(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054624
(43)【公開日】2024-04-17
(54)【発明の名称】新規結晶とその製造方法及びそれを含む治療薬
(51)【国際特許分類】
C07D 213/79 20060101AFI20240410BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240410BHJP
A61K 31/44 20060101ALI20240410BHJP
C07D 213/803 20060101ALI20240410BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
C07D213/79 CSP
A61P1/04
A61K31/44
C07D213/803
A61K9/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160962
(22)【出願日】2022-10-05
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年2月1日、Chem.Pharm.Bull.70,146-154(2022)に掲載。 令和4年3月4日、日本薬学会第142年会Web要旨集の28B-pm11S欄に掲載(https://confit.atlas.jp/guide/event-img/pharm142/28B-pm-11/public/pdf?type=in)。 令和4年3月28日、日本薬学会第142年会にて、オンラインでスライドを用いて口頭発表。
(71)【出願人】
【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
(71)【出願人】
【識別番号】522393000
【氏名又は名称】アイバイオズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002206
【氏名又は名称】弁理士法人せとうち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加来田 博貴
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼村 祐太
(72)【発明者】
【氏名】李 照斌
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ナーン
【テーマコード(参考)】
4C055
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C055AA01
4C055BA02
4C055BA52
4C055BB04
4C055BB08
4C055CA02
4C055CA57
4C055DA01
4C055FA01
4C055GA03
4C076AA53
4C076AA60
4C076BB05
4C076CC16
4C076FF25
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086BC17
4C086GA15
4C086MA37
4C086MA52
4C086NA06
4C086NA13
4C086ZA66
4C086ZA68
(57)【要約】
【課題】下部消化管への移行性が高く、血中移行性が抑制されて全身性副作用が低減されたRXRアゴニストを得ること。
【解決手段】下記式(1)で示される化合物の一水和物の結晶であって、粉末X線回折パターン(Cu-Kα)において、少なくとも回折角度2θ=10.4±0.2°、11.1±0.2°、14.0±0.2°、19.1±0.2°、21.0±0.2°及び24.6±0.2°に回折ピークを有する結晶。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示される化合物の一水和物の結晶であって、粉末X線回折パターン(Cu-Kα)において、少なくとも回折角度2θ=10.4±0.2°、11.1±0.2°、14.0±0.2°、19.1±0.2°、21.0±0.2°及び24.6±0.2°に回折ピークを有する結晶。
【化1】
【請求項2】
前記粉末X線回折パターンにおいて、回折角度2θ=19.1±0.2°に最も高い強度の回折ピークを有する、請求項1に記載の結晶。
【請求項3】
式(1)で示される化合物が含水有機溶媒に溶解した溶液から前記結晶を析出させる析出工程を含む、請求項1又は2に記載の結晶の製造方法。
【請求項4】
前記析出工程の後に、析出させた結晶を乾燥させて付着水を除去する乾燥工程を有する、請求項3に記載の結晶の製造方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の結晶を含む医薬。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の結晶を含み、経口投与される炎症性腸疾患の治療薬。
【請求項7】
前記炎症性腸疾患が、潰瘍性大腸炎又はクローン病である請求項6に記載の治療薬。
【請求項8】
前記結晶が、腸溶性カプセルに収容されてなるか、又は腸溶性コーティングで覆われてなる、請求項6又は7に記載の治療薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RXRアゴニストである化合物の一水和物結晶及びその製造方法に関する。また、当該結晶を含む医薬、特に炎症性腸疾患の治療薬に関する。
【背景技術】
【0002】
レチノイドX受容体(RXR:Retinoid X Receptor)は、核内受容体の1つであり、リガンドの結合に応じて下流遺伝子の転写を制御する。そのアゴニストであるベキサロテン(Bexarotene:下記化学式)は、皮膚浸潤性T細胞リンパ腫に適応されていることに加えて、そのドラッグリポジショニング研究として炎症性腸疾患などの疾患への有効性が報告されている。しかしながら、ベキサロテンには甲状腺機能の低下などの重篤な副作用があることが問題とされており、その医薬開発は停滞している。
【0003】
【0004】
その問題を解決すべく創出されたNEt-3IB(下記化学式)は、RXR転写活性化能を維持しつつ、上記副作用を回避したことが報告されている(特許文献1、非特許文献1)。さらに、NEt-3IBは下部消化管への移行性が高いことから、炎症性腸疾患(IBD:Inflammatory Bowel Disease)への有効性が報告されており(特許文献2、非特許文献2)、現在医薬開発が進められている。また、NEt-3IBの薬物動態については非特許文献3に説示されている。
【0005】
【0006】
上記特許文献1、2及び非特許文献1~3のいずれにおいても、合成されたNEt-3IBは無水物の結晶として得られていたことが元素分析の結果などによって示されている。そしてその結晶を用いて各種の生物学的な実験が実施された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO 2008/105386 A1
【特許文献2】WO 2017/002874 A1
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Takamatsu K. et al. ChemMedChem, 2008, May, 3(5), 780-787
【非特許文献2】Matsumoto R. et al. Front. Pharmacol. 2021, 12, 715752
【非特許文献3】Kobayashi T. et al. ACS Med. Chem. Lett. 2015, 6, 334-338
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
NEt-3IBは下部消化管への移行性が高いことから、炎症性腸疾患の治療薬として有望であり、全身性の副作用の発生が抑制されることも知られているが、さらに副作用を低減するために血中移行性を抑制する方策が求められている。本発明は、このような課題を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、下記式(1)で示される化合物(以下、「NEt-3IB」と称することがある)の一水和物の結晶であって、粉末X線回折パターン(Cu-Kα)において、少なくとも回折角度2θ=10.4±0.2°、11.1±0.2°、14.0±0.2°、19.1±0.2°、21.0±0.2°及び24.6±0.2°に回折ピークを有する結晶を提供することによって解決される。
【0011】
【0012】
このとき、前記粉末X線回折パターンにおいて、回折角度2θ=19.1±0.2°に最も高い強度の回折ピークを有することが好ましい。
【0013】
また、上記課題は、式(1)で示される化合物が含水有機溶媒に溶解した溶液から前記結晶を析出させる析出工程を含む、前記結晶の製造方法を提供することによっても解決される。このとき、前記析出工程の後に、析出させた結晶を乾燥させて付着水を除去する乾燥工程を有することが好ましい。
【0014】
本発明の好適な実施態様は、前記結晶を含む医薬、特に経口投与される炎症性腸疾患の治療薬である。このとき、前記炎症性腸疾患が、潰瘍性大腸炎又はクローン病であることがより好適な実施態様である。またこのとき、前記結晶が、腸溶性カプセルに収容されてなるか、又は腸溶性コーティングで覆われてなることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一水和物結晶は、従来知られていた無水物の結晶に比べて、水溶性が格段に低いという特性を有する。したがって、当該結晶を経口投与した場合に、消化管において吸収されにくく全身性の副作用の発現を効果的に抑制しながら、下部消化管の炎症部位において効率的に薬効を奏することができる。また、本発明の結晶の製造方法によれば、本発明の一水和物結晶を簡便に高収率で得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施例1(70% EtOH w/o (without) drying)、比較例1(70% EtOH w (with) drying)、比較例2(EtOH)、比較例3(MeOH)及び比較例4(iPrOH)で得られた結晶の粉末X線回折測定パターンである。
【
図2】実施例1(A)、比較例1(B)、比較例2(C)、比較例3(D)及び比較例4(E)で得られた結晶の熱分析(TG-DTA)曲線である。
【
図3】実施例1で得られた一水和物結晶の単結晶解析結果である。
【
図4】比較例1で得られた無水物結晶の単結晶解析結果である。
【
図5】実施例1(from 70% EtOH without drying)、比較例1(from 70% EtOH with drying)及び比較例2(from anhydrous EtOH)で得られた結晶の水溶性を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、下記式(1)で示される化合物(NEt-3IB)の一水和物の結晶であって、粉末X線回折パターン(Cu-Kα)において、少なくとも回折角度2θ=10.4±0.2°、11.1±0.2°、14.0±0.2°、19.1±0.2°、21.0±0.2°及び24.6±0.2°に回折ピークを有する結晶である。
【0018】
【0019】
NEt-3IBは、レチノイドX受容体(RXR)アゴニストであり、RXR転写を活性化することが知られており、医薬用途の検討が進められている。なかでも炎症性腸疾患に対しては、下部消化管への移行性が高いとともに、トリグリセリドの上昇などの全身性副作用の抑制が可能であるとして、NEt-3IBの特に有望な用途であると期待されている(特許文献2、非特許文献2を参照)。
【0020】
NEt-3IBの合成方法については、これまでに特許文献1や非特許文献1に記載された方法が知られている。それらの方法では、複数の反応を経て合成されたNEt-3IBを、有機溶媒中で精製していた。例えば、特許文献1では酢酸エチルとn-ヘキサンの混合溶媒によるフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製しているし、非特許文献1では塩化メチレンとn-ヘキサンの混合溶媒に溶解させてから再結晶させて精製している。このように有機溶媒に溶解させて精製作業を行っていたのは、NEt-3IBの水溶性が極めて低いためである。こうして精製されたNEt-3IBは、無水物の結晶であった。
【0021】
今回、本発明者らはNEt-3IBの合成方法及び精製方法を検討する中で、含水有機溶媒中で再結晶することにより、一水和物の結晶が得られることを見出した。そして、当該一水和物結晶の水溶性(リン酸緩衝溶液中での溶解性)が、無水物結晶と比べて格段に低いことを見出した。下部消化管に生じた炎症を改善するためにNEt-3IBを経口投与する場合には、炎症部位に有効量のNEt-3IBを届けなければならないが、一方でそれよりも上流側の消化管ではできるだけNEt-3IBの吸収を少なくして血中への移行を抑制し、全身性の副作用を抑制することが望ましい。したがって、副作用防止の観点からはNEt-3IBの水溶性が低いことが好ましく、本発明者らにより正にその目的を達成できる結晶が見出された。
【0022】
本発明の一水和物の結晶は、粉末X線回折パターン(Cu-Kα)において、少なくとも回折角度2θ=10.4±0.2°、11.1±0.2°、14.0±0.2°、19.1±0.2°、21.0±0.2°及び24.6±0.2°に回折ピークを有する。粉末X線回折パターンの測定方法は、後述の実施例1に記載したとおりである。実施例1で得られた回折パターンは、
図1の「70% EtOH w/o drying」に示すとおりであり、より小さい強度の回折ピークを含めて表1に記載した。一方、従来公知の無水物の結晶の粉末X線回折パターンは、
図1の「70% EtOH w drying」に示すとおりであり、より小さい強度の回折ピークを含めて表2に記載した。両者の粉末X線回折パターンは相違するが、特に、回折角度2θ=19.1±0.2°に最も高い強度の回折ピークを有することが、本発明の一水和物の結晶の大きな特徴であり、この付近には無水物の結晶の主要な回折ピークは存在しない。
【0023】
本発明の一水和物を単結晶解析した結果は、実施例1の
図3に記載したとおりである。空間群がP-1の三斜晶系結晶であり、格子定数は、a=8.521Å、b=9.003Å、c=14.884Å、α=102.508°、β=100.112°、γ=106.564°である。NEt-3IBのカルボキシル基に隣接する位置に水分子が存在し、単位格子当たり、2分子のNEt-3IBに対して2分子の水分子を含む結晶である。
【0024】
本発明の一水和物結晶の熱分析(TG-DTA)結果は、実施例1の
図2のAに示すとおりである。DTA曲線では45~70℃の範囲で水の脱離に由来する吸熱ピークが観察され、TG曲線においても同じ温度範囲で重量減少が確認された。すなわち、本発明の一水和物結晶は加熱により脱水が可能である。こうして水が脱離した後に無水物結晶が得られることは実施例2に示すとおりである。また、190~200℃にDTA曲線における鋭い吸熱ピークが観察され、これが結晶の融解に対応する。
【0025】
本発明の一水和物結晶の製造方法は特に限定されないが、複数の化学反応を経て合成されたNEt-3IBから、再結晶して製造することが好ましい。具体的には、NEt-3IBを含水有機溶媒に溶解した溶液(以下、「含水有機溶媒のNEt-3IB溶液」と言う場合がある。)から前記結晶を析出させる析出工程を含む方法が好適である。NEt-3IBは水にほとんど溶けないので、水溶液からの再結晶は生産性に問題があるし、溶媒中に水が含まれていないと一水和物の結晶を得ることができない。再結晶溶媒中の水の含有量は、通常1~50質量%である。用いられる有機溶媒は、水を溶解することができる低沸点の溶媒であれば特に限定されないが、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール、アセトン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。ここで用いられる有機溶媒の沸点は、好適には30~150℃であり、より好適には50~100℃である。安全性の観点から、炭素数が3以下のアルコール、特にエタノールが好適である。再結晶に際しては、加熱した含水有機溶媒中にNEt-3IBを溶解させ、その後冷却することによって結晶を析出させることができる。一方、無水の有機溶媒を用いて再結晶した場合には、溶媒の種類にかかわらず無水物の結晶が得られる。なお、NEt-3IBの無水物の結晶(以下、「無水物結晶」と言う場合がある)を高湿度下におくことによって水和物を形成させることも可能であるが、生産性や結晶の純度の観点から、必ずしも好ましくない。
【0026】
含水有機溶媒のNEt-3IB溶液から一水和物結晶を析出させる場合には、水を含まない有機溶媒から無水物結晶を析出させる場合に比べて、再結晶収率が格段に高い。この点からも、含水有機溶媒のNEt-3IB溶液から本発明の一水和物結晶を再結晶で得ることが好ましい。また、無水物結晶を医薬に用いる場合であっても、再結晶収率を高くするためには、一旦一水和物結晶を製造してから、それを加熱又は減圧して乾燥させることによって無水物結晶を得る方法が好ましい。
【0027】
本発明の一水和物結晶の製造方法においては、前記析出工程の後に、析出させた結晶を乾燥させて付着水を除去する乾燥工程を有することが好ましい。結晶水が離脱しない温和な条件で付着水を除去して乾燥することが好ましい。具体的な乾燥温度は、35℃以下であることが好ましく、30℃以下であることがより好ましい。乾燥温度は、通常0℃以上である。乾燥する際の圧力は常圧(約1,000hPa)であることが好ましいが、少し減圧しても構わない。減圧する場合の圧力は100hPa以上であることが好ましく、500hPa以上であることがより好ましい。
【0028】
以上、NEt-3IBの一水和物結晶とその製造方法について説明した。当該結晶を得るための再結晶前のNEt-3IBの製造方法は特に限定されず、特許文献1や非特許文献1に記載された公知の合成方法を採用することができる。しかしながら、本発明者らは、より廃棄物が少なく、用いる溶媒の種類も少ない、環境に配慮した製造方法を開発した。しかも、従来公知の方法よりも収率を向上させることができた。実施例1に記載しているNEt-3IBの製造方法は、その代表例である。以下では、その新しいNEt-3IBの製造方法について説明する。この方法はNEt-3IBの製造方法に限定されるものではなく、他の化合物の製造方法としても使用可能なものである。
【0029】
NEt-3IBの中間体の好適な製造方法は、下記式(I)に従い、化合物3aを原料として、反応C、D、E及びFをこの順に行う、レチノイドX受容体アゴニストの中間体である化合物7aの製造方法であって;
反応Cにおいて、化合物3a及び1-ハロゲノ-2-メチルプロパンが有機溶媒に溶解した溶液の油相と、アルカリ金属水酸化物が溶解した水溶液の水相とが分離した状態で、反応を進行させて化合物4aを得て;
反応Dにおいて、化合物4aに水素添加して化合物5aを得て;
反応Eにおいて、化合物5aと6-ハロゲノニコチン酸のアルキルエステル又はベンジルエステルとを反応させて化合物6aを得て;
反応Fにおいて、化合物6aとハロゲン化エタンを反応させて化合物7aを得る、中間体の製造方法である。
【0030】
【0031】
[式(I)中、R1は炭素数1~6のアルキル基又はベンジル基である。化合物5aはアンモニウム塩であってもよい。]
【0032】
このとき、反応Cにおいて、前記油相と前記水相とが分離した状態で、相間移動触媒の存在下に反応を進行させることが好ましい。
【0033】
また、他の好適な製造方法は、下記式(I)に従い、化合物3aを原料として反応C、D、E及びFをこの順に行う、RXRアゴニストの中間体である化合物7aの製造方法であって;
反応Cにおいて、化合物3aと1-ハロゲノ-2-メチルプロパンを反応させて化合物4aを得て;
反応Dにおいて、化合物4aに水素添加して化合物5aを得て;
反応Eにおいて、化合物5aと6-ハロゲノニコチン酸のアルキルエステル又はベンジルエステルとを反応させて化合物6aを得て;
反応Fにおいて、化合物6aとハロゲン化エタンが有機溶媒に溶解した溶液中に、アルカリ金属水酸化物の粒子が分散した状態で、反応を進行させて化合物7aを得る、中間体の製造方法である。
【0034】
【0035】
[式(I)中、R1は炭素数1~6のアルキル基又はベンジル基である。化合物5aはアンモニウム塩であってもよい。]
【0036】
このとき、反応Fにおいて、前記アルカリ金属水酸化物が水酸化カリウムであることが好ましい。また、反応Fにおいて、前記溶液中に、アルカリ金属水酸化物の粒子が分散した状態で、相間移動触媒の存在下に反応を進行させることも好ましい。
【0037】
上記中間体の製造方法において、前記相間移動触媒が、アルキルアンモニウムハライドであることが好ましい。前記有機溶媒が、炭素数5~7の脂環式エーテルであることも好ましい。反応C、D、E及びFの全てを、水、炭素数が1~3のアルコール、及び炭素数5~7の脂環式エーテルからなる群から選択される溶媒のみを用いて進行させることも好ましい。
【0038】
また他の好適な製造方法は、下記式(I)に従い、化合物3aを原料として反応C、D、E及びFをこの順に行う、RXRアゴニストの中間体である化合物7aの製造方法であって;
反応Cにおいて、化合物3aと1-ハロゲノ-2-メチルプロパンを反応させて化合物4aを得て;
反応Dにおいて、化合物4aに水素添加して化合物5aを得て;
反応Eにおいて、化合物5aと6-ハロゲノニコチン酸のアルキルエステル又はベンジルエステルとを反応させて化合物6aを得て;
反応Fにおいて、化合物6aとハロゲン化エタンを反応させて化合物7aを得るに際し、
反応C、D、E及びFの全てを、水、炭素数が1~3のアルコール、及び炭素数5~7の脂環式エーテルからなる群から選択される溶媒のみを用いて進行させる、中間体の製造方法である。
【0039】
【0040】
[式(I)中、R1は炭素数1~6のアルキル基又はベンジル基である。化合物5aはアンモニウム塩であってもよい。]
【0041】
上記中間体の製造方法において、反応C、D、E及びFを、バッチ合成法及び/又は連続フロー合成法によって行うことが好ましい。
【0042】
他の好適な製造方法は、下記式(II)に従い、化合物1をニトロ化して化合物2を得る反応A、及び化合物2のアミノ基を水酸基に変換して化合物3aを得る反応Bをこの順に行って得られた化合物3aを用いて反応Cを行う、前記中間体の製造方法である。
【0043】
【0044】
また、他の好適な製造方法は、前記の方法で製造された化合物7aを、下記式(III)に従って加水分解して化合物8aからなるRXRアゴニストを得る、RXRアゴニストの製造方法である。
【0045】
【0046】
[式(III)中、R1は炭素数1~6のアルキル基又はベンジル基である。]
【0047】
他の好適な製造方法は、下記式(IV)に従い、化合物3及び1-ハロゲノ-2-メチルプロパンが有機溶媒に溶解した溶液の油相と、アルカリ金属水酸化物が溶解した水溶液の水相とが分離した状態で、反応を進行させて化合物4を得る、イソブトキシベンゼンの製造方法である。
【0048】
【0049】
[式(IV)中、ニトロ基はベンゼン環の3位又は4位に結合している。]
【0050】
このとき、前記油相と前記水相とが分離した状態で、相間移動触媒の存在下に反応を進行させることが好ましい。
【0051】
また、他の好適な製造方法は、下記式(V)に従い、化合物6とハロゲン化物が有機溶媒に溶解した溶液中に、アルカリ金属水酸化物の粒子が分散した状態で、反応を進行させて化合物7を得る、三級アミンの製造方法である。
【0052】
【0053】
[式(V)中、アミノ基はベンゼン環の3位又は4位に結合しており、R1は炭素数1~6のアルキル基又はベンジル基であり、R2は置換基を有してもよい炭素数1~6のアルキル基である。]
【0054】
このとき、前記アルカリ金属水酸化物が水酸化カリウムであることが好ましい。また、前記溶液中に、アルカリ金属水酸化物の粒子が分散した状態で、相間移動触媒の存在下に反応を進行させることも好ましい。
【0055】
以下、前記式(I)~(V)に含まれる反応A~Gについて、それぞれ詳細に説明する。
【0056】
[反応A]
反応Aでは、化合物1(2-イソプロピルアニリン)をニトロ化して化合物2(2-イソプロピル-5-ニトロアニリン)を得る。ニトロ化する方法は特に限定されず、公知の方法を採用することができ、濃硫酸と濃硝酸の混酸を用いてニトロ化することもできる。しかしながら、反応スケールを大きくするにあたり、混酸の使用は危険を伴うこと、硝酸は揮発性であり等量計算が難しいことが問題となることがある。そのため、硝酸の代わりに硝酸塩を用いることが好ましい。硝酸塩としては、硝酸カリウムなどを用いることができる。また、濃硫酸を溶媒として用い、有機溶媒を使用せずに反応を進行させることが好ましい。反応終了後に精製しても構わないが、精製を経ることなく次の反応Bに用いることが、作業効率の観点から好ましい。化合物1のモル数に対して等モル数以上の硝酸又は硝酸塩を用い、過剰の硫酸を用いることが好ましい。反応温度は0~50℃であることが好ましい。
【0057】
[反応B]
反応Bでは、化合物2(2-イソプロピル-5-ニトロアニリン)のアミノ基を水酸基に変換して化合物3a(2-イソプロピル-5-ニトロフェノール)を得る。反応Aで得られた濃硫酸溶液に水と亜硝酸塩を添加することによってジアゾニウム塩を形成させ、それを加熱することによって、ザンドマイヤー反応によって目的物のフェノールを得ることができる。ジアゾニウム塩を形成させる際の反応温度は0~10℃であることが好ましく、フェノールを形成させる際の反応温度は50~100℃であることが好ましい。濃硫酸に水を加えて形成される希硫酸の硫酸濃度は5~50質量%が好ましい。また、亜硝酸塩としては、亜硝酸ナトリウムなどを用いることができる。化合物1のモル数に対して等モル数以上の亜硝酸塩を用いることが好ましい。
【0058】
反応Bにおいて、さらに有機溶媒を加えることによって、収率よく化合物3aを得ることができる。当該有機溶媒は、化合物2及び化合物3aを溶解することができればよく、特に限定されないが、環境にやさしく回収の容易な溶媒を用いることが好ましい。窒素元素や硫黄元素を含まず、炭素、水素及び酸素のみを含む溶媒が好ましく、エーテル、エステルなどを用いることができるが、各種の反応に対して安定な非プロトン性溶媒であるエーテルが好ましい。中でも蒸留などによる回収の容易さを考慮すれば、炭素数が4~8のエーテルが好ましく、炭素数5~7のエーテルがより好ましい。また、有機化合物の溶解性の観点からは、脂環式エーテルが好ましい。特に好ましいのは、炭素数が5~7の脂環式エーテルであり、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、4-メチルテトラヒドロピラン(MTHP)、2-メチルテトラヒドロフラン(2-MeTHF)などが例示され、CPMEとMTHPが特に好ましい。反応Bの終了後に精製しても構わないが、精製を経ることなく次の反応Cに用いることが、作業効率の観点から好ましい。
【0059】
[反応C]
反応Cにおいて、化合物3aと1-ハロゲノ-2-メチルプロパンを反応させて化合物4aを得る。これによって、水酸基がイソブトキシ基に変換される。この反応を進行させる方法は特に限定されないが、好適な方法は、化合物3a及び1-ハロゲノ-2-メチルプロパンが有機溶媒に溶解した溶液の油相と、アルカリ金属水酸化物が溶解した水溶液の水相とが分離した状態で、反応を進行させて化合物4aを得る方法である。
【0060】
前記好適な方法について、以下に詳しく説明する。この反応は、油相と水相とが分離した状態で反応を進行させることを特徴とする。当該油相には、化合物3aと1-ハロゲノ-2-メチルプロパンが溶解している。1-ハロゲノ-2-メチルプロパンとしては、1-ブロモ-2-メチルプロパン、1-クロロ-2-メチルプロパン、1-ヨード-2-メチルプロパンなどを用いることができ、1-ブロモ-2-メチルプロパンが好ましい。1-ハロゲノ-2-メチルプロパンのモル数の化合物3aのモル数に対する比率は1当量以上であることが好ましく、より好適には1.1当量以上である。当該比率は好適には5当量以下であり、より好適には3当量以下である。油相中の化合物3aの濃度は特に限定されないが、好適には0.01~10mol/Lである。当該油相に用いられる溶媒は両者を溶解させることができるものであれば特に限定されないが、反応Bで用いられる有機溶媒と同じものを用いることが好ましい。
【0061】
また、前記水相にはアルカリ金属水酸化物が溶解している。アルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが用いられるが、水酸化カリウムが好適である。水相中のアルカリ金属水酸化物の濃度は特に限定されないが、好適には0.05~20mol/Lである。また、用いられるアルカリ金属水酸化物のモル数は、化合物3aのモル数の1~10倍であることが好ましい。また、反応Bで用いたのと同じ回収性に優れた有機溶媒を用いることができる。好適な反応温度は、50~100℃である。反応後は、油相を回収し、抽出操作や洗浄操作をするだけでよく、精製することなく次の反応Dに供することができる。
【0062】
これらの油相と水相との界面で効率的に反応を進行させるために、反応液を撹拌することが好ましい。撹拌しながら反応させることによって油相と水相の界面が効率的に更新されて効率的に反応が進行する。撹拌方法としては、撹拌翼、スクリュー、スターラーなど公知の撹拌方法を採用することができる。マイクロリアクターの流路中でスラグ流を形成させる場合や、スタティックミキサーを用いる場合のように、撹拌せずに油相と水相の界面を更新させる方法を採用することもできる。
【0063】
また、前記油相と前記水相とが分離した状態で、相間移動触媒の存在下に反応を進行させることも好ましい。相間移動触媒が存在することによって、反応速度が向上し、高収率で目的化合物を得ることができる。ここで、用いられる相間移動触媒は特に限定されないが、アルキルアンモニウムハライドが好適である。アルキルアンモニウムハライドとしては、モノアルキルアンモニウムハライド、ジアルキルアンモニウムハライド、トリアルキルアンモニウムハライド及びテトラアルキルアンモニウムハライドのいずれであっても構わないが、テトラアルキルアンモニウムハライドが好ましい。ハライドとしては、ブロマイドであってもクロライドであっても構わないがブロマイドが好ましい。テトラアルキルアンモニウムハライドとしては、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムアイオダイドなどが例示される。用いられる相間移動触媒のモル数は、化合物3aのモル数の0.01~1倍であることが好ましい。
【0064】
[反応D]
反応Dにおいて、化合物4aに水素添加してニトロ基をアミノ基に還元して化合物5aを得る。水素添加の方法は特に限定されず、公知の方法を採用することができる。水素ガス及び遷移金属触媒を用いて水素添加することができる。用いられる遷移金属触媒としては、Pd触媒、例えばPd/Cなどが好適に用いられる。反応溶媒としては、プロトン性有機溶媒が好ましく、炭素数が1~3のアルコールなどを用いることができ、エタノールが好適である。反応終了後に濾過することによって、触媒を除去することができる。反応後に生成物が溶解している有機溶媒を交換してもよい。この場合、反応Bで用いられる有機溶媒と同じものに交換することが好ましい。また、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸などの酸を加えて、化合物5aのアンモニウム塩を形成させてもよい。必要に応じて、有機溶媒を交換したり、塩を形成させたりしてから、精製することなく次の反応Eに供することができる。
【0065】
[反応E]
反応Eにおいて、化合物5aと6-ハロゲノニコチン酸のアルキルエステル又はベンジルエステルとを反応させて、カップリング反応によって化合物6aを得る。用いられる化合物5aは、そのまま用いてもよいし、化合物5aをp-トルエンスルホン酸などの有機酸の塩としてもよい。有機酸の塩とすることによって、化合物5aの酸化を防止できるとともに、反応Eを進行させる酸触媒として利用することもできる。また、6-ハロゲノニコチン酸エステルとしては、クロロニコチン酸エステル、ブロモニコチン酸エステル、ヨードニコチン酸エステルのいずれを用いてもよいが、クロロニコチン酸エステルが好ましい。当該アルキルエステルは、炭素数1~6のアルカノールのエステルであり、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステルなどが例示され、中でも、エチルエステルが好ましい。化合物5aのモル数に対する6-ハロゲノニコチン酸エステルのモル数は、1~2倍であることが好ましい。反応溶媒としては、反応Bで用いられる有機溶媒と同じものを用いることが好ましい。エステル基の加水分解を防ぐためには、反応液を十分に脱水してから反応を進行させることが好ましい。反応温度は50~120℃であることが好ましい。反応終了後には、反応溶媒を留去した後で、再結晶によって精製することが好ましい。再結晶に用いる溶媒としては炭素数が1~3のアルコールが好適であり、エタノールが特に好ましい。また、炭素数が1~3のアルコールに水を加えた混合溶媒で再結晶させることもできる。これによって、比較的簡便に精製することができる。
【0066】
[反応F]
反応Fにおいて、化合物6aとハロゲン化エタンを反応させて化合物7aを得る。これによって、二級アミンをアルキル化して三級アミンを得ることができる。この反応を進行させる方法は特に限定されないが、好適な方法は、化合物6aとハロゲン化エタンが有機溶媒に溶解した溶液中に、アルカリ金属水酸化物の粒子が分散した状態で反応を進行させて化合物7aを得る方法である。
【0067】
前記好適な方法について、以下に詳しく説明する。この反応は、油相と固相とが分離した状態で反応を進行させることが特徴である。当該油相には、化合物6aとハロゲン化エタンを溶解させる。ハロゲン化エタンとしては、ヨードエタン、ブロモエタン、クロロエタンなどを用いることができるが、反応性の観点からはヨードエタン又はブロモエタンが好ましく、ヨードエタンが特に好ましい。化合物6aのモル数に対するハロゲン化エタンのモル数の比率は1当量以上であることが好ましく、より好適には1.1当量以上である。当該比率は好適には2当量以下であり、より好適には1.5当量以下である。油相中の化合物3aの濃度は特に限定されないが、好適には0.01~10mol/Lである。当該油相に用いられる溶媒は両者を溶解させることができるものであれば特に限定されないが、反応Bで用いられる有機溶媒と同じものを用いることが好ましい。エステル基の加水分解を防ぐためには、反応液を十分に脱水してから反応を進行させることが好ましい。
【0068】
反応Fでは、溶液中にアルカリ金属水酸化物の粒子が分散した状態で、反応を進行させる。アルカリ金属水酸化物は固体であり、その粒径は、球相当径で0.01~10mmであることが好ましく、ハンドリング性を考慮すれば1~10mmであることがより好ましい。アルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが用いられるが、反応速度が向上し高収率で目的化合物が得られることから、水酸化カリウムが好適である。用いられるアルカリ金属水酸化物のモル数は、化合物6aのモル数の1~10倍であることが好ましい。好適な反応温度は、40~100℃である。反応後は、溶媒を留去するだけでよく、精製することなく次の反応Gに供することができる。
【0069】
前記油相と前記固相とが分離した状態で、相間移動触媒の存在下に、反応を進行させることが好ましい。相間移動触媒が存在することによって、反応速度が向上し、高収率で目的化合物を得ることができる。ここで、用いられる相間移動触媒は特に限定されないが、反応Cで用いられるものを好適に用いることができる。用いられる相間移動触媒のモル数は、化合物6aのモル数の0.01~1倍であることが好ましい。
【0070】
また、撹拌することによって反応を進行させることが好ましい。撹拌しながら反応させることによって油相と固相の界面が効率的に更新されて効率的に反応が進行する。撹拌方法としては、撹拌翼、スクリュー、スターラーなど公知の撹拌方法を採用することができる。マイクロリアクターの流路中やスタティックミキサー中に、小粒径の水酸化カリウム粒子が分散した反応液を流す場合のように、撹拌せずに油相と固相の界面を更新させる方法を採用することもできる。
【0071】
[反応G]
反応Gは、前記式(III)で示される。反応Gにおいて、化合物7aを加水分解して化合物8aからなるRXRアゴニストを得る。加水分解するためには、アルカリ触媒の存在下で水と反応させればよい。アルカリ触媒については、反応Fにおいて用いた水酸化カリウムが化合物7aとともに含まれているので、さらに追加する必要はない。溶媒は、水でもよいが、化合物7aの溶解性を向上させるために、水-アルコールの混合溶媒であることが好ましい。用いられるアルコールとしては、炭素数が1~3のアルコールが好ましく、エタノールが特に好適である。水とアルコールの混合比率は体積比率で10/90~90/10であることが好ましい。好適な反応温度は50~100℃である。反応終了後には、アルコールを留去してから、残存するアルカリ触媒を過剰の酸で中和して酸性水溶液にすることによって、化合物8aの粗生成物を析出させる。これを再結晶することによって精製することができる。再結晶には、炭素数が1~3のアルコールと水の混合溶媒を用いることができる。なお、反応Fにおいて、反応液中に存在するアルカリの影響で、生成した化合物7aが加水分解されて化合物8aが生成することがある。このような場合には、一つの工程において、反応Fと反応Gが同時に進行していると考えられ、本発明に含まれる態様である。
【0072】
以上説明した、反応Aから反応Gを順次行うことによって、原料化合物である2-イソプロピルアニリン(1)から、目的化合物8a(NEt-3IB)を収率良く得ることができる。ただし、これらの反応を全て行わなければならない訳ではなく、反応C、D、E、及びFのみを行ってもよい。したがって、反応Cに用いる化合物3aを反応Aと反応Bの組み合わせ以外の方法で製造することもできる。また、反応Fによって得られた化合物7aを用いて、化合物8a(NEt-3IB)以外の化合物の合成に用いることもできる。化合物7aのベンゼン環に置換基を導入してRXRに対する活性をコントロールした化合物を製造することもできる。
【0073】
上記合成反応において、反応Aでは濃硫酸を溶媒として用いることが好ましい。反応B及びCでは、水及び炭素数5~7の脂環式エーテルを溶媒として用いることが好ましい。反応Dでは、炭素数が1~3のアルコール、及び炭素数5~7の脂環式エーテルを溶媒として用いることが好ましい。反応E及びFでは、炭素数5~7の脂環式エーテルを溶媒として用いることが好ましい。反応Gでは、水及び炭素数が1~3のアルコールを溶媒として用いることが好ましい。このように、A~Gの全ての反応において、有機溶媒としては、炭素数が1~3のアルコール及び炭素数5~7の脂環式エーテルのみを用いることが好ましい。また、反応C、D、E及びFの全てを、水、炭素数が1~3のアルコール、及び炭素数5~7の脂環式エーテルからなる群から選択される溶媒のみを用いて進行させることが好ましい。さらに、B~Gの全ての反応においても、同様に水、炭素数が1~3のアルコール、及び炭素数5~7の脂環式エーテルからなる群から選択される溶媒のみを用いて進行させることが好ましい。これによって、溶媒の回収が容易になり、環境にやさしい製造プロセスを提供することができる。
【0074】
本発明の実施例1では、溶媒としてシクロペンチルメチルエーテル(CPME)を用い、原料化合物である2-イソプロピルアニリン(1)から、目的とする一水和物結晶8b(NEt-3IB・H2O)を、総収率32%という高収率で得ることができた。本発明者らは、溶媒としてCPMEの代わりに4-メチルテトラヒドロピラン(MTHP)を用いて総収率50%で目的結晶8bが得られることを実験的に確認している。また、溶媒としてCPMEの代わりに2-メチルテトラヒドロフラン(2-MeTHF)を用いて総収率7%で目的結晶8bが得られることも実験的に確認している。
【0075】
以上、NEt-3IB又はその合成中間体の好適な製造方法について説明した。なお、これらの製造方法は、NEt-3IBの一水和物結晶を製造する目的に限られるものではない。
【0076】
以上のようにして得られたNEt-3IBの一水和物結晶を含む医薬が、本発明の好適な実施態様である。医薬の用途は特に限定されるものではないが、RXRアゴニストとしての効果が奏される用途が好適である。なかでも、前記一水和物結晶を含み、経口投与される炎症性腸疾患の治療薬が特に好適な実施態様である。本発明の一水和物結晶は、水溶性(厳密にはpH7.4のリン酸緩衝溶液中での溶解性)が、無水物結晶と比べて格段に低いので、上部消化管から吸収されて血中に移行し、全身性の副作用が発現するのを抑制することができる。このとき、前記炎症性腸疾患が、潰瘍性大腸炎又はクローン病であることが特に好ましい。これらの炎症性腸疾患は下部消化管で炎症を生じることが多く、炎症部位に有効成分が到着するまでに上流の消化管からNEt-3IBが吸収されるのを効果的に抑制することができる。
【0077】
NEt-3IBの一水和物結晶を含む医薬の製剤形態は特に限定されない。前記医薬の有効成分としてNEt-3IBの一水和物結晶とNEt-3IBの無水物結晶の両方を含んでいても構わないが、一水和物結晶の含有量が、一水和物結晶と無水物結晶の合計含有量の50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。NEt-3IBの投与量は特に限定されないが、1日当たり0.1μg/kg体重~10mg/kg体重であることが好ましい。
【0078】
経口投与に適する医薬製剤としては、例えば、カプセル剤、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤等を挙げることができる。上記の医薬組成物の製造に用いられる薬理学的及び製剤学的に許容しうる担体としては、例えば、賦形剤、崩壊剤ないし崩壊補助剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、色素、希釈剤、基剤、等張化剤、pH調節剤、安定化剤及び保存剤等を挙げることができる。
【0079】
前記一水和物の結晶が、腸溶性カプセルに収容されてなるか、又は腸溶性コーティングで覆われてなることが好ましい。そうすることによって、腸、特に大腸に対して、NEt-3IBを一水和物結晶の形態のまま到達させることができる。
【0080】
以上のように、本発明の一水和物結晶を用いることによって、有効成分であるNEt-3IBを下部消化管へ十分に移行させながらも、全身性の副作用の発生を抑制することができ、医薬、特に炎症性腸疾患の治療薬として有用である。
【実施例0081】
実施例1[NEt-3IB一水和物結晶の合成]
RXRアゴニストであるNEt-3IBの一水和物(8b)を以下のとおり合成した。溶媒として、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)を用いた。合成スキームを下記に示す。
【0082】
【0083】
[反応A:化合物2の合成]
メカニカルスターラーと温度計を装着した1Lの3頸フラスコに、濃硫酸180mLを入れ、氷浴で5℃以下にまで冷却した。冷却した濃硫酸に、2-イソプロピルアニリン(1)13.5g(100mmol)を1mL/分で添加し、250rpmで撹拌した。反応液中に析出した固体を、反応液の温度を室温まで上昇させて溶解させた後に、再度5℃以下にまで冷却した。反応液を250rpmで撹拌しながら、硝酸カリウム10.1g(100mmol)を1g/分で添加し、HPLCで確認しながら30分間反応させて、化合物1の消失を確認し、2-イソプロピル-5-ニトロアニリン(2)を含む反応液を得た。化合物2のリテンションタイムは2.64分であった。化合物2のHPLCでのエリア面積は99%であった。ここで、当該エリア面積は、HPLCでUV検出器で検出された全ピークのうち、化合物2に由来するピークの面積に割合のことをいう。したがって、消失した化合物1のほとんどが化合物2になっていることがわかる。
【0084】
[反応B:化合物3aの合成]
反応Aで得られた反応液を、氷300mLを入れた2Lの4頸フラスコに加えた。反応Aで用いたフラスコを水820mLで洗浄し、得られた洗浄水を4頸フラスコに移し、5℃以下にまで冷却した後、200rpmで撹拌しつつ、400mg/分で亜硝酸ナトリウム粉末7.25g(105mmol)を添加した。亜硝酸イオンが含まれていることをヨウ化カリウムデンプン紙にて確認した。反応液に尿素750mg(12.5mmol)と、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)400mLを加え、250rpmで撹拌しつつ内温が80℃になるまで加熱した。反応の進行をHPLCで確認した。化合物3aのリテンションタイムは3.25分であった。反応開始の1時間後に原料の消失を確認してから、反応液を室温まで空冷した。得られた反応液を分液漏斗に移し、水層を除去した。得られた有機層(CPME溶液)を、200mLの水で3回洗浄してから、減圧下で100mLになるまで濃縮し、2-イソプロピル-5-ニトロフェノール(3a)の粗生成物を含むCPME溶液を得た。化合物3aのHPLCでのエリア面積は65%であった。
【0085】
[反応C:化合物4aの合成]
反応Bで得られた2-イソプロピル-5-ニトロフェノール(3a)を含む100mLのCPME溶液を入れた1Lの3頸フラスコに、水100mLと水酸化カリウム13.5g(240mmol)を加えてpH11の水溶液を得た。テトラブチルアンモニウムブロマイド(TBAB)3.22g(10mmol)を添加し、内温60℃、200rpmで2時間撹拌した。次いで、1-ブロモ-2-メチルプロパン20.6g(150mmol)を添加し、内温80℃、200rpmで撹拌した。撹拌操作中、水相と油相とは分離しており、HPLCで確認しながら8時間反応させた。化合物4aのリテンションタイムは8.29分であった。原料の消失を確認した後、空冷し、反応液を分液漏斗に移し、CPME層と水層を分離した。CPME層を100mLの水で3回洗浄した後、CPMEを減圧下で留去し、2-イソブトキシ-1-イソプロピル-4-ニトロベンゼン(4a)を粗生成物として得た。化合物4aのHPLCでのエリア面積は67%であった。
【0086】
[反応D:化合物5aの合成]
反応Cで得られた2-イソブトキシ-1-イソプロピル-4-ニトロベンゼン(4a)の粗生成物及びエタノール200mLを1Lの擦り付き三角フラスコに入れ、フラスコ内を窒素ガスで置換した。Pd/Cを1.19g(化合物4aを100質量部に対して5質量部)を加え、前記窒素ガスを水素ガスで置換した後に、室温で撹拌を継続し、HPLCで確認しながら24時間反応させた。化合物5aのリテンションタイムは1.81分であった。反応終了後、フラスコ内を窒素置換したのち反応液をセライトで濾過し、エタノール100mLで洗浄した。得られた濾液に含まれる溶媒を減圧下で留去した後、CPME100mLに溶解し、1Lの3頸フラスコに移した。このCPME溶液中の3-イソブトキシ-4-イソプロピルアニリン(5a)の量を、検量線を用いてHPLCで定量し(13.0g:68.6mmol)、p-トルエンスルホン酸一水和物11.5g(60.7mmol)を添加した。室温にて1時間撹拌し、3-イソブトキシ-4-イソプロピルアニリン(5a)のp-トルエンスルホン酸塩(68.6mmol:総収率69%)を含むCPME溶液を得た。
【0087】
[反応E:化合物6aの合成]
反応Dで得られたCPME溶液を入れた1Lの3頸フラスコにメカニカルスターラー、温度計、ジムロート付きディーン・スターク脱水器を装着した。このフラスコに、CPME100mLを追加し、溶液を前記脱水器で十分に脱水した。CPMEと水の共沸点は85℃である。脱水が完了すると反応液の温度は105℃まで上昇した。その後、200rpmで撹拌しつつ、6-クロロニコチン酸エチル12.7g(68.6mmol)を添加し、加熱還流させた。反応の進行をHPLCで確認しながら反応させ、28時間後に反応を終了した。化合物6aのリテンションタイムは9.29分であった。反応の終了確認後、反応液を空冷したのち反応液を分液漏斗に移し、100mLの水で3回洗浄した。得られたCPME溶液から、減圧下で溶媒を留去した後、残渣を100mLのエタノールに溶解し、再結晶により精製した。結晶析出後の溶液を用いて、エタノール70質量%と水30質量%を含む溶液中で、再度再結晶を行った。こうして析出した固体を合わせて、化合物6a(R1がエチル)を17.5g(49.1mmol:総収率49%)得た。
【0088】
[反応F:化合物7aの合成]
メカニカルスターラー、温度計、ジムロート付きディーン・スターク脱水器を1Lの3頸フラスコに装着し、そこに反応Eで得られた化合物6aを17.5g(49.1mmol)とCPME200mLを加えた。溶液中の水を前記脱水器で十分に除いた後、水酸化カリウムのペレット(粒径約5mm)11.0g(196.0mmol)、テトラブチルアンモニウムブロマイド(TBAB)1.58g(4.9mmol)を加え、アルゴン雰囲気下、内温50℃、200rpmで1時間撹拌した。その後、ヨードエタン9.2g(58.8mmol)を添加し、アルゴン雰囲気下、内温60℃で撹拌した。撹拌操作中、水酸化カリウムのペレットは元の大きさのままで反応溶液中に分散しており、HPLCで確認しながら14時間反応させた。化合物7aのリテンションタイムは19.72分であった。化合物7aのHPLCでのエリア面積は71%であった。得られた反応液から溶媒を減圧下で留去し、化合物7aの粗生成物と水酸化カリウムとの混合物を得た。
【0089】
[反応G:NEt-3IB・H2O(8b)の合成]
反応Fで用いた3頸フラスコに、エタノール50mLと水50mLを加えて、化合物7aの粗生成物と水酸化カリウムを溶解させた。その後、100rpmで撹拌を継続し、反応の進行をHPLCで確認しながら内温80℃で1時間反応させた。NEt-3IBのリテンションタイムは9.40分であった。反応終了を確認後、反応液を空冷したのち、反応液を500mLのナスフラスコに移し、エタノールを減圧下で留去した。これに濃塩酸10mLを加えてpHを4とし、析出した固体を濾別し、50mLの水で洗浄してから、25hPaに減圧しながら40℃で一晩乾燥させて、乾燥固体を得た。
【0090】
こうして得られた乾燥固体1.00gを、スターラーバー、ジムロート、温度計をつけた3頸フラスコにアルゴン雰囲気下で加えた。そこに、エタノール70質量%と水30質量%を含む混合溶媒を徐々に加え、アルゴン雰囲気下、還流条件で撹拌しながら完全に溶解させて飽和溶液を得た。その後引き続き400rpmで撹拌しながら30℃まで空冷して結晶を析出させた。析出後の結晶を濾別してから、20~25℃、常圧下で一晩乾燥させて付着水を除くことにより、1.03gの一水和物結晶8b(NEt-3IB・H2O)を、淡褐色の針状結晶として得た。再結晶前後の固体の組成と質量から計算した再結晶収率は98質量%であり、ほぼ定量的に一水和物結晶が得られた。得られた結晶の量に基づいて計算すると、原料化合物である2-イソプロピルアニリン(1)から、目的とする一水和物結晶8b(NEt-3IB・H2O)までの総収率は32%であり、収率良く目的結晶を得ることができた。
【0091】
得られた一水和物結晶の元素分析を行った結果、C:67.33質量%、H:7.90質量%、N:7.47質量%であり、NEt-3IB・H2Oの理論値であるC:67.35質量%、H:8.08質量%、N:7.48質量%とよく一致した。これらの結果をまとめて表3に示す。
【0092】
得られた一水和物結晶の粉末X線回折測定を行った。測定装置として、株式会社リガク製X線回折装置「RIGAKU-TTR III-MTA」を用いた。粉末とした結晶サンプルを0.7mmのホウ素ケイ酸ガラスキャピラリーに充填した。Cu-Kα線とLynxeye検出器、Johanssonモノクロメーターを装備した透過ジオメトリ型回折計に、粉末サンプルを充填したキャピラリーに装着した。Oxford Cryosystems Cryostreamを使用してデータ収集前にサンプルの温度を制御した。可変温度回折データは、150~380Kの範囲で測定した。5°≦2θ≦60°の角度範囲で、2°/分の速度で測定した。TOPAS-V5.0を用いてリートベルト解析による定量を行った。得られた粉末X線回折パターンを他の比較例の結果とともに
図1に示す。
図1中「70% EtOH w/o drying」と記載されているのが実施例1の粉末X線回折パターンである。また、ピークの角度(2θ)とその強度について表1に示す。
【0093】
【0094】
得られた一水和物結晶の熱分析(TG-DTA)曲線を
図2のAに示す。日立製作所製示差熱・熱重量同時測定装置「STA7200RV」を用い、窒素雰囲気下で30℃から300℃まで、5℃/分の昇温速度で測定した。DTA曲線では45~70℃の範囲で水の脱離に由来する吸熱ピークが観察され、TG曲線においても同じ温度範囲で3.87%の重量減少が確認された。これは水和した水の減少分であると考えられ、比較的低温で結晶水が離脱することが明らかになった。また、DTA曲線において結晶融解に由来するピークが192.1℃に観察された。さらに、株式会社ラウンドサイエンス製融点測定装置「RFS-10」で測定された融点は194.9~196.2℃であった。融点については表3に示す。
【0095】
得られた一水和物結晶の単結晶解析を、株式会社リガク製R-AXIS RAPID回折計を用い、グラファイト単色化Mo-Kα放射線を使用して測定した。結晶構造は直接法により解き、フーリエ変換により拡張し、F2については最小二乗法で最適化した。全ての非水素原子は異方性温度因子で精密化した。全ての水素原子は、環モデルを使用して最適化した。解析結果を
図3に示す。単位格子当たり、2分子のNEt-3IBに対して2分子の水分子を含んだ結晶であることが示されている。
【0096】
得られた一水和物結晶の水溶性を評価した。得られた一水和物結晶を正確に量り、15mL遠沈管に加えた。引き続き、富士フイルム和光純薬株式会社製のダルベッコ・リン酸緩衝溶液(D-PBS:pH7.4)を加えて10mMとなるようにした。30秒間ボルテックスし、引き続き3分間超音波照射を行った。その後37℃の電気水浴にて震盪し、2時間後、4時間後、24時間後に3mLずつ採取し、シリンジフィルターを通すことで未溶解分を除去して均一溶液とした。濾液中のNEt-3IBの濃度は株式会社島津製作所製紫外可視分光光度計「UV-1800」を用いて作成した検量線に基づいて計算した。実験を3回実施し、平均値から有意差検定を行った。結果を
図5に示す。比較例で得られた無水結晶に比べて、水溶性が格段に低下していることがわかる。
【0097】
比較例1
実施例1で得られた一水和物結晶8b(NEt-3IB・H2O)を、真空オーブン中において、温度40℃、圧力25hPaの条件で一晩減圧乾燥し、無水物結晶(NEt-3IB)を、亜麻色の針状結晶として得た。
【0098】
得られた無水物結晶の元素分析を行った結果、C:70.74質量%、H:7.55質量%、N:7.84質量%であり、NEt-3IBの理論値であるC:70.76質量%、H:7.92質量%、N:7.86質量%とよく一致した。結果をまとめて表3に示す。得られた無水物結晶の粉末X線回折パターンを
図1に示す。
図1中「70% EtOH w drying」と記載されているのが比較例1の粉末X線回折パターンである。また、ピークの角度(2θ)とその強度について表2に示す。一水和物結晶を乾燥して得られた無水物結晶におけるピークの角度(2θ)は、無水溶媒から析出させて得られた比較例2~4の無水物結晶におけるピークの角度(2θ)と一致した。
【0099】
【0100】
得られた無水物結晶の熱分析(TG-DTA)曲線を
図2のBに示す。実施例1とは異なり低温域での重量減少は観察されなかった。また、DTA曲線から得られる融点を表3に示す。得られた無水物結晶の単結晶解析結果を
図4に示す。また、水溶性評価結果を
図5に示す。
【0101】
比較例2
反応A~Fについては、実施例1と同様に行った。反応Gにおいて、エチルエステル(7a)をアルカリ条件下にて加水分解してから濃塩酸で中和し、析出した固体を濾別して水で洗浄してから乾燥するところまでは実施例1と同様に行った。乾燥して得られた固体の再結晶を、溶媒を富士フイルム和光純薬株式会社製エタノール(純度99.5%)に代えた以外は実施例1と同様にして行った。その結果0.79g(再結晶収率79%)の無水物結晶(NEt-3IB)を、淡褐色の針状結晶として得た。元素分析の結果と融点を表3に、粉末X線回折測定の結果を表2と
図1に、熱分析(TG-DTA)曲線を
図2のCに、水溶性の評価結果を
図5に、それぞれ示す。
【0102】
比較例3
比較例2において、エタノールの代わりに富士フイルム和光純薬株式会社製メタノール(純度99.5%)を用いた以外は比較例2と同様にして結晶を析出させた。その結果0.77g(再結晶収率77%)の無水物結晶(NEt-3IB)を、淡褐色の針状結晶として得た。元素分析、融点及び再結晶収率を表3に、粉末X線回折測定の結果を表2と
図1に、熱分析(TG-DTA)曲線を
図2のDに、それぞれ示す。
【0103】
比較例4
比較例2において、エタノールの代わりに富士フイルム和光純薬株式会社製イソプロパノール(純度99.5%)を用いた以外は比較例2と同様にして結晶を析出させた。その結果0.73g(再結晶収率73%)の無水物結晶(NEt-3IB)を、淡褐色の針状結晶として得た。元素分析、融点及び再結晶収率を表3に、粉末X線回折測定の結果を表2と
図1に、熱分析(TG-DTA)曲線を
図2のEに、それぞれ示す。
【0104】