IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本発條株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-コイルばねの製造方法 図1
  • 特開-コイルばねの製造方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054698
(43)【公開日】2024-04-17
(54)【発明の名称】コイルばねの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C21D 9/02 20060101AFI20240410BHJP
   B21F 35/00 20060101ALI20240410BHJP
   C21D 1/40 20060101ALI20240410BHJP
   C21D 1/09 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
C21D9/02 A
B21F35/00 A
C21D1/40 Z
C21D1/09 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161106
(22)【出願日】2022-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹田 和也
【テーマコード(参考)】
4E070
4K042
【Fターム(参考)】
4E070AB09
4E070BC14
4E070EA05
4K042AA02
4K042BA13
4K042DA01
4K042DA02
4K042DA03
4K042DB02
4K042DD03
4K042DE02
4K042EA01
(57)【要約】
【課題】品質のばらつきを抑制することができるコイルばねの製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明に係るコイルばねの製造方法は、線材からなる母材を処理してなるコイルばねの製造方法であって、母材に対して冷間成形を行って、螺旋状をなす成形材を作製する冷間成形ステップと、成形材に対して焼入れを施す焼入れステップと、焼入れ後の成形材に対して通電加熱によって焼戻しを施す通電焼戻しステップと、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線材からなる母材を処理してなるコイルばねの製造方法であって、
前記母材に対して冷間成形を行って、螺旋状をなす成形材を作製する冷間成形ステップと、
前記成形材に対して焼入れを施す焼入れステップと、
前記焼入れ後の成形材に対して通電加熱によって焼戻しを施す通電焼戻しステップと、
を含むことを特徴とするコイルばねの製造方法。
【請求項2】
前記母材に伸線加工を施して伸線材とする伸線材生成ステップ、
をさらに含み、
前記冷間成形ステップは、前記伸線材に対して冷間成形を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載のコイルばねの製造方法。
【請求項3】
前記焼入れステップは、加熱した水溶性焼入れ剤に前記成形材を浸漬させて焼入れを施す、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のコイルばねの製造方法。
【請求項4】
前記焼入れステップの前に行われ、前記伸線材に対して通電加熱を行う通電加熱ステップ、
をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載のコイルばねの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルばねの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コイルばねを作製する工程では、熱間成形や冷間成形が採用される。このうち、熱間成形は、太い線材の成形が可能であるが、成形する形状の自由度が小さい。一方、冷間成形は、成形する形状の自由度が高いものの、太い線材の成形が困難であった。形状の自由度が高く、かつ太い線材の成形が可能な技術として、線材を冷間成形した後、焼入れ、焼戻しを行う技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭63-059775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、焼戻しを電気炉やガス炉によって実施しており、熱効率が悪く、炉内の温度が均一にならない場合があり、作製されるコイルばねの品質がばらつくことがあった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、品質のばらつきを抑制することができるコイルばねの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るコイルばねの製造方法は、線材からなる母材を処理してなるコイルばねの製造方法であって、前記母材に対して冷間成形を行って、螺旋状をなす成形材を作製する冷間成形ステップと、前記成形材に対して焼入れを施す焼入れステップと、前記焼入れ後の成形材に対して通電加熱によって焼戻しを施す通電焼戻しステップと、を含むことを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係るコイルばねの製造方法は、上記発明において、前記母材に伸線加工を施して伸線材とする伸線材生成ステップ、をさらに含み、前記冷間成形ステップは、前記伸線材に対して冷間成形を行う、ことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係るコイルばねの製造方法は、上記発明において、前記焼入れステップは、加熱した水溶性焼入れ剤に前記成形材を浸漬させて焼入れを施す、ことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係るコイルばねの製造方法は、上記発明において、前記焼入れステップの前に行われ、前記伸線材に対して通電加熱を行う通電加熱ステップ、をさらに含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、品質のばらつきを抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の一実施の形態に係る製造方法によって作製されるコイルばねの構成を示す図である。
図2図2は、本発明の一実施の形態に係るコイルばねの製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」という)を説明する。なお、図面は模式的なものであって、各部分の厚みと幅との関係、それぞれの部分の厚みの比率などは現実のものとは異なる場合があり、図面の相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれる場合がある。
【0013】
(実施の形態)
本発明の一実施の形態に係る製造方法によって作製されるコイルばねの構成を示す図である。コイルばね1は、線材を螺旋状に巻回することによって作製される。コイルばね1は、例えば、金属や合金からなる線材を用いて作製される。
【0014】
続いて、コイルばね1の製造方法について、図2を参照して説明する。図2は、本発明の一実施の形態に係るコイルばねの製造方法を説明するための図である。コイルばね1は、母材を加工することによって作製される。
【0015】
まず、線材からなる母材100(図2の(a)参照)に対し、伸線加工を施して、伸線材101を得る(図2の(b)参照)。この際、母材100(伸線材101)には熱処理は施されず、伸線機を用いて、例えばダイスを通過させることによって線材の径を細くすることによって、設計した径の線材(伸線材101)を得る。
【0016】
その後、冷間成形によって伸線材101を成形する(図2の(c)参照)。具体的には、巻線機200を用いて伸線材101を巻回する。この巻線機200は、例えば、巻回ピンや、切断ツールを備え、伸線材101を巻回ピンに接触させて成形するとともに、切断ツールによって伸線材101を所定の長さで切断する。
【0017】
伸線材101を巻回、切断して得られる成形材102に対し、通電加熱を行う(図2の(d)参照)。通電加熱は、成形材102の一端に第1通電部材211、他端に第2通電部材212を取り付け、該第1通電部材211および第2通電部材212に電流を流すことによって成形材102に通電する。この通電によって熱が発生し、成形材102が加熱される。
【0018】
成形材102の通電加熱後、この成形材102に焼入れを施す(図2の(e)参照)。水溶性焼入れ剤222を収容した槽221に成形材102を浸漬させる。この際、水溶性焼入れ剤は、適切な熱処理品質を得られるように温度ならびに濃度を管理している。成形材102の水溶性焼入れ剤222への浸漬によって、焼入れが施された成形材103が得られる。なお、水溶性焼入れ剤222に代えて油を用いてもよい。
【0019】
焼入れ後、成形材103に対し、焼戻しのための通電加熱(通電焼戻し)を行う(図2の(f)参照)。通電焼戻しは、成形材103の一端に第1通電部材231、他端に第2通電部材232を取り付け、該第1通電部材231および第2通電部材232に電流を流すことによって成形材103に通電する。この通電によって熱が発生し、成形材103が加熱される。通電焼戻しでは、成形材103を所定の硬さとするために再加熱するための通電条件が設定される。
【0020】
上述した流れで母材100を処理することによって、図1に示すコイルばね1が作製される。
ここで、伸線加工の前後に焼鈍処理を施すようにしてもよい。また、母材の状態において線径が設計したものである場合には、伸線加工を行わずに、母材100に対して冷間成形を行うことが可能である。
【0021】
以上説明した本発明の実施の形態では、硬度等を調整する焼戻し処理を通電加熱によって行っているため、成形材103全体がむらなく加熱され、その結果、成形材103全体の硬度を均一に調整することができる。また、通電焼戻しを行うことによって、成形材103間の形状のばらつきが抑制され、形状の成形精度を向上させることができる。本実施の形態によれば、焼戻し処理を通電加熱とすることによって、品質のばらつきを抑制することができる。また、コイルばね1の製造において、歩留まりを向上させることができる。
【0022】
また、本実施の形態によれば、通電焼戻しを行うことによって、炉を用いて焼戻しする場合と比して、焼戻しに要する時間を短縮することができ、また、二酸化炭素排出量を削減することができる。
【0023】
ここまで、本発明を実施するための形態を説明してきたが、本発明は上述した実施の形態によってのみ限定されるべきものではない。
【0024】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含みうるものであり、特許請求の範囲により特定される技術的思想を逸脱しない範囲内において種々の設計変更等を施すことが可能である。
【0025】
以上説明したように、本発明に係るコイルばねの製造方法は、品質のばらつきを抑制するのに好適である。
【符号の説明】
【0026】
1 コイルばね
100 母材
101 伸線材
102、103 成形材
図1
図2