(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054713
(43)【公開日】2024-04-17
(54)【発明の名称】内燃機関の制御装置
(51)【国際特許分類】
F02D 41/30 20060101AFI20240410BHJP
F01N 3/18 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
F02D41/30
F01N3/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161124
(22)【出願日】2022-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 晋之介
【テーマコード(参考)】
3G091
3G301
【Fターム(参考)】
3G091AB01
3G091BA01
3G091BA32
3G091CB03
3G091DB10
3G091EA18
3G301JA21
3G301MA19
3G301NE11
3G301NE12
3G301PB05Z
3G301PD12Z
(57)【要約】
【課題】触媒を早期に暖機することができる内燃機関の制御装置を提供すること。
【解決手段】内燃機関から排出された排気ガスを浄化する触媒と、内燃機関に燃料を噴射するインジェクタとを備えた内燃機関の制御装置であって、インジェクタの燃料噴射タイミングを制御する制御部を備え、制御部は、触媒が未活性状態である場合には、内燃機関の排気行程で燃料噴射するように燃料噴射タイミングを制御し、触媒が未活性状態と完全活性状態との間の活性状態である場合には、内燃機関の吸気行程で燃料噴射するように燃料噴射タイミングを制御し、触媒が完全活性状態である場合には、内燃機関の燃費が最適となるタイミングで燃料噴射するように燃料噴射タイミングを制御する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排出された排気ガスを浄化する触媒と、前記内燃機関に燃料を噴射する燃料噴射弁と、を備えた内燃機関の制御装置であって、
前記燃料噴射弁から燃料を噴射する燃料噴射タイミングを制御する制御部を備え、
前記制御部は、
前記触媒が未活性状態である場合には、前記内燃機関の排気行程で燃料噴射するように前記燃料噴射弁の燃料噴射タイミングを制御し、
前記触媒が前記未活性状態と完全活性状態との間の活性状態である場合には、前記内燃機関の吸気行程で燃料噴射するように前記燃料噴射弁の燃料噴射タイミングを制御し、
前記触媒が前記完全活性状態である場合には、前記内燃機関の燃費が最適となるタイミングで燃料噴射するように前記燃料噴射弁の燃料噴射タイミングを制御することを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記触媒の温度である触媒温度を取得する触媒温度取得部を備え、
前記制御部は、
前記触媒温度取得部により取得された前記触媒温度が、前記触媒が前記活性状態であると判断できる触媒温度の下限値である触媒活性判定温度未満である場合には、前記触媒が前記未活性状態であると判定し、
前記触媒温度取得部により取得された前記触媒温度が、前記触媒活性判定温度以上、かつ前記触媒が前記完全活性状態であると判断できる触媒温度の下限値である最大浄化率温度未満である場合には、前記触媒が前記活性状態であると判定し、
前記触媒温度取得部により取得された前記触媒温度が、前記最大浄化率温度以上である場合には、前記触媒が完全活性状態であると判定することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記排気行程で燃料噴射する場合、前記排気ガス中の有害物質の量を最も低減できる進角量に設定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記吸気行程で燃料噴射する場合、触媒反応熱が最も増大する遅角量に設定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の内燃機関の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、触媒早期暖機制御の初期に内燃機関の燃焼温度が高くなるように空燃比を制御する第1段階の暖機制御と、この第1段階の暖機制御により触媒が排出ガス中のリッチ成分を酸化浄化し始めてから半暖機状態になるまでの期間に触媒の酸化反応を促進させるように空燃比を弱リーンに制御する第2段階の暖機制御と、触媒が半暖機状態から完全暖機状態になるまでの期間に空燃比をリーンとリッチに交互に変化させるディザ制御を行う第3段階の暖機制御を行う内燃機関の触媒早期暖機制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、自動車排出ガス規制の厳しさが増してきており、こうした自動車排出ガス規制に対応するためには、触媒の早期活性化が不可欠である。
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に記載の内燃機関の触媒早期暖機制御装置にあっては、触媒の早期暖機を実現するにあたり、触媒の昇温に限度があるといった課題があった。
【0006】
本発明は、上述のような事情に鑑みてなされたもので、触媒を早期に暖機することができる内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するため、内燃機関から排出された排気ガスを浄化する触媒と、前記内燃機関に燃料を噴射する燃料噴射弁と、を備えた内燃機関の制御装置であって、前記燃料噴射弁から燃料を噴射する燃料噴射タイミングを制御する制御部を備え、前記制御部は、前記触媒が未活性状態である場合には、前記内燃機関の排気行程で燃料噴射するように前記燃料噴射弁の燃料噴射タイミングを制御し、前記触媒が前記未活性状態と完全活性状態との間の活性状態である場合には、前記内燃機関の吸気行程で燃料噴射するように前記燃料噴射弁の燃料噴射タイミングを制御し、前記触媒が前記完全活性状態である場合には、前記内燃機関の燃費が最適となるタイミングで燃料噴射するように前記燃料噴射弁の燃料噴射タイミングを制御する構成を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、触媒を早期に暖機することができる内燃機関の制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例に係る内燃機関及びその制御装置の概略構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例に係る内燃機関の制御装置によって実行される内燃機関の始動時の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、本発明の一実施例に係る内燃機関の制御装置による触媒暖機制御実行時のタイミングチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施の形態に係る内燃機関の制御装置は、内燃機関から排出された排気ガスを浄化する触媒と、内燃機関に燃料を噴射する燃料噴射弁と、を備えた内燃機関の制御装置であって、燃料噴射弁から燃料を噴射する燃料噴射タイミングを制御する制御部を備え、制御部は、触媒が未活性状態である場合には、内燃機関の排気行程で燃料噴射するように燃料噴射弁の燃料噴射タイミングを制御し、触媒が未活性状態と完全活性状態との間の活性状態である場合には、内燃機関の吸気行程で燃料噴射するように燃料噴射弁の燃料噴射タイミングを制御し、触媒が完全活性状態である場合には、内燃機関の燃費が最適となるタイミングで燃料噴射するように燃料噴射弁の燃料噴射タイミングを制御することを特徴とする。
【実施例0011】
以下、本発明の一実施例に係る内燃機関の制御装置について図面を参照して説明する。
【0012】
図1に示すように、本発明の一実施例に係る内燃機関1は、例えば直列4気筒のガソリンエンジンで構成されている。なお、内燃機関1の気筒数は4気筒に限られない。
【0013】
内燃機関1は、シリンダブロック2と、シリンダブロック2の上部に締結されたシリンダヘッド3とを含んで構成されている。シリンダブロック2には、シリンダ5が形成されている。シリンダ5には、シリンダ5内を上下に往復動可能なピストン6が収納されている。また、シリンダ5の上部には、燃焼室7が設けられている。
【0014】
内燃機関1は、シリンダ5内でピストン6が往復する間に、吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程からなる一連の4行程を行う、いわゆる4サイクルのガソリンエンジンである。
【0015】
ピストン6は、コネクティングロッド8を介してクランクシャフト9に連結されている。コネクティングロッド8は、ピストン6の往復運動をクランクシャフト9の回転運動に変換する。
【0016】
シリンダヘッド3には、点火プラグ10と、吸気ポート11と、排気ポート12とが設けられている。点火プラグ10は、燃焼室7内に電極を突出させた状態でシリンダヘッド3に設けられ、図示しないイグナイタによってその点火時期が調整される。
【0017】
吸気ポート11は、燃焼室7と後述する吸気通路16aとを連通している。吸気ポート11には、吸気バルブ14が設けられている。排気ポート12は、燃焼室7と後述する排気通路26aとを連通している。排気ポート12には、排気バルブ24が設けられている。
【0018】
吸気バルブ14及び排気バルブ24は、クランクシャフト9との間に巻き掛けられた図示しないタイミングチェーンまたはタイミングベルトによって開閉される。
【0019】
また、シリンダヘッド3の吸気ポート11側には、吸気管16が接続されている。吸気管16の内部には、吸気ポート11と連通する吸気通路16aが形成されている。吸気通路16aには、電子制御式のスロットルバルブ18が設けられている。
【0020】
スロットルバルブ18は、後述するECU50に電気的に接続されている。したがって、スロットルバルブ18は、ECU50からの指令信号に応じてスロットル開度が制御されることで、内燃機関1の吸入空気量を調整する。
【0021】
また、内燃機関1は、インジェクタ13を備えている。インジェクタ13は、ポート噴射式の燃料噴射弁であり、図示しない燃料タンクから燃料ポンプによって圧送された燃料を、吸気ポート11を介して燃焼室7に噴射する。
【0022】
このように構成された内燃機関1において、吸気通路16aを通過する空気は、スロットルバルブ18により流量が調整された後、吸気ポート11に導入される。そして、吸気ポート11に導入された空気は、インジェクタ13から噴射された燃料と混合され、燃焼室7に導入される。
【0023】
シリンダヘッド3の排気ポート12側には、排気管26が接続されている。排気管26の内部には、排気ポート12と連通する排気通路26aが形成されている。排気通路26a上には、触媒27が設けられている。触媒27は、燃焼室7から排出された排気ガスを浄化する。触媒27は、排気ガス中に含まれる有害物質である炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)を同時に浄化する三元触媒からなる。
【0024】
上述のように構成された内燃機関1は、内燃機関の制御装置としてのECU(Engine Control Unit)50によってその運転状態が制御されるようになっている。ECU50は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えるマイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUは、RAMの一時記憶機能を利用するとともにROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うようになっている。ROMには、各種制御定数や各種マップ等が予め記憶されている。
【0025】
ECU50の入力側には、CAN等の規格の通信ラインを介して、水温センサ28、O2センサ29、排気温センサ30、クランク角センサ32、吸気温センサ41、エアフローセンサ42、アクセル開度センサ43等の各種センサ類が接続されている。
【0026】
水温センサ28は、シリンダブロック2に形成されたウォータジャケット2a内を流通する冷却水の温度(冷却水温度)、すなわちエンジン水温を検出する。
【0027】
O2センサ29は、触媒27よりも排気方向上流側に設けられている。O2センサ29は、空燃比に対して理論空燃比を基準にしてリッチ側とリーン側とで出力が急変する出力特性を有する酸素センサである。なお、酸素センサとしては、O2センサ29に代えて、空燃比に対してリニアな出力特性を有するA/Fセンサを用いてもよい。
【0028】
排気温センサ30は、内燃機関1から排出され触媒27に流入する排気ガスの温度(以下、「排気温」という)を検出し、検出信号をECU50に出力する。
【0029】
クランク角センサ32は、クランクシャフト9の回転角度を検出し、検出信号をECU50に出力する。ECU50は、クランク角センサ32から入力された検出信号に基づきエンジン回転速度を算出する。
【0030】
吸気温センサ41は、吸気通路16aにおけるスロットルバルブ18の上流側を通過する空気の温度(吸気温度)を検出し、検出信号をECU50に出力する。
【0031】
エアフローセンサ42は、吸気通路16aにおけるスロットルバルブ18の下流側を通過する空気の量(吸入空気量)を検出し、検出信号をECU50に出力する。
【0032】
アクセル開度センサ43は、図示しないアクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度)を検出し、検出信号をECU50に出力する。
【0033】
ECU50の出力側には、CAN等の規格の通信ラインを介して、前述した点火プラグ10、インジェクタ13、スロットルバルブ18等の各種装置が接続されている。
【0034】
ECU50は、ドライバによる操作や内燃機関1の運転状態等に基づいて、点火プラグ10、インジェクタ13及びスロットルバルブ18を制御する。また、ECU50は、通信ラインを介して各種のセンサ、アクチュエータ及び他の制御ユニットと通信する通信機能を有する。
【0035】
ECU50は、インジェクタ13への通電を制御することで、内燃機関1への燃料噴射時期すなわち燃料噴射タイミング、及び、燃料噴射量を制御する制御部51としての機能を有する。ECU50は、後述するように触媒暖機制御中に燃料噴射タイミングの切替を行うようになっている。
【0036】
ECU50は、排気温センサ30により検出した排気温に基づき、触媒温度モデルを用いた演算により触媒温度を推定し、その推定した触媒温度を触媒27の触媒温度Tcatとして取得する触媒温度取得部52としての機能を有する。触媒温度モデルを用いた演算式は、ECU50のROMに記憶されている。ECU50は、内燃機関1の運転状態に基づき、触媒温度モデルを用いた演算により触媒温度を推定してもよい。
【0037】
ECU50は、後述する燃料噴射タイミングの切替に応じて、当該触媒温度モデルを用いて演算する触媒温度が変化するように構成されている。このように構成されているのは、燃料噴射タイミングが変更されることで触媒反応熱が変化し、その結果、触媒温度に変化が生じるからである。
【0038】
ECU50は、触媒暖機実行条件が成立した場合に、触媒27の暖機を促進させるための触媒暖機制御を実行する触媒暖機実行部53としての機能を有する。触媒暖機実行条件は、内燃機関1が冷機状態で始動されているときに成立し、例えば、エンジン水温が所定温度未満である場合に成立する。触媒暖機実行条件には、エンジン水温の条件に加えて吸気温や外気温の条件も加えてもよい。
【0039】
触媒暖機制御では、触媒27の暖機を促進させるために、インジェクタ13の燃料噴射タイミングを変更する制御が行われる。
【0040】
ECU50は、上述した触媒暖機制御の実行中に、触媒27の状態すなわち活性の度合いに応じて、燃料噴射タイミングを切り替えるようになっている。具体的には、触媒温度に基づき燃料噴射タイミングを切り替える。
【0041】
ECU50は、触媒温度取得部52により取得された触媒温度Tcatが触媒活性判定温度Tact未満である場合には、触媒27が未活性状態であると判定するようになっている。触媒活性判定温度Tactは、触媒27が活性状態であると判断できる触媒温度の下限値であり、予め実験的に求めてECU50のROMに記憶されている。
【0042】
ECU50は、触媒温度取得部52により取得された触媒温度Tcatが触媒活性判定温度Tact以上、かつ最大浄化率温度Tmax未満である場合には、触媒27が未活性状態と完全活性状態との間の活性状態であると判定するようになっている。最大浄化率温度Tmaxは、触媒27が完全活性状態であると判断できる触媒温度の下限値であり、予め実験的に求めてECU50のROMに記憶されている。
【0043】
ECU50は、触媒温度取得部52により取得された触媒温度Tcatが最大浄化率温度Tmax以上である場合には、触媒27が完全活性状態であると判定するようになっている。
【0044】
ECU50は、上述のように触媒27が未活性状態であると判定した場合には、内燃機関1の排気行程で燃料噴射するようにインジェクタ13の燃料噴射タイミングを制御するようになっている。
【0045】
ECU50は、上述のように触媒27が活性状態であると判定した場合には、内燃機関1の吸気行程で燃料噴射するようにインジェクタ13の燃料噴射タイミングを制御するようになっている。
【0046】
ECU50は、上述のように触媒27が完全活性状態であると判定した場合には、内燃機関1の燃費が最適となるタイミングで燃料噴射するようにインジェクタ13の燃料噴射タイミングを制御するようになっている。
【0047】
次に、
図2のフローチャートを参照して、本実施例に係るECU50によって実行される内燃機関1の始動時の処理の流れについて説明する。この始動時の処理は、所定の短い周期で繰り返し実行される。
【0048】
図2に示すように、ECU50は、触媒暖機実行条件が成立しているか否かを判定する(ステップS1)。
【0049】
ECU50は、ステップS1において触媒暖機実行条件が成立していないと判定した場合には、インジェクタ13の燃料噴射タイミングを通常時の燃料噴射タイミングに制御して(ステップS7)、本処理を終了する。
【0050】
通常時の燃料噴射タイミングは、内燃機関1が完全暖機状態であるときに最も燃費が良くなる燃料噴射タイミングである。
【0051】
ECU50は、ステップS1において触媒暖機実行条件が成立していると判定した場合には、内燃機関1の運転モードとして、触媒27の暖機が必要な暖機モードに設定する(ステップS2)。
【0052】
次いで、ECU50は、触媒温度取得部52により取得された触媒温度Tcatが触媒活性判定温度Tact未満であるか否かを判定する(ステップS3)。
【0053】
ECU50は、ステップS3において触媒温度Tcatが触媒活性判定温度Tact未満であると判定した場合には、触媒27が未活性状態であると判断して、インジェクタ13の燃料噴射タイミングを内燃機関1の排気行程に制御して(ステップS4)、処理をステップS8に移行する。
【0054】
ECU50は、ステップS3において触媒温度Tcatが触媒活性判定温度Tact未満でないと判定した場合には、触媒温度Tcatが触媒活性判定温度Tact以上、かつ最大浄化率温度Tmax未満であるか否かを判定する(ステップS5)。
【0055】
ECU50は、ステップS5において触媒温度Tcatが触媒活性判定温度Tact以上、かつ最大浄化率温度Tmax未満でないと判定した場合には、インジェクタ13の燃料噴射タイミングを通常時の燃料噴射タイミングに制御して(ステップS7)、本処理を終了する。
【0056】
ECU50は、ステップS5において触媒温度Tcatが触媒活性判定温度Tact以上、かつ最大浄化率温度Tmax未満であると判定した場合には、インジェクタ13の燃料噴射タイミングを内燃機関1の吸気行程に制御して(ステップS6)、処理をステップS8に移行する。
【0057】
ステップS8において、ECU50は、触媒27の暖機が完了したか否かを判定する。ECU50は、ステップS8において触媒27の暖機が完了していないと判定した場合には、処理をステップS1に戻す。ECU50は、ステップS8において触媒27の暖機が完了していると判定した場合には、触媒暖機モードを解除して、本処理を終了する。
【0058】
次に、
図3を参照して、触媒暖機制御実行時のタイミングチャートについて説明する。
【0059】
図3において、実線は、本実施例に係る内燃機関の制御装置による触媒暖機制御実行時の各パラメータの遷移を示しており、破線は、触媒温度に応じて燃料噴射タイミングの切替を行わない比較例に係る内燃機関の制御装置による触媒暖機制御実行時の各パラメータの遷移を示している。
【0060】
図3に示すように、時刻t1において、内燃機関1が始動されると、エンジン回転数が上昇するとともに、触媒暖機実行条件が成立し触媒暖機制御が開始される。これに伴い触媒温度が上昇し始める。
【0061】
このとき、触媒温度Tcatが触媒活性判定温度Tact未満であるため、触媒27が未活性状態であると判断され、内燃機関1の排気行程で燃料噴射するようにインジェクタ13の燃料噴射タイミングが進角側に制御されている。
【0062】
ここでの燃料噴射タイミングの進角量は、ECU50によって、排気行程で燃料噴射する場合に排気ガス中の有害物質の量を最も低減できる進角量に設定されている。さらに、この進角量は、内燃機関1の諸元や内燃機関1の運転状態などに応じて最適な値に設定されている。
【0063】
その後、時刻t2において、触媒温度Tcatが触媒活性判定温度Tact以上となると、触媒27が活性状態であると判断され、内燃機関1の吸気行程で燃料噴射するようにインジェクタ13の燃料噴射タイミングが遅角側に制御される。
【0064】
ここでの燃料噴射タイミングの遅角量は、ECU50によって、吸気行程で燃料噴射する場合に触媒反応熱が最も増大する遅角量に設定されている。さらに、この遅角量は、内燃機関1の諸元や内燃機関1の運転状態などに応じて最適な値に設定されている。
【0065】
その後、時刻t3において、触媒温度Tcatが最大浄化率温度Tmax以上となると、触媒27が完全活性状態であると判断され、インジェクタ13の燃料噴射タイミングが通常時の燃料噴射タイミングに制御される。
【0066】
図3において、触媒温度は、時刻t2以降、破線で示す比較例よりも実線で示す本実施例のほうが上昇している。すなわち、本実施例における触媒27は、比較例と比べて早期に触媒温度が上昇している。このため、触媒の浄化率も、時刻t2以降、破線で示す比較例よりも実線で示す本実施例のほうが上昇している。このように、本実施例における触媒27は、比較例に係る触媒よりも早期に暖機が完了している。
【0067】
以上のように、本実施例に係る内燃機関の制御装置は、触媒27が未活性状態である場合には、内燃機関1の排気行程で燃料噴射するようにインジェクタ13の燃料噴射タイミングを制御し、触媒27が未活性状態と完全活性状態との間の活性状態である場合には、内燃機関1の吸気行程で燃料噴射するようにインジェクタ13の燃料噴射タイミングを制御し、触媒27が完全活性状態である場合には、内燃機関1の燃費が最適となるタイミングで燃料噴射するようにインジェクタ13の燃料噴射タイミングを制御するよう構成されている。
【0068】
この構成により、本実施例に係る内燃機関の制御装置は、触媒27の活性の度合いに応じてインジェクタ13の燃料噴射タイミングを切り替えるので、触媒27を早期に暖機することができる。
【0069】
また、本実施例に係る内燃機関の制御装置においては、触媒27が未活性状態である場合、インジェクタ13の燃料噴射タイミングが進角されるため、例えば燃料噴射タイミングを遅角する、つまり吸気行程で燃料噴射する場合と比較して、燃料と空気とが混合される時間が長くなる。このため、より多くの燃料が空気と混ざることとなり、混ざり切っていない燃料に起因した有害物質の発生が抑えられる。この結果、触媒27が未活性状態である場合には、内燃機関1から排出される排気ガス(以下、「エンジンアウト排ガス」という)を低減することができる。
【0070】
また、本実施例に係る内燃機関の制御装置においては、触媒27が活性状態である場合、インジェクタ13の燃料噴射タイミングが遅角されるため、未燃燃料が触媒27に導入されることによって酸化反応が促進され、その反応熱で触媒27が昇温される。この結果、触媒27が活性状態である場合には、触媒27の浄化率を上昇させることができ、触媒27を通過して車両外部に排出される排気ガスを低減することができる。
【0071】
また、本実施例に係る内燃機関の制御装置においては、触媒27が完全活性状態である場合、インジェクタ13の燃料噴射タイミングが、燃費が最適となるタイミング、すなわち通常時の燃料噴射タイミングに設定されるため、燃費を向上させることができる。
【0072】
本実施例に係る内燃機関の制御装置は、触媒温度Tcatが触媒活性判定温度Tact未満である場合には、触媒27が未活性状態であると判定し、触媒温度Tcatが触媒活性判定温度Tact以上、かつ最大浄化率温度Tmax未満である場合には、触媒27が前記活性状態であると判定し、触媒温度Tcatが最大浄化率温度Tmax以上である場合には、触媒27が完全活性状態であると判定するよう構成されている。
【0073】
この構成により、本実施例に係る内燃機関の制御装置は、触媒温度Tcatによって触媒27の活性の度合いを判定するため、燃料噴射タイミングの切替を精度よく制御することができる。
【0074】
本実施例に係る内燃機関の制御装置は、排気行程で燃料噴射する場合、排気ガス中の有害物質の量を最も低減できる進角量に設定するので、エンジンアウト排ガスを最大限低減することができる。
【0075】
本実施例に係る内燃機関の制御装置は、吸気行程で燃料噴射する場合、触媒反応熱が最も増大する遅角量に設定するので、触媒27を早期に昇温させることによって触媒の浄化率を上昇させることができ、触媒27を通過して車両外部に排出される排気ガスを低減することができる。
【0076】
なお、本実施例においては、燃料噴射弁としてポート噴射式のインジェクタ13を用いた例について説明したが、これに限らず、燃料噴射弁として直噴式のインジェクタを用いてもよい。
【0077】
また、本実施例において、ECU50は、触媒温度モデルを用いた演算により推定された触媒温度に基づき触媒27の活性の度合いを判定したが、これに限らず、上流側のO2センサ29に加えて触媒27の下流側にもO2センサを設けて、これら2つのO2センサからの情報に基づき触媒27の活性の度合いを判定してもよい。
【0078】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。