(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054639
(43)【公開日】2024-04-17
(54)【発明の名称】光ファイバ被覆層形成装置および光ファイバ被覆層形成用型
(51)【国際特許分類】
G02B 6/44 20060101AFI20240410BHJP
G02B 6/255 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
G02B6/44 301B
G02B6/255
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160995
(22)【出願日】2022-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】寒河江 秀太
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 茂
【テーマコード(参考)】
2H036
2H250
【Fターム(参考)】
2H036MA11
2H036PA14
2H250BA06
2H250BA12
2H250BA18
2H250BA36
2H250BA37
2H250BB04
2H250BB05
2H250BB13
2H250BB14
2H250BB33
(57)【要約】
【課題】光ファイバの被覆層に凹部が形成されることによる保護機能の低下を抑えることができる光ファイバ被覆層形成装置および光ファイバ被覆層形成用型を提供する。
【解決手段】光ファイバ被覆層形成用型10は、第1の対向面3を有する上型1と、第2の対向面4を有する下型2と、を備える。第1の対向面3に、第1の溝5が形成されている。第2の対向面4に、第2の溝6が形成されている。第1の溝5と第2の溝6は、組み合されることによって、光ファイバ25に被覆層を形成する主成形空間9を構成する。幅方向Xは、主成形空間9の長手方向Yと、第1の対向面3および第2の対向面4の対向方向Zと、に直交する。第1の対向面3と第2の対向面4の少なくとも一方に、拡張凹部7,8が形成されている。拡張凹部7,8は、主成形空間9から幅方向Xに拡張された拡張空間17,18を構成する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバの外周面に被覆層を形成する光ファイバ被覆層形成装置であって、
光ファイバ被覆層形成用型と、前記光ファイバ被覆層形成用型に液状樹脂を供給する液状樹脂供給部と、前記光ファイバ被覆層形成用型に供給された前記液状樹脂に紫外線を照射する光源と、を備え、
前記光ファイバ被覆層形成用型は、
第1の対向面を有する上型と、
前記第1の対向面と対向する第2の対向面を有する下型と、を備え、
前記第1の対向面に、第1の溝が形成され、
前記第2の対向面に、第2の溝が形成され、
前記第1の溝と前記第2の溝は、組み合されることによって、前記光ファイバに前記被覆層を形成する主成形空間を構成し、
前記主成形空間の長手方向と、前記第1の対向面および前記第2の対向面の対向方向と、に直交する方向を幅方向として、
前記第1の対向面と前記第2の対向面の少なくとも一方に、前記主成形空間から前記幅方向に拡張された拡張空間を構成する拡張凹部が形成されている、
光ファイバ被覆層形成装置。
【請求項2】
前記上型および前記下型のうち一方は、紫外線透過性を有する型であり、
前記紫外線透過性を有する型が構成する前記拡張空間の上面または下面には、前記光源から照射される前記紫外線を遮る遮光膜が形成されている、
請求項1記載の光ファイバ被覆層形成装置。
【請求項3】
前記上型および前記下型は、紫外線透過性を有する型であり、
前記拡張空間の上面および下面のうち少なくとも一方には、前記光源から照射される紫外線を遮る遮光膜が形成されている、
請求項1記載の光ファイバ被覆層形成装置。
【請求項4】
前記上型または前記下型に、前記液状樹脂を前記主成形空間に導く導入口が形成され、
前記拡張空間は、前記長手方向に前記導入口から離れるほど幅が大きくなる、
請求項1記載の光ファイバ被覆層形成装置。
【請求項5】
前記拡張空間の高さは、2μm~50μmである、
請求項1記載の光ファイバ被覆層形成装置。
【請求項6】
光ファイバの外周面に被覆層を形成する光ファイバ被覆層形成用型であって、
第1の対向面を有する上型と、
前記第1の対向面と対向する第2の対向面を有する下型と、を備え、
前記第1の対向面に、第1の溝が形成され、
前記第2の対向面に、第2の溝が形成され、
前記第1の溝と前記第2の溝は、組み合されることによって、前記光ファイバに前記被覆層を形成する主成形空間を構成し、
前記主成形空間の長手方向と、前記第1の対向面および前記第2の対向面の対向方向と、に直交する方向を幅方向として、
前記第1の対向面と前記第2の対向面の少なくとも一方に、前記主成形空間から前記幅方向に拡張された拡張空間を構成する拡張凹部が形成されている、
光ファイバ被覆層形成用型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ被覆層形成装置および光ファイバ被覆層形成用型に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバに被覆層を形成するには、一対の型を備えた光ファイバ被覆層形成装置を用いることができる。一対の型には、それぞれモールド溝が形成されている。2つのモールド溝は組み合わされてモールド空間を構成する。モールド空間に液状樹脂を充てんし、硬化させることによって、光ファイバに被覆層を形成することができる(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の光ファイバ被覆層形成装置では、モールド空間に充てんされた液状樹脂中に気泡が残る場合がある。気泡が残ると、被覆層の表面に凹部(気泡痕)が形成される。凹部が形成された箇所は被覆層の厚さが薄いため、被覆層の保護機能が低くなる可能性がある。
【0005】
本発明の一態様は、光ファイバの被覆層に凹部が形成されることによる保護機能の低下を抑えることができる光ファイバ被覆層形成装置および光ファイバ被覆層形成用型を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、光ファイバの外周面に被覆層を形成する光ファイバ被覆層形成装置であって、光ファイバ被覆層形成用型と、前記光ファイバ被覆層形成用型に液状樹脂を供給する液状樹脂供給部と、前記光ファイバ被覆層形成用型に供給された前記液状樹脂に紫外線を照射する光源と、を備え、前記光ファイバ被覆層形成用型は、第1の対向面を有する上型と、前記第1の対向面と対向する第2の対向面を有する下型と、を備え、前記第1の対向面に、第1の溝が形成され、前記第2の対向面に、第2の溝が形成され、前記第1の溝と前記第2の溝は、組み合されることによって、前記光ファイバに前記被覆層を形成する主成形空間を構成し、前記主成形空間の長手方向と、前記第1の対向面および前記第2の対向面の対向方向と、に直交する方向を幅方向として、前記第1の対向面と前記第2の対向面の少なくとも一方に、前記主成形空間から前記幅方向に拡張された拡張空間を構成する拡張凹部が形成されている、光ファイバ被覆層形成装置を提供する。
【0007】
この構成によれば、主成形空間内の液状樹脂に気泡は残りにくい。したがって、被覆層に凹部(気泡痕)は形成されにくい。よって、光ファイバを保護する機能に優れた被覆層を形成することができる。
【0008】
前記上型および前記下型のうち一方は、紫外線透過性を有する型であり、前記紫外線透過性を有する型が構成する前記拡張空間の上面または下面には、前記光源から照射される前記紫外線を遮る遮光膜が形成されていることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、拡張空間内の液状樹脂に対する紫外線の照射量を抑えることができるため、拡張空間内の液状樹脂は硬化しにくい。よって、バリなどの不規則形状部分がない被覆層を形成することができる。
【0010】
前記上型および前記下型は、紫外線透過性を有する型であり、前記拡張空間の上面および下面のうち少なくとも一方には、前記光源から照射される紫外線を遮る遮光膜が形成されていることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、拡張空間内の液状樹脂に対する紫外線の照射量を抑えることができるため、拡張空間内の液状樹脂は硬化しにくい。よって、バリなどの不規則形状部分がない被覆層を形成することができる。
【0012】
前記光ファイバ被覆層形成装置は、前記上型または前記下型に、前記液状樹脂を前記主成形空間に導く導入口が形成され、前記拡張空間は、前記長手方向に前記導入口から離れるほど幅が大きくなっていてもよい。
【0013】
この構成によれば、拡張空間における液状樹脂の流れ抵抗を低くすることができる。したがって、液状樹脂の供給圧力を低くできる。よって、被覆層を容易に形成することができる。この構成によれば、導入口から近い範囲では、液状樹脂の流れ抵抗を抑えつつ幅を小さくできるため、拡張空間の容積を小さくできる。よって、液状樹脂の使用量を抑制できる。
【0014】
前記拡張空間の高さは、2μm~50μmであることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、拡張空間の高さを2μm以上とすることによって、液状樹脂を流通しやすくできる。拡張空間の高さを50μm以下とすることによって、被覆層にバリが形成されるのを抑えることができる。
【0016】
本発明の一態様は、光ファイバの外周面に被覆層を形成する光ファイバ被覆層形成用型であって、第1の対向面を有する上型と、前記第1の対向面と対向する第2の対向面を有する下型と、を備え、前記第1の対向面に、第1の溝が形成され、前記第2の対向面に、第2の溝が形成され、前記第1の溝と前記第2の溝は、組み合されることによって、前記光ファイバに前記被覆層を形成する主成形空間を構成し、前記主成形空間の長手方向と、前記第1の対向面および前記第2の対向面の対向方向と、に直交する方向を幅方向として、前記第1の対向面と前記第2の対向面の少なくとも一方に、前記主成形空間から前記幅方向に拡張された拡張空間を構成する拡張凹部が形成されている、光ファイバ被覆層形成用型を提供する。
【0017】
この構成によれば、主成形空間内の液状樹脂に気泡は残りにくい。したがって、被覆層に凹部(気泡痕)は形成されにくい。よって、光ファイバを保護する機能に優れた被覆層を形成することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様は、光ファイバの被覆層に凹部が形成されることによる保護機能の低下を抑えることができる光ファイバ被覆層形成装置および光ファイバ被覆層形成用型を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態の光ファイバ被覆層形成装置の分解斜視図である。
【
図2】実施形態の光ファイバ被覆層形成用型の断面図である。
【
図3】実施形態の光ファイバ被覆層形成用型の分解断面図である。
【
図4】実施形態の光ファイバ被覆層形成用型の拡大した断面図である。
【
図5】実施形態の光ファイバ被覆層形成用型の平面図である。
【
図6】実施形態の光ファイバ被覆層形成装置を用いた光ファイバの被覆層形成方法の例を説明する断面図である。
【
図7】前図に続く光ファイバの被覆層形成方法を説明する断面図である。
【
図8】比較形態の光ファイバ被覆層形成用型の断面図である。
【
図9】実施形態の光ファイバ被覆層形成装置を用いた光ファイバの被覆層形成方法の他の例を説明する断面図である。
【
図10】変形例の光ファイバ被覆層形成用型の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施形態に係る光ファイバ被覆層形成装置および光ファイバ被覆層形成用型について、図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
[光ファイバ被覆層形成装置]
図1は、実施形態に係る光ファイバ被覆層形成装置100の分解斜視図である。光ファイバ被覆層形成装置は、単に「被覆層形成装置」ともいう。
図2は、実施形態に係る光ファイバ被覆層形成用型10の断面図である。光ファイバ被覆層形成用型は、単に「被覆層形成用型」ともいう。
図3は、被覆層形成用型10の分解断面図である。
図4は、被覆層形成用型10の拡大した断面図である。
図5は、被覆層形成用型10の平面図である。
【0022】
XYZ直交座標系を設定して被覆層形成装置100の各構成の位置関係を説明する。Y軸方向は、第1の溝5の長手方向に沿う方向である。Z軸方向は、第1の対向面3と第2の対向面4との対向方向である。X軸方向は、Y軸方向とZ軸方向の両方に直交する方向である。Y軸方向は長手方向Yである。Z軸方向は対向方向Zである。X軸方向は幅方向Xである。長手方向Yに沿う一方向を「+Y方向」と称する。+Y方向とは反対の方向を「-Y方向」と称する。対向方向Zは高さ方向(上下方向)である。幅方向Xに沿う一方向を「+X方向」と称する。+X方向とは反対の方向を「-X方向」と称する。幅方向Xと長手方向Yとに沿う平面をXY平面という。
【0023】
図1に示すように、被覆層形成装置100は、被覆層形成用型10と、液状樹脂供給部101と、一対の光源102(
図6参照)と、を備える。本実施形態では、被覆層を除去した光ファイバに、再び被覆層(再被覆層)を形成することを想定する。再被覆層は、被覆層の一例である。
【0024】
液状樹脂供給部101は、再被覆層26の材料となる未硬化の液状樹脂を被覆層形成用型10に供給する。液状樹脂は、紫外線硬化型の液状樹脂である。紫外線硬化型の液状樹脂としては、例えば、ウレタンアクリレート系、エポキシアクリレート系、ポリブタジェンアクリレート系、シリコーンアクリレート系、ポリエステルアクリレート系などが挙げられる。光ファイバに再び被覆層(再被覆層)を形成する場合は、液状樹脂のことをリコート樹脂ともいう。
【0025】
光源102は、被覆層形成用型10内の液状樹脂に、硬化光としての紫外線を照射する。一対の光源102のうち一方(第1の光源102A)は上型1の背面(第1の対向面3とは反対側の面)から離れた位置に設けられる。一対の光源102のうち他方(第2の光源102B)は下型2の背面(第2の対向面4とは反対側の面)から離れた位置に設けられる(
図6参照)。光源102が発する光は、上型1および下型2の背面側から照射され、被覆層形成用型10内の液状樹脂を硬化させる。
【0026】
[光ファイバ被覆層形成用型]
図1~
図3に示すように、被覆層形成用型10は、上型1(第1の型)と、下型2(第2の型)とを備える。上型1と下型2の少なくとも一方は、上下動可能である。上型1および下型2は、第1の対向面3と第2の対向面4とを重ね合わせた状態(閉状態)(
図2参照)と、第1の対向面3と第2の対向面4とを離間させた状態(開状態)(
図3参照)とを切り替え可能である。被覆層形成用型は、再被覆層形成用型、またはリコート用型ともいう。
【0027】
上型1および下型2は、主成形空間9内の液状樹脂を硬化させる紫外線が透過可能な材質で形成されている。上型1および下型2の材質としては、例えば、石英ガラスなどが挙げられる。上型1および下型2は、例えば、50%以上の紫外線透過率を有する。上型1および下型2は、紫外線透過性を有する型である。紫外線透過性を有する型は、光源102から照射された紫外線が透過する材質で形成されている。
【0028】
図4に示すように、上型1は、XY平面に沿う第1の対向面3を有する。第1の対向面3には、第1の溝5と、第1の拡張凹部7と、第2の拡張凹部8とが形成されている。第1の溝5は、再被覆層26(
図1参照)に応じた形状を有する。第1の溝5の断面形状(長手方向Yに直交する断面の形状)は、半円形状である。第1の溝5の+X方向側の側縁を第1の側縁5aという。第1の溝5の-X方向側の側縁を第2の側縁5bという。
【0029】
下型2は、XY平面に沿う第2の対向面4を有する。下型2は、第2の対向面4を第1の対向面3に向けて配置される。第2の対向面4には、長手方向Yに沿う第2の溝6が形成されている。第2の溝6は、第1の溝5に対向する位置に形成されている。第2の溝6は、再被覆層26(
図1参照)に応じた形状を有する。第2の溝6の断面形状(長手方向Yに直交する断面の形状)は、半円形状である。第2の溝6の内径は、第1の溝5の内径と同じである。
【0030】
図2に示すように、上型1と下型2とが閉じた状態のとき、第1の溝5と第2の溝6とは、組み合されて主成形空間9を構成する。主成形空間9は、再被覆層26(
図1参照)に応じた形状を有する。主成形空間9は、長手方向Yに沿う中心軸を有する円柱状の空間である。主成形空間9は、液状樹脂を充てんし、硬化させて再被覆層26に成形するための空間である。主成形空間9は、被覆層形成の対象となる光ファイバ25を収容可能である。主成形空間9の内径は、光ファイバ25の外径より大きい。
【0031】
図3に示すように、第1の拡張凹部7は、第1の溝5に対して+X方向側に、第1の溝5に連なって形成されている。第1の拡張凹部7は、長手方向Yに沿う帯状の溝である(
図1参照)。
【0032】
図4に示すように、第1の拡張凹部7の内面7a(第1の内面)は、主面7bと、端面7cとを有する。主面7bは、第1の溝5の第1の側縁5aからXY平面に沿って+X方向に拡がる。端面7cは、主面7bの+X方向側の外側縁7dに形成されている。端面7cは、例えば、外側縁7dから拡幅方向(+X方向)に徐々に下降する傾斜面である。第1の対向面3に対する第1の拡張凹部7の深さ(第1の対向面3と主面7bとの高低差)は、第1の溝5の深さより小さい。
【0033】
第1の拡張凹部7の内面7aは、第1の拡張空間17の上面の一例である。第2の対向面4のうち、第1の拡張凹部7の内面7aに対向する領域は内面4a(第1の対向内面)である。内面4aは、第1の拡張空間17の下面の一例である。
【0034】
図2に示すように、第1の拡張凹部7は、上型1と下型2とが閉じた状態のとき、第2の対向面4との間に第1の拡張空間17を構成する。第1の拡張空間17は、主成形空間9から幅方向(+X方向)に拡張された空間である。第1の拡張空間17は、主成形空間9と連通する。第1の拡張空間17は、第1の拡張凹部7の内面7aと、下型2の内面4aとによって形成された空間である(
図4参照)。第1の拡張凹部7の内面7aは、上型1において第1の拡張空間17に臨む領域である。下型2の内面4aは、下型2において第1の拡張空間17に臨む領域である。
【0035】
図3に示すように、第2の拡張凹部8は、第1の溝5に対して-X方向側に、第1の溝5に連なって形成されている。第2の拡張凹部8は、長手方向Yに沿う帯状の溝である(
図1参照)。
【0036】
図4に示すように、第2の拡張凹部8の内面8a(第2の内面)は、主面8bと、端面8cとを有する。主面8bは、第1の溝5の第2の側縁5bからXY平面に沿って-X方向に拡がる。端面8cは、主面8bの-X方向側の外側縁8dに形成されている。端面8cは、例えば、外側縁8dから拡幅方向(-X方向)に徐々に下降する傾斜面である。第1の対向面3に対する第2の拡張凹部8の深さ(第1の対向面3と主面8bとの高低差)は、第1の溝5の深さより小さい。
【0037】
第2の拡張凹部8の内面8aは、第2の拡張空間18の上面の一例である。第2の対向面4のうち、第2の拡張凹部8の内面8aに対向する領域は内面4b(第2の対向内面)である。内面4bは、第2の拡張空間18の下面の一例である。
【0038】
第2の拡張凹部8の幅は、第1の拡張凹部7の幅と同じであってよい。第2の拡張凹部8の深さは、第1の拡張凹部7の深さと同じであってよい。
【0039】
図2に示すように、第2の拡張凹部8は、上型1と下型2とが閉じた状態のとき、第2の対向面4との間に第2の拡張空間18を構成する。第2の拡張空間18は、主成形空間9から幅方向(-X方向)に拡張された空間である。第2の拡張空間18は、主成形空間9と連通する。第2の拡張空間18は、第2の拡張凹部8の内面8aと、下型2の内面4bとによって形成された空間である(
図4参照)。第2の拡張凹部8の内面8aは、上型1において第2の拡張空間18に臨む領域である。下型2の内面4bは、下型2において第2の拡張空間18に臨む領域である。
【0040】
第1の拡張凹部7および第2の拡張凹部8は、主成形空間9から幅方向X(+X方向および-X方向)に拡張された第1の拡張空間17および第2の拡張空間18を構成する。
本実施形態の被覆層形成用型10では、主成形空間9から幅方向Xの両側に拡張された拡張空間17,18を有しているが、拡張空間の拡張方向は、幅方向Xの両側に限らず、片側であってもよい。すなわち、被覆層形成用型は、幅方向Xの少なくとも一方側(片側)に拡張された拡張空間を有していればよい。「幅方向Xの片側」は、+X方向と-X方向のうちいずれかである。被覆層形成用型は、例えば、第1の対向面3に、第1の拡張凹部7と第2の拡張凹部8のうち一方のみが形成されている構成を採用してもよい。被覆層形成用型は、第1の対向面と第2の対向面のうち少なくとも一方に、幅方向X(幅方向Xの片側または両側)に拡張された拡張空間を構成する拡張凹部が形成されていればよい。
【0041】
第1の拡張空間17の高さ(主面7bと第2の対向面4との高低差)、および第2の拡張空間18の高さ(主面8bと第2の対向面4との高低差)は、好ましくは2μm~50μmの範囲であり、更に好ましくは20μm~40μmの範囲である。拡張空間17,18の高さを2μm以上とすることによって、液状樹脂を流通しやすくできる。拡張空間17,18の高さを20μm以上とすることによって、更に液状樹脂を流通しやすくできる。拡張空間17,18の高さを50μm以下とすることによって、光源102(
図6参照)からの紫外線は拡張空間17,18内の液状樹脂に照射されにくくなる。そのため、拡張空間17,18内の液状樹脂が硬化することにより再被覆層26にバリが形成されるのを抑えることができる。拡張空間17,18の高さを40μm以下にすれば、バリが形成されるのを更に抑えることができる。
【0042】
図5に示すように、第1の拡張凹部7および第2の拡張凹部8は、長手方向Yに一定の幅(均一な幅)を有する。この構成によれば、拡張空間17,18の最大幅を小さくできるため、被覆層形成用型10の小型化に有利となる。
【0043】
第1の拡張凹部7および第2の拡張凹部8は、例えば、エッチングなどによって第1の対向面3および第2の対向面4に形成することができる。
【0044】
図3に示すように、第1の拡張凹部7の内面7aと、第2の拡張凹部8の内面8aと、第1の対向面3とには、第1の遮光膜15が形成されている。第1の遮光膜15は、第1の光源102A(
図6参照)から拡張空間17,18に照射される紫外線を遮ることができる。第1の遮光膜15は、第1の溝5の内面には形成されていない。
【0045】
第2の対向面4には、第2の遮光膜16が形成されている。第2の遮光膜16は、第2の光源102B(
図6参照)から拡張空間17,18に照射される紫外線を遮ることができる。第2の遮光膜16は、第2の溝6の内面には形成されていない。
【0046】
第1の拡張凹部7の内面7a(
図4参照)、第2の拡張凹部8の内面8a(
図4参照)、および第2の対向面4に遮光膜が形成されているため、遮光膜は、拡張空間17,18の内面の全領域を覆う。
第1の遮光膜15および第2の遮光膜16は、例えば、クロム(Cr)などの金属で形成される。第1の遮光膜15および第2の遮光膜16は、イオンプレーティングなどにより形成される。
【0047】
図1に示すように、上型1には、導入部11が形成されている。導入部11は、未硬化の液状樹脂を主成形空間9に導入するための流路である。導入部11は、流入口12と、導入口13とを有する。流入口12は、液状樹脂供給部101から導入部11に液状樹脂を受け入れる。導入口13は、導入部11内の液状樹脂を主成形空間9に導く。導入口13は、主成形空間9の長手方向Yの中間位置に形成されている。導入口13は、例えば、主成形空間9の長手方向Yの中央に形成されている。導入口13は、
図1のように主成形空間9の長手方向Yの中央に限らず、主成形空間9の長手方向Yのどの位置に形成されていてもよい。導入口13は、例えば、主成形空間9の長手方向Yの中央より端寄りの位置に形成されていてもよい。
【0048】
[光ファイバの被覆層形成方法]
次に、被覆層形成装置100を用いた光ファイバの被覆層形成方法の例について説明する。
図6は、被覆層形成装置100を用いた光ファイバの被覆層形成方法の例を説明する断面図である。
図7は、前図に続く光ファイバの被覆層形成方法を説明する断面図である。
【0049】
図1に示す光ファイバ25は、被覆層形成の対象となる裸ファイバである。光ファイバ25は、光ファイバ21から口出しした裸ファイバ23と、光ファイバ22から口出しした裸ファイバ24とを含む。裸ファイバ23と裸ファイバ24とは、融着により突き合わせ接続されている。本実施形態では、被覆層が除去された裸ファイバである光ファイバ25に再被覆層を形成することを想定する。
【0050】
なお、被覆層形成の対象となる光ファイバは、突き合わせ接続された裸ファイバに限らない。被覆層形成の対象となる光ファイバとしては、例えば、ファイバーブラッググレーティング(Fiber Bragg Grating:FBG)を有する光ファイバを挙げることができる。被覆層形成の対象となる光ファイバは、修復などのために被覆層を除去した光ファイバであってもよい。被覆層形成の対象となる光ファイバは、裸ファイバに限らず、被覆層を有する光ファイバであってもよい。
【0051】
図2に示すように、上型1と下型2とを閉じる。第1の溝5と第2の溝6とによって主成形空間9が形成される。主成形空間9に光ファイバ25を挿通させる。第1の拡張凹部7と第2の対向面4との間に、第1の拡張空間17が形成される。第2の拡張凹部8と第2の対向面4との間に、第2の拡張空間18が形成される。
【0052】
図1に示すように、液状樹脂供給部101から流入口12を通して導入部11に未硬化の液状樹脂(紫外線硬化型樹脂)を供給する。液状樹脂は、導入口13を通して主成形空間9(
図2参照)に供給される。
【0053】
図6に示すように、主成形空間9に供給された液状樹脂30は、主成形空間9に行き渡る。液状樹脂30は、溝5,6の内周面と光ファイバ25の外周面との隙間に充てんされる。液状樹脂30は、光ファイバ25の外周面を全周にわたって覆う。液状樹脂30の一部は、主成形空間9から第1の拡張空間17および第2の拡張空間18に流入する。液状樹脂30は、導入口13から主成形空間9および拡張空間17,18の長手方向Yの両方(+Y方向および-Y方向:
図5における左右方向)に流れる。
【0054】
第1の光源102Aおよび第2の光源102Bによって、紫外線を被覆層形成用型10に照射する。第1の光源102Aからの紫外線は、上型1を透過して主成形空間9内の液状樹脂30に照射される。第1の光源102Aからの紫外線は、主に、第1の溝5内の液状樹脂30に照射される。第2の光源102Bからの紫外線は、下型2を透過して主成形空間9内の液状樹脂30に照射される。第2の光源102Bからの紫外線は、主に、第2の溝6内の液状樹脂30に照射される。
【0055】
第1の光源102Aからの紫外線の一部は、光ファイバ25を透過して第2の溝6内の液状樹脂30に照射されてもよい。第2の光源102Bからの紫外線の一部は、光ファイバ25を透過して第1の溝5内の液状樹脂30に照射されてもよい。
【0056】
主成形空間9内の液状樹脂30は、紫外線の照射により硬化して再被覆層26(
図7参照)となる。再被覆層26は、光ファイバ25の外周面を全周にわたって覆う。
【0057】
第1の拡張空間17および第2の拡張空間18の内面には遮光膜15,16が形成されているため、第1の光源102Aから拡張空間17,18に照射される紫外線は、第1の遮光膜15によって遮られる。第2の光源102Bから拡張空間17,18に照射される紫外線は、第2の遮光膜16によって遮られる。そのため、拡張空間17,18内の液状樹脂30には、紫外線はほとんど照射されない。したがって、拡張空間17,18内では、液状樹脂30の硬化は進行しにくい。
【0058】
図7に示すように、上型1と下型2とを離間させると、再被覆層26が形成された光ファイバ25を取り出すことができる。拡張空間17,18内の液状樹脂30は未硬化であるため、再被覆層26は、拡張空間17,18内の液状樹脂30から分離される。
【0059】
[実施形態の被覆層形成装置および被覆層形成用型が奏する効果]
本実施形態の被覆層形成装置100は、被覆層形成用型10の第1の対向面3に、拡張凹部7,8が形成されている。拡張凹部7,8は、主成形空間9から幅方向Xに拡張された拡張空間17,18を構成する。そのため、主成形空間9内の液状樹脂30に気泡は残りにくい。したがって、再被覆層26に凹部(気泡痕)が形成されにくくすることができる。よって、光ファイバ25を保護する機能に優れた再被覆層26を形成することができる。再被覆層26は凹部がないため、外観の点でも好ましい。
【0060】
主成形空間9に気泡が残りにくいことを、
図8および
図9を参照して説明する。
図8は、比較形態の被覆層形成用型210の断面図である。
図8に示すように、被覆層形成用型210は、上型201と下型2とを備える。上型201および下型2には拡張凹部が形成されていない。そのため、被覆層形成用型210は、拡張空間を有していない。液状樹脂30内に気泡40が生じた場合、気泡40は、2つの型201,2の合わせ目の近傍に残りやすい。
【0061】
図9は、本実施形態の被覆層形成装置100を用いた光ファイバの被覆層形成方法の他の例を説明する断面図である。被覆層形成用型10は、拡張空間17,18を有するため、仮に気泡40が生じたとしても、気泡40は拡張空間17,18内に形成される。よって、気泡40は主成形空間9内に残りにくい。
【0062】
本実施形態の被覆層形成装置100は、拡張空間17,18を有するため、被覆層形成用型10の内部空間の断面積(長手方向Yに直交する断面の面積)を大きくすることができる。そのため、液状樹脂30の流れ抵抗を小さくできる。したがって、液状樹脂30の供給圧力を低くできる。よって、再被覆層26を容易に形成することができる。
【0063】
被覆層形成装置100は、液状樹脂30の供給圧力を低くできるため、液状樹脂30が主成形空間9および拡張空間17,18の外に漏出するのを抑えることができる。したがって、使用後の被覆層形成用型10を清掃する際に、漏出した液状樹脂を除去する手間を少なくできる。よって、清掃作業が容易となる。
【0064】
被覆層形成装置100では、第1の光源102Aからの紫外線が透過する上型1における拡張空間17,18の上面(内面7a,8a)に、第1の遮光膜15が形成されている(
図4参照)。第2の光源102Bからの紫外線が透過する下型2における拡張空間17,18の下面(内面4a,4b)に、第2の遮光膜16が形成されている(
図4参照)。そのため、拡張空間17,18内の液状樹脂30に対する紫外線の照射量を抑えることができる。したがって、拡張空間17,18内の液状樹脂30は硬化しにくい。よって、バリなどの不規則形状部分がない再被覆層26を形成することができる。
【0065】
被覆層形成装置100では、拡張空間17,18の上面(内面7a,8a)と下面(内面4a,4b)にそれぞれ遮光膜15,16が形成されているため(
図4参照)、拡張空間17,18内の液状樹脂30に対する紫外線の照射量を抑えることができる。よって、バリなどの不規則形状部分がない再被覆層26を形成することができる。
【0066】
本実施形態の被覆層形成用型10は、第1の対向面3に、拡張凹部7,8が形成されている。拡張凹部7,8は、主成形空間9から幅方向Xに拡張された拡張空間17,18を構成する。そのため、主成形空間9内の液状樹脂30に気泡は残りにくい。したがって、再被覆層26に凹部(気泡痕)が形成されにくくすることができる。よって、光ファイバ25を保護する機能に優れた再被覆層26を形成することができる。再被覆層26は凹部がないため、外観の点でも好ましい。
【0067】
[被覆層形成用型](変形例)
図10は、変形例の被覆層形成用型110の平面図である。
図10に示すように、第1の拡張空間117および第2の拡張空間118は、長手方向Yに導入口13から離れるほど幅が大きくなる。詳しくは、拡張空間117,118は、それぞれ、導入口13から+Y方向に向かって徐々に幅が大きくなる。拡張空間117,118は、それぞれ、導入口13から-Y方向に向かって徐々に幅が大きくなる。被覆層形成用型110は、拡張空間117,118以外の構成については、
図5等に示す被覆層形成用型10と同様である。
【0068】
一般に、型の内部空間を流れる液状樹脂は、導入口から近い範囲で流れ抵抗が低く、導入口から遠い範囲で流れ抵抗が高くなりやすい。これに対し、被覆層形成用型110は、導入口13から離れるほど幅が大きくなる拡張空間117,118を有する。そのため、導入口13から遠い範囲で、拡張空間117,118の断面積を大きくし、液状樹脂の流れ抵抗を低くすることができる。したがって、液状樹脂の供給圧力を低くできる。よって、再被覆層26を容易に形成することができる。拡張空間117,118は、導入口13から近い範囲では、液状樹脂の流れ抵抗を抑えつつ幅を小さくできるため、拡張空間117,118の容積を小さくできる。よって、液状樹脂の使用量を抑制できる。
【0069】
本発明は前述の例に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
前述の実施形態では、被覆層を除去した光ファイバ25に、再び被覆層(再被覆層26)を形成することを想定したが、実施形態の被覆層形成装置は、再被覆層ではない被覆層(初めて形成される被覆層)の形成に用いることもできる。
【0070】
図2等に示す被覆層形成用型10では、拡張凹部7,8は、上型1の第1の対向面3に形成されているが、被覆層形成用型の構成はこれに限定されない。拡張凹部は、第1の対向面と第2の対向面のうち少なくとも一方に形成されていればよい。すなわち、第1の拡張凹部および第2の拡張凹部は、第1の対向面と第2の対向面のうち第2の対向面のみに形成されていてもよい。第1の拡張凹部および第2の拡張凹部は、第1の対向面と第2の対向面との両方に形成されていてもよい。
【0071】
被覆層形成用型10では、上型1および下型2は、いずれも紫外線が透過する材質で形成された、紫外線透過性を有する型でもよいし、いずれか一方のみが紫外線透過性を有する型であってもよい。紫外線透過性を有する型の拡張空間に臨む領域には遮光膜が形成される。例えば、上型が紫外線透過性を有する型であって下型が紫外線透過性を有さない型である場合、少なくとも上型における拡張空間に臨む領域には遮光膜が形成される。下型が紫外線透過性を有する型であって上型が紫外線透過性を有さない型である場合、少なくとも下型における拡張空間に臨む領域には遮光膜が形成される。
【0072】
遮光膜15,16は、拡張空間17,18の上面(内面7a,8a)と下面(内面4a,4b)の両方に形成されているが、遮光膜は、拡張空間の上面と下面のうち少なくとも一方に形成されていてもよい。遮光膜が拡張空間の上面のみに形成されている場合は、
図6における2つの光源102のうち第1の光源102Aのみを使用することが望ましい。遮光膜が拡張空間の下面のみに形成されている場合は、
図6における2つの光源102のうち第2の光源102Bのみを使用することが望ましい。
【0073】
前述の例では、
図6における2つの光源102の両方を使用したが、2つの光源102のうち一方のみを使用して紫外線の照射を行ってもよい。
実施形態の被覆層形成用型は、遮光膜がない構成も含む。遮光膜がない場合は、拡張空間内の液状樹脂も硬化する可能性があるが、拡張空間で硬化した液状樹脂は、成形後に被覆層から切除することができる。
【符号の説明】
【0074】
1…上型、2…下型、3…第1の対向面、4…第2の対向面、4a,4b…内面(下面)、5…第1の溝、6…第2の溝、7…第1の拡張凹部、7a…内面(上面)、8…第2の拡張凹部、8a…内面(上面)、9…主成形空間、10,110…光ファイバ被覆層形成用型、13…導入口、15…第1の遮光膜、16…第2の遮光膜、17,117…第1の拡張空間、18,118…第2の拡張空間、25…光ファイバ、26…再被覆層(被覆層)、30…液状樹脂、100…光ファイバ被覆層形成装置、101…液状樹脂供給部、102…光源、X…幅方向、Y…長手方向、Z…対向方向