(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054657
(43)【公開日】2024-04-17
(54)【発明の名称】浸漬型中空糸膜モジュールおよびその浸漬型中空糸膜モジュールを使用した浄水装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/44 20230101AFI20240410BHJP
B01D 63/02 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
C02F1/44 A
B01D63/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161033
(22)【出願日】2022-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】591205673
【氏名又は名称】株式会社トーケミ
(74)【代理人】
【識別番号】100121496
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 重雄
(72)【発明者】
【氏名】大谷 務
(72)【発明者】
【氏名】波多江 秀人
(72)【発明者】
【氏名】丹 秀倫
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA02
4D006HA12
4D006HA93
4D006JA08A
4D006JA30A
4D006JA30C
4D006KA11
4D006KC03
4D006KC13
4D006LA01
4D006MA01
4D006PA01
4D006PB02
4D006PB04
4D006PB05
4D006PC53
(57)【要約】
【課題】原水の水位が減った場合でも原水を効率良く濾過して浄水を生成する。
【解決手段】前方保持部材11bと後方保持部材11cとの間に複数の中空糸膜フィルタ11aを設け、前方保持部材11bと後方保持部材11cとのいずれか一方に複数の中空糸膜フィルタ11aを通過して濾過された水を集水する集水用集水ノズル11b21を設けた中空糸膜フィルタ集合体11と、中空糸膜フィルタ集合体11に取付けられ、浄化すべき原水に浮いて中空糸膜フィルタ集合体11が原水曹28の原水中でほぼ水平状態で浸漬するように中空糸膜フィルタ集合体11を支持する中空糸膜フィルタ集合体支持部12とを備える。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方保持部材と後方保持部材との間に複数の中空糸膜フィルタを設け、前記前方保持部材と前記後方保持部材とのいずれか一方に前記複数の中空糸膜フィルタを通過して濾過された水を集水する集水用集水ノズルを設けた中空糸膜フィルタ集合体と、
前記中空糸膜フィルタ集合体に取付けられ、浄化すべき原水に浮いて前記中空糸膜フィルタ集合体が原水中でほぼ水平状態で浸漬するように前記中空糸膜フィルタ集合体を支持する中空糸膜フィルタ集合体支持部と、
を備えることを特徴とする浸漬型中空糸膜モジュール。
【請求項2】
請求項1記載の浸漬型中空糸膜モジュールにおいて、
前記中空糸膜フィルタ集合体支持部は、
前記中空糸膜フィルタ集合体の左右両側にそれぞれ設けられ、前記前方保持部材と後方保持部材とを一定間隔を保持して連結する一対の側方フレーム材と、前記一対の側方フレーム材を前記前方保持部材側にて連結する前方フレーム材と、前記一対の側方フレーム材を前記後方保持部材側にて連結する後方フレーム材とを備えた支持フレーム本体と、
水に浮いて前記中空糸膜フィルタ集合体および前記支持フレーム本体が水中でほぼ水平状態で浸漬するように少なくとも前記一対の側方フレーム材または前記前方フレーム材および前記後方フレーム材に設けられた浮力体本体と、
を備えることを特徴とする浸漬型中空糸膜モジュール。
【請求項3】
請求項2記載の浸漬型中空糸膜モジュールにおいて、
前記中空糸膜フィルタ集合体支持部を構成する前記前方フレーム材と前記後方フレーム材とは、それぞれ、前記一対の側方フレーム材の前端および後端よりも内側に固定され、前記一対の側方フレーム材の前端および後端はそれぞれ前記前方フレーム材と前記後方フレーム材よりもそれぞれ前後に突出しており、
前記中空糸膜フィルタ集合体支持部を構成する前記一対の側方フレーム材に前記中空糸膜フィルタ集合体を構成する前記前方保持部材と前記後方保持部材とを取付ける際、前記一対の側方フレーム材に対する前記前方保持部材と前記後方保持部材の取付位置は、前記一対の側方フレーム材に対する前記前方フレーム材と前記後方フレーム材の固定位置よりもそれぞれ前側と後側であることを特徴とする浸漬型中空糸膜モジュール。
【請求項4】
請求項2に記載の浸漬型中空糸膜モジュールにおいて、
前記一対の側方フレーム材それぞれの前後両側には、前記中空糸膜フィルタ集合体を構成する前記前方保持部材および前記後方保持部材それぞれの左右両側が保持部材固定手段によって着脱可能に固定されることを特徴とする浸漬型中空糸膜モジュール。
【請求項5】
原水が溜められた原水槽に請求項1~請求項4のいずれか一の請求項に記載の浸漬型中空糸膜モジュールを浸漬させて使用することを特徴とする浄水装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空糸膜モジュールを外部に露出させた非ケーシング型(ネイキッド型)の浸漬型中空糸膜モジュールおよびその浸漬型中空糸膜モジュールを使用した浄水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地震や台風等の広域自然災害が発生した場合、断水により飲料水のみならず生活用水の確保が困難になる。震災発生時、意識調査において、震災後、最も困ったものとして生活用水の確保が上位にあがっている。災害発生時に、生活用水として防火水槽やプールの水等を利用する場合、最低限の処理として、濁りや細菌を除去するために膜濾過を用いた中空糸膜モジュールが使用され、多くは中空糸膜モジュールをケースに収容したケーシング型の中空糸膜モジュールが使用されている。
【0003】
しかし、ケーシング型の中空糸膜モジュールは原水の濁度が高い場合、短時間で閉塞してしまい、逆洗の頻度が多くなり、結果として確保できる水の量が少なくなるという欠点がある。また、水を濾過する中空糸膜が完全に閉塞してしまった場合、洗浄による濾過性能の回復は困難である。さらに、洗浄水としては膜濾過水を用いるため、原水用のポンプとは別に逆洗用のポンプなど別の動力が必要となる。
【0004】
そのため、災害時用の中空糸膜モジュールとして、中空糸膜モジュールを外部に露出させた非ケーシング型(ネイキッド型)の浸漬型中空糸膜モジュールがあり、例えば、複数の中空糸膜フィルタを束ねた中空糸膜モジュールに浮きや浮力体等を取付けたものが提案されている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9-131517号公報
【特許文献2】特許第3417139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述の特許文献1,2の非ケーシング型(ネイキッド型)の中空糸膜モジュールは、中空糸膜モジュールの上部に浮きや浮力体等が設けられ、中空糸膜モジュールが水中に直立状態になるため、防火水槽やプールの水等の水位が減って来て、中空糸膜モジュールがその一部でも水面上から飛び出すと、浄化することができないという問題があった。
【0007】
特に、災害発生時等の非常時においては、限られた水源を使用するため、防火水槽やプールの水等の水位が減った状態になっても、可能な限り処理水を得られることが望ましい。
【0008】
そこで、本発明はこのような課題に着目してなされたもので、原水の水位が減った場合でも原水を効率良く濾過して浄水を生成することができる浸漬型中空糸膜モジュールおよびその浸漬型中空糸膜モジュールを使用した浄水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る浸漬型中空糸膜モジュールは、前方保持部材と後方保持部材との間に複数の中空糸膜フィルタを設け、前記前方保持部材と前記後方保持部材とのいずれか一方に前記複数の中空糸膜フィルタを通過して濾過された水を集水する集水用集水ノズルを設けた中空糸膜フィルタ集合体と、前記中空糸膜フィルタ集合体に取付けられ、浄化すべき原水に浮いて前記中空糸膜フィルタ集合体が原水中でほぼ水平状態で浸漬するように前記中空糸膜フィルタ集合体を支持する中空糸膜フィルタ集合体支持部と、を備えることを特徴とする。
また、本発明に係る浸漬型中空糸膜モジュールでは、前記中空糸膜フィルタ集合体支持部は、前記中空糸膜フィルタ集合体の左右両側にそれぞれ設けられ、前記前方保持部材と後方保持部材とを一定間隔を保持して連結する一対の側方フレーム材と、前記一対の側方フレーム材を前記前方保持部材側にて連結する前方フレーム材と、前記一対の側方フレーム材を前記後方保持部材側にて連結する後方フレーム材とを備えた支持フレーム本体と、水に浮いて前記中空糸膜フィルタ集合体および前記支持フレーム本体が水中でほぼ水平状態で浸漬するように少なくとも前記一対の側方フレーム材または前記前方フレーム材および前記後方フレーム材に設けられた浮力体本体とを備えることも特徴とする。
また、本発明に係る浸漬型中空糸膜モジュールでは、前記中空糸膜フィルタ集合体支持部を構成する前記前方フレーム材と前記後方フレーム材とは、それぞれ、前記一対の側方フレーム材の前端および後端よりも内側に固定され、前記一対の側方フレーム材の前端および後端はそれぞれ前記前方フレーム材と前記後方フレーム材よりもそれぞれ前後に突出しており、前記中空糸膜フィルタ集合体支持部を構成する前記一対の側方フレーム材に前記中空糸膜フィルタ集合体を構成する前記前方保持部材と前記後方保持部材とを取付ける際、前記一対の側方フレーム材に対する前記前方保持部材と前記後方保持部材の取付位置は、前記一対の側方フレーム材に対する前記前方フレーム材と前記後方フレーム材の固定位置よりもそれぞれ前側と後側であることも特徴とする。
また、本発明に係る浸漬型中空糸膜モジュールでは、前記一対の側方フレーム材それぞれの前後両側には、前記中空糸膜フィルタ集合体を構成する前記前方保持部材および前記後方保持部材それぞれの左右両側が保持部材固定手段によって着脱可能に固定されることも特徴とする。
また、本発明に係る浄水装置は、原水が溜められた原水槽に上述のいずれか一の浸漬型中空糸膜モジュールを浸漬させて使用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数の中空糸膜フィルタを設けた中空糸膜フィルタ集合体は、中空糸膜フィルタ集合体支持部によって原水中でほぼ水平状態で浸漬するため、原水の水位が減った場合でも原水を効率良く濾過して浄水を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る実施形態の浸漬型中空糸膜モジュールを構成する中空糸膜フィルタ集合体の正面図である。
【
図2】本発明に係る実施形態の浸漬型中空糸膜モジュールを構成する中空糸膜フィルタ集合体の左側面図である。
【
図3】本発明に係る実施形態の浸漬型中空糸膜モジュールを構成する中空糸膜フィルタ集合体支持部の正面図である。
【
図4】本発明に係る実施形態の浸漬型中空糸膜モジュールを構成する中空糸膜フィルタ集合体の右側面図である。
【
図5】本発明に係る実施形態の浸漬型中空糸膜モジュールを構成する中空糸膜フィルタ集合体支持部の支持フレーム本体の正面図である。
【
図6】本発明に係る実施形態の浸漬型中空糸膜モジュールを構成する中空糸膜フィルタ集合体支持部の支持フレーム本体の右側面図である。
【
図7】(a)~(c)それぞれ中空糸膜フィルタ集合体支持部の支持フレーム本体を構成する側方フレーム材の正面図、右側面図、平面図である。
【
図8】(a)~(c)それぞれ中空糸膜フィルタ集合体支持部の支持フレーム本体を構成する下方フレーム材の正面図、平面図、右側面図である。
【
図9】本発明に係る実施形態の浸漬型中空糸膜モジュールの正面図である。
【
図10】本発明に係る実施形態の浸漬型中空糸膜モジュールの右側面図である。
【
図12】本発明に係る実施形態の浸漬型中空糸膜モジュールを使用した浄水装置の概略構成図である。
【
図13】本発明に係る実施形態の浸漬型中空糸膜モジュールを使用した浄水装置の概略構成において原水槽に設置した浸漬型中空糸膜モジュールの浸漬状態を示す図である
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る実施形態の浸漬型中空糸膜モジュール1およびそれを使用した浄水装置の実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、下記に説明する実施形態はその寸法等も含めあくまで本発明の一例であり、本発明は下記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で適宜変更可能である。
【0013】
<実施形態の浸漬型中空糸膜モジュール1の構成>
実施形態の浸漬型中空糸膜モジュール1は、後述する
図9~
図11等に示すように複数の中空糸膜フィルタ11aを設けた中空糸膜フィルタ集合体11と、中空糸膜フィルタ集合体11を支持する中空糸膜フィルタ集合体支持部12と、中空糸膜フィルタ集合体支持部12に中空糸膜フィルタ集合体11を取付ける保持部材固定手段の一つであるU字ボルト13およびナット14等で構成される。
【0014】
(中空糸膜フィルタ集合体11)
中空糸膜フィルタ集合体11は、
図1および
図2等に示すように、複数の中空糸膜フィルタ11aと、複数の中空糸膜フィルタ11aの先端部が連結される前方保持部材11bと、複数の中空糸膜フィルタ11aの後端部が連結される後方保持部材11cとで構成される。
【0015】
複数の中空糸膜フィルタ11aは、
図1や
図2等に示すように、数百本を束にした公知の中空糸膜モジュールである中空糸膜フィルタ11aを例えば、10~20束の複数、等間隔で並ぶようにその両端を前方保持部材11bと後方保持部材11cとに固定したものである。
【0016】
前方保持部材11bは、
図1や
図2に示すように複数の中空糸膜フィルタ11aの前端部を10~20束の複数、等間隔で並ぶように保持するABS等の樹脂を原材料として形成された部材で、複数の中空糸膜フィルタ11aの前端部が固定されるフィルタ前端部固定部材11b1と、フィルタ前端部固定部材11b1に取付けられ、中空で通水路(図示せず。)を有し、複数の中空糸膜フィルタ11aによって濾過され不純物等が取り除かれた濾過水をその通水路(図示せず。)中を通すフィルタ前端部通水部材11b2とで構成され、フィルタ前端部通水部材11b2には通水路(図示せず。)中を通した濾過水を吸引、または、逆洗水をポンプ等に送るためにホースや配管等が連結される集水ノズル11b21を設けている。
【0017】
後方保持部材11cは、複数の中空糸膜フィルタ11aの後端部を10~20束の複数、等間隔で並ぶように保持する部材で、前方保持部材11bと同様にABS等の樹脂を原材料として形成されており、前方保持部材11bと同様に複数の中空糸膜フィルタ11aの後端部が固定されるフィルタ後端部固定部材11c1と、フィルタ後端部固定部材11c1に取付けられ、中空で通水路(図示せず。)を有するフィルタ後端部通水部材11c2とで構成されるが、集水ノズルは省略している。
【0018】
尚、
図1や
図2等に示すように中空糸膜フィルタ11aが極力弛まずに直線状に延ばした状態では、前方保持部材11bと後方保持部材11cとの間の間隔Lは、実施形態の浸漬型中空糸膜モジュール1の濾過能力や運搬時等も考慮して例えば、800~1600mm程度にしている。
【0019】
(中空糸膜フィルタ集合体支持部12)
中空糸膜フィルタ集合体支持部12は、
図3や
図4等に示すように中空糸膜フィルタ集合体11を構成する複数の中空糸膜フィルタ11aが極力弛まず、且つ、重ならないように支持する支持フレーム本体12aと、後述する
図13に示すように支持フレーム本体12aに取付けられた中空糸膜フィルタ集合体11が水面から10cm程度の深さで、かつ、ほぼ水平状態で水に浸漬するように浮く浮力体本体12b1~12b3等で構成されている。
【0020】
支持フレーム本体12aは、後述する
図9等に示すように中空糸膜フィルタ集合体11の左右両側のそれぞれの外側に位置して、前方保持部材11bと後方保持部材11cとを一定間隔を保持して連結する一対の側方フレーム材12a1,12a1と、
図9や
図5、
図6等に示すように一対の側方フレーム材12a1,12a1を前方保持部材11b側にて連結する前方フレーム材12a2と、一対の側方フレーム材12a1,12a1を後方保持部材11c側にて連結する後方フレーム材12a3とを有して構成されており、これら4つのフレーム材12a1~12a3を六角ボルト12cおよびナット12d等(
図4や
図6等参照。)によって長方形状に組み上げて構成される。
【0021】
ただし、一対の側方フレーム材12a1,12a1の先端部12a11,12a11および後端部12a12,12a12それぞれが前方フレーム材12a2と後方フレーム材12a3から突出するように六角ボルト12cおよびナット12d等(
図4や
図6等参照。)によって長方形状に組み上げて構成し、一対の側方フレーム材12a1,12a1の先端部12a11,12a11および後端部12a12,12a12にて後述する
図9~
図11に示すようにU字ボルト13およびナット14によって中空糸膜フィルタ集合体11の前方保持部材11bと後方保持部材11cとを着脱可能に固定するように構成されている。
【0022】
また、中空糸膜フィルタ集合体支持部12を構成する一対の側方フレーム材12a1,12a1は
図7(a)~(c)に示すように、前方フレーム材12a2および後方フレーム材12a3はそれぞれ
図8(a)~(c)に示すように、鉛直面と水平面とを有する断面がL字形状のアングル部材で構成されており、それぞれの水平面および鉛直面に浮力体本体12b1~12b3を接着剤等で貼り付けることにより取付けている。尚、
図7(a)~(c)は、
図5における左側の側方フレーム材12a1の構成を示し、右側の側方フレーム材12a1は対称に構成され、
図8(a)~(c)は、
図5における下側の後方フレーム材12a3の構成を示し、上側の前方フレーム材12a2は後方フレーム材12a3と対称に構成される。
【0023】
ここで、後方フレーム材12a3および前方フレーム材12a2の両端部は、それぞれ
図8(a),(b)に示すように鉛直面12a32よりも水平面12a31を突出させておき、水平面12a31の両側の突出部それぞれで一対の側方フレーム材12a1,12a1に重ねて六角ボルト12cおよびナット12dで固定できるように形成されている。
【0024】
浮力体本体12b1~12b3は、発泡スチロール等の水に浮きやすい材料を用い、4つのフレーム材12a1~12a3の水平面および鉛直面に接着剤等で張り付けることができるように断面が正方形に形成されている。尚、非ケーシング型(ネイキッド型)中空糸膜モジュールは原水槽(防火水槽またはプールなど)に投げ込んだ際に、水面下約10cm付近でほぼ水平状態(他所の傾斜状態は含む。)で沈むように浮力体本体12b1~12b3の長さ等を調整して浮力を調整している。
【0025】
(中空糸膜フィルタ集合体支持体12への中空糸膜フィルタ集合体11の取付け)
中空糸膜フィルタ集合体支持体12への中空糸膜フィルタ集合体11の取付けは、
図9~
図11に示すように一対の側方フレーム材12a1,12a1において前方フレーム材12a2と後方フレーム材12a3から突出する先端部12a11,12a11および後端部12a12,12a12にてU字ボルト13およびナット14によって中空糸膜フィルタ集合体11の前方保持部材11bと後方保持部材11cとをそれぞれ着脱可能に固定する。
【0026】
そのため、実施形態の浸漬型中空糸膜モジュール1を使用しない場合には、中空糸膜フィルタ集合体支持体12に中空糸膜フィルタ集合体11を装着したまま倉庫で保管しても良いが、中空糸膜フィルタ集合体支持体12から中空糸膜フィルタ集合体11を取り外し、別々に倉庫で保管することも可能となる。
【0027】
<実施形態の浸漬型中空糸膜モジュール1を使用した浄水装置の動作>
次に、以上のように構成された実施形態の浸漬型中空糸膜モジュール1を使用した浄水装置2の構成や動作(処理)について説明する。
【0028】
図12は、実施形態の浸漬型中空糸膜モジュール1を使用した浄水装置2の構成を示している。
【0029】
実施形態の浸漬型中空糸膜モジュール1を使用した浄水装置2は、例えば、
図12や
図13に示すように、浸漬型中空糸膜モジュール1と、第1三方弁21と、第2三方弁22と、吸引ポンプ23と、処理水タンク24とをホース25~27等で連結して構成され、原水Wが蓄えられた防火水槽やプール等の原水槽28に浸漬型中空糸膜モジュール1をその水位面から10cm程度の深さにほぼ水平状態に浸漬させて使用する。
【0030】
浄水(処理水)W’を得るためには、まず、上述したように中空糸膜フィルタ集合体11を倉庫等から取り出し、U字ボルト13およびナット14で中空糸膜フィルタ集合体支持部12によって実施形態の浸漬型中空糸膜モジュール1を組み立てると共に、ホース25~27等で第1三方弁21や第2三方弁22、吸引ポンプ23、処理水タンク24と連結し、実施形態の浸漬型中空糸膜モジュール1を防火水槽やプール等の原水槽21に入れて、原水Wの水面下約10cm付近で中空糸膜フィルタ集合体11がほぼ水平状態で沈ませて原水Wに浸漬させる。
【0031】
次に、第1三方弁21および第2三方弁22を「濾過時」のポジションに切り替え、自吸式ポンプ等の吸引ポンプ23を運転する。この際、吸引ポンプ23が容積式ポンプの場合は呼び水が不要のため、そのまま、運転を行う。吸引ポンプ23が渦巻式ポンプの場合は、別途、人力を動力源とする容積式ポンプを渦巻式ポンプの吐出側に取り付け、渦巻式ポンプを運転する前に、容積式ポンプを運転し、吸引配管のエア抜きを行う。吸引配管のエア抜きが完了した後、渦巻式ポンプを運転する。吸引配管のエアが抜け、ポンプが運転状態になると、実施形態の浸漬型中空糸膜モジュール1を構成する中空糸膜フィルタ集合体11の複数の中空糸膜フィルタ11aにて原水Wを吸引して膜濾過が行われ、浄水(処理水)W’が得られ、浄水(処理水)W’は処理水タンク24へと送られる。
【0032】
ここで、中空糸膜フィルタ集合体11を倉庫等で保管する場合、中空糸膜フィルタ11aが乾燥すると、すぐに使えず、長い場合には1日程度、水に浸して親水化という水に慣らす作業が必要になり、これを防ぐため、0.1~1%程度の濃度に調整した重亜硫酸ソーダ溶液をビニール袋等に封入し、その中に中空糸膜フィルタ集合体11を入れ、中空糸膜フィルタ11aの湿潤状態を保った状態で保管している。
【0033】
そのため、実施形態の浸漬型中空糸膜モジュール1を入れる防火水槽やプール等の原水槽21が小さく、初期の浄水(処理水)Wに中空糸膜フィルタ集合体11に浸み込んでいた重亜硫酸ソーダ溶液の影響が想定される場合、中空糸膜フィルタ集合体11に浸み込んでいた重亜硫酸ソーダ溶液を流すため、実施形態の浸漬型中空糸膜モジュール1によって初期に浄化した浄水(処理水)W’を捨てる「捨て水」を行った方が良いが、プールや防火水槽などの容積が比較的大きい原水槽21で、浸漬型中空糸膜モジュール1を原水槽21に入れて原水Wに浸漬させた際に重亜硫酸ソーダ溶液がかなり希釈・拡散され、重亜硫酸ソーダ溶液の影響が無視できる場合には、浄化当初の浄水(処理水)W’を捨てる「捨て水」を行わなくても良い。
【0034】
また、吸引ポンプ23の運転継続によって中空糸膜フィルタ集合体11の複数の中空糸膜フィルタ11aが濾過を継続することで、防火水槽やプール等の原水槽28に蓄えられた原水W中に含まれる濁質等が複数の中空糸膜フィルタ11a膜表面に蓄積していき、それにより、閉塞(吸引圧力の上昇)が進行し、吸引圧力が上昇することで、得られる浄水(処理水)W’の水量は少なくなっていく。
【0035】
浄水(処理水)W’の量が少なくなってきた場合、吸引ポンプ23を停止し、第1三方弁21および第2三方弁22を「逆洗時」のポジションに切り替えた後、再度、吸引ポンプ23を運転する。これにより中空糸膜フィルタ集合体11の複数の中空糸膜フィルタ11aの逆流洗浄を行うことができ、逆流洗浄を行うことで、膜表面に蓄積した濁質等をはがすことでき、閉塞を解消(吸引圧力の低下)することができる。
【0036】
逆流洗浄が終了すると、吸引ポンプ23を停止し、第1三方弁21および第2三方弁22を濾過時のポジションに切り替えた後、再度吸引ポンプ23を運転することで、浄水(処理水)W’を得ることができる。
【0037】
その結果、実施形態の浸漬型中空糸膜モジュール1を使用した浄水装置2では、原水濁度が高い場合でも、比較的長く原水Wを膜濾過して浄水(処理水)W’を得ることが可能となるので、逆洗の頻度も少なくなり、結果として確保できる水の量を増やすことができる。
【0038】
また、実施形態の浸漬型中空糸膜モジュール1を使用した浄水装置2では、第1三方弁21および第2三方弁22を濾過時のポジションに切り替えて再度、吸引ポンプ23を運転することにより中空糸膜フィルタ集合体11の中空糸膜フィルタ11aを逆流洗浄することができるので、効率良く浄水(処理水)W’を得ることができる共に、原水W用のポンプと逆洗用のポンプを兼用することができるので、動力を減らすことができ、コスト削減が可能となる。
【0039】
その結果、例えば、非常時等において、防火水槽やプール水などの原水濁度が高い場合でも、運転初期の呼び水作業を省略、または、簡略化して、清澄な生活用水を得ることができ、また、ポンプ23を原水用ポンプおよび逆洗用ポンプとして兼用することで、製造コストの削減が可能である。
【0040】
<本発明に係る実施形態の浸漬型中空糸膜モジュール1のまとめ>
以上説明したように、本発明に係る実施形態の浸漬型中空糸膜モジュール1は、前方保持部材11bと後方保持部材11cとの間に複数の中空糸膜フィルタ11aを設け、前方保持部材11bと後方保持部材11cとのいずれか一方に複数の中空糸膜フィルタ11aを通過して濾過された水を集水する集水用集水ノズル11b21を設けた中空糸膜フィルタ集合体11と、中空糸膜フィルタ集合体11に取付けられ、原水槽28に溜まった原水W中で浮き、中空糸膜フィルタ集合体11がその原水Wの水面下、10cmほどの深さでほぼ水平状態で浸漬するように中空糸膜フィルタ集合体11を支持する中空糸膜フィルタ集合体支持部12とを備える。
【0041】
そのため、原水槽28の原水の水位が減った場合でも、中空糸膜フィルタ集合体11が原水槽28に溜まった原水W中で水面下、10cmほどの深さでほぼ水平状態で浸漬した状態で原水の水位が減っていくので、中空糸膜フィルタ集合体11を構成する中空糸膜フィルタ11aの一部が浮くことが無くなり、原水W中を効率良く濾過して浄水(処理水)W’を生成することができる。
【0042】
また、中空糸膜フィルタ集合体11が水面下、10cm程度のところで浮上すると、下層に比べて清澄(膜の除去対象である懸濁成分が少ない)である上層の原水Wを優先してろ過することができるため、災害時・非常時に限定されず、キャンプやアウトドア等でも使用することが可能となり、浸漬型中空糸膜モジュール1の利用用途(適用範囲)を拡大することができ、商品価値を向上させることができる。
【0043】
また、本発明に係る実施形態の浸漬型中空糸膜モジュール1では、中空糸膜フィルタ集合体支持部12は、中空糸膜フィルタ集合体11の左右両側にそれぞれ設けられ、前方保持部材11bと後方保持部材11cとを一定間隔を保持して連結する一対の側方フレーム材12a1,12a1と、一対の側方フレーム材12a1,12a1を前方保持部材11b側にて連結する前方フレーム材12a2と、一対の側方フレーム材12a1,12a1を後方保持部材11c側にて連結する後方フレーム材12a3とを備えた支持フレーム本体12aと、水に浮いて中空糸膜フィルタ集合体11および支持フレーム本体12aが水中でほぼ水平状態で浸漬するように少なくとも一対の側方フレーム材12a1,12a1または前方フレーム材12a2および後方フレーム材12a3に設けられた浮力体本体12b1~12b3とを備えている。
【0044】
これにより、中空糸膜フィルタ集合体支持部12は、中空糸膜フィルタ集合体11を構成する複数の中空糸膜フィルタ11aが原水曹28の原水W中で弛んだり絡むことなく確実にほぼ水平状態で浸漬した状態を保つことが可能となるため、原水Wの水位が減った場合でも原水Wを効率良く確実に濾過して浄水(処理水)W’を生成することができる。
【0045】
また、本発明に係る実施形態の浸漬型中空糸膜モジュール1では、中空糸膜フィルタ集合体支持部12を構成する前方フレーム材12a2と後方フレーム材12a3とは、それぞれ、一対の側方フレーム材12a1,12a1の前端および後端よりも内側に固定され、一対の側方フレーム材12a1,12a1の前端および後端はそれぞれ前方フレーム材12a2と後方フレーム材12a3よりもそれぞれ前後に突出しており、中空糸膜フィルタ集合体支持部12に中空糸膜フィルタ集合体11を取付ける際、一対の側方フレーム材12a1,12a1に対する前方保持部材11bと後方保持部材11cの取付位置は、一対の側方フレーム材12a1,12a1に対する前方フレーム材12a2と後方フレーム材12a3の固定位置よりもそれぞれ前側と後側としている。
【0046】
そのため、本発明に係る実施形態の浸漬型中空糸膜モジュール1を原水W中に浮かべて中空糸膜フィルタ集合体11を原水Wに浸漬させた際、中空糸膜フィルタ集合体11を構成する複数の中空糸膜フィルタ11aが原水曹28の原水W中で浮上ろうとしても、複数の中空糸膜フィルタ11aが前方フレーム材12a2と後方フレーム材12a3に当たって原水W中における浮上りを抑制するので、この点でも原水Wを効率良く確実に濾過して浄水(処理水)W’を生成することができる。
【0047】
また、本発明に係る実施形態の浸漬型中空糸膜モジュール1では、中空糸膜フィルタ集合体支持部12を構成する一対の側方フレーム材12a1,12a1と前方フレーム材12a2と後方フレーム材12a3とは、それぞれ、鉛直面と水平面とを有する断面がL字形状のアングル部材で構成されており、浮力体本体12b1~12b3は、一対の側方フレーム材12a1,12a1と前方フレーム材12a2と後方フレーム材12a3それぞれの水平面および鉛直面に上側に張り付けて取付けている。
【0048】
そのため、中空糸膜フィルタ集合体支持部12を構成する一対の側方フレーム材12a1,12a1と前方フレーム材12a2と後方フレーム材12a3全てに浮力体本体12b1~12b3を設けて実施形態の浸漬型中空糸膜モジュール1を原水W中に確実に浮かべて中空糸膜フィルタ集合体11を原水Wに確実に浸漬させることが可能となるので、原水Wの水位が減った場合でも効率良く確実に濾過して浄水(処理水)W’を生成することができる。
【0049】
また、本発明に係る実施形態の浸漬型中空糸膜モジュール1では、一対の側方フレーム材12a1,12a1それぞれの前後両側には、それぞれ、U字ボルト13が取り付けられており、そのU字ボルト13およびナットによって中空糸膜フィルタ集合体11を構成する前方保持部材11bと後方保持部材11cの左右両側を着脱可能に固定する。
【0050】
そのため、本発明に係る実施形態の浸漬型中空糸膜モジュール1を使用しない場合は、U字ボルト13を緩めて中空糸膜フィルタ集合体支持部12から中空糸膜フィルタ集合体11を取外して、中空糸膜フィルタ集合体11と中空糸膜フィルタ集合体支持部12とを別々に保管等することができるため、実施形態の浸漬型中空糸膜モジュール1の耐久性等を向上させることができる。
【0051】
尚、上記実施形態の説明では、保持部材固定手段としてU字ボルト13およびナット14を採用し、U字ボルト13およびナット14によって中空糸膜フィルタ集合体11の前方保持部材11bと後方保持部材11cを中空糸膜フィルタ集合体支持部12に着脱可能に固定するように説明したが、本発明ではこれに限定されず、保持部材固定手段として通常の六角ボルトおよびナットや結束バンド(インシュロック)、針金、ロープ等によって中空糸膜フィルタ集合体11の前方保持部材11bと後方保持部材11cとを中空糸膜フィルタ集合体支持部12に固定するように構成しても勿論良い。
【0052】
また、上記実施形態の説明では、中空糸膜フィルタ集合体支持部12を構成する一対の側方フレーム材12a1,12a1と前方フレーム材12a2と後方フレーム材12a3とは、それぞれ、鉛直面と水平面とを有する断面がL字形状のアングル部材で構成して説明したが、本発明ではアングル部材に限定されるものではなく、一対の側方フレーム材12a1,12a1と前方フレーム材12a2と後方フレーム材12a3を角パイプやコ字形状のチャネル部材、さらにはアングル部材、角パイプおよびチャネル部材を適宜組み合わせて使用しても勿論良い。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、自然災害発生時などの非常時に、防火水槽やプールなどの水を生活用水レベルまで浄化する(除濁及び細菌の除去を行う)浸漬型中空糸膜モジュール1である。原水W濁度が100度程度の比較的高濃度でも、清澄な膜濾過水を得ることができ、ケーシング型膜濾過浸漬型中空糸膜モジュールと比べて幅広く使用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 浸漬型中空糸膜モジュール
11 中空糸膜フィルタ集合体
11a 中空糸膜フィルタ
11b 前方保持部材
11b1 集水ノズル
11c 後方保持部材
12 中空糸膜フィルタ集合体支持部
12a 支持フレーム本体
12a1 側方フレーム材
12a2 前方フレーム材
12a3 後方フレーム材
12b1~12b3 浮力体本体
13 U字ボルト(保持部材固定手段)
14 ナット(保持部材固定手段)
2 浄水装置
21 第1三方弁
22 第2三方弁
23 吸引ポンプ
24 処理水タンク
25~27 ホース
28 原水槽