(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054660
(43)【公開日】2024-04-17
(54)【発明の名称】電源設備の異常診断装置および異常診断方法
(51)【国際特許分類】
H02B 3/00 20060101AFI20240410BHJP
G01M 13/00 20190101ALI20240410BHJP
G01M 99/00 20110101ALI20240410BHJP
【FI】
H02B3/00 M
G01M13/00
G01M99/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161039
(22)【出願日】2022-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 文章
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 達也
(72)【発明者】
【氏名】田中 翔
(72)【発明者】
【氏名】原口 智
(72)【発明者】
【氏名】高橋 栄也
(72)【発明者】
【氏名】水出 隆
【テーマコード(参考)】
2G024
【Fターム(参考)】
2G024AA02
2G024AD28
2G024BA22
2G024BA25
2G024BA27
2G024CA13
2G024DA12
2G024FA06
2G024FA14
2G024FA15
(57)【要約】
【課題】導体締結部における締結部材の緩みの発生有無の診断時間を短縮し、該導体締結部が過熱状態となり得るかの予測作業を効率化する。
【解決手段】電源設備の異常診断装置は、加振部と、少なくとも二つの検出部と、制御部とを備える。加振部は、導体の所定範囲に存在する複数の導体部のいずれかから導体に振動を与える。少なくとも二つの検出部は、導体の所定範囲に存在する複数の導体部が連なる方向における所定範囲の両端に位置する各々の導体部に伝達された振動の特性を示す信号を検出する。制御部は、加振部および検出部の動作を制御し、前記信号が示す振動の減衰に応じて連結部における連結不良の発生有無を判定して該連結不良が発生している連結部を特定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の導体部と、隣り合う前記導体部を連結する複数の連結部とを有し、電流を負荷に供給する導体を備えた電源設備において、複数の前記導体部が連なる方向の前記導体の所定範囲に含まれる前記連結部における連結不良の発生有無を判定し、前記連結不良が発生している場合には該連結不良が発生している前記連結部を特定する異常診断装置であって、
前記導体の前記所定範囲に存在する複数の前記導体部のいずれかから前記導体に振動を与える加振部と、
前記導体の前記所定範囲に存在する複数の前記導体部が連なる方向における前記所定範囲の両端に位置する各々の前記導体部に伝達された前記振動の特性を示す信号を検出する少なくとも二つの検出部と、
前記加振部および前記検出部の動作を制御し、前記信号が示す前記振動の減衰に応じて前記連結部における前記連結不良の発生有無を判定して該連結不良が発生している前記連結部を特定する制御部と、を備える
異常診断装置。
【請求項2】
前記加振部は、前記導体の前記所定範囲に存在する複数の前記導体部が連なる方向における前記所定範囲の一端に位置する前記導体部に配置され、該導体部から前記導体に前記振動を与え、
前記検出部は、前記加振部が位置する前記導体部に配置され、該導体部に伝達された前記振動の特性を示す第1の信号を検出する第1の検出部と、前記導体の前記所定範囲に存在する複数の前記導体部が連なる方向における前記所定範囲の他端に位置する前記導体部に配置され、該導体部に伝達された前記振動の特性を示す第2の信号を検出する第2の検出部と、を含む
請求項1に記載の異常診断装置。
【請求項3】
前記検出部は、前記導体の前記所定範囲に存在する複数の前記導体部が連なる方向における前記所定範囲の一端と他端との中間に位置する前記導体部に配置され、該導体部に伝達された前記振動の特性を示す第3の信号を検出する第3の検出部をさらに含む
請求項2に記載の異常診断装置。
【請求項4】
前記加振部は、前記導体の前記所定範囲に存在する複数の前記導体部が連なる方向における前記所定範囲の一端と他端との中間に位置する前記導体部に配置され、該導体部から前記導体に前記振動を与え、
前記検出部は、前記加振部が位置する前記導体部に配置され、該導体部に伝達された前記振動の特性を示す第1の信号を検出する第1の検出部と、前記導体の前記所定範囲に存在する複数の前記導体部が連なる方向における前記所定範囲の一端に位置する前記導体部に配置され、該導体部に伝達された前記振動の特性を示す第2の信号を検出する第2の検出部と、前記導体の前記所定範囲に存在する複数の前記導体部が連なる方向における前記所定範囲の他端に位置する前記導体部に配置され、該導体部に伝達された前記振動の特性を示す第3の信号を検出する第3の検出部と、を含む
請求項1に記載の異常診断装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記連結不良の発生有無を判定する際、前記導体の前記所定範囲に存在する複数の前記導体部に対する前記加振部および前記検出部の配置を示す画像を含む指示を出力する出力部を有する
請求項1から4のいずれか一項に記載の異常診断装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記連結不良が発生している場合、該連結不良が発生している前記連結部を特定するまで前記検出部の少なくとも一つの配置を変更することを示す画像を含む指示を前記出力部に出力させる
請求項5に記載の異常診断装置。
【請求項7】
複数の導体部と、隣り合う前記導体部を連結する複数の連結部とを有し、電流を負荷に供給する導体を備えた電源設備において、複数の前記導体部が連なる方向の前記導体の所定範囲に含まれる前記連結部における連結不良の発生有無を判定するとともに、前記連結不良が発生している場合には該連結不良が発生している前記連結部を特定する異常診断方法であって、
前記導体の前記所定範囲に存在する複数の前記導体部のいずれかから前記導体に振動を与え、
前記導体の前記所定範囲に存在する複数の前記導体部が連なる方向における前記所定範囲の両端に位置する各々の前記導体部に伝達された前記振動の特性を示す信号を検出し、
前記信号が示す前記振動の減衰に応じて前記連結部における前記連結不良の発生有無を判定し、
前記連結不良が発生している場合、該連結不良が発生している前記連結部を特定するまで前記導体に前記振動を与える前記導体部の位置および伝達された前記振動の特性を示す前記信号を検出する前記導体部の位置の少なくとも一つを変更することを示す画像を含む指示を出力する異常診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電源設備の異常診断装置および異常診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
受変電設備などの電源設備では、電力の安定供給のため、定期的な保守点検や状態監視などによる予防保全が図られている。電源設備は、初期不良、経年的な劣化や汚損などにより、局部的に過熱状態となることがある。その程度によっては、過熱状態となった部分が焼損などに至るおそれがある。特に、導体を構成する導体部同士がボルトなどの締結部材で締結された部分(以下、導体締結部という)は、締結部材の緩みによって導体間の接触抵抗が増加して過熱状態となる場合がある。
【0003】
締結部材の緩みに伴う導体締結部の過度の温度上昇は、従来から各種の方法を用いて予測診断されている。例えば、導体締結部が過度に温度上昇する(過熱状態となる)ことにより生じる熱や臭気を検知する方法では、導体が実際に通電されて過熱状態となれば異常を検知可能である。しかしながら、電源設備の据え付け時や点検時などのように導体が通電していない状態では異常を検知することができず、異常予測の観点では十分でない。
【0004】
また、導体締結部の締結部材を打振した際の加振力や音響によって該締結部材の緩みを検知する方法では、異常予測(過熱状態となり得るかの予測)は可能となるが、依然として次のような問題がある。例えば、ハンマーなどでの人手による打診では、広い振動周波数成分を安定かつ再現性良く発生させるインパルス状の打撃を加えることが難しく、打診結果のばらつきも大きいため、検知精度が低くなりやすい。加えて、すべての導体締結部を打診する必要もあり、作業効率が悪い。一般的に、電源設備では、複数の盤が並んで設置されることが多く、隣り合う盤内の導体同士を盤間ごとに締結する部分が存在する。三相交流の電源設備の場合、三本の主導体(水平母線)を要し、さらに冗長系(予備系)の電源系統も含めればその二倍の導体が必要となる。このため、導体締結部の数が多く、作業効率の向上を図ることが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5674935号公報
【特許文献2】特許第4377765号公報
【特許文献3】特許第3560830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、導体締結部が多数存在する場合であっても、導体締結部における締結部材の緩みの発生有無の診断時間を短縮し、該導体締結部が過熱状態となり得るかの予測作業を効率化することが可能な電源設備の異常診断装置、および該異常診断装置を用いた導体の異常診断方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の異常診断装置は、複数の導体部と、隣り合う前記導体部を連結する複数の連結部とを有し、電流を負荷に供給する導体を備えた電源設備において、複数の前記導体部が連なる方向の前記導体の所定範囲に含まれる前記連結部における連結不良の発生有無を判定し、前記連結不良が発生している場合には該連結不良が発生している前記連結部を特定する。前記異常診断装置は、加振部と、少なくとも二つの検出部と、制御部とを備える。前記加振部は、前記導体の前記所定範囲に存在する複数の前記導体部のいずれかから前記導体に振動を与える。少なくとも二つの前記検出部は、前記導体の前記所定範囲に存在する複数の前記導体部が連なる方向における前記所定範囲の両端に位置する各々の前記導体部に伝達された前記振動の特性を示す信号を検出する。前記制御部は、前記加振部および前記検出部の動作を制御し、前記信号が示す前記振動の減衰に応じて前記連結部における連結不良の発生有無を判定して前記連結不良が発生している前記連結部を特定する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態に係る異常診断装置の概略的な構成を示すブロック図。
【
図2】第1の実施形態に係る電源設備の異常の発生有無を予測診断する際における異常診断装置の加振部および検出部の配置(開始位置)を概略的に示す図。
【
図3】第1の実施形態に係る異常診断装置において、異常診断処理時に制御部が実行する制御のフローチャート。
【
図4】第1の実施形態に係る異常診断処理において、加振部、第1の検出部、および第2の検出部を開始位置から移動させた後の配置例を示す図。
【
図5】第2の実施形態に係る異常診断装置の概略的な構成を示すブロック図。
【
図6】第2の実施形態に係る電源設備の異常の発生有無を予測診断する際における異常診断装置の加振部および検出部の配置(開始位置)を概略的に示す図。
【
図7A】第2の実施形態に係る異常診断処理において、第3の検出部を開始位置から移動させた配置例を示す図。
【
図7B】第2の実施形態に係る異常診断処理において、第2の検出部を開始位置から移動させた配置例を示す図。
【
図8】第3の実施形態に係る電源設備の異常の発生有無を予測診断する際における異常診断装置の加振部および検出部の配置(開始位置)を概略的に示す図。
【
図9A】第3の実施形態に係る異常診断処理において、開始位置における異常診断結果の一例を示す図。
【
図9B】第3の実施形態に係る異常診断処理において、第2の検出部を移動させた後の新たな診断対象区間(第2の診断対象区間および第3の診断対象区間)における加振部、第1から第3の検出部の配置例を示す図。
【
図9C】第3の実施形態に係る異常診断処理において、第3の検出部を移動させた後の新たな診断対象区間(第2の診断対象区間および第3の診断対象区間)における加振部、第1から第3の検出部の配置例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態に係る電源設備の異常診断装置、および該異常診断装置を用いた異常診断方法について、
図1から
図9Cを参照して説明する。電源設備は、少なくとも一つの盤を備えている。各々の盤は、筐体によって外部から隔てられた空間内に遮断器、断路器、変流器、変圧器、導体などが配置されて構成されている。電源設備は、異常時には遮断器などを作動させて通電を遮断し、例えば電力の配送電系統における電路の保護、電力の制御、設備の監視などを行う。電源設備は、導体を介して負荷に電力を供給する。電力が供給される負荷は、例えば工場設備やビル設備などであるが、これらに限定されない。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係る異常診断装置1の概略的な構成を示すブロック図である。
図1に示すように、異常診断装置1は、主たる要素として、加振部2、検出部4、制御部6を備えている。異常診断装置1は、電源設備の診断対象箇所における異常の発生有無を予測診断する。予測診断の対象箇所は、例えば導体を構成する導体部同士が締結部材で締結された箇所(導体締結部)である。締結部材は、一例としてボルトとナットを適用するが、例えばねじ、リベット、ビスなど、適正な締付トルクで締結可能な部材であれば特に限定されない。なお、導体締結部にボルトの雄ねじと螺合する雌ねじを有するボルト孔を形成し、ナットを省略した締結形態であってもよい。異常診断装置1は、電源設備が備える導体を構成する導体部の連結不良、具体的には導体締結部におけるボルトとナットの緩みの発生有無を判定し、該連結不良が発生している箇所を特定する。これにより、異常診断装置1は、ボルトとナットの緩みが発生している導体締結部が過熱状態となり得るかを予測する。
【0011】
加振部2は、電源設備の導体に振動を与える。加振部2は、かかる導体に振動を与えることが可能であればその構成は特に限定されない。本実施形態では一例として、電動アクチュエータを備えた励振器などのように自動的に所望の振動を発生させる手段を加振部2に適用する。
【0012】
検出部4は、加振部2が導体に与えた振動の特性を示す信号を検出する。振動特性は、加振部2が導体に与えた振動が伝達される際の特性であり、例えば振動の加速度、速度、振幅、振動数、変位などである。本実施形態では一例として、圧電素子やひずみゲージなどの接触型の加速度センサを検出部4に適用する。加速度センサである検出部4は、加振部2が導体に与えた振動の加速度信号を、振動特性を示す信号として検出する。ただし、検出部4は、磁石とコイルによって誘起電圧を検出する動電型速度センサや静電容量や渦電流を検出する非接触型の変位センサなどであってもよい。
【0013】
制御部6は、CPU、記憶装置(不揮発メモリ)、メモリ、入出力回路、タイマなどを含み、加振部2および検出部4の動作を制御し、異常診断装置1において異常診断処理を実行する。異常診断処理は、導体締結部におけるボルトとナットの緩みの有無を診断し、該導体締結部が過熱状態となり得るかを予測するための処理である。制御部6は、例えばパーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末、サーバなどの情報処理装置として構成される。制御部6は、加振部2および検出部4と有線もしくは無線により接続されている。制御部6の記憶装置は、加振部2および検出部4が行う処理に必要なプログラム、パラメータなどの各種情報(データ)を適宜記憶する。
【0014】
記憶装置には、例えば導体長、導体部の数や位置、導体締結部の数や位置などの導体の構成を示す基本情報がデータ化されて記憶されている。また、記憶装置には、例えば導体締結部においてボルトとナットが適正な締付トルクで締結されている状態で加振部2が導体に振動を与えた場合、その振動によって生じる該導体の振動の特性を示す値(一例として振動加速度の値)、つまり正常値が記憶されている。正常値は、例えば導体を構成する複数の導体部の各々について予め取得され、各導体部の位置と紐付けられて記憶装置に記憶されている。記憶された導体の基本情報や正常値は、異常診断処理の実行時にパラメータとしてメモリに読み出される。
【0015】
制御部6は、異常診断装置1の起動、停止、稼働制御などを行う。そのため、制御部6は、メモリに読み出されたプログラムやファームウェアを実行するとともに、これらの実行に必要な各種情報(データ)を加振部2および検出部4から取得する。取得した情報に応じて所定の演算処理(異常診断処理)を実行することで、制御部6は、導体締結部におけるボルトとナットの緩みの有無を診断し、該導体締結部が過熱状態となり得るかを予測する。
【0016】
また、制御部6は、励振制御部61と、計測制御部62と、診断制御部63と、操作部64と、出力部65とを有する。励振制御部61、計測制御部62、および診断制御部63は、例えばプログラムとして記憶装置に記憶されており、記憶装置からメモリに読み出されて実行され、それぞれ所望の機能を果たす。
【0017】
励振制御部61は、加振部2の起動と停止を制御し、加振部2を所定の振動条件、例えば所定の加速度、振動数、振動時間などで励振させ、加振部2が位置する導体の導体部に振動を与える。振動条件は、例えば上述した導体の構成を示す基本情報に対応して制御部6の記憶装置に記憶され、異常診断処理の実行時にパラメータとしてメモリに読み出される。また例えば、振動条件は、異常診断処理の実行時に操作部64から設定されてもよい。
【0018】
計測制御部62は、加振部2が振動を与えた際、検出部4が検出した該振動の特性を示す信号(一例として、加速度信号)に基づいて、該検出部4が位置する導体の導体部におおける振動の特性を示す特性値を算出する。
【0019】
診断制御部63は、計測制御部62が算出した振動の特性値に応じて、電源設備における異常の発生有無、具体的には導体締結部における締結部材(一例としてボルトとナット)の緩みの有無を診断する。診断制御部63が行う制御については、後述する異常診断処理の説明において改めて詳述する。
【0020】
操作部64および出力部65は、制御部6におけるHMI(Human Machine Interface)である。
操作部64は、異常診断処理を実行するための各種設定、実行開始や停止の操作を行うための手段であり、例えばキーボード、マウス、スイッチ、ボタン、レバーなどのいずれかもしくはいくつかを含む。出力部65は、操作部64で入力された内容、異常診断処理の進行状況や結果を出力するための手段であり、例えばディスプレイ、スピーカ、ライト、プリンタ、操作部64の機能を一部兼ねたタッチパネルなどのいずれかもしくはいくつかを含む。なお、操作部64および出力部65は、機能を一体化させた構成であってもよい。
【0021】
このような異常診断装置1において、異常診断処理を実行する際、つまり導体締結部におけるボルトとナットの緩みの有無を診断し、該導体締結部が過熱状態となり得るかを予測する際には、加振部2および検出部4がそれぞれ所定箇所に取り付けられる。所定箇所は、導体を構成する複数の導体部のいずれか、換言すれば隣り合う導体締結部の間に位置する導体部である。取り付けられた加振部2および検出部4は、電源設備の異常診断終了後に取り外される。すなわち、加振部2および検出部4は、適宜着脱可能とされている。
【0022】
図2は、電源設備10の異常の発生有無を予測診断する際における異常診断装置1の加振部2および検出部4の配置(後述する開始位置)を概略的に示す図である。
図2に示すように、電源設備10には、電流を負荷(図示省略)に供給する導体11が備えられている。導体11は、例えば電気の良導体である銅、比抵抗の小さいアルミニウムなどが絶縁被覆されて構成され、所定方向に延びた扁平の形状をなしている。所定方向、つまり導体11の伸長方向は、例えば水平方向や鉛直方向、あるいはこれらに対して傾いた方向であり、電源設備10が複数の盤を備えている場合には当該盤の配列方向(
図2においては左右方向)などである。
【0023】
導体11は、複数の導体部12と、隣り合う導体部12を連結する複数の連結部13を有し、これらの導体部12が連結部13で連なって構成されている。複数の導体部12が連なる方向は、導体11の伸長方向となる。
図2には、九つの導体部121~129と、八つの連結部131~138を有する導体11の一例が示されている。この場合、例えば導体部121,123,125,127,129は電源設備10の各盤内に配置された水平母線に相当し、導体部122,124,126,128は電源設備10の隣り合う盤間に配置された連結線(盤間ブリッジ)に相当する。電源設備10の各盤内に配置された導体部121,123,125,127,129は、例えば配置された各々の盤の筐体(図示省略)に碍子などの絶縁部材を介して固定されている。
【0024】
連結部13は、隣り合う導体部12を連結し、これらの導体部12を電気的に接続する。
図2に示す例において、連結部13は、導体11を構成する導体部12同士が締結部材(一例として、ボルト141~148とナット151~158)で締結された部分であり、導体締結部に相当する(以下、導体締結部13という)。この場合、八つの導体締結部131~138の各々において、九つの導体部121~129がボルト141~148とナット151~158で締結されて連結されている。
【0025】
図2に示すように本実施形態において、加振部2は、導体部121に配置されている。導体部121は、導体11の所定範囲に存在する複数の導体部121~129が連なる方向における該所定範囲の一端に位置する。所定範囲は、導体11において異常診断処理が実行される伸長方向の長さに相当する範囲であり、以下、診断対象区間という。
【0026】
検出部4は、異なる位置に配置される二つの検出部41,42を含む。二つの検出部41,42のうち、一方(以下、第1の検出部41という)は、加振部2が与える振動を加振部2の近傍で検出する加振側の検出部4であり、他方(以下、第2の検出部42という)は、加振部2が与える振動を加振部2から離れた位置で検出する参照側の検出部4である。
【0027】
第1の検出部41は、導体11の診断対象区間の一端に位置する導体部121、つまり加振部2と同一の導体部121に配置されている。第1の検出部41は、加振部2が導体部121から導体11に振動を与えた際、該導体部121に生じる振動の特性を示す信号(以下、第1の信号という)を検出する。第1の検出部41は、加振部2とは別体として構成されていてもよいし、加振部2と一体化されて該加振部2の機能の一部として構成されていてもよい。
【0028】
第2の検出部42は、第1の検出部41が位置する導体部121とは別の導体部129に配置されている。導体部129は、導体11の診断対象区間に存在する複数の導体部121~129が連なる方向の他端(導体部121が位置する一端とは反対側の端部)に位置する。第2の検出部42は、加振部2が導体部121から導体11に振動を与えた際、導体部129に生じる振動の特性を示す信号(以下、第2の信号という)を検出する。
【0029】
図2に示すこのような加振部2、第1の検出部41、および第2の検出部42の配置は、異常診断処理の開始時における配置状態(以下、開始位置という)である。開始位置は、例えば異常診断処理の実行者が操作部64を操作して異常診断処理を開始する際、出力部65に出力(一例として、ディスプレイに表示)される。かかる実行者は、出力部65に出力された開始位置に従って加振部2、第1の検出部41、および第2の検出部42を配置する。異常診断処理の実行者は、例えば電源設備10の据え付け、点検、保守などを行う作業者、電源設備10の管理者などである。
【0030】
図3は、異常診断処理時に制御部6が実行する制御のフローチャートである。以下、
図2に示す配置状態から制御部6が行う異常診断処理について、
図3に示すフローチャートに従って説明する。
【0031】
図3に示すように、異常診断処理を開始するにあたって、診断制御部63は、加振部2、第1の検出部41、および第2の検出部42の配置(開始位置)を示す指示を出力部65に出力させる(S101)。例えば、異常診断処理の実行者が操作部64を操作して異常診断処理を開始指示した際、開始位置を示す画像がディスプレイなどに表示される。表示に応じ、実行者は、加振部2、第1の検出部41、および第2の検出部42を
図2に示す開始位置に配置する。
【0032】
図2に示す配置状態において、励振制御部61は、加振部2を動作させて導体部121から導体11に所定の振動条件で振動を与える(S102)。振動条件は、上述したように制御部6の記憶装置からメモリに読み出されてもよいし、操作部64から設定されてもよい。
【0033】
加振部2によって導体部121から導体11に振動が与えられると、計測制御部62は、検出部4が検出した該振動の特性を示す信号に基づいて、該検出部4が位置する導体部12における振動の特性を示す特性値を算出する(S103)。ここでは、第1の検出部41が検出した第1の信号(一例として、導体部121に生じる振動の加速度信号)に基づいて、導体部121における振動の特性を示す特性値(一例として、導体部121に生じる振動加速度の値)が算出される。また、第2の検出部42が検出した第2の信号(一例として、導体部129に生じる振動の加速度信号)に基づいて、導体部129における振動の特性を示す特性値(一例として、導体部129に生じる振動加速度の値)が算出される。算出された振動の特性値(振動加速度の値)は、制御部6のメモリに保持される。
【0034】
加振部2により生じた振動は、導体部121から導体締結部131~138を介して導体部122~128を伝って導体部129に到達する。かかる振動は、このような伝達過程で徐々に減衰していく。
図2に示す破線L21は、導体締結部131~138のボルト141~148とナット151~158が適正な締付トルクで締結されている状態(正常時)における振動の減衰状態(正常な減衰状態)を模式的に示す軌跡である。縦軸は振動加速度の値、端的には振動のレベルを示し、横軸は導体部121~129が連なる方向(導体11の伸長方向)の位置を示す。点P411は、第1の検出部41の位置の導体部121における正常時の振動加速度の値、点P429は、第2の検出部42の位置の導体部129における正常時の振動加速度の値である。
【0035】
かかる振動の特性値、ここでは振動加速度の値は、計測制御部62で算出される。例えば、導体締結部131~138のボルト141~148とナット151~158が適正な締付トルクで締結されていない状態、つまりいずれかの導体締結部13でボルト14とナット15が緩んでいる状態(異常状態であると、導体部12同士を押し付ける圧力(接触圧力)が低下する。接触圧力が低下すると、かかる導体締結部13で連結される導体部12間での振動の伝達が阻害される。その結果、異常時において計測制御部62で算出される振動加速度の値は、ボルト14とナット15が適正な締付トルクで締結されている状態(正常時)と比べてさらに小さくなる。例えば、診断対象区間の端に位置する導体部129における振動加速度の値(
図2に点P42xで示される値)が正常時の値(同図に点P429で示される値)よりも小さくなる。この場合、
図2に示す実線L22のように、振動の減衰状態を模式的に示す軌跡は、正常時の破線L21と比べて振動加速度の値が低下するように傾きが変化する(大きくなる)。
【0036】
したがって、診断制御部63は、計測制御部62が算出した導体部121の振動加速度の値と導体部129の振動加速度の値の差分または比(実測値の差分または比)と、これら導体部121,129の振動加速度の正常値の差分または比とを比較し、減衰条件を判定する(S104)。減衰条件は、導体部12における振動の減衰が正常時と比べて異常時に相当するまで増大しているかどうかを判定するための条件である。正常値は、上述したとおり、各導体部12の位置と紐付けられて制御部6の記憶装置に記憶されており、かかる比較時にパラメータとしてメモリに読み出される。
【0037】
一例として、実測値の差分または比が正常値の差分または比と比べて所定の閾値以下である場合、端的には正常値の差分または比とほぼ一致している場合、診断制御部63は、減衰条件が成立しないと判定する(S104においてNo)。この場合、いずれの導体締結部13でもボルト14とナット15の緩みが生じていない状態であると診断することが可能である。すなわちこの場合、いずれの導体締結部13も過熱状態となるおそれは低いと予測可能となる。なお、かかる閾値は、正常値とともに制御部6の記憶装置に記憶され、実測値の差分または比が正常値の差分または比の比較時に読み出される。
【0038】
これに対し、実測値の差分または比が正常値の差分または比と比べて所定の閾値よりも大きい場合、診断制御部63は、減衰条件が成立すると判定する(S104においてYes)。この場合、いずれかの導体締結部13でボルト14とナット15が緩んでいる状態であると診断することが可能である。すなわちこの場合、いずれかの導体締結部13が過熱状態となり得る、つまり過熱状態となるおそれがあると予測可能となる。
【0039】
例えば、実測値の差分または比が正常値の差分または比と比べて所定の閾値以下であり、減衰条件が成立しない場合(S104においてNo)、診断制御部63は、異常診断処理の結果、ここでは導体締結部13が過熱状態となるおそれが低いこと、つまり異常がないことを出力部65に出力させ、異常診断処理の実行者に周知を図る(S105)。出力部65は、例えば異常がないことを示すメッセージ等のディスプレイへの表示、スピーカからの音声案内などを行う。
【0040】
そして、診断制御部63は、異常診断処理を終了する。ここでは、いずれの導体締結部13でもボルト14とナット15は適正な締付トルクで締結されて緩みが生じておらず、いずれの導体締結部13も過熱状態となるおそれは低いと予測することが可能であるため、異常診断処理が終了される。その際、励振制御部61は加振部2の動作を停止させ、計測制御部62は検出部4が検出した振動の特性値の算出を停止する。その後、実行者は、加振部2、第1の検出部41、および第2の検出部42を導体部12から取り外す。異常診断処理の終了時、出力部65は、異常診断処理の結果に加えて、これらの機器の取り外しが可能である旨のメッセージなどを出力してもよい。
【0041】
これに対し、例えば実測値の差分または比が正常値の差分または比と比べて所定の閾値よりも大きく、減衰条件が成立する場合(S104においてYes)、いずれかの導体締結部13でボルト14とナット15が緩んでいる状態であると推定されるため、次のとおり異常診断処理を継続する。この場合、励振制御部61は加振部2の動作を停止させ、導体11に対する振動の付与を一旦停止する(S106)。また、計測制御部62は振動の特性値の算出を一旦停止する(S107)。
【0042】
続けて、診断制御部63は、ボルト14とナット15の緩みが発生している導体締結部13を特定可能か否か判定する(S108)。特定可能と判定した場合(S108においてYes)、診断制御部63は、特定した導体締結部13の位置および異常発生を示す情報を出力部65に出力させ、異常診断処理の実行者に周知を図る(S109)。ここでの異常発生を示す情報は、特定した導体締結部13においてボルト14とナット15の緩みが発生し、過熱状態となり得る(過熱状態となるおそれがある)ことの警告である。出力部65は、例えば特定した導体締結部13の位置と警告を示すメッセージのディスプレイへの表示、これらのスピーカからの音声案内などを行う。
【0043】
一方、特定不可能と判定した場合(S108においてNo)、診断制御部63は、第1の検出部41および第2の検出部42の少なくとも一つの配置の変更指示を出力部65に出力させ、異常診断処理の実行者に変更作業を促す(S110)。出力部65は、例えば配置変更対象およびその変更先位置を示す画像(静止画)、動画、メッセージ等のディスプレイへの表示、スピーカからの音声案内などを行う。これを受け、実行者は、第1の検出部41および第2の検出部42の少なくとも一つを指示に応じて配置し直す。なお、本実施形態においては、加振部2を配置変更の対象としていないが、対象に含めても構わない。
【0044】
この場合、診断制御部63は、第2の検出部42が現在配置されている導体部12に連結され、該導体部12よりも加振部2により近い導体部12に移動させる旨の指示を出力部65に出力させる。ここでは、導体部129から導体部128への配置変更の指示が出力される。これにより、診断対象区間が短く(狭く)なり、診断対象区間に含まれる導体部12および導体締結部13の数が減少する。ここでは、導体部129および導体締結部138が診断対象区間から外れ、診断対象区間内には導体部121~128および導体締結部131~137が含まれる。すなわち、診断対象区間は、異常診断処理が一旦開始され、ボルト14とナット15の緩みが発生している導体締結部13を特定するために繰り返し実行されるたびに短く(狭く)なる。
図4は、新たな診断対象区間における加振部2、第1の検出部41、および第2の検出部42の配置、換言すればこれらを開始位置から移動させた配置の一例を示す。
図2および
図4に示すように、加振部2および第1の検出部41は、開始位置から変更されることなく、開始位置である導体部121に配置されたままとなっている。
【0045】
図3に示すフローチャートに従い、
図4に示す状態において、励振制御部61は、加振部2を再び動作させて導体部121から導体11に所定の振動条件で振動を与える(S102)。また、計測制御部62は、検出部4が位置する導体部12における振動の特性値を再び算出する(S103)。そして、診断制御部63は、減衰条件を再び判定する(S104)。以降、減衰条件の成否に応じて、S105~S110の制御が選択的に繰り返される。
【0046】
例えば、
図4に示す状態、つまり診断対象区間に導体部129が含まれない状態でS104において減衰条件が成立しない場合、診断対象区間から外れた導体締結部138でボルト148とナット158が緩んでいると特定できる。逆に、
図4に示す状態でS104において減衰条件が成立する場合、診断対象区間に含まれない導体締結部138ではなく、それ以外の導体締結部131~137でボルト14とナット15が緩んでいると推定できる。したがって、この場合、ボルト14とナット15の緩みが発生している導体締結部13が特定されるまで、異常診断処理が引き続き実行される。その間、加振部2から最も離れて配置されている導体部12および導体締結部13からそれぞれ一つずつ、診断対象区間から外され、異常診断処理が継続される。すなわち、S110において配置変更指示が出力されるたびに、導体部129から導体部123まで、および導体締結部138から導体締結部132まで、それぞれ順次、導体部12および導体締結部13が診断対象区間から外されて、異常診断処理が繰り返される。その際、
図2に示す開始位置である導体部129から、
図4に実線で示す導体部128、そして同図に破線で示すように導体部127から導体部122まで、破線矢印で示すように、第2の検出部42が順次移動される。
【0047】
このように本実施形態によれば、まず、すべての導体部12および導体締結部13を含む診断対象区間に対して異常診断処理が実行される。いずれの導体締結部131~138においてもボルト141~148とナット151~158の緩みが発生していなければ、診断制御部63での診断(
図3に示すS104における減衰条件の判定)は一回で終了する。実際にはほとんどの場合、いずれの導体締結部131~138においてもボルト141~148とナット151~158には緩みがないことが多い。このため、ボルト14とナット15の緩みが生じている導体締結部13を特定するべく、診断制御部63での診断を繰り返し行わずに済む。したがって、第2の検出部42の移動(配置変更)の作業を要しないため、診断時間を短縮し、導体締結部13が過熱状態となり得るかの予測作業の効率化を図ることができる。特に、多数の盤が並んで設置された電源設備のように、診断対象区間が長く、該診断対象に含まれる導体部12および導体締結部13の数が多くなるほど、診断時間を短縮でき、導体締結部が過熱状態となり得るかの予測作業をより一層効率化することが可能となる。また、加振部2、第1の検出部41、および第2の検出部42の開始位置、変更対象およびその変更先位置が出力部65に出力(例えばディスプレイへの表示など)されるため、診断時間の短縮と予測作業の効率化をより一層図ることができる。
【0048】
ここで、一般的なボルトとナットの緩みに起因した導体締結部における過熱現象の一例について説明する。例えば、二つの導体部をボルトとナットで締結した場合、適正な締付トルクでボルトとナットが締結されていれば、導体部間の接触抵抗は数μΩ程度で安定する。しかしながら、ボルトとナットの締付不良や振動などによる緩みの発生で、導体部間の接触圧力が低下すると、導体部間の接触点が減少し、電流が集中することによって発熱が生じる。発熱によって導体部の金属表面の酸化が進行すると、両者の接触抵抗が増していく。そして、例えば導体部の温度が200℃を超えた辺りから導体金属の軟化による反りも起こり始め、この場合にはさらに導体部間の接触抵抗が増大する。導体部間の接触抵抗が数百μΩを超えたところで、通電経路が本来の導体部間ではなくボルトに集中し、該ボルトが過熱して溶損に至る場合がある。このため、導体締結部が過熱状態となり得るかを検知することは重要である。
【0049】
図3に示すS104において減衰条件が成立し、ボルト14とナット15の緩みが発生している導体締結部13の特定を要する場合であっても、第2の検出部42のみを移動させ、加振部2および第1の検出部41を移動させる必要がない。第2の検出部42を移動させる際も、第2の検出部42が現在配置されている導体部12に連結され、該導体部12よりも加振部2により近い導体部12に移動させればよいため、移動作業の手間を軽減できる。その際、例えば配置変更対象およびその変更先位置がディスプレイやスピーカなどから案内されるため、第2の検出部42をスムーズに配置し直すことができる。
【0050】
ここで、電源設備10の異常診断装置において、加振側の検出部4(第1の検出部41)と参照側の検出部4(第2の検出部42)の配置、および参照側の検出部4の数は、上述した第1の実施形態には限定されず、変更可能である。以下、これらを変更した実施形態を第2の実施形態および第3の実施形態として説明する。これらの実施形態に係る異常診断装置の基本的な構成要素は、第1の実施形態に係る異常診断装置1(
図1)と同様である。このため、以下では、かかる異常診断装置の基本的な構成要素についての説明は省略もしくは簡略化し、第2および第3の実施形態の特徴である第1の実施形態との相違点について詳述する。その際、第1の実施形態と同一もしくは類似の構成要素については、同一の参照符号を用いる。
【0051】
(第2の実施形態)
本実施形態に係る異常診断装置は、第1の実施形態と同一の電源設備10における異常の発生有無を予測診断する。
図5は、本実施形態に係る異常診断装置1aの概略的な構成を示すブロック図である。
図6は、電源設備10の異常の発生有無を予測診断する際における異常診断装置1aの加振部2および検出部4の配置(開始位置)を概略的に示す図である。
図6に示すように、異常診断装置1aの検出部4は、第1の検出部41および第2の検出部42に加えて、これらのいずれとも異なる位置に配置される第3の検出部43を含む。第3の検出部43は、加振部2が与える振動を加振部2から離れた位置で検出する参照側の検出部4である。すなわち、本実施形態においては、加振側に一つ、参照側に二つの検出部4が存在する。
【0052】
第3の検出部43は、導体11の診断対象区間に存在する複数の導体部12が連なる方向における該診断対象区間の一端と他端との中間に位置する導体部12に配置される。配置された導体部12において、第3の検出部43は、該導体部12に生じる振動の特性を示す信号(以下、第3の信号という)を検出する。
【0053】
図6に示す例において、第3の検出部43は、導体部125に配置されている。導体部125は、導体11の診断対象区間に存在する複数の導体部121~129が連なる方向の一端と他端との中間に位置する。
図6に示す例では、診断対象区間の一端には導体部121、他端には導体部129が位置する。
図6に示す加振部2、第1の検出部41、第2の検出部42、第3の検出部43の配置は、本実施形態における異常診断処理の開始時の配置状態(開始位置)である。第1の実施形態と同様に、開始位置は、例えば異常診断処理の実行者が操作部64を操作して異常診断処理を開始する際、出力部65に出力(一例として、ディスプレイに表示)される。
【0054】
図6に示す破線L61は、導体締結部131~138のボルト141~148とナット151~158が適正な締付トルクで締結されている状態(正常時)における振動の減衰状態(正常な減衰状態)を模式的に示す軌跡である。縦軸は振動加速度の値、端的には振動のレベルを示し、横軸は導体部121~129が連なる方向(導体11の伸長方向)の位置を示す。点P411は、第1の検出部41の位置の導体部121における正常時の振動加速度の値である。点P429は、第2の検出部42の位置の導体部129における正常時の振動加速度の値である。点P435は、第3の検出部43の位置の導体部125における正常時の振動加速度の値である。
【0055】
本実施形態における異常診断処理について、
図3に示すフローチャートに従って説明する。異常診断処理を開始するにあたって、診断制御部63は、加振部2、第1の検出部41、第2の検出部42、および第3の検出部43の開始位置の指示を出力部65に出力させる(S101)。加振部2、第1から第3の検出部41~43が
図6に示す開始位置に配置されると、励振制御部61は加振部2を動作させて導体部121から導体11に振動を与える(S102)。次いで、計測制御部62は、第1から第3の検出部41~43が検出した第1から第3の信号に基づいて、導体部121,129,125における振動の特性値(一例として振動加速度の値)を算出する(S103)。
【0056】
算出された振動の特性値に基づいて、診断制御部63は、減衰条件を判定する(S104)。ここでは、診断対象区間を二分した所定範囲にそれぞれ含まれる導体部12に対して減衰条件が判定される。一方は、診断対象区間において第2の検出部42が第2の信号を検出する所定範囲(以下、第2の診断対象区間という)に存在する導体部12(ここでは導体部129)に対する減衰条件(以下、第2の減衰条件という)である。他方は、診断対象区間において第3の検出部43が第3の信号を検出する所定範囲(以下、第3の診断対象区間という)に存在する導体部12(ここでは導体部125)に対する減衰条件(以下、第3の減衰条件という)である。診断制御部63は、導体部121の振動加速度の値と導体部129の振動加速度の値の差分または比(実測値の差分または比)と、これら導体部121,129の振動加速度の正常値の差分または比とを比較し、第2の減衰条件を判定する。また、診断制御部63は、導体部121の振動加速度の値と導体部125の振動加速度の値の差分または比(実測値の差分または比)と、これら導体部121,125の振動加速度の正常値の差分または比とを比較し、第3の減衰条件を判定する。
【0057】
第2の減衰条件および第3の減衰条件がいずれも成立しない場合(S104においてNo)、診断制御部63は、異常がないことを出力部65に出力させ(S105)、異常診断処理を終了する。
【0058】
これに対し、第2の減衰条件および第3の減衰条件の少なくとも一方が成立する場合(S104においてYes)、励振制御部61は振動の付与を一旦停止し(S106)、計測制御部62は振動の特性値の算出を一旦停止する(S107)。
【0059】
そして、診断制御部63は、ボルト14とナット15の緩みが発生している導体締結部13を特定可能か否か判定し(S108)、特定可能と判定した場合(S108においてYes)、特定した導体締結部13の位置および異常発生を示す情報(警告)を出力部65に出力させ、周知を図る(S109)。
【0060】
一方、特定不可能と判定した場合(S108においてNo)、診断制御部63は、第1の検出部41、第2の検出部42、および第3の検出部43の少なくとも一つの配置の変更指示を出力部65に出力させ、異常診断処理の実行者に変更作業を促す(S110)。これを受け、実行者は、これらの少なくとも一つを指示、例えばディスプレイに表示された画像などに応じて配置し直す。なお、第1の実施形態と同様に、加振部2を配置変更対象に含めてもよい。
【0061】
このように特定不可能と判定した場合、診断制御部63は、第2の診断対象区間と第3の診断対象区間のうち、各々の区間に含まれる導体部12における振動の減衰が正常時と比べて異常時に相当するまでより顕著に増大している診断対象区間に、ボルト14とナット15の緩みが発生している導体締結部13が存在していると推定する。そして、診断制御部63は、ボルト14とナット15の緩みが発生している導体締結部13が特定されるまで、推定した診断対象区間に対して減衰条件(第2の減衰条件および第3の減衰条件)の判定を繰り返す。
【0062】
ただし、上述したとおり実際にはほとんどの場合、いずれの導体締結部131~138においてもボルト141~148とナット151~158には緩みがないことが多い。このため、第2の減衰条件と第3の減衰条件がいずれも成立することはほぼなく、成立する場合であってもいずれか一方のみが成立することがまれに生じ得るに過ぎない。したがってこのような場合、診断制御部63は、減衰条件が成立する第2の診断対象区間もしくは第3の診断対象区間のいずれかでボルト14とナット15の緩みが発生していると推定することが可能である。
【0063】
例えば、第2の減衰条件が成立する場合、診断制御部63は、現第2の診断対象区間において、加振部2により近い第3の検出部43を、現第2の診断対象区間に存在する複数の導体部12が連なる方向における該現第2の診断対象区間の一端と他端との中間に位置する導体部12に移動させる旨の指示を出力部65に出力させる。ここでは、導体部125から導体部127への配置変更の指示が出力される。なお、第2の減衰条件が成立する場合、例えば、第2の診断対象区間の端に位置する導体部129における振動加速度の値(
図6に点P42yで示される値)が正常時の値(同図に点P429で示される値)よりも小さくなる。この場合、
図6に示す実線L62aのように、振動の減衰状態を模式的に示す軌跡は、正常時の破線L61と比べて振動加速度の値が低下するように傾きが変化する(大きくなる)。
【0064】
また例えば、第3の減衰条件が成立する場合、診断制御部63は、現第3の診断対象区間において、加振部2からより遠い第2の検出部42を、現第3の診断対象区間に存在する複数の導体部12が連なる方向における該現第3の診断対象区間の一端と他端との中間に位置する導体部12に移動させる旨の指示を出力部65に出力させる。ここでは、導体部129から導体部123への配置変更の指示が出力される。なお、第3の減衰条件が成立する場合、例えば、第3の診断対象区間の端に位置する導体部125における振動加速度の値(
図6に点P43yで示される値)が正常時の値(同図に点P435で示される値)よりも小さくなる。この場合、
図6に示す実線L62bのように、振動の減衰状態を模式的に示す軌跡は、正常時の破線L61と比べて振動加速度の値が低下するように傾きが変化する(大きくなる)。
【0065】
図7Aおよび
図7Bは、新たな診断対象区間(第2の診断対象区間および第3の診断対象区間)における加振部2、第1の検出部41、第2の検出部42、および第3の検出部43の配置を示す。
図6、
図7Aおよび
図7Bに示すように、第2の検出部42もしくは第3の検出部43のいずれかは、開始位置から変更されるのに対し、加振部2および第1の検出部41は、開始位置から変更されることなく、開始位置である導体部121に配置されたままとなっている。
図7Aは、第3の検出部43を開始位置である導体部125(
図6)から導体部127の位置に、破線矢印で示すように移動させた配置の一例を示す。
図7Bは、第2の検出部42を開始位置である導体部129(
図6)から導体部123の位置に、破線矢印で示すように移動させた配置の一例を示す。
図6に示す開始位置から
図7Aもしくは
図7Bに示す位置のいずれかに配置変更される。
【0066】
図3に示すフローチャートに従い、
図7Aもしくは
図7Bに示す状態において、励振制御部61は、加振部2を再び動作させて導体部121から導体11に所定の振動条件で振動を与える(S102)。また、計測制御部62は、検出部4が位置する導体部12における振動の特性値を再び算出する(S103)。そして、診断制御部63は、減衰条件(第2の減衰条件および第3の減衰条件)を再び判定する(S104)。以降、これら減衰条件の成否に応じて、S105~S110の制御が選択的に繰り返され、ボルト14とナット15の緩みが発生している導体締結部13が特定されるまで、異常診断処理が引き続き実行される。
【0067】
このように本実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、すべての導体部12および導体締結部13を含む診断対象区間に対して異常診断処理を実行できる。したがって、いずれの導体締結部131~138においてもボルト141~148とナット151~158の緩みが発生していなければ、診断制御部63での診断(
図3に示すS104における減衰条件の判定)を一回で終了させることができる。また、加振部2、第1から第3の検出部41~43の開始位置、変更対象およびその変更先位置を出力部65に出力(例えばディスプレイへの表示など)させることができる。このため、診断時間を短縮し、導体締結部13が過熱状態となり得るかの予測作業の効率化を図ることができる。
【0068】
また、
図3に示すS104において減衰条件が成立し、ボルト14とナット15の緩みが発生している導体締結部13の特定を要する場合であっても、第2の検出部42もしくは第3の検出部43のいずれかを移動させ、加振部2および第1の検出部41を移動させる必要がない。これらの検出部42,43を移動させる際も、例えば配置変更対象およびその変更先位置がディスプレイやスピーカなどから案内されるため、第2もしくは第3の検出部42,43をスムーズに配置し直すことができる。
【0069】
(第3の実施形態)
本実施形態に係る異常診断装置は、第1の実施形態と同一の電源設備10における異常の発生有無を予測診断する。本実施形態に係る異常診断装置の概略的な構成は、
図5に示す第2の実施形態に係る異常診断装置1bと同一である。
図8は、電源設備10の異常の発生有無を予測診断する際における異常診断装置1aの加振部2および検出部4の配置(開始位置)を概略的に示す図である。
図8に示すように、異常診断装置1bの検出部4は、第1の検出部41および第2の検出部42に加えて、これらのいずれとも異なる位置に配置される第3の検出部43を含み、加振側に一つ、参照側に二つの検出部4が存在する。本実施形態において、加振部2およびこれら第1から第3の検出部41~43は、次のように配置されている。
【0070】
加振部2は、導体11の診断対象区間に存在する複数の導体部12が連なる方向における該診断対象区間の一端と他端との中間に位置する導体部125に配置され、該導体部125から導体11に振動を与える。
【0071】
第1の検出部41は、診断対象区間の中間に位置する導体部125、つまり加振部2と同一の導体部125に配置されている。第2の検出部42は、導体11の診断対象区間に存在する複数の導体部121~129が連なる方向の一端に位置する導体部121に配置されている。第3の検出部43は、導体11の診断対象区間の他端(導体部121が位置する一端とは反対側の端部)に位置する導体部129に配置されている。
【0072】
図8に示す加振部2、第1の検出部41、第2の検出部42、第3の検出部43の配置は、本実施形態における異常診断処理の開始時の配置状態(開始位置)である。第1の実施形態および第2の実施形態と同様に、開始位置は、例えば異常診断処理の実行者が操作部64を操作して異常診断処理を開始する際、出力部65に出力(一例として、ディスプレイに表示)される。
【0073】
図8に示す破線L81は、導体締結部131~134のボルト141~144とナット151~154が適正な締付トルクで締結されている状態(正常時)における振動の減衰状態(正常な減衰状態)を模式的に示す軌跡である。破線L82は、導体締結部135~138のボルト145~148とナット155~158の正常時における振動の減衰状態を模式的に示す軌跡である。縦軸は振動加速度の値、端的には振動のレベルを示し、横軸は導体部121~129が連なる方向(導体11の伸長方向)の位置を示す。点P415、P421,P439は、第1から第3の検出部41~43の位置の導体部125,121,129における正常時の振動加速度の値である。
【0074】
本実施形態における異常診断処理について、
図3に示すフローチャートに従って説明する。異常診断処理を開始するにあたって、診断制御部63は、加振部2、第1の検出部41、第2の検出部42、および第3の検出部43の開始位置の指示を出力部65に出力させる(S101)。加振部2、第1から第3の検出部41~43が
図6に示す開始位置に配置されると、励振制御部61は加振部2を動作させて導体部125から導体11に振動を与える(S102)。次いで、計測制御部62は、第1から第3の検出部41~43が検出した第1から第3の信号に基づいて、導体部125,121,129における振動の特性値(一例として振動加速度の値)を算出する(S103)。
【0075】
そして、診断制御部63は、導体部125の振動加速度の値と導体部121の振動加速度の値の差分または比(実測値の差分または比)と、これら導体部125,121の振動加速度の正常値の差分または比とを比較し、減衰条件を判定する(S104)。この減衰条件は、診断対象区間をほぼ二等分した場合、第2の診断対象区間に存在する導体部12(ここでは導体部121)を含む第2の減衰条件である。また、診断制御部63は、導体部125の振動加速度の値と導体部129の振動加速度の値の差分または比(実測値の差分または比)と、これら導体部125,129の振動加速度の正常値の差分または比とを比較し、減衰条件を判定する(S104)。この減衰条件は、診断対象区間をほぼ二等分した場合、第2の診断対象区間とは反対側の第3の診断対象区間に存在する導体部12(ここでは導体部129)を含む第3の減衰条件である。第2の減衰条件および第3の減衰条件の条件内容自体は、第1および第2の実施形態の減衰条件と同一である。
【0076】
第2の減衰条件および第3の減衰条件がいずれも成立しない場合(S104においてNo)、診断制御部63は、異常がないことを出力部65に出力させ(S105)、異常診断処理を終了する。
【0077】
これに対し、第2の減衰条件および第3の減衰条件の少なくとも一方が成立する場合(S104においてYes)、励振制御部61は振動の付与を一旦停止し(S106)、計測制御部62は振動の特性値の算出を一旦停止する(S107)。そして、診断制御部63は、ボルト14とナット15の緩みが発生している導体締結部13を特定可能か否か判定し(S108)、特定可能と判定した場合(S108においてYes)、特定した導体締結部13の位置および異常発生を示す情報(警告)を出力部65に出力させ、周知を図る(S109)。
【0078】
一方、特定不可能と判定した場合(S108においてNo)、診断制御部63は、第1の検出部41、第2の検出部42、および第3の検出部43の少なくとも一つの配置の変更指示を出力部65に出力させ、異常診断処理の実行者に変更作業を促す(S110)。これを受け、実行者は、これらの少なくとも一つを指示、例えばディスプレイに表示された画像などに応じて配置し直す。なお、第1および第2の実施形態と同様に、加振部2を配置変更対象に含めてもよい。このように特定不可能と判定した場合、第2の実施形態と同様に、診断制御部63は、第2の診断対象区間と第3の診断対象区間のうち、いずれでボルト14とナット15の緩みが発生しているかを推定し、該緩みが発生している導体締結部13が特定されるまで推定した診断対象区間に対して減衰条件の判定を繰り返す。
【0079】
図9Aから
図9Cは、本実施形態においてボルト14とナット15の緩みが発生している導体締結部13が特定されるまでの加振部2、第1の検出部41、第2の検出部42、および第3の検出部43の配置に遷移経過の一例を示す図である。
図9Aは、開始位置における異常診断結果の一例を示し、
図9Bおよび
図9Cは、異常診断結果に応じて開始位置から段階的に第2の検出部42もしくは第3の検出部43の配置を遷移させる過程を示す。
【0080】
例えば、第3の減衰条件が成立する場合、診断制御部63は、第2の診断対象区間に配置されている第2の検出部42を、第3の診断対象区間において加振部2と第3の検出部43との間の中間位置に移動させる旨の指示を出力部65に出力させる。ここでは、導体部121から導体部127への第2の検出部42の配置変更の指示が出力される。なお、第3の減衰条件が成立する場合、例えば、第3の診断対象区間の端に位置する導体部129における振動加速度の値(
図9Aに点P43zで示される値)が正常時の値(
図8に点P439で示される値)よりも小さくなる。
【0081】
図9Bは、第2の検出部42を移動させた後の新たな診断対象区間(第2の診断対象区間および第3の診断対象区間)における加振部2、第1の検出部41、第2の検出部42、および第3の検出部43の配置の一例を示す。
【0082】
図3に示すフローチャートに従い、
図9Bに示す状態において、励振制御部61は、加振部2を再び動作させて導体部125から導体11に所定の振動条件で振動を与える(S102)。また、計測制御部62は、検出部4が位置する導体部12における振動の特性値を再び算出する(S103)。そして、診断制御部63は、減衰条件(第2の減衰条件および第3の減衰条件)を再び判定する(S104)。
【0083】
判定の結果、例えば第2の減衰条件が成立する場合、診断制御部63は、第3の診断対象区間に配置されている第3の検出部43を、第2の診断対象区間において加振部2と第2の検出部42との間の中間位置に移動させる旨の指示を出力部65に出力させる。ここでは、導体部129から導体部126への第3の検出部43の配置変更の指示が出力される。なお、第2の減衰条件が成立する場合、例えば、第2の診断対象区間の端に位置する導体部127における振動加速度の値(
図9Bに点P42zで示される値)が正常時の値(
図8に点P127で示される値)よりも小さくなる。
【0084】
図9Cは、第3の検出部43を移動させた後の新たな診断対象区間(第2の診断対象区間および第3の診断対象区間)における加振部2、第1の検出部41、第2の検出部42、および第3の検出部43の配置の一例を示す。
【0085】
図3に示すフローチャートに従い、
図9Cに示す状態において、励振制御部61は、加振部2を再び動作させて導体部125から導体11に所定の振動条件で振動を与える(S102)。また、計測制御部62は、検出部4が位置する導体部12における振動の特性値を再び算出する(S103)。そして、診断制御部63は、減衰条件(第2の減衰条件および第3の減衰条件)を再び判定する(S104)。
【0086】
例えば、第2の減衰条件が成立する場合、第2の診断対象区間の端に位置する導体部127における振動加速度の値(
図9Cに点P42zで示される値)が正常時の値(
図8に点P127で示される値)よりも小さくなる。これに対し、第3の診断対象区間の端に位置する導体部126における振動加速度の値(
図9Cに点P436で示される値)が正常時の値(
図8に点P126で示される値)とほぼ一致する。したがって、診断制御部63は、導体部締結部136でボルト146とナット156が緩んでいる状態(異常状態)であると特定する。
【0087】
このように本実施形態によれば、第1の実施形態および第2の実施形態が奏する作用効果に加えて、次のような作用効果もさらに奏する。
本実施形態において、いずれかの導体締結部13においてボルト14とナット15の緩みが発生しているか否かの最初の異常診断処理の実行時、加振部2は、導体11の診断対象区間に存在する複数の導体部12が連なる方向における該診断対象区間の一端と他端との中間に位置する導体部12に配置される。これにより、診断対象区間を第2の診断対象区間と第3の診断対象区間とに二分できる。このため、最初の異常診断処理の実行時に第2および第3の検出部42,43で検出する第2および第3の信号の診断対象区間を短く(狭く)できる。したがって、例えば第1および第2の実施形態と比較して、振動対象区間の端部での振動の減衰を軽減でき、検出される検出部4で検出する振動の減衰特性を示す信号の減衰をSN比が向上し、該信号の検出精度を高めることができる。
【0088】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、上述した各実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0089】
1,1a…異常診断装置、2…加振部、4…検出部、6…制御部、10…電源設備、11…導体、12,121~129…導体部、13,131~138…連結部(導体締結部)、14,141~148…ボルト、15,151~158…ナット、41…第1の検出部、42…第2の検出部、43…第3の検出部、61…励振制御部、62…計測制御部、63…診断制御部、64…操作部、65…出力部。