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特開2024-54691配膳車における蒸気を使った調理済み食品の再加熱方法
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  • 特開-配膳車における蒸気を使った調理済み食品の再加熱方法 図1
  • 特開-配膳車における蒸気を使った調理済み食品の再加熱方法 図2
  • 特開-配膳車における蒸気を使った調理済み食品の再加熱方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054691
(43)【公開日】2024-04-17
(54)【発明の名称】配膳車における蒸気を使った調理済み食品の再加熱方法
(51)【国際特許分類】
   A47J 39/02 20060101AFI20240410BHJP
   A47B 31/00 20060101ALN20240410BHJP
【FI】
A47J39/02
A47B31/00 H
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161096
(22)【出願日】2022-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】504288627
【氏名又は名称】株式会社井上製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121418
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 修
(72)【発明者】
【氏名】井上 茂
【テーマコード(参考)】
4B066
【Fターム(参考)】
4B066AA08
4B066BC09
(57)【要約】
【課題】 配膳車内で蒸気を使った調理済み食品の再加熱を行うにあたり、提供される調理済み食品の食味・食感を損なうことがないようにする。
【解決手段】 食器21・23内に調理済み食品を入れて前記食器に蓋22・24を被せた状態でトレイT上に載置し、該トレイTを配膳車1のトレイ収容室32内に収容した後、該トレイ収容室32内の庫内温度を10℃以下として前記調理済み食品を冷却保存した後、該冷却を停止して蓋22・24が被せられた前記食器21・23に入れた調理済み食品の芯温が75℃以上で1分以上維持されるように、前記トレイ収容室32内の庫内温度を約90℃~140℃の最高温度範囲まで上昇させると共に、前記トレイ収容室32内に100℃以下の蒸気または100℃以上の過熱蒸気を充満させて蒸気飽和状態とする。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配膳車のトレイ収容室内における調理済み食品の蒸気を使った再加熱方法であって、食器内に調理済み食品を入れて前記食器に蓋を被せた状態でトレイ上に載置し、該トレイを配膳車のトレイ収容室内に収容した後、該トレイ収容室内を冷却して前記調理済み食品を冷却保存した後、該冷却を停止して蓋が被せられた前記食器に入れた調理済み食品の芯温が75℃以上で1分以上維持されるように、前記トレイ収容室内の庫内温度を所定の最高温度範囲まで上昇させると共に、前記トレイ収容室内に100℃以上の過熱蒸気を充満させて蒸気飽和状態とすることにより、前記食器内の調理済み食品が、前記被せられた蓋によって、含水分が放出されることなく、前記加熱が継続して行われるようにすることを特徴とする、配膳車のトレイ収容室内における調理済み食品の蒸気を使った再加熱方法。
【請求項2】
配膳車のトレイ収容室内における調理済み食品の蒸気を使った再加熱方法であって、食器内に調理済み食品を入れて前記食器に蓋を被せた状態でトレイ上に載置し、該トレイを配膳車のトレイ収容室内に収容した後、該トレイ収容室内を冷却して前記調理済み食品を冷却保存した後、該冷却を停止して蓋が被せられた前記食器に入れた調理済み食品の芯温が75℃以上で1分以上維持されるように、前記トレイ収容室内の庫内温度を所定の最高温度範囲まで加熱上昇させると共に、前記トレイ収容室内に100℃以下の蒸気を充満させて蒸気飽和状態とすることにより、前記食器内の調理済み食品が、前記被せられた蓋によって、含水分が放出されることなく、前記加熱が継続して行われるようにすることを特徴とする、配膳車のトレイ収容室内における調理済み食品の蒸気を使った再加熱方法。
【請求項3】
蒸気飽和状態の後、100℃以下の蒸気の供給を停止して所定時間、加熱だけを行って前記蒸気飽和状態を解消することを特徴とする、請求項2記載の配膳車のトレイ収容室内における調理済み食品の蒸気を使った再加熱方法。
【請求項4】
蒸気飽和状態を解消する加熱温度帯が60℃~100℃の範囲内であって、加熱運転時間が5分~15分の範囲内である、請求項3記載の配膳車のトレイ収容室内における調理済み食品の蒸気を使った再加熱方法。
【請求項5】
トレイ収容室内の冷却保存温度が10℃以下である、請求項1~請求項4のうちのいずれか一項記載の配膳車のトレイ収容室内における調理済み食品の蒸気を使った再加熱方法。
【請求項6】
トレイ収容室内の庫内温度の最高温度範囲が90℃~140℃の範囲内である、請求項1~請求項5のうちのいずれか一項記載の配膳車のトレイ収容室内における調理済み食品の蒸気を使った再加熱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病院や介護施設等において、朝食、昼食および夕食の三食を提供する際に使用される配膳車における蒸気を使った調理済み食品の再加熱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
病院や介護施設等において、給食を実施する場合、通常、調理済食品の冷却保存と再加熱を行った後、所定の場所まで配膳を行う配膳車が使用される。
【0003】
そして、前記配膳車の中には、前記調理済食品の再加熱を蒸気で行うものが知られている。
【0004】
例えば、配膳車本体内が、仕切り壁を挟んでその一側が加熱空間、同他側が非加熱空間(冷却専用)となされた配膳車において、前記加熱空間に対して、加熱媒体生成装置から加熱媒体として過熱蒸気等が供給されるようになされた構造のものが知られている。
【0005】
そして、前記配膳車において、前記仕切り壁は、配膳車の前後方向に伸び、上下方向に列設された多数の仕切り壁部材で構成され、各仕切り壁部材間には、種々の調理済食品が入った各種食器が載置されるトレイが差し込まれるようになされ、かかる構造によって、配膳車本体内に前記トレイが多段に支持されるようになされていた。
【0006】
前記トレイ上において、前記加熱空間側には、通常、御飯が入った飯茶碗や肉や魚等の主菜が入った皿やみそ汁等の汁物が入ったお椀等が載置され、前記非加熱空間側には、通常、サラダ等の冷菜やデザートが盛られた複数の皿が載置されていた。
【0007】
そして、病院や介護施設等において、前述した配膳車を用いて、例えば朝食を提供する場合、その提供日の前日に先ず炊飯器や種々の調理器具を使って御飯や主菜、副菜等の料理をつくった後、これら料理を冷却装置で急速冷却してチルド保存し、そして、該チルド状態の前記各食品を前記飯茶碗や前記皿等の所定の食器に盛り付けて、各一人前の該食器を各トレイに載置してトレイメイクを行い、該各トレイを配膳車内に多段に収容した後、配膳車内で所定時間、所定温度域で前記各食品を冷却保存した後、翌朝の配膳時間に合わせて、前記配膳車の加熱空間内に、所定の加熱温度下で蒸気を供給して前記冷却保存していた御飯や主菜および汁物等を再加熱した上で、病院の入院患者や介護施設の入所者に配膳を行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2019-10326号公報
【特許文献2】特開2013-027517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年、病院や介護施設等においては、管理栄養士等の専門担当者が入院患者や入所者の一人一人に合ったメニューを企画して給食を行っているが、前述した配膳車内でのトレイ上の食器の形状や該食器における蓋の有無等、並びに再加熱を行う際の蒸気出力や庫内温度設定によって、前述した調理済み食品の最終的な仕上がり具合に大きな差が生じるにもかかわらず、前述した再加熱条件については、十分なマニュアルがなかった。そのため、前記専門担当者が企画したメニュー通りの食味・食感が得られない場合が生じ、そのため、「病院食は不味い」といった観念を入院患者に与える場合もあった。
【0010】
より詳細には、蒸気を所定の温度域および所定の時間帯で使用して各食器内の食品を再加熱するにあたり、前記トレイに載置される食器に、蓋を付けるか否か、また前述した配膳車内での再加熱時に食器に前記蓋をしたまま加熱するか否かは、給食・配膳を行う現場担当者の裁量に委ねられているのが実情であり、徹底した再加熱制御指針が存在しなかった。その結果、管理栄養士等の専門担当者が企図したメニュー通りの食味・食感が得られないことも屡々であった。
【0011】
本発明の目的は、提供される調理済食品の食味・食感を損なうことがない配膳車内での蒸気を使った調理済み食品の再加熱方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1記載の本発明は、配膳車のトレイ収容室内における調理済み食品の蒸気を使った再加熱方法であって、食器内に調理済み食品を入れて前記食器に蓋を被せた状態でトレイ上に載置し、該トレイを配膳車のトレイ収容室内に収容した後、該トレイ収容室内を冷却して前記調理済み食品を冷却保存した後、該冷却を停止して蓋が被せられた前記食器に入れた調理済み食品の芯温が75℃以上で1分以上維持されるように、前記トレイ収容室内の庫内温度を所定の最高温度範囲まで上昇させると共に、前記トレイ収容室内に100℃以上の過熱蒸気を充満させて蒸気飽和状態とすることにより、前記食器内の調理済み食品が、前記被せられた蓋によって、含水分が放出されることなく、前記加熱が継続して行われるようにすることを特徴とする配膳車のトレイ収容室内における調理済み食品の蒸気を使った再加熱方法である。なお、前記本発明において、前記最高温度範囲までの温度上昇は、通常、前記100℃以上の過熱蒸気の供給によって同時並行的に行われる。
【0013】
請求項2記載の本発明は、配膳車のトレイ収容室内における調理済み食品の蒸気を使った再加熱方法であって、食器内に調理済み食品を入れて前記食器に蓋を被せた状態でトレイ上に載置し、該トレイを配膳車のトレイ収容室内に収容した後、該トレイ収容室内を冷却して前記調理済み食品を冷却保存した後、該冷却を停止して蓋が被せられた前記食器に入れた調理済み食品の芯温が75℃以上で1分以上維持されるように、前記トレイ収容室内の庫内温度を所定の最高温度範囲まで加熱上昇させると共に、前記トレイ収容室内に100℃以下の蒸気を充満させて蒸気飽和状態とすることにより、前記食器内の調理済み食品が、前記被せられた蓋によって、含水分が放出されることなく、前記加熱が継続して行われるようにすることを特徴とする配膳車のトレイ収容室内における調理済み食品の蒸気を使った再加熱方法である。なお、前記本発明において、前記最高温度範囲までの温度上昇は、通常、ヒータによって行われる。
【0014】
請求項3記載の本発明は、請求項1記載の調理済み食品の蒸気を使った再加熱方法について、蒸気飽和状態の後、100℃以下の蒸気の供給を停止して所定時間、加熱だけを行って前記蒸気飽和状態を解消する、ことを特徴とする。
【0015】
請求項4記載の本発明は、前記請求項3記載の配膳車のトレイ収容室内における調理済み食品の蒸気を使った再加熱方法について、蒸気飽和状態を解消する加熱温度帯が60℃~100℃の範囲内であって、加熱運転時間が5分~15分の範囲内であることを特徴とする。前記加熱温度帯および加熱運転時間としたのは、鋭意実験の結果、再加熱した調理済み食品の過度の湿気ベタつきを解消しつつ、調理済み食品の乾燥をも防止する上で、有効なものとなり得るからである。
【0016】
請求項5記載の本発明は、前記請求項1~請求項4のうちのいずれか一項記載の配膳車のトレイ収容室内における調理済み食品の蒸気を使った再加熱方法について、トレイ収容室内の冷却保存温度が10℃以下であることを特徴とする。更に、より好ましい冷却保存温度は、1℃~3℃の範囲内である。
【0017】
請求項6記載の本発明は、前記請求項1~請求項5のうちのいずれか一項記載の配膳車のトレイ収容室内における調理済み食品の蒸気を使った再加熱方法について、トレイ収容室内の庫内温度の最高温度範囲が90℃~140℃の範囲内であることを特徴とする。
【0018】
前述した請求項1または請求項2記載の本発明方法について、前記請求項5の通り、先ず調理済み食品を10℃以下で冷却保存するのは食中毒の原因菌の繁殖を防止するのに有効な低温状態を確保するためであり、また再加熱時に調理済み食品の芯温が75℃以上で1分以上維持されるようにするのは、調理済み食品に食中毒の原因菌が付着している場合でもこれを有効に死滅させ得る加熱処理となされているからである。また、前記冷却保存温度は、10℃以下であって、より好ましいのは、1℃~3℃の範囲内であり、これは食中毒の原因菌の活性を阻止する上で最も有効な低温状態であり、且つ調理済み食品が凍るのを防止し得る温度範囲だからである。
【0019】
更に、前記請求項6記載の本発明の通り、配膳車のトレイ収容室の庫内温度を90℃~140℃の最高温度範囲まで上昇させるのは、90℃未満では庫内の十分な温度上昇効率が得られず、調理済み食品の再加熱が不十分となり、また140℃以上では、食器内の調理済み食品が過加熱され、該食品にメイラード反応が発生して調理済み食品に褐変現象が起こるおそれがあるため、庫内温度は90℃~140℃の範囲とするのが好適となる。また、より好ましい最高温度範囲は、100℃~130℃の範囲内である。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、配膳車のトレイ収容室内における調理済み食品の蒸気を使った再加熱方法であって、食器内に調理済み食品を入れて前記食器に蓋を被せた状態でトレイ上に載置し、該トレイを配膳車のトレイ収容室内に収容した後、該トレイ収容室内を冷却して前記調理済み食品を冷却保存した後、該冷却を停止して蓋が被せられた前記食器に入れた調理済み食品の芯温が75℃以上で1分以上維持されるように、前記トレイ収容室内の庫内温度を所定の最高温度範囲まで上昇させると共に、前記トレイ収容室内に100℃以下の蒸気または100℃以上の過熱蒸気を充満させて蒸気飽和状態とすることにより、前記食器内の調理済み食品が、前記被せられた蓋によって、含水分が放出されることなく、前記加熱が継続して行われるようにすることを特徴とするものである。
【0021】
そして、前述した本発明に係る配膳車のトレイ収容室内における調理済み食品の蒸気を使った再加熱方法によれば、配膳車のトレイ収容室内に収容されたトレイ上の食器内に入れられた調理済み食品の食味や食感が再加熱処理によって損なわれることがないため、管理栄養士等の給食の専門担当者が企図したメニューの良さを損なうことなく、給食が提供され得るという格別の実用的利点が得られる。
【0022】
更に、前記トレイ収容室内の蒸気飽和状態の後、100℃以下の蒸気の供給を停止して所定時間、加熱だけを行って前記蒸気飽和状態を解消するようにした本発明に係る調理済み食品の再加熱方法によれば、再加熱後の調理済み食品に水分過多や結露が生ずることを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態で使用する配膳車の正面図である。
図2図1の配膳車における内部構造の一例を示す側面図である。
図3】配膳車のトレイ収容室内におけるトレイ上の食器内食品の再加熱状態を示す要部拡大正面図である。
図4図3の再加熱後の食器内食品の状態を示す要部拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明の実施形態を図面にしたがって説明するが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではない。
【0025】
図1および図2に示すように、本実施形態で使用する配膳車1は、例えば配膳車本体2と配膳カート3とを備え、該配膳カート3が配膳車本体2内に収容されており、配膳車本体2は前側に左右一対の本体扉13を有し、配膳車本体2の外底面には脚体15を備え、配膳車本体2の上部にはコンプレッサーC等を有する冷却装置40が配置され、冷却送入ダクト51および送入中継ダクト53および循環ダクト24を介して前記冷却装置40から冷気が配膳カート3のトレイ収容室32内に流入するようになされている。また、図中52は冷気を吸入する冷気吸入ダクト、54は冷気の吸入中継ダクトを示す。
【0026】
また、前記配膳車本体2の下部には、蒸気を発生ずる蒸気発生装置6が設置され、該蒸気発生装置6で発生した蒸気が循環ダクト24を介して上昇して前記配膳カート3内に多段に収容されたトレイTに流入するようになされ、そして、前記循環ダクト24の下部にはヒータ19が設置されて、前記蒸気発生装置6で発生した蒸気がヒータ19で所定温度に加熱されるようになされている。更に、前記ヒータ19は、蒸気発生装置6が停止した状態では温風を配膳カート3のトレイ収容室32に供給する。なお、図中36は蒸気を送入する蒸気送入部、6aは蒸気発生部を示す。
【0027】
なお、前述した循環ダクト24内には、図示しない一または複数のファンが適宜取り付けられる。
【0028】
更に、前記配膳カート3のトレイ収容室32の中央部分には、仕切り壁部材11aが上下方向に列設されて仕切り壁11が立設され、該仕切り壁11の一側が非加熱空間として食品の冷却のみが行われる冷域CZとなされ、前記仕切り壁11の他側が加熱空間として、熱風、蒸気および過熱蒸気による調理済み食品の再加熱が行われると共に、これら再加熱前の調理済み食品の保存時においては、前記非加熱空間の冷域CZと同様に調理済み食品の冷却も行われる温冷域HCZとなされている。
【0029】
以上述べた構造の配膳車1によれば、配膳車本体2内に収容される配膳カート3の仕切り壁11の一側の冷域CZには、冷却装置40から冷気のみが供給され、仕切り壁11の他側の温冷域HCZには、冷却装置40からの冷気の他、前記蒸気発生装置6およびヒータ19からの熱風、蒸気および過熱蒸気が供給され得る。
【0030】
また、以上述べた配膳車1は、本発明の調理済み食品の再加熱方法を行うための一例であって、本発明方法は、前述した構造の配膳車1の使用に限定されるものではない。
【0031】
次に、前述した構造の配膳車を用いた調理済み食品の再加熱方法について、以下に説明する。
【0032】
先ず、トレイT上には、予め調理され、チルド状態となっている御飯や主菜等の食品が入った各食器が載置され、このようなトレイTが前述した配膳カート3のトレイ収容室32内に多段に収容されているものとする。
【0033】
そして、図3に示すように、例えば前記トレイT上に、御飯HRが入った飯茶碗21と、主菜であるハンバーグHBが入った皿23を載置し、そして、前記飯茶碗21に必ず蓋22を被せ、前記皿23に必ず蓋24を被せた状態として、後述するような条件で蒸気を使った再加熱を行う。その結果、図4に示すように、蓋22および蓋24をとった飯茶碗21内の御飯HRや皿23内のハンバーグHBについて、適度の保湿性を備えた食味・食感が得られる。
(実施形態1)
【0034】
配膳カート3内の庫内温度を1~3℃の範囲内として、蓋22が被せられた飯茶碗21に入っている御飯HRや蓋24が被せられた皿23に入っているハンバーグHBを冷却保存した後、該冷却を停止して蓋22が被せられた飯茶碗21に入っている御飯HRや蓋24が被せられた皿23に入っているハンバーグHBの各芯温が75℃以上で1分以上維持されるように、配膳カート3のトレイ収容室32内の庫内温度を90℃~140℃の最高温度範囲まで上昇させると共に、トレイ収容室32内に100℃以下の蒸気STを充満させて蒸気飽和状態とすることにより、飯茶碗21内の御飯HRおよび皿23内のハンバーグHBが、被せられた蓋22・24によって、含水分が放出されることなく、前記加熱が継続して行われるようにする。
【0035】
また、本実施形態では、前記蒸気飽和状態の後、100℃以下の蒸気の供給を停止して所定時間、ヒータ19による加熱だけを行って前記蒸気飽和状態を解消するようにする。より詳細には、前記蒸気飽和状態を解消する加熱温度帯が60℃~100℃の範囲内であって、加熱運転時間が5分~15分の範囲内とする。
(実施形態2)
【0036】
配膳カート3内の庫内温度を5℃未満として、蓋22が被せられた飯茶碗21に入っている御飯HRや蓋24が被せられた皿23に入っているハンバーグHBを冷却保存した後、該冷却を停止して蓋22が被せられた飯茶碗21に入っている御飯HRや蓋24が被せられた皿23に入っているハンバーグHBの各芯温が75℃以上で1分以上維持されるように、配膳カート3のトレイ収容室32内の庫内温度を90℃~140℃の最高温度範囲まで上昇させると共に、トレイ収容室32内に100℃以上の過熱蒸気を充満させて蒸気飽和状態とすることにより、飯茶碗21内の御飯HRおよび皿24内のハンバーグHBが、被せられた蓋22・24によって、含水分が放出されることなく、前記加熱が継続して行われるようにする。
【0037】
なお、前述した実施形態1および実施形態2のように、飯茶碗21に蓋22をせず、また皿23に蓋24をしなかった場合、飯茶碗21に盛られた御飯HRがこわばった状態となり、皿23に入れられたハンバーグHBが硬くなってしまった。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明に係る配膳車における蒸気を使った調理済み食品の再加熱方法によれば、再加熱される調理済み食品に良好な食味・食感が得られるため、病院や介護施設における給食提供の分野で幅広い利用が期待できる。
【符号の説明】
【0039】
1 配膳車
2 配膳車本体
3 配膳カート
4 冷却ダクト
6 蒸気発生装置
11 仕切り壁
11a 仕切り壁部材
19 ヒータ
21 飯茶碗
22 飯茶碗の蓋
23 皿
24 皿の蓋
40 冷却装置
図1
図2
図3
図4