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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054643
(43)【公開日】2024-04-17
(54)【発明の名称】接続部材
(51)【国際特許分類】
   B28D 1/14 20060101AFI20240410BHJP
   B28D 7/02 20060101ALI20240410BHJP
   E21B 17/08 20060101ALN20240410BHJP
【FI】
B28D1/14
B28D7/02
E21B17/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161003
(22)【出願日】2022-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】516121833
【氏名又は名称】株式会社アクティブ
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平田 誠之
(72)【発明者】
【氏名】日野 和徳
(72)【発明者】
【氏名】石田 凌
【テーマコード(参考)】
2D129
3C069
【Fターム(参考)】
2D129EA21
2D129EC06
2D129EC15
3C069BA09
3C069BB01
3C069CA12
3C069DA06
3C069EA02
(57)【要約】
【課題】切削時の振動の発生を抑制し真っすぐな切削が可能な接続部材を提供する。
【解決手段】接続部材10は、切削ロッド22より小径で両端部に切削ロッド22が締結されるねじ部が形成された切削ロッド接続用雄螺子パイプ62、及び切削ロッド接続用雌螺子パイプ86が固定されたガイド管22と、ガイド管22に回転可能に外挿され、外径が、切削先端側の切削ロッド22の端部に設けられた切削ビット24の外径より小さく、切削ロッド22の外径より大きい第一ガイドリング68、及び第二ガイドリング72とを備え、第一ガイドリング68、及び第二ガイドリング72の外周面に長溝68Cが形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削ロッドより小径で両端部に前記切削ロッドが締結されるねじ部が形成された接続管が固定されたガイド管と、
前記ガイド管に回転可能に外挿され、外径が、切削先端側の前記切削ロッドの端部に設けられた切削ビットの外径より小さく、前記切削ロッドの外径より大きいガイド部と、
を備え、
前記ガイド部の外周面に長溝が形成されている、
接続部材。
【請求項2】
前記ガイド管の外周には、前記ガイド管の長手方向中央部に前記切削ロッドの外径より小さい固定管が固定され、前記固定管の両側にある前記ガイド管に前記ガイド部が外挿されている、
請求項1に記載の接続部材。
【請求項3】
前記ガイド部と前記ガイド管との間にはベアリングが配置されている、
請求項1または請求項2に記載の接続部材。
【請求項4】
前記ガイド部と前記ガイド管との隙間には、前記ベアリングへの異物の進入を阻止するシール部材が配置されている、
請求項3に記載の接続部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、切削ロッドに接続される接続部材に関する。
【背景技術】
【0002】
切削対象に切削孔を形成する場合、複数本の切削ロッドを継ぎ足し、切削ロッドの先端に取り付けたコアビットを用いて切削を行っている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-176630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のコアビットには、真直ぐな孔穿けが精度よく行われるように、孔内壁に接触するガイドがチューブ(切削ロッドとも呼ぶ)に取り付けられている。
しかし、切削中は、チューブと共にガイドが回転するため、ガイドの外周面が孔壁に摺動し、振動が発生する課題がある。
【0005】
本開示は上記事実を考慮し、切削時の振動の発生を抑制し真っすぐな切削が可能な接続部材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係る接続部材は、切削ロッドより小径で両端部に前記切削ロッドが締結されるねじ部が形成された接続管が固定されたガイド管と、前記ガイド管に回転可能に外挿され、外径が、切削先端側の前記切削ロッドの端部に設けられた切削ビットの外径より小さく、前記切削ロッドの外径より大きいガイド部と、を備え、前記ガイド部の外周面に長溝が形成されている。
【0007】
第1の態様に係る接続部材は、接続管の両端部に形成されたねじ部を用いて切削ロッドを締結することができる。したがって、複数本の切削ロッドを連結して切削をする場合、長手方向中間部分の切削ロッドと切削ロッドとの間に接続部材を連結することができる。
【0008】
ところで、切削ロッドを継ぎ足してロッド長が長くなると、継ぎ足した切削ロッドが曲がって回転中に振れてしまい、切削ロッドの外周面が切削孔の内周面に擦れる場合がある。
【0009】
しかしながら、複数本継ぎ足した切削ロッドの中間部に第1の態様に係る接続部材を配置すると、切削ロッドよりも大径に形成されたガイド部が切削孔の孔壁に接触するので、継ぎ足した切削ロッドの曲げ変形による回転中の振れが抑制され、切削ロッドの外周面が切削孔の孔壁に接触することを抑制できる。
【0010】
また、ガイド部は、ガイド管に回転可能に外挿されているので、孔壁に接触したガイド部の回転を抑制しつつ、ガイド管をスムーズに回転させることができる。このため、ロスなく回転力を切削ビットに伝えることができる。切削中においては、ガイド部が孔壁に擦れることが抑制されるので、切削ロッドの振動の発生を抑制することができる。
【0011】
ところで、切削作業中、切削ビットの先端から圧縮空気を噴出させ、切削で生じた切屑を圧縮空気と共に切削ロッドと切削孔との間の隙間を介して切削孔の開口部へ向けて排出させる場合がある。
【0012】
第1の態様に係る接続部材では、ガイド部の外周に長溝が形成されているため、切削で生じた切屑を圧縮空気と共に長溝を通過させ、切削孔の開口部へ向けて排出させることが出来る。
【0013】
第2の態様に係る接続部材は、第1の態様に係る接続部材において、前記ガイド管の外周には、前記ガイド管の長手方向中央部に前記切削ロッドの外径より小さい固定管が固定され、前記固定管の両側にある前記ガイド管に前記ガイド部が外挿されている。
【0014】
第2の態様に係る接続部材が、切削ビットで切削された切削孔の内部に配置されると、2つのガイド部と固定管とで形成された環状の溝が切削孔の孔壁で囲まれ、固定管の外周側に環状の空間が形成される。この空間は、ガイド部の外周に形成された長溝に連通しているので、一方のガイド部の長溝は、該空間を介して他方のガイド部の長溝に連通する。
【0015】
したがって、切削で生じた切屑を、圧縮空気と共に、一方のガイド部の長溝、固定管の外周側に形成された環状の空間、及び他方のガイド部の長溝を通過させ、切削孔の開口部へ向けて排出させることが出来る。
【0016】
また、ガイド部の軸心に対して直交する断面で見たときの空間の断面積は、長溝の断面積よりも大きくなるので、該空間を設けることが出来る接続部材は、該空間を設けることができない接続部材、言い換えれば、切削ロッドの外径より小さい固定管が設けられていない場合に比較して、圧縮空気が通過する通路の通過抵抗を小さくすることができ、切屑を含んだ圧縮空気をスムーズに通過させることができる。
【0017】
第3の態様に係る接続部材は、第1の態様、または第2の態様に係る接続部材において、前記ガイド部と前記ガイド管との間にはベアリングが配置されている。
【0018】
第3の態様に係る接続部材では、ガイド部とガイド管との間にベアリングが配置されているため、ガイド部とガイド管とをスムーズに相対回転させることができる。これにより、切削孔の孔壁に接触したガイド部を回転させずに、ガイド管に繋がる切削ロッドをスムーズに回転させることができる。
【0019】
第4の態様に係る接続部材は、第3の態様に係る接続部材において、前記ガイド部と前記ガイド管との隙間には、前記ベアリングへの異物の進入を阻止するシール部材が配置されている。
【0020】
第4の態様に係る接続部材では、ガイド部とガイド管との隙間にシール部材が配置されているので、切削で生じた切屑などの異物がベアリングの内部に進入することを抑制できる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように本発明の接続部材によれば、切削時の振動の発生を抑制し、真っすぐな切削が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係る接続部材を示す軸線に沿った断面図である。
図2】(A)、(B)、及び(C)は、切削孔を切削する過程を示すレンガ躯体の断面図である。
図3】切削ロッドを示す、一部を断面にした側面図である。
図4】(A)は切削ビットを示す一部を断面にした側面図であり、(B)は切削ビットを先端側から見た正面図である。
図5】(A)は第一ガイドリングを示す側面図であり、(B)は第一ガイドリングを示す大径孔側から見た上面図である。
図6】本発明の一実施形態に係る接続部材を示す側面図である。
図7】切削孔の先端側の状態を示すレンガ躯体の断面図である。
図8】切削孔の内部に配置された接続部材を示す軸線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1図8を用いて、本発明の一実施形態に係る接続部材10について説明する。
図2(A)には、切削作業を行う際に用いられるコアマシン12の概略構成が示されている。
コアマシン12は、一例として、切削作業を行うレンガ躯体14の上部に設置される設置架台16に固定されている。図2(A)に示すコアマシン12においては、コアマシン12に備えられたコアモータ18の回転軸に、スイベル20を介して切削ロッド22、及び切削ビット24が接続されている。なお、本実施形態のレンガ躯体14は、一例として、コンクリート基礎15の上に構築されている。
【0024】
(切削ロッド)
図3に示すように、切削ロッド(コアチューブ)22は、円筒状とされた金属製のパイプであり、一端側の外周部には雄螺子26、他端側の内周部には雌螺子28が形成されている。なお、切削ロッド22の外径D1に対して、雄螺子26の外径D2は小径である。
【0025】
切削ロッド22の雄螺子26は、他の切削ロッド22の雌螺子28が螺合可能であり、これにより、複数本の切削ロッド22を継ぎ足し可能となっている。
また、切削ロッド22の雌螺子28は、後述する切削ビット24の雄螺子32、及び後述する接続部材10の構成部材である切削ロッド接続用雄螺子パイプ62の雄螺子62Bと螺合可能となっており、切削ロッド22の雄螺子26には、後述する接続部材10の構成部材である切削ロッド接続用雌螺子パイプ86の雌螺子86Aが螺合可能となっている。
【0026】
なお、切削ロッド22は、一例として、引き抜き鋼管を用いることができ、引き抜き鋼管を用いた場合には、鋼管に雄螺子26、及び雌螺子28を加工するのみで切削ロッド22を形成することが出来る。
【0027】
図4に示すように、切削ビット(コアビットとも呼ばれる)24は、円筒状とされた金属製の台金30を備えている。台金30の一端側には、切削ロッド22の雌螺子28と螺合可能な雄螺子32が形成されている。雄螺子32の外径D4は、台金30の外径D5よりも小径である。
【0028】
台金30の他端には、ダイヤモンドチップ34が取り付けられている。ダイヤモンドチップ34は、台金30の外径D5よりも大きい外径D6を有している。また、ダイヤモンドチップ34は、台金30の内径D7よりも小さい内径D8を有している。なお、ダイヤモンドチップ34は、周方向に複数個に分割されている。
【0029】
(接続部材)
図1に示すように、本実施形態の接続部材10は、円筒状とされた金属製のガイド管60を備えている。
ガイド管60の図面矢印U方向の一端部分には、切削ロッド接続用雄螺子パイプ62が外挿される挿入部60Aが形成されている。
ガイド管60には、挿入部60Aの矢印D方向側に、挿入部60Aよりも大径とされたフランジ部60Bが形成され、フランジ部60Bの矢印D方向側に、フランジ部60Bよりも小径とされたオイルシール取付部60Cが形成されている。オイルシール取付部60Cには、シール部材の一例としてのオイルシール64が外挿されている。
【0030】
ガイド管60には、オイルシール取付部60Cの矢印D方向側に一定径とされた、一定径部60Dが形成されており、一定径部60Dの矢印D方向側の他端部分に、雄螺子60Eが形成されている。
【0031】
切削ロッド接続用雄螺子パイプ62は、金属部材で形成されており、ガイド管60側には、一定外径とされた一定外径部62Aが形成され、反対側には、切削ロッド22の雌螺子28が螺合する雄螺子62Bが形成されている。
【0032】
図1、及び図6に示すように、切削ロッド接続用雄螺子パイプ62にはガイド管60の挿入部60Aが挿入されており、切削ロッド接続用雄螺子パイプ62がガイド管60に皿螺子66で固定されている。
【0033】
図1に示すように、ガイド管60のフランジ部60Bの外径D3、切削ロッド接続用雄螺子パイプ62の外径D9、及び切削ロッド22の外径D1は、同一外径である。
【0034】
ガイド管60の一定径部60Dには、フランジ部60B側から、第一ガイドリング68、中間リング70、第二ガイドリング72、固定リング74が順に外挿されている。
【0035】
図1、及び図5に示すように、ガイド部の一例としての第一ガイドリング68は、オイルシール64、及びベアリング76が挿入される大径孔68Aと、大径孔68Aよりも小径に形成された小径孔68Bとを有している。なお、本実施形態のベアリング76は、ニードルベアリングである。
小径孔68Bは、ガイド管60の一定径部60Dが挿通するように、一定径部60Dよりも若干大径に形成されている。なお、本実施形態の第一ガイドリング68は、金属部材で形成されている。
【0036】
ベアリング76は、ガイド管60の一定径部60Dと第一ガイドリング68との間に配置されており、ガイド管60と第一ガイドリング68とは相対回転自在となっている。言い換えれば、ガイド管60は、第一ガイドリング68に対して回転自在に支持されている。
【0037】
第一ガイドリング68のオイルシール64は、ガイド管60のオイルシール取付部60Cと第一ガイドリング68との間に配置されており、ベアリング76への矢印U方向側からの異物の進入を阻止している。
【0038】
また、第一ガイドリング68の小径孔68Bには、Oリング溝78が形成されており、このOリング溝78に、ガイド管60と第一ガイドリング68との間の隙間をシールするシール部材の一例としてのOリング80が装着されている。このOリング80により、ベアリング76への矢印D方向側からの異物の進入を阻止している。
【0039】
第一ガイドリング68の外径D10は、切削ロッド22の外径D1よりも大径に形成されており、かつ、ダイヤモンドチップ34の外径D6(図4(B)参照)よりも小径に形成されている。
【0040】
図5、及び図6に示すように、第一ガイドリング68の外周面には、軸方向の一端から他端へ延びる複数の長溝68Cが、周方向に間隔を開けて形成されている。なお、長溝68Cは、第一ガイドリング68の軸方向に沿って直線状に形成されているが、第一ガイドリング68の軸方向に対して傾斜していてもよい。
【0041】
図1、及び図6に示すように、中間リング70は、複数のホーローセット82を用いてガイド管60の一定径部60Dに固定されている。本実施形態の中間リング70は、金属部材で形成されている。
【0042】
中間リング70の矢印D方向側には、第一ガイドリング68と同一構造とされたガイド部の一例としての第二ガイドリング72が、第一ガイドリング68とは反対向きに設けられている。
なお、第二ガイドリング72も第一ガイドリング68と同様に、ベアリング76で支持されてガイド管60に対して回転自在とされている。
【0043】
中間リング70の外径D11は、第一ガイドリング68の外径D10よりも小径であり、図8に示すように、接続部材10が切削孔44の内部に配置されている状態では、中間リング70の外周面と切削孔44の孔壁との間に、環状のバッファ空間BSが形成される。なお、接続部材10が切削孔44の内部に配置されている状態で、バッファ空間BSは、第一ガイドリング68の外周面、及び第二ガイドリング72の外周面に形成された長溝68C(図8では、図示せず)と連通している。
【0044】
図1に示すように、固定リング74には、矢印U方向側に、オイルシール64を外挿するシールリング外挿部74Aが形成されている。また、固定リング74には、矢印D方向側に、雄螺子74Bが形成されている。本実施形態の固定リング74は、金属部材で形成されている。
【0045】
固定リング74の矢印D方向側の内周面には雌螺子74Cが形成されており、この雌螺子74Cにガイド管60の雄螺子60Eが螺合している。固定リング74は、ホーローセット84を用いてガイド管60に固定されている。
【0046】
固定リング74の矢印D方向側には、切削ロッド接続用雌螺子パイプ86が配置されている。切削ロッド接続用雌螺子パイプ86の内周には、固定リング74の雄螺子74Bと螺合する雌螺子86Aが形成されている。
【0047】
固定リング74は、ホーローセット88を用いてガイド管60に固定されている。
なお、固定リング74は、切削ロッド接続用雌螺子パイプ86よりも小径である。
【0048】
切削ロッド接続用雌螺子パイプ86は、雌螺子86Aが固定リング74の雄螺子74Bに螺合した状態で、複数の皿螺子90を用いて固定リング74に固定されている。
【0049】
(作用、効果)
次に、本実施形態の接続部材10を用いた切削工程を図面に基づいて説明する。ここでは、一例としてレンガ躯体14に穿孔を行う場合について説明する。
【0050】
先ず最初に、図2(A)に示すように、コアマシン12のコアモータ18の回転軸18Aに、スイベル20、切削ロッド22、及び切削ビット24を接続し、コアモータ18を下降させてレンガ躯体14に切削孔44を穿孔する。
図7に示すように、穿孔された切削孔44の内径D12は、切削ビット24のダイヤモンドチップ34の外径D6と略同じ(または若干大きめの)寸法となる。
切削孔44と切削ロッド22との間には、環状の隙間S1が形成され、切削孔44と切削ビット24の台金30との間には、環状の隙間S2が形成される。
【0051】
切削孔44を穿孔している間は、エアコンプレッサー(図示省略)から供給された圧縮空気をスイベル20を介して切削ロッド22の内部へ圧送すると共に、切削孔44の開口の上に配置した箱状の集塵用パッド50の内部の空気を集塵機(図示省略)で吸引して集塵用パッド50の内部を負圧にする。
【0052】
穿孔中は、エアコンプレッサーから供給された圧縮空気が、切削ロッド22、及び切削ビット24を通過して切削ビット24の先端から排出され、切削孔44と切削ビット24の台金30との間の隙間S2、及び切削ロッド22と切削孔44との間の隙間S1を通過し、その後、切削孔44の開口の上に配置した集塵用パッド50の内部の空気が集塵機で吸引される。
したがって、穿孔によって生じた切削粉は、空気と共に隙間S2、及び隙間S1を通過して切削孔44の上部開口から切削孔44の外部へ排出される。
【0053】
そして、切削孔44から排出された切削粉は、集塵用パッド50を介した後、集塵機で吸引除去される。これにより、切削孔44に切削粉が詰まることが抑制される。また、切削ビット24の内外に空気を通過させることで、切削ビット24を冷却することが出来る。
【0054】
穿孔作業が進み、コアモータ18を下限位置まで下降させたら、切削孔44に挿入されている切削ロッド22とスイベル20とを分離し、コアモータ18を上昇させ、切削孔44に挿入されている切削ロッド22の上端に新たな切削ロッド22を継ぎ足し、継ぎ足した新たな切削ロッド22とスイベル20とを接続して穿孔作業を進める。以後、切削ロッド22と接続部材10とを継ぎ足し続け、ある程度の深さd1(例えば、図2(A)参照)になるまで穿孔作業を続ける。深さd1は、一例として4050mmであるが、必要に応じて変更される。
【0055】
ある程度の深さd1まで穿孔作業が進み、コアモータ18を下限位置まで下降させたら、切削孔44に挿入されている切削ロッド22とスイベル20とを分離し、コアモータ18を上昇させ、切削孔44に挿入されている切削ロッド22の上端に接続部材10、及び新たな切削ロッド22を継ぎ足し、継ぎ足した新たな切削ロッド22とスイベル20とを接続し、図2(B)に示すように穿孔作業を進める。
【0056】
ところで、接続部材10を切削ロッド22に取り付けないと、切削ロッド22を継ぎ足してロッド長が長くなるにつれて、継ぎ足して長くなった切削ロッド22が曲がって回転中に振れてしまい、切削ロッド22の外周面が切削孔の内周面に擦れてしまう。
また、先行技術のように、孔壁に接触するガイドが切削ロッドに固定されていると、ガイドの外周面が孔壁に回転しながら摺動し、振動の原因となる。
【0057】
図2(B)に示すように、複数本継ぎ足した切削ロッド22の中間部に本実施形態の接続部材10を配置すると、切削ロッド22よりも大径に形成された第一ガイドリング68、第二ガイドリング72の外周面が切削孔44の孔壁に接触されるので、長く継ぎ足した切削ロッド22の曲げ変形による回転中の振れが抑制され、切削ロッド22の外周面が切削孔44の孔壁に接触することを抑制することができる。
【0058】
そして、本実施形態の第一ガイドリング68、及び第二ガイドリング72は、ベアリング76を介してガイド管60に連結されているので、切削孔44の孔壁に接触した第一ガイドリング68、及び第二ガイドリング72の回転を抑制しつつ、切削ロッド22をスムーズに回転させることができる。このため、ロスなくコアモータ18の回転力を切削ビット24に伝えることができる。
このように、切削孔44の孔壁に接触した第一ガイドリング68、及び第二ガイドリング72の回転を抑制できるので、長く継ぎ足した切削ロッド22の振動を抑制することができ、振動による騒音も抑制できる。また、長く継ぎ足した切削ロッド22の垂直度(鉛直度)を保つことができ、削孔をより正確なものとして、レンガ躯体14、及びコンクリート基礎15に切削孔44を切削することができる。
【0059】
さらに穿孔作業を続け、複数の切削ロッド22を継ぎ足した部分の寸法がある程度長くなったら、接続部材10を継ぎ足した後、さらに切削ロッド22を継ぎ足し続け、切削孔44が予め設定した所定の深さd3、本実施形態では、コンクリート基礎15に到達する深さになるまで穿孔作業を続ける。
【0060】
図8には、切削ロッド22に接続部材10を継ぎ足した場合の空気の流れを示す接続部材10の軸線に沿った断面が示されている。
【0061】
穿孔中は、エアコンプレッサーから供給された圧縮空気(流れの方向を矢印で示す)は、切削ロッド22、接続部材10のガイド管60の孔60F、及び切削ビット24(図8では、図示せず)を通過して切削ビット24の先端から排出され、切削孔44と切削ビット24の台金30との間の隙間S2(図7参照)、及び切削ロッド22と切削孔44との間の隙間S1(図7参照)を通過し、接続部材10が配置されている部分では、図8に示すように、第二ガイドリング72と切削孔44との間に形成された隙間S3、バッファ空間BS、第一ガイドリング68と切削孔44との間に形成された隙間S4を通過する。
【0062】
ここで、第一ガイドリング68、及び第二ガイドリング72は、切削ロッド22よりも大径に形成されており、第一ガイドリング68の外周面(長溝68Cを除く最外周面)、及び第二ガイドリング72の外周面(長溝68Cを除く最外周面)と切削孔44の孔壁との間の隙間は、切削ロッド22の外周面と切削孔44の孔壁との間の隙間よりも小さくなる。しかし、第一ガイドリング68の外周面、及び第二ガイドリング72の外周には、軸方向に貫通する長溝68Cが複数本形成されているため、切削粉を含んだ圧縮空気を、複数本の長溝68Cを通過させて、スムーズに上方へ流すことができる。
【0063】
また、第一ガイドリング68と第二ガイドリング72との間には、長溝68Cの断面積よりも大きな断面積を有するバッファ空間BSが設けられている。このため、バッファ空間BSが設けられていない場合(言い換えれば、第一ガイドリング68の下端から第二ガイドリング72の上端まで途切れることなく延びる長溝)に比較して、空気の通過抵抗が減少し、切削粉を含んだ圧縮空気をスムーズに流すことができる。
【0064】
以上のように、本実施形態の接続部材10を複数本継ぎ足した切削ロッド22の中間部に設けることで、従来工法で問題となった、切削中に切削ロッドの振動が大きくなり、騒音が激しくなる、切削が遅くなる、切削ロッドが塑性変形する、切削ロッドが折れる、切削孔の孔径が大きくなってしまう、切削孔が曲がってしまう等の切削ロッドのしなりに起因する様々な不具合の発生を抑制することが出来る。
長く継ぎ足した切削ロッド22の振動を抑制することができことから、振動による騒音も抑制でき、また、長く継ぎ足した切削ロッド22の垂直度(鉛直度)を保つことができ、削孔をより正確なものとして、レンガ躯体14、及びコンクリート基礎15に切削孔44を切削することができる。
【0065】
なお、接続部材10は、複数本繋げた切削ロッド22の振れが抑制できる適当な間隔で配置すればよい。
一例として、複数本繋げた切削ロッド22の全長が4m近くになると、回転中に振動が発生し易くなる。接続部材10は、一例として、4m以上の深さの切削孔44に使用することが効果的であり、切削ビット24より2m以上の箇所に設けることが効果的である。また、複数本繋げた切削ロッド22の全長が10m以上になる場合には、間隔を開けて接続部材10を適宜に設けることが好ましい。
【0066】
[その他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0067】
上記実施形態の接続部材10では、ベアリング76にニードルベアリングを用いたが、本実施形態はこれに限らず、ベアリング76にシール付きのボールベアリングを用いてもよく、ベアリング76にローラーベアリングを用いてもよく、ベアリング76の種類は特に問わない。
【0068】
上記実施形態では、鉛直方向に削孔する例を説明したが、鉛直方向に対して傾斜する方向、水平方向に削孔する際に接続部材10を用いることもできる。
【符号の説明】
【0069】
10 接続部材
22 切削ロッド
24 コアビット
60 ガイド管
62 切削ロッド接続用雄螺子パイプ(接続管)
62B 雄螺子(ねじ部)
64 オイルシール(シール部材)
68 第一ガイドリング(ガイド部)
68C 長溝
72 第二ガイドリング(ガイド部)
76 ベアリング
80 Oリング(シール部材)
86 切削ロッド接続用雌螺子パイプ(接続管)
86A 雌螺子(ねじ部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8