(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054671
(43)【公開日】2024-04-17
(54)【発明の名称】コネクタ及び電動車
(51)【国際特許分類】
B61B 13/00 20060101AFI20240410BHJP
B60L 53/16 20190101ALI20240410BHJP
【FI】
B61B13/00 A
B60L53/16
B61B13/00 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161060
(22)【出願日】2022-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】松原 正光
【テーマコード(参考)】
3D101
5H125
【Fターム(参考)】
3D101BB45
3D101BE01
5H125AA11
5H125AC12
5H125AC22
5H125FF12
(57)【要約】
【課題】異物の侵入を抑制できるコネクタ及び電動車を提供すること。
【解決手段】電極51,52と対面して挿入孔50を塞ぐ閉塞位置と、その閉塞位置よりも挿入孔50の奥に退いて挿入孔50を開放する開放位置とに変位する可動キャップ55,255を備える。挿入孔50に地上側コネクタ13,213が挿入された際には、可動キャップ55,255が開放位置に変位して挿入孔50を開放するので、地上側コネクタ13,213の各電極14,15と車両側コネクタ5,205の各電極51,52との接続が可能となる。これにより、無人搬送車1のバッテリ4を充電できる。一方、挿入孔50から地上側コネクタ13,213が引き抜かれた際には、可動キャップ55,255が閉塞位置に変位して挿入孔50を塞ぐので、挿入孔50から異物が侵入することを抑制できる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリを有する電動車と、その電動車の前記バッテリを充電するための充電装置とのいずれか一方に設けられる受け側のコネクタであって、前記電動車および前記充電装置のいずれか他方に設けられた挿入側のコネクタが挿入される挿入孔と、その挿入孔の内部に設けられる電極と、を備えるコネクタにおいて、
前記電極と対面して前記挿入孔を塞ぐ閉塞位置と、その閉塞位置よりも前記挿入孔の奥に退いて前記挿入孔を開放する開放位置とに前記挿入側コネクタの挿入方向に沿って変位する可動キャップを備え、
前記可動キャップは、前記挿入側のコネクタが前記挿入孔に挿入される際に前記開放位置に変位可能に構成され、前記挿入側のコネクタが前記挿入孔から引き抜かれる際に前記閉塞位置に変位可能に構成されることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記開放位置から前記閉塞位置に向けて変位させる弾性力を前記可動キャップに付与する第1弾性体を備えることを特徴とする請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記閉塞位置に配置される前記可動キャップ側に向けた弾性力を前記電極に付与する第2弾性体を備えることを特徴とする請求項2記載のコネクタ。
【請求項4】
前記可動キャップは、前記電極との摩擦によって前記電極を磨く研磨部を前記電極と対面する外面に備えることを特徴とする請求項3記載のコネクタ。
【請求項5】
前記可動キャップは、導電グリスを保持する保持部を前記電極と対面する外面に備えることを特徴とする請求項3記載のコネクタ。
【請求項6】
前記閉塞位置に配置される前記可動キャップと、前記挿入孔の開口との間をシールするシール材を備えることを特徴とする請求項1記載のコネクタ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載のコネクタが車体の外面に設けられることを特徴とする電動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタ及び電動車に関し、特に、異物の侵入を抑制できるコネクタ及び電動車に関する。
【背景技術】
【0002】
地上に設けられた充電装置によって電動車のバッテリを充電する技術が知られている。例えば特許文献1には、無人搬送車1(電動車)の車体に形成された開口1a(挿入孔)の内部に充電用コネクタ16(受け側のコネクタ)を設ける一方、地上の自動充電装置20に充電用コネクタ21(挿入側のコネクタ)を設ける技術が記載されている。この技術では、地上側の充電用コネクタ21をシリンダ22の動力によって車両側の充電コネクタ16に接続することにより、無人搬送車1のバッテリが充電される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平01-134609号公報(例えば、第2頁右上欄第5行~右下欄第2行、第3,5図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の技術では、各充電用コネクタ16,21(受け側のコネクタ及び挿入側のコネクタ)が接続されていない状態では、充電用コネクタ16が開口1a(挿入孔)から露出する。よって、開口1aから侵入する異物が充電用コネクタ16に付着することがあるという問題点があった。
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、異物の侵入を抑制できるコネクタ及び電動車を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明のコネクタは、バッテリを有する電動車と、その電動車の前記バッテリを充電するための充電装置とのいずれか一方に設けられる受け側のコネクタであって、前記電動車および前記充電装置のいずれか他方に設けられた挿入側のコネクタが挿入される挿入孔と、その挿入孔の内部に設けられる電極と、を備えるものであり、前記電極と対面して前記挿入孔を塞ぐ閉塞位置と、その閉塞位置よりも前記挿入孔の奥に退いて前記挿入孔を開放する開放位置とに前記挿入側コネクタの挿入方向に沿って変位する可動キャップを備え、前記可動キャップは、前記挿入側のコネクタが前記挿入孔に挿入される際に前記開放位置に変位可能に構成され、前記挿入側のコネクタが前記挿入孔から引き抜かれる際に前記閉塞位置に変位可能に構成される。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載のコネクタによれば、電極と対面して挿入孔を塞ぐ閉塞位置と、その閉塞位置よりも挿入孔の奥に退いて挿入孔を開放する開放位置とに変位する可動キャップを備える。挿入孔に挿入側コネクタが挿入された際には、可動キャップが開放位置(挿入孔の奥)に変位して挿入孔を開放するので、挿入側のコネクタと受け側のコネクタの電極との接続が可能となる。これにより、電動車のバッテリを充電できる。一方、挿入孔から挿入側のコネクタが引き抜かれた際には、可動キャップが閉塞位置に変位して挿入孔を塞ぐので、挿入孔から異物が侵入することを抑制できるという効果がある。
【0008】
請求項2記載のコネクタによれば、請求項1記載のコネクタの奏する効果に加え、次の効果を奏する。開放位置から閉塞位置に向けて変位させる弾性力を可動キャップに付与する第1弾性体を備えるので、挿入孔から挿入側のコネクタが引き抜かれた際に、可動キャップを閉塞位置側に向けて確実に変位させることができる。これにより、可動キャップによって挿入孔が閉塞され易くなるので、挿入孔から異物が侵入することをより効果的に抑制できるという効果がある。
【0009】
請求項3記載のコネクタによれば、請求項2記載のコネクタの奏する効果に加え、次の効果を奏する。閉塞位置に配置される可動キャップ側に向けた弾性力を電極に付与する第2弾性体を備えるので、閉塞位置に配置される可動キャップに対して電極を密着させることができる。よって、仮に、挿入孔から異物が侵入したとしても、電極に異物が付着することを抑制できるという効果がある。
【0010】
請求項4記載のコネクタによれば、請求項3記載のコネクタの奏する効果に加え、次の効果を奏する。可動キャップは、電極と対面する外面に研磨部を備える。第2弾性体の弾性力によって電極が研磨部に押し当てられた状態で、可動キャップが閉塞位置および開放位置の間を変位するので、研磨部によって電極を磨くことができるという効果がある。
【0011】
請求項5記載のコネクタによれば、請求項3記載のコネクタの奏する効果に加え、次の効果を奏する。可動キャップは、導電グリスを保持する保持部を電極と対面する外面に備える。第2弾性体の弾性力によって電極が保持部に押し当てられた状態で、可動キャップが閉塞位置および開放位置の間を変位するので、保持部に保持された導電グリスを電極に塗布できる。よって、電極の腐食(酸化)を抑制できるという効果がある。
【0012】
請求項6記載のコネクタによれば、請求項1記載のコネクタの奏する効果に加え、次の効果を奏する。閉塞位置に配置される可動キャップと、挿入孔の開口との間をシールするシール材を備えるので、可動キャップと挿入孔の開口との隙間をシール材で塞ぐことができる。よって、挿入孔から異物が侵入することをより効果的に抑制できるという効果がある。
【0013】
請求項7記載の電動車によれば、請求項1から6のいずれかに記載のコネクタが車体の外面に設けられるので、請求項1と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】(a)は、第1実施形態における無人搬送車の側面図であり、(b)は、
図1(a)の矢印Ib方向視における無人搬送車の正面図である。
【
図2】
図1(b)のII-II線における無人搬送車および充電装置の断面図である。
【
図3】
図2の状態から地上側コネクタが車両側コネクタに接続された状態を示す無人搬送車および充電装置の断面図である。
【
図4】第2実施形態における無人搬送車および充電装置の断面図である。
【
図5】
図4の状態から地上側コネクタが車両側コネクタに接続された状態を示す無人搬送車および充電装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
図1(a)は、第1実施形態における無人搬送車1の側面図であり、
図1(b)は、
図1(a)の矢印Ib方向視における無人搬送車1の正面図である。なお、
図1(b)では、無人搬送車1の車両側コネクタ5に充電装置10の地上側コネクタ13を接続した状態を図示している。
【0016】
図1に示すように、無人搬送車1は、図示しない積載物(パレットなど)を車体2に積載して自動走行する搬送車である。車体2は、無人搬送車1の走行および操舵を行うための複数(本実施形態では、4つ)の走行装置3によって支持される。
【0017】
複数の走行装置3は、図示しない回転駆動装置(電動モータ)からの動力によってそれぞれの車輪が独立して回転すると共に、操舵駆動装置からの動力によってそれぞれが独立して旋回するように構成される。よって、走行装置3の操舵角を独立して変化させつつ、各走行装置3の車輪を回転させることにより、無人搬送車1を前進、後進、横行、旋回、及びスピンさせることができる。これらの各駆動装置に電力を供給するためのバッテリ4(蓄電池)が車体2に搭載され、このバッテリ4の充電を行うための車両側コネクタ5が車体2に設けられる。
【0018】
工場内などに設けられた無人搬送車1の走行路上(地上)には、充電装置10が配置されており、充電装置10の筐体11の内部にはアーム12が固定される。アーム12の先端には、直方体状の地上側コネクタ13が固定され、車両側コネクタ5は、この地上側コネクタ13を挿入可能な矩形の挿入孔50を備えている。バッテリ4を充電する際には、無人搬送車1を充電装置10の前に停車させた状態でアーム12を伸長させることにより、地上側コネクタ13が車両側コネクタ5の挿入孔50に挿入される。
【0019】
次いで、
図2を参照して、車両側コネクタ5及び地上側コネクタ13の詳細構成を説明する。
図2は、
図1(b)のII-II線における無人搬送車1及び充電装置10の断面図である。なお、
図2では、地上側コネクタ13が短縮した状態を図示している。
【0020】
図2に示すように、充電装置10のアーム12は、筐体11に固定される筒状のシリンダチューブ12aと、そのシリンダチューブ12aに挿入されるピストンロッド12bと、を備える。アーム12は、シリンダチューブ12aに供給される圧縮空気によってピストンロッド12bが伸縮するエアシリンダである。なお、アーム12は、油圧シリンダや電動シリンダなどの他の公知のアクチュエータであっても良いし、シリンダに限らず、例えばロボットアームのような構造であっても良い。即ち、アーム12は、地上側コネクタ13を車両側コネクタ5に向けて変位させる(挿入孔50に挿入する)ことができるものであれば、公知の構成を適用できる。
【0021】
ピストンロッド12bの先端には地上側コネクタ13が固定され、地上側コネクタ13には、正極14及び負極15が設けられる。なお、以下の説明においては、正極14及び負極15をまとめて各電極14,15と記載することがある。
【0022】
各電極14,15は、充電装置10の電源(図示せず)からの電力を外部に出力するための端子であり、図示しないケーブルなどを介して充電装置10の電源(図示せず)と電気的に接続されている。各電極14,15は、直方体状の地上側コネクタ13の外面のうち、ピストンロッド12bの伸縮方向と直交する水平方向(
図2の上下方向)(以下「水平方向」という)を向く外面に固定される。
【0023】
充電装置10の筐体11には、地上側コネクタ13を通過させるための開口部11aが形成され、開口部11a(地上側コネクタ13)と同一の高さには、無人搬送車1の車体2の側面(外板)に車両側コネクタ5の挿入孔50が形成される。
【0024】
挿入孔50の内部(挿入孔50の開口よりも内側)には、地上側コネクタ13の各電極14,15を接続するための正極51及び負極52が設けられる。なお、以下の説明においては、正極51及び負極52をまとめて各電極51,52と記載することがある。
【0025】
各電極51,52は、充電装置10からの電力を無人搬送車1のバッテリ4へ供給するための略円柱状の端子であり、各電極51,52は、図示しないケーブルなどを介してバッテリ4と電気的に接続されている。挿入孔50の内部には、これらの各電極51,52を保持するための一対の電極ケース53が設けられる。電極ケース53は、円筒状の筒部53aと、その筒部53aの端部(後述する可動キャップ55とは反対の端部)を閉塞する閉塞部53bと、を備える。筒部53a及び閉塞部53bは、合成樹脂などの絶縁材料を用いて一体に形成される。
【0026】
なお、以下に電極ケース53による正極51の保持構造について説明するが、この電極ケース53による保持構造は、正極51と負極52とで実質的に同一の構成である。よって、負極52を保持する電極ケース53には、正極51を保持する電極ケース53と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0027】
筒部53aの内径は、正極51の外径と同一に(又は僅かに大きく)形成され、この筒部53aに正極51がスライド可能に挿入される。正極51と閉塞部53bとの間にはコイルばね54が設けられるが、このコイルばね54の機能の詳細については後述する。
【0028】
一対の電極ケース53は、各電極51,52の先端面(以下「電極面」という)を水平方向で対面させた状態で、車体2の外板などに固定されており、これらの各電極51,52の間に可動キャップ55が設けられる。
【0029】
可動キャップ55は、挿入孔50を閉塞するための直方体状の本体部55aと、その本体部55aの基端側(挿入孔50の奥側に位置する本体部55aの端部)からフランジ状に張り出す張出部55bと、を備える。本体部55a及び張出部55bは、合成樹脂などの絶縁材料を用いて一体に形成される。
【0030】
地上側コネクタ13の伸縮方向と直交する平面で切断した断面における本体部55aの外形寸法は、地上側コネクタ13の外形寸法と同一である(なお、以下の説明においては、同様の断面における外形寸法や開口寸法を単に「地上側コネクタ13の外形寸法」や「挿入孔50の開口寸法」などという)。
【0031】
また、可動キャップ55の本体部55aや地上側コネクタ13の外形寸法は、挿入孔50や開口部11aの開口寸法と同一に(又は僅かに小さく)形成されている。
【0032】
可動キャップ55の張出部55bは、本体部55aから四角環状に張り出す角フランジであり、この張出部55bがキャップケース56に保持される。キャップケース56は、張出部55bをスライド可能に保持する角筒状の筒部56aと、その筒部56aの端部(挿入孔50の開口とは反対側の端部)を閉塞する閉塞部56bと、を備える。筒部56a及び閉塞部56bは、合成樹脂などの絶縁材料を用いて一体に形成される。
【0033】
キャップケース56は、筒部56aの開口部分(閉塞部56bとは反対側の部位)を挿入孔50と対面させた状態で車体2に固定されている。よって、詳細は後述するが、このキャップケース56(筒部56a)に沿う可動キャップ55(張出部55b)のスライドによって挿入孔50を開閉できるように構成されている。
【0034】
なお、筒部56aに対する張出部55bのスライドは、単に張出部55bを筒部56aに挿入するだけでも良いし、張出部55bと筒部56aの内周面とのいずれか一方に突起(例えば、地上側コネクタ13の伸縮方向に延びるもの)を形成し、その突起が嵌まる溝を他方に形成し、それらの突起および溝によって張出部55bのスライドを案内しても良い。
【0035】
キャップケース56の閉塞部56bと可動キャップ55との間にはコイルばね57が設けられ、可動キャップ55には、挿入孔50の開口側に向けたコイルばね57の弾性力が付与される。このコイルばね57の弾性力による可動キャップ55の変位は、電極ケース53の筒部53aによって規制される。
【0036】
即ち、キャップケース56の筒部56aの開口部分は、一対の電極ケース53の筒部53aに突き当てられており、一対の電極ケース53の筒部53aは、キャップケース56の筒部56aよりも可動キャップ55側に突出している。よって、地上側コネクタ13が挿入孔50に挿入される前の状態では、コイルばね57の弾性力によって可動キャップ55の張出部55bが一対の電極ケース53の筒部53aに押し当てられる。
【0037】
張出部55bが電極ケース53の筒部53aに押し当てられた状態では、挿入孔50が可動キャップ55の本体部55aによって閉塞されるので、各電極51,52の対向間(挿入孔50の内部)に異物が侵入することを抑制できる。よって、各電極51,52に異物が付着することを抑制できるので、例えば各電極51,52の短絡などの不具合が生じることを抑制できる。また、可動キャップ55が挿入孔50を塞ぐことにより、無人搬送車1の周囲の作業者が各電極51,52に触れることを抑制できる。よって、無人搬送車1の安全性を向上できる。
【0038】
なお、以下の説明においては、可動キャップ55が挿入孔50を閉塞する位置を「閉塞位置」と記載する。可動キャップ55が閉塞位置に配置された状態では、コイルばね57が自由長よりも圧縮された状態になっているため、可動キャップ55を閉塞位置から挿入孔50の奥へ変位させるためには、比較的強い力が必要となる。これにより、無人搬送車1の周囲の作業者が可動キャップ55に触れた場合等、何らかの要因で挿入孔50の奥に可動キャップ55を押し込む力が作用しても、可動キャップ55による挿入孔50の閉塞状態が維持され易くなる。従って、各電極51,52の対向間(挿入孔50の内部)に異物が侵入することを抑制できる。
【0039】
また、可動キャップ55が閉塞位置に配置された状態では、コイルばね54の弾性力によって各電極51,52が本体部55aに押し当てられる(コイルばね54が自由長よりも圧縮された状態になっている)。これにより、仮に、挿入孔50と可動キャップ55の本体部55aとの隙間から異物が侵入したとしても、その異物が各電極51,52の電極面に付着することを抑制できる。
【0040】
また、本実施形態では、可動キャップ55による挿入孔50の閉塞性を高めるために、挿入孔50の開口側の縁部にシール材58(
図2の拡大部分参照)が取り付けられている。具体的には、挿入孔50の内周面には、その全周にわたって溝50aが形成され、この溝50aに四角環状のシール材58が接着剤などによって固定されている。シール材58は、ゴムなどの柔軟性を有する材料を用いて形成されており、シール材58の開口寸法は、可動キャップ55の本体部55aがシール材58の内周側でスライド可能な寸法に(本体部55aの外形寸法と同一または僅かに小さく)形成されている。
【0041】
よって、可動キャップ55が挿入孔50を塞ぐ際には、可動キャップ55の本体部55aの外周面にシール材58が接触(或いはシール材58が弾性変形した状態で密着)する。これにより、挿入孔50と本体部55aとの隙間から異物が侵入することを抑制できる。
【0042】
次いで、
図2及び
図3を参照して、挿入孔50に地上側コネクタ13が挿入された場合や、挿入孔50から地上側コネクタ13が引き抜かれた場合について説明する。
図3は、
図2の状態から地上側コネクタ13が車両側コネクタ5に接続された状態を示す無人搬送車1及び充電装置10の断面図である。
【0043】
図3に示すように、バッテリ4の充電時には、アーム12のピストンロッド12bが伸長することによって地上側コネクタ13が挿入孔50に挿入される。この地上側コネクタ13の挿入により、地上側コネクタ13に押し込まれる可動キャップ55がコイルばね57の弾性力に抗して挿入孔50の内部(奥)に向けて変位する。
【0044】
これにより、挿入孔50が開放されて地上側コネクタ13及び車両側コネクタ5の各正極14,51同士や負極15,52同士の接触が可能となり、バッテリ4が充電される。なお、以下の説明においては、可動キャップ55が挿入孔50を開放する(各電極14,15,51,52の接続が可能になる)位置を「開放位置」と記載する。
【0045】
バッテリ4の充電後、挿入孔50から地上側コネクタ13が引き抜かれると、コイルばね57の弾性力によって可動キャップ55が挿入孔50の開口側に変位する。これにより、
図2に示すように、閉塞位置まで変位した可動キャップ55によって挿入孔50が閉塞される。
【0046】
このように、本実施形態の車両側コネクタ5は、各電極51,52と対面して挿入孔50を塞ぐ閉塞位置と、その閉塞位置よりも挿入孔50の奥側に退いて挿入孔50を開放する開放位置とに変位する可動キャップ55を備える。これにより、地上側コネクタ13が挿入孔50に挿入された場合には、バッテリ4の充電を可能にする一方、地上側コネクタ13が引き抜かれた場合には、各電極51,52の対向間(挿入孔50)に異物が侵入することを抑制できる。
【0047】
可動キャップ55が閉塞位置に向けて変位する際には、挿入孔50の内周側のシール材58が本体部55aの外面に接触(或いはシール材58が弾性変形した状態で密着)する。この接触による摩擦力よりもコイルばね57の弾性力(可動キャップ55を閉塞位置に押し戻す力)が大きいので、可動キャップ55は閉塞位置まで確実に押し戻される。
【0048】
また、可動キャップ55が閉塞位置と開放位置との間を変位する際には、本体部55aが車両側コネクタ5の各電極51,52に対して摺動する。これは、上記の通り、コイルばね54によって各電極51,52が可動キャップ55(本体部55a)に押し当てられているためである。本実施形態では、この摺動を利用して各電極51,52の電極面を研磨できる構成になっている。
【0049】
具体的には、
図2の拡大部分に示すように、可動キャップ55の本体部55aの外面のうち、各電極51,52と対面する一対の外面には、研磨部55cが設けられる。本実施形態では、表面に微細な突起(目)が形成された金属製の板(やすり)を本体部55aに固定することで研磨部55cが形成されているが、例えば砥石や金属製のブラシ等、他の公知の研磨材を可動キャップ55に固定することで研磨部55cを形成しても良い。また、電極51,52よりも硬度が高い材料を用いて可動キャップ55を形成し、その可動キャップ55の表面に微細な突起(やすり状の凹凸)を形成することで研磨部55cを形成しても良い。
【0050】
このような研磨部55cを可動キャップ55に設けることにより、地上側コネクタ13の伸縮に伴う可動キャップ55の変位時に、各電極51,52を研磨部55cで磨くことができる。これにより、例えば各電極51,52(電極面)に生じた酸化被膜や、各電極51,52に付着した異物を研磨部55cで除去できる。
【0051】
また、可動キャップ55が閉塞位置に配置された状態においては、研磨部55cがシール材58よりも挿入孔50の奥(車体2の内部側)に位置するように構成される。即ち、可動キャップ55の本体部55aのうち、シール材58と接触する領域には研磨部55cが形成されていないので、研磨部55cとの接触によってシール材58が摩耗することを抑制できる。
【0052】
このように、本実施形態では、コイルばね57の弾性力によって可動キャップ55を閉塞位置に向けて変位させているが、例えば、コイルばね57を使用しない構成であっても、可動キャップ55を閉塞位置に向けて変位させることは可能である。この構成としては、例えば以下の2つの構成が例示される。
【0053】
第1の例としては、コイルばね57を省略して可動キャップ55をキャップケース56に単にスライド可能に保持すると共に、コイルばね54を省略して各電極51,52を変位不能に固定した車両側コネクタ5を車体2の底面に設ける構成が例示される。この構成の場合には、地上側コネクタ13を走行路(地面)に設けることにより、地上側コネクタ13の伸長時には、可動キャップ55を地上側コネクタ13で押し上げて開放位置まで変位させることができる。一方、地上側コネクタ13の短縮時には、可動キャップ55を自重によって落下させて閉塞位置まで変位させることができる。
【0054】
しかしながら、この第1の例の場合、キャップケース56の筒部56aや各電極51,52に可動キャップ55の本体部55a及び張出部55bが引っ掛かり、可動キャップ55が閉塞位置まで落下しない可能性がある。
【0055】
また、第2の例としては、コイルばね57を省略し、可動キャップ55の先端面と、地上側コネクタ13の先端面とに磁石(磁性体)を固定する構成が例示される。この構成においても、地上側コネクタ13の伸長時には、可動キャップ55を地上側コネクタ13で押し込んで開放位置まで変位させることができる。一方、地上側コネクタ13の短縮時には、磁石によって地上側コネクタ13に吸着された可動キャップ55を閉塞位置まで引き出すことができる。
【0056】
しかしながら、この第2の例の構成では、可動キャップ55を閉塞位置まで確実に引き出すためには、強力な磁石を用いる必要があるため、部品コストが増大する。
【0057】
これに対して本実施形態では、コイルばね57の弾性力によって可動キャップ55を閉塞位置に向けて変位させる構成である。よって、上記の第1の例のように可動キャップ55を自重で変位させる場合に比べ、可動キャップ55を閉塞位置まで確実に変位させることができる。更に、上記の第2の例とは異なり、強力な磁石を用いる必要がないため、部品コストも低減できる。
【0058】
次いで、
図4及び
図5を参照して、第2実施形態の無人搬送車201及び充電装置210について説明する。第1実施形態では、可動キャップ55の本体部55aの外形寸法が地上側コネクタ13の外形寸法と同一である場合を説明した。これに対して第2実施形態では、可動キャップ255の本体部255aよりも地上側コネクタ213の外形寸法が小さい場合について説明する。なお、上述した第1実施形態と同一の部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0059】
図4は、第2実施形態における無人搬送車201及び充電装置210の断面図であり、
図5は、
図4の状態から地上側コネクタ213が車両側コネクタ205に接続された状態を示す無人搬送車201及び充電装置210の断面図である。
【0060】
図4に示すように、第2実施形態の充電装置210は、地上側コネクタ213の外形寸法(各電極14,15を含む外形寸法)や、開口部211aの開口寸法が第1実施形態より小さい点を除き、第1実施形態の充電装置10と同一の構成である。
【0061】
無人搬送車201の車両側コネクタ205の可動キャップ255は、本体部255aの先端部にテーパ面255dが形成される点を除き、第1実施形態の可動キャップ55と同一の構成である。
【0062】
テーパ面255dは、本体部255aの外形寸法が張出部55b側に近付くにつれて徐々に大きくなるように傾斜する平面である。即ち、テーパ面255dは、本体部255aの矩形の先端面の各辺を切欠くようにして形成されており、図示は省略するが、このテーパ面255dが形成されることにより、本体部255aの先端部は四角錐台状に形成される。
【0063】
よって、
図5に示すように、地上側コネクタ213の伸長によって可動キャップ255が開放位置に向けて変位する途中では、各電極51,52がテーパ面255dをスライドしつつ、地上側コネクタ213の各電極14,15に向けて電極ケース53から突出する。これは、第1実施形態と同様、可動キャップ255(地上側コネクタ213)側に向けたコイルばね254の弾性力が各電極51,52に付与されているためである。この各電極51,52の変位により、各電極14,15,51,52の接触が可能となり、バッテリ4が充電される。
【0064】
一方、地上側コネクタ213が挿入孔50から引き抜かれる際には、第1実施形態と同様、コイルばね57の弾性力によって可動キャップ255が開放位置から閉塞位置に向けて変位する。この閉塞位置に向けた可動キャップ255の変位に伴い、各電極51,52は、コイルばね254の弾性力に抗して可動キャップ255のテーパ面255dを乗り上げるようにスライドしつつ、電極ケース53の内部に退くように変位する。この各電極51,52の変位により、閉塞位置に向けた(各電極51,52間への)可動キャップ255のスライド変位が可能となる。
【0065】
このように、本実施形態においても、各電極51,52と対面して挿入孔50を塞ぐ閉塞位置と、その閉塞位置よりも挿入孔50の奥側に退いて挿入孔50を開放する開放位置とに可動キャップ255が変位可能である。これにより、地上側コネクタ213が挿入孔50に挿入された場合には、バッテリ4の充電を可能にする一方、地上側コネクタ213が引き抜かれた場合には、各電極51,52の対向間(挿入孔50)に異物が侵入することを抑制できる。
【0066】
ここで、本実施形態の地上側コネクタ213の外形寸法は、可動キャップ255の本体部255a(第1実施形態の地上側コネクタ13)の外形寸法よりも小さいため、地上側コネクタ213に各電極51,52が接する時のコイルばね254の圧縮量は、本体部255aに各電極51,52が接する時(第1実施形態の地上側コネクタ13に各電極51,52が接する時)に比べて小さくなる。
【0067】
これに対し、本実施形態のコイルばね254のばね定数は、第1実施形態のコイルばね54に比べて大きく設定されている。これにより、地上側コネクタ213に各電極51,52が接した時のコイルばね254の弾性力を確保できるので、各電極14,15,51,52の導通不良を抑制できる。
【0068】
一方、コイルばね254の弾性力が比較的(第1実施形態のコイルばね54に比べて)大きいため、可動キャップ255の本体部255aに各電極51,52が接する時の接触圧を比較的(第1実施形態に比べて)大きくできる。これにより、可動キャップ255の変位時に各電極51,52が研磨部55c(
図4の拡大部分参照)で磨かれ易くなる。よって、各電極51,52に生じた酸化被膜や、各電極51,52に付着した異物を研磨部55cで効果的に除去できる。
【0069】
次いで、第2実施形態のシール材258について説明する。挿入孔50(
図4の拡大部分参照)の溝50aには、四角環状のシール材258が接着剤などによって固定される。シール材258の内周面にはテーパ面258aが形成され、テーパ面258aは、挿入孔50の内側から外側にかけてシール材258の開口寸法を縮小するように傾斜する平面である。即ち、テーパ面258aは、四角環状のシール材258の4つの内周面を切欠くように形成されており、可動キャップ255が閉塞位置まで変位した際には、可動キャップ255のテーパ面255d(本体部255aの四角錐台状の先端部分)がシール材258のテーパ面258aに密着する。
【0070】
このように、第2実施形態では、可動キャップ255(本体部255a)の先端にテーパ面255dを形成し、このテーパ面255dにシール材258を接触させる構成である。このような構成であれば、第1実施形態のように可動キャップ55(本体部55a)の外周面にシール材58を接触させる場合に比べ、閉塞位置に向けた可動キャップ255の変位を阻害する摩擦が生じ難くなる。
【0071】
これにより、可動キャップ255とシール材258との接触面積(シール面積)を大きくしても、コイルばね57の弾性力によって可動キャップ255を閉塞位置まで確実に押し戻すことができる。よって、挿入孔50から異物が侵入することを効果的に抑制できる。
【0072】
以上、上記実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形改良が可能であることは容易に推察できるものである。
上記各実施形態では、受け側のコネクタ(車両側コネクタ5,205)が設けられる電動車の一例として、自動走行する無人搬送車1,201を例示したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、運転者の運転によって走行する搬送車や自動車等、バッテリを有する他の公知の電動車に受け側のコネクタ(車両側コネクタ5,205)を設けても良い。
【0073】
上記各実施形態では、受け側のコネクタ(車両側コネクタ5,205)が無人搬送車1,201に設けられる一方、挿入側のコネクタ(地上側コネクタ13,213)が充電装置10,210(地上)に設けられる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、受け側のコネクタ(車両側コネクタ5,205に相当する構成)を充電装置10,210(地上)に設け、挿入側のコネクタ(地上側コネクタ13,213に相当する構成)を無人搬送車1,201に設けても良い。
【0074】
上記各実施形態では、アーム12に例示されるアクチュエータの伸長によって地上側コネクタ13,213を車両側コネクタ5,205に挿入する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、無人搬送車1,201の走行(例えば、横行)動作を利用して地上側コネクタ13,213を各車両側コネクタ5,205に挿入しても良いし、地上側コネクタ13,213を手動で車両側コネクタ5,205に挿入しても良い。
【0075】
上記各実施形態では、車両側コネクタ5,205の各電極51,52が水平方向で対面する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、各電極51,52(各電極面)が鉛直方向で対面する構成でも良いし、或いは、各電極51,52が対面せず水平方向や鉛直方向で並べて設けられる(各電極51,52の電極面が同一の方向に向けられる)構成でも良い。即ち、各電極51,52(各電極14,15)の配置は適宜設置できる。
【0076】
上記各実施形態では、無人搬送車1,201の車体2の側面に車両側コネクタ5,205が設けられる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、無人搬送車1,201の車体2の前面、後面、上面、又は底面に車両側コネクタ5,205を設けても良く、その車両側コネクタ5,205の位置に応じて充電装置10,210を配置すれば良い。
【0077】
上記各実施形態では、車両側コネクタ5,205に一対の電極51,52が設けられる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、車両側コネクタ5,205に3以上の電極(端子)が設けられる構成でも良い。或いは、正極と負極とのそれぞれを別のコネクタとして接続する(正極51が設けられる車両側コネクタ5と、負極52が設けられる車両側コネクタ5と、を別個に設ける)構成でも良い。
【0078】
上記各実施形態では、可動キャップ55,255や地上側コネクタ13,213が直方体状に形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、可動キャップ55,255や地上側コネクタ13,213を円柱状に形成しても良い。
【0079】
上記各実施形態では、コイルばね57によって可動キャップ55,255を閉塞位置側に付勢する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、板バネやゴムなどの他の公知の弾性体によって可動キャップ55,255を閉塞位置側に付勢しても良いし、シリンダ等の公知のアクチュエータ(地上側コネクタ13の伸縮に連動するもの)によって可動キャップ55,255を開放位置と閉塞位置との間で変位させても良い。また、第1実施形態で例示した第1の例や第2の例の構成によって可動キャップ55を閉塞位置に変位させても良い。
【0080】
上記各実施形態では、コイルばね54,254によって各電極51,52を可動キャップ55,255(地上側コネクタ13,213)側に付勢する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、板バネやゴムなどの他の公知の弾性体によって各電極51,52を可動キャップ55,255(地上側コネクタ13,213)側に付勢しても良い。
【0081】
上記各実施形態では、可動キャップ55,255の外面に研磨部55cを設ける場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、研磨部55cを省略しても良いし、研磨部55cに替えて、導電グリスを保持する保持部を可動キャップ55,255の外面に設ける構成でも良い。
【0082】
このような保持部の一例としては、導電グリスを保持可能な複数の凹み(溝)を可動キャップ55,255の外面に形成する構成や、導電グリスを保持可能な多孔質材料(フェルトなど)を可動キャップ55,255の外面に固定する構成が例示される。可動キャップ55,255の外面に導電グリスを保持させることにより、閉塞位置と開放位置との間を可動キャップ55,255が変位する際に導電グリスを各電極51,52に塗布できるので、各電極51,52の摩耗や腐食(酸化)を抑制できる。
【0083】
上記各実施形態では、シール材58,258によって挿入孔50と可動キャップ55,255との間をシールする場合を説明したが、シール材58,258は省略しても良い。
【符号の説明】
【0084】
1,201 無人搬送車
2 車体
4 バッテリ
5,205 車両側コネクタ(受け側のコネクタ)
50 挿入孔
51 正極(電極)
52 負極(電極)
54 コイルばね(第2弾性体)
55,255 可動キャップ
55c 研磨部
57 コイルばね(第1弾性体)
58,258 シール材
10,210 充電装置
13,213 地上側コネクタ(挿入側のコネクタ)