(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054672
(43)【公開日】2024-04-17
(54)【発明の名称】振動型圧縮機の駆動装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20240410BHJP
F04B 35/04 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
H02M7/48 E
F04B35/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161063
(22)【出願日】2022-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】000253075
【氏名又は名称】澤藤電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】生井 正夫
【テーマコード(参考)】
3H076
5H770
【Fターム(参考)】
3H076AA02
3H076BB21
3H076CC06
5H770AA01
5H770BA05
5H770DA44
5H770EA01
5H770EA25
5H770HA03W
5H770HA03Y
(57)【要約】
【課題】第1ゼロクロス位置を検出しやすく、振動型圧縮機を効率的に運転することができ、消費電力を削減できる振動型圧縮機を提供する。
【解決手段】MCU5が、上段トランジスタTR21がオフしてから下段トランジスタTR22がオンするまでの第1デッドタイムDT1中に振動型圧縮機20の電磁コイル224に発生する誘起電圧の第1ゼロクロス位置Aを検出する。MCU5が、第1ゼロクロス位置Aに基づいて、上段トランジスタTR21及び下段トランジスタTR22のオンオフ周期を制御する。また、MCU5は、起動時に第1デッドタイムDT1を第2デッドタイムDT2よりも長くする。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直列接続された第1スイッチ素子及び第2スイッチ素子を有し、前記第1スイッチ素子及び前記第2スイッチ素子を交互にオンすることにより直流を交流に変換して、振動型圧縮機の電磁コイルに供給するインバータと、
前記第1スイッチ素子がオフしてから前記第2スイッチ素子がオンするまでの第1期間中に前記振動型圧縮機の前記電磁コイルに発生する誘起電圧の第1ゼロクロス位置を検出する第1ゼロクロス位置検出部と、
前記第1ゼロクロス位置に基づいて、前記第1スイッチ素子及び前記第2スイッチ素子のオンオフ周期を制御するインバータ制御部と、を備え、
前記インバータ制御部は、前記第1期間を、前記第2スイッチ素子がオフしてから前記第1スイッチ素子がオンするまでの第2期間よりも長くする
振動型圧縮機の駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の振動型圧縮機の駆動装置において、
前記インバータ制御部は、電源投入直後から一定の起動期間に、前記第1期間を前記第2期間よりも長くし、前記起動期間後、前記第1期間と前記第2期間とを等しくする
振動型圧縮機の駆動装置。
【請求項3】
請求項2に記載の振動型圧縮機の駆動装置において、
前記第2期間中に前記振動型圧縮機の前記電磁コイルに発生する誘起電圧の第2ゼロクロス位置を検出する第2ゼロクロス位置検出部と、
前記振動型圧縮機の異常振動を検出する異常振動検出部であって、
前記起動期間後、
n周期目(nは整数)に検出された前記第1ゼロクロス位置及び前記第2ゼロクロス位置の一方と、n+1周期目に検出された前記第1ゼロクロス位置及び前記第2ゼロクロス位置の前記一方と、の間の期間の半分を第3期間とし、
前記n周期目に検出された前記第1ゼロクロス位置及び前記第2ゼロクロス位置の前記一方と、前記n周期目に検出された前記第1ゼロクロス位置及び前記第2ゼロクロス位置の他方と、の間の期間を第4期間とし、
前記第3期間と前記第4期間との差分が所定の値を越えた場合に当該振動型圧縮機の前記異常振動として検出する異常振動検出部と、
前記異常振動検出部により検出された前記異常振動の状態を脱出する異常振動脱出部と、を有する
振動型圧縮機の駆動装置。
【請求項4】
請求項2に記載の振動型圧縮機の駆動装置において、
前記第2期間中に前記振動型圧縮機の前記電磁コイルに発生する誘起電圧の第2ゼロクロス位置を検出する第2ゼロクロス位置検出部と、
前記振動型圧縮機の異常振動を検出する異常振動検出部であって、
前記起動期間後、
n周期目(nは整数)に検出された前記第1ゼロクロス位置及び前記第2ゼロクロス位置の一方と、n+1周期目に検出された前記第1ゼロクロス位置及び前記第2ゼロクロス位置の前記一方と、の間の期間の半分を第3期間とし、
前記n周期目に検出された前記第1ゼロクロス位置及び前記第2ゼロクロス位置の前記一方と、前記n周期目に検出された前記第1ゼロクロス位置及び前記第2ゼロクロス位置の他方と、の間の期間を第4期間とし、
第1所定期間毎に前記第3期間と前記第4期間との差分を積算した積算値が、連続して所定の閾値を第1所定回数超えた場合に当該振動型圧縮機の前記異常振動として検出する異常振動検出部と、
前記異常振動検出部により検出された前記異常振動の状態を脱出する異常振動脱出部と、を有する
振動型圧縮機の駆動装置。
【請求項5】
請求項3に記載の振動型圧縮機の駆動装置において、
前記異常振動脱出部は、前記第1スイッチ素子及び前記第2スイッチ素子のオンデューティを下げ、当該振動型圧縮機のバネ系の共振を減衰させて、前記異常振動の脱出を行う
振動型圧縮機の駆動装置。
【請求項6】
請求項4に記載の振動型圧縮機の駆動装置において、
前記異常振動検出部は、前記起動期間後、
前記n周期目に検出された前記第2ゼロクロス位置と、前記n+1周期に検出された前記第2ゼロクロス位置と、の間の期間の半分を前記第3期間とし、
前記n周期目に検出された前記第2ゼロクロス位置と、前記n周期目に検出された前記第1ゼロクロス位置と、の間を前記第4期間とし、
前記第3期間と前記第4期間との前記差分を求め、
前記第1所定期間は、前記n周期目に検出された前記第2ゼロクロス位置から前記n+1周期目に検出された前記第2ゼロクロス位置までの1周期を1波とした10波~50波である、
振動型圧縮機の駆動装置。
【請求項7】
請求項4に記載の振動型圧縮機の駆動装置において、
前記所定の閾値が、前記第3期間に対する前記差分の割合が0.23%~0.59%となるように設定される
振動型圧縮機の駆動装置。
【請求項8】
請求項4に記載の振動型圧縮機の駆動装置において、
連続して前記所定の閾値を超える前記第1所定回数は、3回~10回である
振動型圧縮機の駆動装置。
【請求項9】
請求項3に記載の振動型圧縮機の駆動装置において、
前記異常振動脱出部は、前記第1スイッチ素子及び前記第2スイッチ素子のオンデューティを0%~50%の間に下げる
振動型圧縮機の駆動装置。
【請求項10】
請求項3に記載の振動型圧縮機の駆動装置において、
前記異常振動脱出部は、前記第1スイッチ素子及び前記第2スイッチ素子のオンオフ周期を変動させ、当該振動型圧縮機のバネ系の共振周波数を変動させる
振動型圧縮機の駆動装置。
【請求項11】
請求項3~10の何れか1項に記載の振動型圧縮機の駆動装置において、
前記インバータ制御部は、前記異常振動脱出部による異常振動の状態が脱出された後の第2所定期間中に第2所定回数、前記異常振動を検出した場合、その後一定期間は通常動作を行う
振動型圧縮機の駆動装置。
【請求項12】
請求項11に記載の振動型圧縮機の駆動装置において、
前記第2所定期間が1分間であり、前記第2所定回数が3回である
振動型圧縮機の駆動装置。
【請求項13】
請求項11に記載の振動型圧縮機の駆動装置において、
前記一定期間は、3分間である
振動型圧縮機の駆動装置。
【請求項14】
請求項1に記載の振動型圧縮機の駆動装置において、
前記インバータ制御部は、コンプレッサ動作開始直後は前記第1スイッチ素子及び前記第2スイッチ素子のオンデューティを誘導電圧が検出可能な最小のオンデューティとし、その後、前記オンデューティを徐々に大きくするソフトスタートを行う
振動型圧縮機の駆動装置。
【請求項15】
請求項1に記載の振動型圧縮機の駆動装置において、
前記振動型圧縮機は、上開き型の蓋を有する冷蔵庫を駆動する
振動型圧縮機の駆動装置。
【請求項16】
互いに直列接続された第1スイッチ素子及び第2スイッチ素子を有し、前記第1スイッチ素子及び前記第2スイッチ素子を交互にオンすることにより直流を交流に変換して、振動型圧縮機の電磁コイルに供給するインバータと、
前記振動型圧縮機の入力に基づいて、前記第1スイッチ素子及び前記第2スイッチ素子のオン、オフのタイミングを制御して、前記振動型圧縮機のコイル及びピストンを含む可動部の共振周波数の変動に追従して駆動パルスを出力させるマイクロコンピュータと、を備えた
振動型圧縮機の駆動装置。
【請求項17】
請求項16に記載の振動型圧縮機の駆動装置において、
前記振動型圧縮機の入力は誘起電圧である
振動型圧縮機の駆動装置。
【請求項18】
請求項16に記載の振動型圧縮機の駆動装置において、
前記振動型圧縮機の入力は誘起電流である
振動型圧縮機の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動型圧縮機の駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上述した振動型圧縮機の駆動装置として、例えば、特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1に記載された振動型圧縮機の駆動装置は、上段スイッチ及び下段スイッチを交互にオンして、直流を交流に変換するインバータと、振動型圧縮機に入力される電流に基づいて、上段スイッチ及び下段スイッチのオンオフを制御する周波数追従回路を備えている。周波数追従回路は、ピークホールド回路を有し、電流の2回目のピークに応じて上段スイッチ及び下段スイッチを制御している。
【0003】
また、2回目のピーク以外にも振動型圧縮機に入力される誘起電圧が0Vとなるゼロクロス位置に基づいて上段スイッチ及び下段スイッチを制御することが考えられる。しかしながら、起動時は振動型圧縮機の振幅が小さくゼロクロス位置を検出しにくく、振動型圧縮機を効率的に運転することができない、という課題があった。
【0004】
また、特許文献1の振動型圧縮機の駆動装置は、振動型圧縮機の種類に応じて周波数追従回路を変更する必要がある、という課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、第1ゼロクロス位置を検出しやすく、振動型圧縮機を効率的に運転することができ、消費電力を削減できる振動型圧縮機の駆動装置を提供することにある。
【0007】
また、本発明は、振動型圧縮機の種類によらず、周波数追従を行うことができる振動型圧縮機の駆動装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために、本発明に係る振動型圧縮機の駆動装置は、下記[1]~[18]を特徴としている。
[1]
互いに直列接続された第1スイッチ素子及び第2スイッチ素子を有し、前記第1スイッチ素子及び前記第2スイッチ素子を交互にオンすることにより直流を交流に変換して、振動型圧縮機の電磁コイルに供給するインバータと、
前記第1スイッチ素子がオフしてから前記第2スイッチ素子がオンするまでの第1期間中に前記振動型圧縮機の前記電磁コイルに発生する誘起電圧の第1ゼロクロス位置を検出する第1ゼロクロス位置検出部と、
前記第1ゼロクロス位置に基づいて、前記第1スイッチ素子及び前記第2スイッチ素子のオンオフ周期を制御するインバータ制御部と、を備え、
前記インバータ制御部は、前記第1期間を、前記第2スイッチ素子がオフしてから前記第1スイッチ素子がオンするまでの第2期間よりも長くする
振動型圧縮機の駆動装置であること。
[2]
[1]に記載の振動型圧縮機の駆動装置において、
前記インバータ制御部は、電源投入直後から一定の起動期間に、前記第1期間を前記第2期間よりも長くし、前記起動期間後、前記第1期間と前記第2期間とを等しくする
振動型圧縮機の駆動装置であること。
[3]
[2]に記載の振動型圧縮機の駆動装置において、
前記第2期間中に前記振動型圧縮機の前記電磁コイルに発生する誘起電圧の第2ゼロクロス位置を検出する第2ゼロクロス位置検出部と、
前記振動型圧縮機の異常振動を検出する異常振動検出部であって、
前記起動期間後、
n周期目(nは整数)に検出された前記第1ゼロクロス位置及び前記第2ゼロクロス位置の一方と、n+1周期目に検出された前記第1ゼロクロス位置及び前記第2ゼロクロス位置の前記一方と、の間の期間の半分を第3期間とし、
前記n周期目に検出された前記第1ゼロクロス位置及び前記第2ゼロクロス位置の前記一方と、前記n周期目に検出された前記第1ゼロクロス位置及び前記第2ゼロクロス位置の他方と、の間の期間を第4期間とし、
前記第3期間と前記第4期間との差分が所定の値を越えた場合に当該振動型圧縮機の前記異常振動として検出する異常振動検出部と、
前記異常振動検出部により検出された前記異常振動の状態を脱出する異常振動脱出部と、を有する
振動型圧縮機の駆動装置であること。
[4]
[2]に記載の振動型圧縮機の駆動装置において、
前記第2期間中に前記振動型圧縮機の前記電磁コイルに発生する誘起電圧の第2ゼロクロス位置を検出する第2ゼロクロス位置検出部と、
前記振動型圧縮機の異常振動を検出する異常振動検出部であって、
前記起動期間後、
n周期目(nは整数)に検出された前記第1ゼロクロス位置及び前記第2ゼロクロス位置の一方と、n+1周期目に検出された前記第1ゼロクロス位置及び前記第2ゼロクロス位置の前記一方と、の間の期間の半分を第3期間とし、
前記n周期目に検出された前記第1ゼロクロス位置及び前記第2ゼロクロス位置の前記一方と、前記n周期目に検出された前記第1ゼロクロス位置及び前記第2ゼロクロス位置の他方と、の間の期間を第4期間とし、
第1所定期間毎に前記第3期間と前記第4期間との差分を積算した積算値が、連続して所定の閾値を第1所定回数超えた場合に当該振動型圧縮機の前記異常振動として検出する異常振動検出部と、
前記異常振動検出部により検出された前記異常振動の状態を脱出する異常振動脱出部と、を有する
振動型圧縮機の駆動装置であること。
[5]
[3]に記載の振動型圧縮機の駆動装置において、
前記異常振動脱出部は、前記第1スイッチ素子及び前記第2スイッチ素子のオンデューティを下げ、当該振動型圧縮機のバネ系の共振を減衰させて、前記異常振動の脱出を行う
振動型圧縮機の駆動装置であること。
[6]
[4]に記載の振動型圧縮機の駆動装置において、
前記異常振動検出部は、前記起動期間後、
前記n周期目に検出された前記第2ゼロクロス位置と、前記n+1周期に検出された前記第2ゼロクロス位置と、の間の期間の半分を前記第3期間とし、
前記n周期目に検出された前記第2ゼロクロス位置と、前記n周期目に検出された前記第1ゼロクロス位置と、の間を前記第4期間とし、
前記第3期間と前記第4期間との前記差分を求め、
前記第1所定期間は、前記n周期目に検出された前記第2ゼロクロス位置から前記n+1周期目に検出された前記第2ゼロクロス位置までの1周期を1波とした10波~50波である、
振動型圧縮機の駆動装置であること。
[7]
[4]に記載の振動型圧縮機の駆動装置において、
前記所定の閾値が、前記第3期間に対する前記差分の割合が0.23%~0.59%となるように設定される
振動型圧縮機の駆動装置であること。
[8]
[4]に記載の振動型圧縮機の駆動装置において、
連続して前記所定の閾値を超える前記第1所定回数は、3回~10回である
振動型圧縮機の駆動装置であること。
[9]
[3]に記載の振動型圧縮機の駆動装置において、
前記異常振動脱出部は、前記第1スイッチ素子及び前記第2スイッチ素子のオンデューティを0%~50%の間に下げる
振動型圧縮機の駆動装置であること。
[10]
[3]に記載の振動型圧縮機の駆動装置において、
前記異常振動脱出部は、前記第1スイッチ素子及び前記第2スイッチ素子のオンオフ周期を変動させ、当該振動型圧縮機のバネ系の共振周波数を変動させる
振動型圧縮機の駆動装置であること。
[11]
[3]~[10]の何れか1項に記載の振動型圧縮機の駆動装置において、
前記インバータ制御部は、前記異常振動脱出部による異常振動の状態が脱出された後の第2所定期間中に第2所定回数、前記異常振動を検出した場合、その後一定期間は通常動作を行う
振動型圧縮機の駆動装置であること。
[12]
[11]に記載の振動型圧縮機の駆動装置において、
前記第2所定期間が1分間であり、前記第2所定回数が3回である
振動型圧縮機の駆動装置であること。
[13]
[11に記載の振動型圧縮機の駆動装置において、
前記一定期間は、3分間である
振動型圧縮機の駆動装置であること。
[14]
[1に記載の振動型圧縮機の駆動装置において、
前記インバータ制御部は、コンプレッサ動作開始直後は前記第1スイッチ素子及び前記第2スイッチ素子のオンデューティを誘導電圧が検出可能な最小のオンデューティとし、その後、前記オンデューティを徐々に大きくするソフトスタートを行う
振動型圧縮機の駆動装置であること。
[15]
[1に記載の振動型圧縮機の駆動装置において、
前記振動型圧縮機は、上開き型の蓋を有する冷蔵庫を駆動する
振動型圧縮機の駆動装置であること。
[16]
互いに直列接続された第1スイッチ素子及び第2スイッチ素子を有し、前記第1スイッチ素子及び前記第2スイッチ素子を交互にオンすることにより直流を交流に変換して、振動型圧縮機の電磁コイルに供給するインバータと、
前記振動型圧縮機の入力に基づいて、前記第1スイッチ素子及び前記第2スイッチ素子のオン、オフのタイミングを制御して、前記振動型圧縮機のコイル及びピストンを含む可動部の共振周波数の変動に追従して駆動パルスを出力させるマイクロコンピュータと、を備えた
振動型圧縮機の駆動装置であること。
[17]
[16]に記載の振動型圧縮機の駆動装置において、
前記振動型圧縮機の入力は誘起電圧である
振動型圧縮機の駆動装置であること。
[18]
[16]に記載の振動型圧縮機の駆動装置において、
前記振動型圧縮機の入力は誘起電流である
振動型圧縮機の駆動装置であること。
【0009】
上記[1]の構成の振動型圧縮機の駆動装置によれば、第1期間>第2期間とすることにより、振動型圧縮機の振幅が小さいときであっても、第1ゼロクロス位置を有する誘起電圧の発生期間を長くすることができ、微小な第1ゼロクロス位置を検出しやすくでき、振動型圧縮機を効率よく運転することができ、消費電力を削減できる。
上記[2]の構成の振動型圧縮機の駆動装置によれば、振動型圧縮機の振幅が小さい起動時に第1期間>第2期間とすることができ、起動を安定して行えることができる。
上記[3]及び[4]の構成の振動型圧縮機の駆動装置によれば、振動センサなどを設置することなく、異常振動を検出して、異常振動から脱出することができる。
上記[5]の構成の振動型圧縮機の駆動装置によれば、振動型圧縮機のバネ系の共振が減衰し、異常振動から脱出することができる。
上記[6]~[8]の構成の振動型圧縮機の駆動装置によれば、異常振動を検出することができる。
上記[9]及び[10]の構成の振動型圧縮機の駆動装置によれば、異常振動から脱出することができる。
上記[11]~[13]の構成の振動型圧縮機の駆動装置によれば、振動型圧縮機によって駆動される冷蔵庫の過剰な停止を防止し冷却性能を維持することができる。
上記[14]の構成の振動型圧縮機の駆動装置によれば、電源投入後、安定して振動型圧縮機を起動できる。
上記[15]の構成の振動型圧縮機の駆動装置によれば、冷蔵庫が再起動し、振動型圧縮機の出力低下による冷却性能が低下したときでも、冷気が漏れにくいので冷却性能を保持できる。
上記[16]~[18]の構成の振動型圧縮機の駆動装置によれば、振動型圧縮機の種類よらず周波数追従が可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、第1ゼロクロス位置を検出しやすく、振動型圧縮機を効率的に運転することができ、消費電力を削減できる振動型圧縮機を提供することができる。
【0011】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の振動型圧縮機の駆動装置の一実施形態を示す回路図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す振動型圧縮機の駆動装置のデューティアップ時、定常時におけるインバータの出力電圧、ピストンの位置、タイマーカウント値、上段トランジスタ及び下段トランジスタのオンオフ状態、第1誘起電圧パルス、第1検出範囲、第1検出範囲中の第1誘起電圧パルス、第2誘起電圧パルス、第2検出範囲、第2検出範囲中の第2誘起電圧パルスのタイムチャートである。
【
図4】
図4は、
図1に示すMCUが実行するメイン処理の処理手順を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、
図1に示すMCUが実行する出力周期処理の処理手順を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、
図1に示すMCUが実行する割込み処理の処理手順を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、
図1に示すMCUが実行するタイマー処理の処理手順を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、
図1に示す振動型圧縮機の電源のオンオフ、コンプレッサ電流のタイムチャートである。
【
図9】
図9は、
図1に示す振動型圧縮機の駆動装置の起動時における上段トランジスタ及び下段トランジスタのオンオフ状態、インバータの出力電圧、第1検出範囲のタイムチャートである。
【
図10】
図10は、異常振動の検出処理について説明するためのインバータの出力電圧のタイムチャートである。
【
図11】
図11は、
図1に示すMCUが実行する異常振動の検出処理の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0014】
図1は、本発明の振動型圧縮機の駆動装置の一実施形態を示す回路図である。振動型圧縮機20は、例えば自動車などに搭載されている冷蔵庫、或いはコンテナ自体が冷蔵庫となっている場合の冷蔵庫を駆動するためのものであり、低電圧の交流電圧で動作する。本実施形態では、振動型圧縮機20は、上開き型の蓋を有する冷蔵庫を駆動する。
【0015】
図1に示す振動型圧縮機20の駆動装置1(以下、単に「駆動装置」と略記する)は、プラグ14に商用交流電源40が接続されていないときは、自動車に搭載されているようなバッテリ30によって振動型圧縮機20を駆動する。駆動装置1は、プラグ14に商用交流電源40が接続されているときは、商用交流電源40によって振動型圧縮機20を駆動する装置である。
【0016】
まず、駆動装置1の構成について説明する前に、
図2を参照して、振動型圧縮機20について説明する。振動型圧縮機20は、密閉容器21と、密閉容器21に収容された圧縮機本体22と、密閉容器21と圧縮機本体22の上下との間に設けた一対の防振バネ23,23と、を備えている。圧縮機本体22は、円筒状の外部鉄心221と、外部鉄心221内に挿入された円柱状の内部鉄心222と、内部鉄心222の外側面に配設された永久磁石223と、永久磁石223と外部鉄心221とで形成される環状の隙間に上下に振動可能に配置された電磁コイル224と、電磁コイル224に連結されたピストン225と、ピストン225を上下から付勢する一対の共振バネ226,226と、を備えている。振動型圧縮機20は、電磁コイル224に交流電源を供給して電磁コイル224に連結されたピストン225を振動させ、密閉容器21内に低圧の冷媒を流入し圧縮された高圧の冷媒を吐出するものである。
【0017】
図1に示すように、駆動装置1は、AC/DCコンバータ2と、DC/DCコンバータ3と、ダイオードD1,D2と、インバータ4と、コンピュータとしてのMCU(Main Control Unit)5と、PC(Personal Computer)通信部6と、誘起電圧検出部7と、ドライバ8と、入力電圧検出部9と、DC/DCコンバータIC10と、直流電圧検出部11と、DC/DCコンバータ12と、ファン13と、を備えている。
【0018】
AC/DCコンバータ2は、商用交流電源40からの交流電源を所望の直流電源に変換する。DC/DCコンバータ3は、バッテリ30から供給される直流のバッテリ電圧VBを昇圧して所望の直流電源に変換する。DC/DCコンバータ3は、サージ保護用のツェナーダイオードDZ1,DZ2と、バッテリ電圧VBから高周波成分を除去するフィルタ回路31と、逆流防止回路32と、コイルL1、トランジスタTR1と、ダイオードD2と、コンデンサC11,C12と、コンデンサC21,C22と、を備えている。
【0019】
コイルL1の一端は、フィルタ回路31を介してバッテリ30の正極に接続され、高周波成分が除去されたバッテリ電圧VBが供給される。トランジスタTR1は、Nチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。トランジスタTR1は、ドレインがコイルL1の他端に接続され、ソースがグランドに接続されている。ダイオードD2は、アノードがコイルL1の他端及びトランジスタTR1のドレインに接続されている。コンデンサC11,C12は、コイルL1の一端とグランドとの間に接続されている。コンデンサC21,C22は、ダイオードD2のカソードとグランドとの間に接続されている。
【0020】
上述した構成のDC/DCコンバータ3によれば、トランジスタTR1をオンすると、バッテリ電圧VBに充電されたコンデンサC11,C12の両端電圧をコンデンサC21,C22に供給する。このとき、コイルL1にエネルギーが蓄積される。次に、トランジスタTR1をオフすると、コンデンサC11,C12とコイルL1の両端電圧の和がコンデンサC21,C22に供給される。コンデンサC21,C22の電圧が、DC/DCコンバータ3により変換(昇圧)された直流電圧として、次段のインバータ4へ供給される。
【0021】
ダイオードD1は、AC/DCコンバータ2とインバータ4との間に接続される。詳しく説明すると、ダイオードD1のアノードがAC/DCコンバータ2側に接続され、カソードがインバータ4側に接続され、ダイオードD1を介してAC/DCコンバータ2によって変換された直流電源がインバータ4に供給される。
【0022】
ダイオードD2は、DC/DCコンバータ3とインバータ4との間に接続される。詳しく説明すると、ダイオードD2のアノードがDC/DCコンバータ3側に接続され、カソードがインバータ4側に接続され、ダイオードD2を介してDC/DCコンバータ3によって変換された直流電源がインバータ4に供給される。
【0023】
インバータ4は、AC/DCコンバータ2又はDC/DCコンバータ3により変換された直流電源を交流電源に変換して、振動型圧縮機20の電磁コイル224に供給する。インバータ4は、ダイオードD1,D2のカソードとグランドとの間に直列接続された第1スイッチ素子としての上段トランジスタTR21及び第2スイッチ素子としての下段トランジスタTR22と、直流成分カット用のコンデンサC31,C32及び平滑用のコイルL2と、を備えている。
【0024】
上段トランジスタTR21及び下段トランジスタTR22は、Nチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。上段トランジスタTR21は、ドレインがダイオードD1,D2のカソードに接続され、ソースが下段トランジスタTR22のドレインに接続されている。下段トランジスタTR22は、ドレインが上段トランジスタTR21のソースに接続され、ソースがグランドに接続されている。上段トランジスタTR21及び下段トランジスタTR22は、後述するDC/DCコンバータIC10に接続され、交互にオンオフ制御される。
【0025】
コンデンサC31,C32は、一端が上段トランジスタTR21のソース及び下段トランジスタT22のドレインに接続され、他端がコイルL2の一端に接続されている。コイルL2の他端は、振動型圧縮機20の電磁コイル224の一端に接続されている。電磁コイル224の他端は、グランドに接続されている。
【0026】
次に、後述するデューティアップ時、定常時における上段トランジスタTR21及び下段トランジスタTR22のオンオフ、インバータ4の出力電圧VOUT、ピストン225の位置と、について
図3を参照して説明する。同図に示すように、上段トランジスタTR21及び下段トランジスタTR22は交互にオンし、上段トランジスタTR21のオン期間と、下段トランジスタTR22のオン期間と、の間には上段トランジスタT21及び下段トランジスタTR22の双方がオフとなる第1デッドタイムDT1(=第1期間),第2デッドタイムDT2(第2期間)が設けられている。
【0027】
上段トランジスタTR21がオン、下段トランジスタTR22がオフすると、上段トランジスタTR21のソース電圧(下段トランジスタTR22のドレイン電圧)が入力電圧VINとなり、コンデンサC31,C32が充電される。入力電圧VINは、AC/DCコンバータ2又はDC/DCコンバータ3から供給される直流電圧である。このとき、電磁コイル224に供給される出力電圧VOUTは、入力電圧VINからコンデンサC31,C32の両端電圧を差し引いた正の電圧が供給される。電磁コイル224に正の電圧が供給されると、電磁コイル224にピストン225を上死点に移動させる力が発生し、ピストン225は上下の共振バネ226が釣り合う中立位置を越えて上死点に向かって移動する。
【0028】
次に、上段トランジスタTR21及び下段トランジスタTR22の双方がオフすると、出力電圧VOUTには負の反起電力(逆起電力)が発生する。また、上段トランジスタTR21及び下段トランジスタTR22の双方がオフした後も、ピストン225は、慣性力により上死点に向かって移動し、これにより出力電圧VOUTには正の誘起電圧が発生する。ピストン225が上死点に達して停止すると、出力電圧VOUTは0Vとなる。ピストン225は、上死点に達した後、共振バネ226の付勢力により下死点側にある中立位置に向かって移動し、これにより出力電圧VOUTには負の誘起電圧が発生する。
【0029】
次に、上段トランジスタTR21がオフ、下段トランジスタTR22がオンすると、上段トランジスタTR21のソース電圧(下段トランジスタTR22のドレイン電圧)がグランド(0V)となり、コンデンサC31,C32が放電される。このとき、電磁コイル224に供給される出力電圧VOUTは、0VからコンデンサC31,C32の両端電圧を差し引いた負の電圧が供給される。電磁コイル224に負の電圧が供給されると、電磁コイル224にピストン225を下死点に移動させる力が発生し、ピストン225が中立位置を越えて下死点に向かって移動する。
【0030】
また、次に、上段トランジスタTR21及び下段トランジスタTR22の双方がオフすると、出力電圧VOUTには正の反起電力が発生する。上段トランジスタTR21及び下段トランジスタTR22の双方がオフした後も、ピストン225は、慣性力により下死点に向かって移動し、これにより出力電圧VOUTには負の誘起電圧が発生する。ピストン225が下死点に達して停止すると、出力電圧VOUTは0Vとなる。ピストン225は、下死点に達した後、共振バネ226の付勢力により上死点側にある中立位置に向かって移動し、これにより出力電圧VOUTには正の誘起電圧が発生する。
【0031】
MCU5は、プログラムに従って動作する周知のコンピュータであり、駆動装置1全体の制御を司る。本実施形態においては、MCU5は、温度センサが内蔵されている。PC通信部6は、PCと通信を行うためのインタフェースであり、MCU5によって制御される。誘起電圧検出部7は、インバータ4の出力電圧VOUTが正の電圧、負の電圧のときにHレベルとなる第1誘起電圧パルス、第2誘起電圧パルス(
図3参照)を生成して、MCU5に出力する。ドライバ8は、MCU5の制御に応じて、上段トランジスタTR21及び下段トランジスタTR22のゲートに駆動パルスを出力する。入力電圧検出部9は、インバータ4に入力される入力電圧VINを検出して、AD変換したAD値をMCU5に供給する。なお、入力電圧検出部9の電圧に基づいて、振動型圧縮機20に供給する電力が一定になるようにデューティを可変させてMCU5で制御を行っている。
【0032】
DC/DCコンバータIC10は、入力電圧VIN、即ちDC/DCコンバータ3の出力電圧を検出し、入力電圧VINが所望の電圧となるようにトランジスタTR1のオンオフを制御する。DC/DCコンバータIC10は、MCU5から許可信号が出力されている間、入力電圧VINが所望の直流電圧となるようにトランジスタTR1のオンオフ制御を行い、MCU5から許可信号の出力が停止されると、トランジスタTR1のオンオフ制御を停止する。
【0033】
直流電圧検出部11は、AC/DCコンバータ2の出力電圧VOUT2にダイオードD3を介して接続されている。直流電圧検出部11は、出力電圧VOUT2を検出し、AD変換したAD値をMCU5に出力する。なお、ダイオードD3のカソードは、ダイオードD4のカソードに接続されている。ダイオードD4のアノードは、コイルL1の一端に接続され、バッテリ電圧VBが供給される。DC/DCコンバータ12は、ダイオードD3,D4のカソードが接続され、出力電圧VOUT2、バッテリ電圧VBを所望の直流電圧(例えば11V)に変換して、ファン13に対して出力する。
【0034】
次に、上述した構成の駆動装置1の動作について、
図4に示すフローチャートを参照して以下説明する。まず、電源がオンされると、MCU5は、初期化、故障診断を行う(S1、S2)。次に、MCU5は、直流電圧検出部11から出力されるAD値を取り込み(S3)、AC優先処理を行う(S4)。
【0035】
AC優先処理において、MCU5は、S3で取り込んだAD値に基づいてプラグ14に商用交流電源40が接続されているか否かを判定する。AC/DCコンバータ2は、バッテリ電圧VBよりも高い出力電圧VOUT2を出力する。MCU5は、S3で取り込んだAD値がバッテリ電圧VBよりも高い場合、プラグ14に商用交流電源40が接続されていると判定し、DC/DCコンバータIC10に対して許可信号の出力を停止する。DC/DCコンバータIC10は、許可信号が停止されている間はトランジスタTR1の制御を停止し、昇圧動作を行わない。これにより、プラグ14に商用交流電源40が接続されている場合は、DC/DCコンバータ3の昇圧動作が停止され、商用交流電源40によって振動型圧縮機20を駆動する。
【0036】
一方、MCU5は、S3で取り込んだAD値がバッテリ電圧VBであった場合、プラグ14に商用交流電源40が接続されていないと判定し、DC/DCコンバータIC10に対して許可信号を出力する。DC/DCコンバータIC10は、許可信号が出力されている間はトランジスタTR1の制御を行い、昇圧動作を行う。これにより、プラグ14に商用交流電源40が接続されていない場合は、DC/DCコンバータ3の昇圧動作が行われ、バッテリ30によって振動型圧縮機20を駆動する。
【0037】
次に、MCU5は、例えばPCやコントローラ等との通信処理を行い(S5)、ファン13を制御するファン処理を行う(S6)。その後、MCU5は、インバータ制御部として機能し、上段トランジスタTR21及び下段トランジスタTR22のオンデューティ、出力周期を設定する出力周期処理を行う(S7)。出力周期処理については後述する。次に、MCU5は、異常振動検出部として機能し、異常振動の検出処理を行った後(S8)、再びS2に戻る。異常振動の検出処理についても後述する。
【0038】
まず、出力周期処理について
図5を参照して説明する。まず、MCU5は、上段トランジスタTR21及び下段トランジスタTR22のオンデューティをセットする(S71)。S71において、MCU5は、内蔵された温度センサから周囲温度を検出し、周囲温度に応じてオンデューティをセットする。具体的には、MCU5は、周囲温度が高いときにオンデューティが大きく、周囲温度が低いときにオンデューティが小さくなるようにセットする。
【0039】
次に、MCU5は、第1ゼロクロス位置Aが基準より大きいか否かを判定する(S72)。この第1ゼロクロス位置Aについて
図3を参照して説明する。第1ゼロクロス位置Aは、ピストン225が上死点に達する位置(タイミング)であり、上段トランジスタTR21がオフしてから下段トランジスタTR22がオンするまでの第1デッドタイムDT1中に電磁コイル224に発生する誘起電圧が0Vとなる位置である。より詳しく説明すると、MCU5は、0~1023までのカウントアップを行うタイマー処理を繰り返し行っている。第1ゼロクロス位置Aは、誘起電圧が0Vに達した時のタイマー処理によるカウント値である。
【0040】
0~1023のカウントに係る時間は、共振バネ226の共振周期と概ね等しい。しかしながら、電磁コイル224及びピストン225を含む可動部の共振周期は、共振バネ226の温度や負荷変動などにより変化するために、本実施形態ではMCU5は、第1ゼロクロス位置Aに基づいて上段トランジスタTR21及び下段トランジスタTR22の出力周期(オンオフ周期)を微調整して、電磁コイル224及びピストン225を含む可動部が共振バネ226の共振周波数で振動するように周波数追従制御を行っている。
【0041】
話を
図5のフローチャートに戻すと、MCU5は、第1ゼロクロス位置Aが基準より大きい場合(S72でY)、現在セットされている出力周期が共振バネ226の共振周期よりも短いと判断して、次の出力周期を少し長くした(S73)後、S74に進む。一方、MCU5は、第1ゼロクロス位置Aが基準以下の場合(S72でN)、直ちにS74に進む。S74においては、MCU5は、第1ゼロクロス位置Aが基準より小さいか否かを判定する。
【0042】
MCU5は、第1ゼロクロス位置Aが基準より小さい場合(S74でY)、現在セットされている出力周期が共振バネ226の共振周期よりも長いと判断して、次の出力周期を少し短くした(S75)後、S76に進む。一方、MCU5は、第1ゼロクロス位置Aが基準と等しい場合(S74でN)、直ちにS76に進む。次に、MCU5は、S73、S75で調整した周期に次の出力周期をセットして(S75)、出力周期処理を終了する。
【0043】
上記出力周期処理によりセットされた出力周期の具体的な一例について
図3を参照して説明する。第1ゼロクロス位置Aの基準を「512」とする。
図3中、最初のタイマー処理で検出された第1ゼロクロス位置Aは基準と等しため、MCU5は、次の出力周期T12は変更しない。次のタイマー処理で検出された第1ゼロクロス位置Aは「511」であり基準より小さいため、MCU5は、次の出力周期T13を少し短くする。さらに次のタイマー処理で検出された第1ゼロクロス位置Aは「513」であり基準より大きいため、MCU5は、次の出力周期T14を少し長くする。
【0044】
また、MCU5は、第1ゼロクロス位置Aを検出するために
図6に示す第1割込み処理を実行する。MCU5は、
図3に示すように、第1デッドタイムDT1を第1検出範囲とする。MCU5は、第1検出範囲となっている間に第1誘起電圧パルスが立ち下がったタイミングで、ゼロクロスが発生したと判断して、第1割込み処理を実行する。第1割込み処理では、MCU5は、第1ゼロクロス位置検出部として機能し、このときのタイマーのカウント値を第1ゼロクロス位置Aとして記憶し(S9)、第1割込み処理を終了する。
【0045】
また、MCU5は、インバータ制御部として機能し、上段トランジスタTR21及び下段トランジスタTR22のオンオフを制御する
図7に示すタイマー処理を実行する。まず、MCU5は、タイマースタートと同時にタイマー処理を実行する。タイマー処理において、MCU5は、出力周期処理でセットしたオンデューティを取り込むデューティ出力処理を行う(S10)。次に、MCU5は、出力周期処理でセットした出力周期を取り込み、取り込んだオンデューティ、出力周期の駆動パルスを上段トランジスタTR21及び下段トランジスタTR22に出力する出力処理(周期)を行う(S11)。
【0046】
MCU5は、
図8に示すように、電源投入直後はソフトスタートを実行する。同図に示すように、MCU5は、電源投入から例えば2s間の起動時に
図5のS71を実行するとき、温度によるオンデューティのセットを行わずに、予め定めた最小デューティにセットする。本実施形態では、最小デューティは、一定以上(1V以上)の誘起電圧を確保するため、5%に設定されているものとする。
【0047】
次に、MCU5は、起動後、例えば3s間のデューティアップ時に
図5のS71を実行するとき、徐々にオンデューティを上げる。その後、MCU5は、デューティアップ後の定常時に
図5のS17を実行するとき、上述したように温度によるオンデューティのセットを行う。
【0048】
また、起動時は、電磁コイル224に流れるコンプレッサ電流が小さく、ピストン225の振幅が小さいため、第1ゼロクロス位置Aを検出しにくい。そこで、MCU5は、起動時に、
図7のS11を実行するとき、
図9に示すように、第1デッドタイムDT1を、下段トランジスタTR22をオフしてから上段トランジスタTR21をオンするまでの第2デッドタイムDT2よりも長くする。
【0049】
その後、MCU5は、デューティアップ時、定常時に、
図7のS11を実行するときに、
図3に示すように、第1デッドタイムDT1と、第2デッドタイムDT2と、を等しくする。
【0050】
上述したように起動時に第1デッドタイムDT1>第2デッドタイムDT2とすることにより、ピストン225の振幅が小さい起動時であっても、第1検出範囲を長くすることができ、微小な第1ゼロクロス位置Aを検出しやすくできるので、振動型圧縮機20を効率よく運転することができ、消費電力を削減できる。
【0051】
次に、上述した異常振動の検出処理の詳細について
図10及び
図11を参照して説明する。MCU5は、定常時に異常振動の検出処理を行い、デューティアップ時及び起動時には、行わない。振動型圧縮機20の共振バネ226、防振バネ23が、車の路面状況、車のサスペンション、車載設置状況等により、異常振動し、圧縮機本体22が密閉容器21に当たって異音(ゴトゴト音)が発生する。異常振動が振動型圧縮機20の密閉容器21に伝わり、ピストン225に伝わって、誘起電圧に影響を及ぼすので、異常振動の検出処理では、このような異常振動を検出することができる。
【0052】
異常振動の検出処理を行うために、MCU5は、第2ゼロクロス位置Bを検出する。第2ゼロクロス位置Bは、ピストン225が下死点に達する位置(タイミング)であり、第2デッドタイムDT2中に電磁コイル224に発生する誘起電圧が0Vとなる位置である。第2ゼロクロス位置Bは、誘起電圧が0Vに達した時のタイマー処理によるカウント値である。
【0053】
MCU5は、第2ゼロクロス位置Bを検出するために第2割込み処理(図示せず)を実行する。MCUは、
図3に示すように、第2デッドタイムDT2を第2検出範囲とする。MCU5は、第2検出範囲となっている間に第2誘起電圧パルスが立ち下がったタイミングで、ゼロクロスが発生したと判断して、第2割込み処理を実行する。第2割込み処理では、MCU5は、第2ゼロクロス位置検出部として機能し、このときのタイマーのカウント値を第2ゼロクロス位置Bとして記憶し、第2割込み処理を終了する。
【0054】
異常振動の検出処理において、
図10に示すように、n周期目(nは整数)に検出された第2ゼロクロス位置Bと、n+1周期目に検出された第2ゼロクロス位置Bと、の間の期間T3の半分を半周期T3/2(=第3期間)とする。n周期目に検出された第2ゼロクロス位置Bと、n周期目に検出された第1ゼロクロス位置Aと、の間を期間T4(=第4期間)とする。MCU5は、半周期T3/2と期間T4との差分ΔTを求める(S801)。
【0055】
次に、MCU5は、求めた差分ΔTを積算する(S802)。n周期目に検出された第2ゼロクロス位置Bから、n+1周期目に検出された第2ゼロクロス位置Bまでの1周期を1波とした25波分(=第1所定期間)の差分ΔTが積算されると(S803でY)、MCU5は、積算値が閾値を超えたか否かを判定する(S804)。なお、第1所定期間は、n周期目に検出された第2ゼロクロス位置Bから、n+1周期目に検出された第2ゼロクロス位置Bまでの1周期を1波とした1波の期間または複数の波の期間である。本実施形態では、第1所定期間は25波としたが、10~50波で設定すれば、正常時に異常振動を誤検出することを抑制できることが実験的に分かっている。MCU5は、積算値が閾値を超えていないと判定すると(S804でN)、異常振動を検出することなく、直ちに異常振動の検出処理を終了する。
【0056】
MCU5は、積算値が閾値を超えていると判定すると(S804でY)、積算値が連続して6回(=第1所定回数)、閾値を超えたか否かを判定する(S805)。第1所定回数は、積算値が連続して閾値を超える回数であり、本実施形態では6回に設定されている。積算値が連続して6回、閾値を超えていれば(S805でY)、MCU5は、異常振動を検出する(S806)。25波分の差分ΔTの積算値を算出するとき、半周期T3/2に対する差分ΔTの割合が0.23%~0.59%となるような閾値を設定すれば、正常時に異常振動を誤検出することを抑制できることが実験的に分かっている。即ち、閾値は、25×0.25%×T3/2~25×0.59%×T3/2に設定すればよい。
【0057】
一方、MCU5は、差分ΔTの積算値が連続して6回、閾値を超えていなければ(S805でN)、異常振動の検出をすることなく、直ちに異常振動の検出処理を終了する。
【0058】
また、MCU5は、異常振動が検出されると、後述する3分(=一定期間)をカウントする3分タイマーのカウント中でなければ(S807でN)、脱出処理を実行する(S808)。脱出処理において、MCU5は、例えば、上段トランジスタTR21及び下段トランジスタTR22のオンデューティを0%に引き下げて、振動型圧縮機20の駆動を停止させる。また、MCU5は、例えば、上段トランジスタTR21及び下段トランジスタTR22の出力周期を変動させるようにしてもよい。
【0059】
次に、MCU5は、1分間(=第2所定期間)で3回目(=第2所定回数)の異常振動が検出されたか否かを判定する(S809)。3回目の異常振動の検出であれば(S809でY)、MCU5は、3分タイマーをスタートさせた後、(S810)、異常振動の検出処理を終了する。一方、MCU5は、異常振動が検出されても、3分タイマーがカウント中の場合(S807でY)、脱出処理を行うことなく、直ちに異常振動の検出処理を終了する。上記第2所定時間は、異常振動の状態が脱出された後の期間であり、本実施形態では1分間に設定されている。第2所定回数は、異常振動の状態が脱出された後の第2所定期間中に異常振動を検出した回数であり、本実施形態では3回に設定されている。一定時間は、異常振動が脱出された後の第2所定期間中に第2所定回数、異常振動を検出した後の期間であり、本実施形態では3分に設定されている。
【0060】
上述した実施形態によれば、MCU5は、25波の差分ΔTを積算し、積算した積算値が6回、連続して閾値を超えた場合に異常振動を検出し、異常振動を検出した場合、異常振動の脱出処理を行う。これにより、振動センサなどを設置することなく、異常振動を検出して、異常振動から脱出することができる。
【0061】
上述した実施形態によれば、MCU5は、脱出処理において、上段トランジスタTR21及び下段トランジスタTR22のデューティを下げる。これにより、振動型圧縮機20の共振バネ226、防振バネ23の共振が減衰し、異常振動から脱出することができる。
【0062】
上述した実施形態によれば、MCU5は、脱出処理において、上段トランジスタTR21及び下段トランジスタTR22の出力周期を変動させている。これにより、異常振動から脱出することができる。
【0063】
上述した実施形態によれば、MCU5は、異常振動の脱出処理を行った後、1分間に3回異常振動が検出された場合、3分間は脱出処理を行わない。これにより、1度、脱出処理が行われて冷却が停止された後は3分間は冷却が停止されないため、冷蔵庫の過剰な停止を防止し冷却性能を維持することができる。
【0064】
上述した実施形態によれば、MCU5は、電源投入直後は上段トランジスタTR21及び下段トランジスタTR22のオンオフデューティを最小にし、その後、オンデューティを徐々に大きくするソフトスタートを行う。これにより、電源投入後、安定して振動型圧縮機20を起動できる。また、AC/DCコンバータ2の電流容量を少なくできるので、駆動装置の小型軽量化及びコストダウンに寄与できる。
【0065】
上述した実施形態によれば、駆動装置1は、上開き型の蓋を有する冷蔵庫を駆動する。
これにより、冷蔵庫が再起動し、振動型圧縮機20の出力低下による冷却性能が低下したときでも、冷気が漏れにくいので冷却性能を保持できる。
【0066】
上述した実施形態によれば、MCU5が、上段トランジスタTR21及び下段トランジスタTR22のオン、オフのタイミングを制御して、振動型圧縮機20を共振周波数に追従して振動させている。これにより、振動型圧縮機20の種類(例えば共振バネ226の種類)に応じて、ソフトウェア(例えば閾値など)を変えて対応することができ、振動型圧縮機20の種類よらず周波数追従が可能となる。
【0067】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。なお、上述した実施形態は上開き型の蓋に限らず、前開き型の扉の冷蔵庫などにも適用できる。
【0068】
上述した実施形態によれば、異常振動を検出するための第1所定期間は、25波に設定されていたが、これに限ったものではない。第1所定期間としては、10波~50波の間に設定すれば、異常振動を検出できることが実験的に確認された。
【0069】
また、上述した実施形態によれば、異常振動を検出するための第1所定回数は、6回に設定されていたが、これに限ったものではない。第1所定回数としては、3回~10回の間に設定すれば、異常振動を検出できることが実験的に確認された。
【0070】
また、上述した実施形態によれば、MCU5は、異常振動の脱出処理において、上段トランジスタTR21及び下段トランジスタTR22のオンデューティを0%に引き下げていたが、これに限ったものではない。0%~50%の間でオンデューティを引き下げれば、異常振動から脱出できることが実験的に確認された。
【0071】
上述した実施形態によれば、MCU5は、振動型圧縮機20に入力される出力電圧VOUTに基づいて上段トランジスタTR21及び下段トランジスタTR22のオンオフを制御していたが、これに限ったものではない。MCU5は、振動型圧縮機20に入力される電流に基づいて上段トランジスタTR21及び下段トランジスタTR22のオンオフを制御するようにしてもよい。この場合、特許文献1のように、MCU5は、電流の2回目のピークに応じて上段トランジスタTR21及び下段トランジスタTR22のオンオフを制御するようにしてもよい。
【0072】
上述した実施形態によれば、上段トランジスタTR21を第1スイッチ素子、下段トランジスタTR22を第2スイッチ素子としていたが、これに限ったものではない。下段トランジスタTR22を第1スイッチ素子、上段トランジスタTR21を第2スイッチ素子としてもよい。この場合、第2ゼロクロス位置Bが第1ゼロクロス位置に相当し、MCU5は、第2ゼロクロス位置Bに基づいて上段トランジスタTR21、下段トランジスタTR22のオンオフを制御する。
【0073】
上述した実施形態によれば、MCU5は、前の第2ゼロクロス位置Bから次の第2ゼロクロス位置Bまでの1期間T3の半分である半周期T3/2と、前の第2ゼロクロス位置Bから次の第1ゼロクロス位置Aまでの期間T4と、の差分ΔTを求めていたが、これに限ったものではない。MCU5は、前の第1ゼロクロス位置Aから次の第1ゼロクロス位置Aまでの1期間T3の半分である半周期T3/2と、前の第1ゼロクロス位置Aから次の第2ゼロクロス位置Bまでの期間T4と、の差分ΔTを求めてもよい。
【0074】
上述した実施形態によれば、MCU5は、上記差分ΔTの積分値が閾値を超えた場合に、異常振動を検出していたが、これに限ったものではない。MCU5は、上記差分ΔTが所定の値を越えた場合に、異常振動を検出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0075】
4 インバータ
5 MCU(第1ゼロクロス位置検出部、インバータ制御部、第2ゼロクロス位置検出部、異常振動検出部、異常振動脱出部)
20 振動型圧縮機
224 電磁コイル
A 第1ゼロクロス位置
B 第2ゼロクロス位置
DT1 第1デッドタイム(第1期間)
DT2 第2デッドタイム(第2期間)
TR21 上段トランジスタ(第1スイッチ素子)
TR22 下段トランジスタ(第2スイッチ素子)