(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054688
(43)【公開日】2024-04-17
(54)【発明の名称】杭頭接合部用部材
(51)【国際特許分類】
E02D 27/12 20060101AFI20240410BHJP
【FI】
E02D27/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161091
(22)【出願日】2022-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】522268591
【氏名又は名称】武部 陽憲
(74)【代理人】
【識別番号】100149836
【弁理士】
【氏名又は名称】森定 勇二
(72)【発明者】
【氏名】武部 陽憲
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046CA04
(57)【要約】
【課題】補強鉄筋の配筋バラつきが生じ難く仮設置も容易である杭頭接合部用部材を提供する。
【解決手段】杭頭接合部用部材1は、鋼管杭と補強鉄筋を接合する際に、当該鋼管杭の外周壁面の杭長方向に沿う様に配設する垂直連結棒部2と、前記鋼管杭の杭径の内側方向へ突出するとともに垂直連結棒部2の上端部と連結する掛け留め面部3と、前記鋼管杭の杭径の外側方向へ突出するとともに垂直連結棒部2の下端部と連結する補強鉄筋載置面部4と、を備える。補強鉄筋載置面部4には、所定の目安表示44を刻んで設ける。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管杭と補強鉄筋とを接合するための杭頭接合部用部材であって、
鋼管杭と補強鉄筋を接合する際に、当該鋼管杭の外周壁面の杭長方向に沿う様に配設する垂直連結棒部(2)と、
前記鋼管杭の杭径の内側方向へ突出するとともに前記垂直連結棒部の一方側端部と連結する掛け留め面部(3)と、
前記鋼管杭の杭径の外側方向へ突出するとともに前記垂直連結棒部の他方側端部と連結する補強鉄筋載置面部(4)と、
で構成する杭頭接合部用部材。
【請求項2】
前記補強鉄筋載置面部の表面側に、当該補強鉄筋の先端を配筋する位置の目安を示す目安表示(44)を設けた請求項1の杭頭接合部用部材。
【請求項3】
前記目安表示(44)を、刻んで設けた表示とした請求項2の杭頭接合部用部材。
【請求項4】
前記補強鉄筋載置面部の形状を先丸略逆三角形状とし、かつ、前記目安表示を前記補強鉄筋載置面部の根元側の縁端と平行する2本の平行水平線(441)で描いた請求項2又は請求項3に記載の杭頭接合部用部材。
【請求項5】
さらに前記目安表示として、前記補強鉄筋載置面部の根元側から先端側に向かう一方の縁端と平行する2本の第1平行斜線(442)と、前記補強鉄筋載置面部の根元側から先端側に向かう他方の縁端と平行する2本の第2平行斜線(443)と、を付加した請求項4の杭頭接合部用部材。
【請求項6】
前記掛け留め面部(3)の幅長と前記補強鉄筋載置面部(4)の幅長とを同一とした請求項1から請求項3いずれかに記載の杭頭接合部用部材。
【請求項7】
前記掛け留め面部(3)の幅長と前記補強鉄筋載置面部(4)の幅長とを同一とした請求項4の杭頭接合部用部材。
【請求項8】
前記掛け留め面部(3)の幅長と前記補強鉄筋載置面部(4)の幅長とを同一とした請求項5の杭頭接合部用部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、鋼管杭と補強鉄筋とを接合するために使用する杭頭接合部用部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
杭頭部の配筋の施工性を向上させる目的で利用される、杭頭部の上方外周面に互いに間隔をあけて接合される複数の接合部材が存在する(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した接合部材は、補強鉄筋が固定可能な下板部と補強鉄筋を挿通する通路が形成された上板部とを備え、杭頭部の上方における配筋の施工性を向上させることが可能な優れた接合部材である。
【0005】
しかし、前述の接合部材を鋼管杭に固定する際に、固定位置を目視のみによって決定する場合には、複数の接合部材の高さにバラつきが生じ得、固定位置を距離計測(杭頭部から接合部までの距離等)によって決定する場合には、その分の手間が生じ得るものと考える。
【0006】
そこで、接合部材(本願の「杭頭接合部用部材」に相当。)を鋼管杭に固定する際に固定位置のバラつきが生じ難く、固定の手間も抑制できる杭頭接合部用部材を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明は、鋼管杭と補強鉄筋とを接合するための杭頭接合部用部材であって、鋼管杭と補強鉄筋を接合する際に、当該鋼管杭の外周壁面の杭長方向に沿う様に配設する垂直連結棒部と、前記鋼管杭の杭径の内側方向へ突出するとともに前記垂直連結棒部の一方側端部と連結する掛け留め面部と、前記鋼管杭の杭径の外側方向へ突出するとともに前記垂直連結棒部の他方側端部と連結する補強鉄筋載置面部と、で構成する杭頭接合部用部材を提供する。
【0008】
また、本願発明は、前記補強鉄筋載置面部の表面側に、当該補強鉄筋の先端を配筋する位置の目安を示す目安表示を設けた杭頭接合部用部材を提供する。
【0009】
また、本願発明は、前記目安表示を刻んで設けた表示とした杭頭接合部用部材を提供する。
【0010】
また、本願発明は、前記補強鉄筋載置面部の形状を先丸略逆三角形状とし、かつ、前記目安表示を前記補強鉄筋載置面部の根元側の縁端と平行する2本の平行水平線で描いた杭頭接合部用部材を提供する。
【0011】
また、本願発明は、さらに前記目安表示として、前記補強鉄筋載置面部の根元側から先端側に向かう一方の縁端と平行する2本の第1平行斜線と、前記補強鉄筋載置面部の根元側から先端側に向かう他方の縁端と平行する2本の第2平行斜線と、を付加した杭頭接合部用部材を提供する。
【0012】
また、本願発明は、前記掛け留め面部の幅長と前記補強鉄筋載置面部の幅長とを同一とした杭頭接合部用部材を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本願発明の杭頭接合部用部材は、鋼管杭と補強鉄筋とを接合するための杭頭接合部用部材であって、鋼管杭と補強鉄筋を接合する際に、当該鋼管杭の外周壁面の杭長方向に沿う様に配設する垂直連結棒部と、前記鋼管杭の杭径の内側方向へ突出するとともに前記垂直連結棒部の一方側端部と連結する掛け留め面部と、前記鋼管杭の杭径の外側方向へ突出するとともに前記垂直連結棒部の他方側端部と連結する補強鉄筋載置面部と、で構成するため、前記掛け留め面部によって鋼管杭の杭頭部への仮設置(仮固定)が容易であり、また、補強鉄筋を配筋する際の高さ方向(杭長方向)のバラつきをなくすことができる。
【0014】
本願発明の杭頭接合部用部材は、前記補強鉄筋載置面部の表面側に、当該補強鉄筋の先端を配筋する位置の目安を示す目安表示を設けたため、補強鉄筋の配筋箇所のバラつきを減らすことが可能となる。
【0015】
本願発明の杭頭接合部用部材は、前記目安表示を刻んで設けた表示としたため、人との接触や雨・雪が滴るなどの影響により当該目安表示が消えてしまうおそれがない。
【0016】
本願発明の杭頭接合部用部材は、前記補強鉄筋載置面部の形状を先丸略逆三角形状とし、かつ、前記目安表示を前記補強鉄筋載置面部の根元側の縁端と平行する2本の平行水平線で描いたため、補強鉄筋を配筋する際のバラつきを抑制することができる。また、2本の平行水平線を刻んで設けること又は描くことは比較的容易であることから加工コストも抑えられる。
【0017】
本願発明の杭頭接合部用部材は、さらに前記目安表示として、前記補強鉄筋載置面部の根元側から先端側に向かう一方の縁端と平行する2本の第1平行斜線と、前記補強鉄筋載置面部の根元側から先端側に向かう他方の縁端と平行する2本の第2平行斜線と、を付加したため、補強鉄筋を配筋する際の鋼管杭の杭周方向(杭幅方向)のバラつきを抑制することが可能である。また、前記第1平行斜線及び第2平行斜線を刻んで設けること又は描くことは比較的容易であることから加工コストも抑えられる。
【0018】
本願発明の杭頭接合部用部材は、前記掛け留め面部の幅長と前記補強鉄筋載置面部の幅長とを同一としたため、補強鉄筋を配筋した後の溶接作業の目視検査が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図5】
図5は杭頭接合部用部材を鋼管杭の杭頭部に引っ掛けて仮設置(仮固定)した状態を示す使用状態図である。
【
図6】
図6は鋼管杭の外周壁面に複数の杭頭接合部用部材を仮設置(仮固定)した状態を示す使用状態図である。
【
図7】
図7は補強鉄筋載置面部上に補強鉄筋を配筋した状態を左側面からみた使用状態図である。
【
図8】
図8は補強鉄筋載置面部上に補強鉄筋を配筋した状態を右側面からみた使用状態図である。
【
図9】
図9は補強鉄筋載置面部上に補強鉄筋を配筋し溶接を行い固定完了した状態を示す使用状態図である。
【
図10】
図10は鋼管杭の外周壁面に複数の補強鉄筋を配筋した状態を示す使用状態図である。
【
図11】
図11は1枚の鋼板から切断し杭頭接合部用部材片を成形する製造過程を示す図である。
【
図12】
図12は杭頭接合部用部材片の下端部に対して折り曲げ加工を施して補強鉄筋載置面部を成形した状態を示す図である。
【
図13】
図13はさらに杭頭接合部用部材片の上端部に対して折り曲げ加工を施して掛け留め面部を成形した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
鋼管杭の頭部への仮設置(仮固定)が容易でかつ補強鉄筋を配筋する際の固定位置のバラつきをなくすことができる杭頭接合部用部材として実施する。
【実施例0021】
まずは、杭頭接合部用部材の全体構成を
図1から
図4に従い説明する。
【0022】
杭頭接合部用部材(1)は、鋼管杭と補強鉄筋を接合する際に、当該鋼管杭の外周壁面の杭長方向に沿う様に配設する垂直連結棒部(2)と、前記垂直連結棒部上端部から所定方向へ略直角に折り曲げ加工を施すことにより長方形形状の下向き突出面を有する掛け留め面部(3)と、前記垂直連結棒部下端部から所定方向へ略直角に折り曲げ加工を施すことにより先丸略三角形形状の上向き突出面を有する補強鉄筋載置面部(4)と、で構成する(
図1から
図3)。
【0023】
前記垂直連結棒部(2)の連結位置について、前記掛け留め面部(3)部の中央と前記補強鉄筋載置面部(4)の中央とを連結している(
図2)。
【0024】
前記垂直連結棒部(2)の形状について、正面視縦長長方形形状でかつ側面視が前記正面視縦長長方形形状の幅長(W1)よりも薄い(T1)板形状としている(
図2及び
図3)。
【0025】
前記掛け留め面部(3)について、前記垂直連結棒部(2)上端部から所定方向へ略直角に折り曲げ加工を施すことにより下向き突出面を有するとは、鋼管杭と補強鉄筋を接合する際に当該鋼管杭の杭径の内側方向へ突出する突出面を有することを指すものである。なお、前記突出面を杭頭縁に引っ掛けることにより仮設置(仮固定)が可能となる。
【0026】
前記掛け留め面部(3)の幅長(W2)について、前記補強鉄筋載置面部(4)の幅長(W3)と同一長としている(
図2)。
【0027】
前記掛け留め面部(3)の幅長(W2)と前記補強鉄筋載置面部(4)の幅長(W3)とを同一長とすることで、補強鉄筋を配筋し溶接を行った後の状態の目視検査(偏った範囲の溶接となっていないなど)が容易となる(前記掛け留め面部の端部と前記補強鉄筋載置面部の端部とを直線でつないだ仮想線が垂直となるため)。
【0028】
前記掛け留め面部(3)の形状について、鋼管杭の杭頭縁に引っ掛けて仮設置(仮固定)することが可能な面部を備えていればいかなる形状でも許容し得るが、加工の容易性や加工コストを考慮すると、
図4で示す様な長方形形状とすることが好ましい(
図4)。
【0029】
前記補強鉄筋載置面部(4)の先丸略三角形形状について、最も幅の広い根元側(41)から先端側(42)に向かって幅長が徐々に狭くなる逆三角形様の形状で、かつ、前記先端側に丸みをつけた形状のことを指す。(
図1、
図3及び
図4)。
【0030】
前記補強鉄筋載置面部(4)の表面側(43)には、補強鉄筋の先端を配筋する位置の目安を示す目安表示(44)を設けることが好ましい(
図2及び
図4)。
【0031】
前記目安表示(44)を、前記補強鉄筋載置面部(4)の表面側(43)に設ける方法(表示する方法)について、人との接触や雨・雪が滴るなどの影響により容易に消えてしまわないように、刻んで設けることが好ましい(
図4)。
【0032】
前記目安表示(44)の具体的態様について、先丸略三角形形状をした前記補強鉄筋載置面部(4)の根元側の縁端と平行する2本の平行水平線(441)を刻んで設けることが好ましい(
図4)。
【0033】
前記平行水平線(441)を、前記目安表示(44)として付加することで前記平行水平線の両端と補強鉄筋の格子柄との位置関係が容易に目視確認できるようになり、その結果として、補強鉄筋を配筋する際のバラつきをなくすことができる。
【0034】
さらに好ましくは、前記補強鉄筋載置面部(4)の根元側(41)の縁端と前記平行水平線(441)との間に、前記補強鉄筋載置面部の根元側から先端側(42)に向かう一方の縁端(
図4で示す左側の縁端)と平行する様に描いた2本の第1平行斜線(442)と、前記補強鉄筋載置面部の根元側から先端側に向かう他方の縁端(
図4で示す右側の縁端)と平行する様に描いた2本の第2平行斜線(443)と、を刻んで付設したものである(
図4)。
【0035】
前記平行水平線(441)のみではなく、さらに前記第1平行斜線(442)及び前記第2平行斜線(443)を、目安表示(44)として付設することにより、補強鉄筋を配筋する際に杭周方向(杭幅方向)のバラつきも抑制可能とする。
【0036】
次に、鋼管杭の外周壁面に補強鉄筋を配筋する場面を
図5から
図10に従い説明する。
【0037】
鋼管杭(5)の頭部(以下、「杭頭部(51)」と呼ぶ。)に、前記掛け留め面部(3)を引っ掛けることで当該杭頭接合部用部材(1)の仮設置(仮固定)が完了する(
図5)。
【0038】
なお、前述の仮設置が完了した時には、前記垂直連結棒部(2)は前記鋼管杭(5)の外周壁面の杭長方向に沿う様な配設状態となる(
図5)。
【0039】
また、前記掛け留め面部(3)は前記鋼管杭の外周壁面から杭径の内側方向に突出した状態となり、かつ、補強鉄筋載置面部(4)は前記鋼管杭の外周壁面から杭径の外側方向に突出した状態となる(
図5)。
【0040】
同様に、複数の杭頭接合部用部材(1)を、一定の間隔を開けて前記鋼管杭(5)に仮設置(仮固定)していく(
図6)。
【0041】
その後、補強鉄筋(6)を前記垂直連結棒部(2)に押し当てながらその先端を前記補強鉄筋載置面部(4)に配筋する(
図7)。
【0042】
この際に、当該補強鉄筋(6)の格子柄と前記平行水平線(441)との位置関係(例えば、
図7及び
図8で示す様な補強鉄筋の縦筋柄と平行水平線の刻みが同一など。)が前記平行水平線の両端で同じ様になるように目視確認を行うことで、配筋のバラつきをなくすことができる(
図7及び
図8)。
【0043】
その後、前記垂直連結棒部(2)と前記補強鉄筋との円弧状の隙間を溶接(
図9で示す斜線で描いた部分。)し、本設置とする(
図9)。
【0044】
同様に、複数の補強鉄筋(6)の配筋も本設置を完了させていく(
図10)。
【0045】
次に、杭頭接合部用部材の製造方法について、
図11から
図13に従い説明する。
【0046】
1枚の鋼板上に杭頭接合部用部材の展開図形状を描き切断する(
図11)。
【0047】
前記杭頭接合部用部材の展開図形状に切断された杭頭接合部用部材片の一方端側(
図11で示す下端側)に折り曲げ加工を施し、補強鉄筋載置面部(4)を成形する(
図11)。
【0048】
前記折り曲げ加工を施す角度について、補強鉄筋の先端を配筋する(載せ置く)箇所になることを考慮し直角(90度)としているが、製造による誤差程度の角度のズレは許容可能とする。
【0049】
また、その折り曲げ方向について、鋼管杭の杭径の外側方向とすることにより、補強鉄筋の配筋に適した面部を成形することができる。
【0050】
さらに、前記杭頭接合部用部材片の他方端側(
図12で示す上端側)に折り曲げ加工を施し、掛け留め面部(3)を成形する(
図12)。
【0051】
前記折り曲げ加工を施す角度について、杭頭部に引っ掛ける箇所になることを考慮し直角(90度)としているが、製造による誤差程度の角度のズレは許容可能とする。
【0052】
また、その折り曲げ方向について、鋼管杭の杭径の内側方向とすることにより、杭頭部へ引っ掛けて仮設置(仮固定)するのに適した面部を成形することができる(
図12)。
【0053】
なお、前記鋼板上に描く杭頭接合部用部材の展開図形状のサイズ(大きさ)については、大小様々な補強鉄筋に対応するため、多数の展開図形状を許容するものとする。
【0054】
なお、本実施例では、1枚の鋼板上に杭頭接合部用部材の展開図形状を描いて切断し、当該杭頭接合部用部材片に2回の折り曲げ加工を施す製造方法で説明をしたが、垂直連接棒部(2)、掛け留め面部(3)及び補強鉄筋載置面部(4)をそれぞれ製造(切断)し、それらを溶接などの一般的な接合手段により一体化する製造方法であっても製造は可能である。