縁部とが互いに縫合されずに開口した開口部を有し、前記開口部は、前記ベルトバックルに繋がるベルトの挿通を許す開口部である、としてもよい。
【0023】
上記態様に係るシートでは、底面部の縁部と側面部の縁部とが互いに縫合しない部分が設けられ、当該部分がベルト挿通のための開口部とされているので、側面部や底面部に別途の開口部を設けなくても、縫合を行わないことで作業性を高めつつベルト挿通用の開口部(ベルト挿通開口部)を設けることができる。
【0024】
上記態様に係るシートにおいて、前記トリムの前記開口部が設けられた部分において、前記側面部は、当該側面部の短手方向に折り返され、前記底面部は、当該底面部の端辺が延びる方向と直交する方向に折り返されており、前記側面部および前記底面部のそれぞれにおける折返しの重なり部分(折返しによって重なる部分)で縫合されている、としてもよい。
【0025】
上記態様に係るシートでは、開口部の縁を構成する底面部および側面部の各端辺を折返して、その折返しによって重なる部分で縫合しているので、開口部の縁における高い剛性を実現することができ、口開きによるバックルの埋もれや落ち込みを確実に抑制することができる。
【0026】
上記態様に係るシートにおいて、前記底面部の裏面側に接合され、前記トリムよりも高い剛性を有する材料からなる補強板をさらに備え、前記トリムと前記補強板とは、平面視で互いに並行する2条の線状ラインに沿って縫合されることにより接合されている、としてもよい。
【0027】
上記態様に係るシートでは、トリムの底面部と補強板とが並行する2条の線状ライン(直線状または曲線状のライン)に沿って縫合され、これによって互いに接合されているので、底面部と補強板との縫合時に縫合の向きを変える必要がなく、高い作業性を確保することができる。よって、製造コストの上昇を抑えることができる。
【0028】
上記態様に係るシートにおいて、前記トリムの底面部の一部と前記側面部の一部と前記補強板とは、前記2条の線状ラインに沿った縫合により重ね合わされた状態で接合されている、としてもよい。
【0029】
上記態様に係るシートでは、底面部と補強板との接合に際して、底面部と側面部との接合についても同じ縫合によってなされているので、底面部と補強板との強固な接合(縫合)が可能であり、且つ、高い作業性を確保することができる。
【発明の効果】
【0030】
上記の各態様に係るシートでは、凹部の内底面および内側面を画定するトリムを備えながら、製造コストの増加を抑え、且つ、優れた外観品質を実現可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】実施形態に係る車両用リヤシートの構成を示す斜視図である。
図2】ベルトバックル収容部およびその周辺を斜め上方から見た斜視図である。
図3図2のIII-III線断面を示す断面図である。
図4】ベルト挿通開口部の周辺構成を示す断面図である。
図5】凹部トリムの構成を示す展開図である。
図6】(a)は実施形態に係る車両用リヤシートが備える樹脂板であり、(b)は従来技術に係る車両用リヤシートが備える樹脂板である。
図7】変形例1に係る車両用リヤシートにおけるベルトバックル収容部の構成の内の、底面部と後側面部とを示す斜視図である。
図8】変形例2に係る車両用リヤシートが備える凹部トリムの構成を示す展開図である。
図9】変形例3に係る車両用リヤシートが備える凹部トリムの構成を示す展開図である。
図10】変形例4に係る車両用リヤシートが備える凹部トリムの構成を示す展開図である。
図11】変形例5に係る車両用リヤシートが備える凹部トリムの構成を示す展開図である。
図12】変形例6に係る車両用リヤシートが備える凹部トリムの構成を示す展開図である。
図13】従来技術に係る車両用リヤシートの凹部の構成を説明するための展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下では、本発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明の一例であって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0033】
なお、以下の説明においては、トリムにおける2つの縁部同士を縫い合わせることを「縫い継ぎ」と記載し、縁部を折返して、端部で縫うことを「折り縫い」と記載することがある。
【0034】
また、以下の説明で用いる各図において、「FR」は車両前方、「RR」は車両後方、「LH」は車両左方、「RH」は車両右方、「UP」は車両上方、「LO」は車両下方をそれぞれ示す。
【0035】
[実施形態]
1.車両用リヤシート1の構成
本実施形態に係る車両用リヤシート1の構成について、図1を用いて説明する。なお、本実施形態に係る車両用リヤシート1は、本発明に係るシートの一例である。
【0036】
図1に示すように、本実施形態に係る車両用リヤシート1は、車幅方向に3人が掛けられるシートである。車両用リヤシート1は、シートクッション2と、シートバック3~5と、ヘッドレスト6~8とを備える。シートバック3~5は、それぞれ前方へと倒すことができるように構成されている。
【0037】
シートクッション2は、座面部2aと、座面部2aよりも下方に凹入したベルトバックル収容部(凹部)2b,2cとを有する。ベルトバックル収容部2b,2cは、座面部2aに乗員が着座していない状態でシートベルトのバックルを収容するために設けられている。
【0038】
2.ベルトバックル収容部2b,2cの構成
車両用リヤシート1のシートクッション2に設けられたベルトバックル収容部2b,2cの構成について、図2から図4を用いて説明する。なお、以下では、ベルトバックル収容部2bを一例に説明するが、ベルトバックル収容部2cについても同様の構成を有する。
【0039】
図2に示すように、ベルトバックル収容部2bは、上方からの平面視で矩形状の開口部を有する。図2および図3に示すように、ベルトバックル収容部2bは、当該ベルトバックル収容部2bの内底面および内側面を含む内面全体を画定する凹部トリム(以下では、単に「トリム」と記載する。)10と、トリム10とクッションパッド11との間の内の下部に配設された樹脂板(補強板)12とを備える。なお、補強板12は、一例としてPP(ポリプロピレン)から形成されている。
【0040】
図2に示すように、トリム10は、底面部10aと、側面部10b~10eとを有する。本実施形態に係る車両用リヤシート1では、トリム10は、連続する1枚の部材から構成されており、底面部10aと前側面部10bとが連続している。これについては、後述する。
【0041】
側面部10b~10eは、座面部2aにおけるベルトバックル収容部2bの周辺の座面トリム9に対して、上部の縁部(図2の紙面手前側の縁部)で縫合されている(縫合部S1)。なお、座面トリム9に対する側面部10b~10eの上部とは、ベルトバックル収容部2bの開口の周りの全周にわたって縫合されている。
【0042】
また、トリム10において、底面部10aと後側面部10cとは、縁部同士が縫合されている(縫合部S2)。同様に、底面部10aと前側面部10dとは、縁部同士が縫合されている(縫合部S3)。
【0043】
底面部10aと右側面部10eとは、縁部同士が縫合されず、間に開口部が空いている。開口部は、ベルトバックルに繋がるベルトの挿通を許すベルト挿通開口部2dである。右側面部10eは、車幅方向における中央部付近で後右側面部10e1と前右側面部10e2とが縁部同士で縫合されている(縫合部S4)。縫合部S4は、ベルトバックル収容部2bの深さ方向(車両の上下方向)における上部から下部に至るまで延びるように設けられている。
【0044】
図3のA1部分に示すように、トリム10の前側面部10dと座面トリム9とは、縫い代9a,10d1同士の縫製ラインで縫合されている(縫合部S1)。
【0045】
図3のA2部分に示すように、前側面部10dと底面部10aとは、縫い代10d2,10a1同士の縫合ラインで縫合されている(縫合部S3)。なお、前側面部10dの縫い代10d2と底面部10aの縫い代10a1とは、底面部10aの下方に配された樹脂板12に対しても縫合されている(縫合部S5)。
【0046】
図3では、座面トリム9とトリム10との縫合部、およびトリム10の部位同士の縫合部の一部を抜き出して図示したが、本実施形態では、他の縫合部についても同様の構成を有する。
【0047】
図4に示すように、ベルト挿通開口部2d(B部分)の周囲においては、後右側面部10e1および底面部10aの端部が折り返され(折返し部10e7,10a2)、折り返しの重なり部分で縫合されている(縫合部S6,S7)。即ち、ベルト挿通開口部2dに臨む部分では、後右側面部10e1および底面部10aが折り縫いされている。
【0048】
なお、図4では、図示を省略しているが、前右側面部10e2についても、ベルト挿通開口部2dに臨む部分が折り縫いされている。
【0049】
3.トリム10における立体縫製前の構成
トリム10における立体縫製前の構成について、図5を用いて説明する。図5は、トリム10を構成する部材を切り出した状態で示す展開図である。
【0050】
図5に示すように、トリム10は、それぞれが矩形状を有する部位10a~10d,10e1,10e2が連続するように形成されている。側面部10b~10d,10e1,10e2は、全体として長尺帯形状を有するように連続して形成されている。底面部10aは、左側面部10bに対して線LN1を間に挟んで連続し、側面部10b~10d,10e1,10e2の長手方向に直交する方向に突出するように設けられている。
【0051】
トリム10は、各部位10a~10d,10e1,10e2の縁部である折返し部10a2,10e7,10e8および縫い代10a1,10a3,10b1,10c1,10c2,10d1,10d2,10e3~10e6を有する。折返し部10a2,10e7,10e8および縫い代10a1,10a3,10b1,10c1,10c2,10d1,10d2,10e3~10e6は、線LN4~LN8,LN10~LN12,LN14~LN19で各部位10a~10d,10e1,10e2に連続している。折返し部10a2,10e7,10eは、折線LN10,LN14,LN19で折り返されて、上述のように折り縫いされる。
【0052】
図5に示すトリム10を立体縫製する場合には、線LN1~LN3,LN9,LN13で折り曲げ、突き合せられた縫製ラインLN5,LN7,LN12,LN16,LN17,LN18で縫合する。具体的には、縫製ラインLN5と縫製ラインLN17とを縫合し、縫製ラインLN7と縫製ラインLN18とを縫合する。また、縫製ラインLN12と縫製ラインLN16とを縫合する。さらに、縫製ラインLN4,LN6,LN8,LN11,LN15で座面トリム9の縁部(縫い代)と縫合する。
【0053】
4.トリム10の底面部10aへの樹脂板12の縫合
トリム10の底面部10aへの樹脂板12の縫合について、図6を用いて説明する。なお、図6(a)は本実施形態に係る車両用リヤシート1が備える樹脂板12を示し、図6(b)は比較例として図13を用いて説明した従来技術に係るシートが備える樹脂板912を示す。
【0054】
図6(b)に示すように、従来技術に係るシートにおいては、トリムピース901,903(図13を参照。)との接合のために樹脂板912に3条の縫製ラインLN93~LN95に沿って縫合することが必要となる。即ち、従来技術では、3つのトリムピース901~903を立体縫製するため、トリムピース901の縁部901aとトリムピース903の縁部903a(図13を参照。)とを縫製ラインLN95に沿って縫合し、トリムピース901の縁部901bとトリムピース903の縁部903b(図13を参照。)とを縫製ラインLN93に沿って縫合し、トリムピース901の縁部901cとトリムピース903の縁部903c(図13を参照。)とを縫製ラインLN94に沿って縫合することが必要であった。そして、縫製ラインLN95は、その延伸方向が縫製ラインLN93,LN94とは交差する方向であるため、縫合に際してトリムピース901,903および樹脂板912を回転させる動作が必要となる。
【0055】
一方、図6(a)に示すように、本実施形態に係る車両用リヤシート1においては、互いに並行する2条の縫製ライン(線状ライン)LN20,LN21に沿って縫合するだけでトリム10と樹脂板12とを接合することができる。即ち、上述のように、トリム10は、連続する1枚の部材で構成され、底面部10aと左側面部10bとが連続するように設けられているため、図6(b)に示す樹脂板912のような縫製ラインLN95に沿った縫合を行う必要がない。このため、本実施形態では、底面部10aと後側面部10cとの各縫い代同士の縫合、および底面部10aと前側面部10dとの縫合のそれぞれに伴う2条の縫製ラインLN20,LN21に沿った縫合によりトリム10と補強板12との接合が完了する。よって、本実施形態では、縫製に際してトリム10および樹脂板12を回転させる必要がなく、同じ方向に縫合を繰り返して行うことでトリム10と樹脂板12との接合が可能である。
【0056】
5.効果
本実施形態に係る車両用リヤシート1では、ベルトバックル収容部2bの内底面および内側面を画定するトリム10を、従来技術のように複数のトリムピースを縫製するのではなく、連続する1枚の部材で構成している。そして、トリム10では、底面部10aと側面部10b~10d,10e1,10e2とが連続するようにしているので、当該連続する部分を有する分だけ縫製に係る作業を低減することができる。
【0057】
また、本実施形態に係る車両用リヤシート1では、連続する1枚の部材を立体縫製して立体形状のトリム10を構成するので、上記従来技術のように複数のトリムピース901~903を立体縫製してトリムを構成する場合に比べて、製造時における部材管理の工数を低減することができる。よって、製造コストの低減を図ることができる。
【0058】
また、本実施形態に係る車両用リヤシート1では、1枚の部材を立体縫製してトリム10を形成しているので、複数のトリムピース901~903を立体縫製する従来技術に比べて部材の裁断時や縫製時における寸法誤差を小さく抑えることができる。よって、高い外観品質を実現することができる。
【0059】
また、本実施形態に係る車両用リヤシート1では、左側面部10bに底面部10aが連続するようにトリム10を構成しているので、当該連続する部分(線LN1)を境界に底面部10aから側面部10b~10d,10e1,10e2を立ち上げ、縫製ラインLN5と縫製ラインLN17、縫製ラインLN12と縫製ラインLN16、および縫製ラインLN7と縫製ラインLN18とを縫合することで1枚の部材から立体形状のトリム10を構成することができ、上述のように製造コストの上昇を抑えながら高い外観品質を実現することが可能である。
【0060】
また、本実施形態に係る車両用リヤシート1では、後右側面部10e1と前右側面部10e2を、縫い代10e3,10e4(縫製ラインLN12,LN16)同士で縫合することによって環状の側面部10b~10d,10e1,10e2を構成することができ、ベルトバックル収容部2bの内側全体をトリム10で画定することができる。即ち、1枚の部材を立体縫製してベルトバックル収容部2bの内底面と内側面との全体を画定する立体形状のトリム10を形成することができる。
【0061】
また、本実施形態に係る車両用リヤシート1では、後右側面部10e1と前右側面部10e2との縫合箇所(縫合部S4)を、車幅方向における右側面部10eの中央部分(コーナー部同士の間)に配置することとしているので、右側面部10eの剛性を高くすることができ、高い外観品質を実現する上で優位である。
【0062】
また、本実施形態に係る車両用リヤシート1では、底面部10aにおける右側の縁部と右側面部10eの下側の縁部とを縫合せず、当該部分をベルト挿通のためのベルト挿通開口部2dとしているので、側面部10b~10dや底面部10aなどに別途の開口部を設けなくても、縫合を行わないことで作業性を高めつつベルト挿通開口部2dを設けることができる。
【0063】
また、本実施形態に係る車両用リヤシート1では、ベルト挿通開口部2dの縁を構成する底面部10aおよび後側面部10eの各端縁部を折返して(折返し部10a2,10e7,10e8)、その重なり部分で縫合(折り縫い)しているので、ベルト挿通開口部2dの縁における高い剛性を実現することができ、不所望な口開きによるバックルの埋もれや落ち込みを確実に抑制することができる。
【0064】
また、本実施形態に係る車両用リヤシート1では、トリム10の底面部10aと樹脂板(補強板)12とが並行する2条の直線状ラインに沿って縫合されているので(縫製ラインLN20,LN21で縫合されているので)、底面部10aと樹脂板12との縫合時に縫合の向きを変える必要がなく、高い作業性を確保することができる。よって、製造コストの上昇を抑えることができる。
【0065】
また、本実施形態に係る車両用リヤシート1では、縫製ラインLN20の縫合時に底面部10aと後側面部10cとを重ねて縫合し、縫製ラインLN21の縫合時に底面部10aと前側面部10dとを重ねて縫合することとしているので(図3を参照。)、底面部10aと樹脂板12との強固な縫合が可能であり、且つ、高い作業性を確保することができる。
【0066】
以上のように、本実施形態に係る車両用リヤシート1では、ベルトバックル収容部(凹部)2bの内底面および内側面を画定するトリム10を備えながら、製造コストの増加を抑え、且つ、優れた外観品質を実現可能である。
【0067】
[変形例1]
変形例1に係る車両用リヤシートの構成について、図7を用いて説明する。なお、図7では、上記実施形態との差異部分であるベルトバックル収容部22bにおけるトリム10の後側面部10eおよびその周辺部分だけを抜き出して図示している。そして、本変形例に係る車両用リヤシートは、説明を省略する部分について、上記実施形態と同じ構成を備える。
【0068】
図7に示すように、変形例に係る車両用リヤシートにおいても、ベルトバックル収容部22bの内側にトリム10が配設されている。トリム10は、上記実施形態と同様に、連続する1枚の部材を立体縫製することで形成されている。本変形例では、後右側面部10e1の下側の縁部と底面部10aの右側の縁部とが縫合されている(縫合部S10)。
【0069】
一方、後右側面部10e1と前右側面部10e2との縫合部S4よりも車両前後方向前側の部分では、前右側面部10e2との下側の縁部と底面部10aの右側の縁部とは縫合されておらず、ベルト挿通開口部22dが開けられている。即ち、本変形例では、上記実施形態よりも車幅方向に小さなベルト挿通開口部22dが設けられている。そして、縫合部S4を含み、後右側面部10e1の下側の縁部と底面部10aの右側の縁部とは縫合されているので(縫合部S10)、右側面部10eの高い剛性を確保するのに優位である。
【0070】
なお、本変形例では、ベルト挿通開口部22dの形態を除き上記実施形態と同じであるので、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0071】
[変形例2]
変形例2に係る車両用リヤシートの構成について、図8を用いて説明する。なお、図8では、立体縫製する前の状態のトリム30を示し、他の構成については図示を省略している。そして、本変形例に係る車両用リヤシートは、説明を省略する部分について、上記実施形態と同じ構成を備える。
【0072】
図8に示すように、トリム30は、それぞれが矩形状を有する部位30a~30d,30e1,30e2が連続するように1枚の部材で形成されている。側面部30b~30d,30e1,30e2は、全体として長尺帯形状を有するように連続して形成されている。底面部30aは、前側面部30dに対して縫い代30a4,30d2を挟んで連続し、側面部30b~30d,30e1,30e2の長手方向に直交する方向に突出するように設けられている。
【0073】
トリム30は、各部位30a~30d,30e1,30e2の縁部である折返し部30a1,30e7,30e8および縫い代30a2~30a4,30b1,30b2,30c1,30c2,30e3~30e6を有する。ここで、本変形例では、底面部30aと前側面部30dとが、2つの縫い代30a4,30d2を間に挟んで連続している。
【0074】
本変形例に係るトリム30では、底面部30aと前側面部30dとの間で谷折りとなるように線LN320で折り曲げられ、縫製ラインLN301,LN307で縫合される。
【0075】
なお、本変形例でも、折返し部30a1,30e7,30e8および縫い代30a2~30s4,30b1,30b2,30c1,30c2,30e3~30e6は、線LN301,LN304~LN308,LN310~LN312,LN314~LN319,LN321で各部位30a~30d,30e1,30e2に連続している。折返し部30a1,30e7,30e8は、折線LN310,LN314,LN318で折り返されて、上記実施形態と同様に折り縫いされる。
【0076】
図8に示すトリム30を立体縫製する場合には、線LN302,LN303,LN309,LN313,LN320で折り曲げ、突き合せられた縁部同士を縫い継ぎする。具体的には、縫製ラインLN301と縫製ラインLN307とを縫合する。また、縫製ラインLN321と縫製ラインLN317、縫製ラインLN305と縫製ラインLN319をそれぞれ縫合する。そして、縫製ラインLN312と縫製ラインLN316とを縫合する。さらに、縫製ラインLN304,LN306,LN308,LN311,LN315で座面トリム9(図示を省略。)の縁部と縫合する。
【0077】
なお、折線LN318と折線LN310および折線LN314とは縫合せず、折返し部30a1,30e7,30e8を各折線LN318,LN310,LN314で折り返して折り縫いする。
【0078】
本変形例では、底面部30aが前側面部30dに連続しており、底面部30aと前側面部30dとの間に2つの縫い代30a4,30d2が介挿されている点が上記実施形態と相違するが、上記実施形態と同じ効果を得ることができる。また、本変形例では、底面部30aと前側面部30dとの間にも縫合する箇所を設けているので、より高い剛性を実現することができる。
【0079】
[変形例3]
変形例3に係る車両用リヤシートの構成について、図9を用いて説明する。なお、図9では、立体縫製する前の状態のトリム40を示し、他の構成については図示を省略している。そして、本変形例に係る車両用リヤシートは、説明を省略する部分について、上記実施形態と同じ構成を備える。
【0080】
図9に示すように、トリム40は、それぞれが矩形状を有する部位40a1,40a2,40b~40d,40e1,40e2が連続するように1枚の部材で形成されている。側面部40b~40d,40e1,40e2は、全体として長尺帯形状を有するように連続して形成されている。後底面部40a1は、後側面部40cに対して縫い代40a9,40c2を挟んで連続し、側面部40b~40d,40e1,40e2の長手方向に直交する方向に突出するように設けられている。前底面部40a2は、前側面部40dに対して縫い代40a10,40d2を挟んで連続し、側面部40b~40d,40e1,40e2の長手方向に直交する方向に突出するように設けられている。
【0081】
なお、本変形例では、後底面部40a1と前底面部40a2とにより底面部40aが構成される。具体的には、後底面部40a1と前底面部40a2とは、各縫い代40a7,40a8の縫製ラインLN419,LN425同士が縫合されて底面部40aが構成される。
【0082】
トリム40においても、各部位40a1,40a2,40b~40d,40e1,40e2の縁部である折返し部40a4,40a5,40e7,40e8および縫い代40a3,40a6~40a10,40b1,40b2,40c1,40c2,40d1,40d2,40e3~40e6を有する。
【0083】
本変形例に係るトリム40では、後底面部40a1と後側面部40cとの間、および前底面部40a2と前側面部40dとの間のそれぞれで谷折りとなるように線LN426,LN420が折り曲げられて、縫製ラインLN401と縫製ラインLN405、縫製ラインLN407と縫製ラインLN422とがそれぞれ縫合される。
【0084】
なお、本変形例でも、折返し部40a4,40a5,40e7,40e8および縫い代40a3,40a6~40a10,40b1,40b2,40c1,40c2,40d1,40d2,40e3~40e6は、線LN401,LN404~LN408,LN410~LN412,LN414~LN419,LN421~LN425で各部位40a1,40a2,40b~40d,40e1,40e2に連続している。折返し部40a4,40a5,40e7,40e8は、折線LN424,LN417,LN414,LN410で折り返されて、上記実施形態と同様に折り縫いされる。
【0085】
図9に示すトリム40を立体縫製する場合には、線LN420,LN426を谷折りとして、縫製ラインLN401と縫製ラインLN405、縫製ラインLN407と縫製ラインLN422とを縫合する。また、縫製ラインLN421と縫製ラインLN418,LN423,および縫製ラインLN419と縫製ラインLN425を縫合する。そして、折返し部40a3,40a5,40e7,40e8をそれぞれ折り返して折り縫いし、縫製ラインLN412と縫製ラインLN416とを縫合する。さらに、縫製ラインLN404,LN406,LN408,LN411,LN415で座面トリム9(図示を省略。)の縁部と縫合する。
【0086】
なお、上記の折り縫いをした部分については縫合せず、当該箇所をベルト挿通開口部とする。
【0087】
本変形例では、底面部40aを後底面部40a1と前底面部40a2とから構成する点で上記実施形態と相違するが、上記実施形態と同じ効果を得ることができる。また、本変形例では、後底面部40a1と後側面部40cとの間、および前底面部40a2と前側面部40dとの間のそれぞれについて、縫い代40a9,40c2,40a10,40d2を谷折りとして、縫製ラインLN405,LN401,LN407,LN422を縫合しているので、より高い剛性を実現することができる。
【0088】
[変形例4]
変形例4に係る車両用リヤシートの構成について、図10を用いて説明する。なお、図10では、立体縫製する前の状態のトリム50を示し、他の構成については図示を省略している。そして、本変形例に係る車両用リヤシートは、説明を省略する部分について、上記実施形態と同じ構成を備える。
【0089】
図10に示すように、トリム50は、それぞれが三角形状を有する部位50a1,50a2、およびそれぞれが矩形状を有する部位50b~50d,50e1,50e2が連続するように1枚の部材で形成されている。側面部50b~50d,50e1,50e2は、全体として長尺帯形状を有するように連続して形成されている。後底面部50a1は、三角形状を有するとともに、後側面部50cに対して2つの縫い代50a9,50c2を挟んで連続し、側面部50b~50d,50e1,50e2の長手方向に直交する方向に突出するように設けられている。前底面部50a2は、三角形状を有するとともに、前側面部50dに対して2つの縫い代50a10,50d2を挟んで連続し、側面部50b~50d,50e1,50e2の長手方向に直交する方向に突出するように設けられている。
【0090】
なお、本変形例でも、後底面部50a1と前底面部50a2とにより底面部50aが構成される。具体的には、後底面部50a1と前底面部50a2とは、各縫い代50a3,50a4が折り曲げられ、縫製ラインLN518と縫製ラインLN522とが縫合されて底面部50aが構成される。
【0091】
トリム50においても、各部位50a1,50a2,50b~50d,50e1,50e2の縁部である折返し部50a5,50e7,50e8および縫い代50a3,50a4,50a6~50a10,50b1,50b2,50c1,50c2,50d1,50d2,50e3~50e6を有する。
【0092】
本変形例に係るトリム50でも、後底面部50a1と後側面部50cとの間、および前底面部50a2と前側面部50dとの間のそれぞれで谷折りとなるように線LN523,LN519で折り曲げられて、縫製ラインLN505と縫製ラインLN501,および縫製ラインLN507と縫製ラインLN520で縫合される。これにより、当該部分でより高い剛性を確保することができる。
【0093】
なお、本変形例でも、折返し部50a5,50e7,50e8および縫い代50a3,50a4,50a6~50a10,50b1,50b2,50c1,50c2,50d1,50d2,50e3~50e6は、線LN501,LN504~LN508,LN510~LN512,LN514~LN518,LN520~LN522,LN524で各部位50a1,50a2,50b~50d,50e1,50e2に連続している。折返し部50a5,50e7,50e8は、折線LN510,LN514,LN517で折り返されて、上記実施形態と同様に折り縫いされる。
【0094】
図10に示すトリム50を立体縫製する場合には、折返し部50a5,50e7,50e8を折線LN517,LN510,LN514で折り返して折り縫いし、縫い代50a3,50a4,50a7,50a8,50b1,50b2,50c1,50c2,50d1,50d2,50e3~50e6をそれぞれ折り曲げ、縫製ラインLN501,LN504~LN508,LN510~LN512,LN514~LN518,LN520~LN522,LN524で縫い継ぎする。具体的には、谷折りとなるように線LN519,LN523を折り曲げ、縫製ラインLN501と縫製ラインLN505,および縫製ラインLN507と縫製ラインLN520で縫合する。また、折返し部50a5,50e7,50e8をそれぞれ折り返して、折り縫いする。そして、縫い代50a3,50a4,50a7,50a8,50b1,50b2,50c1,50d1,50e3~50e6を折り曲げて、縫製ラインLN501,LN504~LN508,LN511~LN512,LN515,LN516,LN518,LN520~LN522,LN524で縫合する。
【0095】
なお、折線LN510および折線LN514と折線LN517とは縫合せず、当該箇所をベルト挿通開口部とする。
【0096】
本変形例では、それぞれが三角形状を有する後底面部50a1と前底面部50a2とから底面部50aを構成する点で上記実施形態と相違するが、上記実施形態と同じ効果を得ることができる。また、本変形例では、後底面部50a1および前底面部50a2のそれぞれを三角形状とすることで、上記変形例3に比べて縫合箇所を減らすことができ、製造工数の低減を図ることができる。さらに、本変形例では、後底面部50a1と前底面部50a2との縫合箇所が車両前後方向および車幅方向の双方に交差する斜め方向に延伸する構成としているので、前後方向および車幅方向の両方向に対する剛性を高くすることができる。
【0097】
[変形例5]
変形例5に係る車両用リヤシートの構成について、図11を用いて説明する。なお、図11では、立体縫製する前の状態のトリム60を示し、他の構成については図示を省略している。そして、本変形例に係る車両用リヤシートは、説明を省略する部分について、上記実施形態と同じ構成を備える。
【0098】
図11に示すように、トリム60は、それぞれが矩形状を有する部位60a1,60a2,60b~60d,60e1,60e2が連続するように1枚の部材で形成されている。側面部60b~60d,60e1,60e2は、全体として長尺帯形状を有するように連続して形成されている。前底面部60a1は、前側面部60cに対して縫い代60a9,60c2を挟んで連続し、側面部60b~60d,60e1,60e2の長手方向に直交する方向に突出するように設けられている。後底面部60a2は、後側面部60dに対して縫い代60a10,60d2を挟んで連続し、側面部60b~60d,60e1,60e2の長手方向に直交する方向に突出するように設けられている。
【0099】
なお、本変形例でも、上記変形例3等と同様に、前底面部60a1と後底面部60a2とにより底面部60aが構成される。具体的には、前底面部60a1と後底面部60a2とは、縫い代60a7,60a8が折り曲げられ、縫合ラインLN619,LN625で縫合されて底面部60aが構成される。
【0100】
トリム60においても、各部位60a1,60a2,60b~60d,60e1,60e2の縁部である折返し部60a3,60a6,60b2および縫い代60a4,60a5,60a7~60a10,60b1,60c1,60c2,60d1,60d2,60e3~60e8を有する。
【0101】
本変形例に係るトリム60では、前底面部60a1と前側面部60cとの間、および後底面部60a2と後側面部60dとの間のそれぞれで谷折りとなるように線LN620,LN626が折り曲げられ、縫製ラインLN601と縫製ラインLN605,および縫製ラインLN622と縫製ラインLN607で縫合される。これにより、当該部分でより高い剛性を確保することができる。
【0102】
なお、本変形例でも、折返し部60a3,60a6,60b2および縫い代60a4,60a5,60a7~60a10,60b1,60c1,60c2,60d1,60d2,60e3~60e8は、線LN601,LN604~LN608,LN610~LN618,LN621~LN625で各部位60a1,60a2,60b~60d,60e1,60e2に連続している。折返し部60a3,60a6,60b2は、折線LN618,LN621,LN623で折り返されて、上記実施形態と同様に折り縫いされる。
【0103】
図11に示すトリム60を立体縫製する場合には、縫い代60a7~60a10,60b1,60c1,60c2,60d1,60d2,60e3~60e8を折り曲げ、縫製ラインLN601,LN604~LN608,LN610~LN617,LN619,LN622~LN625で縫合する。具体的には、縫製ラインLN601,LN605およびLN622,LN607で縫合する。また、折返し部60b2,60a3,60a6をそれぞれ折り返して、折り縫いする。そして、縫製ラインLN610と縫製ラインLN617、および縫製ラインLN614と縫製ラインLN624でそれぞれ縫合し、縫製ラインLN612と縫製ラインLN616で縫合する。さらに、縫製ラインLN604,LN606,LN608,LN611,LN615で座面トリム9(図示を省略。)の縁部と縫合する。
【0104】
なお、本変形例では、折線LN621と折線LN618および折線LN623とについては縫合せず、当該箇所をベルト挿通開口部とする。
【0105】
本変形例では、ベルト挿通開口部を設ける箇所(折線LN621と折線LN618および折線LN623とが対向する箇所)が上記変形例3と相違するが、上記実施形態や上記変形例3等と同じ効果を得ることができる。
【0106】
[変形例6]
変形例6に係る車両用リヤシートの構成について、図12を用いて説明する。なお、図12では、立体縫製する前の状態のトリム70を示し、他の構成については図示を省略している。そして、本変形例に係る車両用リヤシートは、説明を省略する部分について、上記実施形態と同じ構成を備える。
【0107】
図12に示すように、トリム70は、それぞれが矩形状を有する部位70a~70c,70d1,70d2,70eが連続するように1枚の部材で形成されている。側面部70b,70c,70d1,70d2,70eは、全体として長尺帯形状を有するように連続して形成されている。底面部70aは、右後側面部70d2に対して縫い代70a4,70d8を挟んで連続し、側面部70b,70c,70d1,70d2,70eの長手方向に直交する方向に突出するように設けられている。
【0108】
トリム70は、各部位70a~70c,70d1,70d2,70eの縁部である折返し部70a3,70b2および縫い代70a1,70a2,70a4,70a5,70b1,70c1,70c2,70d3~70d8,70e1,70e2を有する。ここで、本変形例では、底面部70aと右後側面部70d2との間に、2つの縫い代70a4,70d8が介挿されている。
【0109】
即ち、本変形例に係るトリム70では、底面部70aと右後側面部70d2との間で谷折りとなるように線LN720で折り曲げられて、縫製ラインLN701と縫製ラインLN707で縫合される。これにより、当該部分でより高い剛性を確保することができる。
【0110】
なお、本変形例でも、折返し部70a3,70b2および縫い代70a1,70a2,70a4,70a5,70b1,70c1,70c2,70d3~70d8,70e1,70e2は、縫製ラインLN701,LN704~LN708,LN710,LN711,LN713~LN716,LN718,LN719で各部位70a~70c,70d1,70d2,70eに連続している。折返し部70a3,70b2は、折線LN717,LN721で折り返されて、上記実施形態と同様に折り縫いされる。
【0111】
図12に示すトリム70を立体縫製する場合には、縫製ラインLN701,LN705~LN707,LN710,LN713,LN715,LN716,LN718,LN719で縫い代70b1,70c2,70d3,70d4,70d7,70d8,70e2を折り曲げ、縫製ラインLN701,LN705~LN707,LN710,LN713,LN715,LN716,LN718,LN719で縫合する。また、縫製ラインLN704,LN706,LN708,LN711,LN714で座面トリム9(図示を省略。)の縁部と縫合する。
【0112】
なお、本変形例では、折線LN721と折線LN717とは縫合せず、当該箇所をベルト挿通開口部とする。
【0113】
本変形例では、左後側面部70d1と右後側面部70d2とで後側面部を構成し、底面部70aが右後側面部70d2に連続する点で上記変形例2と相違するが、上記実施形態および上記変形例2等と同じ効果を得ることができる。また、本変形例では、後側面部に縫い継ぎ箇所(縫製ラインLN713と縫製ラインLN716との縫合箇所)を設けることとしているので、当該後側面部の剛性を高くすることができる。
【0114】
[その他の変形例]
上記実施形態および上記変形例1~6では、トリム10,30~70の形成材料については特に言及しなかったが、可撓性を有する種々のシート状材料を採用することができる。例えば、天然皮革や合成皮革などのシート材、あるいはファブリックシートなどを採用することができる。
【0115】
上記実施形態および上記変形例1~6では、シートの一例として車両用リヤシート1を適用したが、本発明では、その他のシートに同様の構成を適用することも可能である。
【0116】
上記実施形態および上記変形例1~6では、凹部の一例としてベルトバックル収容部2b,2cを適用したが、本発明は、これ以外にもカップホルダや小物入れに適用することも可能である。また、必ずしもシートクッションに凹部を設ける必要はなく、アームレストやシートバックに凹部を設けることにしてもよい。
【0117】
上記実施形態および上記変形例1~6では、ベルトバックルを収容するためのベルトバックル収容部2b,2cを凹部の一例としたため、凹部の底部分にベルト挿通開口部2d,22dを設けてなる構成を採用したが、本発明では、凹部の底部に必ずしも開口部を設ける必要はない。
【0118】
上記実施形態および上記変形例1~6では、平面視で長方形状の凹部(ベルトバックル収容部2b,2c)を一例としたが、本発明では、平面視で円形や長円形、あるいは多角形状の凹部を採用することも可能である。
【0119】
上記実施形態および上記変形例1~6では、トリム10,30~70の底面部10a,30a,40a,50a,60a,70aの裏面側(クッションパッド側)に補強板(樹脂板12)を接合することとしたが、本発明では、必ずしも補強板を接合する必要はない。また、補強板の構成材料については、PPなどの樹脂板に限らず、トリムよりも剛性が高い材料であれば採用が可能である。例えば、金属板などを採用することも可能である。
【符号の説明】
【0120】
1 車両用リヤシート(シート)
2 シートクッション
2b,2c ベルトバックル収容部(凹部)
2d,22d ベルト挿通開口部
10,30,40,50,60,70 凹部トリム(トリム)
10a,30a,40a,50a,60a,70a 底面部
10b~10e,30b~30d,30e1,30e2,40b~40d,40e1,40e2,50b~50d,50e1,50e2,60b~60d,60e1,60e2,70b,70c,70d1,70d2,70e 側面部
11 クッションパッド
12 樹脂板(補強板)
S1~S7,S10 縫合部
図1
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