(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054692
(43)【公開日】2024-04-17
(54)【発明の名称】スタッドおよび耐熱板付き金属材、ならびにその製造方法
(51)【国際特許分類】
G09F 7/18 20060101AFI20240410BHJP
B23K 11/00 20060101ALI20240410BHJP
B23K 9/20 20060101ALI20240410BHJP
G09F 3/12 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
G09F7/18 A
B23K11/00 530
B23K9/20 B
G09F3/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161097
(22)【出願日】2022-10-05
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
(71)【出願人】
【識別番号】000003713
【氏名又は名称】大同特殊鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100160864
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 政治
(72)【発明者】
【氏名】今井 宏典
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 昭彦
(57)【要約】
【課題】耐熱板をほぼ損傷することなく、これに貫通させたスタッドを金属材の表面に溶接する製造方法によって得ることができるスタッドおよび耐熱板付き金属材の提供。
【解決手段】金属材と、表面に情報が付され、厚さ方向に貫通する貫通孔を有する耐熱板と、軸部、前記軸部と繋がり前記軸部の軸線方向とは異なる方向へ伸びるフランジ部、および前記軸部の表面の少なくとも一部を覆っている層状の絶縁部を備えるスタッドと、を有し、前記耐熱板が有する前記貫通孔を前記スタッドにおける前記軸部および前記絶縁部が貫通している状態で前記軸部の先端が前記金属材の表面に溶接されていることで、前記耐熱板が前記金属板の表面に固定されている、スタッドおよび耐熱板付き金属材。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材と、
表面に情報が付され、厚さ方向に貫通する貫通孔を有する耐熱板と、
軸部、前記軸部と繋がり前記軸部の軸線方向とは異なる方向へ伸びるフランジ部、および前記軸部の表面の少なくとも一部を覆っている層状の絶縁部を備えるスタッドと、
を有し、
前記耐熱板が有する前記貫通孔を前記スタッドにおける前記軸部および前記絶縁部が貫通している状態で前記軸部の先端が前記金属材の表面に溶接されていることで、前記耐熱板が前記金属板の表面に固定されている、スタッドおよび耐熱板付き金属材。
【請求項2】
前記フランジ部における前記金属材に対向する面にも前記絶縁部を有する、請求項1に記載のスタッドおよび耐熱板付き金属材。
【請求項3】
金属材と、
表面に情報が付され、厚さ方向に貫通する貫通孔を有する耐熱板と、
軸部、前記軸部と繋がり前記軸部の軸線方向とは異なる方向へ伸びるフランジ部、および前記軸部の表面の少なくとも一部を覆っている層状の絶縁部を備えるスタッドと、
を準備する準備工程と、
前記耐熱板が有する前記貫通孔に前記スタッドにおける前記軸部および前記絶縁部を貫通させ、溶接ガンを用いて前記軸部の先端を前記金属材の表面に溶接して、請求項1または2に記載のスタッドおよび耐熱板付き金属材を得る溶接工程と、
を備える、スタッドおよび耐熱板付き金属材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスタッドおよび耐熱板付き金属材、ならびにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属材(例えば、表面状態の悪い金属、表面の温度が常温~高温となる金属、後工程において熱処理(-150~1700度)される金属など)の表面にペンキ等によりロット番号を書きつける作業を行う場合があった。この場合、作業者の安全面や作業効率面での問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記問題はタグやラベルとして機能する耐熱板を金属材の表面に取り付けることで解決し得ると、本発明者は考える。具体的には耐熱板に形成された貫通孔にスタッドを貫通させ、そのスタッドを金属材の表面に溶接する方法が考えられる。
【0004】
ここでスタッドを金属材の表面に溶接するとき、耐熱板が損傷してしまう場合があることを、本発明者は見出した。
【0005】
本発明は、耐熱板をほぼ損傷することなく、これに貫通させたスタッドを金属材の表面に溶接する製造方法、およびこれによって得ることができるスタッドおよび耐熱板付き金属材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の(1)~(3)である。
(1)金属材と、
表面に情報が付され、厚さ方向に貫通する貫通孔を有する耐熱板と、
軸部、前記軸部と繋がり前記軸部の軸線方向とは異なる方向へ伸びるフランジ部、および前記軸部の表面の少なくとも一部を覆っている層状の絶縁部を備えるスタッドと、
を有し、
前記耐熱板が有する前記貫通孔を前記スタッドにおける前記軸部および前記絶縁部が貫通している状態で前記軸部の先端が前記金属材の表面に溶接されていることで、前記耐熱板が前記金属板の表面に固定されている、スタッドおよび耐熱板付き金属材。
(2)前記フランジ部における前記金属材に対向する面にも前記絶縁部を有する、上記(1)に記載のスタッドおよび耐熱板付き金属材。
(3)金属材と、
表面に情報が付され、厚さ方向に貫通する貫通孔を有する耐熱板と、
軸部、前記軸部と繋がり前記軸部の軸線方向とは異なる方向へ伸びるフランジ部、および前記軸部の表面の少なくとも一部を覆っている層状の絶縁部を備えるスタッドと、
を準備する準備工程と、
前記耐熱板が有する前記貫通孔に前記スタッドにおける前記軸部および前記絶縁部を貫通させ、溶接ガンを用いて前記軸部の先端を前記金属材の表面に溶接して、上記(1)または(2)に記載のスタッドおよび耐熱板付き金属材を得る溶接工程と、
を備える、スタッドおよび耐熱板付き金属材の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、耐熱板をほぼ損傷することなく、これに貫通させたスタッドを金属材の表面に溶接する製造方法、およびこれによって得ることができるスタッドおよび耐熱板付き金属材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】
図2は本発明におけるスタッドの好適態様である態様1を示すものである。
図2(a)は概略斜視図であり、
図2(b)はその軸線ω
1を含む面における概略断面図を示している。
【
図3】
図3は本発明におけるスタッドの好適態様である態様2を示すものである。
図3(a)は概略斜視図であり、
図3(b)はその軸線ω
2を含む面における概略断面図を示している。
【
図4】
図4は本発明のスタッドおよび耐熱板付き金属材を例示する概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明について説明する。
本発明は、金属材と、表面に情報が付され、厚さ方向に貫通する貫通孔を有する耐熱板と、軸部、前記軸部と繋がり前記軸部の軸線方向とは異なる方向へ伸びるフランジ部、および前記軸部の表面の少なくとも一部を覆っている層状の絶縁部を備えるスタッドと、を有し、前記耐熱板が有する前記貫通孔を前記スタッドにおける前記軸部および前記絶縁部が貫通している状態で前記軸部の先端が前記金属材の表面に溶接されていることで、前記耐熱板が前記金属板の表面に固定されている、スタッドおよび耐熱板付き金属材である。
このようなスタッドおよび耐熱板付き金属材を、以下では、本発明のスタッドおよび耐熱板付き金属材ともいう。
【0010】
また、本発明は、金属材と、表面に情報が付され、厚さ方向に貫通する貫通孔を有する耐熱板と、軸部、前記軸部と繋がり前記軸部の軸線方向とは異なる方向へ伸びるフランジ部、および前記軸部の表面の少なくとも一部を覆っている層状の絶縁部を備えるスタッドと、を準備する準備工程と、前記耐熱板が有する前記貫通孔に前記スタッドにおける前記軸部および前記絶縁部を貫通させ、溶接ガンを用いて前記軸部の先端を前記金属材の表面に溶接して、本発明のスタッドおよび耐熱板付き金属材を得る溶接工程と、を備える、スタッドおよび耐熱板付き金属材の製造方法である。
このようなスタッドおよび耐熱板付き金属材の製造方法を、以下では、本発明の製造方法ともいう。
【0011】
以下において、単に「本発明」と記す場合、「本発明のスタッドおよび耐熱板付き金属材」および「本発明の製造方法」の両方を指すものとする。
【0012】
初めに本発明における金属材、耐熱板、スタッドについて説明する。
その後、スタッドおよび耐熱板付き金属材、ならびにその製造方法について説明する。
【0013】
<金属材>
本発明において金属材は少なくとも一部が金属からなるものであれば特に限定されない。一部が金属であって、他が金属ではない場合、金属の部分にスタッドを溶接することになる。金属材はすべてが金属からなるもの(金属塊)であることが好ましい。
【0014】
金属の種類は限定されない。金属材は鉄を主成分とする塊であることが好ましく、鋼板、鋼管、H型鋼、鋼矢板、棒鋼などの鋼材であることがより好ましく、高温(例えば1000~1200℃程度)の鋼材であってもよい。
金属材の大きさや形状等も特に限定されない。
【0015】
例えば、鉄鋼生産工程において生じる鍛造品や鋳造品、具体的にはスラブ、ブルーム、ビレット、線材、これらの集合体などの鋼材(中間素材を含む)は、通常、放射温度計で測定される表面温度が1000~1200℃程度であるが、本発明における金属材はこのような高温の鋼材であってよい。
このような高温の鋼材の表面に何らかの情報をペンキ等を用いて記すと作業者への負担が大きく、また、間違った情報を記してしまうリスクも生じる。また、高温の鋼材の表面は凹凸を有することが多く、その場合、その表面に前記情報をペンキ等を用いて記すことは難しい。
そこで、予め後述するような情報を付した耐熱板を付けることが好ましい。スタッド溶接であれば表面に凹凸を有していてもスタッドを短時間で強固に付けることができるので、その表面が高温であっても作業者の負担は軽減する。
【0016】
<耐熱板>
金属材にはその金属材に関する情報を付したい場合がある。そこで耐熱板にその情報を付し、耐熱板を金属材に付けたい場合がある。金属材が鉄鋼生産工程において生じる高温の鋼材であっても、耐熱性を有する耐熱板は損傷し難い。
【0017】
その情報の内容は特に限定されず、例えば
図1に示す耐熱板1のように、製品番号、次工程に関する情報や納入先に関する情報等であってよい。
【0018】
その情報は文字であってもよいが、バーコードやQRコード等の何らかのコードとして付される場合もある。本発明では、そのような情報を表面に付した耐熱板をスタッドを介して金属材の表面に固定する。
【0019】
耐熱板の表面に情報を付す方法は特に限定されず、例えば情報を耐熱板の表面に印字してもよく、刻印してもよい。
耐熱板に情報が印字される場合、印字するためのインクは耐熱性を有することが好ましい。金属材が高温である場合、高温において劣化し難いインクを用いて耐熱板の表面に情報が付されていることが好ましい。例えば高温に耐えることができるインクリボンを用いて熱転写プリンタによって耐熱板の表面に情報を印字することができる。耐熱板として、例えばYSテック社製、HP-L90を用いることができる。熱転写プリンタとして、サトーホールディングス株式会社製、M48PRO等の従来公知のものを用いることができる。
【0020】
本発明において耐熱板は、厚さ方向に貫通する貫通孔を有する。
貫通孔は、後述するスタッドの軸部および絶縁部が貫通するものであればよく、それ以外の態様は特に限定されない。通常、スタッドの軸部の断面は円形であるため、貫通孔もスタッドの断面(円形)の直径よりも大きい直径を備える円形の貫通孔とすることが好ましい。ただし、スタッドの軸部および絶縁部が貫通すればよく、三角形や四角形など円以外の形状(多角形等)の貫通孔であってもよい。
【0021】
例えば
図1に示す態様の耐熱板1は、円形の1つの貫通孔3を有している。ここで貫通孔3が円形の場合、その直径をhとする。
耐熱板が1つの貫通孔を有する場合、その貫通孔に1つのスタッドにおける軸部および絶縁部を貫通させて軸部の先端を金属材の表面に溶接することで、耐熱板を金属材の表面に固定することができる。後述するように、耐熱板の貫通孔の直径(円でない場合はその最大径)よりも、フランジ部の外径(円でない場合はその最大径)が大きいことが好ましい。このようなフランジ部を有するスタッドを用いると、より強固に耐熱板を金属材の表面に固定することができる。
【0022】
本発明において耐熱板は、高温において劣化し難い材料からなることが好ましい。例えばステンレス等の金属からなるものであってよい。
【0023】
耐熱板の厚さは特に限定されない。耐熱板の厚さが厚すぎると貫通孔を形成し難くなる。
【0024】
耐熱板の大きさや形は特に限定されず、例えば
図1に示す耐熱板1のように矩形であってよい。例えば一辺が数十mmの矩形の耐熱板であってよい。
【0025】
<スタッド>
本発明のスタッドについて説明する。
本発明のスタッドは軸部、フランジ部および絶縁部を備える。
【0026】
以下では本発明におけるスタッドについて2つの好適態様を挙げ、各々について
図2および
図3を用いて説明する。
図2および
図3の各々に示す例を、態様1および態様2とする。
【0027】
<態様1>
図2は本発明におけるスタッドの好適態様である態様1を示すものである。
図2(a)は概略斜視図であり、
図2(b)はその軸線ω
1を含む面における概略断面図を示している。
【0028】
態様1におけるスタッド11は、軸部111、フランジ部112および絶縁部113を有する。
【0029】
態様1における軸部111は円柱状のものである。
ただし、本発明のスタッドにおける軸部は柱状であればよく、その軸線ω
1に垂直な方向における断面は特に限定されない。
図2に示すようにその断面は円形であってもよいが、三角形やその他多角形であってもよい。
また、軸部の表面にねじ山が形成されていてもよい。
【0030】
図2に示す態様のスタッド11を耐熱板の貫通孔に貫通させた状態で溶接ガンにセットし、
図2に示す軸部111の先端111
Xを金属材の表面に付けて溶接する。
【0031】
軸部111の大きさ等は特に限定されず、例えば、従来公知のスタッド溶接で用いられるスタッドと同様であってよい。軸部111の長手方向(軸線ω1に平行な方向)の長さは、例えば、5~30mm程度であってよい。また、軸部111の断面直径は、例えば3~15mm程度であってよい。
【0032】
軸部111の材質は特に限定されず、例えば、従来公知のスタッド溶接で用いられるスタッドの材質と同様であってよい。軸部111の材質は、例えば鋼、ステンレス、チタン、鉄などであってよい。また、銅などでメッキしたものであってもよい。
【0033】
フランジ部112は軸部111と繋がっている。また、フランジ部112は軸部111の軸線ω1に平行な方向とは異なる方向に伸びている。
具体的には、先端111Xと反対側の先端に存在する円盤状の部分が、態様1におけるフランジ部112である。態様1の場合、フランジ部112は軸線ω1に対して垂直な方向へ伸びている。
また、態様1の場合、軸部111の軸線ω1が円盤状のフランジ部112の中心を通過するように、軸部111がフランジ部112に付いている。
【0034】
なお、
図2に示す態様1では、軸部111における先端111
Xと反対側の先端に円盤状のフランジ部112が付いているが、軸部111がフランジ部112を貫通し、フランジ部112における金属材に対向する面112sとは反対の面の側にも軸部111が突出していてもよい。
【0035】
フランジ部112は軸部111と境界がないことが好ましい。つまり、フランジ部112と軸部111とは連続して一体であることが好ましい。
軸部111とフランジ部112とは一体に鋳込まれてなったものであってよく、各々を形成した後、溶接等によって付けられたものであってもよい。いずれの場合であっても、フランジ部112は軸部111と境界がないことが好ましい。
【0036】
また、ここでフランジ部112における軸線ω1に対して垂直な方向の長さをR1とする。フランジ部112が円形ではない場合、この長さの最大値をR1とする。
この長さR1を耐熱板の貫通孔の直径(h)よりも大きくすると、より強固に耐熱板を金属材の表面に固定することができる。
【0037】
フランジ部112の大きさ等は特に限定されない。フランジ部112における軸線ω1に対して垂直な方向の長さR1は、例えば、5~25mm程度であってよい。
【0038】
図2ではフランジ部112が円盤状のものを例示しているが、フランジ部112の形状は特に限定されない。例えば三角形、四角形、六角形、八角形等の多角形であってよい。
【0039】
フランジ部112の材質は、軸部111の材質と同様であってよい。
【0040】
絶縁部113は層状であって、軸部111の表面の少なくとも一部を覆っている。
図2に示すように、絶縁部113はフランジ部112と軸部111との境界付近を含む部分を覆っていることが好ましい。
【0041】
軸部111の表面における絶縁部113aの長さは特に限定されない。絶縁部113aは軸部111の長手方向における5~95%の部分を覆っていることが好ましく、60~90%の部分を覆っていることがより好ましい。
【0042】
また、
図2ではフランジ部112における金属材に対向する面112sにも絶縁部113bを有する。本発明において、フランジ部112における金属材に対向する面112sに絶縁部113bを有することは必須ではないが、
図2に示す態様1のように、この面112sにも絶縁部を有することが好ましい。
さらに、
図2に示すように、フランジ部112における金属材に対向する面112sに存在する絶縁部113bと、軸部111の表面に存在する絶縁部113aとが繋がっていることがさらに好ましい。
【0043】
絶縁部113(113a、113b)の材質は絶縁部113に絶縁性を具備させるものであれば特に限定されない。絶縁部113の材質は、例えばシリコン、ナイロン、ゴムなどであってよい。高温材に取り付ける場合は耐熱性を有した材質が望ましい。
【0044】
絶縁部113(113a、113b)は層状であるが、その層の厚さは特に限定されず、例えば0.05~3mmであることが好ましい。
【0045】
前述のように軸部111の断面直径および絶縁部113の厚さは特に限定されないが、軸線ω1に垂直な方向の断面において絶縁部113の外径(H1)は耐熱板の円形の貫通孔の直径(h)よりも小さいことが必要となる。
【0046】
軸部111および絶縁部113を耐熱板の貫通孔に貫通させた後、溶接ガンにセットし、軸部111の先端111Xを金属材の表面に溶接する。このとき耐熱板の貫通孔における内面(端面)が絶縁部113の表面に接するようにする。
この場合、溶接ガンから発生した電気が1つのスタッドにおける軸部111およびフランジ部112のみに流れ、軸部111の先端111Xに到達し、先端111Xが金属材の表面に溶接される。
ここで仮に本発明の絶縁部113が存在しない場合、溶接ガンから発生した電気は軸部111から耐熱板を通過して先端111X以外に到達する可能性がある。具体的には、例えば耐熱板と金属材が接触してしまった場合、耐熱板を経由して金属材に電気が流れてしまう可能性がある。この場合、スパークの発生等によって耐熱板が損傷する場合があることを、本発明者は見出した。
本発明は絶縁部113を有するため、耐熱板はほぼ損傷しない。
【0047】
<態様2>
図3は本発明におけるスタッドの好適態様である態様2を示すものである。
図3(a)は概略斜視図であり、
図3(b)はその軸線ω
2を含む面における概略断面図を示している。
【0048】
態様2におけるスタッド12は、軸部121、フランジ部122および絶縁部123を有する。
【0049】
態様2における軸部121は円柱状のものである。
ただし、本発明のスタッドにおける軸部は柱状であればよく、その軸線ω
2に垂直な方向における断面は特に限定されない。
図3に示すようにその断面は円形であってもよいが、三角形やその他多角形であってもよい。
また、軸部の表面にねじ山が形成されていてもよい。
【0050】
図3に示す態様のスタッド12を耐熱板の貫通孔に貫通させた状態で溶接ガンにセットし、
図3に示す軸部121の先端121
Xを金属材の表面に付けて溶接する。
【0051】
軸部121の大きさ等は特に限定されない。軸部121の長手方向長さや断面直径は、態様1の場合と同様であってよい。
【0052】
軸部121の材質は、態様1の場合と同様、従来公知のスタッド溶接で用いられるスタッドの材質と同様であってよい。
【0053】
フランジ部122は軸部121と繋がっている。また、フランジ部122は軸部121の軸線ω
2に平行な方向とは異なる方向へ伸びている部分である。
ここでフランジ部122は軸部121と境界がないことが好ましい。つまり、フランジ部122と軸部121とは連続して一体であることが好ましい。
図3に示すスタッド12の場合、先端121
Xと反対側の先端を含む部分が軸部121の軸線ω
2に対して、おおむね垂直方向へ曲げられた態様となっている。この曲げられた部分がフランジ部122である。したがってフランジ部122と軸部121とは連続して一体である。
【0054】
また、ここでフランジ部122の軸線ω2に対して垂直方向の長さをR2とする。
この長さR2を耐熱板の貫通孔の直径(h)よりも大きくすると、より強固に耐熱板を金属材の表面に固定することができる。
【0055】
フランジ部122の大きさ等は特に限定されない。フランジ部122の軸線ω2に対して長さR2は、例えば、5~25mm程度であってよい。
【0056】
フランジ部122の材質は、軸部121の材質と同様であってよい。
【0057】
絶縁部123は層状であって、軸部121の表面の少なくとも一部を覆っている。
図3に示すように、絶縁部123はフランジ部122と軸部121との境界付近を含む部分を覆っていることが好ましい。
また、
図3ではフランジ部122における金属材に対向する面には絶縁部が存在していないが、この面にも絶縁部が存在することが好ましい。フランジ部122の表面全体に絶縁部が存在することがさらに好ましい。ここで、フランジ部122における金属材に対向する面に存在する絶縁部と、軸部121の表面に存在する絶縁部123とが繋がっていることがさらに好ましい。
【0058】
絶縁部123の材質は、態様1の場合と同様、絶縁部123に絶縁性を具備させるものであれば特に限定されない。
【0059】
絶縁部123の長さは特に限定されず、態様1の場合と同様であってよい。
【0060】
絶縁部123は層状であるが、その層の厚さは特に限定されず、態様1の場合と同様であってよい。
【0061】
前述のように軸部121の断面直径および絶縁部123の厚さは特に限定されないが、軸部121の軸線ω2に垂直な方向の断面において絶縁部123の外径(H2)は、耐熱板の円形の貫通孔の直径(h)よりも小さいことが必要となる。
【0062】
軸部121および絶縁部123を耐熱板の貫通孔に貫通させた後、軸部121の先端121Xを金属材の表面に溶接する。このとき耐熱板の貫通孔における内面(端面)が絶縁部123の表面に接するようにする。
この場合、溶接ガンから発生した電気が1つのスタッドにおける軸部121およびフランジ部122のみに流れ、軸部121の先端121Xに到達し、先端121Xが金属材の表面に溶接される。
ここで仮に本発明の絶縁部123が存在しない場合、溶接ガンから発生した電気は軸部121から耐熱板を通過して先端121X以外に到達する可能性がある。具体的には、例えば耐熱板と金属材が接触してしまった場合、耐熱板を経由して金属材に電気が流れてしまう可能性がある。この場合、スパークの発生等によって耐熱板が損傷する場合があることを、本発明者は見出した。
本発明は絶縁部123を有するため、耐熱板はほぼ損傷しない。
【0063】
次に、本発明のスタッドおよび耐熱板付き金属材について、
図4を用いて説明する。
図4は本発明のスタッドおよび耐熱板付き金属材を例示する概略斜視図である。
本発明のスタッドおよび耐熱板付き金属材は
図4に示す態様に限定されない。
【0064】
図4において本発明のスタッドおよび耐熱板付き金属材30は、
図1に示した耐熱板1と、
図2に示したスタッド11と、金属材20とを有している。
【0065】
耐熱板1は
図1に示した態様のものであり、表面に情報が付され、厚さ方向に貫通する貫通孔を有する。
【0066】
スタッド11は
図2に示した態様のものであり、耐熱板1が有する貫通孔にその軸部111および絶縁部113aが貫通していて、軸部111の先端111
Xは金属材20の表面20
Xに溶接されている。溶接方法は特に限定されないが、ショートサイクル方式またはCD方式によってスタッド溶接されていることが好ましい。
【0067】
このような本発明のスタッドおよび耐熱板付き金属材30は、耐熱板1が有する貫通孔に貫通したスタッド11の軸111の先端111Xが金属材20の表面20Xに溶接されて、耐熱板1が外れないように固定されている、スタッドおよび耐熱板付き金属材である。
【0068】
このような本発明のスタッドおよび耐熱板付き金属材は、本発明の製造方法によって製造することができる。
本発明の製造方法は準備工程と、溶接工程とを備える。
【0069】
準備工程では、前記金属材と、
図1に例示したような前記耐熱板と、
図2または
図3に例示したような前記スタッドとを用意する。
【0070】
溶接工程では耐熱板が有する貫通孔にスタッドにおける軸部および絶縁部を貫通させ、従来公知の溶接ガンを用いて、軸部の先端を金属材の表面に溶接する。
このとき耐熱板の貫通孔における内面(端面)が絶縁部の表面に接するようにする。
この場合、溶接ガンから発生した電気が1つのスタッドにおける軸部およびフランジ部のみに流れ、軸部の先端に到達し、先端が金属材の表面に溶接される。
ここで仮に本発明の絶縁部が存在しない場合、溶接ガンから発生した電気は軸部から耐熱板を通過して先端以外に到達する可能性がある。具体的には、例えば耐熱板と金属材が接触してしまった場合、耐熱板を経由して金属材に電気が流れてしまう可能性がある。この場合、スパークの発生等によって耐熱板が損傷する場合があることを、本発明者は見出した。
本発明は絶縁部を有するため、耐熱板はほぼ損傷しない。
【符号の説明】
【0071】
1 耐熱板
3 貫通孔
11、12 スタッド
111、121 軸部
111X 、121X 軸部の先端
112、122 フランジ部
112s、121s フランジ部における金属材に対向する面
113、113a、113b、123 絶縁部
20 金属材
20X 金属材の表面
30 スタッドおよび耐熱板付き金属材
ω1、ω2 軸線
h 貫通孔の直径
H1、H2 絶縁部の外径
R1、R2 フランジ部の外径