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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054664
(43)【公開日】2024-04-17
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/06 20060101AFI20240410BHJP
   F24F 8/22 20210101ALI20240410BHJP
   F24F 8/108 20210101ALI20240410BHJP
   F24F 7/003 20210101ALI20240410BHJP
【FI】
F24F7/06 A
F24F8/22
F24F8/108 310
F24F7/003
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161043
(22)【出願日】2022-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】三原 邦彰
(72)【発明者】
【氏名】挾間 貴雅
(72)【発明者】
【氏名】小野 永吉
【テーマコード(参考)】
3L058
【Fターム(参考)】
3L058BD01
3L058BE08
3L058BG03
(57)【要約】
【課題】室内で発生した汚染物質を希釈・捕捉・除去して感染リスクを低減させることができる空調システムを提供する。
【解決手段】一実施形態に係る空調システムは、天井2及び壁3によって画成された空間Kに設けられる空調システム1である。空調システム1は、空間Kに空気Aを供給する空調機6と、天井2に設けられた天井扇7と、天井扇7の隣接位置において天井2から離隔すると共に天井2に沿って延在する内天井4と、を備える。天井扇7の回転によって、天井2と内天井4の間、及び内天井4の下側において空気が循環する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井及び壁によって画成された空間に設けられる空調システムであって、
前記空間に空気を供給する空調機と、
前記天井に設けられた天井扇と、
前記天井扇の隣接位置において前記天井から離隔すると共に前記天井に沿って延在する内天井と、
を備え、
前記天井扇の回転によって、前記天井と前記内天井の間、及び前記内天井の下側において前記空気が循環する、
空調システム。
【請求項2】
前記壁から離隔すると共に前記壁に沿って延在する内壁を備え、
前記天井扇の回転によって、前記壁と前記内壁の間、前記天井と前記内天井の間、及び前記内天井と前記内壁の内側において前記空気が循環する、
請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記天井は、前記空調機からの空気を前記天井と前記内天井の間に供給する給気部と、前記天井と前記内天井の間の空気を前記空間の外部に排出する排気部と、を有する、
請求項1又は2に記載の空調システム。
【請求項4】
前記天井と前記内天井の間の空気に紫外線を照射する紫外線照射装置、前記天井と前記内天井の間の空気を清浄化する空気清浄装置、及び前記天井と前記内天井の間の空気を濾過するフィルタ、の少なくともいずれかを備える、
請求項1又は2に記載の空調システム。
【請求項5】
前記壁は、前記空調機からの空気を前記壁と前記内壁の間に供給する給気部と、前記壁と前記内壁の間の空気を前記空間の外部に排出する排気部と、を有する、
請求項2に記載の空調システム。
【請求項6】
前記壁と前記内壁の間の空気に紫外線を照射する紫外線照射装置、前記壁と前記内壁の間の空気を清浄化する空気清浄装置、及び前記壁と前記内壁の間の空気を濾過するフィルタ、の少なくともいずれかを備える、
請求項2又は5に記載の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、天井及び壁によって画成された空間に設けられる空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、空調方法及び空調システムが記載されている。空調システムは、天井、床及び側壁で区画された室内に設けられる。床には複数の給気チャンバが配置されており、天井には複数の吸込口が設けられている。複数の給気チャンバのうちの一部には外気処理空調機で加熱処理又は冷却処理された空気が供給され、複数の給気チャンバのうちの残部には還気処理空調機で加熱処理又は冷却処理された空気が供給される。室内で作業が行われるときには、外気処理空調機によって冷却処理した空気を室内に給気し、吸込口から室内空気を排気する。
【0003】
特許文献2には、空調制御システムが記載されている。空調制御システムは、上方領域の温度を所定の上方目標温度に調節する空調装置と、部屋の天井に設置されて上下方向の空気の流れを生成する送風装置としての天井扇とを備える。部屋の壁には、天井扇の目標温度や動作条件の設定を行う設定部、及び部屋内で人が主に活動する下側領域の温度を測定する温度センサを備えた設定操作器が設置されている。設定操作器の設定内容や測定温度に基づいて天井扇のオン/オフが制御されると共に、空調装置は天井扇と連携して動作する。
【0004】
特許文献3には、咳又はくしゃみの発生により部屋内の空間に放出される物質を排出する換気システムが記載されている。換気システムは、部屋内における咳又はくしゃみを検出する咳検出装置と、部屋内の空気を部屋の外部に排出する換気装置と、換気装置を制御する制御装置とを備える。制御装置は、咳又はくしゃみの発生時刻から換気装置を作動させるまでの待機時間を算出し、咳検出装置が咳又はくしゃみを検出した時刻から待機時間待機した後に換気装置を作動させる。換気装置は、天井に設置されたファンと、ファンを回転させるモータとにより実現される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-169102号公報
【特許文献2】特開2009-30845号公報
【特許文献3】特開2020-30010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の換気システムでは、咳又はくしゃみが検出された時刻から待機時間待機した後でなければ天井に設置されたファンである換気装置が作動しないので、ウイルス等の感染リスクの低減において改善の余地がある。また、従来の空調システムでは、人体の呼吸時又は会話時に生じる飛沫が人体の発熱で生じる上昇流によって上方に移動し、飛沫が天井面付近に滞留するという問題が生じうる。天井面付近に滞留した飛沫を放置すると、室内気流によって当該飛沫が再飛散することがあり、再飛散した飛沫の回収が困難になることが想定される。従って、飛沫等の汚染物質が発生した際に素早く希釈・捕捉・除去して感染リスクを低減させることが求められる。
【0007】
本開示は、室内で発生した汚染物質を発生直後に希釈・捕捉・除去して感染リスクを低減させることができる空調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る空調システムは、(1)天井及び壁によって画成された空間に設けられる空調システムである。空調システムは、空間に空気を供給する空調機と、天井に設けられた天井扇と、天井扇の隣接位置において天井から離隔すると共に天井に沿って延在する内天井と、を備える。天井扇の回転によって、天井と内天井の間、及び内天井の下側において空気が循環する。
【0009】
この空調システムでは、天井及び壁によって画成された空間に空調機が空気を供給し、当該空気が循環する。空調システムは天井扇と内天井とを備える。内天井は、天井扇の隣接位置において天井から離隔すると共に天井に沿って延在している。従って、空調機によって空間に供給された空気は天井扇によって移動する。そして、天井扇の回転により、空気は、天井と内天井の間、及び内天井の下側において循環する。従って、天井面付近における内天井の上下に空気の循環経路が形成されるので、天井扇から気流を発生させることにより、居住域の高濃度の汚染物質を素早く拡散させ、濃度を薄めると共に、空気の移動を促進することで、部屋の換気効率を改善することができる。よって、ウイルス等の感染リスクを低減させることができる。更に、この空調システムでは、どのような空調方式にも置き換えることができる。
【0010】
(2)上記(1)において、空調システムは、壁から離隔すると共に壁に沿って延在する内壁を備えてもよい。天井扇の回転によって、壁と内壁の間、天井と内天井の間、及び内天井と内壁の内側において空気が循環してもよい。この場合、天井扇は、天井と内天井の間、壁と内壁の間、及び内天井と内壁の内側に空気を循環させる。従って、天井と内天井の間、壁と内壁の間、及び内天井と内壁の内側を空気の循環経路とすることが可能となり、前述と同様、空気の移動を促進して部屋の換気効率を改善できるので、感染リスクをより確実に低減させることができる。
【0011】
(3)上記(1)又は(2)において、天井は、空調機からの空気を天井と内天井の間に供給する給気部と、天井と内天井の間の空気を空間の外部に排出する排気部と、を有してもよい。この場合、天井と内天井の間の領域を空気の給排気部とすることが可能となる。よって、天井と内天井の間の領域から汚染物質を排出できるので、感染リスクをより低減させることができる。
【0012】
(4)上記(1)から(3)のいずれかにおいて、空調システムは、天井と内天井の間の空気に紫外線を照射する紫外線照射装置、天井と内天井の間の空気を清浄化する空気清浄装置、及び天井と内天井の間の空気を濾過するフィルタ、の少なくともいずれかを備えてもよい。紫外線照射装置が天井と内天井の間に配置される場合、空気の循環経路である天井と内天井の間の領域において紫外線を照射して空気を殺菌消毒することができる。従って、空間において循環する空気を殺菌消毒できるので、感染リスクをより低減させることができる。天井と内天井の間に空気清浄装置が設けられる場合、空気の循環経路である天井と内天井の間の領域において空気清浄装置によって空気を清浄化できる。従って、空間において循環する空気を清浄化できるので、清浄な空気を空間に供給できると共に感染リスクをより低減させることができる。天井と内天井の間にフィルタが配置される場合、空気の循環経路である天井と内天井の間の領域においてフィルタによって空気を濾過することができる。従って、フィルタによって汚染物質等を捕捉できるので、感染リスクをより低減させることができる。
【0013】
(5)上記(2)において、壁は、空調機からの空気を壁と内壁の間に供給する給気部と、壁と内壁の間の空気を空間の外部に排出する排気部と、を有してもよい。この場合、壁と内壁の間の領域を空気の給排気部とすることが可能となる。よって、壁と内壁の間の領域から汚染物質を排出できるので、感染リスクをより低減させることができる。
【0014】
(6)上記(2)または(5)において、空調システムは、壁と内壁の間の空気に紫外線を照射する紫外線照射装置、壁と内壁の間の空気を清浄化する空気清浄装置、及び壁と内壁の間の空気を濾過するフィルタ、の少なくともいずれかを備えてもよい。紫外線照射装置が壁と内壁の間に配置される場合、空気の循環経路である壁と内壁の間の領域において紫外線を照射して空気を殺菌消毒することができる。従って、空間において循環する空気を殺菌消毒できるので、感染リスクをより低減させることができる。壁と内壁の間に空気清浄装置が設けられる場合、空気の循環経路である壁と内壁の間の領域において空気清浄装置によって空気を清浄化できる。従って、空間において循環する空気を清浄化できるので、清浄な空気を空間に供給できると共に感染リスクをより低減させることができる。壁と内壁の間にフィルタが配置される場合、空気の循環経路である壁と内壁の間の領域においてフィルタによって空気を濾過することができる。従って、フィルタによって汚染物質等を捕捉できるので、感染リスクをより低減させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、室内で発生した汚染物質を発生直後に希釈・捕捉・除去して感染リスクを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態に係る空調システムが適用された空間を模式的に示す図である。
図2図1の空間において天井扇の回転方向を変更した状態を示す図である。
図3】(a)は、第2実施形態に係る空調システムが適用された空間を模式的に示す図である。(b)は、図3(a)の空間において天井扇の回転方向を変更した状態を示す図である。
図4】第2実施形態に係る空調システムの変形例を示す図である。
図5】(a)は、第3実施形態に係る空調システムが適用された空間を模式的に示す図である。(b)は、図5(a)の空間において天井扇の回転方向を変更した状態を示す図である。
図6】(a)は、第4実施形態に係る空調システムが適用された空間を模式的に示す図である。(b)は、図6(a)の空間において天井扇の回転方向を変更した状態を示す図である。
図7】(a)は、第5実施形態に係る空調システムが適用された空間を模式的に示す図である。(b)は、図7(a)の空間において天井扇の回転方向を変更した状態を示す図である。
図8】第6実施形態に係る空調システムが適用された空間を模式的に示す図である。
図9】第7実施形態に係る空調システムが適用された空間を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、図面を参照しながら本開示に係る空調システムの実施形態について説明する。図面の説明において同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解の容易化のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0018】
(第1実施形態)
図1に示されるように、本実施形態に係る空調システム1は、建物Sに設置されている。建物Sは、例えば、新設の建物であって空調システム1は建物Sの構築時に導入される。しかしながら、建物Sは既設の建物であってもよく、既設の建物Sに空調システム1が導入されてもよい。建物Sは部屋Hを有し、部屋Hは天井2と壁3によって画成されている。空調システム1は、天井2及び壁3の他、天井2に対向する内天井4と、壁3に対向する内壁5とを備える。
【0019】
空調システム1は、天井2、壁3、内天井4及び内壁5に流れる空気Aを制御することによって、部屋Hの内部の空間Kに滞在する人Mのウイルス等の感染リスクを低減させる。一例として、空間Kは、人Mが椅子Cに座ってデスクBにおいて仕事をするオフィス空間である。しかしながら、空間Kはオフィス空間でなくてもよく、空間Kの用途は適宜変更可能である。
【0020】
空調システム1は、例えば、部屋Hの外部に配置された空調機6を有する。空調機6は、空調機6から延び出す配管6bを介して空間Kに空気Aを送る。天井2は給気部2bを有し、給気部2bは、配管6bを介して空調機6からの空気を受けて空間Kに空気Aを供給する。
【0021】
空調システム1は、天井2に設けられた天井扇7を有する。天井扇7は、シーリングファンとも称される。天井扇7は、天井2から下方に延びる棒状部7bと、棒状部7bの下部において回転する回転部7cとを有する。天井扇7は、回転部7cを所定の方向に回転させることによって、回転部7cから空気Aが下方に流れる下降流F1を生じさせる。
【0022】
天井扇7は、上記所定の方向とは反対方向に回転部7cを回転させることにより、図2に示されるように、回転部7cに向かって空気Aが上方に流れる上昇流F2を生じさせる。天井扇7は、回転部7cの回転速度を調整可能となっている。空調システム1は、例えば、複数の天井扇7を備えており、複数の天井扇7は第1方向D1に並んでいる。第1方向D1は、一例として、水平方向である。
【0023】
天井2は、例えば、第1方向D1、及び第1方向D1に交差する第2方向D2に延在している。第2方向D2は、例えば、水平方向であって且つ第1方向D1に直交する方向である。壁3は、天井2の第1方向D1の両端のそれぞれから下方に延在している。部屋Hは一対の壁3を有し、一対の壁3は第1方向D1に互いに対向している。壁3は、第2方向D2、及び第1方向D1と第2方向D2の双方に交差する第3方向D3に延在している。第3方向D3は、例えば、鉛直方向である。
【0024】
内天井4は、天井扇7の隣接位置に設けられる。内天井4は、天井2から一定距離T1を隔てて離隔すると共に天井2に沿って延在する。一例として、一定距離T1は10cm以上且つ20cm以下である。例えば、内天井4は、天井2の下方において第1方向D1及び第2方向D2に延在している。一例として、内天井4は天井2に平行に延在している。
【0025】
内天井4は、例えば、天井2の一部を下から覆う。この場合、内天井4は、天井2の第2方向D2の全体を覆ってもよいし、天井2の第2方向D2の一部を覆ってもよい。空調システム1は、例えば、複数の内天井4を有する。複数の内天井4は、例えば、内壁5が連設された第1内天井4bと、内壁5が連設されていない第2内天井4cとを含む。一例として、第1内天井4bは平面視における部屋Hの端部に配置されており、第2内天井4cは平面視における部屋Hの端部以外の箇所に配置されている。
【0026】
内壁5は、平面視における内天井4の端部から壁3に沿って下方に延在している。内壁5は、例えば、壁3の一部を部屋Hの内側から覆う。この場合、内壁5は、壁3の第2方向D2の全体を覆ってもよいし、壁3の第2方向D2の一部を覆ってもよい。内壁5の下端5bは床Uから離隔している。一例として、内壁5の下端5bから床Uまでの距離は、1.5m以上且つ1.7m以下である。また、内壁5の下端5bから床Uまでの距離は、一般的な成人の身長より高い程度であってもよい。
【0027】
内壁5は、内天井4(第1内天井4b)の壁3寄りの位置から下方に延在している。内壁5は、壁3から一定距離T2を隔てて離隔すると共に壁3に沿って延在する。一例として、一定距離T2は10cm以上且つ20cm以下である。内壁5は、例えば、平面視における壁3の内側において第2方向D2及び第3方向D3に延在している。一例として、内壁5は壁3に平行に延在している。
【0028】
空調システム1は、部屋Hの内部の空間Kに空気Aの循環経路Rを形成する。循環経路Rは、内天井4及び内壁5の外側(天井2及び壁3側)、並びに、内天井4及び内壁5の内側に形成される。すなわち、内天井4の上側及び下側、並びに内壁5の外側及び内側に循環経路Rが形成される。
【0029】
空調システム1は、例えば、天井扇7からの下降流F1を含む複数の循環経路Rを形成する。複数の循環経路Rは、天井扇7(回転部7c)の回転によって天井扇7の下方、壁3と内壁5の間、及び天井2と内天井4の間に空気Aが通る第1循環経路R1、並びに、天井扇7の下方、一対の内天井4の間、及び天井2と内天井4の間に空気Aが通る第2循環経路R2、を含む。例えば、第1循環経路R1は平面視における部屋Hの隅部に形成され、第2循環経路R2は平面視における部屋Hの隅部以外の箇所に形成される。
【0030】
例えば、空調システム1は、天井扇7への上昇流F2を含む複数の循環経路Rを形成する。この場合、複数の循環経路Rは、天井扇7の回転によって、天井2と内天井4の間、及び壁3と内壁5の間に空気Aが通る第3循環経路R3、並びに、天井2と内天井4の間、及び一対の内天井4の間に空気Aが通る第4循環経路R4、を含む。例えば、第3循環経路R3は平面視における部屋Hの隅部に形成され、第4循環経路R4は平面視における部屋Hの隅部以外の箇所に形成される。
【0031】
例えば、天井扇7は、空調機6による冷房時に回転部7cを所定の方向に回転させて下降流F1を生じさせ、空調機6による暖房時に回転部7cを反対方向に回転させて上昇流F2を生じさせる。そして、天井扇7(回転部7c)の所定の方向への回転速度は、天井扇7の反対方向への回転速度よりも速い。すなわち、下降流F1の方が上昇流F2よりも強い。冷房時により強い下降流F1を生じさせることにより、気流そのものを人Mにあてて少ないエネルギーで人Mに冷涼感を感じさせることができる。すなわち、空間Kに供給する空気Aの設定温度を下げなくても、下降流F1を人Mにあてることによって高い冷却効果を得られる。その結果、高い省エネルギー効果を得られる。
【0032】
暖房時により弱い上昇流F2を生じさせることにより、人Mに直接気流をあてないようにできるので、人Mの身体を冷やさないようにすることができる。更に、上昇流F2を生じさせるときには、天井扇7から直接天井2と内天井4の間に空気Aが入り込むので、天井2の熱溜まりを解消でき、空調を効率化させることができる。
【0033】
次に、本実施形態に係る空調システム1から得られる作用効果についてより詳細に説明する。空調システム1では、天井2及び壁3によって画成された空間Kに空調機6が空気Aを供給し、空気Aが循環する。空調システム1は天井扇7と内天井4とを備える。内天井4は、天井扇7の隣接位置において天井2から離隔すると共に天井2に沿って延在している。従って、空調機6によって空間Kに供給された空気Aは天井扇7によって移動する。そして、天井扇7の回転により、空気Aは、天井2と内天井4の間、及び内天井4の下側において循環する。
【0034】
従って、天井2の天井面付近における内天井4の上下に空気Aの循環経路Rが形成されるので、天井扇7から気流を発生させることにより、居住域の高濃度の汚染物質を素早く拡散させ、濃度を薄めると共に、空気Aの移動を促進することで、部屋Hの換気効率を改善することができる。よって、ウイルス等の感染リスクを低減させることができる。更に、空調システム1では、空調機6としては通常のものを用いることができる。すなわち、空調システム1では、どのような空調方式にも置き換えることができる。
【0035】
本実施形態において、空調システム1は、壁3から離隔すると共に壁3に沿って延在する内壁5を備える。天井扇7の回転によって、壁3と内壁5の間、天井2と内天井4の間、及び内天井4と内壁5の内側において空気Aが循環する。この場合、天井扇7は、天井2と内天井4の間、壁3と内壁5との間、及び内天井4と内壁5の内側に空気を循環させる。従って、天井2と内天井4の間、壁3と内壁5の間、及び内天井4と内壁5の内側を空気Aの循環経路Rとすることが可能となり、前述と同様、空気Aの移動を促進して部屋Hの換気効率を改善できるので、感染リスクをより確実に低減させることができる。
【0036】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る空調システム11について図3(a)及び図3(b)を参照しながら説明する。図3(a)は、下降流F1を生じさせる場合の空調システム11を示す図である。図3(b)は、上昇流F2を生じさせる場合の空調システム11を示す図である。空調システム11の一部の構成は、前述した空調システム1の一部の構成と同一である。よって、以降の説明では、空調システム1の構成と重複する構成には同一の符号を用い、空調システム1の説明と重複する説明を適宜省略する。
【0037】
空調システム11の天井12は、空調機6からの空気Aを天井12と内天井4の間に供給する給気部13と、天井12と内天井4の空気Aを空間Kの外部に排出する排気部14とを有する。排気部14からは配管16が部屋Hの外に延び出しており、排気部14の空気Aが配管16を通って建物Sの外部に排出される。
【0038】
図3(a)及び図3(b)の例では、下降流F1が生じている場合における循環経路Rの給気部13の上流側に排気部14が配置されており、上昇流F2が生じている場合における循環経路Rの給気部13の下流側に排気部14が配置されている。しかしながら、給気部13及び排気部14の配置は、図3(a)及び図3(b)の例に限定されない。
【0039】
図4は、図3(a)及び図3(b)の排気部14の変形例である排気部15を備えた空調システム11Aを示している。図4に示されるように、空調システム11Aは、複数の排気部15を備えていてもよい。例えば、循環経路Rにおける給気部13の上流側及び下流側のそれぞれに排気部15が配置されていてもよい。更に、複数の排気部15は、例えば、下降流F1のときと上昇流F2のときとで切り替え可能とされていてもよい。この場合、給気部13から空間Kに供給された空気Aが直ぐに排出される事態を回避でき、空調を更に効率化させることができる。
【0040】
図3(a)、図3(b)及び図4に示されるように、第2実施形態に係る空調システム11,11Aでは、天井12は、空調機6からの空気Aを天井12と内天井4の間に供給する給気部13と、天井12と内天井4の間の空気Aを空間Kの外部に排出する排気部14、15とを有する。従って、天井12と内天井4の間の領域を空気Aの給排気部とすることが可能となる。よって、天井12と内天井4の間の領域から汚染物質を排出できるので、感染リスクをより低減させることができる。
【0041】
また、天井12の場合と同様に、壁3が給気部13と排気部14,15とを有していてもよい。すなわち、給気部13及び排気部14,15が壁3と内壁5の間に設けられていてもよい。この場合、壁3と内壁5の間の領域を空気Aの給排気部とすることが可能となる。よって、壁3と内壁5の間の領域から汚染物質を排出できるので、感染リスクをより低減させることができる。
【0042】
(第3実施形態)
続いて、第3実施形態に係る空調システム21について図5(a)及び図5(b)を参照しながら説明する。空調システム21は、紫外線Vを照射する紫外線照射装置22を備える。紫外線照射装置22は、天井2と内天井4の間の空気Aに紫外線Vを照射する。紫外線Vの照射によって空気Aの殺菌消毒が行われる。
【0043】
例えば、空調システム21は複数の紫外線照射装置22を備え、複数の紫外線照射装置22のそれぞれは内天井4の上面に配置されている。一例として、第1内天井4b及び第2内天井4cのそれぞれに空調システム21が載せられている。空調システム21は、第1内天井4b又は第2内天井4cと天井2との間の空気Aに紫外線Vを照射する。紫外線Vの波長は、例えば、100nm以上且つ400nm以下であり、一例として、100nm以上且つ280nm以下である。この場合、紫外線Vは、UVC(深紫外線)であり、空気Aのウイルス及び菌に対する高い消毒殺菌効果を発揮する。
【0044】
以上、第3実施形態に係る空調システム21では、紫外線照射装置22が天井2と内天井4の間に配置される。よって、空気Aの循環経路Rである天井2と内天井4の間の領域において紫外線Vを照射して空気Aを消毒殺菌することができる。従って。空間Kにおいて循環する空気Aを消毒殺菌できるので、感染リスクをより低減させることができる。
【0045】
また、紫外線照射装置22は、壁3と内壁5の間の空気Aに紫外線Vを照射してもよい。壁3と内壁5の間に紫外線照射装置22が配置されていてもよい。この場合も、空気Aの循環経路Rである壁3と内壁5の間の領域において紫外線Vを照射して空気Aを消毒殺菌することができるので、感染リスクを一層低減させることができる。更に、第3実施形態では、天井2と内天井4の間、又は壁3と内壁5の間といった人Mから離れた場所(人Mから見えない場所)に紫外線照射装置22が配置されているので、人Mに紫外線Vがあたることを防止することができる。すなわち、紫外線照射装置22によって、人Mから見えない場所で空気Aの消毒殺菌を行うことが可能である。
【0046】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態に係る空調システム31について図6(a)及び図6(b)を参照しながら説明する。空調システム31は、空気Aを清浄化する空気清浄装置32を備える。空気清浄装置32は、天井2と内天井4の間の空気Aを清浄化する。例えば、空調システム31は、複数の空気清浄装置32を備え、複数の空気清浄装置32のそれぞれは内天井4の上面に配置されている。
【0047】
一例として、第1内天井4bの上には空気清浄装置32が配置されており、第2内天井4cの上には空気清浄装置32が配置されていない。しかしながら、第2内天井4cの上に空気清浄装置32が配置されていてもよく、空気清浄装置32の配置場所及び数は特に限定されない。
【0048】
以上、第4実施形態に係る空調システム31では、空気清浄装置32が天井2と内天井4の間に配置される。従って、空気Aの循環経路Rである天井2と内天井4の間の領域において空気清浄装置32によって空気Aを清浄化できる。従って、空間Kにおいて循環する空気Aを清浄化できるので、清浄な空気Aを空間Kに供給できると共に感染リスクをより低減させることができる。
【0049】
空気清浄装置32は、壁3と内壁5の間の空気Aを清浄化してもよい。壁3と内壁5の間に空気清浄装置32が配置されていてもよい。この場合も、循環経路Rである壁3と内壁5の間の領域において空気清浄装置32が空気Aを清浄化できる。従って。清浄な空気Aを空間Kに供給できるので、感染リスクを一層低減させることができる。
【0050】
(第5実施形態)
続いて、第5実施形態に係る空調システム41について図7(a)及び図7(b)を参照しながら説明する。空調システム41は、循環経路Rにおいて循環する空気Aを濾過するフィルタ42を有する。フィルタ42は、空気清浄機付きフィルタであってもよい。空調システム41は、例えば、複数のフィルタ42を有する。複数のフィルタ42は、例えば、天井2と内天井4の間に配置された第1フィルタ42Aと、壁3と内壁5の間に配置された第2フィルタ42Bとを含んでいる。
【0051】
フィルタ42は天井2の給気部2bから離隔した位置に配置されている。例えば、第1フィルタ42Aは、第1内天井4b及び第2内天井4cのそれぞれと天井2との間に配置されている。一例として、第1フィルタ42Aは、循環経路Rにおける給気部2bよりも上流側に配置されている。第2フィルタ42Bは、一例として、壁3と内壁5の間における循環経路Rの入り口付近に配置されている。以上、フィルタ42(第1フィルタ42A及び第2フィルタ42B)の配置位置の例について説明したが、フィルタ42の数及び配置位置は上記の例に限られず適宜変更可能である。
【0052】
以上、第5実施形態に係る空調システム41では、天井2と内天井4の間にフィルタ42が配置される。従って、空気Aの循環経路Rである天井2と内天井4の間の領域においてフィルタ42によって空気Aを濾過することができる。従って、フィルタ42によって汚染物質等を捕捉できるので、感染リスクをより低減させることができる。空調システム41では、壁3と内壁5の間にフィルタ42が配置される。よって、空気Aの循環経路Rである壁3と内壁5の間の領域においてフィルタ42によって空気Aを濾過することができる。その結果、フィルタ42によって感染リスクを更に低減させることができる。
【0053】
以上、本開示に係る空調システムの種々の実施形態について説明した。しかしながら、本開示は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した要旨の範囲内において適宜変更可能である。すなわち、本開示に係る空調システムの各部の機能、構成、形状、大きさ、数、材料及び配置態様は、上記の要旨の範囲内において適宜変更可能である。
【0054】
上記では、紫外線照射装置22を備えた第3実施形態、空気清浄装置32を備えた第4実施形態、及びフィルタ42を備えた第5実施形態について説明した。しかしながら、紫外線照射装置22、空気清浄装置32及びフィルタ42のうちの2つ以上を備えた空調システムであってもよい。
【0055】
すなわち、空調システムは、天井2と内天井4の間の空気Aに紫外線Vを照射する紫外線照射装置22、天井2と内天井4の間の空気Aを清浄化する空気清浄装置32、及び天井2と内天井4の間の空気Aを濾過するフィルタ42、の少なくともいずれかを備えてもよい。また、空調システムは、壁3と内壁5の間の空気Aに紫外線Vを照射する紫外線照射装置22、壁3と内壁5の間の空気Aを清浄化する空気清浄装置32、及び壁3と内壁5の間の空気Aを濾過するフィルタ42、の少なくともいずれかを備えてもよい。これらの形態の場合であっても、前述した各実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0056】
以下では、本開示に係る空調システムの更なる変形例について説明する。前述の実施形態では、内壁5を有する空調システム1について説明した。しかしながら、図8に示されるように、内壁5を有しない空調システム51であってもよい。空調システム51は、内壁5に代えて棚55を有する。棚55は、一例として、本棚である。
【0057】
棚55は、内天井4の下に配置されている。棚55は、物(例えば本)が配置される箇所である複数の段56を有する。複数の段56のうち、上側の段56は裏板57を有し、下側の段56は裏板57を有しない。すなわち、上側の段56は第1方向D1に貫通しておらず、下側の段56は第1方向D1に貫通している。
【0058】
よって、下側の段56において第1方向D1に貫通する貫通孔58、裏板57と壁3の間、及び天井2と内天井4の間を循環経路Rとすることができる。従って、天井扇7からの下降流F1(又は上昇流F2)を循環経路Rで循環させることができるので、空調システム51からは前述した空調システム1等と同様の作用効果が得られる。
【0059】
図9は、図8とは異なる変形例に係る空調システム61を示している。空調システム61は、前述した棚55とは異なる構造の棚65を備える。棚65は、物が収納される収納部66と、収納部66を支持する複数の脚部67とを有する。収納部66は内天井4の下方に設けられており、脚部67は収納部66から床Uまで延在している。
【0060】
空調システム61では、複数の脚部67の間、収納部66と壁3の間、及び天井2と内天井4の間を循環経路Rとすることができる。よって、天井扇7からの下降流F1(又は上昇流F2)を循環経路Rで循環させることができるので、空調システム61からも前述した空調システム1等と同様の作用効果が得られる。
【符号の説明】
【0061】
1…空調システム、2…天井、2b…給気部、3…壁、4…内天井、4b…第1内天井、4c…第2内天井、5…内壁、5b…下端、6…空調機、6b…配管、7…天井扇、7b…棒状部、7c…回転部、11,11A…空調システム、12…天井、13…給気部、14,15…排気部、16…配管、21…空調システム、22…紫外線照射装置、31…空調システム、32…空気清浄装置、41…空調システム、42…フィルタ、42A…第1フィルタ、42B…第2フィルタ、51…空調システム、55…棚、56…段、57…裏板、58…貫通孔、61…空調システム、65…棚、66…収納部、67…脚部、A…空気、B…デスク、C…椅子、D1…第1方向、D2…第2方向、D3…第3方向、F1…下降流、F2…上昇流、H…部屋、K…空間、M…人、R…循環経路、R1…第1循環経路、R2…第2循環経路、R3…第3循環経路、R4…第4循環経路、S…建物、T1,T2…一定距離、U…床、V…紫外線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2024-03-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井及び壁によって画成された空間に設けられる空調システムであって、
前記空間に空気を供給する空調機と、
前記天井に設けられた天井扇と、
前記天井扇の隣接位置において前記天井から離隔すると共に前記天井に沿って延在する内天井と、
を備え、
前記天井扇の回転によって、前記天井と前記内天井の間、及び前記内天井の下側において前記空気が循環し、
前記壁から離隔すると共に前記壁に沿って延在する内壁を備え、
前記天井扇の回転によって、前記壁と前記内壁の間、前記天井と前記内天井の間、及び前記内天井と前記内壁の内側において前記空気が循環する、
空調システム。
【請求項2】
前記天井は、前記空調機からの空気を前記天井と前記内天井の間に供給する給気部と、前記天井と前記内天井の間の空気を前記空間の外部に排出する排気部と、を有する、
請求項に記載の空調システム。
【請求項3】
前記天井と前記内天井の間の空気に紫外線を照射する紫外線照射装置、前記天井と前記内天井の間の空気を清浄化する空気清浄装置、及び前記天井と前記内天井の間の空気を濾過するフィルタ、の少なくともいずれかを備える、
請求項に記載の空調システム。
【請求項4】
前記壁は、前記空調機からの空気を前記壁と前記内壁の間に供給する給気部と、前記壁と前記内壁の間の空気を前記空間の外部に排出する排気部と、を有する、
請求項に記載の空調システム。
【請求項5】
前記壁と前記内壁の間の空気に紫外線を照射する紫外線照射装置、前記壁と前記内壁の間の空気を清浄化する空気清浄装置、及び前記壁と前記内壁の間の空気を濾過するフィルタ、の少なくともいずれかを備える、
請求項又はに記載の空調システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本開示に係る空調システムは、(1)天井及び壁によって画成された空間に設けられる空調システムである。空調システムは、空間に空気を供給する空調機と、天井に設けられた天井扇と、天井扇の隣接位置において天井から離隔すると共に天井に沿って延在する内天井と、を備える。天井扇の回転によって、天井と内天井の間、及び内天井の下側において空気が循環し、壁から離隔すると共に壁に沿って延在する内壁を備え、天井扇の回転によって、壁と内壁の間、天井と内天井の間、及び内天井と内壁の内側において空気が循環する
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
(2)上記(1)において、天井扇は、天井と内天井の間、壁と内壁の間、及び内天井と内壁の内側に空気を循環させる。従って、天井と内天井の間、壁と内壁の間、及び内天井と内壁の内側を空気の循環経路とすることが可能となり、前述と同様、空気の移動を促進して部屋の換気効率を改善できるので、感染リスクをより確実に低減させることができる。