(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054719
(43)【公開日】2024-04-17
(54)【発明の名称】ボイラ給水装置およびボイラ給水方法
(51)【国際特許分類】
F22D 5/26 20060101AFI20240410BHJP
【FI】
F22D5/26 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161137
(22)【出願日】2022-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】寳官 正徳
(57)【要約】
【課題】給水加熱器からの漏水によるウォーターハンマーの発生を抑制するとともに、給水加熱器からの漏水を早期に発見することが可能なボイラ給水装置およびボイラ給水方法を提供する。
【解決手段】制御装置8は、汽力発電設備1の解列から第1の所定時間経過時に節炭器41の入口給水温度Tp3と、高圧給水加熱器3の出口給水温度とを測定し、節炭器41の入口給水温度Tp3が所定温度以上で、かつ、高圧給水加熱器の出口給水温度が高圧給水ポンプ2の運転停止時よりも上昇している場合には、解列から第2の所定時間経過後に高圧給水ポンプ2を循環運転させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水ポンプと、前記給水ポンプから供給された水を加熱してボイラの節炭器に供給する給水加熱器と、前記給水ポンプを制御する制御手段と、各部の給水温度を測定する温度センサと、を備えるボイラ給水装置であって、
前記制御手段は、
前記ボイラが週末起動停止運転によって運転停止され、前記給水ポンプの運転が停止した場合に、前記ボイラの運転停止から第1の所定時間経過後に前記温度センサによって、前記節炭器の入口給水温度と、前記給水加熱器の出口給水温度と、を測定し、
前記第1の所定時間における前記節炭器の入口給水温度が所定温度以上で、かつ、前記給水加熱器の出口給水温度が前記給水ポンプの運転停止時の温度よりも上昇している場合、前記ボイラの運転停止から第2の所定時間の経過後に、前記給水を循環させる循環運転を前記給水ポンプに行なわせる、
ことを特徴とするボイラ給水装置。
【請求項2】
前記週末起動停止運転によって前記ボイラの運転が開始されるボイラ運転開始時間が、前記第2の所定時間の経過後に訪れる第3の所定時間の経過後である場合、前記制御手段は、前記第3の所定時間の経過後に前記給水ポンプに前記循環運転を行なわせる、ことを特徴とする請求項1に記載のボイラ給水装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記ボイラ内にて測定した複数の給水温度のばらつきが所定範囲内になったときに前記循環運転を停止する、ことを特徴とする請求項1または2に記載のボイラ給水装置。
【請求項4】
給水ポンプにより給水加熱器に水を供給し、前記給水加熱器により加熱された水をボイラの節炭器に供給するボイラ給水方法であって、
前記ボイラが週末起動停止運転によって運転停止され、前記給水ポンプの運転が停止した場合に、前記ボイラの運転停止から第1の所定時間経過後に前記節炭器の入口給水温度と、前記給水加熱器の出口給水温度と、を測定し、
前記第1の所定時間における前記節炭器の入口給水温度が所定温度以上で、かつ、前記給水加熱器の出口給水温度が前記給水ポンプの運転停止時の温度よりも上昇している場合、前記ボイラの運転停止から第2の所定時間の経過後に、前記給水を循環させる循環運転を前記給水ポンプに行なわせる、
ことを特徴とするボイラ給水方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ボイラに給水を行なうボイラ給水装置およびボイラ給水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
汽力発電設備は、ボイラと、ボイラに給水を行なうボイラ給水装置と、ボイラで発生した蒸気により駆動される蒸気タービンと、蒸気タービンの駆動によって発電を行なう発電機などを備えている。ボイラ給水装置は、給水ポンプと、給水ポンプから供給された水を加熱してボイラの節炭器に供給する給水加熱器と、各部の給水温度を測定する温度センサなどを備えている。汽力発電設備では、週末の電力需要の低下に応じて、週末に運転を停止(以下、解列ともいう)し、週初めに運転を再開する週末起動停止(WSS:Weekly Start and Stop)運転を行なっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
WSS運転の運転停止中には、ボイラ内の給水は流動しないため、給水温度は時間経過に伴って徐々に低下する。しかしながら、この運転停止中にボイラ内の給水温度が上昇して、給水がフラッシュまたは凝縮し、ウォーターハンマーが発生することがあった。大規模なウォーターハンマーが発生した場合、ボイラ水管などが損傷する恐れがある。
【0004】
このような、WSS運転の運転停止中に発生したウォーターハンマーの原因について本発明者が調査したところ、給水加熱器からの漏水によってボイラ内の給水が流動し、給水温度が上昇していることが分かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
給水加熱器からの漏水によるウォーターハンマーの発生を防ぐには、WSS運転の運転停止中に漏水している給水加熱器を修理または交換すればよい。しかしながら、給水加熱器の漏水が少量である場合、汽力発電設備の運転中には水位レベル、給水温度などに顕著な変化が現れないため、給水加熱器の漏水を発見するのは難しい。また、給水加熱器の修理または交換には時間がかかるため、WSS運転の運転再開に間に合わない可能性がある。さらに給水加熱器を修理または交換するためにボイラ内の給水を排出する場合、給水温度が低下し、運転再開に時間がかかる可能性がある。
【0007】
そこでこの発明は、給水加熱器からの漏水によるウォーターハンマーの発生を抑制するとともに、給水加熱器からの漏水を早期に発見することが可能なボイラ給水装置およびボイラ給水方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、給水ポンプと、前記給水ポンプから供給された水を加熱してボイラの節炭器に供給する給水加熱器と、前記給水ポンプを制御する制御手段と、各部の給水温度を測定する温度センサと、を備えるボイラ給水装置であって、前記制御手段は、前記ボイラが週末起動停止運転によって運転停止され、前記給水ポンプの運転が停止した場合に、前記ボイラの運転停止から第1の所定時間経過後に前記温度センサによって、前記節炭器の入口給水温度と、前記給水加熱器の出口給水温度と、を測定し、前記第1の所定時間における前記節炭器の入口給水温度が所定温度以上で、かつ
、前記給水加熱器の出口給水温度が前記給水ポンプの運転停止時の温度よりも上昇している場合、前記ボイラの運転停止から第2の所定時間の経過後に、前記給水を循環させる循環運転を前記給水ポンプに行なわせる、ことを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載のボイラ給水装置において、前記週末起動停止運転によって前記ボイラの運転が開始されるボイラ運転開始時間が、前記第2の所定時間の経過後に訪れる第3の所定時間の経過後である場合、前記制御手段は、前記第3の所定時間の経過後に前記給水ポンプに前記循環運転を行なわせる、ことを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載のボイラ給水装置において、前記制御手段は、前記ボイラ内にて測定した複数の給水温度のばらつきが所定範囲内になったときに前記循環運転を停止する、ことを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、給水ポンプにより給水加熱器に水を供給し、前記給水加熱器により加熱された水をボイラの節炭器に供給するボイラ給水方法であって、前記ボイラが週末起動停止運転によって運転停止され、前記給水ポンプの運転が停止した場合に、前記ボイラの運転停止から第1の所定時間経過後に前記節炭器の入口給水温度と、前記給水加熱器の出口給水温度と、を測定し、前記第1の所定時間における前記節炭器の入口給水温度が所定温度以上で、かつ、前記給水加熱器の出口給水温度が前記給水ポンプの運転停止時の温度よりも上昇している場合、前記ボイラの運転停止から第2の所定時間の経過後に、前記給水を循環させる循環運転を前記給水ポンプに行なわせる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1および請求項4の発明によれば、ボイラが週末起動停止運転によって運転停止しているときに、節炭器の入口給水温度と、給水加熱器の出口給水温度とが運転停止時よりも上昇している場合、給水加熱器から漏水していると推定することができる。したがって、給水加熱器からの漏水を早期に発見することが可能である。また、週末起動停止運転の運転停止中に、給水加熱器が漏水している場合には、給水ポンプに循環運転を行なわせることができるので、ボイラ内の給水温度を均一化してウォーターハンマーの発生を抑制し、ボイラ水管の損傷を防ぐことが可能である。
【0013】
請求項2の発明によれば、週末起動停止運転の運転開始時間が、第2の所定時間の経過後に訪れる第3の所定時間の経過後である場合、第3の所定時間の経過後に給水ポンプに循環運転を行なわせることができるので、ボイラ内の給水温度をさらに均一化してウォーターハンマーの発生を抑制し、ボイラ水管の損傷を防ぐことが可能である。
【0014】
請求項3の発明によれば、ボイラ内にて測定した複数の給水温度のばらつきが所定範囲内になったときに循環運転を停止するので、必要以上に給水ポンプを運転させる必要がなく、より簡単にウォーターハンマーの発生を抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】この発明の実施の形態に係る汽力発電設備の概略構成図である。
【
図2】汽力発電設備の運転停止中に漏水が発生していない場合の各部の給水温度の降下状況を示すグラフである。
【
図3】汽力発電設備の運転停止中に漏水が発生している場合の各部の給水温度の降下状況を示すグラフである。
【
図4】汽力発電設備の運転停止中に漏水およびウォーターハンマーが発生している場合の各部の給水温度の降下状況を示すグラフである。
【
図5】汽力発電設備の運転停止中に給水ポンプを循環運転した場合の各部の給水温度の降下状況を示すグラフである。
【
図6】汽力発電設備の運転停止中に給水ポンプを循環運転する手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0017】
図1は、この発明の実施の形態に係る汽力発電設備1の概略構成図である。汽力発電設備1は、高圧給水ポンプ(給水ポンプ)2と、高圧給水加熱器(給水加熱器)3と、ボイラ4と、蒸気タービン5と、発電機6と、復水器7と、制御装置(制御手段)8を備えている。本実施の形態の汽力発電設備1は、週末の電力需要の低下に応じて、週末に運転を停止(解列)し、週初めに運転を再開するWSS運転を行なう。
【0018】
高圧給水ポンプ2は、図示しない給水源および復水器7から供給された水を高圧給水加熱器3へ供給する。
【0019】
高圧給水加熱器3は、蒸気タービン5の抽気を利用して、高圧給水ポンプ2から供給された水を加熱する。高圧給水加熱器3は、給水を加熱するヒータとして、第1Aヒータ31Aおよび第1Bヒータ31Bと、第2Aヒータ32Aおよび第2Bヒータ32Bと、を備えている。第1Aヒータ31Aと、第1Bヒータ31Bとは、高圧給水ポンプ2に対して並列に接続されている。また、第2Aヒータ32Aは第1Aヒータ31Aに接続され、第2Bヒータ32Bは第1Bヒータ31Bに接続されている。すなわち、高圧給水加熱器3は、第1Aヒータ31Aおよび第2Aヒータ32Aによって給水を加熱する第1給水加熱系統と、第1Bヒータ31Bおよび第2Bヒータ32Bによって給水を加熱する第2給水加熱系統とを備えている。
【0020】
ボイラ4は、節炭器41と、1次水冷壁42と、2次水冷壁43と、過熱器44と、を備えている。節炭器41は、高圧給水加熱器3から供給された水を、ボイラ4の排熱を利用して飽和水になるまで加熱する。
【0021】
1次水冷壁42および2次水冷壁43は、ボイラ4の燃焼室の周囲に配置された蒸発管からなり、節炭器41によって飽和水になるまで加熱された給水をさらに加熱して飽和蒸気を生成する蒸発器である。
【0022】
過熱器44は、1次水冷壁42および2次水冷壁43によって生成された飽和蒸気をさらに飽和温度以上に過熱して過熱蒸気を生成する。生成された過熱蒸気は、蒸気タービン5に供給される。
【0023】
蒸気タービン5は、ボイラ4から供給された過熱蒸気によってタービン羽根を回転させる。発電機6は、タービン羽根の回転を利用して発電を行なう。
【0024】
復水器7は、蒸気タービン5で利用された過熱蒸気を冷却して凝縮させ、低圧の飽和水に戻し、高圧給水ポンプ2へ供給する。
【0025】
汽力発電設備1には、各部の給水温度または流体温度を測定する温度センサ(図示せず)が設置されている。例えば、第1Aヒータ31Aの出口給水温度Tp1A、第1Bヒータ31Bの出口給水温度Tp1B、第2Aヒータ32Aの出口給水温度Tp2A、および第2Bヒータ32Bの出口給水温度Tp2Bと、節炭器41の入口給水温度Tp3と、1次水冷壁42の出口流体温度Tp4および2次水冷壁43の出口流体温度Tp5と、過熱器44の出口流体温度Tp6とが温度センサによって測定され、その測定結果は制御装置8に送信される。
【0026】
制御装置8は、汽力発電設備1の運転を制御するための装置であり、いわゆるコンピュータによって構成されている。制御装置8は、温度センサから送信された測定温度Tp1A、Tp1B、Tp2A、Tp2B、Tp3、Tp4、Tp5、およびTp6に基づいて汽力発電設備1の運転を制御する。
【0027】
汽力発電設備1は、上述したようにWSS運転を行なう。そのため、平日には汽力発電設備1の各部を駆動させて発電を行い、週末になると運転停止して電力網から解列する。
【0028】
図2は、WSS運転の運転停止中に高圧給水加熱器3から漏水がなく、かつ、ウォーターハンマーの発生がなかったときの各部の給水(流体)温度の降下状況を示すグラフである。このグラフでは、縦軸が温度(°C)、横軸が時間を示している。時間T1,T2などの間隔は、例えば、4時間である。汽力発電設備1は、時間T1において解列し、時間T1aにおいて高圧給水ポンプ2の運転を停止している。このグラフから分かるように、WSS運転の運転停止中には給水は流動しないため、時間の経過に応じて各部の給水(流体)温度は徐々に降下していく。
【0029】
一方、
図3は、WSS運転の運転停止中に高圧給水加熱器3から漏水があり、ウォーターハンマーの発生がなかったときの各部の給水(流体)温度の降下状況を示すグラフである。汽力発電設備1は、時間T1において解列し、時間T1aにおいて高圧給水ポンプ2の運転を停止している。このグラフから分かるように、WSS運転の運転停止中に高圧給水加熱器3のいずれかのヒータが漏水している場合、ボイラ4内の給水が流動(逆流)するため、ボイラ4内の給水温度が不均一になり、節炭器入口給水温度Tp3、第2Aヒータ32Aの出口流体温度Tp2A、第2Bヒータ32Bの出口給水温度Tp2Bなどが、高圧給水ポンプ2の停止時よりも上昇する。具体的には、節炭器入口給水温度Tp3は、解列から4時間40分で215°Cまで上昇し、高圧給水ポンプ2の停止から6時間40分(解列から7時間57分)で233°Cまで上昇している。
【0030】
これに対し、
図4は、WSS運転の運転停止中に高圧給水加熱器3から漏水があり、かつ、ウォーターハンマーが発生したときの各部の給水(流体)温度の降下状況を示すグラフである。汽力発電設備1は、起動をキャンセルして時間T1に解列し、時間T1aにおいて高圧給水ポンプ2の運転を停止し、時間T9aにおいてウォーターハンマーが発生している。このグラフから分かるように、WSS運転の運転停止中に高圧給水加熱器3のいずれかのヒータが漏水し、ウォーターハンマーが発生する場合、節炭器入口給水温度Tp3は、高圧給水ポンプ2の停止から約5時間10分経過した時間T2aにおいて245°Cまで上昇し、第2Bヒータ32Bの出口給水温度Tp2Bは、高圧給水ポンプ2の停止時よりも著しく上昇している。また、ウォーターハンマーは、解列から35時間程度経過した時点で発生している。
【0031】
このような、運転停止中の高圧給水加熱器3からの漏水による給水温度の変動を考慮し、本実施の形態の汽力発電設備1では、解列してから第1の所定時間(例えば、5時間)の経過後に、制御装置8は、節炭器入口給水温度Tp3と、第1Aヒータ31Aの出口給水温度Tp1A、第1Bヒータ31Bの出口給水温度Tp1B、第2Aヒータ32Aの出口給水温度Tp2A、および第2Bヒータ32Bの出口給水温度Tp2Bと、を測定する。
【0032】
また、制御装置8は、測定した節炭器入口給水温度Tp3が所定温度(例えば、215°C)以上で、かつ、第1Aヒータ31Aの出口給水温度Tp1A、第1Bヒータ31Bの出口給水温度Tp1B、第2Aヒータ32Aの出口給水温度Tp2A、および第2Bヒータ32Bの出口給水温度Tp2Bが高圧給水ポンプ2の停止時の温度よりも上昇してい
る場合、解列してから第2の所定時間(例えば、20時間)の経過後に高圧給水ポンプ2を起動させ、給水を循環させる循環運転を行なわせる。
【0033】
さらに、WSS運転の運転停止期間が、例えば土曜日および日曜日の2日間(48時間)である場合には、解列してから第3の所定時間(例えば、40時間)の経過後に高圧給水ポンプ2を起動させ、給水を循環させる循環運転を行なわせる。これにより、ボイラ4内の給水温度が均一化されるため、給水温度のばらつきによるフラッシュや凝縮は発生せず、ウォーターハンマーの発生を効果的に抑制することができる。
【0034】
次に、
図5に示すグラフと、
図6に示すフローチャートとに基づいて、上記の実施の形態の作用について説明する。汽力発電設備1は、WSS運転を行なうことによって、時間T1に解列を行い(ステップS1)、時間T1aに高圧給水ポンプ2の運転を停止する(ステップS2)。
【0035】
制御装置8は、解列から第1の所定時間が経過して時間T2aになると(ステップS3でYES)、節炭器入口給水温度Tp3と、第1Aヒータ31Aの出口給水温度Tp1A、第1Bヒータ31Bの出口給水温度Tp1B、第2Aヒータ32Aの出口給水温度Tp2A、および第2Bヒータ32Bの出口給水温度Tp2Bと、を測定する(ステップS4)。
【0036】
制御装置8は、測定した節炭器入口給水温度Tp3が所定温度以上で、かつ、第1Aヒータ31Aの出口給水温度Tp1A、第1Bヒータ31Bの出口給水温度Tp1B、第2Aヒータ32Aの出口給水温度Tp2A、および第2Bヒータ32Bの出口給水温度Tp2Bが高圧給水ポンプ2の停止時の温度よりも上昇し(ステップS5でYES)、解列してから第2の所定時間が経過(ステップS6でYES)している場合に、時間T4a~T4bの間で高圧給水ポンプ2を循環運転させる(ステップS7)。
【0037】
また、制御装置8は、解列してから第3の所定時間が経過(ステップS8でYES)している場合に、時間T8a~T8bの間で高圧給水ポンプ2を循環運転させる(ステップS9)。
【0038】
なお、循環運転は、制御装置8によってボイラ4内の各部の給水(流体)温度を監視し、これらの温度のばらつきが所定範囲内に納まったとき、すなわち、ボイラ4内の各部の給水(流体)温度が略均一になったときに停止するのが好ましい。
【0039】
以上で説明したように、本実施形態の汽力発電設備1によれば、WSS運転によって運転停止しているときに、節炭器41の入口給水温度Tp3が所定温度以上であり、かつ、第1Aヒータ31Aの出口給水温度Tp1A、第1Bヒータ31Bの出口給水温度Tp1B、第2Aヒータ32Aの出口給水温度Tp2A、および第2Bヒータ32Bの出口給水温度Tp2Bが高圧給水ポンプ2の運転停止時よりも上昇している場合、高圧給水加熱器3から漏水していると推定することができる。したがって、高圧給水加熱器3を構成する複数のヒータのなかから、漏水しているヒータを早期に発見することが可能である。また、WSS運転の運転停止中に、高圧給水加熱器3が漏水している場合には、高圧給水ポンプ2に循環運転を行なわせることができるので、ボイラ4内の給水温度を均一化してウォーターハンマーの発生を抑制し、ボイラ水管の損傷を防ぐことが可能である。
【0040】
また、本実施形態の汽力発電設備1によれば、WSS運転の運転開始時間が、第2の所定時間の経過後に訪れる第3の所定時間の経過後である場合、第3の所定時間の経過後に高圧給水ポンプ2に循環運転を行なわせることができるので、ボイラ4内の給水温度をさらに均一化してウォーターハンマーの発生を抑制し、ボイラ水管の損傷を防ぐことが可能
である。
【0041】
さらに、本実施形態の汽力発電設備1によれば、ボイラ4内にて測定した複数の給水温度のばらつきが所定範囲内になったときに循環運転を停止するので、必要以上に高圧給水ポンプ2を運転させる必要がなく、より簡単にウォーターハンマーの発生を抑制することが可能である。
【0042】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、汽力発電設備1を例に説明したが、コンバインドサイクル発電設備にも適用することが可能である。また、高圧給水ポンプ2の循環運転を2回行なっているが、ウォーターハンマーの発生が抑制できるのであれば、循環運転は1回でもよいし、3回以上行なってもよい。さらに、循環運転を行なうタイミングが到来する前に、汽力発電設備1の運転が再開された場合には、循環運転を省略してもよい。
【0043】
また、節炭器41の入口給水温度Tp3の測定結果に基づいて高圧給水加熱器3の漏水を発見した場合、汽力発電設備1を保守管理している組織の修理部門などに、制御装置8からその旨を通知するようにしてもよい。これによれば、高圧給水加熱器3を早期に修理または交換することができ、ウォーターハンマーの発生を効果的に抑制することが可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 汽力発電設備
2 高圧給水ポンプ(給水ポンプ)
3 高圧給水加熱器(給水加熱器)
4 ボイラ
41 節炭器
42 1次水冷壁
43 2次水冷壁
44 過熱器
5 蒸気タービン
6 発電機
7 復水器
8 制御装置(制御手段)