IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カシオ計算機株式会社の特許一覧

特開2024-54615練習システム、練習方法、及びプログラム、並びに指導者端末装置
<>
  • 特開-練習システム、練習方法、及びプログラム、並びに指導者端末装置 図1
  • 特開-練習システム、練習方法、及びプログラム、並びに指導者端末装置 図2
  • 特開-練習システム、練習方法、及びプログラム、並びに指導者端末装置 図3
  • 特開-練習システム、練習方法、及びプログラム、並びに指導者端末装置 図4
  • 特開-練習システム、練習方法、及びプログラム、並びに指導者端末装置 図5
  • 特開-練習システム、練習方法、及びプログラム、並びに指導者端末装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054615
(43)【公開日】2024-04-17
(54)【発明の名称】練習システム、練習方法、及びプログラム、並びに指導者端末装置
(51)【国際特許分類】
   G10H 1/00 20060101AFI20240410BHJP
   H04N 23/60 20230101ALI20240410BHJP
   G09B 15/00 20060101ALI20240410BHJP
   G09B 5/12 20060101ALI20240410BHJP
   G09B 19/00 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
G10H1/00 Z
H04N5/232 300
G09B15/00 A
G09B5/12
G09B19/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160951
(22)【出願日】2022-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100182936
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】金子 優太
【テーマコード(参考)】
2C028
5C122
5D478
【Fターム(参考)】
2C028AA09
2C028BB04
2C028BC05
2C028BD01
5C122DA21
5C122EA42
5C122GC02
5C122GC52
5C122GC77
5D478CC25
5D478FF02
5D478FF12
5D478FF21
5D478HH14
5D478KK02
5D478KK12
(57)【要約】
【課題】オンラインでの演奏レベルの異なる複数人の生徒による合奏を可能とする。
【解決手段】生徒用PC101では、演奏者の演奏レベルを取得し、先生用PC102に送信する演奏レベル取得処理が実行される(S402)。先生用PC102では、生徒用PC101からの演奏レベルに基づいて演奏者が担当する演奏箇所である担当パートを決定し、生徒用PC101に送信する担当パート決定処理が実行される(S404)。生徒用PC101では、先生用PC102から指示された担当パートに対応する演奏曲の楽譜及び演奏箇所を演奏者に表示する(S405)。演奏者は、演奏レベルに応じたテンポで自動伴奏又は手本演奏を聴きながら、担当パートを練習できる(S406、S407)。先生用PC102は、全ての生徒用PC101から演奏者演奏データと演奏者演奏映像データを夫々つなぎ合わせて合奏された演奏と動画を作成でき、生徒に配布できる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
演奏者端末と、指導者端末と、を備える練習システムであって、
前記演奏者端末は、
少なくとも前記指導者端末と通信を行う第1通信部と、
前記演奏者端末に対応する演奏者の演奏レベルを取得し、前記第1通信部を介して前記指導者端末に送信する演奏レベル取得部と、を備え、
前記指導者端末は、
少なくとも前記演奏者端末と通信を行う第2通信部と、
複数の前記演奏者端末の前記演奏レベル取得部から送信された複数の前記演奏者の前記演奏レベルを前記第2通信部を介して受信することにより、複数の前記演奏者の各々が演奏担当する担当パートを決定する担当パート決定部と、を備える、
練習システム。
【請求項2】
前記演奏者端末は、表示部をさらに備え、
前記指導者端末の前記担当パート決定部から指示された前記演奏者端末に対応する前記演奏者の前記担当パートを前記第1通信部で受信し、
前記指示された前記担当パートに対応する演奏曲の楽譜及び演奏箇所を前記演奏者端末の前記表示部に表示する、
請求項1に記載の練習システム。
【請求項3】
前記演奏者端末は、
前記演奏者端末に有線接続又は無線接続される電子楽器に、前記演奏レベル取得部が取得した前記演奏者端末に対応する前記演奏者の演奏レベルに応じたテンポを設定し、
前記設定したテンポで、前記指示された前記担当パートの自動伴奏又は手本演奏を開始させる、
請求項2に記載の練習システム。
【請求項4】
前記演奏者端末は、
前記電子楽器に、前記演奏箇所の所定小節前から前記自動伴奏又は前記手本演奏を開始させる、
請求項3に記載の練習システム。
【請求項5】
前記演奏者端末は、表示部をさらに備え、
前記演奏レベル取得部は、
前記演奏者端末の前記表示部に提示された演奏技能に関するアンケートに対する前記演奏者の回答結果に基づいて、前記演奏者の前記演奏レベルを取得する、
請求項1に記載の練習システム。
【請求項6】
前記演奏レベル取得部は、
前記演奏者に前記演奏者端末に有線接続又は無線接続された電子楽器で所定の演奏を行うよう報知し、前記演奏の結果に従って前記電子楽器から出力される演奏者演奏データに基づいて、前記演奏者の前記演奏レベルを取得する、
請求項1に記載の練習システム。
【請求項7】
前記演奏者端末は、
前記演奏者が前記演奏者端末に有線接続又は無線接続される電子楽器を演奏することにより前記電子楽器から出力される演奏者演奏データを取得し、前記第1通信部を介して前記指導者端末に送信する演奏者演奏データ送信部を更に備え、
前記指導者端末は、全ての前記演奏者に対応する全ての前記演奏者端末の前記演奏者演奏データ送信部から前記第1通信部を介して送信され前記第2通信部を介して受信された全ての前記演奏者の前記演奏者演奏データと、前記担当パート決定部が決定した全ての前記演奏者の前記担当パートとに基づいて、曲全体の演奏データを組み立てる演奏データ組立て部を更に備える、
請求項1乃至6の何れかに記載の練習システム。
【請求項8】
前記演奏者端末は、
前記演奏者がカメラで撮像した前記演奏者端末に有線接続又は無線接続される電子楽器を演奏する様子を示す演奏者演奏映像に対応する演奏者演奏映像データを、前記第1通信部を介して前記指導者端末に送信する演奏者演奏映像データ送信部を更に備え、
前記指導者端末は、全ての前記演奏者に対応する全ての前記演奏者端末の前記演奏者演奏映像データ送信部から前記第1通信部を介して送信され前記第2通信部を介して受信された全ての前記演奏者の前記演奏者演奏映像データと、前記担当パート決定部が決定した全ての前記演奏者の担当パートと、に基づいて、曲全体の演奏映像データを組み立てる演奏映像組立て部を更に備える、
請求項1乃至6の何れかに記載の練習システム。
【請求項9】
演奏者端末に、前記演奏者端末に対応する演奏者の演奏レベルを取得し、指導者端末に送信する演奏レベル取得処理を実行させ、
前記指導者端末に、複数の前記演奏者端末での演奏レベル取得処理により送信された複数の前記演奏者の前記演奏レベルを受信することにより、複数の前記演奏者の各々が演奏担当する担当パートを決定する担当パート決定処理を実行させる、
練習方法。
【請求項10】
複数の演奏者の演奏者端末のコンピュータに、前記演奏者端末に対応する前記演奏者の演奏レベルを取得し、指導者端末に送信する演奏レベル取得処理を、
実行させるプログラム。
【請求項11】
指導者端末のコンピュータに、複数の演奏者の演奏者端末から送信された複数の前記演奏者の演奏レベルを受信することにより、複数の前記演奏者の各々が演奏担当する担当パートを決定する担当パート決定処理を、
実行させるプログラム。
【請求項12】
少なくとも演奏者端末と通信を行う通信部と、
複数の前記演奏者端末から送信された複数の演奏者の演奏レベルを前記通信部を介して受信することにより、複数の前記演奏者の各々が演奏担当する担当パートを決定する担当パート決定部と、を備える、
指導者端末装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オンラインでの楽曲の合奏を練習できる練習システム、練習方法、及びプログラム、並びに指導者端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、楽器の演奏方法を習得する際に、演奏者の特性に合わせた適切な教習を行うようにした技術が知られている(例えば特許文献1に記載の技術)。この従来技術では、予め記憶している演奏者の演奏特性等を示すプロファイル情報に基づいて、当該練習曲を演奏者の技術レベルに応じた楽曲に調整することを可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-202776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の従来技術では、練習曲を個人の演奏者の技術レベルに応じた楽曲に調整する記載はあるものの、複数人の生徒間で1つの曲を練習する場合等のセッションのような状況には対応していないという課題があった。特に昨今増加しているように、生徒がオンラインレッスンを受ける場合は、ネットワークの遅延等もあり、複数人の生徒間での共同のレッスンを、生徒に適した技術レベルで行うことが難しかった。
【0005】
そこで、本発明は、複数人の生徒毎に適した練習を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
態様の一例の練習システムは、演奏者端末と、指導者端末と、を備える練習システムであって、演奏者端末は、少なくとも指導者端末と通信を行う第1通信部と、演奏者端末に対応する演奏者の演奏レベルを取得し、第1通信部を介して指導者端末に送信する演奏レベル取得部と、を備え、指導者端末は、少なくとも演奏者端末と通信を行う第2通信部と、複数の演奏者端末の演奏レベル取得部から送信された複数の演奏者の演奏レベルを第2通信部を介して受信することにより、複数の演奏者の各々が演奏担当する担当パートを決定する担当パート決定部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、複数人の生徒毎に適した練習を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】練習システムの実施形態のシステム構成例を示すブロック図である。
図2】先生用PCと生徒用PCのハードウェア構成例を示すブロック図である。
図3】練習システムの実施形態に用いられる電子楽器の構成例を示すブロック図である。
図4】練習システムの実施形態の制御処理の例を示すフローチャートである。
図5】演奏レベル取得処理と担当パート決定処理を説明する動作説明図である。
図6】担当パート決定処理を説明する動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明によるオンラインでの楽曲の合奏を練習できる練習システム100の実施形態のシステム構成例を示すブロック図である。練習システム100は、それぞれ#1から例えば#6の電子楽器103が接続された#1から例えば#6の生徒用パーソナルコンピュータ(以下、「生徒用PC」と記載)101と、指導者端末である先生用パーソナルコンピュータ(以下、「先生用PC」と記載)102とが、インターネット又はローカルエリアネットワークなどのネットワーク104によって相互に接続されたシステム構成を有する。
【0010】
図2(a)及び(b)は夫々、図1の生徒用PC101と先生用PC102の各ハードウェア構成例を示すブロック図である。
【0011】
まず、図2(a)の生徒用PC101は、CPU(中央演算処理装置)201と、ROM(リードオンリーメモリ)202と、RAM(ランダムアクセスメモリ)203と、外部記憶装置204と、入力部205と、表示/出力部206と、通信部207と、MIDI(Musical Instrument Digital Interface:ミディ/楽器デジタルインタフェース)通信部208と、カメラ部209とが、システムバス210によって相互に接続されたハードウェア構成を有する。
なお、演奏者端末である生徒用PC101は、パーソナルコンピュータが好適だが、スマートフォン端末装置やタブレット端末装置であってもよい。
【0012】
図2(a)の生徒用PC101において、CPU201は、ROM202に記憶された制御処理プログラムをRAM203に読み出して実行することにより、後述する図4に例示されるフローチャートにおけるステップS401、S402、S405からS410の処理機能を実行する。
これらの処理において、生徒用PC101のCPU201は、生徒用PC101に対応する演奏者がその生徒用PC101に接続される電子楽器103(図1参照)を演奏するときの演奏レベルを取得する演奏レベル取得処理を実行する。
また、生徒用PC101のCPU201は、演奏レベル取得処理で取得された演奏レベルの情報を、第1通信部である通信部207を介して先生用PC102に送信する演奏レベル送信処理を実行する。
【0013】
図2(a)の生徒用PC101において、外部記憶装置204は、例えばSSD(ソリッドステートディスク)である。外部記憶装置204は、練習用の楽曲の楽譜情報や、その楽曲の自動伴奏データ又は手本演奏データや、先生用PC102から送られてきた生徒用PC101に対応する演奏者が担当する演奏箇所である担当パートを指示する情報などを記憶する。
【0014】
図2(a)の生徒用PC101において、入力部205及び表示/出力部206は、例えばキーボードとマウス入力装置及び液晶ディスプレイ装置、又はタッチパネル入力/表示装置である。この入力部205は、演奏者が各種指示を入力したり、自動伴奏又は手本演奏の開始を指示したりする。また、表示/出力部206は、練習用の楽曲の楽譜や、生徒用PC101に対応する演奏者の担当パートを表示する。
【0015】
図2(a)の生徒用PC101において、通信部207は、第1通信部として機能し、図1のネットワーク104を介して先生用PC102内の通信部207(図2(b)参照)と相互に通信を行う。
【0016】
図2(a)の生徒用PC101において、MIDI通信部208は、電子楽器103が内蔵するMIDI通信部310(後述する図3参照)と有線接続又は無線接続され、この生徒用PC101が接続される電子楽器103(図1図3参照)における演奏者の演奏に基づいてその電子楽器103から出力される演奏者演奏データであるMIDIデータを受信する。
【0017】
図2(a)の生徒用PC101において、カメラ部209は、演奏者がこの生徒用PC101が接続される電子楽器103を演奏する様子を示す演奏者演奏映像を撮像する。
【0018】
次に、図2(b)の先生用PC102は、図2(a)の生徒用PC101と同様に、CPU201と、ROM202と、RAM203と、外部記憶装置204と、入力部205と、表示/出力部206と、通信部207とが、システムバス210によって相互に接続されたハードウェア構成を有する。
但し、先生用PC102は、図2(a)の生徒用PC101が具備しているMIDI通信部208とカメラ部209は具備しない。
なお、指導者端末である先生用PC102は、パーソナルコンピュータが好適だが、タブレット端末装置等であってもよい。
【0019】
図2(b)の先生用PC102において、CPU201は、ROM202に記憶された制御処理プログラムをRAM203に読み出して実行することにより、後述する図4に例示されるフローチャートにおけるステップS403、S411、及びS412の処理機能を実行する。
これらの処理において、先生用PC102のCPU201は、各生徒用PC101の通信部207(図2(a)参照)を介して送信されこの先生用PC102の通信部207(図2(b)参照)で複数の生徒用PC101から受信された複数の演奏者の演奏レベルに応じて、演奏者の各々が担当する担当パートを決定する担当パート決定処理を実行する。
また、先生用PC102のCPU201は、上述の決定した複数の演奏者の各々が演奏担当する担当パートを指示する情報を、通信部207(図2(b)参照)を介して上述の複数の演奏者に対応する生徒用PC101に送信する担当パート送信処理を実行する。
【0020】
図2(b)の先生用PC102において、外部記憶装置204は、例えばハードディスク装置又は図2(a)の生徒用PC101の場合と同様のSSDである。外部記憶装置204は、1台以上の生徒用PC101から送られてきた演奏データであるMIDIデータ及び演奏者演奏映像データや、これらに基づいて組み立てた曲全体のMIDIデータ及び演奏者演奏映像データ等を記憶する。
【0021】
図2(b)の先生用PC102において、入力部205及び表示/出力部206は、例えばキーボードとマウス入力装置及び液晶ディスプレイ装置とサウンドシステム、又はタッチパネル入力/表示装置とサウンドシステムである。この入力部205は、先生が各種指示を入力したりする。また、表示/出力部206は、最終的に組み立てられた1人以上の演奏者の演奏の様子を示す演奏者演奏映像をディスプレイ表示したり、最終的に組み立てられた1人以上の演奏者の合奏演奏を放音したりする。
【0022】
図2(b)の先生用PC102において、通信部207は、第2通信部として機能し、図1のネットワーク104を介して各生徒用PC101内の通信部207(図2(a)参照)と相互に通信を行う。
【0023】
図3は、図1の練習システム100の各生徒用PC101に接続される電子楽器103の構成例を示すブロック図である。この電子楽器103は、例えば電子ピアノである。電子楽器103は、CPU301と、ROM302と、RAM303と、鍵盤部304と、操作部305と、サウンドシステム306内の音源部307と、MIDI通信部310とが、システムバス311によって相互に接続されたハードウェア構成を有する。
【0024】
CPU301は、ROM302に記憶された制御処理プログラムをRAM203に読み出して実行することにより、システム全体の制御、鍵盤部304における各鍵の押鍵/離鍵の演奏操作の検出とそれに応じた発音/消音を音源部307に指示する処理、操作部305における各種スイッチ操作の検出とそれに応じた制御処理、ROM302又はRAM303からの自動伴奏データ又は手本演奏データの読出しとそれに応じた音源部307への自動伴奏又は手本演奏の指示処理等を実行制御する。
【0025】
ROM302は、前述した制御処理プログラムのほか、各種音色の楽音を生成するための波形データや自動伴奏データ又は手本演奏データ等を記憶する。
【0026】
RAM303は、前述した制御処理プログラム及びその実行時に使用される各種変数データや、練習楽曲に対応する波形データや、自動伴奏データ又は手本演奏データ等を一時的に記憶する。
【0027】
サウンドシステム306は、音源部307、オーディオ回路308、及びスピーカ309を具備する。音源部307は、CPU301がROM302から読み出してセットした波形データと、CPU301から指定される発音/消音指示に基づいて、楽音信号データの生成を実行する。音源部307で生成された楽音信号データは、オーディオ回路308においてアナログの楽音信号にD/A変換された後、増幅されて、スピーカ309から放音される。
【0028】
操作部305は、一般的な音色指定スイッチのほか、演奏の開始/停止を指示する演奏開始/停止スイッチを少なくとも含む。
【0029】
演奏開始/停止スイッチが押されると、CPU301は、指定された楽曲の自動伴奏データ又は手本演奏データのROM302からの読出しを開始し、その自動伴奏データ又は手本演奏データに従って音源部307に対して、所定の伴奏音又は手本演奏音による発音を指示する。
これにより、自動伴奏音又は手本演奏音が、音源部307からオーディオ回路308を介してスピーカ309から放音される。
【0030】
CPU301は、スピーカ309から放音される上述の自動伴奏音又は手本演奏音に合わせて、演奏者が鍵盤部304で演奏する押鍵/離鍵操作に対応する発音/消音を、音源部307に対して指示する。
これにより、演奏者による演奏音が、音源部307からオーディオ回路308を介してスピーカ309から放音される。
【0031】
上記演奏音の放音動作と共に、CPU301は、音源部307に対して指示した演奏者の演奏に基づく発音/消音指示に対応するMIDIデータを作成し、図3のMIDI通信部310から図2(a)の生徒用PC101内のMIDI通信部208に向けて、作成したMIDIデータを送信する。
【0032】
図4は、図1から図3で説明した練習システム100の制御処理の例を示すフローチャートである。この制御処理は、生徒用PC101での制御処理(ステップS401、S402、及びS405~S410)と、先生用PC102での制御処理(ステップS403、S404、S411、及びS412)とからなる。生徒用PC101での制御処理は、図2(a)の生徒用PC101において、CPU201がROM202に記憶されている制御処理プログラムをRAM203に読み出して実行する処理である。先生用PC102での制御処理は、図2(b)の先生用PC102において、生徒用PC101の場合と同様に、CPU201がROM202に記憶されている制御処理プログラムをRAM203に読み出して実行する処理である。
【0033】
まず、各生徒は、自身の生徒用PC101において、入力部205(図2(a)参照)から自分の名前やID等を入力する(図4のステップS401)。或いは、生徒は、生徒用PC101に入力部205から自分の名前を予め入力しておき、練習の開始と同時に予め登録されていた自分の名前が自動指定されてもよい。
【0034】
次に、生徒用PC101のCPU201は、演奏レベル取得部に対応する演奏レベル取得処理を実行する(図4のステップS402)。この処理では、生徒用PC101のCPU201は、生徒の演奏レベルを取得し、通信部207を介して先生用PC102に送信する。
【0035】
図5(a)は、ステップS402の演奏レベル取得処理において、演奏レベルを取得する第1の手法について説明する動作説明図である。
まず、生徒用PC101の表示/出力部206を介して又は紙媒体を使って、生徒用PC101に対応する生徒に、例えば図5(a)の左端項目に例示される「片手で簡単な曲が弾ける」「両手で弾ける」「難しい曲でも練習すれば弾ける自信がある」というような例えば3つのアンケート文書が提示される。
生徒は、生徒用PC101の入力部205である例えばタッチパネルから、そのアンケートの3つの文書の夫々に対する回答を、例えば「YES」又は「NO」の何れかの選択肢をタップして回答する。
生徒用PC101のCPU201は、上記アンケートに対する生徒の回答結果と、ROM202に記憶されている例えば図5(a)の判定表とに基づいて、その生徒が「入門者」「初級者」「中級者」「上級者」のうちのどの演奏レベルを有するかを判定する。
【0036】
図5(b)は、ステップS402の演奏レベル取得処理において、演奏レベルを取得する第2の手法について説明する動作説明図である。
生徒用PC101のCPU201は、ROM202に記憶されている楽譜データの中から、簡単な楽譜から順に選択しながら、表示/出力部206である例えば生徒用PC101のタッチパネルに、例えば図5(b)に示されるような楽譜と、その楽譜を弾けるか否かの選択肢回答画面を表示する。
生徒は、生徒用PC101に接続されている電子楽器103を使って図5(b)のように表示されている楽譜を弾いてみて弾けるかどうかを判断し、タッチパネル上で弾けるか弾けないかの何れかの選択肢をタップして回答する。
生徒用PC101のCPU201は、ROM202から難易度が高くなる楽譜データを順次選択し、生徒用PC101の例えばタッチパネルに、図5(b)と同様の表示をし、その表示に対して生徒が「弾ける」又は「弾けない」を回答する。
生徒用PC101は、上記回答結果と、ROM202に記憶されている例えば図5(c)の判定表とに基づいて、その生徒が「入門者」「初級者」「中級者」「上級者」のうちのどの演奏レベルであるかを判定する。
【0037】
図4の説明に戻り、図2(b)の先生用PC102のCPU201は、例えば図1の#1から#6の6台の生徒用PC101から、図4のステップS402により取得され、送信された#1から#6の各生徒の演奏レベルを、通信部207(図2(b)参照)を介して受信する。
この結果、先生用PC102のCPU201は、例えば#1から#6の各生徒の演奏レベルの分布を、例えば図5(d)に例示されるように集計する。
そして、先生用PC102のCPU201は、その集計結果において分布率が最も高い演奏レベルに対応して、予めROM202に記憶されているおすすめの練習楽譜を、表示/出力部206のディスプレイに表示する(図4のステップS403)。図5(d)の例では、初級者が多いので、初級者向け楽譜が提示される。このときの楽譜の提示は1つでも良いし複数でも良い。
【0038】
先生は、ステップS403でディスプレイに表示されたおすすめの練習楽譜のうちの1つを選択し、選択した楽譜に対して担当パート決定部に対応する担当パート決定処理を実行する(図4のステップS404)。
具体的には、先生用PC102のCPU201は、例えば予め決めてある演奏レベル毎の担当パート長(分割長さ)の表の基準を参考にしながら、ステップS403によってディスプレイに表示されているおすすめの練習楽譜に基づいて選択した楽譜において、#1から#6の生徒毎に、#1から#6の各生徒用PC101から通知された演奏レベルに応じた小節長の担当パートを決定する。また、先生用PC102のCPU201は、ディスプレイに表示されたおすすめの練習楽譜のうちの1つをランダムに選択しても良い。
図6は、或る練習楽譜に対して、生徒が6人である場合に、各生徒に割り振られる楽譜上の担当パートの例を示した図である。Fさんは、演奏レベルが上級者レベルであるため、多くの連続する小節又は難易度の比較的高い小節が担当パートとして決定されている。Cさんは、演奏レベルが中級者レベルであるため、小節数は多いが、Fさんの担当パートよりも簡単な小節が担当パートとして決定されている。同じく、Eさんは、演奏レベルが中級者レベルであるため、中程度の難易度の小節が、担当パートとして決定されている。Aさん、Bさん及びDさんは、演奏レベルが初級者レベルであるため、短い小節又は難易度の比較的低い小節が、担当パートとして決定されている。図6の例に関しては、入門者レベルの生徒はいないとする。
先生用PC102のCPU201は、上述のようにして決定した生徒毎の担当パート(小節番号と楽曲情報を含む)を、先生用PC102の通信部207(図2(b)参照)から、#1から#6の各生徒用PC101に向けて送信する。
【0039】
#1から#6の各生徒用PC101では、生徒用PC101のCPU201が、図4のステップS404での担当パート決定処理により指示された担当パートを、通信部207(図2(a)参照)で受信する。この結果、生徒用PC101のCPU201は、指示された担当パートに対応する演奏曲の楽譜データをROM202から読み出し、この生徒用PC101に対応する演奏者が演奏すべき演奏箇所を、この生徒用PC101の表示/出力部206である例えばタッチパネルに表示する(以上、図4のステップS405)。
【0040】
次に、生徒用PC101のCPU201は、MIDI通信部208(図2(a)参照)及び電子楽器103内のMIDI通信部310(図3参照)を介して、その生徒用PC101に接続される電子楽器103に、ステップS402の演奏レベル取得処理で取得している演奏レベルに応じたテンポを設定し(図4のステップS406)、その設定したテンポで、指示された担当パートの演奏箇所からの自動伴奏又は手本演奏を開始させる(図4のステップS407)。演奏レベルに応じたテンポの設定とは、例えば上級者をデフォルトのテンポで弾かせ、入門者へと演奏レベルが下がっていくほどテンポを遅くするように設定することである。
この場合、生徒用PC101は、電子楽器103に、担当パートの演奏箇所の例えば1小節手前から自動伴奏又は手本演奏を開始させるようにすることができる。
【0041】
ステップS407による電子楽器103における担当パートの自動伴奏又は手本演奏の開始後、演奏者が電子楽器103の鍵盤部304(図3参照)上で上記担当パートを演奏することにより、サウンドシステム306から演奏音が放音される。
これと共に、電子楽器103のCPU301が、図3のMIDI通信部310から図2(a)の生徒用PC101内のMIDI通信部208に、演奏者による演奏音に対応するMIDIデータを順次出力する。
生徒用PC101のCPU201は、MIDI通信部208を介して受信した上述の演奏者の担当パート分の演奏によるMIDIデータを、演奏者演奏データとしてRAM203又は外部記憶装置204内に一時記憶する(以上、図4のステップS408)。
【0042】
また、ステップS407による電子楽器103における担当パートの自動伴奏又は手本演奏の開始と同時に、生徒用PC101のCPU201は、演奏者がこの生徒用PC101に接続される電子楽器103を演奏する様子を示す演奏者演奏映像を、カメラ部209で撮像する。
そして、生徒用PC101のCPU201は、上述の演奏者の担当パート分の演奏時の演奏者演奏映像を、演奏者演奏映像データとしてRAM203又は外部記憶装置204内に一時記憶する(以上、図4のステップS409)。
【0043】
演奏者は、担当パートの演奏を何回か繰り返した後、終了してもよいと判断したときに、生徒用PC101のタッチパネル上で練習の終了ボタンをタップ等する。この結果、生徒用PC101のCPU201は、RAM203又は外部記憶装置204に一時記憶していた担当パート分の演奏者演奏データのMIDIデータ及び演奏者演奏映像データを、通信部207(図2(a)参照)を介して先生用PC102に送信する(図4のステップS410)。このステップS410は、演奏者演奏データ送信部及び演奏者演奏映像データ送信部の各処理機能に対応する。
【0044】
先生用PC102のCPU201は、通信部207(図2(b)参照)を介して、1つの生徒用PC101から上述の演奏者演奏データ及び演奏者演奏映像データを受信すると、表示/出力部206のディスプレイに、その生徒用PC101についてはデータが提出済みであることを表示する(図4のステップS411)。
【0045】
例えば図1の#1から#6の全ての生徒用PC101からステップS411でのデータの受信が完了すると、先生用PC102のCPU201は、全ての演奏者に対応する全ての生徒用PC101からの全ての演奏者の演奏者演奏データであるMIDIデータと、図4のステップS404で決定した全ての演奏者の担当パートとに基づいて、曲全体の演奏データを組み立てる(統合する)。
また、先生用PC102のCPU201は、全ての演奏者に対応する全ての生徒用PC101からの全ての演奏者の演奏者演奏映像データと、図4のステップS404で決定した全ての演奏者の担当パートとに基づいて、曲全体の演奏映像データを組み立てる(以上、図4のステップS412)。このステップS412は、演奏データ組立て部と演奏映像組立て部の処理機能に対応する。また、演奏データ及び演奏映像データは、演奏者毎に設定されたテンポが異なることが多いため、各データの組み立ての際又は各データの再生時に曲全体のテンポを統一するよう、演奏及び映像の速度を変更する処理をしても良い。
先生用PC102のCPU201は、ステップS412で作成した曲全体の演奏データと演奏映像データを、生徒用PC101に送信して表示させることにより、演奏レベルの異なった生徒間でもオンラインの合奏を実現できる。
【0046】
以上説明した実施形態において、生徒が担当パートをうまく弾けなかった場合には、先生が演奏者演奏映像データの動画を見て、アドバイスを行う等の練習方法を導入することができる。この場合、動画において、小さい音量でお手本の演奏を流しておいてもよい。
【0047】
上述の実施形態において、演奏レベルのレベル分けとしては、あまりの初級者とあまりの上級者とが混在してしまうと、上級者のみが良いところを弾いてしまったり、初級者が上級者の演奏に圧倒されてしまったり等の不都合な点が発生し得る。
このため、生徒のレベル(クラス)は、例えば初級・中級・上級の3段階で、その中でさらに初級者・中級者・上級者に分けるような比較的レベルが近い者同士のレベル分けが行われてもよい。
そして、実施形態において説明したように(図4のステップS403参照)、生徒の例えば平均レベルに合わせて楽曲が決定されてもよい。
また、楽曲毎に予め定められた入門者用フレーズ・初級者フレーズ・中級者フレーズ・上級者フレーズに振り分けて担当パートが決定されてもよい。つまり、予め入門者用の小節・初級者用の小節・中級者用の小節・上級者用等の小節が定まっており、アンケートの結果に応じて演奏者の担当パートが振り分けられるとしても良い。
【0048】
生徒毎の練習において、例えば生徒が録音開始スイッチを押して、小さい音量でお手本演奏がガイドとして流れるようにすることで、演奏タイミングのズレやテンポを合わせることが可能である。
【0049】
以上説明したように、本実施形態によれば、次のような効果が生まれる。
まず、様々なレベルの異なる生徒達に対して、効率よく課題の提供が可能となる。
また、演奏映像データを作成するため、練習成果の確認もしやすい。
また、オンライン(リモート)レッスンでは先生1対生徒1という状況が一般的のため、孤独感を感じる練習が多いが、本実施形態では、生徒全員で練習曲を演奏している感覚になるため、一体感が生まれる。
まだ一曲全体が弾けるレベルにない生徒も練習に参加しやすい。
例えば、小中学校でのオンライン授業や、初級者、或いは久しぶりに弾き始めた大人なども気軽に参加することができる。
【符号の説明】
【0050】
100 練習システム
101 生徒用PC
102 先生用PC
103 電子楽器
104 ネットワーク
201、301 CPU
202、302 ROM
203、303 RAM
204 外部記憶装置
205 入力部
206 表示/出力部
207 通信部
208、310 MIDI通信部
209 カメラ部
210、311 システムバス
304 鍵盤部
305 操作部
306 サウンドシステム
307 音源部
308 オーディオ回路
309 スピーカ
図1
図2
図3
図4
図5
図6