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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005464
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】定着装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
G03G15/20 515
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105653
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】西村 拓也
(72)【発明者】
【氏名】宗田 真
(72)【発明者】
【氏名】田口 和奈
(72)【発明者】
【氏名】加藤 泰禎
(72)【発明者】
【氏名】畠山 真一
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033AA06
2H033AA21
2H033AA23
2H033BA25
2H033BA26
2H033BB02
2H033BB03
2H033BB05
2H033BB06
2H033BB13
2H033BB14
2H033BB15
2H033BB18
2H033BB29
2H033BB30
2H033BB33
2H033BB34
2H033BE00
2H033CA36
2H033CA39
(57)【要約】
【課題】定着装置における加圧ローラの弾性層の熱膨張によるニップ幅の変化量を小さくする。
【解決手段】定着装置は、画像形成装置の装置本体に取り付けられ、シートを熱定着する。定着装置は、ヒータ10と、ヒータ10により加熱される加熱回転体(加熱ユニット2)と、加圧ローラ3とを備える。加圧ローラ3は、加熱回転体(加熱ユニット2)との間でシートを挟持する。加圧ローラ3は、シャフト3Aと、シャフト3Aに被覆された弾性層3Bとを有する。弾性層3Bの厚さTは、1mm≦T≦3mmである。加圧ローラ3の表面の硬度H(アスカーC)は、60°≦H≦67°である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置の装置本体に取り付けられ、シートを熱定着する定着装置であって、
ヒータと、
前記ヒータにより加熱される加熱回転体と、
前記加熱回転体との間でシートを挟持する加圧ローラであって、シャフトと、前記シャフトに被覆された弾性層と、を有する加圧ローラと、を備え、
前記弾性層の厚さTは、1mm≦T≦3mmであり、
前記加圧ローラの表面の硬度H(アスカーC)は、60°≦H≦67°であることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記加圧ローラの外径DPは、20mm≦DP≦22mmであることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記弾性層は、シリコンゴムからなることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項4】
前記弾性層は、表面にフッ素樹脂からなる表層を有することを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項5】
前記加熱回転体は、回転することで前記加圧ローラと共に前記シートを搬送する無端状のベルトであることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項6】
前記ベルトの前記ベルトの外周長LBは、75mm≦LB≦82mmであることを特徴とする請求項5に記載の定着装置。
【請求項7】
前記加熱回転体と前記加圧ローラがニップ部を形成した場合における、前記弾性層のひずみASは、25%≦AS≦60%であることを特徴とする請求項5に記載の定着装置。
【請求項8】
前記ベルトは、
ポリイミドからなる基層と、
前記基層の外側に被覆された、シリコンゴムからなる弾性層と、
前記弾性層の表面に位置する、フッ素樹脂からなる表層と、を有することを特徴とする請求項5に記載の定着装置。
【請求項9】
前記加熱回転体と前記加圧ローラとの一方を他方に向けて付勢するバネをさらに備え、
前記バネにより、前記加熱回転体と前記加圧ローラで前記シートを挟持する場合、前記加圧ローラの軸方向における単位長さ当たりの荷重SLは、2.8N/cm≦SL≦8.0N/cmであることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項10】
前記加圧ローラは、駆動源によって駆動され、
前記加熱回転体は、前記加圧ローラに従動して回転することを特徴とする請求項5に記載の定着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートにトナー像を定着させる定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置の装置本体内に配置され、シートにトナー像を定着させる定着装置が知られている(特許文献1参照)。この定着装置は、加熱ユニットと加圧ローラとを有している。シートは、加熱ユニットと加圧ローラとの間を通過するときに、加熱および加圧される。これにより、シート上のトナー像がシートに熱定着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-194541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
定着装置の小型化が求められている。定着装置を小型化するために、加圧ローラを小さくすると適切なニップ幅が得られないので、小型化しても適切なニップ幅を確保できるように弾性層を厚くすることが考えられる。しかしながら、加圧ローラの弾性層を厚くすると、弾性層の熱膨張の影響を受けやすく、ニップ幅の変化量が大きくなる。ニップ幅の変化量が大きくなると、例えば、加圧ローラと共にニップを形成する加熱ユニットのベルトがスリップしやすくなり、シートにしわが発生する可能性がある。このように、シートにしわが発生すると、トナー像を適切に定着することができず、画質不良が起こる可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、加圧ローラの弾性層の熱膨張によるニップ幅の変化量を小さくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明に係る定着装置は、画像形成装置の装置本体に取り付けられ、シートを熱定着する。定着装置は、ヒータと、ヒータにより加熱される加熱回転体と、加圧ローラと、を備える。加圧ローラは、加熱回転体との間でシートを挟持する。加圧ローラは、シャフトと、シャフトに被覆された弾性層と、を有する。
弾性層の厚さTは、1mm≦T≦3mmである。
加圧ローラの表面の硬度H(アスカーC)は、60°≦H≦67°である。
【0007】
この構成によれば、定着装置によってシートを熱定着する場合に、適切なニップ幅を確保するとともに、加圧ローラの弾性層の熱膨張の影響が小さくなる。このため、ニップ幅の変化量を抑制され、加圧ローラの弾性層が熱膨張しても、適切な熱定着をすることができるとともに、適切なシート搬送をすることができる。
【0008】
また、前記した定着装置において、加圧ローラの外径DPは、20mm≦DP≦22mmである構成としてもよい。
【0009】
この構成によれば、加圧ローラを小型化することで、定着装置を小型化できる。
【0010】
また、前記した定着装置において、弾性層はシリコンゴムからなる構成としてもよい。
【0011】
また、前記した定着装置において、弾性層は、表面にフッ素樹脂からなる表層を有する構成としてもよい。
【0012】
この構成によれば、弾性層の表面にフッ素樹脂からなる表層があることによって、加圧ローラの耐久性が向上する。
【0013】
また、前記した定着装置において、加熱回転体は、回転することで加圧ローラと共にシートを搬送する無端状のベルトである構成としてもよい。
【0014】
また、前記した定着装置において、ベルトの外周長LBは、75mm≦LB≦82mmである構成としてもよい。
【0015】
この構成によれば、加熱回転体を小型化することで、定着装置を小型化できる。
【0016】
また、前記した定着装置において、加熱回転体と加圧ローラがニップ部を形成した場合における、弾性層のひずみASは、25%≦AS≦60%である構成としてもよい。
【0017】
また、前記した定着装置において、ベルトは、ポリイミドからなる基層と、基層の外側に被覆された、シリコンゴムからなる弾性層と、弾性層の表面に位置する、フッ素樹脂からなる表層と、を有する構成としてもよい。
【0018】
また、前記した定着装置において、加熱回転体と加圧ローラとの一方を他方に向けて付勢するバネをさらに備え、バネにより、加熱回転体と加圧ローラでシートを挟持する場合、加圧ローラの軸方向における単位長さ当たりの荷重SLは、2.8N/cm≦SL≦8.0N/cmである
【0019】
また、前記した定着装置において、加圧ローラは駆動源によって駆動され、加熱回転体は加圧ローラに従動して回転する構成としてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、加圧ローラの弾性層の熱膨張によるニップ幅の変化量を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態に係る定着装置を示す断面図(a)と、ヒータ周りを拡大して示す断面図(b)である。
図2】ニップ圧変更機構を示す断面図であり、ニップ圧が第1ニップ圧となる状態を示す断面図である。
図3】ニップ圧変更機構を示す断面図であり、ニップ圧が第2ニップ圧となる状態を示す断面図である。
図4】ニップしていない状態の加熱ユニットと、加圧ローラを示す断面図である。
図5】加熱ユニットと加圧ローラがニップしていない状態を示す断面図(a)と、ニップしている状態を示す断面図(b)であり、ひずみASを説明する図である。
図6】実施例1~10および比較例1~3の構成および評価を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1(a)に示すように、定着装置1は、シートSにトナー像を定着させる装置である。定着装置1は、プリンタなどの画像形成装置の装置本体に取り付けられる。定着装置1は、加熱回転体の一例としての加熱ユニット2と、加圧ローラ3と、フレーム4とを備える。
【0023】
加熱ユニット2は、ヒータ10と、ホルダ20と、熱伝導部材30と、ステイSTと、ベルトBLとを有する。ヒータ10は、ベルトBLを介してシートSを加熱する。
【0024】
図1(b)に示すように、ヒータ10は、基板11と、基板11に支持された抵抗発熱体12と、カバー13とを有する。基板11は、酸化アルミニウムを材料とするセラミックの細長い長方形の板からなる。ヒータ10は、いわゆるセラミックヒータである。抵抗発熱体12は、基板11の一方の面に、印刷により形成されている。カバー13は、抵抗発熱体12を覆っている。カバー13は、例えば、ガラスからなる。
【0025】
図1(a)に示すように、ホルダ20は、ヒータ10を支持するとともに、ベルトBLを案内する機能を有する。ホルダ20は、例えば、樹脂からなる。
【0026】
ステイSTは、ホルダ20を支持する。ステイSTは、例えば金属からなる。
【0027】
ベルトBLは、無端状である。ベルトBLは、ホルダ20に案内されながら、ヒータ10の周りを回転する。ベルトBLは、外周面と内周面を有する。外周面は、加圧ローラ3または加熱対象となるシートと接触する。内周面は、ヒータ10と接触する。
ベルトBLは、回転することで加圧ローラ3と共にシートSを搬送する。
【0028】
図4(a)に示すように、ベルトBLは、基層B1と、弾性層B2と、表層B3とを有する。基層B1は、例えばポリイミドからなる。弾性層B2は、基層B1の外側に被覆されている。弾性層B2は、例えば、シリコンゴムからからなる。表層B3は、弾性層B2の外側に被覆され、弾性層B2の表面に位置する。表層B3は、例えば、フッ素樹脂からなる。
【0029】
ベルトBLを円筒形にした場合における、ベルトBLの外径DBは、24mm≦DB≦26mmであるのが望ましい。また、ベルトBLの外周長LBは、75mm≦LB≦82mmであるのが望ましい。
【0030】
図1(b)に戻り、熱伝導部材30は、ヒータ10の長手方向に熱を伝導して、ヒータ10の温度を、長手方向に均一化するための部材である。熱伝導部材30は、板状部材であり、ヒータ10とホルダ20との間に位置する。加熱ユニット2が加圧ローラ3との間でシートSを挟むときには、熱伝導部材30は、ヒータ10とホルダ20により挟まれる。熱伝導部材30は、例えばアルミニウムからなる。
【0031】
加圧ローラ3は、第3軸X3まわりに回転可能なローラである。加圧ローラ3は、ベルトBLとの間でシートSを挟持する。加圧ローラ3は、回転することでベルトBLと共にシートSを搬送する。
【0032】
加圧ローラ3の表面の硬度H(アスカーC)は、60°≦H≦67°であるのが望ましい。また、加圧ローラ3の表面の硬度H(アスカーC)は、62°≦H≦67°であるのがさらに望ましい。加圧ローラ3の表面の硬度H(アスカーC)は、64°≦H≦66°であるのが最も望ましい。加圧ローラ3の表面の硬度H(アスカーC)は、JIS K 7312に準拠した硬度計HTを用いて行う(図4参照)。
【0033】
図4に示すように、加圧ローラ3は、シャフト3Aと、弾性層3Bと、表層3Cとを有する。加圧ローラ3の外径DPは、20mm≦DP≦22mmである。
【0034】
シャフト3Aは、円柱形状を有し、例えば金属からなる。
【0035】
弾性層3Bは、円筒形状を有し、例えばシリコンゴムからなる。弾性層3Bは、シャフト3Aを被覆している。弾性層3Bは、表面に表層3Cを有する。弾性層3Bの厚さTは、1mm≦T≦3mmが望ましい。弾性層の厚さTは、2mm≦T≦3mmmがさらに望ましく、本実施形態では2mmである。
【0036】
表層3Cは、例えばフッ素樹脂からなる。表層3Cは、弾性層3Bの表面に被覆されている。
【0037】
加熱ユニット2と加圧ローラ3がニップ部を形成した場合における、弾性層3BのひずみASは、25%≦AS≦60%が望ましい。
また、弾性層3BのひずみASは、35%≦AS≦43%がさらに望ましい。
【0038】
図5(a),(b)を参照して、ひずみASについて説明する。図5(a)は、加熱ユニット2と加圧ローラ3がニップしていない状態を示し、図5(b)は、加熱ユニット2と加圧ローラ3がニップしている状態を示している。ニップ部におけるニップしていない状態の弾性層3Bの厚さをα1とし、ニップしている状態の弾性層3Bの厚さをα2とする。ひずみAS[%]は、α1に対する、(α1-α2)の百分率である。
ひずみAS[%]=((α1-α2)/α1)×100である。
【0039】
図1に示すように、フレーム4は、第1フレーム41と、第2フレーム42とを有する。第1フレーム41は、加熱ユニット2および加圧ローラ3を支持する。第2フレーム42は、加熱ユニット2を加圧ローラ3とは反対側から覆うように、第1フレーム41に取り付けられている。
【0040】
図2に示すように、定着装置1は、加熱ユニット2と加圧ローラ3の間のニップ圧を変更するためのニップ圧変更機構NMをさらに備えている。ニップ圧変更機構NMは、シャフトSFと、加圧アーム60と、加圧バネ70と、カム80と、を備えている。第1フレーム41は、加圧バネ70を支持するとともに、加圧アーム60およびカム80を回動可能に支持する。
【0041】
加圧アーム60とカム80は、軸方向における第1フレーム41の一端部と他端部のそれぞれに配置されている。なお、図示は省略するが、加圧バネ70も、軸方向における第1フレーム41の一端部と他端部のそれぞれに配置されている。ニップ圧変更機構NMの軸方向の一方側の構造と、他方側の構造は、略同一であるため、以下、主に軸方向の一方側の構造を代表して説明する。
【0042】
シャフトSFは、軸方向に延びている。シャフトSFは、例えば金属からなる。シャフトSFの軸方向の各端部には、カム80が固定されている。第1フレーム41は、シャフトSFを回動可能に支持する第2支持部41Cを有する。
【0043】
図2に示すように、第2支持部41Cは、シャフトSFを回動可能に支持することで、カム80を第2軸X2まわりに回動可能に支持している。
【0044】
加圧アーム60は、加熱ユニット2を加圧ローラ3に向けて押圧するアームである。第1フレーム41は、加圧アーム60を第1軸X1まわりに回動可能に支持する第1支持部41Dを有する。第1支持部41Dは、略円柱状の突起である。第1軸X1、第2軸X2および第3軸X3は、それぞれ異なる位置に位置する。第1軸X1、第2軸X2および第3軸X3は、それぞれ平行である。つまり、第1軸X1に沿った方向は、軸方向と平行である。
【0045】
加圧バネ70は、加圧アーム60を加圧ローラ3に向けて付勢する引張コイルバネである。加圧バネ70の付勢方向は、所定方向と略平行である。第1フレーム41は、加圧バネ70の一端が引っ掛かる第1バネ掛け41Eを有する。
【0046】
カム80は、加圧バネ70の付勢力に抗して加圧アーム60を押圧可能となっている。具体的に、カム80は、図2に示す第1位置と、図3に示す第2位置との間で回動可能となっている。
【0047】
カム80が第1位置に位置するとき、ニップ圧は第1ニップ圧となる。カム80が第2位置に位置するとき、ニップ圧は、第1ニップ圧よりも小さい第2ニップ圧となる。
【0048】
加圧アーム60は、本体部61と、被支持部62と、第1先端部63と、第2先端部64と、を有する。第1先端部63は、金属からなるベース部63Aと、樹脂からなるカムフォロア63Bとを有する。本体部61、被支持部62、ベース部63Aおよび第2先端部64は、金属からなり、一体に形成されている。カムフォロア63Bは、ベース部63Aに嵌め込まれている。
【0049】
本体部61は、第1端E1および第2端E2を有する。本体部61は、第1端E1から所定方向の一方側に延びた後、搬送方向の下流側に延び、搬送方向の下流端が第2端E2となっている。本体部61は、第1端E1と第2端E2の間に、加熱ユニット2を加圧ローラ3に向けて押圧する加圧面F1を有する。
【0050】
ここで、加熱ユニット2は、軸方向の各端部に、サイドガイドSGを有している。サイドガイドSGは、ステイSTの軸方向の端部を支持する。加圧面F1は、サイドガイドSGを加圧ローラ3に向けて押圧する。
【0051】
被支持部62は、本体部61の第1端E1に位置する。被支持部62は、第1フレーム41の第1支持部41Dで支持されている。
【0052】
第1先端部63は、本体部61の第2端E2に位置する。第1先端部63は、カム80によって押圧される被押圧面F2を有する。詳しくは、ベース部63Aは、本体部61の第2端E2から搬送方向の下流側に向かうにつれて所定方向の一方側に位置するように、搬送方向に対して傾斜した方向に延びている。ベース部63Aに取り付けられたカムフォロア63Bは、被押圧面F2を有している。
【0053】
第2先端部64は、本体部61の第2端E2に位置する。第2先端部64は、第1先端部63とは異なる方向に延びる。第2先端部64は、加圧バネ70の他端が引っ掛かる第2バネ掛け64Aを有する。
【0054】
以上によれば、本実施形態において以下のような効果を得ることができる。
定着装置1は、加圧ローラ3の弾性層3Bの厚さTは、1mm≦T≦3mmであり、加圧ローラ3の表面の硬度H(アスカーC)は、60°≦H≦67°である。このため、定着装置1によってシートSを熱定着する場合に、適切なニップ幅を確保するとともに、加圧ローラ3の弾性層3Bの熱膨張の影響が小さくなる。この結果、ニップ幅の変化量が抑制され、加圧ローラ3の弾性層3Bが熱膨張しても、適切な熱定着をすることができるとともに、適切なシート搬送をすることができる。
【0055】
また、加圧ローラ3の外径DPは、20mm≦DP≦22mmである。このため、加圧ローラ3を小型化することで、定着装置1を小型化できる。
【0056】
また、加圧ローラ3の弾性層3Bは、表面にフッ素樹脂からなる表層3Cを有する。このため、加圧ローラ3の耐久性が向上する。
【0057】
また、加熱ユニット2のベルトBLの外周長LBは、75mm≦LB≦82mmである。このため、加熱ユニット2を小型化することができ、定着装置1を小型化できる。
【0058】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。
【0059】
加圧ローラの弾性層は、シリコンゴムに限らず、他の材料であってもよい。
また、加圧ローラの表層は、フッ素樹脂に限らず、他の材料であってもよい。
【0060】
加圧バネは、引張コイルバネに限らず、例えば、トーションバネなどであってもよい。
【0061】
ヒータは、セラミックヒータに限らず、例えば、ハロゲンランプなどであってもよい。この場合、加熱ユニットは、ベルトと、加圧ローラとの間でベルトを挟むニップ板と、ニップ板を加熱するヒータとを備える構成としてもよい。
【0062】
前記した実施形態および変形例で説明した各要素を、任意に組み合わせて実施してもよい。
【実施例0063】
以下、本発明の実施例について説明する。
図6は、各実施例および各比較例の構成および評価を示す表である。
[評価方法]
実施例1~10と比較例1~3について、加圧ローラ3の表面の硬度H(アスカーC)と、弾性層3Bの厚さTとをそれぞれ変更した定着装置1について、トナーの定着性とシートSの搬送性を評価した。定着性と搬送性の評価は、良好(◎)、可(〇)、不適(×)で判定した。加圧ローラ3の表面の硬度H(アスカーC)は、加圧ローラ3の表面に硬度計HTの圧子を押し付けて測定した。硬度測定は、JIS K 7312に準拠した硬度計HTを用いて行った(図4参照)。
【0064】
定着性の評価は、シートSにトナー像を定着させた後のシートSからのトナーの剥がれがあるかを判定することにより行った。トナーの剥がれがあるかどうかは、トナーの剥がれ具合を示す反射濃度低下率に基づいて判定する。反射濃度低下率は、反射濃度計を用いて下記の2種類の条件で測定される反射濃度に基づいて求められる。
条件1:シートSに定着されたトナー像の濃度をそのままの状態で測定する。
条件2:シートSに形成されたトナー像(条件1)を、布で所定時間、所定圧力で、摺擦(摩擦堅牢度試験)した後、測定する。
反射濃度低下率は、100×(条件1で測定された反射濃度-条件2で測定された反射濃度)/(条件1で測定された反射濃度)で求められる。反射濃度低下率は、低い値になるにつれて、定着性が良いことを表している。
反射濃度低下率が10%未満であれば、良好(◎)と判定した。
反射濃度低下率が10%~20%であれば、可(〇)と判定した。
反射濃度低下率が20%を超過した場合は、不適(×)と判定した。
【0065】
搬送性の評価は、シートSにトナー像を定着させた後のシートSを確認することにより行った。定着後のシートSの確認は、シートにしわが発生していないかを目視で確認し、シートSの搬送速度を測定して目標値と対比した。
シートSにしわが発生せず、かつ、シートSの搬送速度が目標値に対して98.5%~101.5%の範囲であった場合、良好(◎)と判定した。
シートSにしわが発生せず、かつ、シートSの搬送速度が目標値に対して97.5%~98.5%または101.5%~102.5%の範囲であった場合、可(〇)と判定した。
シートSにしわが発生した場合、または、シートSの搬送速度が目標値に対して97.5%未満あるいは102.5%を超過した場合、不適(×)と判定した。
【0066】
各実施例および比較例においては、ローラ硬度H、弾性層の厚さT、加圧ローラの外径DPを決定した後、シートSの搬送方向のニップ幅ができるだけ適正となるようにバネ荷重を決定した。バネ荷重は、加圧バネ70の強さを変更することで調節可能である。
【0067】
図6に示すように、実施例1~10においては、ローラ硬度Hを60~67°の範囲で設定した。弾性層の厚さTは、2mmを基準とし、ローラ硬度Hが63°の場合については、実施例4で弾性層の厚さが3mmの場合も確認した。ローラ硬度Hが60°については、弾性層の厚さTが3mmの場合のみを確認した。また、ローラ硬度Hが67°の場合については、実施例9で弾性層の厚さが1mmの場合も確認した。
【0068】
この結果、ローラ硬度Hが62~67°の場合には、弾性層の厚さTが2mmであれば、すべての場合で定着性および搬送性が良好(◎)となった。そして、弾性層の厚さTが3mmの場合には(ローラ硬度Hが60°の実施例1、ローラ硬度Hが63°の実施例4)、定着性は良好(◎)であったが、ニップ幅が大きくなるため、搬送性は可(○)となった。一方、弾性層の厚さTが1mmの場合には(ローラ硬度Hが67°の実施例9)、搬送性は良好(◎)であったが、ニップ幅が小さくなるため、定着性が可(○)となった。
【0069】
比較例1では、ローラ硬度H以外については、実施例1と同じ条件とし、ローラ硬度Hが60°未満である場合について複数のテストを行った。その結果、定着性は可(○)であったが、搬送性は、不安定で不適(×)となった。したがって、定着性と搬送性を両立させるためには、ローラ硬度Hが60°以上であることが望ましいことが確認された。
【0070】
比較例2では、弾性層の厚さT以外については、実施例1と同じ条件とし、弾性層の厚さTを4mmにしてテストを行った。その結果、定着性は可(○)であったが、搬送性は、不安定で不適(×)となった。したがって、定着性と搬送性を両立させるためには、弾性層の厚さTが3mm以下であることが望ましいことが確認された。
【0071】
比較例3では、ローラ硬度H以外については、実施例9と同じ条件とし、ローラ硬度Hが68°以上である場合について複数のテストを行った。その結果、定着性および搬送性が共に不適となることが分かった。したがって、定着性と搬送性を両立させるためには、ローラ硬度Hが67°以下であることが望ましいことが確認された。
【0072】
以上の結果より、ローラ硬度Hは60~67°の範囲が望ましく、弾性層の厚さTは1~3mmの範囲が望ましいことが確認された。なお、弾性層の厚さTは、1mm未満にすることが製造上困難であるが、1mm未満にすると、十分なニップ幅が得られないことで、定着性が悪化することが予想される。
【0073】
また、実施例1~10の中では、ローラ硬度Hが62以上の場合には、定着性と搬送性が共に良好(◎)となる場合を確認できていることから、ローラ硬度Hは、62~67°の範囲であることがより望ましいといえる。さらに、ローラ硬度が66°以下の場合には、いずれも定着性が良好(◎)であったので、ローラ硬度Hは、62~66°の範囲であることがさらに望ましいといえる。
【符号の説明】
【0074】
1 定着装置
2 加熱ユニット
3 加圧ローラ
3A シャフト
3B 弾性層
3C 表層
10 ヒータ
B1 基層
B2 弾性層
B3 表層
BL ベルト
DB ベルト外径
LB ベルトの外周長
DP 加圧ローラの外径
H 弾性層の硬度
図1
図2
図3
図4
図5
図6