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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054695
(43)【公開日】2024-04-17
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/43 20060101AFI20240410BHJP
【FI】
E02F3/43 C
E02F3/43 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161102
(22)【出願日】2022-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】成川 理優
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 哲平
(72)【発明者】
【氏名】小谷 匡士
(72)【発明者】
【氏名】石本 英史
(72)【発明者】
【氏名】伊東 英明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 慧
【テーマコード(参考)】
2D003
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB02
2D003AB03
2D003AB04
2D003AC09
2D003AC10
2D003BA02
2D003BA03
2D003BB05
2D003BB10
2D003CA02
2D003DA02
2D003DA04
2D003DB04
2D003DB05
2D003FA02
(57)【要約】
【課題】被積込機械への積込作業において、被積込機械のベッセル上に1回の放出動作で、土砂等の掘削物を偏りなく放出可能な作業機械を提供する。
【解決手段】作業機械の制御装置は、掘削動作を完了した位置でのベッセル位置取得装置により取得されるベッセルの位置情報に基づいて、ベッセルの上方で行われる掘削物の放出動作を開始する位置である放出開始位置と、放出動作を完了する位置である放出完了位置とを、ベッセルの前後方向の成分を持った方向に並べて設定し、姿勢検出装置により検出される作業装置及び旋回体の姿勢に基づいて、作業装置及び旋回体の少なくとも一方の動作を制御することにより、作業装置の制御点を放出開始位置から放出完了位置に移動させ、作業装置の制御点が放出開始位置から放出完了位置に移動するまでの間に、バケットの対地角が予め設定される放出完了角度になるように、作業装置の動作を制御する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体と、
前記走行体に対して旋回可能に設けられる旋回体と、
前記旋回体に取り付けられ、ブーム、アーム及びバケットを有する作業装置と、
前記旋回体及び前記作業装置の姿勢を検出する姿勢検出装置と、
前記作業装置により掘削された掘削物が積み込まれる被積込機械のベッセルの位置情報を取得するベッセル位置取得装置と、
前記作業装置及び前記旋回体の動作を制御する制御装置と、を備えた作業機械において、
前記制御装置は、
掘削動作を完了した位置での前記ベッセル位置取得装置により取得される前記ベッセルの位置情報に基づいて、前記ベッセルの上方で行われる掘削物の放出動作を開始する位置である放出開始位置と、前記放出動作を完了する位置である放出完了位置とを、前記ベッセルの前後方向の成分を持った方向に並べて設定し、
前記姿勢検出装置により検出される前記作業装置及び前記旋回体の姿勢に基づいて、前記作業装置及び前記旋回体の少なくとも一方の動作を制御することにより、前記作業装置の制御点を前記放出開始位置から前記放出完了位置に移動させ、
前記作業装置の制御点が前記放出開始位置から前記放出完了位置に移動するまでの間に、前記バケットの対地角が予め設定される放出完了角度になるように、前記作業装置の動作を制御する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において、
前記制御装置は、前記ベッセルの位置情報及び前記放出開始位置に基づき、前記作業装置の制御点を前記ベッセルに近づける方向に前記旋回体を旋回させることにより、前記作業装置の制御点を前記放出開始位置まで移動させる過程で、前記バケットが通過する前記ベッセルの端辺部を判定し、その判定結果に基づき、前記放出開始位置から前記放出完了位置に前記作業装置の制御点を移動させる過程で、前記旋回体を旋回動作させるか否かを決定する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項1に記載の作業機械において、
前記制御装置は、
積込制御開始指示が入力されると、そのときの前記作業装置の制御点の位置を積込開始位置として設定し、
前記積込開始位置から前記放出開始位置まで前記作業装置の制御点を移動させるための運搬制御を実行し、
前記積込制御開始指示が入力されると、前記ベッセルの位置情報及び前記放出開始位置に基づき、前記作業装置の制御点を前記ベッセルに近づける方向に前記旋回体を旋回させることにより、前記作業装置の制御点を前記放出開始位置まで移動させる過程で、前記バケットが通過する前記ベッセルの端辺部を判定し、その判定結果に基づき、前記端辺部を通過する際の前記作業装置の制御点の高さの下限値を演算する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項3に記載の作業機械において、
前記作業装置の制御点は、前記アームの先端部であり、
前記制御装置は、前記判定結果に基づき、前記バケットが前記ベッセルの端辺部を通過した後、前記作業装置の制御点を前記放出開始位置まで移動させる過程で、前記作業装置の制御点を下降させるか否かを決定する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項5】
請求項1に記載の作業機械において、
前記制御装置は、
前記放出開始位置から前記放出完了位置までの前記作業装置の制御点の目標軌跡を生成し、
前記目標軌跡に沿って前記作業装置の制御点が移動するように、前記旋回体、及び前記作業装置の少なくとも一方を動作させる
ことを特徴とする作業機械。
【請求項6】
請求項5に記載の作業機械において、
前記目標軌跡は、直線状である
ことを特徴とする作業機械。
【請求項7】
請求項1に記載の作業機械において、
前記制御装置は、所定の前記被積込機械への積込動作において、前記放出開始位置と前記放出完了位置の少なくとも一方を、前記所定の被積込機械に対する前記放出動作の回数に応じて変化させる
ことを特徴とする作業機械。
【請求項8】
請求項7に記載の作業機械において、
前記被積込機械は、走行装置を備える運搬車両であり、
前記制御装置は、前記放出動作の回数が増加するにしたがって、前記放出開始位置の平面位置を前記ベッセルの後端部に近づける
ことを特徴とする作業機械。
【請求項9】
請求項7に記載の作業機械において、
前記被積込機械は、走行装置を備える運搬車両であり、
前記制御装置は、前記放出動作の回数が増加するにしたがって、前記放出完了位置の高さを高くする
ことを特徴とする作業機械。
【請求項10】
請求項1に記載の作業機械において、
前記制御装置は、前記作業装置の制御点を前記放出開始位置から前記放出完了位置まで移動させる際、前記作業装置の制御点が前記放出完了位置に近づくにしたがって、前記バケットのダンプ動作の角速度を増大させる
ことを特徴とする作業機械。
【請求項11】
請求項1に記載の作業機械において、
前記制御装置は、前記作業装置の制御点が前記放出開始位置から前記放出完了位置に移動するまでの間に、前記アームのクラウド動作は行わずに、前記アームのダンプ動作、前記ブームの下げ動作、及び前記バケットのダンプ動作が行われるように前記作業装置を制御する
ことを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
走行体に旋回可能に取り付けられた旋回体と、旋回体に取り付けられた多関節型の作業装置と、を備えた、例えば油圧ショベルなどの作業機械が知られている。この油圧ショベルなどに設けられた作業装置は、旋回体に回動可能に取り付けられるブームと、ブームに回動可能に取り付けられるアームと、アームに回動可能に取り付けられるバケットと、を有する。
【0003】
油圧ショベルは、作業装置により掘削した土砂等の掘削物をダンプトラック等の被積込機械の荷台(ベッセル)の上方まで運搬する運搬動作と、掘削物をダンプトラックのベッセルに放出する放出動作と、を行って掘削物の積込作業を行う。
【0004】
油圧ショベルのオペレータは、運搬動作及び放土動作の双方において、油圧ショベルとダンプトラックとが干渉しないように積込作業を行う必要があり、作業には習熟が必要である。
【0005】
特許文献1には、放土作業を自動で行う制御システムが開示されている。特許文献1には、「排土制御部は、自動排土制御を開始すると判定した場合に、バケットの傾きが所定の排土完了角度になるまで、バケットを排土方向に回転させる第1指令を生成する。排土制御部は、バケットの傾きが、自動排土制御の開始時の傾きから排土完了角度になるまでの間に、ブームを上げ方向に回転させる第2指令を生成する。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-172972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の技術を用いて放土動作を行うと、バケットはその幾何中心を回転軸として回転し掘削した土砂を放出する。そのため、ダンプトラックのベッセル上の特定の箇所に対して、放土動作を行うことになる。このため、特許文献1に記載の技術を用いると、一回の積込作業で、掘削した土砂がダンプトラックのベッセル上の特定の箇所に偏って放出されることになる。その場合、ベッセルへの積込量が制限されたり、ダンプトラックの重量バランスが変化し、走行動作に影響を及ぼす可能性が生じる。
【0008】
本発明は、被積込機械への積込作業において、被積込機械のベッセル上に1回の放出動作で、土砂等の掘削物を偏りなく放出可能な作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様による作業機械は、走行体と、前記走行体に対して旋回可能に設けられる旋回体と、前記旋回体に取り付けられ、ブーム、アーム及びバケットを有する作業装置と、前記旋回体及び前記作業装置の姿勢を検出する姿勢検出装置と、前記作業装置により掘削された掘削物が積み込まれる被積込機械のベッセルの位置情報を取得するベッセル位置取得装置と、前記作業装置及び前記旋回体の動作を制御する制御装置と、を備える。前記制御装置は、掘削動作を完了した位置での前記ベッセル位置取得装置により取得される前記ベッセルの位置情報に基づいて、前記ベッセルの上方で行われる掘削物の放出動作を開始する位置である放出開始位置と、前記放出動作を完了する位置である放出完了位置とを、前記ベッセルの前後方向の成分を持った方向に並べて設定し、前記姿勢検出装置により検出される前記作業装置及び前記旋回体の姿勢に基づいて、前記作業装置及び前記旋回体の少なくとも一方の動作を制御することにより、前記作業装置の制御点を前記放出開始位置から前記放出完了位置に移動させ、前記作業装置の制御点が前記放出開始位置から前記放出完了位置に移動するまでの間に、前記バケットの対地角が予め設定される放出完了角度になるように、前記作業装置の動作を制御する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、被積込機械への積込作業において、被積込機械のベッセル上に1回の放出動作で、土砂等の掘削物を偏りなく放出可能な作業機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る油圧ショベルの側面図である。
図2図2は、油圧ショベルの油圧駆動システムの概略構成図である。
図3図3は、本発明の第1実施形態に係る制御装置の機能ブロック図である。
図4図4は、Y軸方向から見たショベル基準座標系を示す図である。
図5図5は、Z軸方向から見たショベル基準座標系を示す図である。
図6A図6Aは、油圧ショベルと被積込機械の平面図であり、放土開始位置P1と放土完了位置P2とを結ぶ直線状の放土軌跡T1の例を示す。
図6B図6Bは、油圧ショベルと被積込機械の側面図であり、放土開始位置P1と放土完了位置P2とを結ぶ直線状の放土軌跡T1の例を示す。
図7図7は、バケット通過位置判定処理の一例について説明する図。
図8図8は、制御装置により実行される積込制御の処理の流れの一例について示すフローチャート。
図9図9は、油圧ショベルと被積込機械の平面図であり、側部通過用の運搬制御により動作する油圧ショベルと、側部通過後の放土制御で用いられる放土軌跡T1について示す。
図10図10は、油圧ショベルと被積込機械の側面図であり、側部通過用の運搬制御により移動するバケットについて示す。
図11図11は、油圧ショベルと被積込機械の平面図であり、後端部通過用の運搬制御及び後端部通過後の放土制御により動作する油圧ショベルと、後端部通過後の放土制御で用いられる放土軌跡T1について示す。
図12図12は、油圧ショベルと被積込機械の側面図であり、後端部通過用の運搬制御及び後端部通過後の放土制御により移動するバケットについて示す。
図13図13は、第1実施形態の変形例1に係る油圧ショベルと被積込機械の平面図であり、後端部通過用の運搬制御及び後端部通過後の放土制御により動作する油圧ショベルと、後端部通過後の放土制御で用いられる放土軌跡T1について示す。
図14図14は、第1実施形態の変形例2に係る油圧ショベルと被積込機械の平面図であり、後端部通過用の運搬制御及び後端部通過後の放土制御により動作する油圧ショベルと、後端部通過後の放土制御で用いられる放土軌跡T1について示す。
図15図15は、本発明の第2実施形態に係る制御装置の機能ブロック図である。
図16図16は、被積込機械の平面図であり、放土動作の回数に応じた放土開始位置P1-1,P1-2,P1-3を示す。
図17図17は、被積込機械の平面図であり、放土動作の回数に応じた放土開始位置P1-1,P1-2,P1-3,P1-4、及び放土完了位置P2-1,P2-2,P2-3,P2-4を示す。
図18図18は、被積込機械の側面図であり、放土動作の回数に応じた放土完了位置P2-1,P2-2,P2-3を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、以下では、作業機械が油圧ショベルである例について説明する。以下の説明では、同一の構成要素が複数存在する場合、符号の末尾にアルファベットの小文字を付すことがあるが、当該アルファベットの小文字を省略して当該複数の構成要素をまとめて表記することがある。例えば、同一の2つの走行油圧モータ4a,4bが存在するとき、これらをまとめて走行油圧モータ4と表記することがある。
【0013】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る油圧ショベル1の側面図である。図1に示すように、本実施形態に係る油圧ショベル1は、アーム9の先端部にバケット10を後向きに取り付けたバックホウショベルである。油圧ショベル1は、地面等の掘削対象面を掘削する掘削作業と、掘削した土砂等の掘削物を、運搬車両等の被積込機械200の荷台201に積み込む積込作業とを行う。運搬車両としては、例えば、ホイール式の走行装置を備えるダンプトラックやクローラ式の走行装置を備えるキャリアダンプ等がある。
【0014】
油圧ショベル1は、積込作業において、上部旋回体7を旋回させてバケット10内の掘削物を被積込機械200の上方まで運搬する運搬動作と、バケット10をダンプ方向に動作させて掘削物を被積込機械200の荷台201に放出する放出動作とを行う。荷台201は、左右一対の側部202l,202r(図6A参照)と、前側の側部202fと、これら複数の側部202(202l,202r,202f)が接続される矩形状の底部203(図6B参照)と、を有する上面が開放されたベッセル(トレイ)である。左側の側部202l及び右側の側部202rは、互いに対向して配置される。
【0015】
矩形状の底部203は、直線状の前側縁部、後側縁部、左側縁部及び右側縁部を有している。前側の側部202fは、底部203の前側縁部から立ち上がるように設けられ、荷台201の前側の端辺部を構成する。左側の側部202lは、底部203の左側縁部から立ち上がるように設けられ、荷台201の左側の端辺部を構成する。右側の側部202rは、底部203の右側縁部から立ち上がるように設けられ、荷台201の右側の端辺部を構成する。一方、後端部205は、荷台201をダンプ動作させた場合に、荷台201に積み込まれた土砂が排出される部分である。このため、底部203の後側縁部には、底部203から立ち上がる側部は設けられていない。底部203の後側縁部は、荷台201の後側の端辺部である後端部205とされる。なお、荷台201の端辺部とは、平面視で矩形状の荷台201の四辺を形成する部位のことを指す。
【0016】
油圧ショベル1は、車体(機械本体)3と、車体3に取り付けられる多関節型の作業装置2とを備える。車体3は、下部走行体5と、下部走行体5に対して旋回可能に設けられる上部旋回体7と、を備える。下部走行体5は、右側のクローラを駆動する右クローラ駆動用の走行油圧モータ4a(図2参照)、及び左側のクローラを駆動する左クローラ駆動用の走行油圧モータ4b(図2参照)により走行する。上部旋回体7は、下部走行体5の上部に旋回装置を介して取り付けられ、旋回装置の旋回油圧モータ6により旋回する。なお、本実施形態では、右クローラ駆動用の走行油圧モータ4a及び左クローラ駆動用の走行油圧モータ4bを総称して、走行油圧モータ4とも記す。
【0017】
上部旋回体7に取り付けられる作業装置2は、回動可能に連結される複数の駆動対象部材(8,9,10)及び駆動対象部材を駆動する複数の油圧シリンダ(11,12,13)を有する。本実施形態では、複数の油圧シリンダ(11,12,13)によって駆動される3つの駆動対象部材としてのブーム8、アーム9及びバケット10が、直列的に連結される。
【0018】
ブーム8は、その基端部が上部旋回体7の前部においてブームピン8a(図4参照)によって回動可能に連結される。アーム9は、その基端部がブーム8の先端部においてアームピン9aによって回動可能に連結される。バケット10は、アーム9の先端部においてバケットピン10aによって回動可能に連結される。ブームピン8a、アームピン9a、バケットピン10aは、互いに平行に配置され、各駆動対象部材(8,9,10)は同一面内で相対回転可能とされている。
【0019】
ブーム8は、ブームシリンダ11の伸縮動作によって上下方向に回動する。アーム9は、アームシリンダ12の伸縮動作によって前後方向(ダンプ方向及びクラウド方向)に回動する。バケット10は、バケットシリンダ13の伸縮動作によって前後方向(ダンプ方向及びクラウド方向)に回動する。ブームシリンダ11は、その一端側がブーム8に接続され他端側が上部旋回体7のフレームに接続されている。アームシリンダ12は、その一端側がアーム9に接続され他端側がブーム8に接続されている。バケットシリンダ13は、その一端側がバケットリンク16を介してバケット10に接続され他端側がアーム9に接続されている。
【0020】
図2は、油圧ショベル1の油圧駆動システム50の概略構成図である。図2に示すように、油圧駆動システム50は、上部旋回体7に搭載された原動機であるエンジン103と、エンジン103により駆動される油圧ポンプであるメインポンプ102及びパイロットポンプ104と、を備える。メインポンプ102及びパイロットポンプ104は、エンジン103により駆動され、作動油を吐出する。
【0021】
油圧駆動システム50は、メインポンプ102から吐出される作動油の流量及び流れ方向を制御する流量制御弁101と、流量制御弁101に操作信号としての操作圧を出力する複数の電磁比例弁51と、電磁比例弁51に制御信号を出力する制御装置40と、オペレータにより操作され操作量及び操作方向に応じた信号を制御装置40に出力する操作装置20,21と、オペレータの操作により積込制御開始指示を制御装置40に出力する制御トリガスイッチ24と、を備える。操作装置20,21及び制御トリガスイッチ24は、上部旋回体7に設けられた運転室71(図1参照)内に設置されている。
【0022】
作業用の操作装置20は、ブーム8及びバケット10を操作するための作業操作右レバー22aと、アーム9及び上部旋回体7を操作するための作業操作左レバー22bとを備える。つまり、操作装置20は、ブーム操作装置、バケット操作装置、アーム操作装置及び旋回操作装置としての機能を有する。走行用の操作装置21は、右クローラを操作するための走行操作右レバー23aと、左クローラを操作するための走行操作左レバー23bと、を備える。なお、本実施形態では、作業操作右レバー22a及び作業操作左レバー22bを総称して操作レバー22と記し、走行操作右レバー23a及び走行操作左レバー23bを総称して操作レバー23と記す。制御トリガスイッチ24は、操作レバー22a,22b,23a,23bのいずれかに設けられる。
【0023】
本実施形態に係る操作システムは、操作装置20から制御装置40に操作量及び操作方向を表す電気信号が入力され、制御装置40から電磁比例弁51に制御信号が出力され、電磁比例弁51から流量制御弁101に操作圧が出力される電気レバー方式の操作システムである。
【0024】
油圧ショベル1は、操作レバー22,23の操作量及び操作方向を検出し、検出結果を表す信号を制御装置40に出力する操作検出装置56を有する。操作検出装置56は、作業操作左レバー22bによるアームクラウド操作量及びアームダンプ操作量を検出する操作量センサ52aと、作業操作左レバー22bによる右旋回操作量及び左旋回操作量を検出する操作量センサ52bと、作業操作右レバー22aによるブーム上げ操作量及びブーム下げ操作量を検出する操作量センサ52cと、作業操作右レバー22aによるバケットクラウド操作量及びバケットダンプ操作量を検出する操作量センサ52dと、走行操作右レバー23aによる右クローラ前進操作量及び右クローラ後退操作量を検出する操作量センサ52eと、走行操作左レバー23bによる左クローラ前進操作量及び左クローラ後退操作量を検出する操作量センサ52fと、を有する。
【0025】
複数の操作量センサ52は、例えば、操作レバー22,23の操作量及び操作方向を検出可能なロータリエンコーダ、あるいはポテンショメータである。
【0026】
本実施形態に係る制御装置40は、オペレータによる操作レバー22,23の操作情報(操作量及び操作方向)に応じて、作業装置2の回動動作、下部走行体5の走行動作、及び、上部旋回体7の旋回動作を制御する。
【0027】
具体的には、制御装置40は、オペレータによる操作レバー22,23の操作量及び操作方向に応じた制御信号を電磁比例弁51(51a~51l)に出力する。電磁比例弁51は、パイロットポンプ104から圧油が供給されるパイロットライン100に設けられている。電磁比例弁51は、制御装置40からの制御信号が入力されると作動し、パイロットライン100の一次圧を減圧して生成した二次圧を操作圧として流量制御弁101に出力する。流量制御弁101は、複数の油圧アクチュエータ(旋回油圧モータ6、アームシリンダ12、ブームシリンダ11、バケットシリンダ13、走行油圧モータ4a及び走行油圧モータ4b)毎に設けられた複数のスプール弁を有している。電磁比例弁51により出力された操作圧は、スプール弁の受圧室に導かれ、スプールが動作する。これにより、メインポンプ102から吐出された作動油が、スプール弁を通じて対応する油圧アクチュエータに供給され、その油圧アクチュエータを動作させる。
【0028】
電磁比例弁51a,51bは、旋回油圧モータ6に供給される圧油を制御するための操作圧を流量制御弁101の旋回油圧モータ6駆動用のスプール弁の受圧室に出力する。電磁比例弁51c,51dは、アームシリンダ12に供給される圧油を制御するための操作圧を流量制御弁101のアームシリンダ12駆動用のスプール弁の受圧室に出力する。電磁比例弁51e,51fは、ブームシリンダ11に供給される圧油を制御するための操作圧を流量制御弁101のブームシリンダ11駆動用のスプール弁の受圧室に出力する。電磁比例弁51g,51hは、バケットシリンダ13に供給される圧油を制御するための操作圧を流量制御弁101のバケットシリンダ13駆動用のスプール弁の受圧室に出力する。電磁比例弁51i,51jは、走行油圧モータ4aに供給される圧油を制御するための操作圧を流量制御弁101の走行油圧モータ4a駆動用のスプール弁の受圧室に出力する。電磁比例弁51k,51lは、走行油圧モータ4bに供給される圧油を制御するための操作圧を流量制御弁101の走行油圧モータ4b駆動用のスプール弁の受圧室に出力する。
【0029】
ブームシリンダ11、アームシリンダ12及びバケットシリンダ13は、それぞれ、供給された圧油によって伸縮し、ブーム8、アーム9及びバケット10を回動させる。これにより、バケット10の位置及び作業装置2の姿勢が変化する。旋回油圧モータ6は、供給された圧油によって回転し、上部旋回体7を旋回させる。走行油圧モータ4a及び走行油圧モータ4bは、供給された圧油によって回転し、下部走行体5を走行させる。なお、オペレータによる操作レバー22,23の操作が無い場合であっても、制御装置40からの制御信号によって電磁比例弁51a~51lを作動させ、流量制御弁101を作動させることによって、油圧アクチュエータ(4a,4b,6,11,12,13)を駆動させることが可能である。本実施形態では、後述するように、制御トリガスイッチ24が操作されることにより、制御装置40は、作業装置2及び上部旋回体7の動作の自動制御を行う。
【0030】
油圧ショベル1は、作業装置2及び車体3(上部旋回体7)の姿勢を検出する姿勢検出装置53を備えている。姿勢検出装置53は、複数の姿勢センサとしての、ブーム角度センサ14、アーム角度センサ15、バケット角度センサ17、傾斜角度センサ18及び旋回角度センサ19を含んで構成される。ブーム角度センサ14は、ブームピン8aに取り付けられ、上部旋回体7に対するブーム8の回動角度を検出し、検出結果を表す信号を制御装置40に出力する。アーム角度センサ15は、アームピン9aに取り付けられ、ブーム8に対するアーム9の回動角度を検出し、検出結果を表す信号を制御装置40に出力する。バケット角度センサ17は、バケットリンク16に取り付けられ、アーム9に対するバケット10の回動角度を検出し、検出結果を表す信号を制御装置40に出力する。制御装置40は、各角度センサ14,15,17によって、ブーム8、アーム9及びバケット10の各回動角度を取得する。
【0031】
なお、ブーム8、アーム9及びバケット10の各回動角度を取得する方法は、これに限定されない。制御装置40は、水平面等の基準面に対するブーム8、アーム9及びバケット10の各角度を慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)により検出し、ブーム8、アーム9及びバケット10の各回動角度に換算することによって、各回動角度を取得してもよい。また、制御装置40は、ブームシリンダ11、アームシリンダ12及びバケットシリンダ13の各ストロークをストロークセンサにより検出し、ブーム8、アーム9及びバケット10の各回動角度に換算することによって、各回動角度を取得してもよい。
【0032】
傾斜角度センサ18は、上部旋回体7に取り付けられ、水平面等の基準面に対する上部旋回体7(車体3)の傾斜角を検出し、検出結果を表す信号を制御装置40に出力する。旋回角度センサ19は、下部走行体5と上部旋回体7との間の旋回装置に取り付けられ、下部走行体5に対する上部旋回体7の旋回角度を検出し、検出結果を表す信号を制御装置40に出力する。
【0033】
ここで、ブーム8、アーム9及びバケット10の各回動角度は、作業装置2の姿勢を表すパラメータである。つまり、ブーム角度センサ14、アーム角度センサ15、及び、バケット角度センサ17は、作業装置2の姿勢を検出する姿勢センサとして機能している。また、上部旋回体7の傾斜角度及び下部走行体5に対する上部旋回体7の旋回角度は、上部旋回体7(車体3)の姿勢を表すパラメータである。つまり、傾斜角度センサ18及び旋回角度センサ19は、上部旋回体7(車体3)の姿勢を検出する姿勢センサとして機能している。
【0034】
油圧ショベル1は、油圧ショベル1の周囲に存在する物体の種別及びその位置を検出する物体位置検出装置54を備えている。物体位置検出装置54は、例えば、LiDAR(Light Detection And Ranging)やステレオカメラであり、運転室71の上部などに取り付けられる。物体位置検出装置54は、作業装置2により掘削された掘削物が積み込まれる被積込機械200の荷台201を検出するとともに、上部旋回体7に設けられた物体位置検出装置54に対する被積込機械200の荷台201の位置情報を検出する。なお、物体位置検出装置54は、油圧ショベル1に複数取り付けられていてもよい。
【0035】
制御装置40は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)などの処理装置、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などの内部記憶装置、及び外部I/F(Interface)などがバスにより互いに接続されたコンピュータである。制御装置40の外部I/Fには、操作検出装置56、姿勢検出装置53、物体位置検出装置54、入力装置57及びハードディスクドライブや大容量フラッシュメモリなどの外部記憶装置が接続されている。
【0036】
ROMには、各種演算が実行可能なプログラムが格納されている。すなわち、ROMは、本実施形態の機能を実現するプログラムを読み取り可能な記憶媒体である。処理装置は、ROMに記憶されたプログラムをRAMに展開して演算実行する演算装置であって、プログラムに従って外部I/F、及び記憶装置(内部記憶装置及び外部記憶装置)から取り入れた信号に対して所定の演算処理を行う。
【0037】
外部I/Fの入力部は、各種装置(操作検出装置56、姿勢検出装置53、物体位置検出装置54等)から入力された信号を処理装置で演算可能なように変換する。また、外部I/Fの出力部は、処理装置での演算結果に応じた出力用の信号を生成し、その信号を各種装置(電磁比例弁51等)に出力する。
【0038】
姿勢検出装置53は、上述した作業装置2の姿勢を検出する姿勢センサ(14,15,17)と、上部旋回体7(車体3)の姿勢を検出する姿勢センサ(18,19)と、を含んで構成される。
【0039】
図3は、制御装置40の機能ブロック図である。図3に示すように、制御装置40は、ROMに記憶されているプログラムを実行することにより、姿勢演算部41、被積込機械位置演算部42、バケット通過位置判定部43、放土軌跡生成部44、目標動作演算部45、及び、弁制御部46として機能する。
【0040】
制御装置40のROMには、油圧ショベル1の構成要素の位置及び姿勢の特定に用いられるショベル基準座標系、油圧ショベル1の構成要素の寸法、物体位置検出装置54の取付位置のデータ等が予め記憶されている。本実施形態のショベル基準座標系は、図4及び図5に示すように、旋回中心軸と地面Gとが交差する点を原点Oとする右手座標系として定義されている。ショベル基準座標系は、下部走行体5の前進方向をX軸の正方向として定義されている。本実施形態のショベル基準座標系は、原点Oから旋回中心軸と平行に上方に延びる方向をZ軸の正方向として定義されている。本実施形態のショベル基準座標系は、X軸及びZ軸のそれぞれに直交する方向であって、下部走行体5の左方をY軸の正方向として定義されている。このように本実施形態のショベル基準座標系は、下部走行体5を基準に設定される座標系であり、XY平面は下部走行体5が接する地面(走行面)Gに固定されている。
【0041】
本実施形態のショベル基準座標系において上部旋回体7の旋回角度θswは、油圧ショベル1が基準姿勢のとき、すなわち作業装置2がX軸と平行となる状態のときに、0度となる。上部旋回体7の旋回角度θswが0度の状態において、作業装置2の動作平面はXZ平面に平行であり、ブーム8の上げ動作方向はZ軸の正方向であり、アーム9及びバケット10のダンプ方向はX軸の正方向である。
【0042】
姿勢演算部41は、姿勢検出装置53の検出信号から、ショベル基準座標系における油圧ショベル1の構成要素の姿勢を演算する。具体的には、姿勢演算部41は、ブーム角度センサ14から出力されたブーム8の回動角度の検出信号から、X軸に対するブーム8の回動角度(以下、ブーム角度とも記す)θbmを演算する。姿勢演算部41は、アーム角度センサ15から出力されたアーム9の回動角度の検出信号から、ブーム8に対するアーム9の回動角度(以下、アーム角度とも記す)θamを演算する。姿勢演算部41は、バケット角度センサ17から出力されたバケット10の回動角度の検出信号から、アーム9に対するバケット10の回動角度(以下、バケット角度とも記す)θbkを演算する。姿勢演算部41は、旋回角度センサ19から出力された上部旋回体7の旋回角度の検出信号から、X軸(下部走行体5)に対する上部旋回体7の旋回角度θswを演算する。
【0043】
姿勢演算部41は、演算された作業装置2の各回動角度θbm,θam,θbk及び上部旋回体7の旋回角度θswと、ブーム長さLbm、アーム長さLam及びバケット長さLbkとに基づいて、ブーム8、アーム9及びバケット10のそれぞれのショベル基準座標系における位置、すなわちX座標及びY座標により特定される平面位置並びにZ座標により特定される地面Gからの高さを演算する。なお、ブーム長さLbmは、ブームピン8aからアームピン9aまでの長さである。アーム長さLamは、アームピン9aからバケットピン10aまでの長さである。バケット長さLbkは、バケットピン10aからバケット10の先端部(爪先)までの長さである。なお、ブームピン8aは、旋回角度を0度としたとき、旋回中心軸(Z軸)からX軸方向にLoxだけオフセットした位置に設けられている。
【0044】
また、図示しないが、姿勢演算部41は、傾斜角度センサ18から出力された車体3の傾斜角度の検出信号から、基準面に対する車体3(下部走行体5)の傾斜角(ピッチ角及びロール角)を演算する。基準面は、例えば、重力方向に直交する水平面である。姿勢演算部41は、車体3の傾斜角、及び作業装置2の各回動角度θbm,θam,θbkから、重力方向に直交する水平面(地面G)に対するバケット10の角度である対地角γを演算する。バケット10の対地角γは、バケット10の先端部とバケットピン10aとを通る直線SLが水平面(地面G)に対して成す角度である。バケット10の対地角γは、バケット10の開口が上方を向いているときであって、直線SLが水平面(地面G)と平行であるときには0(ゼロ)度であり、バケットダンプ動作が進むにつれて大きくなる。バケット10の対地角γは、バケット10の開口が下方を向いているときであって、直線SLが水平面(地面G)と平行であるときには180度である。
【0045】
図3に示す被積込機械位置演算部42は、物体位置検出装置54により検出された物体位置検出装置54に対する被積込機械200の荷台201の相対的な位置の情報と、姿勢演算部41により演算された上部旋回体7の旋回角度θswと、ショベル基準座標系での物体位置検出装置54の取付位置とに基づき、当該被積込機械200の荷台201のショベル基準座標系における位置(X座標及びY座標により特定される平面位置、及び、Z座標により特定される地面Gからの高さ)を演算する。このように、本実施形態に係る制御装置40は、物体位置検出装置54を用いて、油圧ショベル1に対する荷台201の相対位置(ショベル基準座標系でのX,Y,Z座標)を取得する。制御装置40が取得する荷台201の位置情報は、例えば、荷台201の上面の四隅の位置座標、すなわち、荷台201の左側の側部202lの上縁の前端及び後端、並びに右側の側部202rの上縁の前端及び後端の位置座標などである。つまり、制御装置40が取得する荷台201の位置情報には、荷台201の上部旋回体7に対する相対位置及び相対角度の情報が含まれているといえる。換言すれば、本実施形態においては、制御装置40は、物体位置検出装置54を用いて、作業装置2により掘削された掘削物が積み込まれる被積込機械200の荷台201における、作業装置2に対する相対位置に関する種々の情報を相対位置情報として取得する。
【0046】
放土軌跡生成部44は、制御トリガスイッチ24から積込制御開始指示が入力されると、後述する積込開始位置P3での荷台201の位置情報(上部旋回体7に対する相対位置及び相対角度)に基づいて、放土軌跡T1を生成する。
【0047】
放土軌跡生成部44は、荷台201の上方で行われる掘削物の放出動作(以下、放土動作とも記す)を開始する位置である放出開始位置(以下、放土開始位置とも記す)P1と、放土動作を完了する位置である放土完了位置P2と、放土開始位置P1から放土完了位置P2までの作業装置2の制御点CPの目標軌跡(移動予定経路)である放土軌跡T1を演算する。放土軌跡生成部44により生成された放土開始位置P1、放土完了位置P2、及び放土軌跡T1の例を図6A及び図6Bに示す。放土軌跡T1は、任意の長さに設定可能である。例えば、放土軌跡T1は、バケット長さLbkの2倍の長さよりも長くなるように設定してもよい。放土開始位置P1は荷台201の後部に設定され、放土完了位置P2は荷台201の前部に設定される。
【0048】
放土開始位置P1及び放土完了位置P2の演算方法の一例について説明する。記憶装置には、放土開始位置P1の演算に用いる後端部205からの距離D1が記憶されている。また、記憶装置には、放土完了位置P2の演算に用いる前側の側部202fからの距離D2が記憶されている。放土軌跡生成部44は、荷台201の位置情報に基づいて、荷台201の左右幅の中心を通りかつ被積込機械200の前後方向に平行な仮想直線である荷台中心線CLを演算する。
【0049】
放土軌跡生成部44は、後端部205の位置情報に基づいて、荷台中心線CL上であって、後端部205からの距離が記憶装置に記憶されている距離D1となる位置を放土開始位置P1として設定する。放土軌跡生成部44は、前側の側部202fの位置情報に基づいて、荷台中心線CL上であって、前側の側部202fからの距離が記憶装置に記憶されている距離D2となる位置を放土完了位置P2として設定する。図6A及び図6Bに示す例では、放土開始位置P1は、荷台201の中心Ovよりも後端部205に近い位置に設定され、放土完了位置P2は、荷台201の中心Ovよりも前側の側部202fに近い位置に設定されている。
【0050】
なお、放土開始位置P1及び放土完了位置P2の演算方法は、上記方法に限定されない。例えば、放土開始位置P1は、必ずしも荷台201の後端部205の近くに設定する必要はない。少なくとも、放土開始位置P1は、平面視でバケット10が荷台201の内側に収まる位置であればよい。
【0051】
図6Aは、油圧ショベル1と被積込機械200の平面図であり、放土開始位置P1と放土完了位置P2とを結ぶ直線状の放土軌跡T1の例を示す。図6Bは、油圧ショベル1と被積込機械200の側面図であり、放土開始位置P1と放土完了位置P2とを結ぶ直線状の放土軌跡T1の例を示す。作業装置2の制御点CPは、例えば、アーム9の先端部に設定される。本実施形態では、アーム9の先端部に設けられるバケットピン10aの左右幅中心点が作業装置2の制御点CPとして設定される例について説明する。
【0052】
図6Aに示すように、放土軌跡T1は、平面視で荷台201の中心Ovを通り側部202の外側面に平行な直線である荷台中心線CLと平行である。荷台201を平面視した際の放土開始位置P1と放土完了位置P2は、荷台201の前後方向(被積込機械200の前後方向に対応し、本実施形態においては荷台中心線CLに沿った方向)に沿って並べて設定される。放土開始位置P1と放土完了位置P2の平面位置(X座標及びY座標)は、平面視した際にバケット10全体が荷台201内に存在するように決定される。
【0053】
放土開始位置P1と放土完了位置P2を含む放土軌跡T1の高さ(Z座標)は、荷台201の底部203の高さに、バケット10の寸法とマージン分の高さを加算することにより算出される。したがって、図6Bにおいて破線で示すように、放土軌跡T1は、荷台201の底部203に沿うように設定される。なお、放土軌跡T1の設定方法はこれに限られない。図6Bにおいて二点鎖線で示すように、放土軌跡T1は、水平に平行に設定してもよい。
【0054】
制御装置40は、アーム9の先端部が放土開始位置P1から放土完了位置P2に移動するまでの間に、バケット10の対地角γが予め設定される放土完了角度γcになるように、作業装置2の動作を制御する。放土完了角度γcには、例えば、制御装置40に接続される入力装置57(図2参照)に対する操作に応じた任意の角度が設定される。入力装置57は、オペレータや現場管理者によって操作される操作入力部を有している。
【0055】
なお、制御装置40は、記憶装置に記憶されている掘削対象物のデータベースから放土完了角度γcを定めてもよい。掘削対象物のデータベースには、掘削対象物の粘性係数と放土完了角度γcとの関係が規定されている。掘削対象物の粘性が大きいと、掘削対象物はバケット10に留まりやすいため、放土完了角度γcは大きな値とすることが好ましい。逆に、掘削対象物の粘性が小さいと、掘削対象物はバケット10から放出されやすいため、放土完了角度γcは小さい値とすることが好ましい。このため、掘削対象物のデータベースにおいて規定される粘性係数と放土完了角度γcとの関係は、粘性係数が大きくなるほど放土完了角度γcが大きくなる関係である。
【0056】
制御装置40は、入力装置57から粘性係数の情報が入力されると、掘削対象物のデータベースを参照し、入力された粘性係数の情報に基づき放土完了角度γcを設定する。なお、油圧ショベル1がGNSS(Global Navigation Satellite System)アンテナを含む測位装置を備えている場合には、グローバル座標系における油圧ショベル1の位置情報と、記憶装置に記憶されている地図情報に含まれる作業現場の地質の粘性係数の情報と、に基づいて、現在位置での掘削対象物の粘性係数を特定し、放土完了角度γcを設定してもよい。
【0057】
制御装置40は、例えば、放土開始位置P1から放土完了位置P2まで、一定の角速度ω0でバケット10を回動させる。なお、制御装置40は、アーム9の先端部(CP)を放土開始位置P1から放土完了位置P2まで移動させる際、アーム9の先端部(CP)が放土完了位置P2に近づくにしたがって、バケット10のダンプ動作の角速度を所定の角速度ω1まで増大させてもよい。つまり、制御装置40は、バケット10が放土開始位置P1から放土完了位置P2に至る際に行うバケット10のダンプ動作の角速度を可変にしてもよい。なお、角速度ω0,ω1には、例えば、制御装置40に接続される入力装置57(図2参照)に対する操作に応じた任意の角速度が設定される。
【0058】
バケット10が放土開始位置P1から放土完了位置P2に向かって移動し始めた段階、すなわちバケット10の対地角γが0度から大きくなり始める放土初期段階では、後述する放土最終段階に比べてバケット10から放出される掘削物の量(放土量)が大きくなる。このため、放土初期段階では放土最終段階に比べて、バケットダンプ動作の角速度は小さい方が好ましい。一方、放土完了位置P2に到達する直前の段階、すなわちバケット10の対地角γが例えば70~80度程度まで大きくなった放土最終段階では、放土初期段階に比べて放土量が小さくなる。このため、放土最終段階では放土初期段階に比べてバケットダンプ動作の角速度は大きい方が好ましい。
【0059】
上述したように、バケット10が放土完了位置P2に近づくにしたがってバケット10のダンプ動作の角速度を増大させることで、バケット10から単位時間当たりに放出される掘削物の量(放土量)を一定にすることができる。この結果、角速度を一定とする場合に比べて、一度の放土動作で放出される掘削物の偏りを、より小さくすることができる。なお、制御装置40は、バケット10のダンプ動作の角速度を一定にするモードと、増大させるモードとを入力装置57に対する操作に応じて設定してもよい。
【0060】
図3に示すバケット通過位置判定部43は、制御トリガスイッチ24から積込制御開始指示が入力されると、荷台201の位置情報及び放土開始位置P1に基づき、アーム9の先端部(CP)を荷台201に近づける方向に上部旋回体7を旋回させることにより、アーム9の先端部(CP)を放土開始位置P1まで移動させる過程で、荷台201の端辺部(側部202l,202r、及び荷台201の後端部205)のうち、バケット10が通過する荷台201の端辺部を判定する。つまり、バケット通過位置判定部43は、バケット10がどの端辺部を通過して荷台201内に進入するのかを判定する。
【0061】
図7を参照して、バケット通過位置判定処理の一例について説明する。図7に示すように、バケット通過位置判定部43は、荷台中心線CLと、旋回中心(原点O)と荷台201の中心Ovとを結ぶ線分Lとのなす角φを演算し、演算したなす角φに基づき、バケット10が通過する端辺部を判定する。バケット通過位置判定部43は、なす角φが予め定めた角度閾値φ0以上である場合には、平面視でバケット10が荷台201内に進入する際に通過する端辺部は、後端部205であると判定する。つまり、バケット通過位置判定部43は、バケット10は後端部205を通過して荷台201内に進入すると判定する。バケット通過位置判定部43は、なす角φが角度閾値φ0未満である場合には、平面視でバケット10が荷台201内に進入する際に通過する端辺部は、側部202であると判定する。つまり、バケット通過位置判定部43は、バケット10は側部202を通過して荷台201内に進入すると判定する。
【0062】
バケット通過位置判定部43による端辺部の判定方法は、これに限定されない。例えば、バケット通過位置判定部43は、アーム9の先端部を荷台201に近づける方向に上部旋回体7を旋回させることを想定した場合のアーム9の先端部の予測軌跡T0を演算する。バケット通過位置判定部43は、平面視で予測軌跡T0と交差する端辺部であって、積込開始位置P3からの予測軌跡T0に沿う長さが最も短い端辺部を、バケット10が通過する端辺部として判定してもよい。
【0063】
図3に示す目標動作演算部45は、姿勢演算部41及び被積込機械位置演算部42の演算結果、放土軌跡生成部44で生成された放土軌跡T1、並びにバケット通過位置判定部43の判定結果に基づいて、各油圧アクチュエータ(ブームシリンダ11、アームシリンダ12、バケットシリンダ13、旋回油圧モータ6)の目標速度を算出する。以下、目標動作演算部45による目標速度の算出方法の具体例について説明する。
【0064】
目標動作演算部45は、制御トリガスイッチ24が操作され、制御トリガスイッチ24から積込制御開始指示が入力されたときのアーム9の先端部(制御点CP)の位置を積込開始位置P3として設定する。なお、オペレータは、作業装置2による掘削動作を完了すると、制御トリガスイッチ24を操作する。つまり、積込開始位置P3とは、掘削動作を完了した位置に相当する。目標動作演算部45は、積込開始位置P3(図9参照)と荷台201の側部202との間に、荷台201と作業装置2とが干渉しないアーム9の先端部の旋回方向の角度位置である干渉防止位置P4(図9参照)を設定する。
【0065】
目標動作演算部45は、積込開始位置P3から干渉防止位置P4までの上部旋回体7の動作範囲において、干渉防止位置P4に近いほど大きくかつ干渉防止位置P4で干渉防止高さHiとなる、アーム9の先端部の旋回方向の角度位置に応じた作業装置2の高さ方向の下限値(運搬動作のための目標軌跡に相当)を演算する。干渉防止高さHiは、バケット10を荷台201の端辺部の上方を通過させるためにアーム9の先端部が到達するべきショベル基準座標系での高さである。干渉防止高さHiは、油圧ショベル1が接している地面Gを基準とした荷台201の高さHtに、マージンHmを加算することにより設定される。
【0066】
なお、図1では、グローバル座標系における被積込機械200の接地面の高さが、グローバル座標系における油圧ショベル1の接地面(地面G)の高さよりも低い場合について示しているが、以下では、説明を分かりやすくするため、グローバル座標系における被積込機械200の接地面と油圧ショベル1の接地面(地面G)の高さは同じであるものとする(図10図12参照)。つまり、油圧ショベル1が接している地面Gと被積込機械200が接している地面とは面一であり、被積込機械200が接している地面からの高さは、ショベル基準座標系での高さ(Z座標)に相当する。
【0067】
目標動作演算部45は、バケット通過位置判定部43の判定結果に基づき、端辺部を通過する際のアーム9の先端部(CP)の高さの下限値である干渉防止高さHiを演算する。バケット通過位置判定部43により、バケット10は荷台201の側部202を通過して荷台201内に進入すると判定されている場合、目標動作演算部45は、荷台201の高さHtに側部通過用の高さHta(図10参照)を設定するとともにマージンHmに側部通過用のマージンHma(図10参照)を設定する。側部通過用の高さHtaは、地面Gから側部202の上端までの高さであり、被積込機械位置演算部42により演算される。また、マージンHmaは、バケット長さLbkを考慮して定められ、予め記憶装置に記憶されている。マージンHmaはバケット長さLbkよりも大きい。側部通過用の干渉防止高さHiaは、側部通過用の高さHtaとマージンHmaとの和で表される(図10参照)。
【0068】
バケット通過位置判定部43により、バケット10は荷台201の後端部205を通過して荷台201内に進入すると判定されている場合、目標動作演算部45は、荷台201の高さHtに後端部通過用の高さHtb(図12参照)を設定するとともにマージンHmに後端部通過用のマージンHmb(図12参照)を設定する。後端部通過用の高さHtbは、地面Gから後端部205までの高さであり、被積込機械位置演算部42により演算される。また、マージンHmbは、バケット長さLbkを考慮して定められ、予め記憶装置に記憶されている。マージンHmbはバケット長さLbkよりも大きい。なお、マージンHmaとマージンHmbは、異なる値であってもよいし、同じ値であってもよい。後端部通過用の干渉防止高さHibは、後端部通過用の高さHtbとマージンHmbとの和で表される(図12参照)。
【0069】
このように、干渉防止高さHi(Hia,Hib)が設定されるため、上部旋回体7の旋回動作により、バケット10を荷台201に干渉させることなく荷台201の外側から内側に移動させることができる。
【0070】
目標動作演算部45は、アーム9の先端部(CP)を積込開始位置P3から干渉防止位置P4まで移動させる際、アーム9の先端部の高さが上記下限値を下回らないようにブーム8及び上部旋回体7の目標速度を算出する。目標動作演算部45は、干渉防止位置P4からバケット10の全体が荷台201内に収まるまでは、干渉防止高さHiよりも下方にアーム9の先端部の高さが低くならないように、各油圧アクチュエータの目標速度を算出する。
【0071】
また、目標動作演算部45は、アーム9の先端部が放土開始位置P1に到達するように、積込開始位置P3から放土開始位置P1までの上部旋回体7の動作範囲において、各油圧アクチュエータの目標速度を算出する。
【0072】
バケット通過位置判定部43により荷台201の側部202をアーム9の先端部が通過すると判定されている場合には、目標動作演算部45は、荷台201内にバケット10の全体が進入した後に、バケット10の位置を下げてアーム9の先端部を放土開始位置P1に到達させるための目標速度を算出する。これにより、荷台201内にバケット10の全体が進入した後に、バケット10の位置を下げる動作が行われる。一方、バケット通過位置判定部43により荷台201の後端部205をアーム9の先端部が通過すると判定されている場合には、荷台201内にバケット10の全体が進入した後に、バケット10の位置を下げる動作は行われない。
【0073】
さらに目標動作演算部45は、生成された放土軌跡T1に沿ってアーム9の先端部(CP)が移動するように、ブームシリンダ11、アームシリンダ12、旋回油圧モータ6の目標速度を演算する。また、目標動作演算部45は、アーム9の先端部(CP)が放土開始位置P1から放土完了位置P2に至るまでにバケット10の対地角γが所定の放土完了角度γcになるよう、バケットシリンダ13の目標速度を演算する。
【0074】
弁制御部46は、目標動作演算部45により演算された目標速度でブームシリンダ11、アームシリンダ12、バケットシリンダ13、旋回油圧モータ6が動作するように、電磁比例弁51に制御信号を出力する。目標動作演算部45及び弁制御部46は、各油圧アクチュエータ(ブームシリンダ11、アームシリンダ12、バケットシリンダ13、旋回油圧モータ6)の動作を制御するアクチュエータ制御部47として機能する。
【0075】
アクチュエータ制御部47は、姿勢演算部41により演算される作業装置2及び上部旋回体7の姿勢に基づいて、作業装置2及び上部旋回体7の少なくとも一方の動作を制御することにより、作業装置2の制御点CPを放土開始位置P1から放土完了位置P2に移動させる。また、アクチュエータ制御部47は、作業装置2の制御点CPが放土開始位置P1から放土完了位置P2に移動するまでの間に、バケット10の対地角γが予め設定される放土完了角度γcになるように、作業装置2の動作を制御する。
【0076】
図8を参照して制御装置40により実行される積込制御の処理の流れの一例について説明する。図8のフローチャートに示す積込制御は、制御トリガスイッチ24が操作され制御トリガスイッチ24から積込制御開始指示が入力されると開始される。ステップS100において、被積込機械位置演算部42は、物体位置検出装置54からの情報に基づいて、被積込機械200の荷台201の位置情報を演算する。
【0077】
次のステップS105において、放土軌跡生成部44は、ステップS100で演算された被積込機械200の荷台201の位置情報に基づいて、放土開始位置P1、放土完了位置P2、及び放土軌跡T1を演算する。
【0078】
次のステップS110において、バケット通過位置判定部43は、アーム9の先端部を荷台201に近づける旋回方向に上部旋回体7を旋回させた場合に、アーム9の先端部が放土開始位置P1に至る際にアーム9の先端部が通過する荷台201の端辺部(以下、荷台通過端辺部とも記す)を演算する。
【0079】
次のステップS115において、バケット通過位置判定部43は、ステップS110で演算された荷台通過端辺部が、荷台201の側部202であるか、後端部205であるかを判定する。ステップS115において、荷台通過端辺部が荷台201の側部202であると判定されると、処理がステップS120に進む。ステップS115において、荷台通過端辺部が荷台201の後端部205であると判定されると、処理がステップS150に進む。
【0080】
ステップS120において、アクチュエータ制御部47は、側部通過用の運搬制御を実行する。側部通過用の運搬制御は、作業装置2と荷台201の側部202とを接触させることなく、積込開始位置P3から放土開始位置P1までアーム9の先端部(CP)を移動させるための制御である。側部通過用の運搬制御については後述する。
【0081】
次のステップS125において、アクチュエータ制御部47は、アーム9の先端部が放土開始位置P1に到達したか否かを判定する。ステップS125において、アーム9の先端部が放土開始位置P1に到達していないと判定されると、処理がステップS120に戻る。ステップS125において、アーム9の先端部が放土開始位置P1に到達していると判定されると、処理がステップS130に進む。つまり、側部通過用の運搬制御(ステップS120)は、アーム9の先端部が放土開始位置P1に到達するまで、所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0082】
ステップS130において、アクチュエータ制御部47は、側部通過後の放土制御を実行する。側部通過後の放土制御は、放土開始位置P1から放土完了位置P2までアーム9の先端部を移動させるとともに、バケット10の対地角γが放土完了角度γcとなるまでバケット10のダンプ動作を行うための制御である。側部通過後の放土制御については後述する。
【0083】
次のステップS135において、アクチュエータ制御部47は、アーム9の先端部が放土完了位置P2に到達したか否かを判定する。ステップS135において、アーム9の先端部が放土完了位置P2に到達していないと判定されると、処理がステップS130に戻る。ステップS135において、アーム9の先端部が放土完了位置P2に到達していると判定されると、ステップS140に進む。
【0084】
ステップS140において、アクチュエータ制御部47は、バケット10の対地角γが放土完了角度γcに到達したか否か(γ≧γc)を判定する。ステップS140において、バケット10の対地角γが放土完了角度γcに到達していないと判定されると、処理がステップS130に戻る。ステップS140において、バケット10の対地角γが放土完了角度γcに到達していると判定されると、図8のフローチャートに示す積込制御を終了する。つまり、側部通過後の放土制御(ステップS130)は、アーム9の先端部が放土完了位置P2に到達し、かつ、バケット10の対地角γが放土完了角度γcに到達するまで、所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0085】
ステップS150において、アクチュエータ制御部47は、後端部通過用の運搬制御を実行する。後端部通過用の運搬制御は、作業装置2と荷台201の後端部205とを接触させることなく、積込開始位置P3から放土開始位置P1までアーム9の先端部を移動させるための制御である。後端部通過用の運搬制御については後述する。
【0086】
次のステップS155において、アクチュエータ制御部47は、アーム9の先端部が放土開始位置P1に到達したか否かを判定する。ステップS155において、アーム9の先端部が放土開始位置P1に到達していないと判定されると、処理がステップS150に戻る。ステップS155において、アーム9の先端部が放土開始位置P1に到達していると判定されると、処理がステップS160に進む。つまり、後端部通過用の運搬制御(ステップS150)は、アーム9の先端部が放土開始位置P1に到達するまで、所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0087】
ステップS160において、アクチュエータ制御部47は、後端部通過後の放土制御を実行する。後端部通過後の放土制御は、放土開始位置P1から放土完了位置P2までアーム9の先端部を移動させるとともに、バケット10の対地角γが放土完了角度γcとなるまでバケット10のダンプ動作を行うための制御である。後端部通過後の放土制御については後述する。
【0088】
次のステップS165において、アクチュエータ制御部47は、アーム9の先端部が放土完了位置P2に到達したか否かを判定する。ステップS165において、アーム9の先端部が放土完了位置P2に到達していないと判定されると、処理がステップS160に戻る。ステップS165において、アーム9の先端部が放土完了位置P2に到達していると判定されると、ステップS170に進む。
【0089】
ステップS170において、アクチュエータ制御部47は、バケット10の対地角γが放土完了角度γcに到達したか否か(γ≧γc)を判定する。ステップS170において、バケット10の対地角γが放土完了角度γcに到達していないと判定されると、処理がステップS160に戻る。ステップS170において、バケット10の対地角γが放土完了角度γcに到達していると判定されると、図8のフローチャートに示す積込制御を終了する。つまり、後端部通過後の放土制御(ステップS160)は、アーム9の先端部が放土完了位置P2に到達し、かつ、バケット10の対地角γが放土完了角度γcに到達するまで、所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0090】
図9及び図10を参照して、側部通過用の運搬制御及び側部通過後の放土制御の内容を説明する。図9は、油圧ショベル1と被積込機械200の平面図であり、側部通過用の運搬制御により動作する油圧ショベル1と、側部通過後の放土制御で用いられる放土軌跡について示す。図10は、油圧ショベル1と被積込機械200の側面図であり、側部通過用の運搬制御により移動するバケット10について示す。図9及び図10に示すように、制御トリガスイッチ24が操作された時点の油圧ショベル1の状態を状態S10とする。状態S10でのアーム9の先端部の位置は、積込開始位置P3として設定される。
【0091】
側部通過用の運搬制御は、油圧ショベル1が状態S10から状態S14に至るまでに行われる制御である。側部通過用の運搬制御が開始されると、油圧ショベル1は状態S10から旋回動作とバケット10の上昇動作が行われている最中である状態S11を経由し、状態S12となる。状態S12は、バケット10が荷台201の側部202に至る前の状態であり、アーム9の先端部が干渉防止位置P4に到達した状態である。また、状態S12は、バケット10が側部202と干渉しない高さである干渉防止高さHiaまでアーム9の先端部が上昇した状態である。
【0092】
その後旋回動作によりバケット10の全体が荷台201内に進入し、油圧ショベル1が状態S13になると、バケット10は下降を開始する。その後、アーム9の先端部が放土開始位置P1に至ると、油圧ショベル1の状態は状態S14となる。放土開始位置P1の高さ(以下、放土開始高さとも記す)Hdは、荷台201の底部203の高さHtdと、バケット10の長さLbkを考慮したマージンHmdとの和で表される。荷台201の底部203の高さHtdは、被積込機械位置演算部42により演算される。マージンHmdはバケット長さLbkよりも大きい。放土開始高さHdは、干渉防止高さHiaよりも低い。
【0093】
このように、側部通過用の運搬制御の前半では、アーム9の先端部が干渉防止位置P4及び干渉防止高さHiaに到達するように、旋回動作とブーム8の上げ動作が制御される。また、側部通過用の運搬制御の後半では、バケット10の全体が荷台201内に収まるまで旋回動作が制御され、さらに、アーム9の先端部が放土開始位置P1及び放土開始高さHdに到達するように、旋回動作とブーム8の下げ動作が制御される。なお、側部通過用の運搬制御において、アーム9の角度を調整してもよい。
【0094】
側部通過後の放土制御は、油圧ショベル1が状態S14から状態S15に至るまでに行われる制御である。側部通過後の放土制御において、アクチュエータ制御部47は、ブーム8の下げ動作、アーム9のダンプ動作、バケット10のダンプ動作を指令し、バケット10から掘削物を荷台201に放出する。状態S14から、ブーム8の下げ動作、アーム9のダンプ動作が複合して行われ、アーム9の先端部が直線状の放土軌跡T1(図6A図6B参照)に沿って移動する。アーム9の先端部が放土軌跡T1に沿って移動している間に、バケット10のダンプ動作が行われ、油圧ショベル1の状態が状態S15となる。
【0095】
図11及び図12を参照して、後端部通過用の運搬制御及び放土制御の内容を説明する。図11は、油圧ショベル1と被積込機械200の平面図であり、後端部通過用の運搬制御及び後端部通過後の放土制御により動作する油圧ショベル1と、後端部通過後の放土制御で用いられる放土軌跡T1について示す。図12は、油圧ショベル1と被積込機械200の側面図であり、後端部通過用の運搬制御及び後端部通過後の放土制御により移動するバケット10について示す。図11及び図12に示すように、制御トリガスイッチ24が操作された時点の油圧ショベル1の状態を状態S20とする。状態S20でのアーム9の先端部の位置は、積込開始位置P3として設定される。
【0096】
後端部通過用の運搬制御は、油圧ショベル1が状態S20から状態S22に至るまでに行われる制御である。後端部通過用の運搬制御が開始されると、油圧ショベル1は状態20から旋回動作とバケット10の上昇動作を行い、状態S21となる。状態S21は、バケット10が荷台201の後端部205に至る前の状態であり、アーム9の先端部が干渉防止位置P4に到達した状態である。また、状態S21は、バケット10が後端部205と干渉しない高さである干渉防止高さHibまでアーム9の先端部が上昇した状態である。
【0097】
その後旋回動作によりバケット10の全体が荷台201内に進入し、アーム9の先端部が放土開始位置P1に至ると、油圧ショベル1の状態が状態S22となる。放土開始高さHdは、上述したように、荷台201の底部203の高さHtdとマージンHmdとの和で表される。なお、本実施形態では、底部203の高さHtdは後端部205の高さHtbと同じ値であり、マージンHmdはマージンHmbと同じ値である。つまり、放土開始高さHdと後端部通過用の干渉防止高さHibとは同じ値である。
【0098】
このように、後端部通過用の運搬制御では、アーム9の先端部が干渉防止位置P4及び干渉防止高さHibに到達するように、旋回動作とブーム8の上げ動作が制御される。その後、アーム9の先端部が放土開始位置P1に到達するように、旋回動作が制御される。なお、後端部通過用の運搬制御において、アーム9の角度を調整してもよい。
【0099】
後端部通過後の放土制御は、油圧ショベル1が状態S22から状態S23に至るまでに行われる制御である。後端部通過後の放土制御において、アクチュエータ制御部47は、上部旋回体7の旋回動作、アーム9のクラウド/ダンプ動作、ブーム8の上げ/下げ動作、バケット10のダンプ動作を指令し、バケット10から掘削物を荷台201に放出する。図11に示す例では、状態S22から、上部旋回体7の旋回動作、ブーム8の上げ動作、アーム9のクラウド動作が複合して行われ、アーム9の先端部が直線状の放土軌跡T1に沿って移動する。アーム9の先端部が放土軌跡T1に沿って移動している間に、バケット10のダンプ動作が行われ、油圧ショベル1の状態が状態S23となる。
【0100】
上述した実施形態によれば、次の作用効果を奏する。
【0101】
(1)制御装置40は、掘削動作を完了した位置(積込開始位置P3)での物体位置検出装置(ベッセル位置取得装置)54により取得される荷台(ベッセル)201の位置情報に基づいて、荷台201の上方で行われる掘削物の放土動作(放出動作)を開始する位置である放土開始位置(放出開始位置)P1と、放土動作を完了する位置である放土完了位置(放出完了位置)P2とを、荷台201の前後方向の成分を持った方向に並べて設定する。制御装置40は、姿勢検出装置53により検出される作業装置2及び上部旋回体7の姿勢に基づいて、作業装置2及び上部旋回体7の少なくとも一方の動作を制御することにより、作業装置2の制御点(アーム9の先端部)CPを放土開始位置P1から放土完了位置P2に移動させる。また、制御装置40は、作業装置2の制御点CPが放土開始位置P1から放土完了位置P2に移動するまでの間に、バケット10の対地角γが予め設定される放土完了角度γcになるように、作業装置2の動作を制御する。
【0102】
この構成では、アーム9の先端部が放土開始位置P1から放土完了位置P2に移動するとともに、バケット10から掘削物が放出される。したがって、荷台201の特定の箇所にのみ掘削物が放出されることがない。つまり、本実施形態によれば、被積込機械200への積込作業において、被積込機械200の荷台201上に1回の放土動作で、土砂等の掘削物を偏りなく放出することができる。
【0103】
(2)放土開始位置P1の高さ及び放土完了位置P2の高さは、荷台201の底部203の高さHtdに所定のマージンHmdを加算した高さに設定される。このため、放土作業の際に、バケット10が被積込機械200の荷台201に干渉することが防止される。
【0104】
(3)制御装置40は、荷台201の位置情報及び放土開始位置P1に基づき、作業装置2の制御点CPを荷台201に近づける方向に上部旋回体7を旋回させることにより、作業装置2の制御点CPを放土開始位置P1まで移動させる過程で、バケット10が通過する荷台201の端辺部を判定し、その判定結果に基づき、放土開始位置P1から放土完了位置P2に作業装置2の制御点CPを移動させる過程で、上部旋回体7を旋回動作させるか否かを決定する。
【0105】
バケット10が通過する荷台201の端辺部は側部202であると判定された場合、制御装置40は、上部旋回体7を動作させることなく、作業装置2のみを動作させることにより、作業装置2の制御点CPを放土開始位置P1から放土完了位置P2まで移動させる(図9参照)。一方、バケット10が通過する荷台201の端辺部は後端部205であると判定された場合、制御装置40は、作業装置2と上部旋回体7を複合動作させることにより、作業装置2の制御点CPを放土開始位置P1から放土完了位置P2まで移動させる(図11参照)。
【0106】
この構成では、バケット10が通過する荷台201の端辺部に応じて、作業装置2のみあるいは作業装置2及び上部旋回体7を動作させることにより、適切にバケット10から偏りなく掘削物の放土動作を行うことができる。
【0107】
(4)制御装置40は、制御トリガスイッチ24から積込制御開始指示が入力されると、積込制御開始指示が入力されたときの作業装置2の制御点CPの位置(3次元座標位置)を積込開始位置P3として設定する。制御装置40は、積込開始位置P3から放土開始位置P1まで作業装置2の制御点CPを移動させるための運搬制御を実行する。制御装置40は、制御トリガスイッチ24から積込制御開始指示が入力されると、荷台201の位置情報及び放土開始位置P1に基づき、作業装置2の制御点CPを荷台201に近づける方向に上部旋回体7を旋回させることにより、作業装置2の制御点CPを放土開始位置P1まで移動させる過程で、バケット10が通過する荷台201の端辺部を判定し、その判定結果に基づき、荷台201の端辺部を通過する際の作業装置2の制御点の高さの下限値である干渉防止高さHiを演算する。
【0108】
バケット10が通過する荷台201の端辺部は側部202であると判定された場合、制御装置40は、側部通過用の干渉防止高さHiaを演算する(図10参照)。一方、バケット10が通過する荷台201の端辺部は後端部205であると判定された場合、制御装置40は、後端部通過用の干渉防止高さHibを演算する(図12参照)。
【0109】
この構成によれば、油圧ショベル1と被積込機械200の位置関係がどのような位置関係であっても、作業装置2と被積込機械200とが干渉することなく、作業装置2の制御点CPを放土開始位置P1まで移動させることができる。
【0110】
制御装置40は、上記判定結果に基づき、バケット10が荷台201の端辺部を通過した後、作業装置2の制御点CPを放土開始位置P1まで移動させる過程で、作業装置2の制御点CPを下降させるか否かを決定する。バケット10が通過する荷台201の端辺部は側部202であると判定された場合、制御装置40は、バケット10が荷台201の側部202を通過した後、アーム9の先端部を放土開始位置P1まで移動させる過程で、アーム9の先端部を下降させる(図10参照)。一方、バケット10が通過する荷台201の端辺部は後端部205であると判定された場合、制御装置40は、バケット10が荷台201の後端部205を通過した後、アーム9の先端部を放土開始位置P1まで移動させる過程で、アーム9の先端部を下降させない(図12参照)。荷台201の左右の側部202の高さは、荷台201の後端部205の高さよりも低い。
【0111】
この構成によれば、バケット10を荷台201の左右の側部202を通過させた後、アーム9の先端部を下降させることにより、バケット10を荷台201の底部203に近づけることができる。このため、バケット10から掘削物を荷台201に放出する際、荷台201への衝撃力を小さくして、荷台201の損傷を防止できる。
【0112】
制御装置40は、放土開始位置P1から放土完了位置P2までの作業装置2の制御点CPの目標軌跡である放土軌跡T1を生成する。制御装置40は、放土軌跡T1に沿って作業装置2の制御点CPが移動するように、上部旋回体7、及び作業装置2の少なくとも一方を動作させる。
【0113】
この構成によれば、放土軌跡T1に沿って、偏りなく、掘削物をバケット10から放出することができる。
【0114】
また、放土軌跡T1は直線状である。このため、例えば、荷台201の左右中央に放土軌跡T1を生成することにより、荷台201から掘削物がこぼれることを防止しつつ、掘削物を直線状の放土軌跡T1に沿って放出することができる。
【0115】
<第1実施形態の変形例1>
第1実施形態では、後端部通過後の放土制御において、制御装置40は、直線状の放土軌跡T1に沿ってアーム9の先端部を移動させる例について説明した(図11参照)。しかしながら、放土軌跡T1は直線状とする場合に限定されない。例えば、放土開始位置P1と、放土完了位置P2とは、荷台中心線CLに平行な方向に設定されている必要はなく、荷台201の前後方向の成分を持った方向に並べて設定されていればよい。また、作業装置2の放土軌跡T1は、直線状である必要はなく、放土開始位置P1から放土完了位置P2まで、屈曲していてもよい。例えば、図13に示すように、放土軌跡T1は、旋回中心(原点O)を中心とする円弧状としてもよい。図13に示す例では、状態S22から状態S23に亘ってブーム8及びアーム9の動作は行われず、上部旋回体7の旋回動作とともにバケット10のダンプ動作が行われる。
【0116】
<第1実施形態の変形例2>
第1実施形態では、後端部通過後の放土制御において、制御装置40は、荷台中心線CLに平行な放土軌跡T1に沿ってアーム9の先端部を移動させる例について説明した(図11参照)。本変形例では、図14に示すように、直線状の放土軌跡T1が平面視で荷台中心線CLに交差している。図14に示す例では、状態S22から状態S23に亘って、上部旋回体7の旋回動作とともに、ブーム8の下げ動作、アーム9のダンプ動作、及びバケット10のダンプ動作が行われる。
【0117】
バケット10のダンプ動作によって、バケット10の対地角γは放土方向に変化する。一方で、アーム9のクラウド動作が行われると、バケット10の対地角γは放土方向とは反対方向に変化する。第1実施形態の変形例2(図14参照)に係る制御装置40により生成される放土軌跡T1では、アーム9のクラウド動作を行う必要がない。本変形例に係る制御装置40は、アーム9の先端部(作業装置2の制御点)が放土開始位置P1から放土完了位置P2に移動するまでの間に、アーム9のクラウド動作は行わずに、アーム9のダンプ動作、ブーム8の下げ動作、及びバケット10のダンプ動作が行われるように作業装置2を制御する。これにより、バケット10の対地角γをより早く所定の放土完了角度γcまで変化させることができる。
【0118】
<第2実施形態>
図15図17を参照して、本発明の第2実施形態に係る制御装置40Bについて説明する。なお、第1実施形態で説明した構成と同一もしくは相当する構成には同一の参照記号を付し、相違点を主に説明する。
【0119】
第2実施形態に係る制御装置40Bは、所定の被積込機械200への積込動作において、放土開始位置P1と放土完了位置P2の少なくとも一方の平面位置を、上記所定の被積込機械(すなわち、同じ被積込機械)200に対する放土動作の回数に応じて変化させる。以下、制御装置40Bが、放土開始位置P1及び放土完了位置P2のうち、放土開始位置P1の平面位置のみを放土動作の回数に応じて変更する例について説明する。
【0120】
図15は、図3と同様の図であり、制御装置40Bの機能ブロック図である。図15に示すように、第2実施形態に係る制御装置40Bは、第1実施形態に係る制御装置40の機能に加え、放土実行回数演算部48Bとしての機能を有している。また、制御装置40には運搬物情報取得装置55Bが接続され、制御装置40には運搬物情報取得装置55Bにより取得された運搬情報が入力される。
【0121】
運搬物情報取得装置55Bは、バケット10に格納された運搬物(例えば、掘削された土砂等の掘削物)の質量の情報を取得する装置である。運搬物情報取得装置55Bは、例えば、ブームシリンダ11のボトム室及びロッド室の圧力を検出する圧力センサを含んで構成される。運搬物情報取得装置55Bは、圧力センサにより検出されたブームシリンダ11のボトム室及びロッド室の圧力に基づいて、バケット10内の運搬物の質量を演算する。なお、運搬物情報取得装置55Bは、姿勢検出装置53の検出結果を加味して、バケット10内の運搬物の質量を演算してもよい。
【0122】
放土実行回数演算部48Bは、ある1台の被積込機械200に対して実行された放土動作の回数を演算する。放土実行回数演算部48Bは、運搬物情報取得装置55Bにより取得されたバケット10内の運搬物の質量と、姿勢演算部41により演算された作業装置2及び上部旋回体7の姿勢と、被積込機械位置演算部42により演算された荷台201の位置情報に基づき、バケット10内に掘削物を格納した状態で荷台201の上方で放土動作が行われたか否かを判定する。つまり、放土実行回数演算部48Bは、掘削物が荷台201内に放出されたか否かを判定する。放土実行回数演算部48Bは、ある1台の被積込機械200の荷台201内に掘削物が放出されたと判定される度に、放土動作の回数に1を加算する。
【0123】
放土軌跡生成部44は、放土実行回数演算部48Bにより演算された放土動作の回数に応じた放土軌跡T1を生成する。図16は、被積込機械200の平面図であり、放土動作の回数に応じた放土開始位置P1-1,P1-2,P1-3を示す。図16に示す例では、放土軌跡生成部44は、ある1台の被積込機械200に対して設定される放土開始位置P1を、放土動作の回数に応じて変化させる。
【0124】
放土軌跡生成部44は、放土動作の回数が初期値である0(ゼロ)に設定されている場合、所定の被積込機械200に対する1回目の放土動作の放土開始位置P1-1を荷台201の中央に設定する。放土軌跡生成部44は、放土動作の回数が1に設定されている場合、所定の被積込機械200に対する2回目の放土動作の放土開始位置P1-2を上記放土開始位置P1-1から所定距離だけ被積込機械200の後方の位置に設定する。放土軌跡生成部44は、放土動作の回数が2に設定されている場合、所定の被積込機械200に対する3回目の放土動作の放土開始位置P1-3を上記放土開始位置P1-2から所定距離だけ被積込機械200の後方の位置に設定する。
【0125】
なお、本第2実施形態では、放土完了位置P2は放土動作の回数によらず固定としている。荷台201の底部203は、後端部205から前側の側部202fに向かって徐々に被積込機械200の接地面からの距離が短くなるように(すなわち、徐々に底部203の深さが深くなるように)傾斜していることがある(図6B参照)。本第2実施形態に係る制御装置40Bは、図16に示すように、放土動作の回数が増加するにしたがって、放土開始位置P1の平面位置を後端部205に近づける。すなわち、制御装置40Bは、放土動作の度に、放土開始位置P1を後方にずらず。これにより、荷台201の後部に積み込まれる掘削物の高さが、荷台201の前部に積み込まれる掘削物の高さに比べて高くなってしまうことを防止できる。つまり、荷台201に放出された掘削物の高さを均一にすることができる。これにより、繰り返し放土動作を行った後に行われる掘削物の高さを均す動作の作業効率を向上することができる。
【0126】
なお、放土動作の回数が1ずつ増える度に放土開始位置P1が変更される例について説明したが、放土動作の回数が2以上の所定回数だけ増える度に放土開始位置P1を変更してもよい。また、制御装置40Bは、放土開始位置P1が変更される度に上記所定回数自体を変更してもよい。
【0127】
また、制御装置40Bが、放土開始位置P1及び放土完了位置P2のうち、放土開始位置P1のみを放土動作の回数に応じて変更する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。制御装置40Bは、放土開始位置P1及び放土完了位置P2のうち、放土完了位置P2のみを放土動作の回数に応じて変更してもよい。
【0128】
また、図17に示すように、放土開始位置P1及び放土完了位置P2の双方を放土動作の回数に応じて変更してもよい。図17に示す例では、放土軌跡生成部44は、放土動作の回数が初期値である0(ゼロ)に設定されている場合、所定の被積込機械200に対する1回目の放土動作の放土開始位置P1-1及び放土完了位置P2-1を荷台201の左前方隅部に設定する。放土軌跡生成部44は、放土動作の回数が1に設定されている場合、所定の被積込機械200に対する2回目の放土動作の放土開始位置P1-2及び放土完了位置P2-2を荷台201の右前方隅部に設定する。放土軌跡生成部44は、放土動作の回数が2に設定されている場合、所定の被積込機械200に対する3回目の放土動作の放土開始位置P1-3及び放土完了位置P2-3を荷台201の左後方隅部に設定する。放土軌跡生成部44は、放土動作の回数が3に設定されている場合、所定の被積込機械200に対する4回目の放土動作の放土開始位置P1-4及び放土完了位置P2-4を荷台201の右後方隅部に設定する。
【0129】
図17に示す例で生成される各放土軌跡T1-1,T1-2,T1-3,T1-4のそれぞれの長さは、図6Aで説明した放土軌跡T1の長さに比べて短い。例えば、放土軌跡T1-1,T1-2,T1-3,T1-4のそれぞれの長さは、荷台201の前後方向の寸法の半分よりも短い。また、放土軌跡T1-1,T1-2,T1-3,T1-4のそれぞれの長さは、バケット長さLbkの2倍以下としてもよい。このため、荷台201の四隅に対して、ピンポイントで掘削物を放出することができる。
【0130】
例えば、制御装置40Bには、制御トリガスイッチ24としての第1トリガスイッチと第2トリガスイッチが接続される。制御装置40Bは、第1トリガスイッチが操作されると、第1実施形態で説明した放土軌跡T1に沿ってアーム9の先端部を移動させる。また、制御装置40Bは、第2トリガスイッチが操作されると、図17に示すように、荷台201の四隅のいずれかに対して放土動作を行う。
【0131】
この構成によれば、荷台201が空の状態において、オペレータが第1トリガスイッチを操作することにより、荷台中心線CL上に多くの掘削物を放出することができる。この放土動作は、第1トリガスイッチが操作される度に、繰り返し実行される。その後、オペレータが第2トリガスイッチを操作すると、荷台201の四隅のいずれかに対して放土動作が行われる。第2トリガスイッチが操作される度に、荷台201の四隅のいずれかに対して順番に放土動作が実行される。これにより、荷台201の全体に対して均一に掘削物を積み込むことができる。
【0132】
<第2実施形態の変形例1>
第2実施形態では、制御装置40Bが、放土開始位置P1及び放土完了位置P2の少なくとも一方の平面位置を放土動作の回数に応じて変更する例について説明した。これに対して、本変形例では、制御装置40Bが、放土開始位置P1及び放土完了位置P2の少なくとも一方の高さ(Z方向の位置)を放土動作の回数に応じて変更する。
【0133】
図18は、被積込機械200の側面図であり、放土動作の回数に応じた放土完了位置P2-1,P2-2,P2-3を示す。図18に示す例では、放土軌跡生成部44は、ある1台の被積込機械200に対して設定される放土完了位置P2を、放土動作の回数に応じて変化させる。
【0134】
放土軌跡生成部44は、放土動作の回数が初期値である0(ゼロ)に設定されている場合、所定の被積込機械200に対する1回目の放土動作の放土完了位置P2-1を放土開始位置P1よりも下方に設定する。例えば、放土軌跡生成部44は、放土完了位置P2-1から底部203まで伸びる鉛直方向の仮想直線の長さが、放土開始位置P1から底部203まで延びる鉛直方向の仮想直線の長さと等しくなるように、放土完了位置P2-1を設定する。
【0135】
放土軌跡生成部44は、放土動作の回数が1に設定されている場合、所定の被積込機械200に対する2回目の放土動作の放土完了位置P2-2を上記放土完了位置P2-1から所定距離だけ上方の位置に設定する。放土軌跡生成部44は、放土動作の回数が2に設定されている場合、所定の被積込機械200に対する3回目の放土動作の放土完了位置P2-3を上記放土完了位置P2-2から所定距離だけ上方の位置に設定する。例えば、放土軌跡生成部44は、放土完了位置P2-3の地面Gからの高さ(Z座標)が、放土開始位置P1-1の地面Gからの高さ(Z座標)と等しくなるように、放土完了位置P2-3を設定する。
【0136】
上述したように、荷台201の底部203は、後端部205から前側の側部202fに向かって徐々に被積込機械200の接地面からの距離が短くなるように(すなわち、徐々に底部203の深さが深くなるように)傾斜していることがある。そのため、本変形例に係る制御装置40Bは、図18に示すように、放土動作の回数が増加するにしたがって、放土完了位置P2の高さを高くする。これにより、バケット10から放出された掘削物の荷台201に対する衝撃力を抑制することができる。その結果、荷台201の損傷を防止することができる。
【0137】
以上のとおり、第2実施形態及び第2実施形態の変形例に係る制御装置40Bは、所定の被積込機械200への積込動作において、放土開始位置P1と放土完了位置P2の少なくとも一方を、所定の被積込機械200に対する放土動作の回数に応じて変化させる。これにより、荷台201に積み込まれる掘削物の高さを均一にすることができる。
【0138】
次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、上述の異なる実施形態で説明した構成同士を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせることも可能である。
【0139】
<変形例1>
上記実施形態では、掘削作業を終了した後に、オペレータが制御トリガスイッチ24を操作することにより、積込作業を自動で行う積込制御が開始される例を説明した。しかしながら、本発明は、オペレータの操作によらず、掘削作業から積込作業に自動で移行する油圧ショベル1に適用してもよい。例えば、制御装置40は、掘削作業を自動で行う掘削制御が終了したか否かを判定し、掘削制御が終了したと判定された場合に、積込制御開始指示を生成する掘削終了判定部を備えていてもよい。この場合、積込制御開始指示が、バケット通過位置判定部43、放土軌跡生成部44、及び目標動作演算部45に入力されると、積込制御が開始される。
【0140】
なお、掘削制御の終了の判定方法は、種々の方法を採用できる。例えば、制御装置40,40Bは、バケット10内に掘削物が存在し、かつ、作業装置2が予め定められた掘削完了姿勢となっている場合に、掘削制御が終了したと判定する。また、制御装置40,40Bは、バケット10内に掘削物が存在し、掘削作業のための油圧アクチュエータへの動作指令が出力されていない状態である場合に、掘削制御が終了したと判定してもよい。バケット10内に掘削物が存在しているか否かは、第2実施形態で説明した運搬物情報取得装置55Bでの運搬物の質量に基づき判定可能である。
【0141】
<変形例2>
第1実施形態では、側部通過後の放土制御において、制御装置40は、上部旋回体7の旋回動作を行うことなく、作業装置2のみ動作させることにより、アーム9の先端部を放土軌跡T1に沿って移動させる例について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されない。側部通過後の放土制御において、制御装置40は、上部旋回体7の旋回動作を行ってもよい。少なくとも、側部通過後の放土制御での上部旋回体7の旋回動作角度が、後端部通過後の放土制御での上部旋回体7の旋回動作角度に比べて小さくなればよい。
【0142】
<変形例3>
上記実施形態では、油圧ショベル1に対する被積込機械200の荷台(ベッセル)201の位置情報を取得するベッセル位置取得装置が、物体位置検出装置54である例について説明したが、本発明はこれに限定されない。
【0143】
ベッセル位置取得装置は、作業現場において管理事務所等のサーバで取得されている被積込機械200の荷台201の位置情報を通信装置を介して取得する構成であってもよい。制御装置40は、グローバル座標系における被積込機械200の荷台201の位置座標(Xg,Yg,Zg)及び向きを通信装置を介して取得する。制御装置40は、油圧ショベル1に取り付けられたGNSS(Global Navigation Satellite System)アンテナを含む測位装置から、グローバル座標系における油圧ショベル1の位置座標(Xg,Yg,Zg)及び方位(向き)を取得する。制御装置40は、グローバル座標系における荷台201及び油圧ショベル1の位置座標を油圧ショベル1のショベル基準座標系における位置座標(X,Y,Z)に変換してもよい。なお、本変形例において、ベッセル位置取得装置が、グローバル座標系に基づく位置座標を取得する例について説明したが、現場基準の座標系(ローカル座標系)に基づく位置座標を取得してもよい。
【0144】
<変形例4>
上記実施形態では、アーム9の先端部が作業装置2の制御点CPとして設定される例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、バケット10の先端部が作業装置2の制御点CPとして設定されていてもよい。
【0145】
<変形例5>
上記実施形態では、制御装置40,40Bは、放土軌跡T1を生成し、放土軌跡T1に沿ってアーム9の先端部が移動するように、各油圧アクチュエータの動作を制御する例について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されない。制御装置40,40Bは、放土開始位置P1から放土完了位置P2に亘って下限値を設定し、アーム9の先端部が下限値を下回らないように、各油圧アクチュエータの動作を制御してもよい。
【0146】
<変形例6>
上記実施形態では、作業装置2により掘削された掘削物が積み込まれるベッセルが、運搬車両の荷台201である例について説明したが、本発明はこれに限定されない。ベルトコンベア上に載置されるベッセルに掘削物を積み込む場合に適用してもよい。
【0147】
<変形例7>
上記実施形態では、アーム9の先端部にバケット10を後向きに取り付けたバックホウショベルを作業機械の一例として説明したが、本発明はこれに限定されない。作業機械は、アーム9の先端部にバケット10を前向きに取り付けたローディングショベルであってもよい。
【0148】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0149】
1…油圧ショベル(作業機械)、2…作業装置、3…車体(機械本体)、5…下部走行体、6…旋回油圧モータ(油圧アクチュエータ)、7…上部旋回体、8…ブーム、9…アーム、10…バケット、11…ブームシリンダ(油圧シリンダ、油圧アクチュエータ)、12…アームシリンダ(油圧シリンダ、油圧アクチュエータ)、13…バケットシリンダ(油圧シリンダ、油圧アクチュエータ)、14…ブーム角度センサ(姿勢センサ)、15…アーム角度センサ(姿勢センサ)、17…バケット角度センサ(姿勢センサ)、18…傾斜角度センサ(姿勢センサ)、19…旋回角度センサ(姿勢センサ)、20,21…操作装置、24…制御トリガスイッチ、40,40B…制御装置、41…姿勢演算部、42…被積込機械位置演算部、43…バケット通過位置判定部、44…放土軌跡生成部、45…目標動作演算部、46…弁制御部、47…アクチュエータ制御部、48B…放土実行回数演算部、50…油圧駆動システム、51…電磁比例弁、52…操作量センサ、53…姿勢検出装置、54…物体位置検出装置(ベッセル位置取得装置)、55B…運搬物情報取得装置、56…操作検出装置、57…入力装置、71…運転室、100…パイロットライン、101…流量制御弁、102…メインポンプ、103…エンジン、104…パイロットポンプ、200…被積込機械、201…荷台(ベッセル)、202…側部、202f…前側の側部(端辺部)、202l…左側の側部(端辺部)、202r…右側の側部(端辺部)、203…底部、205…後端部(端辺部)、CL…荷台中心線、CP…作業装置の制御点(アームの先端部)、P1…放土開始位置(放出開始位置)、P2…放土完了位置(放出完了位置)、P3…積込開始位置、P4…干渉防止位置、T1…放土軌跡(目標軌跡)、γ…バケットの対地角、γc…放土完了角度(放出完了角度)
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18