(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054655
(43)【公開日】2024-04-17
(54)【発明の名称】セルロース繊維配合樹脂組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29B 9/14 20060101AFI20240410BHJP
C08J 3/12 20060101ALI20240410BHJP
C08J 5/04 20060101ALI20240410BHJP
B29C 48/40 20190101ALI20240410BHJP
B29C 48/88 20190101ALI20240410BHJP
B29C 48/25 20190101ALI20240410BHJP
B29C 48/345 20190101ALI20240410BHJP
B29B 7/48 20060101ALI20240410BHJP
B29B 7/72 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
B29B9/14
C08J3/12 Z CEP
C08J3/12 CEZ
C08J5/04 CER
B29C48/40
B29C48/88
B29C48/25
B29C48/345
B29B7/48
B29B7/72
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161030
(22)【出願日】2022-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】000109635
【氏名又は名称】星光PMC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100164828
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦 康宏
(72)【発明者】
【氏名】吉村 知章
(72)【発明者】
【氏名】山田 修平
(72)【発明者】
【氏名】大平 脩一
【テーマコード(参考)】
4F070
4F072
4F201
4F207
【Fターム(参考)】
4F070AA01
4F070AA15
4F070FA01
4F070FA03
4F070FA17
4F070FB06
4F070FC06
4F072AA02
4F072AB03
4F072AD04
4F072AG05
4F072AH23
4F072AL02
4F072AL04
4F072AL11
4F072AL16
4F072AL17
4F201AA01
4F201AB25
4F201AD16
4F201AK02
4F201AR06
4F201AR14
4F201BA01
4F201BA02
4F201BC01
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4F201BD05
4F201BK02
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4F201BK73
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4F201BL10
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4F201BQ10
4F201BQ21
4F207AA01
4F207AG14
4F207AR06
4F207AR14
4F207KA01
4F207KA17
4F207KK56
4F207KL64
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ペレット化されたセルロース繊維配合樹脂組成物同士のブロッキングを抑制しつつ、ペレット中の揮発分を低減し、かつ、従来よりも高い製品歩留まりでセルロース繊維配合樹脂組成物を製造する。
【解決手段】セルロース繊維(A)と熱可塑性樹脂(B)を二軸混練機にて混練し、その後ペレット化してセルロース繊維配合樹脂組成物を得るセルロース繊維配合樹脂組成物の製造方法であって、ペレット化するときのセルロース繊維配合樹脂組成物の温度が使用した熱可塑性樹脂(B)の融点以上であり、混練機の吐出量が15kg/h~100kg/hであり、かつ25m3/min以上の風量でペレットを空気輸送しながら冷却することを特徴とするセルロース繊維配合樹脂組成物の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース繊維(A)と熱可塑性樹脂(B)を二軸混練機にて混練し、その後ペレット化してセルロース繊維配合樹脂組成物を得るセルロース繊維配合樹脂組成物の製造方法であって、ペレット化するときのセルロース繊維配合樹脂組成物の温度が使用した熱可塑性樹脂(B)の融点以上であり、混練機の吐出量が15kg/h~100kg/hであり、かつ25m3/min以上の風量でペレットを空気輸送しながら冷却することを特徴とするセルロース繊維配合樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
セルロース繊維配合樹脂組成物中のセルロース繊維(A)の配合量が25~65質量%であることを特徴とする請求項1に記載のセルロース繊維配合樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセルロース繊維配合樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂材料の軽量化やサーマルリサイクルの観点から、植物等に由来するセルロース繊維を樹脂の補強材料として用いたセルロース配合樹脂組成物の開発が進んでいる。セルロース繊維配合樹脂組成物の製造には、セルロース繊維をミクロンオーダーあるいはナノオーダーまで解繊する工程、親水性であるセルロース繊維表面を樹脂となじみやすくするために疎水化する工程、セルロース繊維を樹脂中へ分散させ複合化する工程が必要とされており、それぞれの工程において様々な手法が考案され、多くのセルロース繊維配合樹脂組成物の製造方法が報告されている。
【0003】
中でも特許文献1は、セルロース繊維を化学修飾して疎水化セルロース繊維を得た後、疎水化セルロース繊維と樹脂との混練中に疎水化セルロース繊維をナノオーダーまで解繊しながら樹脂中に均一分散させ、複合化する手法であり、セルロース繊維の解繊工程と樹脂中への分散・複合化工程を同時に行っている点で、工業的に有益なセルロース繊維配合樹脂組成物の製造方法とされている。
【0004】
特許文献1の疎水化したセルロース繊維を二軸混練機内部でナノオーダーまで解繊しながら樹脂中に均一分散させる工程において、混練中に強いせん断力をかける必要があるため混練物の温度は上昇する。過度の発熱による材料の望ましくない熱劣化を抑制するため、二軸混練機から吐出された混練物は速やかに冷却する必要がある。短時間で冷却する手法として、混練物を糸状(ストランド)に引き取りながら水浴に含浸し、その後ストランドを連続的にカットして目的の混練物ペレットを得る、いわゆるストランドカット法が多用される。しかしながらセルロース繊維の配合量を増やした混練物をストランドカット法で得ようとすると水浴に含浸したストランドは針金状に固くなり引き取りが困難になるため、操業性に悪影響を及ぼす。特に、固いストランドをペレタイザーでカッティングするとカット時に混練物の微小な破砕物が多量に発生する。混練物のペレットは振動篩にかけて一定の大きさ以上の形状のそろったペレットのみを製品として取り出すが、微小な破砕物は振動篩で形状のそろっていない不適合品として製品からのぞかれ、結果として製品歩留まりが低下してしまうため、生産性に課題があった。
また、水浴に含浸することにより、ペレット中に水分が残存したり、水分の残存を抑えるために水浴を使用せずコンベアを用いてストランドを移送しながら放冷すると、カット時にブロッキングする等の課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2013/133093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ペレット化されたセルロース繊維配合樹脂組成物同士のブロッキングを抑制しつつ、ペレット中の揮発分を低減し、かつ、従来よりも高い製品歩留まりでセルロース繊維配合樹脂組成物を製造することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らはかかる課題を鑑み、鋭意検討した結果、二軸混練機から吐出された混練物を半溶融状態でカットし、得られたペレットを従来技術で空気輸送するのに必要とされる常識的な風量を超える高い風量で空気輸送しながら冷却することでストランド引き取りの課題を解消し、微小な破砕物の発生が起こらない製造方法を見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)セルロース繊維(A)と熱可塑性樹脂(B)を二軸混練機にて混練し、その後ペレット化してセルロース繊維配合樹脂組成物を得るセルロース繊維配合樹脂組成物の製造方法であって、ペレット化するときのセルロース繊維配合樹脂組成物の温度が使用した熱可塑性樹脂(B)の融点以上であり、混練機の吐出量が15kg/h~100kg/hであり、かつ25m3/min以上の風量でペレットを空気輸送しながら冷却することを特徴とするセルロース繊維配合樹脂組成物の製造方法
(2)セルロース繊維配合樹脂組成物中のセルロース繊維(A)の配合量が25~65質量%であることを特徴とする前記(1)に記載のセルロース繊維配合樹脂組成物の製造方法
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法によれば、ブロッキングを抑制しつつ、ペレット中の揮発分を低減し、かつ、従来よりも高い製品歩留まりでセルロース繊維配合樹脂組成物を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の製造方法は、セルロース繊維(A)と熱可塑性樹脂(B)を二軸混練機にて混練し、その後ペレット化してセルロース繊維配合樹脂組成物を得るセルロース繊維配合樹脂組成物の製造方法であって、ペレット化するときのセルロース繊維配合樹脂組成物の温度が使用した熱可塑性樹脂(B)の融点以上であり、さらに25m3/min以上の風量でペレットを空気輸送しながら冷却することを特徴とするものである。工程順に言い換えれば混練に用いるセルロース繊維(A)を用意する工程、セルロース繊維(A)を熱可塑性樹脂(B)と混練し、その後ペレット化してセルロース繊維配合樹脂組成物を得る工程からなる。
【0011】
<セルロース繊維(A)を用意する工程>
セルロース繊維(A)の原料としては、植物(例えば、木材、竹、麻、コットン、ジュート、ケナフ)、農地残廃物、布、パルプ(針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹未漂白サルファイトパルプ(NUSP)、針葉樹漂白サルファイトパルプ(NBSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、再生パルプ、古紙等)、動物(例えばホヤ類)、藻類、微生物(例えば酢酸菌(アセトバクター))、微生物産生物等を起源とするものが知られており、本発明ではそのいずれも使用できる。なかでも比較的入手が容易で、取り扱いやすいことから植物由来のセルロース繊維のパルプ(特に針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP))が好ましい。
【0012】
セルロース繊維(A)は次の工程で解繊させやすくするため、あらかじめセルロース繊維(A)に機械的な摩砕・せん断処理を行い、解繊起点を設けてもよい。セルロース繊維(A)に機械的な摩砕・せん断を与えられる装置としては、例えばバッチ式設備として加圧ニーダー、バッチ式ビーズミル、遊星ボールミル、3本ロール等、連続式設備としてリファイナー、高圧ホモジナイザー、石臼、グラインダー、二軸押し出し機、連続式ビーズミル等が挙げられる。
【0013】
また、セルロース繊維(A)は次の工程で解繊させやすくするため、あらかじめセルロース繊維表面を疎水化したものであってもよい。疎水化したセルロース繊維を得る方法としては、セルロース繊維表面に、セルロースと親和性の高い親水性部分と熱可塑性樹脂と親和性の高い疎水性部分を有する疎水化剤を吸着させる方法を用いることができる。このような疎水化剤としては、国際公開第2015/163405号公報や特開2018-104533号公報に記載されているようなアミド基とアルキル基を有するモノマーを共重合して得られる樹脂や特開2009-167249号公報に記載されているようなポリオレフィンに親水性高分子及び/または酸性基が結合してなる重合体、国際公開第2020/235310号公報に記載されているような(メタ)アクリル酸を含むモノマーを共重合して得られるアクリル樹脂またはスチレンアクリル樹脂を用いることができる。これらの中でもセルロース繊維配合樹脂組成物の成形品の機械強度向上効果に優れることから、アクリル酸を含むモノマーを共重合して得られるスチレンアクリル樹脂が好ましい。
【0014】
前記疎水化剤をセルロース繊維に吸着させる方法としては、疎水化剤が均一に混合でき、セルロース繊維の凝集や分解を伴わない温度で乾燥出来れば、その方法に特に制限はない。疎水化剤を固形状態でセルロース繊維に添加してもよいが、セルロース繊維に疎水化剤を均一に吸着させるために、水や有機溶剤等を使用し、セルロース繊維と混合した後に乾燥することが好ましい。後の<セルロース繊維配合樹脂樹脂組成物を得る工程>において、得られた疎水化したセルロース繊維と熱可塑性樹脂とを混練する際に水や有機溶剤の蒸発により混練温度が低下するのを避けるため、乾燥後の疎水化したセルロース繊維の固形分は95%以上が好ましく、98%以上がより好ましい。混合溶媒に特に制限はなく、従来公知な化合物を使用することができる。
【0015】
また、疎水化したセルロース繊維を得る方法として、疎水化剤をセルロース繊維に吸着させる方法が好ましいが、その他に、セルロースの官能基を置換修飾する方法を用いることもできる。具体的には、カルボキシル基、イソシアネート基、ハロゲン基、エポキシ基、シラノール基、アルデヒド基、酸ハロゲン化物、酸無水物、多塩基酸無水物などのセルロース繊維の水酸基と反応しうる官能基を有する化合物を用いて、疎水性の官能基をセルロースに導入する方法である。例えば、セルロースの水酸基を無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水吉草酸、無水ヘキサン酸、無水デカン酸、無水安息香酸、無水ステアリン酸などの酸無水物や無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、アルキル若しくはアルケニルコハク酸無水物などの多塩基酸無水物等でエステル化する方法を用いることができる。
【0016】
<セルロース繊維配合樹脂組成物を得る工程>
本工程においては、疎水化したセルロースなどのセルロース繊維(A)と熱可塑性樹脂(B)とを混練しながらセルロース繊維を分散させて、セルロース繊維配合樹脂組成物を得る。本工程では混練機内部で強いせん断をかけセルロース繊維を解繊させることのできる二軸混練機を用いることが好ましい。
【0017】
二軸混練機から押し出されたセルロース繊維配合樹脂組成物は混練機内部でかけられるせん断力で高温になっているため、押し出された後は速やかにペレット形状にカッティング(ペレット化)し、その後冷却する必要がある。カッティング方法として混練機の吐出口に高速で回転する刃を設け、セルロース繊維配合樹脂組成物が混練機から押し出された傍からペレット状にカットするサイドホットカット方式が好ましい。サイドホットカット方式をとり、セルロース繊維配合樹脂組成物を冷却され固くなる前に半溶融状態でカットすることで、従来冷却後にストランドをカットする際に発生していた微小な破砕物が発生しないため、製品歩留まりを向上させることができる。
【0018】
ペレット化するときのセルロース繊維配合樹脂組成物の温度は、使用している熱可塑性樹脂の融点以上である必要がある。融点より低いとセルロース繊維配合樹脂組成物の流動性がなくなり、混練機出口で閉塞する等の障害が発生する。また、上限温度としてはセルロース繊維が熱により劣化しない温度が好ましい。具体的には250℃以下で混練するのが好ましい。
【0019】
本発明で使用するセルロース繊維配合樹脂組成物中のセルロース繊維(A)の量は25~65質量%が好ましい。セルロース繊維(A)の量が25~65質量%であることにより、ダイスから押し出された樹脂が高温下でも保形性と流動性を両立できる。また、回転刃でセルロース繊維配合樹脂組成物をカットする際、操業性、後述するペレット中の残存水分量に支障のない範囲でミスト(霧状の水)を回転刃に吹き付け、セルロース繊維配合樹脂組成物や回転刃の温度を調整してもよい。
【0020】
本発明において、カットされたセルロース繊維配合樹脂組成物のペレットは空気輸送にて移送される。常識的にはペレットの空気輸送に必要な風量は5~10m3/min程度であるが、本発明においてはこの風量をはるかに超える高い風量で空気輸送することにより、ペレットは空気輸送されながら急速に冷却され、取り出し時までにブロッキングが発生しない温度まで低下する。
【0021】
本発明における空気輸送による冷却は、水浴に浸漬させる工程を採らないため、水浴による冷却よりも最終製品中の水分量を低く保つことができる。ペレット中に残存水分があると、ペレットの経時的な品質変化が発生したり、成形物中に水分由来の空洞が発生したりするなどして、結果、材料強度の低下にもつながる。本発明の製造方法では最終製品中の水分量を低く抑えることができるため、これらのリスクを低減することができる。ペレット中の残存水分量の多寡は、赤外線水分計を用いた揮発分の測定などの方法で確認することが可能である。以下、ペレット中の残存水分量をペレット中の揮発分と表記することがある。
【0022】
空気輸送による冷却を行う時、風量は25m3/min以上である必要がある。25m3/min以下では冷却能が低く、カットされたセルロース繊維配合樹脂組成物のペレットが十分に冷却されないことから、取り出し時に半溶融状態で合一化(ブロッキング)し、操業性が低下する。風量は30m3/min以上であることが好ましい。一方、風量を大きくするほど空送設備の規模が大きくなるため、最大風量は100m3/minであることが好ましい。また、この時の混練機の吐出量は15kg/h以上100kg/h以下である必要があり、15kg/h以上70kg/h以下が好ましい。15kg/h未満であれば十分にペレットを冷却できるが生産性が著しく低くなってしまう。100kg/hを超えて吐出すると、ペレットがブロッキングしやすくなってしまう。空気輸送によって移送する距離は長いほどペレットを冷却でき、5m以上であることが好ましい。
【0023】
本発明において、熱可塑性樹脂(B)は、疎水化剤として用いられるもの以外の、成形体に通常用いられているものであれば特に限定されないが、融点、または軟化点が220℃以下であると、セルロース繊維への熱による影響が少ないため好ましい。熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合物などのポリオレフィン;及びそれらのポリオレフィンと無水マレイン酸を反応させた変性ポリオレフィン;ポリアセタール、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12などのポリアミド;ポリ乳酸、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル;ポリ塩化ビニルやポリ塩化ビニリデンなどの塩素樹脂;ポリフッ化ビニルやポリフッ化ビニリデンなどのフッ素樹脂;ポリスチレン;ABS樹脂;石油樹脂、クマロン樹脂;テルペン樹脂;ロジン樹脂;オレフィン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー等の熱可塑性エラストマー;アイオノマー樹脂;ポリアクリロニトリル;エチレン-酢酸ビニル樹脂;エチレン-ビニルアルコール樹脂;ポリプロピレンカーボネート、ポリカーボネートジオールなどのポリカーボネート;変性ポリフェニレンエーテル;メチルペンテン樹脂などが挙げられる。前記、変性ポリオレフィンとしては、例えば無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレンなどの無水マレイン酸変性ポリオレフィンなどが挙げられる。
【0024】
これらの中でも、前述した融点の観点からポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリ乳酸、ポリアセタール、ポリオレフィン、変性ポリオレフィンが好ましい。中でも融点が低く溶融挙動がシャープな傾向であり、セルロース繊維の熱による劣化を防止し易いことからポリオレフィン及び変性ポリオレフィンが好ましい。これらの1種又は2種以上を混合使用できる。2種以上の熱可塑性樹脂(B)を混合使用する場合、その中で最も配合比率の高い成分の融点以上に合わせて混練条件を設定する必要がある。
【0025】
本発明のセルロース繊維配合樹脂組成物には、本発明の効果を妨げない範囲で、熱可塑性樹脂との混練工程において、疎水化剤・熱可塑性樹脂以外の樹脂、タルク、クレイ、ガラス繊維等の各種充填剤、結晶化核剤、架橋剤、加水分解防止剤、酸化防止剤、滑剤、ワックス類、着色剤、安定剤等を配合してもよい。
【0026】
上記のようにして得られたセルロース繊維配合樹脂組成物を成形体とするには、一般的な成形方法を用いることができる。例えば、射出成形、押出成形、ブロー成形、圧縮成形、発泡成形などが挙げられる。
【0027】
また本発明の製造方法で得られるセルロース繊維配合樹脂組成物を用いた成形体の用途としては特に限られることはないが、例えば、自動車、バイク、自転車、鉄道、ドローン、ロケット、航空機、船舶等の輸送機械用の内外装材や筐体等、風力発電機、水力発電機等のエネルギー機械、エアコン、冷蔵庫、掃除機、電子レンジ、AV機器、デジタルカメラ、パソコン等の家電筐体、電子基板、携帯電話、スマートホン等の通信機器筐体、松葉づえ、車いす等の医療用器具、スニーカーやビジネスシューズ等の靴、タイヤ、球技スポーツ用のボール、スキーブーツ、スノーボード板、ゴルフクラブ、プロテクタ、釣り糸、疑似餌等のスポーツ用品、テントやハンモックなどのアウトドア用品、電線被覆材、水道管、ガス管等の土木建築資材、柱材、床材、化粧板、窓枠、断熱材等の建築材、本棚、机、椅子等の家具、産業用ロボット、家庭用ロボット、ペットボトル等の樹脂容器、メガネフレーム、ごみ箱、シャープペンシルケース等の生活雑貨等が挙げられる。
【実施例0028】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0029】
(製造例1)
[疎水化剤の調製]
攪拌機、温度計、還流冷却器を備えた反応容器に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート500質量部を仕込み、攪拌しながら内温145℃まで昇温した。モノマーとしてメタクリル酸メチル350質量部、アクリル酸50質量部、スチレン100質量部、重合開始剤としてジ-t-ブチルパーオキサイド40質量部を4時間かけて仕込んだ。仕込み終了後、内温145℃で1時間保温し、その後系内の未反応物及び溶媒を除去し、疎水化剤であるスチレンアクリル樹脂を得た。
【0030】
[疎水化したセルロース繊維を得る工程]
セルロース繊維として針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)を用いた。容器へセルロース繊維を77質量部、水100質量部と、疎水化剤として、得られたスチレンアクリル樹脂23質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル77質量部を投入し、70℃で混合した後130℃へ昇温し、減圧下で水、プロピレングリコールモノメチルエーテルを留去し、セルロース繊維表面をスチレンアクリル樹脂で疎水化したセルロース繊維を得た。
【0031】
[熱可塑性樹脂融点の測定]
本実施例で使用したポリプロピレン樹脂((株)プライムポリマー製プライムポリプロ(登録商標)J108M)および無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(東洋紡(株)製ハードレン(登録商標)PMAH-1000P)の融点はDSC(SII製 EXSTAR6000)で測定した。試料を窒素雰囲気下にて200℃まで10℃/minの速度で昇温し、その後0℃まで10℃/minの速度で降温した。さらに200℃まで10℃/minの速度で昇温し、途中で観測される吸熱挙動のピーク値よりそれぞれの樹脂の融点を決定した。ポリプロピレン樹脂の融点は165℃、無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂の融点は158℃であった。
【0032】
(実施例1)
[セルロース繊維配合樹脂組成物を得る工程]
セルロース繊維(A)として、得られた疎水化したセルロース繊維52質量部(うちセルロース繊維40質量部、スチレンアクリル樹脂12質量部)と、熱可塑性樹脂(B)として無水マレイン酸変性ポリプロピレン12質量部、ポリプロピレン樹脂36質量部を二軸混練機((株)日本製鋼所製TEX44、軸径44mm)へ投入し、180℃、150rpmで溶融混練しながら16kg/hで吐出し、混練機から押し出されたセルロース繊維配合樹脂組成物を、回転刃を2本有するサイドホットカット設備で速やかにカットした。回転刃の周速は250rpm、また、カット時のセルロース繊維配合樹脂組成物の温度は227℃であった。次いでカットして得られたセルロース繊維配合樹脂組成物のペレットを、ブロワーを用いて30m3/minの風量で空気輸送した。その後、空気輸送されてきたペレットを目開き3mmの振動篩にかけて、ペレットを取り出した。振動篩で除去された微小な破砕物の重量は得られたペレットの重量に対し1質量%未満であった。各ペレットの合一化、すなわちブロッキングは発生しなかった。ペレット中の揮発分は0.1%であった。
【0033】
(実施例2~6)
製造例1で得られた疎水化したセルロース繊維を用意し、表1に記載したセルロース繊維(A)配合量、吐出量とした以外は実施例1と同様の操作を行い、セルロース繊維配合樹脂組成物のペレットを得た。いずれの実施例においても振動篩で除去された微小な破砕物の重量は得られたペレットの重量に対し1質量%未満であった。また、いずれの実施例においてもブロッキングは発生しなかった。ペレット中の揮発分は表2に示す通りであった。
【0034】
(実施例7)
製造例1で得られた疎水化したセルロース繊維を用意し、表1に記載したセルロース繊維(A)配合量、吐出量として二軸混練操作を行った。その後、混練機から押し出されたセルロース繊維配合樹脂組成物を、回転刃を2本有するサイドホットカット設備で速やかにカットした。回転刃の周速は250rpm、また、カット時のセルロース繊維配合樹脂組成物の温度は212℃であった。次いでカットして得られたセルロース繊維配合樹脂組成物のペレットを、ブロワーを用いて30m3/minの風量で空気輸送した。その後、空気輸送されてきたペレットを目開き3mmの振動篩にかけながらミスト(霧状の水)を噴霧して、ペレットを取り出した。振動篩で除去された微小な破砕物の重量は得られたペレットの重量に対し1質量%未満であった。また、ブロッキングは発生しなかった。ペレット中の揮発分は0.1%であった。
【0035】
(実施例8)
製造例1で得られた疎水化したセルロース繊維を用意し、表1に記載したセルロース繊維(A)配合量、吐出量とした以外は実施例7と同様の操作を行い、セルロース繊維配合樹脂組成物のペレットを得た。振動篩で除去された微小な破砕物の重量は得られたペレットの重量に対し1質量%未満であった。ブロッキングは発生しなかった。ペレット中の揮発分は0.2%であった。
【0036】
(比較例1)
[従来技術としての比較:サイドホットカット不使用]
製造例1で得られた疎水化したセルロース繊維を用意し、実施例1と同一のセルロース繊維(A)配合量、同一の混練機、吐出速度で混練機を操作した。混練機から押し出されたセルロース繊維配合樹脂組成物はストランド状に引き取りながら25℃の水浴に浸漬させ、ペレタイザーにてストランドをカットしてセルロース繊維配合樹脂組成物のペレットを得た。ペレタイザー入口の温度、すなわちペレット化するときのセルロース繊維配合樹脂組成物の温度を非接触温度計で測定したところ、90℃であった。カットしたペレットを目開き3mmの振動篩にかけて、ペレットを取り出した。振動篩で除去された微小な破砕物の重量は得られたペレットの重量に対し20質量%であった。ブロッキングは発生しなかった。ペレット中の揮発分は1.2%であった。
【0037】
(比較例2)
[従来技術としての比較:サイドホットカットを使用するが、空送によるペレット冷却不使用]
製造例1で得られた疎水化したセルロース繊維を用意し、実施例1と同一のセルロース繊維(A)配合量、同一の混練機、吐出速度で混練機を操作した。混練機から押し出されたセルロース繊維配合樹脂組成物は実施例1と同じくサイドホットカットで速やかにペレット状にカットした。次いでカットして得られたセルロース繊維配合樹脂組成物のペレットをベルトコンベアで移送しながら、スポットクーラーで冷却した。その後、目開き3mmの振動篩にかけて、ペレットを取り出した。振動篩で除去された微小な破砕物は得られたペレットの重量に対し1質量%未満であったが、得られたペレットは各ペレット同士が激しく合一化していた。ペレット中の揮発分は0.2%であった。
【0038】
(比較例3)
[空送によるによるペレット冷却時の風量が25m3/min未満である場合]
セルロース繊維(A)として製造例1で得られた疎水化したセルロース繊維39質量部(うちセルロース繊維30質量部、スチレンアクリル樹脂9質量部)と、熱可塑性樹脂(B)として無水マレイン酸変性ポリプロピレン(東洋紡(株)製ハードレン(登録商標)PMAH-1000P)9質量部、ポリプロピレン樹脂((株)プライムポリマー製プライムポリプロ(登録商標)J108M)52質量部を二軸混練機((株)日本製鋼所製TEX44、軸径44mm)へ投入し、溶融混練しながら16kg/hで吐出し、混練機から押し出されたセルロース繊維配合樹脂組成物を、回転刃を2本有するサイドホットカット設備で速やかにカットした。回転刃の周速は250rpm、また、カット時のセルロース繊維配合樹脂組成物の温度は214℃であった。次いでカットして得られたセルロース繊維配合樹脂組成物のペレットを、ブロワーを用いて20m3/minの風量で空気輸送を行った。その後、空気輸送されてきたペレットを目開き3mmの振動ふるいにかけながらミスト(霧状の水)を噴霧して、ペレットを取り出した。振動篩で除去された微小な破砕物は得られたペレットの重量に対し1質量%未満であったが、得られたペレットは各ペレット同士が激しく合一化していた。ペレット中の揮発分は0.2%であった。
【0039】
(比較例4)
[混練時の吐出量が100kg/hを超える場合]
製造例1で得られた疎水化したセルロース繊維を用意し、表1に記載したセルロース繊維(A)配合量、吐出量とした以外は実施例7と同様の操作を行い、セルロース繊維配合樹脂組成物のペレットを得た。振動篩で除去された微小な破砕物は得られたペレットの重量に対し1質量%未満であったが、得られたペレットは各ペレット同士が激しく合一化していた。ペレット中の揮発分は0.1%であった。
【0040】
[ペレット中の揮発分測定]
得られたセルロース繊維配合樹脂組成物のペレット中の揮発分は赤外線水分計((株)ケツト科学研究所製FD660)で測定した。
[微小な破砕物の有無]
微小な破砕物の発生量を下式にて算出した。
微小な破砕物の発生量(%)=100×(目開き3mmの振動篩で除去された微小な破砕物の重量)/(目開き3mmの振動篩で除去されなかった製品ペレットの重量)
微小な破砕物発生量が5%未満であれば「○」、5%以上であれば「×」と判断した。
[ブロッキングの有無]
振動篩で除去されなかったペレットの中に10粒以上が合一しているものがなければ「○」、10粒以上が合一しているものがあれば「×」と判断した。
【0041】
実施例1~8、比較例1~4の結果を表2に示す。
【0042】
【0043】
【0044】
実施例1~8と比較例1から、本発明の製造方法で得られたセルロース繊維配合樹脂組成物にはカット時の温度が使用した熱可塑性樹脂(B)の融点以上であり、微小な破砕物が発生せず、製品歩留まりが高いことがわかる。また、水浴での冷却を行わないためペレット中の揮発分も低く、ペレットの経時的な品質変化や成形物中の水分由来の空洞の発生のリスクを低減することができる。
【0045】
実施例1~8と比較例2~4から、本発明は従来技術より優れていることがわかる。また、実施例1と実施例8よりミストの有無でペレット中の揮発分に差がないこと、ペレットのブロッキング発生状況に影響がないことからミストの使用は本発明に影響を及ぼさないことがわかり、実施例7と比較例3から、本発明で規定する風量での空気輸送がペレットの冷却に優れていることがわかる。