(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054685
(43)【公開日】2024-04-17
(54)【発明の名称】地盤凍結装置
(51)【国際特許分類】
E21D 9/06 20060101AFI20240410BHJP
E02D 3/115 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
E21D9/06 301R
E02D3/115
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161088
(22)【出願日】2022-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】390002233
【氏名又は名称】ケミカルグラウト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有泉 毅
【テーマコード(参考)】
2D043
2D054
【Fターム(参考)】
2D043CA14
2D054FA04
(57)【要約】
【課題】地盤凍結装置の冷却能力を高める。
【解決手段】
地盤に接するスキンプレート13(構造体)を介して地盤を凍結させる地盤凍結装置1は、
扁平形状を有し、一方面側が上記スキンプレート13における第1の領域に接触または近接して設けられる冷媒配管2と、冷媒配管の他方面側、およびスキンプレート13における第2の領域に接触または近接して設けられる熱伝導部材31とを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に接する構造体を介して地盤を凍結させる地盤凍結装置であって、
扁平形状を有し、一方面側が上記構造体における第1の領域に接触または近接して設けられる冷媒配管と、
上記冷媒配管の他方面側、および上記構造体における第2の領域に接触または近接して設けられる熱伝導部材と、
を備えたことを特徴とする地盤凍結装置。
【請求項2】
請求項1の地盤凍結装置であって、
上記熱伝導部材は、銅、アルミニウム、ジュラルミン、タングステン、鋼、金、または銀、および/またはこれらの合金から成ることを特徴とする地盤凍結装置。
【請求項3】
請求項1の地盤凍結装置であって、
上記冷媒配管は帯状に形成され、
上記構造体における第2の領域は、上記第1の領域に対して冷媒配管の幅方向側に配置されていることを特徴とする地盤凍結装置。
【請求項4】
請求項1の地盤凍結装置であって、
上記構造体には内面側に突起する板状部材が立設され、
上記熱伝導部材は、さらに、上記板状部材に接触または近接して設けられることを特徴とする地盤凍結装置。
【請求項5】
請求項1の地盤凍結装置であって、
上記冷媒配管、および/または熱伝導部材と上記構造体との間に間詰め材が設けられていることを特徴とする地盤凍結装置。
【請求項6】
請求項1の地盤凍結装置であって、
上記冷媒配管は、複数の微小冷媒流路が形成されたマイクロチャネル構造を有し、
上記微小冷媒流路を流通する冷媒は液化二酸化炭素であることを特徴とする地盤凍結装置。
【請求項7】
請求項1の地盤凍結装置であって、
上記構造体は、トンネルを掘削するシールド機の鋼殻、隔壁、鋼製セグメント、および/または一部鋼製部材を用いたセグメントであることを特徴とする地盤凍結装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に構築される筒状のトンネルの周辺地盤などの地盤を凍結させる地盤凍結装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地中に地下構造物を構築する際には、例えばシールド工法が用いられる。シールド工法では、例えば、地山に発進立坑と到達立坑とを構築し、発進立坑から到達立坑へ向けてシールド掘進機で地山を掘削しながら、シールド掘進機の後部で次々にセグメントをトンネル周方向に組み立ててセグメントリングを構築すると共に、隣接するセグメントリング同士をトンネル軸方向で連結することで筒状のトンネル構造物(覆工体)を構築する。この工法では、シールド掘進機は、その後方の既設セグメントリングを推進ジャッキで後方へ押圧し、その反力として発生する推力によって、地山を掘削しながら前進する。
【0003】
シールド工法を用いる場合、地中にトンネルを構築した後に、トンネルの内外に凍結管を設けて、凍結管内に冷媒を流通させることにより、トンネルの周辺地盤の凍結を行う地盤凍結技術が知られている。このうち、トンネル内面側に凍結管を設け、トンネル構造体を介して、その外側の地盤を凍結させる貼付凍結管が用いられる。貼付凍結管の技術としては、トンネルの周辺地盤の凍結を行うためのトンネル内での作業を軽減することを目的として、貼付凍結管(第1冷媒流通管)を有するセグメントを組み立てて筒状のトンネルを構築する工程と、トンネルにて隣り合うセグメント同士の各々の貼付凍結管同士を連通配管(第2冷媒流通管)を介して連結する工程と、貼付凍結管内及び連通配管内に冷媒を流通させて、トンネルの周辺地盤を凍結させる工程とを含む貼付凍結管を用いた技術も知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような貼付凍結管を用いた地盤凍結システムにおいて冷却能力を高めるためには、例えば貼付凍結管の数を増やすことが考えられるが、その設置や凍結管の配管接続に要する工数が増大することになる。また、トンネル内面にはリブや補剛材などの突起があり、貼付凍結管を密に配置する平滑な面は限定され、単純に貼付凍結管の数を増加させることは出来ない。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、地盤凍結装置の冷却能力を容易に高められるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、
本発明は、
地盤に接する構造体を介して地盤を凍結させる地盤凍結装置であって、
扁平形状を有し、一方面側が上記構造体における第1の領域に接触または近接して設けられる冷媒配管と、
上記冷媒配管の他方面側、および上記構造体における第2の領域に接触または近接して設けられる熱伝導部材と、
を備えたことを特徴とする。
【0008】
これにより、地盤に接する構造体における、より広い領域から冷却が行われるので、地盤の冷却速度を速くすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、地盤凍結装置の冷却能力を容易に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】地盤凍結装置がシールド機の地中接合に用いられる例を示す説明図
【
図3】冷媒配管を有するセグメントの構成を示す斜視図
【
図9】変形例の地盤凍結装置の冷却能力の例を示すグラフ
【
図10】他の変形例の熱伝導部材の構成を示す横断面図
【
図11】冷媒配管の設置数が間引かれる例を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】
(地盤凍結装置1がシールド機の地中接合に用いられる例)
地盤凍結装置1は、例えば、
図1に示すように、シールド工法によるトンネルの地中接合に利用される。すなわち、シールド工法によって地中に筒状のトンネル(覆工体)を構築する際には、例えば複数のセグメント11がトンネル周方向やトンネル軸方向に連結されてトンネルが構築される。
図1に示すトンネルの地中接合の例では、対向するシールド機401の隔壁(バルクヘッド)、面板などを取り除き、両トンネルを貫通させるため、両シールド機401周辺地盤に凍土を形成する。この場合、地盤凍結装置1を構成する貼付凍結管である、後に詳述する冷媒配管2は、構造体となるシールド機鋼殻401a、および/または鋼製セグメントであるセグメント11のスキンプレート13の内面にトンネル周方向に複数設置され、鋼殻の外面側の地盤を凍結させ、シールド機バルクヘッド後方のシールド機鋼殻401a部分からシールド機401の周囲に円錐状に張り出させた放射凍結管101による掘削先端部の凍土Gの定着部に凍土G’を形成する。
【0013】
(地盤凍結装置1の機能的構成)
図2に示すように、地盤凍結装置1は、熱伝導部材31、冷媒配管2、冷媒循環ポンプ、及び、冷却装置5を有している。
【0014】
冷媒配管2は、シールド機鋼殻401a、またはセグメント11のスキンプレート13に直接的に接触または近接するとともに、熱伝導部材31を介してシールド機鋼殻401a、またはセグメント11のスキンプレート13に間接的に接触または近接し、複数の例えば銅パイプまたはステンレスから成るフレキシブルホースなどの連結配管で連結されている。
【0015】
冷却装置5は、液化器6、凝縮器7、及び、冷却塔8を有している。
【0016】
冷却装置5では凝縮器7と冷却塔8との間で水が循環している。冷却装置5では液化器6と凝縮器7との間で一次冷媒(例えばアンモニア(液化アンモニア))が循環している。
【0017】
本実施形態において、冷却装置5の液化器6から冷媒循環ポンプ、複数の冷媒配管2及び連結配管を経て液化器6に戻る冷媒循環経路内では二次冷媒が循環している。本実施形態ではこの二次冷媒が二酸化炭素(液化二酸化炭素)であるとして以下説明するが、二次冷媒は二酸化炭素に限らない。
【0018】
本実施形態において、二次冷媒である二酸化炭素が流通する前述の冷媒循環経路は、冷媒配管2が連結配管により連結されて成る冷媒流通管群を複数含んでおり、冷媒循環ポンプの吐出側からこれら冷媒流通管群に分岐した後、合流して液化器6に戻るように構成されている。すなわち、
図2では冷媒流通管群は
図1のシールド機鋼殻貼付部の冷媒流通管群と鋼製セグメント貼付部の冷媒流通管群とで構成されている。ここで、
図2には、8本の冷媒配管2を有する冷媒流通管群が4つ図示されているが、この冷媒流通管群の数、及び、冷媒流通管群を構成する冷媒配管2の本数は
図2に図示されたものに限らない。
【0019】
また、後述するように貼付凍結管においては、冷媒配管2が接触するシールド機鋼殻401aやセグメント11のスキンプレート13などの構造体の第1の領域、および熱伝導部材31が接触する構造体の第2の領域には、それぞれ設置時に金属面と金属面との不陸を無くし熱伝導を助長させる間詰め材32が一般に必要となるが、ここでは図示を省略している。
【0020】
併せて、冷媒配管2,熱伝導部材31および連結配管のトンネル内への露出された面は、そのままでは冷熱が空気中に放散されてしまい熱効率が悪くなるため、一般に露出面をグラスウール、ロックウールなどの材料の断熱材を覆う必要があるが、ここでは図示を省略している。
【0021】
(セグメント11)
図3に示すように、本実施形態では、セグメント11は、湾曲した矩形状の鋼製の枠体12と、この枠体12の地山側(トンネルの周辺地盤に隣接する側)を塞ぐように配置される鋼製のスキンプレート13と、1つ、または複数(
図3では1つ)の縦リブ14と、を備える鋼製セグメントである。尚、セグメント11を構成する縦リブ14の個数はこれに限らない。また、以下の説明において、スキンプレート13のうち、トンネルの外面(地山側表面)に対応する表面を「外面13a」とする一方、トンネルの内面(内壁面)に対応する表面を「内面13b」とする。
【0022】
枠体12は、一対の主桁15,15と、一対の継手板16,16により構成される。主桁15,15は、それぞれ、弧状の鋼材であり、トンネル軸方向に互いに離間して平行に配置されている。継手板16,16は、トンネル周方向に互いに離間して配置されており、主桁15,15の端部同士を連結している。
【0023】
継手板16,16間にて主桁15,15同士を接続する縦リブ14は鋼製であり、複数設けられる場合はトンネル周方向に互いに間隔を空けて並列配置されて、トンネル軸方向に延びている。
【0024】
複数(例えば8つ)のセグメント11は、隣接するセグメント11の継手板16,16同士が連結されて、環状のセグメントリングを構成する。また、隣接するセグメントリングの主桁15,15同士が連結されることにより、トンネル軸方向に延びるトンネル構造体(覆工体)が構築される。
【0025】
このセグメント11が構造体として、
図1に示すトンネル地中接続の例の鋼製セグメント部貼付凍結管が配置されて、セグメント11背面の地盤に凍土を形成する例について説明する。
【0026】
スキンプレート13の内面13bには、複数(
図3では2本)の冷媒配管2が貼り付けられている。より詳しくは、冷媒配管2は、スキンプレート13の内面13b(第1の領域)に、間詰め材32などを介して接触または近接するように設けられ、熱抵抗が小さくされている。尚、スキンプレート13の内面13bに貼り付けられる冷媒配管2の本数はこれに限らない。特に限定はされないが、通常、冷媒配管2および熱伝導部材31をセグメント11のスキンプレート13の内面13bに貼り付ける作業は、シールドトンネル内で行われてもよいが、セグメント11を製造する地上の工場または地上のセグメントストックヤードで行われることはより好ましい。この場合、冷媒配管2ならびに熱伝導部材31が設置されたセグメントをトンネルで組み立てた後、図示されていない連結配管で複数の冷媒配管2同士をつなぎあわせ
図2の地盤凍結装置1を構成する。
【0027】
冷媒配管2におけるスキンプレート13と反対側(
図3では上面側)には、熱伝導部材31が接触または近接するように設けられている。この熱伝導部材31は、冷媒配管2の両側(片側でもよい)でスキンプレート13の内面13b(第2の領域)に、間詰め材32などを介して接触または近接するように設けられている。これによって、冷媒配管2の両面側(地山側と反地山側)とスキンプレート13との間で熱の移動が行われるようになっている。すなわち、従来の貼付凍結管では、扁平管である冷媒配管2の地山側のみが、冷熱境界として作用していたが、熱伝導部材31を冷媒配管2の反地山側に接着させることで、冷媒配管2の両面を冷熱境界として利用できることになる。
【0028】
前記のように
図2に示す地盤凍結装置1では、冷媒配管2内及び連結配管内を流通する二次冷媒である液化二酸化炭素が、冷媒配管2の地山側と熱伝導部材31が接触する構造体であるセグメント11のスキンプレート13の第1の領域および第2の領域を介してトンネルの周辺地盤と熱交換を行ない、液化二酸化炭素の顕熱及び潜熱により当該周辺地盤を凍結させる。当該周辺地盤と熱交換を行なって一部が気化した液化二酸化炭素は、冷却装置5の液化器6で一次冷媒と熱交換を行ない、低温の液化二酸化炭素になり、再び冷媒循環ポンプを介して冷媒配管2内及び連結配管内に供給されて、循環する。
【0029】
冷却装置5の一次冷媒は、冷却装置5の液化器6にて二次冷媒である二酸化炭素から熱が供給されて蒸発・気化した後、凝縮器7で水と熱交換して降温し、液化する。そして凝縮器7で一次冷媒から熱が供給されて昇温した水は、冷却塔8で冷却される。
【0030】
ここで、地盤に接する構造体は、前記のようにトンネル工事例で示したシールド機鋼殻や鋼製セグメントが代表されるが、シールド機構成部材の隔壁(バルクヘッド)、面板にも用いられ、セグメントは鋳鉄製セグメントや一部構成部材を用いた合成セグメントにも用いられる。
【0031】
(冷媒配管2)
次に、冷媒配管2の構成について
図4及び
図5を用いて説明する。
【0032】
図4は、本実施形態における冷媒配管2を示す斜視図である。
図5は、本実施形態における冷媒流通部材20の斜視図である。
【0033】
図4に示すように、冷媒配管2は、冷媒流通部材20と、一対のソケット21a,21bと、ソケット21a,21bの各々に設けられた管状部材22a,22bとにより構成されている。
【0034】
冷媒流通部材20は、
図5に示すように、複数(
図5では11個)の微小冷媒流路24を有する扁平な部材であり、金属製(例えばアルミニウム製)である。すなわち、冷媒流通部材20は、複数の微小冷媒流路24が設けられたマイクロチャンネル構造を有している。尚、本実施形態では、微小冷媒流路24の断面形状を矩形状としているが、断面形状は矩形状に限らず、例えば円形状又は楕円形状であってもよい。また、冷媒流通部材20を構成する微小冷媒流路24の個数は11個に限らない。
【0035】
本実施形態では、冷媒流通部材20の微小冷媒流路24を流通する二次冷媒として液化二酸化炭素を用いている。ここで、液化二酸化炭素は、塩化カルシウム水溶液や塩化ナトリウム水溶液などのブラインよりも粘性が非常に低い。ゆえに、液化二酸化炭素が冷媒流通部材20の微小冷媒流路24を流通する際の抵抗がブラインと比較すると極めて小さい。それゆえ、冷媒流通部材20の微小冷媒流路24の流路断面積を、ブラインを用いる場合に比べて格段に小さくすることができるので、
図5に示すような、2つの矩形状の表面(平面)20a,20bを有する扁平な部材で冷媒流通部材20を形成することができる。例えば、冷媒流通部材20の幅を約50mmとし、冷媒流通部材20の厚さtを約5mmとすることができる。また、冷媒流通部材20は可撓性を有し得る。換言すれば、冷媒流通部材20は容易に変形可能である。
【0036】
図4に示すように、ソケット21a,21bは各々が直方体状の箱形であり、直方体状の内部空間を有しており、金属製(例えばアルミニウム製)である。冷媒流通部材20の一端側はソケット21aに連結されており、冷媒流通部材20の微小冷媒流路24とソケット21aの内部空間とは互いに連通している。冷媒流通部材20の他端側はソケット21bに連結されており、冷媒流通部材20の微小冷媒流路24とソケット21bの内部空間とは互いに連通している。
【0037】
管状部材22aは、その基端部がソケット21aに連結されており、先端部に、連結配管との接続口23aが設けられている。管状部材22aの内部空間はソケット21aの内部空間と連通している。管状部材22aは、その基端部よりもトンネル径方向内側に先端部が位置するように、トンネル径方向に沿って延びている。
【0038】
管状部材22bは、その基端部がソケット21bに連結されており、先端部に、連結配管との接続口23bが設けられている。管状部材22bの内部空間はソケット21bの内部空間と連通している。管状部材22bは、その基端部よりもトンネル径方向内側に先端部が位置するように、トンネル径方向に沿って延びている。
【0039】
上記冷媒配管2内に二次冷媒である液化二酸化炭素を流通させることにより、トンネルの周辺地盤を凍結させることができるようになる。通常、二次冷媒温度約―45℃、二次冷媒圧力約0.8MPa程度で循環している。
【0040】
(熱伝導部材31)
冷媒配管2における、構造体であるスキンプレート13が接する面と反対側の面には、
図6に示すように、例えば銅から成る熱伝導部材31が接触または近接するように設けられている。ここで、
図6は、便宜上、スキンプレート13の円筒面が平面に(円弧が直線になるように)展開されて描かれている。上記熱伝導部材31は、冷媒配管2との接触または近接部分から、冷媒配管2の冷媒流と直交方向(冷媒配管2の幅方向)両側に拡がり、スキンプレート13における上記冷媒配管2が貼り付けられている第1の領域とは異なる第2の領域に間詰め材32を介するなどして接触または近接するように貼り付けられている。
上記熱伝導部材31は、例えば銅から成るが、これに限らず、アルミニウム、ジュラルミン、タングステン、鋼、金、銀、および/またはこれらの合金など熱伝導に優れた材料が用いられてもよい。
【0041】
上記のように熱伝導部材31が設けられる場合には、冷媒配管2の両面側からの熱の移動によって、スキンプレート13における、より広い領域から冷却が行われるので、例えば
図7に示すように、熱伝導部材31が設けられない場合に比べて、冷却速度が速くなり、地盤が凍結して所定の温度まで下がるのに要する日数を短縮できることになる。また、一定期間経過後(例えば、28日経過後)の凍土の温度を比較すると、熱伝導部材31を設けることで温度も下げることができる。
【0042】
ここで、
図7は熱伝導部材31を設けない場合は、冷媒配管2を800mmピッチに設置し、熱伝導部材31を設ける場合、幅約610mmの銅製熱伝導部材を追加配置した条件で、冷媒配管2の熱境界を―45℃で保持して地盤凍結を行う2次元非定常熱伝導解析を行ったものである。また、冷媒配管2の配置ピッチの中間点でスキンプレート13下面から200mm位置の地盤温度の時間経過を比較したものである。なお、ここでは冷媒配管2,熱伝導部材31、スキンプレート13の熱放散は考慮していない。
【0043】
熱伝導部材31を設けない場合は、冷媒配管2の配置ピッチの中間点が、冷媒配管2の冷熱が伝わりにくい場所となるが、これに熱伝導部材31を設置することで、第2の領域からも冷熱が地盤に伝わることにより、前記の効果が現れている。
【0044】
また、この解析結果から、熱伝導部材31を設けない場合は、冷媒配管2の直下が冷熱が伝わりやすいので、凍結地盤の横断面での等温線は波型になるが、熱伝導部材31を設ける場合は、第2の領域からも冷熱が伝わることにより、その等温線は平板型になり、温度が均等な凍土が形成される効果が確認されている。
【0045】
(熱伝導部材31の変形例)
熱伝導部材31は、
図8に示すように、冷媒配管2との接触または近接部分から、両側のスキンプレート13に立設された板状部材である縦リブ14(および/または継手板16)の位置まで延び、スキンプレート13に加えて縦リブ14(および/または継手板16)にも、間詰め材32を介するなどして接触または近接するようにされてもよい。この場合には、さらに縦リブ14(および/または継手板16)を介した熱の移動によっても冷却が行われるので、例えば
図9に示すように、前述の
図7と同様に熱伝導部材31を設置した場合は、熱伝導部材31を設置しない場合に比べ、冷却速度が速くなり、地盤が凍結して所定の温度まで下がるのに要する日数をより短縮できることになる。
【0046】
ここで、
図9は、
図7における2次元非定常熱伝導解析と同様の解析を行い、縦リブ14の設置ピッチを800mmとした場合で、冷媒配管2は縦リブ14間中央に配置されている。
【0047】
地盤温度は、縦リブ14の直下でスキンプレート13下面から200mm位置における時間経過を比較している。
【0048】
通常、縦リブ14や継手板16そのものや近傍に貼付凍結管を貼付けることは作業性などの問題で行われておらず、縦リブ14や継手板16の直下は凍結地盤温度を下げにくい箇所であるが、上記のように熱伝導部材31を設置することで、縦リブ14や継手板16が第2の領域となることにより、地盤温度を下げることができ、冷却速度も速くすることが可能となる。
【0049】
また、ここで熱伝導部材31がスキンプレート13に加えて接触または近接するのは、スキンプレート13でトンネル内面側に現出する突起状の板状部材であればよく、縦リブ14や継手板16に限定されるものではない。例えば、シールド機鋼殻401aの補剛リブ材など構造体の一部を成し、トンネル内空側に立面する部材が該当する。
【0050】
なお、熱伝導部材31は、縦リブ14等をまたいでスキンプレート13等の構造体に接触または近接するようにされてもよい。
【0051】
(熱伝導部材31の他の変形例)
熱伝導部材31は、冷媒配管2との接触または近接部分から、両側の縦リブ14の位置まで延びるのに限らず、例えば
図10に示すように縦リブ14がオーバーハング部14aを有する場合などには、そのようなオーバーハング部14aがない縦リブ14側にだけ延びるようにしてもよい。また、そのようなオーバーハング部14aを有する縦リブ14側ではスキンプレート13だけに接触または近接するようにしてもよい。これによって、熱伝導部材31を設置する際の作業性が低下するのを回避することができる。
【0052】
(その他の事項)
上記の例では、地盤凍結装置1がシールドトンネル工事に用いられる例を示したが、これに限らず、例えばパイプルーフのパイプ内面に上記のような冷媒配管2、および熱伝導部材31を設けてパイプルーフ周辺の地盤を凍結する場合に用いてもよいし、シートパイル土留めの内面に設け土留め背面の地盤を凍結する場合に用いるなどしてもよい。
【0053】
上記のように、熱伝導部材31が設けられることによって、冷媒配管2が設けられている領域の間の領域でも、より温度を低下させることができるので、例えば平板的な凍土を形成して弱部をなくすことなども容易にできる。
【0054】
また、さらに縦リブ14や継手板16も熱流に寄与させることによって、一層、温度を低下させることなども容易にできる。すなわち、通常、冷媒配管2を直接設けることが困難な縦リブ14や継手板16付近の背面(例えば特に漏水しやすい継手部背面など)に凍土を形成することが容易にできる。
【0055】
一方、例えば
図11(a)に示すように所定のピッチで冷媒配管2が設けられるのと同等の凍土形成能力を得るために必要な冷媒配管2の設置数は、
図11(b)に示すように、熱伝導部材31を用いることによって間引くことができるので、材料費や設置工数などを削減してコストダウンを図ることも容易にできる。ここで、通常、熱伝導部材31は再利用することも可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 地盤凍結装置
2 冷媒配管
5 冷却装置
6 液化器
7 凝縮器
8 冷却塔
11 セグメント
12 枠体
13 スキンプレート(構造体)
13a 外面
13b 内面
14 縦リブ
14a オーバーハング部
15 主桁
16 継手板
20 冷媒流通部材
21a,21b ソケット
22a,22b 管状部材
23a 接続口
23b 接続口
24 微小冷媒流路
31 熱伝導部材
32 間詰め材
101 放射凍結管
401 シールド機
401a シールド機鋼殻(構造体)